人類最強の敵=新型コロナウィルス(60)
前回の(59)は2月21日午後に掲載を終えた。まず書き洩らした記事を一つ挙げておきたい。しばらく国際情勢等を中心に取り上げてきたが、医療技術の新展開にも関心を払うためである。
【がん粒子線治療、日本から世界へ 「第5の選択肢」脚光】
2月14日未明の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・日本発の粒子線治療。がん治療「第5の選択肢」と注目
・ホウ素と中性子の核反応でがん細胞破壊。患者負担軽く
・進化する治療技術。闘病と仕事の両立に変わらぬ課題
「副作用も少なく、治療を受けてよかった」。兵庫県に住む佐々木加世子(仮名、70代)は、2019年に口腔(こうくう)がんと診断された。手術で取り切れず抗がん剤治療を受けたが再発。食事も十分にとれなくなった。体調が悪化する中、主治医に勧められたのが「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」だった。
22年1月、関西BNCT共同医療センター(大阪府高槻市)で治療を受けると腫瘍は2〜3カ月で消えた。その後は再発せず通院しながら経過観察を続ける。食欲も戻り「リハビリや体力づくりのウオーキングに精を出している」とほほ笑む。
BNCTは世界の最先端をゆく日本発の粒子線治療技術だ。がん細胞がホウ素を取り込む性質を利用し、ホウ素と中性子の核反応でがん細胞を破壊する。治療は1時間弱で基本的に1回ですむ。
高い効果と患者負担の軽さから従来の手術や放射線、抗がん剤、免疫療法に続く、がん治療の「第5の選択肢」として注目される。近年は米国や英国、アルゼンチンなど各国で開発が進み、日本のシステムが中国に導入されることも決まった。
だが実用化までの道は平たんではなかった。BNCTは当初、中性子を生み出すために原子炉を使っていた。原子炉の利用は核物理学などが中心で「(医療用に使えるのは)1年でわずか4〜5日。予算も限られ物理学者や医師、企業研究者が知恵を絞る毎日だった」。大阪医科薬科大学BNCT共同臨床研究所所長の小野公二は振り返る。
研究は米国で1950年代に始まり、京都大学は70年代に参入。91年に京大にいた小野が引き継いだが「成果の見えない地味な日々が続いた」。
転機は2001年に訪れた。「打つ手がないがん患者がいる」。大阪大学から連絡が入った。耳の近くの腫瘍を切除し放射線治療を施したものの再発。有効な抗がん剤もなかった。「何とかできないか」。小野はBNCTの利用手続きを急いだ。
粒子線をあてると、腫瘍は目に見えて縮小した。患者は日常生活を送れるまでに回復。その経緯は国際学会で発表され、問い合わせが相次いだ。
小野は、多くの患者が利用できるよう医療機器としての実用化を目指した。だが厚生労働省の回答は「ノー」。原子炉は医療機器として認められないとの理由だった。
そこで考えたのが原子炉のかわりに加速器を使うアイデアだ。住友重機械工業に持ちかけ、07年から共同研究を開始。20年に世界で初めて薬事承認を取得した。現在は大阪府と福島県の2カ所で保険適用の治療が受けられる。
小野が見据えるのは次のステップだ。「出力をあげれば照射時間を短縮できる」「薬剤を改良し副作用を軽くできれば」。患者の負担軽減に向けたアイデアは尽きない。
がんを巡る治療技術が急速に進化する中、変わらぬ課題もある。治療と仕事の両立だ。厚生労働省がまとめた「全国がん登録」(2019年)によると、1年間にがんに罹患(りかん)した患者は約100万人。その約4分の1は20〜64歳だ。国立がん研究センターによると、仕事を持つがん患者の約5割が休職・休業し、約2割は退職・廃業を迫られている。
闘病と仕事の両立を支援する制度を大幅に拡充したのが伊藤忠商事だ。保険適用外の先進医療を自己負担なしで受けられるほか、社員が死亡しても子どもの教育費は大学院修了まで補助する。岡藤正広会長は「就職先は人生を託すところ。業績だけでなく社員の健康を気遣うバランスのとれた企業を目指す」と語る。
きっかけは岡藤が17年、がん闘病中の社員から受け取ったメールにある。休職制度などへの謝意とともに「伊藤忠が一番いい会社です」とあった。だが数週間後に社員は帰らぬ人となる。
「社員ががんになったら自分の家族が闘病しているつもりで臨みます」。岡藤は全社員にメッセージを送り支援制度を拡充した。現在、年約10人の社員が利用する。「いつどうなるか分からない。皆、あすは我が身だ」。岡藤の偽らざる思いだ。(敬称略)
不治の病とされたがん。技術進化で治療は大きく変わりつつある。研究機関や企業、患者の最前線の動きを追った。
【バイデン大統領、ウクライナを電撃訪問 侵攻後初】
ロシアによるウクライナ侵攻から24日で一年になるのを目前に、ビッグニュースが飛び込んできた。
2月20日、日経ニュースメール【リビウ(ウクライナ西部)=田中孝幸】によると、バイデン米大統領が20日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を予告なしに訪問し、同国のゼレンスキー大統領と会談した。ロシアの侵攻開始から1年を前に「世界各国が連合を組む」と支援継続に向けた国際社会の結束を強調した。バイデン氏のウクライナ訪問は2022年2月のロシアによる侵攻開始以降、初となる。
この記事のポイント
・ロシアの侵攻から1年、ウクライナ支援揺るがず
・「世界各国が連合」、民主主義陣営の結束を強調
・5億ドルの軍事支援や対ロシア制裁強化を表明
米ホワイトハウスが発表した。バイデン氏はウクライナに新たに5億ドル(約670億円)規模の軍事支援を実施すると表明。対ロシア制裁を強化する考えも示した。
両首脳はキーウの大統領府で会談後に共同会見した。追加の軍事支援でロシアの空爆にさらされるウクライナの都市の防空能力を強化する考えを明らかにした。バイデン氏は「プーチン(ロシア大統領)の征服は失敗している」と強調した。
今回のウクライナ訪問には、民主主義陣営のリーダーとして、権威主義陣営との戦いにおける結束を内外に示す狙いがある。ロシアによる侵攻が長期化し、各国の支援姿勢には温度差が出始めた。米国でも野党・共和党でウクライナ支援予算の見直し論が浮上している。
バイデン氏は訪問の目的を「ウクライナの民主主義、主権、領土保全に対する揺るぎない関与を再確認する」ことだと説明。侵攻から1年を前に「ウクライナは立ち向かっている。民主主義は立ち向かっている。米国ではアメリカ人があなたとともに立っている」と連帯を表明した。
ゼレンスキー氏は「ウクライナが世界の自由のために戦っているこの最も困難な時期に、ウクライナにとって最も重要な訪問になった」と謝意を表明。「長射程の兵器など、未供与だがウクライナに供給されるかもしれない兵器について話した」と明らかにした。
5億ドルの軍事支援には対戦車ミサイルや榴弾砲などが含まれる。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問によると、バイデン氏は「ロシアは確実に敗北するだろう。ウクライナは必要なすべての兵器を手に入れることになる」と語った。
現地の欧米の治安関係者によると、バイデン氏は20日午前8時(日本時間午後3時)ごろキーウに到着し、5時間程度滞在した後に隣国ポーランドに向かった。
米国家安全保障会議(NSC)当局者によるとバイデン氏のキーウ訪問は17日に最終決定した。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は20日、記者団にバイデン氏のウクライナ訪問についてロシアに事前通告していたと明らかにした。
バイデン氏はウクライナ侵攻開始から1年を前に、ポーランドの首都ワルシャワを訪問することを表明していた。21日にはワルシャワでポーランドのドゥダ大統領と会談するほか、ウクライナ侵攻への対応を巡る演説を行う予定だ。
主要7カ国(G7)ではウクライナ侵攻後、フランスやドイツ、英国、イタリア、カナダの各首脳がキーウを訪問した。
【松本零士さん死去 85歳 「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」】
20日の毎日新聞は次のように報じた。

漫画家の松本零士さん=東京都練馬区で2015年2月2日午後4時59分、矢頭智剛撮影
「銀河鉄道999(スリーナイン)」「宇宙戦艦ヤマト」などで知られ、SFアニメブームの先駆けとなった漫画家の松本零士(まつもと・れいじ、本名・晟=あきら)さんが13日、急性心不全のため死去した。85歳。葬儀は近親者で営んだ。お別れの会を後日開く。喪主は妻で漫画家の牧美也子(まき・みやこ)さん。
福岡県久留米市生まれ。小学生から高校生時代を北九州市(旧小倉市)で過ごした。高校時代にデビューし、毎日小学生新聞でも連載した。卒業後に上京し、さえない若者の群像を描いた「男おいどん」(1971年)が出世作になった。
74年からアニメ「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの制作に携わり、77年に「銀河鉄道999」の連載をスタート。永遠の命を求める少年が謎の女性に導かれ、銀河を旅する物語はテレビアニメ化もされ、大反響を呼んだ。「宇宙海賊キャプテンハーロック」「クイーンエメラルダス」など、宇宙を舞台にした壮大なロマンが相次いでヒット。SF漫画家としての地位を不動のものにした。
日本宇宙少年団の理事長なども歴任。2001年紫綬褒章、10年旭日小綬章。12年にはフランスの芸術文化勲章シュバリエを受章した。19年11月、イベント参加のために訪れたイタリア北部のトリノで体調を崩し、脳卒中の疑いで入院したが、帰国後に回復。その後はツイッターで近況を発信するなどしていた。
【バイデン氏、17日にキーウ訪問決断 ロシアへ事前通告】
21日未明の日経ニュースメール【ワルシャワ=中村亮】によると、バイデン米大統領は20日のウクライナ訪問を数カ月前から極秘に計画してきた。不測の事態への緊急対応計画を練り、17日に訪問を決断した。ロシア側に事前通告したが訪問中に防空サイレンが鳴り響き、安全へのリスクを物語った。
ジョン・フィナー大統領副補佐官は20日、記者団にウクライナの首都キーウ(キエフ)訪問に関し、バイデン氏に同行したのは「極めて少数だった」と説明した。安全に配慮し、側近の数人と医療チーム、カメラマン、警護隊に限定した。
ホワイトハウスや国防総省、シークレットサービス(大統領警護隊)、情報機関のごく一部で数カ月前から訪問計画や緊急時の対応計画を作成した。バイデン氏は17日に安全保障担当の高官らと協議し、キーウ訪問を最終決定した。
サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)はウクライナ訪問をロシアに事前通告していたと明らかにした。「衝突回避の目的だった」と話し、ロシア側の反応に関してはコメントを控えた。
米大統領は米軍が駐留するアフガニスタンやイラクなどを予告せずに訪問してきたが、ウクライナに米軍は駐留していないため治安を管理しにくい。バイデン政権は最悪の事態を避けるためロシアへ事前通告が必要だと判断したとみられる。

電車の中を歩くバイデン氏=ロイター
ホワイトハウスは同行記者を通常の10人以上から2人に限定した。同行記者に送った訪問予定を記したメールの件名は「ゴルフ大会の到着案内」と偽装。首都ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地で記者から携帯電話を回収し、情報漏洩に細心の注意を払った。
バイデン氏は米東部時間19日午前4時15分(日本時間19日午後6時15分)に同空軍基地を出発した。ドイツのラムシュタイン空軍基地での給油を経て、ポーランド南東部のジェシュフ・ヤションカ空港に到着した。そこから車で1時間の距離にあるウクライナ国境付近の駅に向かった。
電車に乗り換えて暗闇のなかを約10時間かけてキーウに移動し、現地時間20日午前8時(日本時間20日午後3時)ごろに着いた。バイデン氏は80歳と最高齢の米大統領で、米紙ニューヨーク・タイムズは「骨の折れる旅路だった」と指摘した。
バイデン氏はキーウ市内でゼレンスキー氏と握手を交わすと、記者団からキーウ訪問の意義を問われた。今回が8回目の訪問だと触れて「来るたびにその意義は大きくなっている」と強調した。「(米国は)ここにいる。我々は離れない」と語り、ウクライナとの連帯をアピールした。キーウ滞在は約5時間だった。
サリバン氏は記者団に対し、会談について「今後数カ月の戦闘や戦闘で勝利するために必要な能力について議論した」と語った。国防総省は20日、ウクライナへ4億6000万ドル(約620億円)相当の武器を追加供与すると発表した。高機動ロケット砲システム「ハイマース」に搭載する弾薬や防空偵察レーダーを含んでいる。

バイデン氏は電車に乗り換えて暗闇のなかを約10時間かけてキーウに移動した=ロイター
バイデン氏のキーウ滞在中にも防空警報が鳴り響いた。隣国ベラルーシからロシア軍の戦闘機が飛び立ったためという。ベラルーシからミサイルが発射されると20分以内にキーウへ届く距離とされ、ウクライナが戦時下であることを象徴した。CNNテレビによると、ウクライナ東部では20日も断続的にロシアの砲撃が続いた。
バイデン氏は再び電車でポーランド国境まで戻り、首都ワルシャワに着いたのは現地時間20日午後11時10分(日本時間21日午前7時10分)ごろだった。
バイデン氏は21日、ワルシャワで侵攻をめぐる包括演説に臨む。侵攻から1年の節目を控え、ウクライナ支援の機運を再び盛り上げ、民主主義陣営の結束を固める狙いがある。バイデン氏は世界が民主主義と強権主義の競争に直面していると公言する。ウクライナ侵攻の結末は民主主義の行方も左右すると位置づける。

バイデン氏㊧は約19時間かけてキーウに着いた(20日、キーウ)=ロイター
【住友商事、EV用レアアースで脱中国 米や東南アに供給網】
21日の日経ニュースメールは次のように報じた。

MPマテリアルズが保有するマウンテンパス鉱山(米カリフォルニア州)
住友商事は電気自動車(EV)向けのレアアース(希土類)で、中国抜きのサプライチェーン(供給網)を構築する。これまで精錬などの工程を中国に依存してきたが、米国と東南アジアに切り替える。中国はレアアースの精錬で約9割の世界シェアを握る。日本でも地政学リスクへの意識が高まるなか、中国に依存しすぎない供給網の整備が加速してきた。
住商は米国のレアアースメーカー、MPマテリアルズからEVや風力発電機向けの永久磁石に必要なネオジムとプラセオジムの供給を受けている。これまでは住商が中国の精錬メーカーに販売し、精錬後の製品を中国メーカーが日本に輸出してきた。

今後は中国メーカーへの販売を順次縮小し、精錬やレアアースごとの分離までの工程をMPマテリアルズが担う。住商はこの後に買い取り、ベトナムやフィリピンなど東南アジアの複数の企業に、分離後のメタル化工程を委託する。
メタル化後の加工品は日系の永久磁石メーカーに販売する。販売量は計年間3000トンと日本のネオジムとプラセオジムの総需要の約3割に相当する。MPマテリアルズとは対日販売の総代理店契約を結び、一連の供給網組み替えは7月ごろに実施する。MPマテリアルズが米政府の補助金などを活用して精錬や分離の工程を担うため、供給網全体での製造コストは中国が工程を担うケースと大差はない。
米国地質研究所などによると、2022年時点で中国はレアアースの生産で約7割、精錬で約9割の世界シェアを占める。米中対立の懸念が高まるなか、米バイデン政権は自国内でレアアースの供給網強化を掲げている。
日本でも供給網内の中国依存度を下げ、有事の際の悪影響を最低限に食い止めようとする動きが相次ぐ。安川電機は27年に家電に使われるインバーター部品の新工場を福岡県行橋市に設け、中国などに依存してきた工程を内製化する。ダイキン工業は23年度中に、有事に中国製部品が無くてもエアコンを生産できる供給網を構築する。(柘植衛)
【プーチン氏演説「敗戦あり得ない」 ウクライナ侵攻1年】
21日、日経ニュースメール【ワルシャワ=中村亮】によると、ロシアのプーチン大統領は21日、「特別軍事作戦」を柱とする年次教書演説に臨んだ。ウクライナ侵攻から1年の節目が近づき、国民に作戦への協力を求めた。バイデン米大統領はウクライナへの長期支援を確約しており、米ロ対立は激しさを増す。
プーチン氏は21日正午(日本時間午後6時)からモスクワのクレムリン近くの会場で侵攻後初となる年次教書演説を行った。
ウクライナでの特別軍事作戦についてプーチン氏は、ロシアの安全保障に関する提案は欧米諸国に否定されたと述べた。「戦争を始めたのは西側諸国で、ロシアはそれを止めるために武力を行使している」と侵攻を正当化した。
プーチン氏は「安全保障を確保するために必要な課題を解決していく」と述べ、まもなく1年を迎える侵攻を継続する考えを強調した。「戦場で敗北することはあり得ない」とも明言した。
ロシアと米国の新戦略兵器削減条約(新START)について「参加を停止する」と述べた。締結時と環境が激変したと説明し「全て米国の責任だ」と主張した。条約からの離脱は否定した。
2024年に予定される次期大統領選については「法律を順守して行われる」と述べ、予定通り来年3月に実施されるとの考えを示した。
演説は1時間45分ほどで終了した。ロシアメディアによると年次教書演説としては過去最長だった。
ロシアは2022年2月21日にウクライナ東部で親ロ派武装勢力が支配する「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を独立国家として承認した。今回の演説は独立承認と2月24日の侵攻開始から1年に合わせたものとみられる。
ロシア憲法では大統領が国の現状や内政、外交の方向性について年に1度、議会で演説することになっている。ウクライナ侵攻をめぐり演説の時期や内容への関心が高まるなか、22年の演説は日程調整の難航を理由に延期されていた。
バイデン氏は21日、ポーランドの首都ワルシャワでドゥダ大統領と会談した。バイデン氏はポーランドがウクライナから難民を積極的に受け入れていることを念頭に「ポーランドの支援に感謝したい」と強調。さらなる協力に意欲を示した。侵攻への対応を通じて「北大西洋条約機構(NATO)はかつてなく強力になった」と語った。

バイデン米大統領=ロイター
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は同日、記者団にウクライナ支援に関し「ポーランドは有志連合の強固な結束を推進してきた」と述べた。ポーランドを含む中東欧諸国はロシアの脅威の最前線に位置し、侵攻後に米軍が部隊の派遣を大幅に増やしてきた。
首脳会談に続き、バイデン氏は侵攻から1年の節目を念頭に包括演説に臨む。ウクライナの長期支援を視野に民主主義陣営の結束を固める構えだ。ロシアが武力による国境変更に成功すれば第2次世界大戦後に築いたルールに基づく国際秩序が崩壊するとの危機感がある。民主主義と強権主義の競争の行方も左右するとみる。
バイデン氏は20日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問した。ゼレンスキー大統領と会談し「(米国は)ここにいる。我々は離れない」と断言し、ウクライナ支援の機運を再び盛り上げた。ウクライナへの追加の軍事支援や対ロ制裁強化を表明し「プーチン(ロシア大統領)の征服は失敗している」とも述べた。
ウクライナ軍との戦闘激化でロシア軍の損失は拡大しているもようだ。英国のシンクタンク国際戦略研究所(IISS)が今月まとめた軍事情勢の報告書「ミリタリー・バランス」最新版によると、ロシア軍は侵攻開始から1年間で戦車を約4割失った。

ブリンケン米国務長官が18日、中国外交担当トップの王毅(ワン・イー)氏との会談でロシアへの殺傷力のある軍事支援に強く反対したのは、こうした損失を補う可能性があるからだ。米欧はウクライナ軍に戦車の供与を増やす計画だが、引き渡しの時期が遅れ気味だ。
英国防省はロシア側の死傷者数が17万5000~20万人となったと指摘する。ロシアは22年9月に部分動員令を発令し、30万人超の予備役を招集した。ロシアの独立系メディアは今後も戦況に応じて追加動員すると指摘しており、戦況は消耗戦の様相を呈している。
ロシア軍はドネツク州で攻撃を続けており、ウクライナ東部戦線での戦闘は激しさを増している。ロシア軍は同州バフムトなどの陥落を目指して攻勢を強めている。南部ヘルソン州でも戦闘が激化する懸念が高まっている。
【ウクライナ市民「勝って終わらせる」 侵攻1年ルポ】
22日未明、日経ニュースメールは次のように報じた。

広場には戦死した地元出身兵士の写真が掲げられる(21日、リビウ)
【この記事のポイント】
・ウクライナ西部リビウでは防空警報がほぼ毎日鳴り響く
・戦いの終わりはみえないが住民たちに屈する様子はない
・国境の車の出入りは盛んで経済活動が粘り強く続く
【リビウ(ウクライナ西部)=木寺もも子】
ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく1年となる。前線から遠いウクライナ西部リビウには国内の避難民らが集まり、街の中心部はにぎわいを見せる。長期化する戦争は日常生活に影を落とすが、ロシアに抵抗するウクライナ市民の精神は侵攻から1年を経ても衰えることはない。
ミサイルやドローンによる攻撃の危険を知らせる防空警報はほぼ毎日鳴り響く。多くの建物は地下階を防空のための「シェルター」に設定しているが、ホテル従業員のタチアナさんは警報を聞いて避難する人はほとんどいないと話した。市内に着弾することはまれなうえ、繰り返す警報に「慣れてしまった」という。
「新型コロナウイルス禍が終わったかと思えばこれ。いつまでこんなことが続くのか」。戦いの終わりはみえないが屈する様子はない。タチアナさんは「ウクライナが勝って終わらなければいけない」と言葉に力を込めた。
人口約70万人の西部の中心都市リビウ。前線に近い東部などから逃れた避難民や、外国の支援団体関係者らが集まる。
ウクライナの2022年の国内総生産(GDP)は前年比で3割減ったが、政府が企業の西部移転を推奨していることもあり、サドビー市長によると同市の人口は侵攻前から15万人増えた。郊外には新しい高層集合住宅の建設現場もみられた。

西部リビウには東部などから逃れた国内の避難民が集まる(20日)
ポーランドやオーストリア・ハンガリー帝国などの支配下に置かれた歴史があるリビウはウクライナの中でも西側の雰囲気が強く、旧市街は観光地でもある。チョコレートやコーヒーが有名で、しゃれたカフェは市民や訪問客でにぎわう。
警報のなかで日常生活を続ける市民の姿には、長期化する戦争を受け止め、ロシアへの抵抗を続ける覚悟が見て取れる。
東部戦線から1000キロメートル離れたこの街でも戦争の影が濃さを増す。市内には団結を示す国旗のモチーフが並び、迷彩色の軍服を着た兵士があちこちにみられる。兵士を満載したバスの車内を見れば大半が若い女性兵で、目が合うとにっこり笑って窓越しに手を振ってくれた。
カフェやレストランの前には発電機が並ぶ。店員によると、前回使ったのは昨年末のミサイル攻撃時で、リビウ市内の大半が停電した。ロシアは昨秋以降、市民生活の混乱を狙ってウクライナ全土で発電所などのインフラを標的にし、電力の供給は全国で半減した。

ロシア軍のインフラ攻撃による停電に備え店頭に発電機が並ぶ飲食店も(20日、リビウ)

中心部には「ウクライナはいまあなたを必要としている」と書かれた軍の広告も(20日、リビウ)
広場には今月上旬に戦死した地元出身の兵士の写真が掲げられ、花束が手向けられていた。43歳の男性兵士は市内の中学校、専門学校を卒業しトラック運転手として働いていたが、志願して東部ハリコフ州やドネツク州で戦った。妻と2人の子供がいたという。
ポーランドからウクライナ領内に入ると最初に気づくのは道路の違いだ。ポーランド側の高速道路が片側2車線で広々としているのに対し、ウクライナ側は1車線で舗装が粗く、車の揺れも大きい。
国境の車の出入りは盛んだ。特に欧州連合(EU)への玄関口であるポーランドに向かっては、数キロメートルに及ぶトラックの車列が続く。ドイツのメーカーにスキー場のリフト用の金属材を運んでいた男性運転手はもう何日も車内外で寝泊まりしているという。長蛇の列は侵攻前から続く光景で、経済活動が粘り強く続いていることが分かる。
【トヨタ、賃上げ・一時金満額回答 2年連続初回で表明】
22日の日経速報メールは次のように報じた。
トヨタ自動車は3年連続の満額回答を組合側に提示した。

トヨタ自動車は22日、2023年春季労使交渉で、賃上げと一時金について労働組合の要求に満額で回答した。満額回答は3年連続で、初回の労使交渉で表明するのは2年連続。賃上げについては「過去20年で最高水準」(トヨタ労組)としていた。物価高への対応が課題になる中、産業界全体に波及するかどうかが焦点となる。
労組側の要求は、一時金が満額回答だった22年を0.2カ月分下回る6.7カ月分。賃上げは全組合員平均の要求額は非公表で、15の職種・階級ごとに細分化して提示した。若手に重点的に配分し、例えば総合職で上から2番目の階級の組合員「事技職・指導職」で最高の月9370円の賃上げを要求していた。
賃上げは賃金を一律で引き上げるベースアップ(ベア)や定期昇給に当たる部分を含む。ベアを要求していることは3年ぶりに明らかにしていた。具体的なベア要求額は非公表としている。
会社側の正式回答日は3月15日だった。トヨタの労使は年間を通じて協議を進めている。今後春季交渉では職場の課題や働き方の議論を続けていくとしている。
【ホンダ5%賃上げ 要求に満額回答、初任給1割上げも】
同22日晩の日経速報メールは次のように伝えた。

ホンダは組合要求に満額回答し5%の賃上げに踏み切る
ホンダは22日、2023年の春季労使交渉で労働組合の要求に満額で回答した。組合は基本給のベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分と定期昇給(定昇)合計で月1万9000円(組合員平均)の賃上げを求めていた。賃上げ率は5%程度。大学新卒の初任給を1割引き上げることも決めた。ホンダはこれまでは複数回の交渉を重ねて3月に回答していたが、過去最速となる2月下旬での異例の早期決着となった。
同日午前開いた実質的な初回交渉で会社側が回答した。ベアは月1万2500円と1990年以降で最も高い額になる。率にすると3.3%だ。一時金も6.4カ月分の要求に対し満額回答した。ホンダは前年交渉ではベアで月3000円、一時金は6カ月分とする組合要求に満額回答していた。

物価上昇に対応すると同時に賃上げでEVなど次世代車開発を担える人材の確保を急ぐ(22日、東京都港区の本社での交渉の様子)
労組の上部団体である連合は23年春交渉でベアで約3%、定昇を含めて計約5%の賃上げを求めている。ホンダの賃上げ率は連合が求める水準と同じになる。
新入社員の初任給の引き上げも決めた。大学新卒の場合、現行の給与から10%増の25万1000円にする。ホンダは40年に全新車を電気自動車(EV)か燃料電池車(FCV)にする方針を掲げている。賃金の原資を全従業員一律ではなく、主に若手社員に厚めに配分することでEVなど次世代車開発などを担える人材の確保を急ぐ考えだ。
賃上げの内容について今後組合側と妥結し、6月から実施する予定だ。非正規の期間従業員などの賃上げも組合員同様に検討していく。
会社が組合要求に回答する時期はこれまでの春交渉で最も早いという。近年は3月上旬だった。ホンダの平原克彦労政課長は「急激な物価上昇による社員の不安を取り除き、従業員が変革に集中できるようにする」と述べた。労組幹部は異例の2月決着について「労使の方向性が早期に一致した」と話す。
グループの自動車部品や販売会社などでも賃上げ機運が高まる。ホンダグループの労働組合でつくる全国本田労働組合連合会(全本田労連)に加盟する計44単組は、23年春交渉で平均月約9000円のベアを要求した。ベア率は3.3%で額は前年に比べ3.6倍になるという。完成車メーカーだけでなく、部品会社や関連の中小企業を含めて業界に賃上げが波及するかが焦点となる。
【核融合、特許競争力で中国首位 未来のエネルギーに布石】
22日の日経ニュースメールは次のように報じた。

核融合の技術開発を巡る国際競争は激しくなっている(米ローレンス・リバモア国立研究所提供=ロイター)
次世代のエネルギー技術として2040年代以降の実用化が期待される核融合の研究で中国の存在感が高まっている。有力な特許を集計すると中国が首位で、米国(2位)と日本(4位)を上回った。核融合は再生可能エネルギーとともに脱炭素の切り札になる可能性がある。22年末には米国で実用化に向けた大きな進展があった。未来のエネルギー源を巡る国際競争が激しくなっている。

核融合は太陽と同じ反応を再現することから「地上の太陽」と呼ばれる。水素の仲間同士の原子核がぶつかる際に発生するエネルギーを発電に利用する。理論上は1グラムの燃料から石油8トン分のエネルギーが出る。
発電時に二酸化炭素を出さず、燃料の供給をやめれば反応が止まるため原子力発電に比べて安全上のリスクも抑えやすいとされる。燃料となる重水素やトリチウムは海水などから生産できることもあり、実用化できればエネルギー源を一変する可能性もある。
22年12月には発生したエネルギーが投入量を上回る「純増」を実験で初めて達成したと米国が発表した。実用化に向けて日米中などが参加する国際熱核融合実験炉(ITER)など国際プロジェクトも進んでいる。
調査会社のアスタミューゼ(東京・千代田)が日米欧中など30カ国・地域で出願された関連特許を集計した。11〜22年9月までに公開された1133件について実現性や権利の残存期間など特許の競争力を点数化(スコア)して順位付けした。

出願している企業や研究機関の国籍別では中国が首位(出願件数も首位)だった。15年以降に有力な特許を大幅に増やして米国を逆転した。中国科学院が持つ核融合炉の内壁に使う特殊なセラミック複合材料の技術は企業や研究機関など組織別の上位20社の特許の中で最も評価が高かった。
核融合は炉などの部品を超高温にしても壊れないように冷やしたり、狙った場所に原子核をぶつけたりする必要があるなど多くの技術を組み合わせないと実現できない。中国は国全体の特許が炉など同じ分野でつながっていることが多く、実用性の高い特許が多いのが特徴だ。組織別の順位でも中国科学院が2位、核工業西南物理研究院が3位につけた。
慶応大学の岡野邦彦訪問教授は「中国は早めに動いて着実に開発レベルを上げようという姿勢がうかがえる」と語る。「ITERの成果を待たずに国内で試験炉などの計画を進めている。設計は無理のない堅実なつくりで、メンテナンスのしやすさまでよく考えられている。国の予算も手厚い」と指摘する。
2位は米国(出願件数も2位)だった。組織別の20位以内に最多の7社・機関が入った。スタートアップなど民間主導で技術開発が進む。12位のヘリオン・エナジーは核融合の反応から電気を効率よく得る技術などの特許を持つ。グーグルも18位につけ、核融合の反応速度を高めるための装置や構造について研究しているようだ。
米国は00年代まで特許数などで他国を圧倒していた。近年では中国に急速に追い上げられている。バイデン政権は民間企業の商用化を後押しするため22年9月に5000万ドル(約67億円)の資金支援を実施する方針を打ち出すなど、国家として技術開発の支援体制を強化している。
日本は4位だった。浜松ホトニクスが組織別で5位、トヨタ自動車が7位につけた。浜ホトは米国で昨年末に純増を達成したレーザーを水素の仲間の原子核に照射する技術に強い。レーザーを制御し、核融合に不可欠なエネルギーの密度を高める特許の競争力が高い。トヨタは関連特許13件のすべてが浜ホトとの共同出願で、浜ホトと組んで研究を進めている。
組織別の首位は英国のスタートアップ、トカマク・エナジーだった。22年に実験装置で核融合反応に必要なセ氏1億度の超高温の加熱状態を実現した初の民間企業だ。特許の競争力で2位を大幅に引き離している。英国は国別で3位だった。アスタミューゼには日本経済新聞社が出資している。(猪俣里美)
【G7、ウクライナ支援5.3兆円に拡大 財務相会議】
23日の日経ニュースメール【ベンガルール=三島大地】によると、日米欧の主要7カ国(G7)は23日、インド南部ベンガルールで財務相・中央銀行総裁会議を開いた。2023年のウクライナへの財政・経済支援額をこれまでの320億ドル(約4.3兆円)から390億ドル(約5.3兆円)に増やすことなどを柱とする共同声明を採択した。世界的なインフレや低所得国の債務問題への対応で連携を強化することも確認した。

20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議にあわせて開催した。日本からは鈴木俊一財務相と日銀の黒田東彦総裁が出席し、日本が議長国を務めた。ウクライナのマルチェンコ財務相もオンラインで参加した。
「G7はウクライナ支援に対する揺るぎないコミットメントと、ロシアへの非難で一致することを確認した」。23日に開いた記者会見で鈴木財務相は強調した。共同声明では「制裁の効果を注意深く監視し、必要に応じてさらなる行動を取る」と明記した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は同国の23年の資金需要を380億ドル規模(約5.1兆円、復興費を除く)と見積もっていた。会議に出席するためインドを訪問中のイエレン米財務長官は23日に記者会見し、ウクライナに今後数カ月でおよそ100億ドルの追加経済支援を実施すると述べた。鈴木財務相も「日本としてもウクライナに新たに55億ドル(約7400億円)の財政支援を行う」とした。
ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格の上昇で、欧米などではインフレ率が2ケタに達する国もある。共同声明は「(中央銀行は)各国間の負の波及効果の抑制に資するよう、政策スタンスについて明確に意思疎通を行う」と確認した。
新興国の債務問題についても「(G7の)取り組みを強化する」とした。国際通貨基金(IMF)によると、低所得国の約60%がすでに債務危機に陥っているか、陥る可能性が高いという。G7は債務国と債権国が協力して債務の正確性や透明性を向上する取り組みを進める考えだ。
【ウクライナ侵攻1年 ロシア、20世紀型大国の落日 変わる世界秩序㊤】
23日の日経ニュースメールは次のように報じた。

プーチン氏㊧とゼレンスキー氏
【この記事のポイント】
・短期間での政権打倒を想定したロシア、長期化は誤算
・資源や軍事力など「20世紀型大国」の行き詰まり示す
・台湾海峡をめぐる東アジアの安全保障にも影を落とす
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めて24日で1年となった。短期間での政権打倒と全土の制圧は容易と見誤り、長期化した戦争の現状は20世紀型の大国であるロシアの行き詰まりを示す。侵攻は核抑止の均衡を揺さぶり、台湾海峡をめぐる東アジアの安全保障にも影を落とす。
「1分前に攻撃ドローン(無人機)が北に飛んでいきました」。ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊に住む20代の学生、パブロさんは民間の技術者が開発したアプリ「ePPO」経由で軍にドローンやミサイルの飛来情報を報告している。
市民の目撃証言とスマートフォンの全地球測位システム(GPS)機能を活用し、情報を収集した軍は限られた撃墜要員や兵器を最適の場所で活用できるようになった。市民の協力を合わせた防空態勢のIT(情報技術)化も奏功し、ミサイル攻撃への迎撃率は昨年10月の5割から8割超に向上した。
「ルールと人間性、予測可能性に基づく世界秩序の未来が決まりつつある」。ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、電撃訪問したバイデン米大統領をキーウに迎えた。同日夜、ビデオ演説で改めて西側の支援拡大を呼び掛けた。
2014年に南部クリミア半島を短期間、ほぼ無血で併合した成功体験からロシアはウクライナの軍事能力を過小評価した。だが、東部で続いた対ロ紛争で経験を積み、北大西洋条約機構(NATO)式の戦い方を身につけたウクライナ軍は侵攻当初に陥落が危ぶまれた首都を守り抜いた。
ゼレンスキー氏は亡命の勧めを断り、国内にとどまって国民を鼓舞した。「1年がたち、キーウは持ちこたえている。ウクライナ、民主主義は持ちこたえている」。20日、バイデン氏は簡潔な表現で称賛を送った。
人口で3.3倍、国内総生産(GDP)で9倍のロシアに対し、ウクライナが示してきた高い強靱(きょうじん)性と復元力。支えたのは、独立後の30年で育んできた独自の国民意識、米欧による巨額の軍事・財政支援とデジタル技術の柔軟な活用だ。
米データ解析会社のパランティア・テクノロジーズが提供した人工知能(AI)のソフトウエア「メタコンステレーション」は商業衛星や熱センサー、偵察ドローン、市民からの報告などの膨大なデータを瞬時に解析し、敵の位置情報を把握する。過去の戦闘から「学習」し、東部バフムトなどの激戦地で戦う兵士を支援する。
「ミサイル攻撃を受けても、複数の地下シェルターから職員がリモート管理できるようになった」。西部リビウの電力制御施設の責任者オレグさんは、侵攻後にシステムを改良し、停電防止や早期の復旧につなげていると強調する。
広大な領土、豊富な天然資源、人口と、これらに裏打ちされた軍事・工業力。20世紀後半、第2次大戦に勝利した米国とソ連という2つの超大国は激しい競争を繰り広げた。
「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的悲劇」。ロシアのプーチン大統領は、05年の年次教書演説でこう嘆いた。
冷戦に敗れ解体したソ連、前身の帝政ロシアへの憧憬は偏執に転じ、「我々の歴史的土地」と呼ぶウクライナを取り戻し、帝国の再構築を図ろうとあがく無謀な戦争に及んだ。
規模が物を言った20世紀から、頭脳やネットワークが競争を左右する21世紀へ。ウクライナの健闘は、世界秩序を形作る要因の変化を示す。
「35年までに最大42%減る」。英石油大手BPは1月末に発表した年次報告書で、19年に日量1200万バレルだったロシアの原油生産は減少傾向をたどり、35年に700万バレルまで落ち込む可能性があると指摘した。

主因は、高度な生産技術を持つ米国企業の撤退だ。油田の掘削・運営分野の世界3強はすべて米企業で、ロシアはその技術に深く依存してきた。侵攻後に3社は事業の停止や縮小を決定。技術的な理由から減産は時間の問題になっている。
ロシアは脱炭素の潮流を自らの手で加速させた。天然ガス供給の遮断など、エネルギーを武器化したことで、最大の顧客だった欧州連合(EU)は脱ロシアにかじを切った。世界各国は経済のグリーン化を推し進める。
資源国ロシアの落日は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など中東の産油国にとっても人ごとではない。強権体制を支える石油・ガス収入の急減は体制に混乱をもたらしかねないからだ。
冷戦後の国際社会をけん引してきた米国もまた国外では中国の挑戦に、国内では社会の深い分断に直面し、指導力に衰えがみえる。きしむ世界の現実は新しい秩序への波乱に満ちた道のりを映し出している。
(ウクライナ西部リビウ=田中孝幸)
【岸田首相、共同声明巡る植田氏の発言「違和感ない」 侵攻1年「新たな対ロ制裁示す」】
同じ24日夕方、日経ニュースメールは次のように報じた。
岸田文雄首相は24日、首相官邸で記者会見した。次期日銀総裁の候補の植田和男氏が総裁に就任した場合に「早いタイミングで会い、政府と日銀の連携を確認したい」と語った。政府、日銀の共同声明についての植田氏の同日の国会での発言を巡り「政府として特段違和感のある内容はなかった」と回答した。
植田氏の金融政策の正常化への言及に関し「特段大きな変化を示すような発言ではない」と話した。植田氏を「国際的に著名な経済学者であり、金融分野に高い見識も持っている」と評価した。
対ロ制裁「新たな考え示す」
ロシアによるウクライナ侵攻から1年が経過したことをふまえ同日夜に開く主要7カ国(G7)首脳のオンライン協議で「新たな対ロ制裁の考えを示す」と明かした。オンライン協議にはウクライナのゼレンスキー大統領も参加を予定する。
「一方的な現状変更を断じて許すことがないよう、ウクライナへの支援とロシアへの制裁を着実に実施する」と訴えた。
中国に「責任ある対応求めた」
米国が中国によるロシアへの軍事支援を懸念していることには「関連情報を収集・分析する。関係国と緊密に連携して明確なメッセージを国際社会に発することが重要だ」と説明した。
林芳正外相が中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員に「責任ある対応」を強く求めたと改めて紹介した。第三国によるロシアへの軍事支援へ「G7としてそうした支援を停止するよう呼びかける」と主張した。
ロシアのプーチン大統領が新戦略兵器削減条約(新START)への参加停止を決めたことへ「懸念を表明する」と発言した。
「77年間の核兵器不使用の歴史がロシアの威嚇によって汚されることはあってはならない」と力説した。「核軍縮への取り組みを続けることがますます重要となっている。G7における議論を先導していく」と語った。
地雷探知、農業で協力
ウクライナに「人道支援、復旧・復興支援と財政支援を含め計71億ドルの支援を表明してきた」と振り返った。「殺傷性のある装備の提供には制約がある。日本の強みを生かし、支援をきめ細かく実施する」とも説いた。
カンボジアと協力してウクライナを対象に地雷探知機の使用方法の研修を開始したと明らかにした。ウクライナへ地雷の探知機や除去機の供与を進める考えを示した。
ウクライナ産のトウモロコシなどの種子を調達、提供し同国の生産能力の回復支援につなげる方針を表明した。
2023年は5月のG7広島サミット(首脳会議)などアジアで国際会議が相次ぎ開かれる。「アジアから世界に信頼される日本の外交力を発揮するよう最大限努力する」と意気込みをみせた。「平和、秩序を守るための結束をアジア各国に働きかける」と提起した。
ゼレンスキー氏を広島サミットに招待するかどうかを問われ「招待国、招待機関は検討しているところで、決まっていない」と答えた。
ウクライナ訪問「諸般の事情踏まえ検討」
ウクライナ訪問は「安全確保や秘密保護など、諸般の事情を踏まえながら検討している」と述べるにとどめた。具体的な時期は決まっていないという。
「日本国民の連帯の姿勢はウクライナ国民に必ず伝わっている」と言明した。地方自治体や企業による避難民の支援などに謝意を表した。
元徴用工問題の解決に向けた日韓首脳会談の開催は「緊密に意思疎通をしていきたいが、今後の見通しは何も決まっていない」と話した。
大企業で賃上げに前向きな動きが出ていると触れた。そのうえで「中小企業に賃上げの流れを波及させる」と強調した。
3月13日からマスク着用を「個人の判断」に委ねる政府方針を受け、自身のマスク着用は基本的にはマスク着用が奨励される場面などを除き「マスクを外して過ごす機会が増える」と見込んだ。「場面に応じて適切に判断する」とも付け加えた。
【中国、ロシアにドローン100機売却か ドイツ誌報道 ウクライナ侵攻1年】
同じ24日晩、日経ニュースメール【ベルリン=共同】によると、ドイツ有力誌シュピーゲル(電子版)は24日までに、中国の無人機(ドローン)メーカーがロシア軍にドローンを売却し、ロシアでの量産も計画されていると報じた。早ければ4月までに100機を納入する交渉が進められている。
シュピーゲルによると、中国メーカーは4月までにロシア国防省に納入するため、100機のドローンを製造することで合意。35〜50キロの弾頭を搭載でき、ロシアがウクライナでの攻撃に主に使用しているとされるイラン製無人機シャヘド136に似ているという。
さらにロシアが自国でドローンを量産できるよう、中国メーカーが部品と技術を提供する計画も進められている。計画では月に100機を製造できるようになる。
シュピーゲルによると、中国によるロシア支援計画は他にもあり、中国人民解放軍傘下の別の企業はロシアの戦闘機などの交換部品を納入することも計画していた。
中国外務省の汪文斌副報道局長は24日の記者会見で、ロシアへのドローン売却計画を「聞いたことがない」と述べ「中国は紛争地域や交戦国に対して武器を売却しない」と主張した。
【G7首脳、声明でロシアを非難 第三国の支援停止求める】
同じ24日晩、日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・G7首脳が対ロシア制裁強化とウクライナ支援を記した声明
・中国を念頭に、第三国のロシア支援の停止求める
・日本は新たに55億ドルの財政支援を表明
主要7カ国(G7)首脳は24日、ロシアによるウクライナ侵攻から1年を迎えるのにあわせてオンライン会議を開いた。軍事侵攻を非難し、対ロシア制裁の強化とウクライナ支援の継続を記した首脳声明を出した。
【関連記事】ウクライナ侵攻1年、G7首脳声明の要旨
ロシアへの武器提供を検討している可能性がある中国を念頭に、第三国のロシア支援の停止も訴えた。オンライン会議は岸田文雄首相が今年のG7議長国として初めて主催した。ウクライナのゼレンスキー大統領も参加した。
G7各国はロシア軍のウクライナ全土からの即時撤退を求めた。第2次世界大戦後、核兵器の使用がなかったことの重要性を強調した。
食料・エネルギーの供給不足などウクライナ侵攻を通じて生じた国際課題にG7が結束して対処する姿勢を明確にした。
日本は新たに55億ドル(7400億円程度)の財政支援を打ち出した。ロシアの個人・団体、金融機関の資産凍結や輸出禁止物資の拡大などの対ロシア制裁も示した。
首相はオンライン会議に先立ち記者会見し、ウクライナへの追加支援を表明した。農業の生産力回復へ同国産のトウモロコシなどの種子を調達し提供する。電力復旧へ10機程度の変圧設備や140台ほどの電力関連機材を供与する。
地雷の探知機や除去機、がれきを取り除く建機を送る。「日本の強みを生かしてウクライナに寄り添う」と述べた。
ゼレンスキー氏は24日に公表したビデオメッセージでロシア軍との1年の戦闘を振り返った。「我々は生き延び、負けることはなかった。今年は勝利するためにあらゆることをする」と語った。
中国外務省は24日、ウクライナ侵攻をめぐる独自の仲裁案を発表した。ロシアとウクライナの双方に停戦への対話を求め、中国が和平実現へ「建設的役割」を担うと主張した。
【ウクライナ大統領、習氏と会談に意欲 仲裁案「協力も」】
25日未明、日経ニュースメール【リビウ(ウクライナ西部)=田中孝幸】によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、首都キーウ(キエフ)で記者会見した。ロシアによる侵攻の終結に向け独自の仲裁案を示した中国の姿勢を歓迎し、中国の習近平国家主席との会談にも前向きな姿勢を示した。一方で、ウクライナ全土からのロシア軍の撤退を含まない和平案は受け入れない方針を重ねて表明した。
ゼレンスキー氏は中国の仲裁案について、「国際法の尊重や領土保全(の原則)と合う考えがある。この点で中国と協力しよう」と述べ、一部を評価した。提案は具体的な和平計画ではなく「いくつかの考え方にすぎない」とも指摘した。
米欧を中心に中国によるロシアへの軍事支援に警戒が広がっている点については、「中国がロシアに武器を供与しないと信じている。これは私にとって極めて重要なことだ」と供与を控えるよう強く求めた。
習氏との会談については「私は習氏と会うつもりだ。両国に有益で世界の安全保障に寄与する」と語ったが、具体的な時期や場所には言及しなかった。
2022年2月24日のロシアによる侵攻開始前から、ウクライナと中国は経済面を中心に関係を深めてきた。ゼレンスキー氏の発言の背景には、大国である中国に配慮を示し、ロシア支援に傾斜することを防ぎたい思惑がある。
今後のロシアとの戦闘に関しては「支援国が課題をこなせば勝利できる」と指摘。西側各国に一層の軍事支援を呼びかけた。米欧がウクライナから離れた場合、ロシアが北大西洋条約機構(NATO)加盟各国にとって深刻な脅威になるとも主張した。
中国の仲裁案とは、同国外務省が24日に発表した「中国の立場」を示す文書だ。ウクライナとロシアの直接対話の再開を求め、中国が建設的な役割を果たす意欲をみせるが、具体策は記していない。「すべての国の主権と独立、領土の一体性の保障」など計12項目を並べ、核兵器の使用や原子力発電所への攻撃反対を表明した。
中国は欧州連合(EU)加盟国と隣接するウクライナを広域経済圏構想「一帯一路」の要衝と定め、関係強化を目指してきた。中国初の空母「遼寧」は、1998年にウクライナから購入した中古品を改造したものだ。中国製の新型コロナウイルスワクチンも積極提供していた。
21年6月の国連人権理事会で日米欧などの40カ国超が中国の新疆ウイグル自治区における人権状況に懸念を示す共同声明を提出した際、ウクライナは参加を見送った。中国側に配慮を示していた。
ゼレンスキー氏は米欧の支援継続に腐心している。ロシアの侵攻が長引き、米欧の有権者に「ウクライナへの過度な支援」を疑問視する動きが広がっている現状を警戒する。
【G20財務相会議、共同声明見送り 対ロシア制裁で溝】
25日晩の日経速報メール【ベンガルール=三島大地、飛田臨太郎】によると、インド南部ベンガルールで開かれた20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が25日、閉幕した。米欧は共同声明を採択し、ロシアによる戦争を非難する文言を明記するように要求していたが、まとまらなかった。ウクライナ侵攻から1年の節目で、G20内の対立が改めて浮き彫りになった。
会議閉幕後に記者会見した鈴木俊一財務相は「日本を含め、多くの国がロシアの侵略行為を最も強い言葉で非難した」と述べた。「ロシアと中国がウクライナ侵略が世界経済に悪影響を与えていることに合意しなかった」と共同声明見送りの理由を説明した。ドイツのリントナー財務相は中国が戦争を非難する共同声明を阻止したとして「遺憾だ」と述べた。

ロシア批判の共同声明は米欧が強く求めていた。イエレン米財務長官は23日「戦争がウクライナと世界経済に与えた影響を強く非難すべきだ」と主張。フランスのルメール経済・財務相も24日「ウクライナの戦争に関するバリでの首脳宣言から一歩でも後退することに反対する」と述べた。
昨年11月、インドネシア・バリのG20サミットでまとめた首脳宣言には「ほとんどのメンバーは戦争を強く非難した」と明記した。今回、インドは「戦争」の文言を盛り込むことに反対したロシアに配慮した。
議長国インドの裁量でまとめる議長総括には首脳宣言と同様の文言を盛り込み「ロシアと中国を除くメンバーは賛同している」と加えた。米欧の意見にも一定の理解は示した。
今回の財務相・中銀総裁会議はインドが今年のG20議長国となって初めて開催した。グローバルサウス(南半球を中心とした途上国)の盟主を自任するインドの対ロ姿勢は新興国全体の機運にも波及する。米欧が、昨年まとめたG20声明から後退する事態を避けたかったのはこのためだ。
米欧日の経済制裁に参加しないインドはロシアからの輸入額が22年4〜12月に前年比5倍に増えた。制裁の効果が弱まり、ロシアに戦争を継続する余力を与えている。戦争が長期化する中で、今後の新興国とロシアの経済関係が情勢を左右する要因になりつつある。会議では新興国の債務問題も主要課題として協議した。
議長総括では米欧の利上げについて「負の波及効果の抑制に資するよう金融政策の姿勢について明確に意思疎通する」と記した。世界経済の見通しを巡っては「昨年10月の会合以降、緩やかに改善した」と指摘し、同時に「成長は鈍いままで、下方リスクが根強い」とも加えた。
【内閣支持4ポイント上昇43%、植田日銀総裁案に評価48%】
26日晩の日経速報メールは次のように伝えた。
日本経済新聞社とテレビ東京は24〜26日に世論調査をした。岸田文雄内閣の支持率は43%で2023年1月調査(39%)から4ポイント上がった。日銀総裁に植田和男氏を起用する方針は「評価する」が48%で「評価しない」の18%を上回った。

内閣支持率が上昇するのは2カ月連続で40%台を回復するのは22年10月以来4カ月ぶり。新型コロナウイルス対応のマスク着用を3月13日から個人の判断に委ねることなどが評価された。
内閣を「支持しない」と答えた割合は1月の54%から49%へ低下したものの、「支持する」を上回る状況は6カ月連続となった。

日銀総裁人事を巡っては13年に黒田東彦氏を起用した際の調査でも質問した。聞き方に違いがあるため単純比較はできないが、「評価する」が58%、「評価しない」は17%だった。
日銀の金融緩和に関しては「続けるべきだ」と「続けるべきではない」がそれぞれ39%で拮抗した。植田氏は24日の衆院議院運営委員会で所信表明し、金融緩和を当面続ける姿勢を強調した。
優先処理してほしい政策を複数回答で聞く質問で最多は1月と同じ「景気回復」(45%)で、2位は前回の3位から順位を上げた「子育て・少子化対策」(39%)だった。
政党支持率は自民党が39%で、立憲民主党は9%、日本維新の会は8%、支持政党がない無党派は27%だった。前回調査はそれぞれ42%、8%、6%、27%だった。
調査は日経リサーチが全国の18歳以上の男女に携帯電話も含めて乱数番号(RDD)方式による電話で実施し819件の回答を得た。回答率は37.0%だった。
【次世代車特許の出願、Amazonが首位 米テック5社分析】
27日朝、日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・「NIKKEI Mobility」がアスタミューゼと協力して分析
・アマゾンは物流のデジタル化、グーグルは自動運転に力
・次世代車開発で車大手とテック大手の合従連衡加速か
米テック大手5社の自動車の次世代技術関連特許を分析したところ、出願数でアマゾン・ドット・コムが首位だった。新興企業の買収によって、グーグルが強かった自動運転分野でアマゾンの出願数が急増した。次世代車技術の競争力は生産規模ではなく人工知能(AI)など知的財産が左右する。テック大手の台頭で自動車の競争や協業のあり方が変わる。=詳細な分析を含む「Mobility Tech特許 2023 GAFAMのデータから」はこちらからご覧いただけます(NIKKEI Mobility会員限定で公開中)
「Mobility Tech特許 2023」へ

次世代車は自動運転や電動化など「CASE」と呼ばれる新領域の技術なしには開発できない。2月上旬に決着した日産自動車と仏ルノーの資本関係見直しではこうした知財が焦点となり、ルノーはグーグルとの提携も決めた。アップルは車各社に独自のソフトウエア採用を働きかけるなど、テック大手と車大手が接近している。

日本経済新聞社の専門メディア「NIKKEI Mobility」はテック大手の知財の強さを調べるため、アスタミューゼ(東京・千代田)と協力し「GAFAM」と呼ばれるアルファベット(グーグル親会社)など5社が2003年以降に出願し公開された約20年分の特許を分析した。
出願数の合計で首位はアマゾン(1649件)、2位はアルファベット(1355件)。アップルは4位だった。アマゾンの出願数は16年以降、4年連続で200件を超えた。20年に買収した自動運転開発の米ズークスがけん引した。14年設立で、公道走行試験を重ねて技術を蓄積してきた。

引用された回数や権利が及ぶ国の数などをもとに「個別特許の競争力スコア」も算出。これに特許の残存年数を掛け合わせるなどした「企業別の競争力スコア」を自動運転や、ネットにつながるコネクテッドなど8領域で集計した。
アマゾンは物流をデジタルで高度化する物流IoT領域の企業別スコアが4073万点と2位のアルファベット(1782万点)を引き離す。個別特許スコアをみてもコネクテッド領域の上位5位内の3つを持つ。ネット通販の自動配送に生かすようだ。
アルファベットは自動運転領域の企業別スコアが4018万点で2位のアマゾンを1割上回った。個別特許スコアでは車や歩行者の動きの予測技術などが高い。自動運転タクシーへの活用を意識しているとみられる。アップルは近年、電気自動車(EV)の自動充電や熱管理の技術に力を入れている。

アマゾン子会社のズークスは2月13日にはカリフォルニア州で自動運転タクシーに従業員を乗せて事業所間をシャトル運行したと発表=ロイター
次世代車技術の特許では自動車大手が今なお存在感が大きい。ホンダは自動運転分野で20年度までに累計4000件以上を出願したことを統合報告書で公表。単純比較できないものの、出願数はテック5社で同分野最多のアルファベットの4倍だ。
アスタミューゼは「アルファベットの自動運転特許は高く評価されている」とし、IT(情報技術)と自動車に詳しい名古屋大学の野辺継男客員教授は「ディープラーニング(深層学習)を使うAIで車大手は人材面で劣る」と指摘する。
次世代車開発を巡り車大手とテック大手の合従連衡の流れが強まる可能性がある。日本の車大手は強みを持つ全固体電池など技術の蓄積を有効に活用する必要がある。アスタミューゼには日本経済新聞社が出資している。
この間、下記の録画を観ることができた。(1)BS6報道1930「プーチン氏が重大演説 反戦女子学生を拘束 統制強化ロシアの現実」2月21日。 (2)BS6報道1930「<プーチン氏の戦争>で逆流する世界とは? モスクワ20万人集会」22日。 (3)BS世界のドキュメンタリー「何が戦災を招いたのか~ウクライナ侵攻への軌跡」22日。 (4)BS6報道1930「核戦力誇示プーチン氏 “使用前提”抑止力か 第3の核の時代突入?」23日。 (5)BS6報道1930「ウクライナ侵攻1年 春から夏が重大局面? 最大焦点「クリミア」奪還」24日。 (6)NHKイーテレドキュランドへようこそ「マリウポリ”包囲日記“ 私たちは諦めない」24日。 (7)NHK総合「ウクライナ 家族の戦場 軍事侵攻から1年 心の軌跡」25日。 (8)NHK週刊ワールドニュース(2月20日~24日)25日。 (9)NHKスペシャル「ウクライナ大統領府 軍事侵攻・緊迫の72時間」26日。 (10)NHKスペシャル「届け ウクライナの叫び」26日。
【がん粒子線治療、日本から世界へ 「第5の選択肢」脚光】
2月14日未明の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・日本発の粒子線治療。がん治療「第5の選択肢」と注目
・ホウ素と中性子の核反応でがん細胞破壊。患者負担軽く
・進化する治療技術。闘病と仕事の両立に変わらぬ課題
「副作用も少なく、治療を受けてよかった」。兵庫県に住む佐々木加世子(仮名、70代)は、2019年に口腔(こうくう)がんと診断された。手術で取り切れず抗がん剤治療を受けたが再発。食事も十分にとれなくなった。体調が悪化する中、主治医に勧められたのが「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」だった。
22年1月、関西BNCT共同医療センター(大阪府高槻市)で治療を受けると腫瘍は2〜3カ月で消えた。その後は再発せず通院しながら経過観察を続ける。食欲も戻り「リハビリや体力づくりのウオーキングに精を出している」とほほ笑む。
BNCTは世界の最先端をゆく日本発の粒子線治療技術だ。がん細胞がホウ素を取り込む性質を利用し、ホウ素と中性子の核反応でがん細胞を破壊する。治療は1時間弱で基本的に1回ですむ。
高い効果と患者負担の軽さから従来の手術や放射線、抗がん剤、免疫療法に続く、がん治療の「第5の選択肢」として注目される。近年は米国や英国、アルゼンチンなど各国で開発が進み、日本のシステムが中国に導入されることも決まった。
だが実用化までの道は平たんではなかった。BNCTは当初、中性子を生み出すために原子炉を使っていた。原子炉の利用は核物理学などが中心で「(医療用に使えるのは)1年でわずか4〜5日。予算も限られ物理学者や医師、企業研究者が知恵を絞る毎日だった」。大阪医科薬科大学BNCT共同臨床研究所所長の小野公二は振り返る。
研究は米国で1950年代に始まり、京都大学は70年代に参入。91年に京大にいた小野が引き継いだが「成果の見えない地味な日々が続いた」。
転機は2001年に訪れた。「打つ手がないがん患者がいる」。大阪大学から連絡が入った。耳の近くの腫瘍を切除し放射線治療を施したものの再発。有効な抗がん剤もなかった。「何とかできないか」。小野はBNCTの利用手続きを急いだ。
粒子線をあてると、腫瘍は目に見えて縮小した。患者は日常生活を送れるまでに回復。その経緯は国際学会で発表され、問い合わせが相次いだ。
小野は、多くの患者が利用できるよう医療機器としての実用化を目指した。だが厚生労働省の回答は「ノー」。原子炉は医療機器として認められないとの理由だった。
そこで考えたのが原子炉のかわりに加速器を使うアイデアだ。住友重機械工業に持ちかけ、07年から共同研究を開始。20年に世界で初めて薬事承認を取得した。現在は大阪府と福島県の2カ所で保険適用の治療が受けられる。
小野が見据えるのは次のステップだ。「出力をあげれば照射時間を短縮できる」「薬剤を改良し副作用を軽くできれば」。患者の負担軽減に向けたアイデアは尽きない。
がんを巡る治療技術が急速に進化する中、変わらぬ課題もある。治療と仕事の両立だ。厚生労働省がまとめた「全国がん登録」(2019年)によると、1年間にがんに罹患(りかん)した患者は約100万人。その約4分の1は20〜64歳だ。国立がん研究センターによると、仕事を持つがん患者の約5割が休職・休業し、約2割は退職・廃業を迫られている。
闘病と仕事の両立を支援する制度を大幅に拡充したのが伊藤忠商事だ。保険適用外の先進医療を自己負担なしで受けられるほか、社員が死亡しても子どもの教育費は大学院修了まで補助する。岡藤正広会長は「就職先は人生を託すところ。業績だけでなく社員の健康を気遣うバランスのとれた企業を目指す」と語る。
きっかけは岡藤が17年、がん闘病中の社員から受け取ったメールにある。休職制度などへの謝意とともに「伊藤忠が一番いい会社です」とあった。だが数週間後に社員は帰らぬ人となる。
「社員ががんになったら自分の家族が闘病しているつもりで臨みます」。岡藤は全社員にメッセージを送り支援制度を拡充した。現在、年約10人の社員が利用する。「いつどうなるか分からない。皆、あすは我が身だ」。岡藤の偽らざる思いだ。(敬称略)
不治の病とされたがん。技術進化で治療は大きく変わりつつある。研究機関や企業、患者の最前線の動きを追った。
【バイデン大統領、ウクライナを電撃訪問 侵攻後初】
ロシアによるウクライナ侵攻から24日で一年になるのを目前に、ビッグニュースが飛び込んできた。
2月20日、日経ニュースメール【リビウ(ウクライナ西部)=田中孝幸】によると、バイデン米大統領が20日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を予告なしに訪問し、同国のゼレンスキー大統領と会談した。ロシアの侵攻開始から1年を前に「世界各国が連合を組む」と支援継続に向けた国際社会の結束を強調した。バイデン氏のウクライナ訪問は2022年2月のロシアによる侵攻開始以降、初となる。
この記事のポイント
・ロシアの侵攻から1年、ウクライナ支援揺るがず
・「世界各国が連合」、民主主義陣営の結束を強調
・5億ドルの軍事支援や対ロシア制裁強化を表明
米ホワイトハウスが発表した。バイデン氏はウクライナに新たに5億ドル(約670億円)規模の軍事支援を実施すると表明。対ロシア制裁を強化する考えも示した。
両首脳はキーウの大統領府で会談後に共同会見した。追加の軍事支援でロシアの空爆にさらされるウクライナの都市の防空能力を強化する考えを明らかにした。バイデン氏は「プーチン(ロシア大統領)の征服は失敗している」と強調した。
今回のウクライナ訪問には、民主主義陣営のリーダーとして、権威主義陣営との戦いにおける結束を内外に示す狙いがある。ロシアによる侵攻が長期化し、各国の支援姿勢には温度差が出始めた。米国でも野党・共和党でウクライナ支援予算の見直し論が浮上している。
バイデン氏は訪問の目的を「ウクライナの民主主義、主権、領土保全に対する揺るぎない関与を再確認する」ことだと説明。侵攻から1年を前に「ウクライナは立ち向かっている。民主主義は立ち向かっている。米国ではアメリカ人があなたとともに立っている」と連帯を表明した。
ゼレンスキー氏は「ウクライナが世界の自由のために戦っているこの最も困難な時期に、ウクライナにとって最も重要な訪問になった」と謝意を表明。「長射程の兵器など、未供与だがウクライナに供給されるかもしれない兵器について話した」と明らかにした。
5億ドルの軍事支援には対戦車ミサイルや榴弾砲などが含まれる。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問によると、バイデン氏は「ロシアは確実に敗北するだろう。ウクライナは必要なすべての兵器を手に入れることになる」と語った。
現地の欧米の治安関係者によると、バイデン氏は20日午前8時(日本時間午後3時)ごろキーウに到着し、5時間程度滞在した後に隣国ポーランドに向かった。
米国家安全保障会議(NSC)当局者によるとバイデン氏のキーウ訪問は17日に最終決定した。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は20日、記者団にバイデン氏のウクライナ訪問についてロシアに事前通告していたと明らかにした。
バイデン氏はウクライナ侵攻開始から1年を前に、ポーランドの首都ワルシャワを訪問することを表明していた。21日にはワルシャワでポーランドのドゥダ大統領と会談するほか、ウクライナ侵攻への対応を巡る演説を行う予定だ。
主要7カ国(G7)ではウクライナ侵攻後、フランスやドイツ、英国、イタリア、カナダの各首脳がキーウを訪問した。
【松本零士さん死去 85歳 「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」】
20日の毎日新聞は次のように報じた。

漫画家の松本零士さん=東京都練馬区で2015年2月2日午後4時59分、矢頭智剛撮影
「銀河鉄道999(スリーナイン)」「宇宙戦艦ヤマト」などで知られ、SFアニメブームの先駆けとなった漫画家の松本零士(まつもと・れいじ、本名・晟=あきら)さんが13日、急性心不全のため死去した。85歳。葬儀は近親者で営んだ。お別れの会を後日開く。喪主は妻で漫画家の牧美也子(まき・みやこ)さん。
福岡県久留米市生まれ。小学生から高校生時代を北九州市(旧小倉市)で過ごした。高校時代にデビューし、毎日小学生新聞でも連載した。卒業後に上京し、さえない若者の群像を描いた「男おいどん」(1971年)が出世作になった。
74年からアニメ「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの制作に携わり、77年に「銀河鉄道999」の連載をスタート。永遠の命を求める少年が謎の女性に導かれ、銀河を旅する物語はテレビアニメ化もされ、大反響を呼んだ。「宇宙海賊キャプテンハーロック」「クイーンエメラルダス」など、宇宙を舞台にした壮大なロマンが相次いでヒット。SF漫画家としての地位を不動のものにした。
日本宇宙少年団の理事長なども歴任。2001年紫綬褒章、10年旭日小綬章。12年にはフランスの芸術文化勲章シュバリエを受章した。19年11月、イベント参加のために訪れたイタリア北部のトリノで体調を崩し、脳卒中の疑いで入院したが、帰国後に回復。その後はツイッターで近況を発信するなどしていた。
【バイデン氏、17日にキーウ訪問決断 ロシアへ事前通告】
21日未明の日経ニュースメール【ワルシャワ=中村亮】によると、バイデン米大統領は20日のウクライナ訪問を数カ月前から極秘に計画してきた。不測の事態への緊急対応計画を練り、17日に訪問を決断した。ロシア側に事前通告したが訪問中に防空サイレンが鳴り響き、安全へのリスクを物語った。
ジョン・フィナー大統領副補佐官は20日、記者団にウクライナの首都キーウ(キエフ)訪問に関し、バイデン氏に同行したのは「極めて少数だった」と説明した。安全に配慮し、側近の数人と医療チーム、カメラマン、警護隊に限定した。
ホワイトハウスや国防総省、シークレットサービス(大統領警護隊)、情報機関のごく一部で数カ月前から訪問計画や緊急時の対応計画を作成した。バイデン氏は17日に安全保障担当の高官らと協議し、キーウ訪問を最終決定した。
サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)はウクライナ訪問をロシアに事前通告していたと明らかにした。「衝突回避の目的だった」と話し、ロシア側の反応に関してはコメントを控えた。
米大統領は米軍が駐留するアフガニスタンやイラクなどを予告せずに訪問してきたが、ウクライナに米軍は駐留していないため治安を管理しにくい。バイデン政権は最悪の事態を避けるためロシアへ事前通告が必要だと判断したとみられる。

電車の中を歩くバイデン氏=ロイター
ホワイトハウスは同行記者を通常の10人以上から2人に限定した。同行記者に送った訪問予定を記したメールの件名は「ゴルフ大会の到着案内」と偽装。首都ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地で記者から携帯電話を回収し、情報漏洩に細心の注意を払った。
バイデン氏は米東部時間19日午前4時15分(日本時間19日午後6時15分)に同空軍基地を出発した。ドイツのラムシュタイン空軍基地での給油を経て、ポーランド南東部のジェシュフ・ヤションカ空港に到着した。そこから車で1時間の距離にあるウクライナ国境付近の駅に向かった。
電車に乗り換えて暗闇のなかを約10時間かけてキーウに移動し、現地時間20日午前8時(日本時間20日午後3時)ごろに着いた。バイデン氏は80歳と最高齢の米大統領で、米紙ニューヨーク・タイムズは「骨の折れる旅路だった」と指摘した。
バイデン氏はキーウ市内でゼレンスキー氏と握手を交わすと、記者団からキーウ訪問の意義を問われた。今回が8回目の訪問だと触れて「来るたびにその意義は大きくなっている」と強調した。「(米国は)ここにいる。我々は離れない」と語り、ウクライナとの連帯をアピールした。キーウ滞在は約5時間だった。
サリバン氏は記者団に対し、会談について「今後数カ月の戦闘や戦闘で勝利するために必要な能力について議論した」と語った。国防総省は20日、ウクライナへ4億6000万ドル(約620億円)相当の武器を追加供与すると発表した。高機動ロケット砲システム「ハイマース」に搭載する弾薬や防空偵察レーダーを含んでいる。

バイデン氏は電車に乗り換えて暗闇のなかを約10時間かけてキーウに移動した=ロイター
バイデン氏のキーウ滞在中にも防空警報が鳴り響いた。隣国ベラルーシからロシア軍の戦闘機が飛び立ったためという。ベラルーシからミサイルが発射されると20分以内にキーウへ届く距離とされ、ウクライナが戦時下であることを象徴した。CNNテレビによると、ウクライナ東部では20日も断続的にロシアの砲撃が続いた。
バイデン氏は再び電車でポーランド国境まで戻り、首都ワルシャワに着いたのは現地時間20日午後11時10分(日本時間21日午前7時10分)ごろだった。
バイデン氏は21日、ワルシャワで侵攻をめぐる包括演説に臨む。侵攻から1年の節目を控え、ウクライナ支援の機運を再び盛り上げ、民主主義陣営の結束を固める狙いがある。バイデン氏は世界が民主主義と強権主義の競争に直面していると公言する。ウクライナ侵攻の結末は民主主義の行方も左右すると位置づける。

バイデン氏㊧は約19時間かけてキーウに着いた(20日、キーウ)=ロイター
【住友商事、EV用レアアースで脱中国 米や東南アに供給網】
21日の日経ニュースメールは次のように報じた。

MPマテリアルズが保有するマウンテンパス鉱山(米カリフォルニア州)
住友商事は電気自動車(EV)向けのレアアース(希土類)で、中国抜きのサプライチェーン(供給網)を構築する。これまで精錬などの工程を中国に依存してきたが、米国と東南アジアに切り替える。中国はレアアースの精錬で約9割の世界シェアを握る。日本でも地政学リスクへの意識が高まるなか、中国に依存しすぎない供給網の整備が加速してきた。
住商は米国のレアアースメーカー、MPマテリアルズからEVや風力発電機向けの永久磁石に必要なネオジムとプラセオジムの供給を受けている。これまでは住商が中国の精錬メーカーに販売し、精錬後の製品を中国メーカーが日本に輸出してきた。

今後は中国メーカーへの販売を順次縮小し、精錬やレアアースごとの分離までの工程をMPマテリアルズが担う。住商はこの後に買い取り、ベトナムやフィリピンなど東南アジアの複数の企業に、分離後のメタル化工程を委託する。
メタル化後の加工品は日系の永久磁石メーカーに販売する。販売量は計年間3000トンと日本のネオジムとプラセオジムの総需要の約3割に相当する。MPマテリアルズとは対日販売の総代理店契約を結び、一連の供給網組み替えは7月ごろに実施する。MPマテリアルズが米政府の補助金などを活用して精錬や分離の工程を担うため、供給網全体での製造コストは中国が工程を担うケースと大差はない。
米国地質研究所などによると、2022年時点で中国はレアアースの生産で約7割、精錬で約9割の世界シェアを占める。米中対立の懸念が高まるなか、米バイデン政権は自国内でレアアースの供給網強化を掲げている。
日本でも供給網内の中国依存度を下げ、有事の際の悪影響を最低限に食い止めようとする動きが相次ぐ。安川電機は27年に家電に使われるインバーター部品の新工場を福岡県行橋市に設け、中国などに依存してきた工程を内製化する。ダイキン工業は23年度中に、有事に中国製部品が無くてもエアコンを生産できる供給網を構築する。(柘植衛)
【プーチン氏演説「敗戦あり得ない」 ウクライナ侵攻1年】
21日、日経ニュースメール【ワルシャワ=中村亮】によると、ロシアのプーチン大統領は21日、「特別軍事作戦」を柱とする年次教書演説に臨んだ。ウクライナ侵攻から1年の節目が近づき、国民に作戦への協力を求めた。バイデン米大統領はウクライナへの長期支援を確約しており、米ロ対立は激しさを増す。
プーチン氏は21日正午(日本時間午後6時)からモスクワのクレムリン近くの会場で侵攻後初となる年次教書演説を行った。
ウクライナでの特別軍事作戦についてプーチン氏は、ロシアの安全保障に関する提案は欧米諸国に否定されたと述べた。「戦争を始めたのは西側諸国で、ロシアはそれを止めるために武力を行使している」と侵攻を正当化した。
プーチン氏は「安全保障を確保するために必要な課題を解決していく」と述べ、まもなく1年を迎える侵攻を継続する考えを強調した。「戦場で敗北することはあり得ない」とも明言した。
ロシアと米国の新戦略兵器削減条約(新START)について「参加を停止する」と述べた。締結時と環境が激変したと説明し「全て米国の責任だ」と主張した。条約からの離脱は否定した。
2024年に予定される次期大統領選については「法律を順守して行われる」と述べ、予定通り来年3月に実施されるとの考えを示した。
演説は1時間45分ほどで終了した。ロシアメディアによると年次教書演説としては過去最長だった。
ロシアは2022年2月21日にウクライナ東部で親ロ派武装勢力が支配する「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を独立国家として承認した。今回の演説は独立承認と2月24日の侵攻開始から1年に合わせたものとみられる。
ロシア憲法では大統領が国の現状や内政、外交の方向性について年に1度、議会で演説することになっている。ウクライナ侵攻をめぐり演説の時期や内容への関心が高まるなか、22年の演説は日程調整の難航を理由に延期されていた。
バイデン氏は21日、ポーランドの首都ワルシャワでドゥダ大統領と会談した。バイデン氏はポーランドがウクライナから難民を積極的に受け入れていることを念頭に「ポーランドの支援に感謝したい」と強調。さらなる協力に意欲を示した。侵攻への対応を通じて「北大西洋条約機構(NATO)はかつてなく強力になった」と語った。

バイデン米大統領=ロイター
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は同日、記者団にウクライナ支援に関し「ポーランドは有志連合の強固な結束を推進してきた」と述べた。ポーランドを含む中東欧諸国はロシアの脅威の最前線に位置し、侵攻後に米軍が部隊の派遣を大幅に増やしてきた。
首脳会談に続き、バイデン氏は侵攻から1年の節目を念頭に包括演説に臨む。ウクライナの長期支援を視野に民主主義陣営の結束を固める構えだ。ロシアが武力による国境変更に成功すれば第2次世界大戦後に築いたルールに基づく国際秩序が崩壊するとの危機感がある。民主主義と強権主義の競争の行方も左右するとみる。
バイデン氏は20日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問した。ゼレンスキー大統領と会談し「(米国は)ここにいる。我々は離れない」と断言し、ウクライナ支援の機運を再び盛り上げた。ウクライナへの追加の軍事支援や対ロ制裁強化を表明し「プーチン(ロシア大統領)の征服は失敗している」とも述べた。
ウクライナ軍との戦闘激化でロシア軍の損失は拡大しているもようだ。英国のシンクタンク国際戦略研究所(IISS)が今月まとめた軍事情勢の報告書「ミリタリー・バランス」最新版によると、ロシア軍は侵攻開始から1年間で戦車を約4割失った。

ブリンケン米国務長官が18日、中国外交担当トップの王毅(ワン・イー)氏との会談でロシアへの殺傷力のある軍事支援に強く反対したのは、こうした損失を補う可能性があるからだ。米欧はウクライナ軍に戦車の供与を増やす計画だが、引き渡しの時期が遅れ気味だ。
英国防省はロシア側の死傷者数が17万5000~20万人となったと指摘する。ロシアは22年9月に部分動員令を発令し、30万人超の予備役を招集した。ロシアの独立系メディアは今後も戦況に応じて追加動員すると指摘しており、戦況は消耗戦の様相を呈している。
ロシア軍はドネツク州で攻撃を続けており、ウクライナ東部戦線での戦闘は激しさを増している。ロシア軍は同州バフムトなどの陥落を目指して攻勢を強めている。南部ヘルソン州でも戦闘が激化する懸念が高まっている。
【ウクライナ市民「勝って終わらせる」 侵攻1年ルポ】
22日未明、日経ニュースメールは次のように報じた。

広場には戦死した地元出身兵士の写真が掲げられる(21日、リビウ)
【この記事のポイント】
・ウクライナ西部リビウでは防空警報がほぼ毎日鳴り響く
・戦いの終わりはみえないが住民たちに屈する様子はない
・国境の車の出入りは盛んで経済活動が粘り強く続く
【リビウ(ウクライナ西部)=木寺もも子】
ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく1年となる。前線から遠いウクライナ西部リビウには国内の避難民らが集まり、街の中心部はにぎわいを見せる。長期化する戦争は日常生活に影を落とすが、ロシアに抵抗するウクライナ市民の精神は侵攻から1年を経ても衰えることはない。
ミサイルやドローンによる攻撃の危険を知らせる防空警報はほぼ毎日鳴り響く。多くの建物は地下階を防空のための「シェルター」に設定しているが、ホテル従業員のタチアナさんは警報を聞いて避難する人はほとんどいないと話した。市内に着弾することはまれなうえ、繰り返す警報に「慣れてしまった」という。
「新型コロナウイルス禍が終わったかと思えばこれ。いつまでこんなことが続くのか」。戦いの終わりはみえないが屈する様子はない。タチアナさんは「ウクライナが勝って終わらなければいけない」と言葉に力を込めた。
人口約70万人の西部の中心都市リビウ。前線に近い東部などから逃れた避難民や、外国の支援団体関係者らが集まる。
ウクライナの2022年の国内総生産(GDP)は前年比で3割減ったが、政府が企業の西部移転を推奨していることもあり、サドビー市長によると同市の人口は侵攻前から15万人増えた。郊外には新しい高層集合住宅の建設現場もみられた。

西部リビウには東部などから逃れた国内の避難民が集まる(20日)
ポーランドやオーストリア・ハンガリー帝国などの支配下に置かれた歴史があるリビウはウクライナの中でも西側の雰囲気が強く、旧市街は観光地でもある。チョコレートやコーヒーが有名で、しゃれたカフェは市民や訪問客でにぎわう。
警報のなかで日常生活を続ける市民の姿には、長期化する戦争を受け止め、ロシアへの抵抗を続ける覚悟が見て取れる。
東部戦線から1000キロメートル離れたこの街でも戦争の影が濃さを増す。市内には団結を示す国旗のモチーフが並び、迷彩色の軍服を着た兵士があちこちにみられる。兵士を満載したバスの車内を見れば大半が若い女性兵で、目が合うとにっこり笑って窓越しに手を振ってくれた。
カフェやレストランの前には発電機が並ぶ。店員によると、前回使ったのは昨年末のミサイル攻撃時で、リビウ市内の大半が停電した。ロシアは昨秋以降、市民生活の混乱を狙ってウクライナ全土で発電所などのインフラを標的にし、電力の供給は全国で半減した。

ロシア軍のインフラ攻撃による停電に備え店頭に発電機が並ぶ飲食店も(20日、リビウ)

中心部には「ウクライナはいまあなたを必要としている」と書かれた軍の広告も(20日、リビウ)
広場には今月上旬に戦死した地元出身の兵士の写真が掲げられ、花束が手向けられていた。43歳の男性兵士は市内の中学校、専門学校を卒業しトラック運転手として働いていたが、志願して東部ハリコフ州やドネツク州で戦った。妻と2人の子供がいたという。
ポーランドからウクライナ領内に入ると最初に気づくのは道路の違いだ。ポーランド側の高速道路が片側2車線で広々としているのに対し、ウクライナ側は1車線で舗装が粗く、車の揺れも大きい。
国境の車の出入りは盛んだ。特に欧州連合(EU)への玄関口であるポーランドに向かっては、数キロメートルに及ぶトラックの車列が続く。ドイツのメーカーにスキー場のリフト用の金属材を運んでいた男性運転手はもう何日も車内外で寝泊まりしているという。長蛇の列は侵攻前から続く光景で、経済活動が粘り強く続いていることが分かる。
【トヨタ、賃上げ・一時金満額回答 2年連続初回で表明】
22日の日経速報メールは次のように報じた。
トヨタ自動車は3年連続の満額回答を組合側に提示した。

トヨタ自動車は22日、2023年春季労使交渉で、賃上げと一時金について労働組合の要求に満額で回答した。満額回答は3年連続で、初回の労使交渉で表明するのは2年連続。賃上げについては「過去20年で最高水準」(トヨタ労組)としていた。物価高への対応が課題になる中、産業界全体に波及するかどうかが焦点となる。
労組側の要求は、一時金が満額回答だった22年を0.2カ月分下回る6.7カ月分。賃上げは全組合員平均の要求額は非公表で、15の職種・階級ごとに細分化して提示した。若手に重点的に配分し、例えば総合職で上から2番目の階級の組合員「事技職・指導職」で最高の月9370円の賃上げを要求していた。
賃上げは賃金を一律で引き上げるベースアップ(ベア)や定期昇給に当たる部分を含む。ベアを要求していることは3年ぶりに明らかにしていた。具体的なベア要求額は非公表としている。
会社側の正式回答日は3月15日だった。トヨタの労使は年間を通じて協議を進めている。今後春季交渉では職場の課題や働き方の議論を続けていくとしている。
【ホンダ5%賃上げ 要求に満額回答、初任給1割上げも】
同22日晩の日経速報メールは次のように伝えた。

ホンダは組合要求に満額回答し5%の賃上げに踏み切る
ホンダは22日、2023年の春季労使交渉で労働組合の要求に満額で回答した。組合は基本給のベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分と定期昇給(定昇)合計で月1万9000円(組合員平均)の賃上げを求めていた。賃上げ率は5%程度。大学新卒の初任給を1割引き上げることも決めた。ホンダはこれまでは複数回の交渉を重ねて3月に回答していたが、過去最速となる2月下旬での異例の早期決着となった。
同日午前開いた実質的な初回交渉で会社側が回答した。ベアは月1万2500円と1990年以降で最も高い額になる。率にすると3.3%だ。一時金も6.4カ月分の要求に対し満額回答した。ホンダは前年交渉ではベアで月3000円、一時金は6カ月分とする組合要求に満額回答していた。

物価上昇に対応すると同時に賃上げでEVなど次世代車開発を担える人材の確保を急ぐ(22日、東京都港区の本社での交渉の様子)
労組の上部団体である連合は23年春交渉でベアで約3%、定昇を含めて計約5%の賃上げを求めている。ホンダの賃上げ率は連合が求める水準と同じになる。
新入社員の初任給の引き上げも決めた。大学新卒の場合、現行の給与から10%増の25万1000円にする。ホンダは40年に全新車を電気自動車(EV)か燃料電池車(FCV)にする方針を掲げている。賃金の原資を全従業員一律ではなく、主に若手社員に厚めに配分することでEVなど次世代車開発などを担える人材の確保を急ぐ考えだ。
賃上げの内容について今後組合側と妥結し、6月から実施する予定だ。非正規の期間従業員などの賃上げも組合員同様に検討していく。
会社が組合要求に回答する時期はこれまでの春交渉で最も早いという。近年は3月上旬だった。ホンダの平原克彦労政課長は「急激な物価上昇による社員の不安を取り除き、従業員が変革に集中できるようにする」と述べた。労組幹部は異例の2月決着について「労使の方向性が早期に一致した」と話す。
グループの自動車部品や販売会社などでも賃上げ機運が高まる。ホンダグループの労働組合でつくる全国本田労働組合連合会(全本田労連)に加盟する計44単組は、23年春交渉で平均月約9000円のベアを要求した。ベア率は3.3%で額は前年に比べ3.6倍になるという。完成車メーカーだけでなく、部品会社や関連の中小企業を含めて業界に賃上げが波及するかが焦点となる。
【核融合、特許競争力で中国首位 未来のエネルギーに布石】
22日の日経ニュースメールは次のように報じた。

核融合の技術開発を巡る国際競争は激しくなっている(米ローレンス・リバモア国立研究所提供=ロイター)
次世代のエネルギー技術として2040年代以降の実用化が期待される核融合の研究で中国の存在感が高まっている。有力な特許を集計すると中国が首位で、米国(2位)と日本(4位)を上回った。核融合は再生可能エネルギーとともに脱炭素の切り札になる可能性がある。22年末には米国で実用化に向けた大きな進展があった。未来のエネルギー源を巡る国際競争が激しくなっている。

核融合は太陽と同じ反応を再現することから「地上の太陽」と呼ばれる。水素の仲間同士の原子核がぶつかる際に発生するエネルギーを発電に利用する。理論上は1グラムの燃料から石油8トン分のエネルギーが出る。
発電時に二酸化炭素を出さず、燃料の供給をやめれば反応が止まるため原子力発電に比べて安全上のリスクも抑えやすいとされる。燃料となる重水素やトリチウムは海水などから生産できることもあり、実用化できればエネルギー源を一変する可能性もある。
22年12月には発生したエネルギーが投入量を上回る「純増」を実験で初めて達成したと米国が発表した。実用化に向けて日米中などが参加する国際熱核融合実験炉(ITER)など国際プロジェクトも進んでいる。
調査会社のアスタミューゼ(東京・千代田)が日米欧中など30カ国・地域で出願された関連特許を集計した。11〜22年9月までに公開された1133件について実現性や権利の残存期間など特許の競争力を点数化(スコア)して順位付けした。

出願している企業や研究機関の国籍別では中国が首位(出願件数も首位)だった。15年以降に有力な特許を大幅に増やして米国を逆転した。中国科学院が持つ核融合炉の内壁に使う特殊なセラミック複合材料の技術は企業や研究機関など組織別の上位20社の特許の中で最も評価が高かった。
核融合は炉などの部品を超高温にしても壊れないように冷やしたり、狙った場所に原子核をぶつけたりする必要があるなど多くの技術を組み合わせないと実現できない。中国は国全体の特許が炉など同じ分野でつながっていることが多く、実用性の高い特許が多いのが特徴だ。組織別の順位でも中国科学院が2位、核工業西南物理研究院が3位につけた。
慶応大学の岡野邦彦訪問教授は「中国は早めに動いて着実に開発レベルを上げようという姿勢がうかがえる」と語る。「ITERの成果を待たずに国内で試験炉などの計画を進めている。設計は無理のない堅実なつくりで、メンテナンスのしやすさまでよく考えられている。国の予算も手厚い」と指摘する。
2位は米国(出願件数も2位)だった。組織別の20位以内に最多の7社・機関が入った。スタートアップなど民間主導で技術開発が進む。12位のヘリオン・エナジーは核融合の反応から電気を効率よく得る技術などの特許を持つ。グーグルも18位につけ、核融合の反応速度を高めるための装置や構造について研究しているようだ。
米国は00年代まで特許数などで他国を圧倒していた。近年では中国に急速に追い上げられている。バイデン政権は民間企業の商用化を後押しするため22年9月に5000万ドル(約67億円)の資金支援を実施する方針を打ち出すなど、国家として技術開発の支援体制を強化している。
日本は4位だった。浜松ホトニクスが組織別で5位、トヨタ自動車が7位につけた。浜ホトは米国で昨年末に純増を達成したレーザーを水素の仲間の原子核に照射する技術に強い。レーザーを制御し、核融合に不可欠なエネルギーの密度を高める特許の競争力が高い。トヨタは関連特許13件のすべてが浜ホトとの共同出願で、浜ホトと組んで研究を進めている。
組織別の首位は英国のスタートアップ、トカマク・エナジーだった。22年に実験装置で核融合反応に必要なセ氏1億度の超高温の加熱状態を実現した初の民間企業だ。特許の競争力で2位を大幅に引き離している。英国は国別で3位だった。アスタミューゼには日本経済新聞社が出資している。(猪俣里美)
【G7、ウクライナ支援5.3兆円に拡大 財務相会議】
23日の日経ニュースメール【ベンガルール=三島大地】によると、日米欧の主要7カ国(G7)は23日、インド南部ベンガルールで財務相・中央銀行総裁会議を開いた。2023年のウクライナへの財政・経済支援額をこれまでの320億ドル(約4.3兆円)から390億ドル(約5.3兆円)に増やすことなどを柱とする共同声明を採択した。世界的なインフレや低所得国の債務問題への対応で連携を強化することも確認した。

20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議にあわせて開催した。日本からは鈴木俊一財務相と日銀の黒田東彦総裁が出席し、日本が議長国を務めた。ウクライナのマルチェンコ財務相もオンラインで参加した。
「G7はウクライナ支援に対する揺るぎないコミットメントと、ロシアへの非難で一致することを確認した」。23日に開いた記者会見で鈴木財務相は強調した。共同声明では「制裁の効果を注意深く監視し、必要に応じてさらなる行動を取る」と明記した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は同国の23年の資金需要を380億ドル規模(約5.1兆円、復興費を除く)と見積もっていた。会議に出席するためインドを訪問中のイエレン米財務長官は23日に記者会見し、ウクライナに今後数カ月でおよそ100億ドルの追加経済支援を実施すると述べた。鈴木財務相も「日本としてもウクライナに新たに55億ドル(約7400億円)の財政支援を行う」とした。
ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格の上昇で、欧米などではインフレ率が2ケタに達する国もある。共同声明は「(中央銀行は)各国間の負の波及効果の抑制に資するよう、政策スタンスについて明確に意思疎通を行う」と確認した。
新興国の債務問題についても「(G7の)取り組みを強化する」とした。国際通貨基金(IMF)によると、低所得国の約60%がすでに債務危機に陥っているか、陥る可能性が高いという。G7は債務国と債権国が協力して債務の正確性や透明性を向上する取り組みを進める考えだ。
【ウクライナ侵攻1年 ロシア、20世紀型大国の落日 変わる世界秩序㊤】
23日の日経ニュースメールは次のように報じた。

プーチン氏㊧とゼレンスキー氏
【この記事のポイント】
・短期間での政権打倒を想定したロシア、長期化は誤算
・資源や軍事力など「20世紀型大国」の行き詰まり示す
・台湾海峡をめぐる東アジアの安全保障にも影を落とす
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めて24日で1年となった。短期間での政権打倒と全土の制圧は容易と見誤り、長期化した戦争の現状は20世紀型の大国であるロシアの行き詰まりを示す。侵攻は核抑止の均衡を揺さぶり、台湾海峡をめぐる東アジアの安全保障にも影を落とす。
「1分前に攻撃ドローン(無人機)が北に飛んでいきました」。ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊に住む20代の学生、パブロさんは民間の技術者が開発したアプリ「ePPO」経由で軍にドローンやミサイルの飛来情報を報告している。
市民の目撃証言とスマートフォンの全地球測位システム(GPS)機能を活用し、情報を収集した軍は限られた撃墜要員や兵器を最適の場所で活用できるようになった。市民の協力を合わせた防空態勢のIT(情報技術)化も奏功し、ミサイル攻撃への迎撃率は昨年10月の5割から8割超に向上した。
「ルールと人間性、予測可能性に基づく世界秩序の未来が決まりつつある」。ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、電撃訪問したバイデン米大統領をキーウに迎えた。同日夜、ビデオ演説で改めて西側の支援拡大を呼び掛けた。
2014年に南部クリミア半島を短期間、ほぼ無血で併合した成功体験からロシアはウクライナの軍事能力を過小評価した。だが、東部で続いた対ロ紛争で経験を積み、北大西洋条約機構(NATO)式の戦い方を身につけたウクライナ軍は侵攻当初に陥落が危ぶまれた首都を守り抜いた。
ゼレンスキー氏は亡命の勧めを断り、国内にとどまって国民を鼓舞した。「1年がたち、キーウは持ちこたえている。ウクライナ、民主主義は持ちこたえている」。20日、バイデン氏は簡潔な表現で称賛を送った。
人口で3.3倍、国内総生産(GDP)で9倍のロシアに対し、ウクライナが示してきた高い強靱(きょうじん)性と復元力。支えたのは、独立後の30年で育んできた独自の国民意識、米欧による巨額の軍事・財政支援とデジタル技術の柔軟な活用だ。
米データ解析会社のパランティア・テクノロジーズが提供した人工知能(AI)のソフトウエア「メタコンステレーション」は商業衛星や熱センサー、偵察ドローン、市民からの報告などの膨大なデータを瞬時に解析し、敵の位置情報を把握する。過去の戦闘から「学習」し、東部バフムトなどの激戦地で戦う兵士を支援する。
「ミサイル攻撃を受けても、複数の地下シェルターから職員がリモート管理できるようになった」。西部リビウの電力制御施設の責任者オレグさんは、侵攻後にシステムを改良し、停電防止や早期の復旧につなげていると強調する。
広大な領土、豊富な天然資源、人口と、これらに裏打ちされた軍事・工業力。20世紀後半、第2次大戦に勝利した米国とソ連という2つの超大国は激しい競争を繰り広げた。
「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的悲劇」。ロシアのプーチン大統領は、05年の年次教書演説でこう嘆いた。
冷戦に敗れ解体したソ連、前身の帝政ロシアへの憧憬は偏執に転じ、「我々の歴史的土地」と呼ぶウクライナを取り戻し、帝国の再構築を図ろうとあがく無謀な戦争に及んだ。
規模が物を言った20世紀から、頭脳やネットワークが競争を左右する21世紀へ。ウクライナの健闘は、世界秩序を形作る要因の変化を示す。
「35年までに最大42%減る」。英石油大手BPは1月末に発表した年次報告書で、19年に日量1200万バレルだったロシアの原油生産は減少傾向をたどり、35年に700万バレルまで落ち込む可能性があると指摘した。

主因は、高度な生産技術を持つ米国企業の撤退だ。油田の掘削・運営分野の世界3強はすべて米企業で、ロシアはその技術に深く依存してきた。侵攻後に3社は事業の停止や縮小を決定。技術的な理由から減産は時間の問題になっている。
ロシアは脱炭素の潮流を自らの手で加速させた。天然ガス供給の遮断など、エネルギーを武器化したことで、最大の顧客だった欧州連合(EU)は脱ロシアにかじを切った。世界各国は経済のグリーン化を推し進める。
資源国ロシアの落日は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など中東の産油国にとっても人ごとではない。強権体制を支える石油・ガス収入の急減は体制に混乱をもたらしかねないからだ。
冷戦後の国際社会をけん引してきた米国もまた国外では中国の挑戦に、国内では社会の深い分断に直面し、指導力に衰えがみえる。きしむ世界の現実は新しい秩序への波乱に満ちた道のりを映し出している。
(ウクライナ西部リビウ=田中孝幸)
【岸田首相、共同声明巡る植田氏の発言「違和感ない」 侵攻1年「新たな対ロ制裁示す」】
同じ24日夕方、日経ニュースメールは次のように報じた。
岸田文雄首相は24日、首相官邸で記者会見した。次期日銀総裁の候補の植田和男氏が総裁に就任した場合に「早いタイミングで会い、政府と日銀の連携を確認したい」と語った。政府、日銀の共同声明についての植田氏の同日の国会での発言を巡り「政府として特段違和感のある内容はなかった」と回答した。
植田氏の金融政策の正常化への言及に関し「特段大きな変化を示すような発言ではない」と話した。植田氏を「国際的に著名な経済学者であり、金融分野に高い見識も持っている」と評価した。
対ロ制裁「新たな考え示す」
ロシアによるウクライナ侵攻から1年が経過したことをふまえ同日夜に開く主要7カ国(G7)首脳のオンライン協議で「新たな対ロ制裁の考えを示す」と明かした。オンライン協議にはウクライナのゼレンスキー大統領も参加を予定する。
「一方的な現状変更を断じて許すことがないよう、ウクライナへの支援とロシアへの制裁を着実に実施する」と訴えた。
中国に「責任ある対応求めた」
米国が中国によるロシアへの軍事支援を懸念していることには「関連情報を収集・分析する。関係国と緊密に連携して明確なメッセージを国際社会に発することが重要だ」と説明した。
林芳正外相が中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員に「責任ある対応」を強く求めたと改めて紹介した。第三国によるロシアへの軍事支援へ「G7としてそうした支援を停止するよう呼びかける」と主張した。
ロシアのプーチン大統領が新戦略兵器削減条約(新START)への参加停止を決めたことへ「懸念を表明する」と発言した。
「77年間の核兵器不使用の歴史がロシアの威嚇によって汚されることはあってはならない」と力説した。「核軍縮への取り組みを続けることがますます重要となっている。G7における議論を先導していく」と語った。
地雷探知、農業で協力
ウクライナに「人道支援、復旧・復興支援と財政支援を含め計71億ドルの支援を表明してきた」と振り返った。「殺傷性のある装備の提供には制約がある。日本の強みを生かし、支援をきめ細かく実施する」とも説いた。
カンボジアと協力してウクライナを対象に地雷探知機の使用方法の研修を開始したと明らかにした。ウクライナへ地雷の探知機や除去機の供与を進める考えを示した。
ウクライナ産のトウモロコシなどの種子を調達、提供し同国の生産能力の回復支援につなげる方針を表明した。
2023年は5月のG7広島サミット(首脳会議)などアジアで国際会議が相次ぎ開かれる。「アジアから世界に信頼される日本の外交力を発揮するよう最大限努力する」と意気込みをみせた。「平和、秩序を守るための結束をアジア各国に働きかける」と提起した。
ゼレンスキー氏を広島サミットに招待するかどうかを問われ「招待国、招待機関は検討しているところで、決まっていない」と答えた。
ウクライナ訪問「諸般の事情踏まえ検討」
ウクライナ訪問は「安全確保や秘密保護など、諸般の事情を踏まえながら検討している」と述べるにとどめた。具体的な時期は決まっていないという。
「日本国民の連帯の姿勢はウクライナ国民に必ず伝わっている」と言明した。地方自治体や企業による避難民の支援などに謝意を表した。
元徴用工問題の解決に向けた日韓首脳会談の開催は「緊密に意思疎通をしていきたいが、今後の見通しは何も決まっていない」と話した。
大企業で賃上げに前向きな動きが出ていると触れた。そのうえで「中小企業に賃上げの流れを波及させる」と強調した。
3月13日からマスク着用を「個人の判断」に委ねる政府方針を受け、自身のマスク着用は基本的にはマスク着用が奨励される場面などを除き「マスクを外して過ごす機会が増える」と見込んだ。「場面に応じて適切に判断する」とも付け加えた。
【中国、ロシアにドローン100機売却か ドイツ誌報道 ウクライナ侵攻1年】
同じ24日晩、日経ニュースメール【ベルリン=共同】によると、ドイツ有力誌シュピーゲル(電子版)は24日までに、中国の無人機(ドローン)メーカーがロシア軍にドローンを売却し、ロシアでの量産も計画されていると報じた。早ければ4月までに100機を納入する交渉が進められている。
シュピーゲルによると、中国メーカーは4月までにロシア国防省に納入するため、100機のドローンを製造することで合意。35〜50キロの弾頭を搭載でき、ロシアがウクライナでの攻撃に主に使用しているとされるイラン製無人機シャヘド136に似ているという。
さらにロシアが自国でドローンを量産できるよう、中国メーカーが部品と技術を提供する計画も進められている。計画では月に100機を製造できるようになる。
シュピーゲルによると、中国によるロシア支援計画は他にもあり、中国人民解放軍傘下の別の企業はロシアの戦闘機などの交換部品を納入することも計画していた。
中国外務省の汪文斌副報道局長は24日の記者会見で、ロシアへのドローン売却計画を「聞いたことがない」と述べ「中国は紛争地域や交戦国に対して武器を売却しない」と主張した。
【G7首脳、声明でロシアを非難 第三国の支援停止求める】
同じ24日晩、日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・G7首脳が対ロシア制裁強化とウクライナ支援を記した声明
・中国を念頭に、第三国のロシア支援の停止求める
・日本は新たに55億ドルの財政支援を表明
主要7カ国(G7)首脳は24日、ロシアによるウクライナ侵攻から1年を迎えるのにあわせてオンライン会議を開いた。軍事侵攻を非難し、対ロシア制裁の強化とウクライナ支援の継続を記した首脳声明を出した。
【関連記事】ウクライナ侵攻1年、G7首脳声明の要旨
ロシアへの武器提供を検討している可能性がある中国を念頭に、第三国のロシア支援の停止も訴えた。オンライン会議は岸田文雄首相が今年のG7議長国として初めて主催した。ウクライナのゼレンスキー大統領も参加した。
G7各国はロシア軍のウクライナ全土からの即時撤退を求めた。第2次世界大戦後、核兵器の使用がなかったことの重要性を強調した。
食料・エネルギーの供給不足などウクライナ侵攻を通じて生じた国際課題にG7が結束して対処する姿勢を明確にした。
日本は新たに55億ドル(7400億円程度)の財政支援を打ち出した。ロシアの個人・団体、金融機関の資産凍結や輸出禁止物資の拡大などの対ロシア制裁も示した。
首相はオンライン会議に先立ち記者会見し、ウクライナへの追加支援を表明した。農業の生産力回復へ同国産のトウモロコシなどの種子を調達し提供する。電力復旧へ10機程度の変圧設備や140台ほどの電力関連機材を供与する。
地雷の探知機や除去機、がれきを取り除く建機を送る。「日本の強みを生かしてウクライナに寄り添う」と述べた。
ゼレンスキー氏は24日に公表したビデオメッセージでロシア軍との1年の戦闘を振り返った。「我々は生き延び、負けることはなかった。今年は勝利するためにあらゆることをする」と語った。
中国外務省は24日、ウクライナ侵攻をめぐる独自の仲裁案を発表した。ロシアとウクライナの双方に停戦への対話を求め、中国が和平実現へ「建設的役割」を担うと主張した。
【ウクライナ大統領、習氏と会談に意欲 仲裁案「協力も」】
25日未明、日経ニュースメール【リビウ(ウクライナ西部)=田中孝幸】によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、首都キーウ(キエフ)で記者会見した。ロシアによる侵攻の終結に向け独自の仲裁案を示した中国の姿勢を歓迎し、中国の習近平国家主席との会談にも前向きな姿勢を示した。一方で、ウクライナ全土からのロシア軍の撤退を含まない和平案は受け入れない方針を重ねて表明した。
ゼレンスキー氏は中国の仲裁案について、「国際法の尊重や領土保全(の原則)と合う考えがある。この点で中国と協力しよう」と述べ、一部を評価した。提案は具体的な和平計画ではなく「いくつかの考え方にすぎない」とも指摘した。
米欧を中心に中国によるロシアへの軍事支援に警戒が広がっている点については、「中国がロシアに武器を供与しないと信じている。これは私にとって極めて重要なことだ」と供与を控えるよう強く求めた。
習氏との会談については「私は習氏と会うつもりだ。両国に有益で世界の安全保障に寄与する」と語ったが、具体的な時期や場所には言及しなかった。
2022年2月24日のロシアによる侵攻開始前から、ウクライナと中国は経済面を中心に関係を深めてきた。ゼレンスキー氏の発言の背景には、大国である中国に配慮を示し、ロシア支援に傾斜することを防ぎたい思惑がある。
今後のロシアとの戦闘に関しては「支援国が課題をこなせば勝利できる」と指摘。西側各国に一層の軍事支援を呼びかけた。米欧がウクライナから離れた場合、ロシアが北大西洋条約機構(NATO)加盟各国にとって深刻な脅威になるとも主張した。
中国の仲裁案とは、同国外務省が24日に発表した「中国の立場」を示す文書だ。ウクライナとロシアの直接対話の再開を求め、中国が建設的な役割を果たす意欲をみせるが、具体策は記していない。「すべての国の主権と独立、領土の一体性の保障」など計12項目を並べ、核兵器の使用や原子力発電所への攻撃反対を表明した。
中国は欧州連合(EU)加盟国と隣接するウクライナを広域経済圏構想「一帯一路」の要衝と定め、関係強化を目指してきた。中国初の空母「遼寧」は、1998年にウクライナから購入した中古品を改造したものだ。中国製の新型コロナウイルスワクチンも積極提供していた。
21年6月の国連人権理事会で日米欧などの40カ国超が中国の新疆ウイグル自治区における人権状況に懸念を示す共同声明を提出した際、ウクライナは参加を見送った。中国側に配慮を示していた。
ゼレンスキー氏は米欧の支援継続に腐心している。ロシアの侵攻が長引き、米欧の有権者に「ウクライナへの過度な支援」を疑問視する動きが広がっている現状を警戒する。
【G20財務相会議、共同声明見送り 対ロシア制裁で溝】
25日晩の日経速報メール【ベンガルール=三島大地、飛田臨太郎】によると、インド南部ベンガルールで開かれた20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が25日、閉幕した。米欧は共同声明を採択し、ロシアによる戦争を非難する文言を明記するように要求していたが、まとまらなかった。ウクライナ侵攻から1年の節目で、G20内の対立が改めて浮き彫りになった。
会議閉幕後に記者会見した鈴木俊一財務相は「日本を含め、多くの国がロシアの侵略行為を最も強い言葉で非難した」と述べた。「ロシアと中国がウクライナ侵略が世界経済に悪影響を与えていることに合意しなかった」と共同声明見送りの理由を説明した。ドイツのリントナー財務相は中国が戦争を非難する共同声明を阻止したとして「遺憾だ」と述べた。

ロシア批判の共同声明は米欧が強く求めていた。イエレン米財務長官は23日「戦争がウクライナと世界経済に与えた影響を強く非難すべきだ」と主張。フランスのルメール経済・財務相も24日「ウクライナの戦争に関するバリでの首脳宣言から一歩でも後退することに反対する」と述べた。
昨年11月、インドネシア・バリのG20サミットでまとめた首脳宣言には「ほとんどのメンバーは戦争を強く非難した」と明記した。今回、インドは「戦争」の文言を盛り込むことに反対したロシアに配慮した。
議長国インドの裁量でまとめる議長総括には首脳宣言と同様の文言を盛り込み「ロシアと中国を除くメンバーは賛同している」と加えた。米欧の意見にも一定の理解は示した。
今回の財務相・中銀総裁会議はインドが今年のG20議長国となって初めて開催した。グローバルサウス(南半球を中心とした途上国)の盟主を自任するインドの対ロ姿勢は新興国全体の機運にも波及する。米欧が、昨年まとめたG20声明から後退する事態を避けたかったのはこのためだ。
米欧日の経済制裁に参加しないインドはロシアからの輸入額が22年4〜12月に前年比5倍に増えた。制裁の効果が弱まり、ロシアに戦争を継続する余力を与えている。戦争が長期化する中で、今後の新興国とロシアの経済関係が情勢を左右する要因になりつつある。会議では新興国の債務問題も主要課題として協議した。
議長総括では米欧の利上げについて「負の波及効果の抑制に資するよう金融政策の姿勢について明確に意思疎通する」と記した。世界経済の見通しを巡っては「昨年10月の会合以降、緩やかに改善した」と指摘し、同時に「成長は鈍いままで、下方リスクが根強い」とも加えた。
【内閣支持4ポイント上昇43%、植田日銀総裁案に評価48%】
26日晩の日経速報メールは次のように伝えた。
日本経済新聞社とテレビ東京は24〜26日に世論調査をした。岸田文雄内閣の支持率は43%で2023年1月調査(39%)から4ポイント上がった。日銀総裁に植田和男氏を起用する方針は「評価する」が48%で「評価しない」の18%を上回った。

内閣支持率が上昇するのは2カ月連続で40%台を回復するのは22年10月以来4カ月ぶり。新型コロナウイルス対応のマスク着用を3月13日から個人の判断に委ねることなどが評価された。
内閣を「支持しない」と答えた割合は1月の54%から49%へ低下したものの、「支持する」を上回る状況は6カ月連続となった。

日銀総裁人事を巡っては13年に黒田東彦氏を起用した際の調査でも質問した。聞き方に違いがあるため単純比較はできないが、「評価する」が58%、「評価しない」は17%だった。
日銀の金融緩和に関しては「続けるべきだ」と「続けるべきではない」がそれぞれ39%で拮抗した。植田氏は24日の衆院議院運営委員会で所信表明し、金融緩和を当面続ける姿勢を強調した。
優先処理してほしい政策を複数回答で聞く質問で最多は1月と同じ「景気回復」(45%)で、2位は前回の3位から順位を上げた「子育て・少子化対策」(39%)だった。
政党支持率は自民党が39%で、立憲民主党は9%、日本維新の会は8%、支持政党がない無党派は27%だった。前回調査はそれぞれ42%、8%、6%、27%だった。
調査は日経リサーチが全国の18歳以上の男女に携帯電話も含めて乱数番号(RDD)方式による電話で実施し819件の回答を得た。回答率は37.0%だった。
【次世代車特許の出願、Amazonが首位 米テック5社分析】
27日朝、日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・「NIKKEI Mobility」がアスタミューゼと協力して分析
・アマゾンは物流のデジタル化、グーグルは自動運転に力
・次世代車開発で車大手とテック大手の合従連衡加速か
米テック大手5社の自動車の次世代技術関連特許を分析したところ、出願数でアマゾン・ドット・コムが首位だった。新興企業の買収によって、グーグルが強かった自動運転分野でアマゾンの出願数が急増した。次世代車技術の競争力は生産規模ではなく人工知能(AI)など知的財産が左右する。テック大手の台頭で自動車の競争や協業のあり方が変わる。=詳細な分析を含む「Mobility Tech特許 2023 GAFAMのデータから」はこちらからご覧いただけます(NIKKEI Mobility会員限定で公開中)
「Mobility Tech特許 2023」へ

次世代車は自動運転や電動化など「CASE」と呼ばれる新領域の技術なしには開発できない。2月上旬に決着した日産自動車と仏ルノーの資本関係見直しではこうした知財が焦点となり、ルノーはグーグルとの提携も決めた。アップルは車各社に独自のソフトウエア採用を働きかけるなど、テック大手と車大手が接近している。

日本経済新聞社の専門メディア「NIKKEI Mobility」はテック大手の知財の強さを調べるため、アスタミューゼ(東京・千代田)と協力し「GAFAM」と呼ばれるアルファベット(グーグル親会社)など5社が2003年以降に出願し公開された約20年分の特許を分析した。
出願数の合計で首位はアマゾン(1649件)、2位はアルファベット(1355件)。アップルは4位だった。アマゾンの出願数は16年以降、4年連続で200件を超えた。20年に買収した自動運転開発の米ズークスがけん引した。14年設立で、公道走行試験を重ねて技術を蓄積してきた。

引用された回数や権利が及ぶ国の数などをもとに「個別特許の競争力スコア」も算出。これに特許の残存年数を掛け合わせるなどした「企業別の競争力スコア」を自動運転や、ネットにつながるコネクテッドなど8領域で集計した。
アマゾンは物流をデジタルで高度化する物流IoT領域の企業別スコアが4073万点と2位のアルファベット(1782万点)を引き離す。個別特許スコアをみてもコネクテッド領域の上位5位内の3つを持つ。ネット通販の自動配送に生かすようだ。
アルファベットは自動運転領域の企業別スコアが4018万点で2位のアマゾンを1割上回った。個別特許スコアでは車や歩行者の動きの予測技術などが高い。自動運転タクシーへの活用を意識しているとみられる。アップルは近年、電気自動車(EV)の自動充電や熱管理の技術に力を入れている。

アマゾン子会社のズークスは2月13日にはカリフォルニア州で自動運転タクシーに従業員を乗せて事業所間をシャトル運行したと発表=ロイター
次世代車技術の特許では自動車大手が今なお存在感が大きい。ホンダは自動運転分野で20年度までに累計4000件以上を出願したことを統合報告書で公表。単純比較できないものの、出願数はテック5社で同分野最多のアルファベットの4倍だ。
アスタミューゼは「アルファベットの自動運転特許は高く評価されている」とし、IT(情報技術)と自動車に詳しい名古屋大学の野辺継男客員教授は「ディープラーニング(深層学習)を使うAIで車大手は人材面で劣る」と指摘する。
次世代車開発を巡り車大手とテック大手の合従連衡の流れが強まる可能性がある。日本の車大手は強みを持つ全固体電池など技術の蓄積を有効に活用する必要がある。アスタミューゼには日本経済新聞社が出資している。
この間、下記の録画を観ることができた。(1)BS6報道1930「プーチン氏が重大演説 反戦女子学生を拘束 統制強化ロシアの現実」2月21日。 (2)BS6報道1930「<プーチン氏の戦争>で逆流する世界とは? モスクワ20万人集会」22日。 (3)BS世界のドキュメンタリー「何が戦災を招いたのか~ウクライナ侵攻への軌跡」22日。 (4)BS6報道1930「核戦力誇示プーチン氏 “使用前提”抑止力か 第3の核の時代突入?」23日。 (5)BS6報道1930「ウクライナ侵攻1年 春から夏が重大局面? 最大焦点「クリミア」奪還」24日。 (6)NHKイーテレドキュランドへようこそ「マリウポリ”包囲日記“ 私たちは諦めない」24日。 (7)NHK総合「ウクライナ 家族の戦場 軍事侵攻から1年 心の軌跡」25日。 (8)NHK週刊ワールドニュース(2月20日~24日)25日。 (9)NHKスペシャル「ウクライナ大統領府 軍事侵攻・緊迫の72時間」26日。 (10)NHKスペシャル「届け ウクライナの叫び」26日。
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