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人類最強の敵=新型コロナウィルス(60)

 前回の(59)は2月21日午後に掲載を終えた。まず書き洩らした記事を一つ挙げておきたい。しばらく国際情勢等を中心に取り上げてきたが、医療技術の新展開にも関心を払うためである。

【がん粒子線治療、日本から世界へ 「第5の選択肢」脚光】
 2月14日未明の日経ニュースメールは次のように報じた。
 【この記事のポイント】
・日本発の粒子線治療。がん治療「第5の選択肢」と注目
・ホウ素と中性子の核反応でがん細胞破壊。患者負担軽く
・進化する治療技術。闘病と仕事の両立に変わらぬ課題
 「副作用も少なく、治療を受けてよかった」。兵庫県に住む佐々木加世子(仮名、70代)は、2019年に口腔(こうくう)がんと診断された。手術で取り切れず抗がん剤治療を受けたが再発。食事も十分にとれなくなった。体調が悪化する中、主治医に勧められたのが「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」だった。
 22年1月、関西BNCT共同医療センター(大阪府高槻市)で治療を受けると腫瘍は2〜3カ月で消えた。その後は再発せず通院しながら経過観察を続ける。食欲も戻り「リハビリや体力づくりのウオーキングに精を出している」とほほ笑む。
 BNCTは世界の最先端をゆく日本発の粒子線治療技術だ。がん細胞がホウ素を取り込む性質を利用し、ホウ素と中性子の核反応でがん細胞を破壊する。治療は1時間弱で基本的に1回ですむ。
 高い効果と患者負担の軽さから従来の手術や放射線、抗がん剤、免疫療法に続く、がん治療の「第5の選択肢」として注目される。近年は米国や英国、アルゼンチンなど各国で開発が進み、日本のシステムが中国に導入されることも決まった。
 だが実用化までの道は平たんではなかった。BNCTは当初、中性子を生み出すために原子炉を使っていた。原子炉の利用は核物理学などが中心で「(医療用に使えるのは)1年でわずか4〜5日。予算も限られ物理学者や医師、企業研究者が知恵を絞る毎日だった」。大阪医科薬科大学BNCT共同臨床研究所所長の小野公二は振り返る。
 研究は米国で1950年代に始まり、京都大学は70年代に参入。91年に京大にいた小野が引き継いだが「成果の見えない地味な日々が続いた」。
 転機は2001年に訪れた。「打つ手がないがん患者がいる」。大阪大学から連絡が入った。耳の近くの腫瘍を切除し放射線治療を施したものの再発。有効な抗がん剤もなかった。「何とかできないか」。小野はBNCTの利用手続きを急いだ。
 粒子線をあてると、腫瘍は目に見えて縮小した。患者は日常生活を送れるまでに回復。その経緯は国際学会で発表され、問い合わせが相次いだ。
 小野は、多くの患者が利用できるよう医療機器としての実用化を目指した。だが厚生労働省の回答は「ノー」。原子炉は医療機器として認められないとの理由だった。
 そこで考えたのが原子炉のかわりに加速器を使うアイデアだ。住友重機械工業に持ちかけ、07年から共同研究を開始。20年に世界で初めて薬事承認を取得した。現在は大阪府と福島県の2カ所で保険適用の治療が受けられる。
 小野が見据えるのは次のステップだ。「出力をあげれば照射時間を短縮できる」「薬剤を改良し副作用を軽くできれば」。患者の負担軽減に向けたアイデアは尽きない。
 がんを巡る治療技術が急速に進化する中、変わらぬ課題もある。治療と仕事の両立だ。厚生労働省がまとめた「全国がん登録」(2019年)によると、1年間にがんに罹患(りかん)した患者は約100万人。その約4分の1は20〜64歳だ。国立がん研究センターによると、仕事を持つがん患者の約5割が休職・休業し、約2割は退職・廃業を迫られている。
 闘病と仕事の両立を支援する制度を大幅に拡充したのが伊藤忠商事だ。保険適用外の先進医療を自己負担なしで受けられるほか、社員が死亡しても子どもの教育費は大学院修了まで補助する。岡藤正広会長は「就職先は人生を託すところ。業績だけでなく社員の健康を気遣うバランスのとれた企業を目指す」と語る。
 きっかけは岡藤が17年、がん闘病中の社員から受け取ったメールにある。休職制度などへの謝意とともに「伊藤忠が一番いい会社です」とあった。だが数週間後に社員は帰らぬ人となる。
 「社員ががんになったら自分の家族が闘病しているつもりで臨みます」。岡藤は全社員にメッセージを送り支援制度を拡充した。現在、年約10人の社員が利用する。「いつどうなるか分からない。皆、あすは我が身だ」。岡藤の偽らざる思いだ。(敬称略)
 不治の病とされたがん。技術進化で治療は大きく変わりつつある。研究機関や企業、患者の最前線の動きを追った。

【バイデン大統領、ウクライナを電撃訪問 侵攻後初】
 ロシアによるウクライナ侵攻から24日で一年になるのを目前に、ビッグニュースが飛び込んできた。
 2月20日、日経ニュースメール【リビウ(ウクライナ西部)=田中孝幸】によると、バイデン米大統領が20日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を予告なしに訪問し、同国のゼレンスキー大統領と会談した。ロシアの侵攻開始から1年を前に「世界各国が連合を組む」と支援継続に向けた国際社会の結束を強調した。バイデン氏のウクライナ訪問は2022年2月のロシアによる侵攻開始以降、初となる。
 この記事のポイント
・ロシアの侵攻から1年、ウクライナ支援揺るがず
・「世界各国が連合」、民主主義陣営の結束を強調
・5億ドルの軍事支援や対ロシア制裁強化を表明
 米ホワイトハウスが発表した。バイデン氏はウクライナに新たに5億ドル(約670億円)規模の軍事支援を実施すると表明。対ロシア制裁を強化する考えも示した。
 両首脳はキーウの大統領府で会談後に共同会見した。追加の軍事支援でロシアの空爆にさらされるウクライナの都市の防空能力を強化する考えを明らかにした。バイデン氏は「プーチン(ロシア大統領)の征服は失敗している」と強調した。
 今回のウクライナ訪問には、民主主義陣営のリーダーとして、権威主義陣営との戦いにおける結束を内外に示す狙いがある。ロシアによる侵攻が長期化し、各国の支援姿勢には温度差が出始めた。米国でも野党・共和党でウクライナ支援予算の見直し論が浮上している。
 バイデン氏は訪問の目的を「ウクライナの民主主義、主権、領土保全に対する揺るぎない関与を再確認する」ことだと説明。侵攻から1年を前に「ウクライナは立ち向かっている。民主主義は立ち向かっている。米国ではアメリカ人があなたとともに立っている」と連帯を表明した。
 ゼレンスキー氏は「ウクライナが世界の自由のために戦っているこの最も困難な時期に、ウクライナにとって最も重要な訪問になった」と謝意を表明。「長射程の兵器など、未供与だがウクライナに供給されるかもしれない兵器について話した」と明らかにした。
 5億ドルの軍事支援には対戦車ミサイルや榴弾砲などが含まれる。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問によると、バイデン氏は「ロシアは確実に敗北するだろう。ウクライナは必要なすべての兵器を手に入れることになる」と語った。
 現地の欧米の治安関係者によると、バイデン氏は20日午前8時(日本時間午後3時)ごろキーウに到着し、5時間程度滞在した後に隣国ポーランドに向かった。
 米国家安全保障会議(NSC)当局者によるとバイデン氏のキーウ訪問は17日に最終決定した。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は20日、記者団にバイデン氏のウクライナ訪問についてロシアに事前通告していたと明らかにした。
 バイデン氏はウクライナ侵攻開始から1年を前に、ポーランドの首都ワルシャワを訪問することを表明していた。21日にはワルシャワでポーランドのドゥダ大統領と会談するほか、ウクライナ侵攻への対応を巡る演説を行う予定だ。
 主要7カ国(G7)ではウクライナ侵攻後、フランスやドイツ、英国、イタリア、カナダの各首脳がキーウを訪問した。

【松本零士さん死去 85歳 「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」】
 20日の毎日新聞は次のように報じた。
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漫画家の松本零士さん=東京都練馬区で2015年2月2日午後4時59分、矢頭智剛撮影

 「銀河鉄道999(スリーナイン)」「宇宙戦艦ヤマト」などで知られ、SFアニメブームの先駆けとなった漫画家の松本零士(まつもと・れいじ、本名・晟=あきら)さんが13日、急性心不全のため死去した。85歳。葬儀は近親者で営んだ。お別れの会を後日開く。喪主は妻で漫画家の牧美也子(まき・みやこ)さん。
 福岡県久留米市生まれ。小学生から高校生時代を北九州市(旧小倉市)で過ごした。高校時代にデビューし、毎日小学生新聞でも連載した。卒業後に上京し、さえない若者の群像を描いた「男おいどん」(1971年)が出世作になった。
  74年からアニメ「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの制作に携わり、77年に「銀河鉄道999」の連載をスタート。永遠の命を求める少年が謎の女性に導かれ、銀河を旅する物語はテレビアニメ化もされ、大反響を呼んだ。「宇宙海賊キャプテンハーロック」「クイーンエメラルダス」など、宇宙を舞台にした壮大なロマンが相次いでヒット。SF漫画家としての地位を不動のものにした。
 日本宇宙少年団の理事長なども歴任。2001年紫綬褒章、10年旭日小綬章。12年にはフランスの芸術文化勲章シュバリエを受章した。19年11月、イベント参加のために訪れたイタリア北部のトリノで体調を崩し、脳卒中の疑いで入院したが、帰国後に回復。その後はツイッターで近況を発信するなどしていた。

【バイデン氏、17日にキーウ訪問決断 ロシアへ事前通告】
 21日未明の日経ニュースメール【ワルシャワ=中村亮】によると、バイデン米大統領は20日のウクライナ訪問を数カ月前から極秘に計画してきた。不測の事態への緊急対応計画を練り、17日に訪問を決断した。ロシア側に事前通告したが訪問中に防空サイレンが鳴り響き、安全へのリスクを物語った。
 ジョン・フィナー大統領副補佐官は20日、記者団にウクライナの首都キーウ(キエフ)訪問に関し、バイデン氏に同行したのは「極めて少数だった」と説明した。安全に配慮し、側近の数人と医療チーム、カメラマン、警護隊に限定した。
 ホワイトハウスや国防総省、シークレットサービス(大統領警護隊)、情報機関のごく一部で数カ月前から訪問計画や緊急時の対応計画を作成した。バイデン氏は17日に安全保障担当の高官らと協議し、キーウ訪問を最終決定した。
 サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)はウクライナ訪問をロシアに事前通告していたと明らかにした。「衝突回避の目的だった」と話し、ロシア側の反応に関してはコメントを控えた。
 米大統領は米軍が駐留するアフガニスタンやイラクなどを予告せずに訪問してきたが、ウクライナに米軍は駐留していないため治安を管理しにくい。バイデン政権は最悪の事態を避けるためロシアへ事前通告が必要だと判断したとみられる。
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電車の中を歩くバイデン氏=ロイター

 ホワイトハウスは同行記者を通常の10人以上から2人に限定した。同行記者に送った訪問予定を記したメールの件名は「ゴルフ大会の到着案内」と偽装。首都ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地で記者から携帯電話を回収し、情報漏洩に細心の注意を払った。
 バイデン氏は米東部時間19日午前4時15分(日本時間19日午後6時15分)に同空軍基地を出発した。ドイツのラムシュタイン空軍基地での給油を経て、ポーランド南東部のジェシュフ・ヤションカ空港に到着した。そこから車で1時間の距離にあるウクライナ国境付近の駅に向かった。
 電車に乗り換えて暗闇のなかを約10時間かけてキーウに移動し、現地時間20日午前8時(日本時間20日午後3時)ごろに着いた。バイデン氏は80歳と最高齢の米大統領で、米紙ニューヨーク・タイムズは「骨の折れる旅路だった」と指摘した。
 バイデン氏はキーウ市内でゼレンスキー氏と握手を交わすと、記者団からキーウ訪問の意義を問われた。今回が8回目の訪問だと触れて「来るたびにその意義は大きくなっている」と強調した。「(米国は)ここにいる。我々は離れない」と語り、ウクライナとの連帯をアピールした。キーウ滞在は約5時間だった。
 サリバン氏は記者団に対し、会談について「今後数カ月の戦闘や戦闘で勝利するために必要な能力について議論した」と語った。国防総省は20日、ウクライナへ4億6000万ドル(約620億円)相当の武器を追加供与すると発表した。高機動ロケット砲システム「ハイマース」に搭載する弾薬や防空偵察レーダーを含んでいる。
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バイデン氏は電車に乗り換えて暗闇のなかを約10時間かけてキーウに移動した=ロイター

 バイデン氏のキーウ滞在中にも防空警報が鳴り響いた。隣国ベラルーシからロシア軍の戦闘機が飛び立ったためという。ベラルーシからミサイルが発射されると20分以内にキーウへ届く距離とされ、ウクライナが戦時下であることを象徴した。CNNテレビによると、ウクライナ東部では20日も断続的にロシアの砲撃が続いた。
 バイデン氏は再び電車でポーランド国境まで戻り、首都ワルシャワに着いたのは現地時間20日午後11時10分(日本時間21日午前7時10分)ごろだった。
 バイデン氏は21日、ワルシャワで侵攻をめぐる包括演説に臨む。侵攻から1年の節目を控え、ウクライナ支援の機運を再び盛り上げ、民主主義陣営の結束を固める狙いがある。バイデン氏は世界が民主主義と強権主義の競争に直面していると公言する。ウクライナ侵攻の結末は民主主義の行方も左右すると位置づける。
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バイデン氏㊧は約19時間かけてキーウに着いた(20日、キーウ)=ロイター

【住友商事、EV用レアアースで脱中国 米や東南アに供給網】
 21日の日経ニュースメールは次のように報じた。
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MPマテリアルズが保有するマウンテンパス鉱山(米カリフォルニア州)
 住友商事は電気自動車(EV)向けのレアアース(希土類)で、中国抜きのサプライチェーン(供給網)を構築する。これまで精錬などの工程を中国に依存してきたが、米国と東南アジアに切り替える。中国はレアアースの精錬で約9割の世界シェアを握る。日本でも地政学リスクへの意識が高まるなか、中国に依存しすぎない供給網の整備が加速してきた。
 住商は米国のレアアースメーカー、MPマテリアルズからEVや風力発電機向けの永久磁石に必要なネオジムとプラセオジムの供給を受けている。これまでは住商が中国の精錬メーカーに販売し、精錬後の製品を中国メーカーが日本に輸出してきた。


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 今後は中国メーカーへの販売を順次縮小し、精錬やレアアースごとの分離までの工程をMPマテリアルズが担う。住商はこの後に買い取り、ベトナムやフィリピンなど東南アジアの複数の企業に、分離後のメタル化工程を委託する。
 メタル化後の加工品は日系の永久磁石メーカーに販売する。販売量は計年間3000トンと日本のネオジムとプラセオジムの総需要の約3割に相当する。MPマテリアルズとは対日販売の総代理店契約を結び、一連の供給網組み替えは7月ごろに実施する。MPマテリアルズが米政府の補助金などを活用して精錬や分離の工程を担うため、供給網全体での製造コストは中国が工程を担うケースと大差はない。
 米国地質研究所などによると、2022年時点で中国はレアアースの生産で約7割、精錬で約9割の世界シェアを占める。米中対立の懸念が高まるなか、米バイデン政権は自国内でレアアースの供給網強化を掲げている。
 日本でも供給網内の中国依存度を下げ、有事の際の悪影響を最低限に食い止めようとする動きが相次ぐ。安川電機は27年に家電に使われるインバーター部品の新工場を福岡県行橋市に設け、中国などに依存してきた工程を内製化する。ダイキン工業は23年度中に、有事に中国製部品が無くてもエアコンを生産できる供給網を構築する。(柘植衛)

【プーチン氏演説「敗戦あり得ない」 ウクライナ侵攻1年】
 21日、日経ニュースメール【ワルシャワ=中村亮】によると、ロシアのプーチン大統領は21日、「特別軍事作戦」を柱とする年次教書演説に臨んだ。ウクライナ侵攻から1年の節目が近づき、国民に作戦への協力を求めた。バイデン米大統領はウクライナへの長期支援を確約しており、米ロ対立は激しさを増す。
 プーチン氏は21日正午(日本時間午後6時)からモスクワのクレムリン近くの会場で侵攻後初となる年次教書演説を行った。
 ウクライナでの特別軍事作戦についてプーチン氏は、ロシアの安全保障に関する提案は欧米諸国に否定されたと述べた。「戦争を始めたのは西側諸国で、ロシアはそれを止めるために武力を行使している」と侵攻を正当化した。
 プーチン氏は「安全保障を確保するために必要な課題を解決していく」と述べ、まもなく1年を迎える侵攻を継続する考えを強調した。「戦場で敗北することはあり得ない」とも明言した。
 ロシアと米国の新戦略兵器削減条約(新START)について「参加を停止する」と述べた。締結時と環境が激変したと説明し「全て米国の責任だ」と主張した。条約からの離脱は否定した。
 2024年に予定される次期大統領選については「法律を順守して行われる」と述べ、予定通り来年3月に実施されるとの考えを示した。  
 演説は1時間45分ほどで終了した。ロシアメディアによると年次教書演説としては過去最長だった。
 ロシアは2022年2月21日にウクライナ東部で親ロ派武装勢力が支配する「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を独立国家として承認した。今回の演説は独立承認と2月24日の侵攻開始から1年に合わせたものとみられる。
 ロシア憲法では大統領が国の現状や内政、外交の方向性について年に1度、議会で演説することになっている。ウクライナ侵攻をめぐり演説の時期や内容への関心が高まるなか、22年の演説は日程調整の難航を理由に延期されていた。
 バイデン氏は21日、ポーランドの首都ワルシャワでドゥダ大統領と会談した。バイデン氏はポーランドがウクライナから難民を積極的に受け入れていることを念頭に「ポーランドの支援に感謝したい」と強調。さらなる協力に意欲を示した。侵攻への対応を通じて「北大西洋条約機構(NATO)はかつてなく強力になった」と語った。

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バイデン米大統領=ロイター
 
 サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は同日、記者団にウクライナ支援に関し「ポーランドは有志連合の強固な結束を推進してきた」と述べた。ポーランドを含む中東欧諸国はロシアの脅威の最前線に位置し、侵攻後に米軍が部隊の派遣を大幅に増やしてきた。
 首脳会談に続き、バイデン氏は侵攻から1年の節目を念頭に包括演説に臨む。ウクライナの長期支援を視野に民主主義陣営の結束を固める構えだ。ロシアが武力による国境変更に成功すれば第2次世界大戦後に築いたルールに基づく国際秩序が崩壊するとの危機感がある。民主主義と強権主義の競争の行方も左右するとみる。
 バイデン氏は20日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問した。ゼレンスキー大統領と会談し「(米国は)ここにいる。我々は離れない」と断言し、ウクライナ支援の機運を再び盛り上げた。ウクライナへの追加の軍事支援や対ロ制裁強化を表明し「プーチン(ロシア大統領)の征服は失敗している」とも述べた。
 ウクライナ軍との戦闘激化でロシア軍の損失は拡大しているもようだ。英国のシンクタンク国際戦略研究所(IISS)が今月まとめた軍事情勢の報告書「ミリタリー・バランス」最新版によると、ロシア軍は侵攻開始から1年間で戦車を約4割失った。

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 ブリンケン米国務長官が18日、中国外交担当トップの王毅(ワン・イー)氏との会談でロシアへの殺傷力のある軍事支援に強く反対したのは、こうした損失を補う可能性があるからだ。米欧はウクライナ軍に戦車の供与を増やす計画だが、引き渡しの時期が遅れ気味だ。
 英国防省はロシア側の死傷者数が17万5000~20万人となったと指摘する。ロシアは22年9月に部分動員令を発令し、30万人超の予備役を招集した。ロシアの独立系メディアは今後も戦況に応じて追加動員すると指摘しており、戦況は消耗戦の様相を呈している。
 ロシア軍はドネツク州で攻撃を続けており、ウクライナ東部戦線での戦闘は激しさを増している。ロシア軍は同州バフムトなどの陥落を目指して攻勢を強めている。南部ヘルソン州でも戦闘が激化する懸念が高まっている。
 
【ウクライナ市民「勝って終わらせる」 侵攻1年ルポ】
 22日未明、日経ニュースメールは次のように報じた。
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広場には戦死した地元出身兵士の写真が掲げられる(21日、リビウ)

【この記事のポイント】
・ウクライナ西部リビウでは防空警報がほぼ毎日鳴り響く
・戦いの終わりはみえないが住民たちに屈する様子はない
・国境の車の出入りは盛んで経済活動が粘り強く続く

 【リビウ(ウクライナ西部)=木寺もも子】
 ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく1年となる。前線から遠いウクライナ西部リビウには国内の避難民らが集まり、街の中心部はにぎわいを見せる。長期化する戦争は日常生活に影を落とすが、ロシアに抵抗するウクライナ市民の精神は侵攻から1年を経ても衰えることはない。
 ミサイルやドローンによる攻撃の危険を知らせる防空警報はほぼ毎日鳴り響く。多くの建物は地下階を防空のための「シェルター」に設定しているが、ホテル従業員のタチアナさんは警報を聞いて避難する人はほとんどいないと話した。市内に着弾することはまれなうえ、繰り返す警報に「慣れてしまった」という。
 「新型コロナウイルス禍が終わったかと思えばこれ。いつまでこんなことが続くのか」。戦いの終わりはみえないが屈する様子はない。タチアナさんは「ウクライナが勝って終わらなければいけない」と言葉に力を込めた。
 人口約70万人の西部の中心都市リビウ。前線に近い東部などから逃れた避難民や、外国の支援団体関係者らが集まる。
 ウクライナの2022年の国内総生産(GDP)は前年比で3割減ったが、政府が企業の西部移転を推奨していることもあり、サドビー市長によると同市の人口は侵攻前から15万人増えた。郊外には新しい高層集合住宅の建設現場もみられた。

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西部リビウには東部などから逃れた国内の避難民が集まる(20日)

 ポーランドやオーストリア・ハンガリー帝国などの支配下に置かれた歴史があるリビウはウクライナの中でも西側の雰囲気が強く、旧市街は観光地でもある。チョコレートやコーヒーが有名で、しゃれたカフェは市民や訪問客でにぎわう。
 警報のなかで日常生活を続ける市民の姿には、長期化する戦争を受け止め、ロシアへの抵抗を続ける覚悟が見て取れる。
 東部戦線から1000キロメートル離れたこの街でも戦争の影が濃さを増す。市内には団結を示す国旗のモチーフが並び、迷彩色の軍服を着た兵士があちこちにみられる。兵士を満載したバスの車内を見れば大半が若い女性兵で、目が合うとにっこり笑って窓越しに手を振ってくれた。
 カフェやレストランの前には発電機が並ぶ。店員によると、前回使ったのは昨年末のミサイル攻撃時で、リビウ市内の大半が停電した。ロシアは昨秋以降、市民生活の混乱を狙ってウクライナ全土で発電所などのインフラを標的にし、電力の供給は全国で半減した。

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ロシア軍のインフラ攻撃による停電に備え店頭に発電機が並ぶ飲食店も(20日、リビウ)

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中心部には「ウクライナはいまあなたを必要としている」と書かれた軍の広告も(20日、リビウ)

 広場には今月上旬に戦死した地元出身の兵士の写真が掲げられ、花束が手向けられていた。43歳の男性兵士は市内の中学校、専門学校を卒業しトラック運転手として働いていたが、志願して東部ハリコフ州やドネツク州で戦った。妻と2人の子供がいたという。
 ポーランドからウクライナ領内に入ると最初に気づくのは道路の違いだ。ポーランド側の高速道路が片側2車線で広々としているのに対し、ウクライナ側は1車線で舗装が粗く、車の揺れも大きい。
 国境の車の出入りは盛んだ。特に欧州連合(EU)への玄関口であるポーランドに向かっては、数キロメートルに及ぶトラックの車列が続く。ドイツのメーカーにスキー場のリフト用の金属材を運んでいた男性運転手はもう何日も車内外で寝泊まりしているという。長蛇の列は侵攻前から続く光景で、経済活動が粘り強く続いていることが分かる。 

【トヨタ、賃上げ・一時金満額回答 2年連続初回で表明】
 22日の日経速報メールは次のように報じた。
トヨタ自動車は3年連続の満額回答を組合側に提示した。

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 トヨタ自動車は22日、2023年春季労使交渉で、賃上げと一時金について労働組合の要求に満額で回答した。満額回答は3年連続で、初回の労使交渉で表明するのは2年連続。賃上げについては「過去20年で最高水準」(トヨタ労組)としていた。物価高への対応が課題になる中、産業界全体に波及するかどうかが焦点となる。
 労組側の要求は、一時金が満額回答だった22年を0.2カ月分下回る6.7カ月分。賃上げは全組合員平均の要求額は非公表で、15の職種・階級ごとに細分化して提示した。若手に重点的に配分し、例えば総合職で上から2番目の階級の組合員「事技職・指導職」で最高の月9370円の賃上げを要求していた。
 賃上げは賃金を一律で引き上げるベースアップ(ベア)や定期昇給に当たる部分を含む。ベアを要求していることは3年ぶりに明らかにしていた。具体的なベア要求額は非公表としている。
 会社側の正式回答日は3月15日だった。トヨタの労使は年間を通じて協議を進めている。今後春季交渉では職場の課題や働き方の議論を続けていくとしている。

【ホンダ5%賃上げ 要求に満額回答、初任給1割上げも】
 同22日晩の日経速報メールは次のように伝えた。
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ホンダは組合要求に満額回答し5%の賃上げに踏み切る

 ホンダは22日、2023年の春季労使交渉で労働組合の要求に満額で回答した。組合は基本給のベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分と定期昇給(定昇)合計で月1万9000円(組合員平均)の賃上げを求めていた。賃上げ率は5%程度。大学新卒の初任給を1割引き上げることも決めた。ホンダはこれまでは複数回の交渉を重ねて3月に回答していたが、過去最速となる2月下旬での異例の早期決着となった。
 同日午前開いた実質的な初回交渉で会社側が回答した。ベアは月1万2500円と1990年以降で最も高い額になる。率にすると3.3%だ。一時金も6.4カ月分の要求に対し満額回答した。ホンダは前年交渉ではベアで月3000円、一時金は6カ月分とする組合要求に満額回答していた。
 
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物価上昇に対応すると同時に賃上げでEVなど次世代車開発を担える人材の確保を急ぐ(22日、東京都港区の本社での交渉の様子)
 労組の上部団体である連合は23年春交渉でベアで約3%、定昇を含めて計約5%の賃上げを求めている。ホンダの賃上げ率は連合が求める水準と同じになる。
 新入社員の初任給の引き上げも決めた。大学新卒の場合、現行の給与から10%増の25万1000円にする。ホンダは40年に全新車を電気自動車(EV)か燃料電池車(FCV)にする方針を掲げている。賃金の原資を全従業員一律ではなく、主に若手社員に厚めに配分することでEVなど次世代車開発などを担える人材の確保を急ぐ考えだ。
 賃上げの内容について今後組合側と妥結し、6月から実施する予定だ。非正規の期間従業員などの賃上げも組合員同様に検討していく。
 会社が組合要求に回答する時期はこれまでの春交渉で最も早いという。近年は3月上旬だった。ホンダの平原克彦労政課長は「急激な物価上昇による社員の不安を取り除き、従業員が変革に集中できるようにする」と述べた。労組幹部は異例の2月決着について「労使の方向性が早期に一致した」と話す。
 グループの自動車部品や販売会社などでも賃上げ機運が高まる。ホンダグループの労働組合でつくる全国本田労働組合連合会(全本田労連)に加盟する計44単組は、23年春交渉で平均月約9000円のベアを要求した。ベア率は3.3%で額は前年に比べ3.6倍になるという。完成車メーカーだけでなく、部品会社や関連の中小企業を含めて業界に賃上げが波及するかが焦点となる。

【核融合、特許競争力で中国首位 未来のエネルギーに布石】
22日の日経ニュースメールは次のように報じた。
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核融合の技術開発を巡る国際競争は激しくなっている(米ローレンス・リバモア国立研究所提供=ロイター)
 次世代のエネルギー技術として2040年代以降の実用化が期待される核融合の研究で中国の存在感が高まっている。有力な特許を集計すると中国が首位で、米国(2位)と日本(4位)を上回った。核融合は再生可能エネルギーとともに脱炭素の切り札になる可能性がある。22年末には米国で実用化に向けた大きな進展があった。未来のエネルギー源を巡る国際競争が激しくなっている。

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 核融合は太陽と同じ反応を再現することから「地上の太陽」と呼ばれる。水素の仲間同士の原子核がぶつかる際に発生するエネルギーを発電に利用する。理論上は1グラムの燃料から石油8トン分のエネルギーが出る。
 発電時に二酸化炭素を出さず、燃料の供給をやめれば反応が止まるため原子力発電に比べて安全上のリスクも抑えやすいとされる。燃料となる重水素やトリチウムは海水などから生産できることもあり、実用化できればエネルギー源を一変する可能性もある。
 22年12月には発生したエネルギーが投入量を上回る「純増」を実験で初めて達成したと米国が発表した。実用化に向けて日米中などが参加する国際熱核融合実験炉(ITER)など国際プロジェクトも進んでいる。
 調査会社のアスタミューゼ(東京・千代田)が日米欧中など30カ国・地域で出願された関連特許を集計した。11〜22年9月までに公開された1133件について実現性や権利の残存期間など特許の競争力を点数化(スコア)して順位付けした。

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 出願している企業や研究機関の国籍別では中国が首位(出願件数も首位)だった。15年以降に有力な特許を大幅に増やして米国を逆転した。中国科学院が持つ核融合炉の内壁に使う特殊なセラミック複合材料の技術は企業や研究機関など組織別の上位20社の特許の中で最も評価が高かった。
 核融合は炉などの部品を超高温にしても壊れないように冷やしたり、狙った場所に原子核をぶつけたりする必要があるなど多くの技術を組み合わせないと実現できない。中国は国全体の特許が炉など同じ分野でつながっていることが多く、実用性の高い特許が多いのが特徴だ。組織別の順位でも中国科学院が2位、核工業西南物理研究院が3位につけた。
 慶応大学の岡野邦彦訪問教授は「中国は早めに動いて着実に開発レベルを上げようという姿勢がうかがえる」と語る。「ITERの成果を待たずに国内で試験炉などの計画を進めている。設計は無理のない堅実なつくりで、メンテナンスのしやすさまでよく考えられている。国の予算も手厚い」と指摘する。
 2位は米国(出願件数も2位)だった。組織別の20位以内に最多の7社・機関が入った。スタートアップなど民間主導で技術開発が進む。12位のヘリオン・エナジーは核融合の反応から電気を効率よく得る技術などの特許を持つ。グーグルも18位につけ、核融合の反応速度を高めるための装置や構造について研究しているようだ。
 米国は00年代まで特許数などで他国を圧倒していた。近年では中国に急速に追い上げられている。バイデン政権は民間企業の商用化を後押しするため22年9月に5000万ドル(約67億円)の資金支援を実施する方針を打ち出すなど、国家として技術開発の支援体制を強化している。
 日本は4位だった。浜松ホトニクスが組織別で5位、トヨタ自動車が7位につけた。浜ホトは米国で昨年末に純増を達成したレーザーを水素の仲間の原子核に照射する技術に強い。レーザーを制御し、核融合に不可欠なエネルギーの密度を高める特許の競争力が高い。トヨタは関連特許13件のすべてが浜ホトとの共同出願で、浜ホトと組んで研究を進めている。
 組織別の首位は英国のスタートアップ、トカマク・エナジーだった。22年に実験装置で核融合反応に必要なセ氏1億度の超高温の加熱状態を実現した初の民間企業だ。特許の競争力で2位を大幅に引き離している。英国は国別で3位だった。アスタミューゼには日本経済新聞社が出資している。(猪俣里美)

【G7、ウクライナ支援5.3兆円に拡大 財務相会議】
 23日の日経ニュースメール【ベンガルール=三島大地】によると、日米欧の主要7カ国(G7)は23日、インド南部ベンガルールで財務相・中央銀行総裁会議を開いた。2023年のウクライナへの財政・経済支援額をこれまでの320億ドル(約4.3兆円)から390億ドル(約5.3兆円)に増やすことなどを柱とする共同声明を採択した。世界的なインフレや低所得国の債務問題への対応で連携を強化することも確認した。

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 20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議にあわせて開催した。日本からは鈴木俊一財務相と日銀の黒田東彦総裁が出席し、日本が議長国を務めた。ウクライナのマルチェンコ財務相もオンラインで参加した。
 「G7はウクライナ支援に対する揺るぎないコミットメントと、ロシアへの非難で一致することを確認した」。23日に開いた記者会見で鈴木財務相は強調した。共同声明では「制裁の効果を注意深く監視し、必要に応じてさらなる行動を取る」と明記した。
 ウクライナのゼレンスキー大統領は同国の23年の資金需要を380億ドル規模(約5.1兆円、復興費を除く)と見積もっていた。会議に出席するためインドを訪問中のイエレン米財務長官は23日に記者会見し、ウクライナに今後数カ月でおよそ100億ドルの追加経済支援を実施すると述べた。鈴木財務相も「日本としてもウクライナに新たに55億ドル(約7400億円)の財政支援を行う」とした。
 ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格の上昇で、欧米などではインフレ率が2ケタに達する国もある。共同声明は「(中央銀行は)各国間の負の波及効果の抑制に資するよう、政策スタンスについて明確に意思疎通を行う」と確認した。
 新興国の債務問題についても「(G7の)取り組みを強化する」とした。国際通貨基金(IMF)によると、低所得国の約60%がすでに債務危機に陥っているか、陥る可能性が高いという。G7は債務国と債権国が協力して債務の正確性や透明性を向上する取り組みを進める考えだ。

【ウクライナ侵攻1年 ロシア、20世紀型大国の落日 変わる世界秩序㊤】
 23日の日経ニュースメールは次のように報じた。

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プーチン氏㊧とゼレンスキー氏

【この記事のポイント】
・短期間での政権打倒を想定したロシア、長期化は誤算
・資源や軍事力など「20世紀型大国」の行き詰まり示す
・台湾海峡をめぐる東アジアの安全保障にも影を落とす
 ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めて24日で1年となった。短期間での政権打倒と全土の制圧は容易と見誤り、長期化した戦争の現状は20世紀型の大国であるロシアの行き詰まりを示す。侵攻は核抑止の均衡を揺さぶり、台湾海峡をめぐる東アジアの安全保障にも影を落とす。
 「1分前に攻撃ドローン(無人機)が北に飛んでいきました」。ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊に住む20代の学生、パブロさんは民間の技術者が開発したアプリ「ePPO」経由で軍にドローンやミサイルの飛来情報を報告している。
 市民の目撃証言とスマートフォンの全地球測位システム(GPS)機能を活用し、情報を収集した軍は限られた撃墜要員や兵器を最適の場所で活用できるようになった。市民の協力を合わせた防空態勢のIT(情報技術)化も奏功し、ミサイル攻撃への迎撃率は昨年10月の5割から8割超に向上した。
 「ルールと人間性、予測可能性に基づく世界秩序の未来が決まりつつある」。ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、電撃訪問したバイデン米大統領をキーウに迎えた。同日夜、ビデオ演説で改めて西側の支援拡大を呼び掛けた。
 2014年に南部クリミア半島を短期間、ほぼ無血で併合した成功体験からロシアはウクライナの軍事能力を過小評価した。だが、東部で続いた対ロ紛争で経験を積み、北大西洋条約機構(NATO)式の戦い方を身につけたウクライナ軍は侵攻当初に陥落が危ぶまれた首都を守り抜いた。
 ゼレンスキー氏は亡命の勧めを断り、国内にとどまって国民を鼓舞した。「1年がたち、キーウは持ちこたえている。ウクライナ、民主主義は持ちこたえている」。20日、バイデン氏は簡潔な表現で称賛を送った。
 人口で3.3倍、国内総生産(GDP)で9倍のロシアに対し、ウクライナが示してきた高い強靱(きょうじん)性と復元力。支えたのは、独立後の30年で育んできた独自の国民意識、米欧による巨額の軍事・財政支援とデジタル技術の柔軟な活用だ。
 米データ解析会社のパランティア・テクノロジーズが提供した人工知能(AI)のソフトウエア「メタコンステレーション」は商業衛星や熱センサー、偵察ドローン、市民からの報告などの膨大なデータを瞬時に解析し、敵の位置情報を把握する。過去の戦闘から「学習」し、東部バフムトなどの激戦地で戦う兵士を支援する。
 「ミサイル攻撃を受けても、複数の地下シェルターから職員がリモート管理できるようになった」。西部リビウの電力制御施設の責任者オレグさんは、侵攻後にシステムを改良し、停電防止や早期の復旧につなげていると強調する。
 広大な領土、豊富な天然資源、人口と、これらに裏打ちされた軍事・工業力。20世紀後半、第2次大戦に勝利した米国とソ連という2つの超大国は激しい競争を繰り広げた。
 「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的悲劇」。ロシアのプーチン大統領は、05年の年次教書演説でこう嘆いた。
 冷戦に敗れ解体したソ連、前身の帝政ロシアへの憧憬は偏執に転じ、「我々の歴史的土地」と呼ぶウクライナを取り戻し、帝国の再構築を図ろうとあがく無謀な戦争に及んだ。
 規模が物を言った20世紀から、頭脳やネットワークが競争を左右する21世紀へ。ウクライナの健闘は、世界秩序を形作る要因の変化を示す。
 「35年までに最大42%減る」。英石油大手BPは1月末に発表した年次報告書で、19年に日量1200万バレルだったロシアの原油生産は減少傾向をたどり、35年に700万バレルまで落ち込む可能性があると指摘した。

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 主因は、高度な生産技術を持つ米国企業の撤退だ。油田の掘削・運営分野の世界3強はすべて米企業で、ロシアはその技術に深く依存してきた。侵攻後に3社は事業の停止や縮小を決定。技術的な理由から減産は時間の問題になっている。
 ロシアは脱炭素の潮流を自らの手で加速させた。天然ガス供給の遮断など、エネルギーを武器化したことで、最大の顧客だった欧州連合(EU)は脱ロシアにかじを切った。世界各国は経済のグリーン化を推し進める。
 資源国ロシアの落日は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など中東の産油国にとっても人ごとではない。強権体制を支える石油・ガス収入の急減は体制に混乱をもたらしかねないからだ。
 冷戦後の国際社会をけん引してきた米国もまた国外では中国の挑戦に、国内では社会の深い分断に直面し、指導力に衰えがみえる。きしむ世界の現実は新しい秩序への波乱に満ちた道のりを映し出している。
(ウクライナ西部リビウ=田中孝幸)

【岸田首相、共同声明巡る植田氏の発言「違和感ない」 侵攻1年「新たな対ロ制裁示す」】
 同じ24日夕方、日経ニュースメールは次のように報じた。
 岸田文雄首相は24日、首相官邸で記者会見した。次期日銀総裁の候補の植田和男氏が総裁に就任した場合に「早いタイミングで会い、政府と日銀の連携を確認したい」と語った。政府、日銀の共同声明についての植田氏の同日の国会での発言を巡り「政府として特段違和感のある内容はなかった」と回答した。
 植田氏の金融政策の正常化への言及に関し「特段大きな変化を示すような発言ではない」と話した。植田氏を「国際的に著名な経済学者であり、金融分野に高い見識も持っている」と評価した。
対ロ制裁「新たな考え示す」
 ロシアによるウクライナ侵攻から1年が経過したことをふまえ同日夜に開く主要7カ国(G7)首脳のオンライン協議で「新たな対ロ制裁の考えを示す」と明かした。オンライン協議にはウクライナのゼレンスキー大統領も参加を予定する。
「一方的な現状変更を断じて許すことがないよう、ウクライナへの支援とロシアへの制裁を着実に実施する」と訴えた。
 中国に「責任ある対応求めた」
 米国が中国によるロシアへの軍事支援を懸念していることには「関連情報を収集・分析する。関係国と緊密に連携して明確なメッセージを国際社会に発することが重要だ」と説明した。
 林芳正外相が中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員に「責任ある対応」を強く求めたと改めて紹介した。第三国によるロシアへの軍事支援へ「G7としてそうした支援を停止するよう呼びかける」と主張した。
 ロシアのプーチン大統領が新戦略兵器削減条約(新START)への参加停止を決めたことへ「懸念を表明する」と発言した。
「77年間の核兵器不使用の歴史がロシアの威嚇によって汚されることはあってはならない」と力説した。「核軍縮への取り組みを続けることがますます重要となっている。G7における議論を先導していく」と語った。
 地雷探知、農業で協力
 ウクライナに「人道支援、復旧・復興支援と財政支援を含め計71億ドルの支援を表明してきた」と振り返った。「殺傷性のある装備の提供には制約がある。日本の強みを生かし、支援をきめ細かく実施する」とも説いた。
 カンボジアと協力してウクライナを対象に地雷探知機の使用方法の研修を開始したと明らかにした。ウクライナへ地雷の探知機や除去機の供与を進める考えを示した。
 ウクライナ産のトウモロコシなどの種子を調達、提供し同国の生産能力の回復支援につなげる方針を表明した。
 2023年は5月のG7広島サミット(首脳会議)などアジアで国際会議が相次ぎ開かれる。「アジアから世界に信頼される日本の外交力を発揮するよう最大限努力する」と意気込みをみせた。「平和、秩序を守るための結束をアジア各国に働きかける」と提起した。
 ゼレンスキー氏を広島サミットに招待するかどうかを問われ「招待国、招待機関は検討しているところで、決まっていない」と答えた。
 ウクライナ訪問「諸般の事情踏まえ検討」
 ウクライナ訪問は「安全確保や秘密保護など、諸般の事情を踏まえながら検討している」と述べるにとどめた。具体的な時期は決まっていないという。
 「日本国民の連帯の姿勢はウクライナ国民に必ず伝わっている」と言明した。地方自治体や企業による避難民の支援などに謝意を表した。
 元徴用工問題の解決に向けた日韓首脳会談の開催は「緊密に意思疎通をしていきたいが、今後の見通しは何も決まっていない」と話した。
 大企業で賃上げに前向きな動きが出ていると触れた。そのうえで「中小企業に賃上げの流れを波及させる」と強調した。
3月13日からマスク着用を「個人の判断」に委ねる政府方針を受け、自身のマスク着用は基本的にはマスク着用が奨励される場面などを除き「マスクを外して過ごす機会が増える」と見込んだ。「場面に応じて適切に判断する」とも付け加えた。

【中国、ロシアにドローン100機売却か ドイツ誌報道 ウクライナ侵攻1年】
 同じ24日晩、日経ニュースメール【ベルリン=共同】によると、ドイツ有力誌シュピーゲル(電子版)は24日までに、中国の無人機(ドローン)メーカーがロシア軍にドローンを売却し、ロシアでの量産も計画されていると報じた。早ければ4月までに100機を納入する交渉が進められている。
 シュピーゲルによると、中国メーカーは4月までにロシア国防省に納入するため、100機のドローンを製造することで合意。35〜50キロの弾頭を搭載でき、ロシアがウクライナでの攻撃に主に使用しているとされるイラン製無人機シャヘド136に似ているという。
 さらにロシアが自国でドローンを量産できるよう、中国メーカーが部品と技術を提供する計画も進められている。計画では月に100機を製造できるようになる。
 シュピーゲルによると、中国によるロシア支援計画は他にもあり、中国人民解放軍傘下の別の企業はロシアの戦闘機などの交換部品を納入することも計画していた。
 中国外務省の汪文斌副報道局長は24日の記者会見で、ロシアへのドローン売却計画を「聞いたことがない」と述べ「中国は紛争地域や交戦国に対して武器を売却しない」と主張した。

【G7首脳、声明でロシアを非難 第三国の支援停止求める】
 同じ24日晩、日経ニュースメールは次のように報じた。
 【この記事のポイント】
・G7首脳が対ロシア制裁強化とウクライナ支援を記した声明
・中国を念頭に、第三国のロシア支援の停止求める
・日本は新たに55億ドルの財政支援を表明
 主要7カ国(G7)首脳は24日、ロシアによるウクライナ侵攻から1年を迎えるのにあわせてオンライン会議を開いた。軍事侵攻を非難し、対ロシア制裁の強化とウクライナ支援の継続を記した首脳声明を出した。
 【関連記事】ウクライナ侵攻1年、G7首脳声明の要旨
 ロシアへの武器提供を検討している可能性がある中国を念頭に、第三国のロシア支援の停止も訴えた。オンライン会議は岸田文雄首相が今年のG7議長国として初めて主催した。ウクライナのゼレンスキー大統領も参加した。
 G7各国はロシア軍のウクライナ全土からの即時撤退を求めた。第2次世界大戦後、核兵器の使用がなかったことの重要性を強調した。
 食料・エネルギーの供給不足などウクライナ侵攻を通じて生じた国際課題にG7が結束して対処する姿勢を明確にした。
 日本は新たに55億ドル(7400億円程度)の財政支援を打ち出した。ロシアの個人・団体、金融機関の資産凍結や輸出禁止物資の拡大などの対ロシア制裁も示した。
 首相はオンライン会議に先立ち記者会見し、ウクライナへの追加支援を表明した。農業の生産力回復へ同国産のトウモロコシなどの種子を調達し提供する。電力復旧へ10機程度の変圧設備や140台ほどの電力関連機材を供与する。
 地雷の探知機や除去機、がれきを取り除く建機を送る。「日本の強みを生かしてウクライナに寄り添う」と述べた。
 ゼレンスキー氏は24日に公表したビデオメッセージでロシア軍との1年の戦闘を振り返った。「我々は生き延び、負けることはなかった。今年は勝利するためにあらゆることをする」と語った。
 中国外務省は24日、ウクライナ侵攻をめぐる独自の仲裁案を発表した。ロシアとウクライナの双方に停戦への対話を求め、中国が和平実現へ「建設的役割」を担うと主張した。

【ウクライナ大統領、習氏と会談に意欲 仲裁案「協力も」】
 25日未明、日経ニュースメール【リビウ(ウクライナ西部)=田中孝幸】によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、首都キーウ(キエフ)で記者会見した。ロシアによる侵攻の終結に向け独自の仲裁案を示した中国の姿勢を歓迎し、中国の習近平国家主席との会談にも前向きな姿勢を示した。一方で、ウクライナ全土からのロシア軍の撤退を含まない和平案は受け入れない方針を重ねて表明した。
 ゼレンスキー氏は中国の仲裁案について、「国際法の尊重や領土保全(の原則)と合う考えがある。この点で中国と協力しよう」と述べ、一部を評価した。提案は具体的な和平計画ではなく「いくつかの考え方にすぎない」とも指摘した。
 米欧を中心に中国によるロシアへの軍事支援に警戒が広がっている点については、「中国がロシアに武器を供与しないと信じている。これは私にとって極めて重要なことだ」と供与を控えるよう強く求めた。
 習氏との会談については「私は習氏と会うつもりだ。両国に有益で世界の安全保障に寄与する」と語ったが、具体的な時期や場所には言及しなかった。
 2022年2月24日のロシアによる侵攻開始前から、ウクライナと中国は経済面を中心に関係を深めてきた。ゼレンスキー氏の発言の背景には、大国である中国に配慮を示し、ロシア支援に傾斜することを防ぎたい思惑がある。
 今後のロシアとの戦闘に関しては「支援国が課題をこなせば勝利できる」と指摘。西側各国に一層の軍事支援を呼びかけた。米欧がウクライナから離れた場合、ロシアが北大西洋条約機構(NATO)加盟各国にとって深刻な脅威になるとも主張した。
 中国の仲裁案とは、同国外務省が24日に発表した「中国の立場」を示す文書だ。ウクライナとロシアの直接対話の再開を求め、中国が建設的な役割を果たす意欲をみせるが、具体策は記していない。「すべての国の主権と独立、領土の一体性の保障」など計12項目を並べ、核兵器の使用や原子力発電所への攻撃反対を表明した。
 中国は欧州連合(EU)加盟国と隣接するウクライナを広域経済圏構想「一帯一路」の要衝と定め、関係強化を目指してきた。中国初の空母「遼寧」は、1998年にウクライナから購入した中古品を改造したものだ。中国製の新型コロナウイルスワクチンも積極提供していた。
 21年6月の国連人権理事会で日米欧などの40カ国超が中国の新疆ウイグル自治区における人権状況に懸念を示す共同声明を提出した際、ウクライナは参加を見送った。中国側に配慮を示していた。
 ゼレンスキー氏は米欧の支援継続に腐心している。ロシアの侵攻が長引き、米欧の有権者に「ウクライナへの過度な支援」を疑問視する動きが広がっている現状を警戒する。

【G20財務相会議、共同声明見送り 対ロシア制裁で溝】
 25日晩の日経速報メール【ベンガルール=三島大地、飛田臨太郎】によると、インド南部ベンガルールで開かれた20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が25日、閉幕した。米欧は共同声明を採択し、ロシアによる戦争を非難する文言を明記するように要求していたが、まとまらなかった。ウクライナ侵攻から1年の節目で、G20内の対立が改めて浮き彫りになった。
 会議閉幕後に記者会見した鈴木俊一財務相は「日本を含め、多くの国がロシアの侵略行為を最も強い言葉で非難した」と述べた。「ロシアと中国がウクライナ侵略が世界経済に悪影響を与えていることに合意しなかった」と共同声明見送りの理由を説明した。ドイツのリントナー財務相は中国が戦争を非難する共同声明を阻止したとして「遺憾だ」と述べた。

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 ロシア批判の共同声明は米欧が強く求めていた。イエレン米財務長官は23日「戦争がウクライナと世界経済に与えた影響を強く非難すべきだ」と主張。フランスのルメール経済・財務相も24日「ウクライナの戦争に関するバリでの首脳宣言から一歩でも後退することに反対する」と述べた。
 昨年11月、インドネシア・バリのG20サミットでまとめた首脳宣言には「ほとんどのメンバーは戦争を強く非難した」と明記した。今回、インドは「戦争」の文言を盛り込むことに反対したロシアに配慮した。
 議長国インドの裁量でまとめる議長総括には首脳宣言と同様の文言を盛り込み「ロシアと中国を除くメンバーは賛同している」と加えた。米欧の意見にも一定の理解は示した。
 今回の財務相・中銀総裁会議はインドが今年のG20議長国となって初めて開催した。グローバルサウス(南半球を中心とした途上国)の盟主を自任するインドの対ロ姿勢は新興国全体の機運にも波及する。米欧が、昨年まとめたG20声明から後退する事態を避けたかったのはこのためだ。
 米欧日の経済制裁に参加しないインドはロシアからの輸入額が22年4〜12月に前年比5倍に増えた。制裁の効果が弱まり、ロシアに戦争を継続する余力を与えている。戦争が長期化する中で、今後の新興国とロシアの経済関係が情勢を左右する要因になりつつある。会議では新興国の債務問題も主要課題として協議した。
 議長総括では米欧の利上げについて「負の波及効果の抑制に資するよう金融政策の姿勢について明確に意思疎通する」と記した。世界経済の見通しを巡っては「昨年10月の会合以降、緩やかに改善した」と指摘し、同時に「成長は鈍いままで、下方リスクが根強い」とも加えた。

【内閣支持4ポイント上昇43%、植田日銀総裁案に評価48%】
 26日晩の日経速報メールは次のように伝えた。
 日本経済新聞社とテレビ東京は24〜26日に世論調査をした。岸田文雄内閣の支持率は43%で2023年1月調査(39%)から4ポイント上がった。日銀総裁に植田和男氏を起用する方針は「評価する」が48%で「評価しない」の18%を上回った。

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 内閣支持率が上昇するのは2カ月連続で40%台を回復するのは22年10月以来4カ月ぶり。新型コロナウイルス対応のマスク着用を3月13日から個人の判断に委ねることなどが評価された。
 内閣を「支持しない」と答えた割合は1月の54%から49%へ低下したものの、「支持する」を上回る状況は6カ月連続となった。

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 日銀総裁人事を巡っては13年に黒田東彦氏を起用した際の調査でも質問した。聞き方に違いがあるため単純比較はできないが、「評価する」が58%、「評価しない」は17%だった。
 日銀の金融緩和に関しては「続けるべきだ」と「続けるべきではない」がそれぞれ39%で拮抗した。植田氏は24日の衆院議院運営委員会で所信表明し、金融緩和を当面続ける姿勢を強調した。
 優先処理してほしい政策を複数回答で聞く質問で最多は1月と同じ「景気回復」(45%)で、2位は前回の3位から順位を上げた「子育て・少子化対策」(39%)だった。
 政党支持率は自民党が39%で、立憲民主党は9%、日本維新の会は8%、支持政党がない無党派は27%だった。前回調査はそれぞれ42%、8%、6%、27%だった。 
 調査は日経リサーチが全国の18歳以上の男女に携帯電話も含めて乱数番号(RDD)方式による電話で実施し819件の回答を得た。回答率は37.0%だった。

【次世代車特許の出願、Amazonが首位 米テック5社分析】
 27日朝、日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・「NIKKEI Mobility」がアスタミューゼと協力して分析
・アマゾンは物流のデジタル化、グーグルは自動運転に力
・次世代車開発で車大手とテック大手の合従連衡加速か
 米テック大手5社の自動車の次世代技術関連特許を分析したところ、出願数でアマゾン・ドット・コムが首位だった。新興企業の買収によって、グーグルが強かった自動運転分野でアマゾンの出願数が急増した。次世代車技術の競争力は生産規模ではなく人工知能(AI)など知的財産が左右する。テック大手の台頭で自動車の競争や協業のあり方が変わる。=詳細な分析を含む「Mobility Tech特許 2023 GAFAMのデータから」はこちらからご覧いただけます(NIKKEI Mobility会員限定で公開中)
「Mobility Tech特許 2023」へ

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 次世代車は自動運転や電動化など「CASE」と呼ばれる新領域の技術なしには開発できない。2月上旬に決着した日産自動車と仏ルノーの資本関係見直しではこうした知財が焦点となり、ルノーはグーグルとの提携も決めた。アップルは車各社に独自のソフトウエア採用を働きかけるなど、テック大手と車大手が接近している。

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 日本経済新聞社の専門メディア「NIKKEI Mobility」はテック大手の知財の強さを調べるため、アスタミューゼ(東京・千代田)と協力し「GAFAM」と呼ばれるアルファベット(グーグル親会社)など5社が2003年以降に出願し公開された約20年分の特許を分析した。
 出願数の合計で首位はアマゾン(1649件)、2位はアルファベット(1355件)。アップルは4位だった。アマゾンの出願数は16年以降、4年連続で200件を超えた。20年に買収した自動運転開発の米ズークスがけん引した。14年設立で、公道走行試験を重ねて技術を蓄積してきた。

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 引用された回数や権利が及ぶ国の数などをもとに「個別特許の競争力スコア」も算出。これに特許の残存年数を掛け合わせるなどした「企業別の競争力スコア」を自動運転や、ネットにつながるコネクテッドなど8領域で集計した。
 アマゾンは物流をデジタルで高度化する物流IoT領域の企業別スコアが4073万点と2位のアルファベット(1782万点)を引き離す。個別特許スコアをみてもコネクテッド領域の上位5位内の3つを持つ。ネット通販の自動配送に生かすようだ。
 アルファベットは自動運転領域の企業別スコアが4018万点で2位のアマゾンを1割上回った。個別特許スコアでは車や歩行者の動きの予測技術などが高い。自動運転タクシーへの活用を意識しているとみられる。アップルは近年、電気自動車(EV)の自動充電や熱管理の技術に力を入れている。

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 アマゾン子会社のズークスは2月13日にはカリフォルニア州で自動運転タクシーに従業員を乗せて事業所間をシャトル運行したと発表=ロイター
 次世代車技術の特許では自動車大手が今なお存在感が大きい。ホンダは自動運転分野で20年度までに累計4000件以上を出願したことを統合報告書で公表。単純比較できないものの、出願数はテック5社で同分野最多のアルファベットの4倍だ。
 アスタミューゼは「アルファベットの自動運転特許は高く評価されている」とし、IT(情報技術)と自動車に詳しい名古屋大学の野辺継男客員教授は「ディープラーニング(深層学習)を使うAIで車大手は人材面で劣る」と指摘する。
 次世代車開発を巡り車大手とテック大手の合従連衡の流れが強まる可能性がある。日本の車大手は強みを持つ全固体電池など技術の蓄積を有効に活用する必要がある。アスタミューゼには日本経済新聞社が出資している。

 この間、下記の録画を観ることができた。(1)BS6報道1930「プーチン氏が重大演説 反戦女子学生を拘束 統制強化ロシアの現実」2月21日。 (2)BS6報道1930「<プーチン氏の戦争>で逆流する世界とは? モスクワ20万人集会」22日。 (3)BS世界のドキュメンタリー「何が戦災を招いたのか~ウクライナ侵攻への軌跡」22日。 (4)BS6報道1930「核戦力誇示プーチン氏 “使用前提”抑止力か 第3の核の時代突入?」23日。 (5)BS6報道1930「ウクライナ侵攻1年 春から夏が重大局面? 最大焦点「クリミア」奪還」24日。 (6)NHKイーテレドキュランドへようこそ「マリウポリ”包囲日記“ 私たちは諦めない」24日。 (7)NHK総合「ウクライナ 家族の戦場 軍事侵攻から1年 心の軌跡」25日。 (8)NHK週刊ワールドニュース(2月20日~24日)25日。 (9)NHKスペシャル「ウクライナ大統領府 軍事侵攻・緊迫の72時間」26日。 (10)NHKスペシャル「届け ウクライナの叫び」26日。
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人類最強の敵=新型コロナウィルス感染症(59)

 1月30日掲載の(58)は【日米欧防衛費2ケタ増 ウクライナ侵攻後、中ロ脅威に備え】のなかで増え続ける日米欧防衛費2ケタ増の現状を述べた。

【トヨタ、世界販売3年連続首位 22年1048万台】
 同じ30日の日経速報メールは次のように報じた。
 トヨタ自動車は30日、2022年の世界新車販売がグループ全体(ダイハツ工業と日野自動車を含む)で前の年と比べて微減の1048万台(21年は1049万台)だったと発表した。独フォルクスワーゲン(VW)を抑え、3年連続で首位となった。2年ぶりに前年割れとなったものの、新型コロナウイルス禍から回復した東南アジアが全体を押し上げた。
 トヨタが手がける「トヨタ」「レクサス」ブランドに限っても、世界販売台数は0.5%減の956万台と世界首位となった。東南アジアではインドネシアやタイ、フィリピンなど多くの国で2ケタ増を記録し、上海の都市封鎖(ロックダウン)があった中国でも微減にとどまった。コロナ禍の厳しい制約が緩和され、各国政府の景気刺激策による後押しもあって販売台数を押し上げた。海外販売も過去最高だった。
 一方、伸び悩むのが北米と日本だ。北米では9%減の244万台、日本国内では13%減の128万台だった。いずれも高価格帯の車種が売れる市場で、半導体不足による生産制限の影響を色濃く受けた。
 生産台数は5%増の1061万台で、海外生産は過去最高だった。けん引したのがアジアだ。日本を除くアジアで18%増の323万台だった。中国やタイ、インドネシアで生産能力の増強や効率化した効果が出たほか、前年にコロナで落ち込んだ反動増もあった。ただ、国内では8%減の265万台と、比較可能な1975年以降では、76年に次いで2番目に低い水準に落ち込んだ。トヨタは国内生産では「各地域で車種や部品構成が異なるなか最大限の努力をしている」としている。
 ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)など電動車の世界販売は272万台と4%伸び、EVだけでも7割増の2万4466台でいずれも過去最高だった。ただ、VWはEVを22年に26%増の57万台を販売しており、差は大きい。
 半導体不足によって生産が滞り、販売に影を落とす構図は北米や日本などで足元でも続いている。トヨタは23年3月期に920万台を生産する計画を掲げているが、計画は変更するかどうかも含めて「精査中」(トヨタ)。23年に最大で1060万台とする目安も達成は簡単ではない。半導体などの部品の安定的な調達は引き続き大きな経営課題だ。

【東京都の転入超過、3年ぶり拡大 22年3.8万人】
 同じ30日午後の日経速報メールは次のように報じた。
 総務省は30日、住民基本台帳に基づく2022年の外国人を含む人口移動報告を発表した。転入者が転出者を上回る「転入超過」は東京都は3万8023人と21年よりも3万2590人増え、3年ぶりに拡大した。
 東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)は9万9519人と、21年と比べて1万7820人増えた。日本人に限れば27年連続の転入超過だった。
 22年に都道府県をまたいで引っ越し、転入届を出した人の移動を集計した。13年までは日本人の移動のみを集計していたが、14年以降は外国人の移動も含む。
 21年は新型コロナウイルス禍によるテレワークなどの影響で、東京圏への転入超過は前年から1万7000人ほど減った。22年はコロナ禍の一服で東京圏からの転出と転入の差は再び開き、人口集中の傾向が変わらないことがみてとれる。
 名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)と大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)はそれぞれ1万6218人、2347人の転出超過となった。都道府県別でみると、転入超過は宮城、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野、滋賀、大阪、福岡の11都府県。残る36道府県は転出超過だった。

【イオン、パート時給7%賃上げ 国内最多の40万人】
 2月1日夕方の日経ニュースメールは次のように報じた。
 イオンはパート約40万人の時給を平均7%上げる。上げ幅は4%の物価上昇率を上回る。時給は平均約70円上がり、年収は約8万円増える見通し。パートの賃金水準は正社員と比べて低い状態が続いてきたが、人手不足感が強まるなかで人材確保の競争も激しくなっている。国内最大のパート雇用主であるイオンの時給引き上げによって、非正規雇用の賃上げが広がる可能性がある。
 国内のスーパーやドラッグストアなど連結子会社147社で働く約40万人のパートが対象で、国内従業員の8割を占める。各社は3月にも時給を引き上げる。7%の上げ幅は、流通などの労働組合が加盟するUAゼンセンが春季労使交渉で求める5%を上回る。
 新型コロナウイルス下からの経済再開などを受けて人手不足感が強まり、流通業などで賃上げの動きが広がっている。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは4月から、パート・アルバイト時給を80円増の1140〜1530円に引き上げる。
 イオングループのパートの平均時給は全国で1000円程度としている。食品スーパーの業界団体の昨年調査によると、都市圏のレジ担当の募集時平均時給は1015円だった。人材獲得の競争も激しいなか、イオンは時給を7%引き上げ、約120万円の平均年収を約8万円底上げする。イオンは「人材を確保して現場の競争力維持につなげる」としている。

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パートの賃上げは人件費を300億円以上増やす要因になるとみられる。顧客が自ら精算するセルフレジの拡大や店舗運営の効率化を進めることで従業員の生産性を高めるほか、利幅の大きいプライベートブランド(PB)販売を増やすといった改革を進めて利益を伸ばし、人件費増の負担を和らげる。
 イオンのパート人数は国内最多で、日本の非正規雇用の約2%を占めるとみられる。同社の時給引き上げは、様々な企業のパートの賃上げ判断にも影響を与えそうだ。

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 厚労省の調査で所定内給与の1カ月平均は非正規が21万6700円と、正規の6割強の水準にとどまる。22年12月の消費者物価指数が前年同月比4.0%上昇するなど、物価高が家計を圧迫している。所得が少ない家計ほど物価高の影響を受けやすい。正規と比べて賃金水準が低いパートなど非正規雇用の賃上げは、インフレ下にある家計の下支えにつながる。
 一部のパートは、一定額を超えると税金や社会保険料といった負担が生じる「年収の壁」を理由に就業時間を減らすなどの調整をしている。イオンでも所得税が発生する103万円と、厚生年金加入の106万円の「年収の壁」を越えるパートは多い。時給引き上げで「年収の壁」に収入が近づくパートが】」る可能性もあるが、人材獲得には待遇改善が有効だと判断したとみられる。

【ミャンマー国軍、非常事態宣言6カ月延長 総選挙先送り】
 同じ1日晩の日経速報メール【ヤンゴン=新田裕一】によると、ミャンマー国軍は1日放送の国営テレビで、全権を掌握した2021年2月のクーデター時に発令した「非常事態宣言」を6カ月延長すると発表した。全土で民主派勢力の武装抵抗が続き、宣言の解除から6カ月以内と憲法で定められている総選挙を実施できないと判断したとみられる。国軍が準備を進めてきた総選挙は先送りされる。
 非常事態宣言の最終日の1月31日、政府と国軍の幹部らは首都ネピドーで「国防治安評議会」を開き、非常事態宣言の延長を決めた。
 国軍は21年2月1日未明、民主化指導者のアウンサンスーチー国家顧問兼外相やウィンミン大統領ら国民民主連盟(NLD)政権の幹部を相次ぎ拘束。国軍出身のミンスエ副大統領が「大統領代行」として非常事態宣言を出し、ミンアウンフライン氏に全権を移した。
 憲法で非常事態宣言は当初1年間で、半年間ごとに原則2回まで延長できるとされており、国軍は既に2回延長していた。国営テレビによると、憲法裁判所は今回の6カ月延長について「合憲」と判断したという。
 反国軍の抵抗組織は国軍部隊にゲリラ攻撃を仕掛けている。このため農村や山間部の一部地域には国軍の支配が及んでおらず、国軍主導の総選挙の実施は困難だとの見方があった。
 国軍トップのミンアウンフライン国軍総司令官は総選挙を実施し、国軍系の連邦団結発展党(USDP)主導の新政権を樹立することを目指してきたが、国民が軍に不信感を抱くなかで総選挙を強行すれば「さらなる暴力を招く」(ブリンケン米国務長官)との指摘があった。

【ZHD、ヤフー・LINEと合併へ 社長に出沢氏・会長川辺氏】
 2日午後の日経速報メールは次のように報じた。ヤフーやLINEを傘下に持つZホールディングス(ZHD)は2日、2023年度中をめどにZHDとヤフー、LINEの3社が合併する方針を発表した。合併方式や詳細な日程などは今後詰める。ZHDとLINEは21年3月に経営統合したが、両社間で目立った連携は生まれてこなかった。ZHDを含めた3社合併に踏み切ることで、意思決定権を明確にして 立て直しを狙う。
 同時に、ZHDの代表取締役でLINE社長の出沢剛氏(49)が4月1日付で社長CEO(最高経営責任者)に昇格する人事を発表した。川辺健太郎社長(48)は代表権のある会長に就く。ZHDの足元の業績は伸び悩んでいる。競合の楽天グループなど国内勢のほか、中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」などの海外勢との競争も激しくなっており、経営体制を刷新して立て直しを図る。
 ZHDとLINEの統合直後にはLINE側のずさんな個人情報の管理体制が明るみに出て、個人情報管理の改善策を優先。統合の肝となるはずだったヤフー・LINEによるID連携も23年以降にずれ込んでいる。こうしたなか、業績も主力のヤフーやLINEの広告事業で成長鈍化が鮮明となっており、足元の株価も低迷していた。

【中国の偵察気球、米本土の軍事施設対象か 対立の火種に】
 3日夕方の日経ニュースメール【ワシントン=中村亮】によると、米国防総省高官は2日、中国の偵察気球が米本土上空を飛行していると明らかにした。軍事施設の偵察を試みた可能性があり、米軍の情報収集能力を試したとの見方もある。米中対立の新たな火種になりかねない。
 米国防総省のライダー報道官は2日、記者団に偵察用気球が米本土上空を飛行していると明らかにした。同省高官は「中国の気球だと確信している」と説明した。気球は民間機の一般的な飛行高度より高い位置を飛行しており、軍が監視を続けている。
 米紙ニューヨーク・タイムズによると、気球は中国から米アラスカ州付近を通り、カナダ北西部を経由して西部モンタナ州に入った。高官はモンタナ州での気球の飛行を認め、「機密のある場所」の偵察を試みたと主張した。同州には大陸間弾道ミサイル(ICBM)を運用するマルムストロム米空軍基地があり、偵察対象になっていた可能性がある。

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 米国は米首都ワシントンの在米中国大使館と、北京の米国大使館を通じて中国側に「問題の深刻さ」を伝えた。「国民や本土を守るために全ての手段を講じる」とも強調した。
 中国外務省は3日、米本土上空の気球を中国のものと認め「民間の気象研究用の飛行船が航路を外れた」と主張した。同日夜にホームページにコメントを掲載し「西風の影響を受け、不可抗力で米国に迷い込んだ」として「遺憾」だと表明した。
 日本の防衛省の青木健至報道官は3日の記者会見で「これまで気球による領空侵犯について確認して公表した事実はない」と述べた。気球であっても国際法上の航空機として捉え、領空侵犯があれば「個別具体的な状況に応じて対応する」と説明した。
 オースティン米国防長官は1日、フィリピン訪問中に米軍高官と緊急会議を開いて対応策を議論した。
 米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長や北方軍のバンハーク司令官は、撃墜すれば残骸が居住地域に落下するリスクがあると指摘し、撃墜すべきでないと進言した。1日にモンタナ州の人口が少ないエリアの上空を飛行した際に撃墜を検討したが、一般市民へのリスクを排除できないと判断し見送った。
 国防総省で中国担当を務めたライル・モリス氏は「中国が偵察活動に対する米国の対処力を試した」と分析した。中国の気球であると明確に示す証拠はないとみて、発見されても否定できると見込んだ可能性があると言及した。
 米ハドソン研究所アジア太平洋安全保障部長のパトリック・クローニン氏は中国が気球を使ったのは発見されることを前提にしており「かなりずうずうしい行為だ」と批判した。中国の人工衛星は米軍のICBMの核戦力を監視しており、気球を米本土に送る意義は乏しかったと触れた。
 それでも偵察気球を使った理由について、ブリンケン米国務長官が予定していた中国訪問前に「米国の関心を引くための心理戦を仕掛けた」と指摘。「米中対立が手に負えなくなる前に台湾支援やアジアでの軍事的関与を取り下げるべきだとのメッセージを送った」と分析した。
 国防総省高官は過去数年間で似た事案が数件あったと説明したが、米政権はこれまで公表を控えてきたとみられる。2日に米政府から偵察気球の飛行について説明を受けた関係者によると、政権は公表に踏み切った理由について過去の事例より米本土での飛行時間が長かったからだと説明したという。
 同関係者は「これまでに同じ事案があったのに公表していなかったとすれば大きな驚きだ」と指摘。バイデン政権の説明に疑問を呈した。モリス氏は水面下で懸念を伝えても中国の行動が変わらないため、公表に踏み切った可能性があると指摘した。
佐藤丙午・拓殖大教授は「気球を狙ったところにピンポイントに飛ばす制御は難しい。継続的に一定の地域にとどまって周辺の電波情報を収集しようとしたのではないか」と話す。
 米国防総省は衛星以上の情報は得られないとの分析も明かしている。佐藤氏は「中国側からどういう機器が搭載されているかに関する情報を得ていて、いま撃ち落とす必要はないと判断したと推測される発信だ」と指摘した。
 偵察気球は米中対話に影を落とすシナリオが考えられる。ブリンケン氏は5日にも中国を訪れて中国高官と会談する予定だった。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)はブリンケン氏が中国の習近平国家主席とも会談すると報じ、双方が過度な緊張の高まりに歯止めをかけるとの見方が出ていた。
 米下院中国特別委員会の委員長を務める共和党のマイク・ギャラガー議員と同委員会で民主党トップを担うラジャ・クリシュナムルティ議員は2日の共同声明で、偵察気球を巡り「米国の主権侵害であるだけでなく、最近見えた中国の外交面での(前向きな)予兆は政策の具体的な変更を意味しないことが明確になった」と断じた。
 米政権は2日、米軍が台湾周辺や南シナ海での有事への対応を視野にフィリピンで使える軍事拠点を5カ所から9カ所に増やす計画を明らかにした。ブルームバーグ通信等によると、米国は日本やオランダと先端半導体の対中輸出規制に合意した。いずれもブリンケン氏の訪中前に中国への包囲網を強める狙いがあった。

【ブリンケン米国務長官、中国訪問を延期 偵察気球飛来で】
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ブリンケン米国務長官=ロイター
 
 4日未明の日経ニュースメール【ワシントン=坂口幸裕】によると、米国務省は3日、2月上旬に予定していたブリンケン国務長官の中国訪問を延期すると発表した。中国の偵察気球が米本土上空を飛行している事態を踏まえ、訪中は適切でないと判断した。3日朝に中国側に延期を伝えた。
 2022年11月の米中首脳会談を受けて高官による対話に軸足を置いてきた両国関係に再び緊張が高まる恐れがある。
 国務省高官は3日、記者団に「気球が米領空に存在することは国際法のみならず我が国の主権に対する明確な侵害だ。容認できない」と指摘。「ブリンケン氏が中国を訪れる環境は整っていないとの結論に達した」と述べた。一方、中国との対話は維持するとも強調。「状況が許せば、ブリンケン氏はできるだけ早期に訪中する計画だ」と話した。
 ブリンケン氏の訪中は22年11月にインドネシアで対面会談したバイデン米大統領と中国の習近平国家主席が23年初めに実現させると申し合わせていた。首脳間の合意が棚上げされるのは異例だ。米本土上空に気球の飛来が確認されたのを受け、米連邦議会から訪中すべきでないとの声が出ていた。
 米国防総省高官によると、西部モンタナ州で気球の飛行を確認した。「機密のある場所」の偵察を試みたと分析する。同州には大陸間弾道ミサイル(ICBM)を運用するマルムストロム米空軍基地があり、軍事施設の偵察を狙った可能性がある。
 米紙ニューヨーク・タイムズによると、気球は中国から米アラスカ州付近を通り、カナダ北西部を経由してモンタナ州に入った。気球は民間機の一般的な飛行高度より高い位置を飛行しており、軍が監視を継続する。
 米政府には撃墜すべきだとの意見も出た。米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長ら米軍幹部が残骸が居住地域に落下するリスクがあるため撃墜すべきでないと進言し、見送った。

【岸田首相、荒井秘書官を更迭 同性婚巡り差別発言】
 4日の日経速報メールは次のように報じた。
岸田文雄首相は4日、同性婚を巡り差別発言をした荒井勝喜首相秘書官を更迭した。訪問先の福井県坂井市で記者団に明らかにした。荒井氏の後任には同日付で経済産業省秘書課長の伊藤禎則氏を起用した。
 荒井氏は3日夜に同性婚の在り方に関して記者団に発言した。「(同性婚の人が)隣に住んでいたら嫌だ」「同性婚を導入したら国を捨てる人もいると思う」などと語った。同日中に発言を撤回したものの、首相は事態を重くみた。
首相は荒井氏の発言について「多様性を尊重し包摂的な社会を実現していく内閣の考え方にはまったくそぐわない。言語道断だ」と強調した。
 首相は自身の任命責任に関して「もちろん私が任命したわけだから当然責任を感じている」と認めた。そのうえで「多様性が尊重される社会に向けて、様々な声を受け止め取り組んでいく」と表明した。
首相は1日の衆院予算委員会で同性婚に触れ「制度を改正するとなると、家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と答弁した。野党は週明けの国会審議で追及を強める方針だ。

【米軍、中国偵察気球を大西洋上空で撃墜 回収作業に着手】
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5日、米南部サウスカロライナ州沖で、偵察気球の残骸を回収する米海軍の爆発物処理班=米海軍提供・共同
 
 5日早朝の日経速報メール【ワシントン=中村亮】によると、オースティン米国防長官は4日の声明で、米軍が南部サウスカロライナ州沖の大西洋上空で中国の偵察気球を撃墜したと発表した。気球の残骸は米国の領海内に落下し、米軍は回収作業に着手した。中国が反発し、米中対立に拍車がかかる可能性がある。
 
 米国防総省高官は記者団に米軍の戦闘機F22ラプターが空対空ミサイル「サイドワインダー」1発で気球を撃墜したと説明した。米軍高官は「回収作業に数カ月や数週間かかるものではなく比較的すぐにできると予測している」と語った。残骸は少なくとも7マイル(約11キロメートル)の範囲に広がっているという。
 
 国防総省高官は「気球や(気球に積んでいた)装置を研究して精査できる。価値のあるものだ」と述べ、中国の情報収集能力や技術力を分析する考えを強調した。中南米で別の中国の偵察気球が飛行していると重ねて説明し「これらの活動は中国人民解放軍の指示のもとで実施していることが多い」と言明した。
 
 オースティン氏は声明で、バイデン大統領が1日に一般市民の生命にリスクがない状況になれば気球を直ちに撃墜するよう命じたと明らかにした。4日に気球が大西洋の上空に入り、安全が確保できると判断して撃墜に踏み切った。米軍は1日、西部モンタナ州で撃墜を検討したが、一般市民に被害が及ぶリスクがあると判断して見送っていた。
 バイデン氏は4日、撃墜に先立ち、東部ニューヨーク州で記者団に偵察気球をめぐり「対処する」と述べていた。米連邦航空局(FAA)はサウスカロライナ州沖の空域を一時閉鎖し、周辺の空港の運用も停止した。
 オースティン氏は気球に関し「中国が米本土の戦略的な場所を偵察しようとした」と断じた。モンタナ州には大陸間弾道ミサイル(ICBM)を運用するマルムストロム米空軍基地があり、偵察対象になっていた可能性がある。
 国防総省のライダー報道官は3日の記者会見で、1日にモンタナ州を飛行した気球が東に移動して米本土の中央に位置していると説明した。気球はさらに東方へ移動し、米軍が監視を続けてきた。
 気球の飛来は米中対立の新たな火種となった。バイデン政権は3日、飛来を受けてブリンケン国務長官の中国訪問を延期すると決めた。中国外務省は3日、気球について「民間の気象研究用の飛行船が航路を外れた」と主張。4日も「不可抗力による事故」と繰り返し、米国の説明と食い違っていた。

【トルコ・シリア地震、新たにM7.5の揺れ】
 6日の日経速報メール【イスタンブール=木寺もも子】によれば、米地質調査所(USGS)がトルコ南東部で現地時間6日の午前4時17分(日本時間同10時17分)ごろ、マグニチュード(M)7.8の地震があったと伝えた。震源はガジアンテプ県近く、深さは17.9キロ。その後に再び大きな地震が発生。トルコと隣国シリアの両国で少なくとも計2300人超が死亡、1万2000人超が負傷した。
 在トルコ日本大使館は現地時間午後時点で、邦人の安否を確認中。今のところ被害情報は入っていないという。
 トルコ当局によると、少なくとも1541人が死亡し、9733人が負傷した。がれきの下に取り残された人が大勢いるとみられる。午後1時半ごろ、さらに同国南東部を震源とするM7.5の大きな地震があり、被害が拡大している可能性がある。

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 トルコでは南東部カフラマンマラシュ県、ガジアンテプ県、シャンルウルファ県、オスマニエ県、マラティヤ県などで被害が報告された。
 ロイター通信によると、シリア保健省は461人が死亡、1326人が負傷したと明らかにした。このほかに反体制派が支配するシリア北西部の市民団体は380人超が死亡、1000人超が負傷したとしている。レバノンや地中海のキプロス島など、広い範囲で揺れが感じられた。
 トルコのエルドアン大統領は「(地震で約3万人が死亡した)1939年以来、(トルコで)最大の災害だ」と述べた。トルコメディアは集合住宅が大きな音を立てて崩れ去る映像や、高速道路が大きく割れた様子を伝えた。SNS(交流サイト)には「がれきの下にいる。助けて」などとして住所を伝えるメッセージが多く投稿されている。

【日銀次期総裁、雨宮副総裁に打診 政府・与党が最終調整】
 6日の日経ニュースメールは次のように報じた。

 政府が日銀の黒田東彦総裁(78)の後任人事について雨宮正佳副総裁(67)に就任を打診したことが5日わかった。黒田氏は4月8日に任期満了を迎える。与党などとの調整を進め、2人の副総裁も含めた人事案を2月中に国会に提示する。総裁の任期は5年で、衆参両院の同意を得た上で政府が任命する。 
 複数の政府・与党幹部が、雨宮氏に次期日銀総裁のポストを打診したと明らかにした。政府は副総裁ポストを含めた人事案の最終調整に入っており、与党などと協議を急ぐ。経済の安定成長に向けて金融政策の正常化を探ることが次期総裁の役割となる。日銀関係者は「把握しておらず、何もお話できることはない」としている。

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日銀の雨宮副総裁

 黒田氏が主導した異次元の金融緩和はデフレ脱却へ一定の成果があったものの、市場機能の低下や財政規律の緩みといった副作用も目立ち始めた。日本経済や金融市場へのショックを避けながら政策修正を進めるには金融政策への豊富な知識と経験が求められる。
 岸田文雄首相は現役の副総裁であり異次元緩和の政策に携わってきた雨宮氏が適任と判断したとみられる。
 雨宮氏は金融政策を企画・立案する企画畑を中心に歩み、2013年に就任した黒田総裁を企画担当理事や副総裁として支えた。01年の量的緩和政策や10年の包括的な金融緩和、13年の異次元緩和政策、現在まで続く長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)といったデフレ下の金融政策のほとんどに関わってきた。
 日銀の金融政策は足元で4%に達した物価高への対応に加え、ゆがみが目立つようになった市場の機能低下への対処が求められる。長期金利を一定の範囲に抑え込む長短金利操作が限界に近づくなか、長期金利の変動幅の再拡大や同政策の撤廃などに踏み込むかが当面の焦点となる。
 10年続いた大規模緩和によって財政規律が緩んだほか、過剰債務を抱える企業が温存されたことで経済の新陳代謝が遅れたとの意見がある。政府内には「数年以内には大規模緩和の出口を模索すべきだ」との声もある。次期総裁は経済・物価情勢を慎重に見極めたうえで、金融政策の正常化を探る役割が求められる。
 異次元緩和下の10年で、発行済み国債全体に占める日銀の保有割合は5割超に高まった。日銀は事実上、政府の国債管理政策に取り込まれており、金融政策の性急な正常化は金融市場にショックを与えかねない。超低金利に慣れた企業や家計、市場へ与える影響への目配りも欠かせない。
 日本経済の実力である潜在成長率は0%台前半まで低下しており、政策修正を急ぎすぎれば、デフレ色が再び強まりかねないリスクがある。次期総裁はこれまでの異次元緩和の効果と副作用を総点検したうえで、段階的に政策を修正していく粘り強】も求められる。

【トルコ・シリア地震、死者4300人に 各国が支援表明】 
 7日朝の日経ニュースメール【イスタンブール=木寺もも子】によると、トルコ南東部で6日起きた地震を受け、各国が相次いで支援を表明した。現場では夜になってもがれきの下から生存者を見つけようと懸命な捜索が続いた。死者はトルコと隣国のシリアであわせて4300人を超えた。
 米CNNなどによると、トルコ当局はこれまでに少なくとも2921人の死亡を確認した。6000人以上が倒壊した建物から救助されたが、なお捜索は続いている。シリアでは少なくとも1444人が死亡した。
 大規模な被害に対し、周辺国などは相次いで救助活動への支援を打ち出している。トルコのエルドアン大統領は6日、45カ国から申し出を受けたと明らかにした。日本も行方不明者の救助にあたるチーム75人規模の派遣を決めた。
 欧州連合(EU)は6日、ブルガリアやクロアチア、チェコ、フランス、オランダなどからなる捜索救助隊をトルコに派遣した。EUの衛星システムを利用し、被害状況などの把握のため上空からの映像を提供している。EU加盟国は同日夜に開いた緊急会合で、加盟国の情報共有を一元化し、トルコとシリアに迅速な支援を進める仕組みを検討していくことを決めた。
 英外務省は6日、トルコ南東部で起きた地震を受け、同国に76人の捜索・救助の専門家と4匹の捜索犬を直ちに派遣すると発表した。米国やドイツ、フランスもそれぞれ支援の意思を表明した。
 トルコはロシアによるウクライナ侵攻で両当事国と緊密な関係を維持し、仲介を試みてきた。ウクライナのゼレンスキー大統領はツイッターで「非常にショックを受けている」とし、支援を申し出た。
 ロシア大統領府は6日、ロシアのプーチン大統領がトルコのエルドアン大統領と電話協議したと発表した。プーチン氏は被害対応に必要な支援をトルコにただちに提供する用意があることを伝えた。具体的な提案をトルコ側に伝えているという。
 2021〜22年にトルコとの関係を修復したアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド大統領は6日、被災したトルコとシリアに捜索、救助チームの派遣を指示した。トルコでは野戦病院の設立も進める。国営首長国通信(WAM)が伝えた。
 ムハンマド大統領はエルドアン氏のほかシリアのアサド大統領ともそれぞれ電話協議し、支援を続けることを表明した。
 グテレス国連事務総長は6日の声明で「私の心は悲劇に見舞われた人々とともにある」と表明した上で、国連が被害者の支援に「全面的に取り組んでいる」と述べた。被災した数千世帯への人道支援を国際社会に呼びかけた。

【「ルフィ」グループ2人逮捕 フィリピンから日本に到着】
 7日の日経速報メールは次のように報じた。
 全国で相次ぐ強盗事件を巡り、フィリピンの入管施設に拘束中の容疑者4人のうち2人の移送が7日、始まった。4人には指示役とされる「ルフィ」と名乗る人物が含まれる可能性がある。警視庁は2019年に東京都内で起きた特殊詐欺事件に絡む窃盗容疑で逮捕状を取っており、移送中の航空機内で2人を逮捕。航空機は成田空港に到着した。
 グループとの関連が疑われる一連の強盗事件は22年秋以降少なくとも14件発生し、今年1月には強盗殺人事件も起きた。海外で拘束中の人物が指示した疑いのある異例の事件は全容解明に向けて大きな局面を迎える。
 警視庁によると、2人は今村磨人容疑者(38)と藤田聖也容疑者(38)。日本は4人の一斉送還による身柄の引き渡しを求めていたが、残るリーダー格とされる渡辺優樹容疑者(38)と小島智信容疑者(45)は現地で係争中の刑事裁判があり、6日の審理では棄却か否かの結論が示されなかった。係争中には移送できない。
 一連の強盗事件では「ルフィ」や「キム」などと名乗る人物が匿名性の高い通信アプリ「テレグラム」を使って日本の実行役に指示していた。一部の事件ではフィリピンの国番号である「63」の電話が使われていた。
警視庁は4人を窃盗容疑で逮捕し、まず特殊詐欺事件について取り調べる。その後、一連の強盗事件の捜査も本格化させる方針だ。組織の指揮系統や奪った金品の流れなどがどこまで解明できるかが焦点となる。

【トルコ・シリア地震、死者1万人超に 迫る「72時間」】
 8日の日経ニュースメール【イスタンブール=木寺もも子】によると、6日にトルコ南部で起きた地震での死者は、トルコとシリアで計1万1000人を超えた。なお多くの人ががれきの下に残っているとみられる。生存率が急激に下がるとされる発生後72時間が迫るが、被害が広範囲に及んでいるうえ、余震の発生やインフラの損傷で救助は難航している。
 トルコ当局によると、8日午後時点で8574人の死亡が確認された。シリア国営メディアは1262人が死亡したとしている。民間団体によると、北西部の反体制派支配地域では少なくとも1280人が死亡した。地震は6日午前4時17分(日本時間同10時17分)ごろに発生したが、依然として被害の全容はみえない。

【五輪談合、組織委元次長ら4人を逮捕 独禁法違反容疑で】
 8日の日経速報メールは次のように報じた。
 東京五輪・パラリンピックのテスト大会事業を巡る入札談合事件で、東京地検特捜部は8日、受注企業を事前に決めていた疑いが強まったとして、大会組織委員会大会運営局元次長の森泰夫容疑者(55)や広告最大手の電通のスポーツ局幹部だった逸見晃治容疑者(55)ら4人を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで逮捕した。特捜部などは8日午前、森元次長の自宅などを家宅捜索した。
 2022年に組織委元理事が起訴された汚職事件に続き、大会運営そのものを巡る談合事件で元幹部らの刑事責任が問われる事態となった。特捜部は公正取引委員会と連携し、森元次長らが主導した入札談合事件の全容解明を急ぐ。
 ほかに逮捕されたのは、イベント会社セレスポの専務取締役の鎌田義次容疑者(59)、テレビ番組制作会社のフジクリエイティブコーポレーション(東京・江東)役員の藤野昌彦容疑者(63)。
 元次長ら4人の逮捕容疑は、18年2〜7月、テスト大会事業の入札に参加した企業間で、事前に受注事業者を決めた上で、テスト大会事業や大会本番の会場運営業務などで相互の事業活動を拘束して競争を制限した疑い。
 独禁法違反の疑いが持たれているのは同年5〜8月に実施されたテスト大会の会場運営業務に関連する26件の入札など。入札では電通やイベント制作会社など9社1事業体が計約5億3000万円で落札し、受注企業は大会本番の会場運営業務など計約400億円分の事業も随意契約で受注した。

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 関係者によると、森元次長は17年秋ごろに、電通側に受注企業が記された「一覧表」作成の協力を依頼。自らも複数の参加予定企業にメールなどで応札を要請したり、既に企業が決まっているとして応札しないよう求めたりしていたという。特捜部と公取委が入札に参加した電通や森元次長の自宅などを22年11月に家宅捜索。
 森元次長や電通担当者は特捜部の任意聴取に「大会成功のためと思っていたが、談合ととられても仕方がない」と不正を認める説明をしていたという。一方で、一部の企業の担当者らは「一覧表やメールは競争を制限する効果はなかった」などと主張している。
 特捜部は家宅捜索などで押収した資料の分析や関係者への任意聴取を進めてきたが、受注調整の全容解明のために森元次長らを逮捕し、本格的に取り調べる必要があると判断したもようだ。
 2022年に組織委元理事が起訴された汚職事件に続き、大会運営そのものを巡る談合事件で元幹部らの刑事責任が問われる事態となった。特捜部は公正取引委員会と連携し、森元次長らが主導した入札談合事件の全容解明を急ぐ。
 ほかに逮捕されたのは、イベント会社セレスポの専務取締役の鎌田義次容疑者(59)、テレビ番組制作会社のフジクリエイティブコーポレーション(東京・江東)役員の藤野昌彦容疑者(63)。
 元次長ら4人の逮捕容疑は、18年2〜7月、テスト大会事業の入札に参加した企業間で、事前に受注事業者を決めた上で、テス ト大会事業や大会本番の会場運営業務などで相互の事業活動を拘束して競争を制限した疑い。
 独禁法違反の疑いが持たれているのは同年5〜8月に実施されたテスト大会の会場運営業務に関連する26件の入札など。入札では電通やイベント制作会社など9社1事業体が計約5億3000万円で落札し、受注企業は大会本番の会場運営業務など計約400億円分の事業も随意契約で受注した。
 関係者によると、森元次長は17年秋ごろに、電通側に受注企業が記された「一覧表」作成の協力を依頼。自らも複数の参加予定企業にメールなどで応札を要請したり、既に企業が決まっているとして応札しないよう求めたりしていたという。特捜部と公取委が入札に参加した電通や森元次長の自宅などを22年11月に家宅捜索していた。
 森元次長や電通担当者は特捜部の任意聴取に「大会成功のためと思っていたが、談合ととられても仕方がない」と不正を認める説明をしていたという。一方で、一部の企業の担当者らは「一覧表やメールは競争を制限する効果はなかった」などと主張している。
 特捜部は家宅捜索などで押収した資料の分析や関係者への任意聴取を進めてきたが、受注調整の全容解明のために森元次長らを逮捕し、本格的に取り調べる必要があると判断したもようだ。

【東芝買収を最終提案 JIPなど日本連合、2兆円規模】
 9日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 日本産業パートナーズ(JIP)などの連合が9日、東芝に買収の最終提案を提出したことがわかった。買収案の前提となっていた金融機関からの融資で、三井住友銀行などから確約を得た。買収額は2兆円規模となる見通し。東芝は提案を受け、取締役会で買収を受け入れるかの議論に入る。最初の買収提案から2年近くがたち、東芝の再編は大詰めを迎える。
 9日未明までに今回の融資を取りまとめる三井住友銀行がJIPに対し、総額1兆2000億円の融資を確約する「コミットメントレター」を送った。主力の三井住友銀行とみずほ銀行が各5000億円前後を融資し、三井住友信託銀行と三菱UFJ銀行、あおぞら銀行が続く。

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 各行は2022年12月までに融資の方針を固めていたが、財務制限条項(コベナンツ)の条件などをめぐってJIPなどと調整を続けていた。これとは別に東芝が決められた範囲で運転資金を引き出せる2000億円のコミットメントライン(融資枠)も設ける
 JIPの提案ではオリックスやローム、中部電力など20社程度の日本企業が合計で1兆円規模の出資をすることになっている。総額2兆2000億円規模の資金面の裏付けが得られたことを受け、改めて提案を出した。
 東芝はJIP案について社外取締役7人で構成する特別委員会で詳細を議論していた。提案を受け入れるかどうか検討を急ぎ、最終的には12人いる取締役会で判断する。
 焦点となるのは買収価格だ。JIPは買収後の東芝の運転資金などは除き、買収に充てる額としては2兆円規模を想定している。東芝の株価は再編への期待を織り込んで高値圏にあり、時価総額は足元で2兆円程度だ。買収に伴うTOB(株式公開買い付け)価格の上乗せ幅(プレミアム)はわずかとなる可能性がある。
 世界経済の減速懸念に伴い、東芝の業績も悪化している。取締役会がJIP案を受け入れないにしても、JIP案より好条件の提案が短期間で出てくるかは不透明だ。世界的に金利が高まるなか、金融機関がリスクのある巨額融資に今後慎重になる可能性もある。機会を先送りすれば、再編への期待がしぼんで株価下落を招きかねない。
 東芝に対しては21年4月、欧州を拠点とする投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズが買収に関する初期提案をし、その後に交渉が事実上中止となった経緯がある。東芝は企業価値の向上策として同年11月、グループ全体を分割する再編案を公表したが、22年3月の臨時株主総会で株主の反対多数で否決されていた。
 同年4月に東芝は株式の非公開化を含む再編案の公募を始めた。入札を経て優先交渉権を得ていたJIPは同年11月に買収提案を出していた。日本企業による出資や邦銀の融資で買収資金の大半を賄うJIPの提案は改正外為法などの規制対応が進めやすい一方、資金調達が課題とされていた。
 各行は2022年12月までに融資の方針を固めていたが、財務制限条項(コベナンツ)の条件などをめぐってJIPなどと調整を続けていた。これとは別に東芝が決められた範囲で運転資金を引き出せる2000億円のコミットメントライン(融資枠)も設ける。
 JIPの提案ではオリックスやローム、中部電力など20社程度の日本企業が合計で1兆円規模の出資をすることになっている。総額2兆2000億円規模の資金面の裏付けが得られたことを受け、改めて提案を出した。
 東芝はJIP案について社外取締役7人で構成する特別委員会で詳細を議論していた。提案を受け入れるかどうか検討を急ぎ、最終的には12人いる取締役会で判断する。
 焦点となるのは買収価格だ。JIPは買収後の東芝の運転資金などは除き、買収に充てる額としては2兆円規模を想定している。東芝の株価は再編への期待を織り込んで高値圏にあり、時価総額は足元で2兆円程度だ。買収に伴うTOB(株式公開買い付け)価格の上乗せ幅(プレミアム)はわずかとなる可能性がある。
 世界経済の減速懸念に伴い、東芝の業績も悪化している。取締役会がJIP案を受け入れないにしても、JIP案より好条件の提案が短期間で出てくるかは不透明だ。世界的に金利が高まるなか、金融機関がリスクのある巨額融資に今後慎重になる可能性もある。機会を先送りすれば、再編への期待がしぼんで株価下落を招きかねない。
 東芝に対しては21年4月、欧州を拠点とする投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズが買収に関する初期提案をし、その後に交渉が事実上中止となった経緯がある。東芝は企業価値の向上策として同年11月、グループ全体を分割する再編案を公表したが、22年3月の臨時株主総会で株主の反対多数で否決されていた。
 同年4月に東芝は株式の非公開化を含む再編案の公募を始めた。入札を経て優先交渉権を得ていたJIPは同年11月に買収提案を出していた。日本企業による出資や邦銀の融資で買収資金の大半を賄うJIPの提案は改正外為法などの規制対応が進めやすい一方、資金調達が課題とされていた。

【日銀新総裁に植田和男氏を起用へ 初の学者、元審議委員】
 10日午後の日経ニュースメールは次のように報じた。

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政府は次期日銀総裁に植田和男氏を起用する

 政府は日銀の黒田東彦総裁(78)の後任に経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏(71)を起用する人事を固めた。黒田氏の任期は4月8日まで。政府は人事案を2月14日に国会に提示する。衆参両院の同意を経て内閣が任命する。
 副総裁には氷見野良三前金融庁長官、内田真一日銀理事を起用する。現在の雨宮正佳、若田部昌澄両副総裁の任期は3月19日まで。政府は黒田氏の後任総裁として雨宮副総裁に打診したが、同氏は辞退した。
 14日の人事案提示後、衆参両院の議院運営委員会で正副総裁候補者から金融政策に関する所信を聴取して質疑する。衆院議運委では24日に実施する見通し。その後、両院の本会議で承認されれば、正式に就任が決まる。植田氏は10日、記者団に「現在の日銀の政策は適切だ。現状では金融緩和の継続が必要だ」と語った。
 初の経済学者出身の日銀総裁となる。日銀総裁は日銀と財務省(旧大蔵省)の出身者が続いており、民間出身は三菱銀行出身で1960年代に就任した宇佐美洵氏以来だ。
 植田氏は日本を代表する金融政策の研究者で、1998年4月に東大教授から日銀審議委員に転じた。再任され、05年4月まで務めた。日本が1990年代後半からデフレに突入していくなか、日銀によるゼロ金利政策の導入などを理論面から支えた。その後、20年を超える長期にわたって続いた金融緩和にもっとも精通した一人といえる。
 2000年のゼロ金利解除に反対票を投じたことでも知られる。日銀が今後、異次元緩和からの出口を探っていく中で、性急に出口に突き進むことはないだろうという安心感も選出の決め手になったとみられる。
 10年続いた異次元緩和政策の検証が、次期総裁の最初の役割となる。雨宮副総裁は黒田体制下で金融政策運営を事実上取り仕切ってきた自分はふさわしくないと就任を固辞した。金融政策に深い知識と経験を持ち、より中立的な立場で政策の検証と修正に取り組める植田氏に白羽の矢が立った。
 米マサチューセッツ工科大学で経済学の博士課程を修了し、国際的な経済学者である植田氏は海外の中央銀行や市場参加者との円滑な対話も期待できる。米連邦準備理事会(FRB)のイエレン前議長やバーナンキ元議長のように、世界では学者出身の中銀トップが珍しくない。
 黒田総裁が就任直後の13年から始めた異次元緩和は円高是正などで効果があったとされるが、市場機能の低下や財政規律の緩みといった副作用も招いた。次期総裁は政府と緊密に連携し、日本経済や金融市場へのショックを避けながら金融政策を正常化に導くことが使命となる。
 政策面では、長期金利を一定の範囲に抑え込む長短金利操作の修正の是非が当面の焦点になる。金利の上昇圧力が高まるなか、日銀は22年12月に長期金利の許容変動幅を0.25%から0.5%に広げた。国債の買い手がほぼ日銀だけという異常な状態となっており、変動幅の再拡大や同政策の撤廃などに踏み込むか、次期総裁の判断に注目が集まる。
 ただ、金融政策の正常化を急ぎすぎれば金融市場にショックを与えかねない。超低金利に慣れた企業や家計へ与える影響への目配りも欠かせない。次期総裁は経済・物価情勢を慎重に見極めたうえで政策修正を探るとみられる。

【米軍、アラスカ上空で飛行物体を撃墜 国籍は不明】
 11日の日経速報メール【ワシントン=坂口幸裕】によると、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は10日の記者会見で、米軍が同日午後に米アラスカ州の上空を飛行していた物体を撃ち落としたと明らかにした。どこから飛来してきたかは現時点で不明で、バイデン大統領が民間航空機への脅威となるおそれがあると判断して撃墜を指示した。
 バイデン氏は10日、ホワイトハウスで記者団に「(撃墜は)成功した」と述べた。カービー氏によると9日夜に発見、バイデン氏が国防総省の進言を受けて10日午前に撃墜を命じた。物体は高度約4万フィート(約1万2000メートル)を飛行し「小型車ほどの大きさだった」と説明した。領土上空は飛行しなかったもようだ。
 米国防総省のライダー報道官は10日の記者会見で「民間航空機は最高4万5000フィート(約1万4000メートル)で飛行している。この物体が民間の航空交通に脅威を与える、あるいは潜在的な危険をもたらす懸念があった」と話した。米政府は回収する残骸の分析を急ぐ。
 ステルス戦闘機F22が10日午後1時45分、アラスカ北東部のカナダ国境付近で空対空ミサイル「サイドワインダー」を発射して撃ち落とした。物体は無人だった。カービー氏は「国有か個人所有かわからず、目的も判然としない。回収すれば、詳細を把握できるだろう」と述べた。凍結している海上に落下したため残骸は回収しやすいとみられる。
 米軍が4日に領空で撃墜した中国の偵察気球の大きさは高さ最大200フィート(約60メートル)でバス3台分に相当する。米上空の高度約6万フィート(約1万8000メートル)を移動していた。軍事施設を標的に通信を傍受できるアンテナが搭載され、米国務省は「(中国の)情報収集活動が可能だった」と断定した。
 一方、今回は気球かどうかや偵察機器が搭載されていたかなどはわかってない。カービー氏は「(中国の偵察気球のような機能が備わっていたと)示す証拠はない」と語った。
 本土上空を通過した中国の偵察気球への米政府の対応を巡り、野党・共和党は非難を強める。1月28日に米領空に入ったと確認したにもかからず、撃ち落とすまでに8日間を要した判断を問題視する。「バイデン政権は優柔不断で、遅きに失した」(上院共和トップのマコネル院内総務)などの声が出た。
 10日の撃墜は領土上空を通過する前に実行した。「国民を危険にさらした」などと主張する共和の批判を意識した可能性がある。


【中国気球40カ国超で 米国「通信傍受用のアンテナ搭載」】
 10日未明の【ワシントン=坂口幸裕】米国務省は9日、中国がこれまで40カ国以上の領空に偵察気球を飛来させているとの分析を明らかにした。米軍が4日に米領空で撃墜した気球の解析を踏まえ、傍受する機器を備え「情報収集活動が可能だった」と結論づけた。関与した中国人民解放軍と取引のある団体への対抗措置を検討する。

【原発建て替え、敷地内で GX基本方針を閣議決定】
 10日昼の日経ニュースメールは次のように報じた。

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関西電力美浜原発は建て替えの候補との見方がある(福井県)

 政府は10日、GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針を閣議決定した。東日本大震災後、想定してこなかった原子力発電所の建設について敷地内での建て替えを具体化すると明記した。最長60年と定めた運転期間も延長する。新しい国債「GX経済移行債」で集めた資金で企業の脱炭素を支援し、官民で150兆円超の投資をめざす。
 GX推進法案も閣議決定した。GX債の発行や、企業の二酸化炭素(CO2)排出に金銭的負担を求めるカーボンプライシングを本格的に導入して償還財源とすることなどを規定した。
 2050年の温暖化ガス排出量実質ゼロをめざしてGXを加速し、エネルギーの安定供給につなげる。同時に産業の競争力も高めて日本経済を再び成長軌道に戻す狙いがある。
 基本方針には脱炭素電源となる再生可能エネルギーや原子力を「最大限活用する」と盛り込んだ。原発については「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む」と記した。震災後の原子力政策を転換させる。
 地域の理解を前提に、廃炉が決まった原発の敷地内での建て替えに向けて具体化を進める。その他の原発の開発や建設は今後の状況を踏まえて検討する。
 建て替えは関西電力美浜原発などが候補とみられているが、具体的な場所は示さなかった。22年末のGX実行会議で決めた基本方針案にはなかった「敷地内」との表現を盛り込み、廃炉を決めた原発の敷地内であることを明確にした。
 原子力を「将来にわたって持続的に活用する」との文言は削除した。「エネルギー基本計画をふまえて活用する」と修正した。エネルギー基本計画の「必要な規模を持続的に活用する」との表現を踏襲する。いずれも政府・与党内の慎重論に配慮したとみられる。

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 原発を新たに建設しても運転開始は30年代半ば以降とみられる。既存の原発を最大限活用するため、原子力規制委員会による安全審査の合格を前提に再稼働を推進するとともに、運転期間も延ばす。
 震災後、原発の運転期間は原則40年、最長60年と定めていた。新制度ではこの枠組みを残したまま、規制委による震災後の審査で停止していた期間などに限り追加の延長を認める。60年超の運転が可能になる。規制委は運転開始から30年を超える原発の安全性を10年以内ごとに審査する。
 再生エネの導入を加速するために送電線も増強する。大手電力各社のエリアをまたぐ送電網は今後10年で過去10年と比べ8倍以上の規模で整備する。洋上風力の導入が本格化する北海道から本州への海底送電線は30年度の運用開始をめざす。
 企業の脱炭素投資を支援するため、GX債を23年度から10年間にわたって発行し、計20兆円規模を調達する。電動車の普及拡大、鉄鋼や化学といった排出量の多い産業の構造転換、企業や建物の省エネ、燃やしてもCO2が出ない水素やアンモニアの供給網構築などを支援する。企業のGX投資を引き出す。
 50年度までに償還を終えるためカーボンプライシングを導入する。23年度から企業が自主的に参加する排出量取引を試験的に始める。企業が政府目標を上回って排出を削減できた場合に、削減量を増やしたい企業に売却できる。26年度に本格的な運用を始め、33年度には電力業界を対象に排出枠を有償で買い取らせる仕組みを取り入れる。
 28年度に化石燃料の輸入業者を対象に炭素賦課金も導入する。負担は徐々に重くする方針で、早期に化石燃料への使用量を減らした方が負担が少なくて済む。排出量取引制度の運営や賦課金の徴収を担う「GX推進機構」を創設する。
 ロシアによるウクライナ侵攻で世界のエネルギー情勢は一変した。欧州連合(EU)は30年の再生エネ比率の目標を40%以上から45%以上へ引き上げる考え。米国は歳出・歳入法(インフレ抑制法)によりエネルギー安全保障と気候変動対策に3690億ドル(48兆円)を充てる。世界がエネルギー転換を急ぐなか、日本がGXの後れを取り戻せるかどうかは産業競争力や国民生活に直結する。


【米軍、アラスカ上空で飛行物体を撃墜 国籍は不明】
 11日未明、日経速報メール【ワシントン=坂口幸裕】によると、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は10日の記者会見で、米軍が同日午後に米アラスカ州の上空を飛行していた物体を撃ち落としたと明らかにした。どこから飛来してきたかは現時点で不明で、バイデン大統領が民間航空機への脅威となるおそれがあると判断して撃墜を指示した。
 バイデン氏は10日、ホワイトハウスで記者団に「(撃墜は)成功した」と述べた。カービー氏によると9日夜に発見、バイデン氏が国防総省の進言を受けて10日午前に撃墜を命じた。物体は高度約4万フィート(約1万2000メートル)を飛行し「小型車ほどの大きさだった」と説明した。領土上空は飛行しなかったもようだ。
 米国防総省のライダー報道官は10日の記者会見で「民間航空機は最高4万5000フィート(約1万4000メートル)で飛行している。この物体が民間の航空交通に脅威を与える、あるいは潜在的な危険をもたらす懸念があった」と話した。米政府は回収する残骸の分析を急ぐ。
 ステルス戦闘機F22が10日午後1時45分、アラスカ北東部のカナダ国境付近で空対空ミサイル「サイドワインダー」を発射して撃ち落とした。物体は無人だった。カービー氏は「国有か個人所有かわからず、目的も判然としない。回収すれば、詳細を把握できるだろう」と述べた。凍結している海上に落下したため残骸は回収しやすいとみられる。
 米軍が4日に領空で撃墜した中国の偵察気球の大きさは高さ最大200フィート(約60メートル)でバス3台分に相当する。米上空の高度約6万フィート(約1万8000メートル)を移動していた。軍事施設を標的に通信を傍受できるアンテナが搭載され、米国務省は「(中国の)情報収集活動が可能だった」と断定した。
 一方、今回は気球かどうかや偵察機器が搭載されていたかなどはわかってない。カービー氏は「(中国の偵察気球のような機能が備わっていたと)示す証拠はない」と語った。
 本土上空を通過した中国の偵察気球への米政府の対応を巡り、野党・共和党は非難を強める。1月28日に米領空に入ったと確認したにもかからず、撃ち落とすまでに8日間を要した判断を問題視する。「バイデン政権は優柔不断で、遅きに失した」(上院共和トップのマコネル院内総務)などの声が出た。
 10日の撃墜は領土上空を通過する前に実行した。「国民を危険にさらした」などと主張する共和の批判を意識した可能性がある。

【カナダ領空侵犯の物体を撃墜 トルドー首相、米国と連携】
 12日の日経速報メール【ニューヨーク=大島有美子】によると、カナダのトルドー首相は11日、カナダの領空を侵犯した物体の撃墜を命じ、米軍機が撃墜に成功したとツイッターで発表した。物体がどこから飛来してきたかは現時点で不明。今後、カナダ軍が物体の残骸を回収し分析する。
 米東部時間11日午後(日本時間12日午前)にトルドー首相とバイデン米大統領が電話で話し、カナダと米国が共同運営している北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が出動した。トルドー首相によると、米アラスカ州に隣接するカナダ北西部のユーコン上空を飛行していた物体を撃ち落とした。
 米国防総省のライダー報道官は声明で、NORADが10日夜遅くに米アラスカ州の上空で同物体を探知したと明らかにした。米軍機が監視・追跡し、物体がカナダ上空に入った後はカナダ軍の戦闘機も監視に加わった。
 米ホワイトハウスの声明によると、バイデン大統領とトルドー首相が「慎重を期したうえ、それぞれの軍の進言により、物体の撃墜を許可した」。バイデン米大統領がNORADに所属する米軍機に作戦を実行する権限を与え、米軍のステルス戦闘機F22が空対空ミサイル「サイドワインダー」を発射して撃ち落とした。物体はカナダ軍が回収し、両国は分析で連携している。
 カナダのアナンド国防相は11日、記者会見で物体について「小型で円筒形」と説明した。ユーコン上空約4万フィート(約1万2000メートル)を飛行していた。大きさは、米軍が4日に米南部サウスカロライナ州沖の大西洋上空で撃墜した中国の偵察気球より小さいという。
 バイデン氏とトルドー氏は「領空を探知、追跡、防衛するための緊密な連携を継続する」(ホワイトハウス声明)とした。オースティン米国防長官とカナダのアナンド国防相も11日に電話で話した。カナダのアナンド氏はツイッターに「ともに我々の主権を守っていくことを再確認した」と投稿した。
 米軍は10日、米アラスカ州の上空高度約4万フィートを飛行していた物体を撃墜した。物体の詳細は明らかになっていない。

【フィリピン大統領、台湾有事なら「我々も巻き込まれる】
 12日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 フィリピンのマルコス大統領は12日、東京都内で日本経済新聞の単独インタビューに応じ、台湾海峡での有事の際に「フィリピンが巻き込まれないシナリオは考えにくい」と述べた。明言は避けたが、台湾防衛を表明している米国にフィリピン軍基地の使用を認める可能性を示唆した。
 台湾有事を巡ってマルコス氏は「そのような紛争が起こらないことを祈る」とした一方で、「我々は最前線にいると感じている」と語った。首都マニラがあるルソン島北端から台湾の最南端までは約350キロメートルしか離れていない。
 フィリピンと米国は軍事同盟を結んでいる。2014年の防衛協力強化協定(EDCA)により米軍の巡回駐留が可能になった。米軍はフィリピン軍と共同訓練を実施したり、同国内で弾薬や燃料を備蓄したりできる。2日には米軍が巡回駐留できる拠点を4カ所増やし計9カ所にすることで合意した。台湾有事をにらみ、ルソン島北部の拠点の利用も検討しているとみられる。

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 マルコス氏は台湾有事の際の米軍への基地提供について「EDCAは戦闘の勃発という事態を含んでいない」との原則を示したうえで、実際に紛争が始まった場合には「フィリピンにとって何が良いのかを見極める必要がある」と語った。フィリピンとして安全保障面でなんらかの対応が必要になるとの認識を示した。
 フィリピンにはかつて南シナ海に接するスービックなどに米軍基地があった。1990年代初めにフィリピン上院が米軍の基地利用を延長する条約の批准を拒否し、米軍は撤退した。地域での米軍の存在感低下につながり、中国の海洋進出を許した。中国は南沙(英語名スプラトリー)諸島などで軍事拠点化を進めている。

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 フィリピンは米国と軍事同盟を結ぶ一方で、中国との通商面での結びつきも強い。マルコス氏は中国を念頭に、フィリピンの対応が「(事態を)挑発しないよう気をつけなければならない」と語った。マルコス氏は「誰も戦争は望んでいない。軍事的にではなく外交的なプロセスを通じて問題を解決する方法を見いださなければならない」と強調した。
 地域安保では、南シナ海問題を念頭に日本との協力を強化する。マルコス氏は日本の自衛隊と「合同演習を強化する」と述べた。岸田文雄首相との9日の首脳会談で防衛協力の強化で合意しており、東・南シナ海で海洋進出を続ける中国に対抗して連携を深める。
 マルコス氏は日本について「我々が領海を守ることができるよう船舶や装備などあらゆる資材を提供してくれている」と語った。日本とフィリピンの間でより踏み込んだ合同訓練を可能にする「訪問軍地位協定(VFA)」を締結するかについては、マルコス氏は「研究中だ」と述べるにとどめた。


【米軍、米カナダ国境上空で飛行物体を撃墜 2月4つ目】
 13日未明の日経速報メール【米州総局=清水孝輔】によると、米国防総省のライダー報道官は12日の声明で、米軍が中西部ミシガン州とカナダの国境にあるヒューロン湖の上空で飛行物体を撃墜したと明らかにした。飛行物体の国籍は明らかになっていない。飛行物体が2月に北米で撃墜されるのは4例目となる。
 ライダー氏はバイデン大統領の命令を受け、米軍の戦闘機F16が12日午後に空対空ミサイル「サイドワインダー」で高度2万フィート(約6000メートル)を飛行する物体を撃墜したと説明した。飛行ルートや高度が民間機に対してリスクになると判断したという。
 11日にはカナダのトルドー首相がカナダ領空を侵犯した物体の撃墜を命じ、米軍の戦闘機F22が撃ち落とした。米軍は4日に中国の偵察気球、10日に米アラスカ州の上空を飛行していた物体を撃墜している。
 米本土防衛を担当する北方軍のグレン・バンハーク司令官は12日、記者団に北方軍が米国の領空で飛行物体を撃墜するのは最近1週間ほどでの撃墜が初めてだったと説明した。10〜12日に撃墜した3つの飛行物体はスピードや大きさが似ているという。米東部時間12日夜時点で北方軍が追跡対象とする他の飛行物体はないと言及した。
 メリッサ・ダルトン米国防次官補は4日以降にレーダー探知を向上させて領空の監視を強めてきたと説明。飛行物体を相次いで発見している理由の一つだとの見方を示した。バンハーク氏は過去に大きさや形状が原因で飛行物体の発見が難しいケースがあったと指摘した。両氏とも3つの飛行物体の国籍には触れなかった。
 トルドー首相は12日、同国の領空を侵犯した物体について「回収チームは地上で物体を見つけて分析しようとしている」と話した。記者団の取材に応じ、「まだ知るべきことは多い。この物体の分析は非常に重要だ」と述べた。
 チャック・シューマー米上院院内総務は12日午前、米ABCテレビの取材に応じ、カナダとアラスカ上空で撃墜された2つの飛行物体が気球だったという認識を示した。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)から説明を受けたという。

【大手行、東京電力に緊急融資4000億円 燃料高で資金不足】
 14日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 三井住友銀行やみずほ銀行などは東京電力ホールディングス(HD)に対し、総額4000億円の緊急融資を実行する方針だ。中部電力と折半出資するJERAも最大で2000億円程度にのぼる資本増強の検討に入った。電力会社は燃料高と円安で大幅な赤字に陥り、資金繰りや財務状況が厳しい。値上げによる収益改善の取り組みと並行し、銀行借り入れや資本調達を模索する動きが広がっている。
 調整中の案では、日本政策投資銀行の約900億円を筆頭に三井住友銀行(830億円)やみずほ銀行(620億円)、日本生命保険(390億円)など10社で融資団を構成する。各社は早ければ4月に融資を実行する予定だ。燃料高と円安がピーク時より落ち着いてきたため、当初に想定された融資額6000億円に比べて減額したものの資金繰りが厳しい。
 燃料価格の高騰により、一部の契約では調達コストが販売価格を上回る逆ざやの状態となるなど電力会社を取り巻く経営環境は悪化している。液化天然ガス(LNG)のスポット(随時契約)の輸入価格が上昇しているほか、長期契約分も原油価格に連動して上がっている。ドル建て取引で円安も負担だ。
 東電HDの2022年4〜12月期の連結最終損益は6509億円の赤字(前年同期は98億円の黒字)となった。傘下にある電力の小売会社は特に業績が厳しく、昨年秋から冬にかけて一時的に債務超過となった。卸電力の市場で取引できなくなるなどの不利益が生じるため、東電HDは5000億円規模の資本注入で債務超過を解消した。
 東電は3分の2の家庭が契約している規制料金を今年6月に平均29%上げる料金改定を経済産業省に申請した。こうした値上げで23年度には経常利益で3000億円程度の増益になると融資団へ説明しているようだ。金融機関側も電気料金の値上げで融資を回収できると見込む。政府が電気代に補助金を出すことは値上げに追い風だが、申請通りの値上げ幅で経産省に認められるか予断を許さない。
 東電HDと中部電が折半出資しているJERAも資本性を持つ劣後ローンを軸に最大2000億円規模の調達を計画している。格付け会社に認められれば一部を資本として算入できるため、財務基盤の安定につながる。
 大手10社が公表した22年4〜12月期の連結決算は、合計の最終損益が1兆4234億円の赤字(前年同期は885億円の黒字)だった。資金繰りの悪化は東電HDに限らない。東北電力は昨年12月にみずほ銀行などから3500億円の協調融資を受けた。一度の借入額としては11年の東日本大震災以降で最大だ。大手10社の資金需要は夏場にかけ、総額で数兆円規模におよぶ可能性がある。

【防衛省、過去の飛行物体「中国の偵察用気球と推定」】
 同じ14日の日経速報メールは次のように報じた。
 防衛省は14日、過去に日本の領空内で確認された少なくとも3つの飛行物体について「中国が飛行させた無人偵察用気球だと強く推定される」と発表した。政府は外交ルートを通じ中国に事実関係の確認と再発防止を求めた。
 「外国の無人偵察用気球などによる領空侵犯は断じて受け入れられない」と申し入れた。
 防衛省は2019年11月に鹿児島県、20年6月に宮城県、21年9月に青森県の上空などで発見された気球型飛行物体を中国の偵察用気球だと推定した。
 防衛省は3日に「気球による領空侵犯について確認して公表した事実はない」と説明していた。14日に新たな判断を示したことを踏まえ「気球に対してこれまで以上に情報収集・警戒監視に努めていく」と表明した。
 米国が中国の偵察用気球を撃墜したのを受けた対応とみられる。気球は他国の領空に許可なく侵入すれば国際法違反になる。
 日本周辺では防衛省が挙げた3例以外にも飛行物体の目撃事例があるため政府は調査を進める。政府は22年1月にも九州西方の公海上空で自衛隊の哨戒機が所属不明の気球を見つけたと公表している。
 一方で発見した気球の具体的な数は明示しない方針だ。松野博一官房長官は14日の記者会見で「収集・分析した情報を網羅的に答えることは情報収集能力などが明らかになるので差し控える」と話した。

【植田日銀、10年緩和の出口担う 市場のゆがみ限界に】
 15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 歴代最長の10年間、日銀総裁を務めた黒田東彦氏の後継に、政府は初めて学者出身である植田氏を選んだ。異次元緩和の10年で日銀の国債保有額は4倍超となった。上場投資信託(ETF)購入で、日銀が多くの企業の主要株主になるというひずみも生まれた。
 植田氏に期待されるのが、膨れあがった副作用を取り除くための異次元緩和の修正だ。だが、投機筋はそのタイミングを見計らって国債を売り浴びせようと構えている。植田氏は就任初日から市場との戦いに身を投じることになる。

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 「植田氏は経済情勢を見極め、就任後は長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の撤廃に踏み切るだろう」。日本国債の空売りを進めてきた英ヘッジファンド、ブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング氏は取材にこう話した。日銀の緩和修正を見越し、国債売りを継続する姿勢を崩していない。
 植田氏の起用が伝わると、債券市場は売りで反応した。長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは14日、連日で日銀が上限とする0.5%を付けた。英投資会社、Abrdnのジェームズ・エイシー氏は「信じられないほど金融緩和に積極的な黒田総裁ですら(昨年12月に)政策を修正した」と指摘し、植田日銀はさらなる政策修正に踏み込むと読む。
 修正観測が高まっているのは、市場のゆがみが広がり、日銀も放置はできないと踏んでいるためだ。昨年12月の日銀の政策修正の直前には、これまで金利低下の恩恵を受けてきた財務省でさえ「市場機能の阻害が大きくなっている」との懸念を日銀に伝えた。
 長短金利操作による10年物国債の利回り抑制が20年物や30年物国債の入札不調を招いていた。20年物など超長期債を買うときは10年物国債や先物を売って損失リスクを避けることが多い。流通する国債が少なくなり、10年債や先物の値動きが不安定になった結果、リスクヘッジできなくなった証券会社や投資家が超長期債を買い控えるようになった。
 ゆがみは債券市場にとどまらない。昨年10月には日米の金利差の拡大を反映して円安・ドル高が止まらなくなり、円相場は1ドル=151円台と32年ぶりの安値を付けた。
 市場の経済・物価見通しを映すはずの長期金利を無理やり固定しようとすると、マネーの圧力は外国為替市場に集中する。景気を支えるはずの金融緩和が、円安加速と物価上昇の連動を通じて経済を不安定にした。
 植田氏はどう動くのか。昨年7月の日本経済新聞「経済 」では「日銀は出口に向けた戦略を立てておく必要がある」と指摘。「多くの人の予想を超えて長期化した異例の金融緩和枠組みの今後については、どこかで真剣な検討が必要だろう」と記した。短期金利はゼロ近辺に据え置きながら、長期金利の柔軟性を高める方向で政策修正を探るというのが市場参加者の相場観だ。
 もっとも軟着陸は簡単ではない。日本経済研究センターは昨年12月、日銀が長短金利操作を廃止した場合、長期金利は最大で1.1%まで上昇するとの試算を公表した。企業の利払い負担が増し、経常利益を最大で年3%程度、設備投資を9%程度押し下げる可能性がある。
 金利上昇は財政の持続性への懸念も高めかねない。いまや日銀の国債購入は「日本国債の格付けを支える要因のひとつ」(大手格付け会社フィッチ・レーティングスの担当者)だ。財政健全化の道筋がみえないままに日銀の緩和が出口に向かえば、格下げと金利上昇の負の連鎖に入り込むリスクも否定はできない。
 問われるのは、植田氏の対話力だろう。当面は緩和的な金融環境を維持していくと約束しながら、持続性の乏しい政策は修正し、サプライズに翻弄されてきた市場参加者に安心感を与えられるかどうか。金融政策だけでこの国の経済構造を変えられない以上、時には政府に必要な改革を求めていく大胆さも求められるはずだ。


【「新型コロナ」改め「コロナ2019」 5類移行で名称変更】
 16日午後の日経速報メールは次のように報じた。
 厚生労働省は新型コロナウイルス感染症の名称を「コロナウイルス感染症2019」とする検討に入った。感染症法上、入院勧告や就業制限などの厳しい措置がとれる2類相当以上の扱いを5月から5類に引き下げるのに伴い、呼び方を変える。「新型」という表現はやめ、医療などで平時の体制への移行を進める。
 厚労省が今後、厚生科学審議会(厚労相の諮問機関)の感染症部会に示して議論する。病原体名は「ベータコロナウイルス属SARSコロナウイルス2」とする案がある。
 コロナは流行初期の2020年2月に暫定的に「指定感染症」として、入院勧告や就業制限といった強い措置をとれるようにした。現在は生命や健康に重大な影響を及ぼす恐れがある「新型インフルエンザ等感染症」に分類している。
 省令を改正して5月8日に位置づけを5類に変えるタイミングで名称も見直す方向だ。5類になると新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象ではなくなり、緊急事態宣言などの行動制限はできなくなる。日常の感染対策の柱としてきたマスクの着用は3月13日から屋内外を問わず個人の判断に委ねる。
 医療費の公費負担や医療機関向けの財政支援も段階的に縮小する方向で、詳細を3月上旬をめどに示す。ワクチンは現在3月末が期限になっている無料接種を4月以降も当面続ける。
 09年に発生し、世界に広がった新型インフルエンザも11年春に「新型インフル等感染症」から外れた。通常の季節性インフルとして扱うのにあわせ、名称も「インフルエンザ(H1N1)2009」となった経緯がある。

【米海兵隊トップ「自衛隊から補給拡大」 台湾有事視野に】
 16日の日経速報メール【ブリュッセル=中村亮】によると、米海兵隊トップのデビッド・バーガー総司令官は、日本の自衛隊から武器の修理部品や弾薬の補給を拡大する態勢づくりを目指すと表明した。中国艦船への対策を念頭にインド太平洋地域で攻撃型無人機の活用拡大を検討する。台湾有事を視野に抑止力強化を急ぐ。
 バーガー総司令官が米首都ワシントンの海兵隊兵舎で日本経済新聞の取材に応じた。同氏はテロとの戦いから対中国へシフトするため、海兵隊改革を強力に進める戦略家として知られる。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは米軍制服組トップである統合参謀本部議長の次期候補の一人と報じている。
 バーガー氏は日本の新しい安全保障戦略に関し「30〜40年間にわたって日本に関わってきた私からすると極めて重大なものだ」と評価した。「その理由は中国の脅威や中国共産党の目標に対して(米国と)共通の認識を持ったからだ」と強調し、日本と防衛協力の拡大に期待を示した。
 日本など周辺国と連携して抑止力を高めることで「中国との戦争は防げる」と断言した。
 日米両政府は1月、米海兵隊が沖縄駐留部隊を改編し、2025年までに「海兵沿岸連隊」を創設すると合意した。小規模な部隊が離島から離島を素早く移動し、中国軍のミサイル攻撃を避けながら作戦を実行するシナリオを描く。作戦の範囲は敵の位置情報収集や対艦ミサイルの運用、防空、補給活動など多岐にわたる。
 台湾有事で海兵沿岸連隊が最前線で戦うのかとの問いにバーガー氏は「おそらく(そうだ)」と言及した。部隊運用はインド太平洋軍に委ねるとも語ったが、台湾有事への準備を進めていることを印象づけた。「台湾が必要として米国が同意すれば我々はどんな訓練でも提供する」と述べた。
 自衛隊との協力では補給活動に関し「さらに取り組む必要がある」と触れた。米軍の装備品の修理に使う部品を日本でなるべく調達したり、弾薬を相互に融通したりする例をあげた。燃料の補給や輸送手段も協力対象と指摘した。

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 海兵隊は戦闘の最前線で活動する。補給物資を米領グアムやハワイではなく、地理的に中国へ近い日本からなるべく調達したい考えだ。海兵沿岸連隊は離島に分散して作戦を実行するため、その分だけ補給活動が複雑になる。有事下で日米が補給活動をスムーズに実行できるかがカギになる。
 情報共有にも意欲を見せた。「海兵隊の活動は自衛隊と極めて緊密なものになる」と強調した。
 インド太平洋地域での攻撃型無人機の活用拡大に意欲を示した。攻撃型無人機は「徘徊型兵器」とも呼ばれ、作戦地域を空から偵察し、敵を見つけると標的に向かっていき爆発する。ミサイルに比べて爆発力は小さいが、運びやすい特徴がある。ウクライナ軍は自爆能力を持つ米国製の無人機「スイッチブレード」を使ってロシア軍に対抗している。
 自爆型無人機は主に対戦車や対人向けとしてきたが、バーガー氏は「今後数年間は米国と自衛隊が今までにないやり方でその戦力の活用法を探ると思う」と断言した。バーガー氏は海上の戦略的要衝を敵国に封鎖させないことを重要課題の一つにあげて「徘徊型兵器はその役割を担う可能性が大いにある」と話した。
 台湾有事では、中国軍が台湾から東方の海域を封鎖したり、沖縄から台湾、フィリピンを通る「第1列島線」を越えて太平洋に出ようとしたりするシナリオが考えられる。対艦ミサイルと合わせて攻撃型無人機も活用すれば、中国艦船の作戦を阻止する効果が見込まれる。
 海兵隊は地上発射型中距離ミサイルを開発している。バーガー氏は沖縄の海兵沿岸連隊が運用する可能性について「まだ開発段階であり、配備先を話すのは早すぎる」と述べた。開発が完了するとみられる20年代半ばごろに向けて日本を含む中国の周辺国と水面下で協議を進める可能性がある。
 バーガー氏は中国の偵察気球が米本土に飛来したことについて「受け入れられない行動だ」と糾弾した。「領空や領土を継続的に侵入すればそれは安定をもたらさない行動だ」と指摘。気球問題の発覚前は中国が対米関係の安定を目指すとの見方が広がったが、バーガー氏は「我々は中国の意図に改めて注意深くあるべきだ」との認識を示した。

【H3ロケット、離陸せず JAXA「機体1段目に異常検知」】
 17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日、種子島宇宙センター(鹿児島県)で国の新たな大型ロケット「H3」初号機の打ち上げを試みたが離陸できなかった。固体補助ロケットが着火しなかったという。何らかのトラブルが起きたもようでJAXAは情報収集を急いでいる。
 H3は予定通り10時37分に打ち上げを試みた。JAXAによると、主エンジン「LE-9」には着火したが、固体補助ロケットに着火できなかったため、打ち上げできなかった。
 JAXAは14時から記者会見を開いて状況を説明している。JAXAは「H3の主エンジンを立ち上げた後に1段目のシステムで異常を検知し、固体補助ロケットの着火信号を送ることができず打ち上げを中止することにした」としており、詳細な状況を確認中だとしている。
 固体補助ロケットはH3本体の周囲に2本、4本と装着し、さまざまな衛星の打ち上げに対応できる仕組みになっている。H3の固体補助ロケットは「SRB-3」と呼ばれ、H2Aで使われていたものをH3向けに改良した。長さは約15メートル、直径2.5メートルの円筒形状で固体燃料を燃やし、打ち上げの初期の段階で推進力を出す。今回は2本装着しており、打ち上げの0.4秒前に点火して燃焼を始め、発射から1分56秒後にロケット本体から切り離される予定だった。
 H3は現行の「H2A」の後継機にあたる。JAXAと三菱重工業が2014年から開発に着手した。開発費は約2000億円。新たな構造の主力エンジンを採用。エンジンの部品点数を約2割減らしつつ推進力が1.4倍になるように設計した。打ち上げ費用をH2Aの1回あたり100億円から同50億円にするだけでなく、注文を受けてから発射までの準備期間も約1年と従来の2年から半減する目標を掲げる。
 国の主力となる大型ロケットとして、国の人工衛星の打ち上げや宇宙開発に利用する計画だ。官需で当面、年5機前後の打ち上げを予定している。米国主導の有人月面探査「アルテミス計画」や、日本主導で火星の衛星から試料(サンプル)を地球に持ち帰る計画「MMX」などにも活用する。
 商業衛星の打ち上げサービスへの利用も期待されている。すでに英インマルサットから1件受注している。当初はJAXA主導でH3を打ち上げるが、H2Aと同様に将来は三菱重工に打ち上げ業務を移管する計画で、国内外の商業衛星の受注を目指している。
 ただ開発は難航し、主エンジンの試験中にトラブルが続いて起きた。打ち上げは当初の20年度から2度延期となり、改良にメドがついてようやく今回の打ち上げに挑んでいた。
 国のロケットを巡っては、小型ロケット「イプシロン」6号機が22年10月に打ち上げに失敗した。現在も詳細な原因を調査中だ。日本は大小2つのロケットを使い分ける戦略で、大型機についてはH2Aは24年度の50号機で退役を予定している。打ち上げが滞れば、国の宇宙戦略の見直しが求められる。

【ウクライナ侵攻1年 マップで振り返る ロシアの支配面積 全土の2割下回る】
 18日の日経ニュースメールは次のように報じた。2023年2月17日 15:00
 ロシアがウクライナに侵攻を始めてから24日で1年。圧倒的に優勢とみられていた軍事大国のロシアに対し、ウクライナは抗戦を続けている。米欧による軍事支援も、領土奪還を目指すウクライナ軍を支えた。一進一退の攻防が繰り広げられた戦況を地図で振り返る。

【半導体で新「企業城下町」 GDP、8県でコロナ前超え】
18日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 半導体が地域経済のけん引役となっている。2021年度の全国の実質国内総生産(GDP)が19年度比98%の水準にとどまる一方、都道府県別では関連産業が集積する三重、山梨、熊本など8県で県GDPが19年度水準を上回った。足元では供給過剰感が強まるものの、中長期では需要が増える見込み。経済安全保障の観点から世界的なサプライチェーン(供給網)見直しが進む中、国内生産の重要性が増しており、追い風が強まっている。

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熊本県菊陽町で建設が進む台湾積体電路製造(TSMC)新工場

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 東京財団政策研究所の山沢成康主席研究員(跡見学園女子大学教授)が推計した都道府県別の月次GDPを基に19年度と21年度の水準を算出し、比較した。最も回復したのは三重県の106%で、コロナ禍前水準を超えたのは計8県だった。上位自治体はいずれも製造業の活動状況を表す鉱工業生産指数が上昇した。21世紀版「企業城下町」に向けた自治体の知恵比べが加速する。
 三重県は電子部品・デバイス工業の伸びが全体を押し上げた。00年に「シリコンバレー構想」をうたい、集積を目指して大口設備投資にも補助する仕組みを導入。東芝のNAND型フラッシュメモリー(現在はキオクシアホールディングス)や富士通の300ミリウエハー(現在は台湾UMC傘下)の拠点を呼び込んだ。
 22年以降、半導体の需給バランスは消費者向け電化製品やデータセンター投資の減速などで崩れてきたが、一方で自動車や産業向けはなお逼迫する。信金中央金庫地域・中小企業研究所の角田匠上席主任研究員は「半導体は製品サイクルに起因する短期変動があるものの需要拡大が続くことは間違いない」と指摘する。経済産業省によると世界の半導体市場は20年の50兆円から30年に100兆円へと倍増する見通しだ。
 産業の裾野が広いことも地域を浮上させる条件となる。回復率2位の山梨県(104%)は東京エレクトロンなど関連産業が主導した。韮崎市に拠点を構える同社の22年3月期の半導体製造装置売上高は前期比48%増えた。17年度以降、同県に立地した半導体関連企業は24社に上る。

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 今、各地域が期待をかけるのがサプライチェーン見直しや国内への生産回帰に伴う新規の大規模投資。21年には半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が1兆円規模の工場を熊本県菊陽町に建設することを決めた。九州フィナンシャルグループの笠原慶久社長は地域への経済波及効果を「10年で4兆3000億円程度」と試算する。
 22年11月には次世代半導体の国産化を目指し、トヨタ自動車やNTTなど8社が出資した新会社「Rapidus(ラピダス)」が本格稼働した。10年間で5兆円を設備投資などに充てる計画で、各自治体が熱視線を送る。
 北海道の鈴木直道知事は16日、ラピダス本社(東京・千代田)を訪問し、工場を北海道に建設するよう要請した。鈴木知事は「他の県からも強力なアピールが行われている」と明かす。 
 日本貿易振興機構(JETRO)によると、世界の対内直接投資額は21年に1兆5823億ドル。日本向けは、このうち1.6%にすぎない。米国(23.2%)、中国(11.4%)など、上位国に大きく水をあけられている。一方で半導体の製造拠点として知られる韓国と、福岡市の製造業(一般工)の月額給与はほぼ同じ水準で並ぶ。円安傾向で対日投資への「割安感」も増す。巨大投資を国内の各地域に呼び込む条件はそろいつつある。

【北朝鮮ミサイルはICBM級、EEZ内に落下 防衛省発表】
 18日の日経速報メールは次の通り報じた。
 防衛省は18日、北朝鮮が午後5時21分ごろに大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の弾道ミサイル1発を発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと推定されると発表した。
 およそ66分間飛び、午後6時27分ごろに北海道の渡島大島の西200キロメートル程度の日本海に落ちた。飛距離は900キロメートルほど、最高高度はおよそ5700キロメートル程度と推定している。
 岸田首相は18日、北朝鮮の弾道ミサイル発射をうけ、国家安全保障会議(NSC)を開くと明らかにした。首相官邸で記者団に語った。

【北朝鮮がICBM級発射、日本のEEZ内落下か 米全土射程】
 同じ18日の日経速報メールは次のように伝えた。
 防衛省は18日、北朝鮮が午後5時21分ごろに大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の弾道ミサイル1発を発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと推定されると発表した。およそ66分間飛び、午後6時27分ごろに北海道の渡島大島の西200キロメートル程度の日本海に落ちた。

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 浜田靖一防衛相は同日記者団に、通常より高い高度で飛ぶ「ロフテッド軌道」だったとの認識を示した。射程距離は1万4千キロメートルを超え米国全土が入ると説明した。
 首都平壌近郊から撃ち、飛距離は900キロメートルほど、最高高度は5700キロメートル程度と推定している。北朝鮮によるICBM級の発射は可能性があるものや推定も含めると2022年11月以来で11回目となる。前回もEEZ内に落下した。

【米国、中国の対ロシア支援に警告 対抗措置辞さず】
 19日の日経ニュースメール【ミュンヘン=中村亮、北京=羽田野主】によると、ブリンケン米国務長官は18日、中国との外交トップ会談でロシアへの軍事支援に対抗措置を講じる構えを見せた。ウクライナ東部でロシア軍の大規模攻勢を後押ししかねないとの危機感がある。米中は対話維持に一歩進んだが、偶発的衝突のリスクはくすぶる。
 ブリンケン氏はドイツ南部ミュンヘンで、中国外交担当トップの王毅(ワン・イー)氏と会談した。中国からロシアへの「物資援助」や「体系的な制裁逃れ」への支援に言及し、実行すれば「報い」を受けると断言した。物資援助は軍事支援を意味し、対抗措置をちらつかせて対ロシア支援を控えるよう迫った。

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 会談に先立ち、ハリス米副大統領もミュンヘン安全保障会議で演説して中国にクギを刺した。演説と司会者との質疑応答を合わせて約30分間の登壇で中国に唯一触れたのは中ロ協力の深化に懸念を示す場面だった。
 「殺傷力のある(軍事)支援につながる全ての措置は侵攻を後押しし、殺害を継続させてルールに基づく秩序を弱体化させる」と語り、中国に懸念を示した。
 ブリンケン氏も王氏との会談後に米NBCテレビのインタビューで「我々は中国がロシアに殺傷力のある支援の供与を検討していることを非常に懸念している」と述べた。
 一方、王氏は会談で「我々は米国が中ロ関係に対して口を出したり、圧力を加えたりすることを受け入れたことはない」と述べた。中国はウクライナ侵攻についてロシア寄りの立場を示しつつ、米欧との関係に配慮して軍事支援に慎重だった。
 中国の支援はロシア軍を勢いづけるリスクがある。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は13日、ロシアがウクライナで大規模な軍事作戦を始めたと言及した。米欧からウクライナへの主力戦車の引き渡しは時間がかかっている。米欧の弾薬在庫は減少し、ウクライナへの供与の余力が乏しくなりつつある。
 アメリカン・エンタープライズ研究所のザック・クーパー上級研究員は、バイデン政権が中ロ協力に再び関心が集まるようにして中国に対ロシア支援をためらわせようとしたとみる。王氏はロシアを近く訪問してプーチン大統領と会談する見通しだ。ロシアへの支援が議題にのぼる公算が大きい。
 偵察気球の問題で批判を浴びた習近平(シー・ジンピン)指導部はロシアとの関係を維持しつつ、米国に譲歩を迫る戦術を描いている。中国の軍事関係筋は「ウクライナを巡る情勢が好転せず、米国は焦っている。中国の協力をとりつけようとしている」とみる。
 王氏とブリンケン氏との会談は気球問題で孤立を深める習指導部にとって渡りに船だった。王氏のロシア訪問では、同国が要請する習氏の訪ロ日程が議題になる可能性がある。ロシアとの接近をみせて、米国を引き寄せる狙いがある。
 ジャーマン・マーシャル財団のボニー・グレイザー氏は会談に関し「米国の申し入れを断ることは中国の利益ではなかった」と指摘した。米国が中ロ接近に懸念を示したこともあり「(中国は会談を断れば)欧州から厳しい批判にさらされていた」と語った。会談を受け入れて批判にさらされるリスクを避けたと分析した。
 バイデン政権は外交トップ会談の実現に腐心した。会談に先立つ演説で王氏は米軍が4日に中国の気球を撃墜したことに関し「国際的な慣習に違反する武力行使の乱用だ」と糾弾した。その後に登壇したハリス氏は米中関係や気球問題に触れず、目立った対中批判を控えた。外交トップ会談の地ならしに徹したのは明白だった。
 偶発的衝突のリスクはくすぶる。クーパー氏は「米中の対話ルートは良好だとは思えない」と話す。オースティン米国防長官は気球撃墜の直後に中国の魏鳳和国防相に電話協議を求めたが中国が拒んだ。クーパー氏は「一つの気球を巡る危機を対処できなければ台湾海峡の情勢悪化などもっと深刻な課題に対処できると思えない」と述べた。
 米議員団の台湾訪問計画が相次ぎ、バイデン政権は台湾の自衛力向上を支援する立場を堅持している。台湾に関して内政問題だとする中国と隔たりが埋まる可能性はほぼなく、米中対立は続く。
 バイデン大統領は16日、気球問題をめぐり習氏と直接協議する意向を示した。18日の会談で首脳協議を調整した可能性があり、実現するかどうかが当面の焦点になる。

【戻らぬ働き手1000万人 先進国のコロナ前比、求人とずれ】
 20日の日経ニュースメールは次のように報じた。
 先進国で働く人が増えていない。就業者と求職中の人を合わせた割合が低下し、最新推計で先進国では働いていない人が新型コロナウイルス禍前より1千万人増えた。企業が求める人材とのミスマッチが指摘される。人手不足は人材確保のための賃金上昇を通じ、インフレ圧力になる。柔軟な働き方と生産性の高い産業への労働移動が国の成長を左右する。
 コロナの感染拡大は行動制限につながり、多くの人がやむを得ず仕事を失った。厳しい制限がなくなれば、職を離れた人が次々に職場に戻ってくる。こんな仮説を覆すデータが増えている。
 代表例が、15歳以上人口に占める働いている人と求職者の割合を示す「労働参加率」の動きだ。経済協力開発機構(OECD)の統計によると、米国は2022年10〜12月時点で62.2%と19年の同じ期間を1.1ポイント下回る。英国とドイツも22年7〜9月に19年10〜12月を下回った。

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 仕事に就かず職探しもしていない「非労働力人口」も増加傾向にある。労働政策研究・研修機構の調べで、米国は22年10〜12月で5384万人と19年同期より101万人多い。英国も22年7〜9月で900万人と19年10〜12月を52万人上回る。
 ニッセイ基礎研究所によると、OECD加盟国全体での非労働力人口は22年夏時点で4.4億人とコロナ禍前より1千万人ほど多い。
 「労働供給の減少は一部の国ではなく、主要国で共通している」(ニッセイ基礎研の高山武士氏)。各国で経済活動の再開に対し、働き手の供給が追いついていない。人手不足はインフレを長引かせかねない。
 米国では失業者に手厚い給付があった。経済の再開で仕事を選びやすくなったことも、働き手が職場にすぐ戻らない要因となる。コロナ禍前に月300万人台だった自発的な離職者数(非農業部門、季節調整値)は足元で同400万人を超える。
 コロナ禍での就労環境の変化に加え、中期的要因として指摘されるのが働く人の意識変化だ。三菱総合研究所の田中嵩大氏は「働き手が求める条件や環境と、企業の要望にずれがある」とみる。
 求人情報サービスの米フレックス・ジョブズが専門職約4千人を対象にした22年の調査で、高賃金よりワークライフバランスを選ぶ人は63%に達した。大手会計事務所の英アーンスト・アンド・ヤングが22年に実施した22カ国・地域の約1万7千人への調査では、43%が1年以内に離職する可能性が高いと答えた。
 企業と働き手のパワーバランスが後者に傾く「グレート・レジグネーション(大退職時代)」は求職と求人のずれを生む。自由な働き方を求める人と企業の求める人材像がかみ合わない。

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働く人の回復は日本も鈍い

 高いスキルを求めるIT(情報技術)分野で顕著になる。田中氏によると、米国はコロナ禍で情報や金融などの国内総生産(GDP)は伸び、雇用者の増加は限定的だった。スキルのミスマッチが雇用増を阻む。
 働く人の回復は日本も鈍い。15歳以上のうち働く人と職探しする人を合わせた「労働力人口」は22年平均で6902万人。19年を10万人下回った。就業率は65歳以上で上がり、20〜50代前半までの男性で下がっている。
 人材のミスマッチが働き手の回復の障害になっている可能性がある。総務省の労働力調査で月あたりの平均値を見ると、22年の転職等希望者は968万人と19年比で約15%増えた。男性の転職希望の伸び率は20%超だ。転職者は14%減の303万人だった。
 パーソルキャリアの転職支援サービスのdoda(デューダ)によると、ITエンジニアの転職希望者に対する求人倍率は11倍と、3年で約2倍に高まった。専門スキルが必要で、求人数の伸びに求職者が追いつかない。
 人材を必要とする産業に働き手が移らなければ、成長の足かせになる。リスキリング(学び直し)で働く人のスキルを磨き、人材の移動を促す政策支援が重要になる。(中村結、雇用エディター 松井基一)

【北朝鮮、短距離弾道ミサイル2発 「戦術核の手段」主張】
 20日の日経速報メールは次のように報じた。

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 北朝鮮は20日午前、日本海に向けて「戦術核攻撃の手段である超大型放射砲」を2発発射したと発表した。朝鮮中央通信が伝えた。北朝鮮による弾道ミサイル発射は18日以来で2023年に入って3回目となる。
 韓国軍や日本の防衛省は同日、北朝鮮による短距離弾道ミサイル2発の発射を探知したと明らかにした。
 韓国軍によると北朝鮮は午前7時〜7時11分の間に平安南道から日本海に向けて撃った。防衛省によると落下したのは朝鮮半島東側で日本の排他的経済水域(EEZ)外だと推定した。航空機や船舶などの被害は確認されていない。
 防衛省は1発目は午前6時59分に発射され、飛距離は400キロメートル、最高高度は100キロメートル程度と推定した。2発目は同7時10分ごろに発射され、350キロメートルほど飛び、最高高度は50キロメートルほどだった。
 北朝鮮側の公表内容によると午前7時から「放射砲射撃訓練」をした。「600ミリメートル放射砲を動員し、395キロメートルと337キロメートル射程の仮想標的を設定した」と説明した。
 使用した兵器について「戦術核攻撃手段」と記述した。「4発の爆発威力で敵の作戦飛行場の機能をまひさせることができる」と主張した。韓国の空軍基地の打撃を想定した訓練だったとみられる。

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平壌で行われた口径600ミリの超大型放射砲の「贈呈式」(2022年12月)=朝鮮中央通信・共同

 米韓が19日に戦略爆撃機や戦闘機を動員した共同訓練を実施したことに言及した。「軍事的緊張を高めている」と触れて発射を命じたと明らかにした。
 岸田文雄首相は午前7時4分に関係省庁に(1)情報収集・分析に全力を挙げ国民に迅速・的確に情報提供する(2)航空機や船舶などの安全確認を徹底する(3)不測の事態に備え万全の態勢をとる――の3点を指示した。
 米国と韓国は18日の発射を受けて朝鮮半島周辺で戦略爆撃機を投入して共同訓練した。北朝鮮は米韓に対抗してミサイルを追加発射した可能性がある。自衛隊と米軍も19日、日本海上空で戦闘機と爆撃機が共同訓練した。
 北朝鮮は22年に相次ぎ弾道ミサイルを発射した。韓国軍が探知した分も含めると年間の過去最多となる69発を撃った。
 米韓は22日にワシントンで北朝鮮の核兵器使用に対処するための机上演習をする。米国が核兵器を含む戦力で同盟国を守る「拡大抑止」を巡る連携を確認する方針だ。春には大規模な野外訓練を含む合同軍事演習も計画する。
 北朝鮮は米韓の軍事協力の動きを口実に、自国の能力強化のためのミサイル発射訓練を繰り返す可能性がある。

【習氏は「次のプーチン」か 中国を追い詰め過ぎるリスク】
 20日の日経ニュースメールは次のように報じた。
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ロシアとの合同軍事演習に向かう中国海軍の艦船(2022年12月、中国浙江省舟山市)=新華社・共同
 
 過ちを認めない中国共産党にしてはめずらしく、内部で「あれは失敗だった」との議論があるそうだ。かつて日本に発動したレアアース(希土類)の禁輸である。
 2010年9月、沖縄県の尖閣諸島沖で中国の漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした事件が発端だ。日本側が船長らを逮捕すると、中国はレアアースの対日輸出を止める報復に出た。
 レアアースが手に入らなくなれば、日本のメーカーはハイブリッド車や省エネ性能にすぐれたエアコンをつくれなくなる。中国の脅しにあわてた日本は、船長の釈放に追い込まれた。

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自ら下げた虎の子の価値
 中国は日本に勝ったのか。必ずしもそうとは言えない。
 事件に懲りた日本は、レアアースをあまり使わずに済む技術の開発を急いだ。中国への依存を減らすために、官民を挙げて調達先を米国などに広げた。
 成果は数字が物語る。米欧の主要国も「中国離れ」に走り、レアアースの採掘に占める中国のシェアはこの10年あまりで9割から6割に落ちた。中国は日本を追い詰め過ぎ、虎の子の価値を自ら下げてしまったのだ。  
 孫子の兵法に「囲師には必ず闕(か)く」という一節がある。敵を包囲しても、どこかに逃げ道を用意せよ、という意味だ。
 追い詰められ、死に物狂いの敵は何をしでかすかわからない。だから、抜け穴を残しておいたほうが戦いを有利に運べる。中国人はそんなふうに考える。
 米国人はどちらかといえば逆だ。敵を封じ込め、とことんたたく戦い方に傾きやすい。
 22年10月に強化した半導体の対中規制が象徴的だ。バイデン政権は人工知能(AI)などに必要な最先端の技術が中国に渡らないように、製造装置の輸出や専門人材の行き来まで禁じた。
 それだけではない。製造装置で強みを持つ日本やオランダに、同じ規制を中国にかけるように迫った。まさに寸分のすきもない包囲網を築こうとしている。
 台湾統一をめざす習近平国家主席は、威信をかけて軍のデジタル化を進める。西側が結束し、技術を渡さないようにする努力は、中国を抑止するために欠かせない。
「時間がたつほど不利に」
 一方で、副作用も覚悟する必要がある。西側とのデカップリング(分断)が深まれば、中国は必死になって独自技術の開発にまい進するからだ。
 前例がある。米国の主導で11年に完成した国際宇宙ステーション(ISS)のプロジェクトに、中国は参加を強く希望した。日欧だけでなくロシアも名を連ねるISSのノウハウが、どうしても欲しかったからだ。
 技術の流出をおそれた米国はそれを拒んだ。仲間に入れてもらえなかった中国は、軍主導で独自の宇宙開発に突き進む。いまや米国を脅かすほどの力をつけた。
 「科学技術で自立自強の歩みを速め、外国に首根っこを押さえられている問題を解決しなければならない」。習氏は1月末、党の学習会でこうハッパをかけた。
 自力で立ち上がり、強くなる。「自立自強」は米国との対立が激しくなるなか、習氏が好んで使うようになったスローガンだ。中国が半導体で独自の技術を磨けば、西側の新たな脅威になる。
 中国をどこまで追い込むべきか。人口学者のエマニュエル・トッド氏は著書で次のように指摘する。「(中国の)将来の人口減少と国力衰退は火を見るより明らかで、単に待てばいい」(堀茂樹訳)
 世界最大だった中国の人口は22年末、61年ぶりに前年末を下回り、インドに抜かれたもようだ。働き手はこれからどんどん減り、成長の天井がみえてくる。
 日本経済研究センターは昨年末、30年代とみていた名目国内総生産(GDP)の米中逆転がもう起きないとの試算をまとめた。
 「習氏は時間がたてばたつほど自分たちが不利になるとわかっている」。こう分析するのは中国政治に詳しい鈴木隆・愛知県立大准教授だ。米国に追いつけないどころか、インドに抜かれる不安を感じ始めているという。

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ロシアは国際秩序を破壊
 焦る習氏をやみくもに追い詰めれば、台湾問題などでまちがった判断に導かないか。気になるのはそこだ。安倍晋三元首相が回顧録で「強烈なリアリスト」と評した習氏が、非現実的な強硬策に出るリスクである。
 冷戦が終わり、北大西洋条約機構(NATO)が東方拡大に動き始めた1997年2月、米外交官のジョージ・ケナン氏は米紙でそれを「致命的な誤り」と断じた。
 かつてソ連の封じ込めを構想したこの戦略家が危惧したのは、追い詰められたロシアが国際秩序の破壊者になる未来だ。 
 ケナン氏の懸念は四半世紀をへて現実になった。リアリストと評されてきたプーチン大統領が、無謀なウクライナ侵略に踏み出してまもなく1年がたつ。
 4日に米軍が中国の偵察気球を撃墜し、改善の兆しがあった米中関係は再び緊迫する。力での現状変更を試みる中国に、国際社会は結束して対抗するしかない。
 ただ、政治と経済の両面から中国を追い詰め過ぎるのは危うい。
 それは米国もわかっている。「米中の競争が紛争に発展しないよう責任を持って管理する。習氏と話すつもりだ」。バイデン大統領は16日の演説でこう訴えた。
 習氏を「次のプーチン」にしてはならない。


 この間、以下の録画を観ることができた。(1)BS6報道1930「激戦地ハプムト陥落?日本人が目撃した現実」1月30日。 (2)BS6報道1930「論客女性議員、男ばかりの政治の弊害、”既得権益”どう壊す」31日。 (3)BS6報道1930「ウクライナ戦の実態、欧米からの支援の障壁に」2月1日。 (4)BS6報道1930「電気料金値上げの衝撃、脱ロシアが暮らし直撃、危機の裏で笑う国も」2日。 (5)BS6報道1930「揺れるNatoの結束…カギ握るトルコ大統領 スイスが中立脱却?」3日。 (6)NHK週刊ワールドニュース(1月30日~2月3日)5日ワイルドライフ。 (7)報道1930「「アフリカで”影響力拡大” プーチン氏の狙い 軍事支援・情報収集も」6日。 (8)BS6報道1930「ウクライナが展開する”魔法使いの戦争” カギ握る米AI企業は」7日。 (9)NHKワイルドライフ オーストラリア 巨岩のロストワールド 未知の生命を発見せよ!」7日。 (10)BS6報道1930「北朝鮮の餓死続出? 軍記念日パレードは後継? 娘再登場の意味」9日。 (11)BS6報道1930「人類滅亡だけがロシアを止める…プーチン氏の頭脳を独占取材」10日。 (12)NHKズームバックオチアイ「落合陽一、オードリータンについに会う」12日。 (13)週刊ワールドニュース(6日~10日)12日。 (14)NHK総合「食の革命」13日。 (14)BS6報道1930「LGBT法案と保守派 「差別許されない」に自民から異論のワケ」13日。 (15)ロシア軍大攻勢の全貌、戦況左右H0では速道、プーチン氏狙う戦果は」14日。 (16)BS6報道1930「ロシアがミサイル製造継続、制裁下でなぜ?…西側製品入手の抜け道」15日。 (17)BS6報道1930「米中気球騒動拡大 豪州では中国製監視カメラ排除へ」15日。 (18)BS6報道1930「ウクライナに増強防衛兵器は供与されるのか」17日。 (19)NHKスペシャル「ロシアの頭脳が流出する~世界のIT産業は変わるのか~」18日。
プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
前園長(2012年8月~2023年3月)

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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