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変わりつつある世界(15)

 2023年10月7日朝に掲載した「変わりつつある世界(14)」の後、次々と新しいニュースが入ってきた。

【米国「国境の壁」建設再開 バイデン大統領、公約を撤回】
 10月7日、日経速報メールは次のように報じた。
 米国が再び「国境の壁」建設に動き出した。バイデン大統領は政権発足当初の公約を撤回し、メキシコとの国境に最長20マイル(約32キロメートル)の新たな侵入防止柵を設けると発表した。トランプ前政権と打って変わって寛容な移民政策を掲げたバイデン政権だが、想定を超えて不法越境が広がっているためだ。影響はメキシコとの外交関係や再選を狙う2024年の大統領選挙に跳ね返りかねない。
「バイデン氏はこれまで壁を建設しなかった唯一の米大統領だった」。米政府の決定を受け、メキシコのロペスオブラドール大統領は5日の記者会見で強い不満を見せた。
米国土安全保障省は5日の公示で、壁建設を再開する方針を示した。折しも同省のマヨルカス長官やブリンケン米国務長官がそろってメキシコを訪れているさなかのことだ。米側との会談を前に、ロペスオブラドール氏は「問題の解決にならない。後退だ」と切り捨てた。
 20年の大統領選でバイデン氏はトランプ前政権の看板政策だった「国境の壁」を否定し、就任初日に建設中止を宣言していた。今回はその方針を覆し、メキシコと国境を接する南部テキサス州のリオグランデバレー地域に新たな壁をつくる。
 バイデン氏は5日、記者団に対し、国境の壁の予算を他の目的に回すよう議会に要請したが拒否されたため、やむを得なかったと釈明した。国境の壁は不法越境の阻止に効果があると思うかとの質問には「ノー」と答えて政策転換を否定したものの、対応は後手に回る。
 背景にはバイデン政権が寛容策を打ち出したことで「米国に入りやすくなった」との期待が過度に広がった経緯がある。
米政府は5月中旬には、不法越境者の難民申請を原則認めない規則を取り入れ、一段の移民流入を防ごうとした。しかし不法入国の動きは止まらず、米移民局は9月だけで米メキシコ国境を不法に越えた20万人以上の対応に追われた。

拘束者2年連続で200万人超
 米税関・国境取締局(CBP)によると、米南西部国境での拘束者数は2022年から2年連続で200万人を超えた。ロペスオブラドール氏は9月「毎日1万人の移民が北部国境に到達している」として中南米10カ国に外相会議の開催を呼びかけていた。メキシコ側で滞留する移民を狙った誘拐や暴行、恐喝などの犯罪が多発している。
 ベネズエラやキューバをはじめ、中南米諸国から移民が押し寄せる要因には、長引くインフレや通貨安で米国との経済格差が拡大している現状もある。
 世界銀行によると、中米のホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの1人当たり国内総生産(GDP)は3000〜5000ドル程度にとどまる。7万6000ドルを超える米国とは大差がある。ベネズエラは世界有数の産油国だが、反米左派政権の失政で治安悪化や食糧難に直面してきた。国外に逃れた人々は700万人超に達している。
 足元で米国への移民が急増している一因として、犯罪カルテルの策動を指摘する声もある。米メディアによると、中南米各地では「入国審査予約アプリを持っていれば誰でも米国に亡命できる」といった偽情報が目立つようになった。米国側の国境審査や警備に負荷をかけ、麻薬を運びやすくする狙いがあるという。

「聖域」も限界迫る
 バイデン政権は5日、ベネズエラからの不法移民の本国送還を再開すると発表した。合法滞在の資格がないと判断した不法移民が対象で、数日中に航空機による送り返しを始める。厳しい姿勢を示すことで米国への不法入国を抑止するのが目的だ。
 大量の移民らを受け入れてきたリベラル州や大都市の限界も迫る。移民に寛容な「サンクチュアリ・シティー(聖域都市)」として知られる東部ニューヨーク市には、22年4月以降、約12万人が殺到した。
 市内の宿泊施設や配給食も逼迫する。アダムズ市長は「この問題はニューヨーク市を破壊するだろう」と危機感を強める。同市は必要な個人にシェルターを提供することを法律で義務付けているが、3日にはこの措置を一時的に停止するよう裁判所に申し立てた。
 共和党が多数派を占める南部の各州では、移民対策で後手に回る連邦政府への不満が渦巻く。バイデン政権が新たに壁をつくるテキサス州の国境地帯は不法移民の増加で住民らが反発を強めており、移民対策の強化を掲げる共和党の支持率が伸びている。

身内・民主からもノー
 バイデン政権は同日、新たな壁を早急につくるため、周辺地に対して大気や水、絶滅危惧種などを守る26の連邦法の適用を免除すると発表した。国土安全保障省のマヨルカス長官は「不法入国を防ぐため、国境付近に物理的な障壁と道を建設する緊急かつ即時の必要性がある」と説明するが、環境を重視してきたバイデン氏の政策のブレは際立つ。
 増え続ける不法越境に対し、バイデン政権は手詰まり感が否めない。身内である民主党内からも疑問の声が上がる。
 米メディアによると、国境付近を選挙区とする民主党のクエラー下院議員は声明で「国境の壁は21世紀の問題に対する14世紀の解決策だ」と政権の方針転換を批判した。国境の壁は効果がないと断じたうえで「税金の無駄遣いに引き続き反対する」と述べた。

トランプ氏も「敵失」に利用
 このまま民主・共和双方の批判が強まれば、大統領選の結果にも響きかねない。今回の決定を「敵失」として生かす動きも出始めた。
 「私が正しかったことを証明するために、いかさまジョー・バイデンがあらゆる環境法を破るのを見るのは面白い」。トランプ前大統領は自ら立ち上げたSNS(交流サイト)「トゥルース・ソーシャル」で攻撃し、こう結んだ。「(壁建設を)前進させるのにこんなに時間がかかったことを、バイデンは私と米国に謝罪するのか」(メキシコシティ=市原朋大、ワシントン=芦塚智子、サンパウロ=宮本英威、ヒューストン=花房良祐、ニューヨーク=弓真名)

【ふるさと納税、稼ぎ頭は人口400人の和歌山・北山村 データで読む地域再生】
 同じ7日の日経速報メールは次のように報じた。
 ふるさと納税による全国の自治体への寄付額が2022年度は9654億円と3年連続で過去最高を更新した。都市部では税金の流出が膨らみ、返礼品競争にも批判はあるが、財政基盤の弱い自治体には貴重な財源だ。各市区町村の住民1人当たりの収支をみると「稼ぎ頭」は人口約400人の和歌山県北山村だった。
 総務省の「ふるさと納税に関する現況調査」から22年度の市区町村ごとの実質収支を算出した。受け入れた寄付額から他の自治体に寄付として流出した控除額と、寄付を得るのにかかった経費を差し引いた。人口1人当たり1万円以上の「黒字」だった自治体数は449で経費を把握できる16年度の約3倍。うち9割が人口5万人以下だった。
 黒字が最も大きかったのは和歌山県北山村で122万2838円に達した。紀伊半島の山あいにあり、同県とは接さず奈良県と三重県に囲まれた全国唯一の飛び地の村。人口は全国有数の少なさで過疎が進む。ふるさと納税の収益を高めた背景には村に自生する絶滅寸前のかんきつ類「じゃばら」の復活劇があった。

【企業の失敗、野性喪失から 「失敗の本質」の著者説く 野中郁次郎一橋大名誉教授】
 同じ7日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 日本企業は今なお「失われた30年」から抜け切れずにいる。画期的な技術や米「GAFA」のような革新的組織を生めず、世界から注目される経営者も現れなくなったままだ。何をどう間違えたのか。「失敗の本質」などの著書がある経営学の泰斗、一橋大学の野中郁次郎名誉教授に「失われた時代の本質」と処方せんを聞いた。
 バブル崩壊後の日本では雇用、設備、債務の3つの過剰が企業を苦しめたとされた。だが企業を本当に縛ったのは、全く異なる3つの「オーバー(過剰)」だったとみる。
――企業にとって「失われた30年」の真因はどこにあったのか。
「雇用や設備、債務もその通りだ。しかしより本質をいうならプラン(計画)、アナリシス(分析)、コンプライアンス(法令順守)の3つがオーバーだった」
「数値目標の重視も行きすぎると経営の活力を損なう。例えば多くの企業がPDCAを大切にしているというが、社会学者の佐藤郁哉氏は最近、『PdCa』になったといっている。Pの計画とCの評価ばかり偏重され、dの実行とaの改善に手が回らないということ。同感だ」
 「行動が軽視され、本質をつかんでやりぬく『野性味』がそがれてしまった。野性味とは我々が生まれながらに持つ身体知だ。計画や評価が過剰になると劣化する」
都心のオフィスの通称「ナレッジルーム」には3000冊以上の本が並ぶ
――計画や数値目標なしに経営は成り立たないのでは。
「それらは現状維持の経営には役立つかもしれないが、改革はできない。欧米の科学的管理手法から発展したやり方は、感情などの人間的要素を排除しがちだ。計画や手順を優先させられると人は指示待ちになり、創意工夫をしなくなる」
「計画や手順が完璧であることが前提だけに、環境の変化や想定外の事態に直面すると、思考も停止する。高度成長期には躍動の原動力だったとしても、今では成長を阻害する要因だ」
計画偏重では革新起きず
――著書「知識創造企業」は28年前の出版時、まず米国で注目された。「暗黙知」と「形式知」という概念で日本企業の革新性を解き明かしたが、今はどうか。
「バランスが大事だということだ。技術革新は個人の行動や価値観に深く根差す暗黙知と、数値や文字で表せる形式知の相互作用で生まれる。2つの知は相互に高め合わないといけないが、計画や評価の繰り返しで革新は起こらない」
「過去の成功体験があまりにも大きかったのが影響しているのかもしれない。刻々と変化する現実への対応を誤る傾向がこの30年、続いた」
――成功体験への固執という点では日本のバブルが絶頂に向かう時期に「失敗の本質」を出した。その後の企業のつまずきを予言したのか。
「当時はそんなことを意識しなかった。組織というものは本来、変化に適応できるかどうかが絶えず問われる。本で挙げたのは、旧日本陸軍の戦略のあいまいさ、短期志向、集団主義、縦割り、異質性の排除という点だ。今思えば過去30年の日本も、底流にある問題は当時の日本軍と変わらなかった可能性がある」
――コンプライアンスも過剰なのか。
「誤解を恐れずにいえば、事なかれ主義やリスク回避、忖度(そんたく)の文化が生まれやすい。『様子をみながら慎重に』などと悠長にやっていられない時もある。過剰反応は危うい」
――DX(デジタルトランスフォーメーション)、ジョブ型雇用、人的資本についても厳しい指摘をしている。
「人的資本経営といえば聞こえはいい。しかしヒューマンキャピタルという英語は、人とモノである資本を同列に扱っているように感じられる。資本を作り出す主体が人間だ。人的資本のようなスローガンには形から入っている印象が否めない」
計画や数値に偏重した経営が失敗を招いたとしたら、何が成功のカギを握るのか。企業の失敗や成功をつぶさに見てきた野中氏は、共感と知の獲得にヒントを見いだす。
――では、成功の本質とはどんなものか。
「過去の組織、戦略、構造、文化を変える。そして我々はなぜここにいるかを確信できる価値と意味を問い直す。モノマネでは元も子もない。だから私は『考える前に感じろ』と訴えている」
「ソニーグループを再生した平井一夫氏(前会長)が、改革には『IQ(知性)よりEQ(感性)だ』と話していたのが興味深い。『感動』というパーパスで自信を失いかけた社員のマインドセットを変えたのだが、重視したのは共感だった。6年で70回以上もタウンホールミーティングをしつこくやったという」
――感性だけで経営できるのか。
「そこで重要になるのが、個人に眠る暗黙知を集団で共有するプロセスだ。さらに徹底した対話を経て、暗黙知を言葉や論理による形式知に変換する。最終的には集団で獲得した知の実践を通じ、個人の暗黙知をもう一段高める。こうした流れを私は英語の頭文字をとって『SECI(セキ)モデル』と定式化した」
「このモデルは計画や数値ではなく、現実を生で感じて全身全霊で共感し、暗黙知を獲得するところから始まる。そして『知的コンバット(戦闘)』も欠かせない」
「ホンダは経営や商品開発について現場の社員が徹底的に討論する『ワイガヤ』を重んじてきた。これは対話を通じて集合的に本質を直観する場だ。お互いの理解を超えて関係性をつくるのはしんどいし、つらいプロセスだ。でも逃げずにやりきれば、新しい地平に至ることができる」
共感を重んじ知を磨け
――サラリーマン経営者にやり抜けるか。
「確かに、創業家出身がトップの方が組織の変革はやりやすいところもある。エーザイの内藤晴夫最高経営責任者(CEO)は初めて知識創造理論を採用した経営者だ。もう30年近く前になる。研究所に泊まり込み、研究員一人ひとりと膝詰めで『何のために新製品開発が必要か』を対話した。何十年もあきらめなかった結果が認知症治療薬『レカネマブ』を生んだともいえるだろう」
――かつての日本的経営に代わる成功パターンはみえてきたか。
「ここ数年、『ヒューマナイジング・ストラテジー』を提唱している。論理や分析が過多になった現代日本への警鐘をこめた。本来は人の営みである経営戦略に人間を取り戻そうということだ」
――日本にGAFAのような企業群がなかなか生まれない。
「知の体系の差といえる。われわれはなぜ存在するのか。存在目的を果たすのにどんな知の体系が必要かを、米国のイノベーティブな経営者たちは深く考え、構想できている。日本企業にも培ってきた研究や技術は多いが、それらを生かす構想力が必要だ。それがあれば何をやって何をやらないかの意思決定も速い」
――新型コロナウイルス禍やDX、マイナンバーで政治の世界も混乱した。国家運営での失敗の本質とは。
「時代が要求する方向でなく、取りまとめる人々が好む方向に進んでしまう傾向がコロナ対応などでみられた。失敗の本質で描いた日本軍の姿と重なる」
「ベトナム戦争の当時、米国防長官を務めたロバート・マクナマラはデータ分析を駆使したが、数値にあらわれないベトナム人の愛国心や強さを洞察することができなかった。独善的に戦略を立て、甚大な被害を出した。そのような戦略的ナルシシズムの誤りを犯さないことが国家のリーダーには求められる」
のなか・いくじろう 経営学者で専門は知識経営論。旧日本軍が判断を誤り続けた要因を解明した1984年の共著「失敗の本質」は今も読み継がれる。日本企業の革新性の源泉を読み解いた「知識創造企業」(1995年、共著)は米欧の研究者にも影響を与えた。最近も著作多数。88歳。
「まず形から」への重い警鐘 インタビュアーから
都心のオフィスには著書「知識創造企業」にちなんで「ナレッジルーム」の名がつき、3千冊以上の蔵書が並ぶ。アリストテレス、E・フッサール……。経済や哲学書が大半だが、軟らかい本も時折交じるところに野中氏の本質をみた。
 理論には常にあらゆる角度から磨きと補強を加えている。そしてとにかく人と会う。最近は運動界に関心を持ち、ラグビーの持つ規律の本を書いた。組織運営の本質が眠ると考えた。
 大手企業の機関誌に寄せた連載「成功の本質」が100回以上続いて終了した。企業の革新事例は膨大だが、調査の結果はあえて体系化していない。また企業人に形から入る口実を与えてしまうからだろう。
 日本企業が復活する秘策を尋ねたつもりだが、「人に聞くより自分で考えよ」と突き返された気がする。経営や技術の革新に手抜きは許されない。(本社コメンテーター 中山淳史)

【ハマスがロケット弾数千発 イスラエル首相「戦争状態」】
 同じ7日の日経速報メールは次のように報じた。
 【イスタンブール=木寺もも子】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは7日朝(日本時間同日正午ごろ)、イスラエルに対して多数のロケット弾を発射し、戦闘員を侵入させた。同国軍はガザへの空爆など報復に着手、ネタニヤフ首相は「戦争状態にあり、勝利する」と述べた。
 イスラエルメディアによると、南部や中部の約20カ所で戦闘が続いている。7日夕方までに100人以上が死亡、900人以上が負傷した。ハマスの司令官は声明で、作戦開始からの20分間で5000発のロケット弾を打ち込んだと主張した。イスラエル側は2000発以上としている。中部テルアビブなど広い範囲が標的となった。
 戦闘員の侵入、ロケット弾発射の規模ともに異例の事態。イスラエル当局によると、戦闘員は陸・海・空から侵入した。SNSでは戦闘員がパラグライダーで飛ぶ様子や、ろ獲されたイスラエル軍戦車の動画などが拡散されている。
 イスラエル軍は、市民らが人質としてガザに連れ去られたと認めた。ハマス幹部は中東の衛星放送局アルジャズィーラに対し、人質にはイスラエル軍上級将校も含まれると主張した。
 パレスチナ側によると、イスラエルの反撃でガザでは198人が死亡、1600人以上が負傷した。
 イスラエルは臨戦態勢を宣言し、予備役の招集を決めた。ネタニヤフ氏は動画メッセージを公開し「敵はこれまで知らなかったような代償を支払うことになる」と報復姿勢を強調した。
 ガラント国防相はハマスの行動について「重大な過ちを犯した。イスラエル軍は全ての侵入地点で敵と戦っている」と説明した。イスラエルでは7日はユダヤ教の連休中だった。奇襲を許したことで、情報機関など政府の責任論も浮上しそうだ。
 イスラエルは近年、パレスチナ問題を巡って対立していた周辺アラブ諸国との関係改善を進めていた。2020年にアラブ首長国連邦(UAE)などと国交を正常化し、地域大国サウジアラビアとも交渉している。パレスチナ側には取り残されているとの焦りがある。
 ハマスの司令官は声明で、エルサレムのイスラム教聖地にある「アルアクサ・モスク」をイスラエルの入植者が「冒瀆(ぼうとく)した」と非難した。10月に入り、イスラエル側の延べ数千人がモスクに侵入したと報じられている。同モスクのある「神殿の丘」はユダヤ教の聖地でもあり、たびたび争いになっている。
 「銃を取れ。今がその時だ」などとも述べ、アラブ人やイスラム教徒に呼びかけた。イスラエルと対立する過激派「イスラム聖戦」はハマスとの共闘を表明した。
 在日イスラエル大使館は7日、同国のバルカト経済産業相が予定していた来日を取りやめたと明らかにした。
欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表はX(旧ツイッター)で「ハマスの攻撃を明確に非難する。恐ろしい暴力を直ちに止めなければならない」と強調した。
 米国家安全保障会議(NSC)のワトソン報道官は「イスラエルの市民に対するハマスの攻撃を非難する」とした。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)がイスラエルの国家安全保障顧問と連絡を取っていることも明らかにした。

ハマスとは
 1987年、パレスチナ住民の反イスラエル闘争(インティファーダ)が広がった際に結成されたイスラム武装組織。イスラエルとの和平に反対し、同国に対する武力攻撃を繰り返している。欧米ではテロ組織に認定されている。
 2006年にはパレスチナ評議会選で勝利し、その後ガザを武力制圧。実効支配している。ガザはイスラエルが設置した壁やフェンスに囲まれており、移動の自由がないことから「天井のない監獄」と呼ばれている。福岡市をやや上回る程度の広さに約200万人が暮らしている。

【マンション修繕積立金、引き上げ幅抑制 国交省が指針】
 8日の日経速報メールは次のように報じた。
 国土交通省はマンションの修繕積立金を巡り、積み立て途中での過度な引き上げにつながらないよう目安を設ける。負担金の増額幅が大きすぎて支払いが困難になるケースが生じているため、引き上げ幅に一定の制限をかける。管理組合に計画的な積み立てを促す。
 管理組合が修繕計画をつくる際に参考にする国交省の指針を改める。マンションの規模ごとに積立額の基準を示すガイドラインなどにも負担金の目安を盛り込む方針だ。
国交省によると、指針に強制力はないものの、ほとんどの管理組合は指針をもとに計画を立てているという。
 一般的なマンションは築年数の経過に伴い、壁面や柱などを大規模に修繕工事する。現在、多くのマンションで修繕のための積立金の増額幅が大きすぎて住民合意ができないトラブルが相次ぐ。
 2001年に竣工したあるマンションでは計画当初に比べ、最終段階で積立金が5.3倍になる徴収計画をたてた。13年に管理組合の総会で値上げを決めようとしたところ、一部から強い反対を受けて断念。資金不足で修繕工事は延期された。
国交省によると、修繕計画の当初から最終年までの増額幅は平均3.6倍で、10倍を超える事例もある。
国交省が5年に1度実施するマンション総合調査では、18年度に修繕計画に対して積立金が不足するマンションは34.8%に上った。前回調査の13年度の16%から倍増した。足元では資材費や人件費の上昇でさらに増えている可能性がある。
 古いマンションほど管理費と修繕積立金の滞納割合が高い。1969年以前に竣工したマンションのうち42.9%で滞納があった。2015年以降のマンションよりも27.5ポイント高い。計画通り集金できなければ、修繕工事の遅延などが相次ぐ恐れがある。
こうした問題を受け、国交省は積立金の引き上げ幅の目安を示す必要があると判断した。上げ幅について管理組合の決議が成立した範囲などを調査し、妥当な水準を検討する。
マンション管理に地方自治体がお墨付きを与える制度の基準も見直す。負担金の上げ幅を適正に抑えているかを認定の審査項目にする案がある。
 政府は22年4月、修繕計画や積立金の状況を自治体が確認する仕組みを設けた。認定を受けた築20年以上の建物は居住者の固定資産税が減税対象となる。計画的な積み立てに向けて新築物件を対象に加えることも視野に入れる。
国交省は10月末にも有識者による作業部会を設置し、24年夏までにこうした対策をまとめる方針だ。
 積立金が不足するのは積立金の徴収方法に要因がある。徴収法は修繕計画に基づいて毎月同じ額を徴収する「均等積立」と、段階的に額を増やす「段階増額積立」の2つが主流だ。国交省は管理組合の決議がいらない均等積立を推奨してきた。
 これに反して10年以降に完成した築年数が浅い物件では67.8%が増額積立だった。デベロッパーなどが分譲時に安く売り出すため、当面の経費が少なく見える増額積立が採用されやすく、大規模修繕が滞るリスクを高めている。
 建物の老朽化が相次げば影響は深刻だ。外壁の剝落や鉄筋の腐食などが進むと居住環境を維持できなくなり、建物周辺の安全も保てなくなる。42年末には全国で築40年以上のマンションがおよそ445万戸まで膨らむとの試算もある。

【ラグビーW杯【速報中】日本、アルゼンチンに敗れる…2大会連続の決勝トーナメント進出を逃す】
 テレビ中継が終わるや、新聞のなかで読売新聞が8日の22時ころ一番乗りで日本敗退を報じた。書きかけのような文面が、却って臨場感を持つ。
 ラグビー・ワールドカップ(W杯)フランス大会で日本代表(世界ランキング12位)は日本時間8日午後8時から、アルゼンチン(同9位)との1次リーグ最終戦に臨む。勝てば2大会連続の準々決勝進出、負ければ敗退の大一番だ。
ラグビーW杯【速報中】日本がアルゼンチンにトライを許し、8点差に広がる…負ければ敗退
 アルゼンチンは、アグレッシブな攻撃を持ち味としている。個々の体の強さを生かし、ボールを持てば果敢に守備ラインをこじ開けようとしてくる。
 特に日本が警戒すべきなのは「オフロードパス」だ。タックルされながら味方につなぐプレーのことで、相手の守備陣形が整う前に次の攻撃を仕掛けられる。前回の日本大会でも、「ジャッカル」などの言葉とともに流行した。アルゼンチンはオフロードパスを巧みに使える選手が多く、たたみかけるように前へ前へと進んでくる。ここまでの3試合ではいずれも、相手よりオフロードパスの数が多かった。
 守備での対策としては、相手1人に対して2人がかりで止める「ダブルタックル」がある。主に1人目が低く突き刺さって相手を倒しにいき、2人目は上半身を抱えて、ボールをつながせないようにする。
 ただ、気をつけたいのが「ハイタックル」の反則だ。相手の肩より高い位置に当たるタックルは、危険なプレーと判断される。オフロードパスを阻止するためのタックルは相手の上半身を狙うため、少しずれただけで反則になるリスクがある。近年はハイタックルに厳しい判定が下されることが多く、今大会も審判が注意深く見ている。

【50年前のエネルギー転換、日本は何を学ぶか エネルギー選択の時 石油危機50年①】
 9日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 【この記事のポイント】
・エネルギー転換を迫られた1973年は現在の相似形
・太陽光発電など脱炭素の主力技術は中国が握る
・日本は省エネ大国になったが原発事故で振り出しに
 1973年の第1次石油危機から50年となった。第4次中東戦争にあわせて産油国が発動した石油戦略は消費国にエネルギー転換を迫るきっかけになった。ロシアのウクライナ侵攻とパレスチナの衝突再燃、加速する脱炭素の潮流に直面する今日の世界は、50年前から何を学ぶべきだろうか。
 オランダ・ロッテルダム港の突端、北海に面した一角で工事の準備が始まった。国際石油資本(メジャー)の英シェルが計画する、欧州最大級のグリーン水素の製造工場の予定地だ。洋上風力発電を使い、2025年にも生産を開始する。
 関連企業の集まりである水素協議会によれば、23年5月時点で計画中の水素プロジェクトは1千件超にのぼる。1年前と比べ5割増えた。30年までに3200億ドル(約47兆円)の投資が見込まれる。
 ロシアのウクライナ侵攻後、欧州を起点に広がったエネルギー危機と脱炭素のうねりは世界に構造転換を迫る。変革の奔流から見えてくるのは、技術で先行し、市場で優位に立つ国家と企業の大競争だ。
 脱炭素競争、主力技術は中国の手中に
 別の数字がある。国際エネルギー機関(IEA)によると、太陽光発電パネルの生産シェアは中国が世界の8割超を占める。風力発電機は中期的に6〜8割を握る。電気自動車(EV)向け電池の4分の3は中国企業が生産する。
 脱炭素の主力技術はすでに中国の手中にある。供給網を確保する経済安全保障や資源外交の重要性は、深まる分断の下で、石油の世紀と変わらないどころか、むしろ重みが増す。
 安価で大量の水素が手に入らなければ製鉄業は日本に残れない。電池を安定確保する道が閉ざされれば自動車産業は窮地に陥る。脱炭素時代のエネルギー覇権をかけたせめぎ合いが過熱するなかで、日本も国の存亡をかけて立ち位置をみつけなければならない。
 そこに至る道筋をどう描くのか。そのためには50年前を振り返ってみることだ。エネルギー転換の決断を迫られた73年は、23年の相似形とも言えるからだ。
 今年4月、大阪・千里中央駅前のスーパーが、入居する商業施設の老朽化に伴い閉店した。石油危機の際に起きた、トイレットペーパーの買い占め騒動はこのスーパーで始まった。
 千里丘陵は大阪のベッドタウンとして戦後の高度経済成長の下で開発が進んだ。70年の大阪万博の会場も近い。石油危機のパニックがニュータウンから始まった意味は小さくない。
 石油危機は高度経済成長に終わりを告げた。田中角栄首相の秘書官として危機対策にあたった小長啓一元通商産業(現経済産業)次官は「石油危機は中東産の安い石油を臨海部のコンビナートに運ぶことで成し遂げた重化学工業主導の高度成長の転換点だった」と証言する。
変わらぬ化石燃料・中東依存
 石油危機後、政府は石油の調達先を中東以外に広げる脱中東、エネルギー利用を石油以外に広げる脱石油、そして徹底した省エネルギーに着手した。
 これらは成果をあげた。国の政策に基づいて電力会社が原子力発電所を建設する「国策民営」の下で、原発が次々と稼働した。単位あたりのエネルギー消費を示す、製造業のエネルギー消費原単位は90年までに73年比でほぼ半減し、世界屈指の省エネ大国になった。
 ところが原発事故で振り出しに戻った。石油の中東依存度は22年度に95%と、石油危機時の78%を上回る。11年の東京電力福島第1原発の事故で原発は信頼を失い、化石燃料依存度は9割近くに達した。73年の教訓は成果を誇るのではなく、その後の失速の原因と対策を知ることだ。これが脱炭素時代のエネルギー選択に欠かせない。

【ノーベル賞にゴールディン氏 男女の賃金格差、要因解明】
 同じ9日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 スウェーデン王立科学アカデミーは9日、2023年のノーベル経済学賞を米ハーバード大学のクラウディア・ゴールディン教授(77)に授与すると発表した。労働市場で女性が果たしてきた役割に関する歴史や、男女の賃金格差の要因解明などの研究が評価された。
 経済学賞の女性受賞者は3人目で、単独での受賞は初となる。

【関連記事】ノーベル賞ゴールディン氏「日本女性の労働参加増驚き」
 経済史や労働経済学に通じるゴールディン氏は、米国の過去200年間の歴史統計などを精査し、女性の就業率がどう変化してきたかを正確に突き止めた。従来の研究では経済発展に伴い女性の就業率は上がると単純に考えられていたが、ゴールディン氏の発見で常識は覆った。
 19世紀に工業化が進む以前、農業が主流だった時代の女性の就業率は高かった。しかし工業化に伴い在宅での勤務が難しくなると、仕事と家事を両立できなくなり就業率は低下した。女性の就業率が再び上昇するのは20世紀に経済のサービス化が進んでからで、こうした推移を「U字型」として定式化したのがゴールディン氏の発見だ。女性の就業率の推移がU字型をたどる過程は多くの先進国でみられるという。
 さらにゴールディン氏は、女性の労働参加が進まない理由についても詳しく研究した。たとえば20世紀前半には、既婚女性が教師や事務職として働き続けることを難しくする法律が女性の就業を妨げたことを明らかにした。逆に女性が避妊薬(ピル)の普及によって結婚や出産の機会を遅らせ、職業選択や教育の機会を広げたことも発見した。 
 賃金の男女間格差についての研究も有名だ。企業などの雇用主が、結婚によって離職する可能性のある女性よりも長期間の就業が可能な男性の従業員を優遇する傾向があることなどを明らかにした。
 明治学院大学の児玉直美教授は「従来のジェンダー格差に関する研究は主義や主張を前面に出すものが多かったが、ゴールディン氏は事実を突き止めることで主張に科学的基盤を与えた」と評価する。
 各国の政策に与えた影響も大きい。出産に伴い女性の収入が減る「チャイルドペナルティー」が先進国で共通する現象であることを明らかにしたのも、ゴールディン氏らによる研究だ。日本でも男性中心の長時間労働を是正したり、育児休暇を付与したりする政策を導入する根拠の一つとなっている。
 ゴールディン氏は近著で、チームで代替がしやすい仕事ほど女性も担いやすく、男女の賃金格差が小さくなる傾向を明らかにした。早稲田大学の大湾秀雄教授は「仕事に必要なスキルを標準化する『ジョブ型雇用』を推進すべき根拠にもなっており、政策現場に与える示唆は大きい」と指摘する。

【死者1500人超に イスラエル、地上戦にらみ10万人配置】
 同じ9日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 【イスタンブール=木寺もも子】イスラエル軍は9日、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの地上作戦に向け、境界に10万人を待機させていると明らかにした。イスラエル側での戦闘は続き、死者は900人を超えた。イスラエル軍のガザ空爆では600人超が犠牲となり、双方の合計死者数は1500人を超えた。

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 イスラエル軍は9日、過去最大規模の予備役30万人を招集したと発表した。同国政府は8日、正式に戦争状態に入ったと明らかにした。ただ、多くの人質を取られており、ガザ侵攻を早期に実行するかは不透明な面もある。イスラエルメディアが伝えた。
 ネタニヤフ首相は南部の自治体首長らに対し、ハマスへの報復戦を通じて「中東を変える」と述べた。首相府が9日、声明で伝えた。
 現地報道によると、兵士、民間人を含む犠牲者の数は900人を超えたうえ、さらに膨らむ恐れがある。ガザとの境界に近いイスラエル中部や南部では9日午前までに大部分の集落を奪還した。ただ、9日夜時点でもイスラエル領内の戦闘は続いているという。
 ハマスによる7日朝の奇襲以降、イスラエル側に侵入したハマス戦闘員は800〜1000人程度に上るとみられ、8〜9日にも新たに数十人の侵入があった。侵入経路の一つとみられるトンネルも見つかったという。
 イスラエル南部で攻撃が始まった7日朝まで夜通し開かれていた野外音楽イベントの会場では260人以上の遺体が見つかった。一部の人は人質に取られているとみられる。
 現地からの報道によると、ガザ地区からのロケット弾攻撃も続き、9日にはテルアビブ近郊のベングリオン国際空港の近くにも着弾した。運航に障害はないという。欧米やアジア系の一部航空会社は同空港への運航を停止している。
 イスラエルのコーヘン外相は9日、ハマスに捕らわれた人質が外国人を含む100人以上に上ると明らかにした。ハマスは人質の中にイスラエル軍高官が含まれるとしている。ハマスとの共闘を表明した過激派「イスラム聖戦」も30人以上を捕らえていると主張している。
 イスラエル軍は8日夜から9日未明にかけてもガザへの空爆を続け、500カ所以上を攻撃した。パレスチナ側の当局によると、これまでに680人以上が死亡、約3700人が負傷した。難民キャンプが攻撃を受けたとの報道もある。
 激しい空爆は9日夜も続いた。国連によると、8日夜時点で12万人以上のガザ住民が避難を余儀なくされている。
 イスラエルのガラント国防相は9日、ガザ地区を「完全包囲」すると表明した。電気や水、食料の供給を止めるとしている。ガザ地区には約200万人が住んでおり、人道状況が懸念される。
 ハマスは9日、イスラエルの空爆によって人質4人が死亡したと主張した。
 ロイター通信は9日、イスラエルで収監されているパレスチナ人と人質の交換に向け、カタールがハマスとの間で仲介交渉を行っていると報じた。イスラエルメディアによると、同国側は否定した。

【全銀ネット障害、140万件超に影響 完全復旧めど立たず】
 10日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は10日、銀行間送金システムで同日発生した障害で少なくとも140万件の送金に遅延などの影響が出たと明らかにした。各金融機関と同システムを結ぶコンピューターの更新作業に伴う不具合が原因で、完全復旧のメドは立っていない。
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 140万件はシステムの不具合が起きた三菱UFJ銀行やりそな銀行など11金融機関から他行宛ての振り込み(仕向け)の件数。11金融機関は他の金融機関からの振り込み(被仕向け)も受けられなくなったため、こうした件数も含めると全体の影響は300万件超にのぼる公算が大きい。
 障害が起きたのは1000以上の金融機関が接続し、企業や個人間の送金インフラである全国銀行データ通信システム(全銀システム)。7〜9日の3連休中に14金融機関で同システムと各金融機関のシステムを接続する「中継コンピューター」を更新し、うち11金融機関で銀行間手数料をチェックする機能で不具合が発生した。
 全銀ネットは「バックアップ手段」を使って100万件の送金を処理したが、40万件については処理が11日までかかる可能性があるとしている。11金融機関では銀行間の振り込みだけでなく、証券口座への出入金にも影響が出ている。
 システムの不具合が発生したのは三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、山口銀行、北九州銀行、もみじ銀行、日本カストディ銀行、JPモルガン・チェース銀行、商工組合中央金庫の11金融機関。他行宛ての振り込みや他行からの着金ができなくなっていた。
 全銀システムは平日午前8時半から午後3時半まで稼働する「コアタイムシステム」と、それ以外の時間に対応する「モアタイムシステム」で構成される。不具合が発生した銀行によれば、今回の障害で影響が出たのはコアタイムのみだという。三菱UFJ銀やりそな銀などでは、モアタイムの時間帯に送金できるようになった。
 10日は他の日に比べ事業会社の決済が集中する「5・10日(ごとおび)」にあたり、決済件数は通常の2〜3倍におよぶともされる。同日中に入金できなければ、代金の支払いなど企業間の商取引に大きな影響が出る可能性があった。
 企業や個人同士の決済の根幹となる全銀システムで顧客取引に影響が出る障害が起きたのは1973年の稼働以来初めて。

【ヨドバシ宅配拠点4倍に 当日配送拡大、EC競争激しく】
 同じ10日の日経速報メールは次のように報じた。
 ヨドバシホールディングス傘下のヨドバシカメラは2028年までに、電子商取引(EC)の配送拠点を現在の4倍の100カ所に増やす。200億円弱を投じ当日配送できる地域を全国で広げる。一部店舗を取得したそごう・西武の商品も順次扱う計画だ。迅速な配送を武器に顧客を奪い合うネット通販間の競争が熱を帯びてきた。
 ヨドバシは消費者の自宅などの配送先に届ける中継地点の役割を担う配送拠点を大阪や福岡、札幌や仙台など主要な大都市部で増設する。現在の当日配送エリアは東京23区のほかは、横浜や大阪など大都市でも一部地域にとどまるが、配送拠点の増設で23区外や大都市郊外などにも広がる見通しだ。
 ECサイトの「ヨドバシ・ドット・コム」で注文を受けた商品は川崎市など全国5カ所に構える物流センターから出荷する。荷物をさらに配達地域別に集約し、顧客宅に近い配送拠点から届けるようにする。
 現在、1日に配達可能な荷物数に上限を設けており、それを超えると翌日の配送しか受け付けない仕組みがある。今回の投資でそうした当日配送のボトルネックも大幅に解消する見通しだ。
 ヨドバシはそごう・西武の一部店舗を取得し百貨店に出店する計画を持つ。そごう・西武は、百貨店の商品をヨドバシのECでも取り扱う計画で拡販を狙う。そごう・西武のECサイト「e.デパート」では衣料品や食料品のほかアート作品や高級ブランド食器など約3万点を取り扱う。
 日本経済新聞社が実施した「小売業調査」によると、ヨドバシの22年度の通信販売売上高は2099億円と、アマゾンジャパンとジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)に次ぐ3位。
 ヨドバシは家電以外に食料品や書籍、スポーツ用品など幅広い分野の商品を約800万点以上扱う。商品点数の多さと一部店舗で24時間受け取りができる実店舗との連携が強みだ。全体の売上高に占める通信販売の比率は約3割だが、26年までに同5割まで高める目標を掲げる。
 ECは当日配送など速達性が顧客満足度に直結する。アマゾンジャパンも23年中に宅配仕分けを担う拠点を増やすなど、翌日の配送が可能な地域を拡大する。
 ヨドバシはトラック運転手不足といった物流の「2024年問題」にも対応する。人手確保の対応策が正社員化だ。アマゾンが個人事業主と直接契約して配送業務を委託しているのに対し、ヨドバシは全て同社の社員が物流を担っている。
 正社員として安定雇用し、月20万5000円以上の基本給に加えて年2回の賞与や社会保険、退職金などの福利厚生を提供する。勤務時間を柔軟に選べるようにするなどの施策で「必要な人手は確保できている」(ヨドバシ)という。
 速達性以外の強みも打ち出せるようにする。ヨドバシカメラの藤沢和則社長は「ネットのチャット上での人工知能(AI)を活用した接客など、IT(情報技術)を駆使した新しい買い物体験を提供し競合と差異化したい」としている。(坂本佳乃子)

【中東、高まる地政学リスク ガザ完全封鎖で地上戦の恐れ】
 11日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 【ウィーン=田中孝幸、ドバイ=福冨隼太郎】イスラエルは10日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに対する本格的な報復攻撃に乗り出した。ハマスの拠点など1300カ所以上を空爆し、ガザの完全封鎖を宣言した。中東和平の実現がさらに遠のき、地域の融和に向けた動きが逆戻りしかねない。
 「ハマスが経験することは困難でひどいものになるだろう。我々は中東を変えるつもりだ」。ネタニヤフ首相は9日、ハマスの奇襲攻撃を受けた同国南部の市長たちに強調した。
 同国政府は7日夜の治安閣議で「ハマスの軍事力、統治力を破壊する」と決定した。史上最大の30万人の予備役を動員し、ガザへの水や食料、電気、燃料の供給を断つ「完全封鎖」を狙う。イスラエル軍はガザとの境界に10万人規模の部隊を配備したことを明らかにした。
 戦闘による双方の死者数は10日までに1700人を超え、少なくとも11人の米国人の死亡も確認された。イタリアやウクライナも自国民が犠牲になったと発表した。イスラエル軍は同日、ハマスの戦闘員が侵入した同国南部のガザとの境界一帯を制圧下に置いたと発表したが、一部で衝突が続いているとみられる。
 今後はイスラエル軍がガザへの地上侵攻に踏み切るかが焦点となる。
 米メディアのアクシオスはネタニヤフ氏がバイデン米大統領に地上部隊の投入以外に選択肢はないと伝えたと報じた。ガザで大規模な地上戦に発展すれば兵員の犠牲が拡大し、一般市民や外国人を含む人質の生命も危ぶまれる事態になる。親パレスチナのアラブ諸国の反発も避けられない。
 ハマスがイスラエルに奇襲をしかけた7日はユダヤ教の連休中だった。世界有数の情報機関「モサド」を抱える同国政府は攻撃を事前に予見できず、900人を超える犠牲者を出し100人超の人質をとられた。
 ハマスによる攻撃の背景には、米国の仲介でサウジアラビアとイスラエルの関係正常化に向けた交渉が進むことへの焦りがあったとみられる。パレスチナ奪還を掲げるハマスは、両国が関係改善に向かうことでパレスチナ問題が棚上げされることに危機感を強める。
 イスラエルでは22年12月、対パレスチナ強硬派の極右政党を含むネタニヤフ政権が発足した。テロ組織討伐を名目にパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に大規模攻撃を行うなどパレスチナとの関係が悪化していた。
 ブリンケン米国務長官はハマスによるイスラエル攻撃について、同国とサウジとの関係正常化交渉を妨害する狙いがあったとの見方を示した。「正常化に反対しているのはハマス、ヒズボラ、イランだ」と指摘した。
 地上戦の有無に加え、今回のハマスの攻撃や今後の情勢へのイランの関与も焦点になる。イランはハマスに武器や資金を供与し活動を支援してきた。イスラエルとサウジの接近を避けたい思惑もハマスと一致する。
 イラン国営通信によると、同国の最高指導者ハメネイ師は10日の演説で「シオニスト(イスラエル)は自らの行動によってこの厄災をもたらした」と強調した。ハマスの攻撃を「勇敢な行動」とも指摘した。ライシ大統領はハマスの指導者ハニヤ氏と電話し「イランは常にパレスチナの人々の側に立つ」と伝えた。
 米政府高官は9日、イランの関与について「決定的な証拠はまだ見つかっていない」と記者団に説明した。攻撃にイランが関わったとすれば米国の同盟国であるイスラエルとの対立は決定的になる。中東情勢の緊迫度は格段に上がり、米軍のさらなる増派も想定される。
 ロイター通信によると米軍制服組トップのブラウン統合参謀本部議長は9日、「我々は(紛争が)拡大することを望んでいないという強いメッセージを送りたい」と述べ、イランに情勢への関与を控えるように求めた。
 米国防総省は8日、原子力空母ジェラルド・フォードを東地中海に向かわせると発表した。隣国レバノンの親イラン武装勢力ヒズボラが戦闘に参加するのを抑止するため、地域の戦闘機部隊を増強する。米メディアによると、空母打撃群は現地時間10日に東地中海に到着する見通しだ。
 中東では近年、イスラエルとアラブ諸国以外にも、中国の仲介によるサウジとイランの外交正常化など和解に向けた動きが続いてきた。イスラエルとハマスの衝突によって融和ムードが後退し、地域全体の対立が再燃する恐れも出てきている。

【サムスン営業利益78%減 7~9月、半導体苦境は底打ちか】
 同じ11日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 【ソウル=細川幸太郎】韓国サムスン電子が11日発表した2023年7〜9月期の連結決算速報値で、営業利益は2兆4000億ウォン(約2650億円)と前年同期と比べて78%減だった。主力の半導体メモリーの価格が下げ止まったことで前四半期比では3.6倍の増益となり、業績は底打ちしたもようだ。
 売上高は前年同期比13%減の67兆ウォンだった。前四半期比では12%増と、売上高も回復に転じた。全社の純利益や事業部門別の収益は10月末に発表予定の決算確報値で公表する。
 サムスンはメモリー市況の急落に伴って23年1〜3月期、4〜6月期ともに営業利益が前年同期比95%減だった。利益水準は1兆ウォンを下回り、14年ぶりの低収益に落ち込んだ。7〜9月期は2兆4000億ウォンまで回復しており、今回の半導体不況での赤字転落は免れた。
 事業別に見ると、半導体部門の赤字をスマートフォンやディスプレーなど他部門の黒字で補う構図は変わらない。
 韓国ハナ証券の推定では、7〜9月期の半導体部門の営業損益は4兆ウォンの赤字(前年同期は5兆1200億ウォンの黒字)だった。4〜6月期(4兆4000億ウォンの赤字)よりは改善したものの苦境は続いている。
 韓国SK証券によると、サムスンは代表的なメモリー製品のDRAMを22年比で30%、NAND型フラッシュメモリーを40%、それぞれ減産しているという。韓国SKハイニックスと米マイクロン・テクノロジーを合わせた大手3社の大幅減産によって市場在庫も減少して販売価格は底打ちした。
 ただ、スマホやパソコンなどの需要は依然低調なため、半導体市況のV字回復を見込む証券アナリストは少ない。人工知能(AI)用半導体など一部で好調分野はあるものの、サムスンの半導体部門が四半期だけで1兆円規模の利益をあげていた22年上半期の水準に回復するのは時間がかかる見通しだ。
 スマホやディスプレー、家電の各部門の業績はほぼ前年同期並みで、全社業績をけん引するほどの収益力はない。サムスンの主要4部門はいずれも中国企業との競争にさらされており、長期的な収益低下傾向が続いている。

【日本版vsガラパゴスの行方 「良いモノ高く」待ったなし】
 同じ11日の日経速報メールは次のように報じた。
 利用頻度の高い気になる言葉がある。「日本版」だ。海外の雑誌が上陸した際などに使われてきたが、最近では制度作りで目立つ。代表例が米疾病対策センター(CDC)の「日本版CDC」法で、新型コロナウイルスの感染拡大で対応遅れとの教訓から成立した。
 さらに性犯罪歴の確認のための「日本版DBS」、大学スポーツの改革を目指す「日本版NCAA」など引きも切らない。どれも重要なテーマだが、海外モデルにならおうとする姿は、自立性が低下している日本の現実を象徴しているようだ。
 歴史を振り返れば、遣隋使や遣唐使、明治の岩倉使節団など先進国・地域の文化や舶来の制度を取り入れることを続けてきた。スポーツやビジネス、ライフスタイルまで「日本版」として発展させてきたわけだから、「いまさらそこを突っ込んでどうする」と逆に突っ込まれるかもしれない。
 産業界では1980年代まで自動車にしても家電製品にしても、改善と改良を重ねた日本版モデルが世界の先頭を突き進んだ。それが今では海外の家電量販店に日本製品は少なく、ある在米日本人によると「日本はまだ電気自動車(EV)を造っていないのか」と真面目に質問される始末だそうだ。GAFAや米テスラが覇権を握り、後手に回る日本の姿が日本版の乱立に重なってしまう。
卵サンドやファミマソックスが脚光
 実際にスイスの国際経営開発研究所(IMD)がまとめた2023年の世界競争力ランキングで、日本は35位とさえない。こう見ると厳しい現実が立ちはだかるが、最近は日本の経済・社会を巡る価値が再評価される動きも出ている。インバウンド(訪日外国人)の増加を背景とした日本のモノ・サービス・コンテンツの活躍だ。
 例えばコンビニでは、ふわふわした食感の「卵サンド」が大人気に。海外にこうした食品はあまりなく、ローソンでは前年比5.3倍の売れ行きで既存売上高を下支えする。
 意外に人気なのがファミリーマートの靴下「ファミマソックス」で、店舗カラーの緑などをあしらっている。監修したのは世界的に活躍するデザイナーの落合宏理氏だ。「ファミマの店舗カラーは世界的に知られている。そこを狙い、デザインを手がけた」。国内中心だったコンビニもじわりと世界で知名度がアップし、独自の靴下が「国際商品」になったわけだ。
 インバウンドを魅了するのは食にとどまらない。例えば祭りだ。全国の祭りを支援するオマツリジャパン(東京・練馬)によると「日本では大小含めて年間30万件の祭りが開催され、世界的にも圧倒的な数」という。森羅万象に「神」を見いだすからか、祭り好きの国民性であることは間違いない。ローカリズムの極致とはいえ、世界に類を見ない「奇祭」も多い。デジタル化やグローバル化で情報が行き渡る世界で、レアなイベントとして価値が高まっている。
「出島モデル」が鍛えたエンタメ
 グローバル化しつつも地域性・多様性が強く、内向きの巨大なガラパゴス経済圏を育む日本。娯楽産業でも顕著だ。「エンタメビジネス全史」(日経BP)によると、多くの国・地域で米国映画のシェアは8〜9割あるが、日本は6割が国産。しかも海外作品に対する規制がほぼないのに「草の根のようにクリエーティブな制作陣が育ち、消費者の嗜好性が育まれている」と著者の中山淳雄氏は話す。
 同書によると、音楽も世界市場はワーナー、ユニバーサル、ソニーの3社が7割を占めるが、日本では3割ほどにとどまる。邦楽シェアが圧倒的で、大小のレーベルがひしめきあっている。CD市場のシェアも約4割の1800億円が日本という。
 ネット配信が遅れている事情もある一方、日本の音楽市場ではアイドルビジネスの存在が大きい。CDは音楽を聴くと同時に、趣向を凝らしたジャケットという「装飾品」であり、コンサートやファンイベントの予約券を入手する別の価値を持つ。
 日本のマンガやアニメの存在感は世界的にも大きい。「外のコンテンツを取り入れつつ、自国の独自性を守る『出島モデル』が日本では機能している」(中山氏)。普段は真面目なのに祭りやマンガなど遊びの経済が発達している。これは仮説だが、日常の規律が厳しいからこそ「ハレとケ」の違いが生まれ、独自のエンタメ文化を強くしてきたのかもしれない。
 日本発のプレミアム・ガラパゴスを
 海外モデルを追いかける日本版の広がりと、ガラパゴス経済圏が併存する日本。ピーター・F・ドラッカー経営大学院(米カリフォルニア州)の山脇秀樹教授は「日本の産業界の地位は間違いなく低下したが、文化・風土に根ざしたきめの細かい領域は世界的に誇れる」と話す。中でも「課題解決型の発想」を評価する。例えば公共トイレの壁にある荷物用フック、整列して手に取りやすい傘置き場、効率よく収容する立体駐車場のターンテーブルなどだ。
 問題は独自の発想がありながら、国際競争の場で生かせていない点だ。「良いモノを安く」との考えが根付いたまま、新たな付加価値を発揮できていない。山脇氏は「グローバルな人々の交流がこれだけ広がると、あっという間にマネされてしまう。(エンタメや課題解決の着眼点など)無形資産を守るために『良いモノは高く』という発想への転換が不可欠」と指摘する。日本版で満足せず、日本発のプレミアム・ガラパゴスを伸ばしていく時期だ。


【旧統一教会の解散請求、12日決定へ 司法判断へ最終局面】
 同じ11日の日経速報メールは次のように報じた。
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡り、文化庁は11日、宗教法人審議会(文部科学相の諮問機関)を12日に開くと発表した。教団に対する解散命令請求について盛山正仁文科相が説明し、委員らの意見を聞く方針。
 同庁は委員の了承を得た上で請求を正式決定し、13日にも請求の手続きを進める方向で調整している。11カ月に及んだ教団に対する調査は最終局面を迎える。
 宗教法人法は「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」があった場合、裁判所が解散を命令できると定める。安倍晋三元首相銃撃事件後、教団の霊感商法や高額献金の問題が改めて注目され、同庁は解散命令の要件に該当する疑いがあるとして2022年11月に調査を始めた。
 宗教法人法に基づく質問権の行使は23年7月まで計7回にわたり、組織運営や財産などに関する資料の提供や質問への回答を求めた。並行して高額献金被害者らへの聞き取りを続けた文化庁は、解散命令の要件に該当すると判断。請求に当たって同法は宗教法人審議会への諮問を求めていないが、宗教関係者や専門家の委員らの意見を聞いて慎重に手続きを進める狙いがある。
 審議会の意見を踏まえて解散命令が請求されると、東京地裁が非訟事件手続法に基づいて非公開で審理する。地裁の決定内容に不服があれば、高裁や最高裁で争われる。
 仮に請求が認められ、教団から法人格が剝奪された場合、清算人が選定され、法人の財産を整理する。教団への税制上の優遇はなくなるものの、任意団体としての活動は続けられる。
 教団の広報担当者は取材に「(09年のコンプライアンス宣言以降は)社会的、法的に問題がある行動をしないよう指導を徹底しており、解散命令を請求されるような活動は教団としておこなっていない」とコメントしている。教団側は解散命令が請求されれば争う姿勢を示すとみられる。
 教団への調査を巡っては文化庁が9月、質問権の行使に対して教団が回答を拒否したとして、行政罰の過料を科すよう東京地裁に通知した。同庁によると、重複を除く500項目のうち100項目以上の回答がなかった。教団は10月6日、「質問権行使自体が違法」などと反論する陳述書を東京地裁に送付し、過料を巡っても全面的に対立する構図となっている。

【エクソン、米シェール大手を8.8兆円で買収合意】 
 同じ11日の日経速報メールは次のように報じた。
 【ヒューストン=花房良祐】石油メジャーの米エクソンモービルは11日、米シェール大手のパイオニア・ナチュラル・リソーシズを買収すると発表した。買収額は約595億ドル(約8兆8000億円)。新型コロナウイルス禍からの経済再開後、化石燃料の収益力が高まっており、シェールの事業基盤を再構築する。
 エクソンは株式交換でパイオニア株をすべて取得し、24年前半の買収完了を目指す。パイオニアの株主は1株あたり約2.3株のエクソン株を受け取る。1999年にエクソンとモービルが合併して以来、同社にとって最大の買収となる。
 パイオニアはスコット・シェフィールド氏が1997年に創業し、米国のシェール革命をリードしてきた。テキサス州西部のシェール鉱区「パーミアン盆地」で有数の生産量を誇り、日量60万バレル(原油換算)以上の石油・天然ガスを生産する。
 買収によりエクソンの石油・天然ガスの生産量は2割程度多い日量約450万バレル(原油換算)となる。パーミアンは米国のなかでもシェール生産が好調な地域で、生産コストは低い。シェブロンなど他の石油メジャーも生産を増やしている。
 世界最大の民間石油会社のエクソンは、欧州の石油メジャーに比べて太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーへの投資に慎重で、米国のシェールや南米の海底油田、世界各地の液化天然ガス(LNG)プロジェクトに積極的に投資してきた。再生エネより収益率が高い化石燃料への投資を当面続ける方針だ。
 22年のロシアのウクライナ侵攻を契機に、世界各地でエネルギー安全保障の重要性が再認識されている。加えて新型コロナ禍からの経済回復で、原油相場に上昇圧力がかかりやすくなり、各社の化石燃料の上流事業は大きな収益をあげている。
 このため、再生エネに積極的だった欧州の石油メジャーの間では事業戦略を見直す動きが浮上している。英シェルは再生エネの投資拡大にブレーキをかけて、LNGの生産を強化する方針を掲げた。

【藤井聡太八冠が誕生、史上初の独占 将棋王座戦を制す】
 同じ11日の日経速報メールは次のように報じた。
 第71期将棋王座戦(日本経済新聞社主催、東海東京証券特別協賛)の五番勝負第4局が11日、京都市のウェスティン都ホテル京都で指され、午後8時59分、138手で後手の挑戦者、藤井聡太七冠(21)が永瀬拓矢王座(31)を破り、3勝1敗で王座のタイトルを奪取した。藤井新王座は将棋界に8つあるタイトル全て(八冠)を同時に制覇する史上初の偉業を成し遂げた。
 対局を終えた藤井八冠は記者会見で「このような結果を出せるとは自分でも思っていなかった。そのことはうれしくおもう」と話した。1996年、当時の全冠に当たる七冠を独占した羽生善治九段(53)以来の全冠制覇となったことを問われると、「羽生先生の場合はその後もずっとトップとして活躍しておられる。私自身も、これからも長く活躍していきたい」と今後の抱負を語った。
 将棋のタイトルはほかに竜王・名人・王位・叡王・棋王・王将・棋聖があり、藤井八冠は今回の王座戦を含め登場した18回のタイトル戦全てを制している。21歳2カ月での王座獲得は最年少記録。4連覇中だった永瀬前王座は、5連覇が条件の永世称号「名誉王座」の獲得を目指したが、成らなかった。
 将棋界で三冠以上の全冠制覇を達成するのは升田幸三実力制第四代名人、大山康晴十五世名人、羽生九段に次いで4人目。藤井八冠はプロデビューから7年で羽生九段を超える金字塔を打ち立てた。
 詰め将棋で鍛えた終盤力を武器に早くから逸材の呼び声が高く、読みの速さ、深さはトッププロの中でも群を抜く。プロ入り前から将棋AI(人工知能)を研究に取り入れ、最先端の戦型にも詳しい。
 藤井八冠は2002年愛知県瀬戸市生まれ。16年、史上最年少14歳2カ月で四段昇段を決めプロ入り。デビューから連勝を続け、17年には歴代最多の29連勝を記録。「藤井フィーバー」を巻き起こした。
 8割を超える高い勝率を維持し、20年の棋聖戦では史上最年少の17歳11カ月で初タイトルを獲得した。21年にはタイトル通算3期の規定により最高段位の九段に昇段。23年6月には20歳10カ月で名人を獲得し、最年少名人の記録を約40年ぶりに塗り替えている。
 藤井八冠の活躍はファンの裾野を広げ、将棋界に新たなスポンサーを招き入れている。不二家は叡王戦を主催し、東海東京証券(王座戦)の他、伊藤園(王位戦)、綜合警備保障(ALSOK、王将戦)、コナミグループ(棋王戦)などが特別協賛社としてタイトル戦を支援する。
 サントリー食品インターナショナルが主催する準公式戦「オールスター東西対抗戦」、立飛ホールディングスが特別協賛する公式戦「達人戦」といった新棋戦も生まれた。藤井八冠個人とは不二家、サントリー食品インターナショナル、日本AMDがスポンサー契約を結ぶ。
 個人スポンサーの契約金は公表されていないが、22年に藤井八冠が獲得した賞金・対局料は1億2205万円だった。23年は、羽生九段が1995年に獲得した史上最高額1億6597万円を上回るとみられる。
日本将棋連盟会長・羽生善治九段の話
 継続した努力、卓越したセンス、モチベーション、体力、時の運、すべてが合致した前人未到の金字塔だと思います。今後も将棋の更なる高みを目指して前進を続けられることを期待します。
藤井八冠、辛抱実り大逆転
 藤井聡太七冠が八冠を達成した王座戦五番勝負第4局の将棋は、両者得意の戦型である「角換わり」で始まった。序盤早々、永瀬拓矢王座が23手目で▲4五桂と動き出した。事前に想定した展開になったとみられ、永瀬王座は時間をほとんど使わずに指し進めた。一方の藤井七冠は長考を繰り返し、一時は消費時間に3時間の差がついた。
 その後、永瀬王座が2時間超の長考の末に指した▲7四歩(43手目)から、局面が大きく動き始めた。主導権を握った永瀬王座は、長期戦辞さずの戦い方で若干のリードを保つ。しかし藤井七冠も辛抱を重ねて守り続け、じりじりと形勢が接近して一進一退の攻防に入った。
 終盤は二転三転、手に汗を握る展開となった。藤井七冠が先に5時間の持ち時間を使い切って1手1分以内に指さなければならない1分将棋に突入したところで、それまでの辛抱が実って逆転に成功。ところが明快な決め手を逃し、今度は永瀬玉が寄らなくなって再逆転となった。
 ついで持ち時間を使い切った永瀬王座だが、着実に攻めて藤井玉をあと一歩まで追い詰めた。藤井七冠の投了間近と控室の見方が一致した最終盤、永瀬王座の▲5三馬(123手目)が痛恨の落手。逆に自玉が安全になった藤井七冠が、永瀬玉を確実に仕留めた。
 解説の村田顕弘六段は「序盤、永瀬王座が前例のない新手を出した。藤井七冠も正確に対応して、難所を乗り切ったように見えたが、永瀬王座の研究が深くペースを握った。苦しくなった藤井七冠は時間を惜しまずに辛抱。それが実り、永瀬王座も焦る展開になった。終盤も激戦が続き、二転三転する大熱戦だった」と講評した。

【イスラエル、挙国一致政権を樹立へ 地上侵攻に備え】
 12日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 【イスタンブール=木寺もも子】イスラエルのネタニヤフ首相は11日、中道右派野党を率いるガンツ前国防相と挙国一致政権をつくることで合意した。同国メディアが伝えた。司法改革などの争点を棚上げし、イスラム組織ハマスとの本格的な地上戦に備える。
 両氏の共同声明によると、挙国一致政権を樹立するほか、通常の内閣とは別にネタニヤフ氏、ガラント国防相、ガンツ氏で構成する小規模な「戦争管理内閣」をつくる。同内閣には元国軍トップら専門家もオブザーバーとして加わる。
 両氏はハマスとの戦闘が続く間、議会で無関係の法案審議を進めないことや政令を出さないことでも合意した。政府はハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻を辞さない構えを示している。
 イスラエルの内政は直近まで混乱していた。裁判所の権限をそぐ司法制度改革は激しい反発を受け、大規模なデモが続いた。さらにハマスによる攻撃を事前にエジプトから伝えられながら、十分に取り合わなかったとの報道もある。
 主要野党との協力で政権を揺るがすこうした対立にいったん蓋をしたうえ、大規模な軍事行動に向けて政権の正統性を高める。
 ただ、全ての野党が挙国一致政権に加わるわけではない。中道政党を率いるラピド前首相はネタニヤフ政権に極右政党が加わっていることを理由に難色を示す。ネタニヤフ氏らは「戦争管理内閣」にラピド氏を迎える用意もあるとしている。
 7日にハマスがイスラエルに大規模攻撃をしかけて以降、イスラエル側の死者は11日までに1200人を超えた。一方、ガザ地区への報復の空爆では1100人以上が死亡し、国連によると職員9人も犠牲になった。イスラエルによる封鎖で、ガザ地区では水や電気も乏しくなっている。
 米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は11日、ガザで暮らす200万人以上の民間人について「避難路が開かれることを望む」と述べた。イスラエル、エジプトと協議していると明らかにした。
 11日、エジプトの首都カイロで緊急の外相会合を開いたアラブ連盟は声明で、イスラエルによるガザ地区攻撃の即時停止を求めたうえ、全ての当事者に自制を呼びかけた。

【藤井聡太八冠の脳内はどうなってる? 強みは「直観」】
 11日の朝日新聞デジタルは次のように報じた。
 将棋界初の8タイトル独占を果たした藤井聡太八冠(21)=名人・竜王・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖。快挙を達成した21歳の若者の頭の中はどうなっているのだろうか。棋士の脳内を研究する理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター特別顧問の田中啓治氏は偉業をたたえつつ、「プロだけに働く脳の回路で、集中力を省力化している可能性がある」と分析する。
 プロ棋士は、脳内に将棋盤を描き、数十手先まで予測して、あらゆる思考を働かせて指す。そう思っている人も少なくない。だが、田中氏は「プロ棋士は1秒で最良の手にたどり着く。これは本人も意識していない『直観』」という。

【全銀ネット復旧、三菱UFJ銀行などで振り込み可能に】
 12日の日経速報メールは次のように報じた。
 銀行間送金システムで10日から続いていた障害は12日朝に解消し、通常どおり利用できるようになった。他の金融機関への送金に遅延が出ていた三菱UFJ銀行などから他行向けに通常通り送金できるようになった。遅延していた送金取引は順次処理されるという。障害発生から丸2日を経て、送金インフラは正常化に向かう。
 システムを運営する全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が12日朝に午前8時半の稼働以降、午前9時時点で通常どおり振り込みできる状況になっていると発表した。三菱UFJ銀も正常稼働を確認したと公表した。りそな銀行や商工組合中央金庫なども通常通り送金できるようになったと周知している。
 全銀ネットが運営する「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」では10日以降、三菱UFJ銀やりそな銀行などで他の金融機関に送金ができなくなる障害が発生していた。障害が起きた10金融機関からの送金の未処理分は11日夜時点で計90万件程度にのぼっていた。
 10日から11日までの2日間で計255万件の送金取引に遅延などが生じた。児童手当や給料の振り込みといった個人への送金のほか、約束手形など企業間の決済などに幅広く影響した。障害が起きた同システムと各金融機関を結ぶ「中継コンピューター(RC)」のソフトウエアを改修した。
 全銀システムの障害解消後は再発防止策の策定が課題となる。同システムの顧客に影響が出る障害は1973年の稼働以降、初めて。システムの不具合が発生していたのは三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、山口銀行、北九州銀行、もみじ銀行、日本カストディ銀行、商工組合中央金庫。

【トヨタと出光、全固体電池を27年度に生産 国内に設備】
 同じ12日の日経速報メールは次のように報じた。
 トヨタと出光興産は12日、電気自動車(EV)向けの次世代電池「全固体電池」で提携すると発表した。2027年度に両社は国内で生産ラインを稼働させ、27〜28年に発売するEVに搭載して商品化する。トヨタは電池材料の製造技術に知見のある出光と連携し、全固体電池の量産で世界に先駆ける。
 次世代電池の本命とされる全固体電池は、充電時間を短くし、航続距離も伸ばせる。トヨタは6月、10分以下の充電で、現行EVの航続距離の2.4倍となる約1200キロメートルを走れる全固体電池の開発状況を説明した。
【関連記事】
・トヨタ、EV挽回へ「本命」電池 出光と量産で陣営作り
・トヨタと出光、「全固体電池量産、まず数十人のチーム」
 全固体電池はリチウムイオン電池の一種で、耐久性が課題だった。リチウムイオンが正極と負極の間を行き来し充放電する。電解質に液体ではなく固体を用いるため、リチウムイオンは高速で移動するものの、亀裂などが起こると性能が損なわれる。
 提携の対象は全固体電池の基幹部材だ。両社は課題解決に向けて協力する。出光は軟らかく、他の材料を密着させやすい利点がある硫化物系の電解質の開発・生産を得意とする。トヨタの強みである電池組み立て技術と組み合わせて量産を確実にする。
 出光は27年度に千葉県に小型の量産設備を設け、EVで年間数万台分の規模に相当する固体電解質の出荷に備える。
 トヨタは27〜28年の搭載車投入に向け、本社(愛知県豊田市)地区に全固体電池の生産ラインを置く方針だ。全固体電池を搭載したEVの数量は30年以降に本格的に増えていく見通しを示した。
 同日、東京都内で記者会見したトヨタの佐藤恒治社長は「ここからはものづくりのフェーズ。鍵を握るのが自動車産業とエネルギー産業の連携だ」と強調した。出光の木藤俊一社長は「今問われているのはポテンシャルや夢ではなく実現力。出光は材料である固体電解質の量産を通じ技術力で支えていく」と述べた。
 トヨタはEVの世界販売台数を26年に150万台、30年に350万台まで伸ばす計画を掲げている。ただ全固体電池は実用化した後も当面は一部の高価な車種への搭載に限られるとみられ、安価なリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池の開発も進めている。電池でも多くのラインアップを用意し、幅広い需要を取り込む。

【なぜハマスの攻撃を許したのか 勝ち組イスラエルの失態】
 12日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 イスラエルはなぜ、パレスチナのイスラム組織ハマスの大規模な攻撃を許したのか。イスラエルをとりまく3つの外部変化をたどると、中東最強の情報収集力の緩みともいえる失態が浮かび上がってくる。キーワードは「アラブ政治の重心移動」「シーア派の三日月地帯」「米国の脱中東戦略」だ。
「30年間、何も変わらない」
 この夏、イスラエルを訪れる機会があった。最大都市テルアビブのベングリオン空港にアラブ首長国連邦(UAE)ドバイのエミレーツ航空機が駐機する様を見て、アラブとイスラエルの関係改善を実感した。
 UAEは2020年8月、イスラエルと国交樹立で合意し、バーレーンやモロッコも続いた。あれから3年がたち、アラブとイスラエルの距離は着実に縮まった。
 今夏の訪問では、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸の町にも足を運んだ。案内を頼んだタクシーの運転手が「あれを見ろ」と指さした方角には、谷をはさんでユダヤ人入植地が迫る。「30年間何も変わらない」。運転手はまくしたてた。
 町からエルサレムに戻る路線バスはチェックポイントで完全武装のイスラエル軍兵士が乗り込み、パレスチナ人をバスから下ろして調べる。ハマスの無差別テロは断じて許されない。だがエルサレムから30分の距離に占領の実態があることもまた事実だ。
 思い起こすのは93年9月、米ホワイトハウスでパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)が調印された時だ。パレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長が差し出した手をイスラエルのラビン首相はゆっくり受けとめた。
 歴史的な握手を衛星放送で見た世界中の人々は「きっと良い未来がくる」と信じた。それから30年。イスラエルと、独立したパレスチナ国家による2国家共存の理想はかすみ、取り残される危機感を強めたハマスが行動に出た。
地中海からペルシャ湾に移った「重心」
 奇襲作戦をなぜイスラエルは事前につかめなかったのか―。世界中が感じた疑問だ。なによりイスラエル自身が、問い続けることになるだろう。ただ、答えにたどりつく手がかりは、イスラエルを取り巻く中東地政学の変化にあるかもしれない。
 イスラエルは紛れもない中東の勝ち組だ。この10年あまり、混乱する中東にあってイスラエルは平均4%を超える安定した経済成長を続けた。研究開発費やベンチャー投資額など、スタートアップ大国としての実績を裏付ける数字は事欠かない。
 イノベーション大国の評価はマネーを呼び込む。日本貿易振興機構(ジェトロ)によれば、22年に海外からイスラエルへの直接投資額は278億6900万ドル(約4兆1200億円)と前年比3割増えた。
 ただ、経済成長と並行するように中東の地図を塗り替える3つの変化が進んだ。
 まず、民主化要求運動「アラブの春」だ。10年末のチュニジアを起点とするうねりはエジプトやイエメン、リビアなどの長期独裁政権を次々と倒した。シリアでは米国やロシアを巻き込む長い内戦へと発展した。
 この過程でアラブの盟主の座が政治・軍事大国エジプトから、混乱の波及をなんとか防いだ産油国サウジアラビアに代わり、アラブ政治の重心は地中海世界からペルシャ湾に移った。
 1948年のイスラエル独立以来、繰り返されたイスラエルとの戦争の先頭に立ったエジプトの凋落(ちょうらく)は、アラブのまとまりを弱め、結束の軸としての「パレスチナの大義」は失われていった。
 むしろアラブ政治の中心はパレスチナから遠いペルシャ湾岸へ移り、パレスチナ離れともいえる独自の外交・安全保障を探る土壌が醸成された。
 一方、和平交渉が停滞するなかで、パレスチナ人の間でPLOの流れをくむ自治政府への信頼も失われた。イスラム色の濃いハマスが台頭し、07年にはガザを制圧した。
仮想敵イランの「三日月地帯」
 2つめの注目点は非アラブの地域大国、イランの台頭だ。米国は03年にイラクのフセイン政権を武力で打倒し、同国に民主主義を定着させる理想を掲げた。ところが民族や宗派の対立が表面化するなかで、人口比で勝るイスラム教シーア派勢力が台頭し、同じシーア派を奉じるイランの影響力が拡大した。
 イランはシリアやレバノンでも混乱に乗じて足場を確保し、ペルシャ湾から地中海までひと続きの「シーア派の三日月地帯」とも呼ぶ勢力圏が出現した。
 イスラエルにとってイランは最大の仮想敵だ。勢力圏の出現で、安保の注意はイランに向けられた。シリアやレバノンに拠点を置く親イラン勢力への空爆を続ける一方、シリアの内戦には介入せず、同国の弱体化を待つことでイスラエルへの脅威を軽減させた。
過信が生んだ膨大な負担
 3つ目のポイントは、アラブの凋落とイランの台頭を招いた米国の脱中東戦略だ。米国の失策や撤収に伴って地域一帯が混乱し、相対的に安定するイスラエルの存在が際立つ皮肉を生んだ。
 イスラエルはガザの周囲に壁を築き、パレスチナ人を封じ込めてきた。イスラエルが成長し、アラブとの和解が進むほど、取り残されるパレスチナの焦燥感は募る。ネタニヤフ政権は歴代で最も右寄りとされる。極右と組んだ強引な手法は国内の分断を生んだ。暴発に至るガザの不満を見抜けなかったネタニヤフ氏に、勝ち組の過信はなかったか。
 今後、イスラエルが大規模な報復を続ければ、犠牲者の数は増えるばかりだろう。ハマスが期待する、パレスチナの大義にアラブが再び結束するうねりは望み薄だ。
 ただし、パレスチナ問題を解決しない限り、イスラエルは膨大な安保面の負担を抱え続け、成長の障害になることが改めてはっきりとしたことは確かである。

【旧統一教会解散命令、13日にも請求 文科相「損害甚大」】
 同じ12日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 政府は12日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を13日にも東京地裁に請求することを決めた。かねて問題視されていた高額寄付を教団による組織的な違法行為と結論付けた。刑事事件を起こしていない宗教法人の解散が司法の場で審理されるのは初めて。教団側は全面的に争う姿勢で、結論までは長期化が予想される。
 2022年7月に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件後、寄付の被害が注目された教団の存続を巡る議論は最大の節目を迎える。政府は民事の違法行為でも「組織性、悪質性、継続性」の3要件を満たせば厳格に対応する姿勢を明確にした。
 政府は11カ月に及んだ調査で、高額寄付の被害が宗教法人の業務として行われ、全国約1550人(約204億円)の被害が1980年以降、最近まで及んでいたことを確認。5000点の証拠を積み上げ、行為が3要件を満たすと判断した。
 盛山正仁文部科学相は記者会見し「財産目的で多くの人に多額の損害を生じさせた。宗教法人の目的を著しく逸脱する」と請求の理由を説明した。刑事事件が確認されない宗教法人も、同様の法令違反行為があれば手続きを踏んだ上で請求の対象となる可能性がある。
 宗教法人法は「法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などがあった場合、裁判所が解散を命令できると定める。過去、法令違反を理由に解散命令が出たオウム真理教など2例は、いずれも幹部らの刑事手続きが進んでいた。
 旧統一教会は刑事事件がない中で、政府が先行して宗教法人を調査し、解散命令の是非を司法判断に委ねる初のケースとなる。
 政府は2022年10月、旧統一教会を念頭に、民法上の不法行為も3要件を満たせば解散命令請求できるとの新たな解釈を示した。それに基づき、所管する文化庁宗務課は同11月、宗教法人法上の「質問権」を初めて行使。並行して170人超の被害者らに聞き取りを進めた。
 日本経済新聞社が22年10月に実施した世論調査で「請求すべきだ」と答えた人は78%に上ったが、政府は「法律に照らして判断した上で手続きを進めていく」(岸田文雄首相)と慎重な立場を維持してきた。
 宗教関係者らの意見を聞くなど手続きの正当性も担保。12日も請求に必須でない宗教法人審議会(文科相の諮問機関)を開き、全会一致で請求が相当との意見を得た。
 今後の審理は東京地裁が非公開で進める。地裁の決定内容に不服があれば高裁や最高裁で争われる。過去2件は最高裁まで争われ、オウム真理教は解散請求から確定まで7カ月、幹部が詐欺事件を起こした明覚寺(和歌山県)は3年を要した。旧統一教会を巡る判断も年単位で時間がかかるとの見方がある。
 裁判所の解散命令が確定すれば、教団の法人格は剝奪され、活動は大きく制限される。選任された清算人が清算手続きを進め、税制上の優遇措置もなくなるが、任意団体としては活動できる。オウム真理教は解散命令確定後、後継の「アレフ」などが任意団体として活動を続けている。
 政府は調査と並行し、いわゆる「霊感商法」や高額寄付に関する被害救済を急いだ。信者を親に持つ「宗教2世」の存在を念頭に、23年1月に不当寄付勧誘防止法を施行。同法は法人や団体による寄付勧誘を禁止したが、自ら信じて寄付した場合は対象にならないなど予防や救済の実効性がなお課題とされている。
旧統一教会「極めて残念」、争う構え
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は12日、政府が示した解散命令請求の方針について「極めて残念で遺憾。偏った情報に基づいて政府がこのような重大な決断を下したことは痛恨の極み」とコメントを発表した。
 「今後は裁判において法的な主張を行っていく」として司法の場で争う構えを示した。
 「2009年のコンプライアンス宣言以降、改革に積極的に取り組んできた」と活動の正当性を強調。「解散命令を受けるような教団ではないと確信している」と主張した。

【LINEヤフー、ソフト開発に生成AI 作業1日2時間効率化】
 12日の日経速報メールは次のように報じた。
 LINEヤフーは10月中旬からソフトウエア開発に生成AI(人工知能)を全面的に導入する。社内のエンジニア約7000人全員が使えるようにする。作業時間を平均で1日当たり約2時間減らし、空いた時間を新サービスの考案など付加価値が高い業務にあてる。
エンジニア数が国内最大級のLINEヤフーが書類作成やリサーチなどの事務業務ではなく、本業で使う。生成AIの本格活用が広がり始めた。
米マイクロソフト子会社、米ギットハブのソフト開発支援サービス「ギットハブ・コパイロット(GitHub Copilot)」を導入する。同サービスは米新興企業のオープンAIの生成AIを基にし、ソフトの設計図となるコードを自動生成できる。
エンジニアが実現したい機能や動作などを入力すると必要なコードを作成する。入力した情報がギットハブなど外部に渡らない仕組みのため、LINEヤフーは初期開発から改良まで幅広い業務での利用を認める。これまで生成AIを使う企業は増えているが資料や議事録の作成が多かった。
AIに任せられるコードの作成などに費やす時間を減らす。空いた時間は人間にしかできない新サービスの創出や構想などの創造的な仕事の時間に充てる。
 LINEヤフーが抱えるソフトウエアのエンジニア数は国内最大規模とみられる。同社は全面導入に先立ち、6月末から2カ月間、約550人のエンジニアに導入して効果を実証してきた。
エンジニアごとに主な業務は企画や開発など多岐にわたるが、コード作成に費やす時間を平均で1日当たり2時間程度減らせたという。開発中心のエンジニアでは3〜4時間縮められた事例も多かったとしている。
2021年度のヤフーの全社員の勤務時間は1日平均で約8時間だった。LINEヤフーが生成AI導入で減らせると見込む作業時間は、この2割強に相当する。
スマートフォンのアプリなどを用いたサービスの競争は激しい。アプリ分析のフラー(新潟市)によると、日本人が持つスマホアプリは約103個あったが、実際に使うのは39個弱だった。
LINEヤフーの事業は停滞している。国内で最も利用者の多いアプリのLINEを抱えるが、SNSでは中国発のショート動画アプリ「TikTok(ティックトック)」が若者を中心にシェアを急速に広げる。
フラーが分析した22年の月別の利用者数の伸び率を見ると、LINEは前年割れがほとんどだった。TikTokは月によっては6割増になるなど勢いの違いは鮮明だ。
23年4〜6月期のヤフーやLINEなどの広告事業の売上収益は前年同期比0.3%減にとどまり、プラットフォームとしての競争力が低下している。競争力のある新サービスの開発がLINEヤフーの喫緊の課題となっている。
 LINEヤフーは10月にZホールディングスとヤフー、LINEが合併して発足した。生成AIの利用には機密情報の取り扱いなど社内でのルール作りが必要で、これまでは事業会社のヤフーとLINEがそれぞれ別々に対応してきた。
合併により一連のルールも一本化することで「生成AIの活用が一段と進む可能性が高い」(LINEヤフー)という。
LINEヤフーは傘下のサービスでも生成AIの導入を積極的に進めている。ギットハブ・コパイロットは、ファッションEC(電子商取引)大手のZOZOなどが導入している。
ほかにフリマアプリ「PayPayフリマ」でも出品時の説明文を生成AIが作成する機能を始めたほか、飲食店予約サービスやLINEのアプリ内でも生成AIを活用したサービスを提供している。(松田直樹)

【電気・水遮断のガザ窮状 逃げ場ない市民、深まる危機】
 13日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 【ロンドン=江渕智弘】イスラエル軍の攻撃を受け、電気や水が遮断されたパレスチナ自治区ガザの窮状が深まっている。イスラエル軍が地上侵攻の準備を進めるなか、逃げ場のないガザの人々は不安を募らせる。
英公共放送BBCの現地特派員は12日、自動車を走らせながら撮影した空爆後の町の映像をX(旧ツイッター)に投稿した。みるかぎり無傷の建物はなく、あたり一面がれきの山。逆さにひっくり返って大破した車なども映っていた。
 「電気も水もない。わずかな食料は電気がないから腐る」。BBCが同日伝えたガザ中部に住む、スコットランド行政府首相の義母の映像。4人の孫と一緒だという義母は爆発音が響くなか「パレスチナ人を助けてください」と涙声で訴えた。
 英スカイニュースは12日、英スカイニュースは12日、ガザ在住の別の女性の証言を伝えた。「この3日間はとても大変だった。家を出て走ったことしか覚えていない。家を失い、すべてを失った」と語った。
 イスラエルはハマスの攻撃への報復としてガザに空爆を重ね、電気や水、食料、燃料の供給を止める「完全包囲」に踏み切った。11日に唯一の発電所が燃料不足で稼働を停止した。
 イスラエルのカッツ・エネルギー相は12日、人質の解放までガザの民間人への人道支援を認めない考えを示した。カッツ氏はXに「イスラエル人の人質が戻るまで電気がつくことも水道から水が出ることも燃料トラックが入ることもない」と投稿した。
 多数の死傷者が出ているが、病院が攻撃を受けたり物資が足りなかったりして治療できない。パレスチナ自治政府のマリキ外相は「占領者(イスラエル)は必需品の供給遮断で無防備な市民への犯罪を実行している。醜悪な集団懲罰だ」と非難している。
 スカイニュースによると、ガザ最大の医療施設であるシファ病院は負傷者が廊下に横たわる。乳児の生命を維持するための酸素供 給装置の燃料はあと4日分しか残っていない。
 赤十字国際委員会は12日の声明で「電気がなければ病院は遺体安置所と化す危険性がある」と警鐘を鳴らした。
 ガザの当局によると子ども500人を含む1537人が死亡した。負傷者は6612人にのぼる。国連によると33万8000人を超える避難民が出ている。
 日本の外務省によると、ガザ地区は福岡市よりやや広い365平方キロメートルに約222万人が暮らす。人口が密集するガザへの爆撃や地上侵攻は多数の民間人の犠牲を伴う。
 ブリンケン米国務長官は12日、イスラエルのネタニヤフ首相との会談後の記者会見で「民間人の被害を避けるため、あらゆる予防措置を講じることは非常に重要だ」と強調した。物資の調達や市民の退避手段となる人道回廊の設置など、対策が急務になっている。

【ガザ北部から24時間以内退避を イスラエルが国連に通知】
 同じ13日の日経速報メールは次のように報じた。
 ロイター通信は13日、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ北部のすべてのパレスチナ人に対し、ガザの南部へ24時間以内に退避するよう国連に通知したと報じた。イスラエルはガザへの空爆を続けており、近く地上侵攻に着手する恐れがある。
 対象となる住民は約110万人。国連の報道官は声明を出し「壊滅的な人道危機を招く」と表明し、撤回を強く求めた。
ガザを巡っては同地区を実効支配するイスラム組織ハマスが7日、イスラエルに向けてロケット弾を数千発発射し、戦闘員を侵入させた。イスラエルは空爆による報復を続けている。
 双方の応酬により死者数は12日までにイスラエル側が1300人、ガザ側が1400人に達した。イスラエルが地上作戦に踏み切ればガザの民間人の犠牲者はさらに増える恐れがある。
 12日にイスラエルを訪問したブリンケン米国務長官は、イスラエルのネタニヤフ首相と会談し「民間人の被害を避けるため、あらゆる予防措置を講じることが重要だ」と強調。市民の退避手段を確保するためガザに人道回廊を設ける交渉を進める姿勢を示した。
【関連記事】イスラエル邦人退避へチャーター機、日本政府14日手配

【Microsoft、米ゲーム大手アクティビジョン買収 10兆円】
 同じ13日の日経速報メールは次のように報じた。
 【シリコンバレー=渡辺直樹】米マイクロソフトは13日、米ライブサービスゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードの買収が完了したと発表した。最後の関門となっていた英競争・市場庁(CMA)が同日、買収を承認していた。買収額は2022年の発表当時で約690億ドル(約10兆3000億円)。中国の騰訊控股(テンセント)やソニーグループとならぶ巨大ゲーム企業が誕生する。
 独占禁止の観点から一度は買収を不承認としたCMAが、マイクロソフトの買収スキーム見直しを受け承認に転じた。22年1月に買収で合意してから、1年半以上続いてきた世界各地の規制当局の承認を終えたことになる。
 マイクロソフトの買収の認可をめぐっては米国でも連邦取引委員会(FTC)が反発した。一時裁判所に買収差し止めを求めて争う事態に発展したが、司法側は最終的に差し止めを却下した。
 米巨大IT(情報技術)企業が大型買収で拡大する戦略を米欧の当局は懸念する。FTCは巨大ITの買収戦略の歯止めに動くが、米メタによる仮想現実(VR)企業買収の差し止めにも失敗するなど敗北が続く。当局による強硬な差し止め一辺倒は限界を迎えている。
 ライブサービスゲームはネットを介してシナリオやコンテンツを後から追加して継続的に楽しめる。ゲーム業界で最も勢いのある楽しみ方だ。アクティビジョンはライブサービスゲームで有力ソフトを抱える。戦場を舞台にしたアクションゲーム「コール・オブ・デューティ」やパズルゲーム「キャンディークラッシュ」といった人気ソフトを手掛ける。
 これまでソニーグループの「プレイステーション」やマイクロソフトの「Xbox」といったゲーム機だけでなく、スマートフォンにもゲームを提供してきた。プレーヤー数は190カ国、月4億人に上り、22年の売上高は約75億ドルだった。
 オランダの調査会社ニューズーによると、ゲームを手掛ける企業の22年の売上高ランキングで、マイクロソフトはテンセント、ソニーG、米アップルに次ぐ4位だった。8位のアクティビジョン買収により、単純計算でソニーGを抜き2位に浮上することになる。
 マイクロソフトにとっては16年にビジネスSNSのリンクトインを262億ドルで買収して以来、過去最大のM&A(合併・買収)となる。インターネットを通じてゲームを配信するサブスクリプション(定額課金)事業を強化する。ハードのXboxに加え、買収で有力ソフトをいち早く取りそろえることで、ゲーム事業全体の底上げにつなげる。
 マイクロソフトは8月、アクティビジョンの人気ゲームのネットを通じた配信を15年間、ゲーム大手の仏ユービーアイソフトに譲渡すると発表した。買収スキームを見直すことで独占の批判をかわし、英国の規制当局から承認を引き出した形だ。

【キオクシア、WD半導体部門と統合で最終調整 日米再編】
 同じ13日の日経速報メールは次のように報じた。
 米ウエスタンデジタル(WD)が半導体メモリー事業を分離し、旧東芝メモリのキオクシアホールディングスと経営統合する方向で最終調整していることが13日、わかった。メモリー市況が悪化するなか、規模を拡大して投資競争に備える。日米として半導体の安定供給を確保する。
 20日までに金融機関と融資条件などを詰める。またキオクシアに間接出資する韓国のSKハイニックスは反発している。月内の基本合意を目指しているが、流動的な面も残っている。
 キオクシアは半導体フラッシュメモリーで世界3位、WDは4位。統合で首位の韓国サムスン電子に並ぶ規模となる。合意後に世界各国での競争法審査に入る。中国での承認が得られるかは不透明な部分もある。
 
 持ち株会社の下にWDのメモリー事業とキオクシアが入る形となる。企業価値ベースでの統合比率はキオクシア側が63%、WD側が37%。資本調整を経て、持ち株会社への最終的な出資比率はWD側株主が50.1%、キオクシア側が49.9%となる。キオクシアの早坂伸夫社長が新会社の社長となり、取締役会もキオクシア側が過半を握る。
 登記上の本社は米国で、本社所在地は日本となる。米ナスダック市場に上場し、東京証券取引所への上場も目指す。統合にあたり3メガ銀行と日本政策投資銀行などが1兆5000億〜1兆9000億円程度の融資を検討している。
 キオクシアとWDが手がけるNAND型フラッシュメモリーは長期にデータを保存する役割を担う半導体。パソコンやスマートフォン、データセンターなどに使われている。キオクシアとWDはこれまで三重県や岩手県などにある製造拠点への巨額投資を折半してきた。英調査会社オムディアによるとサムスンのシェアは2022年時点で34%。統合2社は単純合計で32%となる。
 キオクシアは18年、米投資ファンドのベインキャピタルなどが約6割を出資する形で東芝から独立した。新規株式公開(IPO)を目指し、20年には上場承認を受けたが、華為技術(ファーウェイ)への米政府の規制など米中貿易摩擦の悪化で直前で延期していた。
 ハードディスク駆動装置(HDD)大手のWDは16年にサンディスクを買収してNAND型フラッシュメモリーに参入した。物言う株主として知られる米ファンドのエリオット・マネジメントなどがメモリー事業の分離を提案。WDは再編案の検討に入っていた。
 足元ではスマートフォンなどの不振で半導体メモリー市況が急速に悪化している。台湾調査会社トレンドフォースによると、23年4〜6月期のNANDフラッシュの単価は1〜3月期から10〜15%低下した。採算悪化を受けて、キオクシアとWDはともに22年10〜12月期から3四半期連続で最終赤字となっている。
 一方で長期的には、人工知能(AI)や高速通信「5G」の普及などで需要拡大が見込まれる。キオクシアとWDは三重県四日市市と岩手県北上市の工場で連携している。
 メモリー工場は1棟当たり1兆円規模の巨額投資が必要となる。キオクシアの純有利子負債は20年6月末時点で約1兆3000億円だった。資金力で勝るサムスンに対抗するためには、規模拡大が必要だった。
 世界に生産や開発拠点が広がる半導体は有事の際に供給が分断されるリスクがある。米国は中国抜きの供給網を確立し、有事でも経済への影響を最小限に抑える戦略をとる。米国に同調する日本も、脱炭素やデジタル化に欠かせない半導体を経済安全保障の観点から、国内生産に向けて企業誘致を進めている。
 日米の半導体連携の中でキオクシアとWDの統合は21年ごろから浮上していた。当時はWD本体との統合で交渉が進んでいたが、本社所在地や上場市場などの課題があり中断していた。その後WDがメモリー部分を分離してキオクシアと統合する形で交渉が再開した。
 統合が実現するには世界の独禁当局の審査が必要となる。米中間の対立が深まるなか、中国政府は米企業との経営統合案件について、独占禁止法を厳格に適用しており承認が得られるかは不透明な面もある。米国が中国向けの半導体輸出規制を強化する中で、キオクシアの主要顧客である中国企業に対して製品を輸出しにくくなるといった点も懸念される。
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【イスラエル・ハマス衝突、世界に飛び火 米欧揺さぶる】
 15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突が、世界に波紋を広げている。ロシアや中国はパレスチナを支援し、欧米を揺さぶる構えをみせる。中東の融和の期待はしぼみ、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化は遠のくとの観測が強い。
 国連安全保障理事会は13日、ハマスとイスラエルの衝突を巡り非公開で協議したが、具体的な支援策の結論を出せなかった。ロシアが示した決議案はハマスを明確に非難する文言を含まず、即時停戦を主張したとみられる。米英仏などは、民間人を襲い人質に取ったハマスの「テロ」を強く批判しイスラエル支持を鮮明にしており、ロシア案に賛成する見込みは乏しい。
 ロシアのネベンジャ国連大使は記者会見で、欧米が国連で中東情勢について公開での会合を要請してこなかったと指摘した。「一方でウクライナ情勢を議論する会合はあらゆる口実を用いて開こうとする」と批判した。
 ウクライナ侵攻でただでさえ深刻な安保理の亀裂が深まりかねない。ロイター通信によると、議長国ブラジルはハマスのテロ攻撃への非難を明記した決議案を配布した。
 パレスチナ問題をはじめ中東の複雑な情勢は米中ロなど域外の主要国も注視し、影響力を行使してきた。中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相は13日、国連を通じてガザに緊急援助を提供する意向を示した。王氏は14日、ブリンケン米国務長官と電話協議し、ガザ衝突について議論した。
中国は3月、中東の覇を競う地域大国のサウジとイランの関係正常化を仲介し、米国の不意を突いて中東での存在感を誇示した。バイデン米政権が仲介努力を加速させてきたのが、イスラエルとアラブの「盟主」を自任するサウジとの国交正常化交渉だ。9月には両国の首脳が、正常化は近づいているとの認識を示していた。
 ロイター通信は13日、サウジがその交渉を凍結していると報じた。サウジは国交正常化の前提としてパレスチナ問題の解決を掲げていた。今回のハマスとイスラエルの大規模衝突で、アラブ社会はパレスチナに同情的な見方を示している。サウジはパレスチナ人を攻撃するイスラエルとの関係改善を進めることは難しいと判断している可能性がある。
 ブリンケン氏は14日、サウジでファイサル外相と会談した。米国務省の声明によると、紛争拡大防止や民間人保護を巡り協議した。イスラエルとサウジの国交正常化も議題になった可能性があるが、声明では触れなかった。
 イスラム教の集団礼拝日にあたる金曜日の13日、ハマスの指導者は「怒りの日」と呼んでイスラム教徒らに行動を呼びかけた。ハマスが7日にイスラエルに大規模な越境攻撃をかけてから最初の金曜日だった。
 ハマスとイスラエルの衝突は、遠く離れた欧米でも火種になる恐れがある。多民族社会の米国では13日、親パレスチナと親イスラエルの両派が各地でそれぞれ集会や抗議活動を繰り広げ、一部では暴力事件にも発展した。警察は警備を強化している。
 フランス政府は13日、北部アラスの高校で発生した教師刺殺事件を受け、テロに対する警戒態勢を最高水準に引き上げた。ダル マナン内相は事件とイスラエル・パレスチナ情勢の緊迫には「おそらくつながりがある」との見方を示した。
 仏政府は対立が国内に波及するリスクに神経をとがらせている。ユダヤ系の学校や宗教施設の警備を強化する一方、パレスチナ支持のデモを禁止した。パリのルーヴル美術館は14日、「安全上の理由」で閉館すると発表した。(久門武史)

【谷村新司さんが死去 74歳 アリス「冬の稲妻」「昴」など】
 16日の日経速報メールは次のように報じた。
 「昴(すばる)」「冬の稲妻」など多数のヒット曲を手がけたシンガーソングライターの谷村新司(たにむら・しんじ)さんが10月8日、死去した。74歳だった。16日に所属事務所が明らかにした。告別式は近親者で行った。後日、偲ぶ会を開く予定という。
今年3月に腸炎のため手術を受け、闘病を続けていた。
 1948年大阪府生まれ。71年に堀内孝雄さんとフォークグループ「アリス」を結成し、矢沢透さんが参加した72年にデビューした。「チャンピオン」「帰らざる日々」などのヒット曲を生み出した。
 81年にアリスが活動を休止しソロ活動を本格的に始めた。山口百恵さんが歌った「いい日旅立ち」、加山雄三さんとの「サライ」など数々の名曲も手がけた。
 2022年にアリスの活動50年を記念するライブを開催。23年に予定した全国ツアー公演は谷村さんの闘病で延期となっていた。15年、紫綬褒章を受章。
 谷村さんの訃報に、アリスの堀内さんは「突然の別れに驚きを隠せません。50年来の親友であり、良きライバルでした」とコメントを発表した。矢沢さんも「悲しいというより悔しい。どうか谷村を忘れないで下さい」と惜しんだ。

【2028年ロス五輪に野球・ソフトボールなど5競技追加】
 16日の日経速報メールは次のように報じた。
  【ムンバイ=共同】国際オリンピック委員会(IOC)は16日、インドのムンバイで総会を開き、2028年ロサンゼルス五輪の追加競技として大会組織委員会から提案された野球・ソフトボール、フラッグフットボール、クリケット、ラクロス、スカッシュの5競技を一括承認した。
 21年東京五輪で日本がともに金メダルを獲得した野球とソフトボールは、2大会ぶりの復帰となる。
 【関連記事】28年ロス五輪5競技追加 2大会ぶり野球「最強目指す」
 IOCのバッハ会長は「追加5競技の選択は米国のスポーツ文化に沿ったものだ。ロス五輪をユニークなものにしてくれる」と期待した。
 世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のフラッカリ会長は大リーグがトップ選手参加に合意していると強調し、シーズン中断の判断も注目される。
 インドなど英連邦諸国で人気が高いクリケットは128年ぶり、北米発祥のラクロスは120年ぶりの復帰。米国で人気の高いアメリカンフットボールから接触プレーをなくしたフラッグフットボール、スカッシュは初実施となる。
 IOCによると、夏季五輪の上限とする選手1万500人の総枠は超えるという。追加競技は742人の枠があり、既存競技の選手数を削減して人数調整をする見込み。
追加候補に残っていたブレイキン(ブレイクダンス)や空手などは組織委の提案から漏れた。
 馬術を除外して障害物レースを採用した近代五種と重量挙げはともに保留扱いとなっていたが、実施競技入りが決まった。IOCが承認した統括団体のないボクシングは引き続き保留となるが、選手保護の観点で今後競技入りが決まる見通し。

【住友不動産、インドで不動産開発5000億円 新興国シフト】
 同じ16日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 住友不動産はインド・ムンバイ中心部で大型再開発に動く。総事業費5000億円を投じ、オフィスビルやホテル、商業施設を備えた複合型の不動産開発を進める。同社のインドの不動産投資は累計7000億円規模に拡大する。新興国の経済成長を取り込み、将来の収益につなげる。米欧が軸だった日本の不動産大手のオフィスビル開発が新興国に広がってきた。
 日本勢の新興国での開発は、これまで住宅などが多かった。大手各社がオフィスビル開発に力を入れてきた米国はテレワーク浸透で市場の鈍化が指摘され、人口が減少する日本も中長期で高い成長は期待できない。インドは2027年にも日本を抜き世界3位の経済大国になる見通しで、住友不の計画は新興国で大型オフィス開発が本格化する転機となる。
 調査会社モードーインテリジェンスによると、インドのオフィス市場は28年に約910億ドル(約13兆5900億円)と、23年の3.5倍に拡大する見込みだ。
 モディ政権による税制改革などでビジネス環境が改善され、製造業中心に企業進出が増えた。オフィス需要が拡大し、外資の不動産開発が活発になっている。不動産サービス大手のシービーアールイー(CBRE)によると、22年のインドでの不動産投資額は前年比32%増の78億ドルに達した。
 住友不の今回の計画は外資単独でのインドの不動産開発で過去最大級だ。同社はムンバイ中心部の「ワーリー地区」で、現地財閥のワディア・グループから約8万平方メートルの紡績工場跡地を467億ルピー(約800億円)で取得する契約を結んだ。30年代前半の完成を目指し、同地でビル複数棟を建設する。ビルの延べ床面積は合計100万平方メートル規模を想定する。
 住友不はすでにムンバイの別の地区の2カ所において、延べ床面積が合計26万平方メートルのビル開発に計2000億円弱を投じている。今回の新たな計画で、住友不のインドの不動産開発の規模は日本企業で最大となる。
 住友不は30年代にインドの賃貸オフィス事業を賃貸利益(営業利益の減価償却前に相当)ベースで600億円規模に育てる。国内の賃貸オフィス事業の賃貸利益は3000億円程度を見込む。
 ほかの不動産大手もインドで投資を拡大している。三菱地所がシンガポールの不動産大手が組成したファンドに投資する形で、24年に第4の都市チェンナイでオフィスビルを完成させる計画を持つ。三井不動産はベンガルールでオフィスビルを完成させ、現在2期目の計画を進める。
 三井不が22年に米ニューヨークで総事業費6000億円規模のオフィスビル「50ハドソンヤード」を完成させるなど、不動産大手の海外でのオフィス開発は米欧が軸だった。22年度末の海外資産残高は三井不で2兆3000億円、三菱地所で1兆3000億円と5年前に比べていずれも2倍前後に伸びた。今後は両社もインドなど新興国での開発を活発化させる。

【バイデン大統領、18日にイスラエル訪問 国務長官が発表】
 17日の日経速報メールは次のように報じた。
 ワシントン=坂口幸裕】ブリンケン米国務長官は16日、バイデン米大統領が18日にイスラム組織ハマスと交戦するイスラエルを訪れると発表した。招請した同国のネタニヤフ首相らとテルアビブで会談し、米国が同盟国であるイスラエルを支援する姿勢を明確にする。
18日にヨルダンの首都アンマンも訪れ、パレスチナ自治政府のアッバス議長、ヨルダンのアブドラ国王、エジプトのシシ大統領に会う。
 米ホワイトハウスは16日の声明でバイデン氏のイスラエル訪問について「ハマスの残忍なテロ攻撃に直面する同国への揺るぎない支持を示し、次のステップについて協議する」と記した。
 アッバス氏との会談を巡っては「ハマスがパレスチナ人の尊厳と自決権を守る立場にないと改めて表明し、パレスチナ自治区ガザ市民の人道的ニーズについて話し合う」と強調した。
ブリンケン氏は記者団に、イスラエルと人道支援計画の策定で合意したと明かした。「一刻も早くガザへの援助を始めるのが重要だ」と語った。
 米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は16日、記者団に「バイデン氏はイスラエルとの結束を示す」と説明。「イスラエルの戦略と軍事作戦に関する最新状況や自衛に必要なものを聞き取り、米議会とそのニーズを満たせるように取り組んでいく」と述べた。
 パレスチナの民間人への被害を回避するため「イスラエルを含む地域のパートナーと協力して人道支援と安全な退避方法を提供する考えを明らかにする」とも強調。「人道支援が可能なかぎり早く始まると期待している。この外遊の大きな議論のテーマだ」と話した。
 バイデン氏はハマスに攻撃を受けたイスラエルの報復を容認し、迎撃ミサイルや弾薬を供与するなど軍事支援の強化にも乗り出した。一方、標的をハマスに絞り、民間人への被害を回避する対策を講じるようイスラエルに促す。
ブリンケン氏は16日、12日に続きイスラエルを再訪した。ヨルダンやサウジアラビア、エジプトなど中東の主要国訪問を踏まえ、ネタニヤフ首相らと会談した。
 米国務省は声明で、ブリンケン氏がイスラエルのヘルツォグ大統領との会談で「ハマスのテロから自国を防衛するイスラエルの権利への支持を改めて表明した」と記した。ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区の民間人の安全や保護を確保する取り組みなども話し合った。
 バイデン氏のイスラエル訪問にはリスクも伴う。米国が連帯を示せば敵対するイランやレバノンの親イラン武装組織ヒズボラだけでなく、パレスチナ人に共感を示す他のアラブ諸国の反発を招くおそれもある。
 
【キオクシア統合案、SK同意せず ソフトバンクGに連携打診】
 18日の日経速報メールは次のように報じた。
 旧東芝メモリのキオクシアホールディングスと米ウエスタンデジタル(WD)の半導体部門との統合交渉について、キオクシアに間接出資する韓国のSKハイニックスが難色を示している。合意に必要なSKの同意が得られていない。SKは統合交渉が不調に終わった場合に備え、ソフトバンクグループ(SBG)に対し連携を打診した。
 現時点でSBGはキオクシアとWDの統合交渉には関与していない。キオクシアとWDは統合に向けて、週内にも金融機関から融資を確約してもらうよう最終調整をしている。SKの同意が得られないことなどが、金融機関との交渉に影響を与える可能性もある。
キオクシアとWDの統合案は、持ち株会社を作ってWDのメモリー事業とキオクシアが入る形。企業価値ベースでの統合比率はキオクシア側が63%、WD側が37%で、資本調整後に持ち株会社にWD側株主が50.1%、キオクシア側が49.9%出資する形となる。
 登記上の本社は米国で、本社所在地は日本となる。米ナスダック市場に上場し、東京証券取引所への上場も目指す。キオクシアの早坂伸夫社長が新会社の社長となり、取締役会もキオクシア側が過半を握る。
 NAND型フラッシュメモリーの世界シェアでSKは韓国サムスン電子に次ぐ2位。3位のキオクシアと4位のWDが統合するとサムスンに並ぶ規模となる。統合後、両陣営と差がある3位となるSKの危機感は大きい。さらに将来の提携を模索していたキオクシアが他社と統合することへの拒否感もある。
 キオクシアとWDが統合を断念した場合に向けて、SKはキオクシアに新たな案を提示するため、SBGに協力を打診した。SBGは傘下に英半導体設計大手アームを抱えるなど人工知能(AI)を事業の中核に据えている。
 SKはチップを積層して高速・大容量のデータ処理を可能にする超高速DRAM「HBM」を手がける。キオクシアの工場の転用などを想定しているようで、SBGにとってSKと組んでキオクシアと協業することはデータセンター事業に必要な半導体メモリーの確保につながるとみられる。
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【スズキ、インドをEV輸出拠点に 25年にも日本で販売 日本メーカーの輸出モデル転機に】
 同じ18日の日経速報メールは次のように報じた。
 スズキはインドを電気自動車(EV)の輸出拠点に位置づけ、環境車の世界展開を加速する。2025年にも日本に輸出し、欧州向けでは資本提携するトヨタ自動車への供給を検討する。インドは市場の成長余地が大きく、製造コストも日本より安い。EVは供給網や各国の産業政策のあり方を一変させ、日本の輸出モデルも変容を迫られている。
 スズキのEV自社生産はインドが初めて。日本の自動車大手は研究開発や人材などの経営資源が豊富な国内工場で技術を確立し、生産モデルを海外に移転するのが一般的だった。トヨタや日産自動車は国内から始めていた。スズキはEVの中核工場をインドに位置づける格好で異例だ。
 インドから25年にも日本に輸出・販売するのは、価格が300万〜400万円程度の小型多目的スポーツ車(SUV)タイプのEVだ。西部グジャラート州の工場に新生産ラインを設け、24年秋から生産する。生産はインド子会社のマルチ・スズキが担う。
EVのほかガソリン車も生産し、生産能力は年25万台を想定する。日本では26年に軽自動車のEV生産を静岡県で始める計画で、インドでの生産の知見を日本に生かす。
 EV需要が大きい欧州にも輸出する。小型タイプのSUVの販売に加え、資本提携するトヨタにもOEM(相手先ブランドによる生産)供給する検討に入った。トヨタも欧州でEVのラインアップの拡充を急いでいた。
 スズキはインドの乗用車市場でシェア4割を占める最大手で、現地で低コスト生産のノウハウを蓄積している。手ごろな価格を武器に世界でEVシェアを伸ばす中国勢に対抗できる開発スピードやコスト競争力をインドで磨く。日本は円安の影響で輸出競争力が高まっているものの、スズキはインドが最適なEV輸出拠点とみている。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、インドの製造業全般で原価は日本に比べて2割安く日本生産に比べて有利となる。スズキ幹部は「(輸出先の)欧州などで中国産EVとの価格競争は激しくなる」と話す。
 インドはEV市場としても有望だ。インドのEV販売台数は23年1〜6月に1万5000台とシェアは1%以下と小さいながらも前年同期比で6倍と勢いが出ている。インド政府は30年に新車販売の30%をEVにする目標を掲げる。
 英調査会社グローバルデータによると、インドでのEV販売シェアの23年予測は、タタ自動車が70%で突出。続く2位も地場マヒンドラ・アンド・マヒンドラ(11%)で3位は中国・上海汽車集団系のMGモーター(10%)だ。EV未発売のスズキは巻き返しが急務だった。
 世界のEV市場では規模を拡大した中国が急速に存在感を高めている。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のEV輸出に占める中国の比率は5年間で8倍に膨らんだ。スズキはガソリン車では既にインドからアフリカに輸出を増やし中国勢などに対抗してきた。EVでも同様にインドから世界へ輸出する。
 日本自動車工業会によると、日本の乗用車輸出は22年に332万台と1975年に比べ1.8倍に膨らんだが、ピークの2008年に比べ44%減少している。長らく輸出の主力として国内経済を支えてきたが、世界市場の拡大などを背景に海外生産を増やしてきた側面がある。
 自動車市場全体に占める割合は限定的だが、EV市場の立ち上がりは海外で早く、スズキのように「地産地消」の観点からトヨタやホンダは米国など海外でのEV生産計画を進めている。日本の自動車の輸出が伸び悩み、将来的に日本の貿易収支にも影響が出る可能性がある。

【三菱電機、豪と防衛装備開発 日本企業初の海外直接契約】
 19日の日経速報メールは伝えた。
 三菱電機は19日、オーストラリア国防省と防衛装備品の共同開発事業の契約を結んだと発表した。日本企業が防衛分野で外国政府と直接契約を結ぶのは初めて。国内の防衛産業はこれまで、顧客が防衛省に基本的に限られていた。海外市場を開拓し、防衛産業の底上げにつなげる。
 双方のレーザー技術を組み合わせて周囲に脅威がいないかを警戒・監視する装備品を試作する。豪軍の戦闘機や車両などに搭載することを想定する。開発期間や金額規模などは非公表とした。
 日本の防衛装備品メーカーは従来、外国政府の防衛装備品開発では防衛省を通じ参画してきた。
 日本の防衛産業は技術水準を保つために設備や人材の維持に費用がかさむ一方で、顧客が国内に限られている。2023年の防衛白書は日本の防衛産業について「撤退する事業者が相次ぎ、国内の製造体制が弱体化している」と指摘した。
海外政府と直接契約する事例が増えると、企業は納入先を広げられ、投資回収がしやすくなる利点がある。
 三菱電機は1960年代から防衛関連事業を手掛け、レーザーや誘導弾などが主力だ。国の防衛予算の増額に合わせて防衛関連事業の体制を強化している。5月には防衛・宇宙事業で配置転換を含めて1000人規模を増やす方針を示した。
 防衛省は19日にコメントを出し「企業と連携しながら、官民一体となって防衛装備移転を推進する」と強調した。今回の契約について「両国の防衛装備・技術協力にとって象徴的な事例となり、更なる協力の深化に資するものだ」と評価した。
 防衛装備品の海外との共同開発の強化に向け、日本政府は機密情報を取り扱う人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度の創設に向け検討を進めている。日本は主要7カ国(G7)で唯一仕組みが未整備だ。
 外国政府に関係する案件でこれまで同制度がないため、海外展開が進まなかった日本企業もある。実現すれば高度な技術の共同開発がしやすくなり、防衛装備品の輸出拡大への期待が高まる。
 豪州にとっても日本との安全保障での連携強化には利点がある。中国抑止を念頭にした国防力の向上を図っているが自国のみでは限界がある。
 2022年に中国がソロモン諸島と安全保障協定を締結するなど、豪州と歴史的に関係の深い太平洋島しょ国で中国の影響力が高まっている。
 8月には自衛隊と豪軍の往来手続きを簡素にする「円滑化協定(RAA)」が発効した。同月に豪州で実施した共同訓練で初めて適用した。
 木原稔防衛相と豪州のマールズ副首相兼国防相は19日、防衛省で会談し、日豪の防衛装備・技術協力が重要だとの認識で一致した。両氏は三菱電機と豪国防省の契約締結公表を歓迎した。
 軍装備や軍事力の近代化を急ぐには、同盟国の米国や価値観を共有する同志国との連携強化がカギとなる。豪州は3月には米英との安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を通じた原子力潜水艦配備を発表した。
 豪政府が4月にまとめた中長期的な国防戦略の方針で「豪州は日本やインドを含む重要な大国との関係と実務的な協力を拡大する必要がある」と指摘していた。
 豪州の防衛産業を巡っては、日本は16年に三菱重工業や川崎重工業が建造する新型潜水艦「そうりゅう」の売り込みを図るも、フランス企業に敗れた経緯がある。雇用の拡大を狙った当時のターンブル政権が現地生産と技術移転を重視し、好条件を提示できなかった。
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【トヨタ、米EV充電でテスラ規格採用 日産・ホンダに続き】
20日の日経速報メールは次のように報じた。
【ニューヨーク=堀田隆文】トヨタ自動車は19日、北米の電気自動車(EV)の急速充電規格を巡り、米テスラの「NACS」方式を2025年から採用すると発表した。日本車メーカーでは、日産自動車、ホンダに続く採用になる。北米の充電網はテスラ規格が主流になる見通しで、トヨタも採用に踏み切り、自社EVの顧客の利便性を高める。
 北米の現地法人がテスラとの間で19日までにNACS採用で合意した。25年から投入する多目的スポーツ車(SUV)など、トヨタ、レクサスブランドのEVの一部についてテスラ規格を採用する。北米に1万2000基以上あるテスラの急速充電器「スーパーチャージャー」でトヨタのEVを充電できることになった。
 トヨタは北米でNACSとは別の「コンボ(CCS)」規格を採用してきた。この規格を標準とするEVについては、25年以降、NACSに対応するアダプターを用意してテスラ式で充電できるようにする。
 テスラの急速充電器は北米で全体の6割のシェアを握っている。今回、トヨタが採用を決めたことで、北米の充電規格はテスラ方式が主流になる公算がさらに大きくなった。
 北米で、テスラ規格が優勢になったのは23年春以降だ。まず、CCS陣営だった米フォード・モーターが同年5月に採用に踏み切ると、直後に米ゼネラル・モーターズ(GM)も追随した。米国の大手2社の動きをうけて、独メルセデス・ベンツグループや日産、ホンダも採用を表明した。
 さらに、直近では、韓国の現代自動車グループも採用を決めた。独フォルクスワーゲン(VW)や欧州ステランティスも検討しているとの観測があるなか、残る有力メーカーであるトヨタの動向に注目が集まっていた。
充電規格を巡る争いがなくなり、規格が統一されれば、消費者の利便性は大きく高まる。一方、テスラにとっては、自社規格が標準となるメリットは大きい。
 一つはデータだ。テスラは、自社充電網を利用した他社EVの充電データや車の走行情報などを取得できる見通しだ。これらはEVや関連サービスの開発に向け、貴重な資源になる。
 充電網からの課金収入も増える。テスラにとってこの収入の規模はまだ大きくないが、ライバルのEVがこぞってテスラのネットワークを活用し始める25年以降は、大幅に増加する可能性がある。

【第一三共、米メルクとがん治療薬で提携 契約金6000億円】
 同じ20日の日経速報メールは次のように報じた。
 第一三共は20日、米製薬大手メルクとがん治療薬の開発と販売で提携したと発表した。第一三共が持つがん治療薬候補の開発にメルクが加わり、第一三共は契約一時金としてまず40億ドル(約6000億円)を受け取る。販売実績に応じ第一三共はロイヤルティーを受領する。同社が受け取る金額は最大220億ドルになる可能性があるという。
 提携の対象はがん細胞を狙い撃ちにする技術「抗体薬物複合体(ADC)」を使う3製品。日本を除く世界での臨床試験(治験)と販売をメルクと共同で手掛ける。製造と供給は第一三共が担う。
 第一三共は3製品について単独で開発してきたが、世界各地に拠点を持つメルクと提携したほうがリスク分散や販売拡大につながると判断した。
 第一三共は共同開発に伴う対価として23年に30億ドルを、24年と25年にそれぞれ7億5000万ドルずつ受け取る。そのうち肺がん向け候補の一つは23年度下期に米国で承認申請を予定しており、3製品の合計の売上高は2030年代半ばに数十億ドルに達する可能性があるとしている。
 第一三共はADC技術に強みを持ち、乳がんや肺がんなどの治療に使う「エンハーツ」が足元の業績をけん引している。エンハーツの他にもADC技術を使った複数の候補品を開発しており、26年3月期のがん領域の売上収益を9000億円以上とする目標を掲げていた。
 20日の東京株式市場で第一三共株は一時前日終値比18%(631円)高い4210円をつけた。
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【ガザへ人道支援物資の搬入始まる ラファ検問所が再開】
 21日の日経速報メールは伝えた。
 ガザを実効支配するハマスが7日にイスラエルに大規模な越境攻撃をかけたのを受け、イスラエルはガザの「完全包囲」を宣言した。電気や水、食料、燃料の供給が遮断され、ガザ住民の窮状が深刻になっている。
 国連はガザの人口約220万人のうち140万人が避難生活を送っていると推計する。1日あたりトラック100台分の物資が必要とみる。物資搬入を継続し、供給量を増やせるかが課題だ。
 イスラエルはガザへの空爆を続け、周辺に地上部隊を集結させている。近く本格的な地上侵攻が始まるとの見方がある。
 ハマスは20日、拘束している人質のうち米国籍の母と娘の2人を解放したと発表した。「カタールの努力に応え、人道的理由から解放した」と声明を出した。7日の戦闘開始以来、人質の解放は初めて。
イスラエル軍はハマスが203人の人質をとっていると公表していた。

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【日揮HD、曲がる太陽電池で「発電所」 ビルや店の壁に】
 21日の日経速報メールは報じた。
 日揮ホールディングス(HD)は2026年をメドに、次世代太陽電池の本命とされる「ペロブスカイト型太陽電池」で電力事業を始める。曲げることができ、従来のシリコン製では不可能だった壁面や耐久性の弱い屋根にも置ける。工場や物流倉庫、店舗などを活用した「どこでも発電所」の新市場を切りひらく。
 12年に始まった国の固定価格買い取り制度(FIT)で太陽光発電が普及し、大規模開発の適地が少なくなってきている。設置場所を増やせる次世代の太陽電池の用途拡大は、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた後押しとなる。
 出資先の京大発スタートアップ、エネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)が開発するペロブスカイト型太陽電池を使う。
日揮が他社の物流倉庫や工場などの屋根や壁を間借りして太陽電池の設備を導入し、電力供給を提案する。生み出した電気は長期間にわたり固定価格で売る。工場や倉庫で自家消費したり、他の拠点に送電したりすることを想定する。
 太陽電池を設置する工場や物流倉庫以外に、送電線を通じて電気を届けることも検討する。その場合、電力小売事業者として経済産業省への登録申請が必要となる。
 まずは24年に北海道苫小牧市の物流倉庫を用いて発電効率や耐久性などを実証実験する。26年をメドに大規模発電に乗り出す。30年に数百億円規模の売上高を目指す。
ペ ロブスカイト型太陽電池は「曲がる太陽電池」と呼ばれている。従来のシリコン製に比べて重さが10分の1程度と軽く、折り曲げやすい。
 化学工場にあるタンクの曲面や、ビルや商業施設の壁面、ドーム型の建物の屋根にも置けるため、太陽光発電のゲームチェンジャーとして期待されている。
 発電コストは従来のシリコン製よりも大幅に高いのが課題となっている。大量発注して調達コストを下げるほか、プラント建設のノウハウを生かして壁面などに簡単に取り付けられる工法を開発し、28年までに発電コストを既存の太陽電池を下回る水準にする。
日本の電源構成に占める太陽光発電の比率は21年度で8%と、10年前の20倍近くに増えた。曲がる太陽電池で設置場所が大きく増えれば、再生エネの普及がさらに加速する。日揮は30年までに発電能力を数十万キロワットに増やし、電力事業を主力事業の一つに育てる。
 ペロブスカイト型太陽電池は中国企業が量産化に先行している。日本でも積水化学工業やカネカが25年以降の量産を計画し、東芝やパナソニックホールディングスも開発を急いでいる。
 太陽電池は中国からの輸入に頼っているが、日本企業がペロブスカイト型で巻き返せば、エネルギーの安全保障にもつながる。(梅国典)

【コロナ禍とは何だったのか?】
 この数日間、立てつづけに3つの会合があった。(1)10月19日(木)に「附属中学の三期会」、(2)21日(土)に「辻達也先生を偲ぶ会」、そして(3)22日〈日〉に「首都圏都留市会」である。
 (1)の「附属中学の三期会」は、東京第三師範(1943年(昭和18年設置)附属大泉中学、後に東京学芸大学附属大泉中学となる中学校の同期の集まりで、コロナ禍の行動規制が緩和され4年ぶりに西武池袋線の江古田駅近くのイタリアンカフェで開かれた。同期だからみな同年の昭和11(1936)年4月から翌年3月末までの生まれ、参加者の顔と名前が一致する人が大部分であり、75年ほど時間を一挙に遡り、久闊を叙した。
 (2)の「辻達也先生を偲ぶ会」は横浜市立大学に永く勤められた日本近世史がご専門の辻達也さん(1949~1986年の37年間)が2022年9月20日に逝去され(享年96)、これを偲んで「日本史専攻卒業生の会」(大庭邦彦責任編集)が『会報』第8号「特集 辻達也先生を偲んで」(2023.8)を刊行、私も一文を草した。「辻達也さんを偲んで」(64~77ページ)で、これに注を付して本ブログ2023年8月3日「辻達也さんを偲んで」を掲載した。
 10月21日(土)、『会報』第8号の刊行に合わせて「辻達也先生を偲ぶ会」が開かれた。希望者だけが金澤八景にある市大の瀬戸キャンパスをめぐり、ついでシーサイドラインに乗って市大医学部の2駅先の産業振興センター下車、テクノタワー18階の宴会場グランシャリオが会場である。辻達也さんのご令嬢(長女)とその長男を含め、約30人の卒業生が参集、辻先生の学恩を語り、古文書合宿で見せた辻さんの素顔等を偲んだ。
 (3)の「首都圏都留市会」は山梨県「都留市で生まれ育った者及び都留市ゆかりの者並びに本会の目的に賛同する個人及び法人をもって構成」(会則第2条 会員)、「会員相互の親睦と交流を図り…郷土の発展に寄与する…」(会則第3条 目的)団体である。名誉会長が西室陽一(元)都留文科大学理事長)、会長が白洲慶子(女優)である。
 コロナ禍で休会していたが、5年ぶりに開かれた。場所は東京グリーンパレス(千代田区二番町)、参加者は約100名。私は2011年から2014年前まで都留文科大学の学長を勤めたので、そのときの教職員や都留市職員と旧交を温めることができた。
 2019年暮れに中国から流出した新型コロナウィルスが日本のみならず世界を席巻、その社会的・経済的・政治的な現象が世界中に及び、その救済策としてカタリン・カリコ氏が開発したmRNAにノーベル生理学・医学賞が与えられた(10月2日の日経新聞特報メール)。本ブログ10月6日掲載の「かわりつつある世界(14)」を参照されたい。
 近親者にコロナで死去した者、あるいは後遺症で苦しむ者がいない私にとって、今になってみるとコロナ禍とは何だったのか、7回にわたるワクチン接種とは何だったのかと、フッと疑問がわく。いずれにせよ、ふだん通りに会えるのは嬉しい。

【来春大卒内定者伸び、リーマン後最大7.4%増 日経調査】
 21日の日経速報メールは次のように報じた。
 日本経済新聞社が22日まとめた2024年度の採用状況調査で、主要企業の大卒内定者(24年春入社)は23年春の入社数に比べ7.4%増となった。新型コロナウイルス禍からの経済回復で2年連続のプラスとなり、伸び率はリーマン・ショックの影響を受けた09年度以降で最大だった。学生の売り手市場で、内々定の辞退も多い。人手不足の中で企業による奪い合いとなっている。
 【関連記事】学生の売り手市場とは 求人倍率、コロナ前水準に
 主要企業1083社を対象に10月2日時点の内定者数を聞き、比較可能な938社を集計した。大卒者には大学院修了も含む。
大卒内定者数は23年春に実際に入社した数に比べ7.4%増の12万1934人。新型コロナ禍で採用を手控えていた反動に加え、レジャーなどの需要回復を受けて内定を増やす動きが広がった。
 新型コロナ禍で落ち込んだ経済が回復する中で、様々な業種での人手不足が鮮明だ。企業は内定を増やしているが、計画には追い付かない。採用計画に対する内定充足率は91.8%だった。09年度の調査以降で最低だった23年度から1.6ポイント改善したものの、依然として低水準だ。
 内定者の増減を業種でみると、非製造業は8.2%増と2年連続でプラス。前年度(4%増)を上回る伸び幅で全体を押し上げた。新型コロナの5類移行やインバウンド再開を受け、空運(89.6%増)や鉄道・バス(35.5%増)、ホテル・旅行(2.2倍)などが積極的に採用した。23業種中17業種が増やした。
 全日本空輸(ANA)の井上慎一社長は「新型コロナ後の飛躍に向けて一緒にスクラムを組める若い力が必要だ」と話す。藤田観光は「業績回復やホテルの新規開業で人手不足が顕在化している」とし、2.2倍の46人を採用する。
 銀行(21.1%増)は店舗統廃合が一巡し、デジタル人材確保にかじを切る。31.6%増の500人が内定したみずほフィナンシャルグループは初任給の引き上げや募集コースの再編を実施。35.8%増の三井住友銀行もコース別採用を細分化し、専門性の高い学生のニーズに応えた。10%増の三菱UFJ銀行は「銀行の将来の不透明感が払拭され、想定以上にレベルの高い応募者が増えた」とする。
 製造業は5.5%増と3年連続のプラス。自動車・部品(6.9%増)や機械(7.2%増)など19業種中で17業種が増やした。三菱自動車は12.4%増の200人を採用した。自動車産業で電動化など事業環境が激変する中、開発や営業を担う若手人材を確保する狙いだ。国内で半導体の新工場建設が進む中、関連する人材への需要も高まっている。
 人手不足の中で学生に有利な売り手市場となっており、内々定を辞退する学生も多い。内々定を辞退した学生が「5割以上」と回答した企業の割合は28.5%と前年度より1.7ポイント上昇した。3年前は10.1%にとどまっていた。辞退が増えたことで、企業がより多くの内定を出すようになっている面もある。
 若手社員の転職が幅広い業種で増えていることも、新卒採用が増える一因となっている。日本総合研究所の山田久客員研究員は欧米の金融引き締めなどによる世界的な景気減速への不安は強まるものの、「製造拠点の国内回帰の影響で、企業の採用意欲は当面旺盛な状況が続く」とみている。

【衆参2補選、自民1勝1敗 長崎4区は金子氏当選 参院徳島・高知は野党系広田氏】
 22日の日経速報メールは次のように報じた。
 衆院長崎4区と参院徳島・高知選挙区の衆参2つの補欠選挙が22日投開票された。衆院長崎4区は自民党新人の金子容三氏が制した。参院徳島・高知は野党系の広田一氏が当選した。自民は1勝1敗となった。
 補選は9月の内閣改造・自民党役員人事後初めての国政選挙だった。10月中に衆院議員は任期4年の折り返しを迎える。衆院解散も取り沙汰されており与野党は総力戦で臨んだ。
 岸田政権の評価のほか物価高対策が争点となり論戦が交わされた。
 衆院長崎4区は自民の北村誠吾元地方創生相の死去による補選だ。立憲民主党元職の末次精一氏と自民新人の金子氏が立候補した。
 金子氏の父と祖父はいずれも自民の宏池会(現岸田派)に所属していた。「宏池会の選挙」の意味合いも帯びた。金子氏は組織戦を展開し自民、公明の支持層を固めた。末次氏は政府の物価高対策や金子氏の世襲を批判したが届かなかった。投票率は42.19%と過去最低だった。
 参院徳島・高知補選は元秘書への暴行が発覚した高野光二郎氏(自民を離党)の議員辞職に伴う。野党系の無所属元職の広田氏と、自民新人の西内健氏の争いとなった。立民や共産党などが広田氏を支援し、公明が西内氏を推薦した。
 広田氏は知名度を生かし序盤から有利な戦いを進めた。日本維新の会や共産が独自候補の擁立を見送ったため広田氏に一本化された。無党派層にも浸透した。合区の投票率は32.16%だった。徳島県は23.92%、高知県は40.75%で両県とも過去最低を記録した。

【浮体式洋上風力、デンマークと量産技術 世界標準狙う】
 23日の日経速報メールは報じた。
 政府は再生可能エネルギーの切り札とされる浮体式洋上風力について、デンマーク政府と新たに技術協力の枠組みを設ける。風力発電で世界トップのメーカーと運営企業を擁するデンマークと、浮体式のノウハウを持つ日本の技術で世界市場を席巻するデファクトスタンダード(事実上の標準)を目指す。
 両政府が24日に協力枠組みの立ち上げで合意する見通し。デンマークは洋上風力の先進国で、風車世界大手のベスタスと運営世界首位のオーステッドを抱える。
 両国の産学官が共同で、開発技術のコスト低減に向けて調査や研究開発を始める。日本からは大手電力や造船、大学などが入る見通し。具体的な参加団体は今後調整する。両国は他国にも参加を呼びかけ、大型化や大量生産可能な低コストの製造技術を開発する。
 浮体式では風車の技術だけでなく、設備を海に浮かべる造船の技術なども組み合わせる必要がある。量産技術は世界で確立していない。
 日本ではジャパンマリンユナイテッドや三井海洋開発、日立造船などが浮体式のノウハウを持つ。デンマークが日本と組むのは、日本が浮体式に欠かせない造船技術を持ち、大規模な導入が期待できる市場と見込んでいるためだとみられる。
 洋上風力は導入エリアをどこまで拡大できるかが課題となる。浮体式洋上風力は海に浮かべた風車で発電する仕組みで、海底に固定された「着床式」より深い海域まで広く設置できる。
 浮体式は日本の再エネ普及に欠かせない。政府は洋上風力に関して、2030年に1000万キロワット、40年までに3000万〜4500万キロワット分の発電設備の事業者決定を目指している。40年までに洋上風力では浮体式が主流になる見通しだ。
 欧米などで普及が進んだ着床式の技術は風車メーカー単体で完結するため、日本勢はシェア獲得で後れをとった。浮体式は大規模な商用化の事例がまだなく、日本は洋上風力の技術競争で巻き返しを狙う。
 国際団体の世界風力会議(GWEC)によると、2020年の導入量が1.7万キロワットだった浮体式洋上風力は30年に1090万キロワットに急拡大する。普及が進む欧米は洋上風力のさらなる適地を求め、浮体式の技術開発を急いでいる。
 日本の産業界は40年までに洋上風力の発電設備で国内調達比率を60%にする自主目標も掲げる。浮体式の成否は脱炭素への転換だけでなく、日本のエネルギー安全保障にも関わる。
【関連記事】
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・風力発電の本命「浮体式」 革新再び、大規模開発競う

【補助金支給、日米欧で共通基準づくり EVや半導体念頭】
 24日の日経速報メールは次のように報じた。
 政府は電気自動車(EV)や半導体などへの補助金について米欧と共通の基準づくりを目指す。脱炭素や経済安全保障の観点から各国で補助金競争が過熱し、自国優先のルールづくりが相次ぎかねない状況に対応する。新たな枠組みの創設を視野に年内にも日米欧で議論を始める。
 西村康稔経済産業相が日本経済新聞の単独インタビューで明らかにした。日本が米欧の間に立ち、自由貿易に基づいた公正な競争環境を確保する狙いがある。
 岸田文雄首相は23日の所信表明演説で半導体や脱炭素に関わる物資で供給力強化を打ち出した。日米欧連携もこれに対応する動きだ。
 補助金への対応では日米間の外務・経済閣僚協議「経済版2プラス2」や、日欧ハイレベル経済対話を活用する。西村氏は作業部会の設置を念頭に「補助金執行の協調に向け、具体化を進める」と述べた。
 作業部会では日米欧がそれぞれ導入を検討している補助金や政府調達の要件などを日米欧ですり合わせる。
 対象としてEV補助金のほか、政府が10年間で20兆円を投じるグリーントランスフォーメーション(GX)投資や重要物資の安定確保に関する支援などを想定する。EV補助金ならEVの環境性能といった項目を補助金の要件に盛り込む見通しだ。
 大規模な政府補助の協調を通じ、有志国同士による供給網の連携強化を進める狙いもある。西村氏は「有志国の中で連携し、保護主義にならないように供給・調達する仕組みを構築する」と語った。
 EV補助金を巡っては各国が独自に支援基準を設け、自国への投資や立地を促す傾向が強まっている。米国は2022年に成立したインフレ抑制法(IRA)で購入時の税優遇の条件として、電池部品の5割を北米で製造することなどを定めた。
 米国はタイ通商代表部(USTR)代表が「(自由貿易が)国を脆弱にした」と発言。労働者重視の姿勢や経済安保への関心の高まりに伴って、世界貿易機関(WTO)など既存の自由貿易体制と距離を置きつつある。
 欧州も例外でない。フランスは補助金の適用条件に製造・輸送時に排出する二酸化炭素(CO2)の量を考慮する仕組みを導入し、 中国製EVの事実上の排除を狙う。イタリアも同様の措置を検討している。
 各国が保護主義的な産業支援に傾く背景に、脱炭素や経済安保に関わる重要物資で安価な中国産製品に過度に依存してきたことへの危機感がある。こうした物資の供給網では労働者の人権侵害や環境上の問題なども指摘される。
 脱炭素分野で太陽光パネルの設置に補助金を支給しても、パネルが中国製なら結果的に補助金が中国に流れる。先端技術の流出防止を中心とした供給網のデリスキング(リスク低減)と相まって補助金の要件が自国優先の厳格なものになってきた。
 日本としてはWTOの協定など客観的な国際ルールを踏まえつつ、日米欧で共有できる範囲で補助金の基準づくりを進める。日米欧で決める共通基準は、それぞれの政権が変わっても引き継がれる必要がある。
 「グローバルサウス」と呼ばれるアジアやアフリカ、中南米などの新興国・途上国への投資拡大も明言した。経産省の案件だけで今後5年間で2兆円の官民投資を目指し、23年度補正予算案で数千億円の確保を見込む。

【米自動車スト、ビッグ3への打撃あらわ 泥沼化の懸念】
 25日の日経速報メールは次のように報じた。
 【この記事のポイント】
・全米自動車労組(UAW)のスト、収束見通せず
・GMは損失週300億円、通期の業績見通しを撤回
・コストの増加避けられず、EVシフトに懸念
【ニューヨーク=堀田隆文】米自動車大手の「ビッグ3」で、全米自動車労組(UAW)によるストライキの打撃が大きくなっている。米ゼネラル・モーターズ(GM)は24日、どこまで収益が目減りするか読めないとして、2023年12月通期の業績見通しを撤回した。UAWは各社が収益源とする主力工場をスト対象に加え始めている。労使のどちらかが譲らなければ、事態は一段の泥沼化が必至だ。
【関連記事】
・米GM、スト損失は週300億円 通期の業績見通しを撤回
・米自動車労組、GMの主力工場で追加スト 5000人参加
 GMは24日に23年7〜9月期決算を発表し、通期業績の見通しを撤回した。これまで、23年12月期に純利益が93億ドル(約1兆4000億円)から107億ドルになると見積もっていた。
 「ストの期間や程度は推測できず、不確実だ」。24日開いた決算説明会でGMのポール・ジェイコブソン最高財務責任者(CFO)は撤回の理由を述べた。ストによる工場停止の影響で、足元は1週間あたり2億ドルの生産損失を被っているとも明かした。
 業績だけではない。GMは24年半ばまでに累計40万台をつくるとしていた電気自動車(EV)の生産目標も取り下げた。米EV市場の需要が想定を下回っているためと説明したが、ストの影響でコストが膨らみ、事業の進捗が遅れている可能性がある。
 GM首脳陣は決算発表の場で、UAWの要求を飲むのは難しいという姿勢を崩さなかった。メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は「会社の将来や従業員の雇用を危険にさらす(水準の)労働協約は結べない」と何度も強調した。
 会社が一丸となって進めるEVシフトが停滞する懸念も示し「EV競争を勝ち抜ける(内容の)協約にしなければならない」とクギを刺した。
 GMを巡っては、同社が仮にUAWの求める賃上げなどをそのまま飲めば、人件費増加がEBIT(利払い・税引き前損益)ベースで年 13億ドルの減益要因になるとの試算がある。これは年間EBITの約1割の規模だ。今後4年間、毎年コストが1割上がる事態になりかねない。GMが簡単に労組要求にうなずけない理由だ。
 一方、GMの決算発表をうけたUAWは24日、さらに強硬な姿勢をみせた。決算説明会が終了した直後に、同社のテキサス州アーリントンの工場で約5000人の組合員が新たにストに入ったと公表した。
 GMが24日発表した収益水準を考慮すると「もっと努力できることは明らかだ」として、組合員間の賃金格差の是正やインフレ率と連動した生活費調整(COLA)制度、確定給付年金を巡る条件の改善を訴えた。労組も譲る姿勢をみせない。
 UAWが今回スト入りしたアーリントン工場はGMの収益源となっている工場だ。主力の多目的スポーツ車(SUV)を年30万台の規模で生産している。UAWは23日には欧州ステランティスのミシガン州のピックアップトラック工場でもストを始めており、やはり稼ぎ頭が狙われた。
 ストで会社を揺さぶるなか、UAWは最も強力なカードを切ってきている。会社に要求を飲ませるため、畳みかけるタイミングがきたと判断している可能性がある。それだけに、ここで会社側が折れなければ、交渉は泥沼化する恐れがある。
 GMに続き、26日にはフォード・モーターも23年7〜9月期決算を発表する予定だ。同社はGMよりもストで生産停止した生産拠点の数が多く、累積の経済損失がより膨らんでいる可能性がある。

【所得税3万円・住民税1万円、政府の減税案骨格判明】
 25日の日経速報メールは次のように報じた。
 政府が税収増の還元策として検討する4万円の減税策で、1人あたりで所得税3万円、住民税1万円それぞれ定額で減税する案が明らかになった。扶養する親族がいれば人数分の減税も受けられるようにする。所得が少なく減税策の恩恵をすべて受けられない「隙間」の所得層は900万人程度と推計し、給付などの支援策で補う。
【関連記事】所得減税4万円、非課税世帯7万円給付 還元策で政府案
 政府案の骨格が判明した。岸田文雄首相は26日に政府与党政策懇談会を開き、具体策の検討を指示する。減税の方法や金額、対象は与党の税制調査会が議論し、詳細を年末に固める。政府は2024年の通常国会に税制改正法案の提出をめざす。減税は早ければ24年6月ごろをめどに実施する。
 納税者が家族2人を扶養している3人世帯の場合は計12万円の減税となる。政府の試算では4万円分の減税を受けられるのは扶養親族も含めて8600万人程度になる。
 所得が低く、住民税も所得税も課税されていないおよそ1500万世帯には7万円を給付する。すでに3月に決めた物価対策で3万円を給付して、合算すると1世帯あたり10万円を支援することになる。
 7万円を給付するための必要額は1兆円超とみられ、23年度補正予算案に盛り込む。成立後速やかに給付する。
還元策の最大の課題は、4万円の減税を受けきれず、住民税非課税世帯への給付の対象でもない「隙間」の所得層900万人をどう支援するかだ。夫婦で子ども2人がいる世帯の場合、給与所得が年250万〜300万円程度の場合に該当する可能性がある。
 政府案では住民税は課税、所得税は非課税の500万人程度には、住民税非課税世帯への1世帯あたり10万円と同水準の給付を用意する。
 住民税も所得税も課税されているが納税額が4万円より少ない層は400万人程度とみる。減税だけでは4万円分の効果が得られないため自治体を通じた給付などで補う案を検討している。ただ制度設計が複雑で給付に時間がかかる恐れがある。
所得税が非課税の子育て世帯には別の給付も設ける。隙間への支援策の内容は年末に固める。還元策全体では5兆円規模に及ぶ。


 この間、以下の録画を視聴することができた。(1)ETV特集「世界を変える大発見はこうして生まれた カリコ氏×山中伸弥 新型コロナワクチン開発の立役者のカタリン・カリコ博士が今年のノーベル生理学・医学賞に選べれた。2021年放送のカリコ博士と山中伸弥教授の対談を緊急アンコール」10月7日。  (2)BS1スペシャル「市民が見たコロナショック 2023年10月。パンデミックで体と心に傷を負った子供たちの厳しい現実。コロナ後遺症に苦しむフランスの中学生など4組の未来は?」8日。 (3)BS6報道1930「イスラエルとハマスが大規模戦闘。ロシア軍が併合4ヵ村で初の撤兵へ。市民が反転攻勢に参加か? 要衝メルトポリ奪還の秘策」9日。 (4)BS6報道1930「中国包囲網の“失敗”。制裁突破が新型スマホ。米中分断の逆効果。抜け道は韓国?台湾? “甘い規制”に透ける米の本音は」10日。 (5)BS6報道1930「“空爆なら人質処刑″…地上作戦はどうなる。ハマス奇襲なぜできた? ガザ地区は人道危機か?イスラエルが完全包囲」11日。 (6)映像の世紀バタフライエフェクト「タケのカーテンの向こう側、外国人記者が見た中国。大躍進政策、文化大革命、天安門事件、巨大国家との攻防の記録」11日。 (7)BS6報道1930「イスラエルの報復激化。二正面作戦を強いられる米国の誤算と支援の行方。」12日。 (8)BS6報道1930「プーチン氏イスラエル情勢をどう見る? ロシアがハマスに武器供与?」13日。 (9)BS6報道1930「ガザへ地上作戦発動か?人質出と住民避難は? 世界が直面する2つの戦争、ウクライナが抱く不安」16日。 (10)Eテレ「世界サブカルチャー史3「日本逆説の60~90年代。90年代の第1回(再) 日本社会の可能性を考える異色の現代史」17日。 (11) BS6報道1930「イスラエル軍準備完了、地上部隊の侵入開始か。中東緊迫、中国好機? 習近平氏の本音と誤算。プーチン氏訪中の意味とは」17日。 (12) BS6報道1930「”ハマスは負けない “、”黒幕”イランが介入?」18日。 (13) BS6報道1930「侵攻迫るガザに危機感 賭けに出たバイデン大統領。外交の失敗が生む悲劇」18日。 (14) BS6報道1930「10月決戦重要局面? 「ロ軍がもう眠れない」、ウ軍が渡河作戦成功?」20日。 (15) BS6報道1930「浸食されるロシア…中国極東の港を”奪還”? 北極圏で狙う「氷上シルクロード」の現実味。ガザ地上作戦間近か?」23日。 (16) BS6報道1930「<解散>で終わらない旧統一教会問題の行方、資産流出? 緊迫イスラエル・ガザ最新情勢」24日。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
前園長(2012年8月~2023年3月)

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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