変わりつつある世界(11)
【生成AIで企業の7割時短 NECやAGC、人手不足で浸透 主要100社調査】
8月3日の日経速報メールは次のように報じた。
主要企業の7割が生成AI(人工知能)を使って労働時間の削減を計画していることが分かった。日本経済新聞の調査で明らかになった。最大で4割超の時短を見込む企業もある。NECは資料を作る時間が半分になり、AGCもソフトウエア作成の時間が6分の1になった。人手不足が深刻化するなか、AIの活用が企業の競争力を左右し始めた。
国内の主要企業約110社に7月、生成AIの利用についての調査を実施した。94社から回答を得た。AIを使う予定のない企業は1社のみだった。
AIを導入する狙いについて83%の企業が「労働時間の削減」(複数回答)と回答した。「生産性の向上による売り上げ増」が67%、「販管費や人件費など費用削減」が63%で続いた。83%の企業が全部署に導入するとしており、業務をAIで効率化し、社員の働く時間を製品開発や新規事業などより付加価値の高い分野に回したい考えだ。
7割の企業が具体的な労働時間の削減を計画する。1割台の時短が22%、2割台が19%あり、4割台も2%あった。
NECは5月から生成AIの利用を始め、グループ会社を含む国内全社員の4分の1にあたる約2万人が活用する。社内向け資料の作成では平均的な作業時間がこれまでの半分の15分ほどになった。1時間以上かかっていたオンライン会議の議事録をつくる作業も10分程度に短縮できた。
NECは「生成AIの積極活用と安全性を両立する社内ルールを整備している。AIを徹底的に活用して生産性をあげる」と語る。
AGCも6月に本体の全社員約7000人が利用できる体制を整えた。管理部門ではデータ分析用のソフト作成にかかっていた時間が3日から半日になる効果をあげた。AIが社内の研究データを読み込み、新素材を開発する際に課題を指摘し、実験方法の助言をするなどの利用も検討する。
キリンホールディングスも飲料のレシピをAIに学習させることで、新商品の開発時間を短縮できるとみている。
日本企業は海外企業に比べて生産性が低い。日本生産性本部によると、2021年の日本の労働生産性は経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国の中で27位だった。デジタル化が遅れており、AIの活用が進まないと国際競争力が一段と低下しかねない。政府の有識者会議も5月、労働人口の減少を見据えて企業などにAIの導入を促した。
社員への活用についても聞いた。23年末までに5割以上がAIを使えるようにする企業は31%あり、全社員を対象にするとした企業も14%あった。これが25年には66%と28%にそれぞれ倍増する。
ファミリーマートは23年内に5割以上を対象とし、25年に全社員が使えるようにする方向だ。富士フイルムホールディングスも25年までに過半の社員に導入する。
AIの導入には懸念もある。社内規定の整備などルール作りが欠かせない。
懸念で最多だったのが「機密情報の漏洩」(複数回答)で73%、他社の「著作権や商標等の侵害」が66%だった。AIの情報の不確かさを懸念する企業の82%が「人間が精査・確認する」(同)を挙げ、「研修の徹底」が43%で続いた。利用時の社内規定を設けた企業は57%あり、26%が作成中だ。
生成AIを事業化して収益につなげる企業も多い。AIを使った社外向けの製品やサービスを「開発している」「開発の予定がある」と回答した企業は計31%あった。(猪俣里美、AI量子エディター 生川暁)
■回答企業一覧
IHI/旭化成/アサヒグループジャパン/アシックス/味の素/伊藤忠商事/ANAホールディングス/AGC/NEC/NTT/NTTドコモ/MS&ADインシュアランスグループホールディングス/オムロン/花王/鹿島/川崎重工業/関西電力/京セラ/キリンホールディングス/クボタ/KDDI/コマツ/サントリーホールディングス/JR東日本/JFEスチール/JTB/J・フロントリテイリング/塩野義製薬/資生堂/清水建設/シャープ/商船三井/スズキ/住友化学/西武ホールディングス/積水化学工業/積水ハウス/セブン&アイ・ホールディングス/ソフトバンク/SOMPOホールディングス/第一三共/大日本印刷/大和証券グループ本社/大和ハウス工業/高島屋/帝人/電通グループ/東京エレクトロン/東京海上日動火災保険/東京ガス/東芝/東洋エンジニアリング/東洋紡/東レ/凸版印刷/日清製粉グループ本社/ニッスイ/NIPPON EXPRESSホールディングス/日本IBM/日本航空/日本製紙/日本製鉄/日本生命保険/日本たばこ産業/日本郵船/野村ホールディングス/パナソニックホールディングス/日立製作所/ファーストリテイリング/ファミリーマート/富士通/富士フイルムホールディングス/ブリヂストン/ホンダ/マツダ/丸紅/みずほフィナンシャルグループ/三井化学/三井住友フィナンシャルグループ/三井物産/三井不動産/三越伊勢丹ホールディングス/三菱ケミカルグループ/三菱地所/三菱商事/三菱電機/三菱マテリアル/三菱UFJ銀行/村田製作所/ヤマト運輸/楽天グループ/レゾナック/ローソン/ローム
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【高齢社員にジョブ型雇用 三菱UFJ信託、年収100万円増】
同じ3日の日経ニュースメールは次のように報じた。
三菱UFJ信託銀行は60歳以上の再雇用社員を対象に、職務内容を明確に定める「ジョブ型雇用」を導入した。市場部門などでの指導役や対外的に講師を担ったり、現場の営業に精通していたりする人材への適用を想定する。業務内容によって異なるが、年収は100万円ほど上昇する。再雇用社員の活躍の幅を広げる狙いがある。
「シニアジョブコース」という名称でまず70人程度を対象に試験的に導入した。半年ごとに人数を増やして25年に正式導入し、26年までに200人規模に拡大する。最終的に再雇用社員の半分にまで認定をひろげる考えだ。
新制度の適用にあたっては社員ごとに「職務定義書」を作成する。「シニアジョブ(SJ1」と「SJ2」の2種類の枠組みを設け、給与は職務の内容に応じて支払う。再雇用社員になると、給与が再雇用前からおよそ半減の水準になる例もある。新制度の適用を受ければ給与の減少を抑えられる。
三菱UFJ信託には「パートナー嘱託」と呼ぶ再雇用社員が400人ほど在籍する。今後バブル期の大量採用社員が60歳を超え、30年には社員のおよそ10分の1に相当する800人程度まで増加する見通しとなっている。高齢社員が多様な業務に携われる環境づくりが急務になっていた。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
竹内舞子経済産業研究所 コンサルティングフェロー、CCSIアジア太平洋 CEO別の視点
こうした取り組みは企業内の再雇用制度改革という枠を超えて重要だと思います。このような制度が普及して定年後の働き方についても選択肢が広がり、見通しが立つようになればよいと思います。 内閣府の推計では10年もしないうちに65歳以降の人口が生産年齢人口(15~64歳)の半分を越えます。移民を入れないとすれば労働力の減少を補うのは女性と高齢者となります。今後現役世代の採用でもジョブ型が浸透すれば、キャリアを通じて特定の分野のスキルや人脈を構築し続ける人も増えるでしょうし、そうした人材を活用したいと考える企業も増えるでしょう。数十年後を見据えて、定年後の働き方の選択肢を増やすのは必要だと思います。
【上場企業、4?6月純利益25%増 値上げ・生産増・円安】
4日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・上場企業の4?6月期の純利益は2四半期連続の増益に
・売上高純利益率は8.6%と過去最高の21年を上回る
・トヨタ自動車は最高益。航空・鉄道も経済再開が追い風
日本の上場企業の稼ぐ力が上向いている。3日時点で、2023年4?6月期の純利益は前年同期から25%増えた。値上げが進む中、供給網や人流の回復で需要が膨らみ、高単価でも売れる構図が鮮明だ。円安もあり、効率性を示す売上高純利益率は最高水準にある。中国景気の減速など懸念材料が残る中、増益の持続力が焦点になる。
3日までに4?6月期決算を発表した東証プライム上場の3月期企業502社(親子上場の子会社や変則決算など除く)を集計した。社数で全体の4割にあたる。
純利益は約8.3兆円と25%増え、2四半期連続の増益だ。製造業が26%増、非製造業が24%増だった。4?6月期の増益率としては、新型コロナウイルス禍から急回復した21年(2.8倍)を除けば6年ぶりの高水準にある。
純利益率は8.6%と前年同期の4.8%から急伸し、過去最高の21年(7.6%)を上回って推移している。米S&P500種株価指数の構成企業(一部市場予想含む)の9.9%にも近付いてきた。
背景には複数の好材料が重なっていることがある。値上げ浸透に加え、生産・販売の回復、経済再開、前年同期比で7円以上のドル高・円安だ。コロナ禍の合理化で収益体質も強固になっており、資源や市況高騰の一服による商社や海運の苦戦を補った。
けん引するのは自動車だ。トヨタ自動車は23年4?6月期の連結純利益が1.3兆円超と最高になった。販売増や円安などに加え、車種改良に合わせた価格改定(2650億円の増益要因)も貢献した。日米で販売が伸び日産自動車は純利益が2倍強だった。コマツは同業の米キャタピラーに追随して実施した北米での値上げなどで最高益だ。
非製造業では、東京ディズニーリゾートを経営するオリエンタルランドが最高益だった。グッズ販売の好調や有料優先券の定着などで客単価が最高になった。東京電力ホールディングスは値上げで黒字化した。日本航空やANAホールディングスは国内線旅客数がコロナ禍前の9割前後に回復。JR東日本の深沢祐二社長は「今夏は多くの鉄道利用が期待できる」とみる。
今後は増益の持続力が焦点になる。足元は中国経済の回復の遅れといった懸念材料がくすぶっている。実際、村田製作所は中国のスマホ需要の低迷が響き34%減益だった。中島規巨社長は「中国の顧客との面会では需要回復の強さを感じていない」と話す。ファナックも中国の設備投資が弱く、受注回復は「24年以降」と慎重だ。
稼いだお金を成長投資や株主還元、人的資本に惜しみなく使うことも欠かせない。利益増・投資拡大・企業価値向上という好循環を続けることが中長期の投資マネーを呼び込むカギになる。
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【増える図書館、活性化の核に 高知の施設は100万人集客 データで読む地域再生】
同じ4日の日経ニュースメールは次のように報じた。
本の貸し出しが中心だった公立図書館の役割が変貌している。少子化と人口流出が進む地方で、地域活性化を担う施設と位置づけられ、施設数は全国で増加傾向だ。高知市中心部の図書館は年100万人超が訪れるテーマパーク級の集客力を誇り、高知県は人口あたりの貸出冊数を10年間で84%伸ばした。地域外からも人を呼び込もうと各地でアイデアを競っている。
文部科学省の社会教育調査によると、全国の公立図書館(一般社団法人などの運営を含む)は2021年10月1日時点で3394施設と10年間で120施設増えた。多くの自治体が財政難から公共サービスを手掛ける施設の統廃合を進める中で、「00年代以降、図書館は地域の情報センターとしての機能を強化」(明治大学の青柳英治教授)し、幅広い層の住民の利用を促している。
一方、書店の数は急速に減少が続く。出版文化産業振興財団(JPIC)の調査で、書店がない市町村は全国で26%(22年9月時点)にのぼる。公立図書館は「地域の知の拠点」としての役割が一段と増す状況だ。
総事業費約146億円をかけて18年にオープンした高知県・市共同運営の図書館を核とする複合施設「オーテピア」(高知市)は、障害者向け図書館やプラネタリウムがある科学館を併設。県民の知的好奇心に応えようと、これまで利用しなかった層にアプローチし、19年度の来館者は100万人を突破した。蔵書は160万冊超と西日本トップクラスを誇る。
きめ細かなサービスも特徴だ。司書が定期的に教育機関や企業を訪問し、蔵書やデータベースの利用方法を説明するなどして利用者の開拓を続ける。電子書籍の取り扱いも拡充したほか、市町村立図書館への配本の回数を拡大。施設から離れた住民でも県内の最寄り施設でオーテピアの本を読めるようにし、19年度の貸出冊数は106万冊と14年度比で2倍に拡大した。
「雲の上の図書館」は建築家の隈研吾氏が設計を手掛け、観光施設として国内外から注目を集める(高知県梼原町)
同県の山あいにある梼原町は観光客の呼び込みに生かす。町立「雲の上の図書館」は世界的な建築家の隈研吾氏が設計を手掛け、建設費約12億円で18年に開館した。地元産木材をふんだんに使った内外装が特徴。同館をコースに加えたツアーも人気で、週末は台湾の団体客らも目立つ。人口約3000人の同町唯一のホテルは22年の宿泊客が17年比4割以上増えた。
鳥取県立図書館(鳥取市)は起業支援に力を入れる。中小企業診断士らによる創業勉強会を毎月開催し、起業や経営改善など相談内容に応じて適切な専門家らを紹介するサービスを拡充中だ。15年から図書館を活用して起業や商品開発に成功した事例を表彰している。小林隆志館長は「新たなビジネスを生むことで地域の役に立つ姿をみせたい」と意気込む。
地域の特色を全国発信する拠点として活用する例も増える。江戸時代から続く鍛冶技術で知られる新潟県三条市で22年7月に開業した図書館を核とした複合施設「まちやま」は、本だけでなく地元企業が製造に関わった電動ドリルやかんななどを無料で貸し出す全国初のサービス「まちやま道具箱」を6月に始めた。利用者が地元産製品を購入してくれる効果も期待できる。
1人あたりの貸出冊数が全国トップの滋賀県は、1980年ごろから利用を促進しようと選書などを担当する司書の採用・教育に注力してきた。地域それぞれの思いと工夫が詰まった図書館は、子どもから高齢者まで多様な世代を引きつけ、活性化の中核施設として存在感を増している。
(渡部泰成、上林由宇太、グラフィックス 貝瀬周平)
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。広瀬陽子慶応義塾大学総合政策学部 教授
貴重な体験談
知のプラットフォームである図書館が様々な形で住民や他地域からの訪問者を集め、地域の活性化に貢献しているということは大変素晴らしい。 依頼を受けた講演が図書館で行われ、多くの住民の方がいらして下さることも増えた。 また、最近は駅ビルやショッピングモール内に図書館が併設されているケースを多くみる。それも、人々が気軽に図書館に立ち寄れる契機を作ってくれていると言えるだろう。 筆者は、かつて在外研究をしていたフィンランドの図書館に感銘を受けた。図書館機能のみならず、キッチンや音楽施設、工作施設など数多くの施設が併設されており、多くの文化行事や集いも行われていた。 図書館の多様化、実に望ましいと思う。
【福島県伊達市で40度、全国で今年初 気象庁】
5日の日経速報メールは次のように報じた。
日本列島は5日、広い範囲で厳しい暑さとなった。気象庁によると、福島県伊達市で午後2時に40.0度を観測。今年、全国で初めて40度以上を記録した。福井県坂井市で39.5度、兵庫県豊岡市で39.4度、京都府舞鶴市で39.0度となり、それぞれ観測史上1位を更新した。
午後8時時点で35度以上の猛暑日が274地点、30度以上の真夏日が695地点となった。気象庁と環境省は、東北から九州までの多くの都府県で熱中症警戒アラートを発表した。こまめな水分補給やエアコンの適切な使用など熱中症の予防が必要となる。
なお東京の猛暑日は、この日、16日目となった。
【なでしこ8強、再びカウンターさく裂 ノルウェー破る】
同じ5日の日経速報メールは次のように報じた。
サッカーの女子ワールドカップ(W杯)は5日、ニュージーランドのウェリントンなどで決勝トーナメント1回戦が行われ、日本代表「なでしこジャパン」はノルウェー代表を3-1で下し、準々決勝進出を決めた。日本は準優勝した2015年大会以来、2大会ぶり4度目の8強入り。日本時間11日午後4時30分から予定される準々決勝で、米国―スウェーデンの勝者と対戦する。
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8強入りを決定づけるカウンターが、鮮やかにノルウェー陣地を突き破った。1点リードの81分。FW植木理子(日テレ東京V)がおとりで右に流れて生まれた相手守備ラインのスペースに、後ろからMF藤野あおば(日テレ東京V)が縦パスを通す。左からMF宮沢ひなた(マイナビ仙台)が段違いのスピードで駆けつけた。強豪スペインを沈めたのと同じこの必殺技、「ジャパン・スペシャル」とでも称したくなる。
ノルウェーはずいぶんと日本に敬意を払ってきたとみえる。冒頭から最終ラインを5人に増員し、まずは構えて日本の良さを消そうとしてきた。
ラッキーな形で宮沢のクロスが相手ゴールへ吸い込まれて日本は15分に先制したはずが、5分後には追いつかれた。ノルウェーにやられるとしたらこのパターンしかない、という形で。手早く最終ラインの背後にボールを通され、クロスを頭でたたきこまれた。
ノルウェーがなりふり構わずにこうした自分たちの強みに徹していたらどうだっただろうか。負傷から復帰途上のエース、FWヘーゲルベルクが交代で送り込まれた74分から、捨て身の圧力に日本はたじろいだ。ロングボールを放り込まれ、スクランブル状態をつくられ、冷や汗をかかされた。
だが、日本はここで前半と同じ轍(てつ)は踏まなかった。「中盤がボールを受けに下がってしまっていたので、もう少し前にいっていい。そしてサイドを使っていこう」と池田監督はハーフタイムに修正を施していた。ボール保持者へ圧力をかけ直し、守備時の距離感を整える。勝負の分かれ目といえた残り20分ほどの時間帯に、日本は守備のハードワークから素早い攻撃という積み上げてきたサッカーで、相手から逃げ切るのではなく突き放した。
「(ベスト16で敗退した)2019年大会は悔しい思いをしたので、一つ壁を破れた気持ち。チームはいい雰囲気で、全員が同じ方向を向いている」と2点目を決めた清水梨紗(ウェストハム)の笑みがはじける。右の大外にいるはずのその清水の、隙あらばゴール前まで突進してこれる走力。終了間際に1点もののヘディングシュートを片手一本でかき出したGK山下杏也加(INAC神戸)のセーブ力。全員のハードワークを下地に、チームは状況に応じてプレーを遂行し、戦況を切り抜けていく。
相手がリスペクトしてくるのは、それだけ今の日本が充実しているからで、見かけ倒しでないことを日本はまたも示した。負ければ終わりのサドンデスの第1ラウンド、「なでしこ」は紛れもなく勝者だった。
【後記】準々決勝で日本はスウェーデンに破れ、8強にとどまった。21日の決勝戦はスペインがイングランドを破り、初優勝。
【製造業、主要国7割で不振 需要不足「リーマン時」並み】
7日の日経ニュースメールは次のように報じた。
世界的にモノの需要が落ち込んでいる。製造業の景気指数をみると主要29カ国・地域の7割で、企業活動が縮小した。運ぶモノの不足で供給網の需給バランスは崩れており、その度合いは2008年のリーマン・ショック時に匹敵する。消費の中心がモノからサービスに移行したことに加え、中国の内需低迷が響く。サービス業だけで雇用を支えきれるかが焦点となる。
中国南部・広東省の珠江デルタ地区。「世界の工場」と呼ばれるメーカー集積地は新型コロナ禍での混乱を経て、ほぼ正常化した。例えば荷物の揚げ降ろし待ちで港湾に滞船していたコンテナ船。金融情報会社のリフィニティブによると22年3月のピーク時点で70隻超に膨らんだが、直近では20隻前後にとどまる。
日本海事センターによると、アジアから米国向けの海上コンテナ輸送量は23年に入って一時、前年同月比2?3割の減少が続いた。業界内では「販売需要はあるものの、小売りの過剰在庫が解消されず、新たに生産を増やして輸送するほどの強さではない」(コンテナ船大手)との声があった。
世界にインフレ圧力をもたらしたサプライチェーン(供給網)の制約はほぼ解消した。中国によるゼロコロナ政策解除で経済活動が正常化した効果は大きい。製造業にとっては部品の調達など生産工程の改善につながる。ところが足元では供給網正常化を生かし切れていない。実需が不足しているからだ。
市場関係者はニューヨーク連銀が毎月公表する「グローバル・サプライチェーン圧力指数(GSCPI)」に注目する。海上輸送の運賃や主要国の製造業購買担当者景気指数(PMI)の供給網関連項目などを基に算出する。ゼロを標準としてプラス圏では平時よりも供給網が混雑し、供給制約が発生している状況を示す。マイナス圏では需要減で運ぶモノが少なく、供給網の需給バランスが崩れている。
4日公表になった7月のGSCPIはマイナス0.9となり、6カ月連続でゼロを下回った。5月にはリーマン危機後の08年11月につけた最低値(マイナス1.59)に次ぐ水準まで低下した。08?09年当時、米国が景気後退に陥ったほか、金融機関の融資余力が低下し、自動車など耐久消費財や資本財の需要が蒸発した。
新型コロナ禍では巣ごもり消費でモノ需要が急増した。米調査会社S&Pグローバル・コモディティー・インサイツの海運分析・調査ディレクターのリー・デジン氏は足元の需要減退について、新型コロナ収束で「消費パターンがモノから旅行などのサービスへと変化したことが大きい」と指摘する。
先進国中心による中央銀行の金融引き締め効果が作用しているとの指摘もある。コロナ禍で大規模な金融緩和を実施し、資産価格の高騰と過剰な消費を生んだ。加速度的な利上げで信用収縮が起き、需要縮小につながった。
中国の内需も想定より弱い。6月の貿易統計によると輸入額(米ドル建て)は4カ月連続で前年同月を下回り、前月比でも2カ月ぶりに減少に転じた。仏化粧品大手ロレアルのニコラ・イエロニムス最高経営責任者(CEO)は7月の決算会見で中国販売について「コロナ前の水準に戻っていない」と話し、回復の遅れを認めた。
モノ需要の不足は世界的な製造業不振につながっている。
米サプライマネジメント協会(ISM)が公表した7月の米製造業景況感指数は46.4と前月から小幅に改善したものの、好不況の分かれ目となる50を9カ月連続で下回った。同指数が連続して50を下回る期間は08年の金融危機に端を発した景気後退以来、最長記録だった。電子機器や化学製品で受注が低迷している。
S&Pグローバルが算出した7月のグローバル製造業PMIをみると、11カ月連続で中立水準の50を下回った。50割れの期間はリーマン危機直後の景気後退期に次ぐ長さだ。地域別では主要29カ国・地域のうち7割で50を下回り、企業活動は縮小した。特に欧州の不振が目立ち、域内最大のドイツは38.8と中立水準を11.2ポイントも下回った。
独化学大手BASFは23年4?6月期、自動車以外の主要顧客からの需要減に直面した。マーティン・ブルーダーミュラー会長は7月の決算説明会で「金融危機時に(大規模財政出動で)中国が世界を救ったようなことは、年後半に起きない」と話した。同社はこのほど23年通期の業績見通しを引き下げた。
日本の7月の製造業PMIは49.6と2カ月連続で50を下回った。半導体不足解消で自動車生産が持ち直し、減速は比較的緩やかだ。現時点では総じて好調を維持している日本の上場企業も外需減少の影響は避けられない。住宅の配管などに使う塩化ビニール樹脂を手がける信越化学工業は24年3月期、3期ぶりの最終減益を見込む。
新興国・途上国「グローバルサウス」の一角、インドは好調を維持している。内需に加え、バングラデシュなど周辺国の需要を取り込んでいる。メキシコは米国向け輸出企業の「脱中国」の恩恵を受けているようだ。
世界経済や米国経済のけん引役は現在、サービス業だ。雇用も増やしており、すぐさま景気後退に陥るリスクは小さい。ただ需要不足と製造業の不振が長引いた場合、サービス業だけで実体経済を支えきれるのか。景気腰折れ懸念は残る。(コモディティーエディター 浜美佐、五味梨緒奈)
【ソフトバンクG、4~6月も最終赤字 投資事業は黒字転換】
8日の日経ニュースメールは次のように報じた。
ソフトバンクグループ(SBG)が8日発表した2023年4〜6月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が4776億円の赤字(前年同期は3兆1627億円の赤字)だった。最終赤字は3四半期連続。一方、人工知能(AI)関連の新興企業に投資するビジョン・ファンド事業は6四半期ぶりに黒字転換した。
ビジョン・ファンド事業の4〜6月期の税引き前損益は610億円の黒字だった。世界的なハイテク株の上昇を背景に前年同期(2兆3307億円の赤字)から大幅に改善した。韓国のネット通販大手クーパンや東南アジア配車最大手のグラブ・ホールディングスなど保有する上場銘柄の株価上昇が貢献した。
ビジョン・ファンド事業が黒字化した半面、SBGの連結業績の赤字が続いたのは、連結業績では英半導体設計のアームやスマートフォン決済のPayPayといった子会社への投資利益を消去する影響が大きい。SBGが円安に伴う為替差損として4646億円を計上したことも重荷となった。
ビジョン・ファンドとSBGを合算した投資額は23年4〜6月期に18億ドル(約2600億円)となり、4四半期ぶりの規模となった。後藤芳光最高財務責任者(CFO)は8日の決算記者会見で「22年度は投資を事実上ストップしていたが、恐る恐る再開している」と話した。
保有資産の売却など財務の守りを固めた結果、保有株式に対する純有利子負債の割合を示す負債カバー率(LTV)は3月末の11%から6月末で過去最低の8%まで下がり、平時で25%未満に抑える自社基準内に収まっている。後藤CFOは「財務政策において安全な範囲で、投資の反転攻勢を打ち出す」と述べた。
SBGの孫正義会長兼社長も6月の株主総会で「守りは十分にできた。反転攻勢の時期が近づいている」と語っていた。ただし、反転攻勢は必ずしもビジョン・ファンドを通じた大々的な投資再開を意味しているわけではない。
理由は2つある。一つ目は米利上げに伴う資金調達環境の変化だ。24年3月期から27年3月期までの4年間に償還期限を迎える社債は合計で約3兆5000億円。仮に金利が1%上昇し、全額を同じ商品性の社債で借り換えると、4年後には年間300億円超、利払い負担が増える計算になる。
もっとも、後藤CFOは「償還時に外債の調達コストが高ければ円建てに切り替えている。一方、約6兆円ある現預金の8割を占める米ドルは運用利回りが相当高く、(受取利息の上昇で)相殺できる」と説明した。備えは進めているものの、低金利で調達した資金を投資に振り向ける従来のスタイルは構造的に変化を迫られている。
もう一つは傘下の英アームの上場だ。孫氏はアームを核にAI、半導体、ロボティクスを融合した「AI革命」を主導することを目指している。
孫氏は7月に東大で開いたシンポジウムで「(人間の知能を超える)汎用人工知能(AGI)の時代が来たら、水晶玉に未来を聞くかのごとく問題を解決してくれる。日本は一番ど真ん中の光り輝く水晶玉をつくっていかないといけない」と訴えた。
6月末時点でファンド経由で投資したスタートアップ企業は約440社ある。
SBGは昨年以降、ビジョン・ファンド部門の人員を減らしており、投資先の拡大を急ぐ段階から、これらの企業群とアームの連携で相乗効果や企業価値を高める段階に移行しつつある。
【英アーム、9月に米上場 Appleやサムスンが出資へ】
同じ8日の日経速報メールは次のように報じた。
ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計大手アームは9月に米ナスダック市場に上場する方針を固めた。上場と同時に米アップルや韓国サムスン電子など複数の事業会社がアームに投資する。上場時の時価総額は600億ドル(約8兆6000億円)超が見込まれており、2023年で世界最大の新規株式公開(IPO)案件になりそうだ。
4月の準備申請に続き、今年8月中にも米証券取引委員会(SEC)に正式に申請する。その後、ナスダックから上場承認を得る方向だ。アップル、サムスン、米エヌビディア、米インテルなど世界の主要な半導体関連企業がアームの上場と同時期に出資する。
上場は9月中下旬ごろを計画している。想定時価総額は600億ドル超になるとの見方が優勢だ。投資家の需要を探っており、価格のさらなる上振れも目指す。SBGが16年に240億ポンド(当時310億ドル)で買収してから企業価値は倍増している。
20年に本格化した新型コロナウイルス禍を受け世界の中央銀行が金融緩和に動くと、IPOの市場環境は劇的に改善した。英調査会社リフィニティブによると世界のIPOによる資金調達額は21年に4162億ドルと前年比8割増え、00年以降で最大を記録した。
だが22年のロシアによるウクライナ侵攻を機に世界でインフレ圧力が高まり、世界の中銀は急ピッチの利上げを進めてきた。急速な利上げで市場が動揺する局面が続くとIPOによる調達額は22年に前年の3分の1に沈んだが、足元で利上げのペースがやや緩み、投資家が成長企業を高く評価できる環境が戻ってきた。アームの大型上場は、下落が続いたハイテク株が復活してきた象徴といえる。
アーム株は現在、SBGが75%、傘下で世界の人工知能(AI)関連企業に投資するソフトバンク・ビジョン・ファンドが25%を保有している。今回の上場でビジョン・ファンドが保有する株式のうち10〜15%を市場で売却する見通し。
上場と同時にアップルやサムスン、エヌビディア、インテルなどの事業会社にも売却する株式の数%を割り当て、中長期の株主として迎え入れる。中長期で保有することを前提とした投資家を事前に確保し、新規上場時の株価を安定させる狙いがある。
アームに対しては一度買収を提案したエヌビディアをはじめ、世界の半導体関係の事業会社にとっても重要なプレーヤーとの認識が強い。出資関係を保ってアームの経営動向を見極めたいほか、影響力を及ぼしたいとの思惑がある。
アームは英国東部のケンブリッジに本拠を置き、英国の産学連携が生んだ「クラウンジュエル(王冠の宝石)」とも呼ばれる。1990年の創業以来、半導体の「設計図」となるIP(回路設計データ)を開発し、半導体メーカーはアームの設計図をもとに製品をつくる。
アームの設計は電力効率の高さなどで強みを持ち、バッテリーを長持ちさせる必要があるスマートフォン向けでは世界シェアの9割超を握る。
あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」の拡大を追い風に、アームの収益力は高まっている。アームの売上高は22年度に28億ドルと、SBGが買収した16年度から7割近く伸びた。半導体出荷数は累計2500億個を超えた。SBGの孫正義会長兼社長は6月の株主総会で「1兆個までいく」と急成長に期待を示した。
SBGはアームを買収した直後にエンジニアを倍増させ、自動運転など車載向け、住居や工場のIoT機器、クラウドを支えるデータセンターに手を広げてきた。AIの開発で不可欠な画像処理半導体(GPU)など新技術の開発も強化した。エンジニアが社員の半分以上を占めており、上場で調達した資金はさらなる人材獲得に充てる。
SBGは上場後もアーム株の大半の保有を継続し、AI戦略の中核に据える。SBGにとって積年の課題は創業直後から掲げる「群戦略」だ。3月末時点でファンドを通じて資本関係を結んだスタートアップ企業は約440社ある。この企業群を中核のアームと連携させれば、相乗効果で企業価値を高められる可能性がある。
SBGは16年の買収以降、アームを主要グループ企業と位置づけてきた。20年にエヌビディアからの買収提案を受けて一時は400億ドル相当で売却・統合させることで合意した。その後各国規制当局の反発で断念してからは、単独での上場を目指してきた。SBGとアームは同社のIPOについて「コメントできない」としている。(四方雅之、ロンドン=山下晃)
【社債100万→1万円単位に デジタル化で投資しやすく 三菱UFJ信託など】
9日の日経速報メールは次のように報じた。
個人にとって社債投資が身近になる。三菱UFJ信託銀行とNTTデータは2023年度内に1万円単位で社債を売買できるインフラをつくる。ブロックチェーン(分散型台帳)技術で発行や管理にかかるコストを減らし、従来100万円単位の大口取引が主体だった社債に個人も投資しやすくする。個人の投資と企業の資金調達の手段の幅が広がりそうだ。
三菱UFJ信託とNTTデータがつくるのは社債をデジタル化し、ブロックチェーン上で発行・管理するためのインフラだ。売買時の名義変更が自動化されるうえ、社債を販売する証券会社、販売後に社債を管理する銀行など関係者がすべて情報を共有できる。名義変更が増えても、証券会社と銀行の業務量は比例して増えず、名簿管理や発行額、元利金の確認といった照合作業はブロックチェーンで完結する。
現在社債の名義を変更する場合、証券会社と銀行の双方が元利金の支払額など必要な情報を入力する必要がある。チェックを含めて人手がかかる作業が多い。販売を小口化して頻繁に名義変更が発生すると、発行企業が支払う事務コストが膨らみ、コスト倒れになりかねない。そのため、100万円単位の大口取引が主流になっている。
新しいインフラではこうしたコストが削減するため、1万円単位での社債発行がしやすくなる。まず23年度内にインフラを整え、三菱UFJ銀行が利用する。その後、NTTデータの既存のシステムを使う金融機関180行にも導入を進める。社債を販売する証券会社にも、低コストで発行できる企業側の利点をアピールして利用を促す。
小口での社債発行が増えれば、個人投資家の裾野が広がりそうだ。2022年度に国内で発行された社債は総額12兆8947億円。個人向け社債の発行額は約2兆円で過去最高だったが、全体の2割弱にとどまる。高い発行コストを懸念し、ソフトバンクグループなど上位5社で発行額の7割近くを占めている。10万円単位で購入できるのはZホールディングスなど一部に限られる。
22年度の個人向け社債の発行件数は45件だった。「デジタル社債のインフラが整えば、発行件数が2〜3倍に増える可能性がある」(国内シンクタンク)。「個人投資家に手軽な運用を促しやすくなる」(国内証券)など、証券会社側の期待も大きい。
発行企業が購入者にポイントなどの特典を付与するほか、元利払いに円などの法定通貨と価値が連動する「ステーブルコイン」を使い利払いを月単位にするなど、サービスも広げやすい。
デジタル社債を含む「デジタル証券」の発行は2020年施行の改正金融商品取引法で制度としては解禁されていたが、実際に発行・管理するためのインフラが整っていなかった。そのため、国内の発行はSBI証券と丸井グループなど少なく、それぞれ数億円にとどまっていた。
デジタル社債が普及して個人も投資しやすくなれば、企業にとっても資金調達の手段が広がることになる。個人向け債の募集では、全国に支店網をもち富裕層への接点が多い大手証券が中心的な役割を果たしてきた。今後若年層などに投資家の裾野が広がれば、ネット証券などが引き受けを増やすことも考えられる。企業はコストや販売チャネルなど、証券会社の特性に応じて引き受け先を選びやすくなることも期待できる。
米国の20分の1程度にとどまる日本の社債市場の活性化につながる可能性がある。米国では現地のセキュリタイズ社が手掛けるデジタル証券の発行インフラが普及しつつある。ドイツでも法改正に伴って製造業大手のシーメンスなどデジタル証券の発行が相次いだ。ただ、本格的な普及まではまだ手探りの段階だ。
三菱UFJ信託は約1000億円のデジタル証券市場の8割強のシェアをにぎる。NTTデータは社債発行を受託する金融機関向けのシステムで95%のシェアをもつ。
【米国、対中投資を厳しく制限 半導体・AIで大統領令 資金の流れ分断、軍事転用に歯止め】
10日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・米国企業や個人の対中投資を広範に制限へ
・半導体・量子・AI分野で軍事転用封じる狙い
・米国の対中規制一段と。資金の流れにも網
【ワシントン=飛田臨太郎】米政府は9日、米国の企業・個人による中国への投資を規制する新制度を導入すると発表した。先端半導体や人工知能(AI)、量子技術を対象にする。政府に届け出を義務付け、中国の軍事開発などに結びつく案件は禁じる。米国の対中規制がモノだけでなく、カネの流れにまで発展した。
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M&A(合併・買収)やプライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、合弁事業などによる中国への新規投資を対象にする。米国内だけでなく、全世界の米国人に適用する。
市場への混乱を抑えるため、上場投資信託(ETF)や公募証券、米国の親会社から子会社への資金移動などは除外する方向で検討している。
半導体はスーパーコンピューターなどの高度技術の開発につながる先端分野は投資を禁じる。比較的、先端ではない分野でも届け出を義務付ける。先端半導体は2022年10月に人材も含めて輸出禁止措置を導入した。モノやヒトに加えて、カネの流れも制限する。
量子技術は原則認めない見通しだ。AIは軍事技術やスパイ活動に使用されうる技術が届け出の対象になる。投資禁止も検討する。
バイデン米大統領が大統領令に署名した。新制度は米財務省が米商務省と協議しながら運営する。財務省は調査する権限を持ち、違反した企業・個人に罰則を科す。45日間、産業界から意見を募った上で決定する。
米政府には外国企業からの国内投資を審査する仕組みがある。省庁横断の対米外国投資委員会(CFIUS)が届け出を精査し、安全保障上の脅威とみなせば阻止する。
対外投資では広範な分野を対象に規制する仕組みは初めて。中国の軍事関連の特定企業を対象に株式投資を禁じる措置はトランプ前政権から導入している。
法律事務所エイキン・ガンプ・ストラウス・ハワー・アンド・フェルドによると、当局が対外投資を審査する権限を持つのは台湾などにとどまる。世界最大の経済大国である米国が資本移動を規制するのは極めて異例だ。
バイデン氏は連邦議会に書簡を出し「(中国は)無形の利益を含む米国からの対外投資を悪用している」と述べた。「軍事的優位性を獲得する目的で、世界の最先端技術を取得・転用し、民間部門と軍事部門の壁をなくしている」と指摘した。
米国は主要7カ国(G7)などの同盟国に同様の措置を創設するよう求める。欧州連合(EU)は対中国を念頭に、先端技術に関する域内企業の対外投資規制を検討中だ。日本政府も判断が迫られる。
駐米中国大使館の報道官は日本経済新聞に「繰り返し深い懸念を表明しているにもかかわらず、米国は新たな投資規制に踏み切った。中国は非常に失望している」と述べた。「中国は情勢を注視し、我々の権利と利益をしっかりと守っていく」と強調した。
【生成AI学習データ、事業者に開示指針 政府が骨子案】
11日の日経特報メールは報じた。
政府が年内にまとめる人工知能(AI)の事業者向け指針の骨子案が11日、分かった。開発から活用の5段階で企業が守るべきルールを示す。生成AIがどんなデータを学習したかの開示などを求める。産業競争力向上につながるAIの適切な利用に向け、ルールを設けて透明性を高める。
急速に進化するAIを巡るルールづくりは国際的に検討が進む。欧州連合(EU)は開発者から利用者まで各主体が果たす責務を法律で厳しく定める方針だ。米国は米グーグルなどの開発企業7社が自主的な基準をつくる。
日本はAIによる差別を防ぐといった基本的なルールを指針で定め、企業に順守を求める。AIの開発・利用を促し、生産性向上や競争力の強化をめざす。
経済産業省と総務省が100人ほどの有識者と内容を詰める。幅広い分野で参照できるガイドラインを想定している。生成AIは技術の発展が速いため、政府や有識者は法律による厳格な規制をつくることに消極的だ。
指針に法的拘束力はなく、罰則なども設けない。事業者が開発や利活用時に守る基準となる。指針に準拠しているかを認証する仕組みづくりや、政府が公共入札の条件とすることも将来的に想定される。
骨子案は大きく2つの柱で構成する。
一つ目は事業者が共通で守るルールだ。生成AIが生む誤情報や差別のリスクを知り、法制度を守って人権にも配慮したサービスづくりを原則にする。経営層が関与して企業内でリスク管理体制を整えることも提言する。
もう一つは事業者の種類に応じた留意点だ。
企業を①生成AI「基盤モデル」の開発者、②AIにデータを学習させる事業者、③システム開発者、④サービス提供者、⑤AIサービスを使う企業――の5つに分類する。
開発や学習を担う事業者には透明性を確保してもらう。AIの機能や目的、リスクのほか、どのような学習データを読み込ませたのかなどのデータ収集方法を説明できるよう促す。
企業は学習データの把握や開示に向けて、記録をとったり管理体制を構築したりすることが必要になる可能性がある。一方で、指針に沿った対応をすれば製品やサービスの信用力につながり、商機が広がることも考えられる。
政府は透明性が保たれているかを外部監査によって確認する仕組みも検討する。
生成AIの元となる基盤モデルは、インターネット上の公開データを学習しているとされる。ウィキペディアや公開された論文・特許文書、ブログなど多様なデータを対象にしているもようだ。
学ぶデータに偏りがあれば生成AIが生み出すコンテンツにも反映され、人種差別など社会に深刻な悪影響を及ぼしかねない。偏りがなく正しいデータを使っているかは、サービス提供者らが採否を決める際の判断要素になり、問題が起きた時の検証材料にもなる。
対話アプリなど生成AIを使ったサービスの開発者や利用者には安全性の確保を要求する。
生成AIを組み込んだソフトが不適切なコンテンツを生んだり、差別的な判断をしたりしないかを事前に把握させる。犯罪への悪用の可能性や、機密情報などデータ管理体制が十分かもチェックさせる。
顧客に説明責任を果たすため、米国とEUは生成AIが作成したコンテンツに「AI製」と明記するルールを検討する。日本の骨子案でも、製品・サービスやコンテンツに「AIを使っていること」を明記させる手法を議論すると盛り込んだ。(長尾里穂、デジタル政策エディター 八十島綾平、広沢まゆみ)
【年金世帯の消費シェア倍増、4割に デフレ脱却を左右】
12日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・国内の消費支出は65歳以上の世帯が4割
・年金暮らし世帯がGDPの15%を左右
・高齢者の消費活性化がデフレ脱却と連動
賃上げが30年ぶりの高水準となり、消費の押し上げ効果への期待が高まるなか、高齢化社会ならではの課題が浮かび上がってきた。国内の消費支出は65歳以上世帯が4割を占め、年金暮らしの世帯が国内総生産(GDP)の15%に影響する。物価高で賃上げが進んでも年金世帯は恩恵を受けにくい。高齢者の消費活性化がデフレ脱却を左右する。
「将来を考えるとなかなか思い切ってお金を使えない」。横浜市の70代の男性はこう話す。孫へのプレゼントなどには財布のひもは緩むが、大きな買い物は控えがちだ。
消費支出に占める高齢者の存在感は高まっている。世帯主が65歳以上の世帯の2022年の1カ月平均の支出は21万1780円だった。全体に占める割合は約39%になる。少子高齢化に伴い、20年前の約23%からほぼ倍になった。
団塊世代の65歳の到達が一巡したことなどから、10年代後半から頭打ち傾向にあるものの、団塊ジュニア世代が高齢者になる30年代からは伸びが再加速する可能性がある。
持ち家を借家とみなした場合に想定される家賃を除いた消費額をもとに第一生命経済研究所の星野卓也氏が試算したところ、年金暮らしと考えられる平均年齢74.5歳の無職世帯の消費額は22年に33%を占めた。
日本の22年の名目GDPの実額は556兆円で、5割を個人消費が占める。GDP全体の15%程度を年金世帯の消費が担っていることになる。
消費者物価指数は生鮮食品を除く総合の上昇率が6月まで10カ月連続で3%を超えた。今年の春季労使交渉の賃上げ率は連合の最終集計で3.58%と30年ぶりの水準だ。ただ賃上げの恩恵は年金世帯には及ばず、物価高で年金支給額は実質的に減る。
22年の物価上昇などを受け、既に年金を受け取っている68歳以上の人は23年度の支給額が前年度比1.9%増と、3年ぶりに増える。物価の伸び以上に年金額が増えない仕組みになっており、2.5%の物価上昇率を加味すると実質的にマイナス圏に沈む。
日本総合研究所の西岡慎一氏は今後、物価が2%伸びても給付を抑制する「マクロ経済スライド」の発動で受給済みの人の年金の伸びは1%程度にとどまると試算する。この場合、60歳以上で無職の世帯の消費は0.2ポイント押し下げられるという。
一方で高齢世帯は金融資産が多い。日銀の資金循環統計によると23年3月末の家計の金融資産は2043兆円と、過去最高だった。19年の全国家計構造調査では、65歳以上の無職世帯の夫婦の金融資産は1915万円で、全世帯平均より636万円も多い。
65歳以上世帯の金融資産の7割弱は現預金だ。物価高では現預金の価値が目減りする。今年は日経平均株価がバブル崩壊後最高値となるなど株高で「貯蓄から投資」の機運がある。多くの人が一定の知識を持って適切に資産形成できれば支えになりうる。
問題は将来の不安からお金を使おうとする意欲がそがれていることだ。生きている間に必要になる生活費や医療費が見通しにくいと手元の資産を使って積極的に消費しようという気持ちになりにくい。
人口に占める65歳以上の比率は20年時点で日本が28.6%と突出する。ドイツが21.7%、米国16.6%、韓国15.8%だ。そもそも米国に比べ日本は消費意欲が弱い。
適切に資産形成したり、ライフスタイルにあわせながら可能な範囲で働き続けたりと解はいくつもある。消費のボリュームゾーンとなった高齢者が過度に不安にならずに消費できる前向きな社会観をつくれるか。需要不足を脱しきれない日本がデフレに後戻りしないためのポイントの一つになる。(広瀬洋平、グラフィックス 佐藤綾香、映像 箕輪将人)
【外資の中国投資最少 4〜6月87%減、米との対立激化懸念】
同じ12日の日経特報メールは報じた。
【北京=川手伊織】外資による中国投資の減少が止まらない。4〜6月の対中直接投資は確認できる1998年以降で最少となった。ハイテク分野をめぐる米中対立への懸念に加え、中国の対外開放への疑念が背景にある。外資離れによるデカップリング(経済分断)が進めば、中国だけでなく世界の景気にも影を落としかねない。
中国国家外貨管理局によると、外国企業が4〜6月に中国で工場建設などに投じた対内直接投資は49億ドル(約7100億円)だった。前年同期と比べた減少率は87%と過去最大となった。
中国への直接投資は2022年4〜6月以降、5割を超す大幅な落ち込みが続く。22年は上海のロックダウン(都市封鎖)などの「ゼロコロナ」政策で外資が先行き不透明感を強め、投資が伸び悩む一因となった。
中国政府は23年1月にゼロコロナ政策を撤回。経済活動は正常化したが海外からの直接投資は減り続けた。中国商務省によると、外国企業が23年1〜6月に再投資を含めて実際に投じた資金(人民元建て)は前年同期より2.7%少なかった。
米中対立の激化が企業の投資計画に影響を与えている。中国米国商会は22年秋、約320の会員企業に、中国市場における事業リスクを聞いた。最も多かった 回答が「米中関係の緊張」で、66%の企業が言及した。
米国は友好国とサプライチェーン(供給網)を構築する「フレンドショアリング」を進める。米政府は9日、半導体や人工知能(AI)の分野で対中投資の規制強化を発表。合弁事業による新規投資も対象で、投資がさらに細る可能性がある。
中国の対外開放姿勢への疑念も、対中投資に影響している。中国米国商会が「今後3年間、さらに対外開放が進むという確信があるか」と聞いたところ「ある」との 回答は34%だった。61%だった2年前から低下した。
第一生命経済研究所の西浜徹・主席エコノミストは「改正反スパイ法の影響で貿易や投資が制限されるとの懸念が強まっている」と指摘する。スパイ行為の摘発対象を広げた同法は7月に施行した。外資企業には「いつ自社の社員が標的になるか分からない」との疑心暗鬼が広がっている。
ゼロコロナ政策後も中国経済は盛り上がりを欠く。成長をけん引してきた不動産市場が構造的な調整局面に入り、住宅など民間の資本形成は伸びにくい。労働力人口の減少も成長を下押しする。
中国は半導体産業などで自前の供給網の構築を目指すが、必要な装置や部品の海外調達が滞っている。技術革新や生産性向上のペースが落ちれば、中国経済の停滞が想定以上に長引きかねない。世界第2位の経済大国の成長鈍化は、世界経済にとっても重荷になる。
【EV生産「脱中国」も難題 米供給網、環境・人権指標6割悪化 分断・供給網 悩める新秩序(上)】
14日の日経ニュースメールは次のように報じた。
米中対立の激化を受けて世界のサプライチェーン(供給網)から中国を切り離す動きが進む。日米は友好国だけで原料や部品の調達を完結する新たな供給網の整備を急ぐが、製品のコストだけでなく、限られた資源の囲い込みによって環境や人権のリスクも高まることがわかった。脱中国が生む新秩序のひずみに備えはあるか。
【分断・供給網㊥㊦】
•日米友好国に中国の影 タイやメキシコ、牙城に揺らぎ
•世界でネット遮断常態化、損失3兆円 物流停止やEC破綻
世界の自動車産業のものづくりを一変する可能性のある法律が4月、米国で導入された。
電気自動車(EV)を北米で組み立て、電池部品の調達比率を50%以上などにすると1台あたり最大7500ドル(約100万円)の税額控除が受けられる。狙いは中国の排除だ。2029年には同100%にする必要がある。中国の部品を減らし、自国にEV産業を囲い込む。世界の分断を象徴する新法だ。
「法律に対応して柔軟に供給網を変えられるか。自動車メーカーの生死を左右する」。日産自動車の幹部は身構える。
日本経済新聞は九州大学と共同で米国製EVの供給網について環境や人権に関する28項目を調査した。分析には同大発のスタートアップ、aiESG(アイエスジー、福岡市)の人工知能(AI)を活用したシステムを使った。新法の対応によって6割にあたる16項目の指標が22年より30年に悪化することがわかった。
二酸化炭素(CO2)の排出量は14%減るものの、大気汚染につながる二酸化硫黄(SO2)は17%、粒子状物質「PM10」も2%それぞれ増える。人権関連では低賃金労働や児童労働のリスクなど10項目中、7項目が悪化する。
調査では22年に5割弱とみられる中国からの電池関連の調達を新法に基づいて30年時点でゼロとし、メキシコなどからの比率を増やした。補助金を得るには電池に使うリチウムなどの鉱物も自由貿易協定(FTA)締結国と日本からの輸入に限る必要がある。リスクが高まる原因は供給網の川上に潜む。
南米は対策遅れ
精製したリチウムの輸出で世界首位のチリ。シェアは21年時点で42%あり、2位の中国(37%)を引き離す。米とFTAを結んでおり、EV向け主要原料の供給地として脱中国のカギを握る。北米向けの輸出が急増する見込みだが、一部の環境への取り組みは中国よりも遅れている。
米エール大学の調査でチリと中国の環境指標を比べると「大気汚染物質の排出」でチリは世界153位。中国の91位を大きく下回る。EVのモーターなどに使う銅で世界2位のペルーも135位だ。九州大学の関大吉特任助教は「中国は環境関連装置の投資を強化してきた。米国のFTA締結国の多い南米は設備の更新に向けた投資が遅れている」と指摘する。
米ロードアイランド大学の調査では、児童労働など一部の人権関連の項目でメキシコやペルーなど中南米の対策は中国に比べて十分ではない。特にメキシコでは死亡事故など労働災害に課題がある。国際労働機関(ILO)によるとメキシコの労災リスクは世界5位だった。
米国は世界2位の巨大車市場だ。一方でEVの要である電池は中国企業が世界シェアの6割を抑える。車大手は中国以外から電池や部品を確保するため、供給網の見直しを急ピッチで進める。トヨタ自動車は約59億ドル(約8200億円)を投じて米国に電池工場を設ける。
世界貿易機関(WTO)によると、ブロック化による供給網の目詰まりで世界の生産額の5%にあたる5兆ドル弱が失われる。
原料調達まで可視化
重荷はコストだけではない。環境や人権は利益や品質などとともに最重要の経営目標として企業が対策を競い合う。ブロック化でこの流れが逆回転しかねない。英シェルによれば分断でイノベーションが停滞し2100年の世界の平均気温が現在より2.2度上がる。主要国の目標より温暖化が進むと警鐘を鳴らす。
ロシアのウクライナ侵攻は各国に経済安全保障の重要性を改めて認識させた。中国が覇権主義を強めるなか、友好国に供給網を再構築する動きは避けられない。企業は脱中国に向けて供給網の見直しに動くが、経済安保以外の課題も多い。供給網を末端まで把握し、人権や環境のリスクをまず確認する必要がある。
ホンダや日産など世界約120社は電池の製造過程の情報を記録するデータベースづくりを進める。原料の産出地や人権への対応状況を可視化する動きだ。ブリヂストンもタイヤの原料のゴム農園の監査を始めた。
原料の確保まで何重にも企業が連なる供給網の全容を把握することは容易ではない。取り組みは緒に就いたばかりだ。ブロック化のひずみに目をつぶらず、世界の新秩序の中で成長を目指す覚悟が企業に問われている。
調査の概要
九州大学発のスタートアップ、aiESG(アイエスジー、福岡市)が開発したサプライチェーン(供給網)の分析システムを使って調査した。同社が人工知能(AI)を用いて製品ごとに環境・人権関連の影響度を推計した。主要国や国際機関、人権関連の非政府組織(NGO)など約200の統計を用いた。
環境・人権関連で特に重要な28項目を2022年と30年で比較した。電池関連の調達比率はデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの林力一氏の試算を基にした。環境では二酸化炭素(CO2)や大気汚染物質の排出量、工業用水の使用量を分析。人権では児童労働や強制労働、労働災害が起こる可能性のある時間を「リスクアワー」としてそれぞれ算出した。
【コンビニ大手出店数ピークの3割 22年度、賃料増も重荷】
15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
日本経済新聞社が実施した2022年度のコンビニエンスストア調査で、セブン―イレブン・ジャパンなど大手3社の新規出店数は前の年度比21%減の1040店舗とピークの3割の水準だった。市場の伸びが鈍化する中、賃料などの費用も膨らみ、各社は1店舗あたりの収益向上を優先する姿勢を強めている。(詳細を16日付日経MJに)
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大手3社の出店数はセブンイレブンが前の年度比6%減の625店舗、ファミリーマートが10%増の187店舗、ローソンが53%減の228店舗だった。ローソンは21年度にポプラなどから一部店舗を転換した反動が出たほか、「首都圏で賃料の水準が上がり、店舗の質と採算性を重視した」(同社)ことから出店数が大きく減った。
不動産サービス大手のアットホームによると、22年度下期の50坪(1坪は3.3平方㍍)以下の貸店舗の1坪あたり募集賃料は、新宿など東京9エリアの1階部分で前年同期比1.7%増の2万5635円だった。名古屋・栄や大阪・梅田などと共に上昇傾向にある。
3社合計の22年度の新規出店数はピークの13年度の3732店舗から約7割減り、比較可能な07年度以降で最低だった。国内のコンビニ店舗数は約6万店に達し、市場に飽和感が強まっていることに加えて、食品などを強化するドラッグストアとの競争も激化し、出店余地が狭まっている。
一時期はそれぞれ年1000店超の出店を続けてきた3社の姿勢は変わっている。23年度の出店計画は、セブンイレブンが前年度比6%減の585店舗、ローソンが23%増の280店舗にとどまる。ファミマは回答しなかった。
こうした中で各社が力を入れるのが1店舗あたりの収益向上だ。セブンイレブンは特定の地域にちなんだ商品を販売する「地域フェア」で高単価の商品を伸ばし、22年度の1店舗あたりの売上高(全店平均日販)は前の年度比3.7%増の67万円。ファミマは飲料や衣料品などプライベートブランド(PB)商品の拡充で日販を押し上げた。
大手3社の22年度の全店売上高は11兆433億円だった。会計基準の違いを考慮せずに単純比較した場合、4%増だった。既存店のてこ入れ策が売上高を押し上げた。
新型コロナウイルス禍からの経済正常化で人件費が上昇し、人手の確保も難しくなる中で各社は省人化投資も進めている。ファミマは24年度までに飲料を自動で陳列棚に補充するロボットを300店舗に導入する。店員の作業がほぼ不要となり、店舗での作業時間を1日あたり2割程度削減できるとみている。
ローソンは23年度にもフランチャイズチェーン加盟店の商品発注を支援する人工知能(AI)システムを刷新し、全店に順次導入していく。発注量の分析に使う天候や顧客などのデータを増やし、店舗ごとの予測精度を上げて欠品や過剰発注などを減らす。
大手3社にミニストップや山崎製パン(デイリーヤマザキ)などを加えたコンビニ主要8社の22年度末の店舗数は前の年度比微減の5万7770店舗と3年ぶりに前年度実績を下回った。一方、日本チェーンドラッグストア協会(東京・千代田)によると、ドラッグストアの店舗数は22年度末で前の年度末比2%増の2万2084店。5年前に比べ1割増えた。
【対中輸出8カ月連続マイナス 7月13.4%減、経済減速響く】
17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
財務省が17日に発表した7月の貿易統計速報によると、中国への輸出額は1兆5433億円で前年同月比で13.4%の減少となった。減少は8カ月連続だ。日本にとって米国と並ぶ最大の輸出先である中国の景気が減速し、日本の貿易収支が黒字基調にならない一因となっている。今後、米中対立や半導体分野の輸出規制の影響が鮮明に出る懸念もある。
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中国では不動産不況の長期化に伴い、実体経済にも悪影響がおよび始めている。中国国家統計局は2割超で高止まりする若年失業率の公表を一時停止すると発表した。工業生産の伸びも鈍化した。日本や世界の成長率を押し下げるリスクが強まっている。
7月の日本全体の貿易収支は787億円の赤字だった。赤字幅は94.5%減少したものの、黒字に転換した6月に続かず2カ月ぶりの赤字となった。
資源高が一服し、輸入は13.5%減の8兆8036億円だった。輸出は0.3%減の8兆7249億円で、29カ月ぶりに前年同月比で減少した。半導体の不足が緩和した自動車の輸出が28.2%増と全体を押し上げたものの、中国向けの輸出が減って足を引っ張る構図となっている。
中国向けの輸出額を品目別にみると、自動車や部品を含む輸送用機器は24.6%減の1388億円。半導体など電子部品は16.8%減の1140億円だった。プラスチックなど化学製品は8.7%減の2631億円。鉄鋼や非鉄金属も減少で、軒並み前年同月を割った。
中国との貿易をめぐっては米中対立に伴う不透明感も強い。米国は22年10月に半導体の先端技術・製造装置の輸出を禁じた。日本政府も23年7月に先端半導体の製造装置などを規制対象に加え、事実上足並みをそろえた。米政府は8月、米企業による中国投資を規制する新たな制度を導入することも発表した。
こうした情勢が日本からの輸出の減少につながっているのか、これから表れるのかは、統計上はまだはっきりしない。7月の日本の半導体製造装置の中国への輸出額は前年同月比13.7%の増加だった。
第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストは中国への輸出額の減少について「米中対立を受け、中国に依存していたサプライチェーン(供給網)の多様化を進める企業活動の影響が出ている可能性がある」と指摘している。
【積水化学「曲がる太陽電池」30年までに量産 中国勢追う】
同じ17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
積水化学工業は2030年までに次世代の太陽電池「ペロブスカイト型」の量産に乗り出す。軽くて折り曲げられる同電池では中国勢が量産で先行するが、積水化学は強みとされる耐久性を生かして屋外での需要を開拓し、中国勢を追い上げる。
ペロブスカイト電池は太陽光パネルで主流のシリコン製と比べ、重さは10分の1程度と軽く、折り曲げやすい。ただ、水分に弱く耐久性に課題があり、現在ではスマートフォン向けなど用途の広がりに欠ける。積水化学は液晶向け封止材などの技術を応用し、液体や気体が内部に入り込まないよう工夫。10年程度の耐久性を実現している。
100億円以上を投じて製造設備を新設し、30年時点で年数十万平方メートルのペロブスカイト型太陽電池を生産する。発電量は数十メガワット。フィルムに結晶の膜を塗布しロール状に巻いて連続生産する。
すでに30センチメートル幅のフィルムでエネルギー変換効率15%を達成した。シリコン型の20%以上に及ばないが、技術開発を進めて変換効率をさらに高めていく。より効率の良い1メートル幅での生産の準備を進めており、コスト競争力も高める。
太陽光パネルの分野では、かつてシリコン型の開発・実用化でも日本勢が先行していたが、中国勢の攻勢で多くが撤退に追い込まれた。同様の事態を避けるため、日本政府は4月、ペロブスカイト型太陽電池の普及支援を打ち出し、公共施設で積極的に設置するなど需要を創出したり、量産技術の開発や生産体制の整備を支援したりする。
ペロブスカイト型の技術支援はエネルギーの安定供給も背景にある。主な原料のヨウ素の世界シェアは日本が2位で国内で調達しやすく、供給網が寸断された場合に備えることもできる。積水化学は政府の支援策によっては生産量を増やす可能性もある。
日本は山間部が多いなど、従来型太陽電池に適した立地が少なくペロブスカイト型の市場性は大きいと言われている。富士経済(東京・中央)によると、世界のペロブスカイト型の市場規模は35年に1兆円になる見通しだ。
【中国、再開できぬ建設現場 地方政府系の債券利回り上昇】
18日の日経ニュースメールは次のように報じた。
中国で地方政府傘下のインフラ投資会社の資金繰りが悪化している。不動産市況の悪化で資金不足に陥り、建設工事の中断も目立ち始めた。地方政府傘下の投資会社が発行する債券残高は約13兆6000億元(約270兆円)に上り、一部は利回りが10〜20%上昇している。対処を誤れば金融リスクの引き金を引きかねない。
中国内陸部にある貴州省第二の都市、遵義市。新市街地で開発する30階超のオフィスビルの建設現場を訪れると工事が止まっていた。「今年に入って1度しか給料をもらっていない」。現場でたった1人寝泊まりしながら働く警備員はこう嘆く。
建設するのは遵義市傘下の遵義道橋建設集団。地方政府傘下で「融資平台」と呼ばれる投資会社の一つだ。インフラ開発を目的とした債券発行や銀行融資で資金調達し、遵義市郊外に巨大な国際会議場や高級ホテルを建設してきた。
しかし、もともとの不採算プロジェクトに、不動産不況と新型コロナウイルスを抑え込む中国の「ゼロコロナ」政策が直撃し資金繰りが悪化。代金未払いなど多数の訴訟を抱えた。政府施設の新設や華美な内外装を規制してきた国務院(政府)も「不適切」と指摘する事態となった。
巨額債務を抱えた遵義道橋建設集団は、2022年末に銀行融資の条件見直しを公表した。返済期限を20年としたうえで、金利を年3.0〜4.5%とする内容だった。従来の条件は明らかにしていないが、同社にとって大幅に有利な内容とみられる。
同社に融資する銀行が負担を求められたことで、中央・地方政府の支援姿勢に疑問符がついた。追加の資金調達は難しくなり、30階超のオフィスビルの工事再開は見通しが立たないままだ。
遵義道橋建設集団のような融資平台が発行する債券は、中国で「城投債」と呼ばれる。中央政府は14年まで地方政府による地方債の発行を原則禁止してきた。城投債はそれでも資金を調達したい地方政府の抜け穴の一つとなってきた。
中国の調査会社Windによると、城投債の発行残高は約13兆6000億元。5年で2倍超に膨らんだ。米シティグループの推計によると、城投債に銀行融資を加えた融資平台の有利子負債は22年末で約47兆元、国内総生産(GDP)の39%に達するという。
▼城投債 地方政府傘下のインフラ投資会社が発行する債券のこと。地方政府の支援を前提に、一般の民営企業や国営企業が発行する社債と区別される。22年の発行額は約4兆6000億元で、平均金利は4%弱だった。
城投債は「暗黙の政府保証」があるという前提で、格付け会社は高い格付けを付与してきた。だが、地方財政を支えてきた土地使用権の売却収入は急減し、地方政府の支援余力は急激に低下している。城投債の購入者は国内の銀行やファンド、保険会社など。一部は外国人や個人も購入しており、デフォルトすれば影響は大きい。
貴州省の西隣にある雲南省の省都、昆明市。空の玄関口として12年に全面開業した昆明長水国際空港では周辺開発が想定通りに進んでいない。空港周辺の経済開発区や住宅、道路開発などを担う昆明空港投資開発集団が資金繰り難に陥ったためだ。
中国の格付け会社、中誠信国際信用評級によると、昆明空港投資開発集団の22年の不動産開発収入はゼロ(21年は11億元)だった。新規事業としてトウモロコシやナツメなどの販売に乗り出したが、資金繰り対策には焼け石に水だ。
昆明空港投資開発集団が発行した城投債はデフォルトを懸念する投資家の売り圧力で、流通市場での債券利回りが12%を超えた。市場関係者の一人は「(同社を含め)昆明市政府傘下の投資会社の大部分は市場での資金調達能力を失っている」と先行きを危惧する。
外資系など有力企業の立地に乏しい雲南省や貴州省は、インフラ投資で成長を底上げしようとしてきた。観光業や不動産・建設業への依存度が高く、不動産不況やゼロコロナ政策の影響を強く受けた。こうした都市は中国各地に存在し、どこで 信用問題が表面化してもおかしくない状況だ。
習近平(シー・ジンピン)総書記は足元の経済政策の重大課題として「不動産部門に起因するシステミックリスク、金融・地方債務リスクの防止と解消」などを挙げる。
UBSグローバルウェルスマネジメントの胡一帆氏は、「約3年の新型コロナ流行で、地方政府の支出が増え、地方財政は一段と悪化した」と話す。膨らんだ債務のツケを誰がどう負担するのか、対処を誤れば社会不安を引き起こしかねない。(貴州省遵義市で、土居倫之)
【山口・上関町、中間貯蔵施設の調査受け入れ】
同じ18日の日経速報メールは次のように報じた。
中国電力と関西電力が山口県上関町に計画する使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、西哲夫町長は18日、建設に向けた調査の受け入れを表明した。同日開いた臨時町議会後、西町長は「中国電力に対して調査受け入れを報告した」と述べた。
中国電と関電は中間貯蔵施設の建設が可能かどうか、半年ほどかけて掘削調査などを実施する見通しだ。
町議会では冒頭、西町長が中国電の提案について説明し、「私としては受け入れる考えだ。町議の話を聞いて総合的に判断したい」と話した。町議がそれぞれの意見を述べたところ、賛成意見が過半数を占めた。採決は取らず、西町長が最終的に判断した。
西町長は中国電に調査を受け入れる条件として、町民に対して丁寧に情報提供すること、具体的な計画が策定できれば住民説明会などを開くこと、周辺市町に対しても適切な情報提供を実施することなどを求めた。
中国電は上関町内に原子力発電所の建設を計画しているが、2011年の東京電力福島第1原発事故後、着工は未定のままとなっている。西町長が町財源の確保につながる新たな地域振興策を求めたのに対し、中国電が中間貯蔵施設の建設計画を提示した。中国電単独での建設や運営は難しいことから、関電に共同開発を持ちかけた。
国内の使用済み燃料はすでに貯蔵能力の約8割が埋まっている。青森県六ケ所村の再処理工場の稼働が遅れるなか、新たな中間貯蔵施設の確保が急務となっている。
今後、調査開始まで「少なくとも1カ月はかかる」(中国電)。建設可能と判断すれば町に具体的な計画を提示することになる。
施設の規模などは未定だが、埋め立て地を含めて160万平方メートルに及ぶ町内の原発建設用地内に建設することを想定している。
【日米韓首脳、毎年会談で合意 経済安保も協力拡大】
19日の日経速報メールは次のように報じた。
【ワシントン=秋山裕之】日米韓3カ国の首脳は18日(日本時間19日午前)、米ワシントン近郊で会談した。年1回以上は首脳らが各レベルで会談すると申し合わせた。北朝鮮に加え、対中国を念頭に置いた幅広い協力に広げる。半導体などの強固なサプライチェーン(供給網)をつくる。
バイデン米大統領が米首都ワシントン近郊の山荘「キャンプデービッド」に岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を招いた。
会談後に共同記者会見に臨んだバイデン氏は3カ国の防衛協力について「前例のないレベルで協力し情報を共有する」と表明した。「台湾海峡で平和と安定を確保し(中国の)経済的な威圧と戦っていく」とも述べた。
首相は「3カ国の戦略的連携の潜在性を開花させることは時代の要請だ。安全保障協力を新たな高みへ引き上げていく」と強調。尹氏は「3カ国共通の利益を脅かす域内の緊急な懸案が発生した場合、迅速に協議して対応するチャンネルを立ち上げることにした」と説明した。
3首脳は「キャンプデービッドの精神」と題する共同声明をまとめた。首脳間を含め3カ国で有事や平時を問わずに円滑に意思疎通するメカニズムを明記。閣僚や国家安全保障会議(NSC)高官の定期協議や各分野での実務者による対話枠組みを設ける。
日米韓の枠組みは伝統的に対北朝鮮への対応を主軸に置いてきたが、今回は対中国を意識した記述を拡充した。
不法な海洋権益に関する中国の主張と行動に関し「インド太平洋地域の水域における一方的な現状変更の試みに強く反対する」と記した。台湾海峡の平和と安定が「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素」だと指摘した。
経済安全保障は日米韓3カ国の協力の柱のひとつに位置づける。半導体や人工知能(AI)、蓄電池、重要鉱物などの特定物資に着目してサプライチェーンの情報を日米韓の各国大使館で情報交換する。
局長級の「インド太平洋対話」を立ち上げる。中国が影響力を強める東南アジア諸国連合(ASEAN)や太平洋島しょ国などにインフラや気候変動対策などの開発支援で協力する。10月にも3カ国対話を予定する。
自衛隊と米韓両軍は対潜水艦やミサイル防衛の定例共同演習をする。北朝鮮が発射したミサイルの探知情報をリアルタイムで共有する取り組みを年内に始めると合意しており、進捗状況を確かめた。サイバー防衛に関する実務者協力も発足させる。
共同声明とは別に3カ国の中長期的な協力指針となる成果文書「キャンプデービッド原則」を発表した。共通の価値に基づく「自由で開かれたインド太平洋」の推 進などをうたう。
「会談では北朝鮮による日本人拉致問題についても意見を交わした。首相が「拉致問題は時間的な制約のある人道問題だ」との認識を示し、バイデン、尹両氏が早期解決を支持した。
【日米韓首脳の共同声明の要旨】
日本政府が発表した日米韓の指針「キャンプデービッド原則」と3カ国首脳の共同声明「キャンプデービッドの精神」の要旨は次の通り。
【キャンプデービッド原則】
日米韓3カ国は国際法の尊重、共通の価値に基づく自由で開かれたインド太平洋を推し進める。力または威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。
日米韓3カ国の安全保障協力の目的は、地域全体の平和及び安定を促進し強化すること。
核兵器不拡散条約の締約国として、不拡散へのコミットメントを順守する。核兵器が二度と使用されないようあらゆる努力を尽くす。
【キャンプデービッドの精神】
歴史的な機会にインド太平洋及びそれを越えた地域で、我々の協力を拡大する。大きな野心を新たな地平へと引き上げることにコミットする。
日米同盟と米韓同盟の間の戦略的連携を強化し、日米韓の安全保障協力を新たな高みへと引き上げる。首脳間を含め3カ国の定期的かつ適時の連絡が円滑になるよう、3カ国間の連絡メカニズムを改善させる。
少なくとも年に1度、3カ国の首脳、外相、防衛相及び国家安全保障局長間でそれぞれ会合を開催する。3カ国の外交及び国防当局間でのおのおのの既存の日米韓会合を補完する。
財務相間での初の日米韓会合を開催する。毎年開く新たな商務・産業大臣会合も立ち上げる。
年1回の日米韓インド太平洋対話を立ち上げる。偽情報に対処するための取り組みで連携する方法についても議論する。
東南アジア諸国連合(ASEAN)及び太平洋島しょ国に対する地域的な能力構築の取り組みについて協調する。
南シナ海における中国による危険かつ攻撃的な行動に関して、インド太平洋地域の水域におけるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。
国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する。台湾に関する我々の基本的な立場に変更はなく、我々は両岸問題の平和的な解決を促す。
北朝鮮に対し核・弾道ミサイル計画を放棄するよう強く求める。全ての国連加盟国に対し全ての関連する国連安全保障理事会決議を完全に履行することを求める。
北朝鮮によるかつてない数の弾道ミサイル発射、並びに通常の軍事的活動を強く非難する。
北朝鮮によるサイバー上の脅威と戦うため、協力を推進する新たな日米韓ワーキンググループを立ち上げる。
日米韓は前提条件なしに北朝鮮との対話を再開することにコミットしている。北朝鮮における人権の尊重を促進するための協力を強化することにコミットする。拉致問題、抑留者問題、帰還していない捕虜の問題の即時解決への共通のコミットメントを再確認する。
米国は、日本及び韓国の防衛に対する米国の拡大抑止のコミットメントは強固であり、米国のあらゆる種類の能力によって裏打ちされていることを明確に再確認する。
日米韓3カ国は組織化された能力及び協力を強化するため、毎年名称を付した複数領域に及ぶ3カ国共同訓練を定期的に実施する。
2023年末までに北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイムでの共有を運用開始する。
3カ国はミサイル警戒データのリアルタイム共有のための技術的能力を試験する初期的措置を実施した。
3カ国はグローバル・サプライチェーン(供給網)の混乱に関する政策連携を強化する。経済的威圧に対抗するための準備をする。 早期警戒システムの試験運用開始に向けて緊密に連携する。
最先端技術が違法に海外に窃盗されることを防ぐため、技術保護の取り組みに関する協力を強化する。
米国、日本及び韓国のカウンターパートとの間で、3カ国の執行機関間の情報共有及び連携を深化させるための第1回目の交流を実施する。
軍事転用可能な能力のために我々の技術が流用されることを防ぐため、輸出管理に関する日米韓の協力を強化していく。
3カ国の国立研究所間の新たな協力を追求する。科学、技術、工学、数学分野での共同研究開発を含め、科学技術イノベーションを強化する。
宇宙安全保障協力に関する対話、とりわけ宇宙領域での脅威、国家宇宙戦略及び宇宙の責任ある利用に関する対話の更なる強化を追求する。
人工知能(AI)に関する国際的なガバナンスを形成し、安心で安全な信頼できるAIを確保するためのそれぞれの取り組みを確認する。
我々はウクライナ支援において結束している。ウクライナへ支援を提供し、ロシアに対して協調した強力な制裁を科し、ロシアへの エネルギー依存の低減を加速させることにコミットする。
【日本、米国および韓国で協議するコミットメント】
日米韓3カ国の首脳は、共通の利益および安全保障に影響を及ぼす地域の挑戦、挑発および脅威に対する3カ国の対応を連携させるため、3カ国の政府が相互に迅速な形で協議することにコミットする。
このコミットメントは、国際法や国内法上の権利または義務を生じさせることを意図するものではない。
【世界半導体投資、4年ぶり減 誘致競争で供給過剰懸念】
20日の日経速報メールは次のように報じた。
半導体設備投資にブレーキがかかっている。世界主要10社の2023年度の投資額は前年度比16%減の1220億ドル(約17.5兆円)で4年ぶりに減少する見通し。将来の成長期待をにらんだ政府主導の投資誘致で工場の建設ラッシュが続いたが、中国景気の減速懸念もあり、各社は投資に慎重になっている。足元では価格に下押し圧力が働いている。
米国・欧州・韓国・台湾・日本の半導体大手10社の設備投資計画をまとめた。前年度を下回るのは19年度以来で、過去10年間で最大の落ち込みだ。スマートフォンやパソコンに使うメモリー半導体への投資が前年度比44%減と落ち込み幅が大きく、パソコンやデータセンターの頭脳として使われる演算用半導体の投資も14%減少する。
投資を減らすのは、米インテル、台湾積体電路製造(TSMC)、米グローバルファウンドリーズ、米マイクロン・テクノロジー、韓国のSKハイニックス、合弁で工場を運営する米ウエスタンデジタルとキオクシアホールディングスを1社換算で数えた計6社。
過去10年で設備投資が最大の落ち込みとなるのは、米中の技術覇権争いから近年、振興策などで各国が競うように生産体制を強化し、投資需要を先食いしてきた影響が大きい。22年度の大手10社の投資総額は1461億ドルと過去最高の規模だったが、英調査会社オムディアの南川明氏は「回路線幅が10〜14ナノ(ナノは10億分の1)の製品などで供給過剰になる懸念がある」と指摘する。
23年6月末時点で棚卸し資産(開示している9社合計)は前年同期比1割増の889億ドル。半導体不足が深刻化する前の20年に比べて7割増の水準に拡大した。過剰在庫を警戒してマイクロンは24年8月期に3割減産し、設備投資も4割削減する。SKハイニックスも減産幅をさらに5〜10%広げ、投資を前年度比で50%以上削減する。
中国の景気減速も冷や水を浴びせる。インテルの23年度の投資額はアナリスト平均で3年ぶりに減少に転じる見込み。パトリック・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は7月の決算会見で「中国は景気回復が遅れている」との見方を示した。パソコンの一大消費地である中国市場の先行きが不透明なたため、工場関連の投資を絞る。
足元で半導体の取引価格は低迷。新型コロナウイルス禍で特需が続いていた半導体メモリーは昨年夏から供給過剰に転じ、価格は下落が続く。一時記憶用のDRAM、長期記憶用のNANDの8月の価格はいずれも前年同月比で4割超下がっている。日本総合研究所の立石宗一郎氏は「各社の減産幅が十分ではなく、価格に下押し圧力が働いている。需要が回復し、価格が本格的に上昇するのは来年になる」とみる。
近年の工場建設ラッシュで必要な技術者を賄えない動きも出てきた。米国半導体工業会(SIA)によると、米国で半導体技術者(半導体業界で従事するコンピュータサイエンティストを含む)が30年までに6万7000人が不足すると予測。TSMCは技術者不足を理由に米アリゾナ州で建設中の工場の稼働時期が24年末から25年に遅れる。23年度の設備投資が5年ぶりに減少する見通しだ。
もっとも、中長期で半導体需要は伸び続けるとの市場の見方は変わりない。米マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、世界の半導体市場規模は30年までに21年の約6000億ドルから約7割増えて1兆ドルに達する見通し。
けん引役は電気自動車(EV)と人工知能(AI)に使う半導体の爆発的な需要増加だ。英オムディアによると、世界の半導体需要のうち、車載半導体は現状で約1割にとどまるが、EVの普及で車両機能を制御する半導体やパワー半導体の使用量が飛躍的に増える。車載半導体の市場規模は25年に830億㌦と22年から5割拡大と見込む。
AI用半導体もEVとともに半導体需要増加をけん引する。AI半導体は生成AIサービス向けデータセンターに必要な部材で、独スタティスタによるとAI半導体の需要は25年には22年比3倍となり、30年には13倍に伸長する見通し。
投資削減に踏み切った半導体大手の多くも「工場建屋だけ先に建てて、ベストなタイミングで量産ができるように備えている」(ボストン・コンサルティング・グループの小柴優一氏)という。在庫調整が一服すれば、各国・各地域が官民挙げて取り組む半導体供給網の構築への動きも再び活発になりそうだ。(向野崚)
【中国追加利下げ、伸びぬ融資に危機感 景気再浮揚に時間】
21日の日経速報メールは次のように報じた。
中国人民銀行(中央銀行)は21日、2カ月ぶりの利下げに踏み切った。需要不足でデフレ懸念が強まり、銀行融資が落ち込んでいることに危機感を抱く。ただ下げ幅は市場予想より小さかった。金融緩和で潤沢なマネーを市場に供給しても消費や投資が増えない「流動性のワナ」に陥りつつあるとの見方もある。政府は大規模な財政拡張に慎重で、景気の再浮揚には時間がかかりそうだ。
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事実上の政策金利である最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)のうち、優良企業向け貸出金利の参考となる1年物を年3.45%とし、0.1%下げた。住宅ローン金利の目安となる期間5年超の金利は年4.20%で据え置いた。
人民銀行は15日、LPR計算の基礎となる市中銀行向けの1年物金利を0.15%下げた。これに対し、LPR1年物の下げ幅は0.1%と小さかった。
銀行が利ざやを確保しやすいよう小幅な下げにとどめた可能性がある。さらに期間5年超の金利を据え置いたのは、住宅ローン金利の低下を一律ではなく銀行の体力に応じて促すためとみられる。ドルとの金利差が広がり、一段の人民元安につながることを警戒した可能性もある。
丸紅中国の鈴木貴元経済研究総監は「利下げ余地を温存したというより、金融政策に手詰まり感が出ている」と指摘した。
追加利下げに踏み切ったのは、景気の減速で企業や家計の資金需要が弱いためだ。7月の人民元建て新規融資(返済分を差し引いた純増額)は前年同月比50%減の3459億元(約6兆9000億円)だった。2009年11月以来13年8カ月ぶりの低い水準となった。
このうち住宅ローンなど家計向けは3カ月ぶりにマイナスとなった。新規融資より返済が多かった。雇用など将来不安から住宅販売が落ち込み、新規の住宅ローンが増えなかった。一方、金利の低下などで預金や投資で稼ぐ収益が減った家計が借金を前倒し で返済する動きが広がった。
家計は耐久財を含めた大型消費に及び腰で、民間企業も新たな投資を控える。内需不足で7月の消費者物価指数(CPI)は2年5カ月ぶりに前年同月比で下落。デフレ懸念が強まっている。
人民銀行と国家金融監督管理総局、証券監督管理委員会は18日、金融機関幹部らを集めたテレビ会議を開催した。融資を増やすとともに、貸出額が大幅に増減するのは避けなければならないと指摘し、企業や家計の資金調達コストを下げるよう指示した。
景気の下振れ懸念が強まった08年のリーマン・ショック直後、中国は4兆元に及ぶ景気対策で需要を創出した。15年ごろは「チャイナ・ショック」と呼ばれ景気が減速していたが、力強い消費を背景に住宅市場の活性化などで息を吹き返した。
最近の景気減速をめぐり、共産党が7月に開いた中央政治局会議は「最たる問題は内需不足」との認識を示した。だが早期に需要を生み出す効果がある財政出動には距離を置く。
第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミストは「08年の対策が過剰債務の元凶となったため二の足を踏んでいる」と分析する。新たな財政刺激策が地方財政難に拍車をかける恐れもある。
財政が動かない分、金融政策にしわ寄せがいく。それを見透かした市場では追加金融緩和の予想が広がる。
中国の証券会社、中信証券は「年内の追加利下げもありうる」とみる。銀行の資金調達コストを下げて融資を促すため、人民銀行が市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す預金準備率を下げるとの予測もある。
ただ金融緩和の効果を疑問視する声も少なくない。相次ぐ利下げをうけ、中国の住宅ローン金利は22年後半から過去最低を更新 するが、住宅販売は落ち込みが続く。
「設備投資の計画などない。まず生き残らないと話にならない」。南部の広東省東莞市で従業員40人超のアパレル向けボタン取り付け機の工場を経営する劉さんは打ち明ける。
ここ数年は海外からの注文が落ち込んだままで、国内でも価格競争が激しくなっているという。「生産を拡張するどころか、規模を縮小している同業他社もある」と資金の借り入れや投資拡大には否定的だ。
広東省の国有企業で働く30代男性の趙さんは「いま不動産に投資しようとは思わない。かつてのように値上がりするとは限らないからだ」と話す。
中国の格付け機関、東方金誠の王青チーフマクロアナリストは「個人ローンは金利に敏感なため、金利低下局面で借り入れを様子見する動きが出やすい」と指摘する。西浜氏は「マネーが高い金利を求めて海外に向かおうとしても当局の資本規制が阻み、資金が国内の銀行などに滞留してしまう」と流動性のワナに陥るリスクを指摘する。(川手伊織、広州=川上尚志)
この間、下記の録画を視聴することができた。 (1)BS6報道1930「岸田政権へ向かう怒り…「サラリーマン増税」か? 超難題マイナカードは、自民党女性局フランス研修の“軽率”、内閣改造 人で問われること」8月3日。 (2)ETV特集「ミッドワエー海戦3418人の命を悼む 第二部 残された者たちの戦後、日米の戦死者調査の末に作家・澤地久枝さんは何をおもいのか」5日。 (3)NHKスペシャル「いのち眠る海~最新調査で明かす太平洋戦争~戦争中海で失われた35万の命、沈みゆく船で助けをもとめ命つきた兵士、死を覚悟しながら最後まで生きようとしたパイロット、最新技術で迫る「海の死」の実相」5日。 (4)NHK総合こころの時代「見えない痛みを託されたフォトジャーナリスト豊崎博光。米国の核実験が行われたマーシャル諸島で被爆した人々を撮影してきて「伝えてほしい」と託された見えない被爆の痛みとは?」6日。 (5)BS世界のドキュメンタリー「プーチンと5人の米大統領 プーチンが権力を握って以来、アメリカでは5人の大統領が入れ替わった、バイデンはどう対抗するのか」6日。 (6)NHKスペシャル「原子爆弾・秘録~謎の商人とウラン争奪戦~原爆の原料となったウランをひそかにアメリカに運び込んだ”謎の商人“の未公開資料が見つかった。それに託された真実とは」6日。 (7)BS1 欲望の時代の哲学2023「マルクス・ガブリエル ニッポンへの問い。東京滞在中のドキュメント、いま日本に必要なものとは?」6日。 (8)NHKドキュメント「伝承の期限どうつなぐ? ヒロシマの記憶」7日。 (9)BS6報道1930「サウジが狙うウクライナ和平の仲介役とは?」7日。 (10)BS6報道1930「ウ軍「ミサイル改造」ロシアへ届く長距離化」8日。 (11)BS6報道1930「”核抑止“があったからプーチン氏侵攻?原爆の日に考える”核廃絶“」9日。 (12)NHK総合歴史探訪「消えた原爆ニュース。広島と長崎に投下された原子爆弾、被害の実態を報じることが禁止された時代があった。真相はなぜ隠され、どのように明かされたのか? 原爆報道を巡る知られざる物語」9日。 (13)BS6報道1930「安いニッポンを脱却か。決断した企業の舞台裏 本物なのか賃上げ株高」10日。 (14)
8月3日の日経速報メールは次のように報じた。
主要企業の7割が生成AI(人工知能)を使って労働時間の削減を計画していることが分かった。日本経済新聞の調査で明らかになった。最大で4割超の時短を見込む企業もある。NECは資料を作る時間が半分になり、AGCもソフトウエア作成の時間が6分の1になった。人手不足が深刻化するなか、AIの活用が企業の競争力を左右し始めた。
国内の主要企業約110社に7月、生成AIの利用についての調査を実施した。94社から回答を得た。AIを使う予定のない企業は1社のみだった。
AIを導入する狙いについて83%の企業が「労働時間の削減」(複数回答)と回答した。「生産性の向上による売り上げ増」が67%、「販管費や人件費など費用削減」が63%で続いた。83%の企業が全部署に導入するとしており、業務をAIで効率化し、社員の働く時間を製品開発や新規事業などより付加価値の高い分野に回したい考えだ。
7割の企業が具体的な労働時間の削減を計画する。1割台の時短が22%、2割台が19%あり、4割台も2%あった。
NECは5月から生成AIの利用を始め、グループ会社を含む国内全社員の4分の1にあたる約2万人が活用する。社内向け資料の作成では平均的な作業時間がこれまでの半分の15分ほどになった。1時間以上かかっていたオンライン会議の議事録をつくる作業も10分程度に短縮できた。
NECは「生成AIの積極活用と安全性を両立する社内ルールを整備している。AIを徹底的に活用して生産性をあげる」と語る。
AGCも6月に本体の全社員約7000人が利用できる体制を整えた。管理部門ではデータ分析用のソフト作成にかかっていた時間が3日から半日になる効果をあげた。AIが社内の研究データを読み込み、新素材を開発する際に課題を指摘し、実験方法の助言をするなどの利用も検討する。
キリンホールディングスも飲料のレシピをAIに学習させることで、新商品の開発時間を短縮できるとみている。
日本企業は海外企業に比べて生産性が低い。日本生産性本部によると、2021年の日本の労働生産性は経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国の中で27位だった。デジタル化が遅れており、AIの活用が進まないと国際競争力が一段と低下しかねない。政府の有識者会議も5月、労働人口の減少を見据えて企業などにAIの導入を促した。
社員への活用についても聞いた。23年末までに5割以上がAIを使えるようにする企業は31%あり、全社員を対象にするとした企業も14%あった。これが25年には66%と28%にそれぞれ倍増する。
ファミリーマートは23年内に5割以上を対象とし、25年に全社員が使えるようにする方向だ。富士フイルムホールディングスも25年までに過半の社員に導入する。
AIの導入には懸念もある。社内規定の整備などルール作りが欠かせない。
懸念で最多だったのが「機密情報の漏洩」(複数回答)で73%、他社の「著作権や商標等の侵害」が66%だった。AIの情報の不確かさを懸念する企業の82%が「人間が精査・確認する」(同)を挙げ、「研修の徹底」が43%で続いた。利用時の社内規定を設けた企業は57%あり、26%が作成中だ。
生成AIを事業化して収益につなげる企業も多い。AIを使った社外向けの製品やサービスを「開発している」「開発の予定がある」と回答した企業は計31%あった。(猪俣里美、AI量子エディター 生川暁)
■回答企業一覧
IHI/旭化成/アサヒグループジャパン/アシックス/味の素/伊藤忠商事/ANAホールディングス/AGC/NEC/NTT/NTTドコモ/MS&ADインシュアランスグループホールディングス/オムロン/花王/鹿島/川崎重工業/関西電力/京セラ/キリンホールディングス/クボタ/KDDI/コマツ/サントリーホールディングス/JR東日本/JFEスチール/JTB/J・フロントリテイリング/塩野義製薬/資生堂/清水建設/シャープ/商船三井/スズキ/住友化学/西武ホールディングス/積水化学工業/積水ハウス/セブン&アイ・ホールディングス/ソフトバンク/SOMPOホールディングス/第一三共/大日本印刷/大和証券グループ本社/大和ハウス工業/高島屋/帝人/電通グループ/東京エレクトロン/東京海上日動火災保険/東京ガス/東芝/東洋エンジニアリング/東洋紡/東レ/凸版印刷/日清製粉グループ本社/ニッスイ/NIPPON EXPRESSホールディングス/日本IBM/日本航空/日本製紙/日本製鉄/日本生命保険/日本たばこ産業/日本郵船/野村ホールディングス/パナソニックホールディングス/日立製作所/ファーストリテイリング/ファミリーマート/富士通/富士フイルムホールディングス/ブリヂストン/ホンダ/マツダ/丸紅/みずほフィナンシャルグループ/三井化学/三井住友フィナンシャルグループ/三井物産/三井不動産/三越伊勢丹ホールディングス/三菱ケミカルグループ/三菱地所/三菱商事/三菱電機/三菱マテリアル/三菱UFJ銀行/村田製作所/ヤマト運輸/楽天グループ/レゾナック/ローソン/ローム
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【高齢社員にジョブ型雇用 三菱UFJ信託、年収100万円増】
同じ3日の日経ニュースメールは次のように報じた。
三菱UFJ信託銀行は60歳以上の再雇用社員を対象に、職務内容を明確に定める「ジョブ型雇用」を導入した。市場部門などでの指導役や対外的に講師を担ったり、現場の営業に精通していたりする人材への適用を想定する。業務内容によって異なるが、年収は100万円ほど上昇する。再雇用社員の活躍の幅を広げる狙いがある。
「シニアジョブコース」という名称でまず70人程度を対象に試験的に導入した。半年ごとに人数を増やして25年に正式導入し、26年までに200人規模に拡大する。最終的に再雇用社員の半分にまで認定をひろげる考えだ。
新制度の適用にあたっては社員ごとに「職務定義書」を作成する。「シニアジョブ(SJ1」と「SJ2」の2種類の枠組みを設け、給与は職務の内容に応じて支払う。再雇用社員になると、給与が再雇用前からおよそ半減の水準になる例もある。新制度の適用を受ければ給与の減少を抑えられる。
三菱UFJ信託には「パートナー嘱託」と呼ぶ再雇用社員が400人ほど在籍する。今後バブル期の大量採用社員が60歳を超え、30年には社員のおよそ10分の1に相当する800人程度まで増加する見通しとなっている。高齢社員が多様な業務に携われる環境づくりが急務になっていた。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
竹内舞子経済産業研究所 コンサルティングフェロー、CCSIアジア太平洋 CEO別の視点
こうした取り組みは企業内の再雇用制度改革という枠を超えて重要だと思います。このような制度が普及して定年後の働き方についても選択肢が広がり、見通しが立つようになればよいと思います。 内閣府の推計では10年もしないうちに65歳以降の人口が生産年齢人口(15~64歳)の半分を越えます。移民を入れないとすれば労働力の減少を補うのは女性と高齢者となります。今後現役世代の採用でもジョブ型が浸透すれば、キャリアを通じて特定の分野のスキルや人脈を構築し続ける人も増えるでしょうし、そうした人材を活用したいと考える企業も増えるでしょう。数十年後を見据えて、定年後の働き方の選択肢を増やすのは必要だと思います。
【上場企業、4?6月純利益25%増 値上げ・生産増・円安】
4日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・上場企業の4?6月期の純利益は2四半期連続の増益に
・売上高純利益率は8.6%と過去最高の21年を上回る
・トヨタ自動車は最高益。航空・鉄道も経済再開が追い風
日本の上場企業の稼ぐ力が上向いている。3日時点で、2023年4?6月期の純利益は前年同期から25%増えた。値上げが進む中、供給網や人流の回復で需要が膨らみ、高単価でも売れる構図が鮮明だ。円安もあり、効率性を示す売上高純利益率は最高水準にある。中国景気の減速など懸念材料が残る中、増益の持続力が焦点になる。
3日までに4?6月期決算を発表した東証プライム上場の3月期企業502社(親子上場の子会社や変則決算など除く)を集計した。社数で全体の4割にあたる。
純利益は約8.3兆円と25%増え、2四半期連続の増益だ。製造業が26%増、非製造業が24%増だった。4?6月期の増益率としては、新型コロナウイルス禍から急回復した21年(2.8倍)を除けば6年ぶりの高水準にある。
純利益率は8.6%と前年同期の4.8%から急伸し、過去最高の21年(7.6%)を上回って推移している。米S&P500種株価指数の構成企業(一部市場予想含む)の9.9%にも近付いてきた。
背景には複数の好材料が重なっていることがある。値上げ浸透に加え、生産・販売の回復、経済再開、前年同期比で7円以上のドル高・円安だ。コロナ禍の合理化で収益体質も強固になっており、資源や市況高騰の一服による商社や海運の苦戦を補った。
けん引するのは自動車だ。トヨタ自動車は23年4?6月期の連結純利益が1.3兆円超と最高になった。販売増や円安などに加え、車種改良に合わせた価格改定(2650億円の増益要因)も貢献した。日米で販売が伸び日産自動車は純利益が2倍強だった。コマツは同業の米キャタピラーに追随して実施した北米での値上げなどで最高益だ。
非製造業では、東京ディズニーリゾートを経営するオリエンタルランドが最高益だった。グッズ販売の好調や有料優先券の定着などで客単価が最高になった。東京電力ホールディングスは値上げで黒字化した。日本航空やANAホールディングスは国内線旅客数がコロナ禍前の9割前後に回復。JR東日本の深沢祐二社長は「今夏は多くの鉄道利用が期待できる」とみる。
今後は増益の持続力が焦点になる。足元は中国経済の回復の遅れといった懸念材料がくすぶっている。実際、村田製作所は中国のスマホ需要の低迷が響き34%減益だった。中島規巨社長は「中国の顧客との面会では需要回復の強さを感じていない」と話す。ファナックも中国の設備投資が弱く、受注回復は「24年以降」と慎重だ。
稼いだお金を成長投資や株主還元、人的資本に惜しみなく使うことも欠かせない。利益増・投資拡大・企業価値向上という好循環を続けることが中長期の投資マネーを呼び込むカギになる。
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【増える図書館、活性化の核に 高知の施設は100万人集客 データで読む地域再生】
同じ4日の日経ニュースメールは次のように報じた。
本の貸し出しが中心だった公立図書館の役割が変貌している。少子化と人口流出が進む地方で、地域活性化を担う施設と位置づけられ、施設数は全国で増加傾向だ。高知市中心部の図書館は年100万人超が訪れるテーマパーク級の集客力を誇り、高知県は人口あたりの貸出冊数を10年間で84%伸ばした。地域外からも人を呼び込もうと各地でアイデアを競っている。
文部科学省の社会教育調査によると、全国の公立図書館(一般社団法人などの運営を含む)は2021年10月1日時点で3394施設と10年間で120施設増えた。多くの自治体が財政難から公共サービスを手掛ける施設の統廃合を進める中で、「00年代以降、図書館は地域の情報センターとしての機能を強化」(明治大学の青柳英治教授)し、幅広い層の住民の利用を促している。
一方、書店の数は急速に減少が続く。出版文化産業振興財団(JPIC)の調査で、書店がない市町村は全国で26%(22年9月時点)にのぼる。公立図書館は「地域の知の拠点」としての役割が一段と増す状況だ。
総事業費約146億円をかけて18年にオープンした高知県・市共同運営の図書館を核とする複合施設「オーテピア」(高知市)は、障害者向け図書館やプラネタリウムがある科学館を併設。県民の知的好奇心に応えようと、これまで利用しなかった層にアプローチし、19年度の来館者は100万人を突破した。蔵書は160万冊超と西日本トップクラスを誇る。
きめ細かなサービスも特徴だ。司書が定期的に教育機関や企業を訪問し、蔵書やデータベースの利用方法を説明するなどして利用者の開拓を続ける。電子書籍の取り扱いも拡充したほか、市町村立図書館への配本の回数を拡大。施設から離れた住民でも県内の最寄り施設でオーテピアの本を読めるようにし、19年度の貸出冊数は106万冊と14年度比で2倍に拡大した。
「雲の上の図書館」は建築家の隈研吾氏が設計を手掛け、観光施設として国内外から注目を集める(高知県梼原町)
同県の山あいにある梼原町は観光客の呼び込みに生かす。町立「雲の上の図書館」は世界的な建築家の隈研吾氏が設計を手掛け、建設費約12億円で18年に開館した。地元産木材をふんだんに使った内外装が特徴。同館をコースに加えたツアーも人気で、週末は台湾の団体客らも目立つ。人口約3000人の同町唯一のホテルは22年の宿泊客が17年比4割以上増えた。
鳥取県立図書館(鳥取市)は起業支援に力を入れる。中小企業診断士らによる創業勉強会を毎月開催し、起業や経営改善など相談内容に応じて適切な専門家らを紹介するサービスを拡充中だ。15年から図書館を活用して起業や商品開発に成功した事例を表彰している。小林隆志館長は「新たなビジネスを生むことで地域の役に立つ姿をみせたい」と意気込む。
地域の特色を全国発信する拠点として活用する例も増える。江戸時代から続く鍛冶技術で知られる新潟県三条市で22年7月に開業した図書館を核とした複合施設「まちやま」は、本だけでなく地元企業が製造に関わった電動ドリルやかんななどを無料で貸し出す全国初のサービス「まちやま道具箱」を6月に始めた。利用者が地元産製品を購入してくれる効果も期待できる。
1人あたりの貸出冊数が全国トップの滋賀県は、1980年ごろから利用を促進しようと選書などを担当する司書の採用・教育に注力してきた。地域それぞれの思いと工夫が詰まった図書館は、子どもから高齢者まで多様な世代を引きつけ、活性化の中核施設として存在感を増している。
(渡部泰成、上林由宇太、グラフィックス 貝瀬周平)
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。広瀬陽子慶応義塾大学総合政策学部 教授
貴重な体験談
知のプラットフォームである図書館が様々な形で住民や他地域からの訪問者を集め、地域の活性化に貢献しているということは大変素晴らしい。 依頼を受けた講演が図書館で行われ、多くの住民の方がいらして下さることも増えた。 また、最近は駅ビルやショッピングモール内に図書館が併設されているケースを多くみる。それも、人々が気軽に図書館に立ち寄れる契機を作ってくれていると言えるだろう。 筆者は、かつて在外研究をしていたフィンランドの図書館に感銘を受けた。図書館機能のみならず、キッチンや音楽施設、工作施設など数多くの施設が併設されており、多くの文化行事や集いも行われていた。 図書館の多様化、実に望ましいと思う。
【福島県伊達市で40度、全国で今年初 気象庁】
5日の日経速報メールは次のように報じた。
日本列島は5日、広い範囲で厳しい暑さとなった。気象庁によると、福島県伊達市で午後2時に40.0度を観測。今年、全国で初めて40度以上を記録した。福井県坂井市で39.5度、兵庫県豊岡市で39.4度、京都府舞鶴市で39.0度となり、それぞれ観測史上1位を更新した。
午後8時時点で35度以上の猛暑日が274地点、30度以上の真夏日が695地点となった。気象庁と環境省は、東北から九州までの多くの都府県で熱中症警戒アラートを発表した。こまめな水分補給やエアコンの適切な使用など熱中症の予防が必要となる。
なお東京の猛暑日は、この日、16日目となった。
【なでしこ8強、再びカウンターさく裂 ノルウェー破る】
同じ5日の日経速報メールは次のように報じた。
サッカーの女子ワールドカップ(W杯)は5日、ニュージーランドのウェリントンなどで決勝トーナメント1回戦が行われ、日本代表「なでしこジャパン」はノルウェー代表を3-1で下し、準々決勝進出を決めた。日本は準優勝した2015年大会以来、2大会ぶり4度目の8強入り。日本時間11日午後4時30分から予定される準々決勝で、米国―スウェーデンの勝者と対戦する。
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8強入りを決定づけるカウンターが、鮮やかにノルウェー陣地を突き破った。1点リードの81分。FW植木理子(日テレ東京V)がおとりで右に流れて生まれた相手守備ラインのスペースに、後ろからMF藤野あおば(日テレ東京V)が縦パスを通す。左からMF宮沢ひなた(マイナビ仙台)が段違いのスピードで駆けつけた。強豪スペインを沈めたのと同じこの必殺技、「ジャパン・スペシャル」とでも称したくなる。
ノルウェーはずいぶんと日本に敬意を払ってきたとみえる。冒頭から最終ラインを5人に増員し、まずは構えて日本の良さを消そうとしてきた。
ラッキーな形で宮沢のクロスが相手ゴールへ吸い込まれて日本は15分に先制したはずが、5分後には追いつかれた。ノルウェーにやられるとしたらこのパターンしかない、という形で。手早く最終ラインの背後にボールを通され、クロスを頭でたたきこまれた。
ノルウェーがなりふり構わずにこうした自分たちの強みに徹していたらどうだっただろうか。負傷から復帰途上のエース、FWヘーゲルベルクが交代で送り込まれた74分から、捨て身の圧力に日本はたじろいだ。ロングボールを放り込まれ、スクランブル状態をつくられ、冷や汗をかかされた。
だが、日本はここで前半と同じ轍(てつ)は踏まなかった。「中盤がボールを受けに下がってしまっていたので、もう少し前にいっていい。そしてサイドを使っていこう」と池田監督はハーフタイムに修正を施していた。ボール保持者へ圧力をかけ直し、守備時の距離感を整える。勝負の分かれ目といえた残り20分ほどの時間帯に、日本は守備のハードワークから素早い攻撃という積み上げてきたサッカーで、相手から逃げ切るのではなく突き放した。
「(ベスト16で敗退した)2019年大会は悔しい思いをしたので、一つ壁を破れた気持ち。チームはいい雰囲気で、全員が同じ方向を向いている」と2点目を決めた清水梨紗(ウェストハム)の笑みがはじける。右の大外にいるはずのその清水の、隙あらばゴール前まで突進してこれる走力。終了間際に1点もののヘディングシュートを片手一本でかき出したGK山下杏也加(INAC神戸)のセーブ力。全員のハードワークを下地に、チームは状況に応じてプレーを遂行し、戦況を切り抜けていく。
相手がリスペクトしてくるのは、それだけ今の日本が充実しているからで、見かけ倒しでないことを日本はまたも示した。負ければ終わりのサドンデスの第1ラウンド、「なでしこ」は紛れもなく勝者だった。
【後記】準々決勝で日本はスウェーデンに破れ、8強にとどまった。21日の決勝戦はスペインがイングランドを破り、初優勝。
【製造業、主要国7割で不振 需要不足「リーマン時」並み】
7日の日経ニュースメールは次のように報じた。
世界的にモノの需要が落ち込んでいる。製造業の景気指数をみると主要29カ国・地域の7割で、企業活動が縮小した。運ぶモノの不足で供給網の需給バランスは崩れており、その度合いは2008年のリーマン・ショック時に匹敵する。消費の中心がモノからサービスに移行したことに加え、中国の内需低迷が響く。サービス業だけで雇用を支えきれるかが焦点となる。
中国南部・広東省の珠江デルタ地区。「世界の工場」と呼ばれるメーカー集積地は新型コロナ禍での混乱を経て、ほぼ正常化した。例えば荷物の揚げ降ろし待ちで港湾に滞船していたコンテナ船。金融情報会社のリフィニティブによると22年3月のピーク時点で70隻超に膨らんだが、直近では20隻前後にとどまる。
日本海事センターによると、アジアから米国向けの海上コンテナ輸送量は23年に入って一時、前年同月比2?3割の減少が続いた。業界内では「販売需要はあるものの、小売りの過剰在庫が解消されず、新たに生産を増やして輸送するほどの強さではない」(コンテナ船大手)との声があった。
世界にインフレ圧力をもたらしたサプライチェーン(供給網)の制約はほぼ解消した。中国によるゼロコロナ政策解除で経済活動が正常化した効果は大きい。製造業にとっては部品の調達など生産工程の改善につながる。ところが足元では供給網正常化を生かし切れていない。実需が不足しているからだ。
市場関係者はニューヨーク連銀が毎月公表する「グローバル・サプライチェーン圧力指数(GSCPI)」に注目する。海上輸送の運賃や主要国の製造業購買担当者景気指数(PMI)の供給網関連項目などを基に算出する。ゼロを標準としてプラス圏では平時よりも供給網が混雑し、供給制約が発生している状況を示す。マイナス圏では需要減で運ぶモノが少なく、供給網の需給バランスが崩れている。
4日公表になった7月のGSCPIはマイナス0.9となり、6カ月連続でゼロを下回った。5月にはリーマン危機後の08年11月につけた最低値(マイナス1.59)に次ぐ水準まで低下した。08?09年当時、米国が景気後退に陥ったほか、金融機関の融資余力が低下し、自動車など耐久消費財や資本財の需要が蒸発した。
新型コロナ禍では巣ごもり消費でモノ需要が急増した。米調査会社S&Pグローバル・コモディティー・インサイツの海運分析・調査ディレクターのリー・デジン氏は足元の需要減退について、新型コロナ収束で「消費パターンがモノから旅行などのサービスへと変化したことが大きい」と指摘する。
先進国中心による中央銀行の金融引き締め効果が作用しているとの指摘もある。コロナ禍で大規模な金融緩和を実施し、資産価格の高騰と過剰な消費を生んだ。加速度的な利上げで信用収縮が起き、需要縮小につながった。
中国の内需も想定より弱い。6月の貿易統計によると輸入額(米ドル建て)は4カ月連続で前年同月を下回り、前月比でも2カ月ぶりに減少に転じた。仏化粧品大手ロレアルのニコラ・イエロニムス最高経営責任者(CEO)は7月の決算会見で中国販売について「コロナ前の水準に戻っていない」と話し、回復の遅れを認めた。
モノ需要の不足は世界的な製造業不振につながっている。
米サプライマネジメント協会(ISM)が公表した7月の米製造業景況感指数は46.4と前月から小幅に改善したものの、好不況の分かれ目となる50を9カ月連続で下回った。同指数が連続して50を下回る期間は08年の金融危機に端を発した景気後退以来、最長記録だった。電子機器や化学製品で受注が低迷している。
S&Pグローバルが算出した7月のグローバル製造業PMIをみると、11カ月連続で中立水準の50を下回った。50割れの期間はリーマン危機直後の景気後退期に次ぐ長さだ。地域別では主要29カ国・地域のうち7割で50を下回り、企業活動は縮小した。特に欧州の不振が目立ち、域内最大のドイツは38.8と中立水準を11.2ポイントも下回った。
独化学大手BASFは23年4?6月期、自動車以外の主要顧客からの需要減に直面した。マーティン・ブルーダーミュラー会長は7月の決算説明会で「金融危機時に(大規模財政出動で)中国が世界を救ったようなことは、年後半に起きない」と話した。同社はこのほど23年通期の業績見通しを引き下げた。
日本の7月の製造業PMIは49.6と2カ月連続で50を下回った。半導体不足解消で自動車生産が持ち直し、減速は比較的緩やかだ。現時点では総じて好調を維持している日本の上場企業も外需減少の影響は避けられない。住宅の配管などに使う塩化ビニール樹脂を手がける信越化学工業は24年3月期、3期ぶりの最終減益を見込む。
新興国・途上国「グローバルサウス」の一角、インドは好調を維持している。内需に加え、バングラデシュなど周辺国の需要を取り込んでいる。メキシコは米国向け輸出企業の「脱中国」の恩恵を受けているようだ。
世界経済や米国経済のけん引役は現在、サービス業だ。雇用も増やしており、すぐさま景気後退に陥るリスクは小さい。ただ需要不足と製造業の不振が長引いた場合、サービス業だけで実体経済を支えきれるのか。景気腰折れ懸念は残る。(コモディティーエディター 浜美佐、五味梨緒奈)
【ソフトバンクG、4~6月も最終赤字 投資事業は黒字転換】
8日の日経ニュースメールは次のように報じた。
ソフトバンクグループ(SBG)が8日発表した2023年4〜6月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が4776億円の赤字(前年同期は3兆1627億円の赤字)だった。最終赤字は3四半期連続。一方、人工知能(AI)関連の新興企業に投資するビジョン・ファンド事業は6四半期ぶりに黒字転換した。
ビジョン・ファンド事業の4〜6月期の税引き前損益は610億円の黒字だった。世界的なハイテク株の上昇を背景に前年同期(2兆3307億円の赤字)から大幅に改善した。韓国のネット通販大手クーパンや東南アジア配車最大手のグラブ・ホールディングスなど保有する上場銘柄の株価上昇が貢献した。
ビジョン・ファンド事業が黒字化した半面、SBGの連結業績の赤字が続いたのは、連結業績では英半導体設計のアームやスマートフォン決済のPayPayといった子会社への投資利益を消去する影響が大きい。SBGが円安に伴う為替差損として4646億円を計上したことも重荷となった。
ビジョン・ファンドとSBGを合算した投資額は23年4〜6月期に18億ドル(約2600億円)となり、4四半期ぶりの規模となった。後藤芳光最高財務責任者(CFO)は8日の決算記者会見で「22年度は投資を事実上ストップしていたが、恐る恐る再開している」と話した。
保有資産の売却など財務の守りを固めた結果、保有株式に対する純有利子負債の割合を示す負債カバー率(LTV)は3月末の11%から6月末で過去最低の8%まで下がり、平時で25%未満に抑える自社基準内に収まっている。後藤CFOは「財務政策において安全な範囲で、投資の反転攻勢を打ち出す」と述べた。
SBGの孫正義会長兼社長も6月の株主総会で「守りは十分にできた。反転攻勢の時期が近づいている」と語っていた。ただし、反転攻勢は必ずしもビジョン・ファンドを通じた大々的な投資再開を意味しているわけではない。
理由は2つある。一つ目は米利上げに伴う資金調達環境の変化だ。24年3月期から27年3月期までの4年間に償還期限を迎える社債は合計で約3兆5000億円。仮に金利が1%上昇し、全額を同じ商品性の社債で借り換えると、4年後には年間300億円超、利払い負担が増える計算になる。
もっとも、後藤CFOは「償還時に外債の調達コストが高ければ円建てに切り替えている。一方、約6兆円ある現預金の8割を占める米ドルは運用利回りが相当高く、(受取利息の上昇で)相殺できる」と説明した。備えは進めているものの、低金利で調達した資金を投資に振り向ける従来のスタイルは構造的に変化を迫られている。
もう一つは傘下の英アームの上場だ。孫氏はアームを核にAI、半導体、ロボティクスを融合した「AI革命」を主導することを目指している。
孫氏は7月に東大で開いたシンポジウムで「(人間の知能を超える)汎用人工知能(AGI)の時代が来たら、水晶玉に未来を聞くかのごとく問題を解決してくれる。日本は一番ど真ん中の光り輝く水晶玉をつくっていかないといけない」と訴えた。
6月末時点でファンド経由で投資したスタートアップ企業は約440社ある。
SBGは昨年以降、ビジョン・ファンド部門の人員を減らしており、投資先の拡大を急ぐ段階から、これらの企業群とアームの連携で相乗効果や企業価値を高める段階に移行しつつある。
【英アーム、9月に米上場 Appleやサムスンが出資へ】
同じ8日の日経速報メールは次のように報じた。
ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計大手アームは9月に米ナスダック市場に上場する方針を固めた。上場と同時に米アップルや韓国サムスン電子など複数の事業会社がアームに投資する。上場時の時価総額は600億ドル(約8兆6000億円)超が見込まれており、2023年で世界最大の新規株式公開(IPO)案件になりそうだ。
4月の準備申請に続き、今年8月中にも米証券取引委員会(SEC)に正式に申請する。その後、ナスダックから上場承認を得る方向だ。アップル、サムスン、米エヌビディア、米インテルなど世界の主要な半導体関連企業がアームの上場と同時期に出資する。
上場は9月中下旬ごろを計画している。想定時価総額は600億ドル超になるとの見方が優勢だ。投資家の需要を探っており、価格のさらなる上振れも目指す。SBGが16年に240億ポンド(当時310億ドル)で買収してから企業価値は倍増している。
20年に本格化した新型コロナウイルス禍を受け世界の中央銀行が金融緩和に動くと、IPOの市場環境は劇的に改善した。英調査会社リフィニティブによると世界のIPOによる資金調達額は21年に4162億ドルと前年比8割増え、00年以降で最大を記録した。
だが22年のロシアによるウクライナ侵攻を機に世界でインフレ圧力が高まり、世界の中銀は急ピッチの利上げを進めてきた。急速な利上げで市場が動揺する局面が続くとIPOによる調達額は22年に前年の3分の1に沈んだが、足元で利上げのペースがやや緩み、投資家が成長企業を高く評価できる環境が戻ってきた。アームの大型上場は、下落が続いたハイテク株が復活してきた象徴といえる。
アーム株は現在、SBGが75%、傘下で世界の人工知能(AI)関連企業に投資するソフトバンク・ビジョン・ファンドが25%を保有している。今回の上場でビジョン・ファンドが保有する株式のうち10〜15%を市場で売却する見通し。
上場と同時にアップルやサムスン、エヌビディア、インテルなどの事業会社にも売却する株式の数%を割り当て、中長期の株主として迎え入れる。中長期で保有することを前提とした投資家を事前に確保し、新規上場時の株価を安定させる狙いがある。
アームに対しては一度買収を提案したエヌビディアをはじめ、世界の半導体関係の事業会社にとっても重要なプレーヤーとの認識が強い。出資関係を保ってアームの経営動向を見極めたいほか、影響力を及ぼしたいとの思惑がある。
アームは英国東部のケンブリッジに本拠を置き、英国の産学連携が生んだ「クラウンジュエル(王冠の宝石)」とも呼ばれる。1990年の創業以来、半導体の「設計図」となるIP(回路設計データ)を開発し、半導体メーカーはアームの設計図をもとに製品をつくる。
アームの設計は電力効率の高さなどで強みを持ち、バッテリーを長持ちさせる必要があるスマートフォン向けでは世界シェアの9割超を握る。
あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」の拡大を追い風に、アームの収益力は高まっている。アームの売上高は22年度に28億ドルと、SBGが買収した16年度から7割近く伸びた。半導体出荷数は累計2500億個を超えた。SBGの孫正義会長兼社長は6月の株主総会で「1兆個までいく」と急成長に期待を示した。
SBGはアームを買収した直後にエンジニアを倍増させ、自動運転など車載向け、住居や工場のIoT機器、クラウドを支えるデータセンターに手を広げてきた。AIの開発で不可欠な画像処理半導体(GPU)など新技術の開発も強化した。エンジニアが社員の半分以上を占めており、上場で調達した資金はさらなる人材獲得に充てる。
SBGは上場後もアーム株の大半の保有を継続し、AI戦略の中核に据える。SBGにとって積年の課題は創業直後から掲げる「群戦略」だ。3月末時点でファンドを通じて資本関係を結んだスタートアップ企業は約440社ある。この企業群を中核のアームと連携させれば、相乗効果で企業価値を高められる可能性がある。
SBGは16年の買収以降、アームを主要グループ企業と位置づけてきた。20年にエヌビディアからの買収提案を受けて一時は400億ドル相当で売却・統合させることで合意した。その後各国規制当局の反発で断念してからは、単独での上場を目指してきた。SBGとアームは同社のIPOについて「コメントできない」としている。(四方雅之、ロンドン=山下晃)
【社債100万→1万円単位に デジタル化で投資しやすく 三菱UFJ信託など】
9日の日経速報メールは次のように報じた。
個人にとって社債投資が身近になる。三菱UFJ信託銀行とNTTデータは2023年度内に1万円単位で社債を売買できるインフラをつくる。ブロックチェーン(分散型台帳)技術で発行や管理にかかるコストを減らし、従来100万円単位の大口取引が主体だった社債に個人も投資しやすくする。個人の投資と企業の資金調達の手段の幅が広がりそうだ。
三菱UFJ信託とNTTデータがつくるのは社債をデジタル化し、ブロックチェーン上で発行・管理するためのインフラだ。売買時の名義変更が自動化されるうえ、社債を販売する証券会社、販売後に社債を管理する銀行など関係者がすべて情報を共有できる。名義変更が増えても、証券会社と銀行の業務量は比例して増えず、名簿管理や発行額、元利金の確認といった照合作業はブロックチェーンで完結する。
現在社債の名義を変更する場合、証券会社と銀行の双方が元利金の支払額など必要な情報を入力する必要がある。チェックを含めて人手がかかる作業が多い。販売を小口化して頻繁に名義変更が発生すると、発行企業が支払う事務コストが膨らみ、コスト倒れになりかねない。そのため、100万円単位の大口取引が主流になっている。
新しいインフラではこうしたコストが削減するため、1万円単位での社債発行がしやすくなる。まず23年度内にインフラを整え、三菱UFJ銀行が利用する。その後、NTTデータの既存のシステムを使う金融機関180行にも導入を進める。社債を販売する証券会社にも、低コストで発行できる企業側の利点をアピールして利用を促す。
小口での社債発行が増えれば、個人投資家の裾野が広がりそうだ。2022年度に国内で発行された社債は総額12兆8947億円。個人向け社債の発行額は約2兆円で過去最高だったが、全体の2割弱にとどまる。高い発行コストを懸念し、ソフトバンクグループなど上位5社で発行額の7割近くを占めている。10万円単位で購入できるのはZホールディングスなど一部に限られる。
22年度の個人向け社債の発行件数は45件だった。「デジタル社債のインフラが整えば、発行件数が2〜3倍に増える可能性がある」(国内シンクタンク)。「個人投資家に手軽な運用を促しやすくなる」(国内証券)など、証券会社側の期待も大きい。
発行企業が購入者にポイントなどの特典を付与するほか、元利払いに円などの法定通貨と価値が連動する「ステーブルコイン」を使い利払いを月単位にするなど、サービスも広げやすい。
デジタル社債を含む「デジタル証券」の発行は2020年施行の改正金融商品取引法で制度としては解禁されていたが、実際に発行・管理するためのインフラが整っていなかった。そのため、国内の発行はSBI証券と丸井グループなど少なく、それぞれ数億円にとどまっていた。
デジタル社債が普及して個人も投資しやすくなれば、企業にとっても資金調達の手段が広がることになる。個人向け債の募集では、全国に支店網をもち富裕層への接点が多い大手証券が中心的な役割を果たしてきた。今後若年層などに投資家の裾野が広がれば、ネット証券などが引き受けを増やすことも考えられる。企業はコストや販売チャネルなど、証券会社の特性に応じて引き受け先を選びやすくなることも期待できる。
米国の20分の1程度にとどまる日本の社債市場の活性化につながる可能性がある。米国では現地のセキュリタイズ社が手掛けるデジタル証券の発行インフラが普及しつつある。ドイツでも法改正に伴って製造業大手のシーメンスなどデジタル証券の発行が相次いだ。ただ、本格的な普及まではまだ手探りの段階だ。
三菱UFJ信託は約1000億円のデジタル証券市場の8割強のシェアをにぎる。NTTデータは社債発行を受託する金融機関向けのシステムで95%のシェアをもつ。
【米国、対中投資を厳しく制限 半導体・AIで大統領令 資金の流れ分断、軍事転用に歯止め】
10日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・米国企業や個人の対中投資を広範に制限へ
・半導体・量子・AI分野で軍事転用封じる狙い
・米国の対中規制一段と。資金の流れにも網
【ワシントン=飛田臨太郎】米政府は9日、米国の企業・個人による中国への投資を規制する新制度を導入すると発表した。先端半導体や人工知能(AI)、量子技術を対象にする。政府に届け出を義務付け、中国の軍事開発などに結びつく案件は禁じる。米国の対中規制がモノだけでなく、カネの流れにまで発展した。
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M&A(合併・買収)やプライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、合弁事業などによる中国への新規投資を対象にする。米国内だけでなく、全世界の米国人に適用する。
市場への混乱を抑えるため、上場投資信託(ETF)や公募証券、米国の親会社から子会社への資金移動などは除外する方向で検討している。
半導体はスーパーコンピューターなどの高度技術の開発につながる先端分野は投資を禁じる。比較的、先端ではない分野でも届け出を義務付ける。先端半導体は2022年10月に人材も含めて輸出禁止措置を導入した。モノやヒトに加えて、カネの流れも制限する。
量子技術は原則認めない見通しだ。AIは軍事技術やスパイ活動に使用されうる技術が届け出の対象になる。投資禁止も検討する。
バイデン米大統領が大統領令に署名した。新制度は米財務省が米商務省と協議しながら運営する。財務省は調査する権限を持ち、違反した企業・個人に罰則を科す。45日間、産業界から意見を募った上で決定する。
米政府には外国企業からの国内投資を審査する仕組みがある。省庁横断の対米外国投資委員会(CFIUS)が届け出を精査し、安全保障上の脅威とみなせば阻止する。
対外投資では広範な分野を対象に規制する仕組みは初めて。中国の軍事関連の特定企業を対象に株式投資を禁じる措置はトランプ前政権から導入している。
法律事務所エイキン・ガンプ・ストラウス・ハワー・アンド・フェルドによると、当局が対外投資を審査する権限を持つのは台湾などにとどまる。世界最大の経済大国である米国が資本移動を規制するのは極めて異例だ。
バイデン氏は連邦議会に書簡を出し「(中国は)無形の利益を含む米国からの対外投資を悪用している」と述べた。「軍事的優位性を獲得する目的で、世界の最先端技術を取得・転用し、民間部門と軍事部門の壁をなくしている」と指摘した。
米国は主要7カ国(G7)などの同盟国に同様の措置を創設するよう求める。欧州連合(EU)は対中国を念頭に、先端技術に関する域内企業の対外投資規制を検討中だ。日本政府も判断が迫られる。
駐米中国大使館の報道官は日本経済新聞に「繰り返し深い懸念を表明しているにもかかわらず、米国は新たな投資規制に踏み切った。中国は非常に失望している」と述べた。「中国は情勢を注視し、我々の権利と利益をしっかりと守っていく」と強調した。
【生成AI学習データ、事業者に開示指針 政府が骨子案】
11日の日経特報メールは報じた。
政府が年内にまとめる人工知能(AI)の事業者向け指針の骨子案が11日、分かった。開発から活用の5段階で企業が守るべきルールを示す。生成AIがどんなデータを学習したかの開示などを求める。産業競争力向上につながるAIの適切な利用に向け、ルールを設けて透明性を高める。
急速に進化するAIを巡るルールづくりは国際的に検討が進む。欧州連合(EU)は開発者から利用者まで各主体が果たす責務を法律で厳しく定める方針だ。米国は米グーグルなどの開発企業7社が自主的な基準をつくる。
日本はAIによる差別を防ぐといった基本的なルールを指針で定め、企業に順守を求める。AIの開発・利用を促し、生産性向上や競争力の強化をめざす。
経済産業省と総務省が100人ほどの有識者と内容を詰める。幅広い分野で参照できるガイドラインを想定している。生成AIは技術の発展が速いため、政府や有識者は法律による厳格な規制をつくることに消極的だ。
指針に法的拘束力はなく、罰則なども設けない。事業者が開発や利活用時に守る基準となる。指針に準拠しているかを認証する仕組みづくりや、政府が公共入札の条件とすることも将来的に想定される。
骨子案は大きく2つの柱で構成する。
一つ目は事業者が共通で守るルールだ。生成AIが生む誤情報や差別のリスクを知り、法制度を守って人権にも配慮したサービスづくりを原則にする。経営層が関与して企業内でリスク管理体制を整えることも提言する。
もう一つは事業者の種類に応じた留意点だ。
企業を①生成AI「基盤モデル」の開発者、②AIにデータを学習させる事業者、③システム開発者、④サービス提供者、⑤AIサービスを使う企業――の5つに分類する。
開発や学習を担う事業者には透明性を確保してもらう。AIの機能や目的、リスクのほか、どのような学習データを読み込ませたのかなどのデータ収集方法を説明できるよう促す。
企業は学習データの把握や開示に向けて、記録をとったり管理体制を構築したりすることが必要になる可能性がある。一方で、指針に沿った対応をすれば製品やサービスの信用力につながり、商機が広がることも考えられる。
政府は透明性が保たれているかを外部監査によって確認する仕組みも検討する。
生成AIの元となる基盤モデルは、インターネット上の公開データを学習しているとされる。ウィキペディアや公開された論文・特許文書、ブログなど多様なデータを対象にしているもようだ。
学ぶデータに偏りがあれば生成AIが生み出すコンテンツにも反映され、人種差別など社会に深刻な悪影響を及ぼしかねない。偏りがなく正しいデータを使っているかは、サービス提供者らが採否を決める際の判断要素になり、問題が起きた時の検証材料にもなる。
対話アプリなど生成AIを使ったサービスの開発者や利用者には安全性の確保を要求する。
生成AIを組み込んだソフトが不適切なコンテンツを生んだり、差別的な判断をしたりしないかを事前に把握させる。犯罪への悪用の可能性や、機密情報などデータ管理体制が十分かもチェックさせる。
顧客に説明責任を果たすため、米国とEUは生成AIが作成したコンテンツに「AI製」と明記するルールを検討する。日本の骨子案でも、製品・サービスやコンテンツに「AIを使っていること」を明記させる手法を議論すると盛り込んだ。(長尾里穂、デジタル政策エディター 八十島綾平、広沢まゆみ)
【年金世帯の消費シェア倍増、4割に デフレ脱却を左右】
12日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・国内の消費支出は65歳以上の世帯が4割
・年金暮らし世帯がGDPの15%を左右
・高齢者の消費活性化がデフレ脱却と連動
賃上げが30年ぶりの高水準となり、消費の押し上げ効果への期待が高まるなか、高齢化社会ならではの課題が浮かび上がってきた。国内の消費支出は65歳以上世帯が4割を占め、年金暮らしの世帯が国内総生産(GDP)の15%に影響する。物価高で賃上げが進んでも年金世帯は恩恵を受けにくい。高齢者の消費活性化がデフレ脱却を左右する。
「将来を考えるとなかなか思い切ってお金を使えない」。横浜市の70代の男性はこう話す。孫へのプレゼントなどには財布のひもは緩むが、大きな買い物は控えがちだ。
消費支出に占める高齢者の存在感は高まっている。世帯主が65歳以上の世帯の2022年の1カ月平均の支出は21万1780円だった。全体に占める割合は約39%になる。少子高齢化に伴い、20年前の約23%からほぼ倍になった。
団塊世代の65歳の到達が一巡したことなどから、10年代後半から頭打ち傾向にあるものの、団塊ジュニア世代が高齢者になる30年代からは伸びが再加速する可能性がある。
持ち家を借家とみなした場合に想定される家賃を除いた消費額をもとに第一生命経済研究所の星野卓也氏が試算したところ、年金暮らしと考えられる平均年齢74.5歳の無職世帯の消費額は22年に33%を占めた。
日本の22年の名目GDPの実額は556兆円で、5割を個人消費が占める。GDP全体の15%程度を年金世帯の消費が担っていることになる。
消費者物価指数は生鮮食品を除く総合の上昇率が6月まで10カ月連続で3%を超えた。今年の春季労使交渉の賃上げ率は連合の最終集計で3.58%と30年ぶりの水準だ。ただ賃上げの恩恵は年金世帯には及ばず、物価高で年金支給額は実質的に減る。
22年の物価上昇などを受け、既に年金を受け取っている68歳以上の人は23年度の支給額が前年度比1.9%増と、3年ぶりに増える。物価の伸び以上に年金額が増えない仕組みになっており、2.5%の物価上昇率を加味すると実質的にマイナス圏に沈む。
日本総合研究所の西岡慎一氏は今後、物価が2%伸びても給付を抑制する「マクロ経済スライド」の発動で受給済みの人の年金の伸びは1%程度にとどまると試算する。この場合、60歳以上で無職の世帯の消費は0.2ポイント押し下げられるという。
一方で高齢世帯は金融資産が多い。日銀の資金循環統計によると23年3月末の家計の金融資産は2043兆円と、過去最高だった。19年の全国家計構造調査では、65歳以上の無職世帯の夫婦の金融資産は1915万円で、全世帯平均より636万円も多い。
65歳以上世帯の金融資産の7割弱は現預金だ。物価高では現預金の価値が目減りする。今年は日経平均株価がバブル崩壊後最高値となるなど株高で「貯蓄から投資」の機運がある。多くの人が一定の知識を持って適切に資産形成できれば支えになりうる。
問題は将来の不安からお金を使おうとする意欲がそがれていることだ。生きている間に必要になる生活費や医療費が見通しにくいと手元の資産を使って積極的に消費しようという気持ちになりにくい。
人口に占める65歳以上の比率は20年時点で日本が28.6%と突出する。ドイツが21.7%、米国16.6%、韓国15.8%だ。そもそも米国に比べ日本は消費意欲が弱い。
適切に資産形成したり、ライフスタイルにあわせながら可能な範囲で働き続けたりと解はいくつもある。消費のボリュームゾーンとなった高齢者が過度に不安にならずに消費できる前向きな社会観をつくれるか。需要不足を脱しきれない日本がデフレに後戻りしないためのポイントの一つになる。(広瀬洋平、グラフィックス 佐藤綾香、映像 箕輪将人)
【外資の中国投資最少 4〜6月87%減、米との対立激化懸念】
同じ12日の日経特報メールは報じた。
【北京=川手伊織】外資による中国投資の減少が止まらない。4〜6月の対中直接投資は確認できる1998年以降で最少となった。ハイテク分野をめぐる米中対立への懸念に加え、中国の対外開放への疑念が背景にある。外資離れによるデカップリング(経済分断)が進めば、中国だけでなく世界の景気にも影を落としかねない。
中国国家外貨管理局によると、外国企業が4〜6月に中国で工場建設などに投じた対内直接投資は49億ドル(約7100億円)だった。前年同期と比べた減少率は87%と過去最大となった。
中国への直接投資は2022年4〜6月以降、5割を超す大幅な落ち込みが続く。22年は上海のロックダウン(都市封鎖)などの「ゼロコロナ」政策で外資が先行き不透明感を強め、投資が伸び悩む一因となった。
中国政府は23年1月にゼロコロナ政策を撤回。経済活動は正常化したが海外からの直接投資は減り続けた。中国商務省によると、外国企業が23年1〜6月に再投資を含めて実際に投じた資金(人民元建て)は前年同期より2.7%少なかった。
米中対立の激化が企業の投資計画に影響を与えている。中国米国商会は22年秋、約320の会員企業に、中国市場における事業リスクを聞いた。最も多かった 回答が「米中関係の緊張」で、66%の企業が言及した。
米国は友好国とサプライチェーン(供給網)を構築する「フレンドショアリング」を進める。米政府は9日、半導体や人工知能(AI)の分野で対中投資の規制強化を発表。合弁事業による新規投資も対象で、投資がさらに細る可能性がある。
中国の対外開放姿勢への疑念も、対中投資に影響している。中国米国商会が「今後3年間、さらに対外開放が進むという確信があるか」と聞いたところ「ある」との 回答は34%だった。61%だった2年前から低下した。
第一生命経済研究所の西浜徹・主席エコノミストは「改正反スパイ法の影響で貿易や投資が制限されるとの懸念が強まっている」と指摘する。スパイ行為の摘発対象を広げた同法は7月に施行した。外資企業には「いつ自社の社員が標的になるか分からない」との疑心暗鬼が広がっている。
ゼロコロナ政策後も中国経済は盛り上がりを欠く。成長をけん引してきた不動産市場が構造的な調整局面に入り、住宅など民間の資本形成は伸びにくい。労働力人口の減少も成長を下押しする。
中国は半導体産業などで自前の供給網の構築を目指すが、必要な装置や部品の海外調達が滞っている。技術革新や生産性向上のペースが落ちれば、中国経済の停滞が想定以上に長引きかねない。世界第2位の経済大国の成長鈍化は、世界経済にとっても重荷になる。
【EV生産「脱中国」も難題 米供給網、環境・人権指標6割悪化 分断・供給網 悩める新秩序(上)】
14日の日経ニュースメールは次のように報じた。
米中対立の激化を受けて世界のサプライチェーン(供給網)から中国を切り離す動きが進む。日米は友好国だけで原料や部品の調達を完結する新たな供給網の整備を急ぐが、製品のコストだけでなく、限られた資源の囲い込みによって環境や人権のリスクも高まることがわかった。脱中国が生む新秩序のひずみに備えはあるか。
【分断・供給網㊥㊦】
•日米友好国に中国の影 タイやメキシコ、牙城に揺らぎ
•世界でネット遮断常態化、損失3兆円 物流停止やEC破綻
世界の自動車産業のものづくりを一変する可能性のある法律が4月、米国で導入された。
電気自動車(EV)を北米で組み立て、電池部品の調達比率を50%以上などにすると1台あたり最大7500ドル(約100万円)の税額控除が受けられる。狙いは中国の排除だ。2029年には同100%にする必要がある。中国の部品を減らし、自国にEV産業を囲い込む。世界の分断を象徴する新法だ。
「法律に対応して柔軟に供給網を変えられるか。自動車メーカーの生死を左右する」。日産自動車の幹部は身構える。
日本経済新聞は九州大学と共同で米国製EVの供給網について環境や人権に関する28項目を調査した。分析には同大発のスタートアップ、aiESG(アイエスジー、福岡市)の人工知能(AI)を活用したシステムを使った。新法の対応によって6割にあたる16項目の指標が22年より30年に悪化することがわかった。
二酸化炭素(CO2)の排出量は14%減るものの、大気汚染につながる二酸化硫黄(SO2)は17%、粒子状物質「PM10」も2%それぞれ増える。人権関連では低賃金労働や児童労働のリスクなど10項目中、7項目が悪化する。
調査では22年に5割弱とみられる中国からの電池関連の調達を新法に基づいて30年時点でゼロとし、メキシコなどからの比率を増やした。補助金を得るには電池に使うリチウムなどの鉱物も自由貿易協定(FTA)締結国と日本からの輸入に限る必要がある。リスクが高まる原因は供給網の川上に潜む。
南米は対策遅れ
精製したリチウムの輸出で世界首位のチリ。シェアは21年時点で42%あり、2位の中国(37%)を引き離す。米とFTAを結んでおり、EV向け主要原料の供給地として脱中国のカギを握る。北米向けの輸出が急増する見込みだが、一部の環境への取り組みは中国よりも遅れている。
米エール大学の調査でチリと中国の環境指標を比べると「大気汚染物質の排出」でチリは世界153位。中国の91位を大きく下回る。EVのモーターなどに使う銅で世界2位のペルーも135位だ。九州大学の関大吉特任助教は「中国は環境関連装置の投資を強化してきた。米国のFTA締結国の多い南米は設備の更新に向けた投資が遅れている」と指摘する。
米ロードアイランド大学の調査では、児童労働など一部の人権関連の項目でメキシコやペルーなど中南米の対策は中国に比べて十分ではない。特にメキシコでは死亡事故など労働災害に課題がある。国際労働機関(ILO)によるとメキシコの労災リスクは世界5位だった。
米国は世界2位の巨大車市場だ。一方でEVの要である電池は中国企業が世界シェアの6割を抑える。車大手は中国以外から電池や部品を確保するため、供給網の見直しを急ピッチで進める。トヨタ自動車は約59億ドル(約8200億円)を投じて米国に電池工場を設ける。
世界貿易機関(WTO)によると、ブロック化による供給網の目詰まりで世界の生産額の5%にあたる5兆ドル弱が失われる。
原料調達まで可視化
重荷はコストだけではない。環境や人権は利益や品質などとともに最重要の経営目標として企業が対策を競い合う。ブロック化でこの流れが逆回転しかねない。英シェルによれば分断でイノベーションが停滞し2100年の世界の平均気温が現在より2.2度上がる。主要国の目標より温暖化が進むと警鐘を鳴らす。
ロシアのウクライナ侵攻は各国に経済安全保障の重要性を改めて認識させた。中国が覇権主義を強めるなか、友好国に供給網を再構築する動きは避けられない。企業は脱中国に向けて供給網の見直しに動くが、経済安保以外の課題も多い。供給網を末端まで把握し、人権や環境のリスクをまず確認する必要がある。
ホンダや日産など世界約120社は電池の製造過程の情報を記録するデータベースづくりを進める。原料の産出地や人権への対応状況を可視化する動きだ。ブリヂストンもタイヤの原料のゴム農園の監査を始めた。
原料の確保まで何重にも企業が連なる供給網の全容を把握することは容易ではない。取り組みは緒に就いたばかりだ。ブロック化のひずみに目をつぶらず、世界の新秩序の中で成長を目指す覚悟が企業に問われている。
調査の概要
九州大学発のスタートアップ、aiESG(アイエスジー、福岡市)が開発したサプライチェーン(供給網)の分析システムを使って調査した。同社が人工知能(AI)を用いて製品ごとに環境・人権関連の影響度を推計した。主要国や国際機関、人権関連の非政府組織(NGO)など約200の統計を用いた。
環境・人権関連で特に重要な28項目を2022年と30年で比較した。電池関連の調達比率はデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの林力一氏の試算を基にした。環境では二酸化炭素(CO2)や大気汚染物質の排出量、工業用水の使用量を分析。人権では児童労働や強制労働、労働災害が起こる可能性のある時間を「リスクアワー」としてそれぞれ算出した。
【コンビニ大手出店数ピークの3割 22年度、賃料増も重荷】
15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
日本経済新聞社が実施した2022年度のコンビニエンスストア調査で、セブン―イレブン・ジャパンなど大手3社の新規出店数は前の年度比21%減の1040店舗とピークの3割の水準だった。市場の伸びが鈍化する中、賃料などの費用も膨らみ、各社は1店舗あたりの収益向上を優先する姿勢を強めている。(詳細を16日付日経MJに)
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大手3社の出店数はセブンイレブンが前の年度比6%減の625店舗、ファミリーマートが10%増の187店舗、ローソンが53%減の228店舗だった。ローソンは21年度にポプラなどから一部店舗を転換した反動が出たほか、「首都圏で賃料の水準が上がり、店舗の質と採算性を重視した」(同社)ことから出店数が大きく減った。
不動産サービス大手のアットホームによると、22年度下期の50坪(1坪は3.3平方㍍)以下の貸店舗の1坪あたり募集賃料は、新宿など東京9エリアの1階部分で前年同期比1.7%増の2万5635円だった。名古屋・栄や大阪・梅田などと共に上昇傾向にある。
3社合計の22年度の新規出店数はピークの13年度の3732店舗から約7割減り、比較可能な07年度以降で最低だった。国内のコンビニ店舗数は約6万店に達し、市場に飽和感が強まっていることに加えて、食品などを強化するドラッグストアとの競争も激化し、出店余地が狭まっている。
一時期はそれぞれ年1000店超の出店を続けてきた3社の姿勢は変わっている。23年度の出店計画は、セブンイレブンが前年度比6%減の585店舗、ローソンが23%増の280店舗にとどまる。ファミマは回答しなかった。
こうした中で各社が力を入れるのが1店舗あたりの収益向上だ。セブンイレブンは特定の地域にちなんだ商品を販売する「地域フェア」で高単価の商品を伸ばし、22年度の1店舗あたりの売上高(全店平均日販)は前の年度比3.7%増の67万円。ファミマは飲料や衣料品などプライベートブランド(PB)商品の拡充で日販を押し上げた。
大手3社の22年度の全店売上高は11兆433億円だった。会計基準の違いを考慮せずに単純比較した場合、4%増だった。既存店のてこ入れ策が売上高を押し上げた。
新型コロナウイルス禍からの経済正常化で人件費が上昇し、人手の確保も難しくなる中で各社は省人化投資も進めている。ファミマは24年度までに飲料を自動で陳列棚に補充するロボットを300店舗に導入する。店員の作業がほぼ不要となり、店舗での作業時間を1日あたり2割程度削減できるとみている。
ローソンは23年度にもフランチャイズチェーン加盟店の商品発注を支援する人工知能(AI)システムを刷新し、全店に順次導入していく。発注量の分析に使う天候や顧客などのデータを増やし、店舗ごとの予測精度を上げて欠品や過剰発注などを減らす。
大手3社にミニストップや山崎製パン(デイリーヤマザキ)などを加えたコンビニ主要8社の22年度末の店舗数は前の年度比微減の5万7770店舗と3年ぶりに前年度実績を下回った。一方、日本チェーンドラッグストア協会(東京・千代田)によると、ドラッグストアの店舗数は22年度末で前の年度末比2%増の2万2084店。5年前に比べ1割増えた。
【対中輸出8カ月連続マイナス 7月13.4%減、経済減速響く】
17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
財務省が17日に発表した7月の貿易統計速報によると、中国への輸出額は1兆5433億円で前年同月比で13.4%の減少となった。減少は8カ月連続だ。日本にとって米国と並ぶ最大の輸出先である中国の景気が減速し、日本の貿易収支が黒字基調にならない一因となっている。今後、米中対立や半導体分野の輸出規制の影響が鮮明に出る懸念もある。
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中国では不動産不況の長期化に伴い、実体経済にも悪影響がおよび始めている。中国国家統計局は2割超で高止まりする若年失業率の公表を一時停止すると発表した。工業生産の伸びも鈍化した。日本や世界の成長率を押し下げるリスクが強まっている。
7月の日本全体の貿易収支は787億円の赤字だった。赤字幅は94.5%減少したものの、黒字に転換した6月に続かず2カ月ぶりの赤字となった。
資源高が一服し、輸入は13.5%減の8兆8036億円だった。輸出は0.3%減の8兆7249億円で、29カ月ぶりに前年同月比で減少した。半導体の不足が緩和した自動車の輸出が28.2%増と全体を押し上げたものの、中国向けの輸出が減って足を引っ張る構図となっている。
中国向けの輸出額を品目別にみると、自動車や部品を含む輸送用機器は24.6%減の1388億円。半導体など電子部品は16.8%減の1140億円だった。プラスチックなど化学製品は8.7%減の2631億円。鉄鋼や非鉄金属も減少で、軒並み前年同月を割った。
中国との貿易をめぐっては米中対立に伴う不透明感も強い。米国は22年10月に半導体の先端技術・製造装置の輸出を禁じた。日本政府も23年7月に先端半導体の製造装置などを規制対象に加え、事実上足並みをそろえた。米政府は8月、米企業による中国投資を規制する新たな制度を導入することも発表した。
こうした情勢が日本からの輸出の減少につながっているのか、これから表れるのかは、統計上はまだはっきりしない。7月の日本の半導体製造装置の中国への輸出額は前年同月比13.7%の増加だった。
第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストは中国への輸出額の減少について「米中対立を受け、中国に依存していたサプライチェーン(供給網)の多様化を進める企業活動の影響が出ている可能性がある」と指摘している。
【積水化学「曲がる太陽電池」30年までに量産 中国勢追う】
同じ17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
積水化学工業は2030年までに次世代の太陽電池「ペロブスカイト型」の量産に乗り出す。軽くて折り曲げられる同電池では中国勢が量産で先行するが、積水化学は強みとされる耐久性を生かして屋外での需要を開拓し、中国勢を追い上げる。
ペロブスカイト電池は太陽光パネルで主流のシリコン製と比べ、重さは10分の1程度と軽く、折り曲げやすい。ただ、水分に弱く耐久性に課題があり、現在ではスマートフォン向けなど用途の広がりに欠ける。積水化学は液晶向け封止材などの技術を応用し、液体や気体が内部に入り込まないよう工夫。10年程度の耐久性を実現している。
100億円以上を投じて製造設備を新設し、30年時点で年数十万平方メートルのペロブスカイト型太陽電池を生産する。発電量は数十メガワット。フィルムに結晶の膜を塗布しロール状に巻いて連続生産する。
すでに30センチメートル幅のフィルムでエネルギー変換効率15%を達成した。シリコン型の20%以上に及ばないが、技術開発を進めて変換効率をさらに高めていく。より効率の良い1メートル幅での生産の準備を進めており、コスト競争力も高める。
太陽光パネルの分野では、かつてシリコン型の開発・実用化でも日本勢が先行していたが、中国勢の攻勢で多くが撤退に追い込まれた。同様の事態を避けるため、日本政府は4月、ペロブスカイト型太陽電池の普及支援を打ち出し、公共施設で積極的に設置するなど需要を創出したり、量産技術の開発や生産体制の整備を支援したりする。
ペロブスカイト型の技術支援はエネルギーの安定供給も背景にある。主な原料のヨウ素の世界シェアは日本が2位で国内で調達しやすく、供給網が寸断された場合に備えることもできる。積水化学は政府の支援策によっては生産量を増やす可能性もある。
日本は山間部が多いなど、従来型太陽電池に適した立地が少なくペロブスカイト型の市場性は大きいと言われている。富士経済(東京・中央)によると、世界のペロブスカイト型の市場規模は35年に1兆円になる見通しだ。
【中国、再開できぬ建設現場 地方政府系の債券利回り上昇】
18日の日経ニュースメールは次のように報じた。
中国で地方政府傘下のインフラ投資会社の資金繰りが悪化している。不動産市況の悪化で資金不足に陥り、建設工事の中断も目立ち始めた。地方政府傘下の投資会社が発行する債券残高は約13兆6000億元(約270兆円)に上り、一部は利回りが10〜20%上昇している。対処を誤れば金融リスクの引き金を引きかねない。
中国内陸部にある貴州省第二の都市、遵義市。新市街地で開発する30階超のオフィスビルの建設現場を訪れると工事が止まっていた。「今年に入って1度しか給料をもらっていない」。現場でたった1人寝泊まりしながら働く警備員はこう嘆く。
建設するのは遵義市傘下の遵義道橋建設集団。地方政府傘下で「融資平台」と呼ばれる投資会社の一つだ。インフラ開発を目的とした債券発行や銀行融資で資金調達し、遵義市郊外に巨大な国際会議場や高級ホテルを建設してきた。
しかし、もともとの不採算プロジェクトに、不動産不況と新型コロナウイルスを抑え込む中国の「ゼロコロナ」政策が直撃し資金繰りが悪化。代金未払いなど多数の訴訟を抱えた。政府施設の新設や華美な内外装を規制してきた国務院(政府)も「不適切」と指摘する事態となった。
巨額債務を抱えた遵義道橋建設集団は、2022年末に銀行融資の条件見直しを公表した。返済期限を20年としたうえで、金利を年3.0〜4.5%とする内容だった。従来の条件は明らかにしていないが、同社にとって大幅に有利な内容とみられる。
同社に融資する銀行が負担を求められたことで、中央・地方政府の支援姿勢に疑問符がついた。追加の資金調達は難しくなり、30階超のオフィスビルの工事再開は見通しが立たないままだ。
遵義道橋建設集団のような融資平台が発行する債券は、中国で「城投債」と呼ばれる。中央政府は14年まで地方政府による地方債の発行を原則禁止してきた。城投債はそれでも資金を調達したい地方政府の抜け穴の一つとなってきた。
中国の調査会社Windによると、城投債の発行残高は約13兆6000億元。5年で2倍超に膨らんだ。米シティグループの推計によると、城投債に銀行融資を加えた融資平台の有利子負債は22年末で約47兆元、国内総生産(GDP)の39%に達するという。
▼城投債 地方政府傘下のインフラ投資会社が発行する債券のこと。地方政府の支援を前提に、一般の民営企業や国営企業が発行する社債と区別される。22年の発行額は約4兆6000億元で、平均金利は4%弱だった。
城投債は「暗黙の政府保証」があるという前提で、格付け会社は高い格付けを付与してきた。だが、地方財政を支えてきた土地使用権の売却収入は急減し、地方政府の支援余力は急激に低下している。城投債の購入者は国内の銀行やファンド、保険会社など。一部は外国人や個人も購入しており、デフォルトすれば影響は大きい。
貴州省の西隣にある雲南省の省都、昆明市。空の玄関口として12年に全面開業した昆明長水国際空港では周辺開発が想定通りに進んでいない。空港周辺の経済開発区や住宅、道路開発などを担う昆明空港投資開発集団が資金繰り難に陥ったためだ。
中国の格付け会社、中誠信国際信用評級によると、昆明空港投資開発集団の22年の不動産開発収入はゼロ(21年は11億元)だった。新規事業としてトウモロコシやナツメなどの販売に乗り出したが、資金繰り対策には焼け石に水だ。
昆明空港投資開発集団が発行した城投債はデフォルトを懸念する投資家の売り圧力で、流通市場での債券利回りが12%を超えた。市場関係者の一人は「(同社を含め)昆明市政府傘下の投資会社の大部分は市場での資金調達能力を失っている」と先行きを危惧する。
外資系など有力企業の立地に乏しい雲南省や貴州省は、インフラ投資で成長を底上げしようとしてきた。観光業や不動産・建設業への依存度が高く、不動産不況やゼロコロナ政策の影響を強く受けた。こうした都市は中国各地に存在し、どこで 信用問題が表面化してもおかしくない状況だ。
習近平(シー・ジンピン)総書記は足元の経済政策の重大課題として「不動産部門に起因するシステミックリスク、金融・地方債務リスクの防止と解消」などを挙げる。
UBSグローバルウェルスマネジメントの胡一帆氏は、「約3年の新型コロナ流行で、地方政府の支出が増え、地方財政は一段と悪化した」と話す。膨らんだ債務のツケを誰がどう負担するのか、対処を誤れば社会不安を引き起こしかねない。(貴州省遵義市で、土居倫之)
【山口・上関町、中間貯蔵施設の調査受け入れ】
同じ18日の日経速報メールは次のように報じた。
中国電力と関西電力が山口県上関町に計画する使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、西哲夫町長は18日、建設に向けた調査の受け入れを表明した。同日開いた臨時町議会後、西町長は「中国電力に対して調査受け入れを報告した」と述べた。
中国電と関電は中間貯蔵施設の建設が可能かどうか、半年ほどかけて掘削調査などを実施する見通しだ。
町議会では冒頭、西町長が中国電の提案について説明し、「私としては受け入れる考えだ。町議の話を聞いて総合的に判断したい」と話した。町議がそれぞれの意見を述べたところ、賛成意見が過半数を占めた。採決は取らず、西町長が最終的に判断した。
西町長は中国電に調査を受け入れる条件として、町民に対して丁寧に情報提供すること、具体的な計画が策定できれば住民説明会などを開くこと、周辺市町に対しても適切な情報提供を実施することなどを求めた。
中国電は上関町内に原子力発電所の建設を計画しているが、2011年の東京電力福島第1原発事故後、着工は未定のままとなっている。西町長が町財源の確保につながる新たな地域振興策を求めたのに対し、中国電が中間貯蔵施設の建設計画を提示した。中国電単独での建設や運営は難しいことから、関電に共同開発を持ちかけた。
国内の使用済み燃料はすでに貯蔵能力の約8割が埋まっている。青森県六ケ所村の再処理工場の稼働が遅れるなか、新たな中間貯蔵施設の確保が急務となっている。
今後、調査開始まで「少なくとも1カ月はかかる」(中国電)。建設可能と判断すれば町に具体的な計画を提示することになる。
施設の規模などは未定だが、埋め立て地を含めて160万平方メートルに及ぶ町内の原発建設用地内に建設することを想定している。
【日米韓首脳、毎年会談で合意 経済安保も協力拡大】
19日の日経速報メールは次のように報じた。
【ワシントン=秋山裕之】日米韓3カ国の首脳は18日(日本時間19日午前)、米ワシントン近郊で会談した。年1回以上は首脳らが各レベルで会談すると申し合わせた。北朝鮮に加え、対中国を念頭に置いた幅広い協力に広げる。半導体などの強固なサプライチェーン(供給網)をつくる。
バイデン米大統領が米首都ワシントン近郊の山荘「キャンプデービッド」に岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を招いた。
会談後に共同記者会見に臨んだバイデン氏は3カ国の防衛協力について「前例のないレベルで協力し情報を共有する」と表明した。「台湾海峡で平和と安定を確保し(中国の)経済的な威圧と戦っていく」とも述べた。
首相は「3カ国の戦略的連携の潜在性を開花させることは時代の要請だ。安全保障協力を新たな高みへ引き上げていく」と強調。尹氏は「3カ国共通の利益を脅かす域内の緊急な懸案が発生した場合、迅速に協議して対応するチャンネルを立ち上げることにした」と説明した。
3首脳は「キャンプデービッドの精神」と題する共同声明をまとめた。首脳間を含め3カ国で有事や平時を問わずに円滑に意思疎通するメカニズムを明記。閣僚や国家安全保障会議(NSC)高官の定期協議や各分野での実務者による対話枠組みを設ける。
日米韓の枠組みは伝統的に対北朝鮮への対応を主軸に置いてきたが、今回は対中国を意識した記述を拡充した。
不法な海洋権益に関する中国の主張と行動に関し「インド太平洋地域の水域における一方的な現状変更の試みに強く反対する」と記した。台湾海峡の平和と安定が「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素」だと指摘した。
経済安全保障は日米韓3カ国の協力の柱のひとつに位置づける。半導体や人工知能(AI)、蓄電池、重要鉱物などの特定物資に着目してサプライチェーンの情報を日米韓の各国大使館で情報交換する。
局長級の「インド太平洋対話」を立ち上げる。中国が影響力を強める東南アジア諸国連合(ASEAN)や太平洋島しょ国などにインフラや気候変動対策などの開発支援で協力する。10月にも3カ国対話を予定する。
自衛隊と米韓両軍は対潜水艦やミサイル防衛の定例共同演習をする。北朝鮮が発射したミサイルの探知情報をリアルタイムで共有する取り組みを年内に始めると合意しており、進捗状況を確かめた。サイバー防衛に関する実務者協力も発足させる。
共同声明とは別に3カ国の中長期的な協力指針となる成果文書「キャンプデービッド原則」を発表した。共通の価値に基づく「自由で開かれたインド太平洋」の推 進などをうたう。
「会談では北朝鮮による日本人拉致問題についても意見を交わした。首相が「拉致問題は時間的な制約のある人道問題だ」との認識を示し、バイデン、尹両氏が早期解決を支持した。
【日米韓首脳の共同声明の要旨】
日本政府が発表した日米韓の指針「キャンプデービッド原則」と3カ国首脳の共同声明「キャンプデービッドの精神」の要旨は次の通り。
【キャンプデービッド原則】
日米韓3カ国は国際法の尊重、共通の価値に基づく自由で開かれたインド太平洋を推し進める。力または威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。
日米韓3カ国の安全保障協力の目的は、地域全体の平和及び安定を促進し強化すること。
核兵器不拡散条約の締約国として、不拡散へのコミットメントを順守する。核兵器が二度と使用されないようあらゆる努力を尽くす。
【キャンプデービッドの精神】
歴史的な機会にインド太平洋及びそれを越えた地域で、我々の協力を拡大する。大きな野心を新たな地平へと引き上げることにコミットする。
日米同盟と米韓同盟の間の戦略的連携を強化し、日米韓の安全保障協力を新たな高みへと引き上げる。首脳間を含め3カ国の定期的かつ適時の連絡が円滑になるよう、3カ国間の連絡メカニズムを改善させる。
少なくとも年に1度、3カ国の首脳、外相、防衛相及び国家安全保障局長間でそれぞれ会合を開催する。3カ国の外交及び国防当局間でのおのおのの既存の日米韓会合を補完する。
財務相間での初の日米韓会合を開催する。毎年開く新たな商務・産業大臣会合も立ち上げる。
年1回の日米韓インド太平洋対話を立ち上げる。偽情報に対処するための取り組みで連携する方法についても議論する。
東南アジア諸国連合(ASEAN)及び太平洋島しょ国に対する地域的な能力構築の取り組みについて協調する。
南シナ海における中国による危険かつ攻撃的な行動に関して、インド太平洋地域の水域におけるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。
国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する。台湾に関する我々の基本的な立場に変更はなく、我々は両岸問題の平和的な解決を促す。
北朝鮮に対し核・弾道ミサイル計画を放棄するよう強く求める。全ての国連加盟国に対し全ての関連する国連安全保障理事会決議を完全に履行することを求める。
北朝鮮によるかつてない数の弾道ミサイル発射、並びに通常の軍事的活動を強く非難する。
北朝鮮によるサイバー上の脅威と戦うため、協力を推進する新たな日米韓ワーキンググループを立ち上げる。
日米韓は前提条件なしに北朝鮮との対話を再開することにコミットしている。北朝鮮における人権の尊重を促進するための協力を強化することにコミットする。拉致問題、抑留者問題、帰還していない捕虜の問題の即時解決への共通のコミットメントを再確認する。
米国は、日本及び韓国の防衛に対する米国の拡大抑止のコミットメントは強固であり、米国のあらゆる種類の能力によって裏打ちされていることを明確に再確認する。
日米韓3カ国は組織化された能力及び協力を強化するため、毎年名称を付した複数領域に及ぶ3カ国共同訓練を定期的に実施する。
2023年末までに北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイムでの共有を運用開始する。
3カ国はミサイル警戒データのリアルタイム共有のための技術的能力を試験する初期的措置を実施した。
3カ国はグローバル・サプライチェーン(供給網)の混乱に関する政策連携を強化する。経済的威圧に対抗するための準備をする。 早期警戒システムの試験運用開始に向けて緊密に連携する。
最先端技術が違法に海外に窃盗されることを防ぐため、技術保護の取り組みに関する協力を強化する。
米国、日本及び韓国のカウンターパートとの間で、3カ国の執行機関間の情報共有及び連携を深化させるための第1回目の交流を実施する。
軍事転用可能な能力のために我々の技術が流用されることを防ぐため、輸出管理に関する日米韓の協力を強化していく。
3カ国の国立研究所間の新たな協力を追求する。科学、技術、工学、数学分野での共同研究開発を含め、科学技術イノベーションを強化する。
宇宙安全保障協力に関する対話、とりわけ宇宙領域での脅威、国家宇宙戦略及び宇宙の責任ある利用に関する対話の更なる強化を追求する。
人工知能(AI)に関する国際的なガバナンスを形成し、安心で安全な信頼できるAIを確保するためのそれぞれの取り組みを確認する。
我々はウクライナ支援において結束している。ウクライナへ支援を提供し、ロシアに対して協調した強力な制裁を科し、ロシアへの エネルギー依存の低減を加速させることにコミットする。
【日本、米国および韓国で協議するコミットメント】
日米韓3カ国の首脳は、共通の利益および安全保障に影響を及ぼす地域の挑戦、挑発および脅威に対する3カ国の対応を連携させるため、3カ国の政府が相互に迅速な形で協議することにコミットする。
このコミットメントは、国際法や国内法上の権利または義務を生じさせることを意図するものではない。
【世界半導体投資、4年ぶり減 誘致競争で供給過剰懸念】
20日の日経速報メールは次のように報じた。
半導体設備投資にブレーキがかかっている。世界主要10社の2023年度の投資額は前年度比16%減の1220億ドル(約17.5兆円)で4年ぶりに減少する見通し。将来の成長期待をにらんだ政府主導の投資誘致で工場の建設ラッシュが続いたが、中国景気の減速懸念もあり、各社は投資に慎重になっている。足元では価格に下押し圧力が働いている。
米国・欧州・韓国・台湾・日本の半導体大手10社の設備投資計画をまとめた。前年度を下回るのは19年度以来で、過去10年間で最大の落ち込みだ。スマートフォンやパソコンに使うメモリー半導体への投資が前年度比44%減と落ち込み幅が大きく、パソコンやデータセンターの頭脳として使われる演算用半導体の投資も14%減少する。
投資を減らすのは、米インテル、台湾積体電路製造(TSMC)、米グローバルファウンドリーズ、米マイクロン・テクノロジー、韓国のSKハイニックス、合弁で工場を運営する米ウエスタンデジタルとキオクシアホールディングスを1社換算で数えた計6社。
過去10年で設備投資が最大の落ち込みとなるのは、米中の技術覇権争いから近年、振興策などで各国が競うように生産体制を強化し、投資需要を先食いしてきた影響が大きい。22年度の大手10社の投資総額は1461億ドルと過去最高の規模だったが、英調査会社オムディアの南川明氏は「回路線幅が10〜14ナノ(ナノは10億分の1)の製品などで供給過剰になる懸念がある」と指摘する。
23年6月末時点で棚卸し資産(開示している9社合計)は前年同期比1割増の889億ドル。半導体不足が深刻化する前の20年に比べて7割増の水準に拡大した。過剰在庫を警戒してマイクロンは24年8月期に3割減産し、設備投資も4割削減する。SKハイニックスも減産幅をさらに5〜10%広げ、投資を前年度比で50%以上削減する。
中国の景気減速も冷や水を浴びせる。インテルの23年度の投資額はアナリスト平均で3年ぶりに減少に転じる見込み。パトリック・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は7月の決算会見で「中国は景気回復が遅れている」との見方を示した。パソコンの一大消費地である中国市場の先行きが不透明なたため、工場関連の投資を絞る。
足元で半導体の取引価格は低迷。新型コロナウイルス禍で特需が続いていた半導体メモリーは昨年夏から供給過剰に転じ、価格は下落が続く。一時記憶用のDRAM、長期記憶用のNANDの8月の価格はいずれも前年同月比で4割超下がっている。日本総合研究所の立石宗一郎氏は「各社の減産幅が十分ではなく、価格に下押し圧力が働いている。需要が回復し、価格が本格的に上昇するのは来年になる」とみる。
近年の工場建設ラッシュで必要な技術者を賄えない動きも出てきた。米国半導体工業会(SIA)によると、米国で半導体技術者(半導体業界で従事するコンピュータサイエンティストを含む)が30年までに6万7000人が不足すると予測。TSMCは技術者不足を理由に米アリゾナ州で建設中の工場の稼働時期が24年末から25年に遅れる。23年度の設備投資が5年ぶりに減少する見通しだ。
もっとも、中長期で半導体需要は伸び続けるとの市場の見方は変わりない。米マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、世界の半導体市場規模は30年までに21年の約6000億ドルから約7割増えて1兆ドルに達する見通し。
けん引役は電気自動車(EV)と人工知能(AI)に使う半導体の爆発的な需要増加だ。英オムディアによると、世界の半導体需要のうち、車載半導体は現状で約1割にとどまるが、EVの普及で車両機能を制御する半導体やパワー半導体の使用量が飛躍的に増える。車載半導体の市場規模は25年に830億㌦と22年から5割拡大と見込む。
AI用半導体もEVとともに半導体需要増加をけん引する。AI半導体は生成AIサービス向けデータセンターに必要な部材で、独スタティスタによるとAI半導体の需要は25年には22年比3倍となり、30年には13倍に伸長する見通し。
投資削減に踏み切った半導体大手の多くも「工場建屋だけ先に建てて、ベストなタイミングで量産ができるように備えている」(ボストン・コンサルティング・グループの小柴優一氏)という。在庫調整が一服すれば、各国・各地域が官民挙げて取り組む半導体供給網の構築への動きも再び活発になりそうだ。(向野崚)
【中国追加利下げ、伸びぬ融資に危機感 景気再浮揚に時間】
21日の日経速報メールは次のように報じた。
中国人民銀行(中央銀行)は21日、2カ月ぶりの利下げに踏み切った。需要不足でデフレ懸念が強まり、銀行融資が落ち込んでいることに危機感を抱く。ただ下げ幅は市場予想より小さかった。金融緩和で潤沢なマネーを市場に供給しても消費や投資が増えない「流動性のワナ」に陥りつつあるとの見方もある。政府は大規模な財政拡張に慎重で、景気の再浮揚には時間がかかりそうだ。
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事実上の政策金利である最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)のうち、優良企業向け貸出金利の参考となる1年物を年3.45%とし、0.1%下げた。住宅ローン金利の目安となる期間5年超の金利は年4.20%で据え置いた。
人民銀行は15日、LPR計算の基礎となる市中銀行向けの1年物金利を0.15%下げた。これに対し、LPR1年物の下げ幅は0.1%と小さかった。
銀行が利ざやを確保しやすいよう小幅な下げにとどめた可能性がある。さらに期間5年超の金利を据え置いたのは、住宅ローン金利の低下を一律ではなく銀行の体力に応じて促すためとみられる。ドルとの金利差が広がり、一段の人民元安につながることを警戒した可能性もある。
丸紅中国の鈴木貴元経済研究総監は「利下げ余地を温存したというより、金融政策に手詰まり感が出ている」と指摘した。
追加利下げに踏み切ったのは、景気の減速で企業や家計の資金需要が弱いためだ。7月の人民元建て新規融資(返済分を差し引いた純増額)は前年同月比50%減の3459億元(約6兆9000億円)だった。2009年11月以来13年8カ月ぶりの低い水準となった。
このうち住宅ローンなど家計向けは3カ月ぶりにマイナスとなった。新規融資より返済が多かった。雇用など将来不安から住宅販売が落ち込み、新規の住宅ローンが増えなかった。一方、金利の低下などで預金や投資で稼ぐ収益が減った家計が借金を前倒し で返済する動きが広がった。
家計は耐久財を含めた大型消費に及び腰で、民間企業も新たな投資を控える。内需不足で7月の消費者物価指数(CPI)は2年5カ月ぶりに前年同月比で下落。デフレ懸念が強まっている。
人民銀行と国家金融監督管理総局、証券監督管理委員会は18日、金融機関幹部らを集めたテレビ会議を開催した。融資を増やすとともに、貸出額が大幅に増減するのは避けなければならないと指摘し、企業や家計の資金調達コストを下げるよう指示した。
景気の下振れ懸念が強まった08年のリーマン・ショック直後、中国は4兆元に及ぶ景気対策で需要を創出した。15年ごろは「チャイナ・ショック」と呼ばれ景気が減速していたが、力強い消費を背景に住宅市場の活性化などで息を吹き返した。
最近の景気減速をめぐり、共産党が7月に開いた中央政治局会議は「最たる問題は内需不足」との認識を示した。だが早期に需要を生み出す効果がある財政出動には距離を置く。
第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミストは「08年の対策が過剰債務の元凶となったため二の足を踏んでいる」と分析する。新たな財政刺激策が地方財政難に拍車をかける恐れもある。
財政が動かない分、金融政策にしわ寄せがいく。それを見透かした市場では追加金融緩和の予想が広がる。
中国の証券会社、中信証券は「年内の追加利下げもありうる」とみる。銀行の資金調達コストを下げて融資を促すため、人民銀行が市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す預金準備率を下げるとの予測もある。
ただ金融緩和の効果を疑問視する声も少なくない。相次ぐ利下げをうけ、中国の住宅ローン金利は22年後半から過去最低を更新 するが、住宅販売は落ち込みが続く。
「設備投資の計画などない。まず生き残らないと話にならない」。南部の広東省東莞市で従業員40人超のアパレル向けボタン取り付け機の工場を経営する劉さんは打ち明ける。
ここ数年は海外からの注文が落ち込んだままで、国内でも価格競争が激しくなっているという。「生産を拡張するどころか、規模を縮小している同業他社もある」と資金の借り入れや投資拡大には否定的だ。
広東省の国有企業で働く30代男性の趙さんは「いま不動産に投資しようとは思わない。かつてのように値上がりするとは限らないからだ」と話す。
中国の格付け機関、東方金誠の王青チーフマクロアナリストは「個人ローンは金利に敏感なため、金利低下局面で借り入れを様子見する動きが出やすい」と指摘する。西浜氏は「マネーが高い金利を求めて海外に向かおうとしても当局の資本規制が阻み、資金が国内の銀行などに滞留してしまう」と流動性のワナに陥るリスクを指摘する。(川手伊織、広州=川上尚志)
この間、下記の録画を視聴することができた。 (1)BS6報道1930「岸田政権へ向かう怒り…「サラリーマン増税」か? 超難題マイナカードは、自民党女性局フランス研修の“軽率”、内閣改造 人で問われること」8月3日。 (2)ETV特集「ミッドワエー海戦3418人の命を悼む 第二部 残された者たちの戦後、日米の戦死者調査の末に作家・澤地久枝さんは何をおもいのか」5日。 (3)NHKスペシャル「いのち眠る海~最新調査で明かす太平洋戦争~戦争中海で失われた35万の命、沈みゆく船で助けをもとめ命つきた兵士、死を覚悟しながら最後まで生きようとしたパイロット、最新技術で迫る「海の死」の実相」5日。 (4)NHK総合こころの時代「見えない痛みを託されたフォトジャーナリスト豊崎博光。米国の核実験が行われたマーシャル諸島で被爆した人々を撮影してきて「伝えてほしい」と託された見えない被爆の痛みとは?」6日。 (5)BS世界のドキュメンタリー「プーチンと5人の米大統領 プーチンが権力を握って以来、アメリカでは5人の大統領が入れ替わった、バイデンはどう対抗するのか」6日。 (6)NHKスペシャル「原子爆弾・秘録~謎の商人とウラン争奪戦~原爆の原料となったウランをひそかにアメリカに運び込んだ”謎の商人“の未公開資料が見つかった。それに託された真実とは」6日。 (7)BS1 欲望の時代の哲学2023「マルクス・ガブリエル ニッポンへの問い。東京滞在中のドキュメント、いま日本に必要なものとは?」6日。 (8)NHKドキュメント「伝承の期限どうつなぐ? ヒロシマの記憶」7日。 (9)BS6報道1930「サウジが狙うウクライナ和平の仲介役とは?」7日。 (10)BS6報道1930「ウ軍「ミサイル改造」ロシアへ届く長距離化」8日。 (11)BS6報道1930「”核抑止“があったからプーチン氏侵攻?原爆の日に考える”核廃絶“」9日。 (12)NHK総合歴史探訪「消えた原爆ニュース。広島と長崎に投下された原子爆弾、被害の実態を報じることが禁止された時代があった。真相はなぜ隠され、どのように明かされたのか? 原爆報道を巡る知られざる物語」9日。 (13)BS6報道1930「安いニッポンを脱却か。決断した企業の舞台裏 本物なのか賃上げ株高」10日。 (14)
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