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人類最強の敵=新型コロナウイルス(32)

 前稿(31)を脱稿したのが1月15日(金曜)午後で、首都圏(1都3県)に緊急事態宣言が出された8日(金曜)から1週間目であった。重症病床使用率(1月5日時点)が上限まで上昇、東京都の87.4%(←1ヵ月前には55%)を筆頭に大阪府が64.7%(←1ヵ月前には58%で筆頭)等で、この間の量的・地域別の増加が著しい。

 各自治体は懸命の努力を払ってコロナ重症病床数を増やす努力をしているものの、病院側は医療スタッフや機器をそろえるのに苦労している。またコロナと救急医療(冬場に多い心疾患や脳疾患)等とのバランスを取るのに心を配り、やむなくトリアージ(治療のための優先順位)を導入せざるを得ない事態に直面している。

 1都3県の緊急事態宣言に加えて、新たに7府県(大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木)にこれを拡大することを決めて発令されたのが13日(水曜)であり、これで対象地域は11都府県となった。感染実態が分かるのは2週間後で、しばらく時間を要する。感染者はいまなお増えるばかりであり、換言すれば年末年始には感染が拡大していた証拠である。

【感染拡大と緊急事態宣言】
 1月15日(金曜)以来の感染拡大状況をまず確認したい。前者が全国の感染者(カッコ内は重症者と死者)、後者が東京(カッコ内は重症者)。本文の記述は日を追って時間順に書くため、その都度この表に戻って追記する。重症者数は全国も東京都もともに確実に増加し、それに備える病床数増設の実現状況に息を飲む。
15日(金曜)  7132人(934人、78人)と2001人(133人)
16日(土曜)  7014人(965人、56人)と1809(136人)
17日(日曜)  5756人(972人、49人)と1592人(138人)
18日(月曜)  4924人(973人、58人)と1204人(143人)
19日(火曜)  5321人(1001人、104人)と1240人(155人)
20日(水曜)  5550人(1014人、92人)と1274人(160人)
21日(木曜)  5651人(1014人、94人)と1471人(159人)
22日(金曜)  5045人(1011人、108人)と1175人(158人)
23日(土曜)  4717人(1009人、83人)と1070人(156人)
24日(日曜)  3990人(1007人、56人)と986人(156人)
25日(月曜)  2764人(1017人、74人)と618人(148人)
26日(火曜)3時、東京都の感染者数(速報値)が入った。1026人(148人)で、また1000人台に逆戻りしたものの、減少傾向にあると見て、安心はできないものの、飲食店のみなさんほか人々が頑張った結果と見て、次への<励み>になる数字と考えられる。

 前稿(32)で触れる余裕がなかったことから始めたい。日経新聞に「企業トップ 政府より信頼」(15日朝刊)という小さな記事があり、副題が「米社調査 社会問題への関与期待」である。英紙フィナンシャル・タイムズのニューズレター「モラル・マネー」1月13日号は、世界の世論調査でビジネスリーダーが政府より信頼される存在になっていることを論じた。

 毎年1月に世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開かれてきたが、今年はバーチャルで開催、米PR会社エデルマンが発表する調査報告書「エデルマン・トラスト・バロメーター(信頼指標)」が企業経営者に多くの示唆を与えているとする。これは世界28ヵ国で3万人以上に実施した聞き取り調査の結果である。

 コロナ禍の初期には、多くの国で政府に対する市民の信頼度が増したが、こうした傾向は長続きせず、政府への信頼が揺らぐ一方で、信頼できる存在として台頭したのが<ビジネス>であるとの調査結果を受け、エデルマン社のCEOリチャード・エデルマンは、「市民は、社会的問題でビジネスリーダーが率先して行動を起こすことを期待している」と分析する。ワクチンの配布方法や事業再開の基準等を巡り、政府が明瞭な指示を出せない場面が目立ち、市民は必ずしも政府の指示を待たずにビジネスリーダーが英断を下すことを望んでいるのではないかと指摘。

 日本のビジネス界では会社名が先行し、そのリーダーの顔が見えにくいため、上掲のビジネスリーダーへの期待がどれほど高いかは断言できない。代わりに各分野の専門家や一部のNPOの活躍への期待が高まるのは良い傾向と思われる。とくに正体不明の新型コロナウィルス(=人類最強の敵)を制御するには、科学的分析に基づく対処法が不可欠の前提であるからである。

 14日(木曜)、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に出演したノーベル賞受賞者の本庶佑・京都大学特別教授は、「PCR検査の大幅な拡充を!」と提言した。 本庶教授は、首都圏に緊急事態宣言が再発出された今月8日、山中伸弥・京大教授と大隅良典・東京工業大学栄誉教授、大村智・北里大学特別栄誉教授という同じノーベル医学・生理学賞受賞者とともに新型コロナ対策について緊急声明を発表。「医療機関と医療従事者への支援の拡充」や「科学者の勧告を政策に反映できる長期的展望に立った制度の確立」など5つの提言をおこなっているが、そのうちのひとつが「PCR 検査能力の大幅な拡充と、無症候感染者の隔離の強化」である。

 本日で国内感染を初確認してから1年を迎えたが、他の先進国と比較しても、この国のPCR検査は進んでいるとは言えない。政府は1日あたりの可能検査数を最大約12.5万件としているが、実際は1日平均で約4.4万件(1月1〜11日)。世界で比較すると、人口1000人あたりの検査数がイギリスは8.1人、フランスが4.4人、アメリカが3.9人である一方、日本は0.5人でしかない(7日移動平均、9日時点)。こうした現状に対し、本庶教授は「いまだに検査数が少ない」と指摘。

 「中国のように地域ごとに全検査・隔離するのが理想だが、現実的に日本では難しい」とし、こう提言した。「少なくとも『感染しているかも』と思ったら即座に検査を受けられる体制を作るべき。今、業界支援という形で何兆円もばらまいているが、検査にお金を使うほうが断然コスト的にも社会的にも有効」と述べた。

 15日(金曜)、政府は閣議で飲食業の<時短協力金>に予備費から7418億円の支出を決めた。飲食店の営業時間を午後8時まで、酒類の提供は午前11時から午後7時までに限るよう要請(時短要請)。応じた場合、1日6万円の<時短協力金>を給付するもので、都道府県向けの地方創生臨時交付金として積み増し、国が8割を負担する。

 16日(土曜)、大学入学共通テストの初日で、マスク姿の受験生が近くの大学の試験会場(全国に681会場)へ午前8時の開門を待って集まった。科目は地理歴史と公民、国語、外国語の3教科、明日の2日目に理科と数学がある。感染対策として受験生の席の間隔を空け、受験生はマスク着用、教室は科目終了毎に10分以上の換気、それに手指のアルコール消毒を課した。南関東は幸いに春並みの暖かさであったが、北海道の稚内(会場は北星学園大学)では悪天候のため全科目が中止となった。1979年に始まった全国一斉の共通1次試験いらい初めてである。

 今年から始まる大学入学共通テストは、従前の大学センター試験を継承しつつ、新たに思考力、判断力を重視するのが特徴であるという。そのため多くの資料を提示して課題を解かせる形式の出題が多い。私も久しぶりに受験生になった積りで何問か解いてみた。出題形式が変わったことは分かるが、思考力、判断力を重視するとする目的に沿った効果がどう表れるか、判断するには時間が必要であろう。

 この日、都の感染者数は1809人で曜日最多となる。また(カッコ)内の重症者数が全国・東京都ともに過去最多を更新しており、これに対する病床数の確保とホテル等の療養施設のキャパシティー増加が追い付かないと、医療崩壊となる。その前提が感染者数で、この<上流>を減らさないかぎり<下流>に位置する病院と療養施設が対応しきれない。

 17日(日曜)、阪神淡路大震災から26年になる。各地で追悼の集いが開かれた。それに大学入学共通テストの2日目、幸い大過なく終了した。約53万人の受験生とテスト関係者はホッとしているに違いない。

 同じ日の@niftyニュースによると、ノルウェー当局は同日、1回目のワクチン接種を受けた75歳以上の人々の間で、計29人の死亡者が発生したと明らかにし、このうち4分の3が80歳以上だったと付け加えた。当局はブルームバーグ紙との書面インタビューで「15日までノルウェーで使用できるワクチンはファイザーのワクチンであり、すべての死者はこのワクチンと関連がある」と明らかにした。
 当局は「報告された死亡者はすべて基底疾患を持つ高齢者で、大半の人が吐き気と嘔吐、発熱、注射部位の局所反応、基底疾患の悪化といった予想される副作用を経験した」と付け加えた。ブルームバーグ紙は、ワクチンが高齢の末期患者にあまりにも危険な可能性があるという事実を悟らせたと伝えた。

 18日(月曜)に開会した通常国会で、菅首相は施政方針演説を行った。主な課題は(1)新型コロナウィルス対策、(2)脱炭素社会の実現、(3)デジタル政策、(4)社会保障、(5)教育・科学技術、の5点であり、これまで個別に着手してきたことを包括的にまとめたもの。

 衆院本会議ではほぼ原稿通り読み上げたが、その後の参院本会議では、新型コロナウイルス感染症対策の緊急事態宣言をめぐり、「徹底的な対策」というべきところを「限定的な対策」、35人学級について「小学校」と言うべきところを「小中学校」と口にし、言い直す場面もあった。

 疲労と緊張が重なる一過性のミスであったのかもしれない。今国会の会期は6月16日までの150日間と長丁場である。予定通りで行けば東京オリンピックが7月23日に始まり、パラリンピックが9月5日に終わり、ついで9月30日が自民党総裁の任期満了、さらに3週間後の10月21日が衆議院の任期満了となる。それまでの限られた日程のなかで解散・総選挙を行う。

 同じ日、菅首相はワクチン担当に河野太郎行政改革相を充てると発表。河野氏は翌19日の記者会見で「安全で有効なワクチンを一人でも多く、一日でも早く接種できるように全力を尽くしたい」と語り、意気込みを見せた。

 昨年末からの感染急拡大で、コロナによる死者数(厚労省調べ)は、12月1日の2171人から今月17日の4500人と倍増した。危機感が強まる中、自民党幹部が「ワクチンに失敗したら菅政権が終わってしまうぐらいの話だから、頑張ってほしい」と声をかけると、河野氏も職責の重さを受け止めていたという。

ワクチン接種をめぐっては、すでに縦割りの弊害が指摘されていた。接種は厚生労働省、輸送は国土交通省、冷凍保管は経済産業省、都道府県との調整は総務省など複数官庁にまたがる一大プロジェクト。行革相として「役所のケツをたたくのが得意」(政府高官)な河野氏を起用することで、早期に接種の環境を整える狙いがある。

 同じ18日、静岡県でイギリス型の変異種感染者3人が見つかった。60代男性、40代女性、20代女性で1月上旬に発症、自宅療養中という。いずれも英国滞在歴も海外渡航者との接触歴もないため、国内での市中感染が疑われており、検体を厚労省の試験所で一括して調べることにしている。

 同じ日、世界保健機関(WHO、テドロス事務局長)の<独立調査パネル>が中間報告書を発表した。<独立調査パネル>とは、ニュージーランドのクラーク元首相やリベリアのサーリーフ元大統領等をメンバーとしてコロナ拡大後に発足した組織である。中間報告書なかで中国の初期対応について「新しい病原体が出てきたときは、集団感染の特定や診断法、治療法の確立などを始めなければならず、中国は地方単位でも国単位でも、もっと厳格な対応を取るべきであった」と批判した。またWHOが昨年の1月30日に緊急事態宣言を出したのは遅すぎたとする批判に対して「なぜ緊急会合が1月第3週まで開かれなかったか、なぜすぐに緊急事態宣言を出せなかったはっきりしない」と述べる一方、「ほとんどの国で、行動を起こさなければという事実は黙殺された」としている。次の報告書は5月を予定。

 これに対して中国外務省の華報道局長は19日の会見で、上掲の<独立調査パネル>の中間報告書に反論し、発生当時「十分な情報がないなかで早期に発見し、隔離と治療を行い、感染者と死者数を抑えた」と述べた。比較的穏やかな内容となっているのは、これとは別にWHO調査団が14日に武漢入りしており、あまりWHOを刺激しないよう配慮したものと見られている(20日づけ日経新聞朝刊)。

 武漢市の都市封鎖が始まったのが昨年の1月23日、まる1年になるのを前に武漢大学等の研究チームが市の感染者数が昨年5月までに16万8000人にのぼるとする推計結果をまとめた。これは武漢市政府が公表した公開統計の5万人の3倍以上になる(同上の日経新聞)。

 同じ日、朝日新聞デジタル版は、2度目の緊急事態宣言に関する各界の見解をまとめている。うち大竹文雄(大阪大学)の次の見方が参考になる。「この<長期戦>を勝ち抜くには感染予防だけでなく、社会を回し日々の生活を守りながらポイントをついた対策を講じていくしかありません。感染症対策の3本柱は、命を救う医療、感染の広がりを抑える保健所などの公衆衛生、社会による予防です。
 第3波は、東京の感染者数が1日2千人を超え、医療と公衆衛生という二つの柱が逼迫(ひっぱく)し、残りの柱である社会の力で感染拡大を一気に抑えるべき局面に来ています。政府の緊急事態宣言には一定のメッセージ性があります。ただ、宣言を出す前に対策を段階的に強めていた方が、社会に与える影響は小さくて済んだはずです。宣言は事前に対策を講じたうえで拡大が収まらない時に出す<切り札>であるべきです。」 

 控えめな言い方だが、共感するところが多い。すなわち感染症対策の3本柱を、①命を救う医療、②感染の広がりを抑える保健所などの公衆衛生、③社会による予防、の3つとしたうえで、③のためのメッセージ性を持つ政府の緊急事態宣言という<切り札>を切る事前過程が不十分だとしている。私なりに換言すれば、政府のメッセージが浸透せず、圧倒的多数を占める③社会による予防が機能しない、ということであろう。

 19日(火曜)、前掲の表にあるとおり、全国の重症者数が1001人となり、死者も104人と過去最多となった。これは2週間前の正月5日頃の実態を示す数字であり、首都圏(1都3県)に緊急事態宣言が出された8日(金曜)以降の効果はまだ測ることができない。

 同じ日、新ヒロシマテレビによれば、広島県の湯崎知事が感染者の改善状況にさらに拍車をかけようと、市中の無症状感染者の洗い出しを目的に、広島市の最大80万人の大規模PCR検査を実施しようとしている。来月の早い時期にも開始したい考えを示し、「リスクとメリットと比較して考えた時に感染を抑えるためにはメリットのほうが大きい」と述べた。前掲14日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に出演したノーベル賞受賞者の本庶佑・京都大学特別教授の、「PCR検査の大幅な拡充を!」との提言を受けての考えと思われる。

 この検査は特に感染者が多い広島市の4つの区の全ての住民と働く人、最大でおよそ80万人を対象とするもので無料実施する方針で、検査期間は1カ月から2カ月を想定している。県では、宿泊療養施設や病床を確保するなど、陽性者の受け入れ体制もあわせて進めている。

一方、県議会の健康福祉委員会でも大規模PCR検査について質問が相次いだ。専門家の意見をふまえての実施なのかという県議からの質問に対し、県の担当者は、「専門家の先生方にもお話を伺いまして、丁寧に情報提供を行うとともに、陽性者に対するその後の疫学調査や療養施設の医療ベッドの確保についてもあわせて実施することが必要であるということで一定のご理解、(制度の)形状についてもきちっとしなければならないというご指摘をいただいた」と説明し、あらためて検査の必要性を強調した。また湯崎知事は18日のTSS出演の中で、「よほど感染状況が低くなった場合はやる意味がなくなる」と再検討の可能性を示唆した。

 20日(水曜)、首都圏のJRと私鉄各社の24事業者が終電の10~30分繰り上げを開始した。1都3県に緊急事態宣言が出された今月8日から2週間たらずの異例の速さで実施、夜間自粛の要請に応えると同時に、乗務員の感染対策をも含む。

 21日(木曜)、衆院の代表質問が始まる。野党の質問は主に新型インフルエンザ等対策特別措置法、感染症法、検疫法の改正案のうち「罰則規定」に関することに集中し、首相は「野党の声を聴く」ことを強調した(後述の【特措法と感染症法の改正課題】を参照)。

 この日、電通は港区汐留の本社ビル売却の検討に入った。売却額は国内では過去最大の3000億円程度と言われる。コロナ禍のなかで遠隔勤務を主とする分散型のオフィス展開の一環としてのものであり、都心部のオフィスビル再配置に大きく影響するに違いない。

 22日(金曜)、コロナ重症者数が増えつづけるなかで、重症者用病床と医療人材のミスマッチが大きな問題となっている。同日付けの日経新聞によれば、集中治療室(ICU)等の重症者施設を持つ病院の2割で高度な容体管理を行う専門医がいないことが判明、と伝えた。1989年から学会による資格認定が始まった<集中治療専門医>は2020年4月段階で1955人の登録があるのみである。

同じ日、アフリカのベナンが51番目の批准を行ったため、核兵器禁止条約が発効した。これを受け、国連のグテーレス事務総長は22日、「核兵器なき世界という目標に向けた重要な一歩であり、核軍縮への多国間アプローチへの強い支持を示すものだ」と発効を歓迎し、条約の批准国は1年以内に締約国会議を開き、核兵器廃棄の期限や検証方法などを話し合う。なお翌日カンボジアが批准を終えた。

この日の参院代表質問で公明党の山口代表(参議院議員)は「唯一の被爆国」の日本が橋渡し役を担うことができるとして、締約国会議へのオブザーバー参加を求めたが、菅首相は「条約に署名する考えはない」と改めて否定、締約国会議へのオブザーバー参加については「慎重に見極める必要がある」と述べるにとどめた。

これをめぐり、「平和の党」を掲げる公明党が、核廃絶を推進する支持母体・創価学会との間でジレンマを抱えている。学会は条約の批准を求めるが、政府方針に反することに与党として公明党は踏み込めない。同日の党の会合で「最終的には、核兵器禁止条約を批准できる環境を整えていくことが、我が国のあるべき方向性だ」と訴えた。米国の「核の傘」に安全保障を依存する日本政府は条約に参加しない方針のため、山口氏は「最終的には」と留保をつけた。
 
 一方、22日付けの機関紙「聖教新聞」は「核兵器の禁止と廃絶は、創価学会の社会的使命です」とする原田稔会長の談話を掲載、条約の発効を歓迎した。学会は戸田城聖・2代会長の1957年の「原水爆禁止宣言」を基礎に「唯一の戦争被爆国である日本が批准すべきだ」との立場を貫いている。

 同じ日、中国の習国家主席は、海警局(日本の海上保安庁に相当)の権限を強め、「重要な海上武装組織」として準軍事組織と位置づける法改正に署名した。尖閣諸島周辺や南シナ海で中国公船の行動が先鋭化する懸念がある。

 23日(土曜)、広島市長が市民80万人に大規模PCR検査を実施すると表明した。19日の湯崎広島県知事の提案を受けてのもの。だが、濃厚接触者を中心にPCR検査を実施するとする政府は、これに乗り気ではない。

 同じ日、富山県で初めて鳥インフルエンザが見つかり、殺処分となった。この冬(11月~)の鳥インフルエンザは、これが38例目である。

 同じ23日、横浜市の東戸塚の商店主たちが夜間の見回りを始めたとのテレビニュースが流れた。飲食業の開店が8時までとなり、人通りが少なくなったので、早じまいした店主たちが集まって行う地域安全のための<夜回り>だという。

 1年前の1月23日、中国の武漢市で新型コロナウィルス感染防止のため封鎖が行われた。2ヵ月半に及ぶ都市封鎖の有効性を中国政府は誇るが、実際の感染者数は公式発表の3倍強の約17万人とする研究結果もある(日経新聞20日朝刊)。中国政府の否定する<初動の遅れ>、その対応に明確に不満を示す市民もいる。

 同じ23日、サンケイ・ニュースが、「寅さんにも登場 コロナ禍で老舗料理店が231余年の歴史に幕」の見出しで次のように伝えた。「新型コロナウイルス感染拡大の長期化で飲食店の苦境が続くなか、寛政2(1790)年に創業し、231年の歴史を持つ東京・葛飾柴又の日本料理店「川甚(かわじん)」がコロナによる業績悪化を理由に今月末で閉店する。

夏目漱石の「彼岸過迄(ひがんすぎまで)」など数々の文豪の小説に登場し、映画「男はつらいよ」の舞台にもなった老舗店の幕引きに、惜しむ声が広がた。川甚の8代目社長、天宮一輝(あまみや・かずてる)さん(69)も悔しそうに語った。

 地元や観光客に愛され、繁忙期は1日700人が利用することもあったが、コロナ禍で客が激減。経費削減や助成金、融資制度の利用など、手は尽くすも「大きな店なので固定費が大きく、焼け石に水だった」という。借入金を返済するためには、その分、売り上げを増やす必要があるが「明るい展望が見えない」として昨年12月に閉店を決断した。
24日(日曜)の日経新聞は、シリーズ<チャートは語る>で「コロナが招く<分断景気> 過熱と冷え込み混在」の見出しで次のように報じた。「新型コロナウィルスが引き起こす混乱で景気の<デカップリング(分断)>ともいえる状況が起きている。半導体や自動車など製造業が急回復し過熱感すら漂う一方、旅行や外食などサービス業は冷え込みから抜け出せない。…」 これに伴い産業素材も急回復しているが、消費者物価は鈍化している。

この日、岸防衛相はオースティン米国防長官と初めての電話会談を行い、米国防長官が日本の防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用されると明言、「米国は東シナ海の現状変更の試み、いかなる一方的な行動にも反対する」と述べた。
 【注】日米安全保障条約第5条を以下に引用する。
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

バイデン大統領の就任式(20日、日本時間の21日)に台湾の駐米大使が米台断交後初めて出席した。バイデン政権発足後の23日と24日、台湾の防空識別圏(ADIZ)に中国軍機10機超が侵入すると、米国務省は「台湾が十分な自衛能力を維持するよう支援していく」と表明した。なお25日(月曜)日経新聞のトップ記事の見出し「半導体増産 台湾に要請 日米独、不足解消求め」にあるように、対中制裁で逼迫した半導体は経済・防衛産業の要に位置している。

 25日(月曜)、日経新聞夕刊のトップに久しぶりの明るいニュースが出た。「博士課程学生に生活費、年240万円を7800人に」。博士課程への進学を後押しし、日本の国際的な競争力の維持に欠かせない専門人材の育成につなげる。20年前の博士号取得者数は人口100万人あたり日本が127人、米国が141人、韓国が131人とほぼ同じ水準であったが、2015年度は米国が259人、韓国が256人と増えているのに対して日本は118人と低迷した。

この政策を企画・提案したのが、自らも博士課程で苦労した若い文部官僚との報道を見た覚えがある。それも明るいニュースに花を添える。初年度の関連経費はわずか230億円程度で、国家予算全体のなかでは微々たるものだが、そのもたらす長期的なコスパは計り知れない。

 26日(火曜)、ワクチンの接種体制の構築と供給不足問題が急浮上してきた。なかでもワクチン製薬会社の生産能力の低減により、EUへのワクチン供給の減少が分かり、これが連鎖的に世界へ拡がり、菅首相が確約した「2月下旬からワクチン接種開始」が怪しくなりかねない。

 日本では承認を終えたワクチンが一つもなく、その点でまず大幅に遅れている上に、ワクチン接種体制の構築に着手したばかりで、その遅れが世界的なワクチン確保競争への参加を遅らせ、ますます進むワクチン供給不足の荒波を乗り越える可能性が小さくなっている。

【特措法と感染症法の改正課題】
 今回の新型コロナウィルスの世界的蔓延をうけ、これに対処するための特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)の改正とともに、ハンセン病や結核等の感染症一般の流行に対処するための感染症法をも合わせて改正するべく、政府は次期国会に向け、来週中(18日~22日)の閣議決定を目指している。

 16日(土曜)、新聞各紙は、厚労省が15日、新型コロナウイルス対策に関する感染症法改正案の概要を同省の専門部会に示したと伝えた。改正案のポイントは、(1)入院措置に反して入院先から逃げ出すなどした場合、懲役1年以下または罰金100万円いかを検討、(2)保健所などの行動歴調査を拒否したり、うそを回答したりした場合、懲役6ヵ月以下または罰金50万円以下を検討、(3)宿泊、自宅療法の協力に応じない場合は、自己負担での入院を勧告できる規定を設ける、(4)国や都道府県知事が医療機関に病床確保の協力を求める<要請>を<勧告>できるに強め、正当な理由なく従わない場合は施設名などを公表できる。

 感染者の病床を確保するため、国や都道府県知事が医療機関に「協力を求めることができる」とする感染症法の規定を「勧告できる」に強める。勧告に従わなければ施設名などを公表できるようにする。感染者が入院措置や行動歴調査を拒否した場合には刑事罰を科す規定も示した。

 専門部会は改正案をおおむね了承した。厚労省は病床が逼迫する中、民間病院の協力が進んでいないと判断して勧告規定を盛り込んだが、中小の病院ではコロナ患者の受け入れに限りがあり、対応する病床が増えるかは不透明だ。罰則規定には委員から私権制限への懸念や感染拡大を防止する効果への疑問が相次いだ。田村厚労相は15日の記者会見で「ご意見がある部分に関しては、国会で議論していただく」と述べた。

 毎日新聞によれば、日本医学会連合など関係学会は14日、政府が通常国会で成立を目指す感染症法改正案の中で、新型コロナウイルスの感染者が入院勧告を拒否したり保健所の調査を拒んだりした場合の罰則の創設を検討していることについて、罰則に反対する声明を発表し、「感染症制御は国民の理解と協力によるべきだ」としている。

 声明を出したのは他に日本公衆衛生学会、日本疫学会。声明は、過去のハンセン病患者らに対する差別・偏見といった歴史的反省を踏まえ、人権を重視して感染症法が制定された経緯を深く認識する必要があると強調した。その上で「罰則を恐れるあまり、検査結果を隠すなどかえって感染コントロールが困難になることが想定される」と指摘し、罰則を伴う強制は国民に恐怖や不安・差別を引き起こすことにもつながり、感染症対策に不可欠な国民の協力を得ることを妨げる恐れがあるとして、再考を求めた。

 政府は新型コロナ対策の強化のため、感染症法と新型インフルエンザ等対策特別措置法をあわせて改正する方針で、それも通常国会の早い段階で成立させたいとしている。

22日(金曜)、新型コロナウイルスに対応する特別措置法改正案が閣議決定された。改正案は「私権制限」を強める内容で、野党は「罰則より支援を先に」として罰則規定への批判を強める。連立与党の公明党、北側一雄・中央幹事会会長は20日、法案の扱いについて 「野党の声を聞き、見直すことは全く否定されるものではない」と述べ、官邸幹部も「閣議決定した内容で成立させられればベスト」としつつも、「修正の議論は閣議決定のあと」と語り、修正は「織り込み済み」との見方を示した。23日(土曜)~25日(月曜)の国会審議でも、内容にかかわる大きな進展はなく、与野党間で詰める合意がなされたのみである。
 
【アメリカの政権移行】
 21日(木曜、アメリカ東部時間の20日)、バイデン氏(78歳)の第46代米大統領就任式である。州兵2万5000人による厳重警戒の下、懸念された騒乱もなく、連邦議会議事堂で粛々と行われた。就任演説でバイデン大統領は、「今日は米国にとって歴史的な民主主義の日である。民主主義は勝利した」と宣言、「米国民、米国を団結させることに全霊をささげる」と述べた。なお就任式の警備に当たった米州兵200人がコロナに感染した。 

 バイデン新政権の日米外交は、知日派として知られるカート・キャンベル氏を米国国家安全保障会議(NSC)の<インド太平洋調整官>に任命、ブリンケン国務長官、サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官ともども、知日派を軸にボトムアップ型に復帰すると見られる(日経新聞20日)。

 この日、バイデン大統領は、就任初日の重要作業として、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に復帰、WHOに残留等、計15の大統領令に署名した。また新型コロナウィルスに国家戦略をまとめ、戦時下の大統領権限等、あらゆる政策手段でワクチンの供給を加速し、今秋のコロナ収束をめざすとした。しかし、各州がワクチン接種センターを設けるのに必要な人材・機器・資金等の支援に多くの課題が残り、かつワクチン接種を否定する人が3割ほどいる等の課題が山積している。

 また大統領令で行うことのできる政策は限られており、多くの新しい政策は法案として議会に提出しなければならない。その議会は上下両院とも与党民主党が僅差で多数を握っているものの、あくまで僅差であり、素早く可決させるのは決して容易ではない。

 25日(月曜)、メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の<無敵の交渉・コミュニケーション術>』で、さまざまな情報や要素を勘案しつつ、今後の世界情勢の予測を試みている。その概要は以下のとおり。

「とくに米国“不在”の国際舞台において、勢力拡大に勤しむ中国はASEAN諸国をはじめ、アフリカ、中東、そして欧州各国を自陣に取り込む作戦に乱れは生じておらず、途上国で生じる膨大かつ深刻な債務不履行問題に付け込む形で、半ば縛り付けるかのように中国の勢力圏の確保に乗り出している。
一方、ASEAN各国は、中国の企みに上手に乗りつつ、債務の軽減や衛生戦略物質の確保、そして何よりもワクチンの早期獲得の約束を取り付けるという現実的な政策方針に転換している。とはいえ、南シナ海問題における緊張関係は少しも緩和されておらず、「経済・社会的側面と国家安全保障問題とをきれいに切り分けた」路線を取っている。言い換えれば、RCEPを通じた中国経済圏との連携を強化し、中国の経済力による優位性を受け入れる半面、欧州・米国、そして日本ともタッグを組んで、伸長著しい中国の領土的な拡大への警戒もさらに強め、中国封じ込めの一翼を担うという【両にらみのギリギリの外交戦略】を遂行中である。
今後、中国が、対欧米、対日、そして対国際社会という側面で、ASEAN各国にどのような「飴と鞭」を用いるのか。その強さと内容は、今後、バイデン新政権がどのようなアプローチをアジアに対して取ってくるのかにかかっている。バイデン大統領は、ほとんどすべての側面でトランプ政権の政策の反転を狙っているが、唯一継続され、かつ強化されるのが、アメリカの対中強硬策であろう。
トランプ政権がスタートさせた貿易摩擦・貿易戦争に加え、人権問題や環太平洋の安全保障の側面からも、総合的に中国との対立姿勢を強めることになろう。国務長官に就任したブリンケン氏の姿勢や、新しく財務長官に就任したイエレン氏の言動からも読み取れるように、バイデン政権は、議会両院ですでに形成されている超党派での対中強硬論に後押しされて、より厳しい姿勢を取ることになる。」

世界を見ると、新型コロナウィルスの変異種(変異株)の出現により、欧州諸国では感染者が増大し、フランスは27日(水曜)にも3度目の都市封鎖に踏みきるかと言われる。すでに3度目の都市封鎖中のイギリスでは感染が止まらない。また最多の感染者数と死者を更新するアメリカでは、バイデン政権が最重要課題としてワクチン接種を進めているが、まだその効果が出てくるには至っていない。


この間に観たテレビ番組は次の通り。(1)NHKスペシャル「“感染爆発” 危機をどう乗り越えるか」16日。 (2)NHK週刊ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(11日~15日)」17日。 (3)NHK逆転人生「じり貧競馬場 執念の復活劇」18日。 (4)テレビ朝日 報道ステーション「<速報>ワクチン担当大臣に河野太郎氏 接種体制の整備へ」18日。 (5)NHKBS世界のドキュメンタリー(選)「遊びの科学」18日。 (6)ETV特集「円空 仏像に封印された謎(再)」21日。 (7)TBS世界ふしぎ発見! 今、解き明かされる! シーボルト事件の謎」23日。 (8)NHKスペシャル「高野山 千年の襖絵 空海の世界に挑む」23日。 (9)NHKスペシャル 「戦国~激動の世界と日本~{1}秘められた征服計画」24日。 (10)NHKスペシャル 「戦国~激動の世界と日本~{2}ジャパン・シルバーを獲得せよ」24日。(11)NHK 英雄たちの選択スペシャル「古代人のこころを発掘せよ!」24日。
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新年の書画(所蔵品展)

 新型コロナウィルス感染症が拡大するにつれ、三溪園への入園者が減り、奥まった内苑にある三溪記念館への入館者もまばら、園内には凛とした静けさが漂う。そのようななか元日から「所蔵品展 新年の書画」が始まっている(第1、第2展示室で2月2日まで)。第3展示室の<フォトコンテスト入賞作品展>は3月8日まで。

 新春を祝う意をこめて元日に始まる所蔵品展の直前の令和2(2020)年12月から、新型コロナウィルス感染症の深刻な急拡大(第3波)が明らかになり、専門家が危機感を深めて警告するも、政府は感染防止と経済社会活動の堅持という両面作戦をつづけたため、対応が遅れた。

 政府が東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県に2度目の緊急事態宣言を出したのが年明けの1月8日(金曜)、それを追うように13日(水曜)には、新たに7府県(大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木)に拡大して発令された。合わせて1都2府8県である。その経緯については、私のブログで連載中の「人類最強の敵=新型コロナウィルス」の(29)~(31)を参照されたい。

 本展示「所蔵品展 新年の書画」は、こうした厳しい環境下の幕開けとなった。それだけに、日常に流される自身を振りかえり、新たな気持ちで展示を観覧できるとも考えられる。

 第1展示室を入ると、「三溪の書 -新年にちなんで-」と題して、本企画(担当は北泉剛史学芸員)の趣旨が掲げてある。「現在は筆で字を書く機会が少なくなりましたが、新たな一年の目標を定め、書き初めを行ったことはあると思います。原三溪が生きた明治から昭和初期には毛筆が主流で、三溪は幼少より芸術に関心が高く、絵画だけでなく書によって自身の心情をよく表現していました。ここでは、新年にちなんで、三溪の思想や生き方が伝わる書の作品を紹介します。三溪の力強く大らかな書風をご覧ください。」

 <書は人なり>と言われる。書にその人格が表れるという比喩であるが、デジタル化とともに自筆で文章を綴る機会がめっきり減ってしまった。パソコンやスマホで書けば能率は上がるが、賀状でさえ宛先等をパソコンで記し、わずかな添え書きを自筆で加える程度、それも毛筆で書くことはほとんどなくなった。

 書には、もう一つ、書き手が選んだ文言を通じて伝わる<文は人なり>があるが、こちらも文章を書く・読むが苦手な人が増え、即・短メールのやり取りで済む。加えて<3密>、<黙食>等々の新語が続々と生まれている。のんびり<文は人なり>などと言っていられないのかもしれない。

 北泉さんの解説には、次の添え書きがある。
*原三溪(1868~1939)は、実業家として活躍するかたわら、三溪園の造園や優れた古建築・古美術の収集、若手芸術家への支援を行いました。また、自らも書画を嗜み、作品を多く遺しています。
*今後の新型コロナウイルス感染症の影響により、イベントが変更・中止になる場合があります。

 第1展示室でまず三溪の書5点をづけて観る。すなわち「清虚」、「若虚」、「太虚」、「坐見雲」、「白雲心」。いずれも2字または3字を右から左へ横書きにする掛け軸で、風格のある太字である。解説が指摘する通り、「力強く大らかな書風」を感受できる。<書風>とは書の持つ芸術的な側面と言っても良いかもしれない。

          原三溪「清虚」

            原三溪「清虚」

原三溪「清虚」
 「清虚」とは、心が清らかで汚れが全くないこと、わだかまりがないことを表します。三溪は生糸事業により富を得て三溪園を築き、優れた美術品を所有していました。自然や造られた美は公共性を持つものであるという考えを持ち、物事を秘匿したり、固執することがありませんでした。

原三溪「若虚」
 中国前漢の司馬遷が著した『史記』に「良賈深蔵若虚」(良賈は深く蔵して虚しきがごとし)という一節があります。才能をひけらかさず謙虚であるべきと諭した言葉です。ここから採られたと考えられる「若虚」は、三溪の漢学への造詣の深さや思想・生き方をよく表している言葉です。

原三溪「太虚」
 中国の思想で「大いなる虚空」、つまり天空や宇宙を象徴する言葉です。「虚空」は、仏教では、何も妨げるものがなく全てのものが存在する場所として用いられる言葉で、広大な三溪園を無料開放し、蒐集した美術品を若い画家たちに惜しみなく学ばせた三溪の広い心がよく伝わってきます。

原三溪「坐見雲」
 三溪の詩句には、「雲」の語が多く見られます。雲のふと現れては消え、自由に空を漂うさまに憧れを抱いていたのかもしれません。そのような雲を座って眺めている様子が認められています。雲が浮かぶ空は、前に展示する「太虚」に通じ、この短い言葉から三溪の大らかな心持ちが窺われます。

原三溪「白雲心」
 三溪が好んだ「白雲」という言葉です。禅語では、何ものにもとらわれない自由闊達(かったつ)な境地、無心で物事にこだわらない清々しさがあるという意味があります。また、「白」には、穏やかで清浄な心という意味も込められています。このようにありたいと、三溪が理想とした姿だったのかもしれません。

 以上が北泉さんの5点の解説である。ついで「扇面の書」として「淀殿和歌扇子」と「岡倉天心「填詞」」の2点が並ぶ。寄せ書き風のもので、細字で書かれた文章の意味が面白い。北泉さんの解説を以下に引用する。

「扇面の書」
 扇は涼を取るために用いられるだけでなく、古くは写経が施されて成仏を願いお供えするものであったり、手紙を認めて折り畳み、密かに想いを伝えるもの、装飾された料紙に和歌を詠んだ美術品としても用いられていました。書だけでなく、絵画が描かれ、実用されていたものから扇骨が取り外されて掛軸や屏風に貼り込まれることもありました。また、扇の形状が末広がりで縁起が良いことから、「扇面散らし文様」として好まれ、染織や漆芸品、陶磁器などに表されています。
 ここでは、三溪園が所蔵する岡倉天心の書と、原三溪が豊臣秀吉ゆかりの美術工芸品として蒐集し、「桃山史料」と分類していたなかから、秀吉の側室・淀殿が古今集の和歌を書いた扇子を紹介します。

「淀殿和歌扇子」
 扇骨は黒漆塗り、扇面には金銀の切箔(四角く切ったもの)や野毛(細長く切ったもの)の地に葦の図様が表されています。扇としては大きく、装飾が良く残るため、当初から実用より鑑賞の道具であったと考えられます。
 住吉の岸に よる波 夜るさへや ゆめのかよひ路 人めよくらむ

岡倉天心「填詞」
 岡倉天心(本名:覚三、1863~1913)は、三溪が支援した日本画家たちを東京美術学校や日本美術院の活動を通して育てた人物です。この詩は、末尾に「菜の葉塡詞 己亥冬夜 渾沌子酔書」とあり、天心(渾沌子は号)が酔って気分が良いときに、女性の美しさを蝶にたとえて詠んだものと思われます。


     岡倉天心「填詞」

            岡倉天心「填詞」  

  ここで私はふと立ち止った。天心と三溪の交友に関する資料は多くない。上掲の解説にある通り、三溪が支援した日本画家たちの多くが東京美術学校の天心の教え子であり、また日本美術院の関係者であるが、その元となる天心と三溪の交友関係がいつ頃から何をきっかけに始まったか、不明なところが多い。

 実は私も本ブログで「三溪と天心」と題して書き始めたが、2019年6月25日掲載の「三溪と天心(その1)」では、三溪⇔天心の書簡の存在を探すも見つからなかった経緯を書いた。その末尾で、書簡がないから親交がないとは言えず、書簡以外に両者の「交流を表す資料」として、三溪については『原三溪翁伝』、天心については『全集』(平凡社版)、この2つを軸にして他の関連資料にも当たると述べた。

 これを受けた2019年7月5日掲載の「三溪と天心(その2)」で立てた私の仮説は次の2点。(1)三溪は5歳年長の天心の思想と東京美術学校校長就任(1890年)や日本美術院の創設(1898年)等の実践活動に敬意を払い、天心の豊富な著作を読みこんでいたのではないか、(2)天心たちの主導で1897(明治30)年に成立した古社寺保存法(法律第49号)を受け、その具体的実践として三溪園への古建築移築を考えたのではないか。

 2019年7月18日掲載の「三溪と天心(その3)」では、天心の欧州視察を描き、「天心26歳の意気込みが感じられる」で終わり、そこで中断している。それも天心から始めて、三溪には至らないままである。幾つか中断の理由があるが、なんとも不甲斐ない。

 ここで二人の略歴を復唱しておこう。岡倉天心(覚三、1863年2月14日~1913年9月2日)は、開港横浜の日本人町の外国人居留地に近い場所(現在の横浜市開港記念会館)で生まれ、外国人居留民の子供たちと遊ぶなかで英語を覚え、異文化を自然に身に着けた。やがて東京に出て東大文学部を卒業、文部官僚となり、東京美術学校(現在の東京芸術大学美術学部)の創立に関わる。

 その後、明治時代初期の廃仏毀釈により衰退する社寺の建物等の文化財を保護するため、(旧)古社寺保存法(明治30年=1898年)という文化財保護法の前身となる法律制定に尽力、古社寺の建造物及び宝物類で、「特ニ歴史ノ証徴又ハ美術ノ模範」であるものを「特別保護建造物」または「国宝」に指定し、保護してきた。

 原三溪(青木富太郎 1868年10月8日~1939年8月16日)は岐阜の出身で、東京専門学校(現在の早稲田大学)で学び、縁あって埼玉県出身で開港横浜に進出した生糸売込商・原善三郎の孫娘・屋寿と結婚(1892年)、1902年、中区三之谷の三溪園に自邸を建て(現在の鶴翔閣)、庭園造りに着手した。

 三溪独特の造園理論の一つが、歴史ある古建築(主に京都と鎌倉)の園内への移築である。燈明寺三重塔、臨春閣、聴秋閣、東慶寺等々。廃仏毀釈により廃寺となった寺や、三溪憧れの桃山時代の建造物である。いずれも岡倉天心の古社寺保存法の趣旨に共鳴した行為であるが、古建築が三溪の美意識と一致し、造園の骨格をなしたと思われる。

 こうしたなかで、この天心の「填詞」(てんし)が三溪園所蔵品の一つとして残っていると知ったことの意味は大きい。填詞とは「中国の韻文の一体で、長短の句により構成される歌曲」であり(広辞苑)、これが書かれた己亥冬夜は明治32(1899)年冬夜と、かなり時期が早い。

 原善三郎(はら ぜんざぶろう 文政10年4月28日(1827年5月23日) - 明治32年(1899年)2月6日)の逝去とほぼ同時で、この直後に三溪は天心を通じて善三郎の胸像制作を依頼している。

 この填詞が書かれたのは善三郎逝去の直前であり、肝胆相照らし語り合った場で天心が書いたものを三溪が貰い受け、表装したと私は見る。この解釈が素直な気がしてならない。

 思わぬ発見に興奮し、いろいろに思いを巡らせつつ、第2展示室へ移る。ここには大別して次の3点を展示している。「臨春閣の障壁画 狩野周信筆《鶴図》」、「牛にちなんで」、「正月の絵画 -四君子-」。以下は北泉さんの解説である。

臨春閣の障壁画 狩野周信筆《鶴図》
 三溪園内の重要文化財建造物・臨春閣と月華殿の障壁画は、平成2~5年度(1900~03)にかけて制作されたコロタイプ印刷による高精細な複製に置き換えられています。原本は三溪記念館の安定した保存環境の収蔵庫で保管して、季節に合わせて紹介しています。
 現在、保存修理工事が行われている臨春閣の第一屋には《鶴の間》と呼ばれる部屋があり、ここに展示している《鶴図》が嵌められていました。画面には右から梅、松、竹が配され、その合間に端正な鶴が踊るような姿で描かれています。
臨春閣の障壁画は、屏風絵を襖に改装されたものが多いのですが、この《鶴図》は、当初より襖絵として描かれています。

「牛にちなんで」
 原三溪の絵画には花鳥や人々の暮らしぶりが描かれることが多くあります。三溪園では100点以上の三溪の絵画を所蔵しており、動物では鳥や馬を描いた作品は多いのですが、牛が描かれる作品はこちらの一点のみです。
 また、牛にちなんだ工芸品として、《片輪車螺鈿蒔絵火鉢》を紹介します。片輪車とは、平安時代に牛車の車輪が乾燥して割れてしまうことを防ぐために水に浸けた様子を意匠化したもので、有名な作品として《片輪車蒔絵螺鈿手箱》(国宝・東京国立博物館所蔵)があります。文様としてとても好まれ、漆工品だけでなく、染織や陶磁器などにも用いられています。ここでは、限られた点数ではありますが、牛にちなんだ作品として紹介します。

 三溪園が所蔵する100点以上の三溪の絵画のなかに牛を描いたものはこの1点だけとあるのを見て、ふと私は三溪が17歳(満16歳)の時に描いた《乱牛図》を思い出した(横浜美術館展示図録『原三溪の美術 伝説の大コレクション』 2019年 所収)。数十頭の牛がなだらかな山裾を上方へ移動する壮大な図。16歳にして高い完成度を見せる異様な才能、その衝撃的な印象が忘れられない。

 これについては2019年9月9日掲載の本ブログに展示「もっと知ろう! 原三溪」を書いたので参照いただきたい。そのなかで《乱牛図》の賛「嗚呼太平盛乎 縦馬華山之陽 牛放桃林之野」(ああ太平盛んなるかな、馬を華山の陽(みなみ)に縦(はな)ち、牛を桃林の野に放つ)の解釈を2つ併記した。

 第1が横浜美術館編の『展示図録』。中国の古典『書経』(『尚書』)の故事成語「帰馬放牛」から取り、「泰平を寿ぎ不戦を誓い学問を重んじる境地を放牧された群牛と牧童の長閑な情景に託している」とある。

 第2が市民研の解説。「武を伏せ 文を修め 馬を華山の南に帰し、牛を桃林の野に放ち、天下に服せざるを示す」から取ったとし、戦の象徴の<馬>と、太平の世の象徴の<牛>の対比を際立たせる。

 丑年の賀春、三溪の描く牛の2点に思わぬ連想が飛んだ。展示室には私一人だけ、ふたたび現実世界に戻った。隣には牛にちなむ工芸品の火鉢が2点、そして左手の展示ケースには色鮮やかな「正月の絵画 -四君子-」が拡がる。北泉さんの解説は言う。

 四君子とは、梅・菊・蘭・竹の4種の植物を君子(中国で、徳が高く学識や礼儀が備わった人物のこと)にたとえたもので、中国・宋元(10~14世紀)の頃より画題として好まれています。
 梅は一年の初め、早春の雪の中で花を咲かせる強さ、菊は晩秋の寒さのなかで鮮やかな花を咲かせる美しさ、蘭はほのかな香りと気品のある佇まい、竹は常緑で力強くまっすぐ伸びる姿が尊重されます。また、絵画の習得においても、この4種を描くことで基本的な筆遣いが身につくとされ、日本でも江戸時代に文人画で盛んに描かれました。本図は、梅の図に「昭和丁卯春正月」とあり、三溪が昭和2年の正月に描いたものだとわかります。

 描かれた昭和2(1927)年正月は、1868年10月8日生まれの三溪が満59歳、数えで60歳の還暦に当たる。この正月に、筆遣いの基本と言われる<四君子>を描いた三溪の心やいかに、とまた想いが拡がる。この絵から受ける印象は<艶やか>の一言である。

 廊下を挟んだ第3展示室は、がらりと変わって、「2020年 第30回 三溪園フォトコンテスト入賞作品展「わたしの好きな三溪園」」である。今年は第30回の記念すべき年で、応募は399点、うち46点の力作を展示している。

 表彰式と講評が毎年行われるが、今年は1月9日(土曜)であった。

             上野昌孝「干支もよう」
           上野昌孝「干支もよう」

 入賞の写真家名と作品名は以下のとおり(いずれも敬称略)。
 推薦(最優秀作品):上野昌孝「干支もよう」。

 特選:高階満美恵「新春」、宮澤寛「春の記憶」

 入選:乾ゆりゑ「木枯らし吹く日」、塩川幸久「お見事」、濱碕敬子「湖面に立つ」

 佳作:飯島彰「西日の光景」、市坪信教「春雪」、内野智子「初夏のひととき」、齋藤勝正「ハヤクー撮ってよ!」、横山秀夫「紅葉の絨毯」、佐野洋一郎「霧につつまれて」、清水公平「蓮池の冬」、鈴木克精「旧矢箆原家住宅」、芹野ゆかり「秋色のかがやき」、立川明「囲炉裏の煙り」。

 努力賞:秋山武夫「雨に映える」、秋山文雄「終演」、石井清一「芸者達」、石川元章「飛び入り稽古」、稲谷友良「陽を浴びて輝く」、大澤勇「実る」、岡久子「まっしぐら」、尾崎進「にらめっこ」、河合克浩「陽光に庭」、黒田立夫「寛とした時間、小林正雄「お出迎え」、佐藤瑞代「冬日」、沢田俊幸「横笛庵の佇まい」、嶋村一郎「葉みゃく」、白井高典「散歩」、鈴木利雄「都会のオアシス」、鈴木則道「簾越し、津国正光「和音祭りの宵」、沼尾夏美「晴れゆく空」、根本紀男「絶景」、林明次「閑寂な開園中」、平山清「花いかだ」、福田勝美「お花見」、船橋照貴「蓮田の冬景色」、増山照文「守り猫」、松井正「身支度」、茂木孝幸「禍中の希望」、柳盛康「秋好日」、山本拓平「あっ自転車が消えた!」、山本智敏「佇む」。
 

人類最強の敵=新型コロナウイルス(31)

 1月6日午後に前稿(30)を脱稿してから、首都圏(1都3県)に出す緊急事態宣言の具体的内容が徐々に煮詰まり、翌7日に発令された。一方、感染者は3000人台から4000人台にあったのが6000人台、7000人台へと恐るべき勢いで増えつづけ、とくに重症者が確実に増え800人台から900人台に迫り、医療体制を圧迫、病院は崩壊の危機に瀕している。

【感染拡大と緊急事態宣言】
 感染拡大状況を確認したい。前者が全国の感染者(カッコ内は重症者と死者)、後者が東京(カッコ内は重症者)。本文は日を追って時間順に書くため、その都度この表に戻って追記する。そこで気づくのは全国の重症者数の確実な増大である。
 6日(水曜)  6004人(784人、65人)と1591人(113人)
 7日(木曜)  7570人(796人、64人)と2447人(121人)
 8日(金曜) 7882人(826人、78人)と2392人(129人)
 9日(土曜)  7790人(827人、59人)と2268人(129人)
 10日(日曜) 6092人(852人、45人)と1494人(128人)
 11日(月曜) 4876人(864人、48人)と1219人(131人)
 12日(火曜) 4537人(881人、64人)と970人(144人)
 13日(水曜) 5871人(900人、97人)と1433人(141人)
 14日(木曜) 6605人(920人、64人)と1502人(135人)
 15日(金曜)午後、東京都の新規感染者が2001人との速報が入った。

 1月7日(木曜)、<松の内>の最終日夕方、菅首相は政府の対策本部で1都3県に緊急事態宣言を発令した。期間は2月7日までの1ヵ月。会見で首相が述べた内容は、(1)飲食店の時短、(2)テレワーク推進による出勤者数の7割削減、(3)午後8時以降の外出自粛、(4)イベントの人数制限、の4点をパッケージとして対策を行うことであり、なかでも(1)に重点が置かれている。

 経済活動の大幅な停滞を招いた前回の経験を踏まえ、今回は飲食店を中心とし、酒類の提供も午前11時から午後7時までとし、時短に協力した飲食店について、1カ月当たり最大約180万円の協力金で支援すると強調。「雇用を守ることは政治の責務だ」とも語った。しかし、飲食店へ物資を納入する種々の業種への手当は対象外である。例えば酒造メーカー、食材、おしぼり等にかかわる業者。

 時短営業を行った事業者にたいする給付金の増額、すなわち<雇用調整助成金>の期限は2月末であったが、これを延長し、大企業の助成率を最大75%から100%へ引き上げるとした。しかし、その他の面の財政支援で、明言を避けたことも見逃せない。このままでは企業倒産を防ぐ<持続化給付金>、<家賃支援給付金>については予定通り1月15日で申請期限を終了、延長しないことになる。記者による「<持続化給付金>の第2弾は考えているか」の質問には、これを<雇用調整助成金>の話にすり替え、今後「検討していきたい」と答えるのみであった。急ブレーキを踏んで右往左往する感が否めない。補佐する官僚たちがいないのか。

 首相の緊急事態宣言とそれに伴う都民・県民への呼びかけは、遅きに失した。数字が示すとおり、この間の感染者(うち重症者や死者)の急増ぶりは、2週間ほど前、すなわち昨年のクリスマス前後の実態を示すもので、首相は自民党幹部等と7人以上でステーキ会食をしていた。この間の様子を整理のため、まず12月29日掲載の本連載の(29)を読み直すと、次のようにある。

 12月22日開催の、厚労省に助言する専門家の会合は「東京での感染の継続や大都市圏での拡大が周辺や地方での感染発生にも影響しているとして、大都市を抑えなければ、地方を抑えることも困難になると警告した」。21日、22日、日本医師会や東京都医師会等が相次いで対策強化の必要性を訴え、東京都医師会は「感染者急増により医療崩壊の直前にあるとして<医療緊急事態宣言>を伝えた」。

 こうした事態について、私は次のように書いた。「医療を預かる現場責任者の悲痛な声に耳を傾けたい。ただし、本来なら政治の責任者である首相が先頭に立って国民に訴えるほど重大な問題である。にも拘わらず、その姿が見えない。これで暮れ正月を乗り越えられるのか」と。

 23日、小池都知事が自民党三役を訪問、現行の特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法、名称に注意)と感染症法の早期改正や水際対策の強化を要請した。また政府の対策分科会は、<Go Toトラベル>事業の見直しなどを繰り返し求めてきたが、政府は「感染拡大のエビデンス(証拠)はない」などと主張して、動かなかった。

 折しも26日の日経新聞朝刊に「内閣支持率42%に急落、不支持が逆転」の記事があった。<感染抑止>と<経済維持>の両立ができない現実が明白になり、首相は<感染抑止>策のみに切り替えた。28日、旅行代金の割り引きなどが受けられる<Go To トラベル>が来年1月11日まで全国一斉に運用停止となる。

 次いで今年1月6日掲載の本連載(30)に書いたことを再掲したい。12月29日の朝日新聞デジタルは、朝日新聞社が11~12月に行った、新型コロナウイルスをテーマに郵送方式の世論調査の結果を発表、新型コロナを巡る政府の対応を<評価する>は37%にとどまり、調査対象者の地元の知事の対応を<評価する>の54%より低かったと発表。

 また首相や自治体のトップに最も必要なものを4択で尋ねると、<公正さ・誠実さ>が31%、<リーダーシップ>が23%、<国民への共感>が23%、<政策・理念>が19%の順だった。<公正さ・誠実さ>や<国民への共感>を重視する層が特に政府には厳しく、60%がコロナの政府対応を<評価しない>と答えた。

 首位にある<公正さ・誠実さ>は定義が難しく曖昧な面があるものの、国民が首相や首長に求める、まさに最重要の要素である。個人的な印象であるが、今回の緊急事態宣言を発した菅首相には、いまだ<公正さ・誠実さ>を感じられなかった。

 以上、この2週間の政府等の対応ぶりの一側面を示す。政府分科会、厚労省の専門家会議、医師会等、感染症の科学者と病院の現場を担う医療従事者の意見をようやく菅首相、西村大臣、田村厚労大臣等の政治家が採用し、今回の2度目の<緊急事態宣言>発出となったと言えよう。

 正体がいまだ判明しない<人類最強の敵=新型コロナウィルス>への対応として、科学者と医療従事者の見解が政治を動かしたとすれば、これは世界の<模範>と言えるかもしれない。また日本の優れた<国民皆保険制度>にも感謝すべきである。それがいま崩壊しかねない瀬戸際にある。

 同じ7日、大阪府の吉村知事は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令を政府に要請する考えを示した。また兵庫県の井戸知事、京都府の西脇知事も同日、要請を検討しており、9日にも3府県合同で要請する見通しとなった。

 7日の新規感染者は、大阪府で607人、兵庫県で284人、京都府で143人といずれも過去最多を更新。3府県合計で初めて1000人を超えた。吉村知事は同日、記者団に「今後も感染が拡大する可能性が高く、先手の対応をすべきだ」と述べた。 大阪、京都両府は現在、大阪、京都市内の居酒屋などを対象に、営業時間を午後9時までに短縮するよう要請している。緊急事態宣言の対象になると、知事は、要請に従わない店名を公表するなど、より実効性の高い措置を講じることができる。 兵庫県も神戸市内の飲食店を対象に時短を要請する方向で調整している。

 同じ7日、厚労省は緊急事態宣言の発令決定に合わせ、昨年12月末に公表した2020年度予備費による「新型コロナウイルス感染症患者の入院受け入れ医療機関への緊急支援事業」を一部改正、1床あたり450万円を上乗せし、あわせて2000万円とすると発表した。

 8日(金曜)、緊急事態宣言が1都3県で実施された。内容は、上掲の通り、(1)飲食店の時短、(2)テレワーク推進による出勤者数の7割削減、(3)午後8時以降の外出自粛、(4)イベントの人数制限、の4点である。時短協力金として一律1日あたり6万円、2月7日までを合わせて最大186万円を支給する。

 これら4つのうち、(1)飲食店の時短は別として、(2)、(3)は特定業種への要請ではなく、広く各方面の自助努力に委ねる面が強い。(2)テレワーク推進による出勤者数の7割削減は、確かにヒトの移動による感染拡大を抑える効果はあるとはいえ、その準備が万全ではない企業・団体が少なくない。デジタル化の物的基盤は整えられても、それを運用するヒトの技術や知恵に欠ける面もある。

 また(3)午後8時以降の外出自粛は、(2)と同様にヒトの移動による感染拡大を抑える効果はあるが、その反面、足腰を使わないことによる老化の進行や免疫力の低下が心配される。健康維持のための日常活動、これは国民一人一人にとって共通の課題であり、最大の関心事の一つと言える。

 この面を明白に示した神奈川県の通知を目にした。7日付けの「特措法に基づく緊急事態措置に係る神奈川県実施方針」の「県民の外出自粛」では、人の移動と、人と人との接触機会の抑制を図るため、法第 45 条第1項に基づき、生活に必要な場合(※)を除き、 徹底した外出の自粛、特に、20 時以降の不要不急の外出を自粛するよう強く要請。

 そして「※生活に必要な場合」の例として、(ア)医療機関への通院、(イ)食料・医薬品・生活必需品の買い出し、(ウ)必要な出勤・通学、(エ)自宅近隣における屋外での運動や散歩など、生活や健康の維持のために必要なもの、の4つを掲げる(ア~エの表記は引用者による)。この「(エ)自宅近隣における屋外での運動や散歩など、生活や健康の維持のために必要なもの」については、むしろ積極的に推奨する含意があり、大いに評価できる。大多数を占める健康人が家に籠ることで健康を害しては元も子もない。2025年に団塊世代が後期高齢者となることを踏まえ<未病指針>を提示し、中長期の展望を持つ神奈川県である。他の自治体を調べていないが、神奈川県の事例を<模範解答>として全国に普及させてほしい。

 8日(金曜)、大阪府、京都府、兵庫県の2府1県の知事がそろって緊急事態宣言の発令(適用範囲とする)を政府に要請することを決定。これを受けて西村大臣は「…しっかり連携し、状況を確認して対応したい」と述べた。また愛知県、三重県、栃木県も同様の要請を行う動きを見せている。

 9日(土曜)、緊急事態宣言の発令後、初めての週末。浅草等の都内の盛り場への昼間の人出はさほど減っていない。初めて緊急事態宣言が発令された週末(昨年4月12日)に比べ、都内の盛り場の人出は3~4倍にのぼるという。状況の深刻さが伝わっていないと見られる。新幹線は空いており遠出は減っている。

 同じ日の厚労省の発表によれば、1月5日時点で、病床使用率が50%を超えているのは、東京都78.1%を筆頭に、兵庫県、滋賀県、大阪府、福岡県、埼玉県、広島県、奈良県、愛知県、群馬県、岐阜県、熊本県の12都道府県である。

 また1月5日時点で重症病床使用率が50%を超えているのは、東京都87.4%、大阪府64.7%、埼玉県53.4%の3都府県。ちなみに約1ヵ月前(12月9日現在)の状況は、大阪府58%を筆頭に、東京都55%、愛知県・沖縄県40%、兵庫県37%、神奈川県33%であり、この間の量的・地域別の増加ぶりが分かる。

 同じ日、大阪府、京都府、兵庫県の2府1県の知事がそろって緊急事態宣言の発令を政府に正式に要請した。連休明け早々にも対策本部会議を開いて正式に決定する予定。

 10日(日曜)、また北日本で豪雪となり、各地の道路で大規模な立ち往生が起こり、最大1000台を上回った。ガソリン節約のため暖房を切り、寒さと飢え、不安と恐怖に怯える事態が放映される。

 11日(成人の日)、最大数の新成人3万7000人を有する横浜市では、会場を2つに増やし、1会場あたり4回に分け、計8回の分散方式で成人式を行った。参加希望者は新成人の約半数で例年とほぼ同じ。「式の後の会食は控えて欲しい」との市職員の呼びかけに対し、「しっかり対策を立てて、せっかく開催していただいたので、それに応えるためにも会食は控える」と答える振袖姿の言葉が印象に残る。

 一方、埼玉県では、さいたまスーパーアリーナを会場とする成人式を取りやめ、ユーチューブを使うオンライン方式に代えた。東京23区で唯一の開催は杉並区。全国的にも会場に集まる形式の成人式は少なかった模様。それぞれに熟慮のうえの決断であろう。中止に伴い、貸衣装や美容院のキャンセルが相次いだ。

 この日、TBS/ANN世論調査(1月9日、10日の定期調査)が発表され、内閣支持率が支持41%、不支持56%と初めて不支持が上回った。また新型コロナウィルスへの政府の対応については、「評価する」が28%、「評価しない」が63%。

 今回の緊急事態宣言の発令を「評価する」と答えた人が63%であるが、発令のタイミングについては「遅すぎる」と答えた人が83%にのぼる。また「1ヵ月で解除できると思うか」に「思わない」と答えた人は87%に上った。

 ワクチン接種については、接種したいが48%、接種したくないが41%と、この間に大きな変化は見られない。なお東京五輪について「開催できる」が13%、「開催できない」と答えた人が81%であった。

 同じ11日、中国の国家衛生健康委員会は、新型コロナウィルスの発生源を調べるWHOの調査団が14日から中国入りすると発表した。1月の第1週に予定していたものが1週間遅れで始まる。遅れた理由は不明であるが、この間、103人の新規感染者が10日に出た(5ヵ月ぶり)と発表があったことも一因か。河北省82人、遼寧省2人、北京市1人、海外からの入国者18人という。

 12日(火曜)、この週末3日間(9~11日)の人出の調査結果が出た(日経新聞)。「人出の減りは限られている」とするグラフが示すように、前回の緊急事態宣言(昨年4月12日)後には2割~4割まで減ったが、今回は6割~9割に過ぎず、効果のほどが疑われる、とする。

 同じ日、閣議後の記者会見で梶山経産相が、大幅減収の飲食店取引先(食材や器材の納入業者)に対し、最大40万円を支給すると表明した。一方、家賃支援や中小企業向けの<持続化給付金>は、各方面から延長の要請が出ていたが、残念ながら予定通り1月15日で申請を締め切る。

 同じ日、日経新聞(朝刊)に載った2つの特集記事が印象的であった。見出しだけでも内容が想像できるので掲げる。(1)「Next 1000 コロナ下、時価総額が伸びた企業」、副題として「ネット活用支援で躍進、公教育デジタル化 追い風」とある。(2)「サイバー・イニシアチブ東京2020 サイバー攻撃激化 現実社会の脅威に」⇒登壇する政治家・学者たちが口をそろえて「高度人材の育成」を語るのは、現状が遅れている証拠である。人材育成の具体的な方法に着手してほしい。

 13日(水曜)、1都3県の緊急事態宣言に加えて、新たに7府県(大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木)にこれを拡大することを決めて発令、これで11都府県となった。期間は14日から2月7日まで。同時に11ヵ国・地域とのビジネス往来も期間中は中止、外国人の新規入国は原則として禁止するとした。

 この日の記者会見で菅首相は、「大都市で人口が集中し、全国に感染が広がる前に対策を講じる必要がある」と追加発令の理由を説明、「厳しい状況を好転させるために欠かせない措置」と協力を求めた。1都3県と同様、①飲食店の時短、②外出自粛、③イベントの制限、④テレワーク推進と出勤の7割削減を挙げ、格別の根拠もなく「効果は必ず出てくる」と述べた。加えて「昼も外出を控えて」とも言うが、本気で根拠あるメッセージには聞こえない。また対象地域外でも自治体が望み一定の条件を満たせば、時短協力金を4万円から同じ6万円に引き上げるとした。

 なんとか感染の抑止につなげたいと思う大多数の国民は、これまでの首相の行動と発言に全幅の信頼を寄せる気にはなれないまでも、個々人のレベルで、また組織・団体のレベルで可能なかぎりの努力を進める意思がある。しかし<背に腹はかえられず>の現実もある。

 14日(木曜)、緊急事態拡大の初日、マスコミは出勤時の「人出は変わらず」と報じた。しかし時間が経つにつれて、観光地等では昼間の人出が急減していると報じた。「昼も外出を控えて」(菅首相)や「ランチも控えて」(西村大臣)とする要請が奏功したのかもしれない。しばらく様子を見たい。

 この日、東京都は14日、「モニタリング会議」を開き、専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも最も高い警戒レベルとした。このうち感染状況について、感染確認の7日間平均が、先週の1029人から今週は1699人になったとして、「経験したことのない速度で増加…」と分析、新たな感染確認の増加比が165%になったと指摘し、「爆発的な感染拡大を疑わせる水準で推移」と非常に強い危機感を示した。

 165%の増加比のままだと、1日の新たな感染確認が1週間後には1.7倍になり、2週間後には新たな入院患者だけで、都が確保している4000の病床を上回るだろうという。また自宅療養者もこの1週間で6倍にのぼった。このため都知事は3病院をコロナ対応専門にするよう指示した。

 15日(金曜)、緊急事態宣言が出て1週間になる。その効果を示す数字はまだない。3時に新規感染者が2001人との速報が入った。PCRの検査数が最多となったことを前提として、新規感染者数が<過去最多>でもなく曜日最多でもないのは事実である。だが、これを以て減少傾向に入ったと判断するわけにはいかない。

 この発表を前に2時からの都知事の会見があり、<ステイホーム>の具体策に多くの時間を割いた。「軽症・無症状で動き回ることが感染拡大の要因」であり「寒冷乾燥の冬場がコロナにとって最適の環境」としたうえで、経済団体を通じて事業者に向け「出社を7割減らして(3割ではなく)」と要請し、<テレワーク緊急強化月間>を掲げ、都として中小企業をサポートする各種取組を紹介する。また飲食店むけの時短要請の呼びかけを警視庁・消防庁とともに、昨日は池袋、今日は新宿、渋谷を重点として行うとした。

【アメリカの政権移行】
 7日(米東部時間の6日)、次期大統領を正式に選出するための連邦議会(上下両院の合同会議)開催中の議事堂にトランプ支持者が乱入、3時間にわたり占拠し、議事が中断した。1814年の米英戦争の最中、イギリス軍が議事堂に火を放った事件から約200年後の、民主主義の象徴である連邦議事堂で起きた事件である。

 トランプ氏自身が集まった支持者に対して議事堂へ行けと扇動する姿がテレビに映った。その混乱ぶりにトランプ氏は驚いてSNSを通じて「家に帰るときだ」と撤収を呼びかけ、米政府は州兵を出動してデモ隊を排除した。議会の議事は7日午前(米東部時間の6日晩)に再開、議長をつとめるペンス副大統領が、次期大統領にジョー・バイデンを正式に選出すると宣言した。就任は1月20日。

 もう一つの懸案事項である米上院議員のジョージア州の再選挙(11月の選挙で0.5%以下の僅差だっため決戦投票)の結果は、予想より早く、7日(日本時間)に判明した。民主党の新人が2議席を獲得、一人がドキュメンタリー映画製作者のオソフ氏(33)、もう一人が故マーティン・ルーサー・キング・ジュニア氏が牧師を務めていたアトランタの教会の牧師ウォーノック氏(51)である。これで上院議員は民主党と共和党が同数で共に50人ずつ。副大統領が議長となるため、民主党が僅差で多数派となった。

 デジタル時代の政治と企業の関係を示し、かつ民主主義の本質を試す一例が明らかになった。米ツイッター社が約8870万人のフォロワーがいるトランプ大統領本人のツイッターアカウント(@realDonaldTrump)を永久停止したことを受け、トランプ氏は8日夜、別のツイッターアカウントから「ツイッターの従業員たちは民主党員や急進左翼と連携し、私や私に投票した7500万人を黙らせるため、私のアカウントを削除した」と反論。ツイッター社は直後に、これらの一連のツイートも削除する措置をとった。

 ツイッター社は6日の米連邦議会議事堂の乱入事件にからみ、8日、トランプ氏本人のアカウントを永久停止にした一方で、トランプ氏には他に約3340万人のフォロワーがいる米大統領としてのアカウント(@POTUS)もある(これは<米国大統領>の略語)。

 トランプ氏は8日夜、このアカウントから反論のツイートをしたが、これらの投稿も直後に表示されなくなった。ツイッター社は8日夜、朝日新聞の取材に「別のアカウントを使って、停止措置を逃れることは我々の規約に反する。@POTUSからのツイートについて対策をとった」と説明し、ツイートを削除したことを明らかにした。なお@POTUSというアカウントはバイデン次期大統領にも引き継がれるため、ツイッター社はアカウント停止などの措置はとらないものの、今後もツイート削除などの対応はとるとみられる。

 もう一つのIT大手アマゾン・ドット・コムも、トランプ支持者が愛用するSNS(交流サイト)の運営会社との関係を断った。またフェイスブックも期限を設けずに利用停止の措置をとった。巨大独占企業GAFAに対する規制問題とともに、特定の人の利用を制限することと<表現の自由>とのバランスは今後も問いつづけなければなるまい。

 7日発のロイター通信によれば、連邦議事堂への乱入事件に関して、その初期の段階までの警備対応はほぼすべて議会警察に任されていた。議会警察は2000人から成り、議事堂警備の専門組織である。連邦政府の治安部隊が現場に到着したのは、乱入者が議事堂内部を占拠してから数時間後である。

 乱入が始まる直前には議事堂のすぐ近くで、トランプ氏が大統領選に異議を唱える集会を開いて演説。投票の発表結果について「われわれの民主主義に対するひどい攻撃」と訴えるだけでなく、支持者らに対し、議事堂まで「米国を救う行進」をしようと呼びかけていた。

 本来であれば、連邦議会による大統領選結果認定はごく形式的な手続きにすぎないが、今回に限ってはソーシャルメディア上で何週間も前から、トランプ氏支持者が抗議を計画していること、暴動に発展する恐れがあることが認識されていた。それにもかかわらず議会警察は、公共の安全維持を担当する国土安全保障省など他の連邦機関に警備の応援を事前要請していなかった。首都ワシントン市長の要請で州兵が出動したのは、議事堂の最初のバリケードが突破されてから1時間以上を経た後であった。

 議会警察のサンド長官は7日の声明で、今回の事件や警備計画、各種政策措置などを全面的に見直していると弁明。議会警察として、言論の自由を定めた合衆国憲法修正第1条に関するデモ活動などに対応する計画はしっかりあったとした上で、今回はそうした活動ではなく犯罪的な暴動行為であると指摘。警察官一人一人の振る舞いは、彼らが直面した状況を踏まえれば英雄的であったと擁護した。サンド氏の話では、警察官は鉛製のパイプや刺激性の化学物質などで攻撃された模様。民主党のティム・ライアン下院議員のビデオ会見によると、警察官は最大60人が負傷し、今も15人が入院、1人は重体に陥っている。多くは乱入者から殴打され、頭部にけがを負っているという。

 同じ7日午後、ペロシ下院議長はサンド氏の辞任を要求した。下院警備局長から辞職の申し出があったとも語った上で、「議会警察のトップは指導力が欠如していた」と批判した。他の連邦機関にも事前の警備計画を策定しなかった過ちがあるとし、責任は議会警察だけにとどまらず多くの行政機関に及ぶと強調した。

 11日(月曜)の日経新聞デジタルによれば、アメリカ東部時間の10日、民主党のペロシ下院議長は同僚議員に宛てた書簡で、ペンス副大統領に対して合衆国憲法修正25条を発動しトランプ氏を罷免するよう求める決議案を11日に提出すると明らかにした。決議案可決から24時間以内の罷免を求める。罷免が実現しなければ本会議で弾劾決議案を取り上げるとも説明、民主党は11日にも弾劾決議案を提出する方向で調整している。弾劾の根拠にはトランプ氏の支持者による連邦議会占拠事件を踏まえ「反乱の扇動」をあげる見通しで、ペロシ氏は12日以降に本会議で決議案の審議や採決を行う構えである。

 民主党指導部のジェームズ・クライバーン下院議員は10日のFOXニュースのインタビューで弾劾決議案の採決をめぐり「火曜日かもしれないし水曜日かもしれない。ただ今週には行うと思う」と述べた。また決議案の起草者の一人である民主党のデビッド・シシリン下院議員は10日、ツイッターで決議案について210人の賛成を得たと明らかにした。下院(定数435)では出席議員の過半数が賛成すると決議案を可決できる。民主党は222議席と過半数を占め、決議案を提出すれば可決できるとの見方が目立つ。米メディアによると民主党で少なくとも1人が弾劾に反対している。

 上掲のクライバーン氏はCNNテレビのインタビューで下院が決議案を可決しても、すぐに弾劾裁判を行う上院に決議案を送付しない可能性があると指摘した。具体的な送付時期はバイデン次期政権の発足から100日後をあげた。送付を遅らせる案は、バイデン政権が指名する政府高官の承認や新型コロナウイルス対策を優先する狙いがある。弾劾裁判は全ての上院議員が出席するため裁判中は委員会で指名公聴会を開いたり、法案を審議したりできなくなる。

 米メディアによると、現時点で上院運営の主導権を握る共和党トップのマコネル院内総務は、トランプ政権下で裁判を行わない方針を周辺に伝えた。裁判はバイデン政権発足後に始まる可能性が高い。

 14日(木曜)、米東部時間の13日、米下院本会議は連邦議会議事堂の占拠事件を扇動したとして、トランプ大統領を弾劾訴追する議決案を賛成232票、反対197票で可決、民主党議員に加えて共和党から10人が賛成にまわった。トランプ大統領の任期満了の1週間前である。トランプ氏が弾劾訴追をとなるのは2019年12月につづく2回目であり、史上初の<名誉ある>大統領となった。

 朝日新聞デジタル版はワシントン発として次のように伝えた。民主党のペロシ下院議長は、弾劾訴追の決議後、こう話した。13日正午過ぎに始まった討論で、民主党議員は議事堂襲撃事件や、支持者を扇動したトランプ氏を厳しく批判した。決議の起草者の一人のラスキン議員は群衆が議事堂乱入後、「(合同会議の進行役だった)ペンス(副大統領)をつるせ」「ナンシー(・ペロシ氏)はどこだ」と叫んでいたと説明。議員たちに「ここの部屋にいる誰もが、死んでいたかもしれない」と訴えた。

 一方、共和党下院トップのマッカーシー院内総務は「大統領は暴徒による議会襲撃の責任を負う」とトランプ氏を非難しつつ、「公聴会も調査もしていない、短期間での弾劾訴追は間違いだ。さらなる分断を生む」と弾劾訴追に反対した。共和党からは「(弾劾で)消えかかった(トランプ氏支持者の)運動の残り火に、ガソリンを注ぐことになる」(ビッグス議員)「民主党は大統領の成果を否定したいのだ」(ジョーダン議員)という意見も出た。

 共和党からの造反がなかった2019年末の「ウクライナ疑惑」の弾劾訴追の決議と違い、今回は共和党から10人の議員が賛成に回った。その一人のニューハウス議員が「私を含め、大統領が偽情報を流し、暴徒をたきつける前に、声を上げなかった責任がある」と話すと、拍手が起こった。

 次の舞台は、バイデン政権下でトランプ大統領が有罪かどうかをめぐる上院(定数100人+議長のハリス副大統領)の弾劾裁判に移り、出席議員の3分の2が賛成すると有罪となる。

【大学入学共通テスト始まる】
 いよいよ明日から大学入学共通テストが始まる。これまでの大学入試センター試験に代わる新たな制度の初年度にあたり、全国で53万人超が受験する。会場となる各大学にとっては、大教室の対面授業を控えてきた約10ヵ月、久しぶりの大事業である。そこに初年度であるが故の種々のミスや混乱が重ならないよう、なかんずく集団感染が起きないように心から祈っている。

 この間に観た録画は次の通り。(1)BS1「世界のドキュメンタリー RBG 最強の85歳(前編)」1月5日。(2)NHK 歴史秘話ヒストリア「日本誕生 知られざる物語 日本書紀1300年」5日。(3)BS1「世界のドキュメンタリー RBG 最強の85歳(後編)」6日。(4)NHK クローズアップ現代プラス「ピンチの企業に秘策社員生き生き 外食で製造業で」7日。(5)NHK ザ・ヒューマン「不屈のえん罪弁護士 マーク・ゴットシー」8日。(6)NHK SWITCHインタビュー 達人達「高橋英樹×栗田純徳(石垣造り)」(再)9日。(7)NHK クローズアップ現代十選「<コロナ病棟>ルポ 奮闘続ける医療者たちの命をめぐる葛藤も」9日。(8)TBS報道特集「2度目の緊急事態宣言 医療現場は? 飲食店は? 台湾の大臣が語る<世界とコロナ>」9日。(9)NHK日曜討論「コロナ禍で政治は 2021年 党首に問う」10日。(10)NHK 目撃!にっぽん選「筆を折った“幻の女性作家”~沈黙の人生をたどる旅へ~」10日。(11)NHK BS1スペシャル「新型コロナ 全論文解読×世界最強の頭脳」11日。(12)NHKクルーズアップ現代+「この先どうなる? ビッグデータで読む解くコロナの“今後”」13日。(13)クルーズアップ現代+「<医療崩壊の危機>入院・転院ができない現場からのSOS」14日。 

人類最強の敵=新型コロナウイルス(30)

 前稿(29)は12月28日(月曜)の3時すぎの時点で終えたが、その後も大きな動きや気になる問題がつづき、年末年始も目が離せない。全国的に感染拡大が止まらず、<曜日最多>が連続する。とくに首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県)での増加が目立つ。そこにイギリスと南アにおける変異種の急拡大が重なり、流入を食い止めようと新たな出入国管理策が採られた。

 12月28日(月曜)、政府は全世界を対象にとってきた2つの出入国緩和策を停止した。全世界対象の変異種対応は、国際的にみても異例とされる。コロナ対応で「後手に回っている」との批判から、官邸主導で下した政治判断であった。今後は、待機場所の確保など帰国者への対応が焦点となる。

 この28日朝、菅首相は「先手、先手に対応するため、土曜日に方針を指示した」と記者団に胸を張った。その約8時間後に政府対策本部を開き、「英国では多くのウイルスが変異種に入れ替わっている」と対策の徹底を呼びかけた。1日2回の発信も全世界対象の措置も、世論の批判に対する焦りの裏返しと思われる。政権発足当初、報道各社の調査で70%前後あった内閣支持率が急落。朝日新聞が19、20両日に実施した調査でも、前月から17ポイント減の39%に落ち込んだ。

 政権幹部によると、首相官邸では28日、「今の対応を続けても来年2月には感染者がさらに増える」との認識が共有された。首相周辺は「もうデジタル庁や携帯料金値下げでは支持率低下の局面を変えられない」と漏らす。厳しい状況が続くなか、首相は土曜日の26日午前、官邸で厚労省幹部らと変異種対応を協議し、全世界を対象にとってきた出入国緩和策の全面停止に踏み切る意向を伝えた。

 29日(火曜)の朝日新聞デジタルは、朝日新聞社が11~12月に行った、新型コロナウイルスをテーマに郵送方式の世論調査の結果を発表した。新型コロナを巡る政府の対応を「評価する」は37%にとどまり、調査対象者の地元の知事の対応を「評価する」54%より低かった。郵送調査は全国の有権者から無作為に選んだ3千人を対象に実施、11月11日に調査票を発送し、12月21日までに届いた有効回答は2126通で回収率は71%。

 地元知事の評価は地域差が大きく出た。「評価する」は大阪で83%、北海道も8割と高く、福岡は6割、東京は52%と全国平均並み。首都圏の神奈川36%、埼玉35%、千葉22%は低めで、愛知は33%であった。

 首相や自治体のトップに最も必要なものを4択で尋ねると、「公正さ・誠実さ」31%、「リーダーシップ」23%、「国民への共感」23%、「政策・理念」19%の順だった。「公正さ・誠実さ」や「国民への共感」を重視する層が特に政府には厳しく、60%がコロナの政府対応を「評価しない」と答えた。
  
 「対応を評価する日本の政治家」の名前を1人だけ挙げてもらう質問(自由回答)でも知事の名前が目立つ。トップは大阪府の吉村洋文知事で378人。2位は東京都の小池百合子知事160人、3位は北海道の鈴木直道知事95人と、上位3人を知事が占めた。国政では4位に菅首相の59人、次いで5位の安倍晋三前首相58人、以下新型コロナ対応などで露出の多い西村康稔経済再生担当相49人と並ぶ。
 
 新型コロナウイルス対応で、政府より知事の評価が高い理由の一つには、感染症対策の権限の問題がある。政府より知事の方が具体的な施策を打ち出す裁量が大きく、外出自粛や飲食店への休業の要請も権限は知事が持っている。現在の法律は知事が医療体制の整備を行うと想定している。

 政府が法律に基づいて行える感染拡大抑止策は緊急事態宣言の発令くらいである。初期の対策は、イベント自粛のお願いと一斉休校であった。時短営業の補償金や病床確保のための予算措置などは国民には見えづらく、最近は<Go To キャンペーン>などの経済対策が目立つが、それがまた裏目に出て、感染拡大につながると批判を受けた。

 国会議員が27日に亡くなったが、その後の検査で新型コロナウイルスに感染していたことが確認された。立憲民主党の羽田雄一郎(参議院幹事長)で、現職の国会議員が感染して亡くなったのは初めてである。参議院長野選挙区選出の当選5回。父親は羽田孜・元総理大臣(第80代、1994年)。

 同党の福山幹事長によると、羽田氏は今月24日に発熱して、体調不良が続き、27日、PCR検査を受けるために秘書が運転する車で医療機関に向かう途中に呼吸が荒くなり、「俺、肺炎かな」と言ったあと会話が途切れたという。糖尿病などの基礎疾患があった。

 発熱した今月24日以降は、東京都内の自宅に待機していた。その前は、今月22日に国会内で開かれた党の常任幹事会に出席、23日には地元の長野県内で開かれた県連の会議に出席するなどしていて、保健所などが羽田氏の行動履歴や濃厚接触者の把握を進めるとともに、党では接触した議員に検査を受けるよう呼びかけているが、年末年始で検査がはかどらない。

【年末年始の人の動き】
 30日(水曜)の昼現在、国内線が発着する羽田空港の第1ターミナルではスーツケースを持った家族連れや旅行客の姿も見られたが、目立った混雑はなく、例年の年末に比べて利用客が大幅に減っている。新型コロナウイルスの感染拡大や「Go Toトラベル」の全国一斉停止の影響で、予約のキャンセルが相次ぎ、30日もほぼすべての便で空席が出た。日本航空では今月25日から来年1月3日までの予約数は45万人余りと、前の年の4割ほどにとどまる見込みという。

 鉄道では、JRによると、30日午前10時までの東海道新幹線や東北新幹線などの自由席の乗車率は5%から50%程度と空席が目立ち、例年、100%を超えることもあるこの時期としては、かなり低くなっている。正月三が日も人の移動は極端に減った。ふだんと異なる三が日である。

【感染拡大と抑止対策】
 感染拡大状況を確認したい。前者が全国の感染者(陽性者、カッコ内は重症者と死者)、後者が東京(カッコ内は重症者)。
 28日(月曜)  2400人(661人、51人)と481人(81人)
 29日(火曜)  3607人(675人、59人)と856人(84人)
 30日(水曜)  3852人(668人、59人)と944人(85人)
 31日(木曜)  4516人(681人、49人)と1335人(89人)
1月1日(金曜)  3247人(681人、49人)と783人(88人)
 2日(土曜)   3059人(711人、31人)と814人(94人)
 3日(日曜)   3146人(714人、60人)と816人(101人)
 4日(月曜)   3325人(731人、48人)と884人(108人)
 5日(火曜)   4915人(771人、76人)と1278人(111人)
 6日(水曜)午後、ふだんより早めの2時半ころ、東京都の新規感染者は1591人、重症者が113人と速報が入った。いずれも過去最多である。

 12月30日(水曜)午後、小池都知事は臨時で記者会見を開き「かつてない大きさの第3波が襲いかかってきている。いつ感染爆発が起きても誰が感染していてもおかしくない状況だ。この年末年始が分水嶺だ」と述べ、年末年始は家で静かに過ごし、忘年会や新年会、会食などは行わないよう強く呼びかけた。

 イギリスや南アフリカで見つかっている変異ウイルスが日本でも確認されたことについても触れ「2つの『未知』に直面している。変異ウイルスが出てきた。また、コロナ禍で初めて経験する冬の寒さだ。未知の課題に対して最大級の警戒と備えが必要だ」と述べ、若い世代に向けた呼びかけとして「コロナを甘く見ず、夜間の外出はしばらく<なし>にしてください。若いから大丈夫では決してありません。こんなはずではなかったと思った時にはもう遅い。皆さん自身の将来を守るために日々の行動を改めて見直してください」と呼びかけた。

 さらに「ここで感染を抑えなければ、ますます厳しい局面に直面する。緊急事態宣言の発出を要請せざるを得なくなる。何としても回避しなければならない。この年末年始が感染拡大を食い止められるか否かの分水嶺だ。命を優先してほしい」と呼びかけ、年末年始は家族で静かに過ごす<ステイホーム>を徹底し、忘年会や新年会は行わず、会食も絶対に開かないよう呼びかけた。

 同じ30日の夜、西村大臣は、国立国際医療研究センターの忽那医師とともに、みずからのツイッターで、「このまま感染拡大が続けば、国民の命を守るために、緊急事態宣言も視野に入ってくる。何としても感染を抑えなければいけない」と指摘し、年末年始は家族とのみ過ごすよう改めて呼びかけた。

 31日(木曜)の大晦日、全国の感染者4516人、東京都1337人を確認、いずれも過去最多を更新した。これで都の曜日最多は17日連続となる。また感染経路不明が363人から476人と最多となる。こうした種々の指標からみて、医療機関が受け入れられる限度を超えんとしており、まさに<医療崩壊>の寸前にある。

 この日、菅首相は緊急事態宣言を出す考えはないか記者団に問われると、「まず今の医療体制をしっかり確保し、感染拡大回避に全力をあげることが大事だ」などと述べるにとどめ、宣言自体に触れず、慎重な姿勢を見せた。

 マスコミは休日モードにあり、大晦日の新聞夕刊は休み、元日は賀正用の記事が多く、速報類の掲載はきわめて少ない。恒例の除夜の鐘や紅白歌合戦もどこか空しく感じると同時に、「このような時こそ心穏やかにして正面から未来を構想せよ」と内面からの声が聞こえる。

 2021年の元日(金曜)、6時59分に初日の出を迎えた。強烈な寒波襲来のため気温が下がり、全国的な大雪(一部は吹雪)となったが、首都圏は晴れて、穏やかで温かい正月を迎えることができた。しかしコロナは待ってくれない。

 元日の新規感染者は783人、金曜日としては、1週間前の先月25日の884人に次いで過去2番目に多い。入院者数は136人増えて2730人、自宅療養者は31日より104人増えて3278人と、いずれも過去最多である。現在確保している3500の病床の78%を使用しており、きわめて厳しい状況にある。

 感染拡大は1都3県が連動している。神奈川県の新規感染者は31日が588人、1日が470人で金曜日として過去最多を更新、埼玉県は31日が330人、1日が221人、また千葉県は31日が251人、1日が144人と急増し、いずれも病床が逼迫している。

 こうしたなか、官邸の人事異動があった。1日づけで政府は政務担当の首相秘書官を新田章文氏(39)から寺岡光博氏(54)に替える人事を発令した。寺岡氏は1991年大蔵省(現財務省)に入省、内閣官房内閣審議官時の2015年から3年間、菅官房長官(当時)の秘書官を務めた経験がある。

 現在、首相秘書官は政務担当に加え、財務、外務、経済産業、厚生労働、警察、防衛各省庁出身の事務担当秘書官を合わせた計7人。大学入試を目前にして文科省の事務担当秘書官はいない。7人のうち防衛と厚労を除く4人は、首相が官房長官時代の現役秘書官をそのまま抜擢したことから、比較的若い顔ぶれとなっている。

 事務秘書官が出身省庁に関係する政策等を担当するのに対し、政務秘書官は首相の政治活動を中心に担うため、「首相最側近」とも位置づけられる。内政や外交だけではなく与党との調整、メディア対応など政権運営に深く関与する。これからの動きを見たい。

 2日(土曜)午後、大晦日から元日にかけての感染拡大を受けて、東京都知事は埼玉県知事とともに西村大臣と面会し、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言の発出を要請すると報じられたが、これに神奈川県と千葉県の知事が合流、同日午後、首都圏(1都3県)の知事が西村大臣に対し政府が緊急事態宣言の発出を速やかに検討するよう要請した。

 検討にあたっては、社会生活の混乱を避けるため一定の周知期間を設け、宣言のもとでの具体的な措置について自治体と協議することを求めている。西村大臣は、3時間にわたる面会後、記者団に対し「首都圏の現下の感染状況は、緊急事態宣言の発出が視野に入る厳しい状況という認識を共有した。あらゆる事態を想定し、緊密に連携して対応していくことで一致した。4知事から検討を要望された緊急事態宣言の発出については国として受け止めて検討していく」と述べた。

 そのうえで「宣言を発出するかどうかは、専門家の意見も聞かないといけない。できるだけ早いタイミングで分科会を開かなければいけないと思っている。検査件数や陽性者数、人の流れのデータなども踏まえて専門家の皆さんに判断をいただかないといけない」と述べた。

 一方、西村大臣は小池知事らに対し、飲食店の閉店時間を午後8時までとし、酒類の提供は午後7時までとするほか、午後8時以降の不要不急の外出自粛を要請するよう求めたことを明らかにし、要請に応じた飲食店への支援を拡充する考えを示した。

 3日(日曜)は正月三が日の最後の日、人の動きが少ない。その裏をかいて新型コロナウィルスが増殖しているようでもある。

 4日(月曜)は仕事始め、午前の年頭挨拶のなかで菅首相は新型コロナウイルス対策で、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に特別措置法に基づく緊急事態宣言の発出を検討する考えを表明した。

 この中で、菅首相は「…先月の人出は多くの場所で減少したが、特に東京と近県の繁華街の夜の人出はあまり減っていなかった。経路不明の感染原因の多くは、飲食によるものと専門家が指摘しており、夜の会合を控え、飲食店の時間短縮にご協力いただくことが最も有効だ。このため1都3県について、改めて先般、時間短縮の20時までの前倒しを要請した」と述べ、そのうえで、東京、埼玉、千葉、神奈川は、感染者数が減少せず極めて高い水準にあり、より強いメッセージを出す必要があるとして、1都3県を対象に新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言を発出することを検討する考えを表明した。

 菅首相は、「…北海道や大阪など時間短縮を行った県は結果が出ている。東京と、いわゆる首都3県においては、三が日も感染者数が減少せずに極めて高い水準で、1都3県で全国の半分という結果が出ている。こうした状況を深刻に捉えて、より強いメッセージが必要であると考えた。政府として諮問委員会の考え方をうかがう。具体的にいつということよりも、まずは飲食に対する実効的な対策をこれから詰める、その中で表明したい」と述べた。

 また「…およそ1年の中で学んできて、どこが問題かということは、かなり明確になっている。その考え方からすれば、限定的に集中的に行うことが効果的だと思っている」と述べ、「給付金と罰則をセットにして、より実効的な対策をとるため、新型コロナウイルス対策の特別措置法の改正案を通常国会に提出する」と述べた。

 またワクチンについて、できるかぎり来月下旬までにワクチンの接種を開始できるよう、政府として準備を進めていく考えを表明し、「…感染対策の決め手となるワクチンについては当初、2月中に製薬会社の治験データがまとまるということだったが、日本政府から米国本社に強く要請し、今月中にまとまる予定だ。そのうえで安全性、有効性の審査を進め、承認されたワクチンをできるかぎり2月下旬までには接種を開始できるよう、政府一体となって準備を進めている」と述べた。そのうえで「まずは医療従事者、高齢者、高齢者施設の従業員の皆さんから順次開始をしたい。私も率先してワクチンの接種をする」と述べた。

 そして「飲食の感染リスクの軽減を実効的なものにするために、内容を早急に詰める。政府として、諮問委員会にかけさせていただいて、そこで考え方をうかがう」とした。緊急事態宣言の発出は、9日(土曜)から11日(成人の日)の3連休前が効果的であり、予告期間を配慮して、6日(水曜)か7日(木曜)と予想される。

 また菅首相は、変異した新型コロナウイルスが各国で確認されたことを踏まえ「外国人の新規入国を原則として拒否することにし、入国規制を強化する。ビジネス関係者の往来、いわゆるビジネストラックについても、相手国の国内で変異種が発見された際には、即時、停止することにする」と述べた。

 記者団が来週11日までを期限として全国一斉に停止している「Go Toトラベル」の再開について質問したのに対し、「…緊急事態宣言となれば、Go Toトラベルの再開はなかなか難しいのではないかと考えている」と述べた。

 また「…夏の東京オリンピック・パラリンピックは、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい。感染対策を万全なものとし、世界中に希望と勇気をお届けする大会を実現するという決意のもと、準備を進めていく」と述べた。

 5日(火曜)、全国の感染者が4907人と過去最多となり、東京都は大晦日の1337人についで2番目に多い1278人となった。重症患者は111人となり過去最多である。また神奈川県が622人、埼玉県が369人、千葉県が261人で、いずれも過去最多である。

 これを受けて分科会の尾身会長は、1都3県がステージ4相当の対策が必要な段階に達しているとし、緊急事態宣言下で実施すべき具体策として、飲食店の時短要請、不要不急の外出自粛、テレワークの徹底、イベント開催要件の強化等を求めた。

 同じ5日、菅首相は自民党役員会で「国民が、政府・与党にいちばん望んでいることは安心・希望だ。最優先はコロナ対策で、しっかり頑張ってまいりたい」とし、そのうえで明後日「7日の諮問委員会で方向性を出してほしいと思っている」と述べ、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に特別措置法に基づく緊急事態宣言をに出す方針を明らかにした。

 <限定的・集中的>を強調し、期間を1ヵ月とするようであるが、詳細を詰め切るのはギリギリの明後日7日晩までつづくはずである。<限定的>の代表例として、5日、萩生田文科相が小中高と大学の一斉休校をもとめない方針を正式に表明し、また16日からの大学入学共通テストも予定通り実施すると述べた。厚労省も保育所の休園を自治体に求めない方向で検討し、7日には方針を示す予定である。

 この日、文科省は2020年6月1日から12月31日までに児童生徒の感染が6100人であったこと、とりわけ直近1ヵ月で倍増し、感染経路は<家庭内>が最多の54%を占めたと、学校内での感染は小学校生6%、中学生11%、高校生28%であることを明らかにした。

 各自治体が主催する成人式(多くが11日の成人の日を予定)は、対応が分かれたが、東京23区では中止が多く、中止に代わる措置として動画配信等の工夫を施している。実施は新宿区ほか3区のみである。北海道は札幌、函館等で中止を決めた。函館市の関係者は「東京や札幌など感染が急拡大している地域から帰省する人が、感染を広げる可能性もある。苦渋の決断だった」と語る。

 一方、成人式を特別な節目と捉え、開催に踏み切る自治体もある。大阪市の松井市長は「一生に一度のこと。成人の日に思い出をつくれるようにしたい」と語り、現時点では規模を縮小した上で式典開催を目指す考えを表明した。また岡山市の大森市長も「コロナの中でも人生の思い出に残る式典にしたい」と意気込む。式典は屋外の陸上競技場で開催。座席は2席ずつ空け、ビデオメッセージなど「見て楽しめるイベント」を企画する。担当者は「成人式は旧友と再会し、過去を振り返り一歩踏み出す場だ」と強調する。

 成人式を中止した自治体では、これから晴れ着レンタルのキャンセル料等の補償問題が出てくる。政府による補助が必要であろう。

 6日(水曜)、緊急事態宣言の期間を1ヵ月とする案が先行したが、これには明白な根拠がないとして、宣言の解除には政府分科会が昨年に定めた4段階の感染状況のうち、もっとも深刻な<ステージ4>(=爆発的な感染拡大)を脱却することを条件とするむね事前に示す予定である。

 4つのステージを分けるのに次の6つの指標を掲げている。①病床使用率(%)、②療養者数(人)、③陽性率(%)、④1週間の感染者数(人)、⑤感染者数の前週比(倍)、⑥感染経路不明者の割合(%)。政府がもっとも重視しているのが、④の「直近1週間の人口10万人あたり新規感染者数25人以上」であり、ステージ3の<15人以上>を下回る必要がある。

 4日時点の④<人口10万人あたり新規感染者数>は、少数点以下四捨五入で、東京が46人、神奈川33人、埼玉24人、千葉24人であり、いずれも15人を大幅に上回る。これを1日平均の新規感染者数にすると約500人となり、前掲の<感染拡大状況>一覧と比べれば一目瞭然、半分以上に減らして追いつかない。なお愛知も19人、大阪も22人で15人を上回っているが、増加傾向が減少に転じたとして、知事は緊急事態宣言の対象とする要請を行っていない。

 同じ5日、日本相撲協会の芝田山広報部長(元横綱・大乃国)が電話取材に応じ、この日新型コロナウイルスの感染が確認された横綱・白鵬(35)=宮城野=について説明した。白鵬は3日に嗅覚異常を訴え、4日にPCR検査を実施、5日朝に陽性が確認された。芝田山部長は「今現在、発熱とかの連絡は入っていない。今後あるかもしれないけど、きのう臭覚異常ということで検査をした」と説明。白鵬は、保健所の指導のもと入院をするという。

 6日(水曜)午後、東京都の新規感染者が1591人、重症者が113人で、いずれも過去最多となった。重症者の増大は病院を直撃、医療崩壊の恐れが強まる。感染拡大を抑えるには、一人一人の行動変容をどう進めるか、そのためのメッセージを誰がどう発するかにかかっている。

【海外の感染状況と防止対策】
 30日のNHK Webによれば、変異した新型コロナウイルスの感染が拡大しているイギリスでは、1日あたりの新たな感染者数が30日、これまでで最も多かった前の日より1万人以上増えて5万人を超え、2日連続で過去最多を更新した。変異種の感染力の強さを示す数字なのか。病床が逼迫するのではないかと懸念が強まっている。

 30日、イギリス政府は、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンを承認したと発表した。このワクチンの承認は世界で初めてで、これで日本が供給を受ける予定の3種類のワクチンが、欧米で承認または許可を受けたことになる。接種の対象は18歳以上で、1回目の接種のあと、4週間から12週間の間隔をおいて2回目の接種を行うことになっているが、専門家による諮問委員会は2回接種するよりもまずはリスクの高い人々への1回目の接種を優先すべきだとしている。

 バイデン米次期大統領は30日(米東部時間で29日、以下、特記しないかぎり日本時間で表記)、新型コロナウイルス対策について、新政権では大統領の権限で民間企業に協力を求めるなどして、ワクチン供給を強化していく考えを示した。

 この中でバイデン氏は、今月中旬から始まったワクチンの接種について、「現在のペースを5倍か6倍に引き上げる必要がある」と述べ、来月20日の就任後100日間で、1億回分のワクチンを接種できるようにする考えを改めて示し、その実現のため、大統領の権限で民間企業に協力を求める「国防生産法」にもとづいて、ワクチンの原材料などの製造を加速させると表明した。またワクチンの安全性を広く呼びかける教育にも力を入れていくとしていて、29日、ハリス次期副大統領が(すでに接種を公開したバイデン氏についで)ワクチン接種の様子を公開した。

 4日、感染を抑制してきたタイのバンコックで昨年12月以降、感染者が急増したため、非常事態宣言を2月末まで延期するとし、5日から午後9時以降の夜間の外食を禁止した。

 5日未明(日本時間)、イギリスのジョンソン首相が演説し、イングランドで明日から3回目のロックダウン(都市封鎖)を行うと表明した。昨年3月と11月(12月上旬に解除)に次ぐ3回目となる。感染力が強いとされる変異種が猛威を振るっていることが背景にあり、1日あたりの新規感染者が5万人をこえる日が7日つづき、病床の逼迫が懸念される。スーパーを除く大半の店舗や飲食店の店内営業を禁止、学校は閉鎖してオンライン授業に切り替える。4日に英アストロゼネカのワクチン接種が始まったのが唯一の救いとの声がある。

【アメリカの政権移行】
 前稿(29)で書いたように、トランプ大統領は23日(水曜)のツイッターで、議会の与野党協同のコロナ対策法案9000億ドル(約93兆円)に対して突然、修正を求め、一人当たりの現金給付額を最大600ドルとする原案を2000ドルに引き上げるよう議会に求めるとし、もし原行案のままなら署名を拒否すると表明した。

 ところが27日夜(日本時間の28日朝)、トランプ大統領が一転して署名。法案が成立した。理由は不明。また93兆円の経済対策法案は2021会計年度(20年10月~21年9月)と一体で可決しており、トランプ大統領の署名により、26日に期限が切れた1200万人分の失業給付金を再延長するほか中小企業対策にも3250億ドル(約33兆円)を充てる。

 翌28日(日本時間の29日)、米下院で一人当たりの現金給付額を最大600ドルとする原案を2000ドルに引きあげる増額の単独法案を、民主党を中心に賛成275、反対134で可決した。うち共和党議員は賛成44、反対150と賛否が分かれた。上院は共和党が多数派であり、増額法案の通過のメドはたっていない。

 1月1日(日本時間の2日)、米上院はトランプ大統領(共和党)が拒否権を行使した2021会計年度(20年10月~21年9月)の国防予算の大枠を決める国防権限法案を3分の2以上の賛成で再可決した。下院は既に再可決しており、同法は成立した。

 3日(アメリカ東部時間、日本時間の4日)、アメリカ連邦議会の第117議会(会期2年)が3日開会し、昨年11月の選挙で民主党が過半数(民主党222、共和党211)を維持した下院は同党のナンシー・ペロシ氏(80)を再び議長に選出した。選出後に議場で行った演説では、新型コロナウイルスと経済悪化の二つの危機に触れ「我々は、過去の世代の指導者たちが直面したどの挑戦よりも困難な責任を引き受けることになる」と述べた。

 上院は議席が確定しておらず、多数派の行方は5日に実施される南部ジョージア州選挙区の二つの決選投票に左右される。定数100の上院は11月の選挙を経て共和党が50議席、民主系が48議席をそれぞれ確保している。両党が50議席を持つ場合は、上院議長を兼務する副大統領が決裁票を投じる決まりで、カマラ・ハリス氏が副大統領に就く民主党は、2議席伸ばせば上院の多数派を確保する。

 また新議会は6日、上下両院合同会議を開き、11月の大統領選の一般投票結果に基づき各州・特別区の選挙人が投票した結果を正式に確認する。通常は、大統領選結果を追認する手続きの一部に過ぎないが、今回は民主党のバイデン前副大統領の勝利を認めず、トランプ大統領と歩調を合わせる複数の共和党議員が両院で異議を申し立てる意向を示しており、異例の審議と採決が行われる予定。ただ、バイデン氏勝利の結果が覆る可能性は皆無に等しく、6日はトランプ氏側による最後の抵抗劇となる見込みと言われる。

 一方、ワシントン・ポスト紙は3日、トランプ氏が大統領選で自身が敗れたジョージア州の一般投票結果について、2日に同州の州務長官に電話し、再集計で逆転に必要な「1万1780票を見つける」よう迫ったとする会話の録音を公表した。1時間超にわたる会話の中でトランプ氏は「私が負けるはずがない」「再集計することは何の問題もない。君は共和党員だろう」といった発言を繰り返している。これが5日に実施される南部ジョージア州選挙区の決選投票にいかに影響するか。この決戦投票の結果が分かるまで数日を要すると言われる。

【新型コロナウィルス発生源の中国調査】
 5日、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が記者会見し、新型コロナウイルスの起源を調べるため中国に派遣した調査団が入国できないでいると明らかにした。必要な許可が得られないといい、事務局長は「大変失望している」と中国側の対応を批判した。

 調査団は、各国のウイルスや疫学の専門家らで構成し、「人の感染例が最初に見つかった場所」として、武漢での調査を予定。WHOによると、5日ごろからそれぞれ中国に向けて自国を出発するはずだったが、中国側の受け入れ手続きが完了していないと、同日判明したという。

 テドロス事務局長は「調査団はWHOにとって優先課題だと、中国高官に改めて伝えた」と述べた。WHO加盟国は昨年5月の年次総会で、中国への調査団派遣を決定。中国政府も協力する姿勢だったという。WHO緊急対応責任者のマイク・ライアン氏は「入国のビザに関する承認が得られていないようだ。お役所仕事的な業務上の問題で、早急に解決すると信じたい」と述べた。
 
 これに関連して思い出した記事がある。朝日デジタルの昨年12月10日の「コロナの起源-科学者たちの足跡」は、次のように述べている。「人類を新型コロナウイルスが襲った今年、その遺伝子配列と96%一致するとして世界各地の科学者の注目を集めたウイルスが、7年前にこの中国雲南省の山奥で見つかった。そのウイルスの名は「RaTG13」。新型コロナウイルスの近縁種が発見されたのは、どんな場所なのか。たどってみることにした。まず訪ねたのは、省都の昆明市から300キロ南下したところにある「通関」という町だ。北回帰線を越えたすぐ先にあり、古くから茶を栽培している少数民族ハニ族が暮らす墨江ハニ族自治県に位置する。香辛料や野菜などを売る市場があり、街道沿いに雑貨店や鶏1匹を丸ごと煮込む鍋料理の店が並ぶ小さな町」。

 「町の名前<通関>は中国語で「トングアン」と読む。その英語表記の頭文字をあわせれば「TG」。RaTG13が発見された地域を示す「TG」だ。「Ra」はコウモリの一種、「13」は2013年に採取されたことを表している。このウイルスを見つけたのは、中国湖北省武漢にある中国科学院武漢ウイルス研究所のチーム。今年2月、英科学誌ネイチャーで新型コロナウイルスと「96%一致した」との研究結果を発表した。02~03年に中国を襲ったSARS(重症急性呼吸器症候群)の起源をたどる研究で中国各地を回る中で、採取したウイルスの一つだったという。」

 この間、次の録画を観ることができた。(1)BS1「週刊ワールドニュース 新型コロナに揺れる世界(12月21日~25日)」12月27日。(2)NHKスペシャル「謎の感染拡大~新型ウィルスの起源を追う~」27日。(3)BSテレビ東京「ニッポンを創った明治の三賢人~渋沢・岩崎・福沢にみる<革新力>」28日。(4)日本テレビ地デジドキュメント「シリーズCOVID-19 コロナ2020 抗」28日。(5)NHK時事公論クエスチョンタイム「アメリカ新政権でどうなる? 2021年の世界と日本」29日。(6)NHK総合「歴史発掘ミステリー 京都千年蔵<大原 勝林院>」29日。(7)TBS『報道の日 2020』「激動の21世紀~米中、そして日本」30日。(8)BS1「完全版 明治神宮 不思議の森(再)」1月2日。(9)BS1スペシャル「デジタルハンター~謎のネット調査集団を追う~」(再)2日。(10)NHK BS1「躍動する大自然 奇跡ストーリー「伊賀と甲賀 忍者を生んだ山野」(再)2日。(11)BS1スペシャル「もうひとつのショパンコンクール~日本人ピアノ調律師たちの闘い」3日。(12)NHK Eテレ「ズームバック×オチアイ 新春SP 2021 大回復(グレートリカバリー)への道」3日。(13)NHK BS1「クライメートジャスティス パリ“気候旋風”の舞台裏」3日。(14)NHK総合「日本最強の城スペシャル(7)」3日。(15)日本テレビ地デジドキュメント「シリーズCOVID-19 コロナ2020 祈」4日。
プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
前園長(2012年8月~2023年3月)

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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