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桜と新緑の競演

 3月31日、公立大学法人・都留文科大学長として、最後の公務である。理事5人で昼食をとり、本部棟に戻る昼下がり、ふとケヤキの大木に目が止まった。梢がうっすらと赤味を帯び、芽をふく寸前の気配である。この時期になぜ、との思いがよぎる。
 午後には最後の常任理事会、また堀内富久都留市長はじめ各部署への挨拶回りがあった。4年弱の学長任期満了に、一抹の淋しさと、軽やかさが交錯する。そのせいで、ケヤキにふだんとは違う印象を受けたのか。
 東京では25日に桜(ソメイヨシノ)が開花し、はや満開である。富士山北麓に位置する都留市(標高500メートル)では、それが10日ほど遅れる。学長室の東にある楽山(らくやま)には、白馬のタテガミのように桜が稜線を描く。もちろん今年はまだその気配さえない。
 代わりにというべきか、山のコナラやクヌギが心なしか赤くけむって見える。その葉芽が弾ければ、すぐに新緑である。しかし桜の開花より新緑が先行することがあるのか。
 4月1日、年度が替わり、公務から解放されたのを機に、平日の火曜にもかかわらずラケットを背負い、日比谷公園のテニスコートへ向かった。そこで不思議な光景に出会う。ケヤキも種々の雑木もすでに新緑に彩られ、藤の葉芽さえ大きく膨らんでいる。新緑シーズンは、桜が散った後の、大型連休とともに始まるはずではなかったか。
 4月3日、横浜は国指定の名勝、三渓園へ行く。小雨のなか、バス停の本牧から三渓園に至る桜道はいまや満開である。正門を入ると、高みにある三重塔を中心に、大池沿いの桜が妖艶な姿を見せる。一方、鶴翔閣の右手の山は初々しい緑に包まれている。
 園長室で川越寛副園長、長塚光夫総務課長、中島哲也事業課長と4役会を開き、重要議題を終えてから、疑問をぶつけてみた。「今年は桜と新緑が同時進行で、いつもとは違うのでは?」と。長塚課長がすぐ反応した。「そうなんです。カエデも新芽をふいていて…」。
 今年は2月に2度の大雪があり、各地でたいへんな事態に陥った(都留文科大学時代の学長ブログ「大雪襲来」等)。異変を察知した木々たちの防衛反応が、桜花と新緑の競演となったのか。
 夏と冬を往復するような天候のなか、5日、6日の週末もなお花をとどめ、身を縮めて耐えている。
 彼らのたゆまぬ生命の営みを見守っていきたい。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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