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写真展「鳥たちの煌きⅣ」

 横浜市内の各所で開催される写真や映像関連45のイベント事業「フォト・ヨコハマ」の一環として、フォト・ヨコハマ実行委員会主催の高円宮妃殿下写真展<鳥たちの煌きⅣ>が1月16日(木曜)9時から22日(水曜)16時半までの7日間、三溪園内の白雲邸で開かれた。Ⅳとあるように今回が4回目である。

 これまでの写真展について、本ブログで2015年2月14日掲載の写真展「鳥たちの煌き(きらめき)」(初回)、2017年3月3日掲載の「野鳥たちの現在」(<鳥たちの煌きⅢ>展について)と2回紹介した。また後者には三溪園に飛来する野鳥の種類等の観察記録も掲載した。

 2019年2月開催の「にっぽん-大使たちの視線2018-外交官がとらえた明治維新から150年を迎える今のニッポン」(”Meiji 150 years, Japan Transforming –- through Diplomat’s Eyes 2018“)」写真展には、妃殿下も出展・出席され、多くの人が訪れた(2019年2月7日掲載「駐日外交官たちの写真展」参照)。

 妃殿下はイギリスに本部のある国際環境NGOの野鳥保護団体「バードライフ・インターナショナル」(1922年創設、世界122カ国/地域に280万人の会員、アジア部門事務所は東京都新宿区)の名誉総裁を務め、野鳥を通じた自然環境の保護に取り組まれている。日本におけるパートナー団体は「日本野鳥の会」である。

 「かながわの探鳥地50選」の一つである三溪園の大池には、いまキンクロハジロ(カモの一種)を主とした鳥たちが群れている。朝は必ず蓮池の奥の大樹に主のように止まっているアオサギは、午後には大池の畔に出張っていた。野鳥の写真を通じて、自然を愛し環境保護の大切さを訴えようとする妃殿下の思いを伝えるのに、三溪園は格好の場である。

 オープニングの祝典は1月16日(木曜)15時から三溪園内の鶴翔閣で行われた。妃殿下と駐日各国大使・公使夫妻や日本側来賓約80名の方々を、林文子横浜市長、横山正人横浜市会議長、谷田部孝一横浜市会副議長、内田弘保三溪園保勝会理事長をはじめ関係者がお迎えする。

 林市長が、「…妃殿下の写真展<鳥たちの煌き>がこのたび4回目を迎えます。無理をお願いした展示会、鳥たちがみなさまをお招きしています。…自然の素晴らしさ、世界の平和、子どもたちの未来にかける想いを、鳥たちの姿を通して感じ取っていただければ幸いです。…」 一呼吸おいて妃殿下に語りかける。「…5回目があらんことを!」 いつものように日本語についで英語で挨拶された。

 これを受けて妃殿下は、日本語と英語を交互に交え、お一人で同時通訳風に話される。「…4回目の写真展とはプロ写真家にもない珍しいケース、プロのフィールド荒らしと言われつつ、プロのご指導をいただき、進化したカメラ性能の助けを得て、今回の開催に至りました。…いま世界の環境悪化に心を痛めております。最近ではオーストラリアの森林火災で多くの動植物が死滅しつつあります。鳥の視点に寄り添い、環境保護を訴えていきたく思います。…」

 今回の写真展会場は祝典会場の鶴翔閣ではなく、徒歩数分の白雲邸である。鶴翔閣は1902(明治35)年完成の三溪の居所であったが、白雲邸は1920(大正9)年完成の隠居所であった。曇天の穏やかな日、2つの居所を結ぶ道すがらの冬景色も趣がある。

 内苑の御門を抜けると、石畳の路地の左手に、<野の鳥たち 十選>の案内パネル(縦60㎝×横90㎝)と、同サイズの写真の屋外展示(風雨に耐える仕様)が目に飛び込んでくる。

 写真は、手前から順に、空を舞う4羽のアトリ、カンムリカワセミ、滑空する2羽のタンチョウ、フクロウの幼鳥、シマフクロウ、チョウゲンボウ、アカゲラ、2羽のヤンバルクイナ、池に遊ぶオシドリのつがい、ツツドリとヒヨドリ。厳選した傑作選10点である。

 白雲邸の木戸をくぐり展示会場へ。リーフレット「高円宮妃殿下写真展-鳥たちの煌きⅣ」を受取る。A3版(両面)を八つ折りしたポケット・サイズで、日本文と英文の両面記載、全41点の一覧である。

 妃殿下の説明と応じる市長たちの談笑の後ろに参観者の列が動く。初めて聞く鳥の名前にリーフレットを開くと、鳥の名称、サイズ、撮影地等の基本情報に加え、それぞれに2行ほどの添え書きがあった。

 玄関脇の小応接には、①エナガの写真(縦100cm×横130cm)が手前の生け花と調和している。13.5㎝ エナガ科 長野県 につづけて短い添え書きがある(< >で囲った)。 <「ねぇねぇ、知ってる?」と何やらおしゃべり中? 吹き出しを付けて、セリフを書き込みたくなる。> 

 談話室(21畳間)に進む。高さ2メートルほどの衝立で4つに仕切られたコーナーそれぞれに6点ずつ計24点の写真(②~⑦、⑧~⑬、⑭~⑲、⑳~㉕)。写真サイズは縦42㎝×横60㎝と屋外のものより小さいが眼の高さにあり、鳥たちをよく見ることができる。

 ④カラスとノスリ 東京都 ハシブトカラス 56.5cm カラス科、 ノスリ ♂52cm ♀57cm タカ科 <梅林でメジロを撮影中に上空が騒がしくなり、見ると青空バックにこの白黒対決。急いでレンズを向けた。>

 ⑦オオマシコ&アトリ オオマシコ 17.5cm アトリ科、 アトリ16cm アトリ科 埼玉県 <採餌中のオオマシコのメスに接近したアトリ。威嚇され、あわてて方向転換し、飛び去った。>

 ⑮トビとカラス 島根県 トビ ♂59cm ♀69cm タカ科、ハシボソガラス 50cm カラス科 <トビは日本では普通に見られる大型で斑紋が綺麗な猛禽。この個体は、カラスの巣に近づいてしまい、退去を命じられているところ。>

 ㉒ヤンバルクイナ 30cm クイナ科 沖縄県 <沖縄本島北部のやんばるで1981年に発見された固有種。一時、生息数が激減。最近は復活傾向にあり、個体数は約1800羽。>

 ㉔シマエナガ 13.5cm エナガ科 北海道 <「何してるの?」と聞かれている気がする。エナガもとても可愛いが、亜種シマエナガの可愛さは格別>。高い木の枝にとまり下を見ている真っ白な羽毛のシマナガエ、黒い嘴と愛くるしい両目が語りかけてくる。

 談話室を出て廊下の北側の8畳間に㉖から㉛までの6点。サイズは縦90㎝×横120㎝のパネルを6枚(2段×3枚)合わせた三つ折りの屏風仕立て。

 さらに<ニの間>、<一の間>へ進む。一転して低い長机のうえに小ぶり(縦28㎝ 横40㎝)の写真(㉜から㊵まで)9点を置く。顔を挙げると庭の樹木、はるか上方に三重塔を望む巧みな空間構成である。

 ㉝オオルリ 16.5cm ヒタキ科 長野県 <高い梢でさえずるオオルリのオス。ピーリーリーと谷間に響く美しい鳴き声にしばし時間を忘れる。>

 ㉟モズ 20センチ モズ科 長野県 <満開の桃の枝に、一瞬だけ止まってくれた。北海道では夏鳥、東京では冬鳥のイメージ。秋、梢でキチキチキチと高鳴きする。>

 最後の㊶オオルリ(㉝についでオオルリは2例目)は、縦60㎝ 横90㎝の写真を掛け軸に仕立て床の間に飾る。16.5cm ヒタキ科 長野県 <日本や朝鮮半島で繁殖し、タイ、インドネシアなどの東南アジアで越冬する。気象状況が悪く、通常いない森林で出会った。>

 観覧を終えて鶴翔閣へ戻る途中、大池のキンクロハジロの数が少ないのは今年だけの暖冬のせいか、あるいは後戻りできない気象変動のせいかと話題になった。

 鶴翔閣のレセプションでは、林市長と横山横浜市会議長が写真展の感動と意義を語り、ついで歓談が始まる。横におられたアルゼンチン共和国アラン・ベロー大使は三溪園に深い関心を寄せられ、再来を約してくださった。

 そして僧服の瀬川大秀猊下ご一行。真言宗御室派の総本山仁和寺門跡であられる。仁和寺(にんなじ、京都市右京区)は、仁和4(888)年に落成、開基は宇多天皇、皇室とゆかりの深い門跡寺院。国宝の金堂と重要文化財建造物の五重塔・観音堂等8棟があり、兼好法師の「徒然草」でも知られる。

 歓談の中で、私が「寺院の庭園は一般に建物に付属するのが常ですが、三溪園は庭園の中に古寺の建造物を移築した稀な例だと思います。…」と言うと、にこやかに「…仁和寺にもお越しください。…」と応じられた。

 予定時間を少しオーバーして5時過ぎ、冬の空が暗くなって散会となった。

 写真展の会期は7日間。最終日の1月22日(水曜)は気温が急降下するも、氷が張るほどではなく、小雨も1時半には上がった。陽の射す明るい部屋で、鳥たちが躍動、曇天の初日とはまったく異なる印象を受ける。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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