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人類最強の敵=新型コロナウィルス(34)

 2月8日(月曜)に掲載した前稿(33)では、8日時点で感染者が全国でも東京でも減少傾向にあり、東京都の陽性率も低下しているとし、次はいつ、どのように緊急事態宣言を解除するかをめぐり新たな模索が始まっていると述べた。それから2週間になろうとしているが、感染の減少ペースが鈍いため、解除の日程が射程に入る段階ではない。また目まぐるしく変わる内外の動きから目を離せない。

【内外の動き】
  8日、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会・森会長の女性蔑視発言(3日)とその陳謝(4日)等を受けて、菅首相は国会での質問に「私自身が(森氏の)進退について問題にすべきではない。組織のなかで決めてもらう」と答えた。自身の5日の国会答弁「五輪の重要な理念である男女共同参画からも全く異なる」とした批判的見解はあくまで個人的なもので、森会長の辞任・後任については大会組織委員会の意向に任せると距離を置いた形である。

 同じ8日夜、組織委員会は大会のスポンサー企業とのオンライン会議を開き、森会長の発言を謝罪した。そのさい一部の企業からは、「不買運動にもつながりかねない」「組織委員会として行動で示して欲しい」など厳しい意見があったという。

 日本生命は「今般の森会長の発言は女性蔑視とも捉えられ、男女平等がうたわれているオリンピック・パラリンピック精神にも反する表現であり、大変遺憾」と、また東京海上日動は「<多様性と調和>という東京大会のビジョンに反する発言であり、大変遺憾」とコメントした。

 遡って3日の森発言の日の夜から「#わきまえない女」のハッシュタグをつけた投稿がツイッターで瞬く間に広がり、1週間後の11日に14万人の署名が集まった。その背景には森発言が「黙らされてきた女性たち、とりわけコロナ禍で苦しむ女性たちの傷口に塩を塗った」、「コロナ禍が続くなか、多くの女性が失業し、自殺も増加。医療や介護、保育などの現場で身を削る女性たちは声をあげる余裕もない。いざ発言すれば『長い』と言われる。権力者が、女性をはじめ、さまざまな異論に耳を傾けず、排除を続けてきた末路の発言だった」等の声がある。

 関係者によると、組織委員会は早急に対応を協議する必要があると判断、今週12日にも、理事と評議員を集めた臨時会合を開催する方向で検討しているという。ただ森会長の進退については、現時点では議論されない見通しである。

 9日(火曜)、時事通信社によれば、森会長の発言を問題視するボランティアの辞退続出に自民党の二階幹事長が「瞬間的なもの」と述べたことについて、橋本聖子五輪担当相は衆院予算委員会における立憲民主党亀井亜紀子氏への答弁で、「真意は把握していないが不適切だった」との認識を示した。また麻生副総理兼財務相も立憲の山本和嘉子氏の質問に対し、「ボランティアに対する敬意を欠いている」と指摘した。

 二階幹事長は8日の記者会見で「(事態が)落ち着けば、その人(辞退したボランティア)の考えも変わる。どうしても辞めるなら、新たなボランティアの追加ということになる」と強気に語ったが、翌9日の会見では「五輪相の発言に幹事長が論評を加える必要はない」と言及を避け、自身の見解については「特別深い意味はない」と曖昧に述べた。 

 9日(火曜)、森氏の謝罪と発言撤回を受けて「この問題は終了した」としていた国際オリンピック委員会(IOC)は、一転して「発言は極めて不適切で、IOCが取り組む改革や決意と矛盾する」との声明を発表。組織委関係者によれば最上位スポンサーからIOCに抗議が相次ぎ、ボランティア辞退の動きもあったためという。

 五輪開幕まで半年を切り、17日は感染拡大防止の観点から観客制限について、IOCのトーマス・バッハ会長、橋本五輪担当相、森会長、小池都知事のトップ4者で調整をするはずであった。

 10日(水曜)、小池都知事は、「今、ここで4者会議をしてもあまりポジティブな発信にはならないと思うので、私は出席することはないと思う」と述べる。小池知事の発言を追うと、森発言翌日の4日午前、「話が長いのは人によるんじゃないでしょうか」に留めたが、午後には「重要な時期にこの発言で困惑している」とし、5日には「私自身も絶句したし、あってはならない発言だった」と踏み込んだ。

 背景にあるのは世論の批判の高まり。都には電話やメールで10日までに約1700件の意見が寄せられ、「森会長は責任を取るべき」等のものが多く、都独自に募集した都市ボランティアの辞退も計126件に上った。小池氏は4者会談欠席の意向を示した際、これらの批判にも言及した。

 連立与党の山口公明党代表も「出処進退は森氏本人が判断すべきもの」、また自民党の野田聖子幹事長代行も記者会見で「自ら方向性を示していただきたい」と述べ、森会長の自発的な辞任を求める声が拡がった。

 11日(木曜、祝日)昼、朝日新聞デジタル版が伝えた。「東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の森会長が辞任の意向を固めたことがわかった。複数の関係者に同日、辞意を伝えた。後任は、日本サッカー協会や日本バスケットボール協会の会長を歴任し、東京五輪では選手村村長を務める川淵三郎氏(84)で調整している」。

 同じ11日夕方、読売新聞が次のように伝えた。「大会組織委員会の森会長は11日、都内で組織委の評議員を務める川淵三郎・日本サッカー協会相談役と会談した。関係者によると森会長が後任の会長就任を要請し、川淵氏も受諾する意向を示した。森会長は12日、組織委が開く緊急会合で、自らの女性に対する不適切な発言の責任を取り、辞任を表明する見込み」。

 12日(金曜)の新聞各紙は、森氏が辞任し後任を指名して影響力を残す<禅譲>方式(古代中国で皇帝が有徳者に譲ること)に、さしたる疑問を示さず、そのまま川淵氏へとバトンタッチされる方向の報道を行った。しかし森氏の思惑と川渕氏の軽率な発言は世論の納得を得られず、後任選出は<透明性>ある形式と内容が不可欠とする声にかき消され、振出しに戻った。

 同じ日の午前、川淵氏が要請辞退の意向を固めた。川淵氏は11日には「もし選ばれれば、森さんの期待に沿うべく、ベストを尽くしたい」と受ける意向を示していたが、「密室で決まっている」などの批判の声が高まっていた。

 同じ日の午後、組織委員会の理事会・評議員会の合同懇談会が開かれ、森氏の辞任を了承、理事のうちアスリートを中心とする10人ほどで次期会長候補者検討委員会を作ることとした。委員長には組織委員会の御手洗富士夫名誉会長(キャノン社長)が就任する。

 懇談会後の記者発表を行ったのは組織委員会の武藤敏郎事務総長(前大蔵・財務事務次官、日本銀行副総裁)。同氏の主導で事態が動いており、官邸(菅首相)の意向(会長には女性、若い人、オリンピアンが好ましい)が背景にある印象を与えた。新たな会長候補として橋本五輪相らの名前が浮上。候補者検討委員会のメンバーや委員会の開催日程等は明らかにされず、透明性を疑う声がある。

 同じ12日、政府は感染症の専門家で構成する基本的対処方針等諮問委員会を開き、10都府県を対象に発令している緊急事態宣言の解除を見送った。感染者は減ってはいるが、病床の逼迫がつづいているためである。

 この日の午前、予定より早くファイザー製ワクチンが初めて日本に到着した。12日の<薬事・食品衛生審議会>の部会了承を受けて、菅首相は14日(日曜)にも特例承認を行い、「来週半ば(17日ころ)にも接種を開始」するとした。

 13日(土曜)の日経新聞朝刊によれば、イオンが自社の商業施設290ヵ所をワクチン集団接種会場として有償で貸し出すと発表した。事務局業務を担う人材の不足には、業績不振の旅行業JTBや近畿日本ツーリスト、人材大手等が参入する。

 同じ日の夜11時過ぎ、福島県沖で地震が発生、福島・宮城両県で最大震度6強を観測した。10年前の東日本大震災(3月11日)の<余震>とされ、М7.3。今後1週間ほどの間、震度6強の揺れが起きる可能性があるいう。被災状況は徐々に判明しつつあるが、東北新幹線は那須塩原=盛岡間が運行停止で全線の復旧には10日程度を要するという。

 15日(月曜)、週明けの東京証券取引所は、日経平均で3万円を超える高値をつけた。バブル絶頂期(崩壊寸前)の1990年8月以来、30年半ぶりである。コロナ禍で倒産企業が増え、失業者も増えている実体経済との開きが大きく、この株価上昇がいつ退潮に転じるかが話題に上る。

 この日、ファイザーが開発したワクチンの有効性・安全性などを確認したとして、厚労省が正式に承認。ワクチンの接種は17日(水曜)にも1万人から2万人程度の医療従事者に先行して開始し、順次、高齢者などへ接種を進めていく方針。これを前に、厚労省は専門家による審議会を開き、接種を勧める対象から妊婦を外すかどうか、また副反応の事例報告などについて議論し、実務を担う自治体に周知することにした。

 16日(火曜)、衆議院予算委員会で武田良太総務相は次のように述べた。放送行政を所管する総務省の谷脇康彦総務審議官ら幹部4人が昨年10~12月、衛星放送や番組制作を手がける東北新社に勤める首相の長男(菅正剛氏)らから受けた接待は、国家公務員倫理規程に違反する可能性があるとして人事院の国家公務員倫理審査会とともに調査を始めていたが、総務省側の調査に次いで、首相の
長男からも調査を行った。

 菅首相は小泉政権で総務副大臣、第1次安倍政権で総務相を歴任し、総務省に強い影響力を持つ。総務相時代は長男を大臣秘書官に起用した(2006年から7ヶ月間)。今は公的立場にない「一民間人」というが、総務官僚の側からみれば、その背後に首相の存在を見るのが当然である。
 
 同じ16日午後、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は、辞任した森会長の後任選定に向けた候補者検討委員会を開き、会長に求める資質として、以下の5点を掲げた。①五輪、パラリンピック、スポーツに深い造詣があること、②男女平等原則や多様性など五輪憲章や東京大会の理念を実現し、将来につなげられること、③国際的な活動経験があり、国際的な知名度、国際感覚があること、④東京大会のこれまでの経緯や準備状況を理解していること、⑤組織運営能力や多様な関係者との調整力を備えていること。

 同じ16日、【AFP=時事】によれば、ミャンマーで起きた軍事クーデターとそれに続く混乱について、現地の中国大使が「決して中国が望むものではない」と述べ、中国が関与したとするソーシャルメディア上のうわさを一蹴した。ミャンマーでは今月1日のクーデターで国軍が政権を奪取して以来、数百人が逮捕されるなど、反発する市民への弾圧が強まっている。

 中国の陳海(Chen Hai)駐ミャンマー大使は大使館の公式サイトに公開された談話の中で、「わが国は以前から選挙をめぐるミャンマーの内紛には気付いていたが、政変については事前に知らされていなかった」と述べた。中国やロシアのようなミャンマー国軍の昔からの同盟国は、これまでクーデターに対する国際的な反発には「内政干渉」として反論していた。中国国営メディアは、今回のクーデターとミャンマーの事実上の指導者であるアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)氏の拘束についても「大規模な内閣改造」と表現していた。

 だが今回、陳氏は「ミャンマーで現在起きている展開は、決して中国が望むものではない」と述べた。さらに中国は、ミャンマーの全当事者が政治的・社会的安定を維持しながら、相違点について対処することを望んでいると付け加え、「政治情勢の変化」は「内政問題」だが、ミャンマーの近隣諸国との関係に波及効果をもたらすだろうとも述べた。ソーシャルメディア上でうわさされているクーデターへの中国の関与について、陳氏は「ナンセンスでばかげている」と一蹴。うわさの中には、ミャンマーの市街に中国兵が現れた、ミャンマーのファイアウオール構築を中国が支援しているといったものがある。
 同じ16日、アメリカ中西部の南北一帯を大寒波が襲い、停電も発生、空調が使えず氷点下で、相当数の死者が出た。同時にワクチン接種に大幅な遅れが生じた。気候変動の影響と見られるが、因果関係は未解明。これが脱炭素化政策へ弾みをつけるかもしれない。昨年夏の猛暑を想起させる。
 17日(水曜)、日経新聞によれば、ミャンマーにおける連日のデモに数十人の僧侶が濃い柿色の僧侶服で参加、「軍のクーデターを拒否せよ」、「軍事特栽を認めない」等の英語で書かれたプラカードや横断幕を持ち、拡声器を使い、読経しながら行進した。1日のクーデターで全権を掌握したミン・アウン・フライン総司令官は仏教を重視する姿勢を示しており、僧侶のデモ参加への対応に苦慮している。

 ミャンマーへ進出している日本企業(昨年末段階で433社)にも軍政に否定的な動きが出ている。キリンホールディングス(磯崎功典社長)は、「軍事行動がキリンの人権尊重の考えに反する」として合弁先の国軍系企業MEHLと合弁解消に向けた交渉をクーデター直後の11日から開始、民間の候補を探っている(日経新聞19日朝刊)。

 同じ17日、医療従事者に対するコロナワクチンの先行接種(筋肉注射)が、国立病院機構東京医療センター等、首都圏を中心に8施設、計125人に対して行われた。世界の先行例と比べて3か月遅れの出発であるが、開始が遅れたことへの不満は多くないが、医療従事者、高齢者、基礎疾患を持つ人等へと進める計画に、まだ確定的な見通しがないことに不安を抱く人が少なくない。

 世界的にワクチン供給が少ない上に接種が遅れている。オーストラリアにファイザー製ワクチンが到着したのは16日、韓国や香港でワクチン接種が始まるのは26日の予定。品不足のためロシア製ワクチン<スプートニクⅤ>を輸入する国が増えている。

 ワクチン接種で世界最速で先行するイスラエルでは<グリーンパス>と呼ばれる2回のワクチン接種証明書の発行が始まり、この提示でジム等のスポーツ施設や一部の宗教施設への入場が可能となる。3月にはレストランやホテル使用にも適用する予定という。また北欧の一部では<グリーンパス>で外国での隔離待機が不要になるという。これが<世界基準>になるかもしれない。

 同じ日、組織委員会の御手洗名誉会長を座長とする会長候補者検討委員会(座長のほかアスリートを中心に8人の委員)の第2回会合(非公開)が都内のホテルで開かれ、候補者を橋本五輪相(56歳)に絞り、就任を要請することとした。この日は衆院予算委員会が開催中で、橋本氏には伝わっていなかった。

 18日(木曜)、朝日新聞デジタル版は11時42分の号外で、「橋本五輪相が東京五輪組織委員会長に就任する意思を固めた」の記事を配信した。この日午前の第3回会合で候補に決まり、理事会で承認されれば、同日夕にも新会長になる見通しと言う。なお会長は定款上、理事になる必要があるため、橋本氏の就任が理事会で承認されれば評議員会を開いて理事に選任した上で、同日夕に再び理事会を開いて会長を決める。また大臣規範には「兼職」を禁止する規定があり、橋本氏が会長に就く場合、五輪相は退くことになる。

 想定通りの手続きを経て、同じ18日午後、御手洗座長が、前日の委員会でアスリート出身の男女4人ずつで構成する8人のうち、6人が橋本氏を推したと理事会へ説明、これを受けて評議員会で橋本氏を理事に推薦、この新しい理事会で正式に橋本氏を会長に決めた。

 東京五輪組織委員会会長に就任した橋本氏は、記者発表を行い「安全優先の大会であることを都民、国民に丁寧に説明したい。スピード感をもって信頼回復に努めていきたい」と抱負を述べた。また7年前の性的ハラスメント事件を問題視する声には、軽率な行為を反省しているとのみ述べた。後任の五輪相には丸川珠代氏(前五輪相)が就任。

 19日(金曜)、日本時間19日午前6時前、火星の土から生命の痕跡を探す米航空宇宙局(NASA)の探査車「パーサビアランス(忍耐)」が火星着陸に成功した。朝日新聞デジタルの19日朝によれば、時速2万キロからの急減速は「恐怖の7分間」と言われ、過去の成功率は4割ほどしかない。目指すのは、かつて湖があったとされるクレーターの内側。生命の痕跡が土に含まれていないか、後継の探査機とともに地球に持ち帰る世界初の計画が始まった。

 着陸したのは、数十億年前に湖があったと考えられている直径45キロのクレーター。川の流れで土砂が堆積(たいせき)した地形が残っており、バクテリアのような微生物の痕跡が土にあるかも知れない。岩に穴を掘ってサンプルを採取するほか、今後打ち上げる別の探査機を経由して土を地球へ持ち帰る計画。小型のヘリも搭載しており、地球以外の天体での初飛行も試す。開発に携わったNASAジェット推進研究所(JPL)の日本人技術者、大丸拓郎さん(31)は「めちゃくちゃ緊張しました。送られてきた写真を見て自分たちが作ったものが火星にあるとは信じられない」と言った。

 同じ19日、フランスで病院に対するサイバー攻撃が頻発、コンピュータが使えなくなり手書きの紙ベースの作業に切り替えた。ハッカーとの<身代金>交渉でやっと現状回復したという。マクロン大統領はハッカーへの挑戦を宣言するとともに、被害を受ける病院への財政支援を表明した。

 同じ19日、先進7カ国(G7)首脳はテレビ会議を開き、新型コロナウイルスワクチンの普及に向けた連携などについて協議した。菅首相は「途上国も含め公平なアクセスを確保することが不可欠だ」と述べ、途上国向け供給支援の国際的な枠組みに2億ドル(約210億円)を拠出する日本の貢献策を重ねて説明した。
 また菅首相は今夏の東京五輪・パラリンピックを「人類が新型コロナに打ち勝った証し」として開催する決意を改めて表明、他の首脳に支持を求めた。会談後、首相は記者団に、東京五輪の開催について、「G7首脳全員の支持を得た」と語った。
 20日(土曜)、テニスの全豪オープンで大坂なおみ選手がジェニファー・ブレイディ(米)を6―4、6―3のストレートで下し、2019年以来2度目の優勝を果たした。4大大会優勝は20年の全米オープンに続いて4度目。世界ランキングは3位から2位に浮上した。

 今年の大会は新型コロナウイルスの影響で1月から2月に延期。選手らは入国後、2週間の隔離生活を義務づけられた。大会中は変異株の市中感染が発生、開催地ビクトリア州はロックダウン(都市封鎖)を敷き、13日から5日間は無観客で開催。18日から再び観客を入れ、1試合ごとの観客数を収容能力の50%にあたる7477人に制限していた。5か月後に迫る東京五輪の運営方法の参考になると言われる。

 21日(日曜)、ロイター通信は米フェイスブックが、ミャンマー国軍の公式ページを削除したと報じた。前日、第2の都市マンダレーの造船所の近くで抗議デモに参加していた大勢の市民らに治安部隊が発砲、男性2人が死亡、多数がけがをしたとの報道を受け、暴力の扇動などを禁じた同社の基準に繰り返し違反したためという。国軍はフェイスブックのページを通じて、ミン・アウン・フライン最高司令官をトップとする意思決定機関「連邦行政評議会」の声明や軍の広報資料などを発表していた。

 22日(月曜)午前、菅首相の長男による総務省幹部4人の接待問題で、新たに別の7人が同様の接待を受けていたことが判明。複数の政府関係者が明らかにした。総務省は、利害関係者からの接待を禁止した国家公務員倫理規程に違反した疑いが強いとして、月内に処分するという。また総務省は、山田真貴子内閣広報官(総務審議官を務めていた)が2019年11月、首相の長男から招待を受けていたと明らかにし、「利害関係者に該当していた可能性が高い」とした。

 同じ日、共同通信によれば、衆議院予算委員会で菅首相は、接待問題に関して「長男が関係し、結果として公務員が倫理規定に違反する行為を行ったことについては心からおわび申し上げ、大変申し訳なく思う」と陳謝した。この問題が初めて週刊誌で明らかになった折、首相は「…長男は別人格…」と表明していたが、この陳謝では「長男が関係し…大変申し訳なく思う」と読める。


【コロナ感染者の推移】
 ここで新型コロナウィルスの新規感染者等を確認しよう。前者が全国の感染者(陽性者、カッコ内は重症者と死者)、後者が東京(カッコ内は重症者)である。
8日(月曜)   1217人(773人、83人)と276人(104人)
9日(火曜)   1568人(759人、94人)と412人(104人)
10日(水曜)  1885人(736人、121人)と491人(103人)
11日(木曜)  1691人(713人、78人)と434人(103人)
12日(金曜)  1301人(701人、63人)と307人(102人)
13日(土曜)  1362人(693人、65人)と369人(104人)
14日(日曜)  1364人(668人、38人)と371人(103人)
15日(月曜)   965人(658人、73人)と266人(97人)
16日(火曜)  1308人(644人、101人)と350人(92人)
17日(水曜)  1447人(607人、79人)と378人(87人)
18日(木曜)  1537人(564人、76人)と445人(84人)
19日(金曜)  1302人(547人、66人)と353人(84人)
20日(土曜)  1234人(526人、78人)と327人(82人)
21日(日曜)   1032人(511人、50人)と272人(82人)
22日(月曜)の3時、東京都の感染者数(速報値)が入った。178人(うち重症者76人)。これは3か月ぶりに少ない数字であり、明るい兆しだが、もうしばらく推移を見守る必要があろう。

 上掲の表が示すとおり、全国・東京都とも確実に重症者が減少しているものの、減少の割合が前の1週間に比べて小さくならず、<下げどまり>状態。予期した通りには進んでいない。直近7日間を平均して1日当たりの感染者数の減少幅は前週比で1割止まり、都の目標3割以上を大きく下回る。そのため病床を圧迫する程度も軽減されたとは言い難い。

 小池都知事は19日(金曜)、「…ここで緩めてはならない。もうひと踏ん張り、しっかり気を引き締めて」と発言。西村大臣は緊急事態宣言の解除について、専門家や知事たちの意見を聞いて来週にも判断したいと述べた。

 22日(月曜)の日経新聞は「公立病院 コロナ病床3%」の記事で、不採算の政策的医療を主に担う公立病院の役割と現状について、全国約8000病院の約1割に過ぎない約700の公立病院が、約600ある感染症指定病院の半数を占め、512公立病院がコロナ対応をしているものの、1病院あたりのコロナ患者受け入れ数が極端に少ない。見出しにある「公立病院 コロナ病床3%」が実情であると論評。

 この深刻なコロナ病床不足の解消策の一つとして、長野県松本市は臥雲義尚市長のトップ判断による<松本モデル>を掲載した。重症度別の受け入れ先やコロナ以外の患者を担当する病院を明確にし、地域全体(松本市を含む3市村で構成する松本医療圏)で通常診療への影響を減らす。この手法で昨年4月から公立病院のコロナ病床6床を37床に増やした経緯を紹介、<松本モデル>が全国にコロナ病床を増やすカギになるのではと述べている。


【バイデン政権の政策展開】
 7日(日曜)、バイデン米大統領はラジオ番組に出演し、東京五輪・パラリンピックについて「安全に開催できるかどうか科学に基づいて判断されるべきだ」と語り、「開催できることを願っているが、まだ分からない」とも述べた。バイデン氏が就任後、東京五輪開催の判断をめぐり、公に発言したのは初めてである。最大の選手団を誇るアメリカの動向は大きな影響を与えるに違いない。

 9日(火曜)、米連邦議会占拠事件を扇動したとして、下院で弾劾訴追されたトランプ前大統領の弾劾裁判の実質的審議が始まり、退任した大統領を裁判にかけることの合憲性を巡り採決し、賛成56、反対44の賛成多数で<合憲>との判断を示した。

 10日(水曜)、バイデン大統領はホワイトハウスで演説し、ミャンマー政府の在米保有資産10億ドル(約1050億円)に軍関係者がアクセスすることに制限を課すと表明、さらに<強力な輸出規制>も導入するとした。

 11日(木曜、米時間10日)、バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が電話で協議した。米中首脳の協議は、1月のバイデン政権発足後初めて。バイデン氏が中国の不公正な経済慣行や香港への統制強化などに懸念を表明したのに対し、習氏は「米国は中国の核心的利益を尊重すべき」と述べ、対立が目立った。

 一方、両氏は新型コロナウイルスの対応など、協力できる点も探る姿勢で一致。バイデン氏は「現実的で結果を重視した取り組みを進める」とし、習氏も「衝突せず、対抗せず」の精神での歩み寄りの必要性を訴えた。

 米中双方の発表にも温度差が見られる。米ホワイトハウスの発表によると、バイデン氏は「中国の高圧的で不公正な経済慣行、香港での弾圧、新疆ウイグル自治区での人権侵害、台湾を含む地域での独断的な行動」に対し「根本的な懸念」を表明。「自由で開かれたインド太平洋を守る」とも述べ、同盟関係を軸に国際秩序を維持する考えを伝えた。

 これに対し、中国外務省によると習氏は「中米はいくつかの問題で異なる見方を持っている。重要なのは互いを尊重し、建設的な方式でコントロールすることだ」と強調。香港や新疆ウイグル、台湾に関して「中国の内政」とし、「米国は中国の核心的利益を尊重し、慎重に行動すべきだ」と求めた。

 両氏はまたトランプ政権下で米中対立の要因の一つ、新型コロナの対応について協議し、気候変動、兵器の拡散防止等の共通課題についても意見交換した。バイデン氏は「現実的で結果を重視した取り組みを進める」と述べ、習氏も「経済、金融、法執行、軍などの部門で交流できる」と返した。

 中国側には対立関係を改善させたい思惑があるが、米国側は慎重である。バイデン氏は4日、国務省の演説で中国を「最も重大な競争相手」と位置づけた。10日も、習氏との協議を前に国防総省で「中国に対応する必要がある」と述べ、中国に関する新たな戦略を検討する考えを示した。

 20日(土曜)、イランが未申告の核施設への抜き打ち査察受け入れを23日から中止すると宣言したことを受け、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長がイランを訪問、イラン原子力庁のサレヒ長官と会談した。イラン側はアメリカによる経済制裁の解除を要求している。今後のバイデン政権による対応が注目される。


 この間、次の録画を観ることができた。(1)BS1スペシャル「謎の感染症~新型ウィルスの起源を追う 空白の3週間に何が」7日。(2)NHKこころの時代~宗教人生~「奇跡の森と真言密教」13日。(3)NHK週刊ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(8日~12日)」14日。(4)BS1スペシャル「国産ワクチンを開発せよ!~東大・河岡ラボ 300日の記録」14日。(5)NHK総合 ストーリーズ「だれも独りにさせへん~コロナ禍の冬 苦闘に記録」15日。(6)クローズアップ現代+「プラごみリサイクルどう実現? あなたは? 国内で循環させる」16日。(7)BS1スペシャル「密室の戦争~日本人捕虜の尋問録音~」16日。(8)EテレTⅤシンポジウム「地球の限界点まで10年 グローバル・コモンズ」20日。(9)NHK週刊ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(15日~19日)」20日。【特10】NHKBSプレミアム「解体キングダム「築400年の古刹を解体せよ[岐阜県 願興寺]」1月30日。
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人類最強の敵=新型コロナウィルス(33)

 1月26日(火曜)の午後に掲載した前稿(32)では、新型コロナウィルスの感染者と重症者が減少傾向にあることに触れ、「飲食店のみなさんほか銘々が頑張った結果と見て、次への<励み>になる数字と考えられる」と述べた。

 首都圏(1都3県)に緊急事態宣言が出されたのが7日(木曜)、この26日(火曜)は発令から2週間半に当たり、期限の2月7日(日曜)まで残り1週間半しかない。期限までに解除できるか、どのように対処するかが次第に大きな話題となりつつあった。

【緊急事態宣言の今後と内外の動き】
 感染拡大状況をまず確認したい。前者が全国の感染者(カッコ内は重症者と死者)、後者が東京(カッコ内は重症者)。本文の記述は日を追って時間順に書くため、その都度この表に戻って追記している。
 26日(火曜)  3853人(997人、104人)と1026人(148人)
 27日(水曜)  3970人(1043人、90人)と973人(159人)
 28日(木曜)  4132人(1032人、113人)と1064人(158人)
 29日(金曜)  3534人(1014人、96人)と868人(147人)
 30日(土曜)  3343人(974人、91人)と769人(141人)
 31日(日曜)  2673人(973人、65人)と633人(140人)
2月1日(月曜)  1792人(975人、80人)と395人(133人)
 2日(火曜)   2324人(937人、119人)と556人(129人)
 3日(水曜)   2631人(897人、120人)と675人(125人)
 4日(木曜)   2575人(892人、104人)と734人(115人)
 5日(金曜)   2372人(877人、106人)と577人(117人)
 6日(土曜)   2279人(815人、94人)と639人(114人)
 7日(日曜)   1631人(795人、52人)と429人(111人)
 8日(月曜)午後3時、東京都の新規感染者276人(重症者104人)の速報値が入った。この10日ほど、全国でも東京でも感染者が減少傾向にあり、緊急事態宣言に伴う一定の効果を見ることができる。東京都の陽性率も1月7日(木曜)の14.5%から2月5日(金曜)の5.7%と下がっている。

 そこで、いつ、どのように宣言を解除することができるかをめぐり、新たな模索が始まっている。また内外の新たな動きから目が離せない。

 1月26日(火曜)、菅首相は午前の衆院予算委員会で、コロナに感染して入院できず自宅療養中に亡くなった方について質問され、「国民が不安を感じている。必要な検査を必要なときに受けられる体制ができていないのは責任者としてたいへん申し訳ない」として医療体制の整備を急ぐ方針を示した。

 28日(木曜)の未明、菅首相とバイデン大統領が約30分間、初の電話協議を行い、以下の点で合意した。(1)日米同盟を強化、<自由で開かれたインド太平洋>を推進、(2)日米安保の第5条を尖閣諸島に適用、(3)脱炭素、新型コロナ対策、ワクチン供給で協力、(4)4月の脱炭素に関する首脳会合に菅首相を招待、首相は出席を調整、(5)北朝鮮の非核化、拉致問題解決へ連携。

 この日午前、感染症法改正を巡り、入院拒否に刑事罰を課すとする原案撤回で与野党が合意した。同日夕方、立憲民主党幹部との修正協議を終えた自民党の森山裕国会対策委員長は、険しい表情で記者団の前に立った。「大事なことはコロナ禍の国民の不安を解消し、できるだけ早く対応できるようにすることだ」。一方、立憲の福山哲郎幹事長は「刑事罰、懲役が削除されたことについて、大変評価したい」などと語った。

 この日、日経新聞朝刊の1面トップは「ワクチン 日本で量産 アストロゼネカ9000万回分」と伝えた。詳細は後段の【ワクチンの生産・供給と接種体制】で述べる。

 29日の朝日新聞デジタルによれば、政府・与党はコロナ対応が批判を浴びる中、私権の制限を大きく強める法改正は世論の理解を得られないと判断した。慎重な対応を求めていた医療などの「現場」からは、修正を評価する声も上がった。政府が改正案を閣議決定したのは22日。政府・与党は2月初旬の改正案の成立をめざし、29日からの審議入りの日程にこだわってきた。修正の「タイムリミット」だった28日午前の協議で、自民は感染症法改正案に盛り込んだ入院拒否した人への懲役刑など刑事罰の撤回を表明。夕方には行政罰の過料の減額にも応じた。

 すなわち感染者が入院を拒んだ場合、原案の「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」を「50万円以下の過料」に変更する。言い換えれば、前科が残る刑事罰はすべて削除し、行政罰にする。また保健所の調査を拒否した人への刑事罰50万円以下の罰金を削り、「30万円以下の過料」とする。さらに緊急事態宣言下で事業者が時短営業や休業の命令に従わない場合も同様に「30万円以下の過料」とする。

 30日(土曜)、沖縄県宮古島市で集団感染。市長選の応援に来島した人たちがウィルスを持ち込んだ可能性が指摘されている。

 31日(日曜)、モスクワやロシア各都市で大規模なデモが起こる。1月17日に療養先のドイツから帰国した野党指導者ナワリヌイ氏がモスクワ空港で拘束され、翌日には30日間の拘留が決まったことへの批判にとどまらず、プーチン政権の政策に反対する声が広く含まれているという。なお、2月2日、モスクワの裁判所は2014年の有罪判決の執行猶予を取り消し、懲役3年6月の実刑に切り替えるとの決定を下した。

 2月1日(月曜)、午前8時半(日本時間午前11時)ごろ、ミャンマー国軍は国軍のテレビを通じ、「軍が国家の権力を掌握した」と、「非常事態1年」を宣言した。この日は総選挙後初の連邦議会下院が招集される予定であった。このクーデターについて、米欧は一斉に非難声明を出した。

 これに先立ち、アウンサン・スー・チー国家顧問やウィンミン大統領らが国軍に拘束されたとAFP通信等が報じていた。事実上のクーデターとみられる。国軍は、スー・チー氏が率いる与党・国民民主連盟(NLD)が圧勝した昨年11月の総選挙に不正があったと主張し、NLDとの緊張が高まっていた。

 同じ日、緊急事態宣言下の深夜に東京・銀座の飲食店を飲み歩いていた自民党衆議議員の松本純(神奈川1区)、大塚高司(大阪8区)、田野瀬太道(奈良3区)の3氏が自民党を離党した。また3氏とは別に銀座のキャバクラや飲食店を訪れていた公明党の遠山清彦衆議院議員(比例九州ブロック)が議員辞職した。

 2日(火曜)、菅首相は午前の参院本会議で「(宣言)により新規感染者は減少傾向となっており、飲食を中心とする今回の対策が効果をあげている」と評価する一方、「医療提供体制は引き続き多くの地域で逼迫し、警戒が必要で、さらなる感染者数の減少をめざす」と述べた。

 これを受け、政府は同日、緊急事態宣言を3月7日(日曜)まで1ヶ月間延長することを決め、午後8時までの飲食店の時短営業の要請等はつづけ、新たに「日中も不要不急の外出を自粛する」よう求めた。対象地域は栃木県を除く10都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡)である。

 緊急事態宣言の解除にも触れ、ステージⅢになることが一応の目安であるが、地域の状況に応じ、都道府県内の地域単位(市区町村)で細かく決めていく方法を求めていくとした。

 3日(水曜)、あと半年に迫った東京五輪・パラリンピックの開催が可能か、可能とするなら、①従来通り、②観客数の縮小、③無観客等の案が議論されている最中、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会(JOC)の森喜朗会長(83歳)はJOC臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」等の発言をした。女性理事を増やすJOCの方針に対する私見として述べた。

 この日の評議員会はオンライン会議で、記者にも公開されており、森会長は「テレビがあるからやりにくいんだが」と前置きしたうえで、「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです。…女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制をしないとなかなか終わらないので困ると言っておられた。だれが言ったとは言わないが」などと語った。その場の評議員会メンバーからは笑い声があがる。

 この発言に各界から批判の声があがり、翌4日、森会長が謝罪会見を行ったが、それがさらに油を注ぐ結果となった。SNSでの批判が増幅、5日午後からツイッター上で、<#DontBeSilent(黙っていないで)>、<#GenderEquality(男女平等)>のハッシュタグをつけた投稿が広がっている。森会長の女性蔑視発言に反応したものとみられる。

 若い女性から次のような批判もあった。「4日の謝罪会見で「発言を撤回する」とおっしゃいましたが、<謝罪>はできても、一度発した言葉は事実として多くの人の記憶に残りますから、本当の意味で撤回なんてできません。今回は失言や言葉の選び方のミスではなく、思想そのものから生まれた蔑視発言。…ただの言葉のあやではなく価値観の根底に根付いているリアルな本音なんだろうと思います。思っていたとしてもせめて心の中でとどめるのが普通で、それを公の場で言うところに感覚のズレがある。…」

 この日、ミャンマーの軍事クーデターに関連して、在日ミャンマー人3000人余が外務省前に集まり、「スー・チー氏たちを助けて…」と訴えた。昨年11月の総選挙で在外投票をした国民民主連盟(NLD)の支持者たちで、その真剣さが伺われる。

 5日(金曜)、新型コロナウイルスに感染して抗体を保有している人の割合について厚労省が調査。2020年12月14日から25日にかけて東京都や大阪府など5つの都府県で希望者から無作為に抽出した、20歳以上の男女など合わせておよそ1万5000人が対象である。その結果、いずれも1%を下回ることが判明、厚労省は「大半の人はまだ抗体を保有しておらず、引き続き感染対策を徹底してほしい」としている。
 新型コロナウイルスに感染すると作られる「抗体」と呼ばれるたんぱく質は血液検査で調べることができる。厚労省は2020年6月に東京都と大阪府、宮城県で抗体検査を実施し、2021年2月5日、愛知県と福岡県を加えた2回目の検査の結果を公表。抗体を保有していた人の割合は東京都が最多で0.91%、最少の宮城県は0.14%であった。
この日、田村厚労相は大企業非正規(シフト制や日雇い、登録型派遣)への休業支援の適用範囲を拡げ、昨秋へ遡及適用する考えを示した。

 6日(土曜)、中国海警局の武器使用を認める<海警法>が今月1日から施行され、尖閣諸島に初めて中国海警局船2隻が侵入した。日本漁船に接近しようとしたため、第11管区海上保安本部(沖縄)の巡視船が出動、領海から出るよう警告した。

 7日(日曜)、1週間前に軍事クーデターのあったミャンマーの各都市で大規模な抗議デモがあった。最大都市ヤンゴン(旧ラングーン)では2日つづけて数万人が参加、「独裁は地に落ちろ」、「(国家の)母アウンサン・スー・チー氏を釈放せよ」と求めた。2007年の反軍政運動以来、最大の規模となる。なお前日の6日に遮断されたネット環境がこの日に復旧した。異論を封じ込める強制措置への国民の反発や経済・社会活動への影響を国軍が考慮した模様である。

 同じ7日は、中国・武漢で新型コロナウイルスの感染拡大にいち早く警鐘を鳴らして処分され、自らも感染した李文亮医師(33)が亡くなって1年になる。感染の抑え込みが進む中国では医療従事者が「英雄化」される一方、政府の対応への批判や疑問の声は徹底的に封じられる状況が続いている。

 李医師は武漢市中心病院の眼科医。2019年12月30日、SNSのグループチャットで「7人がSARS(重症急性呼吸器症候群)にかかり、私たちの病院に隔離されている」と投稿し、未知の感染症への警鐘を鳴らした。翌31日、市政府が原因不明の肺炎発生を公表。20年1月3日、警察は「デマを流した」として李医師を処分した。李医師はその後も患者の治療に当たっていたが自らも感染し、2月7日に死亡する。

 朝日新聞デジタルの6日号によれば、言論統制が強化されている。<市民記者>として武漢入りし、医療崩壊寸前の病院内の様子や、政府を批判する遺族を取材して動画をSNSに投稿した元弁護士の張展さん(37)は、昨年末、騒動挑発罪で懲役4年の実刑判決を言い渡された。

 なお、遺族も厳しい監視下に置かれている。広東省深圳の会社員、張海さん(51)は「いつも警察に行動を見張られ、声を上げられない遺族は多い」と言う。張さんの父(当時76)は武漢市内の病院に入院していた昨年2月、新型コロナに感染して亡くなった。「ヒトからヒト感染の事実を政府が早く公表していれば、父を入院させなかった」と、昨年6月、市政府などに損害賠償を求める訴状を裁判所に送ったが不受理。11月には習近平国家主席に宛てた嘆願書をインターネット上に公開したが、すぐに削除された。張さんは「行動を止めたら全てが無かったことにされてしまう。恐れずに責任追及の声を上げ続ける」と話す。

 この7日(日曜)、新型コロナウィルス特別措置法の改正の施行日(13日)を前にして、新たに設けられた「まん延防止等重点措置」の具体的適用範囲等の議論が始まった。政府は専門家からなる諮問委員会を開き、「まん延防止等重点措置」に指定する地域を議論する。加藤官房長官は「期間、区域、業態を絞った措置を機動的に実施できる仕組み」と述べた。市町村単位で対策を講じることが可能で、感染状況に応じて段階的に経済制限を緩和できる。

 これに先立つ6日(土曜)、大阪府の吉村知事は「段階を追って解除することが大事」として、政府に対して「まん延防止等重点措置」の適用エリアとすることを求める意向を示した。神奈川県の黒岩知事は高齢者施設等でもクラスター発生に伴い、10万人規模のPCR検査を実施するとし、埼玉県の大野知事も同じ理由から19万人規模のPCR検査を実施すると述べた。東京都の小池知事は、7日平均の新規感染者数を前週比7割以下とする目標を新たに打ち出し、継続できれば3月初旬には1日あたり約140人まで減らせると述べた。

 8日(月曜)、菅首相は、この日の衆議院予算委員会で野党の主張する「昨年春に遡って適用」に柔軟な対応を示した。これは田村厚労相が先週、大企業非正規(シフト制や日雇い、登録型派遣)への休業支援の適用範囲を拡げて、昨秋へ遡及適用する考えを示したのを受けたものである。

 この日、共同通信社が6、7両日に実施した全国電話世論調査が公表された。菅内閣の支持率は38・8%で前回1月調査から2・5ポイント続落し、初めて40%を割り込んだ。不支持率は3・1ポイント増の45・9%。また女性蔑視発言をしたJOCの森会長に関し、会長として「適任とは思わない」との回答が59・9%に上った。「適任と思う」が6・8%、「どちらとも言えない」が32・8%であった。


【ワクチンの生産・供給と接種体制】
 前稿(32)の26日(火曜)の項で述べた通り、ワクチンの接種体制の構築と供給不足問題が急浮上してきた。なかでもワクチン製薬会社の生産低減でEUへのワクチン供給が減少、これが連鎖的に世界へ拡がり、菅首相が確約した「2月下旬からワクチン接種開始」が怪しくなりかねない、と記した。先進国のなかで日本だけワクチン接種が始まっていないが、危機感や焦りはあまり聞かれない。

 27日(水曜)午後、ワクチン接種のための体制づくりの予行演習として、川崎市立看護短大の体育館で、川崎市・厚生労働省合同の新型コロナワクチン接種の運営訓練が行われた。会場の広さは体育館としてはやや小さめ。会場をブースごとに壁で仕切り、間隔をとって動線を確保(車いすも通行可とのこと)、アルコール消毒剤を設置。ただスタッフと被接種者の間に仕切りがなく、まだ検討の余地がありそうである。
訓練は医師3人と看護師5人が、4月以降の接種開始が予想される65歳以上の高齢者20人に接種する想定で実施した。受付で職員が手渡した予診票に記入し、医師が診察で体調や病歴、アレルギーなどを確認。専用スペースで看護師が実際に使用する注射器を腕に当て、模擬接種を2回実施した。
 接種後はアレルギー反応などに備え、密を避けて15~30分間待機する。救護室や米ファイザー製ワクチンを保管する超低温冷凍庫も設けた。市によると、入場から接種を終えるまで1人当たり約15~30分を要し、1時間に30人前後の接種が可能と確認した。
 28日(木曜)、日経新聞朝刊の1面トップは「ワクチン 日本で量産 アストロゼネカ9000万回分」の見出しで次のように伝えた。英製薬大手アストロゼネカは2020年12月に日本政府と1億2000万回分の供給契約を結び、近く厚労省に製造販売承認を申請する。その75%に相当する9000万回分のワクチン原液生産を日本のバイオ製薬JCRファーマが受託、それを第一三共や明治ホールディングスが容器に充填して製品化する。

 29日(金曜)、日経新聞のトップ記事の見出しは「ワクチン、日本のDX試す 国・地方で接種一元管理 続く失敗断てるか」。当初(1月中旬)、厚労省はデータ形式等がばらばらな各地方自治体の既存のシステム(麻疹ワクチンの予防接種台帳)を基盤とする意向であったが、混乱や遅れを懸念する声が挙がり、急きょ方針を転換した。すなわち18日にワクチン接種の担当大臣兼任となった河野規制改革担当大臣が翌19日、平井卓也デジタル改革相と相談、全国一律の新システム導入を決めた(後述)。

 新型コロナウィルスの感染拡大に対応する行政は、デジタル化(DX)の遅れで数々の失敗と苦い経験を重ねてきた。①昨春の1人一律10万円給付にデジタル対応ができなかった。②昨年5月、国と自治体で感染者情報をクラウドで集約するシステム<ハーシス>が稼働したものの入力項目が多い等の不満が挙がり、利用は広がっていない。③雇用調整助成金はオンライン申請に対応していない。

今回のワクチン接種は、一定期間をおいて同種のワクチンを2回打つ。安全確保のため、「いつ、何を、何回接種したか」をリアルタイムで把握しなければならない。まさに「続く失敗 断てるか」の正念場にある。

 2月1日(月曜)、政府はアメリカの製薬大手ファイザーのワクチンについて、医療従事者を対象にした接種をできるかぎり2月下旬から始めたいとした。マイナス75度前後での保管が必要で、政府はディープフリーザーと呼ばれる超低温冷凍庫を各地の国公立病院に発送する作業を開始、横浜市内の倉庫で担当者が発送先の確認などを行った。政府は今後、一般向けの接種に向けて超低温冷凍庫およそ1万台を確保し、6月にかけて全国の自治体に配備する計画という。

冷凍庫は、都内のメーカーが政府からの増産の要請を受けて、海外の工場をフル稼働させて製造したもので、医療従事者への先行接種を行う全国100の国公立病院に1台ずつ送られる。マイナス65度からマイナス80度に対応し、内部の温度の推移を1分ごとに記録する機能がある。製造元の「EBAC」の佐々木健社長は「ワクチンを安心して接種してもらうため、1日も早く冷凍庫を全国にお届けできるよう全力を尽くしたい」と話した。

 同じ日、ワクチン接種にかかる費用が「足りない」という自治体の声を受けて、河野大臣は予算を倍増させる考えを示した。すなわち、各自治体に総額1362億円の補助金を配分、国がその全額を負担する。
 2日(火曜)、河野大臣は、アメリカの製薬大手ファイザーが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、フジテレビが「承認と供給が順調に進んだ場合、運輸当局などが、早ければ2月14日にも第1弾を日本に到着させる方向で準備に着手した」と報じたことを受け、記者団に対し「ワクチンの海外から日本への輸送に関し、セキュリティーの観点から不測の事態を起こしたくない。このため、輸送の日時や場所については、非公開にさせていただきたい。取材、報道は控えていただけるとありがたい」と述べた。
3日(水曜)、厚生労働省は、新型コロナウイルスのワクチンの接種を円滑に進めるため、市町村への分配量などの情報を自治体などと共有する新たなシステムを整備すると報じた。名称はワクチン接種円滑化システム「V-SYS」で、都道府県や市町村、医療機関、卸業者などが、希望するワクチンの量や実際に分配される量、接種が行われた回数などの情報をインターネット回線で共有する。

 この日も全国各地で集団接種を想定した訓練が行われた。鳥取県の琴浦町では会場予定地の同町保健センターで、町の職員およそ40人が参加。住民役が問診票への記入やワクチンの接種、その後の経過観察までの流れを体験し、接種にかかる時間や誘導にあたる職員の配置などを確認した。
イベント用の機材などのレンタルを行う大阪市の会社が、大型テントを使った仮設の接種会場を建てて提供するサービスを始めた。大阪 住之江区にある会社の敷地に2月1日から2日にかけて大型のテントやパーティション会場を作り、3日、接種作業シミュレーションを行った。幅15メートル、長さ25メートルの内部には、厚生労働省の手引きに従って受付や同意書を記入するスペース、待合所などが設けられた。

 内部は一方通行で、同時に3系統の人の流れを作る。接種後の待機場所として別の大型テントを設置、自治体の担当者も訪れ、動画で撮影したり椅子の間隔を測るなどした。寝屋川市の担当者は「今回得られた情報をもとに導入するか検討したい」と話す。レンタル会社によると、同様の規模の設置には1000平方メートル(テニスコート4面程度)の広さが必要で、1日で建てられ、設置と1か月分のレンタル料を含め約2000万円という。

 5日(金曜)、産経新聞によれば、新型コロナウイルスのワクチン接種体制について、自民党のプロジェクトチーム(PT、鴨下一郎座長)がまとめた政府への提言案が明らかになった。4月から始まる65歳以上の接種に関しては、大規模会場で行う集団接種に加え、医療機関での個別接種を「中心的な接種ルート」と位置づけ、接種場所の多様化を求めたことが柱。政府に来週提出し、早期に接種体制の構築を進める。
 厚生労働省は当初、接種会場について、超低温で保管する必要や、副反応に備えて待機する場所を確保することなどを考慮し、大きな集会所などでの集団接種を中心に検討してきた。
 これに対し、自民PTの提言では、国民の利便性や接種に携わる医療従事者の負担などを考慮。65歳以上の高齢者は基礎疾患を抱える人も多いことも踏まえ、「既往歴の確認が容易な医療機関における接種の方が、有害事象のリスクの把握などの観点からは、集団接種より望ましい」とも位置づけた。
 同じ5日、産経新聞ニュースは、「ワクチン接種は<早くて近くて安心>練馬区モデルへの期待と課題」と題して次のように伝えた。新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、大会場での集団接種ではなく地域の診療所での個別接種を中心に行う東京都練馬区の<練馬区モデル>を政府が推奨するなど注目を集めている。一般高齢者の接種は4月以降、区市町村を主体に始まる予定だが、いかに短期間に幅広く、多くの人々に接種できるかがカギになってくる。個別接種は地域の医療資源を効率活用できる一方、ワクチンを小分け配送することになり、低温に保つ必要があるワクチンを適切に管理・輸送できるかなど、課題も多い。


【バイデン政権が始動】
 前稿(32)で述べた通り、1月21日(木曜、アメリカ東部時間の20日)、バイデン氏(78歳)の第46代米大統領就任式が行われた。トランプ前大統領はフロリダへ行き欠席、式典は混乱もなく粛々と進行した。

 就任初日の重要作業として、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に復帰、WHOに残留等、計15の大統領令に署名した。また新型コロナウィルスに国家戦略をまとめ、戦時下の大統領権限等、あらゆる政策手段でワクチンの供給を加速し、今秋のコロナ収束をめざすとした。

 25日(月曜)、政府調達で米国製品を優先する<バイ・アメリカン>法の運用を強化する大統領令に署名した。国内製造業を支援し、支持者の労働者層を重視する姿勢をアピール。

 同じ日、米大統領報道官サキ氏は、対中政策について「中国への対応は過去数ヵ月と同じ…」としたうえで、「…私たちは中国と激しい競争をしている。中国との戦略的競争は21世紀を決定づける特徴であり、…中国はこの数年、国内でますます強権的になり、対外的な主張を強めている。中国は米国の安全保障、繁栄、価値観に挑戦しており、新しいアプローチが必要…いくらかの戦略的忍耐を持ち望みたい」と述べた。

 28日(木曜)未明、前述の通り、菅首相と電話会談を行い、日米同盟の強化、尖閣諸島に日米安保条約を適用すること、コロナ対策、脱炭素等の諸問題をめぐり、改めて確認した。

 2月4日(木曜)、バイデン大統領が初の外交演説を行い、「米国の同盟関係は最も素晴らしい財産であり、外交を主導するということは、同盟国や友好国といま一度ともに協力すること」と表明。国際協調路線への回帰を通じて、中国、ロシアに対抗すると宣言した。

 このほか、①ドイツ駐留米軍の削減計画をいったん凍結、②米国の国益にかなえば中国と協力する用意はある(とくに脱炭素社会への協力)、③対ロシア政策はトランプ時代とは異なる方法を採用、④ミャンマー国軍に権力放棄と拘束者の釈放を要求、等に言及した。

 5日(金曜)、ブリンケン米国務長官と中国の外交トップの楊政治局員が電話協議を行い、ブリンケン氏は「台湾海峡を含むインド太平洋の安定を脅かす試み」について同盟国とともに中国の責任を追及すると強調した(国務省発表)。これに対して楊氏は「中米関係で最も重要かつ敏感で核心の問題である。中国の主権と領土保全にかかわる」と発言した(中国外務省発表)。

 バイデン政権の発足に伴い、<開かれたアジア太平洋海域>への欧州各国の動向が注目される。フランスはニューカレドニアなど、インド太平洋海域に海外領土や軍事基地を持つ。この海域は国の排他的経済水域(EEZ)の8割超を占める上、160万人の国民が暮らす。2019年5月に定めたインド太平洋戦略で、「国際法の順守」に目を光らせることを目的の一つに掲げ、7千人規模の軍隊を常時配置している。

 マクロン仏大統領は4日に公開された米シンクタンク「アトランティックカウンシル」のインタビューで、「インド太平洋地域での野心をみれば、中国は完全にライバルだ」と改めて警戒感をあらわにした。昨年11月には仏原子力潜水艦が豪州に寄港。一昨年には空母シャルル・ドゴールをインド洋に派遣してインドと共同訓練を実施するなど、軍事プレゼンスを高め、中国を脅威とみる各国との連携を深めてきた。マクロン氏は「この地域が新しい覇権の手に落ちないためには、インド太平洋の枢軸が必要だ」とする。ただ、マクロン氏も「みんなで中国に敵対するのは生産的ではない。…追い込めば中国が非協力的になりかねない」とも語り、全面対立は避けるべきで、「気候変動などではパートナー」だと位置づける。

イギリスも英海軍史上最大級の空母「クイーン・エリザベス」を含む空母打撃群を年内に東アジアに派遣する。2月3日開催の日英外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)では、共同演習の実施に向けて調整することで一致、中国による強引な海洋進出を念頭に、東シナ海と南シナ海情勢への<深刻な懸念>を共有した。イギリスにとってインド太平洋地域には大英帝国時代から現在も英連邦加盟国として、英国と貿易、外交、防衛面でつながりが強い国々が集まる。昨年1月の欧州連合(EU)離脱を機に、国際社会で「独立した声」(ジョンソン首相)を確保し、貿易の機会拡大も狙う英国は「世界経済の成長エンジン」といわれるこの地域への関心をさらに強めている。

 英仏に加え、アジア太平洋地域に海外領土を持たないドイツも、異例のアジア地域への艦船派遣を計画する。一方で経済関係などから中国との対立は避けたい思いもにじむ。ドイツ国防省によると、早ければ今夏以降、フリゲート艦1隻を長期的にインド太平洋地域に送る計画。日本や豪州などへの寄港や共同訓練の参加、関係部署の人的交流などを検討している。

 
この間に観たテレビ番組は次の通り。(1)NHK BS世界のドキュメンタリー「薄氷のシベリア 温暖化への警告」26日。(2)クローズアップ現代+「スマホマネー革命 コロナ禍の融資・投資 新たな動き」27日。(3)NHK BSスペシャル「再エネ100%をめざせ! ビジネス界の挑む気候危機」27日。(4)NHK BSスペシャル「大越健介が迫る米中“新冷戦”の先に」28日。(5)NHK BSスペシャル「消えた祖父の謎を追う~“アメリカの敵”となった日本移民~」28日。(6)NHK シリーズ激動の世界をゆく(鎌倉千秋)「分断の先に “トランプ後”のアメリカ」29日。(7)BS1 週刊ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(1月25日~29日)」30日。(8)NHK BSスペシャル「中国“改革開放”を支えた日本人(再 2019年放送分の)」30日。(9)NHK BSスペシャル「1968年 激動の時代(前編+後編)」(再)31日。(10)NHKスペシャル「パンデミック 激動の世界(7) 問われるリーダーたちの決断」31日。(11)NHK BSスペシャル「シリーズ コロナ危機「マルクス・ガブリエル 精神のワクチン」2月2日。(12)NHK BSスペシャル「欲望の資本主義 2021 格差拡大 社会の深部に危機が走る時」2月4日。(13)NHK Eテレ「こころの時代~宗教・人生 <戦場から祈りへ>」6日。(14)NHK TⅤシンポジウム▽”危機の時代“にメディアは何を伝えるか~地方の時代映画祭より」6日。(15)BS週刊ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(2月1日~5日)」6日。(16)TBS報道特集(急増するコロナの自宅療養 医師らが新たな取り組み/ミャンマーのクーデター 現地でいま何が)6日。

文化財防火デーの自主消火訓練

 1月26日は文化財防火デーである。昭和24(1949)年1月26日、法隆寺金堂で発生した不審火の火災により貴重な障壁画等が失われたことを教訓とし、昭和30(1955)年、文化財保護委員会(現在の文部科学省文化庁)と国家消防本部(現在の総務省消防庁)が、この日を「文化財防火デー」に制定した。今年が66回目に当たる。

 近年、予期せぬ火災が多発している。2019年4月のパリのノートルダム大聖堂の火災、また10月には沖縄の首里城阯が焼け落ちた。2020年にはオーストラリアや米カリフォルニア州で大規模な森林火災があった。

 火災にとどまらず水害による文化財の消失・破損も増え、2019年10月12日の台風19号による多摩川の氾濫では、川崎市市民ミュージアムの地下収蔵庫が浸水、市は翌年の1月21日、わら人形や戦前の写真誌など、被災した4万余点を廃棄処分すると発表した。地震・津波等の災害をふくめ、広く<防災>のあり方が再検討されている。

 2019年は2つの巨大台風が関東を襲い、三溪園も被災した。9月8日の台風15号については、本ブログの2019年9月20日掲載の「台風被害と三溪園観月会」に記録をまとめた。強風型の台風15号に対して台風19号は豪雨型で、多くの河川の氾濫を招き、上掲のミュージアム被災にとどまらず、高層マンションの地下浸水が電源盤を襲い停電。明かりが消え、エレベーターが止まり、水道が使えず、調理もできず、オール電化の文明生活が瞬時に消失した。

 台風19号の翌13日(日曜)に開催が予定されていたラグビーW杯2019の第4戦、日本対スコットランド。会場は横浜国際総合競技場(1998年創設、7万2000余人収容)で、影響が心配された。会場近くを流れる鶴見川(全長42・5km)は昔から<暴れ川>と呼ばれている。どのように氾濫を回避したか、関心のある方は「ラグビーW杯2019」(本ブログ2019年10月25日掲載)を参照されたい。
 
 翌2020年の11月25日(水曜)と26日(木曜)の2日間、横浜市開港記念会館において公益財団法人日本博物館協会主催、神奈川県博物館協会共催による第68回全国博物館大会が開かれた。新型コロナウィルス感染症が蔓延するなか、テーマは「変化の中の博物館 ―新たな役割と可能性―」である。大会委員長の銭谷眞美氏の挨拶は、新型コロナウイルス感染症の拡大と自然災害(とくに大水害)による博物館の被災に言及し、今年の大会の目的を明示した(本ブログ2020年12月2日掲載の「第68回 全国博物館大会」)。

 大会の初日は私が参加、2日目は三溪園から北泉剛史学芸員と建築担当の原未織主事が参加した。二人の報告を上掲のブログに収録した上で、最後を次のように締めくくった。「我らが三溪園の若手二人は、上掲の報告と討論を聞いて多くを学び、指摘されたことを自らの問題に置き換え、それらを三溪園の現場でどう活かすかを模索し始めている。」

 多発する自然災害に加え、中国武漢に発生した新型コロナウィルス感染症が世界的拡大を見せ、1年余を過ぎたいま、第3波といわれる急速な再拡大に向かっている。ウィルス感染症はウィルスによる<自然災害>ではあるが、その抑止に失敗すると、たちまち<人災>に転化する。

 2021年1月7日(木曜)、首都圏(1都3県)に2度目の緊急事態宣言が出され、次いで13日(水曜)には7府県(大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木)に拡大適用となった。いずれも2月6日までとしている。緊急事態宣言の発令が正月明けまで遅れたことを非難する声が少なくない。このあたりに関しては、私のブログの連載「人類最強の敵=新型コロナウイルス」(2020年3月6日の初回から最新号2021年1月26日掲載の(32)」まで)を参照されたい。

 年末年始には久闊を叙す会食や帰省、初詣等々、ふだんと違う人の移動と<3密>機会が増す。こうした社会行動に先手を打てば、確かに効果は大きかったかもしれない。欧州ではクリスマスの会食を許したことが、いっそうの感染拡大要因になったと悔やむ声が挙がっている。

 風水害、コロナ禍、東日本大震災や阪神淡路大震災等、<三重苦>とも言える災害を教訓に様々な備えが不可欠である。文化財防火デーにあたり、6年前の2015年1月29日に本ブログに掲載した「文化財防火デーの消火訓練」を読み返し、これを今年の1月17日、「三溪園で働くみなさん」宛に回覧した。

 回覧の添え状に「三溪園で働く方々は文化財のいちばん近くにいます。万一、火災が発生すれば、最初の10分間の消火が決め手になります。慌てず迅速な行動をとるための消火訓練です」と訓練の重要性を述べた。

 三溪園には国指定重要文化財10棟、横浜市指定文化財4棟がある。内苑にある重要文化財は臨春閣、旧天瑞寺寿塔覆堂、月華殿、天授院、聴秋閣、春草廬の6棟と横浜市指定有形文化財の御門、白雲邸の2棟。外苑にあるのは重要文化財の旧燈明寺三重塔、旧東慶寺仏殿、旧燈明寺本堂、旧矢箆原家住宅(合掌造り)の4棟と横浜市指定有形文化財の鶴翔閣である。

 全国には文化財保護法(1950年=昭和25年)の指定する重要文化財(建造物)が関西を中心に、2014年末の指定分で4,695棟(うち国宝は271棟)、同じく美術工芸品は10,573件(うち国宝は872件)ある。

 回覧した6年前のブログ「文化財防火デーの消火訓練」では、雁音茶屋横で火災が発生したとする設定で、消火訓練を進めた様子を描いた。その一部を抜粋する。

 巡回中の警備員が火災発生を発見、大声で「雁音茶屋横で火災発生、三重塔にも火が迫っている。至急、消火活動を始めてください」と叫ぶ。同時に火災受信機と電話で火災発生場所と状況を管理事務所に通報。
 管理事務所は火災受信機の点滅を確認、川越寛副園長の指示でただちに分担作業に着手。①係員1が119番通報、②係員2が園内放送で自衛消防隊(その日の在勤職員)を招集、消火活動を指示、③係員3が来園者の避難誘導、④係員4がエンジンポンプを起動、自動式放水銃の放水開始。
 119番通報では、火災現場や放水に必要な情報を簡潔明瞭に伝えなければならない。「こちら本牧三之谷58番の1の三溪園です。(いま訓練の)火災が発生しました。火が迫っている三重塔は、正門を約100メートル入った山上にあります。地上から20メートルの位置に建ち、塔の高さは約24メートルです。」
 火災発見者が備え付けの消火器3本を放射、ついで園内放送を聞いて駆けつけた三溪園自衛消防隊員と警備員が2号式消火栓から放射。次にポンプエンジンを起動させ、自動式放水銃3基から放水…。

 ところが2021年1月7日(木曜)、1都3県に2度目の緊急事態宣言が発令され、これを受けて、12日(火曜)、中消防署から三溪園の古屋義方総務課長に、消火訓練の中止連絡が入った。

 三溪園で働く人達を中心とする<自主消火訓練>案が浮上したのは、消防署の中止連絡から2日後の14日(木曜)、村田和義副園長のもとに開かれる定例の職員ミーティングの場であった。

 複数の職員から声が挙がり、過去の経緯をよく知る吉川利一事業課長と羽田雄一郎主事(庭園担当)が提案を推進、建築担当の原主事も文化財古建築を守る義務を強調した。この取りまとめは古屋課長が担当した。

 <自主消火訓練>を行うには、専門家の協力が不可欠である。能美防災㈱(のうみぼうさい)横浜支社三溪園担当の村上春樹さんと矢田和也さんに消火機器の説明や消火訓練の指導を依頼することにした。その後の動きは速く、総務課の滝田敦史主事が㈱能美防災とともに着々と具体的な内容や時間配分まで練りあげた。

 私は14日(木曜)の職員ミーティングの場にいなかったため、<自主消火訓練>は知らないまま、以心伝心というべきか、17日(日曜)に上掲の6年前のブログ記事の回覧を頼んだ。そして4日後の21日(金曜)、古屋課長から<自主消火訓練>の具体的項目が届く。

 実施日時は1月27日(水曜 文化財防火デーの翌日)、朝9時から11時まで。参加者は、当日の出勤者及び警備会社ジャパントータルサービスの警備員の方々、合わせて20名程度。鶴翔閣に集合、まず座学から開始。
 (1)資料による説明・質問【30分】
 (2)鶴翔閣内および屋外設備の説明・確認【30分】
 (3)消火器操作訓練【30分】
 
 当日は、前夜から降り始めた雨が止み、また降り出す不安定な空である。気温は3月下旬なみの暖かさ。まず滝田主事の司会進行で、能美防災㈱の村上さんから図面や地図等の資料に基づく消火の基礎知識ともいうべき講義を受けた。

 配布資料の項目を拾うと、(1)「火災の種類と燃焼の原理」、(2)「消火の原理」、(3)「三溪園内に設置の11種の消防設備」(4)「園内に設置の建物別の消防設備」、(5)「自動火災報知機、感知器(熱、煙、炎)の種類」、(6)「発信機、地区音響装置、火災受信機」、(7)「消火器とは」、(8)「ハロゲン化物消火設備とは」、(9)「屋内消火栓設備とは」、(10)「屋外消火栓設備」、(11)「吹上式ドレンチャー設備」、(12)「放水銃設備」。他に園内の消防設備の種類と場所を付した地図や配電盤等の写真もあった。

 例えば、(1)「火災の種類と燃焼の原理」では、<燃焼の4要素>を①<可燃物>、②<点火源(熱エネルギー)>、③<酸素供給源>、④<化学反応の連鎖>とし、これに基づく<消火の原理>が(ア)除去消火(周囲の可燃物の除去等)、(イ)冷却消火、(ウ)窒息消火、(エ)負触媒作用を使うハロゲン消火である、のような丁寧な説明がある。

 次は現場実習である。小雨降る中を外へ出て、矢田さんから消火設備の説明と使い方の指導を受ける。屋外消火栓は最新型のものもあり、そのドアの開け方、ホースの取り出し方、放水の仕方…と進み、希望者が試行する(実際の放水はせず)。

 ついで自動放水銃や手動放水銃を学ぶ。またポンプ室の装置類を見学。雨が上がったのを機に消火器(泡を放射するものと水を放射するもの)の取り扱い実習を行った。

 最後にハロゲン化物消火設備(水や泡の消火により書画等の損壊を避ける消火法)の説明を受ける。万一、逃げ遅れた場合の避難路の確認も行い、人命が最優先することを肝に銘じて<自主消火訓練>を終えた。

 これまでの消防署・消防団の応援を得た消火訓練は、火災の発見・通報についで消防車の到達後の放水・鎮火とつづく一連の予行演習であり、三溪園職員は初期通報には大きな役割を果たすが、実際の消火作業は消防署・消防団の活躍に驚きつつ補助していたと言えよう。

 ところが今年は様子が異なり、参加者の自主性・主体性が高まった。消防法により実際の放水等は行わなかったものの、<自主消火訓練>から得たものは大きい。今後さらに問題点を洗い出し、いざの時のマニュアル作りへと進めたい。日常の訓練も必要になろう。
プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
前園長(2012年8月~2023年3月)

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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