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図書館ぶらぶら歩き

 学長を退任してから、嬉しいことに図書館を使う機会が増えた。学生時代や学者専業時代にひんぱんに使った図書館への復帰は、スタート地点に立つ新人の気分である。
 用途や気分により、大学図書館、国会図書館、文書館等と巡る。調べる対象がピンポイントに定まっている最終段階と、広範囲の関心事を深化させる助走・中途段階とでは心構えが違うが、どちらも楽しい。
 後者の場合は、自宅のパソコンでOPAC(オンライン目録検索)を使って所蔵状況を事前に確認するほか、一定の調べを済ませてから動く。だが実際には開架式書架に欠本があったり、手にしても内容に落胆することがないわけではない。それでも宝物を掘り当てる確率は年齢とともに高まる気がする。
 疲れると中断し、書架の間を歩き回る。ブラウジング(ぶらぶら歩き)である。こういう時は、まず本そのものの佇まいに目が行く。大学図書館の配架は原則的に十進分類法であり、開架式書架や参考室(目録・事典類を集めた部屋)は見やすく配架されているが、書庫内は通路も狭く、収納優先である。
 先日、参考室で出会ったのが『図説 俳句大歳時記』(全5巻 角川書店)。A4サイズ、各巻ともずっしりと重い。50年前の東京オリンピック開催の昭和39(1964)年4月に春の部が刊行、夏の部は同年8月、秋の部が同年12月、冬の部が翌年6月、最終巻の新年の部は12月と順次刊行、合計約3000ページ。
 モノクロ写真が多く、一部はセピア色で、刊行時期と俳句の長い伝統を思い起こさせる。春の部(立春から立夏の前日まで、陽暦の2、3、4月)は、見開きページに角川源義の「刊行の辞」と写真「田をすく牛」が並ぶ。
 各ページに配された写真のどれもが、半世紀以上も昔の遠い記憶の中にある世相や自然であり、そこへ一気に引き戻される。
 「季節感、倫理観、美意識、ありとあらゆる日本人の感情」や「一時代、一地方の生活感情や生活事情」を「短い文言に集約」した季語を1110語、図説と「音による表現」で示す、と述べる。
 「一地方の…」とは「都の風習」(みやこのてぶり)にとどまらぬ「地域密着」主義の宣言である。地域ごとに異なる風土を大切にするかぎり、「一地方の」季語は尊重されなければならない。
 一方、『新日本大歳時記 カラー版』(講談社 2008年)という本もあり、フルカラーの写真は見応えがある。これから折々に二つを引き比べる機会が増えそうである。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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