人類最強の敵=新型コロナウイルス(41)
【新たな世界自然遺産】
7月26日(月曜)、嬉しいニュースが飛び込んできた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は多くの固有種が生息する「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄)の計約4万3千ヘクタールを世界自然遺産へ登録を決めた。日本の世界遺産は文化遺産も合わせて24件目、自然遺産としては2011年に登録された「小笠原諸島」(東京)に続き5件目である(日本の文化遺産は計19件)。
イリオモテヤマネコ、アマミイシカワガエルなど貴重な動物が多く生息、奄美大島や西表島などにはマングローブ林も広がる。正式登録で観光客の急増が予想されるが、密猟の問題も続いている。該当の自治体は保全策などを強化する方針。
なお世界自然遺産の日本からの新規登録は今回が最後になる公算が大きい。他にも過去に候補として検討された地域はあるが、景観や地形の特異性を比較すると海外の事例に及ばず、独自性を打ち出しにくいとして見送った。環境省は今後、奄美・沖縄を含め登録済み遺産の保全に力を入れる。
【黒い雨の上告断念】
同じ26日、広島への原爆投下後に「黒い雨」を浴びたと訴えた84人全員を被爆者と認めた広島高裁判決について、菅首相が上告を見送る考えを示した。政府内で広がる「上告不可避」の見方から一転しての首相判断。背景に何があったのか。
同日の朝日新聞デジタルは、以下のように伝えた。「国側から見れば、高裁判決は一審判決よりもさらに被爆者の認定を広くとり、認定しない場合、行政側にその理由を立証する責任を負わせるような内容だったからだ。…判決は、空気中の放射性物質を吸ったり、汚染された水や野菜を飲食したりする「内部被曝」によって健康被害を受ける可能性も指摘した。
国側は裁判で、内部被曝したとしても放射線量は低く、健康被害は認められないと主張してきた。…首相周辺は「最後は首相の決断だった」。複数の官邸幹部らは「県と市を説得できなかったことが大きい」と明かす。23日以降も上告に理解を得られなかったといい、政府が突出して原告と対峙する構図になることを懸念したとみられる。
官邸関係者は「衆院選が近く、批判を招きかねない上告は難しかったという事情もある」と語った。首相は記者団に「判決には受け入れがたい部分もある」と、近く出す談話で政府の見解を整理する考えも示した」。
なお8月6日の広島平和記念日に広島市を訪れた菅首相は、改めてこの問題に触れ、84人以外の同じ被害者の救済にも尽くしたいと述べた。
【東京の感染者数がまた急拡大】
同じ26日の都内の感染者は1429人と、月曜としては過去最大となった。4度目の緊急事態宣言が発せられて2週間が経った日にあたる。また東京五輪の選手・関係者の新規感染者は153人となった。
27日(火曜)、都内の感染者が2848人と過去最多となった。これまでの最多は感染拡大の<第3波>にあった1月7日の2520人。
年代別では20代が951人と最も多く、30代が610人、40代が466人、重症化リスクの高い65歳以上の高齢者は78人。
ワクチン接種の現状は、全国では1回接種が総人口の36.9%、2回が25.5%、65歳以上の高齢者ではそれぞれ84.6%、68.2%と高い。東京ではそれぞれ34.5%と21.8%と全国平均より低く、最多の山口県ではそれぞれ48.0%と34.6%であり、2位の和歌山県ではそれぞれ46.1%と33.2%である。
28日(水曜)、新型コロナウイルスの感染者が新たに3177人確認されたと発表した。2日連続で過去最多を更新し、全国の新規感染者も初めて9000人を超えた。首都圏の感染拡大が目立ち、埼玉、千葉、神奈川の3県はそれぞれ870人、577人、1051人で、いずれも最多。感染力が強いインド型(デルタ型)と呼ばれる変異ウイルスの拡大が背景にある。
3県は国に緊急事態宣言を要請する方向で調整を継続。西村経済財政・再生相は同日の衆院内閣委員会で「(3県から)正式な要請があれば速やかに検討し、機動的に対応したい」と述べ、29日にも3県知事と会談する予定を明らかにした。
29日(木曜)、新型コロナウイルスの感染者が新たに3865人確認されたと発表した。前日に続き3千人を上回り、3日連続で過去最多を更新した。直近1週間平均の新規感染者は約2224人で、前週(約1373人)の161.9%だった。また全国で初めて1万人を超えた。28日に初めて9000人を超えたのに続き、2日連続で過去最多となった。神奈川県は過去最多となる1164人、埼玉県が864人、千葉県が576人であり、首都圏4都県の感染者数は計6469人で、全国の約6割を占めている。
感染者で目立つのは50代以下。東京都の新規感染者を年代別にみると、20代が1417人と最も多く、30代が782人、40代が612人、50代が407人で続いた。重症化リスクの高い65歳以上の高齢者は105人である。
同じ29日7時半発の日経新聞デジタルによれば、政府は30日、埼玉、千葉、神奈川3県と大阪府に新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を発令する方針を専門家に諮る。期間は8月31日までとし、8月22日までとしていた東京都と沖縄県への宣言もそれに合わせて8月31日まで延長する。飲食店での酒類提供は一律停止とする。宣言の対象地域を広げ、首都圏を中心とする感染が全国に広がるのを抑える。
首都圏3県や大阪府には現在、宣言に準じる「まん延防止等重点措置」を適用しており、これを8月2日から宣言に切り替える内容だ。宣言地域は東京都、沖縄県とあわせて計6都府県になる。北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県には新たに重点措置を適用する。専門家が了承すれば、政府は7月30日に新型コロナ対策本部で正式に決める。その後、菅首相が記者会見する。
予定通り政府は30日午前、埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県と大阪府に新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を発令する案を専門家に諮問した。期間は8月2~31日まで。8月22日までの東京都と沖縄県への宣言も31日まで延長する。飲食店の酒類提供は一律停止する。また北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県は宣言に準じた対策をとれる「まん延防止等重点措置」を新たに適用する。
西村氏は分科会で「このまま高いレベルで陽性者の数が続けば病床逼迫につながっていく」と強調した。宣言などの期間を8月31日までにした理由を「現役世代にもワクチン接種が進むことによる効果を見極めるため」と説明した。
30日午後、夕方からの菅首相記者発表を前に、感染症対策分科会の尾身会長が首相と面談し、「国民に理解と協力をいただくため、政府としてしっかりとしたメッセージを発信してもらいたい」などと求めた。過去にない感染爆発に直面してもなお、首相はワクチン効果による高齢者の感染者数減といった「楽観論」を強調、これに対して専門家らは国民と危機感を共有するよう釘を刺した形。また、医療現場では逼迫が起きており、「これまでのコロナとの戦いの中で最も危機的な状況」と首相に説き、首相は「ご提案をしっかりと受け止めて対応していきたい」と応じたという。面談には、尾身氏のほか、厚生労働省に助言する専門家組織の脇田隆字座長、内閣官房参与の岡部川崎市健康安全研究所長が参加。数日前に尾身氏側から西村氏を通じて要望していた。
ところが午後7時からの記者発表で首相は、「東京の感染者数は過去最高。強い危機感を持って対応している」と語ったものの、かねて首相が高齢者の感染者数の減少を強調していることが「大丈夫だというメッセージを与えているのでは」と問われると、「ワクチンによって大幅に減少していることは事実だ。そうしたことを示していくことも仕事だ」と述べた。
また小池都知事は27日、記者団から「宣言の効果が見えていない」と問われると、「じわっと重症者が増えているのは気になる」などとしつつ、「五輪も各競技で日本人の選手もすばらしい成績を収めている」などと、五輪に話題を転じた。
政治リーダーたちが発するこうしたメッセージに対して、尾身会長ら専門家は強い警鐘を鳴らす。「今の最大の危機は、社会の中で危機感が共有されていないことだ」。29日の参院内閣委員会で尾身氏はそう訴えた。「このまま危機感が共有されなければこの感染状況は更に拡大する」とも語った。さらに「医療逼迫を一つの指標だけで判断するのは全体を見誤る」と指摘した。現状は、重症者数や入院者数、自宅療養者数、救急外来の「たらい回し」などが増加傾向だとし、首相が強調する「人流減」も「期待されるほどのスピードではない」とクギを刺した。
31日(土曜)、東京都は新型コロナウイルスの感染者を新たに4058人確認したと発表、初の4千人台で、1日あたり過去最多。3千人を超えるのは4日連続。31日までの1週間平均の感染者数は2920人で、前週比は217%。
4日(水曜)、東京都は新型コロナウイルスの感染者が新たに4166人確認されたと発表。7月31日の4058人を上回り、過去最多となった。直近1週間平均の新規感染者は約3478人で、前週(約1954人)の178.0%だった。
5日(木曜)午後6時現在、国内の新規感染者数は1万4968人が確認され、前日に続き1日当たりの過去最多を更新。都道府県別では、東京5042人、神奈川1846人、埼玉1235人、沖縄648人で過去最多を更新した。神奈川では、新規感染者数が7月28日から9日連続で1千人を超えている。
【日本勢の金メダル】
前号の「人類最強の敵=新型コロナウィルス(40)」に次いで、7月26日(月曜)、4日目以降の東京五輪の日本勢の金メダルを掲げる。金メダルだけを挙げるのは、あくまでも紙幅の制限とバランスのためであり、金メダルがすべてと思っているわけではない。私自身が好きで柔道、ラグビー、テニスとかじってきて、いまもテニス抜きの生活は考えられない。<負け>があっての<勝ち>であることは身に染みて知っている。
いな、そもそもスポーツには勝敗以前の役割がある。球技の起源と言えば19世紀中ごろイギリスで<気晴らし>や<気分転換>を意味する“sport”がサッカーやラグビー等の近代スポーツ、とくに球技を指すようになった(拙著『イギリスとアジア 近代史の原画』 岩波新書 1980年)。こう書いた40余年も昔の記憶がよみがえる。
ほぼ同じ19世紀なかごろ、<武術>を<武道>に変換させたのが明治日本である。さまざまな起源をもつ種目がオリンピックに結集し、世界一を争う。観ないわけには行かない。21年7月23日(金曜・祝)から8月8日(日曜・祝)まで17日間、史上最多の33競技339種目が、札幌大通公園のマラソンを含め、計43会場で展開される。
そこで以下、日本勢の金メダルだけを記すことする。
7月25日(日曜)、3日目、柔道で男子66キロ級の阿部一二三(ひふみ)と女子52キロ級の阿部詩(うた)の兄妹がそろって金メダルに輝いた。競泳女子400メートル個人メドレーでは大橋悠依(ゆい)が優勝。新競技のスケートボード男子ストリートでは堀米雄斗(ゆうと)が初代王者になった。
7月26日(月曜)、4日目、
(1)柔道男子73キロ級の大野将平(日本武道館)。2016年リオデジャネイロ五輪に続き、2大会連続の金。
(2)新種目の卓球混合ダブルス(東京体育館)、水谷隼(木下グループ)、伊藤美誠(スターツ)組が許昕、劉詩雯組(中国)を破り、日本卓球界初の金。
(3)新競技スケートボードの女子ストリート(有明アーバンスポーツパーク)で、13歳の西矢椛(にしや・もみじ、ムラサキスポーツ)が日本勢最年少で金メダルを獲得。
27日(火曜)、5日目、柔道男子81キロ級の永瀬貴規(旭化成)が決勝でモラエイ(モンゴル)を延長戦の末に破り、金メダル。柔道男子は今大会4個目の金メダル。なおテニス女子シングルスでは世界ランキング2位の大坂なおみ(日清食品)が3回戦で同42位のマルケタ・ボンドロウソバ(チェコ)に1-6、4-6で敗れる波乱となった。
同じ日午後10時3分。横浜スタジアムで高く打ち上がったボールが捕手のミットに収まると、ベンチから選手が駆け出した。ソフトボール日本代表が決勝で米国を2―0で破り、13年越しの連覇を果たした金メダル。
28日(水曜)、6日目、柔道女子70キロ級で五輪初出場の新井千鶴が金メダル。日本勢は初日から5日連続の金メダル獲得。
競泳女子200メートル個人メドレー決勝で大橋悠依(25)が2分8秒52で金メダルを獲得。大橋は25日の400メートル個人メドレーでも金メダルに次いで今大会2個目のメダル獲得。
体操男子個人総合で初出場の19歳、橋本大輝(順大)が金メダル。
29日(木曜)、7日目、柔道女子78キロ級で初出場の浜田尚里(自衛隊)が決勝でマドレーヌ・マロンガ(フランス)を破り、金メダル、また男子100㌔級で初出場のウルフ・アロン(了徳寺大職)が決勝で趙グハム(韓国)を下し、金メダル。
30日(金曜)、8日目、女子78キロ超級で初出場の素根輝(パーク24)が決勝でイダリス・オルティス(キューバ)を破り、金メダル。これで今大会の日本勢の金メダル総数が16個となり、1964年東京五輪と2004年アテネ五輪に並ぶ最多タイとなった。
フェンシング男子エペ団体(幕張メッセ)の日本は決勝でROCを破り、同競技で日本勢初の金メダル。これで今大会の日本勢の金メダルは17個となり、1964年東京、2004年アテネの両五輪を上回る史上最多となった。
31日(土曜)は9日目、金メダルなし。柔道混合団体で惜しくもフランスに敗れて銀メダル。8月1日(日曜)と2日(月曜)も金メダルなし。
8月3日(火曜)、12日目、女子フェザー級の入江聖奈(日体大3年生)が2019年世界選手権覇者のネスティー・ペテシオ(フィリピン)を5-0の判定で破り(国技館アリーナ)、日本女子初の金メダル。ボクシング女子は2012年ロンドン大会から採用された種目。女子柔道52キロ級で金メダルに輝いた阿部詩(日体大の3年生)と同学年。
体操男子の種目別鉄棒(有明体操競技場)で橋本大輝(順大)が金メダル。なお13日以降については後述。
【デルタ株が世界で大半となる】
新型コロナウイルスの変異株のうちインドで見つかったデルタ株が世界的に勢いを増し、従来株と置き換わりつつある。デルタ株の特徴は感染力が強いこと、従来株やイギリスで見つかった変異株(アルファ株)に比べて1.4倍から1.8倍にのぼるという。
イスラエルではワクチン接種が人口の70%を超えると感染者数が減少したが、最近になって感染者が急増し始めた。原因はデルタ株のためと見られ、3回目のワクチン接種に踏みきった。
8月2日、日本で4回目の緊急事態宣言が出て3週間たつが、新型コロナウイルスの感染者の増加が続いている。感染拡大の目安となる<実効再生産数>(1人の感染者から何人に感染が広がるかの目安となる推定値)は東京都内で1.4台に達し、年明けの第3波を上回る勢いである。感染力の強いインド型(デルタ型)が広がるうえ、過去の宣言後と違い、人出の減少も鈍い。
そのため政府は患者の急増に対応し、入院は重症者や重症化リスクの高い人を中心とし、「それ以外は自宅療養を基本とし、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備する」方針を決めた。また家庭の事情などで自宅療養できない場合に限り宿泊施設を利用してもらう体制に改める。すなわちリスクの高い人を中心に幅広く入院する従来の原則の大転換である。
同時に菅首相は治療薬<抗体カクテル療法>(7月19日、中外製薬の<抗体カクテル療法>の製造販売を特例承認)を入院患者以外も使用できるようにする方針も示した。現在、外来診療は対象外で「在宅患者も含めた取り組みを進める」と述べ、「50代以上や基礎疾患のある人に積極的に投与する」とも強調した。早期退院につなげて病床を確保する狙いもある。<抗体カクテル療法>とは、軽症・中等症の患者に2種類の抗体を点滴し、重症化予防が期待される。在宅療養者への使い方は自治体と協議して検討する。
【ファッション業界のGX】
3日の日経新聞電子版は、「グッチやシャネルも脱炭素 素材に配慮、デザイン洗練」の見出しで次のように報じた。
「温暖化ガスの排出が多いとされるファッション業界が、グリーントランスフォーメーション(GX=緑転)を急いでいる。環境負荷の軽い商品を好む<緑の消費者>が欧米を中心に増えているからだ。環境に配慮した新素材の活用が始まり、単なるリサイクルではなくデザイン性も備えた<アップサイクル>も広がっている。
スイスの環境コンサルティング会社クアンティスが18年に「ファッション産業は世界で排出される温暖化ガスの8%を占める」という衝撃的な調査結果を公表。服飾企業などが連携して対応するよう求めた。
ファッション業界のGXは2019年8月、仏南西部ビアリッツで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)が起点となった。グッチなどを手掛ける仏高級品大手のケリングの主導で、50年までのカーボンゼロを掲げる「ファッション協定」を提案し、約150ブランドが賛同・署名。
この<ファッション協定>は気候変動、生物多様性、海洋保護の3つを柱に実践目標を掲げた。「具体的には25年までに、原材料の25%を持続可能な素材にする。また、再生可能エネルギーへの転換を25年までに50%、30年までに100%に設定。50年までに「温暖化ガス排出量ゼロを目指す」とした。
高級ブランドではケリングを筆頭に、バーバリーやシャネル、フェラガモなどが名を連ねた。スポーツではナイキやアディダス、カジュアルではギャップやインディテックス(ザラ)なども参加。発表から1年後の20年10月には、加盟企業が14カ国60社、ブランド数は200以上に膨らんだ。」
【トヨタが最高益を記録】
4日(水曜)、トヨタ自動車が発表した2021年4~6月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比5.7倍の8978億円だった。新型コロナウイルスが広がる前の19年4~6月期の6829億円を超え、4~6月期としては最高となった。コロナの影響が続く中で新車の需要が回復。北米や中国、日本といった世界の主要市場で販売が増えた。車業界の半導体不足の影響も限定的にとどめた。
売上高は前年同期比73%増の7兆9355億円、営業利益も72倍の9974億円と事前の市場予想平均(QUICKコンセンサス)の7327億円を上回った。15年4~6月期の最高益(7560億円)を更新し、すべての四半期ベースで比較しても最高になった。トヨタの純利益は21年3月期に1社で上場する製造業の1割以上を占めた。業績の動向が日本経済に与える影響は大きい。
7日(土曜)の日経新聞は「NYダウ続伸144ドル高 最高値更新、米雇用回復を好感」の見出しで「ダウ工業株30種平均が過去最高値を更新。終値は前日比144ドル26セント(0.4%)高の3万5208ドル51セント。6日発表の米雇用統計で就業者数が市場予想を上回り、景気回復への期待が強まったため」と伝えた。
【日本勢の金メダル~続報】
4日(水曜)、13日目、女子パーク決勝(有明アーバンスポーツパーク)で2018年世界選手権優勝の19歳の四十住さくら(よそずみ・さくら、ベンヌ)が金メダルを獲得。予選は4位で通過したが、決勝では難度の高い技を成功させ、60.09点と高得点をマークした。
女子レスリング62キロ級の川井友香子(ジャパンビバレッジ)が決勝でティニベコワ(キルギス)を破り、金メダル。
5日(木曜)、14日目、レスリング女子57キロ級(幕張メッセ)で2016年リオデジャネイロ五輪63キロ級女王の川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)が決勝でクラチキナ(ベラルーシ)を下し金メダル。妹の友香子(ジャパンビバレッジ)が4日の62キロ級を制しており、同大会姉妹金メダル。
6日(金曜)、15日目、五輪初実施の空手男子形決勝(日本武道館)で喜友名諒(劉衛流龍鳳会)がキンテロ(スペイン)を破り、金メダル。
同じ日、レスリング女子53キロ級の向田真優(ジェイテクト)が決勝で龐倩玉(中国)を破り、金メダル。
7日(土曜)、16日目、レスリング男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗(自衛隊)が決勝でアリエフ(アゼルバイジャン)を破り、金メダル。
同じ日、レスリング女子50キロ級の須崎優衣(早大)が孫亜楠(中国)を破り、金メダル。
野球(横浜スタジアム)で日本がアメリカを2:0で破り金メダルを獲得、日本勢金メダルの有終の美を飾った。
8日(日曜)晩、17日間にわたる競技を終了し、国立競技場で閉会式が行われた。
日本の獲得したメダルは金27、銀14、銅17の計58個と史上最多(過去最多は2016年リオデジャネイロ五輪の41個)。金メダル数は米国(=205個)、中国(=166個)についで世界3位(=27個)である。獲得メダル数の4位以下は、インド(98個)、ドイツ(94個)、ロシア(91個)、ルクセンブルグ(86個)、ノルウェー(66個)、アイスランドとフランス(次期開催国)が65個で並び、世界平均は17個。メダルがゼロの国と地域が37ある。
【温暖化の危険性深まる】
以前(今年5月)、世界気象機関(WMO)は27日、2025年までに「産業革命前に比べて、平均気温が1.5度以上高い」年が発生する可能性が40%以上あるとの見通しを発表。現状の温暖化ガス削減に向けた取り組みでは、深刻な気候変動を食い止められない恐れがあることが改めて浮き彫りとなったとした。
8月9日の日経新聞は「気温1.5度上昇、10年早まり21~40年に IPCC報告書」の見出しで、「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は9日、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021~40年に1.5度に達するとの予測を公表した。18年時点の想定より10年ほど早い。人間活動の温暖化への影響は「疑う余地がない」と断定。気温の上昇幅は、2041~60年に1.6~2.4度、2081~2100年に1.4~4.4度に跳ね上がる。自然災害を増やす温暖化を抑えるには二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする必要があると指摘した。
平均気温が上がると、異常気象が増えるとし、(ア)現在(1℃)の場合、(イ)1.5℃の場合、(ウ)2℃の場合の3つのケースを比較した。(1)熱波等の極端な高温は(ア)の場合で気温が+1.2℃、発生率が4.8倍であるが、(イ)の場合では気温が+2℃で発生率が8.6倍、(ウ)の場合になるとで気温が+2.8℃で発生率が13.9倍となると予測する。言い換えれば熱波の発生率がうなぎのぼりとなり、山火事の頻度等がいちじるしく高まる。
ついで(2)極端な大雨については、(ア)の場合に雨量が+6.7%で、発生率が1.3倍であるが、(イ)の場合には雨量が+10.5%で発生率が1.5倍となり、(ウ)の場合には雨量が+14で発生率が1.7倍と予測する。土砂災害等が恐ろしい。
ほかに(3)農業に被害を及ぼす干ばつの発生率は(ア)が1.7倍、(イ)が2倍、(ウ)が2.4倍とする。増え続ける世界人口に対して、干ばつによる農業被害が大きくなれば、<飢饉>が多発する。
【自然科学の論文で中国が世界一に】
10日、文部科学省の科学技術・学術政策研究所が発表した最新の報告書によれば、「自然科学分野の論文の注目度の高さを示す指標で中国が初めて世界一になった。研究者による引用回数が上位10%に入る「注目論文」の数で初めて米国を抜いた。分野別でも8分野中、材料科学や化学、工学など5分野で首位に立った。学術研究競争で中国が米国に肩を並べつつあり、産業競争力の逆転も現実味を帯びてきた」という。同研究所が英調査会社クラリベイトのデータを基に主要国の論文数などを3年平均で算出・分析したもの。
注目論文のうち上位1%に当たる「トップ論文」でも、中国のシェアは25%と米国の27.2%に肉薄した。文科省科学技術・学術政策研究所の担当者は今後について「中国のいまの勢いは米国を追い抜く様相を見せている」と指摘する。
注目論文の世界シェアを分野ごとにみると、材料科学で中国は48.4%と米国(14.6%)を大きく引き離した。化学が39.1%(同14.3%)、工学は37.3%(同10.9%)などと計5分野で首位となった。
一方、米国は臨床医学(34.5%)や基礎生命科学(26.9%)で首位となった。バイオ分野で強さが目立つが、産業競争力に直結する分野で中国が強さを示した。
これに対して日本は、論文の質・量ともに順位が低下し、科学技術力の足腰の弱さが浮き彫りになった。注目論文のシェアではインドに抜かれ、前年の9位から10位と初めて2ケタ台に後退した。トップ論文のシェアも9位と前年から横ばいだった。10年前と比べた減少率はともに10~15%と大きく、論文の質が相対的に下がっている。
日本の全体の論文数は6万5742本と米中の20%前後の水準にとどまった。米中のほか韓国、ドイツ、フランス、英国などは10年前と比べ増えているが、日本は横ばいにとどまる。長期化する研究力低下に歯止めをかけるのに「特効薬」はなく、衰退を食い止めるのは難しい。
知人の物理学者が言うには、中国はサイエンスよりも工学に力を入れており、投入金額が半端ではないので量的優位は続くであろう。瞬間的な値はこれからも優位かもしれないが、アメリカはバイデン政権がどれだけ頑張るかに依るが、サイエンスは過去から現在までの積分値なので、そう簡単には追いつけないのではと。
【日本列島に居座る<線状降水帯>】
台風9号が去った10日(火曜)は全国的な猛暑日となり、横浜も37℃超を記録した。翌11日(水曜)からは前線が日本列島上に停滞、西日本、東日本、東北と全国にわたって猛烈な雨となった。気象庁は、この雨の日が今後1週間もつづくと警報を出した。警報通り、降り始めの11日から15日までの4日間は総雨量が800ミリを超え、1000ミリに達した所もある。観測史上最多を記録する地域が多い。
とくに九州北部と広島県を中心とする中国地方で顕著である。偏西風の蛇行により前線が北上すると、南から湿った空気が入り、<線状降水帯>を作る。その動きが遅いと猛烈な雨が長時間にわたり降り続くことになる。河川の氾濫や道路冠水に加え、土中の水分が耐えられなくなると土砂災害が起きる。
この<線状降水帯>が16日には東へ移り。関東地方も猛烈な雨となり、神奈川県でも山北町付近で15日10時までの1時間に約100ミリの猛烈な雨が降ったとみられ、「記録的短時間大雨報」が発表された。横浜も大雨となった。
【アフガニスタン急変】
東京五輪、新型コロナの感染拡大、11日に始まり1週間つづくとされる日本列島の<大雨特別警報>に気をとられているうちに、13日(金曜)の日経新聞がワシントン発として「アフガン首都緊迫」の見出しで、次のように伝えた。
「アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが13日までに、第2の都市の南部カンダハルなどを制圧した。米メディアによると8月末の米軍撤収を控え、早ければ1カ月以内に首都カブールが陥落する可能性があると米当局はみている。米英、カナダは大使館員らの退避のため軍の部隊を派遣する。タリバンは全34州都のうち過半数の18州都を支配した。首都のあるカブール州に隣接する東部ロガール州などを含み、首都から約50キロメートルまで迫っている。なおカンダハルはタリバン発祥の地で、20年前の2001年12月に最後の拠点だった同地が陥落し当時のタリバン政権は崩壊した。カンダハル奪還でタリバン兵の士気が一段と高まる公算が大きい。」
15日(日曜)の日経新聞は次にように伝えた。「アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは15日、首都カブールに進攻し大統領府を掌握した。同国のガニ大統領は国外に退避したとみられる。タリバン幹部は勝利宣言し、アフガン政権は事実上瓦解した。2001年の米同時テロをきっかけに旧タリバン政権が崩壊してから約20年、テロとの戦いが振り出しに戻る格好だ」と。
翌16日(月曜)の日経新聞は、【カブール=共同】を引いて、状況を伝えた。
「ターバン姿の男らが武器を手に政権中枢へ迫り、国軍兵士は持ち場を捨てた。反政府武装勢力タリバンが進攻したアフガニスタンの首都カブールは15日、銃声とヘリコプターの旋回音、脱出する市民の車の渋滞で緊迫と混沌に包まれた。国外脱出したガニ大統領には「国民への裏切り」と非難の声が向けられた。現地で取材する男性記者は英BBCに、警察から奪ったとみられるトラックに乗ったタリバン戦闘員らが自動小銃を振りかざす姿を目撃したと証言。路上で歓声を上げる市民や、車を追い掛ける子どもたちもいた。別の場所では持ち場の検問所を後にする国軍兵を見たという。AP通信などによると、米大使館の屋上付近からは煙が立ち上り、外交官らは機微に触れる書類を急いで燃やした。兵士らを運ぶ軍用ヘリ「ブラックホーク」も大使館の近くに着陸した。カブール大学付近にはタリバンの旗が掲げられた。
共同通信通信員によると、空港に向かう幹線道路は車で埋め尽くされ、動かないまま。雑貨店ではタリバンを象徴するターバンを巻いた男性を目撃した。タリバンを受け入れる意思を示す「白旗」を掲げる建物も。商業エリアは閑散としており、美容室の従業員はタリバンの懲罰を恐れてか、女性が写ったポスターを急いで剝がしていた。BBC特派員は「いつもとは比べものにならない銃声の数だった」と振り返った。
ガニ氏を支えてきた女性のハミディ教育相代行は国外脱出を「裏切り」と批判。タリバンの報道担当者が女性の権利を尊重すると主張していることについては「(タリバンが極端な女性差別を続けた)過去の経験から信じがたい」と語った。」
アフガニスタンのガニ政権が反政府武装勢力タリバンの進攻により崩壊したことを受け、バイデン米政権は15日、米国民らの退避を加速するため米軍約千人を追加派兵する方針を決めた。情勢の急変に伴う措置で、駐留規模を48時間以内に計6千人規模に増やし、首都カブールの空港で管制業務を担う。ただ、8月末までに米軍を完全撤退させる目標は維持する方針。
【各国の対応】
アフガニスタンで反政府勢力タリバンが首都カブールを掌握したのを受け、菅首相は16日、邦人保護について「現地の最新の情報を把握しながら米国などと連携して対応している」と語った。「今後タリバンの政権移譲が見込まれると認識している」と述べた。首相官邸で記者団に答えた。
欧米諸国も相次ぎ自国民や大使館員の退避のため動き始めている。米国務省は15日、アフガニスタンのカブールにある米大使館から市内にある国際空港へ全職員の退避が完了したと発表した。バイデン大統領は14日、退避を加速するために米兵1000人を追加派遣すると発表していた。既に英国やドイツ、フランスなどは大使館の機能を同じ空港内や周辺に移し、自国民の退避に向けて活動を続けている。英国は自国民の退避のため、軍隊をカブールに派遣した。ニュース専門局フランス24によるとフランスはアフガニスタン内のフランスの組織で雇用されている600人以上のアフガニスタン人と家族をすでにフランスで受け入れた。
一方、中国外務省の華春瑩報道局長は16日の記者会見でカブールにある中国大使館は正常に機能をしていると説明、一方でアフガン駐在の中国人の多くはすでに帰国したという。華氏は「タリバンは中国と良好な関係を発展させることを希望している。中国がアフガンの再建と発展に参加することも望んでいる」と指摘した。その背景には、7月28日、天津で会談した中国の王毅外相とタリバン幹部のバラダル氏の写真を新華社=ロイターが公表たことからも分かる。
トルコのチャブシオール外相も15日、カブールにある大使館の業務を継続する方針を明らかにした。ロシアも大使館機能を維持する方針である。複数のロシアメディアによると、ロシア外務省のカブロフ大統領特使(アフガン問題担当)は15日、タリバンによる暫定政権について「現時点で承認していない」とした一方で「ロシアはアフガニスタンの暫定政権と協力する準備はできている」と述べた。
【タリバン幹部の記者会見】
18日(水曜)のBBCニュースによれば、17日、アフガニスタンを支配下に置いた武装勢力タリバンは15日の首都カブール掌握後初の記者会見を開いた。報道担当のザビフラ・ムジャヒド幹部は、内外で懸念されている女性の権利について、「シャリア(イスラム法)の枠組みの中」で尊重すると述べた。しかし、他の規則や規制について詳細は明らかにしなかった。
記者会見で外国メディアは、タリバン政権下の女性の権利について質問を繰り返した。ムジャヒド幹部は「我々の枠組みの中で、女性が働き勉強することを認める」、「我々の社会で女性はとても活発に活動することになる」と述べた。
ただし、女性にどのような服装を要求するのか、全身をすっぽり覆い隠すブルカの着用を義務付けるのか、さらには女性にどのような就労機会が認められるかなどについては、質問されても答えなかった。
ムジャヒド幹部は、全てのアフガニスタン人が「イスラムの枠組みの中」で生活しなくてはならないと繰り返し、政権発足に向けて作業を進めており、数日中に発表すると明らかにした。
過激派勢力アルカイダなどが国内を拠点とするのではないかとの質問には、「アフガニスタンの国土を、他者の攻撃には使わせない」と述べ、「内部にも外部にも敵は欲しくない」と融和姿勢を示し、政府治安部隊の兵士や外国政府と協力したアフガニスタン人には恩赦を約束した。
タリバンは同日、記者会見に先立ち、国内全土に全般的な恩赦を宣言。政府職員に安心して職務を再開するよう呼びかけたほか、自分たちの政府に女性の参加も希望すると述べた。
【イアン・ブレマー氏の見解】
20日の日経新聞は、米調査会社ユーラシア・グループを率いる国際政治学者イアン・ブレマー氏の特別寄稿を載せ、「アフガニスタン駐留米軍のまずい撤収は、バイデン米政権が初めて直面した外交上の大きな危機」とし、「撤収の判断そのものが批判されるわけではない。失敗したのは戦略というよりも実行面」とし、次の4点を挙げる。
第1の失敗は軍事・情報である。米情報機関はアフガン政府がタリバンの攻撃を受けても2、3年は持ちこたえられると考えていた。ところが、タリバンの攻勢が強まると、その見通しは2~3日に変わった。特に驚くべきことは次の2点。米国は戦闘を拒否したアフガン政府軍に過去20年間で880億ドル(約9兆6千億円)を支払い、米国はアフガン政府軍を20年間も訓練したのに、政府軍の能力が低く、戦う意思がないという事実を理解していなかった(あるいは理解したくなかった)。
第2の失敗は調整。米国は20年間、同盟国とともにアフガンで戦ったが、バイデン政権による部隊の撤収は単独だった。政策の見直し、決定、発表、実行だけではない。事後処理としての市民の退避、難民の受け入れ、人道支援の提供についても同様だった。同盟国はトランプ前政権による「米国第一」の4年間が終わった後、米国が態度を変えると予想していた。米国は中国に関与する機会も逃した。米国も中国も、アフガンが「失敗国家」となり、再び国際テロの輸出拠点になる事態は望まない。米国と中国が真の意味で合意できる数少ない分野で、創造性に富む外交を実行する余地はあったが、その好機をむざむざ失ってしまった。
第3の失敗はプランニング(計画・設計)。情報や調整で失敗したとしても、バイデン政権が別のシナリオを効果的に用意できていれば、必ずしも大きな被害につながったとは限らない。ところが、実際は、備えができていなかった。米国は(市民らの)退避を支援するため、米本土から新たな部隊を派遣しなければならなくなった。アフガンの米軍は撤収開始時よりも(一時的に)3500人も多くなってしまった。首都カブールの空港は絶望したアフガン市民であふれ、滑走路を進む米軍の輸送機と一緒に多数のアフガン人が走った。離陸後、機体にしがみついていた3人が振り落とされ、亡くなった。米軍を支えた何千人ものアフガン人の安全を保証する計画はなく、多くの人々は置き去りにされた。
第4の失敗はコミュニケーション(意思疎通)。バイデン氏は7月、米国民に向け、タリバンが「アフガン全体を支配する可能性は極めて低い」と保証した。「(在アフガン米大使館の)屋根の上からヘリコプターで脱出するような状況ではまったくない」とも話した。
ブリンケン米国務長官も「米国は残り、大使館は動かず、計画も続く。仮に安全が大きく損なわれるような事態になっても、それは金曜から月曜の間に起こることではない」と語った。こうした予言は、言っているそばから外れたため、かわりにバイデン政権はアフガンで「成功を収めた」と主張するようになった。
痛みを伴うが必要な決定だったはずのアフガン駐留米軍の撤収作業は大きく失敗した。バイデン氏の政敵は、同氏がこの敗戦の責任をとるべきだと突き上げた。20年の月日と2兆ドルの資金が浪費された、その責任の一端をバイデン氏は追及されている。
【日本政府の対応】
日本政府は首都カブールの在アフガン大使館を15日付で一時閉鎖。17日には大使館の日本人職員12人を英軍機でアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに退避させたが、菅首相は22日、首相公邸で森健良外務事務次官、島田和久防衛事務次官らと自衛隊機派遣を巡り協議した。
自衛隊機C2、C130等の輸送機を軸に派遣する検討に入り、輸送対象は国際機関勤務などで現地に残る少数の日本人、それぞれ数十人いる大使館や国際協力機構(JICA)の現地スタッフとその家族も含め、出国の意向調査を始め、国家安全保障会議(NSC)で首相や岸信夫防衛相らが詰めの協議に臨み、23日、派遣を決定した。
26日(木曜)現在、カブール国際空港周辺に人々が押し寄せたため治安が不安定となり、在留邦人を退避させる便は隣国パキスタンのイスラマバード空港で待機、まだ運行していない。
同じ日、国際空港の周辺で2回の爆発があった。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。米軍は少なくとも1回は自爆テロと指摘した。複数の米メディアによると、米兵13人を含む70人超が死亡したとみられる。
空港の入り口の一つである「アビー・ゲート」付近でIS戦闘員が自爆テロを実施した。その後に別の複数の戦闘員が米兵やアフガン市民に対して銃撃した。もう一つの爆発はアビー・ゲートから数百メートルの距離にある「バロン・ホテル」で起きた。マッケンジー氏は手口について調査中だとした。バロン・ホテルは外国人の利用が多いとされる。米軍は19日、ヘリコプターを使って同ホテルから169人の米国人を空港に移動させていた。
【感染拡大にともなう措置】
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、8月20日から9月12日までの4度目の緊急事態宣言の対象地域に茨城、栃木、群馬、静岡、京都、兵庫、福岡の7府県が追加され、また新たに「まん延防止等重点措置」が適用された宮城、山梨、富山、岐阜、三重、岡山、広島、香川、愛媛、鹿児島の10県に適用。これに合わせて、8月31日までが期限の6都府県の宣言と6道県の重点措置の9月12日までの延長も決めた。
緊急事態宣言の対象地域を拡大したにもかかわらず、具体的にどういう措置を講じて感染拡大を抑えるのか。政府は(1)新型コロナウイルスの基本的対処方針を変更し、デパートの地下の食品売り場などへの入場者の整理を要請することを盛り込む、(2)首相が経団連にリモートワークの強化と出勤の7割減を求める一方で、(3)パラリンピックの一部<有観客>、(4)夏休み明けに新学期を迎える小中高校などについて「全国一斉の臨時休校は考えていない」と述べ、休校要請を見送る考えを示す(20日 文科大臣)など、全体としての強い政策効果は出ていない。内閣官房のホームページでは、個々人がしっかり<三密>を避ける等の旧来からの要請を繰り返すだけで、政府として説得力ある新たな背策は見られない。
【感染者の急拡大と重症者の増加】
ワクチンの普及が感染拡大を防ぐ最大の武器と言うものの、変異株<デルタ株>のまん延に対して有効か否かの疑問が出ている。コロナウィルスにとっては変異することを通じて多数の宿主を見つけることに成功を収めている最中である。20日、全国の感染者が25,876人、重症者数も1,816人、入院中や療養中の人は193,355人といずれも過去最多となった。
東京都内では20日、5405人が新たに新型コロナウイルスに感染していることが確認され、初めて3日連続で5000人を超えた。自宅で療養している人は2万6000人を上回り、19日よりさらに2000人余り増えて3日連続で最多を更新した。
【横浜市長選 山中竹春氏が当選】
横浜市長選は22日(日曜)に投開票が行われた。朝日新聞デジタルによれば、出口調査を実施した結果、元横浜市立大教授の山中竹春氏が元国家公安委員長の小此木八郎氏ら他の候補を引き離しており、早くも山中氏が初当選を確実にしたと伝えた。23時22分の開票率8.54%で、出口調査から山中竹春候補が41,000票を取り、得票率31.54%で当確を決めた。2位の小此木八郎氏は26.54%、3位の林文子氏は19.27&である。
山中氏は立憲支持層の7割半ばを固めたうえ、共産、社民両支持層からも6~7割を得て、無党派層からは4割近い得票があり、全8候補の中で最も多くの支持を集めた。小此木氏と現職の林文子氏の2人に市議らの支持が分かれた自民党だが、小此木氏は自民支持層からの得票は4割弱、2割が林氏に回っていた。自民支持層をまとめきれなかった小此木氏は無党派層への浸透にも力強さを欠き、1割程度の得票にとどまった。
林氏が2年前に決めたIR誘致への反発は強く、市民団体が誘致の是非
を問う住民投票条例の制定を求めた署名活動で20万筆近くが集まった。
立憲民主はIR反対勢力の幅広い結集を目指し、山中氏を擁立。過去3
回の市長選で林氏を支援した連合神奈川が推薦、共産、社民も支援した。山中氏は臨床統計学が専門で政治経験はなく、知名度の低さが課題だったが、新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、「コロナの専門家」とアピールし、無党派層にも支持を広げた。
山中氏は早大院修了、九州大医学部付属病院、国立がん研究センターなどを経て、横浜市立大医学部教授。埼玉県出身、48歳。
山中氏については、本ブログ6月16日掲載「人類最強の敵=新型コロナウイルス(39)」のなかで、「横浜市立大学の研究によれば、去年2月~4月に自然感染した250人に、6カ月後の去年10月ごろと、1年後の今年3月ごろに採血し、実験した結果、1年後も十分な量の中和抗体があり、それは、その後、見つかった“変異型”にも“効く”可能性があると発表した」と紹介している。
また本ブログ7月12日掲載「人類最強の敵=新型コロナウイルス(40)」でも、横浜市長選に8名の立候補者があったことを伝え、「候補者が乱立すれば、票は分散…最多得票者が有効投票総数の4分の1以上の票を得られなければ、50日以内に<再選挙>となる規定があり、関係者の間では<再選挙>の可能性も話題に上り始めた」と述べた。
日経新聞によれば、IRの撤回を訴えた山中氏は立民のほか、共産、社民両党の支援を受け「野党共闘」の候補として支持を広げた。小此木氏は市内に選挙区のある菅首相が支援し、自民党の市議の大部分と公明党の支援を固めたが、及ばなかった。3期12年の実績とIR誘致推進を掲げた林氏も伸び悩んだ。
23日(月曜)午前3時のNHK報道によれば、上位3人の開票結果は、山中竹春氏が50万6392票、小此木八郎氏が32万5947票、林文子氏が19万6926票であった。投票率は49.05%で前回4年前の選挙を11.84ポイント上回った。
開票から一夜明けた22日、毎日新聞のインタビューで当選した山中氏は次のように述べた。
「横浜市長選で初当選した元横浜市立大教授の山中竹春氏(48)は投開票から一夜明けた23日、公約としていたカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致撤回について「早い段階で宣言して必要な手続きを進めていく」と述べ、改めて意欲を示した。
市内の事務所で報道陣の取材に応じた。この日は午前5時半ごろに起床し、知人や支援者から大量のメールが届いたのを確認したという。「改めて当選させていただいたという実感が湧いてきた」と笑顔を浮かべた。同席した妻の真木子さん(46)は「びっくりしている。支えていただいた方に感謝したい」と語った。…
政権批判が自身の票につながったとの見方について、山中氏は「政権批判というより、横浜を前に進めてほしい、閉塞(へいそく)感を打破してほしいという期待を感じた」と述べた。…新型コロナウイルスの感染拡大を受け、選挙戦では「新型コロナの専門家」と強調して支持を拡大した山中氏。「感染者が爆発的に増えて病床も危機的だ。ワクチン接種を加速化して、感染が広がらないような仕組みづくりが必要だと思う」と強調した。【高田奈実】」
【選挙後の国政への影響】
横浜市長選の結果が及ぼす今後の国政選挙への影響について、NHKの取材に対し自民党幹部は「保守分裂で自民党支持層の票が割れてしまったことに加え、政府の新型コロナ対応への不満が批判票となって集中したことが敗因だ。知名度で勝る小此木氏が差をつけられたことは衝撃で、衆議院選挙に向けて影響を最小限に抑えなければならない」と述べた。
一方、立憲民主党の福山幹事長は、「『カジノはいらない』という市民の意思が明確に示された。また、菅総理大臣のおひざ元で、こうした結果になったことは、菅内閣のコロナ対応に極めて厳しい判断が下されたということ。政権は謙虚に受け止めて国会を開き、コロナ対応に全力を尽くすべきだ。今回の有権者の野党への期待を次の衆議院選挙で全国に広げられるよう努力したい」と述べた。
【蔡英文・総統が台湾製ワクチン接種一番乗り】
23日(月曜)、台湾のワクチンメーカーである高端疫苗生物製剤(メディゲン・ワクチン・バイオロジクス)が生産した新型コロナウイル・ワクチンの接種が、始まり、蔡英文・総統は接種開始初日となった23日午前、接種会場の一つとなっている台湾大学医学院の体育館を訪れ、接種を受けた。
【パラリンピック開幕】
24日(火曜)晩、パラリンピック開会式が国立競技場で行われ、13日間の大会が幕を開けた。日本選手団は車いすテニス男子シングルスで2大会ぶりの金メダルを目指す国枝慎吾が主将を務め、前回リオ大会の倍に迫る過去最多254選手が全22競技に出場。史上最多の金メダル20個を目標に掲げる。
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が23日に来日、24日の東京パラリンピック開会式に出席し、25日夜、空路で帰国の途についた。パラリンピックの開会式にIOC会長が招待されるのは慣例となっているが、来日したバッハ氏について隔離措置は取られなかった。
これについて25日の衆議院厚生労働委員会(閉会中審査)に出席した尾身分科会会長は、「いま人々にテレワークを要請しているわけですよね。今回またバッハ会長の挨拶が必要なら、なぜオンラインでできないのか。国民に(自粛を)お願いしているんだったら、バッハ会長、なんでわざわざ来るのかと。普通のコモンセンス(常識)ならできるはずなんですよね。銀座も1回行ったんでしょ、と。これは、私は専門家の会議というよりも一般庶民としてそう思います」と身振り手振りを加えながら、強い口調で訴えた。
【コロナ重症者増で<総力戦>】
24日、厚労省と東京都が改正感染症法に基づいて都内の全医療機関に連名で新型コロナウイルス対応への協力を要請した。都はオンラインで医療関係者に要請内容を説明。感染拡大で東京都を中心に医療の供給体制は逼迫している。コロナ医療に直接関わっていない病院や診療所からも、宿泊療養施設などで対応にあたる人材を確保し、医療措置を受けられる患者を増やす。法的手段も含め、<総力戦>での打開が必要となっている。
都は24日のオンライン説明会でコロナ患者に酸素を投与する「酸素ステーション」への人材派遣などを要請した。都内には約8万の一般病床がある。都はコロナ対応で確保する病床数を今より1割積み増し7000床をめざす方針。
都内には病院が約650あり、うちコロナ患者を受け入れている病院が約400ある。コロナ対応に直接関わっていない病院は約250と、全体の3分の1を占める。要請では400病院にはさらなる患者受け入れや病床の確保を求めた。残る250病院には宿泊療養施設や臨時の医療施設の運営に関わるよう要請。病院がどう対応するか回答期限はいずれも31日に設定。
この24日の時点で、NHKのまとめによれば、全国の感染者数は2万1570人、重症者数は1935人、死者は42人、入院・療養中が21万2567人である。うち重症者数と、入院・療養者数の増大が医療体制を逼迫させる直接の要因となり、救える命が救えない状況を招いている。上掲の<総力戦>が奏功することを願う。
【範囲を拡大、21都道府県に宣言、12県に重点措置】
25日(水曜)、菅首相は新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象に、北海道、宮城、岐阜、愛知、三重、滋賀、岡山、広島の8道県を追加することを正式決定した。宣言に準じた「まん延防止等重点措置」に高知、佐賀、長崎、宮崎の4県を加える。追加地域の宣言・重点措置の期間は27日から9月12日まで。あわせて宣言は計21都道府県、重点措置は計12県に拡大される。
【自民党総裁選、9月17日告示、29日投開票】
26日、自民党は9月末の任期満了に伴う党総裁選の日程を9月17日告示、29日投開票と決めた。菅首相が再選を目指し、岸田文雄前政調会長が立候補した。複数候補が出馬する構図で3年ぶりに国会議員票と党員・党友の地方票を同数で争う選挙になる。
岸田氏は記者会見で、「自民党に声が届いていないと国民が感じている」と強調した。「いま自民党に厳しい目が注がれている。こうした現状の中で信頼を回復することができない。党のガバナンス改革をしっかり進める」と力を込めた。
また総裁を除く党役員の任期を「1期1年、連続3期まで」にすべきだと提起した。「権力の集中と惰性を防ぐ」とも主張した。2016年8月から5年にわたり幹事長を務める二階俊博氏が念頭にある。
【パラリンピックの日本勢成果】
2日目の25日、水泳で女子100m背泳ぎ(運動機能障害S2)の山田美幸(14)が2位に入り、日本勢史上最年少の銀メダル、今大会の日本選手団メダル第1号。中学3年生の山田は初出場で最年少記録を塗り替えた。
初めて見る車いすラグビーや車いすバスケットボール。その細かいルール設定により障害の程度による競技参加の役割が決まることを知った。<多様性の調和>とでもいうべきゲーム設定に驚かされた。
3日目の26日(木曜)、競泳の男子100メートル自由形(運動機能障害S4)で、鈴木孝幸(34)=ゴールドウイン=が1分21秒58のタイムで優勝した。今大会初めての日本勢金メダル。
「日常生活でも想像以上に多くの方々の世話になっています。この成果は多くの方々の産物です。みなさまへお返ししたい」と挨拶があった。
4日目以降の競技結果を記録する時には、金メダルに留まらず広く他の諸問題にも目を向けていきたい。
陸上競技は27日にスタートし、トラック最初の決勝種目となった男子5000mT11決勝に唐沢剣也と和田伸也が出場。唐沢が15分18秒12で銀メダル、和田は15分21秒03で銅メダルを獲得し、同競技における日本人最初の表彰台となった。優勝はブラジルのエウチン・ジャッキスで15分13秒62。
この間、以下の番組を視聴した。東京五輪の実況放送により、しばらく空白期間があった。(1)ETⅤ特集「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」(再)8月5日。 (2)映像の世紀{11}「JAPAN~世界が見た明治・大正・昭和~」12日。 (3)ETⅤ特集「ひまわりの子どもたち~長崎・戦争孤児の記憶~」14日。 (4)週刊ワールドニュース(8月9日~13日)」15日。 (5)BS1スペシャル「特攻 知られざる真実」15日。 (6)NHKスペシャル「開戦 太平洋戦争~日中米英 知られざる攻防」15日。 (7)BS1スペシャル「隠された“戦争協力” 朝鮮戦争と日本人」16日。 (8)NHKスペシャル「沁みる夜汽車(三木忠直)」(再)18日。 (9)NHK「たけしの その時カメラは回っていた 驚きの世界のプロパガンダ」18日。 (10)クローズアップ現代+ 「封印された「心の傷」 精神疾患兵の極秘調査」19日。 (11)クローズアップ現代+ 「新型コロナ“第5波” 病院を襲う負のスパイラル」19日。 (12)BS1スペシャル「世界の子どもの未来のために」20日。 (13)NHKスペシャル「混迷ミャンマー 軍弾圧の闇に迫る」22日。
7月26日(月曜)、嬉しいニュースが飛び込んできた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は多くの固有種が生息する「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄)の計約4万3千ヘクタールを世界自然遺産へ登録を決めた。日本の世界遺産は文化遺産も合わせて24件目、自然遺産としては2011年に登録された「小笠原諸島」(東京)に続き5件目である(日本の文化遺産は計19件)。
イリオモテヤマネコ、アマミイシカワガエルなど貴重な動物が多く生息、奄美大島や西表島などにはマングローブ林も広がる。正式登録で観光客の急増が予想されるが、密猟の問題も続いている。該当の自治体は保全策などを強化する方針。
なお世界自然遺産の日本からの新規登録は今回が最後になる公算が大きい。他にも過去に候補として検討された地域はあるが、景観や地形の特異性を比較すると海外の事例に及ばず、独自性を打ち出しにくいとして見送った。環境省は今後、奄美・沖縄を含め登録済み遺産の保全に力を入れる。
【黒い雨の上告断念】
同じ26日、広島への原爆投下後に「黒い雨」を浴びたと訴えた84人全員を被爆者と認めた広島高裁判決について、菅首相が上告を見送る考えを示した。政府内で広がる「上告不可避」の見方から一転しての首相判断。背景に何があったのか。
同日の朝日新聞デジタルは、以下のように伝えた。「国側から見れば、高裁判決は一審判決よりもさらに被爆者の認定を広くとり、認定しない場合、行政側にその理由を立証する責任を負わせるような内容だったからだ。…判決は、空気中の放射性物質を吸ったり、汚染された水や野菜を飲食したりする「内部被曝」によって健康被害を受ける可能性も指摘した。
国側は裁判で、内部被曝したとしても放射線量は低く、健康被害は認められないと主張してきた。…首相周辺は「最後は首相の決断だった」。複数の官邸幹部らは「県と市を説得できなかったことが大きい」と明かす。23日以降も上告に理解を得られなかったといい、政府が突出して原告と対峙する構図になることを懸念したとみられる。
官邸関係者は「衆院選が近く、批判を招きかねない上告は難しかったという事情もある」と語った。首相は記者団に「判決には受け入れがたい部分もある」と、近く出す談話で政府の見解を整理する考えも示した」。
なお8月6日の広島平和記念日に広島市を訪れた菅首相は、改めてこの問題に触れ、84人以外の同じ被害者の救済にも尽くしたいと述べた。
【東京の感染者数がまた急拡大】
同じ26日の都内の感染者は1429人と、月曜としては過去最大となった。4度目の緊急事態宣言が発せられて2週間が経った日にあたる。また東京五輪の選手・関係者の新規感染者は153人となった。
27日(火曜)、都内の感染者が2848人と過去最多となった。これまでの最多は感染拡大の<第3波>にあった1月7日の2520人。
年代別では20代が951人と最も多く、30代が610人、40代が466人、重症化リスクの高い65歳以上の高齢者は78人。
ワクチン接種の現状は、全国では1回接種が総人口の36.9%、2回が25.5%、65歳以上の高齢者ではそれぞれ84.6%、68.2%と高い。東京ではそれぞれ34.5%と21.8%と全国平均より低く、最多の山口県ではそれぞれ48.0%と34.6%であり、2位の和歌山県ではそれぞれ46.1%と33.2%である。
28日(水曜)、新型コロナウイルスの感染者が新たに3177人確認されたと発表した。2日連続で過去最多を更新し、全国の新規感染者も初めて9000人を超えた。首都圏の感染拡大が目立ち、埼玉、千葉、神奈川の3県はそれぞれ870人、577人、1051人で、いずれも最多。感染力が強いインド型(デルタ型)と呼ばれる変異ウイルスの拡大が背景にある。
3県は国に緊急事態宣言を要請する方向で調整を継続。西村経済財政・再生相は同日の衆院内閣委員会で「(3県から)正式な要請があれば速やかに検討し、機動的に対応したい」と述べ、29日にも3県知事と会談する予定を明らかにした。
29日(木曜)、新型コロナウイルスの感染者が新たに3865人確認されたと発表した。前日に続き3千人を上回り、3日連続で過去最多を更新した。直近1週間平均の新規感染者は約2224人で、前週(約1373人)の161.9%だった。また全国で初めて1万人を超えた。28日に初めて9000人を超えたのに続き、2日連続で過去最多となった。神奈川県は過去最多となる1164人、埼玉県が864人、千葉県が576人であり、首都圏4都県の感染者数は計6469人で、全国の約6割を占めている。
感染者で目立つのは50代以下。東京都の新規感染者を年代別にみると、20代が1417人と最も多く、30代が782人、40代が612人、50代が407人で続いた。重症化リスクの高い65歳以上の高齢者は105人である。
同じ29日7時半発の日経新聞デジタルによれば、政府は30日、埼玉、千葉、神奈川3県と大阪府に新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を発令する方針を専門家に諮る。期間は8月31日までとし、8月22日までとしていた東京都と沖縄県への宣言もそれに合わせて8月31日まで延長する。飲食店での酒類提供は一律停止とする。宣言の対象地域を広げ、首都圏を中心とする感染が全国に広がるのを抑える。
首都圏3県や大阪府には現在、宣言に準じる「まん延防止等重点措置」を適用しており、これを8月2日から宣言に切り替える内容だ。宣言地域は東京都、沖縄県とあわせて計6都府県になる。北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県には新たに重点措置を適用する。専門家が了承すれば、政府は7月30日に新型コロナ対策本部で正式に決める。その後、菅首相が記者会見する。
予定通り政府は30日午前、埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県と大阪府に新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を発令する案を専門家に諮問した。期間は8月2~31日まで。8月22日までの東京都と沖縄県への宣言も31日まで延長する。飲食店の酒類提供は一律停止する。また北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県は宣言に準じた対策をとれる「まん延防止等重点措置」を新たに適用する。
西村氏は分科会で「このまま高いレベルで陽性者の数が続けば病床逼迫につながっていく」と強調した。宣言などの期間を8月31日までにした理由を「現役世代にもワクチン接種が進むことによる効果を見極めるため」と説明した。
30日午後、夕方からの菅首相記者発表を前に、感染症対策分科会の尾身会長が首相と面談し、「国民に理解と協力をいただくため、政府としてしっかりとしたメッセージを発信してもらいたい」などと求めた。過去にない感染爆発に直面してもなお、首相はワクチン効果による高齢者の感染者数減といった「楽観論」を強調、これに対して専門家らは国民と危機感を共有するよう釘を刺した形。また、医療現場では逼迫が起きており、「これまでのコロナとの戦いの中で最も危機的な状況」と首相に説き、首相は「ご提案をしっかりと受け止めて対応していきたい」と応じたという。面談には、尾身氏のほか、厚生労働省に助言する専門家組織の脇田隆字座長、内閣官房参与の岡部川崎市健康安全研究所長が参加。数日前に尾身氏側から西村氏を通じて要望していた。
ところが午後7時からの記者発表で首相は、「東京の感染者数は過去最高。強い危機感を持って対応している」と語ったものの、かねて首相が高齢者の感染者数の減少を強調していることが「大丈夫だというメッセージを与えているのでは」と問われると、「ワクチンによって大幅に減少していることは事実だ。そうしたことを示していくことも仕事だ」と述べた。
また小池都知事は27日、記者団から「宣言の効果が見えていない」と問われると、「じわっと重症者が増えているのは気になる」などとしつつ、「五輪も各競技で日本人の選手もすばらしい成績を収めている」などと、五輪に話題を転じた。
政治リーダーたちが発するこうしたメッセージに対して、尾身会長ら専門家は強い警鐘を鳴らす。「今の最大の危機は、社会の中で危機感が共有されていないことだ」。29日の参院内閣委員会で尾身氏はそう訴えた。「このまま危機感が共有されなければこの感染状況は更に拡大する」とも語った。さらに「医療逼迫を一つの指標だけで判断するのは全体を見誤る」と指摘した。現状は、重症者数や入院者数、自宅療養者数、救急外来の「たらい回し」などが増加傾向だとし、首相が強調する「人流減」も「期待されるほどのスピードではない」とクギを刺した。
31日(土曜)、東京都は新型コロナウイルスの感染者を新たに4058人確認したと発表、初の4千人台で、1日あたり過去最多。3千人を超えるのは4日連続。31日までの1週間平均の感染者数は2920人で、前週比は217%。
4日(水曜)、東京都は新型コロナウイルスの感染者が新たに4166人確認されたと発表。7月31日の4058人を上回り、過去最多となった。直近1週間平均の新規感染者は約3478人で、前週(約1954人)の178.0%だった。
5日(木曜)午後6時現在、国内の新規感染者数は1万4968人が確認され、前日に続き1日当たりの過去最多を更新。都道府県別では、東京5042人、神奈川1846人、埼玉1235人、沖縄648人で過去最多を更新した。神奈川では、新規感染者数が7月28日から9日連続で1千人を超えている。
【日本勢の金メダル】
前号の「人類最強の敵=新型コロナウィルス(40)」に次いで、7月26日(月曜)、4日目以降の東京五輪の日本勢の金メダルを掲げる。金メダルだけを挙げるのは、あくまでも紙幅の制限とバランスのためであり、金メダルがすべてと思っているわけではない。私自身が好きで柔道、ラグビー、テニスとかじってきて、いまもテニス抜きの生活は考えられない。<負け>があっての<勝ち>であることは身に染みて知っている。
いな、そもそもスポーツには勝敗以前の役割がある。球技の起源と言えば19世紀中ごろイギリスで<気晴らし>や<気分転換>を意味する“sport”がサッカーやラグビー等の近代スポーツ、とくに球技を指すようになった(拙著『イギリスとアジア 近代史の原画』 岩波新書 1980年)。こう書いた40余年も昔の記憶がよみがえる。
ほぼ同じ19世紀なかごろ、<武術>を<武道>に変換させたのが明治日本である。さまざまな起源をもつ種目がオリンピックに結集し、世界一を争う。観ないわけには行かない。21年7月23日(金曜・祝)から8月8日(日曜・祝)まで17日間、史上最多の33競技339種目が、札幌大通公園のマラソンを含め、計43会場で展開される。
そこで以下、日本勢の金メダルだけを記すことする。
7月25日(日曜)、3日目、柔道で男子66キロ級の阿部一二三(ひふみ)と女子52キロ級の阿部詩(うた)の兄妹がそろって金メダルに輝いた。競泳女子400メートル個人メドレーでは大橋悠依(ゆい)が優勝。新競技のスケートボード男子ストリートでは堀米雄斗(ゆうと)が初代王者になった。
7月26日(月曜)、4日目、
(1)柔道男子73キロ級の大野将平(日本武道館)。2016年リオデジャネイロ五輪に続き、2大会連続の金。
(2)新種目の卓球混合ダブルス(東京体育館)、水谷隼(木下グループ)、伊藤美誠(スターツ)組が許昕、劉詩雯組(中国)を破り、日本卓球界初の金。
(3)新競技スケートボードの女子ストリート(有明アーバンスポーツパーク)で、13歳の西矢椛(にしや・もみじ、ムラサキスポーツ)が日本勢最年少で金メダルを獲得。
27日(火曜)、5日目、柔道男子81キロ級の永瀬貴規(旭化成)が決勝でモラエイ(モンゴル)を延長戦の末に破り、金メダル。柔道男子は今大会4個目の金メダル。なおテニス女子シングルスでは世界ランキング2位の大坂なおみ(日清食品)が3回戦で同42位のマルケタ・ボンドロウソバ(チェコ)に1-6、4-6で敗れる波乱となった。
同じ日午後10時3分。横浜スタジアムで高く打ち上がったボールが捕手のミットに収まると、ベンチから選手が駆け出した。ソフトボール日本代表が決勝で米国を2―0で破り、13年越しの連覇を果たした金メダル。
28日(水曜)、6日目、柔道女子70キロ級で五輪初出場の新井千鶴が金メダル。日本勢は初日から5日連続の金メダル獲得。
競泳女子200メートル個人メドレー決勝で大橋悠依(25)が2分8秒52で金メダルを獲得。大橋は25日の400メートル個人メドレーでも金メダルに次いで今大会2個目のメダル獲得。
体操男子個人総合で初出場の19歳、橋本大輝(順大)が金メダル。
29日(木曜)、7日目、柔道女子78キロ級で初出場の浜田尚里(自衛隊)が決勝でマドレーヌ・マロンガ(フランス)を破り、金メダル、また男子100㌔級で初出場のウルフ・アロン(了徳寺大職)が決勝で趙グハム(韓国)を下し、金メダル。
30日(金曜)、8日目、女子78キロ超級で初出場の素根輝(パーク24)が決勝でイダリス・オルティス(キューバ)を破り、金メダル。これで今大会の日本勢の金メダル総数が16個となり、1964年東京五輪と2004年アテネ五輪に並ぶ最多タイとなった。
フェンシング男子エペ団体(幕張メッセ)の日本は決勝でROCを破り、同競技で日本勢初の金メダル。これで今大会の日本勢の金メダルは17個となり、1964年東京、2004年アテネの両五輪を上回る史上最多となった。
31日(土曜)は9日目、金メダルなし。柔道混合団体で惜しくもフランスに敗れて銀メダル。8月1日(日曜)と2日(月曜)も金メダルなし。
8月3日(火曜)、12日目、女子フェザー級の入江聖奈(日体大3年生)が2019年世界選手権覇者のネスティー・ペテシオ(フィリピン)を5-0の判定で破り(国技館アリーナ)、日本女子初の金メダル。ボクシング女子は2012年ロンドン大会から採用された種目。女子柔道52キロ級で金メダルに輝いた阿部詩(日体大の3年生)と同学年。
体操男子の種目別鉄棒(有明体操競技場)で橋本大輝(順大)が金メダル。なお13日以降については後述。
【デルタ株が世界で大半となる】
新型コロナウイルスの変異株のうちインドで見つかったデルタ株が世界的に勢いを増し、従来株と置き換わりつつある。デルタ株の特徴は感染力が強いこと、従来株やイギリスで見つかった変異株(アルファ株)に比べて1.4倍から1.8倍にのぼるという。
イスラエルではワクチン接種が人口の70%を超えると感染者数が減少したが、最近になって感染者が急増し始めた。原因はデルタ株のためと見られ、3回目のワクチン接種に踏みきった。
8月2日、日本で4回目の緊急事態宣言が出て3週間たつが、新型コロナウイルスの感染者の増加が続いている。感染拡大の目安となる<実効再生産数>(1人の感染者から何人に感染が広がるかの目安となる推定値)は東京都内で1.4台に達し、年明けの第3波を上回る勢いである。感染力の強いインド型(デルタ型)が広がるうえ、過去の宣言後と違い、人出の減少も鈍い。
そのため政府は患者の急増に対応し、入院は重症者や重症化リスクの高い人を中心とし、「それ以外は自宅療養を基本とし、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備する」方針を決めた。また家庭の事情などで自宅療養できない場合に限り宿泊施設を利用してもらう体制に改める。すなわちリスクの高い人を中心に幅広く入院する従来の原則の大転換である。
同時に菅首相は治療薬<抗体カクテル療法>(7月19日、中外製薬の<抗体カクテル療法>の製造販売を特例承認)を入院患者以外も使用できるようにする方針も示した。現在、外来診療は対象外で「在宅患者も含めた取り組みを進める」と述べ、「50代以上や基礎疾患のある人に積極的に投与する」とも強調した。早期退院につなげて病床を確保する狙いもある。<抗体カクテル療法>とは、軽症・中等症の患者に2種類の抗体を点滴し、重症化予防が期待される。在宅療養者への使い方は自治体と協議して検討する。
【ファッション業界のGX】
3日の日経新聞電子版は、「グッチやシャネルも脱炭素 素材に配慮、デザイン洗練」の見出しで次のように報じた。
「温暖化ガスの排出が多いとされるファッション業界が、グリーントランスフォーメーション(GX=緑転)を急いでいる。環境負荷の軽い商品を好む<緑の消費者>が欧米を中心に増えているからだ。環境に配慮した新素材の活用が始まり、単なるリサイクルではなくデザイン性も備えた<アップサイクル>も広がっている。
スイスの環境コンサルティング会社クアンティスが18年に「ファッション産業は世界で排出される温暖化ガスの8%を占める」という衝撃的な調査結果を公表。服飾企業などが連携して対応するよう求めた。
ファッション業界のGXは2019年8月、仏南西部ビアリッツで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)が起点となった。グッチなどを手掛ける仏高級品大手のケリングの主導で、50年までのカーボンゼロを掲げる「ファッション協定」を提案し、約150ブランドが賛同・署名。
この<ファッション協定>は気候変動、生物多様性、海洋保護の3つを柱に実践目標を掲げた。「具体的には25年までに、原材料の25%を持続可能な素材にする。また、再生可能エネルギーへの転換を25年までに50%、30年までに100%に設定。50年までに「温暖化ガス排出量ゼロを目指す」とした。
高級ブランドではケリングを筆頭に、バーバリーやシャネル、フェラガモなどが名を連ねた。スポーツではナイキやアディダス、カジュアルではギャップやインディテックス(ザラ)なども参加。発表から1年後の20年10月には、加盟企業が14カ国60社、ブランド数は200以上に膨らんだ。」
【トヨタが最高益を記録】
4日(水曜)、トヨタ自動車が発表した2021年4~6月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比5.7倍の8978億円だった。新型コロナウイルスが広がる前の19年4~6月期の6829億円を超え、4~6月期としては最高となった。コロナの影響が続く中で新車の需要が回復。北米や中国、日本といった世界の主要市場で販売が増えた。車業界の半導体不足の影響も限定的にとどめた。
売上高は前年同期比73%増の7兆9355億円、営業利益も72倍の9974億円と事前の市場予想平均(QUICKコンセンサス)の7327億円を上回った。15年4~6月期の最高益(7560億円)を更新し、すべての四半期ベースで比較しても最高になった。トヨタの純利益は21年3月期に1社で上場する製造業の1割以上を占めた。業績の動向が日本経済に与える影響は大きい。
7日(土曜)の日経新聞は「NYダウ続伸144ドル高 最高値更新、米雇用回復を好感」の見出しで「ダウ工業株30種平均が過去最高値を更新。終値は前日比144ドル26セント(0.4%)高の3万5208ドル51セント。6日発表の米雇用統計で就業者数が市場予想を上回り、景気回復への期待が強まったため」と伝えた。
【日本勢の金メダル~続報】
4日(水曜)、13日目、女子パーク決勝(有明アーバンスポーツパーク)で2018年世界選手権優勝の19歳の四十住さくら(よそずみ・さくら、ベンヌ)が金メダルを獲得。予選は4位で通過したが、決勝では難度の高い技を成功させ、60.09点と高得点をマークした。
女子レスリング62キロ級の川井友香子(ジャパンビバレッジ)が決勝でティニベコワ(キルギス)を破り、金メダル。
5日(木曜)、14日目、レスリング女子57キロ級(幕張メッセ)で2016年リオデジャネイロ五輪63キロ級女王の川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)が決勝でクラチキナ(ベラルーシ)を下し金メダル。妹の友香子(ジャパンビバレッジ)が4日の62キロ級を制しており、同大会姉妹金メダル。
6日(金曜)、15日目、五輪初実施の空手男子形決勝(日本武道館)で喜友名諒(劉衛流龍鳳会)がキンテロ(スペイン)を破り、金メダル。
同じ日、レスリング女子53キロ級の向田真優(ジェイテクト)が決勝で龐倩玉(中国)を破り、金メダル。
7日(土曜)、16日目、レスリング男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗(自衛隊)が決勝でアリエフ(アゼルバイジャン)を破り、金メダル。
同じ日、レスリング女子50キロ級の須崎優衣(早大)が孫亜楠(中国)を破り、金メダル。
野球(横浜スタジアム)で日本がアメリカを2:0で破り金メダルを獲得、日本勢金メダルの有終の美を飾った。
8日(日曜)晩、17日間にわたる競技を終了し、国立競技場で閉会式が行われた。
日本の獲得したメダルは金27、銀14、銅17の計58個と史上最多(過去最多は2016年リオデジャネイロ五輪の41個)。金メダル数は米国(=205個)、中国(=166個)についで世界3位(=27個)である。獲得メダル数の4位以下は、インド(98個)、ドイツ(94個)、ロシア(91個)、ルクセンブルグ(86個)、ノルウェー(66個)、アイスランドとフランス(次期開催国)が65個で並び、世界平均は17個。メダルがゼロの国と地域が37ある。
【温暖化の危険性深まる】
以前(今年5月)、世界気象機関(WMO)は27日、2025年までに「産業革命前に比べて、平均気温が1.5度以上高い」年が発生する可能性が40%以上あるとの見通しを発表。現状の温暖化ガス削減に向けた取り組みでは、深刻な気候変動を食い止められない恐れがあることが改めて浮き彫りとなったとした。
8月9日の日経新聞は「気温1.5度上昇、10年早まり21~40年に IPCC報告書」の見出しで、「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は9日、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021~40年に1.5度に達するとの予測を公表した。18年時点の想定より10年ほど早い。人間活動の温暖化への影響は「疑う余地がない」と断定。気温の上昇幅は、2041~60年に1.6~2.4度、2081~2100年に1.4~4.4度に跳ね上がる。自然災害を増やす温暖化を抑えるには二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする必要があると指摘した。
平均気温が上がると、異常気象が増えるとし、(ア)現在(1℃)の場合、(イ)1.5℃の場合、(ウ)2℃の場合の3つのケースを比較した。(1)熱波等の極端な高温は(ア)の場合で気温が+1.2℃、発生率が4.8倍であるが、(イ)の場合では気温が+2℃で発生率が8.6倍、(ウ)の場合になるとで気温が+2.8℃で発生率が13.9倍となると予測する。言い換えれば熱波の発生率がうなぎのぼりとなり、山火事の頻度等がいちじるしく高まる。
ついで(2)極端な大雨については、(ア)の場合に雨量が+6.7%で、発生率が1.3倍であるが、(イ)の場合には雨量が+10.5%で発生率が1.5倍となり、(ウ)の場合には雨量が+14で発生率が1.7倍と予測する。土砂災害等が恐ろしい。
ほかに(3)農業に被害を及ぼす干ばつの発生率は(ア)が1.7倍、(イ)が2倍、(ウ)が2.4倍とする。増え続ける世界人口に対して、干ばつによる農業被害が大きくなれば、<飢饉>が多発する。
【自然科学の論文で中国が世界一に】
10日、文部科学省の科学技術・学術政策研究所が発表した最新の報告書によれば、「自然科学分野の論文の注目度の高さを示す指標で中国が初めて世界一になった。研究者による引用回数が上位10%に入る「注目論文」の数で初めて米国を抜いた。分野別でも8分野中、材料科学や化学、工学など5分野で首位に立った。学術研究競争で中国が米国に肩を並べつつあり、産業競争力の逆転も現実味を帯びてきた」という。同研究所が英調査会社クラリベイトのデータを基に主要国の論文数などを3年平均で算出・分析したもの。
注目論文のうち上位1%に当たる「トップ論文」でも、中国のシェアは25%と米国の27.2%に肉薄した。文科省科学技術・学術政策研究所の担当者は今後について「中国のいまの勢いは米国を追い抜く様相を見せている」と指摘する。
注目論文の世界シェアを分野ごとにみると、材料科学で中国は48.4%と米国(14.6%)を大きく引き離した。化学が39.1%(同14.3%)、工学は37.3%(同10.9%)などと計5分野で首位となった。
一方、米国は臨床医学(34.5%)や基礎生命科学(26.9%)で首位となった。バイオ分野で強さが目立つが、産業競争力に直結する分野で中国が強さを示した。
これに対して日本は、論文の質・量ともに順位が低下し、科学技術力の足腰の弱さが浮き彫りになった。注目論文のシェアではインドに抜かれ、前年の9位から10位と初めて2ケタ台に後退した。トップ論文のシェアも9位と前年から横ばいだった。10年前と比べた減少率はともに10~15%と大きく、論文の質が相対的に下がっている。
日本の全体の論文数は6万5742本と米中の20%前後の水準にとどまった。米中のほか韓国、ドイツ、フランス、英国などは10年前と比べ増えているが、日本は横ばいにとどまる。長期化する研究力低下に歯止めをかけるのに「特効薬」はなく、衰退を食い止めるのは難しい。
知人の物理学者が言うには、中国はサイエンスよりも工学に力を入れており、投入金額が半端ではないので量的優位は続くであろう。瞬間的な値はこれからも優位かもしれないが、アメリカはバイデン政権がどれだけ頑張るかに依るが、サイエンスは過去から現在までの積分値なので、そう簡単には追いつけないのではと。
【日本列島に居座る<線状降水帯>】
台風9号が去った10日(火曜)は全国的な猛暑日となり、横浜も37℃超を記録した。翌11日(水曜)からは前線が日本列島上に停滞、西日本、東日本、東北と全国にわたって猛烈な雨となった。気象庁は、この雨の日が今後1週間もつづくと警報を出した。警報通り、降り始めの11日から15日までの4日間は総雨量が800ミリを超え、1000ミリに達した所もある。観測史上最多を記録する地域が多い。
とくに九州北部と広島県を中心とする中国地方で顕著である。偏西風の蛇行により前線が北上すると、南から湿った空気が入り、<線状降水帯>を作る。その動きが遅いと猛烈な雨が長時間にわたり降り続くことになる。河川の氾濫や道路冠水に加え、土中の水分が耐えられなくなると土砂災害が起きる。
この<線状降水帯>が16日には東へ移り。関東地方も猛烈な雨となり、神奈川県でも山北町付近で15日10時までの1時間に約100ミリの猛烈な雨が降ったとみられ、「記録的短時間大雨報」が発表された。横浜も大雨となった。
【アフガニスタン急変】
東京五輪、新型コロナの感染拡大、11日に始まり1週間つづくとされる日本列島の<大雨特別警報>に気をとられているうちに、13日(金曜)の日経新聞がワシントン発として「アフガン首都緊迫」の見出しで、次のように伝えた。
「アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが13日までに、第2の都市の南部カンダハルなどを制圧した。米メディアによると8月末の米軍撤収を控え、早ければ1カ月以内に首都カブールが陥落する可能性があると米当局はみている。米英、カナダは大使館員らの退避のため軍の部隊を派遣する。タリバンは全34州都のうち過半数の18州都を支配した。首都のあるカブール州に隣接する東部ロガール州などを含み、首都から約50キロメートルまで迫っている。なおカンダハルはタリバン発祥の地で、20年前の2001年12月に最後の拠点だった同地が陥落し当時のタリバン政権は崩壊した。カンダハル奪還でタリバン兵の士気が一段と高まる公算が大きい。」
15日(日曜)の日経新聞は次にように伝えた。「アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは15日、首都カブールに進攻し大統領府を掌握した。同国のガニ大統領は国外に退避したとみられる。タリバン幹部は勝利宣言し、アフガン政権は事実上瓦解した。2001年の米同時テロをきっかけに旧タリバン政権が崩壊してから約20年、テロとの戦いが振り出しに戻る格好だ」と。
翌16日(月曜)の日経新聞は、【カブール=共同】を引いて、状況を伝えた。
「ターバン姿の男らが武器を手に政権中枢へ迫り、国軍兵士は持ち場を捨てた。反政府武装勢力タリバンが進攻したアフガニスタンの首都カブールは15日、銃声とヘリコプターの旋回音、脱出する市民の車の渋滞で緊迫と混沌に包まれた。国外脱出したガニ大統領には「国民への裏切り」と非難の声が向けられた。現地で取材する男性記者は英BBCに、警察から奪ったとみられるトラックに乗ったタリバン戦闘員らが自動小銃を振りかざす姿を目撃したと証言。路上で歓声を上げる市民や、車を追い掛ける子どもたちもいた。別の場所では持ち場の検問所を後にする国軍兵を見たという。AP通信などによると、米大使館の屋上付近からは煙が立ち上り、外交官らは機微に触れる書類を急いで燃やした。兵士らを運ぶ軍用ヘリ「ブラックホーク」も大使館の近くに着陸した。カブール大学付近にはタリバンの旗が掲げられた。
共同通信通信員によると、空港に向かう幹線道路は車で埋め尽くされ、動かないまま。雑貨店ではタリバンを象徴するターバンを巻いた男性を目撃した。タリバンを受け入れる意思を示す「白旗」を掲げる建物も。商業エリアは閑散としており、美容室の従業員はタリバンの懲罰を恐れてか、女性が写ったポスターを急いで剝がしていた。BBC特派員は「いつもとは比べものにならない銃声の数だった」と振り返った。
ガニ氏を支えてきた女性のハミディ教育相代行は国外脱出を「裏切り」と批判。タリバンの報道担当者が女性の権利を尊重すると主張していることについては「(タリバンが極端な女性差別を続けた)過去の経験から信じがたい」と語った。」
アフガニスタンのガニ政権が反政府武装勢力タリバンの進攻により崩壊したことを受け、バイデン米政権は15日、米国民らの退避を加速するため米軍約千人を追加派兵する方針を決めた。情勢の急変に伴う措置で、駐留規模を48時間以内に計6千人規模に増やし、首都カブールの空港で管制業務を担う。ただ、8月末までに米軍を完全撤退させる目標は維持する方針。
【各国の対応】
アフガニスタンで反政府勢力タリバンが首都カブールを掌握したのを受け、菅首相は16日、邦人保護について「現地の最新の情報を把握しながら米国などと連携して対応している」と語った。「今後タリバンの政権移譲が見込まれると認識している」と述べた。首相官邸で記者団に答えた。
欧米諸国も相次ぎ自国民や大使館員の退避のため動き始めている。米国務省は15日、アフガニスタンのカブールにある米大使館から市内にある国際空港へ全職員の退避が完了したと発表した。バイデン大統領は14日、退避を加速するために米兵1000人を追加派遣すると発表していた。既に英国やドイツ、フランスなどは大使館の機能を同じ空港内や周辺に移し、自国民の退避に向けて活動を続けている。英国は自国民の退避のため、軍隊をカブールに派遣した。ニュース専門局フランス24によるとフランスはアフガニスタン内のフランスの組織で雇用されている600人以上のアフガニスタン人と家族をすでにフランスで受け入れた。
一方、中国外務省の華春瑩報道局長は16日の記者会見でカブールにある中国大使館は正常に機能をしていると説明、一方でアフガン駐在の中国人の多くはすでに帰国したという。華氏は「タリバンは中国と良好な関係を発展させることを希望している。中国がアフガンの再建と発展に参加することも望んでいる」と指摘した。その背景には、7月28日、天津で会談した中国の王毅外相とタリバン幹部のバラダル氏の写真を新華社=ロイターが公表たことからも分かる。
トルコのチャブシオール外相も15日、カブールにある大使館の業務を継続する方針を明らかにした。ロシアも大使館機能を維持する方針である。複数のロシアメディアによると、ロシア外務省のカブロフ大統領特使(アフガン問題担当)は15日、タリバンによる暫定政権について「現時点で承認していない」とした一方で「ロシアはアフガニスタンの暫定政権と協力する準備はできている」と述べた。
【タリバン幹部の記者会見】
18日(水曜)のBBCニュースによれば、17日、アフガニスタンを支配下に置いた武装勢力タリバンは15日の首都カブール掌握後初の記者会見を開いた。報道担当のザビフラ・ムジャヒド幹部は、内外で懸念されている女性の権利について、「シャリア(イスラム法)の枠組みの中」で尊重すると述べた。しかし、他の規則や規制について詳細は明らかにしなかった。
記者会見で外国メディアは、タリバン政権下の女性の権利について質問を繰り返した。ムジャヒド幹部は「我々の枠組みの中で、女性が働き勉強することを認める」、「我々の社会で女性はとても活発に活動することになる」と述べた。
ただし、女性にどのような服装を要求するのか、全身をすっぽり覆い隠すブルカの着用を義務付けるのか、さらには女性にどのような就労機会が認められるかなどについては、質問されても答えなかった。
ムジャヒド幹部は、全てのアフガニスタン人が「イスラムの枠組みの中」で生活しなくてはならないと繰り返し、政権発足に向けて作業を進めており、数日中に発表すると明らかにした。
過激派勢力アルカイダなどが国内を拠点とするのではないかとの質問には、「アフガニスタンの国土を、他者の攻撃には使わせない」と述べ、「内部にも外部にも敵は欲しくない」と融和姿勢を示し、政府治安部隊の兵士や外国政府と協力したアフガニスタン人には恩赦を約束した。
タリバンは同日、記者会見に先立ち、国内全土に全般的な恩赦を宣言。政府職員に安心して職務を再開するよう呼びかけたほか、自分たちの政府に女性の参加も希望すると述べた。
【イアン・ブレマー氏の見解】
20日の日経新聞は、米調査会社ユーラシア・グループを率いる国際政治学者イアン・ブレマー氏の特別寄稿を載せ、「アフガニスタン駐留米軍のまずい撤収は、バイデン米政権が初めて直面した外交上の大きな危機」とし、「撤収の判断そのものが批判されるわけではない。失敗したのは戦略というよりも実行面」とし、次の4点を挙げる。
第1の失敗は軍事・情報である。米情報機関はアフガン政府がタリバンの攻撃を受けても2、3年は持ちこたえられると考えていた。ところが、タリバンの攻勢が強まると、その見通しは2~3日に変わった。特に驚くべきことは次の2点。米国は戦闘を拒否したアフガン政府軍に過去20年間で880億ドル(約9兆6千億円)を支払い、米国はアフガン政府軍を20年間も訓練したのに、政府軍の能力が低く、戦う意思がないという事実を理解していなかった(あるいは理解したくなかった)。
第2の失敗は調整。米国は20年間、同盟国とともにアフガンで戦ったが、バイデン政権による部隊の撤収は単独だった。政策の見直し、決定、発表、実行だけではない。事後処理としての市民の退避、難民の受け入れ、人道支援の提供についても同様だった。同盟国はトランプ前政権による「米国第一」の4年間が終わった後、米国が態度を変えると予想していた。米国は中国に関与する機会も逃した。米国も中国も、アフガンが「失敗国家」となり、再び国際テロの輸出拠点になる事態は望まない。米国と中国が真の意味で合意できる数少ない分野で、創造性に富む外交を実行する余地はあったが、その好機をむざむざ失ってしまった。
第3の失敗はプランニング(計画・設計)。情報や調整で失敗したとしても、バイデン政権が別のシナリオを効果的に用意できていれば、必ずしも大きな被害につながったとは限らない。ところが、実際は、備えができていなかった。米国は(市民らの)退避を支援するため、米本土から新たな部隊を派遣しなければならなくなった。アフガンの米軍は撤収開始時よりも(一時的に)3500人も多くなってしまった。首都カブールの空港は絶望したアフガン市民であふれ、滑走路を進む米軍の輸送機と一緒に多数のアフガン人が走った。離陸後、機体にしがみついていた3人が振り落とされ、亡くなった。米軍を支えた何千人ものアフガン人の安全を保証する計画はなく、多くの人々は置き去りにされた。
第4の失敗はコミュニケーション(意思疎通)。バイデン氏は7月、米国民に向け、タリバンが「アフガン全体を支配する可能性は極めて低い」と保証した。「(在アフガン米大使館の)屋根の上からヘリコプターで脱出するような状況ではまったくない」とも話した。
ブリンケン米国務長官も「米国は残り、大使館は動かず、計画も続く。仮に安全が大きく損なわれるような事態になっても、それは金曜から月曜の間に起こることではない」と語った。こうした予言は、言っているそばから外れたため、かわりにバイデン政権はアフガンで「成功を収めた」と主張するようになった。
痛みを伴うが必要な決定だったはずのアフガン駐留米軍の撤収作業は大きく失敗した。バイデン氏の政敵は、同氏がこの敗戦の責任をとるべきだと突き上げた。20年の月日と2兆ドルの資金が浪費された、その責任の一端をバイデン氏は追及されている。
【日本政府の対応】
日本政府は首都カブールの在アフガン大使館を15日付で一時閉鎖。17日には大使館の日本人職員12人を英軍機でアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに退避させたが、菅首相は22日、首相公邸で森健良外務事務次官、島田和久防衛事務次官らと自衛隊機派遣を巡り協議した。
自衛隊機C2、C130等の輸送機を軸に派遣する検討に入り、輸送対象は国際機関勤務などで現地に残る少数の日本人、それぞれ数十人いる大使館や国際協力機構(JICA)の現地スタッフとその家族も含め、出国の意向調査を始め、国家安全保障会議(NSC)で首相や岸信夫防衛相らが詰めの協議に臨み、23日、派遣を決定した。
26日(木曜)現在、カブール国際空港周辺に人々が押し寄せたため治安が不安定となり、在留邦人を退避させる便は隣国パキスタンのイスラマバード空港で待機、まだ運行していない。
同じ日、国際空港の周辺で2回の爆発があった。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。米軍は少なくとも1回は自爆テロと指摘した。複数の米メディアによると、米兵13人を含む70人超が死亡したとみられる。
空港の入り口の一つである「アビー・ゲート」付近でIS戦闘員が自爆テロを実施した。その後に別の複数の戦闘員が米兵やアフガン市民に対して銃撃した。もう一つの爆発はアビー・ゲートから数百メートルの距離にある「バロン・ホテル」で起きた。マッケンジー氏は手口について調査中だとした。バロン・ホテルは外国人の利用が多いとされる。米軍は19日、ヘリコプターを使って同ホテルから169人の米国人を空港に移動させていた。
【感染拡大にともなう措置】
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、8月20日から9月12日までの4度目の緊急事態宣言の対象地域に茨城、栃木、群馬、静岡、京都、兵庫、福岡の7府県が追加され、また新たに「まん延防止等重点措置」が適用された宮城、山梨、富山、岐阜、三重、岡山、広島、香川、愛媛、鹿児島の10県に適用。これに合わせて、8月31日までが期限の6都府県の宣言と6道県の重点措置の9月12日までの延長も決めた。
緊急事態宣言の対象地域を拡大したにもかかわらず、具体的にどういう措置を講じて感染拡大を抑えるのか。政府は(1)新型コロナウイルスの基本的対処方針を変更し、デパートの地下の食品売り場などへの入場者の整理を要請することを盛り込む、(2)首相が経団連にリモートワークの強化と出勤の7割減を求める一方で、(3)パラリンピックの一部<有観客>、(4)夏休み明けに新学期を迎える小中高校などについて「全国一斉の臨時休校は考えていない」と述べ、休校要請を見送る考えを示す(20日 文科大臣)など、全体としての強い政策効果は出ていない。内閣官房のホームページでは、個々人がしっかり<三密>を避ける等の旧来からの要請を繰り返すだけで、政府として説得力ある新たな背策は見られない。
【感染者の急拡大と重症者の増加】
ワクチンの普及が感染拡大を防ぐ最大の武器と言うものの、変異株<デルタ株>のまん延に対して有効か否かの疑問が出ている。コロナウィルスにとっては変異することを通じて多数の宿主を見つけることに成功を収めている最中である。20日、全国の感染者が25,876人、重症者数も1,816人、入院中や療養中の人は193,355人といずれも過去最多となった。
東京都内では20日、5405人が新たに新型コロナウイルスに感染していることが確認され、初めて3日連続で5000人を超えた。自宅で療養している人は2万6000人を上回り、19日よりさらに2000人余り増えて3日連続で最多を更新した。
【横浜市長選 山中竹春氏が当選】
横浜市長選は22日(日曜)に投開票が行われた。朝日新聞デジタルによれば、出口調査を実施した結果、元横浜市立大教授の山中竹春氏が元国家公安委員長の小此木八郎氏ら他の候補を引き離しており、早くも山中氏が初当選を確実にしたと伝えた。23時22分の開票率8.54%で、出口調査から山中竹春候補が41,000票を取り、得票率31.54%で当確を決めた。2位の小此木八郎氏は26.54%、3位の林文子氏は19.27&である。
山中氏は立憲支持層の7割半ばを固めたうえ、共産、社民両支持層からも6~7割を得て、無党派層からは4割近い得票があり、全8候補の中で最も多くの支持を集めた。小此木氏と現職の林文子氏の2人に市議らの支持が分かれた自民党だが、小此木氏は自民支持層からの得票は4割弱、2割が林氏に回っていた。自民支持層をまとめきれなかった小此木氏は無党派層への浸透にも力強さを欠き、1割程度の得票にとどまった。
林氏が2年前に決めたIR誘致への反発は強く、市民団体が誘致の是非
を問う住民投票条例の制定を求めた署名活動で20万筆近くが集まった。
立憲民主はIR反対勢力の幅広い結集を目指し、山中氏を擁立。過去3
回の市長選で林氏を支援した連合神奈川が推薦、共産、社民も支援した。山中氏は臨床統計学が専門で政治経験はなく、知名度の低さが課題だったが、新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、「コロナの専門家」とアピールし、無党派層にも支持を広げた。
山中氏は早大院修了、九州大医学部付属病院、国立がん研究センターなどを経て、横浜市立大医学部教授。埼玉県出身、48歳。
山中氏については、本ブログ6月16日掲載「人類最強の敵=新型コロナウイルス(39)」のなかで、「横浜市立大学の研究によれば、去年2月~4月に自然感染した250人に、6カ月後の去年10月ごろと、1年後の今年3月ごろに採血し、実験した結果、1年後も十分な量の中和抗体があり、それは、その後、見つかった“変異型”にも“効く”可能性があると発表した」と紹介している。
また本ブログ7月12日掲載「人類最強の敵=新型コロナウイルス(40)」でも、横浜市長選に8名の立候補者があったことを伝え、「候補者が乱立すれば、票は分散…最多得票者が有効投票総数の4分の1以上の票を得られなければ、50日以内に<再選挙>となる規定があり、関係者の間では<再選挙>の可能性も話題に上り始めた」と述べた。
日経新聞によれば、IRの撤回を訴えた山中氏は立民のほか、共産、社民両党の支援を受け「野党共闘」の候補として支持を広げた。小此木氏は市内に選挙区のある菅首相が支援し、自民党の市議の大部分と公明党の支援を固めたが、及ばなかった。3期12年の実績とIR誘致推進を掲げた林氏も伸び悩んだ。
23日(月曜)午前3時のNHK報道によれば、上位3人の開票結果は、山中竹春氏が50万6392票、小此木八郎氏が32万5947票、林文子氏が19万6926票であった。投票率は49.05%で前回4年前の選挙を11.84ポイント上回った。
開票から一夜明けた22日、毎日新聞のインタビューで当選した山中氏は次のように述べた。
「横浜市長選で初当選した元横浜市立大教授の山中竹春氏(48)は投開票から一夜明けた23日、公約としていたカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致撤回について「早い段階で宣言して必要な手続きを進めていく」と述べ、改めて意欲を示した。
市内の事務所で報道陣の取材に応じた。この日は午前5時半ごろに起床し、知人や支援者から大量のメールが届いたのを確認したという。「改めて当選させていただいたという実感が湧いてきた」と笑顔を浮かべた。同席した妻の真木子さん(46)は「びっくりしている。支えていただいた方に感謝したい」と語った。…
政権批判が自身の票につながったとの見方について、山中氏は「政権批判というより、横浜を前に進めてほしい、閉塞(へいそく)感を打破してほしいという期待を感じた」と述べた。…新型コロナウイルスの感染拡大を受け、選挙戦では「新型コロナの専門家」と強調して支持を拡大した山中氏。「感染者が爆発的に増えて病床も危機的だ。ワクチン接種を加速化して、感染が広がらないような仕組みづくりが必要だと思う」と強調した。【高田奈実】」
【選挙後の国政への影響】
横浜市長選の結果が及ぼす今後の国政選挙への影響について、NHKの取材に対し自民党幹部は「保守分裂で自民党支持層の票が割れてしまったことに加え、政府の新型コロナ対応への不満が批判票となって集中したことが敗因だ。知名度で勝る小此木氏が差をつけられたことは衝撃で、衆議院選挙に向けて影響を最小限に抑えなければならない」と述べた。
一方、立憲民主党の福山幹事長は、「『カジノはいらない』という市民の意思が明確に示された。また、菅総理大臣のおひざ元で、こうした結果になったことは、菅内閣のコロナ対応に極めて厳しい判断が下されたということ。政権は謙虚に受け止めて国会を開き、コロナ対応に全力を尽くすべきだ。今回の有権者の野党への期待を次の衆議院選挙で全国に広げられるよう努力したい」と述べた。
【蔡英文・総統が台湾製ワクチン接種一番乗り】
23日(月曜)、台湾のワクチンメーカーである高端疫苗生物製剤(メディゲン・ワクチン・バイオロジクス)が生産した新型コロナウイル・ワクチンの接種が、始まり、蔡英文・総統は接種開始初日となった23日午前、接種会場の一つとなっている台湾大学医学院の体育館を訪れ、接種を受けた。
【パラリンピック開幕】
24日(火曜)晩、パラリンピック開会式が国立競技場で行われ、13日間の大会が幕を開けた。日本選手団は車いすテニス男子シングルスで2大会ぶりの金メダルを目指す国枝慎吾が主将を務め、前回リオ大会の倍に迫る過去最多254選手が全22競技に出場。史上最多の金メダル20個を目標に掲げる。
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が23日に来日、24日の東京パラリンピック開会式に出席し、25日夜、空路で帰国の途についた。パラリンピックの開会式にIOC会長が招待されるのは慣例となっているが、来日したバッハ氏について隔離措置は取られなかった。
これについて25日の衆議院厚生労働委員会(閉会中審査)に出席した尾身分科会会長は、「いま人々にテレワークを要請しているわけですよね。今回またバッハ会長の挨拶が必要なら、なぜオンラインでできないのか。国民に(自粛を)お願いしているんだったら、バッハ会長、なんでわざわざ来るのかと。普通のコモンセンス(常識)ならできるはずなんですよね。銀座も1回行ったんでしょ、と。これは、私は専門家の会議というよりも一般庶民としてそう思います」と身振り手振りを加えながら、強い口調で訴えた。
【コロナ重症者増で<総力戦>】
24日、厚労省と東京都が改正感染症法に基づいて都内の全医療機関に連名で新型コロナウイルス対応への協力を要請した。都はオンラインで医療関係者に要請内容を説明。感染拡大で東京都を中心に医療の供給体制は逼迫している。コロナ医療に直接関わっていない病院や診療所からも、宿泊療養施設などで対応にあたる人材を確保し、医療措置を受けられる患者を増やす。法的手段も含め、<総力戦>での打開が必要となっている。
都は24日のオンライン説明会でコロナ患者に酸素を投与する「酸素ステーション」への人材派遣などを要請した。都内には約8万の一般病床がある。都はコロナ対応で確保する病床数を今より1割積み増し7000床をめざす方針。
都内には病院が約650あり、うちコロナ患者を受け入れている病院が約400ある。コロナ対応に直接関わっていない病院は約250と、全体の3分の1を占める。要請では400病院にはさらなる患者受け入れや病床の確保を求めた。残る250病院には宿泊療養施設や臨時の医療施設の運営に関わるよう要請。病院がどう対応するか回答期限はいずれも31日に設定。
この24日の時点で、NHKのまとめによれば、全国の感染者数は2万1570人、重症者数は1935人、死者は42人、入院・療養中が21万2567人である。うち重症者数と、入院・療養者数の増大が医療体制を逼迫させる直接の要因となり、救える命が救えない状況を招いている。上掲の<総力戦>が奏功することを願う。
【範囲を拡大、21都道府県に宣言、12県に重点措置】
25日(水曜)、菅首相は新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象に、北海道、宮城、岐阜、愛知、三重、滋賀、岡山、広島の8道県を追加することを正式決定した。宣言に準じた「まん延防止等重点措置」に高知、佐賀、長崎、宮崎の4県を加える。追加地域の宣言・重点措置の期間は27日から9月12日まで。あわせて宣言は計21都道府県、重点措置は計12県に拡大される。
【自民党総裁選、9月17日告示、29日投開票】
26日、自民党は9月末の任期満了に伴う党総裁選の日程を9月17日告示、29日投開票と決めた。菅首相が再選を目指し、岸田文雄前政調会長が立候補した。複数候補が出馬する構図で3年ぶりに国会議員票と党員・党友の地方票を同数で争う選挙になる。
岸田氏は記者会見で、「自民党に声が届いていないと国民が感じている」と強調した。「いま自民党に厳しい目が注がれている。こうした現状の中で信頼を回復することができない。党のガバナンス改革をしっかり進める」と力を込めた。
また総裁を除く党役員の任期を「1期1年、連続3期まで」にすべきだと提起した。「権力の集中と惰性を防ぐ」とも主張した。2016年8月から5年にわたり幹事長を務める二階俊博氏が念頭にある。
【パラリンピックの日本勢成果】
2日目の25日、水泳で女子100m背泳ぎ(運動機能障害S2)の山田美幸(14)が2位に入り、日本勢史上最年少の銀メダル、今大会の日本選手団メダル第1号。中学3年生の山田は初出場で最年少記録を塗り替えた。
初めて見る車いすラグビーや車いすバスケットボール。その細かいルール設定により障害の程度による競技参加の役割が決まることを知った。<多様性の調和>とでもいうべきゲーム設定に驚かされた。
3日目の26日(木曜)、競泳の男子100メートル自由形(運動機能障害S4)で、鈴木孝幸(34)=ゴールドウイン=が1分21秒58のタイムで優勝した。今大会初めての日本勢金メダル。
「日常生活でも想像以上に多くの方々の世話になっています。この成果は多くの方々の産物です。みなさまへお返ししたい」と挨拶があった。
4日目以降の競技結果を記録する時には、金メダルに留まらず広く他の諸問題にも目を向けていきたい。
陸上競技は27日にスタートし、トラック最初の決勝種目となった男子5000mT11決勝に唐沢剣也と和田伸也が出場。唐沢が15分18秒12で銀メダル、和田は15分21秒03で銅メダルを獲得し、同競技における日本人最初の表彰台となった。優勝はブラジルのエウチン・ジャッキスで15分13秒62。
この間、以下の番組を視聴した。東京五輪の実況放送により、しばらく空白期間があった。(1)ETⅤ特集「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」(再)8月5日。 (2)映像の世紀{11}「JAPAN~世界が見た明治・大正・昭和~」12日。 (3)ETⅤ特集「ひまわりの子どもたち~長崎・戦争孤児の記憶~」14日。 (4)週刊ワールドニュース(8月9日~13日)」15日。 (5)BS1スペシャル「特攻 知られざる真実」15日。 (6)NHKスペシャル「開戦 太平洋戦争~日中米英 知られざる攻防」15日。 (7)BS1スペシャル「隠された“戦争協力” 朝鮮戦争と日本人」16日。 (8)NHKスペシャル「沁みる夜汽車(三木忠直)」(再)18日。 (9)NHK「たけしの その時カメラは回っていた 驚きの世界のプロパガンダ」18日。 (10)クローズアップ現代+ 「封印された「心の傷」 精神疾患兵の極秘調査」19日。 (11)クローズアップ現代+ 「新型コロナ“第5波” 病院を襲う負のスパイラル」19日。 (12)BS1スペシャル「世界の子どもの未来のために」20日。 (13)NHKスペシャル「混迷ミャンマー 軍弾圧の闇に迫る」22日。
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