変わりつつある世界(4)
前稿(3)が取り上げたのが2013年4月11日午前までであった。
その後、11日午後、日経続報メールは次のように報じた。
【ガス由来の水素も「環境適合」 IEAが指標、投資後押し】
国際エネルギー機関(IEA)は、化石燃料からつくる水素でも一定の条件を満たせば「クリーン」とみなす指標をまとめた。これまで環境に配慮した水素製造の基準づくりが課題となっていた。世界共通の基準とし、企業が投資しやすい環境を整備する狙い。
水素は燃やしても二酸化炭素(CO2)が出ない次世代エネルギーと位置づけられる。水素には、再生可能エネルギーの電力でつくる「グリーン水素」、天然ガスなど化石燃料からつくり、その際に出るCO2を回収する「ブルー水素」といった複数の分類がある。
それぞれの分類の定義はバラバラで、基準の曖昧さが水素市場の拡大を阻んでいるとの指摘があった。特にブルー水素は化石燃料からつくるため、どうすれば環境配慮とみなされるか共通の指標を求める声があった。
日米欧など約30カ国からなるIEAは水素がクリーンかどうかを、水素製造時に出るCO2排出量の割合を示す「炭素集約度」を使って決める指標をまとめた。1キログラムの水素製造で出るCO2が7キロを下回ればクリーンとみなす。
例えば化石燃料から水素を製造して7キロ以上のCO2が出ても、CO2を大気に放出しない回収技術などを用いて実質の排出量が7キロより少なくなれば許容する。
IEAの指標の順守は義務ではないものの、基準を明示することで企業が投資しやすい環境を整える。日本は5月にも水素戦略を改定する方針で、当面は天然ガス由来のブルー水素を軸に普及を進める構えだ。
脱炭素社会に向け、水素の利用は世界全体で増える見通しだ。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、世界が2050年に温暖化ガスの排出の実質ゼロを目指す場合、水素は最終エネルギー需要の12%を占めるという。
世界の水素関連企業でつくる「水素協議会」と米マッキンゼー・アンド・カンパニーがまとめたリポートによると、50年の世界の水素・派生品の需要は6億6千万トンに達する。
【トヨタと「革新のジレンマ」 破壊的EVは生まれるか】
同じ17日、日経ニュースメールは次のように次のように伝えた。
エレクトロケミストリー(電気化学)と総称するらしい。電気自動車(EV)に使うリチウムイオン電池や燃料電池、水素燃料、合成燃料と、化学反応で電気を生んだり、電気によって化学反応を促したりする技術のことだ。
7日に記者会見したトヨタ自動車の佐藤恒治社長はそれらを「マルチパスウェイ(全方位)」と呼んだ。エレケミすべてを網羅的に研究し、世界中でどんな脱炭素技術が求められても対応できるようにするという。
半導体のような飛躍は困難
化石燃料のガソリンに代わる動力源の候補は多種多様で、共通するのは車が走るときに二酸化炭素(CO2)を出さない点だ。
一方で、ガソリンと同様にどれを選んでも絶対に不可能だとされる点もある。半導体のように飛躍的な技術進歩を遂げることだ。
比較しよう。半導体は「ムーアの法則」が提唱された1965年以降、トランジスタの素子が58年で85億8993万4592倍にも増えた計算になる(当初の「1年で倍増」から、75年に「2年で倍増」に修正されたのを考慮)。コンピューターは劇的に性能が向上し、価格も安くなった。
だが、車はどうか。世界で最も売れた乗用車、トヨタの「カローラ」の場合、66年の誕生から燃料1リットルあたりの走行距離が20キロ前後(ガソリンエンジン仕様)で大きく変わっていない。
環境や安全面の規制が強まり、装備品が増えて車体が重くなったのが一因だ。車体重量が2倍になったことを考えれば、カローラの進歩は尊敬に値する偉業ではあるが、それでも半導体の進化のペースには遠く及ばない。
EVでは米中勢を仰ぎみる位置
物理と化学の違いといってもいい。エレケミで最も有望なのはリチウムイオン電池を使ったEVだが、その時代がきても電池の進化の速度はそう変わらない。ゴールドマン・サックス証券の湯沢康太・投資調査部マネージング・ディレクターの試算によると、電池から取り出せるエネルギー量(エネルギー密度)の進歩を2000年以降でたどると、年間3〜5%ほどだという。
そうしたペースが関係したのかもしれない。日本ではムーアの法則が支配する電機産業が00年前後から衰退したのに対し、自動車産業は無縁でいられた。
化石燃料とエレケミを融合したハイブリッド車を生み出したことも日本勢の存在感を高めた。だが、化石燃料を徹底的に嫌う風潮が広がったうえに、進歩が遅くても社会に受容される域に電池技術が到達したことで、EVの普及は加速する兆しが強まった。
だからこそ、トヨタの会見は注目された。端的にいえば、同社は化石燃料とハイブリッドの技術に加え、EVを除くエレケミでは世界一だ。もちろんEVも技術水準は高いが、直近の販売実績をみれば、米テスラや比亜迪(BYD)など中国企業を仰ぎみる位置に甘んじている。
世界シェアが1割もあるのにEVだけでは1%もない。競争は始まったばかりだが、思い出されるのはデジタルカメラに数年で追い詰められたフィルム業界の運命だ。トヨタの会見では26年に150万台という販売目標が示されたが、それ以外は戦略がみえにくい。
迫るゲームチェンジの現実
同社の金城湯池といわれるタイをみてみよう。トヨタを筆頭に日本企業9社で自動車販売の9割を占める市場だが、くさびを打とうとするのが中国企業だ。特にBYDが予定するEV工場には、タイ政府が手厚い支援を表明した。
手をこまぬくうちに海外勢が押し寄せてゲームチェンジを迫る。消費者がデジタル技術と相性のいいEVを欲しはじめている現実を日本のメーカーはどこまで把握し、動いているか。
EVは25年ごろに、新車販売の15%を占めるあたりで技術発展の踊り場を迎える――。リチウムイオン電池でノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏は数年前に自著で書いている。エレケミ特有の進化の限界を指摘したものだが、同時に「突破不能と思える壁を乗り越える存在も現れる」と予想した。
EVは普及しっこないと考えれば失敗の始まりだ。特にタイ、インドのような新興国は安くて環境にいいEVに社会の発展を託し、技術のリープフロッグ(一足飛び)を生む可能性を秘める。
「第2の総合電機」になるな
3年前に亡くなった「イノベーションのジレンマ」の著者、クレイトン・クリステンセン氏は生前「トヨタのような企業こそ、EVという新技術でアジアやアフリカの無購買層を購買層に変える『破壊的イノベーション』に挑むべきだ」と雑誌の取材に答えている。
トヨタの過去がまさにそうだった。創業した1937年以降の生産・販売実績をみれば、成長の原動力が「新技術」と「購買層化」にあったことがわかる。
総合電機という言葉がかつてあった。半導体から白物家電、発電機器まで事業を様々に持てば、景気の変動に左右されにくい経営ができあがる。だが一方で、時間軸も投資の仕方も異なる事業を複数抱えることで、専業企業の変化のスピードについていけなくなる。そんな教訓を帯びた言葉だ。
優れた企業ほど、保守的で慎重になり、失敗する。そんなイノベーションのジレンマとともに、トヨタのマルチパスウェイという全方位経営が「第2の総合電機」に陥らないよう、注意が必要な局面を迎えている。
【G7外相、ウクライナへ支援継続 対中ロでインドと連携】
同じ11日、日経ニュースメールは伝えた。
主要7カ国(G7)の外相会合は17日、ウクライナ情勢を話し合った。G7としてロシアへの厳格な経済制裁とウクライナ支援を続ける方針で一致した。ロシアによるベラルーシへの核兵器の配備を非難した。
G7外相は16日に長野県軽井沢町のホテルで開幕した。議長を担う林芳正外相のほか、ブリンケン米国務長官、クレバリー英外相、フランスのコロナ外相、ドイツのベーアボック外相らが参加している。
林外相は17日の会合で「戦争が長期化するなかで、G7をはじめとする同志国の結束を維持すべきだ」と強調した。南半球を中心とした新興・途上国「グローバルサウス」に触れ「連携強化することが重要だ」と述べた。
新興・途上国経由で軍事転用可能な半導体がロシアに流れたり、ロシアの戦費調達につながったりしているとの懸念が強まっている。G7として「第三国などからのロシアへの武器提供に対処」する方針で一致した。ロシア制裁への抜け穴を塞ぐ狙いがある。
林外相は国際秩序を維持するために「インドとの連携」が不可欠とも指摘した。インドは9月に開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の議長国で、新興・途上国のなかでも発言権が大きい。
インドは米中対立のはざまで等距離外交を進めていたが、係争地を巡る問題で中国とぎくしゃくした関係が続いている。中ロの対立軸が鮮明になる中でインドの動向がカギを握るとの認識を示した。
G7外相間で「インド太平洋」を巡る議論を定例化することも決まった。日本政府には東アジア情勢への関心が薄れがちな米欧をひき付けておく狙いがある。
G7外相会合は18日に閉幕する。共同声明で「台湾海峡の平和と安定」の重要性を確認する。中国の台湾への軍事的威嚇を批判する。両岸問題の平和的解決を求める内容も改めて盛り込む。
【米EVの税優遇、米3社11車種のみ 日欧韓すべて対象外に】
18日早朝の日経ニュースメール【ニューヨーク=堀田隆文】によると米政府は17日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際に、税優遇の対象となる車種の新たなリストを明らかにした。対象はテスラなど米国メーカーの11車種に限られ、日欧韓メーカーの車はすべて外れた。米政府はEVを巡って北米での生産・調達を最優先としており、対応が遅れる米国外メーカーは厳しい競争環境に置かれている。
米政府は自国市場のEVについて、消費者が最大7500ドル(約100万円)の税額控除を得られる販売支援策を採っている。2022年8月成立の歳出・歳入法で支援対象を北米生産車に限るなど新たな要件を定め、段階的に適用してきた。4月18日から新たな要件を適用するのにあわせ、対象車種も更新した。
18日から新たに①車載電池の部品の一定割合を北米でつくる②電池に使う希少金属など重要鉱物の一定割合を米国や米国が自由貿易協定(FTA)を結ぶ国などから調達する、という2つの条件を適用する。新たな要件が加わるため、販売支援のハードルは高くなり、対象車種数もこれまでの14車種から11車種に減った。
メーカー別では、最大手テスラの主力車種「モデルY」「モデル3」に加え、米ゼネラル・モーターズが6車種、同フォード・モーターが3車種という内容になった。対象車種すべてを米国メーカーが占めた。
一方、歳出・歳入法の要件のもとでも、これまでは税優遇の対象になっていた日欧韓のEVはすべて対象から外れた。日産自動車のEV「リーフ」が外れたほか、韓国・現代自動車と独フォルクスワーゲン(VW)のEVも税優遇を受けられなくなった。いずれも、車載電池に関する条件をクリアできなかったためとみられる。
米国では4万〜5万ドルがEVの売れ筋になっている。最大7500ドルの税控除は価格競争力を維持するうえで無視できない。米国外のメーカーは今後、税優遇を受けるために北米生産を加速したり、調達網を見直したり体制整備を急ぐことになりそうだ。
電池を巡る要件の追加は、米国勢にとっても厳しいものになっている。新興企業リヴィアン・オートモーティブのEVは対象外となった。テスラについても、モデル3の一部グレードは支援額が7500ドルから半分の3750ドルに減額となった。
それでも、リストはすでに北米に生産・調達基盤を持つ米国メーカーが優位な結果になっている。歳出・歳入法のもとでの米政府のEV販売支援策を「米メーカーへの過度な優遇措置」と批判してきた日欧韓の政府の反発が強まる可能性がある。
【中国の新車、23年は3台に1台がEVに 上海ショー開幕】
同じ18日の日経ニュースメールは次のように伝えた。
【この記事のポイント】
・中国の新車の3台に1台がEVになり、普及期に入る
・値下げ合戦でEVメーカーの優勝劣敗が進む
・中国の強みは電池の世界シェアが7割に上る点にある
世界最大級の自動車展示会「上海国際自動車ショー」が18日、中国・上海で開幕した。中国では電気自動車(EV)など環境対応車を巡る争奪が激しく、EVを中心とする新エネルギー車市場は2023年に前年比3割増の900万台まで伸びるとされる。新車の3台に1台がEVになり、普及期に入る。比亜迪(BYD)をはじめとした現地勢に加え、米テスラなど欧米勢も販売攻勢をかける中で日本勢の出遅れが鮮明になっている。
中国は世界で最も大きなEV市場で、中国のEVメーカーは200社程度あるとされる。中国汽車工業協会によると、ガソリン車などを含めた23年の新車販売台数は22年比3%増の2760万台となる見込み。EVを中心とする新エネ車はこのうち900万台で3割を占めそうだが、「23年には新エネ車が1000万台近くまで伸び、35年には少なくとも2500万台と、新車販売の8割を占める」(清華大学の欧陽明高教授)との見通しもある。
米国で22年に販売したEV(乗用車・小型トラック)は81万台でEVシェアは6%、欧州主要18カ国のEVの販売台数は153万台で全体に占める比率は15%だ。日本国内の22年度のEV販売台数(軽自動車含む)は前の年度比3.1倍の7万7238台に増えたが、乗用車全体の2.1%にとどまり、中国のEV市場の成長スピードが際立つ。
その中国市場の足元で進むのは欧米勢による値下げ攻勢だ。中国シェア2位のテスラは23年1月から中国で販売するセダン「モデル3」や多目的スポーツ車(SUV)「モデルY」の価格を引き下げた。前年比で最大14%安く、同社が欧米で販売するより5割近く安いケースもある。テスラの動きに米フォード・モーター、独フォルクスワーゲン(VW)なども追随し、現地勢で中国シェアトップのBYDもSUVの「宋プラス」について、トヨタ自動車もSUVの「bZ4X」について、値引きなどでそれぞれ価格を抑えた。
中国のEV市場での競争は激しさを増しており、テスラが火を付けた値下げ合戦でEVメーカーの優勝劣敗が明確になる可能性もある。一方、消費者を囲い込もうとする競争の結果、価格や車種の裾野が急速に広がっている。従来は高級車と格安車で二極化していたが、普及期に入る中、その中間の車種も増えている。
みずほ銀行ビジネスソリューション部の湯進主任研究員は中国のEV販売傾向を3つの価格帯に分けて分析する。23年1〜3月の販売をみると、低価格の100万円以下、中価格の200万〜300万円、高価格の400万〜600万円の3つの価格ゾーンが占める販売台数のシェアはそれぞれ15%を超えた。
特に200万〜300万円を購入した層は21年に23%、22年に32%だったが、23年1〜3月には37%まで増えた。需要が100万〜400万円に集中し、ピークが1カ所のガソリン車とは傾向が異なる。中国EV市場の攻略には中間層の開拓が重要になりそうだ。
マークラインズによると22年末時点で日本メーカーの中国の工場出荷台数ベースのEV販売シェアは1%に満たない。ガソリン車と売れ筋の価格構成が異なる中、EVで出遅れた日本メーカーは中国で新たな価格戦略を迫られる。
トヨタの現地合弁会社、一汽トヨタは22年末、EVの新型セダン「bZ3」の予約販売を開始。価格は18.98万元(約370万円)からとし、中間層以上の需要を取り込む。
一方、ホンダの中国の現地合弁会社は3月から値引き施策に踏み切った。現地合弁会社の広汽ホンダと東風ホンダが22年に投入したEV「e:N」シリーズの第1弾モデルは17.5万元(約340万円)から。4月末までに注文した顧客に3万元(約60万円)値引きするキャンペーンを始めた。
みずほ銀行の湯氏は「現地メーカーとも価格競争が激化する中で、日本車メーカーはどのセグメントで優位性を発揮していくのかを明確にすることが、販売拡大のカギとなる」と指摘する。
今後のEV戦略では電池の確保も重要になる。中国のEVメーカーの強みは中核部品の電池の中国の産業規模が既に世界シェアの7割にのぼる点にある。値下げしても供給網が現地にあるためコストを削りやすく、収益悪化を抑えられるとみられている。
世界のEV販売でテスラに次ぐ2位のシェアを持つBYDは電池を祖業とし、車載電池メーカーとしても世界シェア上位に位置する。電池だけでなく、電池以外の基幹部品の駆動用モーターやパワー半導体なども自ら生産し、価格競争力を高めてきた。日本勢は新たなEVブランドの浸透だけでなく、材料など供給網構築で現地メーカーとの協力も欠かせない。
アリックス・パートナーズの鈴木智之マネージングディレクターは「中国メーカーが電池や部品などのハードウエアやソフトウエアで競争力を持つようになった中で、日本車メーカーはいかに協業関係を作っていくかが重要になる」と語る。(上海=田辺静、東京=川上梓)
中国市場の売れ筋EV、コスパも日本超え
中国市場で販売されるEVは激しい競争にさらされ、コストパフォーマンス(コスパ)で日本国内で流通する商品を上回っているようだ。コスパの目安として価格1万円当たりの航続距離が1キロメートルであることを示す直線を引くと、同じ車両を日本でも供給しているトヨタ自動車や日産自動車のEVを含め、中国市場での売れ筋商品はすべて直線の上に位置する。航続距離の算出方法が異なるため一律の比較は難しいが、決して「安かろう悪かろう」ではないことが見て取れる。
日本国内でも日産が販売するリーフの「e+」など一部グレードでは1万円当たりの航続距離が1キロを上回る車もある。ただ、商品ラインアップは500万〜800万円の高価格帯に集中しており、庶民にとっては高根の花だ。1月から日本で乗用車カテゴリーとして発売したBYDのEV「ATTO3」(小型SUV)は440万円で航続距離は485キロ。消費者はコスパを見極めており、本格的なEVの国内普及には300万〜400万円で航続距離が300〜400キロ程度のEVが求められている。
【G7の懸念、中国に直接表明」 外相共同声明に明記 「力による一方的な試みに強く反対」】
18日の日経ニュースメールは次のように報じた。
主要7カ国(G7)は18日、長野県軽井沢町で開いた外相会合で共同声明をまとめた。軍備増強する中国に関し「我々は中国に率直に関与し、懸念を直接説明することの重要性を認識する」と盛り込んだ。
東アジアの安全保障に米欧も関与する方針を明示した。東・南シナ海での中国による一方的な現状変更の試みに「深刻な懸念」を表し「強く反対」すると打ち出した。
「台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認」した上で「両岸問題の平和的解決を促す」と書き込んだ。
中国に関しては「国際社会の責任ある一員として行動するよう改めて求める」と指摘し「対話を通じて建設的かつ安定的な関係を構築する」と表現した。「国連憲章の目的と原則を堅持し、威嚇、威圧、脅威、武力の行使を控える必要性を想起する」と唱えた。
今回のG7外相会合で主要議題の一つだった「自由で開かれたインド太平洋」は「重要性を改めて表明する」と掲げた。北朝鮮の相次ぐミサイル発射を「強く非難」した。
ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ「世界のいかなる場所でも力や威圧で、平穏に確立された領域の状況を変更しようとする一方的な試みに強く反対する」と明記した。
厳しい対ロシア制裁と強力なウクライナ支援の継続方針を明確にした。「ロシア軍の即時かつ無条件の撤退」を要請し、ベラルーシへの核配備と威嚇は受け入れられないと主張した。中国などがロシアに武器支援する可能性を念頭に、第三国によるロシアへの迂回支援の停止を求めた。
法の支配に基づく「自由で開かれた国際秩序を強化する決意」を示した。「グローバルな課題への対処」との表現で南半球を中心とする新興・途上国「グローバルサウス」が抱える課題にともに取り組む考えを打ち出した。
食料やエネルギーのほか経済安全保障で重要な物資の調達などで協力拡大を見込む。共同声明に経済安保の項目を入れ「経済的威圧に対抗する必要な手段を備える」と表記した。
核軍縮を巡っては中国に対応を促す文言を入れた。「核戦力の透明性向上」を要求した。日本が推進する「ヒロシマ・アクション・プラン」をもとに核兵器のない世界の実現へ努力する必要性を訴えた。
「世界の核兵器数の全体的な減少を継続し、逆行させてはいけない」と確認した。世界の指導者に広島と長崎を訪問するよう促し、軍縮・不拡散教育の重要性を提起した。
外相声明を採択し、G7外相会合は閉幕した。5月に広島で開く首脳会議(広島サミット)に成果を反映する。
【中国GDP4.5%増 1〜3月実質、ゼロコロナ終了で加速】
18日昼の日経ニュースメール【北京=川手伊織】によれば、中国国家統計局が18日発表した2023年1〜3月の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比4.5%増えた。22年10〜12月の2.9%増から加速した。新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策が終わり、外食や旅行などサービス消費が持ち直した。不動産開発や自動車販売は成長の足を引っ張った。
1〜3月の前年同期比増加率は、日本経済新聞社と日経QUICKニュースが調べた市場予想の平均(3.4%)を上回った。季節要因をならした前期比での伸び率は2.2%だった。22年10〜12月(0.6%)から拡大した。先進国のように前期比の伸び率を年率換算した成長率は9.1%程度となる。
生活実感に近い名目GDPは前年同期から5.5%拡大した。22年10〜12月の増加率は3.5%だった。
18日はGDPと同時に他の統計も公表した。
百貨店、スーパーの売り上げやインターネット販売を合計した1〜3月の社会消費品小売総額(小売売上高)は5.8%増加した。全体の1割を占める飲食店収入が13.9%増と大きく伸びた。
対照的に耐久消費財はさえなかった。自動車は2.3%、通信機器は5.1%それぞれ減少した。国内消費は明暗が分かれた。
工場の建設などを示す固定資産投資は5.1%増だった。22年通年と同じ伸びだった。政府が景気下支え役として期待するインフラ投資が引き続き堅調だった。
一方、地方経済が依存してきた不動産開発投資は5.8%減少した。新築住宅の販売面積が1.4%のプラスに転じたが、在庫の圧縮が進み新たなマンション開発が増えるまでには時間がかかりそうだ。
外需は経済成長率を押し上げる要因となった。輸出から輸入を差し引いた1〜3月の貿易黒字は前年同期を3割超上回った。東南アジア諸国連合(ASEAN)向けが好調だった輸出が増加した一方、耐久消費財などの国内販売が振るわず輸入は減少した。
1〜3月の生産は3.0%増で、22年通年の伸び(3.6%)には届かなかった。販売不振をうけ自動車やパソコンの生産量が落ち込んだ。
4〜6月の実質経済成長率は1〜3月より拡大するとの見方が多い。前年同期からの反動増という要因が強い。上海市が22年春、新型コロナの感染拡大を封じ込めるためロックダウン(都市封鎖)に踏み切り、中国経済全体が混乱した。
企業や家計の先行き不安を拭い、投資や消費など内需の拡大で成長を加速させるには雇用や所得の改善が欠かせない。
【三井住友、AT1債を1400億円発行へ 金融正常化へ一歩】
18日夕方の日経ニュースメールは次のように報じた。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は1400億円規模のAT1債(永久劣後債)を発行する方針を固めた。予定通り発行されれば、クレディ・スイス・グループの救済で同社のAT1債が無価値になった3月中旬以降、世界の主要行で初となる見通しだ。日本のAT1債はクレディ・スイスと同様の事態が起きにくいほか、世界的に金融不安への警戒が和らぎつつあることが背景にある。金融システムの正常化に向けた一歩となりそうだ。
19日に発行条件を決める。5年2カ月後に償還が可能になる債券を890億円、同じく10年2カ月の債券を510億円発行する。2本とも、信用度を示す国債に対する上乗せ金利(スプレッド)は1.71%を予定する。前回(2022年12月)発行した、5年6カ月後に償還ができる債券に比べ0.33%拡大した。
3月中旬のUBSによるクレディ・スイスの救済が決まった際、同社のAT1債は政府支援を受けたとして全額が無価値となった。株式より安全性が高いとみなされてきた金融商品だっただけに、投資家の不安が拡大。QUICK・ファクトセットによると、クレディ・スイスの救済決定以降「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)」によるAT1債の新規発行は止まっていた。
ただ、日本のAT1債はクレディ・スイスと仕組みが異なる。全国銀行協会によれば、邦銀が発行するAT1債は、公的支援を受け入れても元本が毀損することはないという。
クレディ・スイスの救済以降、連鎖的な金融機関の破綻などは起きていないことも発行の追い風になったようだ。米インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出するAT1債の代表的な指数ではスプレッドが足元で5%台前半と、クレディ救済直後に比べ2%近く縮小する(債券価格は上昇する)など、投資家の警戒感は和らぎつつある。
AT1債は株式と債券の中間の性質を持つ商品で、調達した資金を自己資本に算入できる。
【大企業健保、赤字5600億円超で過去最大 23年度見込み】
20日の日経ニュースメールは次にように報じた。
健康保険組合連合会は20日、主に大企業の会社員らが入る健保組合の2023年度の予算集計を発表した。全国およそ1400組合を合算した経常収支は5623億円の赤字となる。赤字幅は過去最大で、2805億円だった22年度の2倍を見込む。
医療費の伸びに加えて高齢者医療への拠出が膨らんでおり、現役世代にとって重荷となっている。
赤字を見込む健保組合は22年度から130組合増えて1093組合となった。その割合は全体の8割近くに達する。黒字組合は137組合減って287組合にとどまる。
医療費の支払いに充てる保険給付費は22年度比5.5%増えて4兆7820億円となった。予算計上の土台となる22年度の医療費が新型コロナウイルス禍で膨らんでおり、同水準の支出が続くとみた。
日本の医療保険制度は現役世代が高齢者医療費の一部を賄う仕組みだ。拠出金は進む高齢化を反映して22年度比で7.3%増えて3兆7067億円となった。なかでも75歳以上の後期高齢者への支援金は10%程度増える想定とした。
高齢者医療への拠出金は増え続ける公算が大きい。経常支出の4分の1ほどは後期高齢者向けの支援金が占める。65〜74歳の前期高齢者向けの納付金とあわせると、保険料のおよそ4割が高齢者医療の下支えに使われる計算だ。
保険料率を引き上げる組合も増える。22年度から23年度にかけて135組合が引き上げ、平均保険料率は22年度から0.01ポイント上昇して9.27%となった。後期高齢者医療制度が発足した08年度と比べると2ポイント程度伸びた。
赤字幅の拡大を反映し、収支の均衡に必要な実質保険料率は10.1%に上昇。初めて10%の大台を超える。これまで経常収支の赤字額が最も大きかったのはリーマン・ショックの影響を受けた09年度決算の5234億円だった。
健保組合は従業員と勤務先が毎月払う保険料をもとに医療費の支払いなどの保険給付、健康診断などの保健事業を担う。主に大企業の従業員と家族ら 2800万人ほどが加入する。
政府は少子化対策の拡充に充てる財源として社会保険料からの拠出を検討している。保険料が上乗せになれば現役世代の一段の負担増につながりかねない。高齢者も含めた幅広い負担のあり方や、社会保障制度全体の見直しによる歳出改革も欠かせない。
給付費の抑制を巡っては、健保組合がジェネリック医薬品(後発医薬品)の使用促進などで給付費を抑える取り組みを続ける。給付を抑える仕組みと合わせて負担の平準化に向けた検討も必要となる。
【3月訪日客181万人 インバウンド消費「コロナ前」視野】
19日の日経速報メールは次のように報じた。
新型コロナウイルス禍で低調だった訪日外国人(インバウンド)消費に弾みがついてきた。3月の訪日客数は181.7万人と、コロナ前の2019年3月の66%に戻った。米欧や中東からの大幅な増加が全体を押し上げた。1人当たりの単価が上がり、23年の訪日客消費の「コロナ前」水準の回復も視野に入ってきた。
日本政府観光局(JNTO)が訪日客数を19日に発表した。単月で150万人を超えたのは20年1月以来となる。前月比では23%増、前年同月比では27.5倍だった。このまま順調にいけば年間2000万人超に届く。
国・地域別では米国が20.3万人(19年比15%増)、ベトナムは5.3万人(12%増)、中東は1.2万人(5%増)で、コロナ前を上回った。
中国は前月の2倍の7.5万人となった。3月1日に中国からの渡航者に対する水際対策を緩和し、追い風となった。
全日本空輸(ANA)は3月の中国路線の運航便数を前年同月比2.5倍に増やした。旅客数は4倍に増えた。日本航空(JAL)も3月の中国路線の旅客数は前月の2倍以上だった。
中国政府は日本への団体旅行を許可しておらず「本格的な需要回復には至っていない」(JAL)。過去最多の訪日客数だった19年の3188万人には直近の単月ベースで7割弱と及ばない。
単価の上昇により、消費額全体は回復している。観光庁は23年1〜3月期の訪日客の1人あたりの旅行支出が21万2000円(速報値)だったとの調査を公表した。19年通年実績(約15万8000円)から3割増えた。
富裕層ほど早く観光へと戻る傾向が影響するが、円安などを背景に単価は上がりつつある。中国以外ではオーストラリア(35万8000円)やフランス(30万円)が高額で、長期滞在などで単価が上がっているようだ。
財務省・日銀の国際収支統計をもとにインバウンド消費の傾向をみると、22年12月、23年2月に3000億円を超え、16〜17年の水準まで回復した。23年通年ではコロナ前を超すとの見方が出ている。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「23年のインバウンド消費は5兆円を超え、コロナ前の4.8兆円を上回る可能性がある」と指摘する。
百貨店などの見込みは強気だ。三越伊勢丹ホールディングスでは、22年度の伊勢丹新宿店の売上高が3000億円を超え、1991年を上回って過去最高を更新したようだ。好調な国内消費に加えて、インバウンドの回復も後押しした。単月ベースでは2、3月はいずれも19年比で2〜3割増だった。
大丸松坂屋百貨店などを傘下にもつJ・フロントリテイリングは24年2月期の百貨店の免税売上高を前期比2.3倍の440億円と見込む。過去最高だった20年2月期(601億円)の7割強の水準だ。
観光は政府の成長戦略の柱になっている。足元ではホテルなどでの人手不足の解消が重要になっている。富裕層の消費拡大や都市部への客足の偏在解消なども課題になる。(金子冴月、逸見純也、嶋田航斗)
■中国からの本格回復がカギに
今後、いっそうの回復には中国人客の動向がカギを握る。Jフロントの若林勇人取締役は「中国本土を結ぶ直行便の増便といった伸びしろもある」と語る。
中国からの訪日客はコロナ前は国・地域別で最多だった。「団体旅行が許可されたら、より多くの中国人が日本を訪れるだろう」。大連市の旅行会社の女性幹部はこう話す。
中国研究機関の中国旅行研究院は、中国を出入国する旅行客が23年通年は延べ9000万人超になると予想する。22年比の約2倍で、コロナ禍前の約32%の水準だ。
中国旅行大手の携程旅行網(シートリップ)によると、4月29日〜5月3日の大型連休の海外旅行の予約数は前年同期の18倍以上に増えた。
コロナ禍で落ち込んだ航空便数が回復し、平均価格が大きく下がったことが需要につながった。旅行先の上位はタイ、香港、日本、シンガポール、マレーシアという。
中国政府が団体旅行を認める60カ国には東南アジアやアフリカ、南米などの新興国が多い。米国だけでなく同国と歩調をあわすことの多い英国、オーストラリア、日本、韓国は含まれていない。
日中外交筋には「米国寄りの立場を取る日本と中国の関係は冷え込んだままだ。中国側は団体旅行解禁を政治的なカードとして温存している可能性がある」との見方もある。(上海=渡辺伸)
【近づく戦争への活用、AI競争力が覇権左右 問われる倫理】
20日の日経速報メールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・人工知能を搭載した銃は15カ国超に配備されている
・AIにより軍隊や戦略も変わる可能性がある
・強権的な国家ほど有利に開発、人類の脅威に
相手の兵士をロックオンすると、人工知能(AI)が400メートル先の群衆の中から自動で検知する。標的の動きや風速を計算して照準が追尾し、あとは引き金を引くだけ――。イスラエルのスマートシューター社が開発したAI銃。2月下旬にアラブ首長国連邦(UAE)で開かれた武器展示会では実際の追尾力を試すデモに参加者が殺到した。
無人航空機(UAV)に取り付け、複数の武器をネットワークでつないで狙い続けることも可能だ。米国やインドなど15カ国超が導入しているという。
国連は報告書でUAVなどの自律型致死兵器システム(LAWS)の危険性に触れ、リビアの内戦で使われた可能性を指摘する。ロシアのウクライナ侵攻でもAIを搭載した兵器が投入されているもようだ。
AIは兵器のみならず戦略も変える。米軍は米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)などと組み陸、海、空、宇宙の部隊の情報を統合してAIで戦略を立案する「全領域統合指揮統制(JADC2)」構想を進める。中国はAIなどの先端技術を人民解放軍に導入し今世紀半ばに米軍を追い抜く国家目標を掲げる。
米AI国家安全保障委員会(NSCAI)の報告書ではAIの開発競争は半導体技術が左右すると指摘し、現状のままでは中国などに「主導権を握られる」と警告する。米国はAIの研究開発予算を年3兆5千億円確保する方針を掲げた。一方、中国も研究開発費を毎年7%以上増額する計画を掲げる。
調査会社アライド・マーケット・リサーチの推計では自律型兵器の市場規模は2030年に301億ドル(約4兆円)にのぼり、10年で2.6倍に拡大する。
法務情報サービスの米レクシスネクシスによると、AI関連の特許保有数は騰訊控股(テンセント)、百度(バイドゥ)の中国勢が19年ごろから米IBMや韓国サムスン電子、米マイクロソフトなどを急追。21年にツートップの座を確立した。民間で中国優位が進んでいる。
米グーグルは18年にAIが音声で予約代行などを担うサービスを発表すると、詐欺への悪用懸念で批判を浴びた。米国防総省とドローンのAI制御で提携する試みが社内の反発で撤回した経緯もあり、倫理面の制約は多い。
防衛省防衛研究所の小野圭司特別研究官は「中国の強権体制は大きな優位性だ」と話す。民主主義国が法規制や社会倫理に 縛られる中、開発が認められる場は技術者にとって研究も進みやすいためだ。
「AIは軍隊を明確に変えている」。2月にオランダで開かれた初のAI兵器の規制会議「REAIM(リーム)」で、同国のフックストラ外相が米中など約50カ国の参加者にルールづくりの必要性を訴えた。米政府はAI兵器に関する説明責任などを盛り込んだ宣言を発表した。
「人に従え、されど人を害するな」。SF小説家のアイザック・アシモフが1942年に示した「ロボット工学三原則」。80年前の空想世界からの課題に、人類は今まさに直面している。
【米スペースXの大型ロケット、初の打ち上げ試験で爆発】
20日の日経速報メール【ヒューストン=花房良祐】によると、米起業家のイーロン・マスク氏が率いる米スペースXは20日、大型ロケット「スターシップ」の打ち上げ試験を初めて実施した。宇宙船からブースターの切り離しに失敗し、数分後に上空で爆発した。
テキサス州南部の宇宙基地から打ち上げた。当初の計画では約3分後に「スーパーヘビー」と呼ぶブースターから宇宙船を切り離し、ブースターはメキシコ湾、宇宙船は1時間30分後に太平洋のハワイ沖にそれぞれ着水するはずだった。
マスク氏は打ち上げ前、成功の可能性は半分だとの認識を示していた。
スペースXは原因の究明を急ぎ、数カ月後に再度の打ち上げを目指す方針だ。マスク氏はツイッターで「数カ月後の次回の打ち上げに向け、多くのことを学んだ」と述べた。同社はこれまでも再利用が可能なロケットなど先端技術の開発に取り組んできたが、失敗を重ねながら設計や体制の見直しに生かしてきた経緯を持つ。
スターシップを構成するブースターと宇宙船は、合計の高さが約120メートルで過去最大級だ。メタンを燃料とするエンジン33基を搭載していた。米航空宇宙局(NASA)が1960〜70年代の月面探査計画「アポロ計画」で使用したロケットよりも大きく、打ち上げの難度は高いとされる。
NASAは2025年にも月面に宇宙飛行士を送り込む「アルテミス計画」を進めており、スペースXはスターシップをもとにNASA向けに月面への着陸機を開発する計画だ。このほか、ZOZO創業者の前沢友作氏がスターシップによる月の周回旅行も計画している。
将来的にはブースターと宇宙船を再利用できるように開発し、打ち上げコストを削減する。予定する打ち上げ能力は150〜250トンで、スペースXの既存ロケット「ファルコンヘビー」(約64トン)を大幅に上回る。
将来は複数のロケットを打ち上げ、燃料タンクを地球の周回軌道上に配置する。宇宙船は宇宙空間で燃料を補給し、月だけでなく火星まで有人探査船を送り込む計画もある。マスク氏はスターシップに100人が搭乗できるようになると言及し、人類が火星に入植する構想も抱いている。
スペースXはテキサス州南部のメキシコとの国境近くに宇宙基地を建設した。宇宙船の打ち上げ試験を繰り返しており、高度約1万メートルに到達したこともある。宇宙船にブースターを搭載して打ち上げを試みたのは今回が初めてだった。
【「AIネーティブ」揺れる教育 人づくりの未来どう開く AI Impact(5)】
21日の日経速報メールは次のように報じた。
受け入れか、排除か。優れた対話能力をもつ人工知能(AI)「ChatGPT(チャットGPT)」などの扱いを巡り、学びの場が揺れている。
「教育現場におけるAI活用のフェーズが変わった」。3月下旬、チャットGPTを含むAIの活用指針を公表した東京外国語大の青山亨理事は語る。従来のAI活用は機械翻訳のように「言語を学ぶ補助」の枠内にとどまっていた。
自然な文章で高度な質問に答えるチャットGPTが教育現場で普及すれば、言語を学ぶ意義自体が問われかねない。それでも東京外大は「テクノロジーの進化は止められない」(青山理事)と、授業での活用ルールを教員と学生で定めるよう促した。
東京大も4月、AIだけを使った論文作成は認めないが活用法の議論を始める方針を示した。上智大は教員が許可した場合を除き、リポートや論文を書く際に使うことを禁止した。
世界でも対応は割れる。米ニューヨーク市は学校での使用を禁止した。一方でシンガポールのチャン・チュンシン教育相は「受け入れることを指導しなければならない」と容認する。
これからは幼少期からAIが身近な「AIネーティブ」が社会を担う。「既に答えがある問題」はAIで対処できる。知識の暗記と再生のうまさを評価する教育は意味をなさなくなる。
高校教諭出身でAIを使った教育に詳しい佐藤俊一・元山形大教授は「疑問を持つことは人間にしかできない。課題を見つけて問いを立て、定まった正解がない中で最適解を模索する『探究型』学習への転換が急務だ」と訴える。
AIを使いこなすには人も能力を高め続けなければならない。世界ではチャットGPTを高度な作業に利用する技能「プロンプトエンジニアリング」を習得する動きが拡大し、国内のビジネス現場でも体制づくりが猛スピードで進む。
生活関連サービスを手がけるくふうカンパニーもその一つで、4月に入社した社員約20人にまず教えたのはAIを使う際の基礎的素養や注意点だった。約1週間の準備期間を経てチャットGPTを活用した新事業案の発表会も開いた。
同社の目標は今の世にない画期的なサービスの創出だ。そのためにはAIからアイデアを引き出し、新たな価値を生み出す社員を育てる必要がある。急速な環境変化に対応するため、カカクコムやクックパッドの経営に携わってきた穐田誉輝最高経営責任者(CEO)は新卒社員に「(AIの力を)自ら感じ、使いこなしてほしい」と呼びかける。
AIによる研究が進む囲碁でも人間同士の勝敗を分けるのは思考力となる。
史上最年少の13歳11カ月でタイトルを獲得した仲邑菫女流棋聖は「AIが示す手だけ打っていても失敗する。自分の棋風に合った手を打つのが一番大切だ」と語り、国内第一人者の井山裕太王座も「AIをどう自分なりの手に落とし込むかが大事」と強調する。
AIが進化するなかで人が学ぶべきことは何か。答えを見いだしたとき、人づくりの未来が開く。=おわり
【東大がIBM量子計算機導入、国内で最高性能 23年秋稼働に】
21日の日経速報メールは次のように報じた。
東京大学は今秋にも、川崎市内の研究施設に米IBM製の最新鋭の量子コンピューターを設置する。性能の目安となる「量子ビット」の数は127で、国内に置かれるものとしては最高となる。バッテリー開発などへの応用が期待され、トヨタ自動車や三菱ケミカルグループなどが参加する産学協議会が利用する。実用化に向けた研究が国内で一段と進む。
東大と日本IBMが21日、都内で記者会見を開き明らかにした。東大は2021年7月に国内初となる汎用型のIBM製量子コンピューターを川崎市内の施設に導入した。新たに最先端機種を設置し、今秋にも稼働を始める。
計算の基本素子である量子ビットの数は127で、従来の27量子ビットから約5倍になる。理化学研究所が3月にクラウド上で利用可能にした国産初号機の64量子ビットを上回る。東大の相原博昭・副学長は記者会見で「宇宙や創薬、人工知能(AI)、金融などの重点分野の研究を進展させ、量子によるイノベーションをもたらすことを目指す」と述べた。
量子コンピューターは複雑な問題をスーパーコンピューターの1億倍以上の速さで解く可能性を持ち、自動車や化学、創薬をはじめとする様々な産業の変革を後押しすると期待されている。IBMによると、今回導入する127量子ビットの計算機が北米以外で稼働するのは初めて。
東大が使用権を専有し、協議会に参加するトヨタやなどの企業が利用する。高性能な計算機を頻繁に活用できる環境が国内で整備されれば、企業が関連する研究成果を創出しやすくなる。
現状の量子コンピューターは動作が不安定で計算の際にエラーが生じるなど課題を抱える。どんな用途で力を発揮するか、世界でも手探りの段階だ。将来は幅広い産業の競争力に影響を及ぼす可能性があり、いち早く導入するための企業間の競争も活発になっている。
【米軍、太平洋に防衛線 中国抑止へ島しょ国に拠点分散】
同じ21日の日経速報メール【ワシントン=中村亮、シドニー=今橋瑠璃華】によると、バイデン米政権がインド太平洋地域で米軍の作戦拠点を拡大している。太平洋島しょ国の3カ国と1兆円近くの経済支援をテコに軍事協力を深め、米領グアムやフィリピンにも部隊を分散させる。中国に対処するため太平洋で防衛線を張る。
米インド太平洋軍のジョン・アキリーノ司令官は20日、上院軍事委員会の公聴会で中国を念頭に「インド太平洋で戦争は不可避ではない。差し迫ってもいない。しかしこの10年間はリスクが高まる」と証言した。抑止力強化に向けて「我々の挑戦者が持たない同盟国とパートナー国のネットワークを拡大する」と語った。
米軍は太平洋島しょ国と協力を深める。パラオで高度なレーダーシステムの設置を計画し、遠方の状況把握能力を向上させる。2022年には統合演習「バリアント・シールド」の一環で戦闘機F35をパラオに展開した。有事に作戦拠点として使うシナリオを想定しているとみられる。
ミクロネシア連邦は航空機や艦船の補給拠点としての役割を想定する。米国とミクロネシア連邦は21年、同国での軍事施設の設置に合意した。米軍はマーシャル諸島でミサイル実験場を運用し、66年まで使用が認められている。
米国はマーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パラオと自由連合協定を結んでいる。米国が経済支援し、3カ国は米国と軍事協力をしている。経済支援は23〜24年に期限切れを迎える。米国は更新交渉を急ぎ、軍事協力の拡大に布石を打つ。
米国務省当局者は日本経済新聞の取材で更新交渉に関し「短期での合意を目指している」と語り、5月末までをメドに交渉に取り組むと話した。政権は3月公表の予算教書で3カ国向けの経済支援と郵便サービスに関し、20年間で計71億ドル(9500億円)を盛った。当局者は過去20年間と比較は難しいと説明しつつ「大きな増額だ」と強調した。
米軍は戦力や部隊の分散先として3カ国に期待する。アキリーノ氏は18日の下院軍事委員会の公聴会で3カ国に関し「第2次世界大戦での我々の成功に極めて重要だった。いまも重要であり戦略的な場所に位置している」と指摘した。
北東アジアや北米へのシーレーン(海上交通路)に位置し、パラオは日本の小笠原諸島からグアムを経由してパプアニューギニアに至る第2列島線に近い。台湾周辺や南シナ海での有事の際は前線部隊を後方から支援したり、戦闘任務に加わったりする拠点になりうる。
グアムでは米海兵隊が1月、約70年ぶりに基地を新設した。地対艦ミサイルや地対空ミサイルを運用する「海兵沿岸連隊」を配置する公算が大きい。有事の際は即応部隊として前線への派遣が視野に入る。
米軍が部隊の分散を進めるのは中国のミサイルの精密さや飛距離が向上するからだ。中距離弾道ミサイルDF26はグアムを射程に入れる。米軍は少数の基地に集中すると標的になりやすく、攻撃を受ければ戦力が一気に下がりかねない。
日本の沖縄や台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線でも米軍は拠点を増やしている。フィリピンは4月上旬、米軍に巡回駐留を新たに認める4つの拠点を決めた。台湾に近いルソン島北部を含み、有事での使用や備蓄物資に関して協議を重ねる見通しだ。
中国軍も遠方への展開を増やす。日本の防衛省統合幕僚監部によると、中国海軍の空母「山東」は16日、沖ノ鳥島から南南東に約710キロメートルへ位置した。第2列島線の近くで、艦載機の発着訓練を実施したとみられる。
中国は22年4月、ソロモン諸島と安全保障協定を結んだ。中国軍が補給拠点を設ければ活動範囲を拡大できる。首都ホニアラが位置するガダルカナル島は太平洋戦争で日米が激戦を繰り広げた太平洋の要衝だ。
【マイクロソフト社長「生成AI、開発の手ゆるめず」】
21日の日経ニュースメールは次のように報じた。
米IT(情報技術)大手マイクロソフトのブラッド・スミス社長は21日、日本経済新聞の取材に応じた。提携する米オープンAIが開発した「Chat(チャット)GPT」などの生成人工知能(AI)について、「開発を遅らせるのではなく、(安全確保のための)ガードレールをつくる仕事を急がなければならない」と事業展開を続ける姿勢を示した。
ルール整備や開発を透明に
チャットGPTは2022年11月の公開後、異例の速さで普及。誤情報の拡散やプライバシー侵害といった懸念が浮上している。高度なAIの開発休止を求める声も高まるが、スミス氏は「新世代の法律や規制がいる」と各国政府の対応や官民でのルール整備が必要と主張した。
マイクロソフトは2019年に10億ドルを投資して以降、オープンAIを資金、技術の両面から支えてきた。AI戦略の要に位置づけ、自社の検索サービスや業務ソフトにオープンAIの開発成果を組み込んでいる。
AI開発の手を緩めない一方、企業の責任に関して「謙虚さが必要だ。AIがもたらす恩恵に興奮しつつも、あらゆるリスクを心配しないといけない」と述べた。具体的には開発の原則を明確にして、技術者の訓練や製品のテスト・監視などの継続が不可欠とした。
規制当局との対話を重視する方針も強調した。AI企業の役割は「AIがどう機能するのか、人々に情報を提供すること」とし、「理解が進めば、当局は正しい情報に基づく意思決定ができる」と語った。
世界的に労働人口が減るなか、「生産性を高めるAIは経済成長の新しい原動力だ」とも訴えた。雇用を奪うと警戒する声には「いま各国の一番の懸念は労働力を確保できないことだ」とAI活用が打開策になるとの考えを示した。
勝者総どりにはならず
洗練された文章や画像を生成する高度なAIは市場の拡大が見込まれ、2027年には世界で約16兆円に達するとの予測がある。マイクロソフトのほかグーグル、アマゾン・ドット・コム、メタなど米テクノロジー大手が研究開発に力を注ぐ。
一握りの企業が市場で支配力を強める恐れがあるとの見方について、スミス氏は「各国でイノベーションが起こる」と否定。恩恵を受ける企業は多いとの見方を示した。「AIのエコシステム(生態系)はウィナー・テーク・オール(勝者総どり)にはならない」と明言した。
高度なAIの開発では米国勢だけでなく「中国の北京智源人工智能研究院(BAAI)や百度(バイドゥ)、アリババ集団がいることを頭に入れておくべきだ」と述べた。中国勢に加え欧州やイスラエル企業も台頭していると訴えた。AIを使ったサービスの開発ではスタートアップ企業にも商機があるとし、日本では「5社のスタートアップに会った」と話した。
スミス氏は「オープンAIがつくった最先端のAIは(マイクロソフトの)データセンターで学習した」と協業の成果を強調。「より多くの人が新技術を使えるようにすることが両社のミッションだ」と語った。一方でオープンAIを買収する可能性については「現在の提携はうまく機能しており、両社とも興味はない」と否定した。ChatGPTを開発したオープンAIとは提携関係を続けるとした
ゲーム大手買収は「楽観視」
マイクロソフトの歴史を振り返れば、各国の規制当局との緊張関係を抜きには語れない。90年代末にはパソコン用基本ソフト(OS)の「ウィンドウズ」をめぐり、米司法省が独禁法違反で同社を提訴。訴訟は長期化し、一時は「会社分割」の命令も出された。欧州委員会との争いもあった。
その後は政府やライバル企業との対話を重視する経営にかじを切り、攻めの姿勢が目立つ他のテック大手と一線を画してきた。ただ、22年1月に発表したゲーム大手の米アクティビジョン・ブリザードの巨額買収に対しては米連邦取引委員会(FTC)が買収阻止を求めて提訴するなど、マイクロソフトの影響力の高まりを警戒するムードも漂う。
アクティビジョン買収の実現についてスミス氏は「未来は見通せないが、楽観視している」と述べ、「より多くの人々にゲームを届けられる買収であり、競争を促す」と自信を示した。日本の公正取引委員会は3月に買収を承認している。
AIは人間の補助役に
イタリアでチャットGPTが利用禁止になるなど、生成AIに対する逆風も吹く。17日の米議会公聴会では、FTCのリナ・カーン委員長が「AIはあらゆる機会と同時に、あらゆるリスクも提供する」と述べ、AIサービスも調査対象となりうることを強調した。
生成AIを使えば詐欺メールなどを巧妙につくれ、サイバー攻撃などへの悪用が懸念される。スミス氏は「AIは人間よりも早く新たな攻撃手法を発見できる」と指摘。影響工作による偽情報の拡散も検知可能だとして、AIを駆使して攻撃に対抗する意向を示した。
マイクロソフトは「エクセル」や「ワード」などに使えるAIを副操縦士を意味する「コパイロット」と名付けている。AIはあくまでも人間の補助で、現時点では最終判断は人間の役割だと位置づける。ただ、将来、自動運転車のようにAIが自律的に判断する状況となれば「非常に慎重になるべきだ。規制が必要になる」と話した。
【米ベッド・バスが破産法申請 金融不安で行き詰まり】
23日の日経速報メール【ニューヨーク=朝田賢治】によれば、米生活雑貨販売大手、ベッド・バス・アンド・ビヨンドは23日、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条(チャプター11)の適用をニュージャージー州にある連邦地方裁判所に申請したと発表した。電子商取引(EC)への対応の遅れによる業績悪化に、米国での金融不安による資金調達環境の悪化が重なり、経営が行き詰まった。
【関連記事】新陳代謝に失敗、金融不安がとどめ 米ベッド・バス破綻
負債総額は52億ドル(約7000億円)。スー・ゴーブ最高経営責任者(CEO)は「従業員、顧客、取引先、地域社会に感謝する。すべてのステークホルダー(利害関係者)の利益を最大化するため、引き続き真摯に取り組む」と声明を出した。
同社は2022年9〜11月期まで7四半期連続で赤字を計上し、23年1月には経営再建に向け「あらゆる戦略的選択肢を検討する」と表明していた。
1月26日付の米証券取引委員会(SEC)への提出資料では、JPモルガン・チェースから債務不履行の通知を受けたと公表。そこにシリコンバレーバンクの破綻などで米国内の金融システム不安が拡大し、金融機関が貸し出し姿勢を引き締め、厳しい財務状況が続いていた。
1971年に創業したベッド・バスはベッドリネンやバス用品から乳児・幼児向け商品、家具など幅広い商品を扱う。米国やカナダでチェーンストアを展開し、天井まで商品を高く積み上げる陳列方法で顧客の支持を集めた。2023年4月中旬時点で、家具点360点、ベビー用品店120店を運営し、約2000万人のロイヤルティー顧客を抱える。
しかし、スウェーデンのイケアなど新しい業態の家具店との競合が激化。デジタル投資などでライバルの後じんを拝し、資金繰りの悪化による在庫減も顧客離れを招いた。
近年は代表的な「ミーム株(はやりの株)」として個人投資家の関心を集め、22年8月には大株主の持ち株売却や経営再建策をめぐり、短期売買で株価が乱高下した。不採算店閉鎖や人員削減などのリストラ策も実施し、存続を模索していた。
23年3月下旬には、借り入れではなく、株式市場からの直接の資金調達を試みた。新規の株式発行で3億ドル(約400億円)を確保しようとしたが、株価の下落により想定の資金が集まらず、破産を申請するに至った。
【衆参5補欠選で自民党4勝1敗 和歌山は維新、立民全敗 解散戦略に影響】
24日の日経ニュースメールは次のように報じた。
衆参両院5つの補欠選挙が23日、投開票された。自民党は4勝1敗とし補選前から議席を増やした。衆院の千葉5区、山口2区と4区、参院大分選挙区でいずれも自民新人が当選を確実にした。衆院和歌山1区では日本維新の会新人が自民元職との事実上の一騎打ちを制した。
2022年7月の参院選以来の国政選挙となった。5選挙区のうち3議席を自民が持っていた。立憲民主党は候補者を擁立した3選挙区で全敗した。
岸田文雄首相の次期衆院選へ向けた解散戦略にも影響する。自民の茂木敏充幹事長は23日のNHK番組で「解散は首相の専権事項だ。結果の分析を含め首相が判断すると思う」と語った。
千葉5区は「政治とカネ」の問題で自民党の薗浦健太郎氏が離党し、議員辞職したことに伴う。自民新人の英利アルフィヤ氏が立民新人の矢崎堅太郎氏らに競り勝った。野党は候補者を一本化できず、政権への批判票が分散した。
山口2区は岸信夫前防衛相の辞職を受けた補選だった。岸氏の長男の信千世氏は世襲批判などをかわし、無所属元職の平岡秀夫氏を退けた。
安倍晋三元首相の死去に伴う山口4区は自民新人の吉田真次氏が当選を決めた。吉田氏は元下関市議で、選挙戦を通じ安倍氏の後継候補だと強調した。安倍氏の妻の昭恵さんも支持を呼びかけた。与党支持層をまとめ立憲民主党新人の有田芳生氏を下した。
参院大分は県知事選に出馬した安達澄氏の辞職に伴う。自民新人の白坂亜紀氏が立民元職の吉田忠智氏との接戦を制した。
衆院の和歌山1区では維新新人の林佑美氏が自民元職の門博文氏を破った。同区は県知事に転出した岸本周平氏の辞職による。
維新は統一地方選の前半戦で勢いをつけ、地盤である大阪の隣県に勢力を広げる戦略を描いてきた。林氏は与党支持層や無党派層も取り込んだ。
選挙期間中の15日、首相の演説前に爆発物が投げ込まれる事件が起きた。首相は選挙戦最終日の22日にも和歌山市で街頭演説したものの、門氏は届かなかった。
23日は統一地方選の後半戦も投開票が進んだ。政令市を除く一般市長・市議選と東京都の特別区長・区議選などが対象で、一部は翌日の24日に開票される。
【熟練外国人の長期就労、6月にも全分野で 関係省庁調整】
同じ24日の日経ニュースメールは次のように報じた。
熟練した外国人材が日本で長く働く道が広がりそうだ。人手不足対策として2019年に創設した在留資格「特定技能」について、 長期就労が可能な業種を6月にも現在の3分野から全12分野に拡大する方向で関係省庁が調整に入った。実現すれば期間限定の受け入れだった飲食料品製造や外食などの分野で、技能を磨いた外国人労働者を企業が継続雇用できるようになる。
24日の自民党の外国人労働者等特別委員会で、特定技能の長期就労分野の拡大を求める各省庁の要望を出入国在留管理庁が伝えた。政府・与党が検討して6月の閣議決定を目指す。省令改正などを進め、資格取得などの運用開始は24年5月ごろになる見通しだ。少子化で外国人労働者が不可欠となっており、受け入れ政策を見直す。
外国人材の受け入れには主に2通りある。高い専門性や技術力を持つエンジニアなどの高度人材と、製造業や農業、建設業などの現場で働く技能実習や特定技能だ。
技能実習は廃止し、人材の確保・育成が目的の新たな制度を創設する方向となっている。実習後に特定技能に移行する人は多く、両制度の改定が進めば非熟練の外国人材がスキルを向上させながら長期就労できる環境整備が進む。
背景には人手不足の深刻化がある。国際協力機構(JICA)などは政府が目指す経済成長を40年に達成するには、外国人労働者は現在の4倍近い674万人必要と推計する。各国で少子化が進み、労働力の獲得で競争激化が見込まれる。
この時期に見直すのは、特定技能の創設当初から働く人が24年5月以降に在留期限を迎え始めるためだ。現状では多くが帰国を迫られる。引き続き日本で働ける道を用意するかを早急に示す必要があった。
具体的には特定技能「2号」の対象分野を拡大するよう調整する。技能などの試験に合格するか技能実習修了が条件の「1号」は最長5年だが、2号は資格更新回数に上限がなく配偶者や子どもも日本で暮らせる。これまで対象は建設など2分野のみだった。残る10分野のうち、別の資格で長期就労できる介護を除く9分野での追加を関係省庁が求めている。
2号の取得では建設などと同様、各分野の技能を持つ熟練者に限る方針だ。2号取得者は10年以上滞在し、安定した生活を営む資産があるといった要件を満たせば永住権取得も可能になる。
自民党の一部からは「事実上の移民受け入れにつながりかねない」との慎重論が出る可能性がある。18年に特定技能導入を決めた際は自民党の部会で2号の適用厳格化を求める意見が出た。
特定技能は2月末時点で約14万6千人。外国人労働者(22年10月時点で約182万人)の約8%に当たる。国籍別ではベトナムが約6割を占め、インドネシア、フィリピンが1割超で続く。入国制限緩和で拡大している。
賃金が上がらない日本で働くメリットは薄れてきたとの見方もある。台湾では非熟練者でも最長12年間(介護などは14年間)働ける。韓国は所得や語学力などが一定水準に達した外国人に永住権を与える。日本もさらに呼び込む手立てが必要となる。(外国人共生エディター 覧具雄人)
【スーダンの邦人ら45人、国外退避 岸田首相が発表】
24日深夜の日経速報メールは次のように報じた。
岸田文雄首相は24日夜、戦闘が続くアフリカ北東部のスーダンから航空自衛隊のC2輸送機で在留邦人とその配偶者の計45人を出国させたと明らかにした。「先ほどスーダン東部のポートスーダンを飛び立ち、ジブチにいま向かっている」と言明した。首相公邸で記者団に語った。
このほかにフランスや国際赤十字の協力で邦人4人がすでにスーダンからジブチやエチオピアに退避したと説明した。
首相は「成功裏に邦人退避を遂行した大使館や自衛隊をはじめとする関係者の努力への敬意と感謝を申し上げたい」と述べた。韓国やアラブ首長国連邦(UAE)、国連などから協力を受けたとして謝意を表明した。
首相は退避した邦人について「それぞれの希望に基づき、日本への帰国などを調整していく」と話した。スーダンに在留する退避希望の邦人は残り数人だと指摘し「引き続き関係各国とも緊密に連絡をしつつ、早期の退避に全力を挙げて対応していく」と強調した。
フランス政府によると、24日朝までにスーダンからジブチに退避させた388人に日本人2人が含まれている。韓国大統領府は同日、韓国人28人が軍用機で退避したと発表した。その際に「日本人数人も安全に撤収させた」と明らかにした。
多くの国が自国民の救出を本格化している。ドイツでは24日、101人の自国民らを乗せた最初の軍用機が経由地のヨルダンからベルリンに到着した。
イタリアやスペインも自国民らを輸送機で脱出させ、カナダは外交官を退避させた。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は同日、1千人超のEU市民がスーダンから脱出したと述べた。
トルコは陸路で隣国エチオピアへの退避を始めたが、集合場所付近で爆発が起きるなど一部で混乱があったもようだ。
世界保健機関(WHO)は23日、15日に始まった戦闘で死者が420人、負傷者は3700人に上ったと明らかにした。
【EU、ChatGPTに統一規制 「メード・ウィズAI」表示も】
25日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・EU幹部が生成AIの規制法を年内にも決定と表明
・AI作成の文章などに「メード・ウィズAI」とつける案を提示
・提供企業にAIの判断理由や倫理基準の説明求める
【ブリュッセル=辻隆史】欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のベステアー上級副委員長が24日、日本経済新聞の単独インタ ビューに応じた。「Chat(チャット)GPT」などの生成AI(人工知能)をEU全体で規制する新法を「できる限り早く施行する」と明言。年内にも決定する見通しを示した。
AIが作成した文章や画像に「メード・ウィズ AI(AIで作成)」といったラベルを表示させる案も提起したほか、生成AIの提供企業に説明義務を課すことも明らかにした。EUで統一することで、規制の効力を高める狙いがある。
ベステアー氏はAIや競争政策を統括する。EUの上級幹部が規制の時期や内容などの具体案に踏み込むのは初めて。
EUはかねてAI利用に関する新たな法案を準備してきた。チャットGPTのような高度な対話能力を備えた生成AIが登場したことを受け、ベステアー氏は法案を修正する方針を明示した。「2023年後半に(各国代表による欧州理事会と欧州議会による)政治合意に至り、その後に施行したい」と述べた。
法案ではAIのリスクを4段階に分ける。EUが高いリスクがあると判断したAIについては、公開前に評価する仕組みをつくる。データ保護の枠組みなどEUの他の制度を総合的に活用し、生成AIの規制に取り組む。
ベステアー氏は適切な利用に向けた基準「ガードレール」が必要だと強調した。社会が生成AIに依存しすぎることで、子どもが考える力を養えなくなったり、ローンを借りる際にAIが生まれや経歴などで「偏見」を抱き、希望者を差別的に扱ったりするリスクを指摘した。
生成AIはインターネット上のデータから学習し、高度な文章や精巧な画像などをつくることができる。ベステアー氏は新たな規制でそうした生成物に「メード・ウィズ AI」「これは本当の写真ではない」といったラベルをつけ、真偽が分かるようにする案を提示した。
企業に対しては、一定の説明義務を課す考えも示した。「なぜAIがそうした判断をしたのか。どのような倫理的なガードレールを設けているのか」について開示すべきだと語った。
ベステアー氏は「研究は、新法の対象ではない。企業はテストして技術革新を起こし、アイデアを追求できる」とも強調。AIの研究開発段階では規制対象にしない考えを示し、利用の段階でのルールづくりを重視する。
生成AIを巡っては、米マイクロソフトが投資するオープンAIがチャットGPTを開発。米グーグルなども研究開発を進める。ベステアー氏は米巨大IT(情報技術)企業に厳しい姿勢で知られる。「まだ調査段階」としつつも、チャットGPTなどがEUの競争法の規制対象になる可能性にも言及した。
「生成AIが競争を阻害するケースがあった場合は(自社優遇などを禁じる)EUの『デジタル市場法』も適用できる」と主張した。有害情報の流布を防ぐことを企業に義務付ける「デジタルサービス法」の活用も検討課題とした。
EU内でも、AI人材の確保を急ぐ。新たにAI技術などに詳しい専門人材を雇い、助言や調査を行う組織を準備していることも明らかにした。
主要7カ国(G7)での共通ルールづくりにも期待感を表明した。EUとして独自規制を設ける一方で、他の国・地域との協調にも前向きな姿勢をみせた。
【クアッド、サイバー攻撃の情報共有 インド含め安保協力 首脳会合で合意めざす 対中国・ロシア、迅速な防御可能に】
同じ25日の日経速報メールは次のように報じた。
日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国は重要インフラ施設を狙ったサイバー攻撃の情報を共有する調整に入った。割り出した攻撃元や手法に関するデータを使って各国が迅速に防御態勢を整えられるようにする。外交的中立を掲げるインドを安全保障分野の協力に引き込む。
5月下旬に豪州で開く日米豪印の枠組み「Quad(クアッド)」首脳会合での合意をめざす。ロシアがウクライナ侵攻でサイバー攻撃と通常兵器を組み合わせた「ハイブリッド戦」を展開し、対中国・ロシアの抑止でサイバー防衛の強化は急務となった。
4カ国は2022年にまとめた首脳共同声明でサイバー分野の協力を拡充すると打ち出した。情報共有はその第1弾の具体策となる。
現代戦ではサイバー攻撃で社会システムを混乱させた後にミサイルなどの物理的な攻撃を仕掛けることが多い。ロシアによるウクライナ侵攻でも発電所や通信施設がサイバー攻撃の標的となった。
日米豪印は重要インフラでサイバー攻撃の兆候や被害があった場合、各政府のサイバー部門が通報し合う体制をつくる調整を進める。インフラを管理する民間企業も含めて即時に情報共有する仕組みにする。
サイバー攻撃は大量のデータを送りつけてサーバーを止める「DDoS」攻撃など手口が巧妙になっている。4カ国のいずれかを狙った攻撃元や手法が分かれば他の3カ国は防御態勢をとりやすい。米国は攻撃を受けると官民でシステムを守るソフトをつくる組織を設けている。
4カ国の政府機関が調達するソフトウエアの安全基準作りも始める。セキュリティー管理システムやデータを暗号化する仕組みなどに共通の監査体制を設ける案がある。
政府が導入するシステムに脆弱性があれば国全体のデジタル機能に影響が及ぶ恐れがある。日本は防衛機密を扱うシステムの一部で米国と安全基準を統一することで攻撃への対応力を高めている。この取り組みを4カ国に広げることを目指す。
一定の安全性を満たすソフトウエアを調達するサプライチェーン(供給網)を4カ国でつくれば、有事の際に融通しやすくなるとも期待する。
インターネットのセキュリティーサービスを提供する「Nord(ノード)VPN」の調査によると、06〜21年に政府機関などを狙った重大なサイバー攻撃を受けた国のトップは米国で計198回にのぼった。
2位は58回の英国で、32回のインドはそれに次ぐ3番目だった。豪州は22回、日本は16回といずれも標的となっている。こうしたサイバー攻撃は中国、ロシア、北朝鮮が絡んでいるとの分析がある。
日本は22年末に改定した国家安全保障戦略に基づき、不審なアクセスなどをした攻撃元を見つけて事前に対処する「能動的サイバー防御」を導入する。他国と取り組みを共有すればサイバー防衛能力の向上につながるとも見込む。
この間、下記の録画を観ることができた。 (1)BS世界のドキュメンタリー「中国-アメリカ ”新たな冷戦“を読み解く」2003年4月11日。 (2)BS6報道1930「ウクライナ<春の大攻勢>いつ どこに」12日。 (3)NHKスペシャル「半導体 大競争時代 第2回 日本は生き残れるか?」15日。 (4)BS6報道1930「機密流出で米州兵逮捕」17日。 (5)BS8プライムニュース「岸田首相襲撃事件 核超大国・中国の脅威と抑止戦略」17日。 (6)BS6報道1930「人類を救うか滅ぼすか 対話型AIが導く未来 チャットGPTの将来」18日。 (7)BS6報道1930「ウクライナ反転攻勢のカギ「戦車部隊長」を独自取材」19日。 (8)BS8プライムニュース「ワグネルトップの停戦案 露軍敗北言及にプーチンは?」20日。 (9)BS6報道1930「ウ軍反攻作戦は4段階、非公表兵器初投入か 空軍部隊キーウの幽霊」20日。 (10)BS6報道1930「ミサイル開発資金稼ぐ北朝鮮のハッカー集団ラザルスは何者か」21日。 (11)BS5日曜スクープ「戦勝記念日目前に戦力増強のロシア 財政悪化の奇策も」23日。 (12)BS6報道1930「6月解散・総選挙も? 統一地方選から見えた岸総理<胸の内>は」24日。 (13)BS8プライムニュース「与野党幹部が徹底討論! 選挙結果から見る政局への影響」24日。
その後、11日午後、日経続報メールは次のように報じた。
【ガス由来の水素も「環境適合」 IEAが指標、投資後押し】
国際エネルギー機関(IEA)は、化石燃料からつくる水素でも一定の条件を満たせば「クリーン」とみなす指標をまとめた。これまで環境に配慮した水素製造の基準づくりが課題となっていた。世界共通の基準とし、企業が投資しやすい環境を整備する狙い。
水素は燃やしても二酸化炭素(CO2)が出ない次世代エネルギーと位置づけられる。水素には、再生可能エネルギーの電力でつくる「グリーン水素」、天然ガスなど化石燃料からつくり、その際に出るCO2を回収する「ブルー水素」といった複数の分類がある。
それぞれの分類の定義はバラバラで、基準の曖昧さが水素市場の拡大を阻んでいるとの指摘があった。特にブルー水素は化石燃料からつくるため、どうすれば環境配慮とみなされるか共通の指標を求める声があった。
日米欧など約30カ国からなるIEAは水素がクリーンかどうかを、水素製造時に出るCO2排出量の割合を示す「炭素集約度」を使って決める指標をまとめた。1キログラムの水素製造で出るCO2が7キロを下回ればクリーンとみなす。
例えば化石燃料から水素を製造して7キロ以上のCO2が出ても、CO2を大気に放出しない回収技術などを用いて実質の排出量が7キロより少なくなれば許容する。
IEAの指標の順守は義務ではないものの、基準を明示することで企業が投資しやすい環境を整える。日本は5月にも水素戦略を改定する方針で、当面は天然ガス由来のブルー水素を軸に普及を進める構えだ。
脱炭素社会に向け、水素の利用は世界全体で増える見通しだ。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、世界が2050年に温暖化ガスの排出の実質ゼロを目指す場合、水素は最終エネルギー需要の12%を占めるという。
世界の水素関連企業でつくる「水素協議会」と米マッキンゼー・アンド・カンパニーがまとめたリポートによると、50年の世界の水素・派生品の需要は6億6千万トンに達する。
【トヨタと「革新のジレンマ」 破壊的EVは生まれるか】
同じ17日、日経ニュースメールは次のように次のように伝えた。
エレクトロケミストリー(電気化学)と総称するらしい。電気自動車(EV)に使うリチウムイオン電池や燃料電池、水素燃料、合成燃料と、化学反応で電気を生んだり、電気によって化学反応を促したりする技術のことだ。
7日に記者会見したトヨタ自動車の佐藤恒治社長はそれらを「マルチパスウェイ(全方位)」と呼んだ。エレケミすべてを網羅的に研究し、世界中でどんな脱炭素技術が求められても対応できるようにするという。
半導体のような飛躍は困難
化石燃料のガソリンに代わる動力源の候補は多種多様で、共通するのは車が走るときに二酸化炭素(CO2)を出さない点だ。
一方で、ガソリンと同様にどれを選んでも絶対に不可能だとされる点もある。半導体のように飛躍的な技術進歩を遂げることだ。
比較しよう。半導体は「ムーアの法則」が提唱された1965年以降、トランジスタの素子が58年で85億8993万4592倍にも増えた計算になる(当初の「1年で倍増」から、75年に「2年で倍増」に修正されたのを考慮)。コンピューターは劇的に性能が向上し、価格も安くなった。
だが、車はどうか。世界で最も売れた乗用車、トヨタの「カローラ」の場合、66年の誕生から燃料1リットルあたりの走行距離が20キロ前後(ガソリンエンジン仕様)で大きく変わっていない。
環境や安全面の規制が強まり、装備品が増えて車体が重くなったのが一因だ。車体重量が2倍になったことを考えれば、カローラの進歩は尊敬に値する偉業ではあるが、それでも半導体の進化のペースには遠く及ばない。
EVでは米中勢を仰ぎみる位置
物理と化学の違いといってもいい。エレケミで最も有望なのはリチウムイオン電池を使ったEVだが、その時代がきても電池の進化の速度はそう変わらない。ゴールドマン・サックス証券の湯沢康太・投資調査部マネージング・ディレクターの試算によると、電池から取り出せるエネルギー量(エネルギー密度)の進歩を2000年以降でたどると、年間3〜5%ほどだという。
そうしたペースが関係したのかもしれない。日本ではムーアの法則が支配する電機産業が00年前後から衰退したのに対し、自動車産業は無縁でいられた。
化石燃料とエレケミを融合したハイブリッド車を生み出したことも日本勢の存在感を高めた。だが、化石燃料を徹底的に嫌う風潮が広がったうえに、進歩が遅くても社会に受容される域に電池技術が到達したことで、EVの普及は加速する兆しが強まった。
だからこそ、トヨタの会見は注目された。端的にいえば、同社は化石燃料とハイブリッドの技術に加え、EVを除くエレケミでは世界一だ。もちろんEVも技術水準は高いが、直近の販売実績をみれば、米テスラや比亜迪(BYD)など中国企業を仰ぎみる位置に甘んじている。
世界シェアが1割もあるのにEVだけでは1%もない。競争は始まったばかりだが、思い出されるのはデジタルカメラに数年で追い詰められたフィルム業界の運命だ。トヨタの会見では26年に150万台という販売目標が示されたが、それ以外は戦略がみえにくい。
迫るゲームチェンジの現実
同社の金城湯池といわれるタイをみてみよう。トヨタを筆頭に日本企業9社で自動車販売の9割を占める市場だが、くさびを打とうとするのが中国企業だ。特にBYDが予定するEV工場には、タイ政府が手厚い支援を表明した。
手をこまぬくうちに海外勢が押し寄せてゲームチェンジを迫る。消費者がデジタル技術と相性のいいEVを欲しはじめている現実を日本のメーカーはどこまで把握し、動いているか。
EVは25年ごろに、新車販売の15%を占めるあたりで技術発展の踊り場を迎える――。リチウムイオン電池でノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏は数年前に自著で書いている。エレケミ特有の進化の限界を指摘したものだが、同時に「突破不能と思える壁を乗り越える存在も現れる」と予想した。
EVは普及しっこないと考えれば失敗の始まりだ。特にタイ、インドのような新興国は安くて環境にいいEVに社会の発展を託し、技術のリープフロッグ(一足飛び)を生む可能性を秘める。
「第2の総合電機」になるな
3年前に亡くなった「イノベーションのジレンマ」の著者、クレイトン・クリステンセン氏は生前「トヨタのような企業こそ、EVという新技術でアジアやアフリカの無購買層を購買層に変える『破壊的イノベーション』に挑むべきだ」と雑誌の取材に答えている。
トヨタの過去がまさにそうだった。創業した1937年以降の生産・販売実績をみれば、成長の原動力が「新技術」と「購買層化」にあったことがわかる。
総合電機という言葉がかつてあった。半導体から白物家電、発電機器まで事業を様々に持てば、景気の変動に左右されにくい経営ができあがる。だが一方で、時間軸も投資の仕方も異なる事業を複数抱えることで、専業企業の変化のスピードについていけなくなる。そんな教訓を帯びた言葉だ。
優れた企業ほど、保守的で慎重になり、失敗する。そんなイノベーションのジレンマとともに、トヨタのマルチパスウェイという全方位経営が「第2の総合電機」に陥らないよう、注意が必要な局面を迎えている。
【G7外相、ウクライナへ支援継続 対中ロでインドと連携】
同じ11日、日経ニュースメールは伝えた。
主要7カ国(G7)の外相会合は17日、ウクライナ情勢を話し合った。G7としてロシアへの厳格な経済制裁とウクライナ支援を続ける方針で一致した。ロシアによるベラルーシへの核兵器の配備を非難した。
G7外相は16日に長野県軽井沢町のホテルで開幕した。議長を担う林芳正外相のほか、ブリンケン米国務長官、クレバリー英外相、フランスのコロナ外相、ドイツのベーアボック外相らが参加している。
林外相は17日の会合で「戦争が長期化するなかで、G7をはじめとする同志国の結束を維持すべきだ」と強調した。南半球を中心とした新興・途上国「グローバルサウス」に触れ「連携強化することが重要だ」と述べた。
新興・途上国経由で軍事転用可能な半導体がロシアに流れたり、ロシアの戦費調達につながったりしているとの懸念が強まっている。G7として「第三国などからのロシアへの武器提供に対処」する方針で一致した。ロシア制裁への抜け穴を塞ぐ狙いがある。
林外相は国際秩序を維持するために「インドとの連携」が不可欠とも指摘した。インドは9月に開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の議長国で、新興・途上国のなかでも発言権が大きい。
インドは米中対立のはざまで等距離外交を進めていたが、係争地を巡る問題で中国とぎくしゃくした関係が続いている。中ロの対立軸が鮮明になる中でインドの動向がカギを握るとの認識を示した。
G7外相間で「インド太平洋」を巡る議論を定例化することも決まった。日本政府には東アジア情勢への関心が薄れがちな米欧をひき付けておく狙いがある。
G7外相会合は18日に閉幕する。共同声明で「台湾海峡の平和と安定」の重要性を確認する。中国の台湾への軍事的威嚇を批判する。両岸問題の平和的解決を求める内容も改めて盛り込む。
【米EVの税優遇、米3社11車種のみ 日欧韓すべて対象外に】
18日早朝の日経ニュースメール【ニューヨーク=堀田隆文】によると米政府は17日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際に、税優遇の対象となる車種の新たなリストを明らかにした。対象はテスラなど米国メーカーの11車種に限られ、日欧韓メーカーの車はすべて外れた。米政府はEVを巡って北米での生産・調達を最優先としており、対応が遅れる米国外メーカーは厳しい競争環境に置かれている。
米政府は自国市場のEVについて、消費者が最大7500ドル(約100万円)の税額控除を得られる販売支援策を採っている。2022年8月成立の歳出・歳入法で支援対象を北米生産車に限るなど新たな要件を定め、段階的に適用してきた。4月18日から新たな要件を適用するのにあわせ、対象車種も更新した。
18日から新たに①車載電池の部品の一定割合を北米でつくる②電池に使う希少金属など重要鉱物の一定割合を米国や米国が自由貿易協定(FTA)を結ぶ国などから調達する、という2つの条件を適用する。新たな要件が加わるため、販売支援のハードルは高くなり、対象車種数もこれまでの14車種から11車種に減った。
メーカー別では、最大手テスラの主力車種「モデルY」「モデル3」に加え、米ゼネラル・モーターズが6車種、同フォード・モーターが3車種という内容になった。対象車種すべてを米国メーカーが占めた。
一方、歳出・歳入法の要件のもとでも、これまでは税優遇の対象になっていた日欧韓のEVはすべて対象から外れた。日産自動車のEV「リーフ」が外れたほか、韓国・現代自動車と独フォルクスワーゲン(VW)のEVも税優遇を受けられなくなった。いずれも、車載電池に関する条件をクリアできなかったためとみられる。
米国では4万〜5万ドルがEVの売れ筋になっている。最大7500ドルの税控除は価格競争力を維持するうえで無視できない。米国外のメーカーは今後、税優遇を受けるために北米生産を加速したり、調達網を見直したり体制整備を急ぐことになりそうだ。
電池を巡る要件の追加は、米国勢にとっても厳しいものになっている。新興企業リヴィアン・オートモーティブのEVは対象外となった。テスラについても、モデル3の一部グレードは支援額が7500ドルから半分の3750ドルに減額となった。
それでも、リストはすでに北米に生産・調達基盤を持つ米国メーカーが優位な結果になっている。歳出・歳入法のもとでの米政府のEV販売支援策を「米メーカーへの過度な優遇措置」と批判してきた日欧韓の政府の反発が強まる可能性がある。
【中国の新車、23年は3台に1台がEVに 上海ショー開幕】
同じ18日の日経ニュースメールは次のように伝えた。
【この記事のポイント】
・中国の新車の3台に1台がEVになり、普及期に入る
・値下げ合戦でEVメーカーの優勝劣敗が進む
・中国の強みは電池の世界シェアが7割に上る点にある
世界最大級の自動車展示会「上海国際自動車ショー」が18日、中国・上海で開幕した。中国では電気自動車(EV)など環境対応車を巡る争奪が激しく、EVを中心とする新エネルギー車市場は2023年に前年比3割増の900万台まで伸びるとされる。新車の3台に1台がEVになり、普及期に入る。比亜迪(BYD)をはじめとした現地勢に加え、米テスラなど欧米勢も販売攻勢をかける中で日本勢の出遅れが鮮明になっている。
中国は世界で最も大きなEV市場で、中国のEVメーカーは200社程度あるとされる。中国汽車工業協会によると、ガソリン車などを含めた23年の新車販売台数は22年比3%増の2760万台となる見込み。EVを中心とする新エネ車はこのうち900万台で3割を占めそうだが、「23年には新エネ車が1000万台近くまで伸び、35年には少なくとも2500万台と、新車販売の8割を占める」(清華大学の欧陽明高教授)との見通しもある。
米国で22年に販売したEV(乗用車・小型トラック)は81万台でEVシェアは6%、欧州主要18カ国のEVの販売台数は153万台で全体に占める比率は15%だ。日本国内の22年度のEV販売台数(軽自動車含む)は前の年度比3.1倍の7万7238台に増えたが、乗用車全体の2.1%にとどまり、中国のEV市場の成長スピードが際立つ。
その中国市場の足元で進むのは欧米勢による値下げ攻勢だ。中国シェア2位のテスラは23年1月から中国で販売するセダン「モデル3」や多目的スポーツ車(SUV)「モデルY」の価格を引き下げた。前年比で最大14%安く、同社が欧米で販売するより5割近く安いケースもある。テスラの動きに米フォード・モーター、独フォルクスワーゲン(VW)なども追随し、現地勢で中国シェアトップのBYDもSUVの「宋プラス」について、トヨタ自動車もSUVの「bZ4X」について、値引きなどでそれぞれ価格を抑えた。
中国のEV市場での競争は激しさを増しており、テスラが火を付けた値下げ合戦でEVメーカーの優勝劣敗が明確になる可能性もある。一方、消費者を囲い込もうとする競争の結果、価格や車種の裾野が急速に広がっている。従来は高級車と格安車で二極化していたが、普及期に入る中、その中間の車種も増えている。
みずほ銀行ビジネスソリューション部の湯進主任研究員は中国のEV販売傾向を3つの価格帯に分けて分析する。23年1〜3月の販売をみると、低価格の100万円以下、中価格の200万〜300万円、高価格の400万〜600万円の3つの価格ゾーンが占める販売台数のシェアはそれぞれ15%を超えた。
特に200万〜300万円を購入した層は21年に23%、22年に32%だったが、23年1〜3月には37%まで増えた。需要が100万〜400万円に集中し、ピークが1カ所のガソリン車とは傾向が異なる。中国EV市場の攻略には中間層の開拓が重要になりそうだ。
マークラインズによると22年末時点で日本メーカーの中国の工場出荷台数ベースのEV販売シェアは1%に満たない。ガソリン車と売れ筋の価格構成が異なる中、EVで出遅れた日本メーカーは中国で新たな価格戦略を迫られる。
トヨタの現地合弁会社、一汽トヨタは22年末、EVの新型セダン「bZ3」の予約販売を開始。価格は18.98万元(約370万円)からとし、中間層以上の需要を取り込む。
一方、ホンダの中国の現地合弁会社は3月から値引き施策に踏み切った。現地合弁会社の広汽ホンダと東風ホンダが22年に投入したEV「e:N」シリーズの第1弾モデルは17.5万元(約340万円)から。4月末までに注文した顧客に3万元(約60万円)値引きするキャンペーンを始めた。
みずほ銀行の湯氏は「現地メーカーとも価格競争が激化する中で、日本車メーカーはどのセグメントで優位性を発揮していくのかを明確にすることが、販売拡大のカギとなる」と指摘する。
今後のEV戦略では電池の確保も重要になる。中国のEVメーカーの強みは中核部品の電池の中国の産業規模が既に世界シェアの7割にのぼる点にある。値下げしても供給網が現地にあるためコストを削りやすく、収益悪化を抑えられるとみられている。
世界のEV販売でテスラに次ぐ2位のシェアを持つBYDは電池を祖業とし、車載電池メーカーとしても世界シェア上位に位置する。電池だけでなく、電池以外の基幹部品の駆動用モーターやパワー半導体なども自ら生産し、価格競争力を高めてきた。日本勢は新たなEVブランドの浸透だけでなく、材料など供給網構築で現地メーカーとの協力も欠かせない。
アリックス・パートナーズの鈴木智之マネージングディレクターは「中国メーカーが電池や部品などのハードウエアやソフトウエアで競争力を持つようになった中で、日本車メーカーはいかに協業関係を作っていくかが重要になる」と語る。(上海=田辺静、東京=川上梓)
中国市場の売れ筋EV、コスパも日本超え
中国市場で販売されるEVは激しい競争にさらされ、コストパフォーマンス(コスパ)で日本国内で流通する商品を上回っているようだ。コスパの目安として価格1万円当たりの航続距離が1キロメートルであることを示す直線を引くと、同じ車両を日本でも供給しているトヨタ自動車や日産自動車のEVを含め、中国市場での売れ筋商品はすべて直線の上に位置する。航続距離の算出方法が異なるため一律の比較は難しいが、決して「安かろう悪かろう」ではないことが見て取れる。
日本国内でも日産が販売するリーフの「e+」など一部グレードでは1万円当たりの航続距離が1キロを上回る車もある。ただ、商品ラインアップは500万〜800万円の高価格帯に集中しており、庶民にとっては高根の花だ。1月から日本で乗用車カテゴリーとして発売したBYDのEV「ATTO3」(小型SUV)は440万円で航続距離は485キロ。消費者はコスパを見極めており、本格的なEVの国内普及には300万〜400万円で航続距離が300〜400キロ程度のEVが求められている。
【G7の懸念、中国に直接表明」 外相共同声明に明記 「力による一方的な試みに強く反対」】
18日の日経ニュースメールは次のように報じた。
主要7カ国(G7)は18日、長野県軽井沢町で開いた外相会合で共同声明をまとめた。軍備増強する中国に関し「我々は中国に率直に関与し、懸念を直接説明することの重要性を認識する」と盛り込んだ。
東アジアの安全保障に米欧も関与する方針を明示した。東・南シナ海での中国による一方的な現状変更の試みに「深刻な懸念」を表し「強く反対」すると打ち出した。
「台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認」した上で「両岸問題の平和的解決を促す」と書き込んだ。
中国に関しては「国際社会の責任ある一員として行動するよう改めて求める」と指摘し「対話を通じて建設的かつ安定的な関係を構築する」と表現した。「国連憲章の目的と原則を堅持し、威嚇、威圧、脅威、武力の行使を控える必要性を想起する」と唱えた。
今回のG7外相会合で主要議題の一つだった「自由で開かれたインド太平洋」は「重要性を改めて表明する」と掲げた。北朝鮮の相次ぐミサイル発射を「強く非難」した。
ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ「世界のいかなる場所でも力や威圧で、平穏に確立された領域の状況を変更しようとする一方的な試みに強く反対する」と明記した。
厳しい対ロシア制裁と強力なウクライナ支援の継続方針を明確にした。「ロシア軍の即時かつ無条件の撤退」を要請し、ベラルーシへの核配備と威嚇は受け入れられないと主張した。中国などがロシアに武器支援する可能性を念頭に、第三国によるロシアへの迂回支援の停止を求めた。
法の支配に基づく「自由で開かれた国際秩序を強化する決意」を示した。「グローバルな課題への対処」との表現で南半球を中心とする新興・途上国「グローバルサウス」が抱える課題にともに取り組む考えを打ち出した。
食料やエネルギーのほか経済安全保障で重要な物資の調達などで協力拡大を見込む。共同声明に経済安保の項目を入れ「経済的威圧に対抗する必要な手段を備える」と表記した。
核軍縮を巡っては中国に対応を促す文言を入れた。「核戦力の透明性向上」を要求した。日本が推進する「ヒロシマ・アクション・プラン」をもとに核兵器のない世界の実現へ努力する必要性を訴えた。
「世界の核兵器数の全体的な減少を継続し、逆行させてはいけない」と確認した。世界の指導者に広島と長崎を訪問するよう促し、軍縮・不拡散教育の重要性を提起した。
外相声明を採択し、G7外相会合は閉幕した。5月に広島で開く首脳会議(広島サミット)に成果を反映する。
【中国GDP4.5%増 1〜3月実質、ゼロコロナ終了で加速】
18日昼の日経ニュースメール【北京=川手伊織】によれば、中国国家統計局が18日発表した2023年1〜3月の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比4.5%増えた。22年10〜12月の2.9%増から加速した。新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策が終わり、外食や旅行などサービス消費が持ち直した。不動産開発や自動車販売は成長の足を引っ張った。
1〜3月の前年同期比増加率は、日本経済新聞社と日経QUICKニュースが調べた市場予想の平均(3.4%)を上回った。季節要因をならした前期比での伸び率は2.2%だった。22年10〜12月(0.6%)から拡大した。先進国のように前期比の伸び率を年率換算した成長率は9.1%程度となる。
生活実感に近い名目GDPは前年同期から5.5%拡大した。22年10〜12月の増加率は3.5%だった。
18日はGDPと同時に他の統計も公表した。
百貨店、スーパーの売り上げやインターネット販売を合計した1〜3月の社会消費品小売総額(小売売上高)は5.8%増加した。全体の1割を占める飲食店収入が13.9%増と大きく伸びた。
対照的に耐久消費財はさえなかった。自動車は2.3%、通信機器は5.1%それぞれ減少した。国内消費は明暗が分かれた。
工場の建設などを示す固定資産投資は5.1%増だった。22年通年と同じ伸びだった。政府が景気下支え役として期待するインフラ投資が引き続き堅調だった。
一方、地方経済が依存してきた不動産開発投資は5.8%減少した。新築住宅の販売面積が1.4%のプラスに転じたが、在庫の圧縮が進み新たなマンション開発が増えるまでには時間がかかりそうだ。
外需は経済成長率を押し上げる要因となった。輸出から輸入を差し引いた1〜3月の貿易黒字は前年同期を3割超上回った。東南アジア諸国連合(ASEAN)向けが好調だった輸出が増加した一方、耐久消費財などの国内販売が振るわず輸入は減少した。
1〜3月の生産は3.0%増で、22年通年の伸び(3.6%)には届かなかった。販売不振をうけ自動車やパソコンの生産量が落ち込んだ。
4〜6月の実質経済成長率は1〜3月より拡大するとの見方が多い。前年同期からの反動増という要因が強い。上海市が22年春、新型コロナの感染拡大を封じ込めるためロックダウン(都市封鎖)に踏み切り、中国経済全体が混乱した。
企業や家計の先行き不安を拭い、投資や消費など内需の拡大で成長を加速させるには雇用や所得の改善が欠かせない。
【三井住友、AT1債を1400億円発行へ 金融正常化へ一歩】
18日夕方の日経ニュースメールは次のように報じた。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は1400億円規模のAT1債(永久劣後債)を発行する方針を固めた。予定通り発行されれば、クレディ・スイス・グループの救済で同社のAT1債が無価値になった3月中旬以降、世界の主要行で初となる見通しだ。日本のAT1債はクレディ・スイスと同様の事態が起きにくいほか、世界的に金融不安への警戒が和らぎつつあることが背景にある。金融システムの正常化に向けた一歩となりそうだ。
19日に発行条件を決める。5年2カ月後に償還が可能になる債券を890億円、同じく10年2カ月の債券を510億円発行する。2本とも、信用度を示す国債に対する上乗せ金利(スプレッド)は1.71%を予定する。前回(2022年12月)発行した、5年6カ月後に償還ができる債券に比べ0.33%拡大した。
3月中旬のUBSによるクレディ・スイスの救済が決まった際、同社のAT1債は政府支援を受けたとして全額が無価値となった。株式より安全性が高いとみなされてきた金融商品だっただけに、投資家の不安が拡大。QUICK・ファクトセットによると、クレディ・スイスの救済決定以降「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)」によるAT1債の新規発行は止まっていた。
ただ、日本のAT1債はクレディ・スイスと仕組みが異なる。全国銀行協会によれば、邦銀が発行するAT1債は、公的支援を受け入れても元本が毀損することはないという。
クレディ・スイスの救済以降、連鎖的な金融機関の破綻などは起きていないことも発行の追い風になったようだ。米インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出するAT1債の代表的な指数ではスプレッドが足元で5%台前半と、クレディ救済直後に比べ2%近く縮小する(債券価格は上昇する)など、投資家の警戒感は和らぎつつある。
AT1債は株式と債券の中間の性質を持つ商品で、調達した資金を自己資本に算入できる。
【大企業健保、赤字5600億円超で過去最大 23年度見込み】
20日の日経ニュースメールは次にように報じた。
健康保険組合連合会は20日、主に大企業の会社員らが入る健保組合の2023年度の予算集計を発表した。全国およそ1400組合を合算した経常収支は5623億円の赤字となる。赤字幅は過去最大で、2805億円だった22年度の2倍を見込む。
医療費の伸びに加えて高齢者医療への拠出が膨らんでおり、現役世代にとって重荷となっている。
赤字を見込む健保組合は22年度から130組合増えて1093組合となった。その割合は全体の8割近くに達する。黒字組合は137組合減って287組合にとどまる。
医療費の支払いに充てる保険給付費は22年度比5.5%増えて4兆7820億円となった。予算計上の土台となる22年度の医療費が新型コロナウイルス禍で膨らんでおり、同水準の支出が続くとみた。
日本の医療保険制度は現役世代が高齢者医療費の一部を賄う仕組みだ。拠出金は進む高齢化を反映して22年度比で7.3%増えて3兆7067億円となった。なかでも75歳以上の後期高齢者への支援金は10%程度増える想定とした。
高齢者医療への拠出金は増え続ける公算が大きい。経常支出の4分の1ほどは後期高齢者向けの支援金が占める。65〜74歳の前期高齢者向けの納付金とあわせると、保険料のおよそ4割が高齢者医療の下支えに使われる計算だ。
保険料率を引き上げる組合も増える。22年度から23年度にかけて135組合が引き上げ、平均保険料率は22年度から0.01ポイント上昇して9.27%となった。後期高齢者医療制度が発足した08年度と比べると2ポイント程度伸びた。
赤字幅の拡大を反映し、収支の均衡に必要な実質保険料率は10.1%に上昇。初めて10%の大台を超える。これまで経常収支の赤字額が最も大きかったのはリーマン・ショックの影響を受けた09年度決算の5234億円だった。
健保組合は従業員と勤務先が毎月払う保険料をもとに医療費の支払いなどの保険給付、健康診断などの保健事業を担う。主に大企業の従業員と家族ら 2800万人ほどが加入する。
政府は少子化対策の拡充に充てる財源として社会保険料からの拠出を検討している。保険料が上乗せになれば現役世代の一段の負担増につながりかねない。高齢者も含めた幅広い負担のあり方や、社会保障制度全体の見直しによる歳出改革も欠かせない。
給付費の抑制を巡っては、健保組合がジェネリック医薬品(後発医薬品)の使用促進などで給付費を抑える取り組みを続ける。給付を抑える仕組みと合わせて負担の平準化に向けた検討も必要となる。
【3月訪日客181万人 インバウンド消費「コロナ前」視野】
19日の日経速報メールは次のように報じた。
新型コロナウイルス禍で低調だった訪日外国人(インバウンド)消費に弾みがついてきた。3月の訪日客数は181.7万人と、コロナ前の2019年3月の66%に戻った。米欧や中東からの大幅な増加が全体を押し上げた。1人当たりの単価が上がり、23年の訪日客消費の「コロナ前」水準の回復も視野に入ってきた。
日本政府観光局(JNTO)が訪日客数を19日に発表した。単月で150万人を超えたのは20年1月以来となる。前月比では23%増、前年同月比では27.5倍だった。このまま順調にいけば年間2000万人超に届く。
国・地域別では米国が20.3万人(19年比15%増)、ベトナムは5.3万人(12%増)、中東は1.2万人(5%増)で、コロナ前を上回った。
中国は前月の2倍の7.5万人となった。3月1日に中国からの渡航者に対する水際対策を緩和し、追い風となった。
全日本空輸(ANA)は3月の中国路線の運航便数を前年同月比2.5倍に増やした。旅客数は4倍に増えた。日本航空(JAL)も3月の中国路線の旅客数は前月の2倍以上だった。
中国政府は日本への団体旅行を許可しておらず「本格的な需要回復には至っていない」(JAL)。過去最多の訪日客数だった19年の3188万人には直近の単月ベースで7割弱と及ばない。
単価の上昇により、消費額全体は回復している。観光庁は23年1〜3月期の訪日客の1人あたりの旅行支出が21万2000円(速報値)だったとの調査を公表した。19年通年実績(約15万8000円)から3割増えた。
富裕層ほど早く観光へと戻る傾向が影響するが、円安などを背景に単価は上がりつつある。中国以外ではオーストラリア(35万8000円)やフランス(30万円)が高額で、長期滞在などで単価が上がっているようだ。
財務省・日銀の国際収支統計をもとにインバウンド消費の傾向をみると、22年12月、23年2月に3000億円を超え、16〜17年の水準まで回復した。23年通年ではコロナ前を超すとの見方が出ている。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「23年のインバウンド消費は5兆円を超え、コロナ前の4.8兆円を上回る可能性がある」と指摘する。
百貨店などの見込みは強気だ。三越伊勢丹ホールディングスでは、22年度の伊勢丹新宿店の売上高が3000億円を超え、1991年を上回って過去最高を更新したようだ。好調な国内消費に加えて、インバウンドの回復も後押しした。単月ベースでは2、3月はいずれも19年比で2〜3割増だった。
大丸松坂屋百貨店などを傘下にもつJ・フロントリテイリングは24年2月期の百貨店の免税売上高を前期比2.3倍の440億円と見込む。過去最高だった20年2月期(601億円)の7割強の水準だ。
観光は政府の成長戦略の柱になっている。足元ではホテルなどでの人手不足の解消が重要になっている。富裕層の消費拡大や都市部への客足の偏在解消なども課題になる。(金子冴月、逸見純也、嶋田航斗)
■中国からの本格回復がカギに
今後、いっそうの回復には中国人客の動向がカギを握る。Jフロントの若林勇人取締役は「中国本土を結ぶ直行便の増便といった伸びしろもある」と語る。
中国からの訪日客はコロナ前は国・地域別で最多だった。「団体旅行が許可されたら、より多くの中国人が日本を訪れるだろう」。大連市の旅行会社の女性幹部はこう話す。
中国研究機関の中国旅行研究院は、中国を出入国する旅行客が23年通年は延べ9000万人超になると予想する。22年比の約2倍で、コロナ禍前の約32%の水準だ。
中国旅行大手の携程旅行網(シートリップ)によると、4月29日〜5月3日の大型連休の海外旅行の予約数は前年同期の18倍以上に増えた。
コロナ禍で落ち込んだ航空便数が回復し、平均価格が大きく下がったことが需要につながった。旅行先の上位はタイ、香港、日本、シンガポール、マレーシアという。
中国政府が団体旅行を認める60カ国には東南アジアやアフリカ、南米などの新興国が多い。米国だけでなく同国と歩調をあわすことの多い英国、オーストラリア、日本、韓国は含まれていない。
日中外交筋には「米国寄りの立場を取る日本と中国の関係は冷え込んだままだ。中国側は団体旅行解禁を政治的なカードとして温存している可能性がある」との見方もある。(上海=渡辺伸)
【近づく戦争への活用、AI競争力が覇権左右 問われる倫理】
20日の日経速報メールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・人工知能を搭載した銃は15カ国超に配備されている
・AIにより軍隊や戦略も変わる可能性がある
・強権的な国家ほど有利に開発、人類の脅威に
相手の兵士をロックオンすると、人工知能(AI)が400メートル先の群衆の中から自動で検知する。標的の動きや風速を計算して照準が追尾し、あとは引き金を引くだけ――。イスラエルのスマートシューター社が開発したAI銃。2月下旬にアラブ首長国連邦(UAE)で開かれた武器展示会では実際の追尾力を試すデモに参加者が殺到した。
無人航空機(UAV)に取り付け、複数の武器をネットワークでつないで狙い続けることも可能だ。米国やインドなど15カ国超が導入しているという。
国連は報告書でUAVなどの自律型致死兵器システム(LAWS)の危険性に触れ、リビアの内戦で使われた可能性を指摘する。ロシアのウクライナ侵攻でもAIを搭載した兵器が投入されているもようだ。
AIは兵器のみならず戦略も変える。米軍は米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)などと組み陸、海、空、宇宙の部隊の情報を統合してAIで戦略を立案する「全領域統合指揮統制(JADC2)」構想を進める。中国はAIなどの先端技術を人民解放軍に導入し今世紀半ばに米軍を追い抜く国家目標を掲げる。
米AI国家安全保障委員会(NSCAI)の報告書ではAIの開発競争は半導体技術が左右すると指摘し、現状のままでは中国などに「主導権を握られる」と警告する。米国はAIの研究開発予算を年3兆5千億円確保する方針を掲げた。一方、中国も研究開発費を毎年7%以上増額する計画を掲げる。
調査会社アライド・マーケット・リサーチの推計では自律型兵器の市場規模は2030年に301億ドル(約4兆円)にのぼり、10年で2.6倍に拡大する。
法務情報サービスの米レクシスネクシスによると、AI関連の特許保有数は騰訊控股(テンセント)、百度(バイドゥ)の中国勢が19年ごろから米IBMや韓国サムスン電子、米マイクロソフトなどを急追。21年にツートップの座を確立した。民間で中国優位が進んでいる。
米グーグルは18年にAIが音声で予約代行などを担うサービスを発表すると、詐欺への悪用懸念で批判を浴びた。米国防総省とドローンのAI制御で提携する試みが社内の反発で撤回した経緯もあり、倫理面の制約は多い。
防衛省防衛研究所の小野圭司特別研究官は「中国の強権体制は大きな優位性だ」と話す。民主主義国が法規制や社会倫理に 縛られる中、開発が認められる場は技術者にとって研究も進みやすいためだ。
「AIは軍隊を明確に変えている」。2月にオランダで開かれた初のAI兵器の規制会議「REAIM(リーム)」で、同国のフックストラ外相が米中など約50カ国の参加者にルールづくりの必要性を訴えた。米政府はAI兵器に関する説明責任などを盛り込んだ宣言を発表した。
「人に従え、されど人を害するな」。SF小説家のアイザック・アシモフが1942年に示した「ロボット工学三原則」。80年前の空想世界からの課題に、人類は今まさに直面している。
【米スペースXの大型ロケット、初の打ち上げ試験で爆発】
20日の日経速報メール【ヒューストン=花房良祐】によると、米起業家のイーロン・マスク氏が率いる米スペースXは20日、大型ロケット「スターシップ」の打ち上げ試験を初めて実施した。宇宙船からブースターの切り離しに失敗し、数分後に上空で爆発した。
テキサス州南部の宇宙基地から打ち上げた。当初の計画では約3分後に「スーパーヘビー」と呼ぶブースターから宇宙船を切り離し、ブースターはメキシコ湾、宇宙船は1時間30分後に太平洋のハワイ沖にそれぞれ着水するはずだった。
マスク氏は打ち上げ前、成功の可能性は半分だとの認識を示していた。
スペースXは原因の究明を急ぎ、数カ月後に再度の打ち上げを目指す方針だ。マスク氏はツイッターで「数カ月後の次回の打ち上げに向け、多くのことを学んだ」と述べた。同社はこれまでも再利用が可能なロケットなど先端技術の開発に取り組んできたが、失敗を重ねながら設計や体制の見直しに生かしてきた経緯を持つ。
スターシップを構成するブースターと宇宙船は、合計の高さが約120メートルで過去最大級だ。メタンを燃料とするエンジン33基を搭載していた。米航空宇宙局(NASA)が1960〜70年代の月面探査計画「アポロ計画」で使用したロケットよりも大きく、打ち上げの難度は高いとされる。
NASAは2025年にも月面に宇宙飛行士を送り込む「アルテミス計画」を進めており、スペースXはスターシップをもとにNASA向けに月面への着陸機を開発する計画だ。このほか、ZOZO創業者の前沢友作氏がスターシップによる月の周回旅行も計画している。
将来的にはブースターと宇宙船を再利用できるように開発し、打ち上げコストを削減する。予定する打ち上げ能力は150〜250トンで、スペースXの既存ロケット「ファルコンヘビー」(約64トン)を大幅に上回る。
将来は複数のロケットを打ち上げ、燃料タンクを地球の周回軌道上に配置する。宇宙船は宇宙空間で燃料を補給し、月だけでなく火星まで有人探査船を送り込む計画もある。マスク氏はスターシップに100人が搭乗できるようになると言及し、人類が火星に入植する構想も抱いている。
スペースXはテキサス州南部のメキシコとの国境近くに宇宙基地を建設した。宇宙船の打ち上げ試験を繰り返しており、高度約1万メートルに到達したこともある。宇宙船にブースターを搭載して打ち上げを試みたのは今回が初めてだった。
【「AIネーティブ」揺れる教育 人づくりの未来どう開く AI Impact(5)】
21日の日経速報メールは次のように報じた。
受け入れか、排除か。優れた対話能力をもつ人工知能(AI)「ChatGPT(チャットGPT)」などの扱いを巡り、学びの場が揺れている。
「教育現場におけるAI活用のフェーズが変わった」。3月下旬、チャットGPTを含むAIの活用指針を公表した東京外国語大の青山亨理事は語る。従来のAI活用は機械翻訳のように「言語を学ぶ補助」の枠内にとどまっていた。
自然な文章で高度な質問に答えるチャットGPTが教育現場で普及すれば、言語を学ぶ意義自体が問われかねない。それでも東京外大は「テクノロジーの進化は止められない」(青山理事)と、授業での活用ルールを教員と学生で定めるよう促した。
東京大も4月、AIだけを使った論文作成は認めないが活用法の議論を始める方針を示した。上智大は教員が許可した場合を除き、リポートや論文を書く際に使うことを禁止した。
世界でも対応は割れる。米ニューヨーク市は学校での使用を禁止した。一方でシンガポールのチャン・チュンシン教育相は「受け入れることを指導しなければならない」と容認する。
これからは幼少期からAIが身近な「AIネーティブ」が社会を担う。「既に答えがある問題」はAIで対処できる。知識の暗記と再生のうまさを評価する教育は意味をなさなくなる。
高校教諭出身でAIを使った教育に詳しい佐藤俊一・元山形大教授は「疑問を持つことは人間にしかできない。課題を見つけて問いを立て、定まった正解がない中で最適解を模索する『探究型』学習への転換が急務だ」と訴える。
AIを使いこなすには人も能力を高め続けなければならない。世界ではチャットGPTを高度な作業に利用する技能「プロンプトエンジニアリング」を習得する動きが拡大し、国内のビジネス現場でも体制づくりが猛スピードで進む。
生活関連サービスを手がけるくふうカンパニーもその一つで、4月に入社した社員約20人にまず教えたのはAIを使う際の基礎的素養や注意点だった。約1週間の準備期間を経てチャットGPTを活用した新事業案の発表会も開いた。
同社の目標は今の世にない画期的なサービスの創出だ。そのためにはAIからアイデアを引き出し、新たな価値を生み出す社員を育てる必要がある。急速な環境変化に対応するため、カカクコムやクックパッドの経営に携わってきた穐田誉輝最高経営責任者(CEO)は新卒社員に「(AIの力を)自ら感じ、使いこなしてほしい」と呼びかける。
AIによる研究が進む囲碁でも人間同士の勝敗を分けるのは思考力となる。
史上最年少の13歳11カ月でタイトルを獲得した仲邑菫女流棋聖は「AIが示す手だけ打っていても失敗する。自分の棋風に合った手を打つのが一番大切だ」と語り、国内第一人者の井山裕太王座も「AIをどう自分なりの手に落とし込むかが大事」と強調する。
AIが進化するなかで人が学ぶべきことは何か。答えを見いだしたとき、人づくりの未来が開く。=おわり
【東大がIBM量子計算機導入、国内で最高性能 23年秋稼働に】
21日の日経速報メールは次のように報じた。
東京大学は今秋にも、川崎市内の研究施設に米IBM製の最新鋭の量子コンピューターを設置する。性能の目安となる「量子ビット」の数は127で、国内に置かれるものとしては最高となる。バッテリー開発などへの応用が期待され、トヨタ自動車や三菱ケミカルグループなどが参加する産学協議会が利用する。実用化に向けた研究が国内で一段と進む。
東大と日本IBMが21日、都内で記者会見を開き明らかにした。東大は2021年7月に国内初となる汎用型のIBM製量子コンピューターを川崎市内の施設に導入した。新たに最先端機種を設置し、今秋にも稼働を始める。
計算の基本素子である量子ビットの数は127で、従来の27量子ビットから約5倍になる。理化学研究所が3月にクラウド上で利用可能にした国産初号機の64量子ビットを上回る。東大の相原博昭・副学長は記者会見で「宇宙や創薬、人工知能(AI)、金融などの重点分野の研究を進展させ、量子によるイノベーションをもたらすことを目指す」と述べた。
量子コンピューターは複雑な問題をスーパーコンピューターの1億倍以上の速さで解く可能性を持ち、自動車や化学、創薬をはじめとする様々な産業の変革を後押しすると期待されている。IBMによると、今回導入する127量子ビットの計算機が北米以外で稼働するのは初めて。
東大が使用権を専有し、協議会に参加するトヨタやなどの企業が利用する。高性能な計算機を頻繁に活用できる環境が国内で整備されれば、企業が関連する研究成果を創出しやすくなる。
現状の量子コンピューターは動作が不安定で計算の際にエラーが生じるなど課題を抱える。どんな用途で力を発揮するか、世界でも手探りの段階だ。将来は幅広い産業の競争力に影響を及ぼす可能性があり、いち早く導入するための企業間の競争も活発になっている。
【米軍、太平洋に防衛線 中国抑止へ島しょ国に拠点分散】
同じ21日の日経速報メール【ワシントン=中村亮、シドニー=今橋瑠璃華】によると、バイデン米政権がインド太平洋地域で米軍の作戦拠点を拡大している。太平洋島しょ国の3カ国と1兆円近くの経済支援をテコに軍事協力を深め、米領グアムやフィリピンにも部隊を分散させる。中国に対処するため太平洋で防衛線を張る。
米インド太平洋軍のジョン・アキリーノ司令官は20日、上院軍事委員会の公聴会で中国を念頭に「インド太平洋で戦争は不可避ではない。差し迫ってもいない。しかしこの10年間はリスクが高まる」と証言した。抑止力強化に向けて「我々の挑戦者が持たない同盟国とパートナー国のネットワークを拡大する」と語った。
米軍は太平洋島しょ国と協力を深める。パラオで高度なレーダーシステムの設置を計画し、遠方の状況把握能力を向上させる。2022年には統合演習「バリアント・シールド」の一環で戦闘機F35をパラオに展開した。有事に作戦拠点として使うシナリオを想定しているとみられる。
ミクロネシア連邦は航空機や艦船の補給拠点としての役割を想定する。米国とミクロネシア連邦は21年、同国での軍事施設の設置に合意した。米軍はマーシャル諸島でミサイル実験場を運用し、66年まで使用が認められている。
米国はマーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パラオと自由連合協定を結んでいる。米国が経済支援し、3カ国は米国と軍事協力をしている。経済支援は23〜24年に期限切れを迎える。米国は更新交渉を急ぎ、軍事協力の拡大に布石を打つ。
米国務省当局者は日本経済新聞の取材で更新交渉に関し「短期での合意を目指している」と語り、5月末までをメドに交渉に取り組むと話した。政権は3月公表の予算教書で3カ国向けの経済支援と郵便サービスに関し、20年間で計71億ドル(9500億円)を盛った。当局者は過去20年間と比較は難しいと説明しつつ「大きな増額だ」と強調した。
米軍は戦力や部隊の分散先として3カ国に期待する。アキリーノ氏は18日の下院軍事委員会の公聴会で3カ国に関し「第2次世界大戦での我々の成功に極めて重要だった。いまも重要であり戦略的な場所に位置している」と指摘した。
北東アジアや北米へのシーレーン(海上交通路)に位置し、パラオは日本の小笠原諸島からグアムを経由してパプアニューギニアに至る第2列島線に近い。台湾周辺や南シナ海での有事の際は前線部隊を後方から支援したり、戦闘任務に加わったりする拠点になりうる。
グアムでは米海兵隊が1月、約70年ぶりに基地を新設した。地対艦ミサイルや地対空ミサイルを運用する「海兵沿岸連隊」を配置する公算が大きい。有事の際は即応部隊として前線への派遣が視野に入る。
米軍が部隊の分散を進めるのは中国のミサイルの精密さや飛距離が向上するからだ。中距離弾道ミサイルDF26はグアムを射程に入れる。米軍は少数の基地に集中すると標的になりやすく、攻撃を受ければ戦力が一気に下がりかねない。
日本の沖縄や台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線でも米軍は拠点を増やしている。フィリピンは4月上旬、米軍に巡回駐留を新たに認める4つの拠点を決めた。台湾に近いルソン島北部を含み、有事での使用や備蓄物資に関して協議を重ねる見通しだ。
中国軍も遠方への展開を増やす。日本の防衛省統合幕僚監部によると、中国海軍の空母「山東」は16日、沖ノ鳥島から南南東に約710キロメートルへ位置した。第2列島線の近くで、艦載機の発着訓練を実施したとみられる。
中国は22年4月、ソロモン諸島と安全保障協定を結んだ。中国軍が補給拠点を設ければ活動範囲を拡大できる。首都ホニアラが位置するガダルカナル島は太平洋戦争で日米が激戦を繰り広げた太平洋の要衝だ。
【マイクロソフト社長「生成AI、開発の手ゆるめず」】
21日の日経ニュースメールは次のように報じた。
米IT(情報技術)大手マイクロソフトのブラッド・スミス社長は21日、日本経済新聞の取材に応じた。提携する米オープンAIが開発した「Chat(チャット)GPT」などの生成人工知能(AI)について、「開発を遅らせるのではなく、(安全確保のための)ガードレールをつくる仕事を急がなければならない」と事業展開を続ける姿勢を示した。
ルール整備や開発を透明に
チャットGPTは2022年11月の公開後、異例の速さで普及。誤情報の拡散やプライバシー侵害といった懸念が浮上している。高度なAIの開発休止を求める声も高まるが、スミス氏は「新世代の法律や規制がいる」と各国政府の対応や官民でのルール整備が必要と主張した。
マイクロソフトは2019年に10億ドルを投資して以降、オープンAIを資金、技術の両面から支えてきた。AI戦略の要に位置づけ、自社の検索サービスや業務ソフトにオープンAIの開発成果を組み込んでいる。
AI開発の手を緩めない一方、企業の責任に関して「謙虚さが必要だ。AIがもたらす恩恵に興奮しつつも、あらゆるリスクを心配しないといけない」と述べた。具体的には開発の原則を明確にして、技術者の訓練や製品のテスト・監視などの継続が不可欠とした。
規制当局との対話を重視する方針も強調した。AI企業の役割は「AIがどう機能するのか、人々に情報を提供すること」とし、「理解が進めば、当局は正しい情報に基づく意思決定ができる」と語った。
世界的に労働人口が減るなか、「生産性を高めるAIは経済成長の新しい原動力だ」とも訴えた。雇用を奪うと警戒する声には「いま各国の一番の懸念は労働力を確保できないことだ」とAI活用が打開策になるとの考えを示した。
勝者総どりにはならず
洗練された文章や画像を生成する高度なAIは市場の拡大が見込まれ、2027年には世界で約16兆円に達するとの予測がある。マイクロソフトのほかグーグル、アマゾン・ドット・コム、メタなど米テクノロジー大手が研究開発に力を注ぐ。
一握りの企業が市場で支配力を強める恐れがあるとの見方について、スミス氏は「各国でイノベーションが起こる」と否定。恩恵を受ける企業は多いとの見方を示した。「AIのエコシステム(生態系)はウィナー・テーク・オール(勝者総どり)にはならない」と明言した。
高度なAIの開発では米国勢だけでなく「中国の北京智源人工智能研究院(BAAI)や百度(バイドゥ)、アリババ集団がいることを頭に入れておくべきだ」と述べた。中国勢に加え欧州やイスラエル企業も台頭していると訴えた。AIを使ったサービスの開発ではスタートアップ企業にも商機があるとし、日本では「5社のスタートアップに会った」と話した。
スミス氏は「オープンAIがつくった最先端のAIは(マイクロソフトの)データセンターで学習した」と協業の成果を強調。「より多くの人が新技術を使えるようにすることが両社のミッションだ」と語った。一方でオープンAIを買収する可能性については「現在の提携はうまく機能しており、両社とも興味はない」と否定した。ChatGPTを開発したオープンAIとは提携関係を続けるとした
ゲーム大手買収は「楽観視」
マイクロソフトの歴史を振り返れば、各国の規制当局との緊張関係を抜きには語れない。90年代末にはパソコン用基本ソフト(OS)の「ウィンドウズ」をめぐり、米司法省が独禁法違反で同社を提訴。訴訟は長期化し、一時は「会社分割」の命令も出された。欧州委員会との争いもあった。
その後は政府やライバル企業との対話を重視する経営にかじを切り、攻めの姿勢が目立つ他のテック大手と一線を画してきた。ただ、22年1月に発表したゲーム大手の米アクティビジョン・ブリザードの巨額買収に対しては米連邦取引委員会(FTC)が買収阻止を求めて提訴するなど、マイクロソフトの影響力の高まりを警戒するムードも漂う。
アクティビジョン買収の実現についてスミス氏は「未来は見通せないが、楽観視している」と述べ、「より多くの人々にゲームを届けられる買収であり、競争を促す」と自信を示した。日本の公正取引委員会は3月に買収を承認している。
AIは人間の補助役に
イタリアでチャットGPTが利用禁止になるなど、生成AIに対する逆風も吹く。17日の米議会公聴会では、FTCのリナ・カーン委員長が「AIはあらゆる機会と同時に、あらゆるリスクも提供する」と述べ、AIサービスも調査対象となりうることを強調した。
生成AIを使えば詐欺メールなどを巧妙につくれ、サイバー攻撃などへの悪用が懸念される。スミス氏は「AIは人間よりも早く新たな攻撃手法を発見できる」と指摘。影響工作による偽情報の拡散も検知可能だとして、AIを駆使して攻撃に対抗する意向を示した。
マイクロソフトは「エクセル」や「ワード」などに使えるAIを副操縦士を意味する「コパイロット」と名付けている。AIはあくまでも人間の補助で、現時点では最終判断は人間の役割だと位置づける。ただ、将来、自動運転車のようにAIが自律的に判断する状況となれば「非常に慎重になるべきだ。規制が必要になる」と話した。
【米ベッド・バスが破産法申請 金融不安で行き詰まり】
23日の日経速報メール【ニューヨーク=朝田賢治】によれば、米生活雑貨販売大手、ベッド・バス・アンド・ビヨンドは23日、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条(チャプター11)の適用をニュージャージー州にある連邦地方裁判所に申請したと発表した。電子商取引(EC)への対応の遅れによる業績悪化に、米国での金融不安による資金調達環境の悪化が重なり、経営が行き詰まった。
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負債総額は52億ドル(約7000億円)。スー・ゴーブ最高経営責任者(CEO)は「従業員、顧客、取引先、地域社会に感謝する。すべてのステークホルダー(利害関係者)の利益を最大化するため、引き続き真摯に取り組む」と声明を出した。
同社は2022年9〜11月期まで7四半期連続で赤字を計上し、23年1月には経営再建に向け「あらゆる戦略的選択肢を検討する」と表明していた。
1月26日付の米証券取引委員会(SEC)への提出資料では、JPモルガン・チェースから債務不履行の通知を受けたと公表。そこにシリコンバレーバンクの破綻などで米国内の金融システム不安が拡大し、金融機関が貸し出し姿勢を引き締め、厳しい財務状況が続いていた。
1971年に創業したベッド・バスはベッドリネンやバス用品から乳児・幼児向け商品、家具など幅広い商品を扱う。米国やカナダでチェーンストアを展開し、天井まで商品を高く積み上げる陳列方法で顧客の支持を集めた。2023年4月中旬時点で、家具点360点、ベビー用品店120店を運営し、約2000万人のロイヤルティー顧客を抱える。
しかし、スウェーデンのイケアなど新しい業態の家具店との競合が激化。デジタル投資などでライバルの後じんを拝し、資金繰りの悪化による在庫減も顧客離れを招いた。
近年は代表的な「ミーム株(はやりの株)」として個人投資家の関心を集め、22年8月には大株主の持ち株売却や経営再建策をめぐり、短期売買で株価が乱高下した。不採算店閉鎖や人員削減などのリストラ策も実施し、存続を模索していた。
23年3月下旬には、借り入れではなく、株式市場からの直接の資金調達を試みた。新規の株式発行で3億ドル(約400億円)を確保しようとしたが、株価の下落により想定の資金が集まらず、破産を申請するに至った。
【衆参5補欠選で自民党4勝1敗 和歌山は維新、立民全敗 解散戦略に影響】
24日の日経ニュースメールは次のように報じた。
衆参両院5つの補欠選挙が23日、投開票された。自民党は4勝1敗とし補選前から議席を増やした。衆院の千葉5区、山口2区と4区、参院大分選挙区でいずれも自民新人が当選を確実にした。衆院和歌山1区では日本維新の会新人が自民元職との事実上の一騎打ちを制した。
2022年7月の参院選以来の国政選挙となった。5選挙区のうち3議席を自民が持っていた。立憲民主党は候補者を擁立した3選挙区で全敗した。
岸田文雄首相の次期衆院選へ向けた解散戦略にも影響する。自民の茂木敏充幹事長は23日のNHK番組で「解散は首相の専権事項だ。結果の分析を含め首相が判断すると思う」と語った。
千葉5区は「政治とカネ」の問題で自民党の薗浦健太郎氏が離党し、議員辞職したことに伴う。自民新人の英利アルフィヤ氏が立民新人の矢崎堅太郎氏らに競り勝った。野党は候補者を一本化できず、政権への批判票が分散した。
山口2区は岸信夫前防衛相の辞職を受けた補選だった。岸氏の長男の信千世氏は世襲批判などをかわし、無所属元職の平岡秀夫氏を退けた。
安倍晋三元首相の死去に伴う山口4区は自民新人の吉田真次氏が当選を決めた。吉田氏は元下関市議で、選挙戦を通じ安倍氏の後継候補だと強調した。安倍氏の妻の昭恵さんも支持を呼びかけた。与党支持層をまとめ立憲民主党新人の有田芳生氏を下した。
参院大分は県知事選に出馬した安達澄氏の辞職に伴う。自民新人の白坂亜紀氏が立民元職の吉田忠智氏との接戦を制した。
衆院の和歌山1区では維新新人の林佑美氏が自民元職の門博文氏を破った。同区は県知事に転出した岸本周平氏の辞職による。
維新は統一地方選の前半戦で勢いをつけ、地盤である大阪の隣県に勢力を広げる戦略を描いてきた。林氏は与党支持層や無党派層も取り込んだ。
選挙期間中の15日、首相の演説前に爆発物が投げ込まれる事件が起きた。首相は選挙戦最終日の22日にも和歌山市で街頭演説したものの、門氏は届かなかった。
23日は統一地方選の後半戦も投開票が進んだ。政令市を除く一般市長・市議選と東京都の特別区長・区議選などが対象で、一部は翌日の24日に開票される。
【熟練外国人の長期就労、6月にも全分野で 関係省庁調整】
同じ24日の日経ニュースメールは次のように報じた。
熟練した外国人材が日本で長く働く道が広がりそうだ。人手不足対策として2019年に創設した在留資格「特定技能」について、 長期就労が可能な業種を6月にも現在の3分野から全12分野に拡大する方向で関係省庁が調整に入った。実現すれば期間限定の受け入れだった飲食料品製造や外食などの分野で、技能を磨いた外国人労働者を企業が継続雇用できるようになる。
24日の自民党の外国人労働者等特別委員会で、特定技能の長期就労分野の拡大を求める各省庁の要望を出入国在留管理庁が伝えた。政府・与党が検討して6月の閣議決定を目指す。省令改正などを進め、資格取得などの運用開始は24年5月ごろになる見通しだ。少子化で外国人労働者が不可欠となっており、受け入れ政策を見直す。
外国人材の受け入れには主に2通りある。高い専門性や技術力を持つエンジニアなどの高度人材と、製造業や農業、建設業などの現場で働く技能実習や特定技能だ。
技能実習は廃止し、人材の確保・育成が目的の新たな制度を創設する方向となっている。実習後に特定技能に移行する人は多く、両制度の改定が進めば非熟練の外国人材がスキルを向上させながら長期就労できる環境整備が進む。
背景には人手不足の深刻化がある。国際協力機構(JICA)などは政府が目指す経済成長を40年に達成するには、外国人労働者は現在の4倍近い674万人必要と推計する。各国で少子化が進み、労働力の獲得で競争激化が見込まれる。
この時期に見直すのは、特定技能の創設当初から働く人が24年5月以降に在留期限を迎え始めるためだ。現状では多くが帰国を迫られる。引き続き日本で働ける道を用意するかを早急に示す必要があった。
具体的には特定技能「2号」の対象分野を拡大するよう調整する。技能などの試験に合格するか技能実習修了が条件の「1号」は最長5年だが、2号は資格更新回数に上限がなく配偶者や子どもも日本で暮らせる。これまで対象は建設など2分野のみだった。残る10分野のうち、別の資格で長期就労できる介護を除く9分野での追加を関係省庁が求めている。
2号の取得では建設などと同様、各分野の技能を持つ熟練者に限る方針だ。2号取得者は10年以上滞在し、安定した生活を営む資産があるといった要件を満たせば永住権取得も可能になる。
自民党の一部からは「事実上の移民受け入れにつながりかねない」との慎重論が出る可能性がある。18年に特定技能導入を決めた際は自民党の部会で2号の適用厳格化を求める意見が出た。
特定技能は2月末時点で約14万6千人。外国人労働者(22年10月時点で約182万人)の約8%に当たる。国籍別ではベトナムが約6割を占め、インドネシア、フィリピンが1割超で続く。入国制限緩和で拡大している。
賃金が上がらない日本で働くメリットは薄れてきたとの見方もある。台湾では非熟練者でも最長12年間(介護などは14年間)働ける。韓国は所得や語学力などが一定水準に達した外国人に永住権を与える。日本もさらに呼び込む手立てが必要となる。(外国人共生エディター 覧具雄人)
【スーダンの邦人ら45人、国外退避 岸田首相が発表】
24日深夜の日経速報メールは次のように報じた。
岸田文雄首相は24日夜、戦闘が続くアフリカ北東部のスーダンから航空自衛隊のC2輸送機で在留邦人とその配偶者の計45人を出国させたと明らかにした。「先ほどスーダン東部のポートスーダンを飛び立ち、ジブチにいま向かっている」と言明した。首相公邸で記者団に語った。
このほかにフランスや国際赤十字の協力で邦人4人がすでにスーダンからジブチやエチオピアに退避したと説明した。
首相は「成功裏に邦人退避を遂行した大使館や自衛隊をはじめとする関係者の努力への敬意と感謝を申し上げたい」と述べた。韓国やアラブ首長国連邦(UAE)、国連などから協力を受けたとして謝意を表明した。
首相は退避した邦人について「それぞれの希望に基づき、日本への帰国などを調整していく」と話した。スーダンに在留する退避希望の邦人は残り数人だと指摘し「引き続き関係各国とも緊密に連絡をしつつ、早期の退避に全力を挙げて対応していく」と強調した。
フランス政府によると、24日朝までにスーダンからジブチに退避させた388人に日本人2人が含まれている。韓国大統領府は同日、韓国人28人が軍用機で退避したと発表した。その際に「日本人数人も安全に撤収させた」と明らかにした。
多くの国が自国民の救出を本格化している。ドイツでは24日、101人の自国民らを乗せた最初の軍用機が経由地のヨルダンからベルリンに到着した。
イタリアやスペインも自国民らを輸送機で脱出させ、カナダは外交官を退避させた。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は同日、1千人超のEU市民がスーダンから脱出したと述べた。
トルコは陸路で隣国エチオピアへの退避を始めたが、集合場所付近で爆発が起きるなど一部で混乱があったもようだ。
世界保健機関(WHO)は23日、15日に始まった戦闘で死者が420人、負傷者は3700人に上ったと明らかにした。
【EU、ChatGPTに統一規制 「メード・ウィズAI」表示も】
25日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・EU幹部が生成AIの規制法を年内にも決定と表明
・AI作成の文章などに「メード・ウィズAI」とつける案を提示
・提供企業にAIの判断理由や倫理基準の説明求める
【ブリュッセル=辻隆史】欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のベステアー上級副委員長が24日、日本経済新聞の単独インタ ビューに応じた。「Chat(チャット)GPT」などの生成AI(人工知能)をEU全体で規制する新法を「できる限り早く施行する」と明言。年内にも決定する見通しを示した。
AIが作成した文章や画像に「メード・ウィズ AI(AIで作成)」といったラベルを表示させる案も提起したほか、生成AIの提供企業に説明義務を課すことも明らかにした。EUで統一することで、規制の効力を高める狙いがある。
ベステアー氏はAIや競争政策を統括する。EUの上級幹部が規制の時期や内容などの具体案に踏み込むのは初めて。
EUはかねてAI利用に関する新たな法案を準備してきた。チャットGPTのような高度な対話能力を備えた生成AIが登場したことを受け、ベステアー氏は法案を修正する方針を明示した。「2023年後半に(各国代表による欧州理事会と欧州議会による)政治合意に至り、その後に施行したい」と述べた。
法案ではAIのリスクを4段階に分ける。EUが高いリスクがあると判断したAIについては、公開前に評価する仕組みをつくる。データ保護の枠組みなどEUの他の制度を総合的に活用し、生成AIの規制に取り組む。
ベステアー氏は適切な利用に向けた基準「ガードレール」が必要だと強調した。社会が生成AIに依存しすぎることで、子どもが考える力を養えなくなったり、ローンを借りる際にAIが生まれや経歴などで「偏見」を抱き、希望者を差別的に扱ったりするリスクを指摘した。
生成AIはインターネット上のデータから学習し、高度な文章や精巧な画像などをつくることができる。ベステアー氏は新たな規制でそうした生成物に「メード・ウィズ AI」「これは本当の写真ではない」といったラベルをつけ、真偽が分かるようにする案を提示した。
企業に対しては、一定の説明義務を課す考えも示した。「なぜAIがそうした判断をしたのか。どのような倫理的なガードレールを設けているのか」について開示すべきだと語った。
ベステアー氏は「研究は、新法の対象ではない。企業はテストして技術革新を起こし、アイデアを追求できる」とも強調。AIの研究開発段階では規制対象にしない考えを示し、利用の段階でのルールづくりを重視する。
生成AIを巡っては、米マイクロソフトが投資するオープンAIがチャットGPTを開発。米グーグルなども研究開発を進める。ベステアー氏は米巨大IT(情報技術)企業に厳しい姿勢で知られる。「まだ調査段階」としつつも、チャットGPTなどがEUの競争法の規制対象になる可能性にも言及した。
「生成AIが競争を阻害するケースがあった場合は(自社優遇などを禁じる)EUの『デジタル市場法』も適用できる」と主張した。有害情報の流布を防ぐことを企業に義務付ける「デジタルサービス法」の活用も検討課題とした。
EU内でも、AI人材の確保を急ぐ。新たにAI技術などに詳しい専門人材を雇い、助言や調査を行う組織を準備していることも明らかにした。
主要7カ国(G7)での共通ルールづくりにも期待感を表明した。EUとして独自規制を設ける一方で、他の国・地域との協調にも前向きな姿勢をみせた。
【クアッド、サイバー攻撃の情報共有 インド含め安保協力 首脳会合で合意めざす 対中国・ロシア、迅速な防御可能に】
同じ25日の日経速報メールは次のように報じた。
日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国は重要インフラ施設を狙ったサイバー攻撃の情報を共有する調整に入った。割り出した攻撃元や手法に関するデータを使って各国が迅速に防御態勢を整えられるようにする。外交的中立を掲げるインドを安全保障分野の協力に引き込む。
5月下旬に豪州で開く日米豪印の枠組み「Quad(クアッド)」首脳会合での合意をめざす。ロシアがウクライナ侵攻でサイバー攻撃と通常兵器を組み合わせた「ハイブリッド戦」を展開し、対中国・ロシアの抑止でサイバー防衛の強化は急務となった。
4カ国は2022年にまとめた首脳共同声明でサイバー分野の協力を拡充すると打ち出した。情報共有はその第1弾の具体策となる。
現代戦ではサイバー攻撃で社会システムを混乱させた後にミサイルなどの物理的な攻撃を仕掛けることが多い。ロシアによるウクライナ侵攻でも発電所や通信施設がサイバー攻撃の標的となった。
日米豪印は重要インフラでサイバー攻撃の兆候や被害があった場合、各政府のサイバー部門が通報し合う体制をつくる調整を進める。インフラを管理する民間企業も含めて即時に情報共有する仕組みにする。
サイバー攻撃は大量のデータを送りつけてサーバーを止める「DDoS」攻撃など手口が巧妙になっている。4カ国のいずれかを狙った攻撃元や手法が分かれば他の3カ国は防御態勢をとりやすい。米国は攻撃を受けると官民でシステムを守るソフトをつくる組織を設けている。
4カ国の政府機関が調達するソフトウエアの安全基準作りも始める。セキュリティー管理システムやデータを暗号化する仕組みなどに共通の監査体制を設ける案がある。
政府が導入するシステムに脆弱性があれば国全体のデジタル機能に影響が及ぶ恐れがある。日本は防衛機密を扱うシステムの一部で米国と安全基準を統一することで攻撃への対応力を高めている。この取り組みを4カ国に広げることを目指す。
一定の安全性を満たすソフトウエアを調達するサプライチェーン(供給網)を4カ国でつくれば、有事の際に融通しやすくなるとも期待する。
インターネットのセキュリティーサービスを提供する「Nord(ノード)VPN」の調査によると、06〜21年に政府機関などを狙った重大なサイバー攻撃を受けた国のトップは米国で計198回にのぼった。
2位は58回の英国で、32回のインドはそれに次ぐ3番目だった。豪州は22回、日本は16回といずれも標的となっている。こうしたサイバー攻撃は中国、ロシア、北朝鮮が絡んでいるとの分析がある。
日本は22年末に改定した国家安全保障戦略に基づき、不審なアクセスなどをした攻撃元を見つけて事前に対処する「能動的サイバー防御」を導入する。他国と取り組みを共有すればサイバー防衛能力の向上につながるとも見込む。
この間、下記の録画を観ることができた。 (1)BS世界のドキュメンタリー「中国-アメリカ ”新たな冷戦“を読み解く」2003年4月11日。 (2)BS6報道1930「ウクライナ<春の大攻勢>いつ どこに」12日。 (3)NHKスペシャル「半導体 大競争時代 第2回 日本は生き残れるか?」15日。 (4)BS6報道1930「機密流出で米州兵逮捕」17日。 (5)BS8プライムニュース「岸田首相襲撃事件 核超大国・中国の脅威と抑止戦略」17日。 (6)BS6報道1930「人類を救うか滅ぼすか 対話型AIが導く未来 チャットGPTの将来」18日。 (7)BS6報道1930「ウクライナ反転攻勢のカギ「戦車部隊長」を独自取材」19日。 (8)BS8プライムニュース「ワグネルトップの停戦案 露軍敗北言及にプーチンは?」20日。 (9)BS6報道1930「ウ軍反攻作戦は4段階、非公表兵器初投入か 空軍部隊キーウの幽霊」20日。 (10)BS6報道1930「ミサイル開発資金稼ぐ北朝鮮のハッカー集団ラザルスは何者か」21日。 (11)BS5日曜スクープ「戦勝記念日目前に戦力増強のロシア 財政悪化の奇策も」23日。 (12)BS6報道1930「6月解散・総選挙も? 統一地方選から見えた岸総理<胸の内>は」24日。 (13)BS8プライムニュース「与野党幹部が徹底討論! 選挙結果から見る政局への影響」24日。
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