変わりつつある世界(14)
前稿(13)を掲載した後の夕方、非上場化を決めた東芝は、新たな経営範囲の検討を始めたと伝えた。
【東芝、主力4事業の再統合検討 発電・鉄道など】
2023年9月21日の日経メールは次のように伝えた。
東芝は発電や鉄道など主力4事業子会社の再統合を検討する。経営再建の過程で2017年に分社化したが、営業や開発など機能が重複し弊害が目立っていた。21日に投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)と国内連合によるTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表。東芝本体への統合で効率化し、非上場後の成長戦略を加速する。
発電・原発などエネルギー、鉄道・水処理などのインフラ、ハードディスクドライブ(HDD)やパワー半導体のデバイス、IT(情報技術)システムの主力部門を束ねる子会社が統合の対象となる。2〜3年後をめどに吸収合併する協議を社内で始めており、上場廃止後にJIPとの協議を本格化する。
4事業子会社を東芝本体に取り込み、バラバラだった人事や財務などの間接部門を集約・統合する。東芝は17年に成長を目指して分社化に踏み切ったが、事業ごとに縦割り意識が強くなり、グループ横断のデジタル化が進まないなど非効率になっていた。
東芝は15年に不正会計、16年には米原発子会社の巨額損失が発覚するなど、経営陣の不正や判断ミスが重なり経営危機に陥った。家電や医療機器、半導体メモリーなど主力事業を相次ぎ売却し、財務の立て直しに向けた資金を捻出した。
東芝の23年3月期のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は2264億円で、競合に当たる日立製作所の1兆3734億円の6分の1、独シーメンスの107億ユーロ(約1兆7000億円、22年9月期)の8分の1にとどまっている。
発電・原発などエネルギー、鉄道・水処理などのインフラ、HDDとパワー半導体のデバイス、ITシステムの4事業が現在の主力となった。東芝関係者によると「株式非公開化から約5年で再生にめどをつける。株式市場への再上場をゴールとして考えている」という。まずは縦割りの弊害が目立つ4事業の壁を壊し、営業や開発、生産などあらゆる領域で横串を通して効率化を進めていく。(広井洋一郎、大西綾)
【日本テレビ、スタジオジブリを子会社化 社長を派遣】
同じ21日の日経速報メールは次のように報じた。
日本テレビホールディングス(HD)は21日、アニメ映画制作のスタジオジブリ(東京都小金井市)を連結子会社の日本テレビ放送網が子会社化すると発表した。議決権ベースで42.3%のジブリの株式を10月6日付で取得する。同社の社長には日本テレビ放送網の福田博之取締役専務執行役員が就く見通し。
日テレHDによると、取得金額は明らかにしていないが、開示可能となった時点で公表するとしている。日テレの動画配信サービス「Hulu」でジブリ作品を配信するかどうかについて、新社長に就く福田氏は「今のところ現状と何も変わっていない。何かあればこれから考えたい」と答えた。
同日の会見に出席したジブリの鈴木敏夫社長は「1人の人間が背負うにはジブリは大きな存在になりすぎた。個人ではなく、大きな会社の力を借りないとうまくいかないのではないかと考えた」と語った。日テレHDの杉山美邦会長は「ジブリは日本を代表するトップクラスのアニメ会社。今の制作体制を最大限尊重したい」と強調した。
ジブリの新体制の取締役は8人となる。創業者の宮崎駿氏は取締役名誉会長、鈴木氏は代表取締役議長、宮崎氏の長男の宮崎吾朗氏は常務取締役に就く。新社長の福田氏を含め日テレ側からは3人の取締役と監査役1人を送り込む。10月30日に開催予定の臨時株主総会で正式に決議する。
日テレHDは「風の谷のナウシカ」を1985年にテレビで初めて放送して以降、ジブリの映画制作にも出資してきたほか、2001年にオープンした「三鷹の森ジブリ美術館」の設立にも携わった。今後は日テレがジブリの経営面をサポートし、ジブリは作品の製作に専念するとしている。
両社によると宮崎駿氏は82歳、鈴木氏は75歳となり、長らく後継者について議論してきた。長男の吾朗氏が何度か後継者として候補に上がっていたが、「1人でジブリを背負うことは難しい。会社の将来は他に任せた方が良い」と固辞していた。経営を任せる様々な候補を検討したが、関係の深い日テレHDに白羽の矢がたったという。
ジブリの買収を受けて日テレHD株は私設取引システム(PTS)で上昇した。一時21日終値(1375円)より22%高い1675円で取引された。
【米メディア王マードック氏引退 長男にバトン、11月に】
同じ21日の日経速報メールは次のように報じた。
【ニューヨーク=清水石珠実】米「メディア王」ルパート・マードック氏が経営の最前線から退くことが分かった。フォックス・コーポレーションとニューズ・コーポレーションが21日、社員向けの書簡で同氏が11月に会長職を退任し、それぞれの名誉会長に退くと発表した。
長男のラクラン・マードック氏が単独で会長を務めることになる。
ルパート氏は92歳。父親から引き継いだオーストラリアの新聞事業を基盤に、一代で世界を代表するメディア企業を育てた。だが高齢のため、最近は経営手腕への不安がささやかれていた。
例えば、2020年の米大統領選を巡る報道で、フォックス傘下のケーブル報道局「FOXニュース」が複数の名誉毀損訴訟を抱えた。今年4月、原告の投票機メーカーの1つと和解にこぎつけたが、和解額は7億8750万ドル(当時の為替レートで約1090億円)と米国の名誉毀損訴訟としては最高水準の損失を出し、投資家の批判を浴びた。
この騒動を巡って流出した資料で、FOXニュース内の経営が混乱している様子も白日の下にさらされた。また、22年後半にはフォックスとニューズの合併を模索したが、最終的には有力株主の賛成を得られずに23年1月に計画撤回に追い込まれた。
ルパート氏は、プライベートでもドタバタが目立っていた。22年、約6年連れ添った4人目の妻ジェリー・ホール氏と突然離婚。23年3 月には保守系のラジオパーソナリティーの女性と婚約したことを明かしたが、2週間後には婚約破棄を発表した。
書簡のなかでルパート氏は「自らは極めて健康だ」と述べた。名誉会長に退いたのちも、「フォックスやニューズが提供するコンテンツには毎日目を通して、意見交換に参加したい」と述べた。
また、「(フォックスとニューズの)経営は健全だ」とも記した。インターネットの台頭などで事業環境は変化しているものの「(両社の)成長の可能性はこうした逆風よりも大きい」と続けた。
【岸田首相「資産運用特区を創設」 海外勢の参入促す】
22日の日経ニュースメールは次のように報じた。
この記事のポイント
・岸田首相がニューヨークで投資家向けに講演
・資産運用特区を創設して慣行や障壁を見直し
・英語で行政対応を完結できるように環境整備
【ニューヨーク=藤田祐樹】訪米中の岸田文雄首相は21日午後(日本時間22日未明)、ニューヨークで投資家向けに講演した。日本の資産運用業の強化へ海外勢の参入を促すための「資産運用特区」を設けると表明した。英語で行政対応を完結できるようにするなど外国人を呼び込む環境を整える。
首相が講演する「ニューヨーク経済クラブ」は1907年に設立された会員制組織で、米国経済界のリーダー層が集う。日本の首相がこの場で話をするのは初めてとなる。
首相は政府が掲げる「資産運用立国」の実現に向けた策を語った。2000兆円を超える日本の個人金融資産を生かした資産運用ビジネスの発展をめざす姿勢を訴えた。
関連記事
・岸田文雄首相 ニューヨーク経済クラブでの講演 全文
・岸田文雄首相 ニューヨーク経済クラブの講演 英文全文
資産運用業について「取り組みが遅れていると指摘されてきた構造改革を断行する」と強調。「日本の資産運用セクターが運用する資金は800兆円で、足元3年間で1.5倍に急増した」と説明し、日本独自のビジネス慣行や参入障壁を改める意向を示した。
柱は資産運用特区の創設だ。海外から優秀なファンドマネジャーを招くうえで日本語の壁の高さが指摘されてきた。「英語のみで行政対応が完結できるよう規制改革し、ビジネス環境や生活環境の整備を重点的に進める」と改善策を説いた。
資産運用会社が本業に専念できるよう「バックオフィス業務のアウトソーシングを可能とする規制緩和を実施する」とも述べた。
米国やフランスなどの例を参考に「運用資金獲得支援プログラム(EMP)」を整備して新規参入の運用会社を支援する方針だ。投資家の意見を政策に反映させるため、日米を主体とした「資産運用フォーラム」を立ち上げる。
首相は日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)について「改革の実効性を高める」と言及した。米欧に比べて低いと言われてきた日本のPBR(株価純資産倍率)を意識して計画の策定や実行を促す。
政府は年末までに一連の規制緩和策などを詰め、2024年の通常国会に必要な法案を提出する段取りを描く。
首相は22日に帰国した後、週明けに経済対策の柱立てを閣僚に指示する予定だ。
講演では「構造的な賃上げ」と「持続可能性強化のための官民投資」の2点に重きを置いた対策をまとめると指摘。投資家に向けて「日本経済の底力と将来の計画をよく見てもらい、日本への投資を強く求めたい」と要請した。
講演後は出席者の質問に答えた。ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授をはじめ金融界の経営者ら200人ほどが参加した。
日本に投資を呼び込むため、首相は22年にもロンドンの金融街シティーやニューヨーク証券取引所で演説し少額投資非課税制度(NISA)の抜本拡充や恒久化を打ち出した。
【日銀、追加の緩和修正見送り 金融政策の現状維持を決定】
22日の日経ニュースメールは次のように報じた。
日銀は22日に開いた金融政策決定会合で金融緩和策の現状維持を全会一致で決めた。長期金利の事実上の上限を1%とする 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)や、マイナス金利政策、上場投資信託(ETF)の買い入れなどの現行の緩和策を続ける。当面は物価や賃金の動向を慎重に見極めながら金融緩和策で経済を下支えする。
植田和男総裁が22日午後3時半に記者会見し、決定内容を説明する。
日銀は公表文で、足元の物価高について政府の経済対策などでピーク時よりプラス幅を縮小しているものの「予想物価上昇率は再び上昇の動きがみられている」とした。
総務省が同日発表した8月の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)は前年同月比で3.1%の上昇だった。日銀は上昇率が一時的に縮小した後、企業の賃金・価格設定行動の変化などを背景に「再びプラス幅を緩やかに拡大していく」とみている。
国内景気は企業収益が全体として高水準で推移するもとで、設備投資や個人消費が増加しているとの見方を示した。雇用・所得環境も緩やかに改善しているという。先行きは海外経済の回復ペースの鈍化で下押し圧力を受ける一方、ペントアップ(先送り)需要の顕在化などに支えられ、緩やかに回復していくとみる。
今後のリスク要因については「海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い」とした。経済・物価・金融情勢に機動的に対応しながら粘り強く金融緩和を続け、賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを目指すとしている。
米連邦準備理事会(FRB)は20日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を2会合ぶりに据え置いた。同時に公表した参加者による経済見通しでは19人中12人が年内の追加利上げを予想している。欧州中央銀行(ECB)は14日、初の10会合連続の利上げを決めた。
大規模緩和を続ける日銀と金融引き締め局面にある欧米中銀との違いが改めて意識され、外国為替市場で一段と円安が進む可能性がある。日銀の政策維持を受けて円は対ドルで売りが強まり、一時1ドル=148円台を付けた。日銀の発表直前には147円台後半で推移していた。
【ゼレンスキー氏「支援なければ敗北」 米共和幹部に直訴 ウクライナ支援に議会の壁 歳出増に反発、迫る政府閉鎖】
同じ22日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【ワシントン=坂口幸裕】米国によるウクライナ支援の先行きが見通せなくなっている。米政府が連邦議会に要請した同国への追加予算に、歳出増に難色を示す野党・共和党の一部議員が反発しているためだ。ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、「支援を得られなければ戦争に負ける」と議会内で与野党議員に直訴した。
21日午前、米首都ワシントンの連邦議会議事堂。ゼレンスキー氏を出迎える場に下院共和トップのマッカーシー議長の姿はなかった。下院の与野党議員が待つ部屋まで案内したのは、下院民主党トップのジェフリーズ院内総務のみ。超党派でウクライナを支えてきた米議会の変化を象徴する。
米議会は2022年11月の中間選挙を踏まえ、上院は与党・民主党が多数派を維持した。一方で下院で共和が過半数を握る「ねじれ議会」になった。
米政府は22年2月にロシアがウクライナ侵攻を始めて以降、430億ドル(およそ6兆3600億円)以上の軍事支援を約束。8月にはさらに240億ドル規模の追加予算を連邦議会に要請した。
足元では22年末に議会で承認された対ウクライナ予算が近く底をつく事態が現実味を帯びる。それでも、支持層を意識する共和の保守強硬派には「他国に白紙の小切手を送る前に、米国民の面倒をみる必要がある」(スコット・ペリー下院議員)との声が上がっている。
ゼレンスキー氏は与野党議員との会談後、X(旧ツイッター)で戦況や防空システムなど自国防衛に必要な武器について協議したと説明。「ウクライナの勝利がロシアや他のいかなる独裁国家も、自由世界を再び不安定化させないことを保証すると強調した」と投稿した。
「勝利のためには我々全員が団結し、協力しなければならない」とも訴えた。
マッカーシー氏は会談後にウクライナ支援を改めて表明し、追加予算も「喜んで検討する」と述べた。ただ一枚岩でない共和内のとりまとめは難航している。
1月に下院議長に選出された際、マッカーシー氏は就任に反対してきた保守強硬派が求めた解任動議を提出できる条件の緩和を受け入れた。党内で反発が強まれば、自身の立場が揺らぎかねない。
米メディアによると、マッカーシー氏は上下両院合同会議での演説を希望したゼレンスキー氏の打診を拒否した。保守強硬派への配慮が透ける。
上院では民主・共和ともにウクライナ支援継続を支持する議員が大勢だ。上院共和トップのマコネル院内総務は会談後の声明で「ロシアの軍事力を低下させることは戦略的な敵である中国の抑止に役立つ」と強調した。
追加予算の承認への道筋がみえない要因はもう一つある。米議会では9月末の会計期末を前に、成立のめどが立たない「つなぎ予算」だ。
こちらも共和強硬派の反対が続き、政府機関が閉鎖に追い込まれるリスクが高まっている。閉鎖されれば直接的な国内総生産(GDP)成長率の下押しに加え、経済統計の公表停止で政策判断に支障を来す懸念もある。
共和執行部が、「つなぎ予算」と240億ドルの対ウクライナ追加予算を同時に成立させようとした場合、下院強硬派が強く抵抗する公算が大きい。21日には歳出削減を求める強硬派が、ウクライナ支援などを盛り込んだことを理由に国防予算の関連法案を阻んだ。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は20日、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、政府機関の閉鎖が米国経済のリスク要因の一つだと指摘。「不確実性は高い」と述べた。
歴代米政権にとって政策遂行の障害になってきた「ねじれ議会」は、米国だけでなく世界経済の波乱要因になっている。
【私大再編へ撤退後押し 文科省、自主的縮小で補助金増】
同じ22日の日経速報メールは次のように報じた。
文部科学省は経営が困難な私立大学の撤退支援策を拡充する。2040年までに大学入学者は2割減る見通しで、600を超す私大は淘汰が避けられない。自主的に規模を縮小した大学への補助金増や再編支援を通じ、大学教育全体の質向上につなげる。
25日に開く中央教育審議会(文科相の諮問機関)で40年以降の高等教育の将来像について諮問し、規模の適正化に向けた具体案の検討を求める。24年度中に答申を受け、政策に反映する。
1990年代に500校余りだった大学は規制緩和を受けて急増し、現在約800校に上る。このうち私大は約620校で学生数は約210万人と7割を占める。一方で今春の入学者が定員を下回った私大の割合は53.3%と5割を超えた。赤字も3割に達する。
大学の経営が悪化すれば人材育成機能が衰える。人材の質と量は国際的な競争力に直結する。中教審は2018年の答申で「適正な規模にする必要がある」としたものの、5年を経ても撤退や再編は大きく進んでいない。
文科省は経営難の私大に改善計画を作成させるなどしてきた。しかし7月、大学入学者数が40年に51万人、50年で49万人と22年比で13万人程度減り、現状の入学定員を維持すると2割分が埋まらなくなるとの推計がまとまった。
同省は再編や統合、撤退の議論は避けられず、より踏み込んだ対応が必要と判断した。
焦点の一つは年間3千億円に及ぶ私学助成の配分方法の変更だ。現在は学生数などに応じて額が決まる。自主的に規模を縮小した大学への助成を厚くして教育の質向上に充ててもらう案などを検討するとみられる。
24年度には、私大が学部を廃止したり定員を減らしたりすることを決めた場合でも在学生が卒業するまで教育の質を落とさずに済むよう補助金を出す事業を始める。
再編支援では、私大が連携や統合の相手を見つけるためのマッチングシステムの開発に同年度中に着手する。日本私立学校振興・共済事業団が持つ各大学の経営情報を活用する。これらは同年度予算の概算要求に盛り込んだ。
新規参入や短大・専門学校からの転換も厳格に審査する。25年度以降に開設予定の公私立の大学、学部・学科については、競合校の状況や18歳人口の動向の分析を踏まえて学生を確実に集められる場合に限って認可する。
日本以上に少子化が進む韓国は、国が大学の教育研究の成果や定員充足率をランク付けして評価が低い大学への財政支援を削るなどし、15〜22年で入学定員の9%にあたる約5万8千人を減らした。
日本は大学の自主性を尊重し、国が一方的に統廃合を進めることは避けてきた。しかし「少子化は予想以上のスピードで進む可能性もある」(文科省幹部)。定員割れが著しい大学は補助金の削減幅を大きくするよう求める声が強まる可能性もある。
中教審は国公立大を含めた各大学の役割の明確化や、都市部に比べて経営が厳しい地方の大学のあり方、オンライン教育の活用拡大なども議論する見通しだ。研究力強化に向けた大学や学生への支援方策についても検討する。
生成AI(人工知能)に代表される科学技術の急速な発展やデジタル化、国際化への対応策も喫緊の課題となる。
海外では授業は全てオンラインにしつつ学生は7都市を転々として学ぶ米ミネルバ大のように大胆な教育方法を取り入れる大学が登場している。オンライン教育に関する規制の緩和などによって新たな大学像を描くことも求められる。
関連記事
・少子化加速が迫る大学淘汰 40〜50年、定員2割過剰
・私大定員割れが初の5割超え 短大は9割、小規模校苦戦
・公立大学の新設抑制へ 文科省、質向上へ厳格審査
・理系拡充へ大学など111校支援 3000億円基金、裾野広く
【半導体・蓄電池など生産、長期で税優遇 政府経済対策 国内投資促す】
同じ23日の日経速報メールは次のように報じた。
政府は10月にまとめる経済対策で重要物資の供給力の強化を盛り込む調整に入った。半導体や蓄電池、バイオ関連などを対象に初期投資に限らず5〜10年の単位で企業の生産コストの負担を軽減する税制を検討する。民間の参入リスクが高い分野で政府が支援する。
岸田文雄首相は25日にも経済対策の柱を表明し、26日に閣僚へ策定を指示する。政府は「構造的賃上げと投資拡大の流れの強化」を柱の一つにする。
脱炭素やデジタル化、経済安全保障といった観点で重要な物資の生産・販売量に応じた法人税などの税額控除を設ける。
首相は「初期投資コストやランニングコストが高い分野を集中的に支援する税制を検討したい」と語る。詳細は年末に向け与党の税制調査会で議論する。
一般的に企業の投資減税は製造設備や工場の整備など初期費用が対象になる。企業が新分野に参入する場合は安定した納入先を確保し経営を軌道に乗せるまで期間が要る。政府は中長期的な減税で経営リスクを減らし参入の障壁を下げる。
税優遇は5〜10年単位といった適用期間を設定するとともに、当面は赤字でも恩恵を得られるように税額控除を翌年度以降の黒字時に繰り越すしくみを検討する。
米国で2022年に成立したインフレ抑制法(IRA)を参考にする。蓄電池や水素など重要物資について①設備投資にかかる費用の3割を法人税から差し引く措置、②稼働後10年間は毎年の生産に応じた一定額を控除―を選べるようにした。
大規模で長期の包括的な重要物資の生産支援で自国内へ企業立地や投資を促すのは世界の潮流になりつつある。欧州やカナダ、韓国も税制・予算を通じた投資促進策を予定し、各国で競争が激しくなってきた。
日本でも半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の呼び込みに成功した九州で経済への波及効果が期待される。地方に工場の立地を促し、地域の雇用確保や周辺産業を含めた賃上げにつなげる。
重要物資の供給網(サプライチェーン)で環境負荷や労働、人権などの国際基準を満たす物資の購入を対象にした補助金も取り入れる。中国製品は事実上対象外になるとみられる。
国内で生産したモーターなどの競争力を高め結果的に国内投資を促す効果を生み出す。
首相は21日のニューヨークでの講演で「予算・税制・規制のあらゆる面で世界に伍して競争できる投資支援パッケージをつくり、実行する」と表明した。為替相場は円安が続き、日本国内で投資しやすい環境が整う。
内閣府の推計で「需給ギャップ」は4〜6月期にプラスに転じ需要不足は解消した。政府の経済政策は潜在成長力を高めるメニューに軸足を移す。物価高を上回る賃上げへ新たな産業を生み出して投資を加速させる。
【三菱ケミカル、半導体材料の国内工場 TSMC進出で商機】
24日の日経速報メールは次のように報じた。
三菱ケミカルグループは半導体材料の国内新工場を建設して2025年3月期の稼働を目指す。半導体受託製造の世界最大手、 台湾積体電路製造(TSMC)の日本進出などを機に素材や装置産業で国内供給網の再構築が広がっている。
フッ化アルゴン用のフォトレジスト(感光材)向け高分子素材の新工場を建設する。既存拠点と合わせて生産能力が2倍に増える見通し。感光材は光に反応する樹脂で、微細な半導体回路をつくるのに欠かせない。三菱ケミカルは不純物の少ない高品質な製 品を安定して生産する技術に強みがある。
従来は鶴見工場(横浜市)の1拠点のみで製造してきた。新工場の投資額は数十億円規模とみられ、物価高で鶴見工場の建設時より増える見通しだが、将来の市場拡大に備える。生産場所は今後詰めるが、福岡県内の事業所などが候補地となる。
三菱ケミカルは、同材料で世界で数割程度のシェアを握るとみられる。販売先の感光材メーカーは日本勢が世界シェア9割を占める。今回の増産は材料の擦り合わせを強みとしてきた国内サプライチェーン(供給網)の強化につながる。
TSMCが熊本で工場を設けることなどを機に関連企業が投資する事例が相次いでいる。感光材大手の東京応化工業は福島県や熊本県で増産投資を決めた。感光材は最終的にTSMCや米インテルといったメーカーが製造工程に使う。拠点分散は自然災害時などの事業継続計画(BCP)にもつながる。
国際業界団体SEMIによると、4〜6月のシリコンウエハー世界出荷面積は前年同期比10%減で、1〜3月並みの下げ幅が続いている。足元の需要は減少しているが半導体は幅広い産業の基盤であり、24年からは需要が戻ってくるとの市場の見方がある。
三菱ケミカルグループは半導体素材を含む「スペシャリティマテリアルズ」について、キャッシュベースの本業のもうけを示すEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を、26年3月期に23年3月期比2倍の2230億円に増やす目標を掲げる。石油化学事業の再編を進める一方、成長が見込める市場で高機能品の販売量を伸ばす。
【日産、2030年に欧州の全新車販売をEVに CEO表明】
25日の日経速報メールは次のように報じた。
【ロンドン=湯前宗太郎】日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は25日、2030年に欧州での新車販売をすべて電気 自動車(EV)にすると表明した。今後、投入する新型車も原則EVのみとする方針で、脱炭素規制の厳しい欧州でEVシフトを前面に打ち出す。
欧州連合(EU)は35年にエンジン搭載車を一部を除き販売禁止する方針を掲げる。合成燃料(e-fuel)や水素を燃料とするエンジン車は、35年以降も販売できると認めた。日産はEU規制に前倒しで対応する。
同日に英国ロンドンにあるデザインセンターで開いた式典で、「欧州では30年に完全にEV化する」と内田氏は強調した。
日産は英北部サンダーランド工場でEV「リーフ」などを生産している。21年には10億ポンド(約1800億円)を投じ、車載電池工場の建設などを進める計画を公表した。26年度までに、欧州では新車の98%を電動車にする目標を掲げていた。
これまでの目標にある電動車には独自のハイブリッド車(HV)技術「eパワー」も含んでいた。欧州で内燃機関車に厳しい規制がかかるなか、今後は既存モデルの刷新を除き、投入する新モデルはすべてEVとする考えだ。
欧州では電動化を巡り、厳しい規制が打ち出されてきた。ただ足元では、内容を修正する動きも出始めている。
英政府は20日、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁じる時期を、従来の30年から35年に延期することを表明した。欧州連合(EU)も3月末、エンジン搭載車を35年に全廃するとしてきた方針を変更している。
トヨタ自動車が西欧で30年までに新車販売におけるEV比率を50%にし、35年には新車をすべてEVや燃料電池車(FCV)など二酸化炭素を排出しないゼロエミッション車(ZEV)にする方針だ。ホンダは40年に欧州も含め、すべての新車をEVかFCVにする計画を進める。
日産は7月、仏ルノーとの間で資本関係の見直しで最終契約を結んだ。ルノーの日産に対する出資比率を43%から15%まで引き下げ、相互に15%ずつ出資する形にする。
資本関係の見直しとともに、ルノーが設立予定のEV新会社「アンペア」に日産が最大で6億ユーロ(約950億円)を出資する方針も決めた。今後、ルノーのEV新会社への出資を通じ、欧州での電動化戦略のスピードを高め、EVシフトで先行したい方針だ。
【エーザイ認知症薬、正式承認 年内にも医療現場へ】
同じ25日の日経速報メールは次のように報じた。
武見敬三厚生労働相は25日、エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」を正式に承認した。進行を遅らせる効果を証明した国内初の薬となる。薬の公定価格である薬価の決定を経て、年内にも医療現場で使えるようになる見込みだ。
レカネマブはアルツハイマー病患者の脳内に蓄積する「アミロイドベータ」というたんぱく質を除去するように設計されている。臨床試験(治験)では、病気の進行速度を27%緩やかにする効果が確認されている。
これまでの治療薬が「対症療法」だったのとは異なり、病気の原因に働きかけることで症状の進行を抑える点が特徴だ。
患者や家族の負担軽減につながる新薬だが、根治できる薬ではない。投与の対象者も軽度の患者に限られる。価格は高額で7月に正式承認された米国では年2万6500ドル(約390万円)だった。国内での薬価に注目が集まる。
アルツハイマー病患者の増加は顕著だ。厚労省によると、日本国内における認知症患者数は2020年で600万人程度と推計されており、2060年には最大約1150万人にまで増える見込みだ。アルツハイマー病は2060年時点で800万人にのぼるとみられており、認知症全体の7割程度を占める。
エーザイは1月にレカネマブの製造販売について医薬品医療機器総合機構(PMDA)に承認申請し、8月21日に厚労省の専門部会で承認が了承されている。
【IEA「30年に再エネ3倍必要」提言 脱化石燃料を加速】
26日の日経メールは伝えた。
国際エネルギー機関(IEA)は26日、気候変動対策の報告書を公表した。気温上昇を抑えるために再生可能エネルギーの設備容量を2030年までに3倍に拡大するよう提言した。再生エネのコストは大きく低下し、化石燃料からの脱却は世界で進む。普及が遅れる日本も対応を迫られる。
【関連記事】
・IEA「30年に再生エネ3倍」目標、COP28の主要議題に
・水素製造装置の導入容量、中国が世界の5割 IEA予測
・化石燃料補助、過去最高1000兆円 温暖化対策に逆行
地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、地球の気温上昇を産業革命以前から1.5度以内に抑える目標の実現に必要な再生エネの容量をIEAが試算した。この目標は世界が50年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすることとおおむね整合する。
報告書によると、再生エネの設備容量を23年から30年に3倍にすると110億キロワットになる。これは21年時点の化石燃料の発電容量の2倍強になる。実現すれば、30年の再生エネの発電(容量ベース)に占めるシェアは7割前後になる見通しだ。
再生エネの普及が大幅に進めば、化石燃料の需要は30年までに25%減るという。必要な投資額は30年代初頭には年4.5兆ドルと23年の2.5倍になる。
IEAによると、23年から30年の間に約70億トンの二酸化炭素(CO2)排出を回避できる。中国の電力部門から排出されているCO2総量に匹敵する削減幅になるという。
技術が成熟し、普及が進んだことで、太陽光と風力の導入期間は短くなり、コストも大幅に下がっている。IEAは今後の課題は新興国や途上国での導入拡大だとして、先進国による支援拡大を求めた。東南アジアや中東、アフリカなどでは拡大の余地が大きい。
一方、報告書は1.5度目標の達成には化石燃料への新規投資は必要ないと説明した。
日本は再生エネの導入量で欧州や中国に後れをとり、普及が大きく進んでいるとは言えない。推進するための政策の遅れに加え、規制緩和などが進んでいないのが主な要因だ。
世界で主流となっている風力発電は22年に中国は約3700万キロワット、米国は約860万キロワットそれぞれ増やした。日本はわずか23万キロワットだ。インドやトルコ、台湾も先を行く。
日本は工業団地や耕作放棄地などの再生エネの可能性が大きい土地の活用が十分ではない。加えて世界で急拡大する洋上風力発電が大規模に立ち上がるのが30年前後と遅い。
現状のエネルギー基本計画で掲げる30年度に再生エネを最大38%とする目標を達成しても21年度実績比で1.7倍にとどまる。
世界の主要国は再生エネの普及に力を入れる一方、太陽光パネルの生産など供給網(サプライチェーン)の確立に力を注ぐ。大きなシェアを持つ中国などは自国の製品を世界に売り込んでいる。
日本も自国の導入を加速するなどして風力発電を整備し、産業として早期に育成しなければ、アジアなど世界の脱炭素に貢献できず、影響力の低下につながりかねない。(気候変動エディター 塙和也、ブリュッセル=辻隆史)
【洋上風力汚職、秋本議員を受託収賄罪で起訴 東京地検】
27日の日経速報メールは次のように報じた。
洋上風力発電事業を巡る汚職事件で、東京地検特捜部は27日、衆院議員の秋本真利容疑者(48)=比例南関東、自民党を離党=を受託収賄罪で起訴し、日本風力開発(東京・千代田)の塚脇正幸前社長(64)を贈賄罪で在宅起訴した。特捜部は秋本議員が 新型コロナウイルス対策の持続化給付金をだまし取ったとして詐欺罪でも起訴した。
秋本議員は特捜部の取り調べに対し、受託収賄と詐欺いずれの容疑も否認していた。再生可能エネルギーの切り札とされる事業を巡る汚職事件の全容解明は法廷に移り、賄賂の授受などに関して検察側と秋本議員側が全面対立する構図になるとみられる。
起訴状によると、秋本議員は塚脇前社長から国会質問の請託(依頼)を数回受け、見返りとして2019年3月〜23年6月ごろ、計約7200万円相当の賄賂を受け取ったとされる。特捜部は逮捕時に賄賂とした総額約6100万円に加え、現金500万円や馬1頭の持ち分100万円相当などの提供を新たに賄賂に当たると判断した。
持続化給付金を巡っては20年9月ごろ、給付要件をみたすかのように装って申請し200万円をだまし取ったとされる。
秋本議員は7日の逮捕後、「依頼されて日本風力開発の利益を図るために、国会質問をしたということは断じてない。私は潔白」とするコメントを出した。塚脇前社長は贈賄を認めているとされる。
刑法の収賄罪は公務員が職務に関して賄賂を受け取る場合に成立する。職務に関し一定の行為をするよう請託を受けた場合は受託収賄罪が適用される。同罪の法定刑は7年以下の懲役で、単純収賄罪の法定刑(5年以下の懲役)より重く規定されている。
秋本議員は12年衆院選の千葉9区に自民党から出馬し初当選した。現在は4期目。事件発覚後の8月4日に外務政務官を辞任し、同5日に同党を離党した。
政府は洋上風力発電を推進している。19年4月施行の再エネ海域利用法は事業者が一般海域を最大30年間占有できる環境を整えた。矢野経済研究所(東京・中野)によると、国内の洋上風力発電の市場規模(予測)は20年度の20億円から25年度には3970億円まで膨らむ。30年度には9200億円とほぼ1兆円の巨大市場へ発展するとにらむ。
【長崎・対馬市長、核ごみ処分場の文献調査「受け入れず」】
同じ27日の日経速報メールは次のように報じた。
長崎県対馬市の比田勝尚喜市長は27日、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定の前提となる「文献調査」について、調査を受け入れない考えを表明した。比田勝市長は同日午前10時に開会した市議会本会議で、現段階では「安全であるという市民の理解を得るのは難しい」と述べた。
同市議会は12日の本会議で、文献調査を受け入れるよう求めた市民からの請願について賛成10、反対8で採択していた。比田勝市長は市議会の決定と異なる判断を下した理由について、①市民の合意形成が不十分だ、②風評被害が懸念される――などを挙げた。
文献調査は最終処分場の選定作業の第1段階にあたる。2年間で最大20億円の交付金が国から出る。地質図や学術論文などの文献・データを調べ、対象の自治体が適地かどうか机上で探る。これまで北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村の2自治体が原子力発電環境整備機構(NUMO)による文献調査を受け入れている。
市議会に対してはこれまで、調査受け入れを促す請願だけでなく、水産業者や市民団体からは反対の請願が多数出ていた。これらは市議会では採択されなかったものの、8月以降、市内で受け入れ反対の声が急速に高まっていた。
9月初旬に比田勝市長に文献調査を受け入れないよう求める要望書を提出した「対馬市漁業協同組合長会」は、反対の理由として風評被害による魚価下落などの影響を強調した。観光関連事業者からも、観光客の減少を懸念する声が高まっている。市長は市議会と対立することがあっても、受け入れにより深刻化が懸念される市民の分断の回避を重視した。
【水俣病救済巡る訴訟、国側に賠償命じる 大阪地裁判決】
同じ27日の日経速報メールは次のように報じた。
2009年施行の水俣病特別措置法に基づく救済対象から外れた未認定患者らが国などに損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(達野ゆき裁判長)は27日、原告の請求を認め、国などに1人あたり275万円の賠償を命じた。原告128人全員の水俣病罹患(りかん)を認定した。
同種訴訟は熊本、東京、新潟の各地裁でも争われており、今回が初の判決。対象地域や居住期間、年齢などの基準を設けていた特措法による救済枠組みの不備を指摘した。今後、上級審などで同様の判断が続けば、国は対応を迫られる可能性がある。
主な争点は、原告らの症状が水俣病と認められるかどうかだった。
達野裁判長は、特措法が救済対象とする地域や年代から外れた人でも、不知火海で取れた魚介類を継続的に多食した場合は水俣病を発症する可能性があると指摘。メチル水銀の暴露から長期間が過ぎた後に発症する遅発性水俣病の存在も認めた。
判決は原告122人に対し、国や熊本県、原因企業チッソが連帯して1人あたり慰謝料250万円などを支払うよう命じた。残る6人にはチッソのみが責任を負うとした。請求額は1人あたり450万円だった。
判決を受け、環境省特殊疾病対策室は「判決内容を精査し、対応を検討する」とのコメントを出した。
▼水俣病と救済策 熊本県水俣市のチッソ水俣工場が八代海(不知火海)に排出したメチル水銀に汚染された魚介類を食べた住民らに発症した中毒性の神経系疾患。国は1956年に被害を公式確認し、68年に公害病と認定した。
74年施行の公害健康被害補償法に基づき患者として認定されたのはこれまでに約3千人。95年の政治決着で約1万1千人が救済対象となった。その後も未認定患者らの提訴が相次ぎ、新たな救済策として特別措置法が2009年に施行された。
【三菱自動車、中国生産撤退へ EV出遅れで販売不振】
同じ27日の日経速報メールは次のように報じた。
三菱自動車は中国の自動車生産から撤退する方針を固めた。現地の合弁相手である中国自動車大手の広州汽車集団と最終調整に入った。中国では電気自動車(EV)の普及や地場企業のブランド力向上で三菱自の販売は低迷する。ガソリン車に強い日欧米などの自動車ブランドは全般的に苦戦しており、戦略の見直しが広がる可能性がある。
三菱自と広汽集団の合弁会社「広汽三菱汽車」が運営する湖南省の長沙工場での生産から撤退する。三菱自にとって唯一の中国での新車工場で、販売低迷を受けて3月から新車生産を停止していた。販売の回復が見込めないため再開を断念する。
中国事業の経営合理化に向けて、広汽三菱は5月に人員整理の方針を決めていた。工場は今後、広州汽車グループのEV生産拠点として活用する見通しだ。広汽三菱には広汽集団が5割、三菱自が3割、三菱商事が2割を出資する。合弁会社は存続するが、三菱自と三菱商事は出資分を引き揚げる見込みだ。
三菱自は1970年代に商用車の中国向け輸出を始め、06年から21年に東南汽車との合弁事業を手がけた。広汽三菱は12年の設立で、最盛期の18年には14万台を販売した。
近年は地場ブランドがEVで攻勢をかけ、三菱自の22年の中国販売は前年比6割減の3万8550台と低迷している。てこ入れへ22年秋に中国向け新型車の「アウトランダー」をハイブリッド車仕様で投入したが、売れ行きは計画を大幅に下回っていた。中国撤退を受け、連結売上高の3分の1を占める東南アジアやオセアニアに経営資源を集中する。
中国汽車工業協会によると、22年の電気自動車(EV)販売は前年比8割増の536万台で、新車販売に占めるEV比率は2割にのぼる。三菱自も中国でEV「エアトレック」を販売するが広汽グループから供給を受けており、中国向けの独自車種を持たない。
三菱自動車が22年秋に中国で投入したハイブリッド車仕様の「アウトランダー」の売れ行きは計画を大幅に下回った。
中国ではEVシフトを進める地場メーカーの存在感が高まっている。マークラインズによると、22年の中国での乗用車販売台数は2356万台。比亜迪汽車(BYD)や長安汽車が伸び、地場企業のシェアは前年より5.2ポイント高い50.7%に達した。
対照的に日系のシェアは18.3%と2.8ポイント低下した。日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は中国事業について「値引きが非常に激しく利益を出せる水準にない。中国合弁の在り方など戦略見直しを含め検討している」と話している。
日本車メーカーの中国事業を巡ってはスズキが中国の自動車大手、重慶長安汽車との合弁事業を18年に解消した。トヨタ自動車と広汽集団の合弁会社「広汽トヨタ」は7月、従業員約1000人について満了前に契約を終了した。削減規模は6月時点の従業員数の約5%にあたる。
一方、マツダは現地で販売網を再編するなど中国事業の立て直しに注力している。
【藤井聡太七冠、初の八冠独占に王手 将棋王座戦2勝目】
同じ27日の日経ニュースメールは次のように報じた。
27日朝から名古屋市の名古屋マリオットアソシアホテルで指されていた第71期将棋王座戦(日本経済新聞社主催、東海東京証券特別協賛)五番勝負の第3局は、午後8時32分、81手で先手の挑戦者、藤井聡太七冠(21)が永瀬拓矢王座(31)を破った。藤井七冠は対戦成績を2勝1敗とし、史上初の八冠独占に王手をかけた。
終局後、藤井七冠は「本局は結果は幸いしたが、内容は押されていた。(次局は八冠制覇がかかるが)意識せずに集中して臨みたい」と話した。藤井七冠は6月に最年少で名人を獲得し、羽生善治九段(53)に続く七冠を達成。残すタイトルを王座のみとしている。八冠制覇がかかる第4局は10月11日、京都市のウェスティン都ホテル京都で指される。
この日の対局は、劣勢の藤井七冠が終盤で形勢をひっくり返した。「終盤は負けの形だと思っていた。▲5六角(71手目)と相手の金を取って、自玉が寄りづらい形になった」という。
序盤は後手の永瀬王座が「雁木(がんぎ)」と呼ばれる戦型を採用、9筋の位をとる工夫を見せた。藤井七冠は「(その構想は)考えたことがなくて、序盤は失敗した。その後もうまく指されたので、もっと工夫の余地があった」と反省する。
途中、後手の永瀬王座が9筋の端歩を突いて仕掛けたのが機敏で、優位に立った。終盤も寄せに出て、そのまま押し切れば会心譜となったが、5時間の持ち時間を使い切り、秒読みの中で指した受けの一手が落手。藤井七冠が放った攻防手で逆転した。永瀬王座は終局後、「次局まで時間はあるので、精いっぱい準備して臨みたい」と話した。
解説の北浜健介八段は「序盤から永瀬王座が主導権をにぎり徐々にリードを広げた。終盤も正確な寄せを見せていたが、簡単な勝ちではなかった。終盤、永瀬王座のわずかなミスを藤井七冠が見逃さず、流れを引き戻した」と語った。
【企業保険、100社超で事前調整か 損保4社が当局に報告へ】
28日の日経速報メールは報じた。
【この記事のポイント】
・各社で分担する「共同保険」で保険料水準を事前に調整
・交通インフラだけでなく幅広い業種・企業で不適切案件
・保険業法上の業務改善命令や独禁法上の排除措置命令も
損害保険大手4社が企業向け保険料を事前調整していた問題で、独占禁止法の趣旨に反する不適切な行為があった取引先の数が少なくとも計100社超にのぼることが27日、分かった。特定の業種や企業にとどまらず、不適切な取引が広範囲に及んでいた実態が明らかになった。4社は29日までに金融庁に報告書を提出する。
金融庁から保険業法に基づく報告徴求命令を受けたのは東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の4社。問題が表面化するきっかけとなった東急グループなど交通インフラ企業に加え、全業種を対象に各社が調査を進めるなかで不適切な案件が数多く浮上した。
問題視されているのは保険契約を各社が分担して引き受ける共同保険だ。支払う保険金が巨額になるリスクがある場合、事前に決められたシェアに応じて複数の損保が分担して保険を引き受けている。
損害保険事業の売上高に当たる正味収入保険料で4社は8割超のシェアを握っており、企業向け保険に限ると9割を超えて寡占化が進んでいた。
これまで保険料の事前調整を含めて4社が不適切な行為をしていた疑いがある対象企業では、ENEOSなどの石油元売りや成田国際空港会社、JR東日本などが浮上している。関係者によると、調査の進展にともなって案件数が増え、業界全体で少なくとも計100社超となったようだ。
小売りや製造業など「幅広い業種で見つかっている」(関係者)という。東京都が実施した保険契約の入札でも事前調整した疑いがある。
東急との保険契約では、見積額として提示する保険料の水準を各社の営業担当者が事前に申し合わせていた。契約更新前のシェアを維持したり、保険料率が下げられるのを防いだりするために、調整行為に走った可能性がある。
保険金の支払い実績が多いなどの理由で保険契約を引き受けたくない場合も、他社の担当者らから入札前に保険料を聞き出し、あえて他社の保険料よりも高い水準を提示する事例があるという。特段の理由もなく、顧客企業に示す保険料の見積額をあらかじめ共有する慣習が長年続いていたケースもあったようだ。
共同保険の引き受けでは事務連絡の必要性もあり、各社の担当者は互いに連絡を取り合う関係にある。「微妙なやり取りは多い。『クロ』に近い『グレー』から『シロ』に近い『グレー』までさまざまある」(関係者)といい、不適切案件の中でも悪質性には濃淡がある。
各社は金融庁に提出する報告書のなかで、こうした事前調整が常態化していた背景や再発防止策を説明することにしている。他の損保の営業担当者と接触した際には上司への報告を徹底するといった再発防止策が盛り込まれる見通しだ。
金融庁は各社から受け取った報告書の内容を精査し、保険料の事前調整にいたった動機や原因を解明する。保険業法が目的とする保険募集の公正性と保険契約者保護の観点から法令違反が見つかれば、業務改善命令などの行政処分も検討する。
公正取引委員会も調査に乗り出している。カルテルといった不当な取引制限など、独禁法に違反する行為を認めれば損保会社側に再発防止に向けた排除措置命令を出し、違反による売り上げが確認されれば課徴金納付を命じる。
【防衛力強化へ空港・港湾拡充 33施設、自衛隊利用を想定】
同じ28日の日経ニュースメールは次のように報じた。
政府は防衛力強化の目的で拡充する公共インフラの候補として10道県の33空港・港湾を選定した。滑走路の延伸や岸壁の増築に取り組むため管理する地方自治体と近く協議を始める。東アジアの緊張に備えて自衛隊と海上保安庁が住民避難や部隊展開に使いやすくする。
政府は2022年末に改定した国家安全保障戦略で有事に備えて空港や港湾を整備する方針を盛り込んだ。必要性が高い施設を「特定重要拠点(仮称)」に指定し、必要経費を24年度予算案の公共事業費に計上することをめざす。
政府が8月に非公式に作成した文書によると14空港と19港湾が対象となった。このうち少なくとも16空港・港湾は南西諸島と九州、四国に立地する。軍備増強を強める中国や、武力衝突が起きる懸念がある台湾に近い地域を重視した。
空港は沖縄県の与那国空港や新石垣空港、宮古空港、那覇空港のほか鹿児島空港や宮崎空港、高知空港などをリストに入れた。
いずれも台湾有事の場合に自衛隊が部隊を展開したり燃料・食糧を補給したりする拠点として使える場所にある。自民党で外交部会長などを務めてきた佐藤正久氏は「有事に米軍が部隊派遣できるようにする意味もある」と説明する。
与那国、新石垣、宮古の3空港は滑走路が2000メートルで100人以上を乗せられる輸送機C-2などの離着陸が難しい。住民の避難などに備えて滑走路を延ばすなどの改修を検討する。
その他の空港でも駐機場や誘導路、格納庫を新設するなどして自衛隊機や海保機が運用しやすい環境を整える。自衛隊幹部は「防衛用途で使いやすい2500メートル以上の民間用滑走路は日本にとって安全保障上の資産だ」と話す。
港湾では与那国島に護衛艦や巡視船が接岸可能な新港をつくる計画だ。沖縄県の石垣港や平良港、那覇港、熊本県の熊本港や福岡県の博多港の岸壁も改修を調整する。
ウクライナへの侵攻を続けるロシアと向かい合う北海道や、北朝鮮の不審船などへ対処する日本海側も対象とした。拡充するインフラの候補リストは非公表とし、情勢の変化によって追加する可能性がある。
公共インフラ施設を防衛目的で活用するには地元自治体の理解が欠かせない。現行法は平時に自衛隊や海保がインフラを優先して使う規定がないためだ。利用する場合は管理する都道府県などに申請しなければならない。
防衛省によると「空いている岸壁がない」「人員不足で対応できない」といった理由で自治体から難色を示されることがある。米軍も日米地位協定などに基づいて日本国内の施設を使用することは可能だが、自治体の状況によっては利用しにくい。
実際、北朝鮮の「人工衛星」発射に備えて自衛隊が4月に迎撃部隊を沖縄へ派遣した際は地元の調整に手間取り予定していた輸送方法を変更した。
政府は整備するインフラ施設を平時に観光や物流につかえば産業振興につながると説明し、自治体に協力を求める。訓練や警戒監視のために平時でも自衛隊が円滑に利用できる仕組みを設けることも働きかける。
木原稔防衛相は15日の記者会見で「輸送手段が船舶や航空機に限られる南西諸島などでは部隊の運用性が高い空港や港湾の整備が必要だ」と述べた。「多様な空港や港湾を平素から円滑に利用できるよう自治体に丁寧に説明する」と話した。
【日本、サモア下し2勝1敗 ラグビーワールドカップ】
29日早朝の5時に起床し、後半戦を観戦した。前半では17-8とリード、後半にはサモアに追いつかれ、結果は28-22の僅差で日本が勝利した。サモアがワントライ・ワンゴールを決めれば僅差の逆転負けである。
29日早朝の日経速報メールは次のように報じた。
【トゥールーズ(フランス)=谷口誠】ラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会は28日、トゥールーズで1次リーグD組の1試合が行われ、日本がサモアを28-22で下した。2勝1敗で勝ち点を9に伸ばした。サモアは1勝2敗で勝ち点6。
日本は前半、フランカーのラブスカフニ(東京ベイ)のトライで先制。3点を返された後、SO松田(埼玉)のPGやフランカーのリーチ(BL東京)のトライで点差を広げ、17-8で折り返した。
後半はナンバー8姫野(トヨタ)のトライや松田のPGで得点。サモアに2トライを返されたが逃げ切った。
当初先発メンバーに登録されていたSH流(東京SG)は欠場した。コンディション調整を理由に、27日にトゥールーズで行われた前日練習には参加していなかった。SHは控えで登録されていた斎藤(東京SG)が今大会初先発した。
2大会連続の決勝トーナメント進出を目指す日本は10月8日に1次リーグ最終のアルゼンチン戦に臨む。
【米中二者択一迫るな グローバルサウス小国の叫び ラモス・ホルタ 東ティモール大統領】
30日の日経ニュースメールは次のように報じた。
グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国が国際社会で発言力を増している。インドやブラジルなどの地域大国に焦点が当たる一方、米中の覇権争いに翻弄され、成長から取り残された小国が大半を占める。小国は世界に何を訴えるのか。東南アジア、東ティモールの大統領でノーベル平和賞受賞者のラモス・ホルタ氏に聞いた。
ロシアのウクライナ侵攻は食料やエネルギー価格の高騰を招いた。地理的に距離があるグローバルサウスの国々に特にしわ寄せが及んでいる。
――隣国インドネシアの支配からの独立から20年あまり。天然資源以外の産業が育たず、東ティモールの発展は遅れている。そこに新型コロナウイルスやウクライナの危機が訪れた。
「イエメン、シリア、リビア、マリで続いている争いも含め、現在世界が直面している危機はリーダーシップの欠如と関係する。国連安全保障理事会は、紛争を予防し、調停し、解決をもたらす主要な国際メカニズムだ。米英仏中ロの5常任理事国は(拒否権の)特権があり義務があるが、果たしていない。責めを負うべきだ」
「ウクライナでの戦争については、米国は超大国で、北大西洋条約機構(NATO)のリーダーでもあり、部分的に責任がある。しかし、米国は欧州諸国とともにウクライナの支援に深く関与し、もはや調停者になることはできない。戦術核の使用という非常に危険なところまでエスカレートするかもしれない」
中国敵視には「もっと落ち着いて」
――国際政治は米国と中国の対立の構図が強まっている。
「いまの米国の中国への非常に敵対的な態度には同意しない。トランプ前大統領は新型コロナの起源は中国だと責めた。感染症の世界的な流行は政治問題化させてはならない。同情と理解を示し、科学者と資金を結集させ、世界保健機関(WHO)のリーダーシップのもとで取り組むべきだった」
「人々は『中国は脅威』だと言い続けている。私はそうは思わない。中国を敵視する人たちには『もっと落ち着いて』と助言したい。世界に戦略的なライバルがいるのは何も不思議ではない。外交の秘訣は、敵対者と対話しパートナーシップを築くことだ」
「米国が対中関係でリーダーシップを発揮する最善の方法は、中国を鞭(むち)打つために台湾や人権を利用するのをやめることだ。人権問題を抱える他の国々への米国の態度は、対中国とは異なる。東南アジア諸国連合(ASEAN)や日本、韓国などアジアの国の指導者は中国に適応する方法を見つけている」
――グローバルサウスは、西側諸国とも、中国やロシアなど覇権主義国とも一定の距離を置き、国際社会で存在を強めている。どのような役割に期待するか。
「素晴らしい学術的表現で、ロマンチックに語られるが、内情は非常に分断されている。インドとパキスタンの関係を見てほしい。アフリカは国境内外でなお亀裂が生じている。対立する中国とインドを含むBRICSの構成を見ていると、主要7カ国(G7)や20カ国・地域(G20)より成果を出せるか疑問に思う」
「BRICSについて言えば、持続可能な開発や再生可能エネルギーの普及に向けた資金提供をG7や国連機関、世界銀行に比べて迅速かつ寛大な方法で実現できるなら、人気と尊敬を得るだろう。単なる口だけのおしゃべり屋なら信頼を失うことになる」
「中国とインド、日本と中国と韓国の3カ国は、アジアや他の地域、世界を真に豊かで平和な場所に劇的に変える可能性がある。日中韓が協力してインドを加えて世界を豊かにすることを願っている。そうすれば、21世紀はアジアの世紀であると言える」
東ティモールは歳入の9割を石油・ガスに依存する。その収入による基金は今のままでは2035年に枯渇するとされる。新産業の確立へ、外国からの支援が欠かせない。
――6月のシンガポールのアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で、なぜ新興・途上国が外交の優先順位を中国に移しているか説明した。
「私が出会ったソマリアの外交官の例を挙げた。冷戦時代、西側諸国は人権についてソマリア政府を説教し支援を拒み続けた。彼は支援を求めにモスクワに行くだけだった。ソ連崩壊後、近代化した中国が取って代わった。今なら彼は北京に行くだろう」
「つまり中国は米国の支配に代わる代替案なのだ。この現状は何もおかしくなく、十分に理解できる。米国や欧州、日本は民主主義の運営に関するルールが原因で、意思決定が複雑になる。中国には独自のルールがあり、意思決定が迅速だ」
――中国がインフラを中心に東ティモールへの支援を進めている。
「中国の支援はコストが低い。中国の商業融資は年利4%なのに対し、西側は7〜8%だ。中国政府の融資なら1%しかない。中国には補助金付き融資もある。米欧にも補助金はあるが、その規模はいつも小さい」
「米議会・政府の援助枠組みを通じ4億ドル(約600億円)超の資金を得ることで合意をしたが、約20年かかった。その間私は離婚し、孫もできた。中国の援助は決定まで長くても1年だ」
「欧州の政府開発援助(ODA)も案件を決定するまで長くて3〜4年かかる。西側は関連するコンサルタントや専門家、報告書に費用を費やし、これにも時間がかかる。新興・途上国がいら立ち、支援を求めて中国に群がる理由だ」
東ティモールはASEANへの加盟が内定した。フィリピンやベトナムなど一部の加盟国は中国と南シナ海で領有権争いを抱えている。
国際法なしには大国のいけにえに
――中国の南シナ海での主張は国連海洋法条約に基づく16年の仲裁裁判所の判断で退けられた。
「中国は大国である一方、米国のように太平洋と大西洋に面していない。中国の海として領有したいとの思いはわかるが、慎重に考え直したほうがいい。正当な主張をする東南アジア諸国に逆らうことはできない」
「当事者はこの海域に関わるあらゆる国に自由な使用を認める方法を見つけるべきだ。何の障害もなく移動できる環境をつくる必要がある。ある日事故が起こって誤算が生じる可能性があり、その場合の制御は非常に困難になる」
「国際法がなかったら、東ティモールに今日の自由はなかっただろう。ティモール海の紛争に関してオーストラリアと合意に達しなかったと思う。国際法や国際機構なしには、東ティモールのような貧しい国は大国のいけにえにされてしまう」
――東ティモールは独立後20年で民主主義を確立した。米人権団体フリーダムハウスの調査では、東南アジアで最も自由度が高い。
「我々は民主主義、さまざまな原則、その実践、透明性のある政府を約束している。それが国民、社会、議会によってチェックされる。自然なこととして受け入れられ、機能している。我々にとって最良の政治システムと言えるし誇りに思う」
「ただ、西側の複数政党制が最高だとも思わない。シンガポールをみてほしい。初代首相は共産主義を排除し、国を安定させるため、厳しいリーダーシップで国を発展させた。これが独裁的な統治システムだとは感じない。自由でオープンだ」
ジョゼ・ラモス・ホルタ(Jose Ramos-Horta)1949年生まれ、73歳。シャナナ・グスマン氏(現首相)らとインドネシアからの独立運動を指導。スポークスマンとして各国に支援を呼びかけた。96年にノーベル平和賞受賞。首相などの要職を歴任し、2022年に2度目の大統領職に就任。
民主主義のコストを乗り越えよ(インタビュアーから)
ラモス・ホルタ氏は中国に理解を示す発言に終始した。中国の覇権主義的な動きを警戒する西側諸国に身を置く立場からすれば、一見ナイーブにも思える。 これが東南アジアで屈指の民主主義を確立した国のトップが発した言葉であるという点が重要だ。政治体制では相いれない国でも、自国を存続させるためには支援を受け入れざるを得ない。多くのグローバルサウスの国々の現実と言える。 人口増を支える経済成長や気候変動への対応は途上国にとって一分一秒を争う課題だ。東ティモールは道路や港湾などインフラの不足が足かせとなり、西側の民間企業は進出しにくい。官民一体の中国がその隙を利用してインフラを開発し、影響力を強めていく。 過去の植民地支配や地球温暖化の原因を考えれば西側は新興・途上国を支援する責任を負う。スピード感ある行動に向けて一致して知恵を絞るべきだ。(ディリで、地曳航也)
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
詫摩佳代フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)訪問研究員 / 東京都立大学教授
分析・考察
グローバルサウスと呼ばれる国々が必ずしも一枚岩ではないこと、また、いずれの国も覇権主義国あるいは西側諸国のどちらかに与するという単純な構図ではないところが今の国際政治の特徴だと思います。これらの国は、複雑な経済的相互依存関係の中で重要な位置を占めてお(あるいは占めつつあ)り、その地位を活用しながら発言力を高め、戦略的な外交を展開しています。昨今の国際環境の中で、西側が守りたいもの、取り返したいものはたくさん見えますが、その中で最も守られるべきものは何かを的確に冷静に見定め、そのために新興国とうまく連携できるよう、こちらにも戦略的な外交が問われています。
【ジャニーズ、被害者補償と経営分離 新会社社名は公募へ】
同じ30日の日経ニュースメールは次のように報じた。
ジャニーズ事務所が会社を再編する方針を固めたことが30日、わかった。新会社を立ち上げ、所属タレントのマネジメントなどの業務を移管する。現在のジャニーズ事務所は故ジャニー喜多川元社長による性加害の被害者への補償に専念する。新会社の社名はファンから公募で決める方向で検討しているもようだ。
新会社にはジャニーズ事務所前社長の藤島ジュリー景子氏は出資せず、業務にも携わらないとみられる。現在のジャニーズ事務所の社名の変更も検討している。
民放各社から「補償とマネジメントを行う組織の分離を検討すべきだ」との声が上がっていた。芸能事務所としての業務と補償を明確に分離する。
ジャニーズ事務所は9月7日に会見を開き、喜多川氏による元所属タレントらへの性加害を事務所として初めて認めた。被害者には法的な枠組みにとらわれず補償する意向も示した。
引責辞任した藤島氏は代表取締役にとどまり、藤島氏が全株式を保有する株主構成やジャニーズという社名も当面維持するとした。
これらの対応について、所属するタレントを広告などに用いるスポンサー企業の間では人権尊重の視点やガバナンス(企業統治)が不十分だとして批判が相次いだ。CM放映の中止など起用を見直す動きが広がった。
事態を打開しようと、同事務所は今後1年間、所属タレントの広告や番組出演で得た出演料について受け取らず、タレント本人に支払う方針を示した。
ただ、契約見直しの動きは止まらなかった。帝国データバンクによると、テレビCMなどにジャニーズの所属タレントを起用した上場企業65社のうち、半数にあたる32社が起用方針を見直した。
経団連の十倉雅和会長は9月19日の定例記者会見で「日々研さんしているタレントの活躍の機会を奪うのは少し違うのではないか」と述べ、所属タレントの救済策を検討すべきだと指摘した。日本商工会議所の小林健会頭も社名について「継続しないほうがいい」と述べた。
ジャニーズ事務所は2日、今後の経営方針について会見を開く。被害者への補償の具体策とあわせて再編案についても説明する見通し。
【米政府閉鎖、土壇場で回避 11月までのつなぎ予算成立】
10月1日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【ワシントン=高見浩輔】米国の政府閉鎖が9月30日夜(日本時間10月1日午前)、土壇場で回避された。連邦議会の上下両院は同日、予算執行を11月中旬まで継続できるつなぎ予算案を超党派で可決した。バイデン大統領が署名して成立した。
成立した予算は下院で野党・共和党を率いるマッカーシー議長が主導した。新たな会計年度に入る10月1日から11月17日までの予算執行を可能にする内容だ。
共和内に反対が多いウクライナ支援を除外する一方、バイデン政権が求めていた災害支援の強化策として160億ドル(約2兆4000億円)を盛り込んだ。共和の強硬派が強く求めていた国境の警備強化策は含まれなかった。
下院は賛成335票に対して反対91票、上院は賛成88票に反対9票だった。上院の可決は午後9時ごろで、閉鎖まで3時間に迫っていた。ホワイトハウスが大統領の署名を公表したのは残り1時間を切った夜中だった。
政府の支出が止まり、米経済が下押しされる事態は回避される。
バイデン大統領は同日夜の声明で「何百万人もの勤勉なアメリカ国民に無用な痛みを強いることになる不必要な危機を防いだ」と評価した。一方で6月に超党派で合意した歳出計画を覆そうとした共和の動きに不快感を示した。
国境警備の強化など様々な要望を掲げて予算案に反対してきた下院共和の強硬派は採決で反対票を投じたが、民主が賛成に転じたため可決を阻止できなかった。
下院民主トップのジェフリーズ院内総務は同日の記者会見で「アメリカ国民の勝利であり、年間を通して議会を乗っ取ろうとした右翼過激派による完全かつ全面的な降伏だ」と胸を張った。
今回の法案は11月17日に期限を迎える。10月1日から1年間の2024会計年度について正式な予算案は成立しておらず、11月に再び政府閉鎖の懸念が高まる可能性はある。
もし政府閉鎖になれば、その期間中は連邦政府の職員に給与が支払われなくなる。一部の職員は一時帰休し、国立公園などが閉鎖になる可能性がある。長期化すれば低所得層向けの食料支援や山火事被害対策の基金が枯渇すると見込まれている。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは9月25日、政府閉鎖が米国債の信用力にマイナスになるとの見解を示した。経済指標の公表が遅れ、金融政策の判断にも影響が出る恐れがあった。
過去最長の政府閉鎖は18年12月〜19年1月の5週間。この際はトランプ大統領が「国境の壁」の建設費を含めた予算を求め、民主と対立した。中南米からメキシコを通って流入する不法移民を壁で阻止する計画だった。
国境警備の強化を求める保守強硬派が中心になった点では前回と似ているが、今回は大きな争点がないという点で異なる。今回は上院や下院の指導部も閉鎖回避を求めていたが一部の強硬派議員の意向だけで、政府閉鎖の危機に陥った。今後も繰り返される懸念が強いという点では前回より深刻といえる。
強硬派は党内では少数グループだが、マッカーシー氏は配慮せざるを得ない立場にある。22年11月の中間選挙を経た議会では共和が221議席、民主が212議席と拮抗する。共和内の5人が造反するだけで多数派を維持できなくなる。
強硬派は議長が1月に就任する際にも反対し、議長選が10回以上も繰り返される164年ぶりの事態になった。議長はこの際、党内の1人でも解任動議を出せるルール変更をのまされている。今後は議長職を巡る党内の攻防も焦点になりそうだ。
【企業年金の運用成績公開へ 政府検討、予定利率上げ促す】
2日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・企業年金の運用成績を一般公開、他社と比較可能に
・米英は開示義務付け、予定利回りは日本より高く
・新しい資本主義実現会議、運用改善へ議論開始
政府は企業が運営する年金の改革に着手する。まず運用成績を一般に公開することで、運用目標である予定利率の引き上げを促す。専門性の高い人材を登用し高度な運用を目指すほか、運用効率の低い中小企業による年金の共同運用化も検討する。賃上げと80兆円にのぼる年金資産の運用高度化を両輪に生涯賃金の引き上げにつなげる。
首相官邸が主催し、各省庁が参加する「新しい資本主義実現会議」の下に「資産運用立国分科会」を設置し、4日から議論をスタート。年末までにまとめる資産運用立国プランに結論を盛り込む。
企業年金は国民年金(基礎年金)や会社員が加入する厚生年金に上乗せする私的年金だ。制度が複雑でわかりにくい面もあり、受取額を把握していない加入者も多い。制度を運営する企業側は財政状態を維持するため安全志向が強く、運用成績に対する加入者の意識も乏しい。
米国、英国は企業年金に運用成績の開示を義務づけている。米国は有価証券報告書のような法定開示書類で当局に提出し、母体企業が投資家に公開しているほか、労働省のホームページを見れば企業年金の決算情報を閲覧できる。開示ルールも定まっており、年金間で開示内容を比較しやすい環境が整っている。英国では年金監督庁の監督下で企業年金が自ら運用成績を開示している。
日本ではあらかじめ企業が給付額を約束して運用する確定給付型年金(DB)については厚労省への報告義務があるものの一般には公開していない。
確定拠出型年金(DC)も運用成績を比べることは難しい。一般に公開することで他社と比較できるようにし、低い運用成績を放置しにくくする効果を狙う。
企業年金は運用益で資産を膨らませて給付を充実させるしくみだ。資産運用会社に運用を委託し、企業統治(ガバナンス)に問題があったり業績が長期低迷したりしている企業に注文をつける機関投資家の一翼を担っている。
ただ、投資先との建設的な対話を促す原則「スチュワードシップ・コード」を導入する年金基金は60程度にとどまっているのが実態だ。
背景には人材難がある。企業年金は人事や労務出身者が担うことが多く、金融や運用の知識・経験が豊富なプロ人材をあてている企業は少ない。総幹事と呼ばれる金融機関任せで極度にリスクを回避する安全志向が強い。「企業のデフレマインドを払拭する環境整備が不可欠で高度な運用を目指すガバナンス改革が必要だ」(金融庁幹部)
中小規模の年金基金の場合、採算を考えると外部から助言を受けるのは現実的に難しい。事務の統合や運用の共同化など効率化が欠かせない。企業年金連合会に運用を委託できるものの広がっていないのは高度な運用を意識するガバナンスが構築できていないためだ。
新しい資本主義実現会議ではこうした業務運営のあり方にもメスを入れて議論する。
DCは個人が運用戦略を考えて運用商品を選ぶ。それぞれ成績は異なるものの、DB以上に実態把握が難しい。企業年金連合会が今年3月、非公式に実施した2021年度決算調査によると、預金など元本確保型商品の割合は44.8%にのぼった。
岸田文雄首相は今年6月、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、「資産運用業等の抜本的な改革」を打ち出し、9月に開かれたニューヨークでの講演でも「アセットオーナー(資金の出し手)の改革を行っていく」と表明していた。(金融エディター 玉木淳、中川竹美)
【大谷翔平が大リーグ本塁打王 44発、日本人初】
同じ2日の日経速報メールは次のように報じた。
米大リーグは1日、ア・リーグのレギュラーシーズン全日程が終了し、大谷翔平(エンゼルス)がリーグトップの44本塁打でタイトル獲得が確定、日本人初の本塁打王の偉業を成し遂げた。
今季は4月2日のアスレチックス戦で第1号を放ち、6月には月間15発と量産。8月23日に44号を放った。投手としても出場した同日の試合後に右肘靱帯損傷が判明、右脇腹の負傷もあり9月3日の出場が最後となった。
2021年の自己最多の46本塁打には及ばなかったが、同年より23試合少ない135試合で44本とハイペースの量産ぶり。投手では10勝をマークし、ともに史上初となる「10勝、40本塁打」「2年連続2桁勝利、2桁本塁打」の快挙を達成し、21年以来2度目の最優秀選手(MVP)受賞が有力視される。
大谷は9月19日、18年以来2度目の右肘手術を受けた。24年は打者のみで出場し、投手での復帰は25年になるとみられている。
【日経平均一時500円超高 売り手が慌てた米政府閉鎖回避】
同じ2日の日経ニュースメールは次のように報じた。
2日の東京株式市場で日経平均株価が急反発し、上げ幅が一時500円を超えた。年度下半期の幕開けとなったこの日、米政府機関の閉鎖回避、日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)、需給悪化要因のあく抜けという3つの好材料が重なり、投資家心理が大きく改善した。日本株の底堅さが改めて鮮明になっている
「投資家にとって大きなポジティブ・サプライズ」(楽天証券経済研究所の香川睦チーフグローバルストラテジスト)となったのが、米政府機関の閉鎖回避だ。米連邦議会の上下両院は9月30日夜(日本時間10月1日午前)、予算執行を11月中旬まで継続できるつなぎ予算案を超党派で可決し、政府機関の閉鎖を土壇場で回避した。
直前までは政府機関の閉鎖が確実視されており、米国景気の下押しにつながるとの不安が世界的に投資家心理を冷え込ませていた。香川氏は「リスクオフのムードから日経平均先物を売り込んでいた海外投資家が慌てて一気にショートカバー(売り方の買い戻し)に動いた可能性がある」と指摘する。
そこに今朝発表された日銀短観が追い風となった。大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の6月調査から4ポイント改善してプラス9だった。QUICKが集計した民間予想の中心値(プラス6)を3ポイント上回った。23年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比13.0%増と上方修正された。
ファナックやトヨタ自動車、ダイキン工業など幅広い製造業銘柄が上昇したのに加え、地銀を含む銀行株が特に上げた。西日本フィナンシャルホールディングスが一時7%高、いよぎんホールディングス、しずおかフィナンシャルグループが一時4%高となった。
設備投資に向けて企業が借り入れを増やし、銀行の融資が拡大すると連想された。景況感の改善が日銀によるマイナス金利政策の解除につながるとの見方もある。
株式需給の改善も一因だ。2日からの日経平均の構成銘柄見直しでは値がさ株のレーザーテックなどが新たに加わった一方、三井E&Sなどが外れた。大和アセットマネジメントの富樫賢介チーフ・ストラテジストは「パッシブ運用のインデックス・ファンドなどが銘柄入れ替えに際して値がさのレーザーテック株を買うのに株価水準が低い三井E&S株などの売却では金額が足りず、先週末まで他の構成銘柄も薄く広く売りを出していた」と指摘する。
週が明け、こうした需給悪化のあくが抜けたのも500円超高につながった。政府と金融界は6日まで海外の投資家や資産運用会社を集中的に日本に招く、「Japan Weeks(ジャパンウィークス=日本週間)」を開催している。週明けに鮮明になった日本株の底堅さは訪れた海外投資家に一段の日本株買いを誘いそうだ。(桝田大暉)
【ジャニーズ、補償後に廃業 新会社は知的財産を承継へ】
同じ2日の日経速報メールは次のように報じた。
ジャニーズ事務所は2日、性加害問題からの立て直し策を発表した。所属タレントのマネジメント業務を手掛ける新会社を設立、同事務所は被害者救済に専念し終了後に廃業する。新会社はタレント業務に必要な知的財産を引き継ぎ、創業家一族は経営に関与しない。新会社の資本構成は明らかになっておらず、ガバナンス(企業統治)が機能するかなお不透明だ。
ジャニーズ事務所は17日付で社名を「SMILE-UP.(スマイルアップ)」に変更し、被害者への補償手続きを順次進める。法令順守に向けて、チーフコンプライアンスオフィサー(CCO)に企業のリスク管理などに詳しい弁護士の山田将之氏が就任。全ての事業活動で子どもの保護と安全を確保するグループの人権方針も策定した。
創業者の故ジャニー喜多川氏から性加害を受け、補償を要求した人は9月30日時点で325人いる。2日に記者会見した東山紀之社長は「自分たちでジャニーズ事務所を解体する」と述べた。
同事務所は9月の会見で、引責辞任した創業家出身で前社長の藤島ジュリー景子氏が代表権を持ったまま、全株式を持つ株主構成を見直さず、「ジャニーズ」という社名も当面維持するとしていた。所属タレントを広告に起用するスポンサー企業から人権尊重の視点やガバナンスが不十分との指摘が相次いでいた。
前回の会見から1カ月足らずでの方針転換となった経緯について、東山社長は「内向きだったと批判されても当然。喜多川氏と完全に決別する」と述べた。ジャニーズの名称を使ったグループについても変更する。藤島氏は関連会社を含めて代表取締役を退任する。
新会社は1カ月以内に立ち上げる。藤島氏は出資せず、取締役にも就任しない。資本金は検討中で役員や従業員が出資する。社長は東山氏が兼任し、社名はファンクラブの公募で決める。社外取締役の起用も検討する。
新会社は所属する個人のタレントやグループが会社と個別に契約を結ぶ「エージェント会社」とする。エージェント会社はタレントと契約を結び、仕事獲得などを請け負う形をとる。ハリウッドなどでは一般的な契約方法で、国内では吉本興業ホールディングスが、所属タレントが反社会的勢力の会合に参加した「闇営業」問題などを受けて19年に導入した。
同事務所が再建に向けて選んだのは「第二会社方式」と呼ばれる手法だ。水俣病の原因企業のチッソは水俣病特別措置法に基づき、11年に事業部門を100%子会社のJNC(東京・千代田)に分社し、チッソは補償業務に特化した。同事務所は広告起用の見直しが相次ぐ所属タレントの活動継続と、被害者の救済を両立する狙いがある。
外部の専門家チームは8月末に公表した報告書で、喜多川氏による性加害は半世紀以上に及び、被害者は数百人に及ぶとした。今後は補償額がどの程度まで膨らむか、その原資が焦点となる。
非上場企業のジャニーズ事務所は、主要な経営指標を公表していないが、民間調査会社によると売上高は800億円程度。稼ぎ頭はファンクラブ収入だ。「嵐」や「Snow Man」など15グループだけで会員数は累計1100万人超になる。年会費は4000円で、総額500億円前後に上る計算だ。このほか東京都内の所有ビルなどの資産価値は計1000億円程度とみられる。
企業の人権侵害を巡る視線の厳しさが増す中、「ジャニーズ離れ」に歯止めがかかるかは不透明だ。帝国データバンクによると、テレビCMなどにジャニーズ所属のタレントを起用した上場企業65社のうち、半数にあたる33社が起用方針を見直した(9月30日時点)。
所属タレントを起用した広告や販促物の展開を停止している日産自動車は2日、「事務所が発表した改革や再発防止の取り組みを注視しながら、適切な対応を取っていく」と述べるにとどめた。
スポンサー企業は過去との決別の是非について資本構成で判断するとされるが、新会社の構成は明らかになっていない。企業のガバナンス問題に詳しい青山学院大学の八田進二名誉教授は「現状ではスポンサー離れを食い止めることはできない」との見方を示す。
日本リスクマネジメント学会理事長で関西大学の亀井克之教授(リスクマネジメント論)は「新会社の経営陣に喜多川氏が築いたシステムで育ったタレントが就くのは問題がある。スポンサー離れが続く可能性がある」と指摘する。
【ノーベル賞にカリコ氏ら mRNA医薬、コロナ実用化導く】
同じ2日の日経速報メールは次のように報じた。
スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、2023年のノーベル生理学・医学賞を米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコ非常勤教授(68)と同大のドリュー・ワイスマン教授(64)に授与すると発表した。遺伝情報を伝える物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」を使うワクチンに欠かせない基盤技術を開発した。新型コロナウイルスワクチンを実用化に導いた業績が評価された。
授賞理由は「新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの基盤技術開発」。
• 【関連記事】ノーベル賞受賞のカリコ氏「失敗する力を学んでほしい」
mRNAは細胞内で遺伝情報をもとにたんぱく質を作る際に伝令役となる物質だ。新型コロナウイルスに対しては、米ファイザーと独ビオンテック、米モデルナがそれぞれ20年1〜3月ごろから本格的に開発を始め、同年12月にそれぞれ米国などで緊急承認を受けた。「ワクチン開発には少なくとも数年かかる」といわれた常識を覆した。
感染や発症、重症化を防ぐ効果は従来型のワクチンより高い。ファイザーとビオンテックのワクチンは、日本や米国など約180カ国・地域で承認された。
ノーベル生理学・医学賞の選考委員会は2日、「ワクチンが非常に早く開発され、パンデミック(世界的流行)の初期段階において、命を救うという点で非常に重要だった」と評価した。
メッセンジャーRNA(mRNA)
細胞内でDNAの遺伝情報をもとにたんぱく質を作る際に伝令役となる物質。伝える遺伝情報に合わせて人工合成できる。新型コロナワクチンではウイルスのたんぱく質を作るmRNAを体内に投与する。ウイルスのたんぱく質ができ、それを免疫が記憶することで、ウイルスが実際に侵入したときに感染防御などに役立つ。
mRNAを感染症の予防や病気の治療のために体内に投与するアイデアは1980年代からあり、研究開発は90年代から本格的に始まった。しかし、mRNAは壊れやすく、体内の免疫反応を過剰に起こす問題があり、うまくいかなかった。
カリコ氏らは2005年、mRNAの一部の物質を変えるだけで、免疫反応が回避できることを示した。RNAをもとに作られるたんぱく質の量が数倍多くなることも見つけた。これらの発見がmRNAワクチンの基盤技術になった。
ただ、発表当時は大学や製薬業界の評価は高くはなかった。大学側はカリコ氏らの研究成果の特許を企業に売却した。カリコ氏は13年にビオンテックに入って、ワクチンの実用化に貢献した。
米ボストン・コンサルティング・グループは、mRNAワクチンの市場規模は21年に500億ドル(約7兆5000億円)以上にのぼったと推計している。
カリコ氏らが開発した技術はさまざまな病気の予防や治療に使う「mRNA医薬」の普及につながると期待されている。エイズウイルス(HIV)、ジカウイルス、インフルエンザウイルスといった他の感染症でもワクチンとしての臨床試験(治験)が進む。がんや希少疾患の治療薬を目指した治験も進む。
授賞式は12月10日にスウェーデンのストックホルムで開く。賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1億5000万円)で、2氏で分ける。
カタリン・カリコ(Katalin Kariko) 1955年ハンガリー生まれ、82年セゲド大で博士号取得。85年に米国に移住後、米ペンシルベニア大助教授などを経て2013年に独ビオンテック副社長。21年に同大非常勤教授、セゲド大教授。22年からは同社の外部コンサルタントを務める。
ドリュー・ワイスマン(Drew Weissman) 1959年米国生まれ、87年米ボストン大で博士号取得。米ペンシルベニア大助教授などを経て2013年教授。21年よりペンシルベニア大RNAイノベーション研究所所長。カリコ氏とともに米ラスカー賞など受賞多数。
【植田日銀、2%へ揺るがぬ信念 確信なら「一気に動く」 植田日銀半年 近づく出口】
3日の日経速報メールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・植田和男氏が日銀総裁に就任して9日で半年に
・「ある程度適切に政策対応できた」との自己評価
・金融緩和の出口など真価が問われるのはこれから
日銀の総裁に植田和男氏が就任して9日で半年となる。7月には長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化し、黒田東彦前総裁が口をつぐんできた金融緩和の出口にも言及し始めた。四半世紀続いたデフレとの戦いの総仕上げをどう進めるのか。半年の軌跡から読み解く。
「経済物価情勢の動きは半年前に予想していたものとはやや違った動きをしているが、それを捉えたうえで、ある程度適切に金融政策対応ができた」。9月22日、金融政策決定会合後の記者会見で、植田氏は就任からの半年を振り返った。
就任直後、官邸からけん制球
日銀は7月の会合でYCCを修正し、長期金利の上限をこれまでの0.5%から事実上1%に引き上げた。長期金利は自由度をある程度取り戻し、2016年から続いたYCCは形骸化が進んだ。
国債の大量購入で長期金利を抑え込んできた日銀にとって、YCCを柔軟化し「金利のある世界」に足を踏み入れたのは大きな変化だ。ある日銀関係者は「YCC修正を市場の混乱を招かずに成功させた中央銀行はほかにない」と力を込める。ただ、マイナス金利の撤廃などの金融政策の正常化はこれからが本番であることも確かだ。
道のりがいかに険しいか、植田氏は4月の就任直後にある洗礼を受けたとされる。関係者によると、首相官邸を訪れた植田氏に岸田文雄首相はこんな趣旨のけん制を繰り出した。 当面は金融政策の転換と受け止められる動きは避けるように――。
異次元緩和を進めた黒田氏から植田氏に総裁が代わり、金融市場では政策転換への期待が高まっていた。だが、実際に政策が大きく変われば、黒田氏の後ろ盾だった故安倍晋三元首相に近い議員と官邸とで溝が生じかねない。
2000年のゼロ金利解除の失敗を日銀審議委員として経験した植田氏も、日銀が早く動きすぎるリスクは十分すぎるほど理解していた。就任当初は慎重な発言に終始し、物価の基調の強さを確かめつつ、世論や政治の変化を待っていた節がある。
内田副総裁が上げたのろし
実際、円安が長引き、日銀の金融緩和が物価高を招いているとの声が強まった。岸田首相が6月に通常国会中の解散総選挙の見送りを決めたこともあって、7月の政策修正への道は整えられていった。
のろしを上げたのは、日銀の生え抜きトップの内田真一副総裁だった。日本経済新聞との7月上旬のインタビューで「(YCCが)市場機能に影響を与えていることは強く認識している」と発言。「強く」という言葉をわざわざ差し挟むことで、政策修正近しとの観測を高めた。
日銀関係者は「慎重姿勢を強調してきた内田氏の発言だったからこそ、政策修正がありうるとの地ならしにつながった」と明かす。学者出身の植田氏の政策運営には懸念の声もあったが、内田氏が実務を押さえて時には露払いの役割を果たし、植田氏が幅広い意見に目配りしながら総合判断するという二人三脚が機能している。
財務省幹部は「これまでの金融政策運営はうまくいっている。日銀も自信を深めているのではないか」と植田体制のスタートを評価する。一方で、今後想定されるマイナス金利解除などの金融緩和の出口については「これまでとレベルの違う政策の変更だ」とし、真価が問われるのはこれからとの考えをにじませる。
発言にブレはないか
課題もある。強い言葉で政策の方向性を示す黒田氏と違って、協調型のリーダーである植田氏の発言は慎重で、時にぶれているような印象を与える。
政策修正があった7月会合の前には「全体のストーリーは不変」と発言し、一部の市場参加者が「修正見送り」と受け止めた。9月9日の読売新聞のインタビューでは「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と述べ、市場でマイナス金利の年内解除の織り込みが進んだ。
日銀内では「どちらともとれる発言をしているだけ。政策への考えは一貫している」との声があがる。この先の金融政策を縛るような発言は極力抑えているため、発言は総花的になりがちで、ワンフレーズにだけ注目すると真意を捉え損ねてしまう。
賃上げへの強いこだわり
信念に欠けるわけではない。ある日銀関係者は「優柔不断ではない。過去に政策変更で経済を冷やした経緯もあり、判断に時間をかけているだけだ」と説明。「目標達成を確信すれば一気に動く」という。
「確信」は得られるのか。日本経済の供給力と需要の差を表す「需給ギャップ」は足元プラス圏に浮上し、政府が掲げるデフレ脱却の条件は形式上、満たされた。最後のピースになるのが、企業の賃上げだ。
植田氏は「賃金と物価が好循環を続けるという姿が確認できることが必要」との発言を繰り返してきた。植田氏の東大時代の教え子である金融関係者は「賃上げが物価上昇に追いつく前に金融引き締めに転ずるのは問題だと(就任前に)たびたび吐露していた」と話す。
賃金は持続的に上がっていくのか。焦点は来年の春季労使交渉だ。さらなる政策修正の判断時期を「来年1〜3月頃」(田村直樹審議委員)とする意見がある。
異例の金融緩和を延々と続けることは望ましくないが、日本経済がデフレに逆戻りするリスクは冒せない。確信を持てれば前進し、そうでなければ踏みとどまる。「到底、決め打ちできない」という言葉にこそ、植田氏の信念がにじむ。
【楽天、プラチナバンド割り当て申請 品質改善の切り札に】
同じ3日の日経速報メールは次のように報じた。
楽天グループ傘下の楽天モバイルが強く希望する「プラチナバンド」の獲得に一歩近づいた。電波がつながりやすく、サービス品質改善の切り札となるプラチナバンドの割り当てについて総務省は3日、同社から割り当ての申請があったと発表した。狙い通りに契約数の増加につなげるには財務体質が悪化する中でいかに素早く設備投資を実行できるかが問われる。
鈴木淳司総務相は3日の閣議後の記者会見で「電波監理審議会の諮問をめざして割り当て手続きを進める」と述べた。申請は1社のみだったため、総務省は最低限の要件を満たしているかを確認する「絶対審査」を行う。総務相の諮問機関による答申を経て、早ければ23日に割り当てが決まる。決定後、楽天モバイルによる利用は早くても年明けになるとみられる。
ラチナバンド 700〜900メガヘルツ(MHz)の周波数帯の電波で、建物内などでもつながりやすい。700MHz帯の周波数帯は地上デジタル放送向けと携帯電話向けの電波が隣接しており、干渉しないよう未利用帯域を設けている。2022年11月にNTTドコモが3MHz幅の2カ所を携帯電話向けに割り当てることを提案していた。
プラチナバンドの獲得は楽天にとって悲願だ。使い勝手がいいにもかかわらず大手携帯電話4社のうち、後発の楽天モバイルだけが持っていなかったためだ。
その影響は苦戦する楽天の携帯事業にも表れている。楽天モバイルを巡っては基地局建設など累計1兆円を超える設備投資の負担が重く、23年1〜6月期連結決算(国際会計基準)の携帯事業の営業赤字は1850億円(前年同期は2538億円)だった。
携帯事業の赤字は四半期ベースでは22年1〜3月をピークに縮小しているものの、グループ全体では12四半期連続で赤字だ。契約数が伸び悩んでいるためで、その一因はつながりにくさにあった。
そこで楽天は6月、KDDIから回線を借りる「ローミング」(相互乗り入れ)利用によるデータ利用量の上限をなくす新プランを始め、つながりやすさに課題があった東名阪などの繁華街でもKDDI回線を使えるようにした。プラチナバンドなら通信品質をさらに改善できると獲得に力を入れていた。
もっとも新たな帯域を使うサービスを始められても、先行きには不透明感もある。
楽天モバイルは8月の決算説明会でEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)ベースの単月黒字化に必要な契約数は800万〜1000万との見通しを示した。8月28日に500万を突破し、7月から約9万増えた。このペースでの増加が続いても800万に到達するのは約3年かかる計算だ。
財務も懸念材料だ。設備投資などにあてた社債償還の期限が迫っている。23年に780億円(うち680億円はハイブリッド債)の償還予定額は24年には3000億円、25年には4000億円と跳ね上がる。
悪化した財務を改善するために楽天は5月、公募増資と三木谷浩史会長兼社長の資産管理会社などへの第三者割当増資で3000億円規模の資金調達を実施した。さらにKDDIとの新ローミング契約を利用することで23〜25年の3年間で約3000億円の設備投資費の削減を目指すとする。
それでもプラチナバンドを利用するには一定程度の追加の設備投資は避けられない。UBS証券の福山健司氏は「試算ベースだが東名阪での利用には今後2年間で500億〜1000億円程度の投資が必要」とみる。楽天全体の22年12月期の営業キャッシュフロー(金融事業除く)は3153億円の赤字のため、投資のインパクトは小さくない。
楽天が期待するのがアンテナ以外の大半の設備をクラウド上のソフトウエアに置き換える同社の「仮想化」技術だ。この技術を使えば既存の基地局を活用し、設備投資の大幅な増加を避けながら、プラチナバンドを展開することができるとしている。
3日の楽天グループ株は前日終値比で2%安の565円90銭で引け、5月に実施した公募増資の発行価格(566円)近辺で推移している。株価を反転させるには、効率的な設備投資を実施しながら、ユーザーにプラチナバンドなどによる通信品質改善をどれだけ体感してもらえるかが鍵となる。(西城彰子)
【半導体工場の立地規制を緩和 政府、農地・森林にも誘致】
同じ3日の日経速報メールは次のように報じた。
政府は12月にも半導体など重要物資の生産工場の誘致に向け土地規制を緩和する。農地や森林など開発に制限がある市街化調整区域で自治体が建設を許可できるようにする。大型工業用地の不足に対応する。税制や予算とあわせて規制改革で国内投資を促す。
経済安全保障の観点から半導体や蓄電池、バイオ関連といった分野が対象となる。岸田文雄首相が4日、民間企業や閣僚を集めて首相官邸で開くフォーラムで円滑な土地利用に向けた規制改革に取り組むと表明する。10月末にまとめる経済対策の柱となる国内投資の促進策として税制・予算と合わせて打ち出す。
経済産業省によると全国の分譲可能な産業用地面積は2022年時点でおよそ1万ヘクタールある。11年の3分の2ほどに減った。新たに土地を確保するにも用途指定を変更する手続きなどに時間がかかる問題点が指摘されてきた。
市街化調整区域の開発は、地域特性を生かした事業を展開する企業を支援する「地域未来投資促進法」の規定を使って例外的な活用を認める。
いまは食品関連の物流施設やデータセンター、植物工場などに限り、政府が自治体に開発許可を認めている。関係各省の省令や告示を改正し、これに重要な戦略物資の工場を加える。自治体が地域活性化や環境の観点で問題ないと判断すればより柔軟に工場を誘致できるようになる。
手続きに時間がかかる農地の場合は、通常なら1年かかる手続きを4カ月ほどに短縮する。
農地の転用には地元の農業委員会などの許可が要るなど規制が複数の省にまたがるケースが少なくない。このため国土交通、農林水産、経産の3省が連携して開発許可の手続きを同時並行で進める。
半導体の工場にはまとまった土地と良質な水などが欠かせない。円安や安定したサプライチェーン(供給網)のため生産拠点を国内に回帰させる動きがある一方、条件に合う工業用地の供給は限られる。
半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本に進出し、周辺の自治体からは土地規制の是正を求める声が上がっていた。
九州経済連合会は国や県の権限で農地を速やかに産業用地に転用できるような規制緩和策を政府に要請した。企業が土地を確保できず進出を断念したケースもこれまでにあったという。
TSMC新工場の周辺は半導体関連のサプライヤー企業の集積が相次ぐ。工業用水の確保や道路など物流網の構築は待ったなしの状況にある。熊本県の蒲島郁夫知事は8月、官邸で首相に社会資本整備に関する「緊急要望」を手渡した。
政府は機動的なインフラ整備に向けて関係府省が横断で複数年にわたり支援する枠組みを創設する。23年度補正予算案への費用計上に向け調整する。
為替相場は円安が続き、日本国内で投資しやすい環境が整う。地方に工場の立地を促し、地域の雇用確保や周辺産業を含めた賃上げにつなげる。
【米下院、マッカーシー議長の解任動議を可決 米国史上初】
4日の日経速報メールは次のように報じた。
【ワシントン=坂口幸裕】米連邦議会下院は3日、野党・共和党トップのマッカーシー議長の解任動議を与野党の賛成多数で可決した。下院議長の解任動議が可決するのは米国で初めて。与党・民主党の議員に加え、政府閉鎖を回避したつなぎ予算を巡る対応を問題視した共和の保守強硬派らが賛成に回った。
共和のマット・ゲーツ下院議員は2日、マッカーシー氏の議長解任動議を提出した。つなぎ予算を巡り要求した歳出削減などを受け入れず、民主と協力したことを問題視した。これまで解任動議を提出された下院議長はマッカーシー氏で3人目で、可決された初のケースになる。
下院議長は大統領の継承順位が副大統領に次ぐ2位の要職だ。マッカーシー氏の解任動議を巡る採決は賛成が216、反対が210、欠席が7だった。米メディアによると、8人の共和議員が賛成した。
米メディアによると、下院は次期下院議長を選ぶための採決を11日にも実施する方向で調整している。マッカーシー氏は3日の記者会見で、議長選には出馬しないと表明した。後任には下院共和ナンバー2、スカリス院内総務やナンバー3のエマー院内幹事らの名が挙がっている。
現在の下院(定数435)の構成は多数派を握る共和が221議席で、民主が212議席をもつ。ゲーツ氏を含む20人ほどが所属する共和の保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議連)」は少数派ながら、与野党の拮抗をテコに下院で影響力を行使できる構図にある。
9月30日に成立したつなぎ予算に強硬派が強く求めていた国境の警備強化策は盛り込まれず、民主が賛成に転じたため可決を阻止できなかった。ウクライナ支援の継続に前向きだったマッカーシー氏の後任議長次第では、バイデン政権が急ぐ対ウクライナの追加予算の成立が一段と難しくなる可能性がある。
ゲーツ氏は1日、反対する追加のウクライナ支援を巡り「マッカーシーが与党・民主党と密約を交わした」と明かしていた。つなぎ予算から除外されたウクライナ支援の予算案を実現させる代わりに、マッカーシー氏が議長職にとどまるよう民主と協力する交渉をしている可能性を示唆した。
下院民主トップのジェフリーズ院内総務は3日、党所属議員に送った書簡でマッカーシー氏の解任動議に賛成する方針を伝えた。「下院共和の内紛を終わらせるのは、今や共和議員の責任だ」と記した。
ゲーツ氏らはマッカーシー氏が1月に議長に就任する際も反対した。15回目の議長選で当選した時、マッカーシー氏は反対派を取り込むため譲歩案を提示。1人でも解任動議を採決できるように条件を大幅に緩和した経緯がある。
【為替介入巡り神経戦 深夜の円急騰、疑心暗鬼で増幅】
同じ4日の日経ニュースメールは次のように報じた。
外国為替市場で、為替介入を巡る市場と政府の神経戦が激しくなっている。3日深夜には対ドルの円相場が1ドル=150円台から147円台まで急騰する場面があり、市場では為替介入の観測も流れた。政府は為替介入にはコメントしない方針で、介入の有無を巡り投資家の疑心暗鬼は当面続きそうだ。
それは一瞬の出来事だった。日本時間の午後11時ごろ、円が1年ぶりに150円の大台まで下落した。しかしそれもつかの間、午後11時12分ごろに予兆もなく円が強含み、1分以内に147円30銭前後まで円高・ドル安が進んだ。
通常であれば、1分以内に3円近くも円相場が動くことはない。このため政府・日銀が円買いの為替介入に踏み切ったのではないかという噂が英ロンドンや米ニューヨークなどで駆け巡った。結局11時半ごろには149円台まで再び円安が進み、介入の観測は急速にしぼんだ。
複数の市場関係者の解説を総合すると、この値動きの背景はこうだ。
150円の大台まで円が下落したことにより、値上がりしたドルを売って利益を確定する動きが相次いだ。それにアルゴリズム取引が反応し、円高方向への大きな値動きが発生した。もともと介入への警戒が強かったことから、円を買い戻す動きが相乗的に強まったという。
神田真人財務官は4日朝、為替介入については「コメントしない」として介入の有無を明らかにしない従来の方針を踏襲した。市場関係者が介入の有無を探るために着目するのが、昨年の介入時との値動きの差だ。
昨年10月21日の為替介入では午後11時40分ごろから円が急伸し、151円台半ばだった円相場がわずか1時間強で144円台まで円高が進んだ。それと比べると「円高の勢いや持続性が明らかに低く、介入と考える合理的な理由はない」(外資系銀行)との見方もある。
も っとも公式には介入の有無が明らかにされていないことで「投資家は150円をいちおうの介入ラインとして意識せざるを得ない」(野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジスト)との声がある。
神田財務官は4日、介入の条件について「過度な変動に対してはこれまで通りの方針で臨んでいる。一方向に一方的な動きが積み重なって一定期間に非常に大きな動きがあった場合は過度な変動にあたりうる」とした。
その上で、一定期間の考え方について「1日の場合もあれば2週間ほど、1カ月ぐらいの場合もある。年初からだとドル円は20円以上の値幅がある。そういったことも一つの要素だ」と説明した。
市場ではかねて政府は1日の円相場の変動を重視しているとの見方があった。この日の神田財務官の発言からは市場の想定よりも介入の条件を広く捉えている様子がうかがえた。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司シニア・アドバイザーは「投機筋へのけん制としてはかなり効果的」とみる。
米長期金利の上昇は止まらず、当面は円相場への下落圧力は続く公算が大きい。神田財務官が指揮した昨年の為替介入は結果的に大きく円相場を押し上げることに成功した。市場関係者の脳裏にはその記憶が刻み込まれており、介入を巡る駆け引きは今後も続きそうだ。(佐藤俊簡、犬嶋瑛、南泰葉)
【沖縄県、辺野古の承認指示応じず 国が代執行提訴へ】
同じ4日の日経ニュースメールは次のように報じた。
沖縄県の玉城デニー知事は4日、米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を巡り、防衛省による設計変更申請を同日までに承認するよう求めた斉藤鉄夫国土交通相の指示に応じない方針を明らかにした。県庁で記者団に「期限までの承認は困難だと回答した」と語った。
岸田文雄首相は4日夜、首相官邸で記者団に「国交相が今後適切に対応していく」と述べた。「世界で最も危険であると言われている普天間基地を一日も早く移転させる。これからも努力を続けていかなければならない」と強調した。
国交省は「知事が期限までに承認を行わなかったことは遺憾だ」(水政課)とコメントした。同省は地方自治法に基づき、県に代わり国が承認する「代執行」に向けた訴訟を5日にも福岡高裁那覇支部に提起する。
国が勝訴すれば、高裁は県に一定期間以内に承認するよう命じる判決を出す。それでも県が従わない場合は、国が代執行できる。
設計変更を巡っては9月4日の最高裁判決で県の敗訴が確定し、承認する法的義務が生じた。判決後も県は明確な態度を示さず、国が承認を勧告しても応じなかった。国は勧告を指示に切り替え、改めて承認を求めていた。
玉城氏は指示に応じない理由として「最高裁判決の精査」「県民や行政法学者らから寄せられた意見の分析」がさらに必要だと説明した。国に対し「県との対話に応じるよう粘り強く求めていきたい」と述べた。
承認の判断を巡っては、県庁内に「法治国家として最高裁判決は受け入れざるを得ない」として承認すべきとの声もあった。知事を支える県議らは2日、国の指示に応じないよう求める要請書を玉城氏に提出するなど反対姿勢を崩していない。
辺野古移設は2006年に日米で最終合意し、13年に当時の仲井真弘多知事が国による埋め立て申請を承認した。
その後で軟弱地盤の存在が明らかとなり、防衛省沖縄防衛局が20年に工事の設計変更を県に申請した。県が調査が不十分などとして承認しなかったのに対し、国は認めるよう是正指示を県に出した。県は国の対応が違法だとして提訴していた。
防衛省は軟弱地盤の改良を伴う埋め立て工事の開始から移設完了まで12年ほどかかるとみている。13年時点の計画では最短で22年度の移設完了を明記していたが、現時点で30年代半ば以降にずれ込む見込みだ。
【みずほ、楽天証券と24年春に新会社 ネット顧客取り込み】
同じ4日の日経速報メールは次のように報じた。
みずほ証券は楽天証券と金融仲介の新会社をつくり、2024年春にサービスを始める。楽天証券のネット取引を利用する顧客に対し、営業担当者が対面で資産運用に関する相談に応じる。みずほフィナンシャルグループの幅広い商品やサービスを楽天証券の顧客に紹介し、顧客の拡大を目指す。
新会社は楽天証券の顧客のうち、退職金の運用や相続など複雑な悩みに関して、対面で相談したい人を対象とする。顧客は楽天証券の口座を使い続けるが、必要に応じてみずほ証券でも口座を開設する。みずほ銀行やみずほ信託銀行など、グループの商品やサービスも紹介する。
楽天証券は手数料の低さやネットの利便性を武器に、若年層を取り込んできた。楽天証券の口座数は900万超。大部分が若年層だが、60歳代以上も1割強にのぼる。みずほ証券と組むことで、老後や相続を含めた長期の資産運用ニーズに応えられるようにし、顧客の囲い込みを狙う。
みずほ証券は2022年、楽天証券に約2割出資した。富裕層への対面営業に軸足を置くみずほ証券にとって、楽天証券の顧客基盤を取り込むのが狙い。
•【関連記事】みずほ、楽天証券に2割出資へ ネットが金融の主戦場に
月内にも新会社を設立し、みずほ証券が95%、楽天証券が5%出資する。金融商品仲介業への登録などを経て、24年春の営業開始をめざす。社名は今後詰める。営業担当者は主にみずほ証券から出向させる。
ネット証券を巡っては9月末以降、最大手のSBI証券が日本株の売買手数料をゼロにし、楽天証券も追随するなど、競争が厳しくなっている。4日午後にはNTTドコモとマネックスグループが資本提携を発表した。今後、対面証券や異業種との連携や業界再編が一段と進む可能性がある。
【SBI・楽天が迫った再編 「寄らばドコモ」のマネックス】
5日の日経速報メールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・マネックス証券はライバルとの手数料競争で劣勢
・金融の経済圏で遅れたドコモはうってつけの相手
・異業種を交えた証券再編が日本で起こりつつある
ネット証券3位のマネックス証券が4日、NTTドコモの子会社になると発表した。ネット証券業界の草分け的存在だったが、近年は業界2強のSBI証券と楽天証券が仕掛ける激しい手数料競争で劣勢に立たされていた。9000万人超のユーザーを抱える巨人・ドコモと組んで再起をめざすが、業界を見回しても「通信と証券の融合」は成果に乏しい。もくろみ通り成長できるかは不透明だ。
「ドコモという巨人と、起業家精神あふれる個人の集合体であるマネックスが手を握り、オールジャパンのサービスを提供する」。マネックスグループの松本大会長は4日の記者会見でドコモとの資本提携の狙いをこう語った。
2024年に新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まるなど、貯蓄から資産形成の流れが本格化するなか、ドコモと組んで「広く個人が安心して利用できる、便利で良質な資産形成サービス」(松本会長)の構築をめざす。ドコモとはもともとポイント交換サービスなどで連携していたことがきっかけになったという。
資本提携に基づき、マネックスGは事実上、傘下のマネックス証券の株式の半分をドコモに売却する。マネックス証券はドコモの連結子会社となり、マネックスGにとって持ち分法適用会社の位置付けになる。同社はほかにも暗号資産(仮想通貨)のコインチェックや米国ネット証券会社、資産運用会社など複数の事業を持つが、祖業の国内証券を手放す形となる。
マネックスGの創業は1999年。米金融大手ゴールドマン・サックスで最年少パートナー(共同経営者)に就いた松本氏が、当時黎明(れいめい)期にあったインターネットを通じた金融サービスを構想したのが始まりだ。折しもゴールドマンは新規株式公開(IPO)を控えていたが、同氏はIPOで得られたはずの財産を捨ててまで、新たなビジネスへの挑戦を選んだ。
99年はちょうど投資家が証券会社に対して支払う株式売買委託手数料が完全自由化された年だ。創業間もないマネックスは手数料を業界最安値水準に設定し、松本氏は業界の「風雲児」として脚光を浴びた。2000年代半ばには時価総額が4000億円超に膨らんだが、09年のリーマン・ショック後は業績・株価ともに低迷していた。
マネックスが苦戦した理由は主に2つある。1つがネット証券業界における激しい顧客獲得競争だ。最大手SBI証券や2位の楽天証券が近年、手数料の引き下げやポイント優遇で顧客数を着実に伸ばしてきた半面、マネックスは出遅れた。
同社は代わりに投資信託の銘柄選びのサポートやロボットアドバイザー(ロボアド)など手数料以外で付加価値を高め、顧客にアピールする作戦をとったが、コスト意識が根強い個人投資家には響かなかった。
苦戦の理由のもう1つが不安定な株主構成だ。マネックスGは創業以来、大株主が何度も交代している。05年の上場当時は旧日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)系だったが、10年にはオリックスが大株主となり、14年以降は静岡銀行(現しずおかフィナンシャルグループ)が約2割出資している。経営方針を変更するには大株主の意向をうかがう必要があり、なかなか大胆な戦略をとりにくかったというのが実態だ。
今回のドコモとの提携では、こうした2つの課題を一気に解決できる可能性はある。ドコモは言わずと知れた携帯キャリア最大手だが、グループ内に証券会社や銀行がなく、金融を軸にした経済圏づくりでは出遅れている。マネックスはまさに組む相手としてうってつけだったといえる。
もっとも、通信と証券の融合を巡っては目を見張るような成果が出ていないのが実情だ。auカブコム証券は2019年からKDDIとポイントや株主優待などで連携するが、収益面でも口座数でも、SBI証券や楽天証券との差を縮められずにいる。LINEは19年に野村ホールディングスと組んでスマートフォンを軸とした証券サービスを始めたが、一度も黒字化できないまま23年に事実上の撤退を決めた。
大手キャリアとの連携を協議したことがあるネット証券関係者は「経営の目線を合わせるのが難しい」と明かす。互いに強い規制業種で自由に連携しにくい。通信が設備投資から資金回収まで10年単位で構えるのに対し、証券は日々の相場で収益が大きく振れるため、経営の時間軸もおのずと異なる。
マネックスGの松本会長は4日夜に開催した証券アナリスト向け説明会で、株売却で得た約500億円を株主還元や運用会社のM&A(合併・買収)に充てる方針を示した。大手証券幹部は「競争が厳しい国内証券を高値で売りつけ、得た資金で拡大余地のある運用分野に振り向ける狙いだったとすれば、ナイスディールと認めざるを得ない」と話す。
9月末以降、SBI証券と楽天証券は日本株の売買手数料を相次ぎゼロにした。今後、証券各社に手数料の下げ圧力がかかるのは必至だ。マネックスとドコモが提携を発表した同じ日に、楽天証券がみずほ証券と対面営業を軸とする新会社を設立することも明らかになった。
米国では19年にネット証券大手のチャールズ・シュワブが手数料無料化を発表すると、競合他社もすぐさま追随した。その後は同業のTDアメリトレード・ホールディングがシュワブに、イー・トレードはモルガン・スタンレーにそれぞれ買収されるという大型再編が起きた。国内でもネットと対面、さらに異業種を交えた証券業界の再編が起こりつつある。(和田大蔵、日高大、森川美咲)
【イオン・セブン、金融サービス再編で描く「個客」開拓 編集委員 鈴木哲也】
5日の日経ニュースメールは次のように報じた。
イオンやセブン&アイ・ホールディングスが金融事業をテコ入れし、「個客」に向き合うビジネスモデルへ動き出した。従来は圧倒的なリアルの店舗網を生かして買い物客に利便性を提供してきたが、キャッシュレス化と購買データを駆使するネット企業の台頭で、金融サービスを巡る競争の土俵は様変わりしている。人口減少と店舗飽和の時代に、日本の小売り2強が描くのは「マス商売」から脱却して稼ぐ未来だ。
ネットスーパーを金融事業のテコに
「あなたのオンラインマーケット グリーンビーンズ」。こんな言葉を掲げた緑色のトラックが街を走り始めた。イオンがデジタルシフト戦略の中核として社運をかけるネットスーパーだ。専業の英オカドと提携し、まず今夏から千葉県と都内の一部地域の家庭へ配送し始めた。
クレジットカードやイオン銀行を軸にした金融事業を担うイオンフィナンシャルサービスにとっても重要な転機となる。ショッピングセンターやスーパーといった店をベースにしてきた金融ビジネスを進化させるカギを握るからだ。
リアル店舗との大きな違いは、ネット宅配を通じて顧客ごとの詳細な購買行動やニーズを把握できること。こうしたデータを活用して「将来のOne To Oneマーケティングにつなげていく」(イオンの吉田昭夫社長)のがデジタル戦略の肝だ。「フィナンシャルサービスを紹介するなど、イオングループの様々なサービスを提供するチャネル」に育てる考えで、ローンや保険との相乗効果を期待する。
イオンが発表したネット宅配サービス「Green Beans(グリーンビーンズ)」(4月、東京都港区)
事業会社の統合に踏み込む
大手小売企業でも、店に訪れる大勢の顧客が売り場で何を求めてどのように動いているか、一人ひとりを深く理解できてはいない。マスマーケティングではなく「One To One」で顧客が欲しい商品を個々にオススメするビジネスモデルは「アマゾンや楽天グループなどネット企業に大きく差をつけられている」(小売りアナリスト)。
イオンのグリーンビーンズ事業立ち上げには、金融部門も積極的に協力し、イオンカードの利用客に大幅なポイント還元を期間限定で実施した。PR活動にも金融部門の多くの社員が参加し、9月中旬にはイオン銀行の住宅ローン契約者向けの買い物割引にグリーンビーンズを加えた。
イオンの金融事業は国内クレジットカードのキャッシング残高減少など新型コロナウイルス禍の影響が大きく、2023年2月期の営業利益は588億円と前の期比で微増だったものの、コロナ前の20年2月期の650億円には届かなかった。
イオンカードをはじめ、グループの金融サービスの厚みを打ち出している
デジタル金融サービスの核となるアプリ「イオンウォレット」もこのほど刷新した。5月末時点で836万人の利用者がいるスマートフォン決済「イオンペイ」を使いやすくし、将来的には総合金融アプリへとさらに進化させ、住宅ローンや保険といった多岐にわたるサービスを提供する。組織改革としてイオンフィナンシャルサービスと傘下のイオンクレジットサービスを6月に統合させ、運営効率化にも踏み込んだ。
ATMの役割を再定義
ライバルのセブン&アイ・ホールディンスも金融事業の刷新を急ぐ。「ATMはあらゆる手続きや認証の窓口となる。コンビニで様々なサービスを受けるためのプラットフォームにしていきたい」――。セブン銀行の松橋正明社長は9月、新サービス「プラスコネクト」の発表会で強調した。
全国のセブンイレブンを中心に国内2万7000台に広げた同行のATMだが、キャッシュレス時代に手を打た ないと一気に負の遺産に転じかねない。現金出し入れ以外の役割を広げる戦略のひとつが、24年度の完了を目指す新型ATMへの切り替えだ。「第4世代ATM」として顔認証機能などが付く。
プラスコネクトはこれを生かし、9月26日からセブン銀行のほか群馬銀行や東日本銀行の顧客向けに住所変更などをATMでできるようにした。今後、口座開設など窓口業務の効率化が求められる各地の地方銀行のデジタル化を支えつつ、顧客の利便性も高める。今後は金融機関にとどまらず、ホテルのチェックインや中古品売買などでも本人確認や認証の窓口を担う方針だ。
「みんなに反対された」銀行参入
セブン&アイ(当時はイトーヨーカ堂グループ)が大手小売業として初めて銀行業に参入したのが2001年。当時の経営トップ鈴木敏文氏が「みんなに反対された」と語るように、提携銀行から得るATM手数料を柱とする異例のビジネスモデルだった。消費者が支持し、金融界の常識をくつがえす成功を収めたが、ここ数年でコンビニの出店ペースが著しく減速し、グループ外や海外でのATM設置を急ぐものの、成長のハードルは高くなった。
セブン銀行の経常利益は19年3月期と20年3月期は400億円前後あったが、23年3月期は289億円だった。時価総額は現在3500億円程度で、15年から半減している。
ネット専業銀行は大きな脅威だ。4月に上場した楽天銀行はネット通販などを軸にした「楽天経済圏」を駆使し、3月末時点の口座数は1400万弱、預金残高は9兆1000億円とネット銀行の国内首位に立つ。
日々の買い物と連動して、手軽に金融サービスを利用してもらい、生活の中に浸透していく――。かつて小売業が道を切り開いた新たな金融ビジネスは、人々の購買行動が「店舗からネット」へシフトする中、もう一段のイノベーションが求められる。
集客生かす広告事業も
セブン&アイも7月に金融事業の組織を見直しており、やはり顧客データを活用していかに「個客」を深掘りしていけるかが重要なテーマとなる。クレジットカードや電子マネー「nanaco(ナナコ)」を手がけるセブン・カードサービスを、セブン銀行の傘下に置いた。グループ共通の会員基盤「7iD」は7月に3000万人を超え、nanacoの会員数も3月末で7900万人に上る。ただ、これほど膨大な顧客資産があるにもかかわらず、ATMを柱とする金融事業との相乗効果は十分に出せていなかった。「宝の持ち腐れ」にならないよう、顧客データにもとづく保険やローンなど多様な金融サービスを成長させていく考えだ。
セブン&アイは、金融サービスの強化と連動しながら「リテールメディア」事業の拡大も狙っている。集客力のある店舗やアプリを通じて広告事業を展開するもので、米ウォルマートなどが重要な収益源として育成する。小売業が「One To One 」の個客対応によって成長の壁を乗り越えるための選択肢として世界的に注目が集まっている。
セブン&アイは19年にスマホ決済「セブンペイ」が不正利用事件でサービス停止に追い込まれた苦い経験から、金融事業の遅れにつながった面がある。グループ事業を巡って物言う株主からコンビニ事業への集中を求められてきた経緯もあり、金融事業の再構築で早く成果を出す必要もありそうだ。
BaaSなど止まらない変化の波
小売りの金融事業で最近目立つのは自ら銀行を立ち上げる代わりに、銀行代理業として若い世代などに向けた新たなサービスを生み出すケースだ。デジタル技術の進化が可能にしたBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)と呼ばれる仕組みで、家電量販のヤマダホールディングスや百貨店の高島屋が住信SBIネット銀行と組んで立ち上げている。高島屋は以前からある「友の会」の仕組みを、アプリ上で「スゴ積み」として展開したところ、利用者の平均年齢が20歳近く低下するなど、新たな顧客開拓に成果を上げている。
高島屋では積み立てサービス「スゴ積み」などが使える金融アプリを始めている
海外に目を転じると、リテール金融には大きな変化の波が押し寄せている。アップルが23年春、米国で始めた預金サービスは高金利もあって大きな話題を集めた。人々に親しまれるブランド力に加えて、スマートフォンという生活に不可欠のツールをベースにしているだけに、個客に深く入り込む力は圧倒的だ。
欧州では1990年代後半に、小売り大手の英テスコなどが銀行業に参入し、小売店舗と連動した金融サービスの広がりが注目されてきた。だが欧州でもネットの金融サービスの台頭などで、小売業による銀行は転機を迎えている。
イオンやセブン&アイの金融事業は、消費者の生活に寄り添う発想と便利さの追求で、旧来の金融業界の常識を塗り替えてきた。だが、いまや小売り、金融ともにデジタル化の荒波によって優位性は揺らぎつつある。イノベーションのジレンマを打ち破れる企業かどうか、金融ビジネスが試金石になる。
【機密資格を米欧並みに厳しく、情報漏洩に罰則 政府原案 民間企業「機密の範囲明確に」】
同じ5日の日経速報メールは次のように報じた。
安全保障の機密情報を扱う人を認定する政府の制度案が判明した。機密情報を重要度に応じて2段階に分け、情報漏洩に罰則を設ける。米欧主要国と基準をそろえ、先端技術を扱う日本企業が国際競争力を維持できる環境を整える。
「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」は政府職員や民間人らに情報へのアクセス資格を付与する制度。政府が個人の身辺や民間企業の情報管理体制などを審査し適格性を評価する。
政府は経済安全保障推進法の改正案を2024年の通常国会に提出する。経済界や法律の専門家らでつくる政府の有識者会議を近く再開させ、制度の詳細な設計に入る。
主要7カ国(G7)では日本だけが未整備だ。制度導入により企業は海外企業と衛星や人工知能(AI)など機微を含む次世代技術の共同開発に参加しやすくなったり資格保持を条件にした公共調達の入札に参加できるようになるなどの利点がある。
防衛産業や先端技術を扱う企業には追い風だ。NECの森田隆之社長はかねて「米国との協調には日本でも米国と同レベルの制度が求められるが、個々の企業では不可能。国として整えることで、国際的な共同開発を進めるベースができる」と問題提起していた。
改正案の原案によると、安保に関する機密情報の範囲を「我が国の安全保障に著しい支障を与える情報」と「我が国の安保に支障を及ぼす情報」の2種類に分ける。保全すべき対象として経済制裁に関する分析情報や、宇宙・サイバー分野の重要技術などを想定する。
米国は機密情報の重要度をトップ・シークレット(機密)、シークレット(極秘)、コンフィデンシャル(秘)の3つにランクを分ける。その上でそれぞれにアクセスできる人を審査し資格を与える。
日本政府は米国の3つのランクに対応できるよう、情報を区分する仕組みづくりを進める。他の主要国とも情報共有が可能になるよう調整する。
丸紅経済研究所の今村卓所長は「民間由来の情報を幅広く規制対象にすると、ビジネスに支障が出るおそれがある。政府には何が対象となるのか複数の階層できちんと分けてほしい」と指摘する。防衛事業を扱う企業幹部は「重要情報の幅が焦点になる」と話す。
資格の認定には対象者の身辺調査が必要になる。政府案は身辺調査について「本人が同意した場合のみ実施する」と定め、審査を断った場合に仕事の上で不利な扱いを受けないよう担保すると記した。特定秘密保護法の規定に準じた。
特定秘密の適性評価はスパイ活動との関連や犯罪歴のほか配偶者の国籍なども調査対象となり、プライバシーの侵害を懸念する声が根強い。連合は8月にまとめたセキュリティー・クリアランス導入に関する基本的な考え方で「本人の真の同意と調査に同意しない権利の担保を大前提」とするよう求めていた。
一つの機関が調査を一元的に実施できる仕組みを構築する。高市早苗経済安全保障相は「民間人を幅広く対象にするので、重要な個人情報を責任を持って管理できる組織が必要だ」との認識を示している。
情報の漏洩や不正に取得した場合の罰則に関しては「10年以下の懲役」を軸に検討する。特定秘密保護法や不正競争防止法の規定を参考にした。
制度が整う米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国は機密情報を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」を構成する。日本政府は制度導入によって、これらの国とサイバーセキュリティーなどで連携を深められると期待する。
この間、下記の録画を視聴することができた。 (1)日テレNNNドキュメント「米兵が撮ったナガサキ 孫がたどる戦争の記憶。元兵士を祖父に持つ(大分県玖珠町で英語助手の)トレバー・スレバン氏が祖父の残した原爆投下直後の写真について調べるなかで芽生えた平和への思いとは」9月18日。 (2)BS6報道1930「百年守られた森の行方―神宮外苑再開発を検証。風致地区になぜ高層。ユネスコの諮問機関が計画撤回を求めるわけ」21日。 (3)BS6報道1930「ロシア黒海艦隊“壊滅”か?ウクライナ軍特殊部隊クリミア奪還作戦内幕証言。「一度も撃墜されず」…ウクライナ国産ドロン開発の最前線」27日。 (4)NHKイーテレ「ディープフェイクの衝撃~生成AIの光と影。生成AIの登場で、よりリアルに誰でもフェイク動画・画像がつくれる時代、私たちはどのように真実を見極めていけばいいのか。落合陽一さんとともに考える」28日。 (5)BS1スペシャル 「デジタルアイ 北朝鮮 独裁国家の隠された“リアル” OSINT(オシント)と呼ばれるデジタル調査で世界の真相に迫る第2弾。ミサイル発射を繰り返し、孤立を深める北朝鮮。ベールに包まれた独裁国家の実像は?」10月1日。 (6)BS6報道1930「救済は可能? ジャニーズ新体制発表。「沈黙」を問われたテレビは? 元メンバーが告白「止まらぬ誹謗中傷」の今とは?」2日。 (7)Eテレ「世界サブカルチャー史3「(6)日本 逆説の60-90s 80年代 第2回」3日。
【東芝、主力4事業の再統合検討 発電・鉄道など】
2023年9月21日の日経メールは次のように伝えた。
東芝は発電や鉄道など主力4事業子会社の再統合を検討する。経営再建の過程で2017年に分社化したが、営業や開発など機能が重複し弊害が目立っていた。21日に投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)と国内連合によるTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表。東芝本体への統合で効率化し、非上場後の成長戦略を加速する。
発電・原発などエネルギー、鉄道・水処理などのインフラ、ハードディスクドライブ(HDD)やパワー半導体のデバイス、IT(情報技術)システムの主力部門を束ねる子会社が統合の対象となる。2〜3年後をめどに吸収合併する協議を社内で始めており、上場廃止後にJIPとの協議を本格化する。
4事業子会社を東芝本体に取り込み、バラバラだった人事や財務などの間接部門を集約・統合する。東芝は17年に成長を目指して分社化に踏み切ったが、事業ごとに縦割り意識が強くなり、グループ横断のデジタル化が進まないなど非効率になっていた。
東芝は15年に不正会計、16年には米原発子会社の巨額損失が発覚するなど、経営陣の不正や判断ミスが重なり経営危機に陥った。家電や医療機器、半導体メモリーなど主力事業を相次ぎ売却し、財務の立て直しに向けた資金を捻出した。
東芝の23年3月期のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は2264億円で、競合に当たる日立製作所の1兆3734億円の6分の1、独シーメンスの107億ユーロ(約1兆7000億円、22年9月期)の8分の1にとどまっている。
発電・原発などエネルギー、鉄道・水処理などのインフラ、HDDとパワー半導体のデバイス、ITシステムの4事業が現在の主力となった。東芝関係者によると「株式非公開化から約5年で再生にめどをつける。株式市場への再上場をゴールとして考えている」という。まずは縦割りの弊害が目立つ4事業の壁を壊し、営業や開発、生産などあらゆる領域で横串を通して効率化を進めていく。(広井洋一郎、大西綾)
【日本テレビ、スタジオジブリを子会社化 社長を派遣】
同じ21日の日経速報メールは次のように報じた。
日本テレビホールディングス(HD)は21日、アニメ映画制作のスタジオジブリ(東京都小金井市)を連結子会社の日本テレビ放送網が子会社化すると発表した。議決権ベースで42.3%のジブリの株式を10月6日付で取得する。同社の社長には日本テレビ放送網の福田博之取締役専務執行役員が就く見通し。
日テレHDによると、取得金額は明らかにしていないが、開示可能となった時点で公表するとしている。日テレの動画配信サービス「Hulu」でジブリ作品を配信するかどうかについて、新社長に就く福田氏は「今のところ現状と何も変わっていない。何かあればこれから考えたい」と答えた。
同日の会見に出席したジブリの鈴木敏夫社長は「1人の人間が背負うにはジブリは大きな存在になりすぎた。個人ではなく、大きな会社の力を借りないとうまくいかないのではないかと考えた」と語った。日テレHDの杉山美邦会長は「ジブリは日本を代表するトップクラスのアニメ会社。今の制作体制を最大限尊重したい」と強調した。
ジブリの新体制の取締役は8人となる。創業者の宮崎駿氏は取締役名誉会長、鈴木氏は代表取締役議長、宮崎氏の長男の宮崎吾朗氏は常務取締役に就く。新社長の福田氏を含め日テレ側からは3人の取締役と監査役1人を送り込む。10月30日に開催予定の臨時株主総会で正式に決議する。
日テレHDは「風の谷のナウシカ」を1985年にテレビで初めて放送して以降、ジブリの映画制作にも出資してきたほか、2001年にオープンした「三鷹の森ジブリ美術館」の設立にも携わった。今後は日テレがジブリの経営面をサポートし、ジブリは作品の製作に専念するとしている。
両社によると宮崎駿氏は82歳、鈴木氏は75歳となり、長らく後継者について議論してきた。長男の吾朗氏が何度か後継者として候補に上がっていたが、「1人でジブリを背負うことは難しい。会社の将来は他に任せた方が良い」と固辞していた。経営を任せる様々な候補を検討したが、関係の深い日テレHDに白羽の矢がたったという。
ジブリの買収を受けて日テレHD株は私設取引システム(PTS)で上昇した。一時21日終値(1375円)より22%高い1675円で取引された。
【米メディア王マードック氏引退 長男にバトン、11月に】
同じ21日の日経速報メールは次のように報じた。
【ニューヨーク=清水石珠実】米「メディア王」ルパート・マードック氏が経営の最前線から退くことが分かった。フォックス・コーポレーションとニューズ・コーポレーションが21日、社員向けの書簡で同氏が11月に会長職を退任し、それぞれの名誉会長に退くと発表した。
長男のラクラン・マードック氏が単独で会長を務めることになる。
ルパート氏は92歳。父親から引き継いだオーストラリアの新聞事業を基盤に、一代で世界を代表するメディア企業を育てた。だが高齢のため、最近は経営手腕への不安がささやかれていた。
例えば、2020年の米大統領選を巡る報道で、フォックス傘下のケーブル報道局「FOXニュース」が複数の名誉毀損訴訟を抱えた。今年4月、原告の投票機メーカーの1つと和解にこぎつけたが、和解額は7億8750万ドル(当時の為替レートで約1090億円)と米国の名誉毀損訴訟としては最高水準の損失を出し、投資家の批判を浴びた。
この騒動を巡って流出した資料で、FOXニュース内の経営が混乱している様子も白日の下にさらされた。また、22年後半にはフォックスとニューズの合併を模索したが、最終的には有力株主の賛成を得られずに23年1月に計画撤回に追い込まれた。
ルパート氏は、プライベートでもドタバタが目立っていた。22年、約6年連れ添った4人目の妻ジェリー・ホール氏と突然離婚。23年3 月には保守系のラジオパーソナリティーの女性と婚約したことを明かしたが、2週間後には婚約破棄を発表した。
書簡のなかでルパート氏は「自らは極めて健康だ」と述べた。名誉会長に退いたのちも、「フォックスやニューズが提供するコンテンツには毎日目を通して、意見交換に参加したい」と述べた。
また、「(フォックスとニューズの)経営は健全だ」とも記した。インターネットの台頭などで事業環境は変化しているものの「(両社の)成長の可能性はこうした逆風よりも大きい」と続けた。
【岸田首相「資産運用特区を創設」 海外勢の参入促す】
22日の日経ニュースメールは次のように報じた。
この記事のポイント
・岸田首相がニューヨークで投資家向けに講演
・資産運用特区を創設して慣行や障壁を見直し
・英語で行政対応を完結できるように環境整備
【ニューヨーク=藤田祐樹】訪米中の岸田文雄首相は21日午後(日本時間22日未明)、ニューヨークで投資家向けに講演した。日本の資産運用業の強化へ海外勢の参入を促すための「資産運用特区」を設けると表明した。英語で行政対応を完結できるようにするなど外国人を呼び込む環境を整える。
首相が講演する「ニューヨーク経済クラブ」は1907年に設立された会員制組織で、米国経済界のリーダー層が集う。日本の首相がこの場で話をするのは初めてとなる。
首相は政府が掲げる「資産運用立国」の実現に向けた策を語った。2000兆円を超える日本の個人金融資産を生かした資産運用ビジネスの発展をめざす姿勢を訴えた。
関連記事
・岸田文雄首相 ニューヨーク経済クラブでの講演 全文
・岸田文雄首相 ニューヨーク経済クラブの講演 英文全文
資産運用業について「取り組みが遅れていると指摘されてきた構造改革を断行する」と強調。「日本の資産運用セクターが運用する資金は800兆円で、足元3年間で1.5倍に急増した」と説明し、日本独自のビジネス慣行や参入障壁を改める意向を示した。
柱は資産運用特区の創設だ。海外から優秀なファンドマネジャーを招くうえで日本語の壁の高さが指摘されてきた。「英語のみで行政対応が完結できるよう規制改革し、ビジネス環境や生活環境の整備を重点的に進める」と改善策を説いた。
資産運用会社が本業に専念できるよう「バックオフィス業務のアウトソーシングを可能とする規制緩和を実施する」とも述べた。
米国やフランスなどの例を参考に「運用資金獲得支援プログラム(EMP)」を整備して新規参入の運用会社を支援する方針だ。投資家の意見を政策に反映させるため、日米を主体とした「資産運用フォーラム」を立ち上げる。
首相は日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)について「改革の実効性を高める」と言及した。米欧に比べて低いと言われてきた日本のPBR(株価純資産倍率)を意識して計画の策定や実行を促す。
政府は年末までに一連の規制緩和策などを詰め、2024年の通常国会に必要な法案を提出する段取りを描く。
首相は22日に帰国した後、週明けに経済対策の柱立てを閣僚に指示する予定だ。
講演では「構造的な賃上げ」と「持続可能性強化のための官民投資」の2点に重きを置いた対策をまとめると指摘。投資家に向けて「日本経済の底力と将来の計画をよく見てもらい、日本への投資を強く求めたい」と要請した。
講演後は出席者の質問に答えた。ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授をはじめ金融界の経営者ら200人ほどが参加した。
日本に投資を呼び込むため、首相は22年にもロンドンの金融街シティーやニューヨーク証券取引所で演説し少額投資非課税制度(NISA)の抜本拡充や恒久化を打ち出した。
【日銀、追加の緩和修正見送り 金融政策の現状維持を決定】
22日の日経ニュースメールは次のように報じた。
日銀は22日に開いた金融政策決定会合で金融緩和策の現状維持を全会一致で決めた。長期金利の事実上の上限を1%とする 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)や、マイナス金利政策、上場投資信託(ETF)の買い入れなどの現行の緩和策を続ける。当面は物価や賃金の動向を慎重に見極めながら金融緩和策で経済を下支えする。
植田和男総裁が22日午後3時半に記者会見し、決定内容を説明する。
日銀は公表文で、足元の物価高について政府の経済対策などでピーク時よりプラス幅を縮小しているものの「予想物価上昇率は再び上昇の動きがみられている」とした。
総務省が同日発表した8月の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)は前年同月比で3.1%の上昇だった。日銀は上昇率が一時的に縮小した後、企業の賃金・価格設定行動の変化などを背景に「再びプラス幅を緩やかに拡大していく」とみている。
国内景気は企業収益が全体として高水準で推移するもとで、設備投資や個人消費が増加しているとの見方を示した。雇用・所得環境も緩やかに改善しているという。先行きは海外経済の回復ペースの鈍化で下押し圧力を受ける一方、ペントアップ(先送り)需要の顕在化などに支えられ、緩やかに回復していくとみる。
今後のリスク要因については「海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い」とした。経済・物価・金融情勢に機動的に対応しながら粘り強く金融緩和を続け、賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを目指すとしている。
米連邦準備理事会(FRB)は20日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を2会合ぶりに据え置いた。同時に公表した参加者による経済見通しでは19人中12人が年内の追加利上げを予想している。欧州中央銀行(ECB)は14日、初の10会合連続の利上げを決めた。
大規模緩和を続ける日銀と金融引き締め局面にある欧米中銀との違いが改めて意識され、外国為替市場で一段と円安が進む可能性がある。日銀の政策維持を受けて円は対ドルで売りが強まり、一時1ドル=148円台を付けた。日銀の発表直前には147円台後半で推移していた。
【ゼレンスキー氏「支援なければ敗北」 米共和幹部に直訴 ウクライナ支援に議会の壁 歳出増に反発、迫る政府閉鎖】
同じ22日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【ワシントン=坂口幸裕】米国によるウクライナ支援の先行きが見通せなくなっている。米政府が連邦議会に要請した同国への追加予算に、歳出増に難色を示す野党・共和党の一部議員が反発しているためだ。ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、「支援を得られなければ戦争に負ける」と議会内で与野党議員に直訴した。
21日午前、米首都ワシントンの連邦議会議事堂。ゼレンスキー氏を出迎える場に下院共和トップのマッカーシー議長の姿はなかった。下院の与野党議員が待つ部屋まで案内したのは、下院民主党トップのジェフリーズ院内総務のみ。超党派でウクライナを支えてきた米議会の変化を象徴する。
米議会は2022年11月の中間選挙を踏まえ、上院は与党・民主党が多数派を維持した。一方で下院で共和が過半数を握る「ねじれ議会」になった。
米政府は22年2月にロシアがウクライナ侵攻を始めて以降、430億ドル(およそ6兆3600億円)以上の軍事支援を約束。8月にはさらに240億ドル規模の追加予算を連邦議会に要請した。
足元では22年末に議会で承認された対ウクライナ予算が近く底をつく事態が現実味を帯びる。それでも、支持層を意識する共和の保守強硬派には「他国に白紙の小切手を送る前に、米国民の面倒をみる必要がある」(スコット・ペリー下院議員)との声が上がっている。
ゼレンスキー氏は与野党議員との会談後、X(旧ツイッター)で戦況や防空システムなど自国防衛に必要な武器について協議したと説明。「ウクライナの勝利がロシアや他のいかなる独裁国家も、自由世界を再び不安定化させないことを保証すると強調した」と投稿した。
「勝利のためには我々全員が団結し、協力しなければならない」とも訴えた。
マッカーシー氏は会談後にウクライナ支援を改めて表明し、追加予算も「喜んで検討する」と述べた。ただ一枚岩でない共和内のとりまとめは難航している。
1月に下院議長に選出された際、マッカーシー氏は就任に反対してきた保守強硬派が求めた解任動議を提出できる条件の緩和を受け入れた。党内で反発が強まれば、自身の立場が揺らぎかねない。
米メディアによると、マッカーシー氏は上下両院合同会議での演説を希望したゼレンスキー氏の打診を拒否した。保守強硬派への配慮が透ける。
上院では民主・共和ともにウクライナ支援継続を支持する議員が大勢だ。上院共和トップのマコネル院内総務は会談後の声明で「ロシアの軍事力を低下させることは戦略的な敵である中国の抑止に役立つ」と強調した。
追加予算の承認への道筋がみえない要因はもう一つある。米議会では9月末の会計期末を前に、成立のめどが立たない「つなぎ予算」だ。
こちらも共和強硬派の反対が続き、政府機関が閉鎖に追い込まれるリスクが高まっている。閉鎖されれば直接的な国内総生産(GDP)成長率の下押しに加え、経済統計の公表停止で政策判断に支障を来す懸念もある。
共和執行部が、「つなぎ予算」と240億ドルの対ウクライナ追加予算を同時に成立させようとした場合、下院強硬派が強く抵抗する公算が大きい。21日には歳出削減を求める強硬派が、ウクライナ支援などを盛り込んだことを理由に国防予算の関連法案を阻んだ。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は20日、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、政府機関の閉鎖が米国経済のリスク要因の一つだと指摘。「不確実性は高い」と述べた。
歴代米政権にとって政策遂行の障害になってきた「ねじれ議会」は、米国だけでなく世界経済の波乱要因になっている。
【私大再編へ撤退後押し 文科省、自主的縮小で補助金増】
同じ22日の日経速報メールは次のように報じた。
文部科学省は経営が困難な私立大学の撤退支援策を拡充する。2040年までに大学入学者は2割減る見通しで、600を超す私大は淘汰が避けられない。自主的に規模を縮小した大学への補助金増や再編支援を通じ、大学教育全体の質向上につなげる。
25日に開く中央教育審議会(文科相の諮問機関)で40年以降の高等教育の将来像について諮問し、規模の適正化に向けた具体案の検討を求める。24年度中に答申を受け、政策に反映する。
1990年代に500校余りだった大学は規制緩和を受けて急増し、現在約800校に上る。このうち私大は約620校で学生数は約210万人と7割を占める。一方で今春の入学者が定員を下回った私大の割合は53.3%と5割を超えた。赤字も3割に達する。
大学の経営が悪化すれば人材育成機能が衰える。人材の質と量は国際的な競争力に直結する。中教審は2018年の答申で「適正な規模にする必要がある」としたものの、5年を経ても撤退や再編は大きく進んでいない。
文科省は経営難の私大に改善計画を作成させるなどしてきた。しかし7月、大学入学者数が40年に51万人、50年で49万人と22年比で13万人程度減り、現状の入学定員を維持すると2割分が埋まらなくなるとの推計がまとまった。
同省は再編や統合、撤退の議論は避けられず、より踏み込んだ対応が必要と判断した。
焦点の一つは年間3千億円に及ぶ私学助成の配分方法の変更だ。現在は学生数などに応じて額が決まる。自主的に規模を縮小した大学への助成を厚くして教育の質向上に充ててもらう案などを検討するとみられる。
24年度には、私大が学部を廃止したり定員を減らしたりすることを決めた場合でも在学生が卒業するまで教育の質を落とさずに済むよう補助金を出す事業を始める。
再編支援では、私大が連携や統合の相手を見つけるためのマッチングシステムの開発に同年度中に着手する。日本私立学校振興・共済事業団が持つ各大学の経営情報を活用する。これらは同年度予算の概算要求に盛り込んだ。
新規参入や短大・専門学校からの転換も厳格に審査する。25年度以降に開設予定の公私立の大学、学部・学科については、競合校の状況や18歳人口の動向の分析を踏まえて学生を確実に集められる場合に限って認可する。
日本以上に少子化が進む韓国は、国が大学の教育研究の成果や定員充足率をランク付けして評価が低い大学への財政支援を削るなどし、15〜22年で入学定員の9%にあたる約5万8千人を減らした。
日本は大学の自主性を尊重し、国が一方的に統廃合を進めることは避けてきた。しかし「少子化は予想以上のスピードで進む可能性もある」(文科省幹部)。定員割れが著しい大学は補助金の削減幅を大きくするよう求める声が強まる可能性もある。
中教審は国公立大を含めた各大学の役割の明確化や、都市部に比べて経営が厳しい地方の大学のあり方、オンライン教育の活用拡大なども議論する見通しだ。研究力強化に向けた大学や学生への支援方策についても検討する。
生成AI(人工知能)に代表される科学技術の急速な発展やデジタル化、国際化への対応策も喫緊の課題となる。
海外では授業は全てオンラインにしつつ学生は7都市を転々として学ぶ米ミネルバ大のように大胆な教育方法を取り入れる大学が登場している。オンライン教育に関する規制の緩和などによって新たな大学像を描くことも求められる。
関連記事
・少子化加速が迫る大学淘汰 40〜50年、定員2割過剰
・私大定員割れが初の5割超え 短大は9割、小規模校苦戦
・公立大学の新設抑制へ 文科省、質向上へ厳格審査
・理系拡充へ大学など111校支援 3000億円基金、裾野広く
【半導体・蓄電池など生産、長期で税優遇 政府経済対策 国内投資促す】
同じ23日の日経速報メールは次のように報じた。
政府は10月にまとめる経済対策で重要物資の供給力の強化を盛り込む調整に入った。半導体や蓄電池、バイオ関連などを対象に初期投資に限らず5〜10年の単位で企業の生産コストの負担を軽減する税制を検討する。民間の参入リスクが高い分野で政府が支援する。
岸田文雄首相は25日にも経済対策の柱を表明し、26日に閣僚へ策定を指示する。政府は「構造的賃上げと投資拡大の流れの強化」を柱の一つにする。
脱炭素やデジタル化、経済安全保障といった観点で重要な物資の生産・販売量に応じた法人税などの税額控除を設ける。
首相は「初期投資コストやランニングコストが高い分野を集中的に支援する税制を検討したい」と語る。詳細は年末に向け与党の税制調査会で議論する。
一般的に企業の投資減税は製造設備や工場の整備など初期費用が対象になる。企業が新分野に参入する場合は安定した納入先を確保し経営を軌道に乗せるまで期間が要る。政府は中長期的な減税で経営リスクを減らし参入の障壁を下げる。
税優遇は5〜10年単位といった適用期間を設定するとともに、当面は赤字でも恩恵を得られるように税額控除を翌年度以降の黒字時に繰り越すしくみを検討する。
米国で2022年に成立したインフレ抑制法(IRA)を参考にする。蓄電池や水素など重要物資について①設備投資にかかる費用の3割を法人税から差し引く措置、②稼働後10年間は毎年の生産に応じた一定額を控除―を選べるようにした。
大規模で長期の包括的な重要物資の生産支援で自国内へ企業立地や投資を促すのは世界の潮流になりつつある。欧州やカナダ、韓国も税制・予算を通じた投資促進策を予定し、各国で競争が激しくなってきた。
日本でも半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の呼び込みに成功した九州で経済への波及効果が期待される。地方に工場の立地を促し、地域の雇用確保や周辺産業を含めた賃上げにつなげる。
重要物資の供給網(サプライチェーン)で環境負荷や労働、人権などの国際基準を満たす物資の購入を対象にした補助金も取り入れる。中国製品は事実上対象外になるとみられる。
国内で生産したモーターなどの競争力を高め結果的に国内投資を促す効果を生み出す。
首相は21日のニューヨークでの講演で「予算・税制・規制のあらゆる面で世界に伍して競争できる投資支援パッケージをつくり、実行する」と表明した。為替相場は円安が続き、日本国内で投資しやすい環境が整う。
内閣府の推計で「需給ギャップ」は4〜6月期にプラスに転じ需要不足は解消した。政府の経済政策は潜在成長力を高めるメニューに軸足を移す。物価高を上回る賃上げへ新たな産業を生み出して投資を加速させる。
【三菱ケミカル、半導体材料の国内工場 TSMC進出で商機】
24日の日経速報メールは次のように報じた。
三菱ケミカルグループは半導体材料の国内新工場を建設して2025年3月期の稼働を目指す。半導体受託製造の世界最大手、 台湾積体電路製造(TSMC)の日本進出などを機に素材や装置産業で国内供給網の再構築が広がっている。
フッ化アルゴン用のフォトレジスト(感光材)向け高分子素材の新工場を建設する。既存拠点と合わせて生産能力が2倍に増える見通し。感光材は光に反応する樹脂で、微細な半導体回路をつくるのに欠かせない。三菱ケミカルは不純物の少ない高品質な製 品を安定して生産する技術に強みがある。
従来は鶴見工場(横浜市)の1拠点のみで製造してきた。新工場の投資額は数十億円規模とみられ、物価高で鶴見工場の建設時より増える見通しだが、将来の市場拡大に備える。生産場所は今後詰めるが、福岡県内の事業所などが候補地となる。
三菱ケミカルは、同材料で世界で数割程度のシェアを握るとみられる。販売先の感光材メーカーは日本勢が世界シェア9割を占める。今回の増産は材料の擦り合わせを強みとしてきた国内サプライチェーン(供給網)の強化につながる。
TSMCが熊本で工場を設けることなどを機に関連企業が投資する事例が相次いでいる。感光材大手の東京応化工業は福島県や熊本県で増産投資を決めた。感光材は最終的にTSMCや米インテルといったメーカーが製造工程に使う。拠点分散は自然災害時などの事業継続計画(BCP)にもつながる。
国際業界団体SEMIによると、4〜6月のシリコンウエハー世界出荷面積は前年同期比10%減で、1〜3月並みの下げ幅が続いている。足元の需要は減少しているが半導体は幅広い産業の基盤であり、24年からは需要が戻ってくるとの市場の見方がある。
三菱ケミカルグループは半導体素材を含む「スペシャリティマテリアルズ」について、キャッシュベースの本業のもうけを示すEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を、26年3月期に23年3月期比2倍の2230億円に増やす目標を掲げる。石油化学事業の再編を進める一方、成長が見込める市場で高機能品の販売量を伸ばす。
【日産、2030年に欧州の全新車販売をEVに CEO表明】
25日の日経速報メールは次のように報じた。
【ロンドン=湯前宗太郎】日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は25日、2030年に欧州での新車販売をすべて電気 自動車(EV)にすると表明した。今後、投入する新型車も原則EVのみとする方針で、脱炭素規制の厳しい欧州でEVシフトを前面に打ち出す。
欧州連合(EU)は35年にエンジン搭載車を一部を除き販売禁止する方針を掲げる。合成燃料(e-fuel)や水素を燃料とするエンジン車は、35年以降も販売できると認めた。日産はEU規制に前倒しで対応する。
同日に英国ロンドンにあるデザインセンターで開いた式典で、「欧州では30年に完全にEV化する」と内田氏は強調した。
日産は英北部サンダーランド工場でEV「リーフ」などを生産している。21年には10億ポンド(約1800億円)を投じ、車載電池工場の建設などを進める計画を公表した。26年度までに、欧州では新車の98%を電動車にする目標を掲げていた。
これまでの目標にある電動車には独自のハイブリッド車(HV)技術「eパワー」も含んでいた。欧州で内燃機関車に厳しい規制がかかるなか、今後は既存モデルの刷新を除き、投入する新モデルはすべてEVとする考えだ。
欧州では電動化を巡り、厳しい規制が打ち出されてきた。ただ足元では、内容を修正する動きも出始めている。
英政府は20日、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁じる時期を、従来の30年から35年に延期することを表明した。欧州連合(EU)も3月末、エンジン搭載車を35年に全廃するとしてきた方針を変更している。
トヨタ自動車が西欧で30年までに新車販売におけるEV比率を50%にし、35年には新車をすべてEVや燃料電池車(FCV)など二酸化炭素を排出しないゼロエミッション車(ZEV)にする方針だ。ホンダは40年に欧州も含め、すべての新車をEVかFCVにする計画を進める。
日産は7月、仏ルノーとの間で資本関係の見直しで最終契約を結んだ。ルノーの日産に対する出資比率を43%から15%まで引き下げ、相互に15%ずつ出資する形にする。
資本関係の見直しとともに、ルノーが設立予定のEV新会社「アンペア」に日産が最大で6億ユーロ(約950億円)を出資する方針も決めた。今後、ルノーのEV新会社への出資を通じ、欧州での電動化戦略のスピードを高め、EVシフトで先行したい方針だ。
【エーザイ認知症薬、正式承認 年内にも医療現場へ】
同じ25日の日経速報メールは次のように報じた。
武見敬三厚生労働相は25日、エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」を正式に承認した。進行を遅らせる効果を証明した国内初の薬となる。薬の公定価格である薬価の決定を経て、年内にも医療現場で使えるようになる見込みだ。
レカネマブはアルツハイマー病患者の脳内に蓄積する「アミロイドベータ」というたんぱく質を除去するように設計されている。臨床試験(治験)では、病気の進行速度を27%緩やかにする効果が確認されている。
これまでの治療薬が「対症療法」だったのとは異なり、病気の原因に働きかけることで症状の進行を抑える点が特徴だ。
患者や家族の負担軽減につながる新薬だが、根治できる薬ではない。投与の対象者も軽度の患者に限られる。価格は高額で7月に正式承認された米国では年2万6500ドル(約390万円)だった。国内での薬価に注目が集まる。
アルツハイマー病患者の増加は顕著だ。厚労省によると、日本国内における認知症患者数は2020年で600万人程度と推計されており、2060年には最大約1150万人にまで増える見込みだ。アルツハイマー病は2060年時点で800万人にのぼるとみられており、認知症全体の7割程度を占める。
エーザイは1月にレカネマブの製造販売について医薬品医療機器総合機構(PMDA)に承認申請し、8月21日に厚労省の専門部会で承認が了承されている。
【IEA「30年に再エネ3倍必要」提言 脱化石燃料を加速】
26日の日経メールは伝えた。
国際エネルギー機関(IEA)は26日、気候変動対策の報告書を公表した。気温上昇を抑えるために再生可能エネルギーの設備容量を2030年までに3倍に拡大するよう提言した。再生エネのコストは大きく低下し、化石燃料からの脱却は世界で進む。普及が遅れる日本も対応を迫られる。
【関連記事】
・IEA「30年に再生エネ3倍」目標、COP28の主要議題に
・水素製造装置の導入容量、中国が世界の5割 IEA予測
・化石燃料補助、過去最高1000兆円 温暖化対策に逆行
地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、地球の気温上昇を産業革命以前から1.5度以内に抑える目標の実現に必要な再生エネの容量をIEAが試算した。この目標は世界が50年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすることとおおむね整合する。
報告書によると、再生エネの設備容量を23年から30年に3倍にすると110億キロワットになる。これは21年時点の化石燃料の発電容量の2倍強になる。実現すれば、30年の再生エネの発電(容量ベース)に占めるシェアは7割前後になる見通しだ。
再生エネの普及が大幅に進めば、化石燃料の需要は30年までに25%減るという。必要な投資額は30年代初頭には年4.5兆ドルと23年の2.5倍になる。
IEAによると、23年から30年の間に約70億トンの二酸化炭素(CO2)排出を回避できる。中国の電力部門から排出されているCO2総量に匹敵する削減幅になるという。
技術が成熟し、普及が進んだことで、太陽光と風力の導入期間は短くなり、コストも大幅に下がっている。IEAは今後の課題は新興国や途上国での導入拡大だとして、先進国による支援拡大を求めた。東南アジアや中東、アフリカなどでは拡大の余地が大きい。
一方、報告書は1.5度目標の達成には化石燃料への新規投資は必要ないと説明した。
日本は再生エネの導入量で欧州や中国に後れをとり、普及が大きく進んでいるとは言えない。推進するための政策の遅れに加え、規制緩和などが進んでいないのが主な要因だ。
世界で主流となっている風力発電は22年に中国は約3700万キロワット、米国は約860万キロワットそれぞれ増やした。日本はわずか23万キロワットだ。インドやトルコ、台湾も先を行く。
日本は工業団地や耕作放棄地などの再生エネの可能性が大きい土地の活用が十分ではない。加えて世界で急拡大する洋上風力発電が大規模に立ち上がるのが30年前後と遅い。
現状のエネルギー基本計画で掲げる30年度に再生エネを最大38%とする目標を達成しても21年度実績比で1.7倍にとどまる。
世界の主要国は再生エネの普及に力を入れる一方、太陽光パネルの生産など供給網(サプライチェーン)の確立に力を注ぐ。大きなシェアを持つ中国などは自国の製品を世界に売り込んでいる。
日本も自国の導入を加速するなどして風力発電を整備し、産業として早期に育成しなければ、アジアなど世界の脱炭素に貢献できず、影響力の低下につながりかねない。(気候変動エディター 塙和也、ブリュッセル=辻隆史)
【洋上風力汚職、秋本議員を受託収賄罪で起訴 東京地検】
27日の日経速報メールは次のように報じた。
洋上風力発電事業を巡る汚職事件で、東京地検特捜部は27日、衆院議員の秋本真利容疑者(48)=比例南関東、自民党を離党=を受託収賄罪で起訴し、日本風力開発(東京・千代田)の塚脇正幸前社長(64)を贈賄罪で在宅起訴した。特捜部は秋本議員が 新型コロナウイルス対策の持続化給付金をだまし取ったとして詐欺罪でも起訴した。
秋本議員は特捜部の取り調べに対し、受託収賄と詐欺いずれの容疑も否認していた。再生可能エネルギーの切り札とされる事業を巡る汚職事件の全容解明は法廷に移り、賄賂の授受などに関して検察側と秋本議員側が全面対立する構図になるとみられる。
起訴状によると、秋本議員は塚脇前社長から国会質問の請託(依頼)を数回受け、見返りとして2019年3月〜23年6月ごろ、計約7200万円相当の賄賂を受け取ったとされる。特捜部は逮捕時に賄賂とした総額約6100万円に加え、現金500万円や馬1頭の持ち分100万円相当などの提供を新たに賄賂に当たると判断した。
持続化給付金を巡っては20年9月ごろ、給付要件をみたすかのように装って申請し200万円をだまし取ったとされる。
秋本議員は7日の逮捕後、「依頼されて日本風力開発の利益を図るために、国会質問をしたということは断じてない。私は潔白」とするコメントを出した。塚脇前社長は贈賄を認めているとされる。
刑法の収賄罪は公務員が職務に関して賄賂を受け取る場合に成立する。職務に関し一定の行為をするよう請託を受けた場合は受託収賄罪が適用される。同罪の法定刑は7年以下の懲役で、単純収賄罪の法定刑(5年以下の懲役)より重く規定されている。
秋本議員は12年衆院選の千葉9区に自民党から出馬し初当選した。現在は4期目。事件発覚後の8月4日に外務政務官を辞任し、同5日に同党を離党した。
政府は洋上風力発電を推進している。19年4月施行の再エネ海域利用法は事業者が一般海域を最大30年間占有できる環境を整えた。矢野経済研究所(東京・中野)によると、国内の洋上風力発電の市場規模(予測)は20年度の20億円から25年度には3970億円まで膨らむ。30年度には9200億円とほぼ1兆円の巨大市場へ発展するとにらむ。
【長崎・対馬市長、核ごみ処分場の文献調査「受け入れず」】
同じ27日の日経速報メールは次のように報じた。
長崎県対馬市の比田勝尚喜市長は27日、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定の前提となる「文献調査」について、調査を受け入れない考えを表明した。比田勝市長は同日午前10時に開会した市議会本会議で、現段階では「安全であるという市民の理解を得るのは難しい」と述べた。
同市議会は12日の本会議で、文献調査を受け入れるよう求めた市民からの請願について賛成10、反対8で採択していた。比田勝市長は市議会の決定と異なる判断を下した理由について、①市民の合意形成が不十分だ、②風評被害が懸念される――などを挙げた。
文献調査は最終処分場の選定作業の第1段階にあたる。2年間で最大20億円の交付金が国から出る。地質図や学術論文などの文献・データを調べ、対象の自治体が適地かどうか机上で探る。これまで北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村の2自治体が原子力発電環境整備機構(NUMO)による文献調査を受け入れている。
市議会に対してはこれまで、調査受け入れを促す請願だけでなく、水産業者や市民団体からは反対の請願が多数出ていた。これらは市議会では採択されなかったものの、8月以降、市内で受け入れ反対の声が急速に高まっていた。
9月初旬に比田勝市長に文献調査を受け入れないよう求める要望書を提出した「対馬市漁業協同組合長会」は、反対の理由として風評被害による魚価下落などの影響を強調した。観光関連事業者からも、観光客の減少を懸念する声が高まっている。市長は市議会と対立することがあっても、受け入れにより深刻化が懸念される市民の分断の回避を重視した。
【水俣病救済巡る訴訟、国側に賠償命じる 大阪地裁判決】
同じ27日の日経速報メールは次のように報じた。
2009年施行の水俣病特別措置法に基づく救済対象から外れた未認定患者らが国などに損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(達野ゆき裁判長)は27日、原告の請求を認め、国などに1人あたり275万円の賠償を命じた。原告128人全員の水俣病罹患(りかん)を認定した。
同種訴訟は熊本、東京、新潟の各地裁でも争われており、今回が初の判決。対象地域や居住期間、年齢などの基準を設けていた特措法による救済枠組みの不備を指摘した。今後、上級審などで同様の判断が続けば、国は対応を迫られる可能性がある。
主な争点は、原告らの症状が水俣病と認められるかどうかだった。
達野裁判長は、特措法が救済対象とする地域や年代から外れた人でも、不知火海で取れた魚介類を継続的に多食した場合は水俣病を発症する可能性があると指摘。メチル水銀の暴露から長期間が過ぎた後に発症する遅発性水俣病の存在も認めた。
判決は原告122人に対し、国や熊本県、原因企業チッソが連帯して1人あたり慰謝料250万円などを支払うよう命じた。残る6人にはチッソのみが責任を負うとした。請求額は1人あたり450万円だった。
判決を受け、環境省特殊疾病対策室は「判決内容を精査し、対応を検討する」とのコメントを出した。
▼水俣病と救済策 熊本県水俣市のチッソ水俣工場が八代海(不知火海)に排出したメチル水銀に汚染された魚介類を食べた住民らに発症した中毒性の神経系疾患。国は1956年に被害を公式確認し、68年に公害病と認定した。
74年施行の公害健康被害補償法に基づき患者として認定されたのはこれまでに約3千人。95年の政治決着で約1万1千人が救済対象となった。その後も未認定患者らの提訴が相次ぎ、新たな救済策として特別措置法が2009年に施行された。
【三菱自動車、中国生産撤退へ EV出遅れで販売不振】
同じ27日の日経速報メールは次のように報じた。
三菱自動車は中国の自動車生産から撤退する方針を固めた。現地の合弁相手である中国自動車大手の広州汽車集団と最終調整に入った。中国では電気自動車(EV)の普及や地場企業のブランド力向上で三菱自の販売は低迷する。ガソリン車に強い日欧米などの自動車ブランドは全般的に苦戦しており、戦略の見直しが広がる可能性がある。
三菱自と広汽集団の合弁会社「広汽三菱汽車」が運営する湖南省の長沙工場での生産から撤退する。三菱自にとって唯一の中国での新車工場で、販売低迷を受けて3月から新車生産を停止していた。販売の回復が見込めないため再開を断念する。
中国事業の経営合理化に向けて、広汽三菱は5月に人員整理の方針を決めていた。工場は今後、広州汽車グループのEV生産拠点として活用する見通しだ。広汽三菱には広汽集団が5割、三菱自が3割、三菱商事が2割を出資する。合弁会社は存続するが、三菱自と三菱商事は出資分を引き揚げる見込みだ。
三菱自は1970年代に商用車の中国向け輸出を始め、06年から21年に東南汽車との合弁事業を手がけた。広汽三菱は12年の設立で、最盛期の18年には14万台を販売した。
近年は地場ブランドがEVで攻勢をかけ、三菱自の22年の中国販売は前年比6割減の3万8550台と低迷している。てこ入れへ22年秋に中国向け新型車の「アウトランダー」をハイブリッド車仕様で投入したが、売れ行きは計画を大幅に下回っていた。中国撤退を受け、連結売上高の3分の1を占める東南アジアやオセアニアに経営資源を集中する。
中国汽車工業協会によると、22年の電気自動車(EV)販売は前年比8割増の536万台で、新車販売に占めるEV比率は2割にのぼる。三菱自も中国でEV「エアトレック」を販売するが広汽グループから供給を受けており、中国向けの独自車種を持たない。
三菱自動車が22年秋に中国で投入したハイブリッド車仕様の「アウトランダー」の売れ行きは計画を大幅に下回った。
中国ではEVシフトを進める地場メーカーの存在感が高まっている。マークラインズによると、22年の中国での乗用車販売台数は2356万台。比亜迪汽車(BYD)や長安汽車が伸び、地場企業のシェアは前年より5.2ポイント高い50.7%に達した。
対照的に日系のシェアは18.3%と2.8ポイント低下した。日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は中国事業について「値引きが非常に激しく利益を出せる水準にない。中国合弁の在り方など戦略見直しを含め検討している」と話している。
日本車メーカーの中国事業を巡ってはスズキが中国の自動車大手、重慶長安汽車との合弁事業を18年に解消した。トヨタ自動車と広汽集団の合弁会社「広汽トヨタ」は7月、従業員約1000人について満了前に契約を終了した。削減規模は6月時点の従業員数の約5%にあたる。
一方、マツダは現地で販売網を再編するなど中国事業の立て直しに注力している。
【藤井聡太七冠、初の八冠独占に王手 将棋王座戦2勝目】
同じ27日の日経ニュースメールは次のように報じた。
27日朝から名古屋市の名古屋マリオットアソシアホテルで指されていた第71期将棋王座戦(日本経済新聞社主催、東海東京証券特別協賛)五番勝負の第3局は、午後8時32分、81手で先手の挑戦者、藤井聡太七冠(21)が永瀬拓矢王座(31)を破った。藤井七冠は対戦成績を2勝1敗とし、史上初の八冠独占に王手をかけた。
終局後、藤井七冠は「本局は結果は幸いしたが、内容は押されていた。(次局は八冠制覇がかかるが)意識せずに集中して臨みたい」と話した。藤井七冠は6月に最年少で名人を獲得し、羽生善治九段(53)に続く七冠を達成。残すタイトルを王座のみとしている。八冠制覇がかかる第4局は10月11日、京都市のウェスティン都ホテル京都で指される。
この日の対局は、劣勢の藤井七冠が終盤で形勢をひっくり返した。「終盤は負けの形だと思っていた。▲5六角(71手目)と相手の金を取って、自玉が寄りづらい形になった」という。
序盤は後手の永瀬王座が「雁木(がんぎ)」と呼ばれる戦型を採用、9筋の位をとる工夫を見せた。藤井七冠は「(その構想は)考えたことがなくて、序盤は失敗した。その後もうまく指されたので、もっと工夫の余地があった」と反省する。
途中、後手の永瀬王座が9筋の端歩を突いて仕掛けたのが機敏で、優位に立った。終盤も寄せに出て、そのまま押し切れば会心譜となったが、5時間の持ち時間を使い切り、秒読みの中で指した受けの一手が落手。藤井七冠が放った攻防手で逆転した。永瀬王座は終局後、「次局まで時間はあるので、精いっぱい準備して臨みたい」と話した。
解説の北浜健介八段は「序盤から永瀬王座が主導権をにぎり徐々にリードを広げた。終盤も正確な寄せを見せていたが、簡単な勝ちではなかった。終盤、永瀬王座のわずかなミスを藤井七冠が見逃さず、流れを引き戻した」と語った。
【企業保険、100社超で事前調整か 損保4社が当局に報告へ】
28日の日経速報メールは報じた。
【この記事のポイント】
・各社で分担する「共同保険」で保険料水準を事前に調整
・交通インフラだけでなく幅広い業種・企業で不適切案件
・保険業法上の業務改善命令や独禁法上の排除措置命令も
損害保険大手4社が企業向け保険料を事前調整していた問題で、独占禁止法の趣旨に反する不適切な行為があった取引先の数が少なくとも計100社超にのぼることが27日、分かった。特定の業種や企業にとどまらず、不適切な取引が広範囲に及んでいた実態が明らかになった。4社は29日までに金融庁に報告書を提出する。
金融庁から保険業法に基づく報告徴求命令を受けたのは東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の4社。問題が表面化するきっかけとなった東急グループなど交通インフラ企業に加え、全業種を対象に各社が調査を進めるなかで不適切な案件が数多く浮上した。
問題視されているのは保険契約を各社が分担して引き受ける共同保険だ。支払う保険金が巨額になるリスクがある場合、事前に決められたシェアに応じて複数の損保が分担して保険を引き受けている。
損害保険事業の売上高に当たる正味収入保険料で4社は8割超のシェアを握っており、企業向け保険に限ると9割を超えて寡占化が進んでいた。
これまで保険料の事前調整を含めて4社が不適切な行為をしていた疑いがある対象企業では、ENEOSなどの石油元売りや成田国際空港会社、JR東日本などが浮上している。関係者によると、調査の進展にともなって案件数が増え、業界全体で少なくとも計100社超となったようだ。
小売りや製造業など「幅広い業種で見つかっている」(関係者)という。東京都が実施した保険契約の入札でも事前調整した疑いがある。
東急との保険契約では、見積額として提示する保険料の水準を各社の営業担当者が事前に申し合わせていた。契約更新前のシェアを維持したり、保険料率が下げられるのを防いだりするために、調整行為に走った可能性がある。
保険金の支払い実績が多いなどの理由で保険契約を引き受けたくない場合も、他社の担当者らから入札前に保険料を聞き出し、あえて他社の保険料よりも高い水準を提示する事例があるという。特段の理由もなく、顧客企業に示す保険料の見積額をあらかじめ共有する慣習が長年続いていたケースもあったようだ。
共同保険の引き受けでは事務連絡の必要性もあり、各社の担当者は互いに連絡を取り合う関係にある。「微妙なやり取りは多い。『クロ』に近い『グレー』から『シロ』に近い『グレー』までさまざまある」(関係者)といい、不適切案件の中でも悪質性には濃淡がある。
各社は金融庁に提出する報告書のなかで、こうした事前調整が常態化していた背景や再発防止策を説明することにしている。他の損保の営業担当者と接触した際には上司への報告を徹底するといった再発防止策が盛り込まれる見通しだ。
金融庁は各社から受け取った報告書の内容を精査し、保険料の事前調整にいたった動機や原因を解明する。保険業法が目的とする保険募集の公正性と保険契約者保護の観点から法令違反が見つかれば、業務改善命令などの行政処分も検討する。
公正取引委員会も調査に乗り出している。カルテルといった不当な取引制限など、独禁法に違反する行為を認めれば損保会社側に再発防止に向けた排除措置命令を出し、違反による売り上げが確認されれば課徴金納付を命じる。
【防衛力強化へ空港・港湾拡充 33施設、自衛隊利用を想定】
同じ28日の日経ニュースメールは次のように報じた。
政府は防衛力強化の目的で拡充する公共インフラの候補として10道県の33空港・港湾を選定した。滑走路の延伸や岸壁の増築に取り組むため管理する地方自治体と近く協議を始める。東アジアの緊張に備えて自衛隊と海上保安庁が住民避難や部隊展開に使いやすくする。
政府は2022年末に改定した国家安全保障戦略で有事に備えて空港や港湾を整備する方針を盛り込んだ。必要性が高い施設を「特定重要拠点(仮称)」に指定し、必要経費を24年度予算案の公共事業費に計上することをめざす。
政府が8月に非公式に作成した文書によると14空港と19港湾が対象となった。このうち少なくとも16空港・港湾は南西諸島と九州、四国に立地する。軍備増強を強める中国や、武力衝突が起きる懸念がある台湾に近い地域を重視した。
空港は沖縄県の与那国空港や新石垣空港、宮古空港、那覇空港のほか鹿児島空港や宮崎空港、高知空港などをリストに入れた。
いずれも台湾有事の場合に自衛隊が部隊を展開したり燃料・食糧を補給したりする拠点として使える場所にある。自民党で外交部会長などを務めてきた佐藤正久氏は「有事に米軍が部隊派遣できるようにする意味もある」と説明する。
与那国、新石垣、宮古の3空港は滑走路が2000メートルで100人以上を乗せられる輸送機C-2などの離着陸が難しい。住民の避難などに備えて滑走路を延ばすなどの改修を検討する。
その他の空港でも駐機場や誘導路、格納庫を新設するなどして自衛隊機や海保機が運用しやすい環境を整える。自衛隊幹部は「防衛用途で使いやすい2500メートル以上の民間用滑走路は日本にとって安全保障上の資産だ」と話す。
港湾では与那国島に護衛艦や巡視船が接岸可能な新港をつくる計画だ。沖縄県の石垣港や平良港、那覇港、熊本県の熊本港や福岡県の博多港の岸壁も改修を調整する。
ウクライナへの侵攻を続けるロシアと向かい合う北海道や、北朝鮮の不審船などへ対処する日本海側も対象とした。拡充するインフラの候補リストは非公表とし、情勢の変化によって追加する可能性がある。
公共インフラ施設を防衛目的で活用するには地元自治体の理解が欠かせない。現行法は平時に自衛隊や海保がインフラを優先して使う規定がないためだ。利用する場合は管理する都道府県などに申請しなければならない。
防衛省によると「空いている岸壁がない」「人員不足で対応できない」といった理由で自治体から難色を示されることがある。米軍も日米地位協定などに基づいて日本国内の施設を使用することは可能だが、自治体の状況によっては利用しにくい。
実際、北朝鮮の「人工衛星」発射に備えて自衛隊が4月に迎撃部隊を沖縄へ派遣した際は地元の調整に手間取り予定していた輸送方法を変更した。
政府は整備するインフラ施設を平時に観光や物流につかえば産業振興につながると説明し、自治体に協力を求める。訓練や警戒監視のために平時でも自衛隊が円滑に利用できる仕組みを設けることも働きかける。
木原稔防衛相は15日の記者会見で「輸送手段が船舶や航空機に限られる南西諸島などでは部隊の運用性が高い空港や港湾の整備が必要だ」と述べた。「多様な空港や港湾を平素から円滑に利用できるよう自治体に丁寧に説明する」と話した。
【日本、サモア下し2勝1敗 ラグビーワールドカップ】
29日早朝の5時に起床し、後半戦を観戦した。前半では17-8とリード、後半にはサモアに追いつかれ、結果は28-22の僅差で日本が勝利した。サモアがワントライ・ワンゴールを決めれば僅差の逆転負けである。
29日早朝の日経速報メールは次のように報じた。
【トゥールーズ(フランス)=谷口誠】ラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会は28日、トゥールーズで1次リーグD組の1試合が行われ、日本がサモアを28-22で下した。2勝1敗で勝ち点を9に伸ばした。サモアは1勝2敗で勝ち点6。
日本は前半、フランカーのラブスカフニ(東京ベイ)のトライで先制。3点を返された後、SO松田(埼玉)のPGやフランカーのリーチ(BL東京)のトライで点差を広げ、17-8で折り返した。
後半はナンバー8姫野(トヨタ)のトライや松田のPGで得点。サモアに2トライを返されたが逃げ切った。
当初先発メンバーに登録されていたSH流(東京SG)は欠場した。コンディション調整を理由に、27日にトゥールーズで行われた前日練習には参加していなかった。SHは控えで登録されていた斎藤(東京SG)が今大会初先発した。
2大会連続の決勝トーナメント進出を目指す日本は10月8日に1次リーグ最終のアルゼンチン戦に臨む。
【米中二者択一迫るな グローバルサウス小国の叫び ラモス・ホルタ 東ティモール大統領】
30日の日経ニュースメールは次のように報じた。
グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国が国際社会で発言力を増している。インドやブラジルなどの地域大国に焦点が当たる一方、米中の覇権争いに翻弄され、成長から取り残された小国が大半を占める。小国は世界に何を訴えるのか。東南アジア、東ティモールの大統領でノーベル平和賞受賞者のラモス・ホルタ氏に聞いた。
ロシアのウクライナ侵攻は食料やエネルギー価格の高騰を招いた。地理的に距離があるグローバルサウスの国々に特にしわ寄せが及んでいる。
――隣国インドネシアの支配からの独立から20年あまり。天然資源以外の産業が育たず、東ティモールの発展は遅れている。そこに新型コロナウイルスやウクライナの危機が訪れた。
「イエメン、シリア、リビア、マリで続いている争いも含め、現在世界が直面している危機はリーダーシップの欠如と関係する。国連安全保障理事会は、紛争を予防し、調停し、解決をもたらす主要な国際メカニズムだ。米英仏中ロの5常任理事国は(拒否権の)特権があり義務があるが、果たしていない。責めを負うべきだ」
「ウクライナでの戦争については、米国は超大国で、北大西洋条約機構(NATO)のリーダーでもあり、部分的に責任がある。しかし、米国は欧州諸国とともにウクライナの支援に深く関与し、もはや調停者になることはできない。戦術核の使用という非常に危険なところまでエスカレートするかもしれない」
中国敵視には「もっと落ち着いて」
――国際政治は米国と中国の対立の構図が強まっている。
「いまの米国の中国への非常に敵対的な態度には同意しない。トランプ前大統領は新型コロナの起源は中国だと責めた。感染症の世界的な流行は政治問題化させてはならない。同情と理解を示し、科学者と資金を結集させ、世界保健機関(WHO)のリーダーシップのもとで取り組むべきだった」
「人々は『中国は脅威』だと言い続けている。私はそうは思わない。中国を敵視する人たちには『もっと落ち着いて』と助言したい。世界に戦略的なライバルがいるのは何も不思議ではない。外交の秘訣は、敵対者と対話しパートナーシップを築くことだ」
「米国が対中関係でリーダーシップを発揮する最善の方法は、中国を鞭(むち)打つために台湾や人権を利用するのをやめることだ。人権問題を抱える他の国々への米国の態度は、対中国とは異なる。東南アジア諸国連合(ASEAN)や日本、韓国などアジアの国の指導者は中国に適応する方法を見つけている」
――グローバルサウスは、西側諸国とも、中国やロシアなど覇権主義国とも一定の距離を置き、国際社会で存在を強めている。どのような役割に期待するか。
「素晴らしい学術的表現で、ロマンチックに語られるが、内情は非常に分断されている。インドとパキスタンの関係を見てほしい。アフリカは国境内外でなお亀裂が生じている。対立する中国とインドを含むBRICSの構成を見ていると、主要7カ国(G7)や20カ国・地域(G20)より成果を出せるか疑問に思う」
「BRICSについて言えば、持続可能な開発や再生可能エネルギーの普及に向けた資金提供をG7や国連機関、世界銀行に比べて迅速かつ寛大な方法で実現できるなら、人気と尊敬を得るだろう。単なる口だけのおしゃべり屋なら信頼を失うことになる」
「中国とインド、日本と中国と韓国の3カ国は、アジアや他の地域、世界を真に豊かで平和な場所に劇的に変える可能性がある。日中韓が協力してインドを加えて世界を豊かにすることを願っている。そうすれば、21世紀はアジアの世紀であると言える」
東ティモールは歳入の9割を石油・ガスに依存する。その収入による基金は今のままでは2035年に枯渇するとされる。新産業の確立へ、外国からの支援が欠かせない。
――6月のシンガポールのアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で、なぜ新興・途上国が外交の優先順位を中国に移しているか説明した。
「私が出会ったソマリアの外交官の例を挙げた。冷戦時代、西側諸国は人権についてソマリア政府を説教し支援を拒み続けた。彼は支援を求めにモスクワに行くだけだった。ソ連崩壊後、近代化した中国が取って代わった。今なら彼は北京に行くだろう」
「つまり中国は米国の支配に代わる代替案なのだ。この現状は何もおかしくなく、十分に理解できる。米国や欧州、日本は民主主義の運営に関するルールが原因で、意思決定が複雑になる。中国には独自のルールがあり、意思決定が迅速だ」
――中国がインフラを中心に東ティモールへの支援を進めている。
「中国の支援はコストが低い。中国の商業融資は年利4%なのに対し、西側は7〜8%だ。中国政府の融資なら1%しかない。中国には補助金付き融資もある。米欧にも補助金はあるが、その規模はいつも小さい」
「米議会・政府の援助枠組みを通じ4億ドル(約600億円)超の資金を得ることで合意をしたが、約20年かかった。その間私は離婚し、孫もできた。中国の援助は決定まで長くても1年だ」
「欧州の政府開発援助(ODA)も案件を決定するまで長くて3〜4年かかる。西側は関連するコンサルタントや専門家、報告書に費用を費やし、これにも時間がかかる。新興・途上国がいら立ち、支援を求めて中国に群がる理由だ」
東ティモールはASEANへの加盟が内定した。フィリピンやベトナムなど一部の加盟国は中国と南シナ海で領有権争いを抱えている。
国際法なしには大国のいけにえに
――中国の南シナ海での主張は国連海洋法条約に基づく16年の仲裁裁判所の判断で退けられた。
「中国は大国である一方、米国のように太平洋と大西洋に面していない。中国の海として領有したいとの思いはわかるが、慎重に考え直したほうがいい。正当な主張をする東南アジア諸国に逆らうことはできない」
「当事者はこの海域に関わるあらゆる国に自由な使用を認める方法を見つけるべきだ。何の障害もなく移動できる環境をつくる必要がある。ある日事故が起こって誤算が生じる可能性があり、その場合の制御は非常に困難になる」
「国際法がなかったら、東ティモールに今日の自由はなかっただろう。ティモール海の紛争に関してオーストラリアと合意に達しなかったと思う。国際法や国際機構なしには、東ティモールのような貧しい国は大国のいけにえにされてしまう」
――東ティモールは独立後20年で民主主義を確立した。米人権団体フリーダムハウスの調査では、東南アジアで最も自由度が高い。
「我々は民主主義、さまざまな原則、その実践、透明性のある政府を約束している。それが国民、社会、議会によってチェックされる。自然なこととして受け入れられ、機能している。我々にとって最良の政治システムと言えるし誇りに思う」
「ただ、西側の複数政党制が最高だとも思わない。シンガポールをみてほしい。初代首相は共産主義を排除し、国を安定させるため、厳しいリーダーシップで国を発展させた。これが独裁的な統治システムだとは感じない。自由でオープンだ」
ジョゼ・ラモス・ホルタ(Jose Ramos-Horta)1949年生まれ、73歳。シャナナ・グスマン氏(現首相)らとインドネシアからの独立運動を指導。スポークスマンとして各国に支援を呼びかけた。96年にノーベル平和賞受賞。首相などの要職を歴任し、2022年に2度目の大統領職に就任。
民主主義のコストを乗り越えよ(インタビュアーから)
ラモス・ホルタ氏は中国に理解を示す発言に終始した。中国の覇権主義的な動きを警戒する西側諸国に身を置く立場からすれば、一見ナイーブにも思える。 これが東南アジアで屈指の民主主義を確立した国のトップが発した言葉であるという点が重要だ。政治体制では相いれない国でも、自国を存続させるためには支援を受け入れざるを得ない。多くのグローバルサウスの国々の現実と言える。 人口増を支える経済成長や気候変動への対応は途上国にとって一分一秒を争う課題だ。東ティモールは道路や港湾などインフラの不足が足かせとなり、西側の民間企業は進出しにくい。官民一体の中国がその隙を利用してインフラを開発し、影響力を強めていく。 過去の植民地支配や地球温暖化の原因を考えれば西側は新興・途上国を支援する責任を負う。スピード感ある行動に向けて一致して知恵を絞るべきだ。(ディリで、地曳航也)
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
詫摩佳代フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)訪問研究員 / 東京都立大学教授
分析・考察
グローバルサウスと呼ばれる国々が必ずしも一枚岩ではないこと、また、いずれの国も覇権主義国あるいは西側諸国のどちらかに与するという単純な構図ではないところが今の国際政治の特徴だと思います。これらの国は、複雑な経済的相互依存関係の中で重要な位置を占めてお(あるいは占めつつあ)り、その地位を活用しながら発言力を高め、戦略的な外交を展開しています。昨今の国際環境の中で、西側が守りたいもの、取り返したいものはたくさん見えますが、その中で最も守られるべきものは何かを的確に冷静に見定め、そのために新興国とうまく連携できるよう、こちらにも戦略的な外交が問われています。
【ジャニーズ、被害者補償と経営分離 新会社社名は公募へ】
同じ30日の日経ニュースメールは次のように報じた。
ジャニーズ事務所が会社を再編する方針を固めたことが30日、わかった。新会社を立ち上げ、所属タレントのマネジメントなどの業務を移管する。現在のジャニーズ事務所は故ジャニー喜多川元社長による性加害の被害者への補償に専念する。新会社の社名はファンから公募で決める方向で検討しているもようだ。
新会社にはジャニーズ事務所前社長の藤島ジュリー景子氏は出資せず、業務にも携わらないとみられる。現在のジャニーズ事務所の社名の変更も検討している。
民放各社から「補償とマネジメントを行う組織の分離を検討すべきだ」との声が上がっていた。芸能事務所としての業務と補償を明確に分離する。
ジャニーズ事務所は9月7日に会見を開き、喜多川氏による元所属タレントらへの性加害を事務所として初めて認めた。被害者には法的な枠組みにとらわれず補償する意向も示した。
引責辞任した藤島氏は代表取締役にとどまり、藤島氏が全株式を保有する株主構成やジャニーズという社名も当面維持するとした。
これらの対応について、所属するタレントを広告などに用いるスポンサー企業の間では人権尊重の視点やガバナンス(企業統治)が不十分だとして批判が相次いだ。CM放映の中止など起用を見直す動きが広がった。
事態を打開しようと、同事務所は今後1年間、所属タレントの広告や番組出演で得た出演料について受け取らず、タレント本人に支払う方針を示した。
ただ、契約見直しの動きは止まらなかった。帝国データバンクによると、テレビCMなどにジャニーズの所属タレントを起用した上場企業65社のうち、半数にあたる32社が起用方針を見直した。
経団連の十倉雅和会長は9月19日の定例記者会見で「日々研さんしているタレントの活躍の機会を奪うのは少し違うのではないか」と述べ、所属タレントの救済策を検討すべきだと指摘した。日本商工会議所の小林健会頭も社名について「継続しないほうがいい」と述べた。
ジャニーズ事務所は2日、今後の経営方針について会見を開く。被害者への補償の具体策とあわせて再編案についても説明する見通し。
【米政府閉鎖、土壇場で回避 11月までのつなぎ予算成立】
10月1日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【ワシントン=高見浩輔】米国の政府閉鎖が9月30日夜(日本時間10月1日午前)、土壇場で回避された。連邦議会の上下両院は同日、予算執行を11月中旬まで継続できるつなぎ予算案を超党派で可決した。バイデン大統領が署名して成立した。
成立した予算は下院で野党・共和党を率いるマッカーシー議長が主導した。新たな会計年度に入る10月1日から11月17日までの予算執行を可能にする内容だ。
共和内に反対が多いウクライナ支援を除外する一方、バイデン政権が求めていた災害支援の強化策として160億ドル(約2兆4000億円)を盛り込んだ。共和の強硬派が強く求めていた国境の警備強化策は含まれなかった。
下院は賛成335票に対して反対91票、上院は賛成88票に反対9票だった。上院の可決は午後9時ごろで、閉鎖まで3時間に迫っていた。ホワイトハウスが大統領の署名を公表したのは残り1時間を切った夜中だった。
政府の支出が止まり、米経済が下押しされる事態は回避される。
バイデン大統領は同日夜の声明で「何百万人もの勤勉なアメリカ国民に無用な痛みを強いることになる不必要な危機を防いだ」と評価した。一方で6月に超党派で合意した歳出計画を覆そうとした共和の動きに不快感を示した。
国境警備の強化など様々な要望を掲げて予算案に反対してきた下院共和の強硬派は採決で反対票を投じたが、民主が賛成に転じたため可決を阻止できなかった。
下院民主トップのジェフリーズ院内総務は同日の記者会見で「アメリカ国民の勝利であり、年間を通して議会を乗っ取ろうとした右翼過激派による完全かつ全面的な降伏だ」と胸を張った。
今回の法案は11月17日に期限を迎える。10月1日から1年間の2024会計年度について正式な予算案は成立しておらず、11月に再び政府閉鎖の懸念が高まる可能性はある。
もし政府閉鎖になれば、その期間中は連邦政府の職員に給与が支払われなくなる。一部の職員は一時帰休し、国立公園などが閉鎖になる可能性がある。長期化すれば低所得層向けの食料支援や山火事被害対策の基金が枯渇すると見込まれている。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは9月25日、政府閉鎖が米国債の信用力にマイナスになるとの見解を示した。経済指標の公表が遅れ、金融政策の判断にも影響が出る恐れがあった。
過去最長の政府閉鎖は18年12月〜19年1月の5週間。この際はトランプ大統領が「国境の壁」の建設費を含めた予算を求め、民主と対立した。中南米からメキシコを通って流入する不法移民を壁で阻止する計画だった。
国境警備の強化を求める保守強硬派が中心になった点では前回と似ているが、今回は大きな争点がないという点で異なる。今回は上院や下院の指導部も閉鎖回避を求めていたが一部の強硬派議員の意向だけで、政府閉鎖の危機に陥った。今後も繰り返される懸念が強いという点では前回より深刻といえる。
強硬派は党内では少数グループだが、マッカーシー氏は配慮せざるを得ない立場にある。22年11月の中間選挙を経た議会では共和が221議席、民主が212議席と拮抗する。共和内の5人が造反するだけで多数派を維持できなくなる。
強硬派は議長が1月に就任する際にも反対し、議長選が10回以上も繰り返される164年ぶりの事態になった。議長はこの際、党内の1人でも解任動議を出せるルール変更をのまされている。今後は議長職を巡る党内の攻防も焦点になりそうだ。
【企業年金の運用成績公開へ 政府検討、予定利率上げ促す】
2日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・企業年金の運用成績を一般公開、他社と比較可能に
・米英は開示義務付け、予定利回りは日本より高く
・新しい資本主義実現会議、運用改善へ議論開始
政府は企業が運営する年金の改革に着手する。まず運用成績を一般に公開することで、運用目標である予定利率の引き上げを促す。専門性の高い人材を登用し高度な運用を目指すほか、運用効率の低い中小企業による年金の共同運用化も検討する。賃上げと80兆円にのぼる年金資産の運用高度化を両輪に生涯賃金の引き上げにつなげる。
首相官邸が主催し、各省庁が参加する「新しい資本主義実現会議」の下に「資産運用立国分科会」を設置し、4日から議論をスタート。年末までにまとめる資産運用立国プランに結論を盛り込む。
企業年金は国民年金(基礎年金)や会社員が加入する厚生年金に上乗せする私的年金だ。制度が複雑でわかりにくい面もあり、受取額を把握していない加入者も多い。制度を運営する企業側は財政状態を維持するため安全志向が強く、運用成績に対する加入者の意識も乏しい。
米国、英国は企業年金に運用成績の開示を義務づけている。米国は有価証券報告書のような法定開示書類で当局に提出し、母体企業が投資家に公開しているほか、労働省のホームページを見れば企業年金の決算情報を閲覧できる。開示ルールも定まっており、年金間で開示内容を比較しやすい環境が整っている。英国では年金監督庁の監督下で企業年金が自ら運用成績を開示している。
日本ではあらかじめ企業が給付額を約束して運用する確定給付型年金(DB)については厚労省への報告義務があるものの一般には公開していない。
確定拠出型年金(DC)も運用成績を比べることは難しい。一般に公開することで他社と比較できるようにし、低い運用成績を放置しにくくする効果を狙う。
企業年金は運用益で資産を膨らませて給付を充実させるしくみだ。資産運用会社に運用を委託し、企業統治(ガバナンス)に問題があったり業績が長期低迷したりしている企業に注文をつける機関投資家の一翼を担っている。
ただ、投資先との建設的な対話を促す原則「スチュワードシップ・コード」を導入する年金基金は60程度にとどまっているのが実態だ。
背景には人材難がある。企業年金は人事や労務出身者が担うことが多く、金融や運用の知識・経験が豊富なプロ人材をあてている企業は少ない。総幹事と呼ばれる金融機関任せで極度にリスクを回避する安全志向が強い。「企業のデフレマインドを払拭する環境整備が不可欠で高度な運用を目指すガバナンス改革が必要だ」(金融庁幹部)
中小規模の年金基金の場合、採算を考えると外部から助言を受けるのは現実的に難しい。事務の統合や運用の共同化など効率化が欠かせない。企業年金連合会に運用を委託できるものの広がっていないのは高度な運用を意識するガバナンスが構築できていないためだ。
新しい資本主義実現会議ではこうした業務運営のあり方にもメスを入れて議論する。
DCは個人が運用戦略を考えて運用商品を選ぶ。それぞれ成績は異なるものの、DB以上に実態把握が難しい。企業年金連合会が今年3月、非公式に実施した2021年度決算調査によると、預金など元本確保型商品の割合は44.8%にのぼった。
岸田文雄首相は今年6月、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、「資産運用業等の抜本的な改革」を打ち出し、9月に開かれたニューヨークでの講演でも「アセットオーナー(資金の出し手)の改革を行っていく」と表明していた。(金融エディター 玉木淳、中川竹美)
【大谷翔平が大リーグ本塁打王 44発、日本人初】
同じ2日の日経速報メールは次のように報じた。
米大リーグは1日、ア・リーグのレギュラーシーズン全日程が終了し、大谷翔平(エンゼルス)がリーグトップの44本塁打でタイトル獲得が確定、日本人初の本塁打王の偉業を成し遂げた。
今季は4月2日のアスレチックス戦で第1号を放ち、6月には月間15発と量産。8月23日に44号を放った。投手としても出場した同日の試合後に右肘靱帯損傷が判明、右脇腹の負傷もあり9月3日の出場が最後となった。
2021年の自己最多の46本塁打には及ばなかったが、同年より23試合少ない135試合で44本とハイペースの量産ぶり。投手では10勝をマークし、ともに史上初となる「10勝、40本塁打」「2年連続2桁勝利、2桁本塁打」の快挙を達成し、21年以来2度目の最優秀選手(MVP)受賞が有力視される。
大谷は9月19日、18年以来2度目の右肘手術を受けた。24年は打者のみで出場し、投手での復帰は25年になるとみられている。
【日経平均一時500円超高 売り手が慌てた米政府閉鎖回避】
同じ2日の日経ニュースメールは次のように報じた。
2日の東京株式市場で日経平均株価が急反発し、上げ幅が一時500円を超えた。年度下半期の幕開けとなったこの日、米政府機関の閉鎖回避、日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)、需給悪化要因のあく抜けという3つの好材料が重なり、投資家心理が大きく改善した。日本株の底堅さが改めて鮮明になっている
「投資家にとって大きなポジティブ・サプライズ」(楽天証券経済研究所の香川睦チーフグローバルストラテジスト)となったのが、米政府機関の閉鎖回避だ。米連邦議会の上下両院は9月30日夜(日本時間10月1日午前)、予算執行を11月中旬まで継続できるつなぎ予算案を超党派で可決し、政府機関の閉鎖を土壇場で回避した。
直前までは政府機関の閉鎖が確実視されており、米国景気の下押しにつながるとの不安が世界的に投資家心理を冷え込ませていた。香川氏は「リスクオフのムードから日経平均先物を売り込んでいた海外投資家が慌てて一気にショートカバー(売り方の買い戻し)に動いた可能性がある」と指摘する。
そこに今朝発表された日銀短観が追い風となった。大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の6月調査から4ポイント改善してプラス9だった。QUICKが集計した民間予想の中心値(プラス6)を3ポイント上回った。23年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比13.0%増と上方修正された。
ファナックやトヨタ自動車、ダイキン工業など幅広い製造業銘柄が上昇したのに加え、地銀を含む銀行株が特に上げた。西日本フィナンシャルホールディングスが一時7%高、いよぎんホールディングス、しずおかフィナンシャルグループが一時4%高となった。
設備投資に向けて企業が借り入れを増やし、銀行の融資が拡大すると連想された。景況感の改善が日銀によるマイナス金利政策の解除につながるとの見方もある。
株式需給の改善も一因だ。2日からの日経平均の構成銘柄見直しでは値がさ株のレーザーテックなどが新たに加わった一方、三井E&Sなどが外れた。大和アセットマネジメントの富樫賢介チーフ・ストラテジストは「パッシブ運用のインデックス・ファンドなどが銘柄入れ替えに際して値がさのレーザーテック株を買うのに株価水準が低い三井E&S株などの売却では金額が足りず、先週末まで他の構成銘柄も薄く広く売りを出していた」と指摘する。
週が明け、こうした需給悪化のあくが抜けたのも500円超高につながった。政府と金融界は6日まで海外の投資家や資産運用会社を集中的に日本に招く、「Japan Weeks(ジャパンウィークス=日本週間)」を開催している。週明けに鮮明になった日本株の底堅さは訪れた海外投資家に一段の日本株買いを誘いそうだ。(桝田大暉)
【ジャニーズ、補償後に廃業 新会社は知的財産を承継へ】
同じ2日の日経速報メールは次のように報じた。
ジャニーズ事務所は2日、性加害問題からの立て直し策を発表した。所属タレントのマネジメント業務を手掛ける新会社を設立、同事務所は被害者救済に専念し終了後に廃業する。新会社はタレント業務に必要な知的財産を引き継ぎ、創業家一族は経営に関与しない。新会社の資本構成は明らかになっておらず、ガバナンス(企業統治)が機能するかなお不透明だ。
ジャニーズ事務所は17日付で社名を「SMILE-UP.(スマイルアップ)」に変更し、被害者への補償手続きを順次進める。法令順守に向けて、チーフコンプライアンスオフィサー(CCO)に企業のリスク管理などに詳しい弁護士の山田将之氏が就任。全ての事業活動で子どもの保護と安全を確保するグループの人権方針も策定した。
創業者の故ジャニー喜多川氏から性加害を受け、補償を要求した人は9月30日時点で325人いる。2日に記者会見した東山紀之社長は「自分たちでジャニーズ事務所を解体する」と述べた。
同事務所は9月の会見で、引責辞任した創業家出身で前社長の藤島ジュリー景子氏が代表権を持ったまま、全株式を持つ株主構成を見直さず、「ジャニーズ」という社名も当面維持するとしていた。所属タレントを広告に起用するスポンサー企業から人権尊重の視点やガバナンスが不十分との指摘が相次いでいた。
前回の会見から1カ月足らずでの方針転換となった経緯について、東山社長は「内向きだったと批判されても当然。喜多川氏と完全に決別する」と述べた。ジャニーズの名称を使ったグループについても変更する。藤島氏は関連会社を含めて代表取締役を退任する。
新会社は1カ月以内に立ち上げる。藤島氏は出資せず、取締役にも就任しない。資本金は検討中で役員や従業員が出資する。社長は東山氏が兼任し、社名はファンクラブの公募で決める。社外取締役の起用も検討する。
新会社は所属する個人のタレントやグループが会社と個別に契約を結ぶ「エージェント会社」とする。エージェント会社はタレントと契約を結び、仕事獲得などを請け負う形をとる。ハリウッドなどでは一般的な契約方法で、国内では吉本興業ホールディングスが、所属タレントが反社会的勢力の会合に参加した「闇営業」問題などを受けて19年に導入した。
同事務所が再建に向けて選んだのは「第二会社方式」と呼ばれる手法だ。水俣病の原因企業のチッソは水俣病特別措置法に基づき、11年に事業部門を100%子会社のJNC(東京・千代田)に分社し、チッソは補償業務に特化した。同事務所は広告起用の見直しが相次ぐ所属タレントの活動継続と、被害者の救済を両立する狙いがある。
外部の専門家チームは8月末に公表した報告書で、喜多川氏による性加害は半世紀以上に及び、被害者は数百人に及ぶとした。今後は補償額がどの程度まで膨らむか、その原資が焦点となる。
非上場企業のジャニーズ事務所は、主要な経営指標を公表していないが、民間調査会社によると売上高は800億円程度。稼ぎ頭はファンクラブ収入だ。「嵐」や「Snow Man」など15グループだけで会員数は累計1100万人超になる。年会費は4000円で、総額500億円前後に上る計算だ。このほか東京都内の所有ビルなどの資産価値は計1000億円程度とみられる。
企業の人権侵害を巡る視線の厳しさが増す中、「ジャニーズ離れ」に歯止めがかかるかは不透明だ。帝国データバンクによると、テレビCMなどにジャニーズ所属のタレントを起用した上場企業65社のうち、半数にあたる33社が起用方針を見直した(9月30日時点)。
所属タレントを起用した広告や販促物の展開を停止している日産自動車は2日、「事務所が発表した改革や再発防止の取り組みを注視しながら、適切な対応を取っていく」と述べるにとどめた。
スポンサー企業は過去との決別の是非について資本構成で判断するとされるが、新会社の構成は明らかになっていない。企業のガバナンス問題に詳しい青山学院大学の八田進二名誉教授は「現状ではスポンサー離れを食い止めることはできない」との見方を示す。
日本リスクマネジメント学会理事長で関西大学の亀井克之教授(リスクマネジメント論)は「新会社の経営陣に喜多川氏が築いたシステムで育ったタレントが就くのは問題がある。スポンサー離れが続く可能性がある」と指摘する。
【ノーベル賞にカリコ氏ら mRNA医薬、コロナ実用化導く】
同じ2日の日経速報メールは次のように報じた。
スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、2023年のノーベル生理学・医学賞を米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコ非常勤教授(68)と同大のドリュー・ワイスマン教授(64)に授与すると発表した。遺伝情報を伝える物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」を使うワクチンに欠かせない基盤技術を開発した。新型コロナウイルスワクチンを実用化に導いた業績が評価された。
授賞理由は「新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの基盤技術開発」。
• 【関連記事】ノーベル賞受賞のカリコ氏「失敗する力を学んでほしい」
mRNAは細胞内で遺伝情報をもとにたんぱく質を作る際に伝令役となる物質だ。新型コロナウイルスに対しては、米ファイザーと独ビオンテック、米モデルナがそれぞれ20年1〜3月ごろから本格的に開発を始め、同年12月にそれぞれ米国などで緊急承認を受けた。「ワクチン開発には少なくとも数年かかる」といわれた常識を覆した。
感染や発症、重症化を防ぐ効果は従来型のワクチンより高い。ファイザーとビオンテックのワクチンは、日本や米国など約180カ国・地域で承認された。
ノーベル生理学・医学賞の選考委員会は2日、「ワクチンが非常に早く開発され、パンデミック(世界的流行)の初期段階において、命を救うという点で非常に重要だった」と評価した。
メッセンジャーRNA(mRNA)
細胞内でDNAの遺伝情報をもとにたんぱく質を作る際に伝令役となる物質。伝える遺伝情報に合わせて人工合成できる。新型コロナワクチンではウイルスのたんぱく質を作るmRNAを体内に投与する。ウイルスのたんぱく質ができ、それを免疫が記憶することで、ウイルスが実際に侵入したときに感染防御などに役立つ。
mRNAを感染症の予防や病気の治療のために体内に投与するアイデアは1980年代からあり、研究開発は90年代から本格的に始まった。しかし、mRNAは壊れやすく、体内の免疫反応を過剰に起こす問題があり、うまくいかなかった。
カリコ氏らは2005年、mRNAの一部の物質を変えるだけで、免疫反応が回避できることを示した。RNAをもとに作られるたんぱく質の量が数倍多くなることも見つけた。これらの発見がmRNAワクチンの基盤技術になった。
ただ、発表当時は大学や製薬業界の評価は高くはなかった。大学側はカリコ氏らの研究成果の特許を企業に売却した。カリコ氏は13年にビオンテックに入って、ワクチンの実用化に貢献した。
米ボストン・コンサルティング・グループは、mRNAワクチンの市場規模は21年に500億ドル(約7兆5000億円)以上にのぼったと推計している。
カリコ氏らが開発した技術はさまざまな病気の予防や治療に使う「mRNA医薬」の普及につながると期待されている。エイズウイルス(HIV)、ジカウイルス、インフルエンザウイルスといった他の感染症でもワクチンとしての臨床試験(治験)が進む。がんや希少疾患の治療薬を目指した治験も進む。
授賞式は12月10日にスウェーデンのストックホルムで開く。賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1億5000万円)で、2氏で分ける。
カタリン・カリコ(Katalin Kariko) 1955年ハンガリー生まれ、82年セゲド大で博士号取得。85年に米国に移住後、米ペンシルベニア大助教授などを経て2013年に独ビオンテック副社長。21年に同大非常勤教授、セゲド大教授。22年からは同社の外部コンサルタントを務める。
ドリュー・ワイスマン(Drew Weissman) 1959年米国生まれ、87年米ボストン大で博士号取得。米ペンシルベニア大助教授などを経て2013年教授。21年よりペンシルベニア大RNAイノベーション研究所所長。カリコ氏とともに米ラスカー賞など受賞多数。
【植田日銀、2%へ揺るがぬ信念 確信なら「一気に動く」 植田日銀半年 近づく出口】
3日の日経速報メールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・植田和男氏が日銀総裁に就任して9日で半年に
・「ある程度適切に政策対応できた」との自己評価
・金融緩和の出口など真価が問われるのはこれから
日銀の総裁に植田和男氏が就任して9日で半年となる。7月には長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用を柔軟化し、黒田東彦前総裁が口をつぐんできた金融緩和の出口にも言及し始めた。四半世紀続いたデフレとの戦いの総仕上げをどう進めるのか。半年の軌跡から読み解く。
「経済物価情勢の動きは半年前に予想していたものとはやや違った動きをしているが、それを捉えたうえで、ある程度適切に金融政策対応ができた」。9月22日、金融政策決定会合後の記者会見で、植田氏は就任からの半年を振り返った。
就任直後、官邸からけん制球
日銀は7月の会合でYCCを修正し、長期金利の上限をこれまでの0.5%から事実上1%に引き上げた。長期金利は自由度をある程度取り戻し、2016年から続いたYCCは形骸化が進んだ。
国債の大量購入で長期金利を抑え込んできた日銀にとって、YCCを柔軟化し「金利のある世界」に足を踏み入れたのは大きな変化だ。ある日銀関係者は「YCC修正を市場の混乱を招かずに成功させた中央銀行はほかにない」と力を込める。ただ、マイナス金利の撤廃などの金融政策の正常化はこれからが本番であることも確かだ。
道のりがいかに険しいか、植田氏は4月の就任直後にある洗礼を受けたとされる。関係者によると、首相官邸を訪れた植田氏に岸田文雄首相はこんな趣旨のけん制を繰り出した。 当面は金融政策の転換と受け止められる動きは避けるように――。
異次元緩和を進めた黒田氏から植田氏に総裁が代わり、金融市場では政策転換への期待が高まっていた。だが、実際に政策が大きく変われば、黒田氏の後ろ盾だった故安倍晋三元首相に近い議員と官邸とで溝が生じかねない。
2000年のゼロ金利解除の失敗を日銀審議委員として経験した植田氏も、日銀が早く動きすぎるリスクは十分すぎるほど理解していた。就任当初は慎重な発言に終始し、物価の基調の強さを確かめつつ、世論や政治の変化を待っていた節がある。
内田副総裁が上げたのろし
実際、円安が長引き、日銀の金融緩和が物価高を招いているとの声が強まった。岸田首相が6月に通常国会中の解散総選挙の見送りを決めたこともあって、7月の政策修正への道は整えられていった。
のろしを上げたのは、日銀の生え抜きトップの内田真一副総裁だった。日本経済新聞との7月上旬のインタビューで「(YCCが)市場機能に影響を与えていることは強く認識している」と発言。「強く」という言葉をわざわざ差し挟むことで、政策修正近しとの観測を高めた。
日銀関係者は「慎重姿勢を強調してきた内田氏の発言だったからこそ、政策修正がありうるとの地ならしにつながった」と明かす。学者出身の植田氏の政策運営には懸念の声もあったが、内田氏が実務を押さえて時には露払いの役割を果たし、植田氏が幅広い意見に目配りしながら総合判断するという二人三脚が機能している。
財務省幹部は「これまでの金融政策運営はうまくいっている。日銀も自信を深めているのではないか」と植田体制のスタートを評価する。一方で、今後想定されるマイナス金利解除などの金融緩和の出口については「これまでとレベルの違う政策の変更だ」とし、真価が問われるのはこれからとの考えをにじませる。
発言にブレはないか
課題もある。強い言葉で政策の方向性を示す黒田氏と違って、協調型のリーダーである植田氏の発言は慎重で、時にぶれているような印象を与える。
政策修正があった7月会合の前には「全体のストーリーは不変」と発言し、一部の市場参加者が「修正見送り」と受け止めた。9月9日の読売新聞のインタビューでは「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と述べ、市場でマイナス金利の年内解除の織り込みが進んだ。
日銀内では「どちらともとれる発言をしているだけ。政策への考えは一貫している」との声があがる。この先の金融政策を縛るような発言は極力抑えているため、発言は総花的になりがちで、ワンフレーズにだけ注目すると真意を捉え損ねてしまう。
賃上げへの強いこだわり
信念に欠けるわけではない。ある日銀関係者は「優柔不断ではない。過去に政策変更で経済を冷やした経緯もあり、判断に時間をかけているだけだ」と説明。「目標達成を確信すれば一気に動く」という。
「確信」は得られるのか。日本経済の供給力と需要の差を表す「需給ギャップ」は足元プラス圏に浮上し、政府が掲げるデフレ脱却の条件は形式上、満たされた。最後のピースになるのが、企業の賃上げだ。
植田氏は「賃金と物価が好循環を続けるという姿が確認できることが必要」との発言を繰り返してきた。植田氏の東大時代の教え子である金融関係者は「賃上げが物価上昇に追いつく前に金融引き締めに転ずるのは問題だと(就任前に)たびたび吐露していた」と話す。
賃金は持続的に上がっていくのか。焦点は来年の春季労使交渉だ。さらなる政策修正の判断時期を「来年1〜3月頃」(田村直樹審議委員)とする意見がある。
異例の金融緩和を延々と続けることは望ましくないが、日本経済がデフレに逆戻りするリスクは冒せない。確信を持てれば前進し、そうでなければ踏みとどまる。「到底、決め打ちできない」という言葉にこそ、植田氏の信念がにじむ。
【楽天、プラチナバンド割り当て申請 品質改善の切り札に】
同じ3日の日経速報メールは次のように報じた。
楽天グループ傘下の楽天モバイルが強く希望する「プラチナバンド」の獲得に一歩近づいた。電波がつながりやすく、サービス品質改善の切り札となるプラチナバンドの割り当てについて総務省は3日、同社から割り当ての申請があったと発表した。狙い通りに契約数の増加につなげるには財務体質が悪化する中でいかに素早く設備投資を実行できるかが問われる。
鈴木淳司総務相は3日の閣議後の記者会見で「電波監理審議会の諮問をめざして割り当て手続きを進める」と述べた。申請は1社のみだったため、総務省は最低限の要件を満たしているかを確認する「絶対審査」を行う。総務相の諮問機関による答申を経て、早ければ23日に割り当てが決まる。決定後、楽天モバイルによる利用は早くても年明けになるとみられる。
ラチナバンド 700〜900メガヘルツ(MHz)の周波数帯の電波で、建物内などでもつながりやすい。700MHz帯の周波数帯は地上デジタル放送向けと携帯電話向けの電波が隣接しており、干渉しないよう未利用帯域を設けている。2022年11月にNTTドコモが3MHz幅の2カ所を携帯電話向けに割り当てることを提案していた。
プラチナバンドの獲得は楽天にとって悲願だ。使い勝手がいいにもかかわらず大手携帯電話4社のうち、後発の楽天モバイルだけが持っていなかったためだ。
その影響は苦戦する楽天の携帯事業にも表れている。楽天モバイルを巡っては基地局建設など累計1兆円を超える設備投資の負担が重く、23年1〜6月期連結決算(国際会計基準)の携帯事業の営業赤字は1850億円(前年同期は2538億円)だった。
携帯事業の赤字は四半期ベースでは22年1〜3月をピークに縮小しているものの、グループ全体では12四半期連続で赤字だ。契約数が伸び悩んでいるためで、その一因はつながりにくさにあった。
そこで楽天は6月、KDDIから回線を借りる「ローミング」(相互乗り入れ)利用によるデータ利用量の上限をなくす新プランを始め、つながりやすさに課題があった東名阪などの繁華街でもKDDI回線を使えるようにした。プラチナバンドなら通信品質をさらに改善できると獲得に力を入れていた。
もっとも新たな帯域を使うサービスを始められても、先行きには不透明感もある。
楽天モバイルは8月の決算説明会でEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)ベースの単月黒字化に必要な契約数は800万〜1000万との見通しを示した。8月28日に500万を突破し、7月から約9万増えた。このペースでの増加が続いても800万に到達するのは約3年かかる計算だ。
財務も懸念材料だ。設備投資などにあてた社債償還の期限が迫っている。23年に780億円(うち680億円はハイブリッド債)の償還予定額は24年には3000億円、25年には4000億円と跳ね上がる。
悪化した財務を改善するために楽天は5月、公募増資と三木谷浩史会長兼社長の資産管理会社などへの第三者割当増資で3000億円規模の資金調達を実施した。さらにKDDIとの新ローミング契約を利用することで23〜25年の3年間で約3000億円の設備投資費の削減を目指すとする。
それでもプラチナバンドを利用するには一定程度の追加の設備投資は避けられない。UBS証券の福山健司氏は「試算ベースだが東名阪での利用には今後2年間で500億〜1000億円程度の投資が必要」とみる。楽天全体の22年12月期の営業キャッシュフロー(金融事業除く)は3153億円の赤字のため、投資のインパクトは小さくない。
楽天が期待するのがアンテナ以外の大半の設備をクラウド上のソフトウエアに置き換える同社の「仮想化」技術だ。この技術を使えば既存の基地局を活用し、設備投資の大幅な増加を避けながら、プラチナバンドを展開することができるとしている。
3日の楽天グループ株は前日終値比で2%安の565円90銭で引け、5月に実施した公募増資の発行価格(566円)近辺で推移している。株価を反転させるには、効率的な設備投資を実施しながら、ユーザーにプラチナバンドなどによる通信品質改善をどれだけ体感してもらえるかが鍵となる。(西城彰子)
【半導体工場の立地規制を緩和 政府、農地・森林にも誘致】
同じ3日の日経速報メールは次のように報じた。
政府は12月にも半導体など重要物資の生産工場の誘致に向け土地規制を緩和する。農地や森林など開発に制限がある市街化調整区域で自治体が建設を許可できるようにする。大型工業用地の不足に対応する。税制や予算とあわせて規制改革で国内投資を促す。
経済安全保障の観点から半導体や蓄電池、バイオ関連といった分野が対象となる。岸田文雄首相が4日、民間企業や閣僚を集めて首相官邸で開くフォーラムで円滑な土地利用に向けた規制改革に取り組むと表明する。10月末にまとめる経済対策の柱となる国内投資の促進策として税制・予算と合わせて打ち出す。
経済産業省によると全国の分譲可能な産業用地面積は2022年時点でおよそ1万ヘクタールある。11年の3分の2ほどに減った。新たに土地を確保するにも用途指定を変更する手続きなどに時間がかかる問題点が指摘されてきた。
市街化調整区域の開発は、地域特性を生かした事業を展開する企業を支援する「地域未来投資促進法」の規定を使って例外的な活用を認める。
いまは食品関連の物流施設やデータセンター、植物工場などに限り、政府が自治体に開発許可を認めている。関係各省の省令や告示を改正し、これに重要な戦略物資の工場を加える。自治体が地域活性化や環境の観点で問題ないと判断すればより柔軟に工場を誘致できるようになる。
手続きに時間がかかる農地の場合は、通常なら1年かかる手続きを4カ月ほどに短縮する。
農地の転用には地元の農業委員会などの許可が要るなど規制が複数の省にまたがるケースが少なくない。このため国土交通、農林水産、経産の3省が連携して開発許可の手続きを同時並行で進める。
半導体の工場にはまとまった土地と良質な水などが欠かせない。円安や安定したサプライチェーン(供給網)のため生産拠点を国内に回帰させる動きがある一方、条件に合う工業用地の供給は限られる。
半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本に進出し、周辺の自治体からは土地規制の是正を求める声が上がっていた。
九州経済連合会は国や県の権限で農地を速やかに産業用地に転用できるような規制緩和策を政府に要請した。企業が土地を確保できず進出を断念したケースもこれまでにあったという。
TSMC新工場の周辺は半導体関連のサプライヤー企業の集積が相次ぐ。工業用水の確保や道路など物流網の構築は待ったなしの状況にある。熊本県の蒲島郁夫知事は8月、官邸で首相に社会資本整備に関する「緊急要望」を手渡した。
政府は機動的なインフラ整備に向けて関係府省が横断で複数年にわたり支援する枠組みを創設する。23年度補正予算案への費用計上に向け調整する。
為替相場は円安が続き、日本国内で投資しやすい環境が整う。地方に工場の立地を促し、地域の雇用確保や周辺産業を含めた賃上げにつなげる。
【米下院、マッカーシー議長の解任動議を可決 米国史上初】
4日の日経速報メールは次のように報じた。
【ワシントン=坂口幸裕】米連邦議会下院は3日、野党・共和党トップのマッカーシー議長の解任動議を与野党の賛成多数で可決した。下院議長の解任動議が可決するのは米国で初めて。与党・民主党の議員に加え、政府閉鎖を回避したつなぎ予算を巡る対応を問題視した共和の保守強硬派らが賛成に回った。
共和のマット・ゲーツ下院議員は2日、マッカーシー氏の議長解任動議を提出した。つなぎ予算を巡り要求した歳出削減などを受け入れず、民主と協力したことを問題視した。これまで解任動議を提出された下院議長はマッカーシー氏で3人目で、可決された初のケースになる。
下院議長は大統領の継承順位が副大統領に次ぐ2位の要職だ。マッカーシー氏の解任動議を巡る採決は賛成が216、反対が210、欠席が7だった。米メディアによると、8人の共和議員が賛成した。
米メディアによると、下院は次期下院議長を選ぶための採決を11日にも実施する方向で調整している。マッカーシー氏は3日の記者会見で、議長選には出馬しないと表明した。後任には下院共和ナンバー2、スカリス院内総務やナンバー3のエマー院内幹事らの名が挙がっている。
現在の下院(定数435)の構成は多数派を握る共和が221議席で、民主が212議席をもつ。ゲーツ氏を含む20人ほどが所属する共和の保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議連)」は少数派ながら、与野党の拮抗をテコに下院で影響力を行使できる構図にある。
9月30日に成立したつなぎ予算に強硬派が強く求めていた国境の警備強化策は盛り込まれず、民主が賛成に転じたため可決を阻止できなかった。ウクライナ支援の継続に前向きだったマッカーシー氏の後任議長次第では、バイデン政権が急ぐ対ウクライナの追加予算の成立が一段と難しくなる可能性がある。
ゲーツ氏は1日、反対する追加のウクライナ支援を巡り「マッカーシーが与党・民主党と密約を交わした」と明かしていた。つなぎ予算から除外されたウクライナ支援の予算案を実現させる代わりに、マッカーシー氏が議長職にとどまるよう民主と協力する交渉をしている可能性を示唆した。
下院民主トップのジェフリーズ院内総務は3日、党所属議員に送った書簡でマッカーシー氏の解任動議に賛成する方針を伝えた。「下院共和の内紛を終わらせるのは、今や共和議員の責任だ」と記した。
ゲーツ氏らはマッカーシー氏が1月に議長に就任する際も反対した。15回目の議長選で当選した時、マッカーシー氏は反対派を取り込むため譲歩案を提示。1人でも解任動議を採決できるように条件を大幅に緩和した経緯がある。
【為替介入巡り神経戦 深夜の円急騰、疑心暗鬼で増幅】
同じ4日の日経ニュースメールは次のように報じた。
外国為替市場で、為替介入を巡る市場と政府の神経戦が激しくなっている。3日深夜には対ドルの円相場が1ドル=150円台から147円台まで急騰する場面があり、市場では為替介入の観測も流れた。政府は為替介入にはコメントしない方針で、介入の有無を巡り投資家の疑心暗鬼は当面続きそうだ。
それは一瞬の出来事だった。日本時間の午後11時ごろ、円が1年ぶりに150円の大台まで下落した。しかしそれもつかの間、午後11時12分ごろに予兆もなく円が強含み、1分以内に147円30銭前後まで円高・ドル安が進んだ。
通常であれば、1分以内に3円近くも円相場が動くことはない。このため政府・日銀が円買いの為替介入に踏み切ったのではないかという噂が英ロンドンや米ニューヨークなどで駆け巡った。結局11時半ごろには149円台まで再び円安が進み、介入の観測は急速にしぼんだ。
複数の市場関係者の解説を総合すると、この値動きの背景はこうだ。
150円の大台まで円が下落したことにより、値上がりしたドルを売って利益を確定する動きが相次いだ。それにアルゴリズム取引が反応し、円高方向への大きな値動きが発生した。もともと介入への警戒が強かったことから、円を買い戻す動きが相乗的に強まったという。
神田真人財務官は4日朝、為替介入については「コメントしない」として介入の有無を明らかにしない従来の方針を踏襲した。市場関係者が介入の有無を探るために着目するのが、昨年の介入時との値動きの差だ。
昨年10月21日の為替介入では午後11時40分ごろから円が急伸し、151円台半ばだった円相場がわずか1時間強で144円台まで円高が進んだ。それと比べると「円高の勢いや持続性が明らかに低く、介入と考える合理的な理由はない」(外資系銀行)との見方もある。
も っとも公式には介入の有無が明らかにされていないことで「投資家は150円をいちおうの介入ラインとして意識せざるを得ない」(野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジスト)との声がある。
神田財務官は4日、介入の条件について「過度な変動に対してはこれまで通りの方針で臨んでいる。一方向に一方的な動きが積み重なって一定期間に非常に大きな動きがあった場合は過度な変動にあたりうる」とした。
その上で、一定期間の考え方について「1日の場合もあれば2週間ほど、1カ月ぐらいの場合もある。年初からだとドル円は20円以上の値幅がある。そういったことも一つの要素だ」と説明した。
市場ではかねて政府は1日の円相場の変動を重視しているとの見方があった。この日の神田財務官の発言からは市場の想定よりも介入の条件を広く捉えている様子がうかがえた。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司シニア・アドバイザーは「投機筋へのけん制としてはかなり効果的」とみる。
米長期金利の上昇は止まらず、当面は円相場への下落圧力は続く公算が大きい。神田財務官が指揮した昨年の為替介入は結果的に大きく円相場を押し上げることに成功した。市場関係者の脳裏にはその記憶が刻み込まれており、介入を巡る駆け引きは今後も続きそうだ。(佐藤俊簡、犬嶋瑛、南泰葉)
【沖縄県、辺野古の承認指示応じず 国が代執行提訴へ】
同じ4日の日経ニュースメールは次のように報じた。
沖縄県の玉城デニー知事は4日、米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を巡り、防衛省による設計変更申請を同日までに承認するよう求めた斉藤鉄夫国土交通相の指示に応じない方針を明らかにした。県庁で記者団に「期限までの承認は困難だと回答した」と語った。
岸田文雄首相は4日夜、首相官邸で記者団に「国交相が今後適切に対応していく」と述べた。「世界で最も危険であると言われている普天間基地を一日も早く移転させる。これからも努力を続けていかなければならない」と強調した。
国交省は「知事が期限までに承認を行わなかったことは遺憾だ」(水政課)とコメントした。同省は地方自治法に基づき、県に代わり国が承認する「代執行」に向けた訴訟を5日にも福岡高裁那覇支部に提起する。
国が勝訴すれば、高裁は県に一定期間以内に承認するよう命じる判決を出す。それでも県が従わない場合は、国が代執行できる。
設計変更を巡っては9月4日の最高裁判決で県の敗訴が確定し、承認する法的義務が生じた。判決後も県は明確な態度を示さず、国が承認を勧告しても応じなかった。国は勧告を指示に切り替え、改めて承認を求めていた。
玉城氏は指示に応じない理由として「最高裁判決の精査」「県民や行政法学者らから寄せられた意見の分析」がさらに必要だと説明した。国に対し「県との対話に応じるよう粘り強く求めていきたい」と述べた。
承認の判断を巡っては、県庁内に「法治国家として最高裁判決は受け入れざるを得ない」として承認すべきとの声もあった。知事を支える県議らは2日、国の指示に応じないよう求める要請書を玉城氏に提出するなど反対姿勢を崩していない。
辺野古移設は2006年に日米で最終合意し、13年に当時の仲井真弘多知事が国による埋め立て申請を承認した。
その後で軟弱地盤の存在が明らかとなり、防衛省沖縄防衛局が20年に工事の設計変更を県に申請した。県が調査が不十分などとして承認しなかったのに対し、国は認めるよう是正指示を県に出した。県は国の対応が違法だとして提訴していた。
防衛省は軟弱地盤の改良を伴う埋め立て工事の開始から移設完了まで12年ほどかかるとみている。13年時点の計画では最短で22年度の移設完了を明記していたが、現時点で30年代半ば以降にずれ込む見込みだ。
【みずほ、楽天証券と24年春に新会社 ネット顧客取り込み】
同じ4日の日経速報メールは次のように報じた。
みずほ証券は楽天証券と金融仲介の新会社をつくり、2024年春にサービスを始める。楽天証券のネット取引を利用する顧客に対し、営業担当者が対面で資産運用に関する相談に応じる。みずほフィナンシャルグループの幅広い商品やサービスを楽天証券の顧客に紹介し、顧客の拡大を目指す。
新会社は楽天証券の顧客のうち、退職金の運用や相続など複雑な悩みに関して、対面で相談したい人を対象とする。顧客は楽天証券の口座を使い続けるが、必要に応じてみずほ証券でも口座を開設する。みずほ銀行やみずほ信託銀行など、グループの商品やサービスも紹介する。
楽天証券は手数料の低さやネットの利便性を武器に、若年層を取り込んできた。楽天証券の口座数は900万超。大部分が若年層だが、60歳代以上も1割強にのぼる。みずほ証券と組むことで、老後や相続を含めた長期の資産運用ニーズに応えられるようにし、顧客の囲い込みを狙う。
みずほ証券は2022年、楽天証券に約2割出資した。富裕層への対面営業に軸足を置くみずほ証券にとって、楽天証券の顧客基盤を取り込むのが狙い。
•【関連記事】みずほ、楽天証券に2割出資へ ネットが金融の主戦場に
月内にも新会社を設立し、みずほ証券が95%、楽天証券が5%出資する。金融商品仲介業への登録などを経て、24年春の営業開始をめざす。社名は今後詰める。営業担当者は主にみずほ証券から出向させる。
ネット証券を巡っては9月末以降、最大手のSBI証券が日本株の売買手数料をゼロにし、楽天証券も追随するなど、競争が厳しくなっている。4日午後にはNTTドコモとマネックスグループが資本提携を発表した。今後、対面証券や異業種との連携や業界再編が一段と進む可能性がある。
【SBI・楽天が迫った再編 「寄らばドコモ」のマネックス】
5日の日経速報メールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・マネックス証券はライバルとの手数料競争で劣勢
・金融の経済圏で遅れたドコモはうってつけの相手
・異業種を交えた証券再編が日本で起こりつつある
ネット証券3位のマネックス証券が4日、NTTドコモの子会社になると発表した。ネット証券業界の草分け的存在だったが、近年は業界2強のSBI証券と楽天証券が仕掛ける激しい手数料競争で劣勢に立たされていた。9000万人超のユーザーを抱える巨人・ドコモと組んで再起をめざすが、業界を見回しても「通信と証券の融合」は成果に乏しい。もくろみ通り成長できるかは不透明だ。
「ドコモという巨人と、起業家精神あふれる個人の集合体であるマネックスが手を握り、オールジャパンのサービスを提供する」。マネックスグループの松本大会長は4日の記者会見でドコモとの資本提携の狙いをこう語った。
2024年に新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まるなど、貯蓄から資産形成の流れが本格化するなか、ドコモと組んで「広く個人が安心して利用できる、便利で良質な資産形成サービス」(松本会長)の構築をめざす。ドコモとはもともとポイント交換サービスなどで連携していたことがきっかけになったという。
資本提携に基づき、マネックスGは事実上、傘下のマネックス証券の株式の半分をドコモに売却する。マネックス証券はドコモの連結子会社となり、マネックスGにとって持ち分法適用会社の位置付けになる。同社はほかにも暗号資産(仮想通貨)のコインチェックや米国ネット証券会社、資産運用会社など複数の事業を持つが、祖業の国内証券を手放す形となる。
マネックスGの創業は1999年。米金融大手ゴールドマン・サックスで最年少パートナー(共同経営者)に就いた松本氏が、当時黎明(れいめい)期にあったインターネットを通じた金融サービスを構想したのが始まりだ。折しもゴールドマンは新規株式公開(IPO)を控えていたが、同氏はIPOで得られたはずの財産を捨ててまで、新たなビジネスへの挑戦を選んだ。
99年はちょうど投資家が証券会社に対して支払う株式売買委託手数料が完全自由化された年だ。創業間もないマネックスは手数料を業界最安値水準に設定し、松本氏は業界の「風雲児」として脚光を浴びた。2000年代半ばには時価総額が4000億円超に膨らんだが、09年のリーマン・ショック後は業績・株価ともに低迷していた。
マネックスが苦戦した理由は主に2つある。1つがネット証券業界における激しい顧客獲得競争だ。最大手SBI証券や2位の楽天証券が近年、手数料の引き下げやポイント優遇で顧客数を着実に伸ばしてきた半面、マネックスは出遅れた。
同社は代わりに投資信託の銘柄選びのサポートやロボットアドバイザー(ロボアド)など手数料以外で付加価値を高め、顧客にアピールする作戦をとったが、コスト意識が根強い個人投資家には響かなかった。
苦戦の理由のもう1つが不安定な株主構成だ。マネックスGは創業以来、大株主が何度も交代している。05年の上場当時は旧日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)系だったが、10年にはオリックスが大株主となり、14年以降は静岡銀行(現しずおかフィナンシャルグループ)が約2割出資している。経営方針を変更するには大株主の意向をうかがう必要があり、なかなか大胆な戦略をとりにくかったというのが実態だ。
今回のドコモとの提携では、こうした2つの課題を一気に解決できる可能性はある。ドコモは言わずと知れた携帯キャリア最大手だが、グループ内に証券会社や銀行がなく、金融を軸にした経済圏づくりでは出遅れている。マネックスはまさに組む相手としてうってつけだったといえる。
もっとも、通信と証券の融合を巡っては目を見張るような成果が出ていないのが実情だ。auカブコム証券は2019年からKDDIとポイントや株主優待などで連携するが、収益面でも口座数でも、SBI証券や楽天証券との差を縮められずにいる。LINEは19年に野村ホールディングスと組んでスマートフォンを軸とした証券サービスを始めたが、一度も黒字化できないまま23年に事実上の撤退を決めた。
大手キャリアとの連携を協議したことがあるネット証券関係者は「経営の目線を合わせるのが難しい」と明かす。互いに強い規制業種で自由に連携しにくい。通信が設備投資から資金回収まで10年単位で構えるのに対し、証券は日々の相場で収益が大きく振れるため、経営の時間軸もおのずと異なる。
マネックスGの松本会長は4日夜に開催した証券アナリスト向け説明会で、株売却で得た約500億円を株主還元や運用会社のM&A(合併・買収)に充てる方針を示した。大手証券幹部は「競争が厳しい国内証券を高値で売りつけ、得た資金で拡大余地のある運用分野に振り向ける狙いだったとすれば、ナイスディールと認めざるを得ない」と話す。
9月末以降、SBI証券と楽天証券は日本株の売買手数料を相次ぎゼロにした。今後、証券各社に手数料の下げ圧力がかかるのは必至だ。マネックスとドコモが提携を発表した同じ日に、楽天証券がみずほ証券と対面営業を軸とする新会社を設立することも明らかになった。
米国では19年にネット証券大手のチャールズ・シュワブが手数料無料化を発表すると、競合他社もすぐさま追随した。その後は同業のTDアメリトレード・ホールディングがシュワブに、イー・トレードはモルガン・スタンレーにそれぞれ買収されるという大型再編が起きた。国内でもネットと対面、さらに異業種を交えた証券業界の再編が起こりつつある。(和田大蔵、日高大、森川美咲)
【イオン・セブン、金融サービス再編で描く「個客」開拓 編集委員 鈴木哲也】
5日の日経ニュースメールは次のように報じた。
イオンやセブン&アイ・ホールディングスが金融事業をテコ入れし、「個客」に向き合うビジネスモデルへ動き出した。従来は圧倒的なリアルの店舗網を生かして買い物客に利便性を提供してきたが、キャッシュレス化と購買データを駆使するネット企業の台頭で、金融サービスを巡る競争の土俵は様変わりしている。人口減少と店舗飽和の時代に、日本の小売り2強が描くのは「マス商売」から脱却して稼ぐ未来だ。
ネットスーパーを金融事業のテコに
「あなたのオンラインマーケット グリーンビーンズ」。こんな言葉を掲げた緑色のトラックが街を走り始めた。イオンがデジタルシフト戦略の中核として社運をかけるネットスーパーだ。専業の英オカドと提携し、まず今夏から千葉県と都内の一部地域の家庭へ配送し始めた。
クレジットカードやイオン銀行を軸にした金融事業を担うイオンフィナンシャルサービスにとっても重要な転機となる。ショッピングセンターやスーパーといった店をベースにしてきた金融ビジネスを進化させるカギを握るからだ。
リアル店舗との大きな違いは、ネット宅配を通じて顧客ごとの詳細な購買行動やニーズを把握できること。こうしたデータを活用して「将来のOne To Oneマーケティングにつなげていく」(イオンの吉田昭夫社長)のがデジタル戦略の肝だ。「フィナンシャルサービスを紹介するなど、イオングループの様々なサービスを提供するチャネル」に育てる考えで、ローンや保険との相乗効果を期待する。
イオンが発表したネット宅配サービス「Green Beans(グリーンビーンズ)」(4月、東京都港区)
事業会社の統合に踏み込む
大手小売企業でも、店に訪れる大勢の顧客が売り場で何を求めてどのように動いているか、一人ひとりを深く理解できてはいない。マスマーケティングではなく「One To One」で顧客が欲しい商品を個々にオススメするビジネスモデルは「アマゾンや楽天グループなどネット企業に大きく差をつけられている」(小売りアナリスト)。
イオンのグリーンビーンズ事業立ち上げには、金融部門も積極的に協力し、イオンカードの利用客に大幅なポイント還元を期間限定で実施した。PR活動にも金融部門の多くの社員が参加し、9月中旬にはイオン銀行の住宅ローン契約者向けの買い物割引にグリーンビーンズを加えた。
イオンの金融事業は国内クレジットカードのキャッシング残高減少など新型コロナウイルス禍の影響が大きく、2023年2月期の営業利益は588億円と前の期比で微増だったものの、コロナ前の20年2月期の650億円には届かなかった。
イオンカードをはじめ、グループの金融サービスの厚みを打ち出している
デジタル金融サービスの核となるアプリ「イオンウォレット」もこのほど刷新した。5月末時点で836万人の利用者がいるスマートフォン決済「イオンペイ」を使いやすくし、将来的には総合金融アプリへとさらに進化させ、住宅ローンや保険といった多岐にわたるサービスを提供する。組織改革としてイオンフィナンシャルサービスと傘下のイオンクレジットサービスを6月に統合させ、運営効率化にも踏み込んだ。
ATMの役割を再定義
ライバルのセブン&アイ・ホールディンスも金融事業の刷新を急ぐ。「ATMはあらゆる手続きや認証の窓口となる。コンビニで様々なサービスを受けるためのプラットフォームにしていきたい」――。セブン銀行の松橋正明社長は9月、新サービス「プラスコネクト」の発表会で強調した。
全国のセブンイレブンを中心に国内2万7000台に広げた同行のATMだが、キャッシュレス時代に手を打た ないと一気に負の遺産に転じかねない。現金出し入れ以外の役割を広げる戦略のひとつが、24年度の完了を目指す新型ATMへの切り替えだ。「第4世代ATM」として顔認証機能などが付く。
プラスコネクトはこれを生かし、9月26日からセブン銀行のほか群馬銀行や東日本銀行の顧客向けに住所変更などをATMでできるようにした。今後、口座開設など窓口業務の効率化が求められる各地の地方銀行のデジタル化を支えつつ、顧客の利便性も高める。今後は金融機関にとどまらず、ホテルのチェックインや中古品売買などでも本人確認や認証の窓口を担う方針だ。
「みんなに反対された」銀行参入
セブン&アイ(当時はイトーヨーカ堂グループ)が大手小売業として初めて銀行業に参入したのが2001年。当時の経営トップ鈴木敏文氏が「みんなに反対された」と語るように、提携銀行から得るATM手数料を柱とする異例のビジネスモデルだった。消費者が支持し、金融界の常識をくつがえす成功を収めたが、ここ数年でコンビニの出店ペースが著しく減速し、グループ外や海外でのATM設置を急ぐものの、成長のハードルは高くなった。
セブン銀行の経常利益は19年3月期と20年3月期は400億円前後あったが、23年3月期は289億円だった。時価総額は現在3500億円程度で、15年から半減している。
ネット専業銀行は大きな脅威だ。4月に上場した楽天銀行はネット通販などを軸にした「楽天経済圏」を駆使し、3月末時点の口座数は1400万弱、預金残高は9兆1000億円とネット銀行の国内首位に立つ。
日々の買い物と連動して、手軽に金融サービスを利用してもらい、生活の中に浸透していく――。かつて小売業が道を切り開いた新たな金融ビジネスは、人々の購買行動が「店舗からネット」へシフトする中、もう一段のイノベーションが求められる。
集客生かす広告事業も
セブン&アイも7月に金融事業の組織を見直しており、やはり顧客データを活用していかに「個客」を深掘りしていけるかが重要なテーマとなる。クレジットカードや電子マネー「nanaco(ナナコ)」を手がけるセブン・カードサービスを、セブン銀行の傘下に置いた。グループ共通の会員基盤「7iD」は7月に3000万人を超え、nanacoの会員数も3月末で7900万人に上る。ただ、これほど膨大な顧客資産があるにもかかわらず、ATMを柱とする金融事業との相乗効果は十分に出せていなかった。「宝の持ち腐れ」にならないよう、顧客データにもとづく保険やローンなど多様な金融サービスを成長させていく考えだ。
セブン&アイは、金融サービスの強化と連動しながら「リテールメディア」事業の拡大も狙っている。集客力のある店舗やアプリを通じて広告事業を展開するもので、米ウォルマートなどが重要な収益源として育成する。小売業が「One To One 」の個客対応によって成長の壁を乗り越えるための選択肢として世界的に注目が集まっている。
セブン&アイは19年にスマホ決済「セブンペイ」が不正利用事件でサービス停止に追い込まれた苦い経験から、金融事業の遅れにつながった面がある。グループ事業を巡って物言う株主からコンビニ事業への集中を求められてきた経緯もあり、金融事業の再構築で早く成果を出す必要もありそうだ。
BaaSなど止まらない変化の波
小売りの金融事業で最近目立つのは自ら銀行を立ち上げる代わりに、銀行代理業として若い世代などに向けた新たなサービスを生み出すケースだ。デジタル技術の進化が可能にしたBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)と呼ばれる仕組みで、家電量販のヤマダホールディングスや百貨店の高島屋が住信SBIネット銀行と組んで立ち上げている。高島屋は以前からある「友の会」の仕組みを、アプリ上で「スゴ積み」として展開したところ、利用者の平均年齢が20歳近く低下するなど、新たな顧客開拓に成果を上げている。
高島屋では積み立てサービス「スゴ積み」などが使える金融アプリを始めている
海外に目を転じると、リテール金融には大きな変化の波が押し寄せている。アップルが23年春、米国で始めた預金サービスは高金利もあって大きな話題を集めた。人々に親しまれるブランド力に加えて、スマートフォンという生活に不可欠のツールをベースにしているだけに、個客に深く入り込む力は圧倒的だ。
欧州では1990年代後半に、小売り大手の英テスコなどが銀行業に参入し、小売店舗と連動した金融サービスの広がりが注目されてきた。だが欧州でもネットの金融サービスの台頭などで、小売業による銀行は転機を迎えている。
イオンやセブン&アイの金融事業は、消費者の生活に寄り添う発想と便利さの追求で、旧来の金融業界の常識を塗り替えてきた。だが、いまや小売り、金融ともにデジタル化の荒波によって優位性は揺らぎつつある。イノベーションのジレンマを打ち破れる企業かどうか、金融ビジネスが試金石になる。
【機密資格を米欧並みに厳しく、情報漏洩に罰則 政府原案 民間企業「機密の範囲明確に」】
同じ5日の日経速報メールは次のように報じた。
安全保障の機密情報を扱う人を認定する政府の制度案が判明した。機密情報を重要度に応じて2段階に分け、情報漏洩に罰則を設ける。米欧主要国と基準をそろえ、先端技術を扱う日本企業が国際競争力を維持できる環境を整える。
「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」は政府職員や民間人らに情報へのアクセス資格を付与する制度。政府が個人の身辺や民間企業の情報管理体制などを審査し適格性を評価する。
政府は経済安全保障推進法の改正案を2024年の通常国会に提出する。経済界や法律の専門家らでつくる政府の有識者会議を近く再開させ、制度の詳細な設計に入る。
主要7カ国(G7)では日本だけが未整備だ。制度導入により企業は海外企業と衛星や人工知能(AI)など機微を含む次世代技術の共同開発に参加しやすくなったり資格保持を条件にした公共調達の入札に参加できるようになるなどの利点がある。
防衛産業や先端技術を扱う企業には追い風だ。NECの森田隆之社長はかねて「米国との協調には日本でも米国と同レベルの制度が求められるが、個々の企業では不可能。国として整えることで、国際的な共同開発を進めるベースができる」と問題提起していた。
改正案の原案によると、安保に関する機密情報の範囲を「我が国の安全保障に著しい支障を与える情報」と「我が国の安保に支障を及ぼす情報」の2種類に分ける。保全すべき対象として経済制裁に関する分析情報や、宇宙・サイバー分野の重要技術などを想定する。
米国は機密情報の重要度をトップ・シークレット(機密)、シークレット(極秘)、コンフィデンシャル(秘)の3つにランクを分ける。その上でそれぞれにアクセスできる人を審査し資格を与える。
日本政府は米国の3つのランクに対応できるよう、情報を区分する仕組みづくりを進める。他の主要国とも情報共有が可能になるよう調整する。
丸紅経済研究所の今村卓所長は「民間由来の情報を幅広く規制対象にすると、ビジネスに支障が出るおそれがある。政府には何が対象となるのか複数の階層できちんと分けてほしい」と指摘する。防衛事業を扱う企業幹部は「重要情報の幅が焦点になる」と話す。
資格の認定には対象者の身辺調査が必要になる。政府案は身辺調査について「本人が同意した場合のみ実施する」と定め、審査を断った場合に仕事の上で不利な扱いを受けないよう担保すると記した。特定秘密保護法の規定に準じた。
特定秘密の適性評価はスパイ活動との関連や犯罪歴のほか配偶者の国籍なども調査対象となり、プライバシーの侵害を懸念する声が根強い。連合は8月にまとめたセキュリティー・クリアランス導入に関する基本的な考え方で「本人の真の同意と調査に同意しない権利の担保を大前提」とするよう求めていた。
一つの機関が調査を一元的に実施できる仕組みを構築する。高市早苗経済安全保障相は「民間人を幅広く対象にするので、重要な個人情報を責任を持って管理できる組織が必要だ」との認識を示している。
情報の漏洩や不正に取得した場合の罰則に関しては「10年以下の懲役」を軸に検討する。特定秘密保護法や不正競争防止法の規定を参考にした。
制度が整う米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国は機密情報を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」を構成する。日本政府は制度導入によって、これらの国とサイバーセキュリティーなどで連携を深められると期待する。
この間、下記の録画を視聴することができた。 (1)日テレNNNドキュメント「米兵が撮ったナガサキ 孫がたどる戦争の記憶。元兵士を祖父に持つ(大分県玖珠町で英語助手の)トレバー・スレバン氏が祖父の残した原爆投下直後の写真について調べるなかで芽生えた平和への思いとは」9月18日。 (2)BS6報道1930「百年守られた森の行方―神宮外苑再開発を検証。風致地区になぜ高層。ユネスコの諮問機関が計画撤回を求めるわけ」21日。 (3)BS6報道1930「ロシア黒海艦隊“壊滅”か?ウクライナ軍特殊部隊クリミア奪還作戦内幕証言。「一度も撃墜されず」…ウクライナ国産ドロン開発の最前線」27日。 (4)NHKイーテレ「ディープフェイクの衝撃~生成AIの光と影。生成AIの登場で、よりリアルに誰でもフェイク動画・画像がつくれる時代、私たちはどのように真実を見極めていけばいいのか。落合陽一さんとともに考える」28日。 (5)BS1スペシャル 「デジタルアイ 北朝鮮 独裁国家の隠された“リアル” OSINT(オシント)と呼ばれるデジタル調査で世界の真相に迫る第2弾。ミサイル発射を繰り返し、孤立を深める北朝鮮。ベールに包まれた独裁国家の実像は?」10月1日。 (6)BS6報道1930「救済は可能? ジャニーズ新体制発表。「沈黙」を問われたテレビは? 元メンバーが告白「止まらぬ誹謗中傷」の今とは?」2日。 (7)Eテレ「世界サブカルチャー史3「(6)日本 逆説の60-90s 80年代 第2回」3日。
スポンサーサイト