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世界文化遺産・富士山の現状

 数日前、浜松へ行った。東海道側からの富士山は久しぶりである。梅雨の晴れ間の、陽を受けて立つ富士山は、瞬時に蒸し暑さを忘れさせた。
 冬は空気が乾燥しているせいか、東京から遠望する白銀の富士山は、くっきりと神々しい。都留文科大学時代の学長ブログ(このサイトの右欄にあるリンクからアクセスできる)の2014年1月3日「新春によせて」では、富士信仰や浮世絵に描かれる富士山が人々を旅に誘い、広域圏の形成を促したと述べた。
 富士山が世界文化遺産に登録されたのは、昨年の6月22日である。学長ブログの2013年6月30日号では、渡辺豊博教授が申請した学内の重点領域研究費交付金「富士山総合研究に向けての学際的アプローチ研究」に言及した。
申請書には「富士山では日本各地で起こっている多種多様な環境問題が複雑に絡み合い、重層的に重なりあい、解決のための抜本的な解決策を見いだせない状況にある」として、山積する諸課題を10項目挙げ、なかでも次の2点をとくに重要として掲げる。
 1)世界文化遺産登録後に想定される「オーバーユース」への対応策
 2)イコモスから勧告を受けている「包括的管理基本計画」、すなわち管理の一元化、入山料、入山規制、開発の制御
  (富士五湖等)等の具体策の立案。
 この共同研究は、ほんの1年前に始まったばかりというべきか、あるいは早くも1年が過ぎてしまったと愕然とすべきか。
上掲の2項目には期限がついており、2016年2月までに「保全状況報告書」の提出が義務づけられている。「あと2年半ほどしかない」と書いたが、今はもう残り1年半しかない。そして登録後2度目の山開きを、まもなく迎える。
 そこに渡辺さんから新著『富士山の光と影』(清流出版、2014年6月)が届いた。収録のカラー写真には、目を疑う、見るも無残な富士山の環境破壊と汚染が映し出されている。そして「傷だらけの山・富士山を日本人は救えるのか!?」と問い、「富士山を<危機遺産>にしてはならない!」と訴える。
 これまで行政(山梨県と静岡県)が決めたのは、入山料(保全協力金)として五合目以上への登山者から任意で一人1000円を徴収するというものだけである。1年半後に提出する「保全状況報告書」の大半は、まだほとんど手つかずのままにある。
 「保全状況報告書」が期限内に提出されない場合、登録は抹消され、<危機遺産>に格下げされる恐れもある、と警鐘をならす。
 そのうえで第3章「どうしたら、奇跡の山・富士山を守れるのか」では、現場を知り尽くした人ならではの、具体的かつ建設的な提言を示す。例えば富士山庁創設とその一元管理、受益者の税負担と環境保全への再投資、入山規制の具体策等である。
 行政(国と山梨・静岡の両県)の待ったなしの決断が問われている。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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