人類最強の敵=新型コロナウィルス(51)
5月25日掲載の前号(50)は、日米豪印の4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」の共同声明に触れ、過去3回の文書になかった安全保障に特化した章を新設、ウクライナ侵攻や中国の海洋進出を踏まえ、「力による現状変更に強く反対する」と明記した。これについて岸田首相は記者会見で「4カ国首脳が一致して世界に発信できたのは大きな意義がある」と訴えた。
共同声明はまた中国の海洋進出が活発な東・南シナ海について「ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対抗する」とも強調した。具体策として海洋監視の協力システムをあげた。違法漁船など沿岸警備に関する情報をインド太平洋地域の国で共有する構想である。南シナ海で中国と領有権を争うベトナムやフィリピンなどとの連携を想定する。
【バイデン米大統領が銃規制で記者会見】
アメリカ東部時間の24日、日本から帰国直後のバイデン米大統領はテキサス州ユバルディのロブ小学校で起きた銃乱射事件について記者会見を開き、銃規制を訴えた。この事件では、これまでに19人の児童と2人の大人の死亡が確認されており、犠牲者数は2022年に起きた銃撃事件で最多となった。
バイデン氏はスピーチで「国として、私たちは問わねばなりません。私たちはいつ銃規制反対団体を拒否するのでしょうか。心の中で必要だとわかっていることを、いつ実行するのでしょうか」と呼びかけた。
10年前の2012年に起きたコネチカット州サンディフック小学校銃乱射事件で、26人が犠牲になって以来、学校で900件を超える銃撃事件が発生したと述べ「もううんざりです、私たちは行動しなければいけない」と訴えた。
また、ロブ小学校銃乱射事件容疑者が18歳の高校生だったことについて「18歳の少年が銃販売店で銃器を買える状況は間違っている」と指摘し、銃販売の規制を強く求めた。
日本からの帰国の機中で「世界の他の国でも、アメリカと同じようにメンタルヘルスや家庭内暴力の問題があるにもかかわらず、なぜ頻繁に銃撃事件が起きないのか」を考えたという。「一体なぜでしょう?なぜ、私たちはこの大虐殺の中で生きようとするのでしょうか?なぜこんなことが起き続けるのでしょうか?」
「銃規制反対活動を拒否する、私たちの勇気と強さはどこにあるのでしょうか?痛みを行動に移す時です。この国のすべての親や市民のために、選ばれた議員全員が行動すべきだということをはっきりさせねばなりません」
【米中など98カ国・地域から観光客受け入れ 6月10日から】
27日の日経新聞によると、政府は26日夜、岸田文雄首相が表明した外国人観光客受け入れ再開の詳細を発表した。米国や中国など98カ国・地域からの観光客を対象に、6月10日から受け入れの手続きを始める。新型コロナウイルスの感染が落ち着いていて、入国時の検査でも陽性率が低い国が対象だ。ワクチン接種の有無にかかわらず、入国時の感染検査や待機は不要にする。観光による入国は2020年春以来およそ2年ぶりの再開となる。国内の旅行会社などが受け入れ責任者となる団体旅行に限定し、個人旅行は認めない。
観光受け入れの再開に先だち、6月1日から入国時の検査や待機措置の緩和を行う。各国・地域をコロナウイルスの流入リスクが低い順に「青、黄、赤」の3グループに分ける。「青」に分類した米国や中国など98カ国・地域は入国時の検査も自宅などでの待機も不要とする。「黄」となったサウジアラビアやウクライナなど99カ国・地域はワクチンを3回接種済みなら検査と待機が不要になる。「赤」としたパキスタンなど4カ国は検査・待機ともに継続される。
観光入国は3グループのうち最もリスクの低い「青」の国・地域に限定する。「黄」の国・地域から入国する場合は、ビジネス客ならワクチン接種に応じて検査などが免除されるが、観光目的の入国は認めない。検査・待機が不要となるのは、直近の入国者数のうち8割程度になるという。
【要衝セベロドネツクの攻防】
これまでウクライナ軍がロシア軍に対して反転攻勢をかけていると伝えられたウクライナ東部ルハンシク州の要衝セベロドネツクで、またロシア軍が優勢になっているとの報道があった(平日ゴールデンタイム1時間半「生放送」というBS-TBS史上初となる大型報道番組BS6<報道1930(ほうどういちきゅうさんまる)>の5月26日放映分)。マリウポリについでセベロドネツクがロシアの手に落ちると、ウクライナ東部の様相が一変してロシアに有利となる。
ウクライナ側も「情勢は厳しい」と認めつつ、新しい重火器がとどけば反転攻勢も可能と主張している。26日の朝日新聞デジタルは、次のように報じた。
「ロシア軍が完全掌握を目ざすウクライナ東部ドンバス地方で、攻防が激しさを増している。ルハンスク州ではロシア軍が昼夜を問わず攻撃を繰り返しているという。ウクライナのゼレンスキー大統領は25日夜のビデオ演説で、「ウクライナ軍は、すさまじい攻撃に抵抗を続けている」と語り、ロシアに譲歩しない姿勢を改めて明確にした。
ルハンスク州は95%がロシア軍に占拠されたものの、ウクライナ軍は拠点都市セベロドネツク(人口=約10万人)を守り続けている。ハイダイ知事は25日、SNSで「砲撃がまったくやまない」と訴えた。州内のウクライナ支配地域には4万人以上の市民が残り、その99%が街を離れないと言っていると説明。この1週間ほどを持ちこたえれば、状況が落ち着くとの見方を示している。」
【プーチン政権に異変】
25日の朝日新聞デジタルは、「プーチン政権に異変、盟友・外交官らから相次ぐ苦言<全世界が敵対>」の見出しで、次のように報じた。
ウクライナ侵攻の開始から24日で3カ月を迎えるなか、ロシアでプーチン政権の支持基盤に異変が見え始めた。外交官や盟友、国営メディアなどから公然と侵攻への批判の声が上がり、軍司令官の処分も指摘される。ロシア軍にも多くの犠牲が出るなか、侵攻が長期化するとの見方が強まっており、政権に対する国民の不満が少しずつ高まっている可能性がある。
「20年間、わが国の外交政策の様々な展開を見てきたが、(ロシアがウクライナに侵攻した)2月24日ほど母国を恥じたことはない」
今月23日、ロシアの在ジュネーブ国連代表部に務めていたボリス・ボンダレフ参事官がジュネーブの外交官らに宛てた声明が公表され、ウクライナ侵攻に抗議して辞職したことが明らかになった。
【ダボス会議でも激論】
27日の日経新聞【ダボス(スイス東部)=中島裕介】によると、26日に閉幕した世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)では、ロシアと戦うウクライナの停戦後の姿についても議論が交わされた。一部の識者が領土の事実上の分割が避けられないとの見方を示す一方で、ウクライナ首脳がこれに強く反論した。
キッシンジャー元米国務長官は23日、ダボス会議にオンラインで登壇し、「(2月の)ロシアの侵攻前の状況」をロシアとウクライナの国境とすることが望ましいと指摘した。2014年にロシアが併合したクリミア半島の奪還を断念する提言といえる。西側諸国にも戦争が長期化すれば「ウクライナの自由を求める戦いではなく、ロシアに対する新たな戦争になる」とロシアへの配慮を呼びかけた。
これに対してウクライナのゼレンスキー大統領は25日の声明で強く反論。「領土分割論を唱える者は、その地域に住んでいるウクライナ人を考えていない人だ」と訴えた。「キッシンジャー氏のカレンダーは2022年でなく1938年になっている」とも指摘した。英仏が台頭するナチス・ドイツに融和姿勢を示し、第2次世界大戦の惨禍を招いたとされる歴史の経緯を引き合いにした非難である。
クレバ外相も25日のセッションで「譲歩しても、うまくいかない」と強調した。ウクライナの政府関係者の間では、ロシアが停戦後に再び侵攻するリスクが拭えないとの声が強い。領土割譲は主権国家として許せないだけではなく、停戦につなげる戦略としても悪手だという見立てである。
【上海の都市封鎖、2カ月超ぶりに解除】
6月1日の日経新聞は、次のように報じた。
「中国・上海市は6月1日、2カ月超にわたり実施してきた都市封鎖(ロックダウン)を解除する。供給網の回復を見込みホンダが6月の日本国内生産を微増とする計画を取引先に伝えたほか、現地に進出するセブンイレブンなども順次営業を再開する。当局の詳細な通達内容などはまだ不透明な面もあり、企業活動の正常化にはしばらく時間がかかりそうだ。
上海市の宗明副市長は5月31日の記者会見で「正常な生産と生活に全面復帰する」と述べた。一定期間内に陽性者がいた地区を除いて、6月1日から市民の自由な外出を認める。ロックダウンで停滞していた日本企業の活動も徐々に再開しつつある。
ホンダは上海ロックダウンなどの影響で日本の4~5月の生産が前年同月を下回ったもようだが、6月国内生産は前年同月比微増とする計画を取引先に伝えており供給網は徐々に回復してくると見込む。シャープは稼働を停止していた上海の洗濯機などの工場で5月上旬から生産を順次再開している。「生産挽回を急ぐ」(同社)としている。富士通ゼネラルも6月中旬までに上海市にある小型空調機製造工場のフル稼働を目指している。
現地で販売網を持つ小売り各社も対応を急ぐ。セブンイレブンは約150店舗のほぼ全てで、ローソンは5月30日時点で4割の店舗で休業が続いているが、6月1日以降は2社とも営業時間の制限の有無など当局の詳細な通達を待ってから営業を順次再開する方針だ。良品計画では4月から上海市内の「無印良品」の全35店舗を休業していたがすでに2店舗が時短で営業を再開しており、今後、当局からの指示に従い営業を順次再開する方針。」
【中国の王毅外相、南太平洋7カ国を訪問】
10日の日経新聞は次のように報じた。
「中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は6月4日、南太平洋7カ国と東南アジアの東ティモールへの旅を終えた。訪問は10日間におよび、複数の国々に経済協力を約束し、フィジーでは域内の10カ国とオンラインの外相会合を開いた。
ここからうかがえるのは将来、南太平洋を自分の影響圏にしたいという中国の望みである。その意図があらわになったのが、10カ国に提案している新協定だ。締結は見送られたものの、事前にリークされた草案は波紋を広げた。中国が各国の警察やデジタル統治、サイバー安全保障などの体制づくりに協力する中身だったからだ。
南太平洋では、軍や治安の体制が乏しい国々が多い。協定が結ばれれば、各国の統治に中国が大きな影響力を持つことになる。」
【オーストラリア新政権が巻き返し】
3日の日経新聞【シドニー=松本史】によると、太平洋諸国に外交攻勢をかける中国に対抗し、発足間もないオーストラリアの新政権が巻き返しを図っている。ウォン豪外相は就任から10日あまりで地域の3カ国を訪問。3日には南太平洋のトンガで首相と会談した。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相も先週から7つの島しょ国を訪問しており、太平洋を巡る中豪のつばぜり合いが激しさを増してきた。
「豪新政権はこれまで以上のエネルギーを割いて太平洋島しょ国に向き合う」。3日、トンガを訪れたウォン氏は同国のフアカバメイリク首相と共に記者会見し、地域に密接に関与する姿勢を強調した。
島しょ国で、温暖化による海面上昇で国土浸水が大きな懸念となっているとして「気候変動問題は安保上、経済上の大きなリスクだ」と指摘。豪州は「より意欲的な行動を取る」とも語った。これに先立つ2日にウォン氏はサモアを訪問し、同国のフィアメ首相と会談。巡視船の寄贈などを約束した。
島しょ国で、温暖化による海面上昇で国土浸水が大きな懸念となっているとして「気候変動問題は安保上、経済上の大きなリスクだ」と指摘。豪州は「より意欲的な行動を取る」とも語った。これに先立つ2日にウォン氏はサモアを訪問し、同国のフィアメ首相と会談。巡視船の寄贈などを約束した。
【ウクライナ産小麦の輸出滞留】
7日の日経新聞【ベルリン=南毅郎】によれば、ウクライナのゼレンスキー大統領は6日、今秋までに最大7500万トンの穀物が国内に滞留する恐れがあるとの見方を示した。世界全体の年間貿易量の15%に相当する。ロシアによる海上封鎖が続き、小麦の主産国であるウクライナからの輸出が滞ったままになれば新興国での食料不足が深刻になる恐れがある。
ゼレンスキー氏がウクライナの首都キーウ(キエフ)で記者団に語った。ロイター通信によると、第三国の海軍が保証する形で黒海から穀物を安全に輸出する案を英国やトルコと議論しているという。
ウクライナメディアによると黒海のロシア艦隊はウクライナ海岸から100キロメートル以上離れた地点まで押し戻された。ただ戦闘が長引くなか、海上輸送の本格的な再開はなお見通せない。米農務省によると、世界全体の年間穀物貿易量は2021~22年度(推計)に5億トンだった。7500万トンはその15%に相当する規模で、需給逼迫の懸念から小麦などの国際価格にはすでに上昇圧力がかかっている。
【首相の経済政策<新しい資本主義>の具体策を反映】
政府は7日午後の臨時閣議で、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)と<新しい資本主義>の実行計画を決める。自民党は同日午前の総務会で、公明党は常任役員会でそれぞれ了承した。岸田文雄内閣になって初めてまとめるもので、首相の経済政策<新しい資本主義>の具体策を反映する。
人への投資に重点を置くほか、個人の金融資産を貯蓄から投資に促すための「資産所得倍増プラン」を年末までに策定する方針も明記する。
防衛力の強化では「5年以内」との目標期限を盛り込む。原案には明確な期限の記述がなく、自民党の要求を踏まえ修正した。
【半導体投資、台湾全土が沸騰 全20工場16兆円の衝撃】
7日の日経新聞【台北=中村裕、龍元秀明】は、「半導体投資、台湾全土が沸騰 全20工場16兆円の衝撃」の見出しで次のように報じた。
中国からの統一圧力に揺れる台湾。軍事侵攻リスクも懸念されるなかで、未曽有の半導体の投資ラッシュが起きている。総額16兆円に及ぶ世界でも例を見ない巨額投資だ。昨年来、世界から台湾の地政学リスクが何度も指摘されてきたが、それでも台湾は域内で巨額投資に突き進んでいる。なぜか。全土を縦断し、各地で建設が進む全20工場の映像とともに検証した。
台湾南部の中核都市・台南市。5月後半、台湾最大の半導体生産拠点がある「南部サイエンスパーク」を訪れると、町は少し異様な雰囲気に包まれていた。工事用の大型トラックが頻繁に行き交い、至る所で建設用のクレーンがつり荷作業を繰り返すなど、複数の半導体工場の建設が同時に急ピッチで進んでいた。
ここはもともと、世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が一大生産拠点を構えた場所。米アップルのスマートフォン「iPhone」向けの半導体を中心に、世界で最も先端の工場が集まる場所として知られ、最近でもTSMCが4つの新工場を完成させたばかりだった。それでも十分ではなかったようだ。TSMCはさらに最先端品(3ナノメートル=ナノは10億分の1)の新工場建設を周辺4カ所で同時に進め、拠点の集中を加速させていた。
【ウクライナ東部の要衝をめぐる戦い】
この1週間、ウクライナの戦闘は一進一退である。東部の要衝と呼ばれるルハンシク州のセベロドネツクではロシア軍が優勢となり、95%を奪回したと言われる一方、川を挟むリシチャンシクはまだウクライナの治下にあり、こここそが本当の最終決戦の場であるとも言われる。ニュースはいささか混乱しているが、ウクライナとロシアの双方が、いまだ<決着がついていない>と表明している。
武器の種類も変わりつつある。かつては対戦車のジャベリンが主体であったが、この2週間、フランスから自走りゅう弾砲(射程は40キロ)に次ぎ、アメリカがハイマースを、イギリスがMMSと性能の高い長距離ロケットシステムを送る約束をしている。
【米消費者物価、約40年ぶり水準更新】
10日の日経新聞は「米消費者物価、5月8.6%上昇 約40年ぶり水準更新」の見出しで、【ワシントン=高見浩輔】により、次のように報じた。「米労働省が10日発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の伸び率が8.6%となった。3月の8.5%をさらに上回り、40年5カ月ぶりの水準となった。新型コロナウイルス禍で控えていた旅行などの「リベンジ消費」も夏にかけて物価を押し上げ、インフレは高止まりしそうだ。米連邦準備理事会(FRB)による急ピッチの利上げが長引く可能性もある。…変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数の上昇率は6.0%で、前月の6.2%を下回った。コア指数を前月比でみると4月と同じ0.6%の上昇で、市場予想を上回った。インフレの根強さを示す結果となった。…エネルギーは前年同月比で34.6%、食品は10.1%上昇した。住居費が5.5%値上がりするなどサービス価格も全般的に上昇した。貧困層を中心に生活を圧迫するインフレへの不満がますます高まる公算が大きい。米国は人手不足が深刻で、失業者1人に対して約2人分の求人がある状態だ。賃金の上昇が加速すれば、インフレの制御はますます困難になる。」
【はやぶさ2成功、日本が小惑星探査でリード】
10日の朝日新聞デジタルは、「はやぶさ2成功、日本は「着眼点の勝利」 小惑星探査で世界をリード」の見出しで、「私たち生命の起源はどこから来たのか――。壮大な謎を解くカギを地球に持ち帰った成果は、小惑星探査に活路を見いだした着眼点の勝利だ。世界の宇宙開発が月や火星を指向する中、日本の研究者が1980年代から着目したのは小惑星だった。安全性の確保が難しい有人探査に比べて無人探査は低予算で、試料が得られれば科学的な成果につながる。そして、数億キロかなたの探査機を小惑星に着陸させて、地球に帰還させる技術を持つ国はなかった。」と報じた。
【アジア安全保障会議(シャングリラ対話)での岸田首相基調講演<外交・安保面での役割強化>】
10日のヤフー・ニュースは、「アジア安全保障会議(シャングリラ対話)での岸田首相基調講演全文 <外交・安保面での役割強化>」を伝えた。その概要は以下の通り。
本日は、ここにお集まりの皆さんと、現下の国際社会が直面する厳しい状況について認識を共有するとともに、われわれが目指すべき未来の姿について展望したいと思います。…そうした議論を展開するのに、このシャングリラ・ダイアローグほどふさわしい場所はありません。まさに、アジアは、世界経済の35%近くを占め、拡大を続ける世界経済の中心であり、一体性と中心性を掲げる
ASEAN(東南アジア諸国連合)を核に、多様性と包摂性のある成長を続けているからです。
今、ロシアによるウクライナ侵略により国際秩序の根幹が揺らぎ、国際社会は歴史の岐路に立っています。…国際社会が、前回大きな転換期を迎えたのは、約30年前のことでした。…世界が2つに分断され、両陣営の冷たい対立が再び熱を帯びてしまう可能性に人々がおびえ続けた<冷戦>が終わりを告げ、<冷戦後>の時代が始まった頃でした。
私の故郷、広島の先輩であり、私の属する政治集団「宏池会」の先輩リーダーである、宮澤喜一元総理は、「冷戦後の時代」について、日本の国会での演説で「新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まりと認識したい」と述べました。宮澤元総理は、わが国が安全保障分野で国際的に一層の役割を果たすことが求められている現実を直視し、大変な議論の末に、PKO(国連平和維持活動)協力法を成立させ、同法に基づき自衛隊をカンボジアに派遣しました。
宮澤元総理の時代から約30年。今、われわれはどのような時代に生きているのでしょうか。…パンデミックが起きて以降、世界は不確実性を一層増していきました。経済的な混乱が続く中、私たちは、信頼できる安全なサプライチェーンの重要性を認識するようになりました。
そして、世界がパンデミックから立ち直ろうとしている最中、ロシアによるウクライナへの侵略が起きました。これは、世界のいかなる国・地域にとっても、決して「対岸の火事」ではありません。本日ここにお集まりの全ての方々、国々が「わがこと」として受け止めるべき、国際秩序の根幹を揺るがす事態です。
南シナ海において、「ルール」は果たして守られているでしょうか。長年にわたる対話と努力の末に皆が合意した国連海洋法条約を始めとする国際法、そして、この条約の下、仲裁裁判の判断が守られていません。
そして、わが国が位置する東シナ海でも、国際法に従わず、力を背景とした一方的な現状変更の試みが続いており、わが国は断固とした態度で立ち向かっています。…この2つの海の間に位置する台湾海峡の平和と安定も、極めて重要です。…残念ながら、人々の多様性や自由意志、人権を尊重しない動きも、その多くがこれらの地域で起こっています。
さらに、北朝鮮は、今年に入ってから、新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)を含め、かつてない頻度で、かつ新たな態様での発射を繰り返すなど、安保理決議に違反して核・ミサイル活動を強化しており、これは国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦です。先日の安保理決議が拒否権により採択されなかったのは極めて残念です。私の政権が最重要課題としている北朝鮮による拉致問題も、重大な人権侵害です。
こうしたさまざまな問題の根本には、国際関係における普遍的なルールへの信頼が揺らいでいる状況があるのです。これが本質的かつ最も重大な問題です。…われわれが努力と対話と合意によって築き上げてきたルールに基づく国際秩序が守られ、平和と繁栄の歩みを継続できるか。あるいは、<ルール>は無視され、破られ、力による一方的な現状変更が堂々とまかり通る、強い国が弱い国を軍事的・経済的に威圧する、そんな弱肉強食の世界に戻ってしまうのか。…それが、われわれが選択を迫られている現実です。
(日本の責任と取組)
世界第三位の経済大国であり、そして、この地域で戦後一貫して平和と繁栄を追求し、経済面を中心に貢献してきた、日本。その日本が果たすべき責任は大きい。そうした認識の下、歴史の岐路に直面するわれわれの平和を実現するために、日本が果たすべき役割とは何か。
誰もが尊重し、守るべき普遍的価値を重視しながら、「核兵器のない世界」を目指す、といった未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、しかし、時にはしたたかに、果断に対応する。私はこうした徹底的な現実主義を貫く<新時代リアリズム外交>を掲げています。…その中でも、日本は、謙虚さ、多様性を重視する柔軟性、相手方の主体性を尊重する寛容さ、を失うことはありません。しかし、日本、アジア、世界に迫り来る挑戦・危機には、これまで以上に積極的に取り組みます。
そのような観点から、私は、この地域の平和秩序を維持、強化していくため、次の5本柱からなる「平和のための岸田ビジョン(Kishida Vision for Peace)」を進め、日本の外交・安全保障面での役割を強化してまいります。
第1が、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化です。特に、「自由で開かれたインド太平洋」の新たな展開を進めます。
第2が、安全保障の強化です。日本の防衛力の抜本的強化、および、日米同盟、有志国との安全保障協力の強化を車の両輪として進めます。
第3が、「核兵器のない世界」に向けた現実的な取組の推進です。
第4が、国連安保理改革を始めとした国連の機能強化です。
第5が、経済安全保障など新しい分野での国際的な連携の強化です。
ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化とFOIP(自由で開かれたインド太平洋)の新たな展開
(1)ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化
国際社会を平和に導くために、われわれは、第1に、「ルールに基づく自由で開かれた国際秩序」の維持・強化を進めていく必要があります。
そのような秩序を支える基盤が、「法の支配」です。また、「紛争の平和的解決」であり、「武力の不行使」であり、「主権の尊重」です。
さらに、海に目を転じれば「航行の自由」であり、経済に目を転じれば「自由貿易」です。
当然、「人権の尊重」も重要であり、人々の自由意志と多様性が反映される民主的な政治体制も重要です。
これらは、世界の全ての人々が、国際社会の平和を希求し、英知を結集して紡ぎ出した、共通で普遍的なものなのです。今申し上げたルールや原則が、国連憲章の目的と原則にも合致していることは、言うまでもありません。
ルールは守られなければなりません。自らに都合が悪くなったとしても、あたかもそれがないかのように振る舞うことは許されません。一方的に変更することも許されません。変更したいのであれば新たな合意が必要です。
(2)「自由で開かれたインド太平洋」の新たな展開
わが国は、この地域におけるルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、「自由で開かれたインド太平洋」を進めてきました。そして、このわが国が提唱したビジョンは、国際社会において幅広い支持を得るようになりました。
わが国は、ASEAN(東南アジア諸国連合)が自ら基本方針として示した「インド太平洋に関するASEANアウトルック」を一貫して強く支持しています。
世界を見渡せば、米国、豪州、インド、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、そしてEUといったさまざまなアクターが、インド太平洋へのビジョンを打ち出しています。 志を同じくする国々が、大きなビジョンを共有した上で、誰かの押しつけではなく、自らの意思で、それぞれの取組を進める。それこそが、包摂性、インクルーシブネスを基本とする、自由で開かれたインド太平洋、FOIPの考え方なのです。
特に、ここインド太平洋においては、ASEANとの協働が不可欠です。
私も、総理大臣就任後、最初に、本年のASEAN議長国を務めるカンボジアを、その後、インドネシア、ベトナム、タイを訪問し、本日は、シンガポールにやってまいりました。ASEAN各国首脳との会談も積み重ねてきました。
わが国と東南アジアの歴史は、長きにわたる善意と友好に支えられています。戦後、わが国は東南アジアの発展を支援し、そして、東南アジアも、わが国が未曾有の震災に見舞われたときに、その復興に手を差し伸べてくれました。
今後もASEAN各国首脳との間で、手を携えて、この地域の平和と繁栄を確保していくための方策について議論を深めていきたいと思っています。
また、ASEAN諸国と並んで太平洋の島国の皆さんもFOIPの実現のための大切なパートナーです。彼らの存立にかかわる気候変動問題への対応をはじめとして持続可能で強靱な経済発展の基盤強化に貢献をいたします。日米豪が連携した海底ケーブル敷設など、近年の安全保障環境の変化に応じたタイムリーな支援を実施してきています。法の支配に基づく持続可能な海洋秩序の確保に向け、太平洋島嶼国の皆さんとともに歩んでいきます。 FOIPに基づく協力。それは、永年にわたる信頼に立脚した協力です。インフラ建設といったハード面にとどまらず、現地の人材を育て、自律的かつ包摂的発展を促す支援や、投資のパートナーとして官民挙げた産業育成などが中心でした。ASEANの連結性強化の取組も支援してきました。
有志国が連携してこの地域にリソースの投入を増やしていく必要があります。先程述べたASEAN、太平洋島嶼国といった仲間に加えて、FOIPの推進に重要な役割を果たす日米豪印、クアッド。先般のクアッド東京サミットでは、インド太平洋地域の生産性と繁栄の促進のために不可欠なインフラ協力について、今後5年間で500億ドル以上の更なる支援・投資の実施を目指すことを確認しました。
私は、こうした取組をさらに加速してまいります。ODA(政府開発援助)を通じた国際協力を適正、そして効率的かつ戦略的に活用しつつ、ODAを拡充するなど、外交的取組を強化し、従来のFOIP協力を拡充いたします。巡視艇供与や海上法執行能力強化、サイバー・セキュリティー、デジタル、グリーン、経済安全保障といった分野にも重点をおきつつ、FOIPというビジョンをさらに推進していくためのわが国の取組を強化する「平和のための『自由で開かれたインド太平洋』プラン」を来年春までに、お示しすることを表明します。
中でも、近年、日本は、衛星、人工知能、無人航空機等の先端技術も活用しながら、海洋安保の取組を強化しており、各国との知見・経験を共有していきます。この観点から、今後3年間で、20カ国以上に対し海上法執行能力強化に貢献する技術協力および研修等を通じ、800人以上の海上安保分野の人材育成・人材ネットワークの強化の取組を推進していきます。
さらに、インド太平洋諸国に対し、今後3年間で少なくとも約20億ドルの巡視船を含む海上安保設備の供与や海上輸送インフラの支援を行うことをここに表明をいたします。クアッドや国際機関等の枠組みも活用しながら、各国への支援を強化していきます。
加えて、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序を維持・強化するため、国と国・人と人とのつながりやネットワーク作りを強化していきます。そのため、今後3年間で法の支配やガバナンス分野における1500人以上の人材育成を行ってまいります。
(安全保障面での日本の役割・拡大)
(1)日本自らの防衛力の抜本的強化
第2に、安全保障面での日本が果たすべき役割についてお話ししたいと思います。
ロシアによるウクライナ侵略を目の当たりにし、世界各国の安全保障観が大きく変容しました。ドイツは、安全保障政策を転換し、防衛予算をGDP比2%に引き上げることを表明しました。ロシアの隣国であるフィンランドやスウェーデンは、伝統的な中立政策を転換し、NATO(北大西洋条約機構)加盟申請を表明しました。
私自身、「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」という強い危機感を抱いています。わが国も対露外交を転換するという決断を行い、国際社会と結束して、強力な対露制裁やウクライナ支援に取り組んでいます。平和国家である日本の総理大臣として、私には、日本国民の生命と財産を守り抜き、地域の平和秩序に貢献する責務があります。
私は対立を求めず、対話による安定した国際秩序の構築を追求します。しかし、それと同時に、ルールを守らず、他国の平和と安全を武力や威嚇によって踏みにじる者が現れる事態には備えなければなりません。
そうした事態を防ぎ、自らを守る手段として、抑止力と対処力を強化することが必要です。これは、日本自身が、新たな時代を生き抜く術を身につけ、日本が平和の旗手として発言し続ける上で不可欠です。
日本を取り巻く安全保障環境が一段と厳しさを増す中、本年末までに新たな国家安全保障戦略を策定いたします。日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意です。
その際、いわゆる「反撃能力」を含め、あらゆる選択肢を排除せず、国民の命と暮らしを守るために何が必要なのか、現実的に検討してまいります。
皆さまには、日本の平和国家としての在り方は不変だということを強調させていただきます。わが国の取組は、憲法・国際法の範囲内で、日米同盟の基本的役割分担を変更しない形で進めていきます。各国にも、引き続き、透明性をもって、丁寧に説明してまいります。
(2)日米同盟、有志国との安全保障協力
いずれの国もその国の安全を一国だけで守ることはできません。だからこそ、私は、日米同盟を基軸としつつ、普遍的価値を共有する有志国との多層的な安全保障協力を進めてまいります。
先般日本を訪問されたバイデン米国大統領との会談において、防衛力に関する私の決意に対する強い支持をいただきました。日米の安全保障・防衛協力を拡大・深化させていく、この点でも一致をいたしました。
インド太平洋を超え世界の平和と安定の礎となった日米同盟の抑止力と対処力を一層強化していきます。
同時に、豪州や有志国との安全保障協力も積極的に進めていきます。
リー・シェンロン首相、貴国、シンガポールとの間で、防衛装備品・技術移転協定の締結に向けた交渉を開始することを大変うれしく思います。引き続き、ASEAN各国との間で、防衛装備品・技術移転協定の締結を進めるとともに、ニーズに応じた具体的な協力案件を実現してまいります。
円滑化協定、RAAについては、1月の豪州との協定の署名に続き、先般、英国との間で大枠合意に達しました。欧州、アジアの同志国との協定締結にむけて、関係国と緊密に連携していきます。
また、自由で開かれた海洋秩序の実現に貢献すべく、日本は、海上自衛隊の護衛艦「いずも」などを中心とした部隊を6月13日からインド太平洋方面に派遣し、東南アジアや太平洋諸国を含む地域の国々との共同訓練などを行います。
「核兵器のない世界」に向けた現実的な取組の推進
第3に、「核兵器のない世界」の実現に向けても全力で取り組んでまいります。
ウクライナ危機の中で、ロシアによる核兵器の使用が現実の問題として議論されています。核兵器による惨禍を繰り返してはならない、核兵器による威嚇も使用もあってはならない。唯一の戦争被爆国の総理大臣として、このことを強く訴えます。
今回のロシアによる核兵器の脅しの問題は、それだけには止まりません。既に核不拡散体制に深刻なダメージを与えてしまったのではないか。核開発を進める国に核を放棄させることを一層困難にしたのではないか。さらには、核兵器を開発、保有しようとする動きが他の国にも広がるのではないか。さまざまな懸念が示されています。
ウクライナ危機以前から、北朝鮮は、ICBM級を含む弾道ミサイル発射を頻繁に繰り返しており、近く核実験を行うのではないかと深刻に懸念しています。
わが国の周辺で見られる、核戦力を含む軍事力の不透明な形での増強は、地域の安全保障上の強い懸念となっています。
イランの核合意順守への復帰もいまだ実現していません。
「核兵器のない世界」への道のりは、一層厳しくなっているといわざるを得ません。しかしながら、こうした厳しい現状だからこそ、私は、被爆地広島出身の総理大臣として、「核兵器のない世界」に向けて声を上げ、汗をかき、この現状を反転し、少しでも改善するべく行動をしてまいります。
わが国を取り巻く厳しい安全保障環境という「現実」を直視し、そして国の安全保障を確保しつつ、同時に、「核兵器のない世界」という「理想」に近づいていくこと、これは決して矛盾するものではありません。わが国は、「現実」と「理想」を結びつけるロードマップを示しながら、唯一の同盟国である米国との信頼関係を基礎とし、現実的な核軍縮の取組を進めてまいります。
このような取組の基礎となるのが核戦力の透明性向上です。核軍縮の不可逆性と検証可能性を下支えし、核兵器国間、そして核兵器国・非核兵器国間の信頼関係を構築するための第一歩となります。一部に不透明な形で核戦力の増強を進める動きも見られる中、全ての核兵器国に対して、核戦力の情報開示を求めてまいります。
また、米中二国間で核軍縮・軍備管理に関する対話を行うことを関係各国とともに後押ししてまいりたいと思います。
さらに、最近忘れられた感すらあるCTBT(包括的核実験禁止条約)やFMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)、こうした議論を、今一度呼び戻すことも重要です。
国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石であるNPT(核拡散防止条約)を維持・強化していくことが、今まで以上に求められています。核兵器国、非核兵国の双方が参加する、8月のNPT運用検討会議が意義ある成果を収めるよう全力を尽くします。
核兵器の使用がまさに現実の問題となる中、核兵器の使用がもたらす惨禍、その非人道性を改めて世界に訴えていくことも重要です。唯一の戦争被爆国である日本から、来る「核兵器の人道的影響に関する会議」を含め、あらゆる機会を捉えて、被爆の実相を世界に発信してまいります。
さらに、私が外相時代に設置した「賢人会議」の議論を発展させ、国際的な核軍縮の機運をもう一度盛り上げるべく、各国の現、あるいは元政治リーダーの関与も得ながら、「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げ、本年中を目標に、第1回会合を広島で開催をいたします。
北朝鮮については、国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化の実現に向け、日米韓で地域の安全保障、国連での議論、外交的取組などで緊密に連携をし、国際社会と協力して取り組んでまいります。
こうした取組を積み重ね、「核兵器のない世界」に向け、一歩一歩近づけるよう努力してまいります。
(国連安保理改革を始めとした国連の機能強化)
第4に、平和の番人たるべき国連の改革も待ったなしの課題です。
国際社会の平和と安全の維持に大きな責任を持つ安保理の常任理事国であるロシアが、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙に出たことにより、国連は試練の時を迎えています。
国連を重視する日本の立場に変わりはありません。私自身、外相時代から、国連改革に向け積極的に取り組んでまいりました。総理就任以降も、首脳外交の機会も活用して、各国のリーダーとの間で、国連の機能強化に向けた方策について議論を重ねてまいりました。
各国の複雑な利害が絡み合う改革は簡単ではありませんが、日本は平和国家として、国連安保理改革を含む国連の機能強化に向けた議論を主導してまいります。日本が来年から安保理入りすることが決まりました。安保理の中でも汗をかいていきます。同時に、国際社会の新たな課題に対応したグローバルガバナンスの在り方についても模索してまいります。
(経済安全保障など新しい分野での国際的連携)
最後に、経済安全保障など新しい分野での国際的連携についてです。
未曾有のパンデミックの中、世界のサプライチェーン(供給網)の脆弱性が浮き彫りになりました。他国に自国の一方的な主張を押し付けるために不当な経済的圧力をかける。意図的に偽の情報を流布する。こうしたことも認めてはなりません。
われわれはウクライナ侵略により、一層自明かつ生活に直結する喫緊の課題として、われわれ自身の経済の強靱性を高めなければならないことを認識するようになりました。
経済が国家の安全に直結し、サイバー・セキュリティー、デジタル化などの分野の国家安全保障上の重要性が高まっていることも踏まえ、国家および国民の安全を経済面から確保する観点から、経済安全保障の取組を推進します。
日本国内ではこの課題に取り組むため、岸田内閣の下、経済安保推進法を制定いたしました。
しかし、この取組は日本だけでできるものではありません。G7(先進7カ国)といった同志国の枠組みを含め国際連携が不可欠です。
わが国とASEANは、かねてより、重層的なサプライチェーンを構築してきました。今後も、こうしたサプライチェーンの維持・強化に向け、官民が投資を行っていくことが大切です。
このため、わが国は、今後5年間で100件を超えるサプライチェーン強靱化プロジェクトを支援してまいります。
また、経済的な発展を含め、国際社会における地位が向上したならば、恩恵だけを享受するのでなく、その地位に見合った責任や義務を果たすことが重要です。経済協力や融資についても透明性を確保し、被支援国の国民の長期的な幸せにつながるものであるべきです。
われわれは、引き続き、人間の安全保障の考えに基づき、各国の主体性と各国民の利益を尊重した経済協力を進めていきます。
この困難な時代において、繁栄を実現するためには、ASEANが、インド太平洋地域が、世界の成長エンジンであり続ける必要があります。大きく困難な挑戦に直面しようともそれを乗り越える強靱な国づくりに日本は貢献していきます。
(結語)
皆さん、改めてわれわれの未来を思い浮かべてください。
今日、私が皆さんと共有したビジョン、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の構築に向け、皆で取り組む。「自由で開かれたインド太平洋」を次のステージに引き上げていく。
そうすれば、平和と繁栄を享受する未来が、希望に満ちた、お互いに信頼しあい、共感しあえる明るく輝かしい世界が必ず待っている。私は、そう信じています。
ご清聴ありがとうございました。
【米中の国防相が対面で議論、衝突回避で一致】
11日の日経新聞は、米中の国防相が対面で初めて議論、台湾をめぐる応酬を行うと同時に、衝突回避を巡っては一致した、と伝えた。
【ウクライナ東部の戦況】
14日の日経新聞【ウィーン=押切智義】は、「ウクライナ東部要衝が孤立 ロシア、投降を要求」の見出しで次のように報じた。
「ウクライナ東部ルガンスク州の要衝セベロドネツク市で、近隣都市からの支援物資の主要輸送路だった橋がすべて破壊され、孤立の懸念が高まっている。ガイダイ州知事は14日「市の状況は著しく悪化している」と通信アプリに投稿した。
ロシア国防省は14日、セベロドネツクの化学工場に残るウクライナの戦闘員に投降を要求したと発表した。同工場に避難した民間人を退避させる<人道回廊>を15日に設けると主張した。工場には民間人約500人が避難しているとされる。
セベロドネツクは西隣のリシチャンスクと3本の橋でつながっていた。同州知事は13日「避難や人道支援物資の輸送が困難になった」と述べた。
ロシアメディアなどによると親ロシア派武装勢力幹部は13日「ウクライナ軍は市にとどまり降伏か死を選ぶことになる」と語った。英国防省は14日、ロシア軍が東部ハリコフ州でも数週間ぶりに支配地域をやや拡大したとの見方を示した。
ウクライナ軍参謀本部は13日、セベロドネツクの中心部から部隊が撤退したと明らかにした。同市ではおよそ1万人規模の市民が退避できていないとされる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は13日夜のビデオ演説で「東部ドンバス地域での戦闘は欧州における最も過酷な戦闘の一つとして、軍事史に刻まれるだろう」と訴えた。火砲や弾薬の数で劣るなか「十分な数の近代的な大砲だけが我々の優位性を確保し、ロシアによる拷問を終わらせる」と欧米諸国に一段の軍事支援を呼びかけた。
ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問も13日、戦争を終結させるために155ミリりゅう弾砲1000門、多連装ロケットシステム300両、戦車500両などが追加で必要だとSNS(交流サイト)に投稿した。「15日から開かれるウクライナ軍事支援会合で決定を待っている」とした。
【NTTがテレワーク】
18日の日経新聞は、「NTT、居住地は全国自由に 国内3万人を原則テレワーク」の見出しで次のように報じた。
NTTは7月から国内のどこでも自由に居住して勤務できる制度を導入する。主要7社の従業員の半分となる約3万人を原則テレワークの働き方とし、勤務場所は自宅やサテライトオフィスなどとする。出社が必要になった場合の交通費の支給上限は設けず、飛行機も利用できる。多様な働き方を認め、優秀な人材の獲得につなげる。NTTの取り組みが、多くの企業の働き方改革に影響を与える可能性がある。
6月中旬、制度導入を巡り労働組合と合意した。まずNTT、NTTドコモやNTTデータなど主要7社が対象になる。7社の従業員数の合計は6万人で半分が原則テレワークで働くことになる。課題を検証しながらグループ全体に広げる。NTTの国内従業員数はグループ会社を含めて約18万人いる。
各社でテレワークを原則とする部や課などの部署を決める。企画やシステム開発などが中心となる見込みだ。NTTは2021年9月に転勤や単身赴任をなくす方針を打ち出した。新制度の導入に伴い、単身赴任している社員が自宅に戻る場合の引っ越し代は会社が負担する。出社が必要になった場合は「出張扱い」とし、宿泊費も負担する。
子育て中や介護中の社員も働きやすくなり、人材の多様性(ダイバーシティー)が生まれ新たな付加価値を生み出せると見込む。場所にとらわれない働き方は人材採用でも働き手にアピールしやすいとみる。
全国のどこでも居住して勤務できる制度はヤフーやディー・エヌ・エー(DeNA)などIT(情報技術)企業が導入している。ただ伝統的な大企業では前例がなくNTTが最大規模になる。
新型コロナウイルス禍から経済正常化に向かうなかで、多くの企業が柔軟な働き方と生産性向上の両立という課題に直面している。出社を再開する企業もある一方で、NTTのように原則テレワークとする企業もあり、対応の二極化が進んでいる。
【日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査】
19日の日経新聞は、当社世論調査の結果を「物価高「許容できず」64% 内閣支持60%に低下」の見出しで報じた。「日本経済新聞社とテレビ東京は17~19日に世論調査を実施した。岸田文雄内閣の支持率は60%で、前回の5月調査(66%)から6ポイント低下した。資源高騰や円安などによる足元の物価上昇について「許容できない」は64%で「許容できる」の29%を上回った。…内閣支持率は下がったものの岸田政権が発足した2021年10月の59%を超えている。内閣を支持しないと答えた人は32%で同政権で一番高くなった。…内閣を支持する理由の首位は「安定感がある」(27%)、2位は「自民党中心の内閣だから」(26%)だった。支持しない理由は「政策が悪い」(33%)がトップだった。物価上昇を「許容できない」と回答した層の内閣支持率は55%で全体より低かった。…「許容できない」と答えた割合を世代別にみると18~39歳が63%、40~50歳代が65%、60歳以上が67%だった。…政府・与党の物価高対策を「評価しない」は69%で5月から8ポイント上昇した。「評価する」は21%で5月の28%から下がった。
日銀の政策については金融緩和を「続けるべきではない」が46%、「続けるべきだ」は36%だった。日銀は16~17日の金融政策決定会合で大規模緩和を継続する方針を決めた。景気の下支えが狙いだが、米欧との金利差の拡大が円安要因になっている。…物価上昇を「許容できない」と答えた人の53%が金融緩和を「続けるべきではない」を選択した。
【参院選、22日に公示、7月10日に投開票】
22日の読売新聞によれば、第26回参議院議員選挙は22日公示され、7月10日の投開票に向けて18日間の選挙戦に入った。立候補の受け付けは午前8時30分に始まり、午後5時の締め切りまでに全国で545人(選挙区367人、比例178人)が立候補の届け出を済ませた。…岸田首相(自民党総裁)は、勝敗ラインを自民、公明の与党で非改選を合わせた過半数(125議席)に設定。目標達成には今回の参院選で56議席が必要となり、与党が63議席を獲得すれば、改選過半数を確保することになりる。
【BRICSの首脳会議がオンラインで開催】
23日のテレ朝ニュースは、「中国とロシア、インド、ブラジル、南アフリカの5カ国で構成するBRICSの首脳会議がオンラインで開かれ、習近平国家主席は「一方的な制裁に反対する」と述べ、欧米などの対ロ制裁を牽制(けんせい)した。… 習主席は、23日の首脳会議の冒頭挨拶で「一方的な制裁や制裁の乱用に反対する」と述べ、ロシアに対する欧米や日本などの制裁を批判した。…また、NATO=北大西洋条約機構などを念頭に「軍事同盟の拡大によって絶対的な安全保障を求めようとたくらみ、他国の権益を無視している」などと主張した。…ウクライナへの侵攻を続けるロシアを非難することはなかった。…会議にはオンラインでプーチン大統領も出席した。…中国はロシアとともに欧米などに対抗する勢力を形成し、結束をアピールしたい狙いです。」
【ウクライナ東部の戦況】
26日の産経新聞によれば、ロシア軍は25日、ウクライナ軍が東部ルガンスク州で最後の拠点とするリシチャンスク市への攻勢を強めた。インタファクス通信によると、親ロ派「ルガンスク人民共和国」の部隊の報道官は同部隊とロシア軍が市内に入り、戦闘が始まったと述べ、一部の工場などを掌握したと主張した。東部ドンバス地域(ルガンスク、ドネツク両州)制圧という主要目標実現へ戦果を急ぐ。リシチャンスクに隣接するルガンスク州の要衝セベロドネツクの市長は25日「ロシア軍が市を完全掌握した」と地元テレビに語った。同市はウクライナ軍が撤退を始め、事実上陥落していた。ウクライナ側は態勢を立て直し、米国が供与した武器を実戦投入して抗戦を続ける構えである。(共同)
同じ26日の朝日新聞デジタルも「ウクライナ東部ルハンスク州の主要都市セベロドネツクのストリュク市長は25日、同市が「ロシア軍に制圧された」と明らかにした。ロシア側は同州の大部分を支配下に置くことになり、軍事的成果として誇示するとみられる。ウクライナ側にとっては先月制圧された南東部マリウポリ以来の大きな打撃となる」と報じた。
【東電管内で初の電力需給逼迫注意報】
25日と26日、太平洋高気圧が北上し、梅雨にもかかわらず、全国的な猛暑(最高気温が35度超)と各所で大雨・落雷となっている。関東を中心に25日は高気圧に覆われて晴れ間が広がり、群馬県伊勢崎市では午後3時過ぎに40.2度を観測。6月の国内最高気温を更新した。これまでは2011年6月24日に観測した埼玉県熊谷市の39.8度が最高だった。
27日も都心で3日つづきの猛暑となり、経済産業省は初めての需給逼迫注意報を発令した。昼間の電力需給は比較的余裕がある一方、夕方は電力の需要が伸びる上に太陽光発電の出力が落ちて需給が逼迫しやすい。…27日午前11時時点の経産省の評価では、東京エリアの電力需給は午後4時から午後4時30分の予備率が2.8%、午後4時30分から午後5時が1.2%に下がると発表した。
電力広域的運営推進機関は27日午前10時ごろ、北海道電力、中部電力、北陸電力、関西電力の4つの送配電会社に対し、午前10時半から午後8時にかけて東京電力管内に最大91万キロワットの電力を融通するよう指示した。さらに東北電力にも最大55万キロワットの融通指示を出す方針という。
気象庁は27日午前、関東甲信、東海、九州南部の各地方で梅雨明けしたとみられると発表した。統計開始以来、最も短い梅雨の期間ととなった。
【岸田首相がドイツ開催のG7サミット参加】
27日の産経ニュースによれば、岸田首相は、ドイツ開催G7サミットで次のような発言を想定している。
「岸田文雄首相は26日にドイツ南部エルマウで開幕した先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、インド太平洋地域の脅威となっている中国に関する議論を主導する意向だ。欧米諸国の意識がロシアのウクライナ侵攻に向く中、東・南シナ海で力による現状変更を試みる中国への警戒を呼び掛け、改めてG7の結束を強化したい考えだ。…首相は会議で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海侵入など中国の海洋進出や、途上国のインフラ権益を奪う「債務のわな」など開発金融の問題を提起。中国が東シナ海で進めるガス田開発についても言及する方向。」
政府高官は「中国はロシアのような国際法違反やルール破りをアジアで継続的に行っている。日本は国際社会が一致して対応すべきだと訴える必要がある」と強調する。…昨年6月に英国で開催されたG7サミットは中国が議題の中心となり、初めて首脳宣言に「台湾」を明記。経済的な結びつきから中国寄りの姿勢が目立っていた欧州の対中警戒感の高まりを象徴していた。
ただ、今年2月以降、各国ともウクライナ危機が外交・安全保障だけでなく、物価高やエネルギーなど内政にも大きな比重を占めるようになった。政府関係者は「首脳全員が中国を話題にしていた昨年のサミットと環境が変わっている」と危機感を見せる。伝統的に欧州はロシアや中東・アフリカ地域への意識も強い。
日本はこれまでもG7で中国の問題を粘り強く提起し、首相もかねて「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と訴えてきた。首相は3月にベルギーで開かれたG7サミットでも、ロシアとの停戦交渉に中国の役割を期待する欧州勢にクギを刺した。…実際、中国はロシアと歩調を合わせ、日本や欧米諸国を牽制(けんせい)する動きを見せる。中国やロシアの海軍艦隊が日本列島周辺で活動を活発化。23日には中国やロシア、インドなど新興5カ国(BRICS)のオンライン首脳会議を開いた。
G7サミットに続き、28日からは北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が予定されており、外務省幹部は「中国が意識しているのは間違いない」と語る。…国連安全保障理事会の機能不全が浮き彫りになる中、自由や民主主義など価値観を共有するG7は重要性を増している。首相には、サミットを通じ、各国のインド太平洋地域への関与を深化させる役割が求められている。
この間、以下の録画を視聴することができした。(1)BS世界のドキュメンタリー「ワグネル 影のロシア傭兵部隊」5月22日。 (2)NHK映像の世紀バタフライエフェクト「スターリンとプーチン」23日。 (3)報道1930「エネルギー危機の予兆 対ロ制裁は諸刃の剣?」25日。 (4)報道1930「終末か? プーチン院政 情報機関筋が見る院政の可能性と”後継者”」26日。 (5)国際報道2022「北朝鮮ミサイル発射 韓国新政権はどう対応したのか」26日。 (6)国際報道2022「ツイッター買収劇から考える”言論の自由”」27日。 (7)報道1930「プーチン氏のNATOけん制が加盟ドミノへ岐路に立つ専守防衛」27日。 (8)国際報道2022「肥料供給不足に揺れるブラジル農家」28日。 (9)BS1「週刊ワールドニュース 5月23日~27日」28日。 (10)日曜スクープ「ウクライナ主力部隊はせん滅を回避できるか 食料不足の恐れ」29日。 (11)NHKスペシャル「離反か従属か~グルジアの苦悩~」29日。 (12)報道1930「太平洋戦争の<要衝>狙う中国 王毅外相が歴訪」30日。 (13)NHK映像の世紀バタフライエフェクト「我が国のテレサ・テン」30日。 (14)報道1930「情報統制にほころびか。プーチン体制動揺も?」31日。 (15)国際報道2022「ガザ紛争1年 正義求める活動家」31日。 (16)国際報道2022「シンガポール海運革命 成功の翼<3Dプリンター>」6月1日。 (17)報道1930「ウクライナ危機で豹変 軍拡に舵を切るドイツ ”防衛費増”で日本は」1日。 (18)NHK総合「ダボス会議 ウクライナ侵攻<新たな冷戦>を議論」2日。 (19)NHK総合「侵攻から100日 ”ロシア軍 領土の約2割を支配”」4日。 (20)報道1930「”太る”欧米軍需産業とロシア離れ」2日。 (21)報道1930「<国恥地図>が秘めた中国”失われた帝国”、習氏<歴史観>の原点」3日。 (22)BS1「週刊ワールドニュース 5月30日~6月3日」4日。 (23)TV東京 美の巨人たち「横浜・文化財<帆船日本丸>」4日。 (24)NHK日曜討論「コロナからの復活へ 新たな観光・旅のカタチ」5日。 (25)BS1スペシャル「ドキュメント クラクフ中央駅~ウクライナ難民の日々~」5日。 (26)報道1930「ソ連独裁者の”残像”とプーチンの誤算」8日。 (27)国際報道2022「両親を失ったウクライナの少年 日記につづった戦争」7日。 (28)報道1930「”幽霊タンカー”急増 漂流するロシア産原油、ロシア制裁逃れの実態」6日。 (29)国際報道2022「ウクライナ発の食糧危機は回避できるか 欧州の挑戦」11日。 (30)クローズアップ現代「NATOとロシア”新たな攻防”の行方」9日。 (31)BS1「週刊ワールドニュース 6月6日~10日」11日。 (32)ETV特集(選)「ウクライナ侵攻 私たちは何を目撃しているのか。 海外の知性に聞く」11日。 (33)BS朝日日曜スクープ「攻防激化 セベロドネツク」12日。 (34)国際報道2022「水不足にあえぐイラン 世界遺産や小麦にも影響」14日。 (35)国際報道2022「”コロナ後遺症”研究最前線 リスクは? 予防は?」15日。 (36)報道1930「プーチン氏が恐れる事、民間人を狙う意味とは」15日。 (37)BS世界のドキュメンタリー「"氷上のシルクロード”ねらう中国」15日。 (38)国際報道2022「”債務の罠”のスリランカ 赤く染まるインド洋の真珠」16日。 (39)週刊ワールドニュース(6月13日~17日)18日。 (40)フジテレビ日曜報道 THE PRIME「物価は? 防衛は? 参院選へ与野党が生討論」19日。 (41)BS朝日日曜スクープ「ウクライナ都市奪還戦が激化 ロシア経済悪化の予測」19日。 (42)報道1930「日本防衛の”哲学”は? 中国”認知戦”と日本」20日。 (43)BS5「自分流 浅島誠」25日。
共同声明はまた中国の海洋進出が活発な東・南シナ海について「ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対抗する」とも強調した。具体策として海洋監視の協力システムをあげた。違法漁船など沿岸警備に関する情報をインド太平洋地域の国で共有する構想である。南シナ海で中国と領有権を争うベトナムやフィリピンなどとの連携を想定する。
【バイデン米大統領が銃規制で記者会見】
アメリカ東部時間の24日、日本から帰国直後のバイデン米大統領はテキサス州ユバルディのロブ小学校で起きた銃乱射事件について記者会見を開き、銃規制を訴えた。この事件では、これまでに19人の児童と2人の大人の死亡が確認されており、犠牲者数は2022年に起きた銃撃事件で最多となった。
バイデン氏はスピーチで「国として、私たちは問わねばなりません。私たちはいつ銃規制反対団体を拒否するのでしょうか。心の中で必要だとわかっていることを、いつ実行するのでしょうか」と呼びかけた。
10年前の2012年に起きたコネチカット州サンディフック小学校銃乱射事件で、26人が犠牲になって以来、学校で900件を超える銃撃事件が発生したと述べ「もううんざりです、私たちは行動しなければいけない」と訴えた。
また、ロブ小学校銃乱射事件容疑者が18歳の高校生だったことについて「18歳の少年が銃販売店で銃器を買える状況は間違っている」と指摘し、銃販売の規制を強く求めた。
日本からの帰国の機中で「世界の他の国でも、アメリカと同じようにメンタルヘルスや家庭内暴力の問題があるにもかかわらず、なぜ頻繁に銃撃事件が起きないのか」を考えたという。「一体なぜでしょう?なぜ、私たちはこの大虐殺の中で生きようとするのでしょうか?なぜこんなことが起き続けるのでしょうか?」
「銃規制反対活動を拒否する、私たちの勇気と強さはどこにあるのでしょうか?痛みを行動に移す時です。この国のすべての親や市民のために、選ばれた議員全員が行動すべきだということをはっきりさせねばなりません」
【米中など98カ国・地域から観光客受け入れ 6月10日から】
27日の日経新聞によると、政府は26日夜、岸田文雄首相が表明した外国人観光客受け入れ再開の詳細を発表した。米国や中国など98カ国・地域からの観光客を対象に、6月10日から受け入れの手続きを始める。新型コロナウイルスの感染が落ち着いていて、入国時の検査でも陽性率が低い国が対象だ。ワクチン接種の有無にかかわらず、入国時の感染検査や待機は不要にする。観光による入国は2020年春以来およそ2年ぶりの再開となる。国内の旅行会社などが受け入れ責任者となる団体旅行に限定し、個人旅行は認めない。
観光受け入れの再開に先だち、6月1日から入国時の検査や待機措置の緩和を行う。各国・地域をコロナウイルスの流入リスクが低い順に「青、黄、赤」の3グループに分ける。「青」に分類した米国や中国など98カ国・地域は入国時の検査も自宅などでの待機も不要とする。「黄」となったサウジアラビアやウクライナなど99カ国・地域はワクチンを3回接種済みなら検査と待機が不要になる。「赤」としたパキスタンなど4カ国は検査・待機ともに継続される。
観光入国は3グループのうち最もリスクの低い「青」の国・地域に限定する。「黄」の国・地域から入国する場合は、ビジネス客ならワクチン接種に応じて検査などが免除されるが、観光目的の入国は認めない。検査・待機が不要となるのは、直近の入国者数のうち8割程度になるという。
【要衝セベロドネツクの攻防】
これまでウクライナ軍がロシア軍に対して反転攻勢をかけていると伝えられたウクライナ東部ルハンシク州の要衝セベロドネツクで、またロシア軍が優勢になっているとの報道があった(平日ゴールデンタイム1時間半「生放送」というBS-TBS史上初となる大型報道番組BS6<報道1930(ほうどういちきゅうさんまる)>の5月26日放映分)。マリウポリについでセベロドネツクがロシアの手に落ちると、ウクライナ東部の様相が一変してロシアに有利となる。
ウクライナ側も「情勢は厳しい」と認めつつ、新しい重火器がとどけば反転攻勢も可能と主張している。26日の朝日新聞デジタルは、次のように報じた。
「ロシア軍が完全掌握を目ざすウクライナ東部ドンバス地方で、攻防が激しさを増している。ルハンスク州ではロシア軍が昼夜を問わず攻撃を繰り返しているという。ウクライナのゼレンスキー大統領は25日夜のビデオ演説で、「ウクライナ軍は、すさまじい攻撃に抵抗を続けている」と語り、ロシアに譲歩しない姿勢を改めて明確にした。
ルハンスク州は95%がロシア軍に占拠されたものの、ウクライナ軍は拠点都市セベロドネツク(人口=約10万人)を守り続けている。ハイダイ知事は25日、SNSで「砲撃がまったくやまない」と訴えた。州内のウクライナ支配地域には4万人以上の市民が残り、その99%が街を離れないと言っていると説明。この1週間ほどを持ちこたえれば、状況が落ち着くとの見方を示している。」
【プーチン政権に異変】
25日の朝日新聞デジタルは、「プーチン政権に異変、盟友・外交官らから相次ぐ苦言<全世界が敵対>」の見出しで、次のように報じた。
ウクライナ侵攻の開始から24日で3カ月を迎えるなか、ロシアでプーチン政権の支持基盤に異変が見え始めた。外交官や盟友、国営メディアなどから公然と侵攻への批判の声が上がり、軍司令官の処分も指摘される。ロシア軍にも多くの犠牲が出るなか、侵攻が長期化するとの見方が強まっており、政権に対する国民の不満が少しずつ高まっている可能性がある。
「20年間、わが国の外交政策の様々な展開を見てきたが、(ロシアがウクライナに侵攻した)2月24日ほど母国を恥じたことはない」
今月23日、ロシアの在ジュネーブ国連代表部に務めていたボリス・ボンダレフ参事官がジュネーブの外交官らに宛てた声明が公表され、ウクライナ侵攻に抗議して辞職したことが明らかになった。
【ダボス会議でも激論】
27日の日経新聞【ダボス(スイス東部)=中島裕介】によると、26日に閉幕した世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)では、ロシアと戦うウクライナの停戦後の姿についても議論が交わされた。一部の識者が領土の事実上の分割が避けられないとの見方を示す一方で、ウクライナ首脳がこれに強く反論した。
キッシンジャー元米国務長官は23日、ダボス会議にオンラインで登壇し、「(2月の)ロシアの侵攻前の状況」をロシアとウクライナの国境とすることが望ましいと指摘した。2014年にロシアが併合したクリミア半島の奪還を断念する提言といえる。西側諸国にも戦争が長期化すれば「ウクライナの自由を求める戦いではなく、ロシアに対する新たな戦争になる」とロシアへの配慮を呼びかけた。
これに対してウクライナのゼレンスキー大統領は25日の声明で強く反論。「領土分割論を唱える者は、その地域に住んでいるウクライナ人を考えていない人だ」と訴えた。「キッシンジャー氏のカレンダーは2022年でなく1938年になっている」とも指摘した。英仏が台頭するナチス・ドイツに融和姿勢を示し、第2次世界大戦の惨禍を招いたとされる歴史の経緯を引き合いにした非難である。
クレバ外相も25日のセッションで「譲歩しても、うまくいかない」と強調した。ウクライナの政府関係者の間では、ロシアが停戦後に再び侵攻するリスクが拭えないとの声が強い。領土割譲は主権国家として許せないだけではなく、停戦につなげる戦略としても悪手だという見立てである。
【上海の都市封鎖、2カ月超ぶりに解除】
6月1日の日経新聞は、次のように報じた。
「中国・上海市は6月1日、2カ月超にわたり実施してきた都市封鎖(ロックダウン)を解除する。供給網の回復を見込みホンダが6月の日本国内生産を微増とする計画を取引先に伝えたほか、現地に進出するセブンイレブンなども順次営業を再開する。当局の詳細な通達内容などはまだ不透明な面もあり、企業活動の正常化にはしばらく時間がかかりそうだ。
上海市の宗明副市長は5月31日の記者会見で「正常な生産と生活に全面復帰する」と述べた。一定期間内に陽性者がいた地区を除いて、6月1日から市民の自由な外出を認める。ロックダウンで停滞していた日本企業の活動も徐々に再開しつつある。
ホンダは上海ロックダウンなどの影響で日本の4~5月の生産が前年同月を下回ったもようだが、6月国内生産は前年同月比微増とする計画を取引先に伝えており供給網は徐々に回復してくると見込む。シャープは稼働を停止していた上海の洗濯機などの工場で5月上旬から生産を順次再開している。「生産挽回を急ぐ」(同社)としている。富士通ゼネラルも6月中旬までに上海市にある小型空調機製造工場のフル稼働を目指している。
現地で販売網を持つ小売り各社も対応を急ぐ。セブンイレブンは約150店舗のほぼ全てで、ローソンは5月30日時点で4割の店舗で休業が続いているが、6月1日以降は2社とも営業時間の制限の有無など当局の詳細な通達を待ってから営業を順次再開する方針だ。良品計画では4月から上海市内の「無印良品」の全35店舗を休業していたがすでに2店舗が時短で営業を再開しており、今後、当局からの指示に従い営業を順次再開する方針。」
【中国の王毅外相、南太平洋7カ国を訪問】
10日の日経新聞は次のように報じた。
「中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は6月4日、南太平洋7カ国と東南アジアの東ティモールへの旅を終えた。訪問は10日間におよび、複数の国々に経済協力を約束し、フィジーでは域内の10カ国とオンラインの外相会合を開いた。
ここからうかがえるのは将来、南太平洋を自分の影響圏にしたいという中国の望みである。その意図があらわになったのが、10カ国に提案している新協定だ。締結は見送られたものの、事前にリークされた草案は波紋を広げた。中国が各国の警察やデジタル統治、サイバー安全保障などの体制づくりに協力する中身だったからだ。
南太平洋では、軍や治安の体制が乏しい国々が多い。協定が結ばれれば、各国の統治に中国が大きな影響力を持つことになる。」
【オーストラリア新政権が巻き返し】
3日の日経新聞【シドニー=松本史】によると、太平洋諸国に外交攻勢をかける中国に対抗し、発足間もないオーストラリアの新政権が巻き返しを図っている。ウォン豪外相は就任から10日あまりで地域の3カ国を訪問。3日には南太平洋のトンガで首相と会談した。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相も先週から7つの島しょ国を訪問しており、太平洋を巡る中豪のつばぜり合いが激しさを増してきた。
「豪新政権はこれまで以上のエネルギーを割いて太平洋島しょ国に向き合う」。3日、トンガを訪れたウォン氏は同国のフアカバメイリク首相と共に記者会見し、地域に密接に関与する姿勢を強調した。
島しょ国で、温暖化による海面上昇で国土浸水が大きな懸念となっているとして「気候変動問題は安保上、経済上の大きなリスクだ」と指摘。豪州は「より意欲的な行動を取る」とも語った。これに先立つ2日にウォン氏はサモアを訪問し、同国のフィアメ首相と会談。巡視船の寄贈などを約束した。
島しょ国で、温暖化による海面上昇で国土浸水が大きな懸念となっているとして「気候変動問題は安保上、経済上の大きなリスクだ」と指摘。豪州は「より意欲的な行動を取る」とも語った。これに先立つ2日にウォン氏はサモアを訪問し、同国のフィアメ首相と会談。巡視船の寄贈などを約束した。
【ウクライナ産小麦の輸出滞留】
7日の日経新聞【ベルリン=南毅郎】によれば、ウクライナのゼレンスキー大統領は6日、今秋までに最大7500万トンの穀物が国内に滞留する恐れがあるとの見方を示した。世界全体の年間貿易量の15%に相当する。ロシアによる海上封鎖が続き、小麦の主産国であるウクライナからの輸出が滞ったままになれば新興国での食料不足が深刻になる恐れがある。
ゼレンスキー氏がウクライナの首都キーウ(キエフ)で記者団に語った。ロイター通信によると、第三国の海軍が保証する形で黒海から穀物を安全に輸出する案を英国やトルコと議論しているという。
ウクライナメディアによると黒海のロシア艦隊はウクライナ海岸から100キロメートル以上離れた地点まで押し戻された。ただ戦闘が長引くなか、海上輸送の本格的な再開はなお見通せない。米農務省によると、世界全体の年間穀物貿易量は2021~22年度(推計)に5億トンだった。7500万トンはその15%に相当する規模で、需給逼迫の懸念から小麦などの国際価格にはすでに上昇圧力がかかっている。
【首相の経済政策<新しい資本主義>の具体策を反映】
政府は7日午後の臨時閣議で、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)と<新しい資本主義>の実行計画を決める。自民党は同日午前の総務会で、公明党は常任役員会でそれぞれ了承した。岸田文雄内閣になって初めてまとめるもので、首相の経済政策<新しい資本主義>の具体策を反映する。
人への投資に重点を置くほか、個人の金融資産を貯蓄から投資に促すための「資産所得倍増プラン」を年末までに策定する方針も明記する。
防衛力の強化では「5年以内」との目標期限を盛り込む。原案には明確な期限の記述がなく、自民党の要求を踏まえ修正した。
【半導体投資、台湾全土が沸騰 全20工場16兆円の衝撃】
7日の日経新聞【台北=中村裕、龍元秀明】は、「半導体投資、台湾全土が沸騰 全20工場16兆円の衝撃」の見出しで次のように報じた。
中国からの統一圧力に揺れる台湾。軍事侵攻リスクも懸念されるなかで、未曽有の半導体の投資ラッシュが起きている。総額16兆円に及ぶ世界でも例を見ない巨額投資だ。昨年来、世界から台湾の地政学リスクが何度も指摘されてきたが、それでも台湾は域内で巨額投資に突き進んでいる。なぜか。全土を縦断し、各地で建設が進む全20工場の映像とともに検証した。
台湾南部の中核都市・台南市。5月後半、台湾最大の半導体生産拠点がある「南部サイエンスパーク」を訪れると、町は少し異様な雰囲気に包まれていた。工事用の大型トラックが頻繁に行き交い、至る所で建設用のクレーンがつり荷作業を繰り返すなど、複数の半導体工場の建設が同時に急ピッチで進んでいた。
ここはもともと、世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が一大生産拠点を構えた場所。米アップルのスマートフォン「iPhone」向けの半導体を中心に、世界で最も先端の工場が集まる場所として知られ、最近でもTSMCが4つの新工場を完成させたばかりだった。それでも十分ではなかったようだ。TSMCはさらに最先端品(3ナノメートル=ナノは10億分の1)の新工場建設を周辺4カ所で同時に進め、拠点の集中を加速させていた。
【ウクライナ東部の要衝をめぐる戦い】
この1週間、ウクライナの戦闘は一進一退である。東部の要衝と呼ばれるルハンシク州のセベロドネツクではロシア軍が優勢となり、95%を奪回したと言われる一方、川を挟むリシチャンシクはまだウクライナの治下にあり、こここそが本当の最終決戦の場であるとも言われる。ニュースはいささか混乱しているが、ウクライナとロシアの双方が、いまだ<決着がついていない>と表明している。
武器の種類も変わりつつある。かつては対戦車のジャベリンが主体であったが、この2週間、フランスから自走りゅう弾砲(射程は40キロ)に次ぎ、アメリカがハイマースを、イギリスがMMSと性能の高い長距離ロケットシステムを送る約束をしている。
【米消費者物価、約40年ぶり水準更新】
10日の日経新聞は「米消費者物価、5月8.6%上昇 約40年ぶり水準更新」の見出しで、【ワシントン=高見浩輔】により、次のように報じた。「米労働省が10日発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の伸び率が8.6%となった。3月の8.5%をさらに上回り、40年5カ月ぶりの水準となった。新型コロナウイルス禍で控えていた旅行などの「リベンジ消費」も夏にかけて物価を押し上げ、インフレは高止まりしそうだ。米連邦準備理事会(FRB)による急ピッチの利上げが長引く可能性もある。…変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数の上昇率は6.0%で、前月の6.2%を下回った。コア指数を前月比でみると4月と同じ0.6%の上昇で、市場予想を上回った。インフレの根強さを示す結果となった。…エネルギーは前年同月比で34.6%、食品は10.1%上昇した。住居費が5.5%値上がりするなどサービス価格も全般的に上昇した。貧困層を中心に生活を圧迫するインフレへの不満がますます高まる公算が大きい。米国は人手不足が深刻で、失業者1人に対して約2人分の求人がある状態だ。賃金の上昇が加速すれば、インフレの制御はますます困難になる。」
【はやぶさ2成功、日本が小惑星探査でリード】
10日の朝日新聞デジタルは、「はやぶさ2成功、日本は「着眼点の勝利」 小惑星探査で世界をリード」の見出しで、「私たち生命の起源はどこから来たのか――。壮大な謎を解くカギを地球に持ち帰った成果は、小惑星探査に活路を見いだした着眼点の勝利だ。世界の宇宙開発が月や火星を指向する中、日本の研究者が1980年代から着目したのは小惑星だった。安全性の確保が難しい有人探査に比べて無人探査は低予算で、試料が得られれば科学的な成果につながる。そして、数億キロかなたの探査機を小惑星に着陸させて、地球に帰還させる技術を持つ国はなかった。」と報じた。
【アジア安全保障会議(シャングリラ対話)での岸田首相基調講演<外交・安保面での役割強化>】
10日のヤフー・ニュースは、「アジア安全保障会議(シャングリラ対話)での岸田首相基調講演全文 <外交・安保面での役割強化>」を伝えた。その概要は以下の通り。
本日は、ここにお集まりの皆さんと、現下の国際社会が直面する厳しい状況について認識を共有するとともに、われわれが目指すべき未来の姿について展望したいと思います。…そうした議論を展開するのに、このシャングリラ・ダイアローグほどふさわしい場所はありません。まさに、アジアは、世界経済の35%近くを占め、拡大を続ける世界経済の中心であり、一体性と中心性を掲げる
ASEAN(東南アジア諸国連合)を核に、多様性と包摂性のある成長を続けているからです。
今、ロシアによるウクライナ侵略により国際秩序の根幹が揺らぎ、国際社会は歴史の岐路に立っています。…国際社会が、前回大きな転換期を迎えたのは、約30年前のことでした。…世界が2つに分断され、両陣営の冷たい対立が再び熱を帯びてしまう可能性に人々がおびえ続けた<冷戦>が終わりを告げ、<冷戦後>の時代が始まった頃でした。
私の故郷、広島の先輩であり、私の属する政治集団「宏池会」の先輩リーダーである、宮澤喜一元総理は、「冷戦後の時代」について、日本の国会での演説で「新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まりと認識したい」と述べました。宮澤元総理は、わが国が安全保障分野で国際的に一層の役割を果たすことが求められている現実を直視し、大変な議論の末に、PKO(国連平和維持活動)協力法を成立させ、同法に基づき自衛隊をカンボジアに派遣しました。
宮澤元総理の時代から約30年。今、われわれはどのような時代に生きているのでしょうか。…パンデミックが起きて以降、世界は不確実性を一層増していきました。経済的な混乱が続く中、私たちは、信頼できる安全なサプライチェーンの重要性を認識するようになりました。
そして、世界がパンデミックから立ち直ろうとしている最中、ロシアによるウクライナへの侵略が起きました。これは、世界のいかなる国・地域にとっても、決して「対岸の火事」ではありません。本日ここにお集まりの全ての方々、国々が「わがこと」として受け止めるべき、国際秩序の根幹を揺るがす事態です。
南シナ海において、「ルール」は果たして守られているでしょうか。長年にわたる対話と努力の末に皆が合意した国連海洋法条約を始めとする国際法、そして、この条約の下、仲裁裁判の判断が守られていません。
そして、わが国が位置する東シナ海でも、国際法に従わず、力を背景とした一方的な現状変更の試みが続いており、わが国は断固とした態度で立ち向かっています。…この2つの海の間に位置する台湾海峡の平和と安定も、極めて重要です。…残念ながら、人々の多様性や自由意志、人権を尊重しない動きも、その多くがこれらの地域で起こっています。
さらに、北朝鮮は、今年に入ってから、新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)を含め、かつてない頻度で、かつ新たな態様での発射を繰り返すなど、安保理決議に違反して核・ミサイル活動を強化しており、これは国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦です。先日の安保理決議が拒否権により採択されなかったのは極めて残念です。私の政権が最重要課題としている北朝鮮による拉致問題も、重大な人権侵害です。
こうしたさまざまな問題の根本には、国際関係における普遍的なルールへの信頼が揺らいでいる状況があるのです。これが本質的かつ最も重大な問題です。…われわれが努力と対話と合意によって築き上げてきたルールに基づく国際秩序が守られ、平和と繁栄の歩みを継続できるか。あるいは、<ルール>は無視され、破られ、力による一方的な現状変更が堂々とまかり通る、強い国が弱い国を軍事的・経済的に威圧する、そんな弱肉強食の世界に戻ってしまうのか。…それが、われわれが選択を迫られている現実です。
(日本の責任と取組)
世界第三位の経済大国であり、そして、この地域で戦後一貫して平和と繁栄を追求し、経済面を中心に貢献してきた、日本。その日本が果たすべき責任は大きい。そうした認識の下、歴史の岐路に直面するわれわれの平和を実現するために、日本が果たすべき役割とは何か。
誰もが尊重し、守るべき普遍的価値を重視しながら、「核兵器のない世界」を目指す、といった未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、しかし、時にはしたたかに、果断に対応する。私はこうした徹底的な現実主義を貫く<新時代リアリズム外交>を掲げています。…その中でも、日本は、謙虚さ、多様性を重視する柔軟性、相手方の主体性を尊重する寛容さ、を失うことはありません。しかし、日本、アジア、世界に迫り来る挑戦・危機には、これまで以上に積極的に取り組みます。
そのような観点から、私は、この地域の平和秩序を維持、強化していくため、次の5本柱からなる「平和のための岸田ビジョン(Kishida Vision for Peace)」を進め、日本の外交・安全保障面での役割を強化してまいります。
第1が、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化です。特に、「自由で開かれたインド太平洋」の新たな展開を進めます。
第2が、安全保障の強化です。日本の防衛力の抜本的強化、および、日米同盟、有志国との安全保障協力の強化を車の両輪として進めます。
第3が、「核兵器のない世界」に向けた現実的な取組の推進です。
第4が、国連安保理改革を始めとした国連の機能強化です。
第5が、経済安全保障など新しい分野での国際的な連携の強化です。
ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化とFOIP(自由で開かれたインド太平洋)の新たな展開
(1)ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化
国際社会を平和に導くために、われわれは、第1に、「ルールに基づく自由で開かれた国際秩序」の維持・強化を進めていく必要があります。
そのような秩序を支える基盤が、「法の支配」です。また、「紛争の平和的解決」であり、「武力の不行使」であり、「主権の尊重」です。
さらに、海に目を転じれば「航行の自由」であり、経済に目を転じれば「自由貿易」です。
当然、「人権の尊重」も重要であり、人々の自由意志と多様性が反映される民主的な政治体制も重要です。
これらは、世界の全ての人々が、国際社会の平和を希求し、英知を結集して紡ぎ出した、共通で普遍的なものなのです。今申し上げたルールや原則が、国連憲章の目的と原則にも合致していることは、言うまでもありません。
ルールは守られなければなりません。自らに都合が悪くなったとしても、あたかもそれがないかのように振る舞うことは許されません。一方的に変更することも許されません。変更したいのであれば新たな合意が必要です。
(2)「自由で開かれたインド太平洋」の新たな展開
わが国は、この地域におけるルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、「自由で開かれたインド太平洋」を進めてきました。そして、このわが国が提唱したビジョンは、国際社会において幅広い支持を得るようになりました。
わが国は、ASEAN(東南アジア諸国連合)が自ら基本方針として示した「インド太平洋に関するASEANアウトルック」を一貫して強く支持しています。
世界を見渡せば、米国、豪州、インド、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、そしてEUといったさまざまなアクターが、インド太平洋へのビジョンを打ち出しています。 志を同じくする国々が、大きなビジョンを共有した上で、誰かの押しつけではなく、自らの意思で、それぞれの取組を進める。それこそが、包摂性、インクルーシブネスを基本とする、自由で開かれたインド太平洋、FOIPの考え方なのです。
特に、ここインド太平洋においては、ASEANとの協働が不可欠です。
私も、総理大臣就任後、最初に、本年のASEAN議長国を務めるカンボジアを、その後、インドネシア、ベトナム、タイを訪問し、本日は、シンガポールにやってまいりました。ASEAN各国首脳との会談も積み重ねてきました。
わが国と東南アジアの歴史は、長きにわたる善意と友好に支えられています。戦後、わが国は東南アジアの発展を支援し、そして、東南アジアも、わが国が未曾有の震災に見舞われたときに、その復興に手を差し伸べてくれました。
今後もASEAN各国首脳との間で、手を携えて、この地域の平和と繁栄を確保していくための方策について議論を深めていきたいと思っています。
また、ASEAN諸国と並んで太平洋の島国の皆さんもFOIPの実現のための大切なパートナーです。彼らの存立にかかわる気候変動問題への対応をはじめとして持続可能で強靱な経済発展の基盤強化に貢献をいたします。日米豪が連携した海底ケーブル敷設など、近年の安全保障環境の変化に応じたタイムリーな支援を実施してきています。法の支配に基づく持続可能な海洋秩序の確保に向け、太平洋島嶼国の皆さんとともに歩んでいきます。 FOIPに基づく協力。それは、永年にわたる信頼に立脚した協力です。インフラ建設といったハード面にとどまらず、現地の人材を育て、自律的かつ包摂的発展を促す支援や、投資のパートナーとして官民挙げた産業育成などが中心でした。ASEANの連結性強化の取組も支援してきました。
有志国が連携してこの地域にリソースの投入を増やしていく必要があります。先程述べたASEAN、太平洋島嶼国といった仲間に加えて、FOIPの推進に重要な役割を果たす日米豪印、クアッド。先般のクアッド東京サミットでは、インド太平洋地域の生産性と繁栄の促進のために不可欠なインフラ協力について、今後5年間で500億ドル以上の更なる支援・投資の実施を目指すことを確認しました。
私は、こうした取組をさらに加速してまいります。ODA(政府開発援助)を通じた国際協力を適正、そして効率的かつ戦略的に活用しつつ、ODAを拡充するなど、外交的取組を強化し、従来のFOIP協力を拡充いたします。巡視艇供与や海上法執行能力強化、サイバー・セキュリティー、デジタル、グリーン、経済安全保障といった分野にも重点をおきつつ、FOIPというビジョンをさらに推進していくためのわが国の取組を強化する「平和のための『自由で開かれたインド太平洋』プラン」を来年春までに、お示しすることを表明します。
中でも、近年、日本は、衛星、人工知能、無人航空機等の先端技術も活用しながら、海洋安保の取組を強化しており、各国との知見・経験を共有していきます。この観点から、今後3年間で、20カ国以上に対し海上法執行能力強化に貢献する技術協力および研修等を通じ、800人以上の海上安保分野の人材育成・人材ネットワークの強化の取組を推進していきます。
さらに、インド太平洋諸国に対し、今後3年間で少なくとも約20億ドルの巡視船を含む海上安保設備の供与や海上輸送インフラの支援を行うことをここに表明をいたします。クアッドや国際機関等の枠組みも活用しながら、各国への支援を強化していきます。
加えて、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序を維持・強化するため、国と国・人と人とのつながりやネットワーク作りを強化していきます。そのため、今後3年間で法の支配やガバナンス分野における1500人以上の人材育成を行ってまいります。
(安全保障面での日本の役割・拡大)
(1)日本自らの防衛力の抜本的強化
第2に、安全保障面での日本が果たすべき役割についてお話ししたいと思います。
ロシアによるウクライナ侵略を目の当たりにし、世界各国の安全保障観が大きく変容しました。ドイツは、安全保障政策を転換し、防衛予算をGDP比2%に引き上げることを表明しました。ロシアの隣国であるフィンランドやスウェーデンは、伝統的な中立政策を転換し、NATO(北大西洋条約機構)加盟申請を表明しました。
私自身、「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」という強い危機感を抱いています。わが国も対露外交を転換するという決断を行い、国際社会と結束して、強力な対露制裁やウクライナ支援に取り組んでいます。平和国家である日本の総理大臣として、私には、日本国民の生命と財産を守り抜き、地域の平和秩序に貢献する責務があります。
私は対立を求めず、対話による安定した国際秩序の構築を追求します。しかし、それと同時に、ルールを守らず、他国の平和と安全を武力や威嚇によって踏みにじる者が現れる事態には備えなければなりません。
そうした事態を防ぎ、自らを守る手段として、抑止力と対処力を強化することが必要です。これは、日本自身が、新たな時代を生き抜く術を身につけ、日本が平和の旗手として発言し続ける上で不可欠です。
日本を取り巻く安全保障環境が一段と厳しさを増す中、本年末までに新たな国家安全保障戦略を策定いたします。日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意です。
その際、いわゆる「反撃能力」を含め、あらゆる選択肢を排除せず、国民の命と暮らしを守るために何が必要なのか、現実的に検討してまいります。
皆さまには、日本の平和国家としての在り方は不変だということを強調させていただきます。わが国の取組は、憲法・国際法の範囲内で、日米同盟の基本的役割分担を変更しない形で進めていきます。各国にも、引き続き、透明性をもって、丁寧に説明してまいります。
(2)日米同盟、有志国との安全保障協力
いずれの国もその国の安全を一国だけで守ることはできません。だからこそ、私は、日米同盟を基軸としつつ、普遍的価値を共有する有志国との多層的な安全保障協力を進めてまいります。
先般日本を訪問されたバイデン米国大統領との会談において、防衛力に関する私の決意に対する強い支持をいただきました。日米の安全保障・防衛協力を拡大・深化させていく、この点でも一致をいたしました。
インド太平洋を超え世界の平和と安定の礎となった日米同盟の抑止力と対処力を一層強化していきます。
同時に、豪州や有志国との安全保障協力も積極的に進めていきます。
リー・シェンロン首相、貴国、シンガポールとの間で、防衛装備品・技術移転協定の締結に向けた交渉を開始することを大変うれしく思います。引き続き、ASEAN各国との間で、防衛装備品・技術移転協定の締結を進めるとともに、ニーズに応じた具体的な協力案件を実現してまいります。
円滑化協定、RAAについては、1月の豪州との協定の署名に続き、先般、英国との間で大枠合意に達しました。欧州、アジアの同志国との協定締結にむけて、関係国と緊密に連携していきます。
また、自由で開かれた海洋秩序の実現に貢献すべく、日本は、海上自衛隊の護衛艦「いずも」などを中心とした部隊を6月13日からインド太平洋方面に派遣し、東南アジアや太平洋諸国を含む地域の国々との共同訓練などを行います。
「核兵器のない世界」に向けた現実的な取組の推進
第3に、「核兵器のない世界」の実現に向けても全力で取り組んでまいります。
ウクライナ危機の中で、ロシアによる核兵器の使用が現実の問題として議論されています。核兵器による惨禍を繰り返してはならない、核兵器による威嚇も使用もあってはならない。唯一の戦争被爆国の総理大臣として、このことを強く訴えます。
今回のロシアによる核兵器の脅しの問題は、それだけには止まりません。既に核不拡散体制に深刻なダメージを与えてしまったのではないか。核開発を進める国に核を放棄させることを一層困難にしたのではないか。さらには、核兵器を開発、保有しようとする動きが他の国にも広がるのではないか。さまざまな懸念が示されています。
ウクライナ危機以前から、北朝鮮は、ICBM級を含む弾道ミサイル発射を頻繁に繰り返しており、近く核実験を行うのではないかと深刻に懸念しています。
わが国の周辺で見られる、核戦力を含む軍事力の不透明な形での増強は、地域の安全保障上の強い懸念となっています。
イランの核合意順守への復帰もいまだ実現していません。
「核兵器のない世界」への道のりは、一層厳しくなっているといわざるを得ません。しかしながら、こうした厳しい現状だからこそ、私は、被爆地広島出身の総理大臣として、「核兵器のない世界」に向けて声を上げ、汗をかき、この現状を反転し、少しでも改善するべく行動をしてまいります。
わが国を取り巻く厳しい安全保障環境という「現実」を直視し、そして国の安全保障を確保しつつ、同時に、「核兵器のない世界」という「理想」に近づいていくこと、これは決して矛盾するものではありません。わが国は、「現実」と「理想」を結びつけるロードマップを示しながら、唯一の同盟国である米国との信頼関係を基礎とし、現実的な核軍縮の取組を進めてまいります。
このような取組の基礎となるのが核戦力の透明性向上です。核軍縮の不可逆性と検証可能性を下支えし、核兵器国間、そして核兵器国・非核兵器国間の信頼関係を構築するための第一歩となります。一部に不透明な形で核戦力の増強を進める動きも見られる中、全ての核兵器国に対して、核戦力の情報開示を求めてまいります。
また、米中二国間で核軍縮・軍備管理に関する対話を行うことを関係各国とともに後押ししてまいりたいと思います。
さらに、最近忘れられた感すらあるCTBT(包括的核実験禁止条約)やFMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)、こうした議論を、今一度呼び戻すことも重要です。
国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石であるNPT(核拡散防止条約)を維持・強化していくことが、今まで以上に求められています。核兵器国、非核兵国の双方が参加する、8月のNPT運用検討会議が意義ある成果を収めるよう全力を尽くします。
核兵器の使用がまさに現実の問題となる中、核兵器の使用がもたらす惨禍、その非人道性を改めて世界に訴えていくことも重要です。唯一の戦争被爆国である日本から、来る「核兵器の人道的影響に関する会議」を含め、あらゆる機会を捉えて、被爆の実相を世界に発信してまいります。
さらに、私が外相時代に設置した「賢人会議」の議論を発展させ、国際的な核軍縮の機運をもう一度盛り上げるべく、各国の現、あるいは元政治リーダーの関与も得ながら、「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げ、本年中を目標に、第1回会合を広島で開催をいたします。
北朝鮮については、国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化の実現に向け、日米韓で地域の安全保障、国連での議論、外交的取組などで緊密に連携をし、国際社会と協力して取り組んでまいります。
こうした取組を積み重ね、「核兵器のない世界」に向け、一歩一歩近づけるよう努力してまいります。
(国連安保理改革を始めとした国連の機能強化)
第4に、平和の番人たるべき国連の改革も待ったなしの課題です。
国際社会の平和と安全の維持に大きな責任を持つ安保理の常任理事国であるロシアが、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙に出たことにより、国連は試練の時を迎えています。
国連を重視する日本の立場に変わりはありません。私自身、外相時代から、国連改革に向け積極的に取り組んでまいりました。総理就任以降も、首脳外交の機会も活用して、各国のリーダーとの間で、国連の機能強化に向けた方策について議論を重ねてまいりました。
各国の複雑な利害が絡み合う改革は簡単ではありませんが、日本は平和国家として、国連安保理改革を含む国連の機能強化に向けた議論を主導してまいります。日本が来年から安保理入りすることが決まりました。安保理の中でも汗をかいていきます。同時に、国際社会の新たな課題に対応したグローバルガバナンスの在り方についても模索してまいります。
(経済安全保障など新しい分野での国際的連携)
最後に、経済安全保障など新しい分野での国際的連携についてです。
未曾有のパンデミックの中、世界のサプライチェーン(供給網)の脆弱性が浮き彫りになりました。他国に自国の一方的な主張を押し付けるために不当な経済的圧力をかける。意図的に偽の情報を流布する。こうしたことも認めてはなりません。
われわれはウクライナ侵略により、一層自明かつ生活に直結する喫緊の課題として、われわれ自身の経済の強靱性を高めなければならないことを認識するようになりました。
経済が国家の安全に直結し、サイバー・セキュリティー、デジタル化などの分野の国家安全保障上の重要性が高まっていることも踏まえ、国家および国民の安全を経済面から確保する観点から、経済安全保障の取組を推進します。
日本国内ではこの課題に取り組むため、岸田内閣の下、経済安保推進法を制定いたしました。
しかし、この取組は日本だけでできるものではありません。G7(先進7カ国)といった同志国の枠組みを含め国際連携が不可欠です。
わが国とASEANは、かねてより、重層的なサプライチェーンを構築してきました。今後も、こうしたサプライチェーンの維持・強化に向け、官民が投資を行っていくことが大切です。
このため、わが国は、今後5年間で100件を超えるサプライチェーン強靱化プロジェクトを支援してまいります。
また、経済的な発展を含め、国際社会における地位が向上したならば、恩恵だけを享受するのでなく、その地位に見合った責任や義務を果たすことが重要です。経済協力や融資についても透明性を確保し、被支援国の国民の長期的な幸せにつながるものであるべきです。
われわれは、引き続き、人間の安全保障の考えに基づき、各国の主体性と各国民の利益を尊重した経済協力を進めていきます。
この困難な時代において、繁栄を実現するためには、ASEANが、インド太平洋地域が、世界の成長エンジンであり続ける必要があります。大きく困難な挑戦に直面しようともそれを乗り越える強靱な国づくりに日本は貢献していきます。
(結語)
皆さん、改めてわれわれの未来を思い浮かべてください。
今日、私が皆さんと共有したビジョン、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の構築に向け、皆で取り組む。「自由で開かれたインド太平洋」を次のステージに引き上げていく。
そうすれば、平和と繁栄を享受する未来が、希望に満ちた、お互いに信頼しあい、共感しあえる明るく輝かしい世界が必ず待っている。私は、そう信じています。
ご清聴ありがとうございました。
【米中の国防相が対面で議論、衝突回避で一致】
11日の日経新聞は、米中の国防相が対面で初めて議論、台湾をめぐる応酬を行うと同時に、衝突回避を巡っては一致した、と伝えた。
【ウクライナ東部の戦況】
14日の日経新聞【ウィーン=押切智義】は、「ウクライナ東部要衝が孤立 ロシア、投降を要求」の見出しで次のように報じた。
「ウクライナ東部ルガンスク州の要衝セベロドネツク市で、近隣都市からの支援物資の主要輸送路だった橋がすべて破壊され、孤立の懸念が高まっている。ガイダイ州知事は14日「市の状況は著しく悪化している」と通信アプリに投稿した。
ロシア国防省は14日、セベロドネツクの化学工場に残るウクライナの戦闘員に投降を要求したと発表した。同工場に避難した民間人を退避させる<人道回廊>を15日に設けると主張した。工場には民間人約500人が避難しているとされる。
セベロドネツクは西隣のリシチャンスクと3本の橋でつながっていた。同州知事は13日「避難や人道支援物資の輸送が困難になった」と述べた。
ロシアメディアなどによると親ロシア派武装勢力幹部は13日「ウクライナ軍は市にとどまり降伏か死を選ぶことになる」と語った。英国防省は14日、ロシア軍が東部ハリコフ州でも数週間ぶりに支配地域をやや拡大したとの見方を示した。
ウクライナ軍参謀本部は13日、セベロドネツクの中心部から部隊が撤退したと明らかにした。同市ではおよそ1万人規模の市民が退避できていないとされる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は13日夜のビデオ演説で「東部ドンバス地域での戦闘は欧州における最も過酷な戦闘の一つとして、軍事史に刻まれるだろう」と訴えた。火砲や弾薬の数で劣るなか「十分な数の近代的な大砲だけが我々の優位性を確保し、ロシアによる拷問を終わらせる」と欧米諸国に一段の軍事支援を呼びかけた。
ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問も13日、戦争を終結させるために155ミリりゅう弾砲1000門、多連装ロケットシステム300両、戦車500両などが追加で必要だとSNS(交流サイト)に投稿した。「15日から開かれるウクライナ軍事支援会合で決定を待っている」とした。
【NTTがテレワーク】
18日の日経新聞は、「NTT、居住地は全国自由に 国内3万人を原則テレワーク」の見出しで次のように報じた。
NTTは7月から国内のどこでも自由に居住して勤務できる制度を導入する。主要7社の従業員の半分となる約3万人を原則テレワークの働き方とし、勤務場所は自宅やサテライトオフィスなどとする。出社が必要になった場合の交通費の支給上限は設けず、飛行機も利用できる。多様な働き方を認め、優秀な人材の獲得につなげる。NTTの取り組みが、多くの企業の働き方改革に影響を与える可能性がある。
6月中旬、制度導入を巡り労働組合と合意した。まずNTT、NTTドコモやNTTデータなど主要7社が対象になる。7社の従業員数の合計は6万人で半分が原則テレワークで働くことになる。課題を検証しながらグループ全体に広げる。NTTの国内従業員数はグループ会社を含めて約18万人いる。
各社でテレワークを原則とする部や課などの部署を決める。企画やシステム開発などが中心となる見込みだ。NTTは2021年9月に転勤や単身赴任をなくす方針を打ち出した。新制度の導入に伴い、単身赴任している社員が自宅に戻る場合の引っ越し代は会社が負担する。出社が必要になった場合は「出張扱い」とし、宿泊費も負担する。
子育て中や介護中の社員も働きやすくなり、人材の多様性(ダイバーシティー)が生まれ新たな付加価値を生み出せると見込む。場所にとらわれない働き方は人材採用でも働き手にアピールしやすいとみる。
全国のどこでも居住して勤務できる制度はヤフーやディー・エヌ・エー(DeNA)などIT(情報技術)企業が導入している。ただ伝統的な大企業では前例がなくNTTが最大規模になる。
新型コロナウイルス禍から経済正常化に向かうなかで、多くの企業が柔軟な働き方と生産性向上の両立という課題に直面している。出社を再開する企業もある一方で、NTTのように原則テレワークとする企業もあり、対応の二極化が進んでいる。
【日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査】
19日の日経新聞は、当社世論調査の結果を「物価高「許容できず」64% 内閣支持60%に低下」の見出しで報じた。「日本経済新聞社とテレビ東京は17~19日に世論調査を実施した。岸田文雄内閣の支持率は60%で、前回の5月調査(66%)から6ポイント低下した。資源高騰や円安などによる足元の物価上昇について「許容できない」は64%で「許容できる」の29%を上回った。…内閣支持率は下がったものの岸田政権が発足した2021年10月の59%を超えている。内閣を支持しないと答えた人は32%で同政権で一番高くなった。…内閣を支持する理由の首位は「安定感がある」(27%)、2位は「自民党中心の内閣だから」(26%)だった。支持しない理由は「政策が悪い」(33%)がトップだった。物価上昇を「許容できない」と回答した層の内閣支持率は55%で全体より低かった。…「許容できない」と答えた割合を世代別にみると18~39歳が63%、40~50歳代が65%、60歳以上が67%だった。…政府・与党の物価高対策を「評価しない」は69%で5月から8ポイント上昇した。「評価する」は21%で5月の28%から下がった。
日銀の政策については金融緩和を「続けるべきではない」が46%、「続けるべきだ」は36%だった。日銀は16~17日の金融政策決定会合で大規模緩和を継続する方針を決めた。景気の下支えが狙いだが、米欧との金利差の拡大が円安要因になっている。…物価上昇を「許容できない」と答えた人の53%が金融緩和を「続けるべきではない」を選択した。
【参院選、22日に公示、7月10日に投開票】
22日の読売新聞によれば、第26回参議院議員選挙は22日公示され、7月10日の投開票に向けて18日間の選挙戦に入った。立候補の受け付けは午前8時30分に始まり、午後5時の締め切りまでに全国で545人(選挙区367人、比例178人)が立候補の届け出を済ませた。…岸田首相(自民党総裁)は、勝敗ラインを自民、公明の与党で非改選を合わせた過半数(125議席)に設定。目標達成には今回の参院選で56議席が必要となり、与党が63議席を獲得すれば、改選過半数を確保することになりる。
【BRICSの首脳会議がオンラインで開催】
23日のテレ朝ニュースは、「中国とロシア、インド、ブラジル、南アフリカの5カ国で構成するBRICSの首脳会議がオンラインで開かれ、習近平国家主席は「一方的な制裁に反対する」と述べ、欧米などの対ロ制裁を牽制(けんせい)した。… 習主席は、23日の首脳会議の冒頭挨拶で「一方的な制裁や制裁の乱用に反対する」と述べ、ロシアに対する欧米や日本などの制裁を批判した。…また、NATO=北大西洋条約機構などを念頭に「軍事同盟の拡大によって絶対的な安全保障を求めようとたくらみ、他国の権益を無視している」などと主張した。…ウクライナへの侵攻を続けるロシアを非難することはなかった。…会議にはオンラインでプーチン大統領も出席した。…中国はロシアとともに欧米などに対抗する勢力を形成し、結束をアピールしたい狙いです。」
【ウクライナ東部の戦況】
26日の産経新聞によれば、ロシア軍は25日、ウクライナ軍が東部ルガンスク州で最後の拠点とするリシチャンスク市への攻勢を強めた。インタファクス通信によると、親ロ派「ルガンスク人民共和国」の部隊の報道官は同部隊とロシア軍が市内に入り、戦闘が始まったと述べ、一部の工場などを掌握したと主張した。東部ドンバス地域(ルガンスク、ドネツク両州)制圧という主要目標実現へ戦果を急ぐ。リシチャンスクに隣接するルガンスク州の要衝セベロドネツクの市長は25日「ロシア軍が市を完全掌握した」と地元テレビに語った。同市はウクライナ軍が撤退を始め、事実上陥落していた。ウクライナ側は態勢を立て直し、米国が供与した武器を実戦投入して抗戦を続ける構えである。(共同)
同じ26日の朝日新聞デジタルも「ウクライナ東部ルハンスク州の主要都市セベロドネツクのストリュク市長は25日、同市が「ロシア軍に制圧された」と明らかにした。ロシア側は同州の大部分を支配下に置くことになり、軍事的成果として誇示するとみられる。ウクライナ側にとっては先月制圧された南東部マリウポリ以来の大きな打撃となる」と報じた。
【東電管内で初の電力需給逼迫注意報】
25日と26日、太平洋高気圧が北上し、梅雨にもかかわらず、全国的な猛暑(最高気温が35度超)と各所で大雨・落雷となっている。関東を中心に25日は高気圧に覆われて晴れ間が広がり、群馬県伊勢崎市では午後3時過ぎに40.2度を観測。6月の国内最高気温を更新した。これまでは2011年6月24日に観測した埼玉県熊谷市の39.8度が最高だった。
27日も都心で3日つづきの猛暑となり、経済産業省は初めての需給逼迫注意報を発令した。昼間の電力需給は比較的余裕がある一方、夕方は電力の需要が伸びる上に太陽光発電の出力が落ちて需給が逼迫しやすい。…27日午前11時時点の経産省の評価では、東京エリアの電力需給は午後4時から午後4時30分の予備率が2.8%、午後4時30分から午後5時が1.2%に下がると発表した。
電力広域的運営推進機関は27日午前10時ごろ、北海道電力、中部電力、北陸電力、関西電力の4つの送配電会社に対し、午前10時半から午後8時にかけて東京電力管内に最大91万キロワットの電力を融通するよう指示した。さらに東北電力にも最大55万キロワットの融通指示を出す方針という。
気象庁は27日午前、関東甲信、東海、九州南部の各地方で梅雨明けしたとみられると発表した。統計開始以来、最も短い梅雨の期間ととなった。
【岸田首相がドイツ開催のG7サミット参加】
27日の産経ニュースによれば、岸田首相は、ドイツ開催G7サミットで次のような発言を想定している。
「岸田文雄首相は26日にドイツ南部エルマウで開幕した先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、インド太平洋地域の脅威となっている中国に関する議論を主導する意向だ。欧米諸国の意識がロシアのウクライナ侵攻に向く中、東・南シナ海で力による現状変更を試みる中国への警戒を呼び掛け、改めてG7の結束を強化したい考えだ。…首相は会議で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海侵入など中国の海洋進出や、途上国のインフラ権益を奪う「債務のわな」など開発金融の問題を提起。中国が東シナ海で進めるガス田開発についても言及する方向。」
政府高官は「中国はロシアのような国際法違反やルール破りをアジアで継続的に行っている。日本は国際社会が一致して対応すべきだと訴える必要がある」と強調する。…昨年6月に英国で開催されたG7サミットは中国が議題の中心となり、初めて首脳宣言に「台湾」を明記。経済的な結びつきから中国寄りの姿勢が目立っていた欧州の対中警戒感の高まりを象徴していた。
ただ、今年2月以降、各国ともウクライナ危機が外交・安全保障だけでなく、物価高やエネルギーなど内政にも大きな比重を占めるようになった。政府関係者は「首脳全員が中国を話題にしていた昨年のサミットと環境が変わっている」と危機感を見せる。伝統的に欧州はロシアや中東・アフリカ地域への意識も強い。
日本はこれまでもG7で中国の問題を粘り強く提起し、首相もかねて「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と訴えてきた。首相は3月にベルギーで開かれたG7サミットでも、ロシアとの停戦交渉に中国の役割を期待する欧州勢にクギを刺した。…実際、中国はロシアと歩調を合わせ、日本や欧米諸国を牽制(けんせい)する動きを見せる。中国やロシアの海軍艦隊が日本列島周辺で活動を活発化。23日には中国やロシア、インドなど新興5カ国(BRICS)のオンライン首脳会議を開いた。
G7サミットに続き、28日からは北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が予定されており、外務省幹部は「中国が意識しているのは間違いない」と語る。…国連安全保障理事会の機能不全が浮き彫りになる中、自由や民主主義など価値観を共有するG7は重要性を増している。首相には、サミットを通じ、各国のインド太平洋地域への関与を深化させる役割が求められている。
この間、以下の録画を視聴することができした。(1)BS世界のドキュメンタリー「ワグネル 影のロシア傭兵部隊」5月22日。 (2)NHK映像の世紀バタフライエフェクト「スターリンとプーチン」23日。 (3)報道1930「エネルギー危機の予兆 対ロ制裁は諸刃の剣?」25日。 (4)報道1930「終末か? プーチン院政 情報機関筋が見る院政の可能性と”後継者”」26日。 (5)国際報道2022「北朝鮮ミサイル発射 韓国新政権はどう対応したのか」26日。 (6)国際報道2022「ツイッター買収劇から考える”言論の自由”」27日。 (7)報道1930「プーチン氏のNATOけん制が加盟ドミノへ岐路に立つ専守防衛」27日。 (8)国際報道2022「肥料供給不足に揺れるブラジル農家」28日。 (9)BS1「週刊ワールドニュース 5月23日~27日」28日。 (10)日曜スクープ「ウクライナ主力部隊はせん滅を回避できるか 食料不足の恐れ」29日。 (11)NHKスペシャル「離反か従属か~グルジアの苦悩~」29日。 (12)報道1930「太平洋戦争の<要衝>狙う中国 王毅外相が歴訪」30日。 (13)NHK映像の世紀バタフライエフェクト「我が国のテレサ・テン」30日。 (14)報道1930「情報統制にほころびか。プーチン体制動揺も?」31日。 (15)国際報道2022「ガザ紛争1年 正義求める活動家」31日。 (16)国際報道2022「シンガポール海運革命 成功の翼<3Dプリンター>」6月1日。 (17)報道1930「ウクライナ危機で豹変 軍拡に舵を切るドイツ ”防衛費増”で日本は」1日。 (18)NHK総合「ダボス会議 ウクライナ侵攻<新たな冷戦>を議論」2日。 (19)NHK総合「侵攻から100日 ”ロシア軍 領土の約2割を支配”」4日。 (20)報道1930「”太る”欧米軍需産業とロシア離れ」2日。 (21)報道1930「<国恥地図>が秘めた中国”失われた帝国”、習氏<歴史観>の原点」3日。 (22)BS1「週刊ワールドニュース 5月30日~6月3日」4日。 (23)TV東京 美の巨人たち「横浜・文化財<帆船日本丸>」4日。 (24)NHK日曜討論「コロナからの復活へ 新たな観光・旅のカタチ」5日。 (25)BS1スペシャル「ドキュメント クラクフ中央駅~ウクライナ難民の日々~」5日。 (26)報道1930「ソ連独裁者の”残像”とプーチンの誤算」8日。 (27)国際報道2022「両親を失ったウクライナの少年 日記につづった戦争」7日。 (28)報道1930「”幽霊タンカー”急増 漂流するロシア産原油、ロシア制裁逃れの実態」6日。 (29)国際報道2022「ウクライナ発の食糧危機は回避できるか 欧州の挑戦」11日。 (30)クローズアップ現代「NATOとロシア”新たな攻防”の行方」9日。 (31)BS1「週刊ワールドニュース 6月6日~10日」11日。 (32)ETV特集(選)「ウクライナ侵攻 私たちは何を目撃しているのか。 海外の知性に聞く」11日。 (33)BS朝日日曜スクープ「攻防激化 セベロドネツク」12日。 (34)国際報道2022「水不足にあえぐイラン 世界遺産や小麦にも影響」14日。 (35)国際報道2022「”コロナ後遺症”研究最前線 リスクは? 予防は?」15日。 (36)報道1930「プーチン氏が恐れる事、民間人を狙う意味とは」15日。 (37)BS世界のドキュメンタリー「"氷上のシルクロード”ねらう中国」15日。 (38)国際報道2022「”債務の罠”のスリランカ 赤く染まるインド洋の真珠」16日。 (39)週刊ワールドニュース(6月13日~17日)18日。 (40)フジテレビ日曜報道 THE PRIME「物価は? 防衛は? 参院選へ与野党が生討論」19日。 (41)BS朝日日曜スクープ「ウクライナ都市奪還戦が激化 ロシア経済悪化の予測」19日。 (42)報道1930「日本防衛の”哲学”は? 中国”認知戦”と日本」20日。 (43)BS5「自分流 浅島誠」25日。
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