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観蓮会始まる

 6月30日に掲載した「六月の敗荷」では、三溪園の蓮池の異変を打開するための<3方面作戦>、すなわち(1)ザリガニ駆除、(2)肥料管理、(3)蓮ポット苗の移植の推移を見た。その成果は明らかで、蓮の立ち葉が驚くほどの勢いで伸びてきた。

 恒例の観蓮会は予定通り、7月17日(土曜)の朝7時に始まった。蓮の成長に心配はなくなったが、花の数はふだんよりまだ少ない。言い換えれば、これから8月9日(月・祝)までの土日祝日のうち、遅いほど花の見ごろを迎えることになりそうである。

 開花の時期はふだんより遅れる可能性が高いと考えていたので、三溪園ホームページで適宜、開花状況を伝え、「今年は蓮の生育が一律でなく一部に遅れが出ていて、見ごろは8月中旬ごろとなる見通し」とした。

 ところが7月28日の段階で平年並みの生育となっていると判断、「ご心配をおかけしました蓮の生育ですが、例年どおり蓮池全体に花が見られる状況となりました。花の見ごろは、8月中旬ごろまで続きそうです」とホームページ上で伝える。

蓮池の様子

 この写真は7月22日(木曜・祝)の蓮池の様子、本ブログ前号「六月の敗荷」(6月30日掲載)と比べると、この間の成長ぶりが頼もしい。

 蓮は開花から散るまでが4日間、それぞれの段階の花びらの形を示すイラストが下記の「蓮の咲き方」である。散り終わると<花托>が残り、なかにハスの実が入っている。例外なく、わずか4日間だけの花の命、それが順繰りに顔を出しては消えていく。


蓮池の様子2

【CDI(Corporate Directions, Inc.)】
三溪園では観蓮会に関連する催事の取組も進んできた。企画広報に関する職員の会議をひんぱんに開き、アイディアを出し合った成果である。それらの企画を実施に移すには種々のノウハウが要るが、三溪園では初めてのものが多く、それを経営戦略コンサルタントのCDI(Corporate Directions, Inc.)が支援してくれる。以下、CDI(シー・ディー・アイ)とする。

そのきっかけは、2020年度に向けて三溪園を所管する横浜市文化観光局観光振興課が三溪園の経営機能強化に向けた経営アドバイザリー業務委託を公募し、同時に市職員(同課の係長一人)を経営機能強化担当室長として三溪園への休職派遣を決めたことにある。そして経営アドバイザリー業務委託の受託者として業者選定委員会においてCDI社を選定したのが2020年6月、新型コロナウイルスの<緊急事態宣言>が解除された直後であった。

そして7月3日、三溪園まで足を運ばれたCDIの占部伸一郎さん、芳賀正輝さん、高橋寛宣さん、岡野裕大さん、外山一成さんと初めて歓談の機会を得る。戦略を実際に日々の施策に落とす段階になってからは、サービス業界においてそれぞれ得意分野を持つ方々、五十嵐友美さん、宇式伸介さん、宇式菜穂子さんが支援に入ってくれた。

それから約1年が経つ。神奈川県では<緊急事態宣言>と<まん延防止等重点措置>が繰り返され、今も<まん延防止等重点措置>(7月12日~8月22日)下にあるが、この間の感染者急拡大(29日に1164人と2日つづけて過去最多)に伴い、7月30日、政府は神奈川県・埼玉県・千葉県の3県と大阪府を<緊急事態宣言>へ移行すること(期間は8月2日~31日まで)を決め、新たな局面に入った。こうしたなか三溪園の催事には格別の注意が必要である。観蓮会は原則として屋外で開かれるが、入園時の検温と除菌をいっそう徹底するとともに、<密>にならないよう注意して進めていきたい。

約1年半にも及ぶ長引くコロナ禍の下、三溪園の入園者減少は著しく、とくに外国人(インバウンド)入園者や団体バス旅行はほぼゼロに等しい。三溪園の経営は入園料と<貸館・庭園利用>収入の2つに大きく依存している。極端な赤字がつづけば<借り入れ>が必要となり、やがては<経営破綻>にも追い込まれかねない。この危機を乗り越えるには、職員の能力と知恵を存分に発揮する仕組みが不可欠である。

一方、黒字が多すぎると、公益財団法人として<収支相償>に抵触する。<収支相償>とは、公益目的事業会計のなかで経常収益が経常費用を超えないこと、さらに<公益目的事業費>、すなわち公益目的事業会計が収益事業会計と法人会計を加えた総額の50%以上であることの縛りがある。

CDIの社名は、同社のホームページによると「企業が進むべき道のクリアなイメージ=“Corporate Direction”を探り、練り、創り上げていくプロセス」から名づけられたという。<企業>を<組織>ないし<団体>と置き換えれば、公益財団法人三溪園保勝会にも共通するところが多い。とくにCDIは後述のKGI (重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)の設定と実行に関して、豊富な技術とノウハウを有している。

三溪園を担当してくれる、上掲の、30代から40代の経験豊富かつ柔軟な発想のスタッフは、三溪園の職員にすぐ溶け込み、良好な関係を築いた。それは下記のCDIの<社是>(同社ホームページ)にある通りである。

「私たちは、依頼主企業が直面する固有の経営課題の創造的解決に、依頼主と共に取り組むことを専門に業(なりわい)とするコンサルタントの集団です。…そのすべてのプロセスを通じて、コンサルタントは、決して先入観をもって自らの理論や主張を押しつけることもありませんし、まして自らが課題解決の主役になることもありません。しかし一方で、ただ依頼主の要望を受動的に引き受ける存在でもありません。依頼主の認識を刷新する契機となり、思考を活性化する刺激となり、創造への動機を高める誘因となり、行動への決断と勇気を後押しする力となる・・・それは、徹底して<信頼できる第三者>であり続けると同時に、徹底して<信用できる身内>になるということの両立であり、そこにこそ、私たちのコンサルタントとしての職業的専門性の根拠と矜持があります。私たちは、そうした自覚と自負をもつコンサルタントの、<職人集団>です。」

【組織ビジョン、KGI、KPI】
今年に入って正月明けの1月7日と13日の2日間、CDIの発案により職員の研修会(通称:合宿)が園内の鶴翔閣と白雲邸で開かれた。CDIと三溪園スタッフがよく知り合うとともに、三溪園の歴史をより深く理解し、今後に果たすべき役割を考える契機とするためであった。

この合宿に至るまで、CDIのメンバーは、まず三溪園保勝会の現状を客観的に分析し、職員一人一人と面談する等ヒアリング調査を行い、約半年をかけて課題を浮き彫りにしてくれた。ここで強調されたことは、個々の職員は熱い思いで職務に当たっているが、その思いが<言語化>できていないため共有されず、外部にも発信できていない、ということであった。また、庭園そのものも魅力に富んで、観光施設としても十分なポテンシャルを持っているが、まだ存分に生かされていない、との指摘も受けた。

三溪園管理職とCDI各位は、これらについて議論を重ね、改善が必要な課題を徐々に共有していった。三溪園の①組織ビジョン、②KGI(Key Goal Indicator)、③KPI(Key Performance Indicator)という、聞きなれない言葉の意味が次第に浸透してきた。どうやらアメリカ経営学の安易な翻訳ではなさそうである。良い点は大いに学びたい。

① 組織ビジョン=組織がめざす方向
② KGIは「重要目標達成指標」、組織(企業)が掲げる最終的な目標の達成度合いを把握するための物差しのイメージ
③ KPIは「重要業績評価指標」、最終的な目標達成のために必要なプロセスの進捗状況を把握するための物差しのイメージ

これらのうち、①組織ビジョンは早い段階で明確になった。三溪園保勝会(以下、三溪園とする)は<企業>ではなく、公益財団法人である。その定款に、「この法人は、国民共有の文化遺産である重要文化財建造物等及び名勝庭園の保存・活用を通して、歴史及び文化の継承とその発展を図り、潤いある地域社会づくりに寄与するとともに、日本の文化を世界に発信することを目的とする」(第3条 目的)と書かれている。

三溪園の事業計画・事業報告はこの目的にそって構成され、ホームページに公表してきた。これを基軸として経営機能強化を進めたいと考え、それを図示して、2020年6月、観光振興課との間で合意している。

②KGIと③KPIについては、三溪園職員が学ぶべき点が多い。②KGIはゴールを定量的に示した指標そのものであるのに対し、③KPIは②KGI達成までの各プロセスの達成度をはかるもので、ゴールまでの中間指標になる。言い換えると②KGIは<結果>を見る指標であり、③KPIは<過程>を見る指標である。

ところが三溪園の②KGIには、企業の<事業収益>という定量的指標に加えて、公益財団法人が持つべき定性的な指標が必要である。いま管理職の間で詰めているのが以下の点、すなわち目標<地域づくりに対する貢献>のなかに含まれる<豊かな市民生活への貢献>や<横浜の観光振興への貢献>、目標<世界に対する日本文化の発信>のなかに含まれる<発信素材の磨き上げ>、そして目標<保存と活用のための資金確保>に含まれる<文化財の永続的な保有>、<事業収益>等である。

またKPIやKGIを設定する時は、SMART、すなわち①Specific(具体的であること、「成功率を20%増やす」等)、②Measurable(定量的に測定できること)、③Achievable(達成できること)、④Relevant(戦略や方向性に則したもの)、⑤Time bound(期限があること、目標とバランスのとれた期限を設定すること)を考慮せよと<教科書>は言う。これらも納得できる指針である。
さらに<教科書>は言う。「ビジョンばかりが語られて、それをなんとなく追いかけているうちは、ビジョンは実現しない。ビジョンがあって目標がない状態では、<絵に描いた餅>の状態になりやすい。また目標だけあってビジョンがない状態でも、目標はただのノルマになり、人は疲弊していく。スポーツの世界でも、日常的な厳しい練習に耐えられるのは、明確な目標があるからであり、さらにその達成が歓喜に繋がると描けるからである」と。
 具体的で詳細なKPIに近づくほど経験に基づく豊富な技術が必要になる。初めて取り組んだ三溪園の職員たちは、CDI各位の支援を受けて日々成長していった。CDI各位の支援を受け、職員の企画広報会議等の議論の中から、新たな企画を設定し、担当者を決め、広報発信へと結びつけ、チラシや記者発表等に加えて、インスタグラム等の情報発信の各種手段が強化されてきた。

その代表例が三溪園ホームページである。レイアウトや見せ方に一段と工夫が見られ、適時・適切な情報を豊かに提供できるようになった。春のサクラの時期に次いで、今回の観蓮会の諸行事にも、その成果が見られる。

【観蓮会の取り組み】
正門と南門で、観蓮会向けのチラシ(A4×両面コピー)を配布している(制作は庭園担当の羽田雄一郎主事)。片面が「早朝観蓮会で見られる花々」の写真に、園内の地図を加え、蓮以外の花々へと導いてくれる。
もう片面は「涼しい空間で、芸術・歴史文化に触れる。食で楽しむ。」であり、内苑にある三溪記念館の展示の紹介をはじめ、内苑の各所に見られるハスの図像・図形を掲載する。ミニツアーの手引きにもなる。
そのまま以下に再掲する。

チラシ1

チラシ2

 直近の三溪園ホームページから観蓮会等に関する主な企画を引用したい。

 (1)プレミアムツアー学芸員ツアー「蓮めぐり」(事前予約)は7月2日で完売となった。本ツアーは、三溪園所属の学芸員とともに、園内に秘められた蓮をめぐり庭園の世界観と蓮の魅力に迫る。仏教美術を茶の湯の世界に取り入れた三溪の美意識により創り上げられた三溪園には、蓮池だけでなく、古建築や石造品などいたるところに蓮が隠されている。日程:7月22日(木・祝)〜25日(日)、31日(土)、8月1日(日)、時間:8:00〜9:30。定員:各日10名(定員になり次第終了)、対象:高校生以上。費用:1人あたり5,200円(入園料込み、朝食つき)。

 (2)プレミアムツアー「朝の三溪園で愉しむ「蓮尽くし」 ~特別懐石を味わい数寄屋建築をめぐる~」は7月15日に完売となった。本企画は、株式会社淡交社との共催で、原三溪ゆかりの蓮をキーワードに朝のさわやかな時間に咲く蓮の花を観賞していただいた後、ミシュラン2つ星の横浜の懐石料理店「真砂茶寮」による蓮尽くしの懐石料理、そして通常非公開の蓮ゆかりの建物・蓮華院と白雲邸の特別見学で、この時期だけの「蓮と三溪園」をゆったり堪能していただくもの。7月18日(日)、7月23日(金・祝)、24日(土)に開催。時間:8:00〜11:30。各日10名(最少催行人員5名)、費用:36,500円(入園料込) 。

 (3)早朝観蓮会特別企画<はすあそび>は、7月17日(土)、18日(日)、22日(木・祝)、23日(金・祝)、24日(土)、25日(日)、31日(土)、8月1日(日)、7日(土)、8日(日)、9日(月・祝)に開催。
時間は①7:05~7:20 ②7:25~7:40 ③7:45~8:05 ④8:10~8:30 ⑤8:35~8:55。場所は蓮池東側 特設テント、定員:各回2名、対象:10歳以上 ※保護者の付き添いがあれば、小さなお子様も参加できる。料金:800円(入園料別)。以上の特別企画の収益は三溪園の維持・管理に役立てる。
三溪園早朝観蓮会をもっと楽しみたい方におすすめのアクティビティ。「蓮茎の糸とり体験」「葉っぱのお面づくり」「タネの発芽処理体験」をボランティアスタッフの指導のもと体験していただきます。お子様の夏の思い出づくりに、ぜひご参加ください。

 (4)「梅しごと」(終了)は、料理研究家で、三溪園とゆかりのある杉田梅の普及活動に取り組む市原由貴子氏が、旬を迎える三溪園の梅の実を使い、梅酒や梅ジュースづくりを実演。その効能や魅力について楽しく解説します。日時:6月6日(日) 10:30~、11:30~(各回45分)、会場:三溪園 月影の茶屋、講師:市原 由貴子(合同会社横浜旬・菜・果 代表)、料金:無料(入園料は別途必要です)。定員:15名。

 (5)この間、7月27日(火)から5日間限定で朝顔展が開かれた。
横浜の愛好家らが丹精込めて育てた朝顔を5日間限定で展示。陽光をたっぷり浴びるほどに、大きな花を咲かせる「大輪朝顔」や、江戸時代に盛んに栽培され、葉や花びらのかたちが珍しい「変化朝顔」など、厳選の花約40点が楽しめる。期間:2021年7月27日(火)~7月31日(土)、時間:9:00~12:00、会場:外苑 中央広場 月影の茶屋。料金:三溪園の入園料のみ。主催:公益財団法人三溪園保勝会、横浜朝顔会、後援:公益財団法人横浜市緑の協会、横浜市環境創造局。展示内容は大輪朝顔、変化朝顔 約40点ほか。≪苗のプレゼント≫ 抽選で10名様に朝顔の苗をプレゼント 期間中毎日10:00~≪種の販売≫。期間中毎日(無くなり次第終了)、≪朝顔の作り方相談≫:毎日9:00~12:00。
 この三溪園朝顔会は長らく市庁舎(港町)で行われてきたが、昭和57(1982)年、市庁舎拡張工事のため、広瀬富有三郎会長(当時)が三溪園を頻繁に訪れ、川幡留司(いま三溪園参事)と相談のうえ、三溪園を会場とするようになった(『横浜朝顔会々報』第五十五号 令和2年度に平成6年の記事が再録)。この市庁舎も昨年、本町6丁目に移転した。
 世事の有為転変のなか、江戸時代から継承される朝顔の園芸品種を楽しみたい。1865年に発表された<メンデルの法則>は、「メンデルがエンドウの交配実験から明らかにした遺伝の法則。①対になる形質のものを交配すると、雑種第一代では優性形質が顕在して劣性形質が潜在するという<優劣の法則>、②雑種第二代では優性・劣性の形質をもつものの割合が3対1に分離して現れるという<分離の法則>、③異なる形質が二つ以上あってもそれぞれ独立に遺伝するという<独立の法則>の3つからなる」が、それ以前の江戸時代の日本人は、遺伝の特性をどう理解して新しい園芸品種を創り出していたのか。

 (6)今年初めての企画が、夏の古建築公開×「タゴールと夏の迷い鳥たち Stray Birds Japan 2nd Exhibition & Concert」である。ラビンドラナート・タゴール(Rabindranath Tagore、1861-1941)はインドの詩聖と称えられる人物。代表作『ギータンジャリ』により、1913年、アジア初のノーベル文学賞を受賞した。
 今年はタゴール生誕160年、没後80年にあたる。三溪園ゆかりの詩聖タゴールにインスパイアされた若手アーティストたちによる、タゴールの詩の世界や鶴翔閣をより楽しめるイベントである。主催は公益財団法人三溪園保勝会、共催がStray Birds Japan、助成が東京芸術大学音楽学部若手作曲家・演奏家・研究者支援事業、そして後援が外務省、国立音楽院。
 期間は8月7日(土)~8月15日(日) 9:00~16:00。場所は鶴翔閣(横浜市指定有形文化財)、料金無料 (入園料のみ)、予約不要。ただし、8/8・8/12開催のコンサート観覧希望者は、事前に整理券を求める。企画・展示内容は、タゴール紹介、インスタレーション、短編アニメーション、絵画作品、いけばな(8/14・15のみ)、涼の間、コンサート(8/8・12のみ)。
 会場の鶴翔閣は、三溪園の創設者である原三溪の旧宅(旧原家住宅)であり、かつて三溪と交流のあった文化人や財界人が出入りし文化的サロンとしても使われていた。横浜に残る貴重な近代和風建築として、また歴史的にも貴重な建物として横浜市有形文化財に指定されている。普段は非公開のこの建物を、夏の期間特別に一般公開する。
 タゴールは日本の美を愛し、日本に対する親しみも深く、1902年に訪印した岡倉天心と親交があり、何度も来日している。初来日の1916(大正5)年、三溪園に2か月逗留、このとき詩集『迷い鳥』(Stray Birds)が作られた。
 インド独立運動のガンジーを支持し、アインシュタインやロマン・ロランらの著名人とも交流があったタゴールは、世界平和、人類愛を表現し続け、1941年の没後、現在にいたるまで尊敬を集めている。また、インドとバングラデシュ両国家の国歌の作者でもあり、タゴール国際大学の創設者でもある。「すべての赤子は神がまだ人間に絶望していないというメッセージを携えて生まれてくる」という彼のメッセージは、混沌した現代に一筋の希望を与えてくれる。
 三溪園において最初の詩が生まれた詩集『迷い鳥』(Stray Birds)をもとに集まった、若手アーティストを中心とするコレクティブ・グループ。2020年はタゴールや三溪園を中心とした研究やフィールドワークを行い、短編アニメーショの制作や企画展を実施してきた。今年はその新たな展開である。
 若手芸術家を支援して止まなかった原三溪は、微笑みながら見守っておられるに違いない。
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人類最強の敵=新型コロナウィルス(40)

 7月12日(月曜)、東京都は新型コロナウイルスの感染者を新たに502人確認したと発表した。前週の月曜日(7月5日)と比べ160人の増加で、23日連続で前週の同じ曜日を上回った。12日までの1週間平均の感染者数は756・7人で前週の129・2%、また新規感染者502人の年代別では20代が172人と最多。30代102人、40代91人、50代50人とつづき、65歳以上の高齢者は16人である。ワクチン接種率が低く、かつ活動的な20代が最多で、この傾向がつづけば、2週間後、1ヶ月後が思いやられる。ワクチン接種率の向上との競争とも言われるが、具体的な対策は出されていない。

 同じ日、加藤官房長官は記者会見で、新型コロナウイルスのワクチン接種証明書について、申請の受け付けを26日から全国の市区町村で始めると正式に発表した。当面は海外渡航向けの発行に限定し、申請費用は無料とする。証明書の提示を条件に、入国後の防疫措置が緩和される国・地域への渡航者に限って申請するよう呼びかけた。
 発行を希望する場合、パスポートや接種済み証などを接種当時に住民票があった市区町村の窓口に提出するか、郵送する。加藤氏によると、即日交付できる場合もあるという。政府は、証明書があれば入国時の待機期間が短縮、免除される国・地域を外務省のホームページで公表する。経団連は、証明書を活用した飲食店での優遇措置や国内旅行などの制限緩和を政府に求めている。加藤氏は、ワクチン接種を終えた人への優遇措置などについて「接種の強制や不当な差別が生じることは適切でない」と述べ、検討が必要だとの認識を示した。

 13日(火曜)、読売新聞社が9~11日に実施した全国世論調査の結果が報道された。菅内閣の支持率は37%で、昨年9月の内閣発足以降最低の前回(6月4~6日調査)と同じ37%、不支持率は53%(前回50%)に上がり、内閣発足後で最高となった。支持率低迷の背景には、政府の新型コロナウイルス対策や五輪対応への不満があるとみられる。政党支持率は自民党36%(前回33%)、立憲民主党5%(同5%)などの順で、無党派層は43%(同48%)である。
 また東京都に発令された4度目の緊急事態宣言については、効果を疑問視する声が半数を超えた。宣言が感染拡大防止に効果があると「思う」は38%で、「思わない」の56%を下回り、新型コロナを巡るこれまでの政府の対応を「評価する」は28%(前回6月4~6日調査27%)で、厳しい見方が続いている。ワクチン接種を巡る政府対応についても「評価する」は36%と低く、「評価しない」が59%に。

【デジタルのジレンマ】
 同じ13日、日経新聞は1面トップにデジタルのジレンマ(1)「崩れる富の分配 消えた500億ドル」を掲載した。日本では行政機関のデジタル化が叫ばれ、デジタル庁創設が予定されているが、その技術を駆使して情報の<効率化>を進める役割の先にある問題には思いが及ばない傾向がある。その点を突いた<デジタルのジレンマ>に関する論考である。
 デジタル技術はネットを介した情報発信や検索、買い物などを通して生活を便利にし影響力を強める。しかし米商務省経済分析局(BEA)の統計を使って20世紀をけん引した自動車と比較すると、経済に与えるインパクトは大きく異なる。IT(情報技術)サービスは2000年ごろから成長が始まったが、名目GDPは米国全体の0.5%前後で推移。直近の19年も約2700億ドルで全体の1.2%にすぎない。アプリを使った無料サービスなどは広がるが、富を生み出し分配する波及効果は自動車など既存産業に及ばない。
 生み出した付加価値を給与などにまわす割合の「労働分配率」は、自動車は70年代に最大で70%を超えたが、ITサービスは19年時点で約33%と全産業平均より約21ポイント低い。もし他の産業並みの分配率を維持していたら労働者への配分は年570億ドル(約6.3兆円)ほど多かった計算になる。
 国への還元も少ない。日本経済新聞の分析ではグーグルの親会社のアルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾンの米IT4社の税負担率は18~20年の3年平均で15.4%。世界平均より9.7ポイント低い水準にとどまる。

【小選挙区制で官邸主導へ その功罪】
 同じ13日の日経新聞は、「政策・決定の変容㊥」として「自民、かすむ政調・族議員 小選挙区導入から四半世紀」を掲載、およそ次のように述べた。1996年衆院選で小選挙区制が導入されたころからだ。党の候補が1選挙区1人なら公認権を持つ党首が強くなる。選挙は候補者個人より政権を選択する色合いが濃くなった。「民営化に賛成か反対か」の2択を迫る小泉首相の<郵政民営化>を巡る選挙は、1人だけ当選する小選挙区制にはまった。首相官邸主導が選挙で圧勝という成果を示すと、政策決定の重心は党から官邸に移っていった。いまは「官邸1強」と称される時代である。12年12月に第2次政権を発足させた安倍晋三氏は首相時代、農林族の反発を封じて農協改革や環太平洋経済連携協定(TPP)を推進した。
 同時に官邸主導の脆弱性も露呈した。新型コロナの感染対策である。営業自粛の要請などは地方自治体に権限がある。病床の確保やワクチン接種、保健所の活用といった課題も官邸主導だけでは解決しない。焦点は政府・与党ではなく国・地方の関係になった。これまで日本は地方分権を推進してきた。緊急時に国と地方の足並みが乱れて大丈夫なのか。次の統治モデルの模索が始まっている。

【東京の感染者増加】
 4回目の「緊急事態宣言」(7月12日から)が出された東京都では、感染者数が減るどころか逆に増え始めた。14日(水曜)に1149人、15日(木曜)に1308人、前の週の同じ曜日を上回るのは26日連続。ついで16日(金曜)に1271人となり、前週金曜(822人)に比べ約1・5倍に増えた。3日連続で1000人を超えたのは年明けに一気に感染が拡大した第3波以来で、16日までの7日間平均は、今年4月から5月にかけての第4波のピークを上回り、感染が急速に拡大している。うち303人がインドで確認された「L452R」の変異があるウイルスに感染していることを確認した。
 16日現在の直近1週間の人口10万人あたり感染者数は、東京=44人(小数点以下を四捨五入)、沖縄=27,神奈川=26,千葉=21,埼玉=18、大阪=17と首都圏が圧倒的に多い。政府分科会が示している指標では、直近1週間の人口10万人あたりの感染者数が「25人以上」になると、感染状況が最も深刻な「ステージ4」に相当し、「15人以上」になると、感染者が急増している段階である「ステージ3」に相当する。

 同じ16日、関東甲信で梅雨明けとなった。例年とは異なり、北東風が強いため関東甲信が先に梅雨前線を押しやったが、東海から西にかけてはまだ梅雨明けのない地域があるという。気温が上がり、マスクを着けて歩くのが苦しくなる。感染防止と熱中症防止とのバランスが問われる。万一の発熱に医療機関はコロナか熱中症かの判断に迷うに違いない。それだけでも逼迫した医療機関への負荷が高まる。

 北米大陸の西海岸一帯を猛烈な熱波が襲い、山火事が住宅に迫っており、西欧各地では大雨による水害が住宅を直撃。20日には中国河南省で1時間に200ミリと想定を超える猛烈な雨が降り、鄭州市の地下鉄が水没、電源に引火してアルミ工場が爆発した。北半球の一連の異常気象は偏西風の蛇行に原因があると言われる。翌17日、東海と近畿が、19日に四国が梅雨明けし、猛暑となった。
 17日(土曜)、東京の新規感染者が1410人となり、4日連続で1000人を超え、かつ最多となった。18日(日曜)も1010人、19日(月曜)は727人と減ったが、20日(火曜)が1387人、21日(水曜)が1832人、22日(木曜・祝)が1979人、オリンピック開会式の23日(金曜・祝)が1359人と減る兆しが見えない。
 東京五輪を目前にして、選手や関係者の入国者が急増、そのなかに感染者がおり、水際対策の不備も指摘される。参加選手は過去最大規模の約1万1000人に上ると見られる。

【海外で変異株による感染急増】
 デルタ株の急増により、インドネシアで1日あたり5万人余の新規感染者が出ている。韓国、オーストラリア、タイ、ミャンマー等でも感染者数が急増、ワクチン接種の遅れが一因とされる。欧米でも感染が急拡大、とくに北米ではワクチン接種率の低い南部と北西部で拡がり、共和党支持層の多い地域のため、バイデン大統領(民主党)とトランプ前大統領(共和党)の確執と重なり、複雑な政治問題と化している。

 西欧では対策を強化するフランスやドイツの動きに対して、イギリスの規制緩和策が注目を引いている。4月5日、ジョンソン首相は記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染状況が改善しているほか、ワクチンを1回、接種した人が人口のおよそ47%の3100万人に達するなど接種計画も順調に進んでいるとして、厳しい規制を緩和すると発表した。具体的には変異ウイルスの拡大を受けてイングランド各地で12月下旬以降、順次導入してきた規制のうち、美容院や小売店の店舗での営業、飲食店の屋外での営業を4月12日から認めるとした。
 7月19日、イギリス政府が規制を撤廃したことに、市民からは不安の声も聞かれた。イングランドでは屋内でのマスク着用義務など、新型コロナウイルス対策の規制が、ほぼ全て撤廃された。一夜明けたロンドン市内では、自主的にマスクを着用する市民の姿が目立った。イギリスの新規感染者は連日5万人規模に達しているが、政府はワクチン接種が進み、重症化や死亡するケースは減っているとして、規制撤廃に踏み切った。
 ただ、世論調査では、66%の人が「何らかの規制を残すべき」と回答している。「ずっと慎重だったのに、突然全て解禁なんてどうかしてる」、「マスク完全撤廃は早すぎる気がするけど、永遠にはロックダウンできない」。ロンドン市などは、今後も地下鉄など公共交通機関でのマスク着用を義務づける方針という。

【バッハ会長の言動】
 IOC(国際オリンピック委員会)の第9代会長トーマス・バッハ氏が来日したのは7月8日。この日、政府や東京都などが参加した5者協議で、首都圏の会場を<無観客>とすることを決めた。バッハ会長は「感染が収まれば有観客でもいいのでは」と食い下がったが、日本側が押し切った形である。
 バッハ氏の宿泊先は「ミシュランガイド東京2021」でも5つ星を獲得している「The Okura Tokyo(オークラ東京)」である。どの部屋かは非公表だが、2019年9月に改築された同ホテルの本館には、「インペリアルスイート」と呼ばれる超高級スイートルームがあり、1室の広さが730平方メートル、1泊の料金は定価で300万円。招致委員会とIOCとの間に、『IOCが負担するのは1泊400ドル(約4万4000円)まで、差額は組織委員会が負担する』という取り決めがあったが、コロナ禍による経費の増大により、IOCが全額負担することで合意した。10日、オークラ東京の前で、五輪開催に抗議する市民が「バッハ帰れ」のデモをおこなった。
 IOCは、オリンピックに関する運営を統括する団体であり、オリンピックの商標、過去の大会の映像などの著作権その他の、オリンピック関連の知的財産権を国際的に保有するため莫大な収入源があることで知られているものの、その内情は不明な所が多い。その会長のバッハ氏(62歳)は西ドイツ出身で弁護士、モントリオールオリンピック(1976年)のフェンシング(団体)で金メダルを取った経験がある。母語のドイツ語のほかスペイン語、フランス語、英語を話し、来日後は主に英語を使い、時折、誤解を招きかねない発言をする。IOCの本部はスイスのローザンヌにあり、1894年に設立された。理事会は会長1名、副会長4名、理事10名の計15名で構成され、委員の定員は115名。
 8日に来日したバッハ氏は、特例措置に基づいて11日まで都内のホテルで隔離生活を送ると、13~15日には大会組織委員会の橋本会長、菅首相、小池都知事と3日連続で会談。16日には被爆地の広島市を訪れた。

 17日(土曜)、バッハ会長は今回の来日後初の記者会見に臨み、緊急事態宣言下で開催される東京オリンピックについて「日本の方は大会が始まれば歓迎してくれると思う。アスリートを温かく歓迎し、応援してください」と呼びかけた。新型コロナウイルスの感染拡大で開催への反発が強まる国内の状況との温度差を感じさせたものの、バッハ会長のペースで事が進んでいるようである。19日(月曜)、迎賓館でバッハ会長歓迎会が開かれ、菅首相ほか40人が対面参加した。

【東京五輪の不参加選手は少ない】
 19日(月曜)の日経新聞は、Tokyoモデル(上)として「パンデミック下の東京五輪、後世にモデル示せるか」を掲載し、次のように述べた。「近代五輪史上、初めて1年の延期を経て開催される祭典。昨年3月の延期決定時と異なり、選手たちから中止や再延期を求める声はほとんど上がっていない。15日にはテニスの四大大会を20度制したセルビアのノバク・ジョコビッチ選手が態度を保留していた東京五輪についてツイッターで「誇りを持って東京に向かい五輪代表に加わる。最高のメダルのために戦う」と参加表明。
選手たちが受ける制約は前例のないものばかりである。「この行動計画書では入国は認められない」。ある国の競技団体はフライト前日になっても、提出書類への対応に追われた。来日時に提出義務のある計画書に少しでも他の書類などとの食い違いや疑問があれば、日本側はそのつど書き直しを求めているという。
 入国後も厳しい措置が待ち受ける。行動範囲は選手村などの宿泊先、競技会場、練習場所に限定される。毎日検査を受け、自由な外出は禁止。行動に疑義があればスマートフォンの全地球測位システム(GPS)で全て明らかにされる。
 それでも、<スポーツがある日常>を取り戻すため、選手は厳しいルールを受け入れた。感染を拡大させないため現時点で取り得る最良の策が、選手と外部との接触を遮断する「バブル」方式しかないためである。組織委は首都圏など多くの会場を無観客とした。
 日経新聞の記事は次のように結ぶ。「商業化路線の下で肥大化した五輪も東京大会で一気に様変わりする。華美な装飾が消え観客のいない祭典は<アスリート・ファースト>という五輪の原点を問い直すものになるだろう。組織委などは試合を終えたばかりの選手を、来日できなかった家族とオンラインで結んだり、海外から届く応援動画を競技会場の大型ビジョンに映し出したりと、制約下に知恵を絞った「おもてなし」を試みる。東京大会の成功とは何か。メダルの色や数ではなく、アスリートがコロナ禍でも競技に集中でき<五輪の舞台に立ててよかった>と思えるかどうかだろう」と。

【チーム日本の特徴】
 日本は史上最多の583選手で臨む。57年ぶり2度目の自国開催を迎えるチームJAPANは、ただ大規模なだけではない。様々な個性が結集した選手団はまさに我々の代表であり、日本社会の映し鏡でもある。45年ぶりに五輪に出場するバスケットボール男子は、エースで父がアフリカのベナン出身の八村塁(ウィザーズ)をはじめ、12人のうち半数が海外にルーツを持つ。米国出身で日本国籍を取得したエドワーズ・ギャビン(千葉)や、両親が中国出身の張本天傑(名古屋D)、ハワイ出身で母が日本人の渡辺飛勇(琉球)らバラエティーに富んだ陣容だ。
 日本のウイークポイントになりがちな「高さ」を補える存在として、日本協会は日本国籍を持つ海外在住選手の発掘に取り組んできた。渡辺飛の代表入りはその成果。東野智弥技術委員長は「フィジカルで高さのあるゲームがバスケットボール。可能性のある選手は全て見ていく」と語る。
 バスケットに限らず、今回の日本選手団はかつてないグローバルな一団だ。陸上、柔道、トライアスロン、アーチェリーと、全33競技の過半数で海外にルーツを持っていたり、海外で生まれ育ったりした選手がいる。それは単なる<補強>の結果ではなく、社会の縮図といっていい。

【抗体カクテル療法】
 19日(月曜)、厚生労働省は中外製薬の新型コロナウイルス向け治療薬「抗体カクテル療法」の製造販売を特例承認した。国内のコロナ治療薬は4つ目。重症化リスクがある軽症、中等症の患者に使う。臨床試験(治験)では入院や死亡のリスクが7割減ったとされ、重症化抑制が期待される。軽症者用の薬は初めて。変異ウイルスが広がる中、ワクチン接種に続く新たな「武器」となる。
カシリビマブとイムデビマブと呼ぶ2種類の抗体を1回点滴する。ウイルス表面に結合して増殖を抑える。対象は持病や肥満などの重症化リスクがあり、酸素投与を要しない症状の患者となる。添付文書ではインド型(デルタ型)などの変異ウイルスにも効果があることが示唆されるとの見解を示した。20日から各地の医療機関に配送を始める。
 この薬品は、米バイオ企業のリジェネロン・ファーマシューティカルズが作った新薬で中外の親会社、スイス・ロシュが開発に協力した。トランプ前米大統領も感染時、特別に投与を受けた。その後、米国食品医薬品局(FDA)が20年11月に緊急使用許可を出し、使われている。中外は6月の申請時、海外で先行する医薬品の審査を簡素化する「特例承認」を希望した。中外は国内での治験や販売を担当、生産は海外である。

【猛暑のなかの東京五輪】
 20日(火曜)午前、都内でIOC総会が開かれ、菅首相は「多くの会場は無観客の開催だが、東京大会の意義は決して損なわれない」と述べた。マスコミの扱いは小さく、世論も冷ややかである。私の知人はフェイスブックで、「IOC総会でのバッハ会長の言葉。「今回は日本人の忍耐強さを示す大会になる。日本も輝く時だ」。こんな言葉を聞かされて納得する国民がどれだけいるだろうか。日本が輝くかどうか、あなたに言われたくない」と書いている。これに合わせるかのように、全国的に猛暑日となり、<熱中症警戒アラート>が各地に出ている。

 試合となれば話が違う。21日(水曜)、福島あづま球場で、午前9時からソフトボール(女子)の日本が1次リーグでオーストラリアと対戦(無観客)、エース上野由岐子(ビックカメラ高崎)が先発した。上野は一回に1死満塁のピンチを招き、押し出し死球で先制点を許したが、日本は一回裏に山本優(同)の適時打で同点。三回に内藤実穂(同)の2ランで勝ち越すと、四回に藤田倭(同)の2ラン、五回に山本の2ランなどで加点し、8-1でコールド勝ちを収めた。前回競技が実施された2008年北京五輪以来、13年ぶり。出場6カ国が総当たりの1次リーグを実施。1次リーグの1位と2位が決勝戦、3位と4位が3位決定戦に進出する。
 21日夕、サッカー女子が始まり、日本代表「なでしこジャパン」が午後7時半から札幌ドームで、1次リーグ初戦のカナダ戦に臨み引き分けた。なでしこジャパンは前回リオデジャネイロ五輪の出場を逃しており、銀メダルを獲得した12年ロンドン五輪以来の出場となる。
 22日(木曜・祝)、サッカー(男子 1次リーグ A組)で日本が1対0で南アフリカを破った。猛暑のなか久保健(レアルマドリード)の左足が均衡を破り、白星発進となった。またソフトボール(女子)では、延長8回のタイブレークの末に、日本がメキシコを3対2で破り、2連勝とした。

【百年前のパンデミック下の五輪】
 22日の日経新聞は、藤井彰夫論説委員長が「五輪開幕へ 100年前にもあったパンデミック下の大会」を発表、「1920年にベルギーで行われたアントワープ五輪も、スペイン風邪のパンデミック(世界的大流行)を乗り越えての開催だった。第1次世界大戦も終わったばかり。多大な困難を乗り越えて開かれた約100年前の五輪には、どんな思いが込められ、どう評価されたのだろうか」と書き、さらに「2014年から18年まで続いた大戦はヨーロッパが戦場となって約1800万人が犠牲になり、スペイン風邪では20年の収束までに4000万人以上が亡くなったとされる」なか「始まってまだ20年余りの近代五輪は、ベルリンが開催地だった16年大会が戦争で中止になり、存続のピンチを迎えていて…2大会続けてできなかったら、五輪は終わっていた可能性もあった」とする。
 当時の国際オリンピック委員会(IOC)会長は創設者のクーベルタン。会長のリーダーシップと、後に第3代会長に就任するベルギーのIOC委員、ラトゥールの尽力で19年4月にアントワープ大会の開催が決まり、大会には過去最多の29カ国が参加した。8月14 日の開会式で、クーベルタンがデザインした世界5大陸の団結を示すオリンピック・シンボル(五輪旗)が初めて掲揚された。
そして次のように記事を結ぶ。「23日の開会式は史上初めての無観客となる。祝祭感のない静寂のスタジアムでの簡素化された式典で、五輪旗の登場に匹敵するような、原点に立ち返った五輪の真の価値を示すメッセージの発信を期待したい。…20年後、30年後、いや100年後も五輪が平和の祭典として存続したとき、それは東京大会があったからだと評価されるように」。

 この22日で政府の観光支援策「Go To トラベル」事業が始まって1年がたつ。新型コロナウイルスの感染拡大で昨年末に全国一律で停止され、予算の半分ほどが残ったままである。政府の無策のためか、それとも変異ウィルスをはじめ予測不能な事態が進展しているためか。

【首都圏の感染拡大 止まらず】
 20日(火曜)、東京都内で新たに1387人が新型コロナウイルスに感染していることが確認された。1週間前の火曜日より500人以上増え、感染の急拡大が続いている。また現在確保している病床に占める入院患者の割合は、ことし5月以来、40%を超えた。オリンピック開幕を直前に控えた東京都内の感染状況について、都の「専門家ボード」の座長を務める東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は、「これまでで最大の危機を迎えている」と述べ、しっかりとマスクをつけて人と人が出会う機会を少なくするなど、対策を取るよう訴えた。
 賀来特任教授は、東京都がいま抱える大きなリスクとして、①緊急事態宣言が出ているのに人出が十分に減少していないこと、②マスクの着用など対策が十分ではないこと、③感染力が強いインドで確認された変異ウイルス「デルタ株」が広がっていること、それに④4連休、夏休み、東京オリンピックが始まり、人の動きが活発になることの4点を指摘した。
 また年末から年始にかけての感染拡大の第3波で医療がひっ迫した時期の経験から東京都内での入院患者数は2600人を超えると医療のひっ迫が起きるとされるが、6月下旬から倍増し、すでに2300人となり、厳しい状態になりつつある。賀来氏は「今、東京都は、これまでで最大の危機を迎えていると思う。今回は、1日の感染者数が3000人を超える感染が起こりえる可能性があり、非常に危惧している。全国に波及する可能性もあり、全国でも比較的若い人が入院することがあると思うので医療体制が逼迫しかねない」と述べた。
 21日(水曜)、都内の新規感染者は、1832人と1月16日以来の1800人超えとなった。さらに22日(木曜・祝)は1979となった。1900人を超えるのは1月15日(2044人)以来で、過去5番目に多い。前週の木曜日(15日)より671人多く、前週の同じ曜日を上回るのは33日連続。22日までの1週間平均の新規感染者数は1373・4人で、前週の155・7%。

【東京五輪開閉会式のディレクター小林賢太郎氏を解任】
 22日の【ロサンゼルス時事】によると、米国の反ユダヤ活動監視団体サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)は21日、東京五輪の開会式と閉会式のショーディレクターを務める元お笑い芸人、小林賢太郎さん(元ラーメンズ)について、過去に「反ユダヤ的なジョークや障害者へのいじめ」をしていたとして非難する声明を発表した。声明などによると、小林さんは、ラーメンズとして活動していた1998年、コントでナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人虐殺)をネタにし、「ユダヤ人大量惨殺ごっこをやろうって言った時のな」と発言していたとされる。
 SWCのエイブラハム・クーパー氏は「どれだけクリエーティブな人物であろうが、ナチスの大虐殺の犠牲者をあざ笑う権利はない」と指摘。「この人物が五輪に関わることは、(ホロコーストで犠牲になったとされる)600万人のユダヤ人の記憶を侮辱し、パラリンピックを残酷にあざけることになる」と強調した。 
 同じ22日の朝日新聞によれば、東京オリンピック(五輪)の大会組織委員会は22日、東京五輪で開閉会式のディレクターを務める小林賢太郎氏(48)を解任したと発表した。小林氏はお笑いコンビ「ラーメンズ」として活動し、現在は舞台作品などの企画・脚本を手がけている。ラーメンズ時代のコントで「ユダヤ人大量虐殺ごっこ」と発言した動画がインターネット上で拡散し、批判が集まっていた。
 組織委の橋本聖子会長は22日の記者会見で、過去のコントでの発言を把握した21日深夜から22日朝にかけて協議したと説明し、「外交上の問題もある。早急に対応しなければいけないということで解任ということになった。大変反省している」と述べた。組織委は同日「過去に、歴史上の痛ましい事実を揶揄(やゆ)するせりふを使用していたことがわかった」と解任の理由を説明した上で、「開会式が目前に迫る中、このような事態となり、多くの関係者、都民・国民の皆さまにご迷惑・ご心配をおかけしたことを深くおわび申し上げます」とするコメントした。19日に最悪の形で五輪開会式の楽曲担当を退いた小山田圭吾氏に次ぐ連続の事件である。小林氏は組織委を通じて、「不快に思われた方々に、おわびを申し上げます。申し訳ありませんでした」とするコメントを発表した。
【東京五輪の開会式】
 東京五輪の開会式にあわせて実現した4連休が22日(木曜・祝)に始まると、本来なら五輪モードにシフトするはずが、コロナ禍で外出自粛が呼びかけられ、競技も原則無観客に。代わりに都県境をまたぐ移動自粛が呼びかけられる中、五輪と関係なく連休を楽しもうという人々で行楽地はにぎわい、東京から「脱出」しようという動きが見られた。
 22日、羽田発の便が混雑し、予約率は日本航空が約80%ほどとみられ、全日空は午前中だけで約95%にのぼった。高速道路も都外に向かう車などで、下り線を中心に混雑した。日本道路交通情報センターによると、中央道は藤野PA(神奈川県)を先頭に約46キロの渋滞が発生。関越道の東松山IC(埼玉県)から約41キロ、東名高速の伊勢原JCT(神奈川県)から約38キロの渋滞が起きた。

 23日(金曜・祝)昼、東京の上空を航空自衛隊機ブルーインパルスが飛び、五輪旗を描く。ブルーインパルスとは華麗なアクロバット飛行(展示飛行)を披露する専門チームの名称で、正式には宮城県松島基地の第4航空団に所属する「第11飛行隊」。青と白にカラーリングされた6機の機体が、大空で展開する一糸乱れぬフォーメーション、そしてダイナミックなソロ演技をくり拡げた。

 東京五輪の開会式は午後8時から、国立競技場(収容6万8000人)において無観客で行われた。205の国や地域から参加した選手たちが、それぞれ旗手二人を先頭に入場する姿は感動的である。国内外関係者を大幅に減らし、IOC委員やスポンサー等、950人に減らした。開会式の最大の見どころは聖火台への最後の点火である。
 聖火リレーの最終走者を誰にするか。5年前のリオデジャネイロ五輪から引き継いだ火をギリシャから空輸して福島につなぎ、日本全国を回って東京につないだ。さまざまな候補者が取り沙汰されており、式典の演出側の意図をくみながら最終的に組織委が人選する。スポーツ界のレジェンドが会場内で聖火をつなぐ。
 場内では、レスリングで3連覇の吉田沙保里さんから柔道3連覇の野村忠宏さん、ついでプロ野球で活躍した長嶋茂雄さんと王貞治さん、そして米大リーグでも活躍した松井秀喜さんへと聖火はつながれ、最終ランナーはテニスの大坂なおみ選手であった。
この順になった理由を23日夜の朝日新聞デジタルが次のように伝えた。
 …今年3月から式典の運営責任者についた日置貴之氏は取材に「開会式ではダイバーシティー&インクルージョン(多様性と調和)の精神を伝えたい」と語っていた。さらに、「(五輪への批判も含め)様々な受け手の思いがある中で、僕らには時代に合わせたアジェンダ(課題)を設定することしかできない。この先の4年間、日本の人たちが式典をきっかけに、多様性を考えるきっかけになればうれしい」と話していた。…そうした流れで白羽の矢が立ったのが世界的なスター選手で、人種差別問題にも声をあげている大坂だった。 難点はテニスの試合が開会式翌日から組まれていたことだった。ある組織委幹部はこう明かしていた。「あるアスリートを最終走者に選ぼうとしたら、その競技団体は『金メダルを狙っているから、困る』という反応だった。それで、選手の負担になってはいけないのでやめようかとなったんだ」。
 それを聞いた組織委の橋本会長はこう言ったという。「もし私が選手なら、勝手に最終走者から降ろされるのはかえって嫌です。本人が嫌ならまだしも、きちんと本人と話すべきでは」と。アルベールビル冬季オリンピック(1992年)のスピードスケート女子1500m銅メダリストであり、夏冬あわせて五輪に7回出場している元アスリートの言葉には説得力があり、一同納得したという。

【1824機のドローンのショー】
 開会式で夜空を彩った1824機のドローンのショーは、見る人に大きな驚きと感動を与えた。一糸乱れぬパフォーマンスの裏で、ドローンは電波を通じて一体どんな「会話」をしながら演じていたのか。約4分30秒にわたるドローンのパフォーマンスで1824機が一斉に飛び立ち、夜空に東京大会の「市松エンブレム」をLEDの光で描くという演出。
 25日の朝日新聞デジタルによれば、日本を代表するホワイトハッカー、杉浦隆幸さん(46)の解析を聞く。杉浦さんはサイバー攻撃からコンピューターシステムを守る情報セキュリティー対策の全般に詳しく、特に最近は暗号資産やドローン、医療分野のセキュリティーに注力する。9月に発足するデジタル庁のセキュリティーチームにも加わる。杉浦さんいわく、1824機のドローンのショーは、
2018年の平昌大会でも1200機以上のドローンでショーをサポートしたインテル社が、さらに性能を上げた最新型ドローンだと言う。コンピューターの中央演算処理装置(CPU)メーカーというイメージが強いインテルだが、実はドローン事業でもここ数年、世界をリードしている。

【日本勢の金メダル】
 各競技で熱戦が展開される。テレビのチャンネルを切り替えつつ視聴、アスリートの無言の熱気が伝わってくる。その一つ一つを取り上げたいとも思うが、ここでは日本勢の金メダルに限定して掲載したい。
 2日目の24日(土曜)、柔道の競技が始まり、男子60キロ級の高藤直寿(パーク24)が初優勝を飾り、今大会の日本勢金メダル第1号に輝いた。
 3日目の25日(日曜)、もっとも苛酷な競技と言われる競泳の女子400メートル個人メドレー決勝で、大橋悠依(イトマン東進)が4分32秒08で優勝した。今大会の競泳陣で初であり、この種目では日本初である。
 また新競技スケートボードの男子ストリートで堀米雄斗(XFLAG)が37.18点で初代王者に輝いた。
 女子52キロ級で妹の阿部詩(日体大)は決勝でアマンディーヌ・ブシャール(フランス)を破り金メダル、ついで柔道男子66キロ級の阿部一二三(パーク24)がバジャ・マルグベラシビリ(ジョージア)を下して金メダル、兄妹ならんで優勝を果たした。

【世論調査で菅内閣の支持率が最低を更新】
 25日(日曜)、日本経済新聞社とテレビ東京が23~25日に実施した世論調査の結果が公表された。菅内閣の支持率は前回調査の6月から9ポイント低下の34%で、2020年9月に政権が発足してから最低となった。「支持する」割合を世代別に見ると、18~39歳は41%、40~50代は32%、60歳以上も32%だった。政府の新型コロナウイルスワクチンの接種計画について「順調だとは思わない」との回答が65%と6ポイント上昇した。


 この間、以下のテレビ番組を視聴した。(1)週刊ワールドニュース(7月5日~9日)7月10日。 (2)NHKスペシャル 2030年 未来への分岐点(5)「AI戦争 果てしなき恐怖」11日。 (3)クローズアップ現代+「大谷翔平! 歴史を作る大旋風・規格外の魅力解明」14日。 (4)歴史探訪「戦争とエンターテインメント」14日。 (5)プレミアムカフェ「ガラスの宮殿~ヨーロッパ温室紀行~(2001年 再)」15日。 (6)ストーリーズ「北角裕樹が見たミャンマークーデター」17日。 (7)週刊ワールドニュース(12日~16日)17日。 (8)BS1スペシャル「コロナ新時代への提言 2 福岡伸一×藤原辰史×伊藤亜紗」18日。 (9)BS1スペシャル「コロナ新時代への提言 3 それでも、生きてゆける社会へ」18日。 (10)NHKスペシャル タモリ×山中伸弥「超人たちの人体~アスリート限界への挑戦」19日。 (11)先人たちの底力 知恵泉「金のなる布・メイドイン オールドジャパン 絹で生き抜け」20日。 (12)BS1スペシャル「独占告白 渡辺恒雄~戦後政治はこうして作られた 平成編~(聞き手:大越健介)」23日。 

人類最強の敵=新型コロナウィルス(39)

 6月16日(水曜)昼の時点で掲載した前号(38)の翌17日から、ふたたび大きな動きがあった。
 6月17日(木曜)、政府は新型コロナ対策本部で新型コロナウイルスの緊急事態宣言について、沖縄を除く9都道府県は期限通り20日で解除すると決め、そのうち東京や大阪など7都道府県は宣言に準じる「まん延防止等重点措置」に移行する。ワクチン接種の拡大を踏まえ、制約を段階的に緩和する。重点措置の対象は現在の埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県と合わせ、計10都道府県になる。沖縄県への宣言は継続する。いずれも7月11日を新たな期限とした。
 重点措置地域の飲食店には営業時間を午後8時までとするよう要請する。酒類提供は「一定の要件」を満たせば午後7時まで認める。十分な換気やアクリル板の設置、一組あたりの入店を4人までにするといった条件を示した。感染防止対策を第三者が確認した認証店でも酒類提供可能とした。実際に認めるかどうかは自治体側の判断となる。埼玉、千葉、愛知、福岡各県は午後7時までの提供を認める。兵庫県は平日午後7時まで、土日・祝日は自粛を促す。
 同日の新型コロナ対策本部会議で同上のことを決定する。酒類提供の条件には、感染防止対策に取り組んでいることを示す都のステッカーの掲示や、店舗の感染防止対策責任者として都が登録を求める「コロナ対策リーダー」が研修を終えていることも加える方向である。感染状況が国の指標で「ステージ4(爆発的な感染拡大)」が視野に入った場合は酒類提供の全面停止を要請することも想定している。
 カラオケ設備の利用は当面自粛を求めるが、感染状況やワクチンの接種状況を踏まえ知事の判断で緩和できるようにする。百貨店や映画館などの大型商業施設についても感染が広がらないように入場整理を働きかける。時短営業や土日の休業要請について、知事が決める仕組みを続ける。また東京都や大阪府は百貨店などの土日の休業要請を緩める検討をしている。
 政府は時短営業の要請にこたえた店舗への協力金が飲食店などに行き届いていない現状を踏まえ、実務にあたる自治体に体制強化を促す。基本的対処方針に「都道府県は協力金支給の迅速化に努める」と記した。イベントの観客上限は収容人数の50%かつ5千人を維持する。重点措置の解除後1カ月程度は1万人を上限とする経過措置をとる。
【菅首相の記者会見】
 17日夜、菅首相は首相官邸で記者会見を開いた。20日が期限の新型コロナウイルスの緊急事態宣言について、沖縄を除く9都道府県で解除すると決めた理由を説明した。このうち東京や大阪など7都道府県は宣言に準じる対策がとれる「まん延防止等重点措置」に移行させるが、引き続き感染対策へ協力するよう国民に呼びかけた。首相は「ほとんどの都道府県で新規感染者数はステージ4を下回っている。全国の重症者数も減少が続き病床の状況も確実に改善されてきている」と指摘した。同時に「地域によっては感染者数に下げ止まりがみられる。変異ウイルスにより感染が従来より速いスピードで進むことが指摘されている」と語り、感染対策の継続を訴えた。
 宣言延長や重点措置への移行については「多くの皆さまに引き続き制限をお願いすることは大変心苦しい限りだ。安心できる日常を取り戻すため、ご理解とご協力を心からお願いする」と述べ、宣言解除後も「高い警戒感を持って対策を続けていく」と強調した。
 感染の再拡大で医療逼迫の兆しがみられた場合、酒類提供の一律停止やイベントの人数制限の強化などで「機動的に対処する」とし、「何よりも警戒すべきは大きなリバウンド」であり、人の移動が多くなる夏休みには「状況を見ながら必要であれば緊急事態宣言やまん延防止措置をとる」。また「一日も早く希望する方へのワクチン接種を進め、医療崩壊を起こさない」との方針も示し、「若い方々も含めて希望する全ての対象者への接種に政府を挙げて取り組む」と強調。
 接種状況に関しては「累計は2700万回を超え、一度でも接種した人は2000万人を超えた…この1週間で合計730万回、1日平均100万回を超える。…今月末に4000万回を超え、すべての市町村で7月末には希望する高齢者への2回接種が完了する見込みだ」と語った。
 21日から始まる大学や職場でのワクチン接種は「3123カ所、1280万人分の申請があると報告を受けた」と語った。
 東京五輪・パラリンピックの開催には改めて意欲を示した。「40億人がテレビなどを通じて大会を観戦する。東日本大震災から復興を遂げた姿を世界に発信し、子どもたちに夢や感動を伝える機会になる」。開催期間中に国内の感染拡大を抑え、大会終了後も感染拡大防止につなげていくことは「不可欠」であり、「(ワクチン接種に)拍車をかけ、感染リスクを軽減しながら進めていきたい」と主張した。観客を入れることを前提に「観客は常時マスクをして大声の応援は禁止される。会場の直行直帰も大切になる」と述べる。
 五輪を中止しない理由を聞かれると「ノー(と言えないこと)でもプライドでも経済でもない。…日本は外国から来た人にしっかり感染対策を講じることができるから。…開催責任に関しては「最終決定権は国際オリンピック委員会(IOC)にあるが、国民の安全、安心、命と健康を守るのは私が責任を持つ」。スポーツイベントなどの人数制限については「まん延防止措置が解除された後も人流を抑える。東京五輪の人数上限はこうしたルールに基づくことを基本に決定する」とも言う。
 また財政健全化への取り組みを聞かれると「経済あっての財政という考え方に基づき、まずは新型コロナを収束させ、…成長志向の政策を進めて経済再生に取り組む姿勢のもと、財政健全化の旗は降ろさず、これまでの努力を続けたい」と強調した。18日に閣議決定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)については「ポストコロナにふさわしい、安心できる社会と強い経済を早急に作り上げ、…国主導の病床確保や、治療薬・ワクチンの迅速な実用化に取り組む」と訴えた。

【東京五輪に関する専門家の見解】
 17日の毎日新聞は、「東京五輪<感染拡大の予兆あれば無観客に> 尾身氏ら専門家提言へ」の見出しで、次のように述べた。
 政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」などの専門家有志が、東京オリンピック・パラリンピックによる感染拡大リスクを評価する見解案をまとめた。観客を入れる場合は、政府の大規模イベントの人数制限よりも減らし、感染が広がる予兆があれば無観客にすることを推奨、会場内の感染リスクが最も低いのは無観客での開催とした。専門家らは、18日にも政府と大会組織委員会に見解を提出する方針である。
 尾身会長など感染症・医療の専門家らの有志グループは、4月ごろから五輪のリスク評価を進めて、提言としてまとめる方針を示しており、政府は当初、それに水面下で難色を示していたが、現在は受け入れる姿勢を示している。
 見解案によると、会場内の感染対策について、無観客が最もリスクが低いとし、観客数が増えるほど対策の徹底が難しくなるとした。観客を収容するならば、▽大規模イベントの収容数に関する政府の基準より観客数を厳しくする、▽都道府県を越えた移動を抑えるため観客は開催地の人に限定する、▽感染拡大と医療機関の逼迫(ひっぱく)の予兆があれば無観客にする―ことを勧めている。
 感染状況の見通しについては、感染の再拡大が見込まれる7~8月に五輪と夏休みが重なり、全国的に人の動きが活発になると、感染がさらに広がるリスクがあると指摘。観客の収容方法によっては国民に「感染対策を緩めてもいい」との矛盾したメッセージが伝わる恐れがあるとして、大会主催者側に慎重な対応を求めた。
 会場外での応援方法については、パブリックビューイングなど応援イベントや街頭の大型ビジョンでの中継放送の中止、応援を主目的にした飲食店での観戦の自粛を提案。感染症が流行している状況でのスポーツ観戦のスタイルとして、自宅でのテレビ観戦などを勧めるよう促した。
 政府に対しては、感染拡大の予兆があれば五輪開催中であっても、ためらわずに緊急事態宣言など「必要な対策を取れるよう準備し、タイミングを逃さずに実行」するよう求める。一方、専門家らは五輪の開催について判断する立場にないとしており、開催の是非には言及しなかった。
【東京都の方針】
 18日(金曜)になって、東京都では引き続き飲酒の自粛を求めるべきだとの議論を経て、飲食店の酒類提供を条件付きで容認する方針を固めた。新型コロナウイルスの緊急事態宣言下では提供の取りやめを要請していたが、宣言に準じる「まん延防止等重点措置」に移行する21日以降、2人以下や滞在90分以内などを条件に午後7時まで認める。対象区域として東京23区と多摩地域の一部市町を指定する。
 同じ18日、2019年7月の参院選前後に広島選挙区の計100人に約2900万円を配ったとして公職選挙法違反(加重買収など)の罪に問われた元法相で元衆院議員の河井克行被告(58)に対し、東京地裁(高橋康明裁判長)は懲役3年、追徴金130万円(求刑懲役4年、追徴金150万円)の実刑判決を言い渡した。

 21日(月曜)から コロナ対策リーダーネットで研修を受けた飲食店にコロナ対策リーダー資格を付与、東京に12万軒あるうち11万軒が取得済みで、夕方7時まで酒類の提供可、2人以下で90分以内と決めた。

【揺れる政府の東京五輪対応】
 同じ21日、菅首相は都内の視察先で記者団の質問に答え、7月から始まる東京五輪・パラリンピックについて、期間中に緊急事態宣言を再発令するような事態になれば無観客での実施もあり得るとの考えを示した。「安全・安心のために無観客というのは辞さない」、新型コロナウイルスの感染状況次第で「無観客というのも臨機応変に行うと考えながら、国民の安全・安心を最優先にする大会にしたい」とも述べた。
 政府はイベント開催の人数制限に関し、宣言や「まん延防止等重点措置」の解除から1カ月程度は「定員の50%以内かつ上限1万人」とする経過措置を適用する。加藤官房長官は21日の記者会見で、感染状況を踏まえ、五輪と関係なく「感染対策上、必要な措置を講じる。五輪も含めて対応してもらうのが基本だ」と話した。大会組織委員会の橋本聖子会長は18日の記者会見で、7月23日の五輪開幕までに宣言や重点措置が解除されなければ「無観客も覚悟しておかなければならない」と語る。
【ワクチン接種の推進】
 21日からワクチンの職場や大学での<職域接種>が始まった。この日の段階でワクチンを1回接種した人数が全国で2000万人を超え、ワクチン接種率(人口に対する接種者の比率)が全国平均18%(小数点以下四捨五入)となり、うち2回の接種を終えた人は7%。これを都道府県別で見ると、接種率が高く20%を超えたのが和歌山、山口、佐賀、高知であり、低いのは沖縄の10%である。
 ワクチン問題を兼務する河野大臣も<職域接種>の一つとして霞が関の官庁で1回目の接種を終え、左腕に筋肉痛が残ると話した。若い人たちへの接種拡大の方法が議論の対象となってきた。今後、12~15歳の子どもに対しても接種が広がっていく見通し。高齢者に比べ、感染で重症化する可能性は低いとされるが、接種するか否かを各人が判断するために、有効性と安全性の正確な情報発信が重要となる。
 ファイザー製の対象は当初16歳以上だったが、12~15歳を対象にした追加の試験が行われ、ワクチンによって十分に有効性が認められたため、6月1日からは12歳以上の子どもにも接種できる。ただ、接種後の痛みや発熱といった反応は、若い人ほど出やすいとされている。ファイザー製を接種した国内の医療従事者約2万人を調べた中間報告によると、37・5度以上の発熱や頭痛、倦怠(けんたい)感の頻度は、年齢が若いほど高まる傾向がみられている。日本小児科学会は、「できれば(学校での接種ではなく)個別接種が望ましい」と見解を表明した。
 22日(火曜)、萩生田文科相は中学生、高校生へのワクチン接種を巡り、学校での集団接種を「現時点では推奨しない」とする指針をまとめ、全国の自治体に通知する方針を明らかにした。原則として、かかりつけ医や自治体が運営する接種会場などでの接種を促す。中高生が個別接種を基本とすることが決まったことで、政府は全ての世代でワクチン接種を加速させ、感染拡大を抑止したい考えである。
 23日(水曜)、河野大臣がワクチンの<職域接種>の受付を明後日から一時中止すると表明した。想定以上の申し込みがあり、ワクチン供給が追い付かない可能性が出てきたため、申し込みを精査すると表明した。
 24日(木曜)、東京都の小池知事が過労のため入院。30日(金曜)、なお加療を要するとして退院できず、7月1日(木曜)に公務に復帰し、リモートで参加した会議では、新規感染者数の7日間平均が前回から120%増加、「感染が再拡大していると考えられる」との分析が示された。緊急事態宣言解除後10日間で、繁華街の夜間の人出が21.5%増え、「第4波よりも早いペースで、感染状況が悪化する可能性がある」としている。なお都議選は25日(金曜)に告示、投開票日は7月4日(日曜)と目前に迫っている。
【横浜市長選に異例の立候補者】
 26日(日曜)、8月に予定される横浜市長選に関連して、現職の国家公安委員長である小此木八郎氏(自民党神奈川県連会長)は、閣僚と国会議員の地位を捨てて、横浜市長選に立候補すると表明した。大臣を辞めて横浜市長選に立候補という政治判断は驚きを呼んだが、小此木氏はその場で「私の最初の仕事は、IRの誘致を取りやめることであります」と述べてさらに世間を驚かせた。もっとも言質は取られないようにと、「IR自体は賛成だが、横浜では信頼が得られず、環境が整っていない」とも付け加えた。
 周知の通り、菅首相は11年にわたり小此木八郎氏の父・彦三郎氏の秘書をつとめ、横浜市議となり実力政治家への扉を開いた。さらに小此木八郎氏を中選挙区時代の彦三郎氏の地盤、旧神奈川1区で当選させた。そして自らは小選挙区制となった1996年の衆院選に神奈川2区から出馬して初当選。菅氏にとって、16歳下の八郎氏は子供のころから知る弟のような存在である。
 菅氏と小此木氏より2回りほど上の世代で、横浜政財界に強い影響力を持つ人がいる。横浜港運協会前会長で、港湾荷役業「藤木企業」会長の藤木幸夫氏(90歳)。藤木氏は2019年7月、カジノなしで国際展示場や高級ホテルを設ける独自の開発計画を推進するため「横浜港ハーバーリゾート協会」を設立した。その後の記者会見で、「菅さんとはとっても親しいですよ。彼も俺を大事にしてくれるし。ただ、今は立場がね。安倍さんの腰ぎんちゃくでしょ。安倍さんはトランプさんの腰ぎんちゃくでしょ…安倍も菅もトランプさんの鼻息を窺ったりね。さびしいけど現実はそうでしょ」と語り、IRカジノ推進の背後に「ハードパワーがある」と言い、トランプ、安倍、菅の名をあげて、黒幕たちの存在をにおわせた。
 藤木氏の強いカジノ反対説と菅氏のカジノ推進説、そのはざまで起きた小此木氏の市長選への立候補表明、こうした状況下で横浜市民は貴重な一票を投じることとなる。なお5月末、横浜市はIR事業者を公募。「ゲンティン・シンガポール」「セガサミーホールディングス」「鹿島建設」の連合と、「メルコリゾーツ&エンターテイメント」「大成建設」の連合から応募があった。この夏には事業者が選定される運びになっているが、これを推進してきた林市長に代わる新市長の誕生となれば、先行きは甚だしく不透明となる。
【東京五輪は無観客か?】
 30日(水曜)の朝日新聞デジタルは、「五輪無観客に現実味 東京の感染拡大、いら立つ政権幹部」の見出しで次のように伝えた。
 新型コロナウイルスは5度目の感染拡大となるのか。新型コロナ対策を厚生労働省に助言する専門家組織は30日の会合で、特に東京都での感染の広がりに強い懸念を示した。開幕が迫る五輪は、無観客開催が現実味を帯び始めている。
 東京で感染状況が改善する兆しは見えず、7月11日に期限を迎える「まん延防止等重点措置」を解除する理由が見当たらない。そんな現状に政権幹部らはいら立ちを募らせる。
 12日以降のコロナ対応をどうするかは、その11日後(23日)に開幕する五輪のあり方に影響する。国民の暮らしを引き続き大きく制限するとなれば、菅首相らがこだわってきた有観客開催は難しくなるとの声が、首相官邸内でも上がり始めている。
 政府や東京都、大会組織委員会などは6月21日、観客について重点措置が解除されることを前提に「上限1万人」とすることで合意した。だが、同時に、緊急事態宣言が出るか重点措置が延長された場合は、「無観客も含めた対応を基本とする」とした。この決定について政府内からは、「宣言下では無観客、重点措置下ではその時の政治判断」といった解釈が漏れ聞こえる。コロナ対応にあたる幹部官僚は「官邸には観客を入れたくて仕方ない人も多い。ギリギリの判断になる」と言う。
 7月1日朝のテレビ朝日によれば、「政府は10都道府県に出されているまん延防止等重点措置について、東京など首都圏の4都県での延長も視野に検討に入った。…東京の感染者数が再び増加傾向にあるなかで、政府内では11日の解除は困難との見方が強まっている。…官邸関係者は<1都3県は一体で判断する>と話していて、8日にも最終決定する方向で調整している。…2週間以上の延長となる場合は23日の東京オリンピックの開幕をまたぐため、政府や都、IOC(国際オリンピック委員会)は無観客開催も含め観客数の再検討を行うことになる」。
【異常気象+人災】
 29日(火曜)、北米の太平洋沿岸地域は現在、米オレゴン州からカナダ北極圏にかけて熱波に見舞われているが、カナダのブリティッシュコロンビア州リットン(Lytton)で49.5度を記録し、3日連続で同国の観測史上最高気温を更新した(気象当局の発表による)。
 一方、日本列島は梅雨前線に伴う、長時間にわたる降雨被害が起きている。激しく降る雨ではないため、つい油断しがちであるが、3日(土曜)午前、静岡県熱海市で大規模な土石流が発生、町を飲み込みつつ流れ下る動画が流れた。谷の最上流部にあった人工の盛り土部分が崩れたことがきっかけとみられる。上空からの映像では、幅約60メートルにわたって地面がえぐれ、黒や茶色の地肌がむき出しになっている様子が見て取れた。
 谷を埋める場合は排水管などを設置して水はけをよくするが、排水能力を超える量の雨が長時間にわたって降る、あるいは管が詰まると、地中に水がたまりやすくなる。専門家は「施工状況の確認が必要」と指摘した。異常気象に加え、<乱開発>による<人災>が重なった。
 警察、消防、自衛隊等が懸命の救出作業と安否確認を行っているが、事件発生から3日が経とうとしている5日(月曜)現在でも被害実態がなかなか分からない。そこで住民基本台帳と安否確認済の人を引いた残りの108名を行方不明者として公開、個別確認に踏みきった。6日(火曜)も1000人態勢で捜索活動をつづけているが、なお25名の所在が不明である。7日(水曜)になっても安否不明の方の数が変わらない。断水もつづき、復旧の見込みが立たない。1週間経った9日晩、安否不明者は依然として20人である。
【中国共産党創建100周年記念式典】
 7月1日(木曜)、午前8時(日本時間午前9時)、中国共産党100周年の記念式典が行われた。天安門に中国の礼服「中山服」を着た習近平国家主席が現れると、白髪の胡錦濤前国家主席や胡政権で首相を務めた温家宝氏(78)らが後につづく。胡氏が公の場に姿を現すのは2019年10月に同じ場所で開かれた建国70周年の記念式典以来。ただ、2年前の式典には出席していた江沢民元国家主席(94)の姿はなく、高齢を理由に参加を見送ったとみられる。
 習氏は演説で「香港での全面的な管轄権を持ち、台湾独立のたくらみを断固として粉砕しなくてはいけない」と強調。米国を念頭に「外部勢力が私たちをいじめ、圧迫することも決して許さない」と米国に対抗する姿勢を鮮明にした。習氏の演説は約1時間。米国が支援を強化する台湾について、「祖国の完全統一を実現することは共産党の歴史的任務である。…国家主権と領土を完全に守る決意や強大な能力を見くびってはならない」と力強く述べると、天安門広場から大きな拍手と歓声が湧き起こった。
 香港や台湾、新疆ウイグル自治区を巡って対立を深める米国に対抗する姿勢を明確に示した。米国が共産党の支配体制に問題の根源があると党を標的にすることに対して、習氏は「共産党と国民を分割して対立させる企ては絶対に思いのままにならない」と反論。米国を念頭に「偉そうな説教は絶対に受け付けない。…いかなる外部勢力が私たちをいじめ、圧迫することも決して許さない」と強調。軍事力についても「世界一流の軍隊をつくりあげ、より強大な能力で、国家の主権、安全、発展の利益を守りぬく」と述べた。
 香港国家安全維持法(国安法)が施行されて1年が経過した香港については、高度の自治を認めた「一国二制度」を堅持すると述べたが、「香港での全面的な管轄権を持つ」とも強調。香港の言論統制などを強める姿勢を正当化した。
 一方、「(党創立)100年の奮闘目標」として、前向きな目標として掲げる<小康社会>の全面的な達成は、いささか影が薄い。<小康社会>とは、貧困問題を解決して国民生活にややゆとりがある状態を指す。人民の生活が経済的には良くなったものの、そこに政治の目的を置いてはいない。代わりに行政や司法、企業活動などのすべてを指導する共産党の統治体制の優位性を強くアピールし、さらに「未来を切り開くには共産党の強固な指導を堅持しなければならない」とし、外交については新型の国際関係の構築を推し進め、習氏が提唱する広域経済圏構想<一帯一路>の発展を進める方針を強調、政権にとっての政治目標が大々的に前面に出ている。
 党創立の記念式典ではこれまで、天安門広場の隣に位置する人民大会堂で指導者が演説したが、習氏は天安門で初めて演説を行い、来年秋の最高指導部が刷新する党大会に向け、慣例を破って3期目に入ることを視野に求心力を高める狙いも透けて見える。
 式典には7万人余りが参加した。開始前には共産党旗を掲げたヘリコプターが「100」という形で飛行し、主力戦闘機「殲10」などが編隊飛行を行った。軍事パレードの実施は見送ったが、「殲10」は台湾の防空識別圏(ADIZ)に入っている戦闘機で、軍事力をアピールする狙いもありそうだ。北京市内は1日、天安門広場付近に武装警察などを配置して厳戒態勢を敷いた。周辺の地下鉄駅は閉鎖され、多くの店舗が営業を中止。北京以外の主要都市でも治安当局がデモなどの事態を抑え込むため人やモノの移動を制限し、ネットの監視を強める。
 中国の憲法には第1条に「中国共産党の指導」という表現があり、共産党は政府機関や裁判所、軍隊などあらゆる組織に支部を設置し、その組織を“指導する”形で影響力を行使している。全国人民代表大会(全人代、国会に相当)も共産党の指導を受けて、党の方針を具現化する役割だ。党員数は9515万人。中国大陸の総人口(14億1177万人)の7%程度を占める。
 外国からの招待客についての報道はない。なお公明党の山口那津男代表は1日、創建100年を迎えた中国共産党について「一つの政党で100年を迎えること自体、なかなかないことだ。なお一層、世界の平和と発展、安定のために力を尽くしていただきたい」と、東京都内で記者団に語った。同党関係者によると、中国共産党側からの要請により、山口氏の名義で祝意のメッセージも出した。
 中国共産党創立100年の記念日を翌日に控えた前夜祭として、北京と上海で光のショーが繰り広げられた。動画は、生硬な習氏の演説と奇妙なアンバランスを成している。
【増えつづける都内の感染者数】
 7月に入り、東京都内の新規感染者の増加が止まない(数字はNHK特設サイト)。また東京五輪の開会式(23日)が目前に迫り、各国代表選手の来日も始まったが、空港の検査で新型コロナウイルスの陽性者が出始めている。
 1日(木曜)、新たに673人の感染が確認され、先週の木曜日より103人増え、前の週の同じ曜日を上回るのは12日連続となった。
 2日(金曜)、東京都内では新たに660人の感染が確認され、先週の金曜日より98人増え、13日連続で前の週の同じ曜日を上回った。
 3日(土曜)、東京都内の感染者数は716人。先週の土曜日より182人増え、14日連続で前の週の同じ曜日を上回った。
 4日(日曜)、東京都の感染者数は518人、先週の日曜日より132人増え、15日連続で前の週の同じ曜日の数を超えた。都の担  当者は、「感染の増加が止まらず、市中での感染が広がっている状況」として、感染対策の徹底を呼びかけた。
【東京都議選】
 同じ4日、東京都議選が行われ、定数127議席(過半数=64議席)をめぐり、42選挙区に271人が立候補した。即日開票が進む。今回の選挙は10月に任期満了を迎える衆議院選挙の前哨戦とも言われ、各党とも国政選挙並みの態勢で臨んだ。4年前の前回、小池知事が代表を務めていた都民ファーストの会は公明党と選挙協力を行ったが、今回は、自民党と公明党が選挙協力を結んだ。このため、都議会第1党の都民ファーストの会がどこまで議席を確保できるか、また自民党と公明党があわせて過半数の議席を獲得できるかが焦点と言われた。
 小池氏が過労を理由に一時入院し、投票日直前に公務復帰したことも有権者の関心を呼んだ。退院した6月30日には「(都議会で)改革を続け、伝統を守る皆様に、エールを送ります」とのコメントを発表。登庁した7月2日の記者会見では「(都政を)安定的に大胆に進めていくためにも、多くの皆さんに頑張ってほしい」と発言、自民党との対決姿勢をみせることはなかった。投票日前日には、演説はしなかったが、都民フの立候補者の応援にまわった。
 開票結果は、次の通り(カッコ内は増減数)。都民ファースト31(−15)、自民33(+8)、公明23(0)、共産19(+1)、立民15(+8)、維新1(0)、無所属4(−1)。自民党が議席を伸ばし、第1党となったものの、目標として掲げた自民、公明両党で過半数には届かなかった。小池知事が特別顧問の地域政党「都民ファーストの会」は後退したが、自民と議席数が拮抗、公明党、共産党、立憲民主党は概して堅調だったと言える。「明確な勝者なき選挙」というところか。
 6日(火曜)、小池都知事が自民党本部に二階幹事長を訪れて会談した。その意図も会談内容も明らかでない。
【東京五輪への対応】
 選挙戦での争点の一つが、ワクチン接種の進行が滞り気味であることに加えて、五輪・パラリンピックへの姿勢である。都民フは競技の無観客開催を主張。共産党は五輪の中止、立憲民主党は延期か中止を打ち出した。国政与党でもある自公両党は、公約で観客の規制にはふれず、態度を曖昧にしたが、これが票の伸び悩みを招いた原因とも言われる。共同通信の出口調査でも、五輪・パラリンピックへの姿勢を「重視した」と答えた有権者が55.3%で、「重視しなかった」の43.1%を上回った。
 都内の新規感染者数は告示後の6月30日に再び国の指標で「ステージ4(感染爆発)」に悪化。感染再拡大に警鐘を鳴らす専門家の意見も目立つようになり、7月23日開幕の五輪に対する有権者の不安につながったとみられる。都などは7月11日(日曜)を期限として緊急事態宣言に準じる「まん延防止等重点措置」の適用を受けているが、政府は延長も視野に入れ、7月8日(木曜)には決定を迫られている。
 外国からの選手団の来日がつづき、空港での検査で陽性者が出始めている。また選手村の開村が13日(火曜)に迫っている。不完全な水際対策により、選手村内の大規模なクラスターが起きないか心配する声が大きくなりつつある。
 5日(月曜)午前、菅首相は首相官邸で記者団の質問に答え、4日投開票の都議選の結果について「自民、公明両党で過半数を実現できなかったのは謙虚に受け止めたい」とし、自民党の議席が伸び悩んだ要因に関して「いろいろあるかと思うが、冷静にしっかり分析して次に備えたい」と述べた。
 東京など10都道府県を対象にした新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」が11日に期限を迎えることについては、延長の是非を巡り「結論を早々に出さないといけない」とし、また(23日に開幕する東京五輪の)観客数を巡っては、都や大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)などとの「5者協議のなかで最終的に方向性は決めると前から決めている」と繰り返した。
同じ日、公明党の山口代表はテレビ番組で東京五輪について「無観客をベースにした方がいいと思う」と述べ、「五輪を機に(感染が)ひろがってしまったら台無しになってしまう。国民目線でいっている。…一定の人数を入れると(会場との)直行直帰を呼びかけても、興奮状態になったときに励行されるか分からない」と補足した。
【2回目難民?】
 河野大臣は、ワクチンの職域接種の受付を中止すると述べていたが、5日(月曜)、その理由をワクチンの供給量が希望量の3分の1であると初めて明らかにした。それまではワクチン不足には触れず、接種体制の不備(とくに接種を行う医療者の不足)に言及、その改善に全力を傾けると言っていた。それが一転してワクチン供給不足を明らかにし、1回目に接種を終えたものの、3週間後の2回目接種は覚束ないという事態を招来し、<2回目難民>ということばが使われるようになった。政府への不満の、鬱屈した表現と言える。
【東京に4度目の緊急事態宣言】
 東京都の感染者数は、日ごとに増加している。7日(水曜)、東京都の感染者数は920人となった。900人を超えるのは緊急事態宣言が発令中だった5月13日以来となる。
 7日(水曜)夕方、政府は東京都を対象に4回目の新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を再発令する検討に入り、これを与党側に伝えた。期間は8月22日までとする方向で調整する。6月21日から「まん延防止等重点措置」に移行していたが、その期間延長ではなく、より厳しい緊急事態宣言を再発令と判断した。
 8日(木曜)午前、政府は新型コロナウイルス感染症の専門家らでつくる基本的対処方針分科会を開き、東京都に緊急事態宣言を発令する方針を示し、了承された。期間は7月12日から8月22日までの6週間であり、過去3回の<宣言>に比べて最長となる。東京五輪は7月23日から8月8日のため、開催期間全てが宣言の時期に含まれる。
 この日、都内で新たに896人の感染が確認され(前週木曜より223人増)、19日連続で前の週の同じ曜日を上回った。うち、1日の発表ではこれまで最多の98人がインドで確認された「L452R」の変異があるウイルスに感染していることを確認したと発表した。
【東京五輪の<無観客>】
 観客上限は6月21日、政府、東京都、組織委、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の5者代表者協議で、まん延防止等重点措置の解除を前提とした「収容人数の50%までで、上限1万人」の方針が決まった。同時に重点措置が延長された場合は「無観客も含めた対応を基本とする」ことでも合意しており、新型コロナの感染状況の悪化で、延長は避けられない情勢になった。

 一方、新型コロナウイルスの感染状況を受け、「完全無観客」論もここに来て高まっている。組織委幹部は「完全無観客なんて、正直、考えたくない。政治家や専門家、メディアは簡単に言うが、かなり厳しい。現場を思うと苦しい」とため息をつく。さらに、東京臨海部で予定されているスポンサー企業のショーケーシングや、大型のグッズショップの運営方法なども、再検討する必要が出てくる。開幕2週間前でも、医療体制の全容が見えないなど、不確定要素がまだ残っているのが現状である。
 8日(木曜)の夜、大会組織委員会や東京都、国際オリンピック委員会(IOC)などは5者協議を開催し、23日に開幕する東京五輪の観客規模を巡り、都内の全会場を<無観客>とすることを決めた。組織委はその後、関係自治体との連絡協議会を開催し、神奈川、埼玉、千葉の3県の競技会場も無観客が決定した。ほかに競技会場がある福島、宮城、静岡の3県は観客を入れ、定員の「50%以内で最大1万人」とする。
 1都3県の無観客開催をめぐって国内では平静な受け取り方が多いが、外国では混乱気味で、例えばロイター通信は「開会する2週間前に観客を入れるかどうかの最終決定がされたことに憤慨している観客は多い」と伝え、「まず新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による1年延期、イベントの縮小、海外客の受け入れ断念、国内客の上限設定などをへて、無観客の決定は最新の打撃になった」と評した。
 9日(金曜)夜、北海道の鈴木知事の要請を受け、大会組織委員会はサッカー男女の予選(札幌会場)を有観客から一転して無観客にすると発表した。10日(土曜)、福島県の内堀知事は臨時の記者会見を開き、東京五輪のソフトボールと野球が行われる県営あづま球場(福島市)での全試合を無観客にすると発表、これを受けて大会組織委員会は無観客とするむね発表した。約7000人を上限とした有観客で開く予定で、10日未明にはチケットの再抽選も行われていた。なお大会組織委員会は10日、宮城県、茨城県(学校連携観戦のみ)、静岡県は有観客のまま変わらないと発表した。
【横浜市長選 候補者乱立】
 4日の都議選投開票、8日の東京に4回目の緊急事態宣言発令、同じ8日の東京五輪の<無観客>決定、危惧される変異ウィルス<デルタ株>の拡大…と前例のない事態がつづき、今後の予測がいっそう難しくなってきた。
 最大政令市の横浜市長選が近づいている(8月8日公示、22日投開票)。6月26日に立候補表明をした現職の国家公安委員長の小此木八郎氏については言及した。投開票まで1ヵ月に迫った7月8日(木曜)の段階で、出馬を表明しているのは40~70代の男女計8人、いずれも新人で、敬称略、氏名・年齢・職業の順に以下のとおり。
 太田 正孝 75 市議、藤村 晃子 48 社団法人代表理事、福田 峰之 57 元副内閣相、小此木八郎 56 前国家公安委員長、坪倉 良和 70 水産会社社長、山中 竹春 48 元市立大教授、郷原 信郎 66 弁護士、田中 康夫 65 元長野県知事。なお現職の林文子市長は4選出馬に向けて調整を始めている。
 候補者が乱立すれば、票は分散する。公職選挙法には、最多得票者が有効投票総数の4分の1以上の票を得られなければ、50日以内に<再選挙>となる規定がある。関係者の間では、<再選挙>の可能性も話題に上り始めた。

【科学者の対話】
 本ブログの昨年末12月28日に掲載した「人類最強の敵=新型コロナウィルス(29)」でmRNAワクチンについて以下のように言及した。「ファイザーが承認を申請したワクチンは、mRNAワクチンと呼ばれるこれまでになかった全く新しいタイプのワクチンで、ウイルスの遺伝情報を伝達する物質である。mRNAを人工的に作って注射で投与(接種)する。投与すると体の中で<スパイクたんぱく質>と呼ばれるウイルスの表面にある突起の部分が作られる。スパイクたんぱく質を目印に、免疫の働きによって新型コロナウイルスに対応する抗体が作られ、ウイルスが体内に侵入した際、抗体が攻撃して感染を防ぐ仕組みである。…mRNAを医薬品に活用するアイデアはアメリカのウィスコンシン大学のグループが1990年に発表した論文で示され、当初は遺伝子治療の一環として研究されていたが、この数年、mRNAを生成する技術や安定させる技術などが進んだことで医薬品としての実用化に向けて注目が高まっていた。…また、mRNAを使ったワクチンは、カギとなるmRNAを変えることでほかのウイルスにも応用することができるとみられ、ワクチンの考え方を大きく変える可能性があるとされる。」
 「全く新しいタイプのワクチン」であるがゆえに約1年以内という短期間で実用化された、と簡単に触れただけである。いま世界中がこのmRNAワクチンのおかげで新型コロナウィルスの暴走をなんとか抑えている。このmRNAワクチンが日の目を見るまでの長期にわたる根気強い研究過程、評価されない苦渋の期間、科学者の「常識を疑う」真摯な態度等には触れられなかった。
 mRNAワクチンの開発は、ハンガリー生まれの女性科学者カリコさんの成果である。これを10日放送の下記 (16)ETV特集「世界を変える“大発見”はこうして生まれた カリコ×山中伸弥」が解き明かしてくれた。山中さんのiPS細胞の発見(2012年、ノーベル医学・生理学賞受賞)とカリコさんのmRNAワクチン、この2つの“大発見”の当事者が英語で語り合う豪華番組である。カリコさんはいまドイツのビオンテック社でお嬢さんとともに働き、アメリカの大手製薬会社ファイザーと契約を結ぶことにより、多量のワクチンを製造、世界の新型コロナウイルス感染を抑えこむ最前線に立っている。日曜の午後、録画でゆっくり観て、二人の科学者の歩みに深く感銘を受けた。ネット検索すればいつでも視聴できるので、ぜひお勧めしたい。

 この間、次のテレビ番組を観た。(1)クローズアップ現代+「コロナ禍マネー最前線・世界の超富裕層はどう運用」6月17日。 (2)カンブリア宮殿【異色の天才発明家 驚き発想力の秘密!】ネジロウの道脇裕(43歳)18日。 (3)クローズアップ現代+「変異株・治療法に難題が…ワクチンは誰を優先?」18日。 (4)NHKスペシャル 2030未来への分岐点(4)ゲノムテクノロジーの光と影」18日。 (5)週刊ワールドニュース(6月14~18日)21日。 (6)NHKスペシャル パンデミック 激動の世界(11)検証“医療先進国”(前編)25日。 (7)週刊ワールドニュース(6月21~25日)26日。 (8)クローズアップ現代+「ワクチン・デマや差別がある中…いま必要なのは」30日。 (9)NHKBS1 世界のドキュメンタリー選「枯れ葉剤 母親たちの闘い」30日。 (10)BS世界のドキュメンタリー選「ボリス・ジョンソンーイギリスを口車に乗せた男」7月1日。 (11)クローズアップ現代+「中国の若者・リアルな胸の内 自信・愛国心・葛藤も」2日。 (12)BS1スペシャル「市民が見た世界のコロナショック 5~6月編」3日。 (13)週刊ワールドニュース(6月28日~7月2日)3日。 (14)NHKBSP 新・映像の世紀(4)世界は秘密と嘘に覆われた~冷戦~」5日。 (15)週刊ワールドニュース(7月5日~9日)10日。 (16)ETV特集「世界を変える“大発見”はこうして生まれた カリコ×山中伸弥」10日。
プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
前園長(2012年8月~2023年3月)

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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