人類最強の敵=新型コロナウイルス(32)
前稿(31)を脱稿したのが1月15日(金曜)午後で、首都圏(1都3県)に緊急事態宣言が出された8日(金曜)から1週間目であった。重症病床使用率(1月5日時点)が上限まで上昇、東京都の87.4%(←1ヵ月前には55%)を筆頭に大阪府が64.7%(←1ヵ月前には58%で筆頭)等で、この間の量的・地域別の増加が著しい。
各自治体は懸命の努力を払ってコロナ重症病床数を増やす努力をしているものの、病院側は医療スタッフや機器をそろえるのに苦労している。またコロナと救急医療(冬場に多い心疾患や脳疾患)等とのバランスを取るのに心を配り、やむなくトリアージ(治療のための優先順位)を導入せざるを得ない事態に直面している。
1都3県の緊急事態宣言に加えて、新たに7府県(大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木)にこれを拡大することを決めて発令されたのが13日(水曜)であり、これで対象地域は11都府県となった。感染実態が分かるのは2週間後で、しばらく時間を要する。感染者はいまなお増えるばかりであり、換言すれば年末年始には感染が拡大していた証拠である。
【感染拡大と緊急事態宣言】
1月15日(金曜)以来の感染拡大状況をまず確認したい。前者が全国の感染者(カッコ内は重症者と死者)、後者が東京(カッコ内は重症者)。本文の記述は日を追って時間順に書くため、その都度この表に戻って追記する。重症者数は全国も東京都もともに確実に増加し、それに備える病床数増設の実現状況に息を飲む。
15日(金曜) 7132人(934人、78人)と2001人(133人)
16日(土曜) 7014人(965人、56人)と1809(136人)
17日(日曜) 5756人(972人、49人)と1592人(138人)
18日(月曜) 4924人(973人、58人)と1204人(143人)
19日(火曜) 5321人(1001人、104人)と1240人(155人)
20日(水曜) 5550人(1014人、92人)と1274人(160人)
21日(木曜) 5651人(1014人、94人)と1471人(159人)
22日(金曜) 5045人(1011人、108人)と1175人(158人)
23日(土曜) 4717人(1009人、83人)と1070人(156人)
24日(日曜) 3990人(1007人、56人)と986人(156人)
25日(月曜) 2764人(1017人、74人)と618人(148人)
26日(火曜)3時、東京都の感染者数(速報値)が入った。1026人(148人)で、また1000人台に逆戻りしたものの、減少傾向にあると見て、安心はできないものの、飲食店のみなさんほか人々が頑張った結果と見て、次への<励み>になる数字と考えられる。
前稿(32)で触れる余裕がなかったことから始めたい。日経新聞に「企業トップ 政府より信頼」(15日朝刊)という小さな記事があり、副題が「米社調査 社会問題への関与期待」である。英紙フィナンシャル・タイムズのニューズレター「モラル・マネー」1月13日号は、世界の世論調査でビジネスリーダーが政府より信頼される存在になっていることを論じた。
毎年1月に世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開かれてきたが、今年はバーチャルで開催、米PR会社エデルマンが発表する調査報告書「エデルマン・トラスト・バロメーター(信頼指標)」が企業経営者に多くの示唆を与えているとする。これは世界28ヵ国で3万人以上に実施した聞き取り調査の結果である。
コロナ禍の初期には、多くの国で政府に対する市民の信頼度が増したが、こうした傾向は長続きせず、政府への信頼が揺らぐ一方で、信頼できる存在として台頭したのが<ビジネス>であるとの調査結果を受け、エデルマン社のCEOリチャード・エデルマンは、「市民は、社会的問題でビジネスリーダーが率先して行動を起こすことを期待している」と分析する。ワクチンの配布方法や事業再開の基準等を巡り、政府が明瞭な指示を出せない場面が目立ち、市民は必ずしも政府の指示を待たずにビジネスリーダーが英断を下すことを望んでいるのではないかと指摘。
日本のビジネス界では会社名が先行し、そのリーダーの顔が見えにくいため、上掲のビジネスリーダーへの期待がどれほど高いかは断言できない。代わりに各分野の専門家や一部のNPOの活躍への期待が高まるのは良い傾向と思われる。とくに正体不明の新型コロナウィルス(=人類最強の敵)を制御するには、科学的分析に基づく対処法が不可欠の前提であるからである。
14日(木曜)、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に出演したノーベル賞受賞者の本庶佑・京都大学特別教授は、「PCR検査の大幅な拡充を!」と提言した。 本庶教授は、首都圏に緊急事態宣言が再発出された今月8日、山中伸弥・京大教授と大隅良典・東京工業大学栄誉教授、大村智・北里大学特別栄誉教授という同じノーベル医学・生理学賞受賞者とともに新型コロナ対策について緊急声明を発表。「医療機関と医療従事者への支援の拡充」や「科学者の勧告を政策に反映できる長期的展望に立った制度の確立」など5つの提言をおこなっているが、そのうちのひとつが「PCR 検査能力の大幅な拡充と、無症候感染者の隔離の強化」である。
本日で国内感染を初確認してから1年を迎えたが、他の先進国と比較しても、この国のPCR検査は進んでいるとは言えない。政府は1日あたりの可能検査数を最大約12.5万件としているが、実際は1日平均で約4.4万件(1月1〜11日)。世界で比較すると、人口1000人あたりの検査数がイギリスは8.1人、フランスが4.4人、アメリカが3.9人である一方、日本は0.5人でしかない(7日移動平均、9日時点)。こうした現状に対し、本庶教授は「いまだに検査数が少ない」と指摘。
「中国のように地域ごとに全検査・隔離するのが理想だが、現実的に日本では難しい」とし、こう提言した。「少なくとも『感染しているかも』と思ったら即座に検査を受けられる体制を作るべき。今、業界支援という形で何兆円もばらまいているが、検査にお金を使うほうが断然コスト的にも社会的にも有効」と述べた。
15日(金曜)、政府は閣議で飲食業の<時短協力金>に予備費から7418億円の支出を決めた。飲食店の営業時間を午後8時まで、酒類の提供は午前11時から午後7時までに限るよう要請(時短要請)。応じた場合、1日6万円の<時短協力金>を給付するもので、都道府県向けの地方創生臨時交付金として積み増し、国が8割を負担する。
16日(土曜)、大学入学共通テストの初日で、マスク姿の受験生が近くの大学の試験会場(全国に681会場)へ午前8時の開門を待って集まった。科目は地理歴史と公民、国語、外国語の3教科、明日の2日目に理科と数学がある。感染対策として受験生の席の間隔を空け、受験生はマスク着用、教室は科目終了毎に10分以上の換気、それに手指のアルコール消毒を課した。南関東は幸いに春並みの暖かさであったが、北海道の稚内(会場は北星学園大学)では悪天候のため全科目が中止となった。1979年に始まった全国一斉の共通1次試験いらい初めてである。
今年から始まる大学入学共通テストは、従前の大学センター試験を継承しつつ、新たに思考力、判断力を重視するのが特徴であるという。そのため多くの資料を提示して課題を解かせる形式の出題が多い。私も久しぶりに受験生になった積りで何問か解いてみた。出題形式が変わったことは分かるが、思考力、判断力を重視するとする目的に沿った効果がどう表れるか、判断するには時間が必要であろう。
この日、都の感染者数は1809人で曜日最多となる。また(カッコ)内の重症者数が全国・東京都ともに過去最多を更新しており、これに対する病床数の確保とホテル等の療養施設のキャパシティー増加が追い付かないと、医療崩壊となる。その前提が感染者数で、この<上流>を減らさないかぎり<下流>に位置する病院と療養施設が対応しきれない。
17日(日曜)、阪神淡路大震災から26年になる。各地で追悼の集いが開かれた。それに大学入学共通テストの2日目、幸い大過なく終了した。約53万人の受験生とテスト関係者はホッとしているに違いない。
同じ日の@niftyニュースによると、ノルウェー当局は同日、1回目のワクチン接種を受けた75歳以上の人々の間で、計29人の死亡者が発生したと明らかにし、このうち4分の3が80歳以上だったと付け加えた。当局はブルームバーグ紙との書面インタビューで「15日までノルウェーで使用できるワクチンはファイザーのワクチンであり、すべての死者はこのワクチンと関連がある」と明らかにした。
当局は「報告された死亡者はすべて基底疾患を持つ高齢者で、大半の人が吐き気と嘔吐、発熱、注射部位の局所反応、基底疾患の悪化といった予想される副作用を経験した」と付け加えた。ブルームバーグ紙は、ワクチンが高齢の末期患者にあまりにも危険な可能性があるという事実を悟らせたと伝えた。
18日(月曜)に開会した通常国会で、菅首相は施政方針演説を行った。主な課題は(1)新型コロナウィルス対策、(2)脱炭素社会の実現、(3)デジタル政策、(4)社会保障、(5)教育・科学技術、の5点であり、これまで個別に着手してきたことを包括的にまとめたもの。
衆院本会議ではほぼ原稿通り読み上げたが、その後の参院本会議では、新型コロナウイルス感染症対策の緊急事態宣言をめぐり、「徹底的な対策」というべきところを「限定的な対策」、35人学級について「小学校」と言うべきところを「小中学校」と口にし、言い直す場面もあった。
疲労と緊張が重なる一過性のミスであったのかもしれない。今国会の会期は6月16日までの150日間と長丁場である。予定通りで行けば東京オリンピックが7月23日に始まり、パラリンピックが9月5日に終わり、ついで9月30日が自民党総裁の任期満了、さらに3週間後の10月21日が衆議院の任期満了となる。それまでの限られた日程のなかで解散・総選挙を行う。
同じ日、菅首相はワクチン担当に河野太郎行政改革相を充てると発表。河野氏は翌19日の記者会見で「安全で有効なワクチンを一人でも多く、一日でも早く接種できるように全力を尽くしたい」と語り、意気込みを見せた。
昨年末からの感染急拡大で、コロナによる死者数(厚労省調べ)は、12月1日の2171人から今月17日の4500人と倍増した。危機感が強まる中、自民党幹部が「ワクチンに失敗したら菅政権が終わってしまうぐらいの話だから、頑張ってほしい」と声をかけると、河野氏も職責の重さを受け止めていたという。
ワクチン接種をめぐっては、すでに縦割りの弊害が指摘されていた。接種は厚生労働省、輸送は国土交通省、冷凍保管は経済産業省、都道府県との調整は総務省など複数官庁にまたがる一大プロジェクト。行革相として「役所のケツをたたくのが得意」(政府高官)な河野氏を起用することで、早期に接種の環境を整える狙いがある。
同じ18日、静岡県でイギリス型の変異種感染者3人が見つかった。60代男性、40代女性、20代女性で1月上旬に発症、自宅療養中という。いずれも英国滞在歴も海外渡航者との接触歴もないため、国内での市中感染が疑われており、検体を厚労省の試験所で一括して調べることにしている。
同じ日、世界保健機関(WHO、テドロス事務局長)の<独立調査パネル>が中間報告書を発表した。<独立調査パネル>とは、ニュージーランドのクラーク元首相やリベリアのサーリーフ元大統領等をメンバーとしてコロナ拡大後に発足した組織である。中間報告書なかで中国の初期対応について「新しい病原体が出てきたときは、集団感染の特定や診断法、治療法の確立などを始めなければならず、中国は地方単位でも国単位でも、もっと厳格な対応を取るべきであった」と批判した。またWHOが昨年の1月30日に緊急事態宣言を出したのは遅すぎたとする批判に対して「なぜ緊急会合が1月第3週まで開かれなかったか、なぜすぐに緊急事態宣言を出せなかったはっきりしない」と述べる一方、「ほとんどの国で、行動を起こさなければという事実は黙殺された」としている。次の報告書は5月を予定。
これに対して中国外務省の華報道局長は19日の会見で、上掲の<独立調査パネル>の中間報告書に反論し、発生当時「十分な情報がないなかで早期に発見し、隔離と治療を行い、感染者と死者数を抑えた」と述べた。比較的穏やかな内容となっているのは、これとは別にWHO調査団が14日に武漢入りしており、あまりWHOを刺激しないよう配慮したものと見られている(20日づけ日経新聞朝刊)。
武漢市の都市封鎖が始まったのが昨年の1月23日、まる1年になるのを前に武漢大学等の研究チームが市の感染者数が昨年5月までに16万8000人にのぼるとする推計結果をまとめた。これは武漢市政府が公表した公開統計の5万人の3倍以上になる(同上の日経新聞)。
同じ日、朝日新聞デジタル版は、2度目の緊急事態宣言に関する各界の見解をまとめている。うち大竹文雄(大阪大学)の次の見方が参考になる。「この<長期戦>を勝ち抜くには感染予防だけでなく、社会を回し日々の生活を守りながらポイントをついた対策を講じていくしかありません。感染症対策の3本柱は、命を救う医療、感染の広がりを抑える保健所などの公衆衛生、社会による予防です。
第3波は、東京の感染者数が1日2千人を超え、医療と公衆衛生という二つの柱が逼迫(ひっぱく)し、残りの柱である社会の力で感染拡大を一気に抑えるべき局面に来ています。政府の緊急事態宣言には一定のメッセージ性があります。ただ、宣言を出す前に対策を段階的に強めていた方が、社会に与える影響は小さくて済んだはずです。宣言は事前に対策を講じたうえで拡大が収まらない時に出す<切り札>であるべきです。」
控えめな言い方だが、共感するところが多い。すなわち感染症対策の3本柱を、①命を救う医療、②感染の広がりを抑える保健所などの公衆衛生、③社会による予防、の3つとしたうえで、③のためのメッセージ性を持つ政府の緊急事態宣言という<切り札>を切る事前過程が不十分だとしている。私なりに換言すれば、政府のメッセージが浸透せず、圧倒的多数を占める③社会による予防が機能しない、ということであろう。
19日(火曜)、前掲の表にあるとおり、全国の重症者数が1001人となり、死者も104人と過去最多となった。これは2週間前の正月5日頃の実態を示す数字であり、首都圏(1都3県)に緊急事態宣言が出された8日(金曜)以降の効果はまだ測ることができない。
同じ日、新ヒロシマテレビによれば、広島県の湯崎知事が感染者の改善状況にさらに拍車をかけようと、市中の無症状感染者の洗い出しを目的に、広島市の最大80万人の大規模PCR検査を実施しようとしている。来月の早い時期にも開始したい考えを示し、「リスクとメリットと比較して考えた時に感染を抑えるためにはメリットのほうが大きい」と述べた。前掲14日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に出演したノーベル賞受賞者の本庶佑・京都大学特別教授の、「PCR検査の大幅な拡充を!」との提言を受けての考えと思われる。
この検査は特に感染者が多い広島市の4つの区の全ての住民と働く人、最大でおよそ80万人を対象とするもので無料実施する方針で、検査期間は1カ月から2カ月を想定している。県では、宿泊療養施設や病床を確保するなど、陽性者の受け入れ体制もあわせて進めている。
一方、県議会の健康福祉委員会でも大規模PCR検査について質問が相次いだ。専門家の意見をふまえての実施なのかという県議からの質問に対し、県の担当者は、「専門家の先生方にもお話を伺いまして、丁寧に情報提供を行うとともに、陽性者に対するその後の疫学調査や療養施設の医療ベッドの確保についてもあわせて実施することが必要であるということで一定のご理解、(制度の)形状についてもきちっとしなければならないというご指摘をいただいた」と説明し、あらためて検査の必要性を強調した。また湯崎知事は18日のTSS出演の中で、「よほど感染状況が低くなった場合はやる意味がなくなる」と再検討の可能性を示唆した。
20日(水曜)、首都圏のJRと私鉄各社の24事業者が終電の10~30分繰り上げを開始した。1都3県に緊急事態宣言が出された今月8日から2週間たらずの異例の速さで実施、夜間自粛の要請に応えると同時に、乗務員の感染対策をも含む。
21日(木曜)、衆院の代表質問が始まる。野党の質問は主に新型インフルエンザ等対策特別措置法、感染症法、検疫法の改正案のうち「罰則規定」に関することに集中し、首相は「野党の声を聴く」ことを強調した(後述の【特措法と感染症法の改正課題】を参照)。
この日、電通は港区汐留の本社ビル売却の検討に入った。売却額は国内では過去最大の3000億円程度と言われる。コロナ禍のなかで遠隔勤務を主とする分散型のオフィス展開の一環としてのものであり、都心部のオフィスビル再配置に大きく影響するに違いない。
22日(金曜)、コロナ重症者数が増えつづけるなかで、重症者用病床と医療人材のミスマッチが大きな問題となっている。同日付けの日経新聞によれば、集中治療室(ICU)等の重症者施設を持つ病院の2割で高度な容体管理を行う専門医がいないことが判明、と伝えた。1989年から学会による資格認定が始まった<集中治療専門医>は2020年4月段階で1955人の登録があるのみである。
同じ日、アフリカのベナンが51番目の批准を行ったため、核兵器禁止条約が発効した。これを受け、国連のグテーレス事務総長は22日、「核兵器なき世界という目標に向けた重要な一歩であり、核軍縮への多国間アプローチへの強い支持を示すものだ」と発効を歓迎し、条約の批准国は1年以内に締約国会議を開き、核兵器廃棄の期限や検証方法などを話し合う。なお翌日カンボジアが批准を終えた。
この日の参院代表質問で公明党の山口代表(参議院議員)は「唯一の被爆国」の日本が橋渡し役を担うことができるとして、締約国会議へのオブザーバー参加を求めたが、菅首相は「条約に署名する考えはない」と改めて否定、締約国会議へのオブザーバー参加については「慎重に見極める必要がある」と述べるにとどめた。
これをめぐり、「平和の党」を掲げる公明党が、核廃絶を推進する支持母体・創価学会との間でジレンマを抱えている。学会は条約の批准を求めるが、政府方針に反することに与党として公明党は踏み込めない。同日の党の会合で「最終的には、核兵器禁止条約を批准できる環境を整えていくことが、我が国のあるべき方向性だ」と訴えた。米国の「核の傘」に安全保障を依存する日本政府は条約に参加しない方針のため、山口氏は「最終的には」と留保をつけた。
一方、22日付けの機関紙「聖教新聞」は「核兵器の禁止と廃絶は、創価学会の社会的使命です」とする原田稔会長の談話を掲載、条約の発効を歓迎した。学会は戸田城聖・2代会長の1957年の「原水爆禁止宣言」を基礎に「唯一の戦争被爆国である日本が批准すべきだ」との立場を貫いている。
同じ日、中国の習国家主席は、海警局(日本の海上保安庁に相当)の権限を強め、「重要な海上武装組織」として準軍事組織と位置づける法改正に署名した。尖閣諸島周辺や南シナ海で中国公船の行動が先鋭化する懸念がある。
23日(土曜)、広島市長が市民80万人に大規模PCR検査を実施すると表明した。19日の湯崎広島県知事の提案を受けてのもの。だが、濃厚接触者を中心にPCR検査を実施するとする政府は、これに乗り気ではない。
同じ日、富山県で初めて鳥インフルエンザが見つかり、殺処分となった。この冬(11月~)の鳥インフルエンザは、これが38例目である。
同じ23日、横浜市の東戸塚の商店主たちが夜間の見回りを始めたとのテレビニュースが流れた。飲食業の開店が8時までとなり、人通りが少なくなったので、早じまいした店主たちが集まって行う地域安全のための<夜回り>だという。
1年前の1月23日、中国の武漢市で新型コロナウィルス感染防止のため封鎖が行われた。2ヵ月半に及ぶ都市封鎖の有効性を中国政府は誇るが、実際の感染者数は公式発表の3倍強の約17万人とする研究結果もある(日経新聞20日朝刊)。中国政府の否定する<初動の遅れ>、その対応に明確に不満を示す市民もいる。
同じ23日、サンケイ・ニュースが、「寅さんにも登場 コロナ禍で老舗料理店が231余年の歴史に幕」の見出しで次のように伝えた。「新型コロナウイルス感染拡大の長期化で飲食店の苦境が続くなか、寛政2(1790)年に創業し、231年の歴史を持つ東京・葛飾柴又の日本料理店「川甚(かわじん)」がコロナによる業績悪化を理由に今月末で閉店する。
夏目漱石の「彼岸過迄(ひがんすぎまで)」など数々の文豪の小説に登場し、映画「男はつらいよ」の舞台にもなった老舗店の幕引きに、惜しむ声が広がた。川甚の8代目社長、天宮一輝(あまみや・かずてる)さん(69)も悔しそうに語った。
地元や観光客に愛され、繁忙期は1日700人が利用することもあったが、コロナ禍で客が激減。経費削減や助成金、融資制度の利用など、手は尽くすも「大きな店なので固定費が大きく、焼け石に水だった」という。借入金を返済するためには、その分、売り上げを増やす必要があるが「明るい展望が見えない」として昨年12月に閉店を決断した。
24日(日曜)の日経新聞は、シリーズ<チャートは語る>で「コロナが招く<分断景気> 過熱と冷え込み混在」の見出しで次のように報じた。「新型コロナウィルスが引き起こす混乱で景気の<デカップリング(分断)>ともいえる状況が起きている。半導体や自動車など製造業が急回復し過熱感すら漂う一方、旅行や外食などサービス業は冷え込みから抜け出せない。…」 これに伴い産業素材も急回復しているが、消費者物価は鈍化している。
この日、岸防衛相はオースティン米国防長官と初めての電話会談を行い、米国防長官が日本の防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用されると明言、「米国は東シナ海の現状変更の試み、いかなる一方的な行動にも反対する」と述べた。
【注】日米安全保障条約第5条を以下に引用する。
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
バイデン大統領の就任式(20日、日本時間の21日)に台湾の駐米大使が米台断交後初めて出席した。バイデン政権発足後の23日と24日、台湾の防空識別圏(ADIZ)に中国軍機10機超が侵入すると、米国務省は「台湾が十分な自衛能力を維持するよう支援していく」と表明した。なお25日(月曜)日経新聞のトップ記事の見出し「半導体増産 台湾に要請 日米独、不足解消求め」にあるように、対中制裁で逼迫した半導体は経済・防衛産業の要に位置している。
25日(月曜)、日経新聞夕刊のトップに久しぶりの明るいニュースが出た。「博士課程学生に生活費、年240万円を7800人に」。博士課程への進学を後押しし、日本の国際的な競争力の維持に欠かせない専門人材の育成につなげる。20年前の博士号取得者数は人口100万人あたり日本が127人、米国が141人、韓国が131人とほぼ同じ水準であったが、2015年度は米国が259人、韓国が256人と増えているのに対して日本は118人と低迷した。
この政策を企画・提案したのが、自らも博士課程で苦労した若い文部官僚との報道を見た覚えがある。それも明るいニュースに花を添える。初年度の関連経費はわずか230億円程度で、国家予算全体のなかでは微々たるものだが、そのもたらす長期的なコスパは計り知れない。
26日(火曜)、ワクチンの接種体制の構築と供給不足問題が急浮上してきた。なかでもワクチン製薬会社の生産能力の低減により、EUへのワクチン供給の減少が分かり、これが連鎖的に世界へ拡がり、菅首相が確約した「2月下旬からワクチン接種開始」が怪しくなりかねない。
日本では承認を終えたワクチンが一つもなく、その点でまず大幅に遅れている上に、ワクチン接種体制の構築に着手したばかりで、その遅れが世界的なワクチン確保競争への参加を遅らせ、ますます進むワクチン供給不足の荒波を乗り越える可能性が小さくなっている。
【特措法と感染症法の改正課題】
今回の新型コロナウィルスの世界的蔓延をうけ、これに対処するための特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)の改正とともに、ハンセン病や結核等の感染症一般の流行に対処するための感染症法をも合わせて改正するべく、政府は次期国会に向け、来週中(18日~22日)の閣議決定を目指している。
16日(土曜)、新聞各紙は、厚労省が15日、新型コロナウイルス対策に関する感染症法改正案の概要を同省の専門部会に示したと伝えた。改正案のポイントは、(1)入院措置に反して入院先から逃げ出すなどした場合、懲役1年以下または罰金100万円いかを検討、(2)保健所などの行動歴調査を拒否したり、うそを回答したりした場合、懲役6ヵ月以下または罰金50万円以下を検討、(3)宿泊、自宅療法の協力に応じない場合は、自己負担での入院を勧告できる規定を設ける、(4)国や都道府県知事が医療機関に病床確保の協力を求める<要請>を<勧告>できるに強め、正当な理由なく従わない場合は施設名などを公表できる。
感染者の病床を確保するため、国や都道府県知事が医療機関に「協力を求めることができる」とする感染症法の規定を「勧告できる」に強める。勧告に従わなければ施設名などを公表できるようにする。感染者が入院措置や行動歴調査を拒否した場合には刑事罰を科す規定も示した。
専門部会は改正案をおおむね了承した。厚労省は病床が逼迫する中、民間病院の協力が進んでいないと判断して勧告規定を盛り込んだが、中小の病院ではコロナ患者の受け入れに限りがあり、対応する病床が増えるかは不透明だ。罰則規定には委員から私権制限への懸念や感染拡大を防止する効果への疑問が相次いだ。田村厚労相は15日の記者会見で「ご意見がある部分に関しては、国会で議論していただく」と述べた。
毎日新聞によれば、日本医学会連合など関係学会は14日、政府が通常国会で成立を目指す感染症法改正案の中で、新型コロナウイルスの感染者が入院勧告を拒否したり保健所の調査を拒んだりした場合の罰則の創設を検討していることについて、罰則に反対する声明を発表し、「感染症制御は国民の理解と協力によるべきだ」としている。
声明を出したのは他に日本公衆衛生学会、日本疫学会。声明は、過去のハンセン病患者らに対する差別・偏見といった歴史的反省を踏まえ、人権を重視して感染症法が制定された経緯を深く認識する必要があると強調した。その上で「罰則を恐れるあまり、検査結果を隠すなどかえって感染コントロールが困難になることが想定される」と指摘し、罰則を伴う強制は国民に恐怖や不安・差別を引き起こすことにもつながり、感染症対策に不可欠な国民の協力を得ることを妨げる恐れがあるとして、再考を求めた。
政府は新型コロナ対策の強化のため、感染症法と新型インフルエンザ等対策特別措置法をあわせて改正する方針で、それも通常国会の早い段階で成立させたいとしている。
22日(金曜)、新型コロナウイルスに対応する特別措置法改正案が閣議決定された。改正案は「私権制限」を強める内容で、野党は「罰則より支援を先に」として罰則規定への批判を強める。連立与党の公明党、北側一雄・中央幹事会会長は20日、法案の扱いについて 「野党の声を聞き、見直すことは全く否定されるものではない」と述べ、官邸幹部も「閣議決定した内容で成立させられればベスト」としつつも、「修正の議論は閣議決定のあと」と語り、修正は「織り込み済み」との見方を示した。23日(土曜)~25日(月曜)の国会審議でも、内容にかかわる大きな進展はなく、与野党間で詰める合意がなされたのみである。
【アメリカの政権移行】
21日(木曜、アメリカ東部時間の20日)、バイデン氏(78歳)の第46代米大統領就任式である。州兵2万5000人による厳重警戒の下、懸念された騒乱もなく、連邦議会議事堂で粛々と行われた。就任演説でバイデン大統領は、「今日は米国にとって歴史的な民主主義の日である。民主主義は勝利した」と宣言、「米国民、米国を団結させることに全霊をささげる」と述べた。なお就任式の警備に当たった米州兵200人がコロナに感染した。
バイデン新政権の日米外交は、知日派として知られるカート・キャンベル氏を米国国家安全保障会議(NSC)の<インド太平洋調整官>に任命、ブリンケン国務長官、サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官ともども、知日派を軸にボトムアップ型に復帰すると見られる(日経新聞20日)。
この日、バイデン大統領は、就任初日の重要作業として、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に復帰、WHOに残留等、計15の大統領令に署名した。また新型コロナウィルスに国家戦略をまとめ、戦時下の大統領権限等、あらゆる政策手段でワクチンの供給を加速し、今秋のコロナ収束をめざすとした。しかし、各州がワクチン接種センターを設けるのに必要な人材・機器・資金等の支援に多くの課題が残り、かつワクチン接種を否定する人が3割ほどいる等の課題が山積している。
また大統領令で行うことのできる政策は限られており、多くの新しい政策は法案として議会に提出しなければならない。その議会は上下両院とも与党民主党が僅差で多数を握っているものの、あくまで僅差であり、素早く可決させるのは決して容易ではない。
25日(月曜)、メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の<無敵の交渉・コミュニケーション術>』で、さまざまな情報や要素を勘案しつつ、今後の世界情勢の予測を試みている。その概要は以下のとおり。
「とくに米国“不在”の国際舞台において、勢力拡大に勤しむ中国はASEAN諸国をはじめ、アフリカ、中東、そして欧州各国を自陣に取り込む作戦に乱れは生じておらず、途上国で生じる膨大かつ深刻な債務不履行問題に付け込む形で、半ば縛り付けるかのように中国の勢力圏の確保に乗り出している。
一方、ASEAN各国は、中国の企みに上手に乗りつつ、債務の軽減や衛生戦略物質の確保、そして何よりもワクチンの早期獲得の約束を取り付けるという現実的な政策方針に転換している。とはいえ、南シナ海問題における緊張関係は少しも緩和されておらず、「経済・社会的側面と国家安全保障問題とをきれいに切り分けた」路線を取っている。言い換えれば、RCEPを通じた中国経済圏との連携を強化し、中国の経済力による優位性を受け入れる半面、欧州・米国、そして日本ともタッグを組んで、伸長著しい中国の領土的な拡大への警戒もさらに強め、中国封じ込めの一翼を担うという【両にらみのギリギリの外交戦略】を遂行中である。
今後、中国が、対欧米、対日、そして対国際社会という側面で、ASEAN各国にどのような「飴と鞭」を用いるのか。その強さと内容は、今後、バイデン新政権がどのようなアプローチをアジアに対して取ってくるのかにかかっている。バイデン大統領は、ほとんどすべての側面でトランプ政権の政策の反転を狙っているが、唯一継続され、かつ強化されるのが、アメリカの対中強硬策であろう。
トランプ政権がスタートさせた貿易摩擦・貿易戦争に加え、人権問題や環太平洋の安全保障の側面からも、総合的に中国との対立姿勢を強めることになろう。国務長官に就任したブリンケン氏の姿勢や、新しく財務長官に就任したイエレン氏の言動からも読み取れるように、バイデン政権は、議会両院ですでに形成されている超党派での対中強硬論に後押しされて、より厳しい姿勢を取ることになる。」
世界を見ると、新型コロナウィルスの変異種(変異株)の出現により、欧州諸国では感染者が増大し、フランスは27日(水曜)にも3度目の都市封鎖に踏みきるかと言われる。すでに3度目の都市封鎖中のイギリスでは感染が止まらない。また最多の感染者数と死者を更新するアメリカでは、バイデン政権が最重要課題としてワクチン接種を進めているが、まだその効果が出てくるには至っていない。
この間に観たテレビ番組は次の通り。(1)NHKスペシャル「“感染爆発” 危機をどう乗り越えるか」16日。 (2)NHK週刊ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(11日~15日)」17日。 (3)NHK逆転人生「じり貧競馬場 執念の復活劇」18日。 (4)テレビ朝日 報道ステーション「<速報>ワクチン担当大臣に河野太郎氏 接種体制の整備へ」18日。 (5)NHKBS世界のドキュメンタリー(選)「遊びの科学」18日。 (6)ETV特集「円空 仏像に封印された謎(再)」21日。 (7)TBS世界ふしぎ発見! 今、解き明かされる! シーボルト事件の謎」23日。 (8)NHKスペシャル「高野山 千年の襖絵 空海の世界に挑む」23日。 (9)NHKスペシャル 「戦国~激動の世界と日本~{1}秘められた征服計画」24日。 (10)NHKスペシャル 「戦国~激動の世界と日本~{2}ジャパン・シルバーを獲得せよ」24日。(11)NHK 英雄たちの選択スペシャル「古代人のこころを発掘せよ!」24日。
各自治体は懸命の努力を払ってコロナ重症病床数を増やす努力をしているものの、病院側は医療スタッフや機器をそろえるのに苦労している。またコロナと救急医療(冬場に多い心疾患や脳疾患)等とのバランスを取るのに心を配り、やむなくトリアージ(治療のための優先順位)を導入せざるを得ない事態に直面している。
1都3県の緊急事態宣言に加えて、新たに7府県(大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木)にこれを拡大することを決めて発令されたのが13日(水曜)であり、これで対象地域は11都府県となった。感染実態が分かるのは2週間後で、しばらく時間を要する。感染者はいまなお増えるばかりであり、換言すれば年末年始には感染が拡大していた証拠である。
【感染拡大と緊急事態宣言】
1月15日(金曜)以来の感染拡大状況をまず確認したい。前者が全国の感染者(カッコ内は重症者と死者)、後者が東京(カッコ内は重症者)。本文の記述は日を追って時間順に書くため、その都度この表に戻って追記する。重症者数は全国も東京都もともに確実に増加し、それに備える病床数増設の実現状況に息を飲む。
15日(金曜) 7132人(934人、78人)と2001人(133人)
16日(土曜) 7014人(965人、56人)と1809(136人)
17日(日曜) 5756人(972人、49人)と1592人(138人)
18日(月曜) 4924人(973人、58人)と1204人(143人)
19日(火曜) 5321人(1001人、104人)と1240人(155人)
20日(水曜) 5550人(1014人、92人)と1274人(160人)
21日(木曜) 5651人(1014人、94人)と1471人(159人)
22日(金曜) 5045人(1011人、108人)と1175人(158人)
23日(土曜) 4717人(1009人、83人)と1070人(156人)
24日(日曜) 3990人(1007人、56人)と986人(156人)
25日(月曜) 2764人(1017人、74人)と618人(148人)
26日(火曜)3時、東京都の感染者数(速報値)が入った。1026人(148人)で、また1000人台に逆戻りしたものの、減少傾向にあると見て、安心はできないものの、飲食店のみなさんほか人々が頑張った結果と見て、次への<励み>になる数字と考えられる。
前稿(32)で触れる余裕がなかったことから始めたい。日経新聞に「企業トップ 政府より信頼」(15日朝刊)という小さな記事があり、副題が「米社調査 社会問題への関与期待」である。英紙フィナンシャル・タイムズのニューズレター「モラル・マネー」1月13日号は、世界の世論調査でビジネスリーダーが政府より信頼される存在になっていることを論じた。
毎年1月に世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開かれてきたが、今年はバーチャルで開催、米PR会社エデルマンが発表する調査報告書「エデルマン・トラスト・バロメーター(信頼指標)」が企業経営者に多くの示唆を与えているとする。これは世界28ヵ国で3万人以上に実施した聞き取り調査の結果である。
コロナ禍の初期には、多くの国で政府に対する市民の信頼度が増したが、こうした傾向は長続きせず、政府への信頼が揺らぐ一方で、信頼できる存在として台頭したのが<ビジネス>であるとの調査結果を受け、エデルマン社のCEOリチャード・エデルマンは、「市民は、社会的問題でビジネスリーダーが率先して行動を起こすことを期待している」と分析する。ワクチンの配布方法や事業再開の基準等を巡り、政府が明瞭な指示を出せない場面が目立ち、市民は必ずしも政府の指示を待たずにビジネスリーダーが英断を下すことを望んでいるのではないかと指摘。
日本のビジネス界では会社名が先行し、そのリーダーの顔が見えにくいため、上掲のビジネスリーダーへの期待がどれほど高いかは断言できない。代わりに各分野の専門家や一部のNPOの活躍への期待が高まるのは良い傾向と思われる。とくに正体不明の新型コロナウィルス(=人類最強の敵)を制御するには、科学的分析に基づく対処法が不可欠の前提であるからである。
14日(木曜)、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に出演したノーベル賞受賞者の本庶佑・京都大学特別教授は、「PCR検査の大幅な拡充を!」と提言した。 本庶教授は、首都圏に緊急事態宣言が再発出された今月8日、山中伸弥・京大教授と大隅良典・東京工業大学栄誉教授、大村智・北里大学特別栄誉教授という同じノーベル医学・生理学賞受賞者とともに新型コロナ対策について緊急声明を発表。「医療機関と医療従事者への支援の拡充」や「科学者の勧告を政策に反映できる長期的展望に立った制度の確立」など5つの提言をおこなっているが、そのうちのひとつが「PCR 検査能力の大幅な拡充と、無症候感染者の隔離の強化」である。
本日で国内感染を初確認してから1年を迎えたが、他の先進国と比較しても、この国のPCR検査は進んでいるとは言えない。政府は1日あたりの可能検査数を最大約12.5万件としているが、実際は1日平均で約4.4万件(1月1〜11日)。世界で比較すると、人口1000人あたりの検査数がイギリスは8.1人、フランスが4.4人、アメリカが3.9人である一方、日本は0.5人でしかない(7日移動平均、9日時点)。こうした現状に対し、本庶教授は「いまだに検査数が少ない」と指摘。
「中国のように地域ごとに全検査・隔離するのが理想だが、現実的に日本では難しい」とし、こう提言した。「少なくとも『感染しているかも』と思ったら即座に検査を受けられる体制を作るべき。今、業界支援という形で何兆円もばらまいているが、検査にお金を使うほうが断然コスト的にも社会的にも有効」と述べた。
15日(金曜)、政府は閣議で飲食業の<時短協力金>に予備費から7418億円の支出を決めた。飲食店の営業時間を午後8時まで、酒類の提供は午前11時から午後7時までに限るよう要請(時短要請)。応じた場合、1日6万円の<時短協力金>を給付するもので、都道府県向けの地方創生臨時交付金として積み増し、国が8割を負担する。
16日(土曜)、大学入学共通テストの初日で、マスク姿の受験生が近くの大学の試験会場(全国に681会場)へ午前8時の開門を待って集まった。科目は地理歴史と公民、国語、外国語の3教科、明日の2日目に理科と数学がある。感染対策として受験生の席の間隔を空け、受験生はマスク着用、教室は科目終了毎に10分以上の換気、それに手指のアルコール消毒を課した。南関東は幸いに春並みの暖かさであったが、北海道の稚内(会場は北星学園大学)では悪天候のため全科目が中止となった。1979年に始まった全国一斉の共通1次試験いらい初めてである。
今年から始まる大学入学共通テストは、従前の大学センター試験を継承しつつ、新たに思考力、判断力を重視するのが特徴であるという。そのため多くの資料を提示して課題を解かせる形式の出題が多い。私も久しぶりに受験生になった積りで何問か解いてみた。出題形式が変わったことは分かるが、思考力、判断力を重視するとする目的に沿った効果がどう表れるか、判断するには時間が必要であろう。
この日、都の感染者数は1809人で曜日最多となる。また(カッコ)内の重症者数が全国・東京都ともに過去最多を更新しており、これに対する病床数の確保とホテル等の療養施設のキャパシティー増加が追い付かないと、医療崩壊となる。その前提が感染者数で、この<上流>を減らさないかぎり<下流>に位置する病院と療養施設が対応しきれない。
17日(日曜)、阪神淡路大震災から26年になる。各地で追悼の集いが開かれた。それに大学入学共通テストの2日目、幸い大過なく終了した。約53万人の受験生とテスト関係者はホッとしているに違いない。
同じ日の@niftyニュースによると、ノルウェー当局は同日、1回目のワクチン接種を受けた75歳以上の人々の間で、計29人の死亡者が発生したと明らかにし、このうち4分の3が80歳以上だったと付け加えた。当局はブルームバーグ紙との書面インタビューで「15日までノルウェーで使用できるワクチンはファイザーのワクチンであり、すべての死者はこのワクチンと関連がある」と明らかにした。
当局は「報告された死亡者はすべて基底疾患を持つ高齢者で、大半の人が吐き気と嘔吐、発熱、注射部位の局所反応、基底疾患の悪化といった予想される副作用を経験した」と付け加えた。ブルームバーグ紙は、ワクチンが高齢の末期患者にあまりにも危険な可能性があるという事実を悟らせたと伝えた。
18日(月曜)に開会した通常国会で、菅首相は施政方針演説を行った。主な課題は(1)新型コロナウィルス対策、(2)脱炭素社会の実現、(3)デジタル政策、(4)社会保障、(5)教育・科学技術、の5点であり、これまで個別に着手してきたことを包括的にまとめたもの。
衆院本会議ではほぼ原稿通り読み上げたが、その後の参院本会議では、新型コロナウイルス感染症対策の緊急事態宣言をめぐり、「徹底的な対策」というべきところを「限定的な対策」、35人学級について「小学校」と言うべきところを「小中学校」と口にし、言い直す場面もあった。
疲労と緊張が重なる一過性のミスであったのかもしれない。今国会の会期は6月16日までの150日間と長丁場である。予定通りで行けば東京オリンピックが7月23日に始まり、パラリンピックが9月5日に終わり、ついで9月30日が自民党総裁の任期満了、さらに3週間後の10月21日が衆議院の任期満了となる。それまでの限られた日程のなかで解散・総選挙を行う。
同じ日、菅首相はワクチン担当に河野太郎行政改革相を充てると発表。河野氏は翌19日の記者会見で「安全で有効なワクチンを一人でも多く、一日でも早く接種できるように全力を尽くしたい」と語り、意気込みを見せた。
昨年末からの感染急拡大で、コロナによる死者数(厚労省調べ)は、12月1日の2171人から今月17日の4500人と倍増した。危機感が強まる中、自民党幹部が「ワクチンに失敗したら菅政権が終わってしまうぐらいの話だから、頑張ってほしい」と声をかけると、河野氏も職責の重さを受け止めていたという。
ワクチン接種をめぐっては、すでに縦割りの弊害が指摘されていた。接種は厚生労働省、輸送は国土交通省、冷凍保管は経済産業省、都道府県との調整は総務省など複数官庁にまたがる一大プロジェクト。行革相として「役所のケツをたたくのが得意」(政府高官)な河野氏を起用することで、早期に接種の環境を整える狙いがある。
同じ18日、静岡県でイギリス型の変異種感染者3人が見つかった。60代男性、40代女性、20代女性で1月上旬に発症、自宅療養中という。いずれも英国滞在歴も海外渡航者との接触歴もないため、国内での市中感染が疑われており、検体を厚労省の試験所で一括して調べることにしている。
同じ日、世界保健機関(WHO、テドロス事務局長)の<独立調査パネル>が中間報告書を発表した。<独立調査パネル>とは、ニュージーランドのクラーク元首相やリベリアのサーリーフ元大統領等をメンバーとしてコロナ拡大後に発足した組織である。中間報告書なかで中国の初期対応について「新しい病原体が出てきたときは、集団感染の特定や診断法、治療法の確立などを始めなければならず、中国は地方単位でも国単位でも、もっと厳格な対応を取るべきであった」と批判した。またWHOが昨年の1月30日に緊急事態宣言を出したのは遅すぎたとする批判に対して「なぜ緊急会合が1月第3週まで開かれなかったか、なぜすぐに緊急事態宣言を出せなかったはっきりしない」と述べる一方、「ほとんどの国で、行動を起こさなければという事実は黙殺された」としている。次の報告書は5月を予定。
これに対して中国外務省の華報道局長は19日の会見で、上掲の<独立調査パネル>の中間報告書に反論し、発生当時「十分な情報がないなかで早期に発見し、隔離と治療を行い、感染者と死者数を抑えた」と述べた。比較的穏やかな内容となっているのは、これとは別にWHO調査団が14日に武漢入りしており、あまりWHOを刺激しないよう配慮したものと見られている(20日づけ日経新聞朝刊)。
武漢市の都市封鎖が始まったのが昨年の1月23日、まる1年になるのを前に武漢大学等の研究チームが市の感染者数が昨年5月までに16万8000人にのぼるとする推計結果をまとめた。これは武漢市政府が公表した公開統計の5万人の3倍以上になる(同上の日経新聞)。
同じ日、朝日新聞デジタル版は、2度目の緊急事態宣言に関する各界の見解をまとめている。うち大竹文雄(大阪大学)の次の見方が参考になる。「この<長期戦>を勝ち抜くには感染予防だけでなく、社会を回し日々の生活を守りながらポイントをついた対策を講じていくしかありません。感染症対策の3本柱は、命を救う医療、感染の広がりを抑える保健所などの公衆衛生、社会による予防です。
第3波は、東京の感染者数が1日2千人を超え、医療と公衆衛生という二つの柱が逼迫(ひっぱく)し、残りの柱である社会の力で感染拡大を一気に抑えるべき局面に来ています。政府の緊急事態宣言には一定のメッセージ性があります。ただ、宣言を出す前に対策を段階的に強めていた方が、社会に与える影響は小さくて済んだはずです。宣言は事前に対策を講じたうえで拡大が収まらない時に出す<切り札>であるべきです。」
控えめな言い方だが、共感するところが多い。すなわち感染症対策の3本柱を、①命を救う医療、②感染の広がりを抑える保健所などの公衆衛生、③社会による予防、の3つとしたうえで、③のためのメッセージ性を持つ政府の緊急事態宣言という<切り札>を切る事前過程が不十分だとしている。私なりに換言すれば、政府のメッセージが浸透せず、圧倒的多数を占める③社会による予防が機能しない、ということであろう。
19日(火曜)、前掲の表にあるとおり、全国の重症者数が1001人となり、死者も104人と過去最多となった。これは2週間前の正月5日頃の実態を示す数字であり、首都圏(1都3県)に緊急事態宣言が出された8日(金曜)以降の効果はまだ測ることができない。
同じ日、新ヒロシマテレビによれば、広島県の湯崎知事が感染者の改善状況にさらに拍車をかけようと、市中の無症状感染者の洗い出しを目的に、広島市の最大80万人の大規模PCR検査を実施しようとしている。来月の早い時期にも開始したい考えを示し、「リスクとメリットと比較して考えた時に感染を抑えるためにはメリットのほうが大きい」と述べた。前掲14日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に出演したノーベル賞受賞者の本庶佑・京都大学特別教授の、「PCR検査の大幅な拡充を!」との提言を受けての考えと思われる。
この検査は特に感染者が多い広島市の4つの区の全ての住民と働く人、最大でおよそ80万人を対象とするもので無料実施する方針で、検査期間は1カ月から2カ月を想定している。県では、宿泊療養施設や病床を確保するなど、陽性者の受け入れ体制もあわせて進めている。
一方、県議会の健康福祉委員会でも大規模PCR検査について質問が相次いだ。専門家の意見をふまえての実施なのかという県議からの質問に対し、県の担当者は、「専門家の先生方にもお話を伺いまして、丁寧に情報提供を行うとともに、陽性者に対するその後の疫学調査や療養施設の医療ベッドの確保についてもあわせて実施することが必要であるということで一定のご理解、(制度の)形状についてもきちっとしなければならないというご指摘をいただいた」と説明し、あらためて検査の必要性を強調した。また湯崎知事は18日のTSS出演の中で、「よほど感染状況が低くなった場合はやる意味がなくなる」と再検討の可能性を示唆した。
20日(水曜)、首都圏のJRと私鉄各社の24事業者が終電の10~30分繰り上げを開始した。1都3県に緊急事態宣言が出された今月8日から2週間たらずの異例の速さで実施、夜間自粛の要請に応えると同時に、乗務員の感染対策をも含む。
21日(木曜)、衆院の代表質問が始まる。野党の質問は主に新型インフルエンザ等対策特別措置法、感染症法、検疫法の改正案のうち「罰則規定」に関することに集中し、首相は「野党の声を聴く」ことを強調した(後述の【特措法と感染症法の改正課題】を参照)。
この日、電通は港区汐留の本社ビル売却の検討に入った。売却額は国内では過去最大の3000億円程度と言われる。コロナ禍のなかで遠隔勤務を主とする分散型のオフィス展開の一環としてのものであり、都心部のオフィスビル再配置に大きく影響するに違いない。
22日(金曜)、コロナ重症者数が増えつづけるなかで、重症者用病床と医療人材のミスマッチが大きな問題となっている。同日付けの日経新聞によれば、集中治療室(ICU)等の重症者施設を持つ病院の2割で高度な容体管理を行う専門医がいないことが判明、と伝えた。1989年から学会による資格認定が始まった<集中治療専門医>は2020年4月段階で1955人の登録があるのみである。
同じ日、アフリカのベナンが51番目の批准を行ったため、核兵器禁止条約が発効した。これを受け、国連のグテーレス事務総長は22日、「核兵器なき世界という目標に向けた重要な一歩であり、核軍縮への多国間アプローチへの強い支持を示すものだ」と発効を歓迎し、条約の批准国は1年以内に締約国会議を開き、核兵器廃棄の期限や検証方法などを話し合う。なお翌日カンボジアが批准を終えた。
この日の参院代表質問で公明党の山口代表(参議院議員)は「唯一の被爆国」の日本が橋渡し役を担うことができるとして、締約国会議へのオブザーバー参加を求めたが、菅首相は「条約に署名する考えはない」と改めて否定、締約国会議へのオブザーバー参加については「慎重に見極める必要がある」と述べるにとどめた。
これをめぐり、「平和の党」を掲げる公明党が、核廃絶を推進する支持母体・創価学会との間でジレンマを抱えている。学会は条約の批准を求めるが、政府方針に反することに与党として公明党は踏み込めない。同日の党の会合で「最終的には、核兵器禁止条約を批准できる環境を整えていくことが、我が国のあるべき方向性だ」と訴えた。米国の「核の傘」に安全保障を依存する日本政府は条約に参加しない方針のため、山口氏は「最終的には」と留保をつけた。
一方、22日付けの機関紙「聖教新聞」は「核兵器の禁止と廃絶は、創価学会の社会的使命です」とする原田稔会長の談話を掲載、条約の発効を歓迎した。学会は戸田城聖・2代会長の1957年の「原水爆禁止宣言」を基礎に「唯一の戦争被爆国である日本が批准すべきだ」との立場を貫いている。
同じ日、中国の習国家主席は、海警局(日本の海上保安庁に相当)の権限を強め、「重要な海上武装組織」として準軍事組織と位置づける法改正に署名した。尖閣諸島周辺や南シナ海で中国公船の行動が先鋭化する懸念がある。
23日(土曜)、広島市長が市民80万人に大規模PCR検査を実施すると表明した。19日の湯崎広島県知事の提案を受けてのもの。だが、濃厚接触者を中心にPCR検査を実施するとする政府は、これに乗り気ではない。
同じ日、富山県で初めて鳥インフルエンザが見つかり、殺処分となった。この冬(11月~)の鳥インフルエンザは、これが38例目である。
同じ23日、横浜市の東戸塚の商店主たちが夜間の見回りを始めたとのテレビニュースが流れた。飲食業の開店が8時までとなり、人通りが少なくなったので、早じまいした店主たちが集まって行う地域安全のための<夜回り>だという。
1年前の1月23日、中国の武漢市で新型コロナウィルス感染防止のため封鎖が行われた。2ヵ月半に及ぶ都市封鎖の有効性を中国政府は誇るが、実際の感染者数は公式発表の3倍強の約17万人とする研究結果もある(日経新聞20日朝刊)。中国政府の否定する<初動の遅れ>、その対応に明確に不満を示す市民もいる。
同じ23日、サンケイ・ニュースが、「寅さんにも登場 コロナ禍で老舗料理店が231余年の歴史に幕」の見出しで次のように伝えた。「新型コロナウイルス感染拡大の長期化で飲食店の苦境が続くなか、寛政2(1790)年に創業し、231年の歴史を持つ東京・葛飾柴又の日本料理店「川甚(かわじん)」がコロナによる業績悪化を理由に今月末で閉店する。
夏目漱石の「彼岸過迄(ひがんすぎまで)」など数々の文豪の小説に登場し、映画「男はつらいよ」の舞台にもなった老舗店の幕引きに、惜しむ声が広がた。川甚の8代目社長、天宮一輝(あまみや・かずてる)さん(69)も悔しそうに語った。
地元や観光客に愛され、繁忙期は1日700人が利用することもあったが、コロナ禍で客が激減。経費削減や助成金、融資制度の利用など、手は尽くすも「大きな店なので固定費が大きく、焼け石に水だった」という。借入金を返済するためには、その分、売り上げを増やす必要があるが「明るい展望が見えない」として昨年12月に閉店を決断した。
24日(日曜)の日経新聞は、シリーズ<チャートは語る>で「コロナが招く<分断景気> 過熱と冷え込み混在」の見出しで次のように報じた。「新型コロナウィルスが引き起こす混乱で景気の<デカップリング(分断)>ともいえる状況が起きている。半導体や自動車など製造業が急回復し過熱感すら漂う一方、旅行や外食などサービス業は冷え込みから抜け出せない。…」 これに伴い産業素材も急回復しているが、消費者物価は鈍化している。
この日、岸防衛相はオースティン米国防長官と初めての電話会談を行い、米国防長官が日本の防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用されると明言、「米国は東シナ海の現状変更の試み、いかなる一方的な行動にも反対する」と述べた。
【注】日米安全保障条約第5条を以下に引用する。
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
バイデン大統領の就任式(20日、日本時間の21日)に台湾の駐米大使が米台断交後初めて出席した。バイデン政権発足後の23日と24日、台湾の防空識別圏(ADIZ)に中国軍機10機超が侵入すると、米国務省は「台湾が十分な自衛能力を維持するよう支援していく」と表明した。なお25日(月曜)日経新聞のトップ記事の見出し「半導体増産 台湾に要請 日米独、不足解消求め」にあるように、対中制裁で逼迫した半導体は経済・防衛産業の要に位置している。
25日(月曜)、日経新聞夕刊のトップに久しぶりの明るいニュースが出た。「博士課程学生に生活費、年240万円を7800人に」。博士課程への進学を後押しし、日本の国際的な競争力の維持に欠かせない専門人材の育成につなげる。20年前の博士号取得者数は人口100万人あたり日本が127人、米国が141人、韓国が131人とほぼ同じ水準であったが、2015年度は米国が259人、韓国が256人と増えているのに対して日本は118人と低迷した。
この政策を企画・提案したのが、自らも博士課程で苦労した若い文部官僚との報道を見た覚えがある。それも明るいニュースに花を添える。初年度の関連経費はわずか230億円程度で、国家予算全体のなかでは微々たるものだが、そのもたらす長期的なコスパは計り知れない。
26日(火曜)、ワクチンの接種体制の構築と供給不足問題が急浮上してきた。なかでもワクチン製薬会社の生産能力の低減により、EUへのワクチン供給の減少が分かり、これが連鎖的に世界へ拡がり、菅首相が確約した「2月下旬からワクチン接種開始」が怪しくなりかねない。
日本では承認を終えたワクチンが一つもなく、その点でまず大幅に遅れている上に、ワクチン接種体制の構築に着手したばかりで、その遅れが世界的なワクチン確保競争への参加を遅らせ、ますます進むワクチン供給不足の荒波を乗り越える可能性が小さくなっている。
【特措法と感染症法の改正課題】
今回の新型コロナウィルスの世界的蔓延をうけ、これに対処するための特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)の改正とともに、ハンセン病や結核等の感染症一般の流行に対処するための感染症法をも合わせて改正するべく、政府は次期国会に向け、来週中(18日~22日)の閣議決定を目指している。
16日(土曜)、新聞各紙は、厚労省が15日、新型コロナウイルス対策に関する感染症法改正案の概要を同省の専門部会に示したと伝えた。改正案のポイントは、(1)入院措置に反して入院先から逃げ出すなどした場合、懲役1年以下または罰金100万円いかを検討、(2)保健所などの行動歴調査を拒否したり、うそを回答したりした場合、懲役6ヵ月以下または罰金50万円以下を検討、(3)宿泊、自宅療法の協力に応じない場合は、自己負担での入院を勧告できる規定を設ける、(4)国や都道府県知事が医療機関に病床確保の協力を求める<要請>を<勧告>できるに強め、正当な理由なく従わない場合は施設名などを公表できる。
感染者の病床を確保するため、国や都道府県知事が医療機関に「協力を求めることができる」とする感染症法の規定を「勧告できる」に強める。勧告に従わなければ施設名などを公表できるようにする。感染者が入院措置や行動歴調査を拒否した場合には刑事罰を科す規定も示した。
専門部会は改正案をおおむね了承した。厚労省は病床が逼迫する中、民間病院の協力が進んでいないと判断して勧告規定を盛り込んだが、中小の病院ではコロナ患者の受け入れに限りがあり、対応する病床が増えるかは不透明だ。罰則規定には委員から私権制限への懸念や感染拡大を防止する効果への疑問が相次いだ。田村厚労相は15日の記者会見で「ご意見がある部分に関しては、国会で議論していただく」と述べた。
毎日新聞によれば、日本医学会連合など関係学会は14日、政府が通常国会で成立を目指す感染症法改正案の中で、新型コロナウイルスの感染者が入院勧告を拒否したり保健所の調査を拒んだりした場合の罰則の創設を検討していることについて、罰則に反対する声明を発表し、「感染症制御は国民の理解と協力によるべきだ」としている。
声明を出したのは他に日本公衆衛生学会、日本疫学会。声明は、過去のハンセン病患者らに対する差別・偏見といった歴史的反省を踏まえ、人権を重視して感染症法が制定された経緯を深く認識する必要があると強調した。その上で「罰則を恐れるあまり、検査結果を隠すなどかえって感染コントロールが困難になることが想定される」と指摘し、罰則を伴う強制は国民に恐怖や不安・差別を引き起こすことにもつながり、感染症対策に不可欠な国民の協力を得ることを妨げる恐れがあるとして、再考を求めた。
政府は新型コロナ対策の強化のため、感染症法と新型インフルエンザ等対策特別措置法をあわせて改正する方針で、それも通常国会の早い段階で成立させたいとしている。
22日(金曜)、新型コロナウイルスに対応する特別措置法改正案が閣議決定された。改正案は「私権制限」を強める内容で、野党は「罰則より支援を先に」として罰則規定への批判を強める。連立与党の公明党、北側一雄・中央幹事会会長は20日、法案の扱いについて 「野党の声を聞き、見直すことは全く否定されるものではない」と述べ、官邸幹部も「閣議決定した内容で成立させられればベスト」としつつも、「修正の議論は閣議決定のあと」と語り、修正は「織り込み済み」との見方を示した。23日(土曜)~25日(月曜)の国会審議でも、内容にかかわる大きな進展はなく、与野党間で詰める合意がなされたのみである。
【アメリカの政権移行】
21日(木曜、アメリカ東部時間の20日)、バイデン氏(78歳)の第46代米大統領就任式である。州兵2万5000人による厳重警戒の下、懸念された騒乱もなく、連邦議会議事堂で粛々と行われた。就任演説でバイデン大統領は、「今日は米国にとって歴史的な民主主義の日である。民主主義は勝利した」と宣言、「米国民、米国を団結させることに全霊をささげる」と述べた。なお就任式の警備に当たった米州兵200人がコロナに感染した。
バイデン新政権の日米外交は、知日派として知られるカート・キャンベル氏を米国国家安全保障会議(NSC)の<インド太平洋調整官>に任命、ブリンケン国務長官、サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官ともども、知日派を軸にボトムアップ型に復帰すると見られる(日経新聞20日)。
この日、バイデン大統領は、就任初日の重要作業として、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に復帰、WHOに残留等、計15の大統領令に署名した。また新型コロナウィルスに国家戦略をまとめ、戦時下の大統領権限等、あらゆる政策手段でワクチンの供給を加速し、今秋のコロナ収束をめざすとした。しかし、各州がワクチン接種センターを設けるのに必要な人材・機器・資金等の支援に多くの課題が残り、かつワクチン接種を否定する人が3割ほどいる等の課題が山積している。
また大統領令で行うことのできる政策は限られており、多くの新しい政策は法案として議会に提出しなければならない。その議会は上下両院とも与党民主党が僅差で多数を握っているものの、あくまで僅差であり、素早く可決させるのは決して容易ではない。
25日(月曜)、メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の<無敵の交渉・コミュニケーション術>』で、さまざまな情報や要素を勘案しつつ、今後の世界情勢の予測を試みている。その概要は以下のとおり。
「とくに米国“不在”の国際舞台において、勢力拡大に勤しむ中国はASEAN諸国をはじめ、アフリカ、中東、そして欧州各国を自陣に取り込む作戦に乱れは生じておらず、途上国で生じる膨大かつ深刻な債務不履行問題に付け込む形で、半ば縛り付けるかのように中国の勢力圏の確保に乗り出している。
一方、ASEAN各国は、中国の企みに上手に乗りつつ、債務の軽減や衛生戦略物質の確保、そして何よりもワクチンの早期獲得の約束を取り付けるという現実的な政策方針に転換している。とはいえ、南シナ海問題における緊張関係は少しも緩和されておらず、「経済・社会的側面と国家安全保障問題とをきれいに切り分けた」路線を取っている。言い換えれば、RCEPを通じた中国経済圏との連携を強化し、中国の経済力による優位性を受け入れる半面、欧州・米国、そして日本ともタッグを組んで、伸長著しい中国の領土的な拡大への警戒もさらに強め、中国封じ込めの一翼を担うという【両にらみのギリギリの外交戦略】を遂行中である。
今後、中国が、対欧米、対日、そして対国際社会という側面で、ASEAN各国にどのような「飴と鞭」を用いるのか。その強さと内容は、今後、バイデン新政権がどのようなアプローチをアジアに対して取ってくるのかにかかっている。バイデン大統領は、ほとんどすべての側面でトランプ政権の政策の反転を狙っているが、唯一継続され、かつ強化されるのが、アメリカの対中強硬策であろう。
トランプ政権がスタートさせた貿易摩擦・貿易戦争に加え、人権問題や環太平洋の安全保障の側面からも、総合的に中国との対立姿勢を強めることになろう。国務長官に就任したブリンケン氏の姿勢や、新しく財務長官に就任したイエレン氏の言動からも読み取れるように、バイデン政権は、議会両院ですでに形成されている超党派での対中強硬論に後押しされて、より厳しい姿勢を取ることになる。」
世界を見ると、新型コロナウィルスの変異種(変異株)の出現により、欧州諸国では感染者が増大し、フランスは27日(水曜)にも3度目の都市封鎖に踏みきるかと言われる。すでに3度目の都市封鎖中のイギリスでは感染が止まらない。また最多の感染者数と死者を更新するアメリカでは、バイデン政権が最重要課題としてワクチン接種を進めているが、まだその効果が出てくるには至っていない。
この間に観たテレビ番組は次の通り。(1)NHKスペシャル「“感染爆発” 危機をどう乗り越えるか」16日。 (2)NHK週刊ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(11日~15日)」17日。 (3)NHK逆転人生「じり貧競馬場 執念の復活劇」18日。 (4)テレビ朝日 報道ステーション「<速報>ワクチン担当大臣に河野太郎氏 接種体制の整備へ」18日。 (5)NHKBS世界のドキュメンタリー(選)「遊びの科学」18日。 (6)ETV特集「円空 仏像に封印された謎(再)」21日。 (7)TBS世界ふしぎ発見! 今、解き明かされる! シーボルト事件の謎」23日。 (8)NHKスペシャル「高野山 千年の襖絵 空海の世界に挑む」23日。 (9)NHKスペシャル 「戦国~激動の世界と日本~{1}秘められた征服計画」24日。 (10)NHKスペシャル 「戦国~激動の世界と日本~{2}ジャパン・シルバーを獲得せよ」24日。(11)NHK 英雄たちの選択スペシャル「古代人のこころを発掘せよ!」24日。
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