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人類最強の敵=新型コロナウィルス(35)

 2月22日(月曜)に掲載した前稿(34)では、コロナの新規感染者が減りつつあるものの減少ペースが鈍いため、緊急事態宣言の解除日程が射程に入る段階ではないとし、目まぐるしく変わる内外の動きを中心として2月8日(月曜)からの2週間を描いた。

 「人類最強の敵=新型コロナウィルス」の掲載間隔が2週間となったのは、これが最初である。それまではほぼ1週間ごとに更新してきた。今回からはさらに間隔を空け、粘り強く記録しつづけたいと思う。

 「人類最強の敵=新型コロナウィルス」を初めて載せたのは、約1年前の2020年3月6日であり、その最後を次のように結んだ。「事態は刻々と変化しており、一日でまったく認識が変わることもある。そのわずかな一局面でも、同時代の<記録>として書き留める価値があると思い、いま本稿を書いている。…この続編を書くのはいつになるか。経済への大打撃もいっそう深刻さを増し、内外政治に及ぼす影響もさらに大きくなろう。国内の感染がピークアウトする一応の目安は3月16日(月曜)ころとされるが、予断を許さない。」

 このころ「国内の感染がピークアウトする一応の目安は3月16日(月曜)ころ…」と言われていた。人間の予測がいかに危ういかを示す証拠と言えよう。ピークアウトどころではなく、通番を付して連載形式にした最初が3月18日掲載「人類最強の敵=新型コロナウィルス(2)」であり、この段階ですでにピークアウト予定日を2日も過ぎていた。

 この連載(2)の冒頭に「この同じテーマで、これから何回つづけることになるのか。とりあえず通番を付して対応したい。…」と書いた。それから早や1年が過ぎた。今回が(35)であるが、これから先どこまで続くか分からない。

 我ながら不思議に思うのが題名である。新型コロナウィルスをなぜ<人類最強の敵>と命名したのか。新型コロナという敵の正体が分からず、対処法が確立していないため、<人類最強の敵>なのは確かであるが、これほど長期にわたるとは誰も思っていなかった。約1年を経た今も確かな<終戦>を見通すことができない。

 以下に述べるとおり、アメリカの新型コロナによる死者が50万人を超え、3つの戦争(第一次・第二次世界・ベトナム戦争)の死者を合わせた数を超えた。世界のコロナ死者は256万人を超えた(3月4日段階)。これだけでも<人類最強の敵>と言える。

 しかし、見方を変えれば、新型コロナウィルスが世界に拡大し始めてすぐ日本では<3密>回避や人々の日常の振る舞いへの指針が示された。そしてわずか1年以内という短期間に世界はワクチンを作りだし、普及し始めた。これらは人類の知恵の勝利の予兆を示す証左の一つである。これからも行先不明の漂流になるやの思いは拭えないが、可能な限り正面から向き合い、書き続けていきたい。


【内外の動き】
 2月22日(月曜)、厚労省から人口動態統計速報が発表され、2020年の出生数は前年比2.9%減の87万人で5年連続の過去最少を更新した。婚姻数は12.7%減の53万余組で、減少率は1950年以来70年ぶり。今後の出生率減少をさらに加速すると指摘される。なお出生数が前年を上回ったのは沖縄、福井の2県のみである。

 同じ日、自民党(金融調査会 地域金融に関する小委員会)は、コロナの影響を受ける企業の資金繰り支援策を3月に政府に提言する。「1年以内」または「6ヵ月以内」と定める中小企業や個人事業主への返済猶予期間を継続し、「コロナ禍進行中の事業年度は少なくとも返済要求を一切行わない状況をつくること」を求める。また中小企業等に限定される信用保証協会の保証を中堅企業も受けられる制度づくりを要望する。なお日銀が8日に発表した1月の貸出・預金動向(速報)は、全国の銀行・信用金庫の貸出平均残高578兆円余と過去最大を更新、と伝える。

 同じ日、米ジョンズ・ホプキンス大学は、アメリカの新型コロナの累計死者数が22日午後5時時点で50万人を超えたと発表した。これを受けて日経新聞は「米国で死者が膨らんだ歴史的な出来事」として多い順に、①スペイン風邪(68万人)、②南北戦争(60万人)、③新型コロナ(50万人)、④第二次世界大戦(40万人)、⑤第一次世界大戦(10万人)、⑥ベトナム戦争(6万人)事例を挙げる(カッコ内は概数)。新型コロナの死者50万人は、④~⑥の3つの戦争(第一次・第二次世界・ベトナム戦争)の死者を合わせた数を超える。「人類最強の敵=新型コロナウィルス」であることは間違いない。

 23日(火曜、祝)、南関東では21日の最高気温21℃につづく高温で、最低気温が12℃、最高が15℃と4月下旬なみとなった。翌24日は急降下して最低気温が3℃、最高が11℃と冬に逆戻りした。体調管理が不可欠である。21日、高温・乾燥下で起きた栃木県の山火事は落ち葉や枯草に燃え移り、「赤城おろし」と呼ばれる北西の強風が延焼を広げた。緊急出動した自衛隊ヘリ4機による消火活動でも収まらず、乾燥注意報の中、出火から5日目の25日、鎮火まで最長2週間かかるとも言われる。

 同じ23日、大阪府・兵庫県・京都府の3知事は西村大臣とオンラインで協議し、コロナ新規感染者数の減少等の独自基準を達成したことを踏まえ、(3月7日を待たず)2月末で緊急事態宣言の解除を要請、愛知県と福岡県も同様の解除要請を行った。一方、首都圏の1都3県の知事は早期の解除要請を行わない方向で一致した。

 同じ日、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は東京オリンピック(五輪)の観客数に関する判断は、4~5月ごろになるとの見通しを明かした。この日の理事会後にオンラインで開いた記者会見で「(決断は)ぎりぎりの瞬間まで待ちたいが、チケットの手続きや入国管理などから、それはできないことも承知している。テクニカルな要素から考えれば、4月か5月上旬ぐらいに判断することになるのではないか」と話した。これまでは3月末までに判断するとしていたが、バッハ会長は先送りの可能性を示したもの。

 この日夜、菅首相は、新型コロナウイルスの高齢者向けのワクチン接種について、4月12日から始める方針を明らかにした。「4月5日(月曜)の週に、高齢者向けのワクチンを自治体に発送する。12日(月曜)から接種する予定」と述べた。

 一方、新型コロナ対応の特別措置法に基づき3月7日を期限に10都府県に出している緊急事態宣言について、首相は「感染者が大きく減少している。(宣言解除を)繰り上げて、という(大阪・兵庫・京都の関西3府県、愛知・岐阜の東海2県と福岡県の計6府県)知事からの要望があったことも事実」としたうえで、26日(金曜)に感染症や経済の専門家らでつくる諮問委員会を開く方針を表明。「先生方からさまざまな意見をうかがうなかで判断していきたい」と述べた。

 25日(木曜)午前、総務省幹部らが菅首相の長男(菅正剛氏)が勤める放送関連会社「東北新社」から接待されていた問題で、1回7万4千円超の饗応を受けていた山田真貴子(60)(2019年当時は総務省審議官、現在は菅首相の抜擢により内閣広報官)が衆院予算委員会に出席、「公務員の信用を損なったことを深く反省する。申し訳なかった」と述べると同時に、前日の菅首相の発言を受け、「職務を続けていくなかで、できる限り自らを改善していきたい」として辞任を否定した。

 同じ25日(日本時間26日)、バイデン大統領は重要部材4品目の供給網を100日以内に見直すとする大統領令に署名した。4品目とは①半導体、②電気自動車(EV)に使う高容量電池、③医薬品、④レアアースを含む重要鉱物を指し、この見直しには「同盟国やパートナーと緊密な連携」で取り組むと明記した。

 26日(金曜)、昼からの基本的対処方針等諮問委員会、衆参両院への報告の所定手続きを経て、政府の対策本部は6府県(大阪・兵庫・京都の関西3府県、愛知・岐阜の東海2県と福岡県)で3月1日(月曜)から緊急事態宣言を解除すると決めた。首相の記者発表はなく、前日の衆院予算委員会で陳謝したばかりの山田内閣広報官の姿もない。国民へ重要なメッセージを伝えるのに首相記者発表がないのはなぜかと、世論が訝った。

 解除の前提となる基本的対処方針等諮問委員会は、予定時間を1時間過ぎてようやく終わった。政府が愛知、岐阜、京都、大阪、兵庫、福岡の6府県の先行解除を諮ると、経済界を除いて医療の専門家ら多くのメンバーから懸念の声が噴き出したためだ。 「本当にいま、やっていいのか」、「変異株もある」、「休みが控えていてリバウンドする」等々。記者団の取材に応じた田村厚働相は、「非常に厳しい意見が多かった」と硬い表情を浮かべた。

 専門家の危惧は、次のデータに基づく。宣言下の10都府県では、1月上旬をピークに感染者数が減少したが、首都圏4県とそれ以外の地域で大きく異なるのが人口10万人あたりの1週間の新規感染者数である。24日時点で東京がステージ3(感染急増)相当の15人、千葉14人、埼玉11人と高い水準で推移しているのに対し、大阪6人、愛知4人、福岡7人である。

 一方、医療提供体制は10都府県ともまだ改善途上にある。24日時点の病床使用率は東京と兵庫が38%、大阪が36%、愛知と京都が30%で10都府県ともステージ3の指標である20%を上回り、埼玉と千葉はステージ4(感染爆発)の目安の50%を超えた。懸念されるリバウンドについて、政府の分科会は25日に提言を示し、外出はすいた時間と場所を選び、歓送迎会や謝恩会など恒例行事を控えることなどを求めている。いわば<条件付き解除>である。

 今回の解除見送りとなった首都圏1都3県(東京都、神奈川・埼玉・千葉)の知事は、予定の3月7日(日曜)の解除に向けて感染防止に全力を尽くすと決意を述べた。しかし、1週間で期待通りの成果が出るかは誰にも分からない。衆院予算委員会で参考人の尾身分科会会長は、「3月7日に首都圏の解除ができるか、あるいは更なる延長となるか、その両者の可能性を想定し、直前の状況を見て判断したい」と答えた。科学的判断を優先すれば当然の見解である。

 28日(日曜)の【AFP=時事】によれば、ミャンマー国営放送(MRTV)は27日、チョー・モー・トゥン(Kyaw Moe Tun)国連大使が「国家の命令と指示に従わず、国を裏切った」ため解任されたと報じた。26日に行われた国連の非公式会合で同大使は、「兄弟姉妹たち」に闘いを続けるようビルマ語で呼び掛け、「この革命に勝たねばならない」と述べて軍事政権への抵抗のシンボルとなっている3本指を掲げるポーズを取っていた。
 ミャンマーでは、今月1日に起きた国軍によるクーデター軍に抗議するデモが続いている。当局はデモ隊の排除に放水銃やゴム弾を使用し、また実弾発砲もあり死者も出ている。人権監視団体、「ビルマ政治囚支援協会」によると、クーデター発生以降770人以上が逮捕・起訴され、有罪判決を受けた。この他に約680人が拘束されており、27日にはさらに400人以上が逮捕された。逮捕された全員の名前を確認できるわけではないため、同団体が毎日更新するリストに記載されているのは被逮捕者の一部にすぎないという。
 3月1日(月曜)、6府県(大阪・兵庫・京都の関西3府県、愛知・岐阜の東海2県と福岡県)の宣言解除の初日である。各地で、かなりの人出が見られた。同じ日、25日には辞任を否定していた山田内閣広報官が体調不良で入院、辞任を申し出たため、政府は閣議で承認手続きを進め、了承した。
 2日(火曜)、新年度予算が衆院を通過し、参院へ送られた。
 4日(木曜)朝の時事通信によれば、首相は3日夜、関係閣僚会合を終えた後、記者団に「2週間程度の延長が必要ではないかと考えている。最終的に私自身が判断したい」と表明した。「当初は期限の7日をもって全面解除する腹づもりだったが、小池百合子東京都知事らの延長要請の動きを受けて軌道修正を余儀なくされた。総務省幹部接待問題などで<後手>批判を浴びる中、かろうじて<先手>を演出した形だ。…首相には4都県知事の圧力に押され、1月7日の宣言再発令決定に追い込まれた苦い記憶がある。今回も小池知事らの要請を受ける形で方針転換すれば指導力が問われかねないとの懸念から、あえて要請を待たずに表明に踏み切ったとみられる。」
 緊急宣言を2週間延長した場合、新たな期限は3月21日(日曜)となる。25日からは東京五輪の聖火リレーが控えている。同じ日の参院予算委員会で首相は、首都圏1都3県に発令中の新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言について「国民の命と暮らしを守るために2週間程度の延長が必要ではないかと考えている」と述べ、7日までの期限を再延長する考えを重ねて表明した。同じ日、FNNプライムオンラインは、「東京五輪を中止すべき時がきた」とする英・タイムズ紙掲載のコラムを伝えた。
 5日(金曜)夕方、菅首相は、所定の手順を踏み一都三県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)を対象として緊急事態宣言の実施期間を令和3(2021)年3月8日(月曜)から21日(日曜)まで2週間を再延長すると決定した。それで収まるのか。10日(水曜)、政府のコロナ対策分科会の尾身会長は、「“緊急宣言”の再々延長あり得る」と述べ、感染対策をしっかり行っている飲食店に対しては優遇措置を与えるべき、と政府に求めた。
 11日(木曜)は、東日本大震災から10年に当たる日である。菅首相と米国のバイデン大統領は10年の節目にあわせて連名で共同声明を発表し、震災の犠牲者や遺族に哀悼の意を表明した。「東北地方の復興の完了と我々全員にとってより良い未来の実現のため、手を携えて前進する」と強調。震災が発生した2011年、バイデン氏はオバマ政権で副大統領を務めていた。震災から5カ月後には宮城県を訪問、在日米軍は被災地支援<トモダチ作戦>で復旧・復興を後押しした。声明は日米両政府が「緊密に連携し、震災被害の軽減や東京電力福島第1原子力発電所事故への対応に従事した」と振り返り、バイデン氏は被災地訪問で「救援活動と日本国民の驚くべき力と粘り強さを目の当たりにした」と評価した。両首脳は日米の協力が「日米同盟という特別な絆と揺るぎない友情の証しとして、日米両国民の心と記憶に特別に刻まれ続けるだろう」と指摘。「これからもかけがえのない<トモダチ>として被災者を支援し、亡くなられた方々を追悼する」と訴えた。
 同じ日、中国全国人民代表大会(全人代)が、香港の選挙制度を見直す決定を採択して閉幕した。それにより、親中派が多数を占める行政長官の選挙委員会に香港立法会(議会)選挙の候補者を指名する権限を持たせ、候補者を審査する機関も設ける。民主派を排除する内容である。<一国二制度>の約束は反故にされた。全人代の閉会を受け、李国強首相が記者会見し、中国にとって<核心的利益>である香港等に対する米国の<内政干渉>を牽制する一方で、「協調できる分野がたくさんある」と米国に対話も呼びかけた。
 12日(金曜)、菅首相は12日の政府・与党連絡会議で4月前半にもワシントンを訪問し、バイデン米大統領と会談すると表明した。バイデン氏が対面で会う初の外国首脳となる見通し。バイデン政権は対中政策を外交、安全保障分野の重点課題と位置づけており、インド太平洋地域の同盟国である日本を重視している。
 同じ日、日本、米国、オーストラリア、インド(日米豪印)の4カ国は初の首脳によるオンライン協議を開き、新型コロナウイルス対策や経済分野などでの協調を示す共同文書をまとめ、脱炭素の実現に向けた連携も明記した。菅首相、バイデン米大統領、モリソン豪首相、モディ印首相が参加、最近では英語で4を意味する「Quad(クアッド)」という通称が定着してきた。中国の影響力拡大を強く意識した枠組みである。インド洋と太平洋を囲むように位置する4ヵ国は、自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観を共有する。
 米国のトランプ前政権時に立ち上げ、1月に発足したバイデン政権が引き継いだ今回の首脳協議は米国が呼びかけた。これまで局長級、外相級で開いてきたのを格上げし、バイデン政権が重視する以下の4点を話し合った。(1)気候変動分野での協力を打ち出し、脱炭素の実現に向けた技術協力のあり方などを話し合う。(2)アジアなどの途上国でのワクチン普及に向けた枠組みの合意もめざし、インドで製造するワクチンを日米豪が財政支援し供給する案を検討する。(3)半導体や資源など、中国に依存するサプライチェーン(供給網)の見直しも主要議題として、高性能なモーターや蓄電池に欠かせないレアアース(希土類)の調達多様化の必要性を確かめる。(4)東シナ海や南シナ海で現状変更を続ける中国への警戒感も共有。菅首相は沖縄県尖閣諸島周辺への中国海警局の船による領海侵入への懸念を訴える構え。
 同じ12日、菅首相の長男が関係する放送事業会社<東北新社>が申請時の2017年に外資規制違反があったとして、総務省は同社の認定を取り消した。
 15日(月曜)、アメリカのバイデン政権初の閣僚による外遊として、ブリンケン国務長官とオースティン国防長官が来日。両長官は日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)に臨む。
 17日(水曜)、日米の2+2(外務・防衛閣僚会議)が、バイデン政権発足後、初めて行われ、中国を強くけん制した。茂木外相「中国による海警法に関する深刻な懸念を共有した」と述べ、米ブリンケン国務長官「中国が強圧的な行動に出た場合、われわれは必要に応じて対抗する」とした。4閣僚は、中国が海警局の船に武器の使用を認める「海警法」を施行したことに、深刻な懸念を共有した。
 そして、沖縄県の尖閣諸島がアメリカによる防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の対象であることを確認し、「尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとする、いかなる一方的な行動にも反対する」ことを確認した。また、ブリンケン国務長官は、拉致被害者の家族から、拉致問題解決への支援を求める書簡を受け取ったと述べた。
 この日、中国での少数民族ウイグル族への不当な扱いが人権侵害に当たるとして、EUの大使級会合で人権侵害にかかわった人物と団体に制裁を科す方針を決めた。22日(月曜)の外相理事会で正式に決める。1989年の天安門事件以来の措置である。
 この日夜、菅首相は首都圏1都3県に発令している新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を21日の期限で全面解除する方針と、首相官邸で記者団の質問に答えた。その根拠として「感染者数、病床使用率が解除の方向に入っている」を挙げた。緊急事態宣言は2度の延長を経て、2カ月半で解除されることになる。政府は18日に開く基本的対処方針等諮問委員会に全面解除の方針を諮り、政府の対策本部で正式に決定する。
 この日、利用者の多い無料通信・メールアプリLINE(ライン)利用者の個人情報が中国の関連会社で閲覧可能だった問題が発覚し波紋を拡げている。国内7,800万人の利用者(多くの自治体を含む)がいる。無料で、友だちや家族と、トーク(チャット)・音声通話・ビデオ通話を楽しめます。ユーザー同士であれば、国内・海外・通信キャリアを問わず、いつでも、どこでもリアルタイムのコミュニケーションができる。LINEは、LINE株式会社が運営・開発する、モバイルメッセンジャーアプリケーションで、韓国 NHN株式会社(現 ネイバー株式会社)の完全子会社である日本法人 NHN Japan株式会社(現LINE株式会社)が、2007年に社長に就任した森川亮の下で開発したサービス。 スマートフォン、iPad、PC、スマートウォッチ に17言語で対応している。
 問題の発端は、LINEが利用者に示す運用指針に、データを第三国に移転することがあると
しながらも、委託先の「中国」や「韓国」など具体的な国名を記載していなかったことである。 利用者の同意なく個人情報を第三者に提供したり、海外に持ち出したりすることは法律で禁じられている。国は利用者の個人データを海外に持ち出す場合、具体的な国名を示すよう求めている。

 自民党の部会では、LINEと親会社Zホールディングス(HD)の幹部が経緯を説明。出席議員からは「利用者が安心できる取り組みが必要」との指摘が上がった。LINEに対しては、総
務省や政府の個人情報保護委員会も法令に基づき報告を求めた。ZHDはデータの取り扱いを検証する第三者委員会を設置し、23日(火曜)に初会合を開く予定。
 
 18日午前、新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づき、東京、神奈川、埼玉、千葉の4都県に出している緊急事態宣言をめぐり、基本的対処方針の変更案について議論する政府の諮問委員会(尾身会長)は、期限の21日までで解除する政府方針を了承した。西村大臣は諮問委で、新規感染者数はピーク時から約8割減少し、2度目の延長の理由となった病床使用率の指標も、逼迫(ひっぱく)していた埼玉、千葉両県で、30%台まで低下したと説明。「指標(の改善)が確実になってきていること、再拡大防止に向けた取り組みを進めてきている」などとして、期限満了での宣言解除を諮問したもの。

 政府は18日午後、対策本部を開き、3月21日(日曜)で緊急事態宣言を解除すると正式決定した。1月8日の対策開始から2度延長された宣言は、約2カ月半で終わった。菅首相は記者会見で、宣言を解除したあとの感染の再拡大を防ぐための総合的な対策として、①飲食の感染防止、②変異したウイルスの監視体制の強化、③感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査の実施、④安全で迅速なワクチン接種、⑤次の感染拡大に備えた医療体制の強化の5つの柱を決定したと説明した。3月25日(木曜)から始まるオリンピックの聖火リレーの直前で宣言解除にこぎ着けた。だが感染者の増加の兆しが見え始め、再びリバウンドすれば、大会開催そのものが危ぶまれる。

 同じ18日、東京都は飲食店などに対し営業時間を午後8時までに短縮するよう要請してきたが、応じない113の店には特別措置法の45条に基づいて緊急事態宣言下でのみ適用できるより強い<要請>を出していた。それでも短縮要請に応じない飲食店のうち、正当な理由がないと判断した27の店に対し、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく<命令>を出した。<命令>が出されるのは全国で初めて。これも21日の解除により失効する。
 同じ18日、米韓両政府はソウルで約5年ぶりに外務・国防担当閣僚協議(2プラス2)を開き、北朝鮮の脅威などに対応する日米韓の結束を演出した。トランプ前政権下で揺らいだ米韓関係を立て直す狙いもあるが、米国が重視する中国への対応では双方の温度差が浮き彫りとなった。共同声明は、米韓同盟を「朝鮮半島とインド太平洋地域の平和、安保、繁栄の核心軸」と定義した。トランプ政権下で縮小論が取り沙汰された在韓米軍は、必要な戦力と力量を維持するとうたった。北朝鮮の核・ミサイル問題を優先的な関心事として、日米韓3カ国協力の重要性も明記した。ブリンケン国務長官とオースティン国防長官はその後、韓国の文在寅大統領とも会談。文氏は「韓日関係の復元に向けて努力していく」と述べ、ブリンケン氏は「進展に期待する」と応じた。
 19日(金曜、現地時間18日午後)、米国アラスカ州に飛んだブリンケン米国務長官は、中国外交担当トップの楊潔篪共産党政治局員と会談、バイデン政権では初めての米中外交トップの対面式会談である。安全保障や経済、人権問題などを巡って冒頭から激しい応酬となった。2日間の予定。米国はサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、中国からは王毅国務委員兼外相が同席した。
 ブリンケン氏は2分あまりの冒頭発言で「新疆ウイグルや香港、台湾、米国へのサイバー攻撃や同盟国への経済的威圧について深い懸念を議論する。これらの行動はルールに基づく秩序を脅かしている」と厳しく非難した。楊氏は「内政干渉には断固として反対する」と20分近くにわたり反論した。「米国は軍事力と金融覇権を用い、他国を抑圧している」と主張、黒人問題を取り上げて「米国こそ人権でより良い対応を取るよう希望する」などと指弾した。双方はこの後も応酬を繰り返し、報道陣を前に異例の1時間にも及んだ。
 この19日、高校選抜野球大会が2年ぶりに甲子園球場で開幕、3試合が行われた。東日本大震災の被災地を代表する仙台育英は、強豪・明徳義塾(高知)を破り、震災10年の節目で全国制覇なるかと期待が寄せられる。

 20日(土曜、春分の日)夕方6時過ぎ、宮城県で最大震度5強(マグニチュード6.9)の地震があり、最大1メートルの津波予報が出されたが30分後に解除、津波は来なかった。不安にかられつつも、10年前の経験を踏まえて即座の避難行動をとった地域もある。

 この日の夜、東京オリンピック・パラリンピックでの外国人観客受入れはないと政府が正式に決定したことに伴い、政府(丸川五輪相)、東京都(小池知事)、大会組織委員会(橋本会長)は、国際オリンピック委員会(IOC)バッハ会長と国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長を交えて5者協議をオンラインで開き、海外からの一般観客の受け入れ見送りを正式に決めた。その後の記者会見で橋本会長は「本当に残念でならない。安全と安心を確保するためには致し方ない結論」と述べ、バッハ会長は声明を発表し「世界中の熱狂的なファン、選手の家族や友人と落胆の気持ちは一緒だが安全が第一。IOCの最優先は全ての人にとって安全な大会を開催することだ」と理解を求めた。
 一般観客を国内に限定し、国内のイベント規制に準じて4月中に再び5者協議を開き観客数の上限の方向性を決定する。収容率は<50%以内>を軸に検討。最大7万人近くを収容する国立競技場(東京・新宿)をはじめ大規模会場もあり、実際にどれだけの入場を可能とするかを詰める。
 また海外では五輪とパラリンピックあわせて約60万枚が販売済みで、払い戻し手続きを始める。組織委は国内外から制限なく観客を受け入れた場合、チケット収入を900億円と見込んでいた。100億~150億円規模の減収が生じる可能性がある。
 21日(日曜)、この日が緊急事態宣言の最終日である。全国的に強い雨が降ったにもかかわらず、都内の盛り場は人出が増えた。東京都の新規感染者は256人、直近1週間平均の新規感染者は約301人で、前週(約279人)の107.9%と微増した。宮城、大阪、兵庫等でも増加しており、<リバウンド>が強く懸念される。


【地方のコロナ対応 現状と課題】
 2月28日の産経新聞は、「【地方変動】第1部・溶ける自治体(1)コロナ時代、もう東京でなくてもいい」の掲載を始めた。次のように書きだす。「クラウド名刺データ管理サービス会社「Sansan」(東京)のエンジニア、辰濱健一さん(36)のもとにトラブル相談が寄せられた。相手はインドにある協力企業のスタッフ。…いつものことのように指示を出す辰濱さんの職場の前には、のどかな田園風景が広がる。……Sansan本社のある東京表参道ではなく、ましてや米シリコンバレーでもない。人口わずか5千人の町、徳島県神山(かみやま)町だ。…」

 神山町はIT(情報技術)で躍進した地方の町として名高い。平成16年に全国に先駆けて町全域に光ファイバー網を敷設、都会と変わらぬ高速で大容量の通信を可能とすると、町はサテライトオフィス(遠隔地拠点)の誘致を本格化。これまで14社が拠点を開設した。Sansanもその一つ。“ITの町”が「ウィズコロナ」の時代、求心力を増している。町への移住や企業進出の支援を行うNPO法人「グリーンバレー」では今年度、こうした相談が前年度から倍増した。

 もう一つ、古くから温泉地として知られる和歌山県白浜町も近年、急速に変貌を遂げている。そしてこちらも徳島県神山町と同様、新型コロナウイルス禍により注目度が増している。良質なリゾートタウンで、東京から飛行機で約1時間という強みを生かし、観光地で休暇を楽しみながらテレワークに励む「ワーケーション」の最適地とPR。平成29年度からの3年間で104社910人がワーケーションを実施。ビジネスルームを整備した宿泊施設「ホテルシーモア」を運営する白浜館の松平哲也・予約センター長(47)は「こうした動きはうちだけではない。共有キッチンやリビングがありワーケーションができる宿泊施設ができてきている」と言う。

 コロナ禍で観光客を奪われたが、ワーケーションという新常態(ニューノーマル)に活路を見いだした。非接触はコロナとの共生に欠かせない。そこには白浜町のレジリエンス(回復力)も感じられる。徳島県神山町と和歌山県白浜町。2つの町は期せずしてデジタル化を進めていたことで人が集まり、未曽有のコロナ禍にもしなやかに対応できた。そこには、デジタル化こそ地方再生の処方箋、という確信めいた認識があったのだろう。ただ、和歌山県情報政策課の大谷信一朗主任(46)はこう指摘する。「単に観光と仕事ができる環境の整備だけでは、人を呼び込む理由としては弱い」。念頭にあるのは限られたパイをめぐる地方の競争激化である。例えばワーケーション。同県運営の「ワーケーション自治体協議会」に参加自治体数は令和元年の65から、今年1月21日現在、倍以上の166に増えている。

 さらに、昨年は東京への人口集中が鈍ったとはいえ、転出先の上位は埼玉、千葉、神奈川といった近郊だ。地方への波及効果は限定的かもしれない。国の地方制度調査会は昨年まとめた地方行政のあり方についての答申で「組織や地域の枠を超えて連携し合う社会を構築するのが重要」とした。競争よりも旧態依然とした地方や自治体の枠組みを溶かし、連携していくことが地方や国の未来につながるという。野村総合研究所の神尾文彦・主席研究員も「コロナが収束しても東京一極集中に戻るべきではない。地方の衰退を防ぐためには本格的な人の分散が必要で、国も企業移転やデジタル化などで地方を支援すべき」と強調する。

 地方がいま大きく変動しようとしているのは、人口減少や超高齢化、インフラの限界など迫りくる危機への対応を急ぐためだ。それにコロナ禍が拍車をかけた。地方を生かすことは、国を生かすことでもある。芽生え始めた地方変動の潮流をどう生かすかは国家的な課題である。


【ワクチン接種】
 2月26日(金曜)、高齢者へのワクチン接種を4月1日に開始と述べた河野大臣は高齢者向けワクチンを6月中に配送完了すると述べた。

 28日(日曜)の【AFP=時事】によれば、米食品医薬品局(FDA)は27日、米医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が開発した接種1回型の新型コロナウイルスワクチンに緊急使用許可を出した。米国で使用が認められた新型コロナウイルスワクチンは3例目。FDAは、J&Jのワクチンは変異株も含む新型コロナウイルスの感染予防に高い効果があるとした。
バイデン米大統領は声明を発表し、「これはすべての米国人にとって素晴らしいニュースであり、この危機を終わらせようと努力している上で励みになる出来事だ」とした一方、変異株は依然として脅威だとして、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)などの感染対策を続けるよう国民に呼びかけた。

 3万9321人が参加した大規模な臨床試験でJ&J製ワクチンの重症を予防する効果は85.4%だったが、重症に加え中等症も予防する効果はそれよりも低く66.1%だった。年齢、人種、基礎疾患の有無による大きな違いはなかった。J&Jは、3月中に2000万回分、6月までに1億回分の配送を目指すとしているが、米政府は前倒しを求めている。

 同じ28日の【パリ時事】によれば、新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人が取得できる証明書の活用をめぐり、欧州内で温度差が生じている。欧州連合(EU)のミシェル大統領は25日、「ワクチン未接種者に対する差別を招く恐れがある」と懸念を表明。一方、国内経済を観光に依存するギリシャやスペインなど南欧諸国は、証明書の活用に前向きである。

 EUは1月のテレビ首脳会議で、ワクチン証明書の標準化を進めることで合意。取得者への渡航制限の緩和など、医療目的以外での活用方法について議論を進めている。世界で最もワクチン接種が進むイスラエルは、接種者に「グリーンパス」を発行。AFP通信によれば、ホテルなど一部の施設で利用者にパスの提示が義務づけられている。

 こうした事例を念頭にギリシャのミツォタキス首相は、EUでも同様の「ワクチンパスポート」を発行すべきだと主張している。今月8日にはイスラエルのネタニヤフ首相と会談。パスを保持するイスラエルからの観光客に対し、隔離なしでギリシャへの渡航を許可する2国間合意を締結した。スペインやイタリアもEU共通のワクチンパスポート導入に前向きな姿勢を示す。一方、フランスはマクロン大統領がワクチン接種を「義務化しない」と表明したことから、ワクチンパスポートの導入には慎重だ。ただ、地元メディアによれば、観光業界は「スペインやギリシャに外国人観光客を取られかねない」と懸念している。 

 28日の産経新聞のコラム「【女子の兵法】<臨機応変>に戦い勝つ」は、テニスの全豪オープン女子シングルスで2年ぶり2度目の優勝を飾った大坂なおみや、白血病を克服して復活した競泳女子の池江璃花子選手の活躍ぶりを称え、その終わりを次のように締めくくる。「約100年前、第一次世界大戦や世界各地で猛威をふるった<スペイン風邪>を乗り越えて開催されたベルギー・アントワープ五輪は「人類の団結と世界の平和」がテーマだった。わが国のみならず、世界中の人々による努力の先に、希望の火を灯(とも)し、<多様性と調和>を世界に向けて発信したい。」

 同じ日、作家・ジャーナリストの青沼陽一郎氏は、菅首相が施政方針演説でも断言している「夏の東京オリンピック・パラリンピックは、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として…」は誤りであり、実際には「新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の結束の証」ではないかと記す。「打ち勝った結果」とするほど甘くはなく、「…コロナに打ち勝つ未来への結束の証」に他ならない。

 3月12日(金曜、米東部時間午後8時)、米バイデン大統領はテレビの視聴者数が多い夜の「プライムタイム」に初めて演説、世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言して1年を迎えたのに合わせて実施した。独立記念日を「ウイルスからの独立を示し始める日にする」と述べ、少人数で家族や友人が集まれる状況を目指すと説明した。コロナをどこまで抑制できるかは米経済の回復ペースを左右する。前向きな公約を掲げて国民の支持を集める狙いだが、狙い通りに成果を上げられなければ批判を浴びるリスクもある。
 バイデン大統領は十分な量のワクチンを確保できたとして、5月1日までに全成人希望者を対象にワクチンの接種対象とするよう州・地方政府に指示した。これまで供給量が限られるため、米疾病対策センター(CDC)が高齢者や持病がある人を優先するよう求めていた。CDCによると、所定回数のワクチン接種を完了した人は3386万人。バイデン政権は全成人の接種に必要な量を5月末までに確保できると説明してきた。実際は接種を断る人もいるため、7月にかけて何人が接種を終えるかは不透明だ。米国の18歳以上の人口は約2億5000万人を超え、全人口の78%を占める。
 接種のペースを引き上げる体制も整える。ワクチン接種を受けられる薬局を全米2万カ所へと倍増させる。軍から4000人を新たに派遣し、計6000人超の兵士が支援する。歯科医や医学部の学生なども動員し、接種要員も増やす。新規感染者数が減少傾向にあり、過去1週間は1日平均5万7000人で推移する。ただ感染力の高い変異ウイルスが欧州などで猛威を振るっており、予断を許さない。ウイルスの広がりを迅速に把握するため、11日に成立した追加経済対策を活用して500億ドルを検査能力の増強にあてる。17億ドルを投じて変異ウイルスの分析件数も増やす。
 17日(水曜)、日経新聞と英フィナンシャル・タイムズが集計したコロナワクチンの接種回数は131ヵ国・地域で3億9000万回を超えた。33ヵ国が100万回をうわまわる。日本は43万回に達した。これを人口100人当たりの接種回数に換算すると、イスラエル=105回、UAE=68.3、英国=40.5、チリ=30.1、米国=33.4、トルコ=14、シンガポール=13.9、スペイン=12.2、ドイツ=11.0、ブラジル=5.6、ロシア=5.3、中国=4.6、インド=2.6、韓国=1.2、そして日本は0.3と極端に少ない。実際の接種の進捗を見るには免疫獲得に必要な回数の接種を完了した人数も重要であり、それによれば、人口100人あたりではイスラエルが48.2人で、3人に1人以上が接種を終えた計算になる。

 18日(木曜)、アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンで接種後に血栓が確認された(1700万回の接種から14件)ため接種を中断していた問題に関連して、EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は調査結果を公表し、「安全で効果的なワクチン」とする見解を示した。これに伴い一時中止してEUの13ヵ国が接種を再開した(北欧の2ヵ国を除く)。

 この週、アメリカン航空やエールフランス航空で搭乗の際の保安検査のため、ワクチン証明書(グリーンパス)をスマホまたは紙ベースで用いる方式を活用し始めた。ワクチン接種をしたいない人を差別することにならないかと懸念する声があり、人権にかかわる憲法上の議論が各国及びEU議会で行われる見通しである。

 

 この間、次のテレビ番組を観ることができた。(1)TBS情熱大陸「新型コロナ緊急企画 ウィルスに挑む“現場の声”[河岡義浩 坂本史衣 忽那賢志]」1月24日。 (2)TBS情熱大陸「サイバー技術開発集団統括 登大遊(36歳) ▽天才が挑む自治体テレワークシステム開発」2月7日。 (3)NHKEテレ地球ドラマチック「ネアンデルタール人 真の姿に迫る!」13日。 (4)BS1スペシャル「アマゾン 文明の果て~死と再生を見つめて~」26日。 (5)ETV特集(選)「誰が命を救えるのか 医者たちの原発事故」27日。 (6)NHK週刊ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(2月22日~26日)」27日。 (7)福島でずっと見ているTV「漁師としえ生きる 相馬で」27日。 (8)NHK BS1スペシャル「渡辺謙と東日本大震災 見つめ続けた10年(前編・後編)」28日。 (9)BS世界のドキュメンタリー(選)「粘菌 脳のない天才」3月1日。 (10)NHK総合「逆転人生 “加害者”になった私 東電社員たちの10年」1日。 (11)NHK明日へ つなげよう選「俺たちにバックギアーはない~三陸から描く 水産業の未来図」4日。 (12)NHKスペシャル(選)「果てなき苦闘 巨大津波 医師たちの記録」5日。 (13)NHK週刊ワールドニュース(3月1日~5日)6日。 (14)NHK総合 花は咲くスペシャル「歌が紡いだ10年の物語」6日。(14)TBS「つなぐ つなげる」6日。 (15)目撃!にっぽん「消えた窯元 10年の軌跡~福島県浪江町~」7日。 (16)明日へ つなげよう「“助かった命”を守るために~震災関連死10年の記録」7日。 (17)「街は生き続ける~“ふるさとの記憶”から見つめる被災地のいま~」7日。 (18)NHKスペシャル「原発メルトダウン 危機の88時間」(2016年初回放送)7日。 (19)NHK「証言記録 東日本大震災 暴走する原発に突入せよ~事故拡大を防いだ下請け企業~」(2018年初回放送)8日。 (20)<NHK明日へつなげよう(選)>の「証言記録 レールをつなげ~誕生 三陸鉄道リアス線~」(2019年初回放送)8日。 (21)BS1スペシャル「奇跡の里浜 震災9年 再生の日々」(2020年初回放送)8日。 (22)NHKスペシャル「被爆の森~原発事故 5年目の記録」(2016年初回放送)8日。 (23)NHKスペシャル「メルトダウン 連鎖の真相」(2012年初回放送)9日。 (24)NHKスペシャル「命と向きあう教室~被災地の15歳・1年の記録」(2015年制作)9日。 (25)NHK明日へつなげよう「北の鉄人 7年の夢~釜石の復興にかけたラガーマン」(2018年初回放送)9日。 (26)NHKスペシャル「無人の町の“じじい部隊”」(2014年初回放映)9日。 (27)NHKスペシャル「定点映像 10年の記録~100ヵ所のカメラが映した”復興“~」11日。 (28)「戦災遺児 1500人」(2011年初回放送)11日。 (29)NHKスペシャル「廃炉への道 2016 核燃料デブリ 迫られる決断」12日。 (30)NHK首都圏情報ネタドリ「私を変えた3.11 東日本大震災から10年」12日。 (31)NHK週刊ワールドニュース(3月8日~12日)13日。 (32)NHKスペシャル「大震災と子どもたちの10年 いま言葉にできること」13日。 (33)NHK総合 明日へつなげよう「証言記録 東日本大震災SP ▽格闘と挑戦の10年 その先に」14日。 (34)NHK週刊ワールドニュース(3月15日~19日)20日。 (35)はい!テレビ朝日です「メディアフォーラム2021 東日本大震災から10年 メディアは何を伝えてきたか(池上彰ほか)」21日。 (36)テレメンタリー2021 3.11を忘れない85「変わる古里-フクシマはいま~」(テレビ朝日)21日。 (37)NHK未来スイッチ「東日本大震災の10年~未来につなごう あのときのこと~」21日。
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特別展「旅する根付」

 特別展示「旅する根付 高円宮妃殿下写真展と現代根付コレクション」が、三溪園の鶴翔閣で3月15日(月曜)から始まった。午前に開会式典があり、午後から一般公開。前日に東京で桜の開花宣言があったが、さらに暖かく、日差しも強い。今年いちばんの暖かさかである。

 正門を入ると遠く三重塔が見え、常緑のマツの深い緑が園路を包む。歩みを進め、睡蓮池の淵を白いユキヤナギが染めているのを目に入れ、ゆるやかな坂を上って茅葺屋根の大きな建物に至る。鶴翔閣は横浜市指定有形文化財で、明治35(1902)年に建造の木造平屋。

 原三溪(旧姓・青木富太郎)が新築、野毛山から移り住んだこの居所は、延床面積950㎡、廊下を除きすべて畳敷き。高い鴨居のせいで、ゆったり広々と感じる。新型コロナウィルス感染症防止のため、窓を開けて外気を入れ、椅子の間隔を広く取り、招待者は写真に縁の深い駐日各国大使と横浜各界の代表25名に絞られた。

 表題にある<根付>に馴染みのない方もおられよう。<根付>とは、薬を入れる印籠や金銭を入れる巾着などを帯から下げる紐の留め具。まさに必携の実用品であり、主人(持ち主)と共に旅をしていた。素材は象牙、骨、石、木など。微細な彫刻や蒔絵等を施した精巧な伝統工芸品である。サイズは稀に10~15センチ級の<巨大な>ものもあるが、4~5センチと小さいものが圧倒的に多く、掌にすっぽり入る。和服を着ることが少なくなった現代、ほぼ骨董品扱いである。

 フォト・ヨコハマ実行委員会主催の高円宮妃殿下写真展は、これまで4回、三溪園で開催している。本ブログ「野鳥たちの現在」(2017年3月3日掲載)に代表されるように、いずれも被写体は野鳥であった。

 開会式典で妃殿下は、大きく<絆>と書かれたマスクを着けて挨拶された。「新型コロナウィルス感染症で命を落とされた方々を悼み、感染症に苦しんでおられる方々にお見舞い申し上げます」と述べられた後、「市長さんが招いてくださるので、励みになり、新しい写真を撮りつづけております。…私は2つのテーマで写真を撮っております。鳥の写真と<旅する根付>の写真です。…」

 「…自由に飛び回る鳥と違い、根付であればこちらの思い描く通りに撮れるはずなのですが、意外とそうではありません。根付はごく小さいため、光の強さや方向、ちょっとした角度の違いなどが写真の雰囲気を左右し、ホコリや汚れ、綿毛などにも細心の注意が必要です。…」

 「…根付は作家が形にしたひとつの物語です。その根付を私がどちらかに持って行き写真に撮ると、その土地柄、後ろにある建物や風景と相まって、新たな物語が生まれます。…」

 「…その根付の素材となった牙や角、木材、金属には、作家と出会う前にも自分たちの経てきた歴史があるわけです。これだけアップで撮っても決して負けていない、この根付たちの存在感は、それぞれが持つ物語性の豊かさにつながっているのではないかと思います。…」と話された。

 これを受けて林文子市長が「開催にあたり」の挨拶をされた。「…横浜は、伝統とモダンが共存する街並み、至るとことに残る豊かな自然など、魅力的な撮影スポットにあふれています。また我が国における商業写真発祥の地の一つでもあります。より多くの皆様に写真や映像の文化に親しんでいただくため、横浜市は、毎年1月から3月にかけて「撮る・みる・楽しむ」写真の祭典<フォト・ヨコハマ>を開催、…そのイベントの一つとして平成30年に開催したのが「特別展示 旅する根付: 高円宮妃殿下写真展と現代根付コレクション」です。…豊かな自然と歴史を重ねた古建築が織りなす和の空間で、妃殿下の愛らしい根付の数々を、どうぞお楽しみください。」

 入口で配られた8つ折りのリーフレット「旅する根付 高円宮妃殿下写真展と現代根付コレクション」(A3サイズ両面)には、会場の地図と番号を付した写真、合計45点を収録、その一つ一つに説明が付いている。写真と、その対象としたガラスケース内の根付を結び合わせて眺め、撮影場所等を記した解説を読む。

 まず目に飛び込んできたのが15番の<母子猿>。解説には「小林仙歩 1989 撮影地:東京都赤坂御用地内 /サイズ:4㎝ 素材:象牙 つぶらな瞳の我が子をしっかり抱きしめ、授乳するお母さん猿。作家は穏やかな親子の一瞬をうまく表現している。」とある。

 作家、創作年、撮影地、サイズ、素材の順に並べ、寸評がつづく。以下同じ。

 リーフレットの表紙を飾る丸まった白い動物が38番の<ハート>。「渡辺一郎 1988 撮影地:東京都高円宮邸/サイズ:4.6㎝ 素材:象牙 真っ白でつぶらな瞳が特徴のタテゴトアザラシの赤ちゃんはみんなに愛される人気者。赤ちゃんアザラシの白は保護色。根付を雪の上に置いても見えないので、撮影には、青いメノウの板を雪の下に入れ、その上に載せて撮った。」

 翌16日(火曜)、午前中の公益財団法人法人三溪園保勝会の定例理事会を終えて、午後、再び展示会場を訪れた。外光の入る角度で前日とは違う印象を受ける。写真も違って見える。

 2番<牛若丸>の表情に魅かれる。「増田秀司 2007 撮影地:東京都赤坂御用地 / サイズ:4㎝ 素材:象牙 童謡では、牛若丸が弁慶に出会ったのは京都の五条大橋。襲いかかる弁慶をひらりと欄干を飛び交ってかわし、最後に打ち負かす。そこで、この写真、橋の上にいるように見せているが、実は欄干に乗せて撮っている。」

 10番<酔李白―呑み過ぎですよ李白先生>にも思わず笑みが零れる。「田村弦道 2006 撮影地:東京都高円邸 / サイズ:4.5㎝ 素材:象牙 お酒が好きであったことがはっきりと詩から伝わってくる李白。その姿をメノウの台の上において、ツツジを背景に撮影。明るい酩酊状態の表現を試みた。」

 写真を表装して掛け軸とし床の間を飾るのが28番<水守童>。大きなポスターにも採用された白い河童である。「糟谷一空 2010 撮影地:東京都御用地内 / サイズ:5.8㎝ 素材:象牙、黒檀、べっ甲、真珠、トルコ石、ピンクアイボリー 異なる河童を同じ場所で撮影したシリーズ。実に美しく、芸術的なデザインの河童。もはや妖怪ではなく、水を守る妖精のように見える。甲羅は黒檀に縁取りされたトルコ石。お皿はオパール。写っていないが、手には水を象徴する真珠を大事に持っている。」

 35番<浅利>。正面の料理人は朧に、手前のアサリを入れた皿にピントを合わせる。「村松朋 2004 撮影地:静岡県静岡市 / サイズ:4.5㎝ 素材:象牙 アサリは歯を持っていることがあり、それが飛ぶと魚についてしまうので、寿司屋の表には出さないとのこと。魚から遠ざけ、できるだけ短時間で撮影。根付は少し薄い色の塊。」

 最後の43番は<新しい命:男 新しい命:女>。「グレッグ・ストラディオット 2008 撮影地:島根県日御崎 / サイズ:8.8㎝ 8.0㎝ 素材:セイウチ牙 この作家は、自然やその叡智を象徴する鳥人間のテーマで数点作っている。ここでは大切な命を宿す卵を二人して守っている。日本海をバックに、六角形が特徴的な柱状節理の上で撮影。」

 根付の素材を「作家と出会う前にも自分たちの経てきた歴史がある」と見る妃殿下の想いが伝わってくる。解説の<現代根付作家>(正確な制作年が記されている)には、作家その人の<物語>、さらに作家と素材の出会いの<物語>が書かれている。会場の外には、二ホンタンポポの群生。

 展示は3月21日(日曜)まで。ぜひご観覧ください。

 桜の開花が早まったとはいえ園内の桜(ソメイヨシノ)はまだほんの数輪、今週半ばあたりから一斉に咲き揃うのではないか。開花の目印とされる天満宮わきの白いコブシが散り始めているので。

あれから10年

 3月11日(木曜)、東日本大震災から10年を迎えた。地震発生時、私は都留文科大学の学長室にいた。眠れぬ一夜を明かし、翌朝に電気が復旧、テレビの東北の惨状に息を飲む。大学は春休みで東北地方にも多くの学生が帰省していた。東北各地で働いている同窓生も少なくない。被災地の人たちはどうしているだろう、学生たちは無事か。突き動かされるように、その日から<都留文科大学 学長ブログ>の掲載を始めた。ブログの掲載作業は情報センターの大輪知穂さんにお願いし、その後もつづいて世話になっている。また学長退任時にこれを冊子に編集してくれたのは総務課企画担当(当時)の近藤秀明さんである。この場を借りて厚くお礼申し上げたい。

 直後から教職員が懸命の安否確認に動いた。同窓会組織のツテにも頼り、一人残さず追った。4日後の14日、緊急の理事会を開き、被災地出身の学生たちの支援を決め、その日に「学生のみなさんへ」の学長メッセージをホームページに掲載した。被害が甚大と判断した東北3県の出身学生は60人。内訳は岩手県の宮古市、山田町、大槌町、陸前高田市、大船渡市、釜石市等の26人、宮城県は仙台市、名取市、石巻市、亘理市の30人、福島県は相馬市、富岡町、楢葉町の4人である。消息を確認できた人数は日を追って増え、地震発生から1週間後の18日(金曜)には2人を残して無事を把握した。後に不明の学生1人の死を知らされる。

 この重大事を忘れないよう「書きとめておこう-記憶から記録へ」と呼びかけた掲載は4月10日。そして「あの日から半年」(2011年9月14日掲載)。岩手県、宮城県の同窓会の尽力で被災地を慰問、その視察の記録が「岩手県訪問」(2011年9月29日)である。また「東日本大震災の記録」(2012年2月6日)、「大震災から2年」(2012年3月11日)、「宮古市の震災復興」(2013年10月20日掲載)、「大震災3年後の原発政策」(2014年3月11日掲載)とつづく。

 学長退任とともに<学長ブログ>を終え、後継版として本ブログ(<加藤祐三ブログ 月一古典>)を翌月の2014年4月6日から開始、今に至る。うち東日本大震災関連の記事は、「東日本大震災から4年」(2015年3月11日掲載)、「東日本大震災から5年」(2016年3月11日掲載)、「あれから9年」(2020年3月12日掲載)である。

 今年は震災から10年という節目にあたり、メディアも連日、「東日本大震災から10年」関連の特集を組む。テレビ番組は可能な限り心して観た。その一部を取り上げたい。

 (A)2月24日の日経新聞(朝刊)掲載の村井宮城県知事と達増岩手県知事に聞くインタビュー記事。自らの政治的行政的成果については、両知事ともに高台宅地の建設、防潮堤や道路の整備、仮設住宅から恒久住宅へ移り、大型商業施設を建設する等、いわゆるハード面の整備はほぼ終わったとする。
 残された課題として心のケアや不登校の問題等、ソフト面を挙げる。「阪神淡路大震災の例を見ると25年ほどかかり落ち着いてきたので、すこし息の長いスパンで対策を考える必要がある。…10年たつと相当風化が進む。だから風化が進むのは覚悟しないといけない。言い換えれば、自分の力で立ち上がる自助・自立の気概を持たなければダメだ。…」
 被災者は「自分の足で立ち上がれるようにしてほしい。そのためのお手伝いはする…最初は(国などが)いろいろなことをしてくれるが、だんだんしてくれなくなる。それをソフト面からサポートするのがこれからの行政の望ましい姿…」。
そのうえで震災前の2010年と直近の2018年のデータを比べて、農業産出額は115.5%、漁業のそれは102.3%、林業は111.8%、製造業は131.1%と順調に伸びているが、水産加工品の出荷額は90.1%に留まっているという。

 一方、達増知事は、「県内で1万3984戸用意した仮設住宅から、入居者が恒久住宅へ移れた。中心市街地に大きな商業施設ができるなど、街も再建できた。暮らしにせよ仕事にせよ、震災前より大きな希望を持てるようになった」としたうえで、その先の多くの課題に触れる。
 「…コミュニティーの形成支援や心のケアに加え、震災以降に起きた漁獲量の大幅減少、新型コロナウィルスの感染拡大による事業者の売り上げ減少といった課題がある。11年目を迎える新しいステージのなかで対応していく必要がある。…」
例えば「陸前高田市等で利用されていないかさ上げ地が多いが」の疑問について、「被災者の自由意思に基づいて進める事業なので、最初の意思表明とその後の実際の行動が違っていることがある」と知事は答える。沿岸部には若い人向けの手ごろな家賃の住宅が少ないという問題にも行政として対応していると知事。「…水産加工業は記録的な不漁の打撃を受けているが、イワシは豊漁、ギンザケ等の養殖もやっている。インフラはあるので不漁やコロナ禍が解決されれば飛躍できる条件は整っている。巣ごもり需要に対応するビジネスモデルを確立した水産加工業は、震災前より収益が上がっている。…」

 (B) 28日(日曜)の朝日新聞デジタルは、あの日、宮城県南三陸町の町防災対策庁舎で指揮を執っていた佐藤仁町長の聞き取りを掲載。南三陸町は津波に襲われ、市街地が壊滅、831人が犠牲になった。町長は辛うじて死を免れたが、43人もの職員たちが失われた。あれから10年。住宅や公共施設の高台移転は進み、復興事業はゴールが見えた。首長が死線をくぐり抜けた生き残りであることを知る人も少なくなった。人口1万2千の小さな町で、陣頭に立ち続けてきた指揮官の胸の内の、その一部を転載する。
――屋上のアンテナに上って耐えました
 津波は2回、3回と襲ってきました。太いアンテナに7人、細い方に3人。アンテナに巻き付けられている電線に足をかけて4回上り下りしました。いまやれと言われても到底できません。
 ――階段の手すりに引っかかって助かりました
 最初は海側にいましたが、町役場が折れて(防災対策)庁舎にぶつかってきたので、様子を見ようと階段側に移動した時、波をかぶってフェンスに押しつけられました。もし元の位置にいたら、みんなと同じように流されていたでしょう。津波がせり上がり、屋上の私たちをのみ込むまで、まばたきする間でした。
 ――あの瞬間はいまも鮮明ですか
 はっきり思い出せます。ただ数年前、生存者が集まって記憶を突き合わせたのですが、一人ひとり覚えていることが違いました。どこにいて何をしていたのか、時系列がバラバラ。みんな自分が正しいと思っているものだから、全然かみ合いませんでした。
 ――いまも当時のことを思い出しますか
 震災3年目ごろまで、朝起きると家族から「ゆうべもおぼれていた」とよく言われました。水の中で息ができない悪夢。寝ながらもがいていたようです。当時は枕に頭をつけるとすぐ眠りに落ちるくらい、疲れ果てていたのですが。

 (C) 3月1日のTBSの特集で、震災直後に<希望>新聞を作って近所に配った岩手県大船渡市の女子中学生が、その後、願いかなって小学校教員となった。震災を知らない児童たちに、どう体験を伝えるか、その姿を追う。
東北各県の自治体ホームページでも、さまざまな特集を発表しており、上掲の大船渡市の場合、①被害状況等、②被災者向け情報、③ご支援いただける方むけの情報、④災害義捐金等の受入れ及び配分・活用の状況、⑤放射能に関する情報、⑥全国避難者情報システムを掲載しており、リンクとして岩手県につながる仕組みを採っている。

 (D) 2月27日放映のETV特集(選)「誰が命を救うのか 医師たちの原発事故」は、東京電力福島第一原子力発電所の事故発生直後、福島に入った医師たちの奮闘と当時の医療現場のすさまじい実態を明らかにする。安全神話のもと事故発生時の医療の準備はほとんどなく、国(民主党 菅直人首相)の指揮命令系統は混乱。ここで言う指揮命令系統とは、1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故を受けて設けられた原子力緊急事態宣言を2011年3月11日午後7時3分に政府が出したもので、宣言後は首相に権限が集中、対策が必要な地域の指定や避難の指示などの対応を直接行うことができる。
そのような中、放射能による被害住民の手当、原子炉爆発で負傷した自衛隊員の治療等、次々と発生する事態に命をめぐる判断を迫られる最前線の医師たち。医師たちが撮影した映像と、最近のインタビューを交えて構成。最後を「原子力緊急事態宣言はまだ解除されていない」で結ぶ。
 また3月5日放映のNHKスペシャル(選)「果てなき苦闘 巨大津波 医師たちの記録」(2011年初回放送)は、災害医療の経験を持つ医師が、石巻市の約140の医療機関で唯一残った石巻赤十字病院の苦闘を伝える。医療以前の被災状況の把握、被災現場に届かない食料等の調達、限られた医療資源を有効に活用するためのトリアージ等、混乱の3か月間を記録する。

 (E) 3月8日放映のNHK「証言記録 東日本大震災 暴走する原発に突入せよ~事故拡大を防いだ下請け企業~」(2018年初回放送)は、福島原発の生命線と言える膨大な計器類(水位計、圧力計、水量計等)を管理する計装工たちの奮闘と苦悩を追う。東京電力福島原発は東電社員のほか多数の協力企業(元請けと下請け)で成り立っている。最前線で危険な作業を行うのは下請け企業である。
 地震発生から50分後、高さ13メートルの津波に原発は電源も制御盤も水没、機能不全となり、翌12日に1号機が水素爆発する。13日には3号機がメルトダウンの末に水素爆発、放射線量の許容上限を超えるなかで、放水(注水)ポイントを定めるため社員は冷静かつ果敢に現場へ向かう。

 (F) <NHK明日へつなげよう(選)>の「証言記録 レールをつなげ~誕生 三陸鉄道リアス線~」(2019年初回放送)は、津波被害を受けた東北沿海部を走る鉄道路線の被害と復活までを追う。運営主体の異なる北リアス線と南リアス線(第3セクター運営)の間にJR山田線が運行していた。なお「三陸鉄道社長が語る、震災後の苦難と感謝の10年」を参照した。
北リアス線は被害が比較的軽微な区間の整備を行い、3月16日から「災害復興支援列車」として、3往復、無料運行を開始。社員たちの不眠不休の取り組みにより、震災からわずか5日後、沿岸部の鉄道として最も早い運行を再開した。その後、着々と工事を進め、翌2012年4月1日には全線を復旧。
 被害が大きかった南リアス線も2014年4月6日、ほぼ3年ぶりに全線での運行再開を果たす。中東のクウェートから20億円を超える支援の手が差し伸べられ、それを元に8両を新造、津波で流された島越駅などを再建した。
壊滅的な被害を受けたJR山田線(釜石~宮古間)をどうするか。地元住民の熱意が国を動かし、様々な議論の末、JR東日本が復旧工事を行い、三陸鉄道に移管することで合意。2019年3月23日、8年ぶりに列車が走った。3路線は統合されてリアス線に。“三陸縦貫鉄道”盛(さかり)~久慈間163kmは、第三セクター鉄道としては日本一長い鉄道となった。

 (G) 報道を職とする人の個人的な記録としても読める文章、山﨑敦「止まった刻を進めるために-東日本大震災十年-」(『図書』 岩波書店 2021年3月)は、記録を残そうとブログを始めた私個人の思いと共通する。<河北新報>(仙台)記者の山崎さんは、首相官邸の向かいの国会記者会館3階で3・11に遭遇、家族は仙台にいた。日記を読み直し、自身の不安や行動を復元していく。
 本社の仙台に呼び戻され、初めて石巻市に入ったのが4月3日、「何もかも被災して出動できず、道案内しかしていない」と自嘲気味に答えた若い消防士を記事にするときの気持ちを「…無力感にうちひしがれている消防士を取り上げることはほとんどない。<何もできない>のは自分も同じだった」と述べる。
 「…石巻総局で三年ぶりに再会した先輩記者の無事に安堵すると同時に、最前線で体を張ってきたことを物語る無精髭に、会社が最も大変な時に何もできなかった申し訳なさと、これから自分がどう貢献すればいいのかという思いが改めてこみあげてきた。…」。2年後に福島総局へ移り、時代は飛んで2017年10月にデスク兼キャップとして「石巻市大川小取材班」を立ち上げる。大川小学校は全校児童108人中、70人が津波で死亡、4人がいまも行方不明である。避難を引率した教職員11人中10人も津波に奪われた。

 (H)朝日新聞デジタルの2月26日版「映画がつなぐ人と人 被災地で上映900回、気づいた力」は、映画という娯楽を届ける岩手県宮古市の映画館主の活動を伝える。この10年、避難所で、仮設で、災害公営住宅で、上映は900回を超えた。
 「昼間、見に来てくれるのは、お年寄りがほとんど。映画の全盛期を知る人たちです。定番は「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」シリーズですね。津波前の街の様子がちらっと出てくると、「あっ」と声が上がる。泣いたり笑ったり、小さな真っ暗な部屋で気持ちが揺さぶられ、みんなで盛り上がる。…映画ってこういうものだったな。…こうした活動は現在、より大切になっていると思います。避難所や、壁が薄くて隣の音が筒抜けだった仮設住宅のころと違い、災害公営住宅は多くの場合、…ドアを閉めたら、外の様子は何も分からない。人間関係を一からつくるのがおっくうで、引きこもっている人が想像以上に多い。…それを心配して集会所が設けられていますが、実はあまり利用されていません。…「自治会の会合があるから」と呼びかけても入りづらいらしい。その点、映画の上映会は声をかけやすい。「寅さんやるから来ない?」 自治会の役員さんたちも誘ってくれます。一緒に楽しんでお互いの顔を知り、話をするきっかけづくりになるんですね。そもそも映画の後って、誰かと話したくなるじゃないですか。感想やら、違う見方やら、うんちくやら…。ひとしきり盛り上がった後で、「次は何をやりましょうか」と尋ねると、また話が弾みます。」

 (I) 3月1日放映のNHK総合「逆転人生 “加害者”になった私 東電社員たちの10年」は、会津若松市の支社に派遣された社員が、被害住民の<賠償損害手続き>に真摯に対応するなかで被害者の苦悩に直面する。原発を基盤に<オール電化>の夢を売り込んできた社員たちの忸怩たる思い。「大人の対応を」と歩みよってくれた住民たちと心の交流が始まり、後に移住を決意する社員も。

 (J) 3月4日放映のNHK明日へ つなげよう選「俺たちにバックギアーはない~三陸から描く 水産業の未来図」(2019年初放送)は、<明日へ つなげよう>シリーズの一つ。見向きもされないと言われたエイの肝さえ一流ホテルのシェフをもうならせる旨さに仕上げる等、魚介の鮮度と弾力を保つ特殊な冷凍技術を開発、さらに春夏秋冬いつでも遠方へ供給する方法を生み出した岩手・大船渡の水産加工会社代表と三陸漁業生産組合の漁師たち。アジア市場の開拓を目指し台湾へ乗り込む。

 (K) 3月5日放映のNHKスペシャル(選)「“災害ヘリ”映像は語る~知られざる大震災の記録~」(2014年初回放送)は、震災発生から2日間の空撮と、全国から駆けつけたヘリコプター(自衛隊、消防、海上保安部等)による救出作業を記録した動画。これを基にした研究者の解析により、津波の予想外の動き、従来の防火の常識が通用しない津波火災の実像等、震災の知られざる姿が浮かび上がる。救助にあたった乗組員たちの証言も交え、あの日の真実に迫り、減災の教訓を探る。

 (L) 3月5日放映のNHKBS1「東北推し! トークルーム311@いわて」は、震災後にぎわい創出の拠点として建てられた釜石魚河岸テラスで、震災当時は中高校生だった若者7人が語り合う。企画と進行を担うNHK盛岡の記者(女性)は当時高校2年生。岩手県大船渡市で陸上あわび養殖をしている男性、企業のマッチングで経済活性化を図る宮古市の男性職員、神戸から移住し防災用具の会社を作った男性、大槌町で子育て支援団体の代表をしている女性、宮古で震災の恐ろしさと命を守る方法を語る防災ガイドの女性、大槌町出身の東京でモデルデビューした女性、匿名のAさん(男性)が、互いに聴きつ答えつ、10年を経て今まで話せなかった心の内を明かす。

 (M) 3月6日放映のNHK・民放共同制作「花は咲くスペシャル 歌が紡いだ10年の物語」は、歌詞だけを朗読でつなげる特集。「花は咲く」は、共に仙台市出身の映画監督・岩井俊二作詞、菅野よう子作曲・編曲で、NHKが2011年度から始めた震災支援プロジェクトの復興テーマソングとして作られた。参加者は東北ゆかりの著名人34組がリレーしたオリジナル版をはじめとして毎年多くのバージョンを生み出している。
 亡くなった人が「真っ白な 雪道に 春風薫る…」故郷の日々を懐かしみ、果たせなかった夢や愛おしい友を想う。そして「…花は咲く…いつか生まれる君に…」、「…花は咲く いつか恋する君のために」と、未来の人に希望を託す。

 (N) 3月6日放映のTBS「つなぐ つなげる」は、日本屈指の漁港・宮城県気仙沼を襲った “黒く、重い” 津波を分析する。民放各局と NHK が手を携え、映像を共有して制作するプロジェクト、 「キオク、ともに未来へ。」 の枠組みで、映像をつぶさに分析し、①津波がなぜ “黒く” なったのか、②黒い津波の “重さ” がもたらす、すさまじい破壊力、③津波火災の脅威等を検証。

 (О) 3月7日放映 明日へ つなげよう 「“助かった命を守るために~震災関連死 10年の教訓」。被災のストレスに加え環境悪化に直面、<生活不活発病>となり死亡(死因は心不全と肺炎が多い)した震災関連死は福島県で2320人にのぼる。今後も想定される災害関連死の予防を考える。

 (P) 3月7日放映の「街は生き続ける~<ふるさとの記憶>から見つめる被災地のいま~」は、<模型復元プロジェクト>として、建築学科等の学生が福島県富岡町、宮城県南三陸町、岩手県陸前高田市の住民から<ふるさとの記憶>を聞き取り、失われた街の模型(ジオラマ)を製作する。このプロジェクトは被災者たちを励まし、消失した故郷の記憶を風化させない大切なものであるとともに、震災前の人々の暮らしを伝承していく具体的な教材となる。

 (Q) 3月8日放映のBS1スペシャル「奇跡の里浜 震災9年 再生の日々」(2020年初回放送)。仙台市新浜地区(5000世帯)の貞山運河(日本一長い全長50キロで400年前に伊達政宗が着工)流域も津波被害を受けたが、地域住民の努力により生き残った松林が再生、一度は姿を消した絶滅危惧種の多くの植物も再生・繁茂、自然の驚異的な回復力を伝える。活動を先導する地域リーダーの「自然とたわむれる」と言う言葉が心に残る。なお3月7日放送のNHK「ダーヴィンが来た 三陸の海」は海藻類の思いがけない力や、そこで育まれる魚介類に注目する。

 (R) 同じ3月8日放映のNHKスペシャル「被爆の森~原発事故 5年目の記録」(2016年初回放送)は表題の示すとおり、震災5年後の調査記録。福島第一原発から半径20キロ圏(住民7万人が避難)の森の動植物を追う(主に浪江町、富岡町)。イノシシ、ニホンザル、ハクビシン等が無人となった民家や道路を縦横に動き回る。セシウム等の放射性物質を取り込んだ動植物の被爆実態、その遺伝子に及ぼす影響等を調査。「数十年の追跡調査を通じて正確な被害実態が分かる」と研究継続の重要性を指摘する。

 (S) 3月9日放映(再放送)のNHKスペシャル「メルトダウン 連鎖の真相」(2012年初回放送)は、福島第一原発2号機と3号機の事故の真相を解明した事故1年4ヶ月後の状況を伝える。SR弁が開かないため原子炉内の蒸気圧を減圧できず、水を注入することによる冷却機能が失われ、メルトダウンが起きた。調査の結果、耐震性の低い配管の損傷が判明、誰も想定していなかった欠陥である。全国に26基ある沸騰水型原発に共通する構造で、東電や国会の調査報告書では明らかにされていない問題点を解き明かした。

 (T) 3月9日放映のNHKスペシャル「命と向きあう教室~被災地の15歳・1年の記録」(2015年制作の再放送)は、宮城県東松島市立鳴瀬未来中学校(被災した2つの中学を統合)の3年生82人が授業で「命」と向き合った記録。市では1000人以上が犠牲となった。身近な人を亡くし、死を目の当たりにした生徒たちの、心に封印していた体験を作文で発表し、思いを伝え合う。つらい気持ちを吐露する友に自分の体験を重ね合わせ、生きる意味、命とは何かを考える。卒業を控えた授業の終わりに教師が声をかけた。「これは一生の宿題、高校に行っても大人になっても問いつづけてほしい」と。

 (U) 3月9日放映(再放送)のNHK明日へつなげよう「北の鉄人 7年の夢~釜石の復興にかけたラガーマン」(2018年初回放送)。V7戦士(1979~85年と7年連続日本一を成し遂げた新日鐵釜石ラグビー部)で、かつて“北の鉄人”と呼ばれたラガーマン、石山次郎(背番号1番)は震災直後からラグビーW杯(2019年秋に日本で開催)の誘致を掲げて奔走する。震災復興かラグビー復興スタジアムかをめぐる、賛否両論の複雑な住民感情、意見の違う仲間との葛藤を乗り越え、会場12都市(2015年に決定)の一つとして誘致に成功。そして釜石鵜住居復興スタジアムのこけら落としの8月、大勢の観客を迎え、新日鉄釜石OBは、かつてのラグビー界の両雄、神戸製鋼OBとレジェンド試合を挙行、還暦を迎えた選手たちは10分間を闘い抜く。ラグビーW杯の予選会場となるのは翌年2019年10月である。

 (Ⅴ) 3月9日放映(再放送)のNHKスペシャル「無人の町の“じじい部隊”」(2014年初回放映)は、福島第一原発がある大熊町の帰還困難区域でテレビカメラが初めて3年の長期にわたって継続取材したドキュメント。定年退職した町の元最高幹部6人の自称“じじい部隊”が、被爆は若い人より自分たちがと防護服に身を包み、防犯・防火のパトロール、一時帰宅の住民の扶助、除染作業の監視、セシウム値計測等で<無人の町>を守り、町の復興・帰還計画をけん引する。

 (W) 3月11日放映の「戦災遺児 1500人」(2011年初回放送)。震災から9か月後、かけがえのない父や母を失った<震災遺児>たちは、仮設住宅や親戚の家で落ち着いた生活を取り戻したように振る舞いつつ、さまざまな形で苦しみと向き合っている。母と弟を失い、残された父が抱える無念さまで背負おうとしている男の子。両親と姉を失い、悲しみを押し込め、健気に振舞う女の子。なお3月13日放映予定のNHKスペシャル「大震災と子どもたちの10年 いま言葉にできること」も挙げたい。

 (Ⅹ) 3月12日放映のNHKスペシャル「廃炉への道 2016 核燃料デブリ 迫られる決断」は、メルトダウンした3つの原子炉を同時に<廃炉>にする、世界でも前例のない取り組みを取材する長期シリーズの2016年版。デブリをどう取り出すか、大方針を決めるまであと1年に迫る時点の現場の格闘を伝える。メルトダウン(溶け落ちた)核燃料は<デブリ>と呼ばれ、極めて強い放射線を発する。これに耐え、放射性物質の飛散も防ぎつつ、デブリを安全に取り出したい。放射性物質を封じ込める“最後の砦”の格納容器は、事故で様々な場所が損傷。補修に向けた技術開発が進められているが、道のりは想像以上に険しい。

 (Y) 首都圏を含む広域も激しく揺れ、あっけなくインフラが機能不全に陥った。都会の便利な暮らしに頼り切っていた自身の無力を実感し、人生観を一変させて次の一歩を踏み出した人たちがいる。苦しむ人を助けられる人間になりたいと医者に転身し、南相馬市の病院に赴任した男性、山村に移住し自給自足を始めた女性等のエピソードを、NHK首都圏情報ネタドリ「私を変えた3.11 東日本大震災から10年」(3月12日)が伝える。

 (Z) 3月11日放映のNHKスペシャル「定点映像 10年の記録~100ヵ所のカメラが映した”復興“~」。NHKは東日本大震災直後からの10年間、岩手・宮城・福島の被災3県100か所で復興への歩みを定期的に撮影、思いがけない光景が。延べ250人のカメラマンが撮り継いだ6000カットに及ぶ「定点映像」には、防潮堤や住宅などハードの再生のみならず、暮らしを取り戻そうとする人々の営みが記録されていた。映像等を頼りに遺族を取材(最新は今年3月)、様変わりする街並みへの複雑な思い、亡き家族への鎮魂の思いを伝える。取材したカメラマンの一人は「…忘れてはいけないとよく言いますけれども、忘れてはいけないことのほとんどを私たちは知らないんじゃないかという気持ちになります。…」と漏らす。


 日本は豊かな自然に恵まれている。それとともに、地震、台風、水害、風雪害等々の自然災害が繰り返し起こる国であるということを改めて痛感させられる。大地震だけでも阪神・淡路大震災(1995年)、新潟県中越地震(2004年)、熊本地震(2016年)が思い浮かぶ。いまも首都圏直下地震や南海トラフ地震等が高い確率で想定されている。東日本大震災は他人事ではない。

仙台鼎談会「ポストコロナ社会の地方DX創生」

 2月18日(木曜)、16時半から2時間、オンラインで表題の「ポストコロナ社会の地方DX創生」(正確には仙台鼎談会「ポストコロナ社会における地方DX創生」)が行われた(定員300人 事前申込 無料)。
最初に連絡を頂戴したのは2月5日つけのメールで、その冒頭に(このメールは、当社代表取締役 藤原洋と名刺交換させていただいた方にお送りしております)と添え書きがあった。藤原さんと名刺交換をしたのは7年前の2014年4月だったと思う。案内文は以下の通り。

本日は、仙台応用情報学研究振興財団×東北大学知のフォーラム連携イベント仙台鼎談会「ポストコロナ社会における地方DX創生」(オンライン) のご案内です。
本イベントは、 Zoom Webinar における鼎談形式で行われます。
総合司会:舘田 あゆみ(東北大学特任教授)
登壇者:
藤原洋氏(株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO)
村井純氏(慶應義塾大学授・内閣官房参与)
青木孝氏(東北大学理事・副学長(企画戦略総括担・プロボスト・CDO)
仙台応用情報学研究振興財団の野口正一理事長がコーディネーターとなって進めます。
主催:仙台応用情報学研究振興財団
東北大学 研究推進支援機構 知の創出センター
東北情報通信懇談会
共催:一般財団法人インターネット協会 IoT推進委員会IoT/AI時代における
オープンイノベーション推進協議会  東北大学大学院工学研究科 情報知能シス
テム研究センター(IIS研究センター)
協賛:一般社団法人東北IT産業推進機構
後援:仙台市

 鼎談の趣旨は次のとおり。「新型コロナウィルス感染症により、地域の生活や経済が一変してきました。新たな日常のなかで、感染症の克服と経済活性化の両立の視点を取り入れ、デジタルトランスフォーメーション (DX) を推進しつつ、東京圏への一極集中から、危機に強い地方経済の構築を目指す動きが活発になってきました。今回の鼎談では、コロナに強い社会環境整備、新たな暮らしスタイルの確立、消費・投資の促進などについて、DXを推進した地方創生の戦略を、スーパーシティー・スマートシティー構想も交えながら産官学の立場から討論をしていただく予定です」。 

 新型コロナのもたらす<新たな日常>、デジタルトランスフォーメーション (以下DXと略称)、「危機に強い地方経済の構築」…、総じて「DXを推進した地方創生の戦略」とある。気にはしつつも、DXはいささか苦手の分野である。だが藤原さんからのお誘いなので「素人には無縁」ではないはず、とすぐ参加を申し込んだ。

 藤原さんについては、本ブログの「地球環境とサイエンス」(2014年10月1日掲載)や「ありがたき耳学問」(2016年5月24日掲載)等に登場する。藤原さんとお会いして驚いた。それまで類似の知人がいなかったからである。藤原さんを私なりに定義すると、情報科学の最先端を走る科学者であって実業家(上掲の通り、株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO)、そして文学や芸術等に造詣の深い文化人とでも言うべきか。

 2月18日のオンライン鼎談の当日は、一人15分の持ち時間で基本的見解を述べ(基調講演)、その後にパネルディスカッションがつづいた。論点も多岐にわたり、放映資料が多く、画面の字も判読しにくい。目を通す前に次に移って、素人には追いかけ切れない。聞き直したいと思っても、進行形中のため、戻すことができない。諦めかけていた。

 そこに10日後の3月1日(月曜)、東北大学知の創出センターの前田吉昭さんから、次のメールが届いた。「今回の鼎談会は、大変反響も大きく、登録をしたが見ることができなかった、もう一度見たいという多くのご希望がありました。そこで、登録されたかた限定で鼎談会の録画を公開いたします。…また、鼎談会での資料は以下のホームページにありますので、ご興味のある方はそちらからダウンロードをお願いいたします」。ありがたい連絡である。

 気合を入れて聴こうと思い、まずネット検索する。SoftBank「【徹底解説】デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か?」(2020年3月4日掲載)があった。素人には格好の解説である。そのうち冒頭の「DXの定義」を引用する。なお<変化><変容><変革>等を意味するTransを英語でXと表記することがあるためDXの省略形が使われる。日本語では<デジタル変革><デジタル化>とも呼ばれる。

 「DXが最初に提唱されたのは2004年のこと。もともとDXとは、スウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマン氏が主張した「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念のことを指します。
 近年では、一般的に「最新のデジタル技術を駆使した、デジタル化時代に対応するための企業の変革」という意味合いのビジネス用語として使われています。
 なお、先述の「DX推進ガイドライン」(経済産業省 2018年)では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と、より詳細に定義しています。」

 ついで「DXに必要なテクノロジー」として、①クラウド、②AI、③IoT(Internet of Things)、④5G、⑤モバイルの5つを挙げる。なお③IoT(Internet of Things)は、他でもない藤原さんの開発と命名と聞いている。

 前置きが長くなったが、膨大な資料に目を通し、いよいよYouTubeの録画を開く。まず藤原洋氏、村井純氏、青木孝氏の順で紹介したい。

 1 藤原洋氏「『ポストコロナ社会へ向けてのSDGsによる地方創生』 ~地域金融・中小企業のFinTech/デジタル化が開く未来~」。放映する資料のスライドは精選したものだが、それでも実に64枚に及ぶ。なお藤原洋の近著『全産業「デジタル化」時代の日本創生戦略』(PHP社 2018年)等を参照されたい。

 報告の論点は次の4点である。(1)「ポストコロナ社会」、(2)「失われた平成の30年とコロナショック」、(3)「Fintechの登場とコロナ後の金融ビジネスの構造変化」、(4)「地方創生の原動力 ~SDGsと地域社会のデジタル化~」。

 うち(1)「ポストコロナ社会」を次の8つの側面から定義する。①誰にもあるCOVID-19への感染リスク、②行動原理=「三密回避」、③ワークスタイル=テレワークが基本、④ライフスタイル=ホーム(で)ワーク、⑤首都圏一極集中⇒地域分散、⑥SDGsの浸透、⑦「健康」と「経済」の両立、⑧「健康」=「自然環境」+「人間」。①~⑤について説明は不要であろう。⑥~⑧は相互に関連している。

 ついで(2)「失われた平成の30年とコロナショック」を示す代表的事例として、世界企業の時価総額ランキングベスト50社にランクインする日本企業の平成元年(1989年)と、平成30年(2018年)の比較を行う。平成元年(1989年)には第1位のNTTをはじめ、当時の日本興業銀行、都市銀行が世界の上位にいて、32社がランキング。30年が経過した平成30年(2018年)には、35位のトヨタ自動車だけ。

 「平成日本の失われた30年」の要因は「デジタル化への遅れ」と「一極集中」(首都圏と大企業への一極集中)と指摘し、「平成日本の30年間に、紙からデジタル情報への移行も、 コンピュータ・ネットワークシステムへの移行も、欧米、中国、シンガポール、台湾、韓国、オーストラリア、ニュージーランド等と比較して、極めて遅れた!」と鋭く指摘する。

 首都圏に人口の3分の1、経済の半分が集中しており、37万km2の大半の国土を活かしきれていない。大企業を経団連企業とすると経団連企業の従業員数は 約12%でしかなく、残りの88%は中小企業の従業員である。前安倍政権のキャッチフレーズに「一億総活躍社会」があったが、現在は「一億非活躍社会」である。

 次の(3)Fintechは中核的な論点であるが、いささか金融に特化した専門的内容なので飛ばし、(4)「地方創生の原動力 ~SDGsと地域社会のデジタル化~」に進もう。2014年からはじまった地方創生活動がなかなか成果をあげられなかった理由として、次の6つの分断の存在を指摘する。①「官民の分断」、②「縦割り組織の分断」、③「現在と未来の分断」、 ④「地域間の分断」、⑤「世代の分断」、⑥「ジェンダーの分断」。

 「この分断の解決策こそが、SDGs!」と主張する。平成日本の低迷の要因である「一極集中」を解消するためには、地域金融と中小企業のデジタル化が不可欠!と述べ、「重要なことはデジタル化とIT化とでは、全く異なることを理解しなければならない。IT化とは、業務に情報技術を取り入れることで、業務をITベンダーに丸投げに近い発注をすることと同義であり、丸投げに近いシステムでは、ベンダーにとって都合の良い仕組みとなっていて、ユーザーにとっては不都合なことが多く、ベンダーロックインがかかっていることが多い!デジタル化とは、DX(デジタルトランスフォーメーション:変革)と同義で、業務プロセスを全面的に見直し、デジタル化するのも、業務を実行はユーザー・サイドが責任を持つ!」

 中小企業のデジタル化とは、「従来型の大企業を頂点とするビラミッド型の産業構造の転換、下請け体質からの離脱!」と檄を飛ばし、次のように宣言する。

 「今後起こる新たな産業革命は、<産業のデジタル化>(DX)であり、最終ユーザーとサービスや部品などを提供するあらゆる企業がネットワークで相互接続され、協働し、レジリエント(強靭)なサプライチェーンの構築を意味する! 中小企業は、担当分野の技術を自社技術として確立する必要がある。重要となる新たな潮流が、オープンイノベーションであり、中小企業は、地方大学や専門技術を有する中小企業同士で連携しその技術の確立とその技術に基づくビジネスへと転換する必要がある」


 2 村井純氏「新しいデジタル政策の始動」。村井氏は慶應義塾大学授、内閣官房参与として、政府のデジタル化の戦略・戦術を担う。その具体的な方法と意義を分かりやすく語る。

 まず(1)「COVID-19でのDXに関する経験」で次の9点を挙げる。①自宅ですべてのことをやる、②家族はバラバラにオンライン、③オフィスに行かなくても仕事をする、④家の近所をオフィスにする、⑤学校がオンライン授業の拠点になる、⑥医院・病院に行かずに診療を受ける、⑦コンサートやイベントが普通に開催できない、⑧3食とも家族全員が自宅で食事、⑨ 「2年のDXを2ヶ月で経験した」サティア・ナデラ。

 ついで(2)「DX:過去の経緯からの学び」を総括する。過去3度のアクション、2000年から開始した我が国のIT政策は理念を示す基本法とそれを実行する機構の定義のセットでこれまで3つのアクションが取られてきた。
・第一に、2000年施行「IT基本法」に基づき、内閣IT総合戦略本部を設置。
・第二に、2014年の「サイバーセキュリティ基本法」に基づき、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)がIT本部から独立。
・第三に、2016年に「官民データ活用推進基本法」が施行。データ活用戦略会議はIT総合戦略本部と有識者・実行部隊共に同一組織であり、会合も同時開催で行われてきた。

 さらに(3)「2021年」として、本年9月1日施行予定の、デジタル社会形成の基本法と設置法の法案を示す。このなかに<デジタル庁>設置が含まれる。
 基本法の趣旨とは、「デジタル社会の形成が、我が国の国際競争力の強化及び国民の利便性の向上に資するとともに、急速な少子高齢化の進展への対応 その他の我が国が直面する課題を解決する上で極めて重要であることに鑑み、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進し、もって我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現に寄与するため、デジタル社会の形成に関し、基本理念及 び施策の策定に係る基本方針、国、地方公共団体及び事業者の責務、デジタル庁の設置並びに重点計画の作成について定める。」
基本法の概要のうち2点を引用する。
 ア) 「デジタル社会」の定義:インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な情報又は知識を世界的規模で入手し、共有し、又は発信するとともに、先端的な技術をはじめとする情報通信技術を用いて電磁的記録として記録された多様かつ大量の情報を適正かつ効果的に活用することにより、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会。
 イ)基本理念:デジタル社会の形成に関し、ゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現、国民が安全で安心して暮らせる社会の実現、利用の機会等の格差の是正、個人及び法人の権利利益の保護等。

 その次が(4)「DX: 過去の失敗・成功」
成功事例1:ブロードバンド・アクセス 2000年に目標として掲げられた「世界最高水準のブロードバンドへのアクセス」は5年間の目標を前倒しに成就した。NTTの岩盤体制 及びISDN/BISDN方針を切り崩して実現したADSLの導入、ケーブル敷設の管渠の開放や電柱・電信柱の開放など戦後破られなかった規制と独占を切り崩して実現した。その後、旧電電公社独占の通信基盤には、KDD、電力、有線などの民間競争が発展し、これを 用いるモバイル環境の発展とともにLTEに至るまでのインフラストラクチャ(通信用語でのL1,L2L3)は順調に発展している。
 失敗事例1:ITの「利活用」 2005年頃からIT政策が利活用フェーズに入る。ウェブやその上でのアプリケーションの発展は、世界標準の環境なので課題は少ない一方で、グローバルな利活用競争には立ち遅れていった。広告業界の行政の圧倒的な地上波依存などが原因で、マーケッティングと広告はGoogleの後塵を拝した。電電公社や家電時代からの研究開発がグローバル展開の事業化に結びつかず、ガラパゴス化。本格的な立ち遅れは、行政サービス、金融、教育、医療分野などの公共分野でのIT活用が進まなかったことである。
 成功事例2:アナログ地上波放送の停波 日本で最も成功したDX事例。2003年に導入開始され、2011年7月24日にアナログからの完全移行となった。官民、コミュニティ、自治 体、多様な産業組織が、すべての縦割りを排して、100%を実現した。
 成功事例3:オープンデータの取り組み。2016年、オープンデータの取り組みを通じて官民データ利活用を主眼とした行政分野の切り崩しが開始。当初はOECDのランキング下位から出発したが、政策の進行で現在では上位(2019年4位)になる。この成功は政府CIOへの権限を段階的に強化した結果である。
 失敗事例2:新型コロナ禍でのIT活用。今回新型コロナ禍において露呈したのは、インフラの遅れではなく、特に霞が関、学校、保健所などのIT化の遅れ、また、特別定額交付金の給付の不具合、政府のスマホ利用(COCOA等対策アプリなど)などの領域である。

 そして(4)「デジタル政策2021~ (基本法提言より)」の主な内容を説明する。①情報アクセシビリティ、②置いてきぼりを作らない、③デジタル技術の善用、 By霞が関完全デジタル化、④地方でのデジタルサービスの展開・中小企業・地方大学、⑤すべての公共空間、インターネットへのアクセス、⑥オープンテクノロジ、⑦オープンデータ・公共データ、⑧透明性と相互運用性、⑨世界標準への役割。

 最後に(5)「デジタルトランスフォーメーションのすすめ」として次の9項目を掲げる。①一人も置いてきぼりにしない、②でも、「完全デジタル化」、言い訳なし、③効果を明らかにする、④みんな(すべてのステイクホルダー)でやる、④目標期日は決める、⑤困っている人は助ける、⑥次の世代の逞しさをなんとしても実現する、⑦避難所のインターネットアクセスを完全化する、⑧大学の世界へのMooC(加藤注:大規模オンライン大学講座)発信で競う、⑨地方がDXを牽引しないと!


 3 青木孝氏「変革のプラットフォームとしての大学」。青木氏は東北大学のDXを先導する教授で副学長。20枚のスライドを使って説明。冒頭で「テレワーク経験者は、WLB、地方移住、職業意識が変化」とあり、ついで「DXとは、企業がデジタルテクノロジーを用いて21世紀型企業へと変革を図ること、 実は大学もまったく同様:21世紀型大学へ」と述べ、東日本大震災の「災害対応 ~ 10年前と現在」を対比する。

 本論の(1)は「大学経営のDXを加速的に推進」では、①CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)にプロボストが就任(国立大学初)、② DX推進コアメンバーの学内公募では予想を大きく上回る事務職員57名が手を挙げた、③ 仮想クライアント(1,600ライセンス)導入によりコロナ対応で7割の在宅勤務を実現、④ 授業4,400科目の完全オンライン化を実現、⑤経営戦略見える化、⑥働き場所フリー、⑦窓口フリー、⑧印鑑フリーを推進。そのほか基盤的な業務改善項目を洗い出し 削減時間 合計約47,000時間(年間)を達成した。

 ついで(2)業務のDX推進プロジェクト・チームは、2020年6月1日の東北大学オンライン事務化宣言にある「New Normal 時代でのワークスタイルの変革」を実現するため、全学から公募で参加した総勢約60名で構成。「DXの中心課題は人と組織」とし、DXに関する根本課題はテクノロジーの進歩に対して、 個人、企業、社会システムが反応するスピードの差がいっそう拡大しているおり、技術>個人>組織>政策の順とする。

 その解決策として(3)「意識変革 ボス猿は子猿から学べ!」を掲げ、東北大学コネクテッドユニバーシティ戦略として「3つの基本方針」を掲げる。すなわち①テクノロジーはサイバー リアル融合 DXの加速的推進、②組織はスピーディーで、アジャイルな戦略的経営への転換、③社会はステークホルダーエンゲージメント (共創)の重視。

 最後に(4)「先の読めないVUCA時代の大変革を先導、社会価値を創造 〜ポストコロナの新しい未来に向けて〜」を提示する。(加藤注)VUCAとは冷戦終結によって従来の核兵器ありきの戦略から不透明な戦略へと変わった1990年代の状態を表す軍事造語であったが、その後2010年代に入り、変化が激しく不確実な社会情勢を指す言葉として転用されるようになった。次の4つの単語の頭文字を採ったもの。V:Volatility(変動性)、U:Uncertainty(不確実性)、C:Complexity(複雑性)、A:Ambiguity(曖昧性)。

 三氏の基調講演についで、野口 正一氏 (1930年生まれ、東北大学名誉教授 公益財団法人 仙台応用情報学研究振興財団 理事長)が発言、これを皮切りに総合司会:舘田 あゆみ氏の進行により、①「DXとは」と②「地方創生とDX」の2つに分けてパネルディスカッションを進めたいとしたが、ついつい③東北大学への応援団的・批判的発言が多く、笑いがこぼれる。

 全体として藤原さんの次の2つの発言が強く印象に残った。
(1) DXを<デジタル変革>と捉えている。デジタル化を<目的>のように思っている人がなお多く存在するが、デジタル化はあくまで<手段>に過ぎず、その<手段>を活用して、何を、どのような社会を実現するかに注力したい。
(2) 大学教育からでは手遅れな面があり、初等教育から考えたい。偏差値に拘らず<自発的に考え行動する人材>を育ててほしい。

 YouTube録画と資料の配信で、楽しく理解が進んだ。村井さんの言われる「①一人も置いてきぼりにしない」と「④みんな(すべてのステイクホルダー)でやる」の考えに共鳴し、今回の鼎談を少しでも広く伝える一端を担いたいと思い、私のブログでも取り上げたが、さて、うまく各位の発言意図をお伝えできたか、いささかの不安が残る。

 【後記】このリモート鼎談でも使用したビデオ会議システムZoomを提供するズーム・ビデオ・コミュニケーションズが、3月1日に発表した2020年11月~21年1月期(四半期)の決算が2日の日経新聞に掲載された。売上高が前年比4・7倍の8億8248万ドル(約940億円)で、純利益は17倍の2億6039万ドル(約280億円)、事前の予想を上回りコロナ下のビデオ会議の定着ぶりを示した。地域別では米州の売上高が全体の7割弱を、日本を中心とするアジアは約13%を占めた。
プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
前園長(2012年8月~2023年3月)

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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