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人類最強の敵=新型コロナウイルス(23)

 10月26日(月曜)、臨時国会召集日の日経新聞(朝刊)は、一面トップに経済紙らしからぬ「民主主義 少数派に」の見出しを掲げ、小見出しを「描けぬ豊かさ、危機増幅」とし、世界的な民主主義の後退と非民主主義の伸長のグラフを載せた。

“DEMOCRACY REPORT 2020 V-Dem(Varieties of Democracy): Global Standards, Local Knowledge”に基づく。「一部の加盟国で司法の独立に深刻な懸念が生じている」とした欧州連合(EU)欧州委員会の報告書「法の支配」を引き、とりわけハンガリーに厳しい視線を向け、2010年就任のオルバン首相が議会の3分の2を握る政権与党が憲法等の改正を重ね、政権よりの裁判官を増やして権力を牽制する司法の役割を封じた、とする。

 <独裁>(autocracy)が<民主>(democracy)の対立概念である。グラフは、2018年を境に<民主>と<独裁>が交差し、世界人口の54%が<独裁>政権下に入ったとする。三権分立(立法・司法・行政の三権の分立)の否定を<独裁>と定義している。なおV-Dem Instituteは、2014年にスウェーデンで設立された調査機関。

【首相所信表明と質疑応答】
 この日、菅首相が就任後40日目に所信表明演説を行い、つづいて3日間にわたり衆参両院の代表質問が行われる。首相の所信表明は次の8項目(全文は日経新聞に掲載)。(1)新型コロナウイルス対策と経済の両立、(2)デジタル社会の実現、サプライチェーン、(3)グリーン社会の実現、(4)活力ある地方を創る、(5)新たな人の流れをつくる、(6)安心の社会保障、(7)東日本大震災からの復興、災害対策、(8)外交・安全保障。

 「国民のために働く内閣」を旗印とし、「一つ一つの仕事に真面目にこつこつ取り組む姿勢を示すことが重要だ」とした。内政・外交で実現を目指す政策テーマを漏れなく盛り込むことにこだわり、<仕事師>としての実務色を前面に出した。そのなかには、就任直後から表明してきたデジタル庁の創設や携帯電話料金の引き下げ等が含まれている。アベノミクスなどの「安倍路線」継承を強調しつつ、演説手法では独自な実務色を出した形と言えよう。

 首相演説を巡っては、自民党内から「長期的な戦略や国家観が欠けている」(閣僚経験者)との見解や、個別の政策の積み上げを重視し、目指すべき社会像が見えにくいとの指摘もある。総裁選で敗退した石破茂氏は、菅首相が「それぞれのパーツの積み重ねが国家像になっていくとお考えなのでは」と推測した。

 あえて首相の政治理念というべきものを探せば、<おわりに>で述べた次の一文ではなかろうか。「私が目指す社会像は、<自助・共助・公助>そして<絆>です。自分でできることは、まず自分でやってみる。そして、家族、地域で互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネット(安全網)でお守りする。そうした国民から信頼される政府を目指します。」

 よく考えてみると、これは<目指す社会像>そのものではなく、<目指す社会>への<菅首相流の方法論>に過ぎないようである。いかようにも解釈できる方法論であり、人事権の行使等により<強権的>に進めることも可能となる。<目指す社会像>そのものを明白に示すのが所信表明の本来の役割であろう。

 その一端が示されているのは、(8)外交・安全保障のなかにある幾つかの部分である。例えば、(1)新型コロナウイルスにより人間の安全保障が脅かされており、国際連携の強化が必要。保健分野など途上国を支援するとともに、多国間主義を推進していく、(2)世界経済が低迷し、内向き志向も見られる中、率先して自由で公正な経済圏を広げ、多角的自由貿易体制を維持し、強化していく等々。

 言い換えれば<多国間主義>と<多角的自由貿易体制>の2つに絞られるが、これらは必ずしも理想や理念ではなく、前述と同じ<菅首相流の方法論>であろう。曖昧であるため、いかようにも行使できる可能性がある。

【中共5中全会】
 同じ26日、中国共産党の第19期中央委員会第5回全体会議(中共5中全会)が開かれた(~29日まで)。新型コロナウィルスからの回復が順調に進み、経済もGDPは実質前年比で世界唯一、4.9%成長(7~9月分)した(日経新聞10月19日朝刊)。インフラ投資や輸出がけん引、生産を押し上げるが、内需は伸び悩む。

 5中全会では、2021~25年の経済政策の運営方針を定める<第14次5カ年計画>や2035年までの長期目標を示す。29日(木曜)の最終日、15年後の2035年までの長期目標として「一人当たり国内総生産(GDP)を中等先進国並みにする」との目標を掲げた。

 中国の一人当たりGDPは約100万円であり、目標に掲げる<中等先進国>は約300万円のイタリア・スペインが念頭にあると思われる。個人消費の対GDP比は、日米独の50~70%に対して、中国は40%に満たず、4億人とされる中間所得層を拡大するとした。

 29日(木曜)に発表されたコミュニケには、注目された党指導部の人事について発表がなく、習近平総書記(国家主席)が2022年の党大会以降も続投して3期目(8年前に総書記就任、1期5年)をつとめる意思の表れとの受け止めが拡がる。事実、2年前に憲法を改正して国家主席の任期を撤廃している。トップの長期政権を決めたことが、これからの中国の発展にプラスとなるかマイナスとなるか。

【続3 米大統領選】⇒<続報>、<続報2>は前号(22)にあり。
 26日(日本時間27日)には、米上院本会議はトランプ大統領が連邦最高裁判所判事に指名した保守派のエイミー・バレット氏(48)の人事案を賛成多数で承認し、バレット氏の就任が決まった。最高裁判事団計9人の構成は保守派6人、リベラル派3人となり、保守派の優位が決定的となった。

 今後の最高裁の判断を通じ、中絶や移民政策など、米社会のあり方に大きな影響が及ぶ可能性がある。直近の大統領選との関連では、議会で通過した法案に(民主党の)大統領が署名しても共和党が気に入らなければ、憲法違反として最高裁に訴えることで、全て反故にできる。日本にはない<三権分立>の姿である。

 大統領選の予測が難しい理由の一つが<隠れトランプ>と呼ばれる人たちである。22日(木曜)、文春オンラインは『隠れトランプのアメリカ 』(扶桑社、10月20日刊)の横江公美氏(東洋大学教授)の緊急寄稿を掲載した。主な論点を要約する。

 彼らが表に出てこないのは、「トランプを支持する」と口に出すのをためらわれる空気があるからだ。トランプの言動、人となりが“アメリカの大統領の資質ではない”というのは、アメリカ人の共通認識だ。それでもトランプを支持しているのが<隠れトランプ>支持者。彼らの動向が、今回の大統領選挙の勝敗を決める大きな要素だという。

 そのうえで(1)「<隠れトランプ>は4年前より増えている?」、(2)「<隠れトランプ>とは誰なのか?」の2点について具体例を挙げて述べる。
 まず(1)「<隠れトランプ>は4年前より増えている?」については、前回の大統領選挙より今回の方が<隠れトランプ>は多いのではないかと思われている。それは、トランプのこの4年間の政策実行力によるものだ。…トランプの人種差別的な物言いが注目されるが、政策を一つ一つ検証していくと、…トランプは「自分の支持者のため」の政策をブルドーザーのように実行している。

 具体的には、①レーガン大統領以上の減税パッケージを実現、②1995年までに議会で可決されながらこれまでの大統領が手を付けられなかった在イスラエルのアメリカ大使館のテルアビブからエルサレムへの移転を実現、③公約通りTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からもパリ協定からも離脱、④自動車関税の撤廃基準を厳しくした新NAFTA(北米自由貿易協定)も実現、⑤中国に対して「アメリカの先端技術を盗んでGDP世界一になるのは許せない」と言わんばかりに関税をかけ、⑥中国の「デカップリング(切り離し)」を進め、⑦対中国包囲網を作るべく米日印豪で「インド洋=太平洋」を守る枠組みを形成し、⑧台湾への支援の手も差し伸べる。⑨シェールガス規制も緩和、今やアメリカは世界一の産油国。ガスも石油の価格もアメリカがリーダーシップを握っている。

 さらにトランプ大統領が誕生してから⑩株価は堅調。新型コロナウィルスの感染拡大でパンデミックになっても、アメリカの株価は底堅、⑪失業率も改善の一途、⑫ギャラップ社の世論調査でも2020年9月時点で、55%のアメリカ人が「4年前よりも暮らし向きが良くなった」と回答、しかも54%の人がトランプの経済政策に賛成している。合計すると相当の<成果>である。

 支持者に向けた公約を果たせば果たすほど、その“陽”の部分だけに注目してトランプ支持者は熱狂する。一方で、多数派の「反トランプ」陣営は“陰”の部分への批判を強める――という構図を繰り返してきた。トランプが実現したことを紐解いていくと、再選を見据えてトランプが打ってきた冷静な手立ては怖いほどである。この冷徹な目を持っていなければ、ビジネスマンからテレビ番組を持ち、そのカリスマ性で共和党の大統領に当選することはできなかっただろう。トランプを一般人の物差しでは測ることはできない。トランプの言葉遣いは下品であるが、そこに引っ張られてしまうと、アメリカを見誤ることになる。

 ついで(2)「<隠れトランプ>とは誰なのか?」について見たい。今回も大統領選の鍵を握る<隠れトランプ>とは具体的には、<ミレニアル世代>の時代に、その流れからこぼれ落ちた人々だとみている。トランプは、そこに目をつけている。

 <ミレニアル世代>とは、2000年以降に成人した人々のこと。物心ついた時からパソコンやスマホなどデジタル機器に囲まれ、情報収集はインターネットというよりSNS。コミュニティを大事にし、多様化や個人の自由を重んじ、人々と協力して問題解決に当たることを求める世代。その理想のリーダー像はオバマ前大統領。

 この<ミレニアル世代>の作った社会の流れに乗れないことに自分自身で気がついた人たちが<隠れトランプ>で、…大別して次の3つのタイプに代表される。

(ア)「古き良きアメリカを愛する人々」。その保守思想の中心にあるのが「キリスト教的価値」と「銃」で、ここに共和党の集票マシーンである「コア・トランピアン」が存在する。その中でも、トランプの「外交安保政策」「規制緩和」に賛成している声高に主張しない保守思想を大事にしている人々。

(イ)「BLM運動に不安を持つ人々」 「Black Lives Matter(BLM、黒人の命は大事)」の運動が全米のみならず、世界に広がっている。今年5月にミネアポリスで警官に暴行されたジョージ・フロイトの死は痛ましい。全く罪のない黒人、殺されるほどの罪のない黒人が警察に殺される事件が続いている。あってはならないことだが、自分が住んでいる地域でBLM運動が暴徒化すると、治安上の不安を抱える。トランプはそんな心理を突いて警察と治安の重要性を訴え、<隠れトランプ>を獲得している。

(ウ)「差別主義者と呼ばれたくない人々」 トランプの「物の言い方」が原因で<隠れトランプ>になってしまった人々もいる。<Qアノン>という陰謀史観の集団、人種差別の集団を非難しないトランプの態度は受け入れられない、というアメリカ人は当然ながら多い。一方で、トランピアンは<Qアノン>のシンボル付きのTシャツを平気で着る人もいるし、<Qアノン>を信奉する共和党候補者もいる。バイデンへの激しい攻撃も尋常ではない。戦争で負傷した人を「ルーザー」と言うなど、人間として受け入れられない部分が少なくない。そんな影響から「トランプ支持者だと人種差別主義者だと思われる」と心配する人々が<隠れトランプ>になる。

 トランプは5日で回復すると、2週間目には症状も消え、自己隔離から出てくるまでに回復した。元気さをアピールし、「コロナを恐れるな。俺も治った。治療薬を無料にする」と声高に主張した。コロナの怖さについて身をもって知ったトランプは、むしろ吹っ切れたようにコロナに対して強気になった。治療のために投与されたステロイドの影響でハイになっているのではないかと言われているほどだ。アメリカの報道は一様に、このトランプのコロナ政策が致命傷になりそうだと報じ、実際にトランプは接戦州での支持率をさらに下げている。

 それでも「マッチョなコロナ政策」を選び続けるトランプの狙いは、凡人には計り知れない。感染者が増えることが前提のトランプの政策に、声高に賛成とは言えないが、口では「バイデンの方が安心」と言っても経済最優先と考える人はいる。ここにも<隠れトランプ>が生まれる土壌ができ、選挙情勢を複雑にしている。郵便投票の不正の可能性を理由に最高裁の判決に大統領選挙の結果を委ねることもあり得るかもしれない。
 すこし長くなったが、以上が横江公美氏(東洋大学教授)の<隠れトランプ>に関する緊急寄稿の要約である。世論調査には表れない現況を教えてくれる。
29日(木曜)、アメリカ大統領選挙まであと6日となるなか、民主党のバイデン候補が28日、妻のジル夫人とともに、地元デラウェア州ウィルミントンの投票所を訪れて期日前投票をし、その際の画像をツイッターに投稿した。トランプ大統領も24日に期日前投票をしている。投票の公表は、有権者に投票をうながす狙い。

 フロリダ大学の調査によると、全米で期日前投票を済ませた有権者の数は郵便投票を含めて7500万人に迫る、記録的な数となっており、アメリカメディアは最終的な投票者数は1億5000万人に達し過去最多になると予想している。<隠れトランプ>ならぬ<隠れバイデン>の行方も結果を大きく左右するであろう。集計には時間がかかり、トラブルも多くなる可能性が高い。

【続4 日本学術会議】←<続報>、<続報2>、<続報3>は前号(22)にあり。
 26日(月曜)、菅首相は所信表明演説をした日の晩、NHKのニュースウオッチ9』に出演し、「民間の人も若い人、地方大学を満遍に選んでほしい」などと言い出したとき、有馬嘉男アナが国民への説明が必要と突っ込んだのに対して、首相は答えた。「説明できることとできないことってあるんじゃないでしょうか。105人の人を学術会議が推薦してきたのを政府がいま追認しろと言われているわけですから。そうですよね?」

 相当の剣幕である。有馬アナが「6名の任命を拒否した理由」を国民に説明してほしいと言ったのに対して、首相は「政府がいま追認しろと言われている」とすり替えた上で、それについて「説明できることとできないこと」があると反論した。この論理のすり替えと視聴者(国民)に対する不誠実な態度に唖然とした。

 日本学術会議の活動や役割に関して、意図的か無知によるのか、誤解・曲解が意外に広く流布している。その一つが専門的な立場から意見を表明する方法の区分である。次の7種がある。<「答申>、<回答>、<勧告>、<要望>、<声明>、<提言>、<報告>。<答申>は、読んで字の如く<諮問>があればそれに答えるもので、政府が諮問しなければ<答申>は出てくるはずがない。

 <勧告>は政府に強く実現を求めるもので、余程のことがなければ発せられるものでない。これだけを問題とする一部政治家の発言意図はなにか。

 <報告>は政府や省庁から「審議依頼」を受けてまとめるもので、2007年以降に10件ある。主なものに「生殖補助医療をめぐる諸問題に関する審議依頼について(08年)」、「高レベル放射性廃棄物の処分について(12年)」、「人口縮小社会における野生生物管理のあり方(19年)」、「科学的エビデンスに基づく「スポーツの価値」の普及のあり方(20年)」。

 また<提言>についてはBuzzFeedNews10月9日によると2008年以降、学術会議から321出ている。今年だけで9月末までに「性的マイノリティの権利保障をめざして」、「大学入試における英語試験のあり方について」、「感染症の予防と制御を目指した常置組織の創設について」等83本の<提言>が出された。

 これとの関連で、日本の学術を支える科学者集団の現況について、『ニューズウィーク』誌の2020年10月20日号は特集「科学後退国ニッポン」を組み、このままでは、ノーベル賞受賞者はおろか、科学者自体が日本から消えてしまいそうな状況であると指摘する。

 「論文撤回数ランキング上位10人の半数が日本人──科学への投資を怠ったツケで不正が蔓延し、研究現場が疲弊している」と日本の学術界の闇を指摘、撤回論文の上位1、3、4、6位を日本人研究者が占めていると実名を挙げて指摘、その背景を指摘する(筆者は岩本宣明)。

 日本の研究現場に困窮と疲弊があることは疑いない。日本の研究現場は瀕死の状態にある。その原因は一にも二にも、資金不足である。日本の政府は…未来への投資である科学技術の研究に回すカネがない。その結果、研究者は「競争的資金」の獲得競争に時間を奪われ、大学や研究機関の人員削減で若手研究者は慢性的な就職難に苦しみ、魅力を失った大学院博士課程は空洞化し、日本の大学の世界的評価は下がり続けるという悪循環が起きている。…

 日本学術会議が審議の末に推薦した会員候補105人のうち6人を任命しなかった問題については、「名簿を見ていなかった」と述べた首相が、28日(水曜)の衆院の代表質問には会員の構成に注文をつけ、「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られることも踏まえて、<多様性>を念頭に私が任命権者として判断した」と答える一方、「個別の人事にかんしては言えない」として6人の任命拒否の理由を明かさなかった。逃げ口上の答弁である。

 29日(木曜)、井上科技相が日本学術会議を初めて訪れ、正副会長や部会長と会談、梶田会長が6人の任命拒否の理由を明らかにするよう求めたが、井上科技相は首相が任命権者であり、自分にはその権能がないと繰り返した。こちらも逃げ口上である。

 任命拒否の理由を明らかにしたうえで、日本学術会議のあり方を議して新たな方向を示すことはきわめて大切である。「出身大学や地域、年齢に偏り」があり、<多様性>が必要であれば、これらを正すことも大切である。

 それ以上に大切なのは、科学者自体が日本から消えてしまいそうな状況を直視し、10年後、20年後の日本の学術に対する政府の基本的方針を示すことではないか。この基本方針を示すのが首相の役割であり、各論の議論は学術会議と井上科技相に任せるのが筋である。引き続き各方面の見解表明と世論の監視が要る。

【新型コロナ対策 外国の動き】
 29日(木曜)朝のニュースによれば、フランスのマクロン大統領は28日夜、国民向けにテレビ演説し、10月30日(金曜)から一部の海外領土を除くフランス全土で原則外出を禁止するロックダウンを行うと発表、期間は12月1日(火曜)までの約5週間である。感染第1波の3月中旬に実施されて以来2回目。外出は、自宅から1キロ以内の生活必需品の買い出しなど必要最低限に限られ、飲食店も閉鎖されるが、春のロックダウンとは違い学校(大学を除く)には通学できるとしている。

 ドイツもメルケル首相が飲食店や娯楽施設等の営業を11月2日から禁止、劇場や映画館も閉鎖すると発表した。イタリアも全土で飲食店の夜間営業を制限、また一部地域では夜間の外出を禁止した。スペインは再び非常事態を宣言(来年5月までか)、夜間の外出を禁止した。いずれも医療体制が逼迫、集中治療室(ICU)の患者数が夏に比べて5~10倍に急増している。

 アメリカでは30日、1日当たり新規感染者数が9万9000と過去最多となり、1ヵ月前の2.1倍に増えた。とくに中西部のウィスコンシン州やペンシルベニア州など大統領選の激戦区で拡がり、州など各自治体が市民の経済活動を制限する独自の措置を相次いで導入している。人々の接触リスクを減らすため人数制限を強化、バーやレストランでの屋内飲食を禁止、集会人数も25人以下とする州がある。また外出禁止令(午後10時~朝5時)を出す厳しい州もある。

 31日、英国のジョンソン首相が、11月5日から12月2日まで、イングランドをロックダウンすると宣言した。またオーストリア、ポルトガルも類似の措置を講じた。

【国内のコロナ対策と経済活性化】
 10月26日からの新型コロナウィルスの感染状況を一覧する。前者が全国の感染者(陽性者、カッコ内は重症者)、後者が東京(同左)。
 26日(月曜)  410(162)と102人(29人)
 27日(火曜)  648人(165人)と158人(33人)
 28日(水曜)  731人(166人)と171人(30人)
 29日(木曜)  809人(161人)と221人(29人)
 30日(金曜)  776人(156人)と204人(31人)
 31日(土曜)  877人(161人)と215人(33人)
 11月1日(日曜) 614人(160人)と116人(34人)

 28日(水曜)、厚労省は新型コロナウイルスの特徴や治療などに関する最新の情報をまとめ、近く「10の知識」として公表する方針で、案を取りまとめた。注目すべき点は、重症化したり、死亡したりする割合は以前より低くなっていること、1月~4月と、6月~8月を比べると、重症化した人は9.8%から1.62%に、死亡した人は5.62%から0.96%に低下している。

 29日(木曜)、政府分科会の尾身会長は、会議後の記者会見で海外からの入国制限の緩和について、「水際対策では、海外各国の感染状況の把握が極めて重要で相手国の公表している情報をうのみにするのではなく、大使館などを通じて現地の詳しい情報を収集することが必要だ。また、海外の人が入国する際には日本の感染対策について伝えると同時に入国してからも万が一体調が悪い場合などに相談できるよう専用の窓口やコールセンターをつくるなど、水際と国内での対応を同時に進めていくべきではないか」と述べた。政府はどこまで対処できるか。

 30日(金曜)、政府は、海外出張する日本人などについて、11月から帰国後の2週間待機を免除することを決めた。また中韓など11カ国・地域を対象に、渡航中止勧告と入国拒否の初解除にも踏み切った。一方、欧州などで感染が再拡大するなか、水面下で検討していた新たな緩和の仕組みは見送られた。日本の出入国緩和策は早くも壁にぶつかっている。

 同じ日、茂木外相は、中国(香港、マカオを含む)、韓国、タイ、ベトナム、シンガポール、ブルネイ、オーストラリア、ニュージーランド、台湾の9ヵ国・地域への渡航禁止勧告を解除すると発表した。なお受け入れの可否や条件はそれぞれの国・地域の裁量で決めるため、日本人がすぐに海外旅行に行けるわけではない。

 同じ30日、高感度カメラを使い、横浜スタジアムでイベントの人数制限を緩和するための実証実験が始まった。DeNA対阪神の3連戦で、観客の上限を初日は80%、2日目は90%、3日目に100%とし、混雑状況を把握して、感染防止と人数制限の緩和を確かめ、その結果を見て実施に踏み切るか否かを決める。来年の五輪・パラリンピックを見据えた措置でもある。

 11月1日(日曜)の日経新聞(朝刊)に「重症化リスク <目印>で予測」の記事があった。国立国際医療研究センターは重症化のリスクを知る手掛かりとなる5つのタンパク質、CCL17やIL-6等を見つけた。これらの<目印>(マーカー)を使い、先回りして治療すれば回復が早まる可能性があり、また病床の有効活用も期待できるという。

 新型コロナウィルス等に関する番組を録画で視聴した。(1)NHKスペシャル「パンデミック 激動の世界(4) 問い直される“あなたの仕事”」19月25日。(2)BSスペシャル「Z世代×コロナ」25日。(3)情熱大陸「大坪誠/感染防止! 空中ディスプレイ…非接触の未来を呼ぶ男」25日。(4)NHK総合「夢の本屋をめぐる冒険(2)『中国編 紀行とドラマ』」27日。(5)NHKスペシャル「BS世界のドキュメンタリー「トランプ対バイデン 2020年アメリカの選択」前編が28日、後編が29日。(6)国際報道「2020米大統領選①ミシガン・フロリダ激戦州を行く」29日。(7)BS1スペシャル「シリーズ コロナ危機~アメリカ バーチャル経済の光と影」31日。(8)BS1ワールドニュース特集「新型コロナウィルスに揺れた1週間」(10月26日~30日)11月1日。

 同じ11月1日、<大阪都構想>(大阪市を廃止し、四つの特別区に再編)の賛否を問う2回目(5年前に次ぐ)の住民投票が行われ、1万7000票の僅差で否決された。大阪維新の会(代表は松井大阪市長)は、新型コロナ対策で評価の高い吉村知事を前面に出し、公明党の支持も得たが、住民の理解は得られなかった。
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エンジニア

D特殊鋼さんもリコールの毒消しだったら播磨だとかいって無責任だな。ピストンリングメカニックは泣いておるぞ。
プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
前園長(2012年8月~2023年3月)

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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