fc2ブログ

所蔵品展「歴史を想う」

三溪記念館所蔵品展「歴史を想う」が2022年3月18日から4月26にわたり第1展示室と第2展示室で開かれている。企画・実施担当は吉川利一学芸員(事業課長)。
なお第3展示室では俳句展が3月10日から開かれており、会期は6月1日まで。
この間、三溪園では下記の催しがあるので、合わせてお楽しみください。
桜めぐり 3/25-4/5
新緑の遊歩道公開 4/9-5/8
さくらそう展 4/12-4/18 
合掌造り五月人形飾り 4/24-5/8


第1展示室 所蔵品展「歴史を想う」
 吉川学芸員の解題に従って、順次、展示内容を追っていきたい。

現在の外苑は明治39(1906)年に原三溪が公開したエリアです。三溪はその公開の目的・意図について、自ら新聞に寄稿した文章の中で次のように書いています。
「本邦歴史上崇敬すべき国民性の根源を為せる偉人の遺物を蒐集し…無言の間に其国民性を回顧せしむる」(明治43年3月15日 横浜貿易新報)

西洋化によって自国の歴史や伝統への関心が薄れていた当時、歴史に名を遺した人物ゆかりの建造物や美術品などを集めて公開することで日本の歴史や文化を振り返ってほしい、開園にあたって三溪はそんなメッセージを伝えたかったようです。

本展示では、三溪、そして三溪が支援した画家たちが遺した歴史画の作品を中心に紹介します。桜を皮切りに次々に咲く春の花に目を奪われがちな時期ですが、本物の美術作品や園内の古建築を前にそれらが物語る歴史に触れるひとときをどうぞお楽しみください。。

小林古径「宇治川」 
「平家物語」の“橋合戦”を描いたもの。舞台は治承4(1180)年旧暦5月の宇治川。平家の軍勢が渡れないように増水した川に架かる橋の板を外し、源氏方の三井寺の怪僧・浄妙が一人敵陣に乗り込もうとするシーンです。雨のように飛び交う矢の中を進む浄妙が軽妙なタッチで描かれています。

安田靫彦「甲斐黒駒 かいくろこま」
聖徳太子の伝記を絵画化した「聖徳太子絵伝」に取材したもの。聖徳太子が甲斐の国から献上された黒い馬に乗って奈良から富士山まで飛んだという逸話を描いています。場面は今まさに富士山の山頂に向かっているところです。

今村紫紅「秀吉詣白旗宮図 ひでよししらはたぐうをもうでるのず」
豊臣秀吉が鎌倉の鶴岡八幡宮内の白旗宮を参詣し、祀ってあった源頼朝像をなでながら同じ天下をとった者同士だと親しげに語りかけたという逸話を描いた作品です。


2022032501


下村観山「陶淵明 とうえんめい」
陶淵明は、中国六朝時代(4世紀ごろ)の詩人。官吏を辞して隠棲し、故郷の田園での暮らしの中で多くの詩をのこした高士です。自然の中で歩を進める姿で描かれたその風貌は、観山が敬愛した岡倉天心の面影とも重なります。


2022032502




原三溪「西行行路難 さいぎょうこうろかたし」
西行は平安時代末から鎌倉時代初めにかけて活躍した歌人。桜を愛し、諸国を放浪しながら多くの歌をのこしました。なかでも「願はくは花の下にて春死なむその如月(きさらぎ)の望月(もちづき)の頃」は代表的な歌です。作品は厳しい放浪の一場面でしょうか。風が吹きつける秋の枯野を行く西行の姿が描かれています。

原三溪「義士大石大夫旧邸の図」
   大石内蔵助の旧宅を描いた作品。大石内蔵助といえば、主君の赤穂藩主・浅野匠頭の仇討を決行した四十七士を率いた、“忠臣蔵“でおなじみの人物です。今でも赤穂市内には画中に描かれた長屋門が遺されています。



2022032503




原三溪「佐倉義人旧宅之図」
   佐倉義人とは、下総国佐倉藩(現在の千葉県成田市)に住んだ木内宗吾(きうちそうご)のこと。歌舞伎の題材でも知られる、江戸時代初めの伝説的な百姓一揆の指導者です。
   雪に埋もれた家は正月の季節でしょうか。玄関に飾り物が見えます。

今村甚吉宛 原三溪書簡
明治39(1906)年12月4日
今村甚吉は法隆寺西門前町で仏教美術を専門に扱っていた骨董商。現在三溪園ではこの人物に宛てた三溪の書簡を31通所蔵しています。いずれも三溪の古美術・古建築の蒐集や庭園造成の上での価値観、思い、経過などを知ることができる貴重な資料です。
展示中の書簡では、今村甚吉に宛てて次のような内容を書き送っています。
*送った「五斗台」(卓の一種)を受け取ったら、その旨を多治見の方に知らせてほしい。
*「地蔵縁起」はまだ到着していないが、一日も早く拝見したい。
*先日私が譲り受けた税所氏旧蔵の「鳥の古銅香炉」は、たしか800円位だったと思うが、400円で売却したい。どうだろうか。
*この値段で取引が適えば、「菊蒔絵長短冊箱」の100円と併せた500円で、ご所蔵の「豊公辛櫃(唐櫃)」と交換したいが、いかがだろう。
*多治見先生所蔵の(円山)応挙の絵は傷物だがいかほど安くなるか。
*「足元灯篭」は都合よく継いだ(?)ので、ご心配無用である。
文中の「豊公辛櫃」はうまく交渉が成立したようで、今回第2展示室に展示しています。
併せてご覧ください。


第2展示室
原三溪「二日遊関記 ふつかゆうかんき」
箱根芦之湯にあった別荘の去来山房に泊まり、付近の名所旧跡などを巡った際のスケッチを元に制作されたもの。季節は春4月下旬。哲学者の和辻哲郎と阿部次郎、長男の善一郎、長女春子の夫・西郷健雄(画家・西郷孤月の弟)とともに自動車で巡った旅の様子が、楽しそうに描かれています。
三溪は多忙な日々のあいまにも各所の名所旧跡を訪ね、旅を楽しんでいたようです。第1展示室で紹介した作品も、こうした旅の途中で描き留めたスケッチをもとに制作されたもののようです。

「黒漆桐文蒔絵唐櫃」
第1展示室で紹介した三溪の今村甚吉宛て書簡のなかに登場する「唐櫃」が、これに相当すると考えられます。
唐櫃は衣服や調度などを収納する家具の一種で、中国伝来のスタイルを踏襲していることから「唐」の字が付けられています。四方に大きな桐文、足の部分には蔦の文様を配しています。桐文は嵯峨桐(さがぎり)と呼ばれる、おおぶりで豪華なもので桃山時代の気風を伝える堂々とした蒔絵です。
三溪は、当時豊臣秀吉が京都に造営した聚楽第の遺構といわれていた臨春閣の中に、こうした桃山時代の調度類を飾っていました。多忙な中にも歴史に触れ親しむ暮らしを日々楽しんでいたのです。


2022032504




臨春閣の障壁画 狩野探幽「琴棋書画図 きんきしょがず」 
三溪園にある歴史的建造物の中で、三重塔と並ぶ代表的な建物が臨春閣です。江戸時代初期、紀州徳川家の別荘として築造されたといわれるこの建物の内部には障壁画が付属しており、本作品はこのうちの第二屋・琴棋書画の間に嵌め込まれていたものです。(現在建物内には複製を置いています。)
琴棋書画とは、古来中国で高士の風流事として尊ばれた嗜みで、琴は音楽、棋は囲碁、書は読書や書、画は鑑賞や描画を指します。


第3展示室 俳句展
第3展示室では第46回三溪園俳句大会入賞作品(2021年度)を展示している。2020年11月~2021年10月までの1年間に正門藤棚の投句箱に寄せられた514句の俳句の中から、選ばれた優秀作品27点。17音に込められた心の響きを、日本画家・稲垣晴子さんの挿画とともにお楽しみください。


■三溪園投句箱(一般の部)
横浜市長賞 石棺を満たして月の青さかな 三枝 侑子



2022032505





三溪園理事長賞 草の葉を揺らし螢にある重み 中村 登美代
横浜俳話会会長賞 板の間に余寒はりつく嬶座かな 大本 尚
三溪園園長賞 塔に日の傾きて松手入なほ 桑本 螢生
三溪園賞 本堂の千の瓦の炎暑かな 田中 由起
横浜俳話会賞 もう次の風を捉へて花菖蒲 清水 純一
佳作 蓮見会了へて茶店に朝の粥 宮谷 孝雄
佳作 茶室までゆるりと歩む秋日傘 守谷 一剣
佳作 三重の塔しづかに在りし柿日和 近藤 悦子
佳作 短日や下五の読めぬ虚子の句碑 高田 久生
佳作 浜っ子の八十路の意気地臥竜梅 朝倉 水木
佳作 繕ひて竹の青さの垣根かな 松尾 誠一
佳作 瑠璃蜥蝪瑠璃を残して消えにけり 角田 大定
佳作 欄間には櫂と錨や部屋涼し 岸本 隆雄
佳作 タゴールが客人の跡秋日差す 草野 早苗
佳作 港の灯遠くに見ゆる良夜かな 横田 正江
佳作 一輪の菊に大きな祖父の影 岩田 信
佳作 をちこちの船笛朧濃き夜かな 西川 肇子
佳作 唐破風の門へ駆け込む花の雨 阿部 利江
佳作 横笛庵蔀戸上げて梅二月 金井 玲子
佳作 梅日和生命線が伸びたがる 伊藤 久生
佳作 船頭は青鷺なるや冬ぬくし 池田 忠子
佳作 捨舟に川鵜まどろむ園薄暑 池内 ひろし

■三溪園投句箱(青少年の部
小学生 さくらがねとってもきれいさんけいえん 和泉 青奈


2022032506


小学生 しらさぎがさかなをくわえてうれしそう 船橋 遥
小学生 しんこきゅうくさのかおりとなつのかぜ 中村 莉緒
小学生 九ひきのねこに出あったはすの池 富田 にこ


スポンサーサイト



人類最強の敵=新型コロナウィルス(48)

 本連載「人類最強の敵=新型コロナウィルス」は、一昨年2020年3月6日に初めて掲載、次号の3月18日掲載分から通番を付して連載してきた。以来、今回が48回目で、3年目に入った。

【ウクライナ問題のプーチン政策に対して各国が対抗措置】
 2月22日午後、前回(47)を掲載した直後、プーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア派組織が自ら名乗る<ドネツク人民共和国>と<ルガンスク人民共和国>の独立を一方的に承認したうえ、平和維持が目的と主張して両国へロシア軍を派兵したと述べた。
 23日(水曜、祝日)の朝日新聞デジタルによれば、岸田首相は同午前、プーチン大統領の一方的承認に対するロシアへの制裁措置を発表した。(1)2共和国の関係者に対するビザ発給停止と資産凍結、(2)2共和国との輸出入の禁止、(3)ロシアによる日本での国債などの発行・流通禁止――の3点で、詳細は今後詰めるという。首相は同日、首相公邸で秋葉剛男国家安全保障局長や外務、防衛両省の幹部らと協議。その後、記者団の取材に応じた。

【ロシア軍がウクライナ軍事施設へミサイル攻撃開始】
 24日(木曜)、ロシア軍はウクライナの軍事施設へのミサイル攻撃を開始。キエフなどの軍司令部が対象とみられる。プーチン大統領が同日、ウクライナ東部で特別軍事作戦を行う決定をしたと発表、タス通信などロシアメディアが一斉に報じた。ロシアが支援する親ロシア派武装勢力が一部地域を占領するウクライナ東部の住民の保護が目的と述べ、「ウクライナの占領は計画に含まれない」と主張した。
 プーチン氏は24日早朝(日本時間同日正午前)に国営テレビで放送したビデオ声明で表明した。「(ウクライナ東部の住民が)ロシアに支援を求めている。ウクライナ政権によるジェノサイド(集団殺害)にさらされている人々を保護するために(地域の)非軍事化を目指す」と説明した。あくまで人道目的での軍事作戦だと強弁、「ロシアの計画にはウクライナの占領は含まれていない」と説明し、ウクライナに抵抗を諦めるよう迫った。
 一方、ウクライナのクレバ外相はロシアがウクライナへの大規模な再侵攻を始めたと述べた。複数の都市を標的とする「全面的な攻撃だ」と非難。ロシア軍がウクライナ南部の港湾都市オデッサやマリウポリに上陸作戦をしかけているとの報道もある。米CNNは24日、現地時間早朝にウクライナの首都キエフで複数の爆発音が聞こえたと報じた。
 プーチン大統領の決定を受け、バイデン米大統領は「悲劇的な死と苦しみをもたらす計画的戦争を選んだ」と厳しく非難した。

【停戦協議始まる】
 27日の日経新聞【モスクワ=石川陽平】は「ロシアのプーチン大統領は、核戦力を含む軍の核抑止部隊に任務遂行のための高度な警戒態勢に移行するよう指示、核戦力をちらつかせ対ロ制裁を強化した欧米をけん制する狙いとみられる。ウクライナ大統領府は27日、ベラルーシとの国境地帯でロシア側の代表団と前提条件なしの停戦協議を行うと明らかにしたが、緊張は高まっており、協議の成否は不透明」と伝え、停戦協議は現地時間28日午前との見通しを示した。

【EU、カナダも制裁措置】
 27日、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長はウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアへの追加制裁案を発表した。EU領空にロシアの航空機が乗り入れるのを禁止するほか、ロシア政府系メディアのEUでの活動を禁じる。ウクライナへ武器などの購入資金も供与する。
 カナダもロシア航空機に対して自国の領空通過を禁止した。領域内での離着陸や上空を飛行することができなくなる。今後はフライトのキャンセルが見込まれることなどから、米国とフランスは27日、自国民に対してロシアからの速やかな国外退去を勧告した。
ロシア事業を抜本的に見直す企業の動きもでてきた。英石油大手BPは27日、19.75%保有するロシア石油大手ロスネフチの株式を全て売却し、同社と手掛けてきたロシア国内での合弁事業も全て終えると発表した。ロシアから事実上撤退する。1990年から現地でビジネスを展開してきたが、ウクライナへの軍事侵攻で「状況が根本的に変わった」として関係の見直しを決断した。
 国連の安全保障理事会は27日、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、国連総会の緊急特別会合を開くための決議を採択した。28日にも開催する。ロシアの拒否権発動による安保理の機能不全に対応する。米国などが主導し、侵攻を非難する総会決議の採択を目指す。
 米国とアルバニアが提出した特別会合開催についての決議には11カ国が賛成し、採択された。ロシアは反対したが、今回は手続き上の採決だったため、安保理の投票でも拒否権は行使できなかった。中国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)が棄権した。

【米欧がロシアへの経済・金融制裁】
 28日の日経新聞は、「米欧、劇薬覚悟のロシア包囲網 決済停止で最大級の圧力」の見出しを掲げ、「米欧はロシアへの経済・金融制裁を大幅に強める。ロシアの大手銀行を国際決済網から排除し、同国中央銀行にも制裁を発動して「ルーブルを暴落させる」(米政府高官)という。エネルギーをロシアに依存する欧州は強力な金融制裁に消極的だったが、ロシアがウクライナ侵攻の手を緩めず強硬姿勢に転じた。金融取引を封じて経済面から最大級の圧力をかける」と述べた。

【中国の誤算】
 28日の日経新聞は「昨年秋以降、ロシア軍がウクライナ国境に集結し始めてから、中国指導部は一貫してプーチン氏の出方を読み誤ってきた。さすがに全面侵攻はしないだろう、と高をくくっていた形跡が濃い」と述べ、次のように伝えた。
 習氏は2月4日、プーチン氏を北京に招き、「両国の友情に限界はない。協力上、禁じられた分野もない」とうたった共同声明に署名した。この約3週間後、ロシアがウクライナに全面侵攻し、世界の「悪者」になると知っていたら、習氏はロシアとの連帯をここまで格上げしなかったはずだ。
 ロシアによる侵攻リスクを、習政権はぎりぎりまで察知できなかった、という見方が中国問題の専門家には多い。中国の誤算を裏づける根拠がある。米紙ニューヨーク・タイムズによると、米政権は過去約3カ月にわたり、中国側と6回接触して、ロシアの侵攻準備を示す極秘情報を伝えた。ロシアを止めるよう中国に求めるため、異例の措置に踏み切った。
 今年に入ってからはブリンケン国務長官が直接、王毅国務委員兼外相に2回、最新情報を伝えたが、中国側は最後まで真に受けなかった。中国は本気で、ロシアは全面侵攻しない、と油断していたようだ。その傍証として、中国政府は侵攻直後になってから、ウクライナ在住の自国民の退避策にあわてて動き出した。現地には約6000人の中国人が在留しているとされるが、退避のチャーター機派遣を発表したのは2月25日。全面侵攻が始まった翌日である。
 なぜ、習政権はロシアの出方を読み誤ったのか。対立する米国への対抗上、ロシアとの連帯を重視するあまり、プーチン氏を冷静に観察せず、危ない野心に気づくのが遅れてしまったのだろう。習氏の強権化が極まり、彼に耳の痛い情報が上がりづらくなっていることも、もう一つの原因だ。
 中国に詳しい外交筋によると「習氏の機嫌を損ねるのを恐れ、彼の方針に逆行する情報や分析を、側近が上げたがらない」。米政権からもたらされたロシア侵攻説は、まさにこれに当たる。
 共同声明では、北大西洋条約機構(NATO)の拡大にも反対し、中国はロシアの安保上の立場に支持を明確にした。

【ロシア中央銀行が政策金利を20%に】
 28日、ロシア中央銀行は政策金利を従来の9.5%から20%に引き上げると発表した。利上げは11日の金融政策決定会合以来で、2月に入って2回目になる。ウクライナ侵攻による米欧の経済制裁で通貨ルーブルが急落、28日には過去最安値を更新した。通貨安に伴うインフレ加速を抑えるため、緊急の利上げに踏み切った。

【トヨタ自動車 部品会社がサイバー攻撃を受け、稼働停止】
 トヨタ自動車は28日、3月1日に国内全工場(14工場28ライン)の稼働を停止すると発表した。トヨタ車の部品をつくるサプライヤーがサイバー攻撃を受け、部品供給を管理するトヨタのシステムが影響を受けたため。2日以降に通常稼働に戻せるかどうかは精査中。日野自動車とダイハツ工業も同日、同じ理由で1日に国内工場を止めると明らかにした。なお3月1日の操業停止のみで、2日から稼働を再開した。

【岸田首相 ロシア中央銀行との取引制限の追加制裁】
 28日夜、岸田首相はロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、ロシア中央銀行との取引を制限する追加制裁を表明した。米欧カナダの6カ国と欧州連合(EU)が決めた措置に日本も加わる。「ロシアへの金融制裁の実効性を高める」と述べた。
ロシアの侵攻に協力したベラルーシへの制裁も実施する。ルカシェンコ大統領ら個人・団体を制裁対象に加え「輸出管理措置なども講じる」と、首相官邸で記者団に語った。
 首相はこれに先立ち、ウクライナのゼレンスキー大統領と15分ほど電話で協議、「ウクライナの主権と領土的一体性への確固たる支持」を伝え、「日本はウクライナ国民と共にある」と語り、新たに1億ドルの緊急人道支援をも伝達した。ゼレンスキー氏は協議後、ツイッターで「侵略に対抗するための強力な支援に感謝する」と謝意を示した。

【停戦協議】
 ロシアによるウクライナ侵攻から5日目の、現地時間28日午前(日本時間同日午後)、ロシアとウクライナの対話は始まった(ロシアのタス通信)。場所はベラルーシ南東部ゴメリ州とウクライナとの国境地帯とみられる。当初、ロシアはベラルーシの首都ミンスクでの開催を主張、ウクライナは侵攻に協力したベラルーシでの開催に難色を示していた。
 ゼレンスキー大統領は28日、SNS(交流サイト)に動画を投稿し「この会談で結果が出るとは期待できないが交渉してみよう。わずかでも戦争を止めるチャンスがあったのに何もしなかったということがないように」と語った。

【欧米の石油大手がロシアから撤退】
 3月1日、米石油大手エクソンモービルは極東ロシアの資源開発事業「サハリン1」から撤退すると発表した。同「サハリン2」からは英石油大手シェルも撤退を表明済み。ウクライナ侵攻でロシアへの批判が高まるなか、同国での資源事業から手を引く動きが広がっている。
 具体的な撤退時期には言及しておらず「操業を徐々に停止して合弁から撤退する手続きを取り始めた」という。主に原油を生産するサハリン1にはエクソンが30%を出資。ほかにサハリン石油ガス開発(東京・港)が30%、ロシアの石油大手ロスネフチとインドの石油天然ガス公社(ONGC)が20%ずつ出資している。サハリン石油ガス開発には経済産業省、伊藤忠商事、石油資源開発、丸紅、INPEXが出資している。

【アップル ナイキ等の消費財がロシア離れ】
 アップルは1日付の声明で「(ウクライナへの)侵攻を受け、様々な措置を取った。ロシアでのすべての製品販売をいったん取りやめた」と述べた。すでにロシア向けの輸出を停止し、決済サービス「アップルペイ」の利用なども制限しているという。ロシアのスマートフォン市場でアップルのシェアは3割ほどとみられ、影響は小さくない。
 スポーツ用品のナイキも1日までに、ロシア国内で自社サイトでの商品販売を停止、ロシア語の公式サイトで「通販サイトやアプリでの商品販売は一時的に利用できなくなる」と顧客に通達した。
 米フォード・モーターは1日、ロシアの合弁工場での商用車の生産を停止すると発表した。合弁相手であるロシアの自動車メーカー、ソラーズに事業の停止を通達した。フォードは19年にロシアでの乗用車の生産を終了し事業を縮小したが、ソラーズの合弁工場で小型商用車を年間1万~2万台規模で生産していた。
 独BMWもロシアでの自動車生産とロシアへの輸出を停止すると、複数のドイツメディアが1日、報じた。BMWはバルト海に面するロシアの飛地のカリーニングラードでロシア向けに多目的スポーツ車(SUV)を組み立てていた。

【ロシアを世界経済から排除の動き加速】
 3月1日の日経新聞は次のように報じた。「ウクライナに侵攻したロシアを世界経済から排除する動きが広がってきた。英石油大手BPがロシア事業から事実上撤退するほか、商用車大手の独ダイムラートラックホールディングはロシア企業との提携を解消する。各国の機関投資家はロシアの株式や債券を売却する。金融制裁で通貨ルーブルは急落し、ロシア中央銀行は通貨防衛に追われた。中国がどこまでロシア経済を支援するかが今後の焦点になる」。

【トヨタ等がサイバー攻撃を受け稼働を停止】
 トヨタ自動車は28日、3月1日に国内全工場(14工場28ライン)の稼働を停止すると発表した。トヨタ車の部品をつくるサプライヤーがサイバー攻撃を受け、部品供給を管理するトヨタのシステムが影響を受けたため。2日以降に通常稼働に戻せるかどうかは精査中。日野自動車とダイハツ工業も同日、同じ理由で1日に国内工場を止めると明らかにした。

【岸田首相 ウクライナ難民受け入れを表明】
 3月2日、岸田首相はロシアによるウクライナ侵攻で国外に避難する人について「日本への受け入れを今後進めていく」と表明。新型コロナウイルスの水際対策の枠とは別に柔軟に対応することを検討する。首相官邸で記者団に「まずは親族や知人が日本にいる方々を受け入れることを想定するが、それにとどまらず人道的な観点から対応していく。…基本的に水際対策とは別に考えるべきだ。具体的には実務などの調整をこれからしたい」と語った。
 これに先立ってポーランドのモラウィエツキ首相との電話協議で方針を伝え、モラウィエツキ氏は「日本の貢献を評価する」と答えた。岸田首相はウクライナに残る邦人に関してもポーランドへの円滑な入国に協力を求め、最大限の支援を提供するとの回答を得たと説明した。「国際社会における重要な局面においてウクライナの人々との連帯をさらに示す」とも強調した。ポーランドはウクライナの隣国で、多くの人が避難している。

【国連緊急特別会合で141:5:35】
 2日、国連総会は緊急特別会合でロシアによるウクライナ侵攻に「最も強い言葉で遺憾の意を表す」とする決議を日本や米国など141カ国の賛成多数で採択した。ロシアに対し「軍の即時かつ無条件の撤退」を求めたうえで、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立承認の撤回も要請した。ロシアやベラルーシ、シリア、北朝鮮、エリトリアの5カ国が反対し、中国やインドなど35カ国は棄権した。この決議は日米など96カ国が共同提案した。緊急特別会合は2月25日の安全保障理事会でロシアが非難決議案に拒否権を発動したことを受けて招集されたもの、安保理の要請による招集は1982年以来40年ぶり。総会決議に法的拘束力はないが、多数の国が結束してロシアの孤立を印象づける狙いがある。

【IPCがロシアとベラルーシの北京パラ参加を認めず】
 3日夕方のテレ朝ニュースは次のように報じた。「IPC=国際パラリンピック委員会が3日午後、ロシアとベラルーシ選手の北京大会の参加について2日の決定を一転させて参加を認めないと発表した。「アスリートらは恐れを感じていて競技にあ参加できない状況」で「アスリートの安全を確保するのは限界がある」とコメントしている。IPCは2日、両国の選手について国旗などを隠したうえで「個人参加」を認めるとしていた」。

【北京パラの成果】
 こうしたなか、3月4日、2022年北京パラリンピックが開幕した。軍事侵攻が続く中で行われた異例のパラリンピックは、13日が大会最終日。ウクライナの選手団がクロスカントリースキーの競技会場で再び声をあげた。最後の種目で金メダルを獲得。今大会、ウクライナ選手団は過去最多となる11個の金メダルを獲得した。
 その13日夜、10日間の日程をすべて終え、閉会式が行われた。新型コロナウイルスの流行とロシアによるウクライナ侵攻が続く中で開かれた、類を見ない大会となった。
 今大会で目立ったのは地元、中国勢の活躍。パラリンピックでは前回大会の車いすカーリングで金メダルを取ったのが冬の大会史上初のメダルだったが、今大会は金メダル18個を含む61個のメダルを獲得した。
 一方の日本、今大会のメダル獲得数は7個で、前回ピョンチャン大会の10個を下回った。アルペンスキーで25歳の村岡桃佳選手が金メダル3個、銀メダル1個。クロスカントリースキーで21歳の川除大輝選手が金1個。41歳の森井大輝選手が銅メダル2個を獲得した。“戦う”のではなく“一緒に競う”。それはスポーツの本質であり大きな魅力でもある。
 
【ロシア軍はなぜ制空権を奪えないのか】
 ロシア軍の侵攻がつづくウクライナ。9日の朝日新聞デジタルは、2月10日に始まった連載「ウクライナ危機の深層」の第42回「最新鋭のロシア軍、なぜ制空権を奪えない? 元米軍パイロットが分析」を掲載した。語るのは米空軍パイロットの元米空軍大佐で元米国防次官補代理のマーク・グンジンガー氏(Mark Gunzinger) 。戦略爆撃機B52のパイロットとして3千時間以上の飛行経験を持つ。
 素人目でも不可解なロシア軍の行動について概略、次のように述べている。
 「ロシア軍が制空権をとる作戦に出なかったことには驚きました。まずロシア軍は、ウクライナ軍が持つ地対空ミサイルS300を全滅させるとみていた。航空優勢を得たうえで、相手の軍事施設に大規模攻撃をする。
 ロシア軍は優れた戦力を持つ。350機の最新鋭戦闘機があり、うち300機がウクライナ近くに配備されていて、準備はできていた。ところがロシア空軍には制空権を奪う作戦を遂行する能力が足りなかったとみています。大規模で複雑な作戦を実行するだけの訓練を積んでいなかった。ロシア空軍は年間100時間の訓練をしているが、これは北大西洋条約機構(NATO)加盟国のパイロットの半分以下。実戦経験にも乏しい。
 過去の戦いの形にヒントがある。ロシア空軍の実戦経験はシリア内戦、シリアではウクライナのような防空網の脅威がなく、1機や2機、多くて4機の小規模な作戦ばかりで、大規模で複雑な作戦をする必要がなかった。相手の防空網や空軍を無効化するためには、数百機の飛行機が同時に連携して攻撃する必要がある。これは、数機での作戦とは全く異なる。さらに防空レーダーを妨害するなどの作戦を組み合わせるのが防空網の制圧や破壊の基本手順です。
 プーチン大統領は、ロシア軍はウクライナ人に歓迎されると高をくくって、準備が足りなかったのでしょう。だが思うようには進まず、初期の計画は失敗した。現代の戦争において、航空優勢は絶対に欠かせないものです。空軍だけでなく陸軍の立場からも、戦争計画全体の成否を分けるほどの重要性を持ちます。
 実際、ロシア軍は航空機や戦闘ヘリが撃墜され、消耗を強いられている。被害を防ぐために夜間の少数飛行が目立ち、作戦も非常に制限されている。一方、ウクライナ軍は数少ない地対空ミサイルシステムS300や携帯式地対空ミサイル(MANPADS)などを使って、ロシア空軍に対して脅威を与え続けている。これは称賛に値する。」

【韓国の次期大統領に尹(イン)氏】
 9日(水曜)、韓国大統領選が投開票され、保守系の最大野党「国民の力」の尹錫悦前検事総長(61)が、僅差で当選。尹氏が大統領になることで、対日関係や北朝鮮の核問題にも動きがある可能性があり、今後の動向に注目が集まる。

【事業撤退の外資にロシアが対抗措置】
 11日の日経新聞【ロンドン=中島裕介、ニューヨーク=中山修志】によれば、ロシア政府はウクライナへの軍事侵攻を受けてロシア事業の停止や撤退を判断した外資系企業の資産を差し押さえる検討に入った。欧米やロシアのメディアが10日、一斉に報じた。外資の出資が一定比率を超える企業がロシアでの事業を止めた場合に、企業の設備や資産を事実上押収し、ロシア寄りの経営者に事業継続を委ねる枠組みになるとみられる。

【米大手がLNGの6割増産案を表明】
 同じ10日夕方の日経新聞【ヒューストン=花房良祐】によると、「米エネルギー大手のセンプラ・インフラストラクチャーは????
て年約1900万トンにする。増産分は欧州やアジアへの輸出に振り向ける。ロシアのウクライナ侵攻で欧州はロシア産ガスへの依存を減らす方針。米国は中長期的に輸出体制を整え、ロシアへの圧力を高める」と伝えた。

 【ロシアに追加制裁】
 11日の日経新聞は、「バイデン米大統領が、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対して、主要7カ国(G7)や欧州連合(EU)と協調して追加制裁に踏み切ると表明した。米国はロシアからの輸入品に対して関税を大幅に引き上げるほか、G7としてロシアが国際通貨基金(IMF)や世界銀行からの借り入れをできないようにする。一方、ロシア政府は10日、日米欧などを対象に通信機器や一部木材など200品目以上の輸出を2022年末まで禁じる」と報じた。

【中国でコロナ都市封鎖】
 14日の日経新聞は、「中国深圳などでコロナ都市封鎖 トヨタや鴻海、工場停止」の見出しで次のように伝えた。「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国が事実上の都市封鎖(ロックダウン)を広げている。東北部の吉林省長春市、南部の広東省深圳市に続き、14日から広東省東莞市でも厳しい行動制限を始めた。感染を抑え込む「ゼロコロナ政策」を徹底する。トヨタ自動車や台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は同日、対象地域の工場の稼働を一時停止した。長引けば影響が広がる恐れがある。

【ロシア侵攻に関する米中協議】
 15日の日経新聞【ワシントン=坂口幸裕、北京=羽田野主】によれば、米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は14日、ローマで中国の外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員と7時間ほど会談した。米政府高官によると、サリバン氏は中国によるロシア支援に深刻な懸念を伝えた。両氏の会談は2021年10月以来、5カ月ぶり。米側の説明によると、サリバン氏と楊氏の会談は2月24日にロシアがウクライナに侵攻する前から計画されていた。
 中国メディアによると、楊氏は会談で「国際社会はロシア・ウクライナ和平交渉を共同で支持し、できるだけ早く実質的な成果を得て、情勢が早期に沈静化するよう推進すべきだ」と語ったが、具体的な行動については触れていない。

【中国幹部の提言】
 15日の朝日デジタルは、中国政府の諮問機関である国務院参事室公共政策研究センターの副理事長、胡偉氏(58歳、政治学)が「ロシア・ウクライナ戦争のあり得る結果と中国の選択」と題する。5日付の論考を11日に国外の論壇サイトに中国語で発表したと伝えた。これは「一学者として戦争の結果を客観的に分析し、対策を示した。中国の最高指導部の検討と参考に供するもの」としている。中国国内のSNSでも拡散されたが、習指導部の外交姿勢とは一致せず、次々に消去されている。
 胡氏は、短期決戦を目指したプーチン氏のもくろみがすでに失敗しているとし、プーチン氏にとっての最善の選択は「和平交渉を通じて戦争を終わらせることだ」と強調。仮にロシアがウクライナを占領したとしても「重荷に耐えられなくなる」と分析した。
 そのうえで中国が取るべき選択について「プーチン氏と早急に手を切るべきだ」と提言。「国際政治の基本ルールは『永遠の友もなく、永遠の敵もなく、あるのは永遠の利益だけ』だ」とし、ロシアとウクライナのどちらの側にも立たない中立の姿勢は「賢い選択である場合もあるが、この戦争には当てはまらず、中国は漁夫の利を得ることはできない」と主張。さらに胡氏は「中国は世界で唯一、プーチン氏を阻止する能力を持つ国であり、この優位性を発揮しなければならない」とも強調。戦争を終わらせることにより、「中国は国際的な称賛を勝ち取ることができる」と訴えた。

【まん延防止等重点措置 解除の方向へ】
 15日(火曜)の日経新聞デジタル版によれば、東京都は同日、新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」の延長を求めないことを政府に伝達した。関係閣僚あての文書で「(21日までの)期間をさらに延長する状況にはない」と指摘したうえで、経口薬の迅速供給やワクチンの4回目接種の早期検討などを要望した。
 小池知事は15日夕、コロナ患者向け病床使用率が50%を下回っていることなどを理由に重点措置の延長を求めないと記者団に明らかにした上で、今後については「リバウンド(再拡大)はあっという間に起きる。警戒を怠ることはない」と強調した。15日には京都府なども延長を求めないことを政府に伝えている。

【18都道府県の「まん延防止等重点措置」を全面解除】
 岸田首相は16日、首相官邸で後藤茂之厚生労働相ら関係閣僚と話し合い、その後の記者会見で自治体側の要請を踏まえ全面解除する方針を表明。専門家でつくる基本的対処方針分科会で了承されれば政府対策本部で正式に決める。
 17日、新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」に関し、東京や大阪など18都道府県について21日の期限で解除する案を専門家に諮る。北海道、青森、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、岐阜、石川、京都、大阪、兵庫、香川、熊本で、いずれも1月下旬からの対象地域。1月9日に沖縄など3県に適用して以来、約2カ月半ぶりに全国で対象地域がなくなる。感染抑止策や医療提供体制は保ちつつ経済社会活動の本格的な再開を探る。
 首相は「第6波の出口ははっきり見えてきた…今後しばらくは平時への移行期間だ」と指摘し、感染再拡大を防ぐために「最大限の警戒をしつつ安全・安心を確保しながら、可能な限り日常の生活を取り戻す」と強調した。

【東北地方に震度6強の地震】
 6日午後11時36分ごろ、宮城県登米市や福島県相馬市などで震度6強を観測する地震が発生した。気象庁は両県沿岸に津波注意報を発令した。震源は福島県沖で、深さは約57キロ。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7.4と推定される。東北新幹線が脱線したほか、東京電力管内で一時、200万戸を超える大規模な停電が発生した。
 気象庁によると、宮城県の石巻港で30センチ、仙台港で20センチなど各地で津波を観測。津波注意報は17日午前5時ごろ解除された。各地の消防などによると、地震で複数のけが人が出た。JR東日本によると、地震の影響で東北新幹線下りのやまびこ223号が福島―白石蔵王間で17両中16両が脱線した。車両には約80人が乗っていたが、けが人はいなかった。
 この脱線事故と橋梁に入ったヒビ等の点検により、東北新幹線は那須塩原駅から盛岡駅まで運休となった。のち部分開通したものの、全面復旧には約1か月を要し、4月20日頃になる見通しと21日に発表があった。
 原子力規制委員会によると、東京電力福島第2原子力発電所の1号機と3号機の使用済み核燃料プールの冷却ポンプが一時停止したが、いずれも復旧した。福島第1原発5号機の建屋で火災警報器が鳴ったが、その後、火災でないことを確認したという。東北電力女川原発でもポンプが一時停止した。
  
【ゼレンスキー大統領が各国議会でリモート演説】
 16日、ウクライナのゼレンスキー大統領はアメリカ議会でリモート演説を行い、戦争終結への協力を訴えると、スタンディングオベーションが沸き起こった。3月1日のEU議会でのリモート演説、5日のイギリス議会でのリモート演説に次ぐもの。人気の喜劇俳優から2019年にウクライナ大統領に当選したゼレンスキー大統領(44歳)は、聞き手の心を惹きつける話術に長けている。
 17日、ゼレンスキー大統領はドイツ議会でリモート演説を行い、戦争を止めるのに協力を要請した。シュルツ首相は過去のナチス時代への反省から対ロ制裁に消極的であったが、ロシア天然ガスの搬入路ノルドストリーム2の創設を中止するとともに、スティンガー(対空ミサイル)500基の供与等の軍事支援を表明した。

【米中首脳の電話会談】
 17日、ロシアの侵攻が始まった2月24日から3週間目になる3月18日、米中首脳の電話会談が開かれると米中双方が発表した。バイデン大統領と習主席が直接話すのは昨2021年11月以来となる。ホワイトハウスは声明で「米中間で開かれた意思疎通のラインを維持する継続的な努力の一環であり、両首脳は両国競争の管理、ロシアによるウクライナへの戦争などについて話し合う」と述べた。
 18日のバイデン=習会談の内容は一部しか外へ出ていないが、ロシアへの援助をしないよう求めたバイデンの主張に対して、習主席は明言を避けた。双方の見解の相違にはなお溝があると見られる。

【<まん延防止>解除と<電力ひっ迫警報>】
 3連休明けの21日(火曜)、18都道府県に出ていた新型コロナウイルス対策の<まん延防止等重点措置>がすべて解除された。この日、横浜で桜開花の発表があった。平年より4日早い。この日、政府は東電管内に初の<電力ひっ迫警報>をした。16日の地震により火力発電所が止まったためである。東北管内等から電力の融通を受けるのに数日を要するという。
 21日にロシア外務省が日本の対ロ制裁に反発し、「日本との平和条約交渉を継続するつもりはない」としたことについて、岸田首相は22日の参議院予算委員会の質問に「極めて不当であり、断じて受け入れることができない。日本国として強く抗議をする」と述べた。この日午後の衆参両院で予算案が可決した。
 22日(火曜)は急に気温がさがり、最高気温は5℃に届かず真冬なみとなった。暖房を抑え、厚着をして耐えている。開花したばかりの桜は身を縮めている。


 この間、以下のテレビ番組を観ることができた。(1)週刊ワールドニュース(2月21日~25日)2月26日。 (2)週刊ワールドニュース(2月28日~3月4日)3月5日。 (3)Eテレ特集「原発事故・幻のシナリオ~埋もれた遮水壁計画」5日。 (4)NHKスペシャル「攻撃は止められるのか~最新報告 ロシア軍侵攻~」6日。 (5)BSスペシャル「韓国”七放世代”の大統領選」6日。 (6)NHKドキュメント「東日本大震災11年 それぞれの交”差”点~被災地の本音」7日。 (7)週刊ワールドニュース(3月7日~11日)12日。 (8)クローズアップ現代+「緊迫ウクライナ ▽迫る首都侵攻の脅威▽ 市民たちはいま」15日。 (9)ヒューマニエンス「”皮膚” 0番目の脳」16日。  (10)週刊ワールドニュース(14日~18日)19日。 (11)BS世界のドキュメンタリー「プーチンの道~その権力に秘密に迫る」20日。 

桜めぐり

 国指定名勝・三溪園には17.5ヘクタール、東京ドーム約4個分の広大な園内に9種類、約250本の桜がある。近代の自然主義に基づく独特の風景式庭園であり、点在する歴史的建造物17棟(重要文化財)や多彩な植栽と合わせてお楽しみいただく<桜めぐり>を開催する。期間は3月25日(金曜)から4月6日(火曜)まで。
 コロナ禍のなか、これまでの<観桜の夕べ>と趣向を変え、密を避け、分散して観覧できるよう、朝8時から入園できる特別チケットを販売、大池岸辺の芝生エリアでゆったり過ごせる<お花見ひろば>(事前予約)を設定、また3年ぶりのライトアップ(21時まで)、それに茶店には特製スイーツのメニューも企画している。
 9種類の桜は園内各所にあり、開花期も3月上旬のオオカンザクラに始まり、4月中旬のヤナイヅタカクワホシザクラまで。うち3種は三溪の郷里・岐阜県ゆかりの桜である。来園のたびに新たな発見があるに違いない。

 ここで一服。
三溪園という空間、現在という時間から離れて、もう一つの<桜めぐり>に出かけたい。

【さくらの巨木を移植した十六代目佐野藤右衛門】
 まずは前々回2月2日掲載の「大寒をしのげば」で述べたBSプレミアム「大島桜さんのお引越し」(2022年1月19日放映)。横浜市戸塚区にある樹齢150年と推定されるオオシマザクラの移植大作戦の記録である。指揮をとるのは、天保3(1833)年創業の<植藤>(うえとう、植藤造園)の第十六代目の桜守(祖父の代から桜を専門とする樹木医)、佐野藤右衛門(さの とうえもん)さん(93歳)。
 ここで次のように書いた。「このオオシマザクラは、伊豆大島から飛来した鳥の糞に運ばれた種子が発芽、根付いて約150年との、藤右衛門さんの見立てである。…<大島桜>の平均樹齢は1000年と見られているから、この樹はまさに<青春まっ盛り>」。
 藤右衛門さんの著書、佐野藤右衛門著(聞き書き 塩野米松)『櫻のいのち庭のこころ』(1998年 草思社、2012年 ちくま文庫)から学ぶことは多く、「誕生日に植えた桜の不思議」、「百七十五種が描かれた父の桜図譜」、「実生で育つ山桜、彼岸桜、大島桜」、「花の見方、楽しみ方」、回顧談「イサム・ノグチと日本庭園をつくる」などが強く印象に残る。
 藤右衛門さんは語る。「…庭や街路樹、公園作りを手がけるなかで、高度経済の成長以来、まったく変わってしまったこの国の人たちの考え方や生活ぶりが、これから先どこに行ってしまうのだろうかと心配しております。…」

【短命の促成栽培種が増えている】
 ここから2つのことが分かる。
 (1)桜の伝播には3つある。すなわち①<実生>(みしょう)、②<接ぎ木>、③<挿し木>。うち①<実生>は人の手を介すことなくても行われるが、②<接ぎ木>は台木に別の種の枝を接ぐ人工的方法であり、③<挿し木>はその枝を地面に挿すことによりクローンを大量生産する超人工的方法と言える。
 (2)オオシマザクラの平均樹齢は1000年と見られていること。これに対して我々がよく目にするのは、平均樹齢60年といわれる(例外あり、後述)ソメイヨシノである。幕末から明治初期、東京の駒込村染井(現在の文京区駒込)の植木屋が人工交配で生み出した園芸品種。ヒガンザクラを母に、日本固有種のオオシマザクラを父とする交雑種を<接ぎ木>でつくり、その枝を<挿し木>で大量かつ短期に促成栽培した。ハラハラと散る潔さから、日本の富国強兵政策の時代に重宝され、日清戦争や日露戦争の戦勝祝などで植えることも多かった。

【桜の四相】
 上掲のオオシマザクラは鳥が運び、その糞から種が自然に発芽・成長した<実生>の代表例である。全国にある<実生>の桜は、独立する大樹が多い。図形としては<点>となる。
 圧倒的に多いのは、人の手により植えられた桜で、そのデザインと形態により2種に分けられる。街路や堤防沿い、鉄道沿いに密植して<線>を構成するものと、一定の所に密植して<面>を構成するもの。
 そして①<実生>で育ち、山一面を彩どり、<立体>を構成するのが、吉野山の桜(奈良県)である。
この<桜の四相>、すなわち<点>、<線>、<面>、<立体>は、私が独断で設定したもので、まだ市民権を得ていないかもしれない。実見した限りの例を挙げてみたい。
天を衝く大樹の桜といえば、まずは山梨県北杜市武川町山高の実相寺にある山高神代桜(やまたかじんだいざくら)。エドヒガンで樹齢2000年と言われる。39種の国指定天然記念物桜のうちの、「三春滝ザクラ」(福島県)、「根尾谷淡墨ザクラ」(岐阜県)と並ぶ<日本三大桜>の一つでもある。「神々しい」という表現は、この大樹のためにあるのではないか。
 また茨城県の歓喜寺のエドヒガン(推定樹齢400年)や観音寺等にあるシダレザクラ。神奈川県では、小田原城主を務めた稲葉氏の菩提寺・長興山紹太寺のシダレザクラを挙げたい。
 
【小学校校庭に植えたソメイヨシノ】
 年配の方の記憶では、桜と言えばまず校庭の桜あろう。神奈川県小田原市の南小学校校庭にある2本のソメイヨシノは、開校した1892(明治25)年に植えたもので樹齢126年(+苗木の生長期間)、幹回り3メール超、ソメイヨシノとしては例外的な長寿である。
 ソメイヨシノの全国展開は、日清戦争(1994~95年)で獲得した多額の賠償金による。遼東半島還付の代償3000万両を加えた賠償金の合計2億3000万両(当時の日本円で約3億5600万円)、これに運用利金850万円を加えた約3億6450万円は、戦争前年(1893年)の国家予算の4倍を超え、これで特別会計を編成した。使途の内訳は軍備拡張費62.0%をトップに臨時軍事費21.7%、皇室財産5.5%、台湾経費3.3%、教育基金2.2%等(『明治財政史』)。唯一の民生費用である教育基金2.2%は、主に小学校の校地の確保と整備に充てられ、その一角に桜を植えた。急な需要拡大に応じたのがソメイヨシノである。

【線で伸びる桜街道】
 <桜の四相>のうちの<線>、これは堤防沿いに植えたもの、街路樹(並木)として植えたもの、鉄道沿線に植えたものなどがある。
 「隅田公園」は隅田川両岸に跨る公園で、<さくら名所100選>にも選ばれ、武島羽衣作詞・滝廉太郎作曲「花」に歌われる人気スポット。8代将軍・徳川吉宗が植えたのが始まりで、墨田区側に約307本、台東区側に約600本が隅1kmにわたって続き、東京スカイツリーとのコラボレーションを楽しめる。
 荒川堤の五色桜は40種400本。足立区の都市農業公園内にある。五色桜とは桜の品種名ではなく、さまざまな色の桜が咲き誇ることから命名された。

【面で広がる桜】
 ついで<桜の四相>のうちの<面>。よく訪れるのは、横浜山手公園。1870(明治3)年、日本初の洋式公園として開園。「日本テニス発祥の地」でもあり、テニス発祥記念館がある。サクラは約30本と多くないが、小さな広場に<面>で咲かせ、ボリューム感がある。
 そして東京の新宿御苑。園内には68種類ものさまざまな桜がある。カンザクラから始まり、3月下旬にはヤマザクラなどの一重咲き種、4月上旬にはイチヨウ(一葉)の八重咲き種、4月中旬から下旬にはカンザンなどの八重咲き種が次々と開花、2ヶ月以上にわたり楽しめる。
 上野恩賜公園(台東区)は江戸時代から花見のメッカであり、ソメイヨシノなど50種、約800本を擁する。
 飛鳥山公園(北区)は、約300年前、吉宗が享保の改革の施策のひとつとして江戸っ子たちの行楽の地とした。当時、桜の名所では禁止されていた「酒宴」や「仮装」がここでは容認されたため、江戸っ子たちは様々な趣向を凝らして楽しんだ。現在、ソメイヨシノ、サトザクラなど約600本。

【ワシントンのさくら2000本】
 <桜の四相>のうち<線>の代表例として忘れてならないのが「日米交流史の象徴」とされるワシントンDCの中心部を流れるポトマック川岸の2000本の桜(ソメイヨシノ)である。2022年に109周年を迎える。
 「桜物語 ポトマックの桜、“日米交流史”の象徴」によれば、紀行作家であったエリザ・シドモアさんが1885年、日本旅行後、公共施設などの管理をしていた米陸軍に、埋め立てが行われたポトマック川畔に桜を要望したことに起源する。
しかし実現しなかった。何度も拒否され、実に24年間にわたる長い要望の末に実現する。急展開の功労者の一人は、水野幸吉ニューヨーク総領事(当時)。水野氏は日露戦争で在留邦人保護に尽力した人物で、日露戦争を講和に導いた米国に強く恩義を感じていた。
 小村寿太郎外相の依頼を受け東京市(尾崎行雄市長)は1909年8月に桜の米国移植関連予算を決定する。1910年1月、2000本の苗木が海路でアメリカに向かうが、長い航海の途次、多くの桜が病害虫に侵され、ワシントンに到着はしたものの防疫検査を通過できず、すべてが焼却処分された。
 だが尾崎市長はこれにめげることなく、害虫に強い桜を確保し再挑戦する。東京の荒川堤で採集したソメイヨシノをはじめとする五色桜を穂木として、兵庫県伊丹市東野地区の台木に<接ぎ木>し、<挿し木>で苗木を育て、さらに念入りに青酸ガスで薫蒸して害虫駆除した。

【アイルランドのさくら】
 外国へ移出された桜について、もう一つ、出会いがあった。ハープ奏者として活躍中の夛賀さくらさんとは、つい最近、インドの詩人タゴールの関係から三溪園でイベントを組織してくれたのを機に知り合った(本ブログ2021年8月18日掲載の「夏の古建築公開+「タゴールと夏の迷い鳥たち」展」)。
 お名前の由来を尋ねたところ、外交官のご尊父の赴任地アイルランドで生まれたさくらさんは、「首都ダブリンではさまざまな桜が咲いていたそうです。映画”男はつらいよ”の寅さんの妹、さくらさんのように兄想いの温かい人に育ってほしいとの母の希いと、アイルランドと日本の友好を願い、風にも負けず長く咲く強いアイルランドの桜のように育って欲しい、という父の思いがあったようです」と。
 ダブリン滞在者によれば「…アイルランドで見られる桜は主に3種類。1月頃に<寒桜>の花が目立たずひっそりと咲く。そして2月終わりから3月にかけて<山桜>、そして4月~5月に<八重桜>の出番。アイルランドでは一年の半分近くの期間、桜を愛でることができると言われるほど、アイルランドと桜は切っても切り離せない」とのこと。
 「長く咲く強いアイルランドの桜」は、日本で一般的な「瞬く間に散る」桜のイメージと正反対である。そもそも桜の種類が違うのか。日本から移出された経緯等も調べてみたい。

【吉野山の桜】
 日本の桜の原風景といえば吉野山であろう。ここにはシロヤマザクラを中心に約200種3万本の桜が密集する。国際日本文化研究センターの客員教授をしていた2006年、研究会メンバーに連れられて行ったが、豊富な種類、日本一の本数、そして独立樹でも並木でもなく、山全体の<立体>は他の追随を許さない。
 山桜が尾根から尾根へ、谷から谷へと山全体を埋め尽くしてゆく。シロヤマザクラは下・中・上・奥の4箇所に密集して、”一目に千本見える豪華さ”という意味で「一目千本」とも言われる。おのおの下千本(しもせんぼん)、中千本(なかせんぼん)、上千本(かみせんぼん)、奥千本(おくせんぼん)と呼ばれて、例年4月初旬から末にかけて、下→中→上→奥千本と、山裾から山上へと開花してゆく。

【横浜市内の好きな桜】
 「大岡川プロムナード」(桜木町~弘明寺間)は京急の車窓からも眺めることができる。私は1973年から2002年まで横浜市立大学に勤務していた29年間、時々の天気や時刻で異なる表情を堪能した。
 「関内桜通り」は遅咲きの<八重桜>のアーチが見事、ソメイヨシノが終わってから多種多様な桜があることを教えてくれる。とくに夜桜が良い。

【都内の桜名所】
 都内には桜の名所か多い。江戸時代からの名所もあれば、新しくつくられたものもある。
 約4kmにわたり桜並木(ソメイヨシノ約800本)が広がる「目黒川両岸の桜」、東急車窓からも眺めることができる。
 皇居のお濠を淡いピンクに染めるソメイヨシノの並木「千鳥ヶ淵緑道」は仕事帰りの人たちに人気がある。緑道から眺める石垣と桜の対比が美しい。
 ほかに「小金井公園」、「国立市大学通り・さくら通り」も好きな所。竹早テニスコート(文京区)の近くの「播磨坂(はりまざか)さくら並木」は1960(昭和35)年に桜(ソメイヨシノ)を植えたのがはじまりで、今では約120本の桜並木に成長した。
 私の「桜めぐり」の最後は皇居外苑の遅咲きの八重、イチヨウ(一葉)の並木。ベンチに凭れ、見上げる。藤右衛門さんの言葉「桜は全部下を向いて咲くんです。中へ入り込んで見て初めて桜も喜ぶんです」を想いながら。
プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
前園長(2012年8月~2023年3月)

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
カテゴリ
QRコード
QR