写真展「鳥たちの煌き」

 2月11日(水・祝)は一転して春の陽気となり、三溪園に多くの来園者の姿があった。この日から、内苑にある白雲邸で「高円宮妃殿下写真展 ― 鳥たちの煌き(きらめき) ―」(主催:フォト・ヨコハマ実行委員会)が始まった(会期は2月19日(木)まで9日間)。「フォト・ヨコハマ」は、毎年1月から3月、横浜市内の各所で開催される、写真や映像に関連したイベント事業である。
 会場の白雲邸は、原三溪(1858~1939年)の隠居所として1920(大正9)年に完成、屋寿(やす)夫人と暮らした数寄屋風建築で木造平屋(横浜市指定有形文化財)である。
 1923(大正12)年9月、関東大震災により横浜は壊滅的打撃を受ける。完成3年後の白雲邸は、構造の頑強さに加え、出火もなく、被害がほとんどなかった。震災復興の先頭に立ち奮闘した三溪にとって、ここが唯一の安らぎの場となる。
 オープニングの祝典は2月11日午前10時から、その談話室で行われた。高円宮妃殿下と駐日各国大使・公使夫妻や日本側来賓を、林文子横浜市長、佐藤祐文横浜市会議長、渡辺巧教副市長、中山こずゑ文化観光局長、内田弘保三溪園保勝会理事長らがお迎えする。
 妃殿下は、イギリスに本部のある国際環境NGOの野鳥保護団体「バードライフ・インターナショナル」(1922年創設、会員数は270万人余、アジア部門事務所は東京都新宿区)の名誉総裁を務めており、日本におけるパートナー団体は「日本野鳥の会」である。
 「かながわの探鳥地50選」の一つである三溪園の大池には、いまキンクロハジロ(カモの1種)を主とした鳥たちが群れている。1羽だけいるアオサギは、朝は必ず蓮池の奥の大樹に主のように止まっているが、この日は大池の畔に出張っていた。野鳥の写真を通じて、自然を愛し環境保護の大切さを訴えようとする妃殿下の思いを伝えるには、三溪園は格好の場である。
 林市長の歓迎のあいさつに応えて、妃殿下が、カメラ部に属していた学生時代、露出やシャッター速度等の調整が大変だったと語り、しばらくのブランクの後、殿下の遺品のカメラで鳥の撮影を始めた、鳥は生態系のバロメーター、写真を通じて環境に関心が高まれば嬉しい、と話される。
 邸宅を展示場に使うには、通常のギャラリーでは考えられない苦労があったようである。談話室の20畳、南面する一の間の10畳と二の間の10畳を主に、それぞれ異なる採光と壁面を生かして、約50点の写真パネルが配置された。
 利根川河畔のヨシキリ、知床半島のシマフクロウの幼鳥やオオワシの連作、メジロ等々、大半が日本国内で撮ったものだが、エジプト、ブラジル、アルゼンチン等のものもある。
 大正期の日本家屋の静謐な仄暗さと、生命を謳歌する鳥たちの姿が、思いがけない調和を見せた。「鳥の写真家」妃殿下と「バードウォッチャー」林市長の会話が弾む。
 観ながら思い出した。横浜市立大学にはトンビのつがいが棲んでいて、キャンパス上空を悠々と舞っていた。京都市西京区の国際日本文化研究センター一帯は、10年ほど前までは一面の広野原で、揚げヒバリのさえずりが響いていた。山梨県都留市の都留文科大学学長公舎では、ウグイスの声で目覚めた。冬の笹鳴きから堂々たる節回しへと、変わっていく成長ぶりを楽しんだ……。
 「鳥たちの煌き」展の会期はあとわずか。三溪記念館では「エバレット・ブラウン湿板光画展」(1月30日~3月9日)及び所蔵品展(「春浅し」「太子講」「春告草」)が開催中である。観梅会も始まる。
 多くの来園者に早春の一時を楽しんでいただきたい。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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