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人類最強の敵=新型コロナウイルス(29)

 12月18日(金曜)に前稿(28)を掲載して以降、全国の感染拡大に歯止めがかからない。この日の午後3時、東京都の新規感染者が過去3番目(金曜日では過去最多)との速報が入り、晩には全国で2837人(うち重症者609人、死者48人)と発表された。

 新規感染者数は曜日ごとに増減があるため、<曜日最多>という表現が使われるようになり、23日(水曜)現在、9日連続で<曜日最多>となった。ところが翌24日(木曜)、全国で3740人、東京都が888人、神奈川県が495人、埼玉県が251人、千葉県が234人といずれも過去最多(あわせて9都道府県)となった。すさまじい増加であり、医療機関が年末年始を乗り切れるか危ぶまれている。

【感染拡大と抑止対策】
 これまで【国内のコロナ対策と経済活性化】として分析してきたが、14日(月曜)夕方、菅首相が<Go To トラベル>を突如として変更し、今月28日から年明けの1月11日までの間、全国一斉に一時停止すると発表した。それ以来、「コロナ対策と経済活性化」を両立させるという政策は一挙に後退し、感染拡大をいかに抑止するかが最大の課題となったため、節のタイトルを【感染拡大と抑止対策】に変更した。

 まず感染拡大がつづく状況を、新型コロナウィルスの新規感染者等の数として確認しよう。前者が全国の感染者(陽性者、カッコ内は重症者と死者)、後者が東京(カッコ内は重症者)。

18日(金曜)  2837人(609人、48人)と664人(66人)
19日(土曜)  2991人(598人、40人)と736人(62人)
20日(日曜)  2492人(593人、36人)と556人(66人)
21日(月曜)  1806人(603人、48人)と392人(63人)
22日(火曜)  2688人(620人、48人)と563人(64人)
23日(水曜)  3269人(619人、56人)と748人(69人)
24日(木曜)  3740人(644人、54人)と888人(73人)
25日(金曜)  3831人(644人、63人)と884人(81人)
26日(土曜)  3881人(654人、47人) と949人(81人)
27日(日曜)  2948人(654人、47人)と708人(82人)
28日(月曜)の午後3時、ふだんなら東京都の感染者の速報が入る時間であるが、もう年末年始の休日モードになったのか、テレビも新聞社のデジタルニュースも入らない。やむなく本稿も年末モードに入る。来年も連載<人類最強の敵=新型コロナウイルス>を止めるわけには行かない。

 12月21日(月曜)、感染力が強いとされる新型コロナ変異株の感染がイギリスで広がっていることを受けて、ヨーロッパをはじめ世界各国でイギリスからの旅客機の受け入れを停止するなど、影響がさらに広がっている。国立感染症研究所によると、日本国内ではこれまでのところ確認されていないというが、専門家は「いずれ国内に入ってくる前提で対策を考える必要がある」と話す。

 21日(月曜)、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会の四師会と四病院団体協議会、東京都医師会は新型コロナウイルス感染症の拡大で医療提供体制が逼迫していることを受け、<医療緊急事態宣言>を発して感染防止に全力を尽くすよう、政府をはじめ各方面に呼びかけた。

 22日(火曜)、厚労省に助言する専門家の会合が開かれ、全国の感染状況について北海道以外では明らかな減少が見られず、新たな地域での感染拡大も止まず、全国的に蔓延していると分析した。東京での感染の継続や大都市圏での拡大が周辺や地方での感染発生にも影響しているとして、大都市を抑えなければ、地方を抑えることも困難になると警告した。

 同じ日、東京都医師の尾崎治夫会長が記者会見を行い、感染者急増により医療崩壊の直前にあるとして<医療緊急事態宣言>を伝えた。21日の合同会見といい、医療を預かる現場責任者の悲痛な声に耳を傾けたい。ただし、本来なら政治の責任者である首相が先頭に立って国民に訴えるほど重大な問題である。にも拘わらず、その姿が見えない。これで暮れ正月を乗り越えられるのか。

 22日の記者会見で西村大臣は、新宿御苑や迎賓館等の国営の公園の休業期間を、今月26日(土曜)から来年1月11日(成人の日)まで延長すると述べた。

 23日(水曜)午後、加藤官房長官は、イギリスで感染力が強いとされる変異した新型コロナウイルスが広がっていることを受けて、24日以降、イギリスからの新規の入国を拒否するなど、入国制限を強化する新たな措置を実施すると明らかにした。イギリスからの新規の入国を拒否するほか、日本在住の日本人や外国人がイギリスに7日間以内の短期出張をした場合の帰国・入国の際、一定の条件のもとで免除している14日間の待機を改めて要請するとし、今月27日から、日本人の帰国者についても、出国前の72時間以内の検査の証明を求めるとした。

 同じ日、政府分科会(尾身会長)は東京都に対し、午後10時までの時短要請をさらに短縮するよう意見をまとめた。また感染拡大がつづく地域での大規模イベントの開催制限を強化する案が政府から示され、了承された。

 同じ23日、ワクチンについて、厚労省は①2021年2月下旬をめどに医療従事者、②3月下旬をめどに高齢者への接種を始める体制を確保し、その後③<基礎疾患>のある人などに優先して接種を行う方針をまとめた。

 この③<基礎疾患>を、ア)慢性の心臓病や腎臓病など、イ)呼吸器の疾患、ウ)がんなどの免疫機能が低下する病気、エ)睡眠時無呼吸症候群などで通院や入院をしていることを条件とする場合と、オ)肥満も含める方針で、対象は820万人にのぼる見通しである。

 同じ23日、小池都知事が自民党三役を訪問、現行の特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法、名称に注意)と感染症法の早期改正や水際対策の強化を要請、二階幹事長は「しっかり取り組んでいく」と応じた。法律改正については、緊急を要するもの、後手に回ることなく中長期を見通したもの、これら両面が求められる。参考になる一つが、25日(金曜)の朝日新聞デジタルの連載「新型コロナ1年 揺れる世界」の第3回「<まずは感染抑止>貫いた台湾 判断委ねる日本との差は」である。

 台湾では、過去の失策の経験(2003年のSARSに伴う混乱)を活かし、今回の防疫成功の理由を「初期段階で域内にウイルスを入れなかったことだ」と、当局に助言する専門家チームを率いる張上淳・台湾大副学長(感染症学)は話す。 この反省から2004年に伝染病予防法が改められ、緊急時に行政部門を横断する対策本部を設置できるようになった。

 対策本部には民間の不動産や医療関連物資を徴用できる権限もある。昨年12月31日、中国・武漢で原因不明の肺炎患者が出ているとの情報に、台湾当局は素早く武漢からの直行便の乗客への検疫を強化。2日後、当局から依頼された張氏は専門家らと必要な検査・隔離体制などを献策、すべて採り入れられたという。

 今年1月21日、台湾では初の感染に緊張が一気に高まり、薬局にはマスクを求めて人々が殺到、品不足で値段も高騰した。混乱の中で民間が動く。台南市のプログラマー呉展瑋さん(35)は2月1日、マスクを入手できない人が不満を訴えるネットの投稿を見て、徹夜でグーグルマップを使ったマスク供給地図を作った。マスクの在庫状況をサイトに入力すれば、閲覧者は購入可能な店を見つけられる仕組み。翌日、無料公開すると、閲覧数は半日で54万回に達した。

 この取り組みを知った唐鳳(オードリー・タン)デジタル担当相は当局のマスク供給計画を公開し、それを生かして地図を改良するようネット上で依頼。プログラマーたちが大挙して応じ、数日後には無料で使える地図が30種類以上ネット上に現れた。呉さんは「民間には危機の際に手を貸そうとする気持ちや、必要な能力を持つ人材がいる。行政が情報を開示し、民間に協力を求めたことで、人々も行政を信頼した」と言う。

 人口2350万の台湾の累計感染者は12月18日時点で759人(死者7人)に止まる。4月以降、感染者はいないが、外国人観光客の入境禁止を続ける。公共交通機関などではマスクの着用を義務化し違反者には罰金も科した。市民に不自由を強いる対策だが、10月の世論調査で蔡英文政権のコロナ対応への評価は100点満点で平均78・32点の高さである。

 中国のように強権的な検査・隔離態勢で感染に臨む国がある一方、日本はハンセン病の患者を強制隔離し深刻な差別を生んだ歴史もあり、強制策に慎重である。現状では濃厚接触者の調査協力や外出制限を強制できる法律はない。政府が4月に出した緊急事態宣言は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいているが、同法では国民の自由と権利への制限は「必要最小限のものでなければならない」と定めている。

 対策への協力要請に応じるかが市民の判断に委ねられる手法について、東京大の広井悠准教授(都市防災)は、日本の防災対策とも共通点があると指摘する。例えば、台風被害が予見される地域住民への避難勧告・指示は強制ではない。「モラル依存の手法は防災目的の移動制限などでも使われる。リスクを認識、それを避ける行動が一人ひとりに求められる」という。

 こうした施策で春の「第1波」は収まり、当時の安倍晋三首相は、「日本モデルの力を示した」と誇った。市民が市民を監視する「自粛警察」や、過度な同調圧力もあった。都市封鎖に比べれば、個人の自由への制約が少なく、経済ダメージも少なく済んだとされる。

 しかし、現在の<第3波>では十分な効果は出ていない。政府の対策分科会の尾身会長は11日の会見で「多くの人々は行動自粛を求められることにへきえきしている」と焦りを見せた。政府の<Go To>事業で、感染対策のメッセージが伝わりにくくなったとの指摘もある。

 政府の対策分科会は、<Go Toトラベル>事業の見直しなどを繰り返し求めてきたが、政府は「感染拡大のエビデンス(証拠)はない」などと主張、対応は後手に回った。そしていま医療機関へ過大な負荷がかかり、病床数と医療従事者の両面で逼迫している。

 24日(木曜)、東京都のモニタリング会議の分析によると、23日までの1週間の都内の新規感染者は1日あたり616人で、前週の513人から大幅に増えた。このうち感染経路が特定できない感染者は1日あたり363人で、過去最多を更新、現在のペースがつづけば来年1月初旬には1日で558人の経路不明な感染者が出るとの試算が示された。

 小池知事は「年末年始はきわめて重要な時期。外出や忘年会、新年会への参加はぜひとも控えて」と呼びかけ、専門家は「年末年始にはさらに逼迫する。医療機関の深刻な機能不全や、保健所業務の大きな支障の発生が予想される」と指摘した。これは東京だけの問題ではなく、日本全体の問題であるにも関わらず、菅首相からメッセージが発せられない。

 25日(金曜)の閣議で政府は重い腰をあげ、感染者の入院受け入れ医療機関への緊急支援として、2020年度予備費2693億円を活用し、病床が逼迫している都道府県などでは、重症者病床1床につき1500万円を支援すると決定した。
同じ25日午後9時すぎから田村厚労大臣が記者会見し、イギリスから帰国した男女5人から変異したウイルスへの感染が確認されたと発表した。変異ウイルスへの感染者が国内で確認されたのは初めてである。

 26日(土曜)、都内に住む30代の男性と家族の20代の女性が変異種に感染していることが新たに確認された。空港の検疫所での検査以外で感染が確認されたのは、これが初めてである。男性は今月16日にイギリスから帰国したが、航空機のパイロットだったため検疫の対象ではなく、空港での検査は行われていなかった。家族の女性も変異したウイルスへの感染が確認され、いずれも都内の医療機関に入院している。

 同じ26日の朝日新聞デジタルの「変異種はどのくらい心配? 注目される二つの理由と対策」は、ウイルスのゲノム解析に詳しい東海大学の中川草(そう)講師のインタビューを掲載した。以下に主な論点を挙げる。
 
 「変異はウイルスが増えるとき、一定の割合でいつも起きているもので、多くの変異はウイルスにとって感染を広げるのに不利、もしくは有利でも不利でもない「中間的」なもので、変異そのものをそこまで心配する必要はない。今回は、英国政府がいち早く警戒を呼びかけたことで、変異したウイルスが他の国に拡散する前に気づくことができている。もし重症化に関係しないとしても、感染者が増えれば医療提供体制へのインパクトが大きいので、ここで食い止める必要がある。現状では、国内での感染例も数件で、封じ込められる可能性はある。」

 「新型コロナの遺伝子はRNAと呼ばれる物質でできており、4種類の塩基という化学物質が一列に並んだ構造をしていて、新型コロナのRNAは、全部で約3万個の塩基が並んでいる。ウイルスが増えるときにRNAもコピーされるが、その際、いくつかの塩基が別の種類に変わったり、抜け落ちたりする。コピーを間違えること、それが<変異>である。…今回の新型コロナのパンデミックでは、解析されたウイルスのゲノム(全遺伝情報)の報告が、世界中から、かつてないスピードで集まった。GISAIDというウイルスのゲノム情報を登録して共有する国際的なプラットフォームには、この1年で29万個を超える新型コロナのゲノム情報が登録されており、イギリスは多くのゲノム情報を提供する最大の貢献者でした。それらの情報を元に様々な研究がなされ、その中から、今回の警戒すべき変異が予想されていた。」

 同じ26日、都営地下鉄大江戸線の運転士21人が新型コロナに感染し(濃厚接触者を含む)自宅待機となったため、27日(日曜)から来月11日まで、運航本数を通常の7割程度まで減らすと発表した。なお都営地下鉄全線で大晦日から元旦にかけての終夜運行を取りやめることを18日に発表している。

 27日(日曜)の日経新聞朝刊のトップ見出しは「新規入国 全世界から停止 変異種対応 あすから来月末」で、政府の26日の発表を伝える。これまでイギリスと南アからの新規入国を止めており、それを世界すべての国・地域に拡大するもの。

 この日、都内で新たに708人(重症者は82人)の新規感染者(陽性者)を確認したと発表。1日の感染の確認が700人を超えるのは5日連続で、検査数の少ない日曜日の発表人数としては最多である。

 PCRの検査数が増えているため、感染者数の増加だけでは分からないことが多い。そこで都は、前日までの1週間に陽性と判明した人の平均を、前日までの1週間に検査した人の平均で割った数字を<陽性率>として公表している。26日公表された25日時点の陽性率は8.2%で、今年5月25日に緊急事態宣言が解除されて以降、最も高くなった。9月から10月にかけては3%台で推移、11月中旬に6%まで上昇、12月18日に7.0%と上昇していた。

 最近1週間の平均PCR検査人数は7681人であり、東京の昼間人口(1600万人弱)のうちの、ごくわずかにすぎない。この限られた検査人数から実際の感染者数の推移を推計するのに<陽性率>は重要なキーである。東邦大学の舘一博教授(日本感染症学会理事長)は、陽性率が上がっていることから、「…感染は市中のあらゆる場所に広がっているのではないか。陽性になっている人以外にも、感染している人が多くいる可能性も考えておかなければいけない」と話す。

 28日(月曜)、旅行代金の割り引きなどが受けられる<Go To トラベル>が、いよいよ今日から来年1月11日まで全国一斉に運用が停止される。日経新聞の世論調査では、停止を<妥当>とするものが67%、<不十分>が22%とあった。遅きに失した感があるが、感染拡大を抑えるのに役立つことを願っている。

 年末年始、今年はふだんと様相が違う、いや違わなければならない。さもないと感染を抑え込めず、医療機関が崩壊しかねない。それを直観した企業の約94%が忘年会や新年会の中止を決めているという。内閣府の調査で個人の7割以上が忘新年会を控えると回答した。

 その一方、政治家の忘年会の報道が相次ぐ。「…いや、忘年会ではない、重要な打ち合わせ…」と言い訳、あるいは擁護する発言があり、なかでも自民党重鎮の姿がなんとも情けない。折しも26日の日経新聞朝刊に「内閣支持率42%に急落、不支持が逆転」の記事があった。

【アメリカの政権移行】
 米大統領選の選挙人投票(12月14日)でバイデン氏が過半数(270人)を上回る選挙人306人を獲得(トランプ氏支持の選挙人は232人)し、大統領選の勝利が事実上確定した。次のプロセスは来年1月6日、上下両院合同会議の選挙人による各州の投票結果である。これにより次期大統領が正式に決まる。

 21日(月曜)、選挙人投票の結果を受けて、連邦議会では与野党(共和党と民主党)指導部が、追加のコロナ対策9000億ドル(約93兆円)を発動することで合意した。これは中小企業の雇用対策、家計支援、ワクチン普及に向けた資金を供給するもので、今年3月に発動したコロナ対策の期限切れを回避し、継続させるもの。

 こうして雇用維持策が失効する<財政の崖>をぎりぎりの土壇場で回避することができそうである。もし決まらなければ、年明けの1月にも500万世帯が住居を失うリスクがある。民主党のペロン下院議長は記者会見で、「今回の経済対策は第一歩。バイデン次期政権で追加対策を講じるだろう」と述べた。

 2日後の23日(水曜)、トランプ大統領はツイッターで、議会の与野党協同のコロナ対策法案に対して突然、修正を求め、一人当たりの現金給付額を最大600ドルとする原案に対して2000ドルに引き上げるよう議会に求めるとし、もし原行案のままなら署名を拒否すると表明した。

 この追加のコロナ対策は、議会の下院で359対53、上院で92対6の、いずれも3分の2以上の賛成多数で可決され、ムニューシン財務長官は22日に「超党派の可決を歓迎する」と述べていた。そこにトランプ大統領による突然の法案修正は議会にとって<寝耳に水>であり、事態は混沌としてきた。修正案の成立が来年にずれこめば、政府機関の一部閉鎖も余儀なくされる。

【世界的な感染拡大と抑止対策】
 イギリスで発見された新型コロナ変異種(株)により、国際的な人の移動に伴う措置が不可欠となった。

 19日(土曜)、イギリスのジョンソン首相は、急きょ記者会見を開き、「急拡大は変異したウイルスによって起きているとみられる。多くの不確定要素はあるが、従来よりも最大70%感染しやすいようだ」と述べ、ロンドンを含む南東部では、正当な理由がない限り外出を控えるよう求めること、生活必需品を販売する店を除いて、小売店は一部のサービスを除いて営業を行わないことなど、11月と同様の厳しい措置を12月20日から再び導入することを明らかにした。一方で、変異種のウイルスによって症状がより重くなる、あるいはワクチンが効きにくくなることを示す証拠はないとしている。

 イングランドでは、12月23日から5日間規制を緩和して、3世帯までであれば集まってクリスマスを過ごすことを認める予定だったが、南東部では規制緩和が見送られ、ほかの地域でもクリスマスの1日のみに限定するとした。首相は「誰もが失望することはわかっている。首相としてほかに道はない」と述べ、理解を求めた。野党などからは遅すぎるという声もあがっている。

 20日(日曜)、イギリス政府はウイルスの遺伝情報を調べた結果を明らかにした。変異種は9月に出現し、11月半ばまでは市中での広がりは少なかった。11月後半にロックダウン(都市封鎖)を導入したにもかかわらず、ロンドン南東のケント州で感染率が下がらなかったことから保健当局が調査。変異種による感染例が増えていたことが明らかになった。その後、この変異種がロンドンや周辺地域で広がっていることを突き止めたという。欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、変異種がすでに英国以外にも広がっている可能性があるとしている。

 20日(日曜)、欧州では、ドイツ、イタリア、オランダなど各国がイギリスからの旅客機の受け入れを停止する措置を決めたほか、フランスやベルギーは鉄道やフェリーの受け入れも停止するとしている。欧州以外でもイランがイギリスへの国際線を2週間停止するとしたほか、ロイター通信によると、南米のアルゼンチンとチリも、イギリスとの間の国際線を停止すると発表した。

 香港は、12月22日から当面、14日以内にイギリスに2時間以上、滞在したことのある人を対象に香港に入ることを禁止した。インド政府も12月21日、イギリスとの間を結ぶ国際線の運航を12月22日から12月31日まで停止すると発表した。

 同じ20日、イタリア保健省は数日前に英国から航空便でローマに到着した乗客から変異種が見つかったため、隔離したと発表した。世界保健機関(WHO)によると、英国と同じ変異種がデンマークで9件、オランダ、豪州で1件ずつ確認されたという。従来より重症化しやすいという証拠は見つかっていないという。

【ワクチン開発と接種】
 NHK特設サイト<新型コロナウィルス>の12月18日号に次の3本の記事がある。(1)「米ファイザーコロナワクチン 日本での<特例承認>求める」、(2)「ファイザーコロナワクチン 日本で承認申請 早ければ2月に結論」、(3)「新型コロナワクチン 2月下旬の接種開始の準備指示 厚労省」。

 12月18日(金曜)、ファイザー社は日本国内での使用に向け、厚労省に承認の申請を行った。国内で新型コロナウイルスのワクチンの承認申請が行われるのは初めて、審査手続きを大幅に簡略化する<特例承認>の適用を目指している。
 <特例承認>とは、通常、1年程度かかる医薬品の審査手続きを大幅に簡略化して早期に承認する制度である。2009年に新型インフルエンザが流行した際に初めて適用され、2種類のワクチンが申請から約3か月で承認、また今年5月には新型コロナウイルス治療薬レムデシビルに適用、申請から3日で承認された。
 <特例承認>を適用するには、①病気の蔓延を防ぐために緊急に使用する必要があること、②代わりの医薬品がないこと、③アメリカやイギリスなど日本と同じ水準の承認制度がある国で承認されていること等すべて満たすのが条件になる。

 ファイザーの日本法人は、「このたびの申請は科学的に厳格で高い倫理に基づく研究開発から得られたデータに基づいており、承認が得られた際は速やかに日本の皆様にもワクチンをお届けし、社会生活正常化の一助として貢献してまいります」とコメント。

 田村厚生労働大臣は、記者会見で「有効性や安全性をしっかりと審査した上で判断していく。アメリカでは緊急使用許可が出たという話もある中、わが国としてどうするかは、しっかりとデータを見た上でとなる。最優先の課題なので、最優先で審査をしていく」と述べた。

 一方で副反応が懸念されていることについて、「接種が始まっている海外の情報をしっかり収集し、審査の中の1つのデータとして分析していきたい。ワクチン全般において、すごくまれにアレルギー反応はあるわけなので、そういうことも踏まえて、しっかり審査をしていく」と述べる。

 ファイザーは、日本国内でも160人を対象に免疫の働きや安全性を確認する初期段階の臨床試験を進めているが、今回の承認申請は、国内で医薬品の審査を行うPMDA=医薬品医療機器総合機構と相談した上で、海外での大規模な臨床試験の結果をもとに行ったという。PMDAは2020年9月、新型コロナウイルスのワクチンを審査する際の考え方を公表した。

 それによると、有効性を評価するために、(1)ウイルスを攻撃する抗体ができることを確認するだけでなく、ウイルスを排除する免疫の細胞の働きについても解析することを求め、(2)その上で、臨床試験でワクチンを投与するグループとワクチンに似せた偽の薬(<偽薬>)を投与するグループに分けて比較することで、発症予防効果を確認する必要があるとしている。

 また、安全性については、(1)臨床試験でワクチンを投与してから少なくとも7日目までと28日目までに体に異常が出ないか確認すること、(2)投与後少なくとも1年間は健康状態の確認を続けることなどが必要だとしている。一方で、海外で大規模な臨床試験が行われ、予防効果が確認されているワクチンについては、国内での臨床試験は免疫の働きの解析や安全性を確認するのみで十分な場合があるという。

 アメリカの製薬大手ファイザーが、国内で、新型コロナウイルスワクチンの承認を申請したことについて、ワクチン開発に詳しい東京大学医科学研究所の石井健教授は、日本人に接種して本当に大丈夫なのかは今後の議論だが、審査機関は急がば回れの考え方で、しっかり審査してほしい」と指摘した。「ワクチンはすぐに手に入るのかなどと期待する声がある一方で、開発のスピードが早すぎて危ないから打つのを待った方がいいという声も出ている。ワクチンで得られる利益とリスクについて、知っておくことが大切だ」と述べた。

 ファイザーが承認を申請したワクチンは、mRNAワクチンと呼ばれるこれまでになかった全く新しいタイプのワクチンで、ウイルスの遺伝情報を伝達する物質である。mRNAを人工的に作って注射で投与(接種)する。投与すると体の中で<スパイクたんぱく質>と呼ばれるウイルスの表面にある突起の部分が作られる。スパイクたんぱく質を目印に、免疫の働きによって新型コロナウイルスに対応する抗体が作られ、ウイルスが体内に侵入した際、抗体が攻撃して感染を防ぐ仕組みである。

 mRNAを医薬品に活用するアイデアはアメリカのウィスコンシン大学のグループが1990年に発表した論文で示され、当初は遺伝子治療の一環として研究されていたが、この数年、mRNAを生成する技術や安定させる技術などが進んだことで医薬品としての実用化に向けて注目が高まっていた。

 また、mRNAを使ったワクチンは、カギとなるmRNAを変えることでほかのウイルスにも応用することができるとみられ、ワクチンの考え方を大きく変える可能性があるとされる。

 一方で、mRNAワクチンをはじめ、新型コロナウイルスで開発が進む遺伝情報を使ったワクチンは、これまで実用化されたことのない全く新しい技術となることから、実際に多くの人に使用した場合の効果や副反応については慎重に判断する必要があるという指摘も出ている。

 アメリカの製薬大手ファイザーは、ドイツの企業ビオンテックとともに、mRNAを使った新型コロナウイルスのワクチン開発を進めてきた。なおトランプ政権が進めた新型コロナウイルスワクチンを早く供給するための開発計画、<ワープ・スピード作戦>からは一定の距離を置いて開発を進めてきたとされる。

 ファイザーは、感染者が多いアメリカやブラジルなどで臨床試験を行い、11月には4万人を超える人を対象にした大規模な臨床試験で「90%を超える予防効果がある」とする暫定的な結果を発表した。この後に発表された詳しい結果を記した論文によると、(1)ワクチンを接種した2万人あまりのうち、接種後7日目以降に新型コロナウイルスに感染したのは8人であったが、(2)<偽薬>と呼ばれるワクチンに似せた偽の薬の接種を受けた2万人あまりでは162人が感染ということで、ワクチンによる予防効果は95%だとしている。

 こうした結果を受けて、12月2日に世界で初めてイギリスでワクチンが承認され、12月8日に接種が始まったほか、アメリカでも12月11日に緊急使用の許可が出され14日に接種が始まった。一方、副反応の報告も出ていて、(1)イギリスでは、2人が激しいアレルギー反応、「アナフィラキシー」のような症状を示したほか、(2)アメリカでもアラスカ州の医療従事者が「アナフィラキシー」のような症状を示したという。イギリスの2人は過去にアレルギー反応が出たことがあった一方、アメリカの医療従事者は過去にアレルギー反応が出たことがなかったという。

 イギリスの規制当局は、過去に同じような症状が出たことのある人は接種しないよう、予防的な措置としての勧告を出した。またアメリカCDC=疾病対策センターはワクチンに含まれる成分にアレルギー反応を示した経験がある人は、接種しないことなどを指示している。

 各国の保健当局によれば、米製薬大手ファイザーと独企業ビオンテックが開発したワクチンは、イギリス、バーレーン、カナダ、サウジアラビア、メキシコ、アメリカ、シンガポール、チリの少なくとも8ヵ国で承認、または緊急使用が許可された。

 このワクチンを開発した独企業ビオンテックについて、「世界が驚くワクチンのスピード開発 舞台裏に研究者夫妻」(19日の朝日新聞デジタル)は次のように伝えた。中国のチームが新型コロナウイルスのゲノム配列を発表したのが
1月。そこから1年足らずで、複数のワクチンの実用化にこぎつけた。過去、実用化まで最速だったワクチンは<おたふく風邪>とされるが、それでも4年を要しており、今回のスピードに世界が驚いている。

 国をあげた開発支援もあったが、ワクチン開発の技術革新の影響が大きい。米ファイザーと米モデルナは<RNA>と呼ばれるウイルスの遺伝物質を使ってワクチンをつくった。ウイルスの遺伝子配列さえわかれば、短期間で開発を進められる利点がある。

 注目を集めているのが、今回ファイザーと共同開発したドイツ地方都市マインツの企業ビオンテックである。12年前、トルコ出身の両親をもつ研究者
夫妻ウール・シャヒンさん(55)、エズレム・テュレジさん(53)が中心となっ
て創業した。医学部を卒業し、大学病院で出会った2人はいま、それぞれ最高経営責任者(CEO)、最高医療責任者に就く。

 当初の狙いはがん治療への応用だった。英紙フィナンシャル・タイムズなどによると1月、シャヒンさんは新型コロナの記事を読んですぐに大流行を予
測、ワクチン開発を決めた。ウイルスのゲノム配列が発表された2週間後には自宅のコンピューターで10種類のワクチン候補の設計を終了。インフルワクチンの開発で協力関係にあったファイザーに声をかけ、大規模治験や大量生産に道を開いた。

 RNAは壊れやすい物質で、高品質を安定して生産できるようになったのは最近のことという。「コロナの流行が3年早く起きていたら、開発ははるかに困難だっただろう」と、テュレジさんは同紙に語った。

 ワクチン開発での日本勢の動向を見ると、国産ワクチンはこれまでに2社が、実際に人に投与して安全性などを確認する臨床試験を始めている。このうち、大阪にあるバイオベンチャー企業のアンジェスは、国産ワクチンとしては最も早い6月に臨床試験を始め、12月には対象者を500人に増やして臨床試験を続けている。これは、ウイルスそのものではなく、遺伝子を使ったワクチンの一種、<DNAワクチン>で、投与して体内に抗体を作る仕組みである。

 また、大阪に本社がある製薬大手、塩野義製薬は12月16日、214人を対象に臨床試験を始めた。開発しているのは、<組み換えたんぱく質ワクチン>というタイプで、遺伝子組み換え技術を使ってウイルスのたんぱく質の一部だけを人工的に作って投与し、体の中で抗体を作り出す。

 ただ、日本で臨床試験を進める上では課題もある。日本は、欧米や南米等と比べて感染者数が少なく、臨床試験に参加した人が感染する可能性が低いため、ワクチンの効果を確かめるのは難しいとされる。また今後、海外メーカーのワクチンが国内で広く接種されるようになると、感染者の数がさらに減少し、多くの人が免疫を持ついわゆる<集団免疫>の状態に近づくなど、臨床試験で予防効果を確認する難しさが増すとの指摘もある。このため、国内で医薬品の審査を行うPMDA=医薬品医療機器総合機構は、少人数を対象に行う初期段階の臨床試験の後、海外で大規模な臨床試験を行うことも選択肢だとしている。

 このほか、臨床試験には至っていないものの国内でもさまざまなタイプのワクチンの開発が進められている。(1)ワクチンメーカーKMバイオロジクスによる新型コロナウイルスを無毒化して投与する<不活化ワクチン>、(2)製薬大手の第一三共による、ファイザーなどと同様の仕組みのmRNAワクチン、(3)バイオベンチャー企業IDファーマによる、ウイルスの遺伝子の一部を別の無害なウイルスに組み込んで投与する<ウイルスベクターワクチン>等である。なお日本の得意分野とされる治療薬の開発についても、いずれ取り上げたい。

 この間、次の録画を観ることができた。(1)NHKクローズアップ現代「家庭内感染急増 想定外リスク次々と 後遺症にも違いが」18日。(2)BS1スペシャル シリーズ コロナ危機「テレワークが変える<新しい経済>」19日。(3)NHK Eテレ「SWITCHインタビュー 達人たち 高橋一生×中村拓志」19日。(4)BS1 週刊ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(12月14日~18日)」20日。(5)BS1スペシャル「市民が見た世界のコロナショック 11月~12月編」20日。(6)NHKスペシャル「パンデミック 激動の世界6 “科学立国”再生への道」20日。(7)BSスペシャル「ヒューマニエンス 思春期 リスクテイクの人類戦略」21日。(8)NHK総合「2020挑戦 コロナ禍のRADIO 大学生のリアルを届けて」22日。(9)NHK総合「ファミリーヒストリー アンコール(元は2017年8月 オノ・ヨーコ&ジョン・レノン)23日。(10)BSプレミアム「ヒューマニエンス“目” 物も心も見抜くセンサー」24日。

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人類最強の敵=新型コロナウイルス(28)

 前稿(27)は、11月27日(金曜)から12月8日(火曜)までの13日間を取り扱い、12月9日(水曜)午後の段階までを記した。その時点では、「いつもの通り3時に東京都の新規感染者の速報値が入った。572人、うち65歳以上が103人で過去最多…」と述べた。その後、夕方に分かった全国の状況は2810人で過去最多を更新、その翌10日(木曜)は2972人と過去最多を更新しつづけている。

【国内のコロナ対策と経済活性化】
 新型コロナウィルスの新規感染者等の数である。前者が全国の感染者(陽性者、カッコ内は重症者と死者)、後者が東京(カッコ内は重症者)。
 9日(水曜)   2810人(555人、42人)と572人(59人)
 10日(木曜)  2972人(543人、26人)と455人(59人)
 11日(金曜)  2796人(554人、41人)と476人(67人)
 12日(土曜)  3041人(578人、28人)と481人(68人)
 13日(日曜)  2388人(583人、19人)と480人(70人)
 14日(月曜)  1681人(588人、47人)と305人(73人)
 15日(火曜)  2431人(592人、53人)と460人(78人)
 16日(水曜)  2993人(618人、53人)と678人(69人)
 17日(木曜)  3211人(605人、38人)と822人(66人)
 
 18日(金曜)の午後3時に東京都の数字が入った。新規感染者が664人(うち
重症者が66人)で過去3番目(金曜日では過去最多)、今週の合計は過去最多
となるのは明らかであろう。

 曜日により検査数が異なるため、感染者の増減を簡単には言えないが、確かなことは重症者の増加である。上掲表には示していない各大都市も似た状況にある。重症者の増加が病院を直撃し、病床と医療従事者と保健所を圧迫、加えて医療現場の半年以上にわたる疲労蓄積が深刻度を増している。

 感染拡大を抑えるため、短期間・集中的に行うとした<勝負の3週間>の対策期限が来週15日に迫る中、11日(金曜)には政府の分科会が開かれ、東京や大阪など感染が急拡大している地域で感染が高止まりの場合、また拡大が続いている場合は、引き続き<Go TOキャンペーン>の対象から除外する等の案が示された。

 専門家側が示したのは、<勝負の3週間>の期限をめどに、現在の対策の効果を分析する必要があるとして、感染が急拡大している<ステージ3>の地域での状況を、①<拡大が継続>、②<高止まりの状態>、③<減少>の3段階に分け、今後、政府や自治体が行うべき対策の指針とした。

 この中で①<拡大が継続>と②<高止まりの状態>には、(1)<Go Toキャンペーン>の対象から引き続き除外、(2)医療体制が逼迫している地域への医療スタッフ派遣、(3)医療機関への財政支援の強化などの対策を求めた。

 とくに①<拡大が継続>の場合は、緊急事態宣言を回避するため、より強い対策が求められるとしており、ア)飲食店への営業時間の短縮要請を強化、イ)県を越える移動の自粛、ウ)不要不急の外出自粛の要請が必要だとした。また②<高止まり>の場合は、ア)飲食店への営業時間の短縮要請を継続し、必要に応じて時間の前倒しや対象地域を拡大するほか、イ)感染予防を徹底できない場合には、社会経済圏を越えた移動の自粛要請が必要だとしている。

 同じ11日(金曜)午後、分科会提言を受けた後のインターネット対談(ニコニコ生放送、TBS放映)で、菅首相はジャーナリスト鈴木哲夫氏に対し、視聴者から寄せられた質問に答えた。まず「…ガースーで~す…」とご機嫌の一声。だが肝心の<Go TOキャンペーン>の一時停止については、「まだそこまで考えていません」とそっけなく答える。

 先に打ち出した追加経済対策には来年6月まで<Go TOキャンペーン>を延長と明記したため、いまさら引けないとも取れる。政府主導で<勝負の3週間>とした期限が迫るというのに、あまりにも無策である。<即断即決>、スピード重視と豪語していた菅首相への最後の期待が雲散霧消する。ある与党関係者は「進むも地獄、やめるも地獄」と指摘したと言う。

 13日(日曜)、政府の観光振興策<GoToトラベル>や酒類を提供する飲食店などへの時短要請について、国が東京都に求めた内容が明らかになった。都の今月17日までの短縮要請を、年明けの来月11日まで延長させるという。

 一方、<GoToトラベル>は、今月25日まで全世代を対象に都内を目的地とする旅行を一時停止とし、23区内を出発する旅行は利用自粛の呼びかけを求めたという。ただし、都は<GoToトラベル>の期間も時短要請と同じ来月11日までとし、対象も都内全域にするよう求めている。

 これについて小池都知事は「国の判断をお待ちするということであります。危機管理というのはできるだけ大きく構えるという、そういうことも必要になってくると思っています」と述べ、国と都の考え方の違いを浮き彫りにした。

 政府は東京以外に名古屋市についても、今月下旬まで<GoToトラベル>から一時除外する検討を進めており、除外期限を15日に迎える大阪市と札幌市については延長を念頭に、14日(月曜)夕方の対策本部会議で、菅総理が方向性を示す見通しである。

 政府の政策が国民に浸透せず、人出が減らない。時事通信はNTTドコモ<モバイル空間統計>が、13日(日曜)の都市部の主要駅や空港の人出が1週間前と比べて大きく減っていないと伝えた。JR東京駅(東京都千代田区)では、感染拡大前(今年1月18日~2月14日)の休日平均と比べて56.0%減であるが、1週間前の6日も拡大前の休日平均比56.6%減で、減少率はほぼ不変である。品川駅(港区)は13日が38.1%減で、6日は35.3%減。羽田空港(大田区)の第1ターミナルは13日が26.6%減、6日は28.7%減で、いずれも大きな変化はなかった。

 名古屋駅(名古屋市)、伊丹空港(大阪府)、博多駅(福岡市)でも同様の比較をしたが、13日と6日の減少率の差はわずか6.8~0.2ポイント、政府が感染抑止に協力を呼び掛けた<勝負の3週間>でも人の動きは抑制されていない。 

 14日(月曜)夕方、菅首相は<Go To トラベル>を突如として変更、今月28日から年明けの1月11日の間、全国一斉に一時停止する、また営業時間を短縮した飲食店や、コロナ対応にあたる医師・看護師への支援額をそれぞれ倍増すると表明した。

 首相は同日開かれた対策本部で、「年末年始にかけて、これ以上の感染拡大を食い止める」と強調。トラベル事業に関し、東京都と名古屋市については今月27日までの到着分を停止し、出発分は利用自粛を求める。さらに「最大限の対策」として、年末年始は全国一斉の一時停止に踏み切った。

 また、「営業時間の短縮機関のさらなる延長をお願いせざるを得ない」として、各都道府県知事が飲食店に支払う協力金に言及。年末年始の支援額の単価を倍増し、「最大で1カ月あたり120万円」を打ち出した。首相は国民に対し、「飲食は基本的な感染対策を徹底して、年末年始の帰省は慎重に検討して頂きたい」と述べる。

 この数日間(11日金曜~)で首相が従来の見解を一転させた背景には、まず各社の世論調査が影響していると言われる。それぞれの世論調査で違う数字が出るが、読売新聞の調査(毎月6日~8日に実施)は、菅政権の支持が61%(前回より8ポイント減)、不支持が27%(5ポイント増)である。ついで12日(土曜)の毎日新聞の世論調査では支持が40%(前回より17ポイント減)、不支持が49%(13ポイント増)と、初めて不支持が支持を上回った。

 14日発表のNHKの世論調査では、菅政権への支持が42%(前回より14ポイント減)、不支持が36%(17ポイント増)である。うちとくに関心の高い<Go Toトラベル>については、「続けるべき」が12%、「いったん停止すべき」が79%、「わからない、無回答」が9%であった。

 「いったん停止すべき」の79%の世論を、11日(金曜)の段階で菅首相は理解できていなかったようだが、その3日も後になって14日(月曜)の夕方、突然、全国一斉の一時停止(今月28日から年明けの1月11日の間)を下した。これほど民意(世論)が読めないとは、一国のリーダーの資質を問われかねない。

 官邸主導の制度導入には、官房長官時代の菅氏が大いに関わっている。上級官僚の人事権を官邸(内閣府人事課)に移すことにより、政治主導を実現するというのが大義名分であったが、この制度変更により官僚組織の内部にある豊富な知見とその提案力を削いでしまった。そのデメリットが、いみじくも表面化した。菅首相は、この点でもリーダーとしての責任を自覚すべきであろう。

 菅首相の方針転換の、もう1つの理由は、補正予算で<Go To トラベル>を6月まで延長したことを受けて、観光・旅行業者の側から、冬は一旦停止して、春から再開する方が実質的に役立つという意見が強くなったことが挙げられる。経済効果を受ける側からの苦渋の意見を読みそこなった。

 同じ日、東京都は都内の飲食店に11月28日から今月17日まで20日間にわたる短縮要請について、さらに来年1月11日まで25日間延長する方針を固めた。午後10時閉店は変更せず、全面的に協力した事業者に協力金を追加支給する見通し。年末年始のかき入れ時で影響は大きいが、国と協議の上、感染拡大の抑止に必要と判断したとみられる。

 16日(水曜)、政府が<勝負の3週間>と位置づけた期限の夜、菅首相は記者団に釈明した。「様々な対策を講じてきたが、先週末に3千人を超える感染者があり、高止まりの状況であり……。そうした状況を真摯(しんし)に受け止めている」。事実上の<敗戦の弁>とも言える。

 同じ16日の夜、首相官邸のエントランスホールで記者団の前に立った菅首相の面持ちは神妙であった。「国民の誤解を招くという意味では真摯(しんし)に反省している」。感染が急拡大する中、自民党の二階幹事長らと5人以上で会食したことが物議をかもした。14日の会食があったのは、首相が年末から全国一斉に停止することを唐突に表明した直後であった。観光支援策<Go To トラベル>といい、会食といい、軸はどこにあるのか。

 17日(木曜)、東京の新規感染者が822人と過去最多を更新し、同日の都の<モニタリング会議>において入院者数の高止まり等を受け、医療提供体制を4段階の警戒レベルで最も深刻な<逼迫している>(レベル4)に引き上げた。これは7月に現行指標を導入して以来初めてである。知事は「今こそ、命を守る観点から危機感を共有しないといけない」として、<年末年始コロナ特別警戒>を呼びかけた。

 18日(金曜)2時から記者発表した小池都知事は、都民に対して<年末年始コロナ特別警戒>を重ねて呼びかけた。また病床数の逼迫に備えて、増床を依頼すると同時に、コロナ感染者の65歳以上は入院とする従来の判断基準を見直し、70歳未満で基礎疾患や認知機能に問題のない場合は、ホテル等での宿泊療養とする方針に変更する。
 
【新型コロナ対策 外国の動き】
 世界の動きは必ずしも一様ではない。感染者と死者の最多は依然として超大国アメリカである。米ファイザー社と独ビオンテックが開発したワクチンの使用をイギリスについで認可し、14日(月曜)には全国に配送、実施に踏みきった。

 フランスは感染の再拡大を受けて、10月17日から首都パリなどで夜間外出を禁止、30日からは全国一律の外出制限を行っている。その矢先の17日(木曜)、マクロン大統領がコロナに感染し、7日間の自主隔離に入り、職務はつづける。世界の首脳では、イギリスのジョンソン首相、アメリカのトランプ大統領に次ぐ3人目。

 中欧オーストリアは、春先の感染拡大の第1波では、いち早く外出制限に踏み切り封じ込めに成功。その後、制限を段階的に緩和して経済活動の再開に道筋をつけ、その取り組みは<優等生>として評価されてきた。9月から<コロナ信号>という取り組みを始め、緑、黄、赤、オレンジと信号機のように感染リスクを示し、リスクに応じて、自治体ごとに柔軟な感染対策を行っている。

 9月上旬は<コロナ信号>の緑色の地域が目立っていたが、10月に入って感染は再び拡大し、10月下旬には1日の感染者が5000人を超えた。その結果、11月上旬、<コロナ信号>が<最も危険>を示す赤一色に全土が染まり、11月3日から2度目の外出制限となった。飲食店の店内営業の禁止(デリバリーなどは可)、観光目的のホテル営業の禁止、原則、夜間外出禁止などである。

 <音楽の都>ウィーンも大きく揺れている。9月からウィーン国立歌劇場でオペラが再開、多くの音楽家が活動を本格化させようとしていたところ、外出制限により11月は劇場や博物館は閉鎖され、コンサートなどイベントもすべて中止。そこに11月2日夜、治安の良さで知られるウィーンでテロが発生、大きな不安が広がる。

 アジアでは、感染の第1波、第2波を早期に抑止した韓国であったが、最近になり、とくにソウル首都圏を中心に感染が急拡大している。

【ワクチン接種の展開】
 新型コロナウィルスのワクチン接種に先鞭をつけたのはイギリスである。ジョンソン首相の積極的な推進策により、8日(火曜)から全国で米ファイザー社と独ビオンテックが開発したワクチンの一斉接種が始まった。アレルギー反応を示した人がいたが、大事には至っていない。21日間隔で1人2回接種する必要がある。

 ロシアも自国で開発したワクチンの接種を開始したが、プーチン大統領は自身が接種を受けることに消極的と言われる。中国でも自国で開発したワクチンの接種が始まった。

 アメリカでも前述のとおり12日、米食品医薬品局(FDA)が製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンの緊急使用を許可した。米国でのワクチンの使用許可は初めてである。24時間以内に全米各地に発送、14日にも医療従事者らに接種開始の方針。医療従事者と高齢者施設など長期療養施設の入所者を最優先する。

 バイデン氏はワクチン接種の有効性を強調して国民に呼びかけた。また前大統領のブッシュ氏、クリントン氏、オバマ氏がそろって、自身の接種をテレビ放映する準
備があると表明した。

 日本もファイザー社のワクチン1億2000万回分を来年6月末までに購入する契約を結んでおり、冷凍装置等の準備を始めたが、田村厚労相は10日の閉会中審査の衆院厚労委員会で「3月から接種開始か」の質問に対し、「予断をもって答えることはできない」と応じた。

 10日、厚労省は、英国アストラゼネカ社がワクチン開発に成功した場合、来年初頭から1億 2000 万回分(6000 万人分)のワクチンの供給(そのうち約 3000 万回分については第一四半期中に供給)を受ける契約を締結した、と発表。米モデルナ社のワクチンについては武田薬品による国内流通の下、来年上半期に4000万回分、来年第3四半期までに1000万回分の供給を受ける契約をした。

 世界各地でワクチン接種が進む中、11日(金曜)のTBSの<ひるおび>は特集<ワクチン開発200年>を組み、イギリス人外科医ジェンナー(Edward Jenner、1749~1823年)が天然痘の予防法として、それまで行われていた人痘接種法より安全性の高い種痘(牛痘接種)法を開発した約200年前の快挙を伝えた。

 ワクチン(Vakzinドイツ語)とは、ラテン語のvacca(牝牛)から出た語で、免疫原(抗原)として用いられる各種感染症状の弱毒菌、死菌または無毒化毒素を指す。ジェンナーは、乳搾りなど牛と接っして自然に牛痘にかかった人は、その後に天然痘にかからないという農民の言い伝えを基に研究を進め、1796年に牛痘接種法(種痘法)を開発した。その後ワクチンは改良されて世界で使われ、およそ200年後の1980年、天然痘は根絶が宣言された。

 現段階の<人類最強の敵>は<新型コロナウィルス>である。だが、やがてその正体が解明され、ワクチンと治療薬の効果が奏功すれば、<人類最強の敵>に勝つことになるが、どれほどの時間と努力が必要であろうか。

 13日(日曜)のTBS Newsによれば、南米ペルーの保健当局は、中国の製薬会社<シノファーム>が開発したワクチンの治験を中止したと発表した。およそ1万2000人が参加する治験が進行中で、数日以内にも完了する予定であった。このワクチンをめぐってはUAE=アラブ首長国連邦が今月、86%の有効性が確認できたと発表している。

 16日(水曜)、米国FDA(食品医薬局)は米バイオ製薬モデルナの予防効果について「緊急使用許可の承認に求める基準を満たす」とし、安全性については「緊急使用許可の承認を妨げるような安全上の懸念は特定できない」と評価し、600万回分のワクチンを3200か所以上に出荷する予定と伝えた。14日から接種が始まったファイザー製のワクチンに次いで2例目となる。

 同じ日、EUで医療品を審査するEMA(欧州医薬品庁)は、米ファイザーと独ビオンテックの共同開発ワクチンの承認を(29日予定)から21日に前倒しした。加盟27カ国で一斉に年内に接種が始まると言われる。イギリスについでカナダ、アメリカ、EUと、世界が一斉にワクチン接種へと動き出した。またインドが開発中のワクチンは、種類も量も膨大で、主に途上国の市場を狙っているという。

 18日(金曜)、日本でも米ファイザー社がワクチンの特例認可を申請、田村厚労大臣は速やか審査を行うとし、早ければ2021年2月中にも結論が出る見通し。

【アメリカの政権移行】
 これまで【米大統領選】と題して、(23)から(27)まで計6回にわたり連載してきたが、今回から題名を【アメリカの政権移行】と変えて継続する。

 12月9日(水曜)、ペンシルベニア州の投票結果を巡り、米連邦最高裁は同州の投票結果確定を差し止めるよう求めた共和党のトランプ大統領陣営の訴えを退けた。共和党下院議員ら原告は、新型コロナウイルスの影響で利用が急拡大した郵便投票を「違憲」と主張する訴訟を州最高裁に起こしたが、「郵便投票は1年以上前に州法で施行されている」と却下され、連邦最高裁に上訴していた。連邦最高裁は「申請を退ける」とだけ述べた。同州は既にバイデン氏勝利の結果を確定し、連邦議会に通知している。

 10日(木曜)、テキサス州のパクストン司法長官(共和)が大統領選の手続きに不当な変更を加えたとして激戦4州を連邦最高裁に提訴した裁判に、ミズーリ州のほか計17州が追随する方針を表明した。ミズーリ州のシュミット司法長官(共和党)が主導して提出された文書によると、各州の弁護士は連邦最高裁に対し、テキサス州の訴訟内容を吟味するよう要請したが、11日(金曜)、連邦最高裁判所は、テキサス州司法長官らの訴えを、原告適格なしとして退けた。トランプ大統領の法廷闘争は潰えたと言える。来る14日(アメリカ時間)が選挙人投票の日である。

 同じ10日、ロイター通信は、米国の新型コロナウイルスによる1日当たりの死者が初めて3000人を突破した、と伝えた。またアザー厚生長官はCNNとのインタビューでバイデン次期米大統領の政権移行チームと会合したことを明らかにし、「完全かつ協力的、プロとしての政権移行を確実にする」と言明、「米国民を守る上で失策がないよう必要なことを全て行う」と語った。

 同じ10日、バイデン氏は先月30日にジェン・サキ氏を大統領報道官に起用、12月1日には財務長官にジャネット・イエレンFRB前議長(74歳)を、7日には厚生長官にハビエル・ベセラ氏を指名すると発表した。それにつづいて次々と主要人事を発表した。(1)ホワイトハウスで内政を統括する国内政策会議(DPC)の委員長にスーザン・ライス氏(女性)を、(2)米通商代表部(USTR)代表に議会法律顧問のキャサリン・タイ氏(女性)を、(3)退役軍人長官にデニス・マクドノー氏を、(4)農務長官にトム・ビルサック氏を、(5)住宅都市開発長官にマルシア・ファッジ下院議員(黒人女性)を起用する。

 うちRCEPやFTA等の多国間通商条約を担当する米通商代表部代表のキャサリン・タイ弁護士は台湾出身の両親のもと米国で生まれ、名門校シドウェル・フレンズ・スクールを卒業、エール大とハーバード法科大学院で学んだ。現在は下院歳入委員会で貿易担当の法律顧問を務める。中国通の実務家を貿易交渉の責任者にあて、知的財産や補助金など構造問題で中国に是正を迫る。

 なおバイデン氏が9日(水曜)に初の黒人として国防長官に指名したオースティン氏はすんなり議会で承認を得られるか、問題が残る。<文民統制>を維持するため、「退役将校は7年間、国防総省の要職に就くことができない」と法律で決めているが、オースティン氏は退役から4年しか経っておらず、就任には議会で<特例>を認める必要がある。

 過去に<特例>として認められたのは、第2次世界大戦で陸軍参謀総長を務め、1950年に国防長官となったマーシャル元帥と、トランプ政権で17年に同長官に就任したマティス元中央軍司令官(元海兵隊大将)の2名である。民主党にも否定的な意見があり、「文民のための役職に、またも退役将校を起用するのは適切ではない」(民主党スロトキン下院議員)とし、マティス氏の特例に反対した民主党のウォーレン上院議員らは今回も同じ姿勢である。

 13日(日曜)、時事通信は、連邦最高裁が前日12日に大統領選結果の確定阻止を求める訴えを却下したことを受け、トランプ米大統領は「最高裁は米史上最大の不正投票に全く関心を示していない」とツイッターで批判、また「最高裁が気にしているのは、訴えを起こす当事者適格があるかどうかということだけで、このことが大統領本人による提訴を困難にしている」とも主張した。

 トランプ(大統領選)候補者に「訴えを起こす当事者適格がない」とする連邦最高裁の見解は正しい判断であると私は思う。なぜならトランプ候補者自身が利害当事者であるからである。

 さらにトランプ氏はツイッターで「恥ずべき司法の失敗だ。国民は裏切られ、米国は汚名を着せられた」と怒りをぶちまけた。大統領選での大規模な不正を否定して以降、関係が悪化しているバー司法長官についても「大きく失望した」と投稿した。

 15日(火曜)朝、時事通信社はワシントン発で、14日、米大統領選の選挙人投票でバイデン氏(前副大統領)が過半数(270人)を上回る選挙人306人を獲得し、大統領選の勝利が事実上確定した、と伝えた。なおトランプ大統領支持の選挙人は232人である。次のステップは来年1月6日、上下両院合同会議で選挙人による各州の投票結果を集計し、次期大統領を正式に決定する。

 日米間に時差があり、また大統領選後の政権移行がスムーズに進行していることを示しているためか、米大統領選関連のニュースは解説欄に移し、15日(火曜)の日経新聞夕刊トップで本格的に取り上げ、16日(水曜)の朝刊でさらに詳細に報じた。なお15日の朝刊の1面トップは「Go To 全国一斉停止」であった。

 同じ15日の朝日新聞デジタルは、約11万人を対象としたAP通信の有権者調査から勝因を探り、何が決め手だったのかの分析結果を伝えた。一つのかぎは、前回の大統領選と比べた投票行動。

 4年前にトランプ氏に投票した有権者(全回答者の41%)のうち、バイデン氏を支持したのは6%。逆に、前回は民主党のクリントン氏に投票した有権者(同38%)で、トランプ氏に移ったのは3%にとどまった。また、前回は2大政党以外の候補に入れた有権者(同6%)の57%がバイデン氏を支持し、トランプ氏の28%の約倍だった。前回投票しなかった有権者(同15%)も56%がバイデン氏を支持し、やはりトランプ氏(41%)を上回っていた。

 住む地域による投票傾向の違いも大きい。米国では地方で共和党が、都市で民主党が優位になっており、その中間にある「サバーブ(郊外)」の票が選挙を左右する。今回、居住地を「郊外」とした有権者(同45%)のうち54%がバイデン氏を支持し、トランプ氏の44%を10ポイント上回った。前回の米メディアの出口調査ではトランプ氏が郊外票でクリントン氏を4ポイント上回っていたため、郊外の有権者が離反したといえる。

 居住区を「都市部」とした有権者(同20%)では、バイデン氏の65%がトランプ氏の33%を圧倒し、逆に「小さな町、地方」とした有権者(同35%)ではトランプ氏の60%がバイデン氏の38%を引き離した。

 今回の選挙の大きな争点は、新型コロナウイルスの対策であった。投票日時点の死者は世界最多の23万人超で、コロナ対策を重視する有権者はバイデン氏、経済対策を望む有権者はトランプ氏への支持が目立った。

 「米国が直面する最重要課題」を9項目から一つ選ぶ質問では、最も多い41%が「新型コロナ対策」を選び、このうち73%がバイデン氏を支持した。一方、2番目に多かった「経済と雇用」を選んだ28%のうち、81%がトランプ氏に投票していた。

 また米国が「間違った方向」に向かっていると答えた有権者は60%に及び、うち79%がバイデン氏を支持、トランプ氏の18%を引き離した。「正しい方向」とした有権者は39%で、その91%がトランプ氏を支持していた。

 黒人への差別を非難する「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動が続く中、人種差別をめぐる認識が投票行動に影響した可能性も浮き彫りになった。米社会における差別を「とても深刻」「いくらか深刻」と答えた有権者は計76%で、うち64%がバイデン氏を、34%がトランプ氏を支持した。一方、「そんなに深刻ではない」「全く深刻ではない」とした人は計24%。うち90%がトランプ氏を、8%がバイデン氏を支持していた。

 警察による人種差別が「とても深刻」「いくらか深刻」と答えた有権者は計70%で、うち68%がバイデン氏を、30%がトランプ氏を支持した。一方、「それほど深刻でない」「全く深刻でない」とした人は計27%。このうち90%がトランプ氏を、8%がバイデン氏を支持していた。

 16日(水曜)、バイデン次期大統領は運輸長官に候補指名を争ったブティジェッジ氏(38歳)を起用すると発表した。同じ日、米上院の共和党トップのマコネル院内総務がバイデン次期大統領に「祝意を表したい」と述べた。

【さし迫る大学入試】
 新型コロナウィルスの感染が拡大するなか、大学入試共通テスト(大学入試センター試験の後継制度)の実施(本試験・第1日程は1月16、17日)まで、あと1ヵ月を切った。出願者は全国で約53万5000人にのぼり、国公私立大学866校が利用する。試験会場となる大学大教室での実施に大学側担当者(大部分が教員)が十分に対応し切れるかが気にかかる。

 試験会場でのマスク着用、会話禁止のほか、試験当日の7日前から体調管理を徹底し、当日朝にも必ず検温、体調が悪ければ申し出て他の予備日に替える。その予備日として第2日程(1月30,31日)と特例追試(2月13、14日)を設けた。個別入試に替えて、この共通テストを使う大学があり、その成功にかける願いは強い。

【はやぶさ2の試料分析】
 14日(月曜)、<サンプル・リターン>を見事に成功させたJAXAは「カプセル内のガスは宇宙由来のもの」と発表、翌15日には、これが「りゅうぐうの試料から放出されたものと確認」したと発表した。また「カプセル内に黒い砂があった」とも発表、それは「はやぶさ2が2019年2月のりゅうぐうへの1回目の着陸で採取した砂が目で見て分かるほど大量にあり、…りゅうぐうの表面と似た黒い色で、数ミリサイズの比較的大きな粒子も多い」という。

 2019年7月の2回目の着陸で採取した地中の砂などが入った容器を開けるのは2021年に入ってからになる。JAXAは採取した砂のカタログ作成を進め、試料の詳細な分析は来年夏ごろから始まる予定という。はやぶさ2の科学責任者を務める渡辺誠一郎名古屋大学教授は、粒子の隙間の構造や有機物と鉱物が結合している状態など幅広い分析が可能になる、と話す。生命の起源解明への期待大!

 この間、以下のテレビ特集を録画で観た。
(1)NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」5日。(2)NHKスペシャル「パンデミック 激動の世界5 コロナ禍 米中“冷戦”」6日。(3)BSスペシャル「大水害 メガシティを襲う洪水・高潮の脅威2019」8日。(4)NHK総合 逆転人生「史上最大の番狂わせ 逆転トライを生んだ立て役者」(再)12日。(5)BS1週刊ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(12月7日~11日」14日。(6)NHKプロフェッショナル「限りない探求心が謎を解く~文化財復元・馬場良治~」(再)15日。

人類最強の敵=新型コロナウイルス(27)

 11月27日(金曜)午後、本ブログ前稿(26)において東京で新たに570人が感染、過去最多を更新との速報ありと書いた。その日遅く全国の数字が入り、新規感染者が2531人、うち重症者が435人で、こちらも過去最多を更新した。

【国内のコロナ対策と経済活性化】
本ブログ前号(26)に掲げて以降、新型コロナウィルス感染症の重症者が全国で急増している。前者が全国の感染者(陽性者、カッコ内は重症者と死者)、後者が東京(同左)である。全国の感染死者数が増えており、今回から示すこととした。
 11月27日(金曜)  2531人(435人、31人)と570人(61人)
    28日(土曜)   2681人(440人、14人)と561人(67人)
    29日(日曜)   2065人(462人、16人)と418人(67人)
    30日(月曜)   1439人(472人、26人)と311人(70人)
 12月1日(火曜)    2030人(493人、41人)と372人(62人)
     2日(水曜)    2434人(488人、37人)と500人(59人)
     3日(木曜)    2518人(497人、36人)と533人(54人)
     4日(金曜)    2391人(505人、45人)と449人(53人)
     5日(土曜)    2508人(520人、22人)と584人(55人)
     6日(日曜)    2025人(519人、31人)と327人(54人)
     7日(月曜)    1522人(530人、39人)と299人(55人)
     8日(火曜)    2174人(536人、47人)と352人(60人)
     9日(水曜)、いつもの通り3時に東京都の新規感染者の速報値が入った。
              572人、うち65歳以上が103人で過去最多である。

 東京都は11月25日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、28日から12月17日までの20日間、都内で酒類を提供する飲食店などに営業時間を午後10時までに短縮するよう要請と発表、全面的に応じた中小事業者には一律40万円の協力金を支給する。経済活動が活発になる年末年始を前に、<短期集中>で対策を講じる必要ありと判断した。今春の<第1波>に見舞われた緊急事態宣言中、<第2波>の8~9月に続き3回目の時短要請である。

 一方、都は政府の旅行需要喚起策「GoToトラベル」で、都内が目的地の旅行は制度適用の一時停止を求めない方針も明らかにした。政府は地元知事の要請で、大阪市と札幌市を目的地とする旅行予約は適用の一時停止を決めたが、両市から出発する住民の割引利用は認める。小池都知事は25日の臨時記者会見で、「GoTo」の運用見直しは感染拡大地域からの旅行が対象になっていないとし「全国的な視点から国が判断を行うということが筋ではないか」と指摘した。

 外食需要喚起策「GoToイート」は、11月27日から12月17日まで、都内で食事券の新規発行の一時停止や発行済みのプレミアム食事券・ポイントの利用を控えるよう求めた。都が都民向けに「トラベル」に上乗せしている旅費助成も28日~12月17日、新規販売を停止する。予約済みの分は利用可能で、キャンセル料はない。 都はこの日、都民に不要不急の外出自粛を要請、中小企業に対する換気設備設置への助成を拡大すること等を公表、知事は「感染拡大を食い止め、都民の命を守る。都として<感染対策、短期集中>の覚悟で対策を講じていく」と語った。

 27日(金曜)の衆議院厚生労働委員会で政府の分科会の尾身会長は、「多くの人に分科会のメッセージに対して協力してもらい、個人の努力を十分にやってもらったが、ここまで来ると、個人の努力だけで、今の感染が拡大している状況を沈静化することはなかなか難しい。問題の核心は一般の医療との両立が難しくなっている状況であり、個人の努力だけに頼るステージはもう過ぎたと認識している」と述べたうえで、「今の局面で最も求められていることは、感染が急速に拡大しているスピードを少し下げること。営業時間の短縮や、感染拡大地域とそれ以外の地域での人の動きをなるべく控えてほしいと国や地方自治体が強いメッセージや方針を出しているが、すべての国民が同じ危機感を共有することが重要だ」と述べた。

 コロナ感染防止と経済活動の両立を菅首相は強調する。この経済活動を象徴するのが一連の<Go To>キャンペーン事業である。聞きなれない言葉だと感じたのはかなり以前であったが、改めて整理しておきたい。

 2020年4月7日、政府が事業規模108兆円におよぶ「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を実行するため、16兆8057億円にのぼる2020年度補正予算案を閣議決定、このうち約10%にあたる1兆6794億円が旅行・飲食・イベントなどの需要喚起事業としての<Go To キャンペーン>に充てるとした。

 キャンペーンは、(1)国内旅行の費用を補助する国土交通省(観光庁)所管の「Go To トラベル」(観光キャンペーン)、(2)飲食需要を喚起する農林水産省所管の「Go To Eat」(飲食キャンペーン)、(3)イベントなどのチケット代を補助する経済産業省所管の「Go To イベント」(エンターテイメントキャンペーン)、(4)商店街振興の「Go To 商店街」(地域振興キャンペーン)の4つで構成される。

 この「Go To キャンペーン」は安倍政権の今井尚哉・首相補佐官と新原浩朗・経産省経済産業政策局長が発案したとされるが、具体的な絵は内閣官房に電通から出向している職員に描かせたのであろう。持続化給付金事業にまつわるダミー法人疑惑を端緒に、電通への巧妙な事業丸投げシステムが露呈し、今井・新原コンビは動きがとれなくなった。

 そこで「Go To キャンペーン」の主導権を握ったのが菅・二階コンビだったと言われる。もともとこのキャンペーンはコロナ感染がおさまったあとの景気対策として浮上したもので、当初は8月中旬のスタートを予定していたが、<Go To トラベル>の開始日を7月22日に前倒しさせた。

 こうして動き出した<Go To キャンペーン>が経済再生のための<錦の御旗>となり、これと感染防止とのバランスをどう図るかが当面の課題とされるようになった。政府は経済再生の旗を降ろしたくないという理由から、<Go To キャンペーン>へのマイナス要因を可能なかぎり小さくしようと動いた。その分だけ対応が遅れ、社会へのメッセージ効果が薄くなった。

 これらを受けて、27日夕刻7時前、新型コロナウィルス対策本部で菅首相は、政府の<Go Toトラベル>事業の一部制限を新たに求めた。感染状況の深刻な札幌市と大阪市への到着分については21日に一時停止したが、それに加え両市からの出発についても控えるよう求めたもの。

 政府分科会(尾身会長)が25日にまとめた提言のなかで、「出発分についても検討すること」と求めていたが、それを受けて菅首相が27日に判断を下し、「感染拡大を何としても乗り越えながら国民の命と暮らしを守り抜くため、自治体と緊密に連携して、これらの対策に全力で当たってほしい」と述べた。なおキャンセル料の補塡については「利用者やホテル、旅館のご負担がないように措置をする」とした。科学者サイドの危機感表明の後から首相の判断が遅れてついてきている印象を受ける。遅きに失することのないよう政府の決断を期待する。

 12月2日(水曜)、横浜市立大学などの大規模調査で新型コロナウイルスへの感染を防ぐ<中和抗体>が半年後も体内に残っていることが分かったとNHKは伝えた。同研究グループ(研究責任者は同大のデータサイエンス研究科山中竹春教授)が、今年2月から5月に新型コロナウイルスに感染し、その後、回復した20代から70代の合わせて376人について調査した結果である。感染から半年後の血液を分析した結果、無症状者や軽症者は97%、中等症や重症者は100%の人で、体内に中和抗体が持続していることが分かった。

 感染してその後回復した人のほとんどは、感染を防ぐ抗体が少なくとも半年間は持続、再感染のリスクが低下するため、開発中のワクチンにも期待が持てる結果が出たとしている。<抗体>はウイルスに感染した人の体内にできるたんぱく質で、このうち<中和抗体>と呼ばれるものは、ウイルスの働きを抑え感染を防ぐ力があるとされている。数百人規模で回復者の中和抗体を調べる調査は国内では初めてであり、同研究グループは今後、1年を経た時点で抗体がどこまで持続しているかなど、さらに分析を進める。体内で抗体を作る開発中の「ワクチン」についても期待が持てる結果を得たとしている。
 
 同じ2日、<Go Toトラベル>の東京発着の旅行について、国と都は、65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人に自粛を呼びかけた。高齢者などの感染を抑え重症者の増加を食い止めたい都としては、事業の「停止」ではなく「自粛の呼びかけ」にとどめたことで、都民や事業者に一層の協力を求めたい考えだという。

 東京都の小池知事は、前日1日に菅総理大臣と会談し「Go Toトラベル」の東京発着の旅行について、65歳以上の高齢者と糖尿病など基礎疾患のある人に自粛を呼びかけることで合意した。呼びかけの期間について都は、酒を提供する飲食店などに午後10時までの営業時間の短縮を要請している12月17日までに合わせるよう国に求めている。

 都内では急速な感染の拡大に伴い、65歳以上の感染確認が11月は前の月のおよそ1.8倍に増えている。小池知事は「重症化しやすい高齢者が感染しないことにポイントを当てる」と述べ、重症者の増加を食い止めて医療の逼迫を防ぎたいという考えを示した。

 これについて、旅行会社の担当者からは対応の難しさやたびたび制度の運用が変わることへの困惑の声が聞かれる。都内の旅行会社の担当者は「すでに予約済みの客の住所は分かっても、複数の人たちで予約した場合、年齢は代表者しか把握していないケースもある」と話す。別の旅行会社の担当者は「65歳で線引きすることを客に納得してもらえる根拠がないと、現場の対応が難しい」と話す。

 また、自粛を求める対象に基礎疾患のある人が含まれていることについて、旅行会社の担当者は「客の個人情報に入りこむことなので、事業者が確認するのはハードルが高い」とし、旅行会社が確認する場合には手続きを定めたガイドラインが必要だと訴えている。「政府や東京都には旅行客の理解を得られる説明をしてほしい」という声もあがった。

 3日(木曜)、大阪府の吉村知事は記者会見し、重症患者が急増し、府内の医療体制が逼迫しているとして、「医療非常事態宣言」(独自基準「大阪モデル」で非常事態を示す「赤信号」)を出し、「感染の山は抑えられているかもしれないが重症者はあとから増えてくる。重症者が急に減ることはないが社会全体での陽性者を減らさないと重症者も減らない」と述べた。3日公表時点の重症者は136人で、確保できている206床に対する使用率は66・0%。基準に達していないが、「70%に達するのは、ほぼ間違いない」。すぐに患者を受け入れられる病床164床に限れば、82・9%となっていることへの危機感もある。

 知事は「全府民には、今から2020年12月15日までの2週間弱、できるかぎり不要不急の外出をお控えいただきたい。感染拡大を抑え、命を守るよう、ブレーキをかけるほうに協力いただきたい」として理解と協力を求めた。

 5日(土曜)、病院の逼迫状況を示す4都道府県の「新型コロナ重症者数と病床使用率」(4日時点)が発表された。東京都35.3%(150病床に対して重症者53人)、大阪府84,8%(病床数164に重症者139人)、愛知県38.6%(病床数70に重症者27人)、北海道14.3%(病床数182に重症者26人)であり、大阪府が突出している。

 本ブログ(26)時点では、感染拡大による入院患者の増加で病床は逼迫、全国平均で7.5%だった病床使用率は11月18日の時点で3倍近い22%に上昇した。とくに高い都道府県は、兵庫=44%、大阪=41%、北海道=38%、埼玉=37%、沖縄=35%、東京と愛知=33%であったのに比べ、急変ぶりが著しい。

 6日(日曜)、大阪府の吉村知事は、広く看護師を募集するとともに、防衛大臣に自衛隊の看護師(看護官)の派遣を要請した。

 8日(火曜)の臨時閣議で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた追加経済対策を決定した。金融機関の融資などを含む事業規模は73.6兆円で、このうち国・地方の歳出は32.3兆円とする。営業時短要請に応じた飲食店に対し、自治体が支払う協力金の財源となる「地方創生臨時交付金」を拡充。医療機関向けの「緊急包括支援交付金」の増額も盛り込み、感染防止に万全を期す姿勢を示した。この臨時閣議に先立つ経済財政諮問会議で菅首相は、対策の経済効果について「(実質)国内総生産(GDP)に換算して3.6%程度と見込んでいる」と説明した。

 同じ日、岸防衛相は鈴木北海道知事からの災害派遣要請を受け、北海道旭川市(2つの病院で集団感染が発生)に自衛隊(陸自北部方面隊)から看護官等10名を派遣する(期間は2週間)と発表、また大阪府が開設するコロナ重症センターにも看護官を派遣する準備を進めていると述べた。

 医療用の使い捨て手袋が不足している。今年春にはマスクやガウンなどの防護具の不足が問題となったが、今回は医療用の合成ゴム、ニトリルの手袋の不足である。全国の看護師を対象に調査したところ、不足しているか不足しつつあるという回答が約6割。国内で製造しても採算が合わないため、すべて提携先のマレーシアのメーカーから年間4億枚を仕入れてきた。感染拡大を受けて価格が以前の3倍から4倍に高騰し、今年3月以降注文した数の半分ほどしか入らなくなったという。医療現場や介護現場からは「不安というより恐怖を感じる」と声があがる。

【新型コロナ対策 外国の動き】
 欧米における感染拡大がとまらない。米西部のカリフォルニア州では7日(月曜)、前日より1万人増の3万5000人の新規感染者があり、過去最多を更新した。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によれば、世界の新規感染者(7日移動平均)は3日に初めて60万人を突破、1日あたりの死者も1万人を超え、最多を更新している。

 3日、バイデン氏はアメリカのテレビ局のインタビューに応じ、最優先課題に掲げる新型コロナウイルスへの対応について、「就任初日から人々に100日間、マスクをするよう求めるつもりだ。そうすれば感染は大幅に減少すると考えている」と述べ、来月、大統領に就任したあと、期限を設けて国民にマスクの着用を求める考えを示した。

 4日(金曜)、イギリスのジョンソン首相が米ファイザー社と独ビオンテックが開発したワクチンの一斉接種を直ちに始めると表明した。7日(月曜)、ベルギーの製薬拠点からマイナス70℃のドライアイスを詰めた箱に入れた状態でロンドンに到着、重点病院へ運ばれ、8日(火曜)から全国で接種が始まった。このワクチンは世界初の<mRNA>型(メッセンジャーRNA型)である。その接種に対して国民に根づよい反対論があるのも事実で、イギリスでは高齢者と医療従事者を優先して接種を進める方針という。エリザベス女王(94歳)も進んで接種を受ける。

 イギリスの大手調査会社「YouGov」が先月16日から19日にかけて、ロンドンで成人1048人を対象に、ワクチンが使えるようになった場合、接種したいか聞いたところ、「接種したい」が35%、「どちらかといえば接種したい」が23%で、あわせて6割近くが接種を望むと回答した。

 mRNAはたんぱく質を作る設計図として使われたあとは自然に壊れてしまうことや、投与しても細胞の「核」には入らず、ヒトの遺伝子とは混ざらないため安全性は高いと言われる。

 アメリカでもワクチンの接種が、早ければ今月10日にも始まる可能性が高まっているが、調査会社「ギャラップ」が今年10月から11月初めにかけて行った調査では、接種に賛成する人が58%で、42%が安全性への懸念などから反対すると回答し、慎重な意見も出ている。

 こうした中、バイデン氏は3日、アメリカのテレビ局のインタビューに対し「人々はワクチンに対する信頼を失っている。アメリカ国民に安全であるということを伝えることが重要だ」と述べ、当局によって安全性が確認された時点で、率先してワクチンを接種し、その様子を公開する考えを示した。

 また、トランプ政権のウイルス対策チームの中心メンバーであるファウチ博士について、新政権でも同じ立場で職務を続けるよう依頼したことも明らかにした。新型コロナウイルスへの対応をめぐって、経済活動の再開を急いできたトランプ大統領は、ファウチ博士との関係悪化が指摘されており、バイデン氏としては科学者の判断を重視した感染対策を進める方針を改めて示した形である。

 8日(火曜)の日経新聞によれば、欧州ではロックダウンに踏み切ったことが奏功、11月上旬からピークアウトして新規感染者が約3割減ったが、アメリカでは感染拡大により病床(とくに集中治療室)の逼迫が進み、集中治療室利用率が全米平均で60%、最悪状況のアラバマ州は87.7%となった。コロナ対策をトランプ政権がいかに軽視してきたかが分かる。

 世界の航空需要は回復が見通せず、航空会社も空港も苦境に立たされている。世界の空港管理者で構成する国際空港評議会(ACI)の推計によると、年末までに航空需要が回復し始めなければ欧州の193の空港が破綻する可能性があると報じられた(日経新聞11月29日)。

【大学入試の想定案】
 次世代の人材育成にかかわる大学入試は来年1月16、17日実施予定の大学入試共通テスト・本試験(第1日程)から始まる。30、31日に大学入試共通テスト・本試験(第2日程)を予定。あと1ヵ月少々の時間しかない。

 来年2月1日から私立大学の一般選抜が始まり、13、14日に共通テスト・特例追試、ついで25日から国公立大学の前期日程、3月12日から国公立大学の後期日程、22日から国立大学の追試とつづく。どの試験も実施できない可能性を排除できないものの、現時点では学力試験をとりやめる動きはほぼないという。

 海外でもコロナ感染の拡大により、今年秋の入学試験を大幅に変更して実施した。アメリカでは共通テストである<SAT>や<ACT>の中止・延期を決め、フランスは大学入学資格試験<バカロレア>の中止により、高校の内申点で合否を判定した。またイギリスも統一試験を中止して、高校の成績等を選抜に使用した。

 11月29日の日経新聞は、10月~11月に実施した有力大学154校の学長アンケートの結果を公表、うち3割弱の42校が感染拡大時に入試日程の延期等を視野に入れているとし、新型コロナウィルスの<第3波>が迫るなかで、各大学が頭を痛めている現状を報じた。個別大学の入試に替えて「共通テストの成績を学力試験の成績とする」と答えた大学が25校あるが、その共通テストの実施可能性には触れていない。より具体的な対策を図らなければならない。時間がない。

【続6 米大統領選】⇒<続報>~<続報3>は前々号(23)に、<続4>は(24)、<続5>は前々号(25)、<続5>は前号(26)にあり。

 11月27日(金曜。これまで通りすべて日本時間で示す)、トランプ大統領はホワイトハウスで記者団の「選挙人がバイデン氏を選んだ場合にホワイトハウスを去るか」の質問に対し、「きっとそうする」と答えた。一方、「今から(次期政権が発足する2021年)1月20日まで多くのことが起きると思う」とも強調。選挙人による投票(12月14日)後も選挙不正を主張して法廷闘争をつづける構えを見せた。

 29日(日曜)、トランプ大統領は大統領選で不正があったとして法廷闘争をつづけているが、FOXニュースの電話インタビューで「訴訟を連邦最高裁に持ち込むのはとても難しい」と語った。連邦最高裁は年間で数千を超える案件のうち数十件を厳選して審理するが、そのなかに入れるのは難しいとの弱気な判断と見られる。

 30日(月曜)、バイデン氏は、ジェン・サキ氏を大統領報道官に、ケイト・べディングフィールド氏をホワイトハウス広報部長に、エリザベス・アレキサンダー氏をバイデン夫人の広報部長に起用し、ほか4人の報道官を含めた政権広報部幹部の全員を女性で固めた。

 12月1日(火曜)、バイデン氏は次の財務長官にジャネット・イエレンFRB前議長(74歳)を指名すると発表、また歳出入の基本計画を策定する米行政管理予算局(OMB)局長に左派系シンクタンク<アメリカ進歩センター>のニーラ・タンデン所長を起用、さらにホワイトハウスのチーフエコノミストとなる米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長に米プリンストン大学のセシリア・ラウズ教授をあてる。日経新聞12月1日夕刊は「米経済再生 女性に託す」の表題でトップ記事に掲げた。

 同じ日、バイデン氏が犬の散歩中に右足甲を骨折したとのニュースが飛び込んできた。78歳になったばかりの高齢のため、全治数か月ではないかと言われる。幸いケガの部位が足であったため歩行に困難が生じるが、政治活動には支障がないと思われる。

 4日(金曜)、最大の選挙人数55人を要する西部カリフォルニア州はバイデン氏の勝利を公式に認定したと複数のメディアが報じた。同州はバイデン氏を支持する選挙人を指名する。これによりバイデン氏が306人(他の報道では279人)の選挙人を獲得、選挙人総数539人の過半数270人を獲得する見込みとなった。選挙人投票は12月14日に行われ、来年1月6日に連邦議会が招集、6日に連邦議会が投票結果を確認する。

 同じ4日、バイデン氏は演説で超党派グループによるコロナ対策費9000億ドル(約93兆円)の財政出動要請を支持し、「米景気は失速しつつあり、議会は救済策づくりで即座に行動が必要」と述べた。

 8日(火曜)、バイデン氏は国防長官にロイド・オースティン元陸軍大将(67歳)を起用する方針を固めた。議会が承認すれば、黒人初の国防長官となる。

【国際スポーツ大会の動向】
 4日(金曜)、橋本五輪相、小池都知事、組織委の森会長が会談、来夏に延期された東京五輪・パラリンピックで、延期に伴う費用や新型コロナウイルス対策にかかる追加経費2940億円についての国、都、大会組織委員会の分担額で合意した。追加経費の内訳は、延期に伴う人件費などの延期経費が1980億円、コロナ対策費が960億円。負担額は都が1200億円、組織委が1030億円、国が710億円となる。

 経費の総額でみると、都が7170億円、組織委が7060億円、国が2210億円を分担する。森会長は追加経費の規模について「きちんと理屈がついている。国民の皆さんにご理解を頂きたい」と述べた。3者によるコロナ対策の調整会議は、観客の入場制限を設けるかの判断を来春に先送りしている。観客席を間引けば、組織委が900億円を見込むチケット収入が減る可能性があるなど収入には不確定要素も残る。組織委は12月末に予算を更新する。

【新型コロナウィルスの発生源をめぐって】
 8日(火曜)は、2019年12月8日、湖北省武漢市で新型コロナウィルス感染が初めて認められてから1周年の日にあたる。その<発生源>をめぐり、中国では新しい報道が次々と発表された。新型コロナウィルスはブラジルからの輸入冷凍鶏肉がもたらしたとする、驚くべき新説である。

 ここまでの経過を見ると、WHOは武漢市の食肉市場で野生動物を介してヒトに感染したと認めており、また第三者による調査委員会の設置を中国政府に求めているが、中国から回答がない。また今年4月にオーストラリア政府も独立調査機関の設置を提案したが、これに対して中国政府は問題を貿易にすり替え、オーストラリア産牛肉の輸入を制限、大麦に追加関税を課す、露骨な対抗措置を講じた。

 トランプ米大統領は頻繁に「中国ウィルス」と述べて中国起源説を口にし、その発生をすぐ国際社会へ公開しなかったために世界に蔓延したと中国政府の態度を批判してきた。これら3者の発言意図は必ずしも同じではない。だが<人類最強の敵>の正体を解明するのには新型コロナウィルスの<発生源>を科学的に突き止めることが基本的前提となる。その現地調査を拒む中国政府の態度は、世界の常識に反し、強い糾弾を招きかねない。

【サンプル・リターンの快挙】
 今回の結びとして、コロナ禍を乗り越えJAXA(宇宙航空開発機構)が打ち上げた探査機<はやぶさ2>のカプセルがオーストラリア南部の砂漠に無事帰還、採取した試料(サンプルの回収(=サンプル・リターン)に成功した快挙に触れたい。

 プロジェクトマネジャーの津田雄一さん(45歳)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授、総合研究大学院大学准教授で、400人ものスタッフの能力を存分に発揮させる業師でもある。記者から「百点満点なら何点になるか」と問われ、笑顔で「1万点です」と答えていた。

 7日の時事通信が、はやぶさ2プロジェクトチームと津田さんをめぐる記事を載せたので、その一部を転載する。

 津田さんは若手メンバーとして初代はやぶさの運用に加わり、<はやぶさ2>では工学面の取りまとめ役に抜てき。打ち上げから4カ月後の2015年4月、39歳の若さでプロジェクトマネジャーに就任した。

 若返った<はやぶさ2>チームを引き継いだ津田さんは「指示を出して動いてもらうのではなく、議論しながら自己成長できるチーム」を目指した。小惑星<りゅうぐう>到着までの間、あらゆるトラブルを想定して訓練を繰り返し、「チームに一体感ができ、頭より手が動くようになった」と自信を深めた。

 18年6月、たどり着いたりゅうぐうは岩だらけで、安全に着陸できそうな場所はなかった。同10月に計画していた1回目の着陸も延期を余儀なくされ、「何もできずに帰還時期が来てしまうのでは」との不安がよぎった。

 正念場で生きたのが、訓練で培われた経験とチームワークであった。科学観測の担当者は、周囲の岩の大きさや高さから精密な3次元データを作成。エンジニアは化学エンジンの出力のばらつきを調べ直し、姿勢制御プログラムを設定し直した。「本当に着陸したいのか、というくらい意地悪な設定」(津田さん)で検討を重ね、不安要素を排除した。

 極め付きは、4カ月遅れでようやくこぎ着けた19年2月の1回目の着陸。小惑星りゅうぐうへの降下が中断するトラブルに見舞われた。普通なら、当日の着陸はあきらめる状況だったが、チームはプログラムを書き換えて2倍の速度で降下し、遅れを取り戻す方法を選択。同様のトラブルを想定した訓練の成果が発揮され、最終的には予定通り、約1メートルの誤差で着陸した。

 津田さんは「想定通りでは済まないと想像し、チームワークを磨いた。幸か不幸か、りゅうぐうは想像を超えて厳しかったが、訓練が役に立った」と話した。 

 以上が時事通信の記事(概要)である。もちろんプロジェクトチームだけの功績ではなく、多くの協力者の技能と努力の賜物でもある。例えばカプセルを安全かつ的確に目的地に着地させるためのパラシュートは藤倉航装(福島県)の努力と高い技術により作られた。世界の宇宙開発予算で日本は第5位、首位のアメリカの400億ドルの1割にも満たない。にもかかわらずの快挙である。

 8日(火曜)午前、カプセルは神奈川県相模原市のJAXAに到着、6年間にわたる52億キロの旅をしたカプセルに「おかえりなさい」の声がかけられた。この前日の7日、JAXAがカプセルの内部を確認するため現地に設置した施設に運び、揮発しやすいガスの組成を素早く調べている。地球由来の物質が混入していない限り、りゅうぐうの有機物を採取できた公算が大きい。

 世界に先駆けてカプセルから採取したガスや砂等の<玉手箱>を持ち帰ったこと(サンプル・リターン)の意義はきわめて大きい。この試料の分析を通じて、46億年前に誕生した太陽系の起源と<生命の起源>に迫り、とくにく水の起源>と<有機物(生命)の起源>を解明する有効な手段となる。彗星が水の起源とされた従来の見方が後退した現在、最有力な仮説を実証できる。NHKクローズアップ現代+「【はやぶさ2】秘話 NASAが学ぶ日本流逆転の発想がカギ」12月8日参照。

 小惑星りゅうぐうで採取した試料を送り届けた<はやぶさ2>は、休む間もなく、次の11年にわたる新たなミッションに向かった。<はやぶさ2 特設サイト 「生命の起源を探れ」>には、「はやぶさ2は燃料がおよそ半分程度、残っていることから、カプセルを切り離した後、新たに別の小惑星を目指すことになっています」とある。

第68回 全国博物館大会

 2020年11月25日(水曜)と26日(木曜)の2日間、横浜市開港記念会館において、公益財団法人日本博物館協会(以下、日博協)主催、神奈川県博物館協会(以下、県博協)共催による第68回全国博物館大会が、「変化の中の博物館 ―新たな役割と可能性―」をテーマに開催された。

 この第68大会の趣旨と狙いについて、大会委員長 銭谷眞美「第68回全国博物館大会のご案内」に次のようにある。
「本年の大会は、新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、多くの博物館が臨時休館や展示内 容の見直しを迫られる、過去に例をみない状況のなかで開催する大会となりますが、逆境の中で新たな事業に取組む施設も多く、改めてこれからの博物館の役割を考える重要な機会として、あえてコロナ禍の下での博物館事業や運営を主要なテーマに設定しました。…また、近年多発する大雨などによる自然災害についても、分科会のテーマとして取り上げ、昨年の川崎市市民ミュージアムをはじめとして各地での被災を事例として、これからどのように災害に対して準備をしておくべきかを考えます。」

 この1年間、100年に1度と言われる大災害が重ねて起きた。新型コロナウイルス感染症の拡大と自然災害(とくに大水害)による博物館の被災である。そこを日博協会長の挨拶が的確に指摘している。ここに第68回大会のテーマ「変化の中の博物館 ―新たな役割と可能性―」の大切な意義がある。

 私は全国博物館大会に参加するのが初めてなうえに、歴史学徒として文献資料を主に図書館や文書館の世話になってきたが、博物館には展示を観に行くことはあっても収蔵資料を使った経験がほとんどない。私の研究分野では、図書館、文書館、博物館の順で利用頻度が高く、その順で馴染みが深い。今回の大会に参加することを通じて、各種の資料類の質の差を整理する必要を痛感した。

 図書館は刊行物である図書(複数部数を刊行)を収蔵し、目録を作成、それを通じて読者は閲覧する。国会図書館をはじめ各大学図書館や公立図書館にはそれぞれに独特のコレクションがあり、国外もふくめ図書館にどれほど世話になったことか。20世紀末頃からネット検索が可能となり、図書や雑誌のデジタル版も利用できるようになり、利用範囲は一段と拡がった。

 文書館は主に文字資料・文献資料の収集・公開を目的にしているが、図書とは違い、原則として1点しかない文書を取り扱う。国立公文書館、横浜開港資料館、新聞博物館(横浜)、外交史料館、東大史料編纂所等を活用し、上海档案館、ロンドンやワシントンDCのナショナル・アーカイブ(国立公文書館)にも世話になった。こちらもデジタル化が進み、書斎からパソコンを通じて利用できる範囲が拡大している。

 そして博物館である。博物館という言葉から得られる私の印象は、まず重厚な建物、天井が高く、展示室と収蔵庫を備えた大型施設である。もう一歩踏み込んで、私が博物館について触れた最近の小文は、4年前の本ブログ「シーボルトの日本博物館」(2016年8月24日掲載)である。

 これは国立歴史民俗博物館の企画展示「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」を観た印象と感想を記したもので、まず「シーボルトが企画したヨーロッパ初の日本展示」という表現とシーボルトの多彩な収集品、並びに彼の思想にいたく感銘を受けた。また図書館を支える司書に対して、博物館を支える学芸員の役割の一端も知ることができた。

 以来、博物館の起源やその社会的役割に関心が向かった。博物館という語彙は、明治期に作られた新造漢語(訳語)の一つである。明治期の新造漢語(訳語)一般については、6年前の講演録「黒船来航と洋学」(本ブログの右欄リンク内「都留文科大学学長ブログ」の最終回122号)を参照されたい。

 博物館という新造漢語(訳語)の登場とその意味するところは、語彙の初出を記す『日本語大辞典』を見るまでもなく、ふつうの国語辞典(ここでは『広辞苑』)を引けば、およその概要が分かる。

 (1)<博物>には次の2つの語義がある。①「ひろく物事に通じていること、ものしり」、②「博物学の略。また明治から昭和初期にかけての教科の一つ」
 (2)<博物学>を引くと、動植物や鉱物・地質などの自然物の記載や分類などを行った総合的な学問分野。これから独立して生物学・植物学などが生まれる前の呼称。明治期にnatural historyの訳語に用いられた。中国では本草学として古くから発達…とある。
 (3)<博物館>(museum)は、考古学資料・美術品・歴史的遺物その他の学術的資料をひろく蒐集・保管し、これを組織的に陳列して公衆に展覧する施設、また、その蒐集品などの調査・研究を行う機関。

 これら3つをつなげると、最後の「その蒐集品などの調査・研究を行う機関」を広く結びつけ連携する役割を日博協は担っており、その相互研鑽の場が全国博物館大会であると位置づけることができそうである。

 そこで全国博物館大会の主催者である日博協について調べると、「博物館に関する諸事業の実施を通じて、博物館の健全な発達を図り、社会教育の進展に資するとともに、 我が国の教育、学術及び文化の発展に寄与することを目的」(日博協ホームページ)とある。

 日博協は維持会員(団体と個人)及び賛助会員からなり、その一覧は種類・地域別にホームページに掲載。全国に約4000を超える博物館施設の中核を結ぶ。現会長の銭谷眞美氏は東京国立博物館長で元文部科学事務次官。日博協の事業は、「令和元年度 事業報告書」によれば、大別して以下の7つである。

 1 博物館の普及啓発に関する事業として、 (1)月刊誌「博物館研究」の発行、(2)第67回全国博物館大会の開催、(3)全国博物館長会議の開催。
 2 博物館に対する支援に関する事業として、 (1)博物館利用支援機器の支給、2)博物館総合保険。
 3 博物館に関する調査研究及び情報の収集・提供に関する事業として、 (1)博物館登録制度の在り方に関する調査研究、(2)博物館総合調査の実施、(3)出版物等による情報の提供。
 4 博物館関係者に対する資質向上に関する事業として、 (1)研究協議会等、(2)美術品梱包輸送技能取得士認定試験、(3)顕彰事業 1)博物館功労者表彰、2)棚橋賞、博物館活動奨励賞。
 5 博物館の国際交流に関する事業 (1)「国際博物館の日」に関する事業、(2)ICOM 京都大会に関する事業、(3)その他の国際交流事業。
 6 その他の事業として、(1)地区博物館活動への支援、(2)大規模災害関係支援事業の実施、1)文化財防災ネットワーク推進事業への参画、2)大規模災害で被災した博物館・文化財への支援活動への参加及び支援金の募集、3)文化財レスキュー事業への支援。
 7 会議等(理事会、評議員会、委員会)。

 日博協の沿革をたどると、昭和 3 (1928)年、「博物館事業促進会」として発足、初代会長に平山成信(日本赤十字社社長)が就任、『博物館研究』を創刊した。その最新号(令和2年11月刊)の特集は「新型コロナウイルス感染症パンデミック下の博物館」。ついで昭和 6 (1931)年、「日本博物館協会」と名称変更した。同協会が主催する第1回全国博物館大会は戦後間もない昭和28(1953)年に開かれ、毎年、開催地を変え、今日に至る。

 日博協の主催する全国博物館大会の概要については以下の通り。
 全国博物館大会は、全国から参加者が集い、2~3日間にわたる講演、フォーラム、シンポジウム、分科会を通して博物館に関する諸問題について研究協議を行うとともに、開催地の博物館の見学も行っている。また、開会式において、博物館の功労者、寄附・寄贈者、永年勤続者などの表彰および『博物館研究』誌掲載の優秀論文等に対する棚橋賞、博物館活動奨励賞の授与も行っている。さらに、出席者の総意として大会決議を採択し博物館関係者の決意を表明するとともに、政府および関係諸機関に要望している。(日博協ホームぺージ)

 参考のため過去10年間の全国博物館大会の開催地と大会テーマを一覧する。
(今年 第68回 横浜 「変化の中の博物館 ―新たな役割と可能性―」)
2019年 第67回 京都  「文化をつなぐミュージアム ―伝統を未来へ―」
2018年 第66回 東京 「博物館からつながる」
2017年 第65回 大分 「今、博物館に求められていること ~持続可能な社
会における役割~」
2016年 第64回 群馬 「博物館をつなぐ、世界がつながる ―未来が見える―」
2015年 第63回 広島 「伝承と創造-未来へ伝えるメッセージを博物館から-」
2014年 第62回 三重 「多様化する博物館―対話と連携で未来を探る」
2013年 第61回 岐阜 「博物館の可能性―新たな博物館像をめざして―」
2012年 第60回 金沢 「地域と博物館」
2011年 第59回 奈良 「歴史文化と博物館-1300年の時空を探求-」
2010年 第58回 旭川 「博物館の再生、地域と文化の創造」

 今年の第68回全国博物館大会(横浜大会)の準備のため、令和2(2020)年11月10日(火曜)、神奈川県立博物館講堂において、第3回実行委員会が開かれ、主催団体の日博協から半田昌之専務理事、仲谷昌久事務局次長ほか計4名、共催側の県博協の実行委員会(委員長は薄井和男神奈川県立歴史博物館長、副委員長は西川武臣氏、竹嶋徹夫氏、栗山雄揮氏、ほか委員7名)との合同会議が開かれ、私も委員として参加、2週間後に迫った大会の最終確認を終えた。

 神奈川博物館協会(県博協)は、「神奈川県内で活動する博物館が、博物館相互の連絡をはかり、博物館活動の振興に努め、また学術文化の進展に寄与することを目的として、1955(昭和30)年11月28日神奈川県内で活動する23の博物館を以て設立された。現在は歴史館、美術館、科学館、水族館、動物園、植物園など99館園が加盟している。

 私の勤める三溪園のように庭園を主とする国指定名勝で、かつ園内に創立者の原三溪を記念する三溪記念館(美術館)を有する機関もある。これら諸機関を<館園>と総称する。神奈川県を6地区に分け、それぞれに加盟する<館園>数は、横浜地区=35、川崎地区=10、三浦地区=13、湘南地区=14、西湘地区=18、県央地区=9で合わせて99館園である(県博協ホームページ)。
 
 このように見てくると、県博協は、上掲語義の(1)<博物>、(2)<博物学>、(3)<博物館>の3つを含む多義的な定義そのままに、多彩な機関・団体が含まれ、その多くが公立であることが分かる。もっとも公立と言っても、その実態は直営・指定管理・公益法人等に分かれるが、ここでは深く問わない。

 今回の第68回大会は、感染予防のため、参加人数を会場収容定員の半数に制限し、2日目の3つの分科会の1つを近くの新聞博物館へ移して対応したが、それでも残念ながら参加希望者の全員を収容することはできなかった。

 前置きが長くなったが、いよいよ第68回全国博物館大会(横浜大会)の参加記を綴りたい。入り口で「第68回全国博物館大会資料 Ⅰ」(A4×40ページ)と「第68回全国博物館大会資料 Ⅱ」(2日目のレジメ、A4×56ページ)等の資料を受け取る。この丁寧な事前準備が嬉しい。

主なプログラムは次の通り。
11月25日(水曜)午前  表彰式(博物館功労者1名と永年勤続者69名) 関係者のみ
       13時30分~ 開会式
       14時30分~ 基調講演 養老孟司「新しい日常と博物館」
       15時30分~ 全国博物館フォーラム
       17時~     大会決議起草委員会
26日(木曜)、9時30分~ 分科会
            分科会1 「コロナ禍の下での博物館の取組」  
            分科会2 「コロナ時代の新しい博物館像」
            分科会3 「身辺に迫る危機への備え」
        14時~ シンポジウム「変化の中の博物館―新たな役割と可能性」 
              (分科会の総括)

 私は初日に三溪園(正式名:公益財団法人三溪園保勝会)園長として出席、2日目は三溪園を代表して北泉剛史(学芸員)と原未織主事(建築担当)が出席した。合わせて簡単な報告を綴りたい。

 会場の横浜市開港記念会館は、横浜開港50周年(1909年)を記念して建造を決め、大正6(1917)年7月1日に開館、開港100周年の昭和34(1959)年、「横浜市開港記念会館」と名称を改め中区の公会堂になった。そして横浜博覧会が開かれた平成元(1989)年には国の重要文化財に指定された由緒ある建物である。<ジャックの塔>の愛称を持つ。

 25日午前、横浜市は小雨が降り、かなりの低温になった。紅葉の到来に合わせ、温度差が日替わりでやってくる季節である。午後1時半、開会を前に晴れてきて、正面に向かって左側から強い陽光が差し込んできた。

 開会式は銭谷眞美会長の挨拶に始まり、宮田亮平文化庁長官、清水幹治文化庁企画調整課長、桐谷次郎神奈川県教育長(県会開催中のため代理出席)、鯉渕信也横浜市教育長の祝辞につづいて表彰式が行われた。今年の永年勤務表彰69名、博物館事業功績表彰1名である。

 ついで<棚橋賞>の表彰、受賞者は石垣悟氏(東京家政学院大学現代生活学部准教授)、受賞論文は「災害から考える有形の民族文化財と地域博物館」(『博物館研究』誌 令和元年7月号)、その受賞理由は「大会資料 Ⅰ」に記され、論文も掲載されている。

<博物館活動奨励賞>の受賞者は2名。第1が富樫和孝氏(北杜市オオムラサキセンター環境等事業責任者)で、論文「地域に根差した昆虫館活動の現在-国蝶オオムラサキが住む里山の昆虫館から」(『博物館研究』誌 令和元年11月号掲載)に基づく。現載論文も「大会資料 Ⅰ」に収録。

 第2が高橋満氏「福島県立博物館専門学芸員」で、「博物館における震災の継承-震災遺産保全のケーススタディ」(『博物館研究』誌 令和元年7月号掲載)による。受賞理由と現載論文も「大会資料 Ⅰ」に収録。

 ついで日本博物館協会賞の第1回受賞館の受賞が2件。(1)北名古屋市歴史民俗資料館は、所蔵する昭和期の民俗資料を積極的に活用し、地域の高齢者を対象とした<回想法>の手法を積極的に採用した先駆的活動に与えられた。(2)ちひろ美術館・東京/安曇野ちひろ美術館は、絵本作家いわき ちひろの没後に設立され、散逸しやすい絵本の原画を世界に先駆けて展開した活動に与えられた。

 これら3名と2件(の代表者)の受賞者による<お礼のことば>がとても印象的で、受賞理由、現載論文と合わせて、それぞれの取組の様子を鮮やかに浮かび上がらせた。

 休憩をはさみ、いよいよ基調講演「新しい日常と博物館」である。養老孟司氏(東京大学名誉教授)はマイクをスタンドから取り上げ、白板の前に進みでて聴衆に語りかける。レジメもパワポ投影もない。時折、白板にキーワードらしき語彙を書くが、遠くて見えない。もっぱら耳をそばだてるが、換気のために道路側の窓を開放していたので、時に道路を走る自動車の騒音にかき消される。

 聞き取れて理解できたことのみを綴る以外に手はない。正確な議事録は近刊の月刊機関誌『博物館研究』に掲載されるはずなので、そちらに譲り、私なりの非公式受講録(概要)を綴っていきたい。

 <不急不要>の外出自粛要請を受けて、近所の散歩とムシ取りの時間が増えたと話し出す。世間の<不要不急>ではなく<不急不要>とするのは何か狙いがありそうである。そして自己紹介、昭和12年生まれの83歳、昆虫採りでブータンを訪れたとき「年寄りは働くな、ただお経を読め」と言われたので、80歳過ぎて京都国際マンガミュージアム館長などすべての役職を退いたと言う。

 ご承知のとおり、東京大学医学部(医学研究科)教授(解剖学)を本職としていたが、17年前に出版、ベストセラーとなった『バカの壁』(2003年 新潮社)等の著者として広く知られる。同書は、419万部の売り上げで一位を記録(ウィキペディア)している。

 私はメモを取りつつ聞いたが、読み直しても論理的につながらないが、せっかく取ったメモなので、そのまま復元したい。<不急不要>の外出を自粛し、散歩のほかはもっぱら採ったムシの整理に没頭する。4つのプレートの衝突する上にある日本国には、多様なムシがいる? …ムシもモノの一種・…日常生活がここまで変わったのは人類史上初めてではないか。…

 「夕焼けはモノではない? 目でしか判断できないから」。裏返せば五感で認識できるのがモノであり、五感の一部でしか認識できないのはモノではない? 昆虫好きで解剖学者なら、ここは譲ることができない? ついで「数の世界は実在か?」と自問、数学者は「数の世界は実在する」と答え、経験が多いと実在になるとする。

 なかなか正確には講演内容を把握できないうちに演者の近著『AIの壁』(PHP研究所)を思い出した。AIをテーマにした対談集で、「これからはAIだ」という世の安易な雰囲気を危惧、本当に必要なものは何かを考えるのが大切と説いていた。

 その対談のトップバッターは棋士・羽生善治氏、彼はAIを人間の持っている能力や才能を伸ばすためのツールとして使う方法を先行して提示したのが将棋界かもしれないと語る。将棋ソフト開発の内幕に触れ、深層学習はそのプロセスで何が起こっているのか分かりにくい側面があると指摘。人間にAIが受け入れられるかの鍵はこのような「ブラックボックス」をどう評価するかが課題と述べる。対談の相手はほかに経済学者の井上智洋氏、哲学者の岡本裕一朗氏、数学者の新井紀子氏の4人、「AIの限界と未来を語る」がキャッチフレーズである。

 この対談集と関連づけると、博物館が扱うのは五感で把握できるモノである。骨董の価値は<目利き>が決めるのと同じで?…博物館の所蔵するモノの価値は<目利き>が決める。…<唯一神>の世界と<やおよろず(八百万)のカミ>の世界とは原理原則が異なる。…

 …銀行に行って<本人確認>を求められた。<本人確認>とは何か。運転免許証か個人番号カードならすぐ通用するが、「私は私です」と言っても通じない。顔見知りの銀行員がいても、「知っています」では<本人確認>にならない。システムのなかの世界、データの世界が大手を振るうと、ヒトをシステムに合わせるように求められ、システムが識別できないものはノイズとして排除される。…

 以上、私が聞き取り理解できた限りの基調講演「新しい日常と博物館」である。基調講演の締めにあたり、日博協の半田昌之氏が「博物館が不要なノイズとして始末されないように頑張りたい」と述べて、静かな笑いを誘った。

 3時半から「全国博物館フォーラム「博物館を取り巻く課題と展望」が行われ、清水幹治氏(文化庁企画調整課長)、佐々木丞平氏(京都国立博物館長)、半田昌之氏(日博協専務理事)が報告した。清水氏は次年度の文化庁の予算要求案について、佐々木氏は昨年の「第25回ICOM(国際博物館会議)京都大会2019報告書-文化をつなぐミュージアム-伝統と未来へ」(A4×184ページ)について、そして半田氏は昨年度の全国博物館大会の回顧と展望を語った。

 5時前から大会決議起草委員会が開かれた。例年は協会役員・参与で起草委員会を開催し決議(案)を作るが、今年は一般参加者にもオブザーバーとして参加する形を採用した。なお決議文は日博協ホームページのNews欄に掲載された。

 大会2日目、11月26日(水曜)は午前中に下記の3つの分科会が行われた。
分科会1 「コロナ禍の下での博物館の取組」 コ―ディネーターは伊藤寿茂
氏、講師は高尾戸美氏、三森典彰氏、藤原明廣氏、橋本善八氏。 
  分科会2 「コロナ時代の新しい博物館像」 コ―ディネーターは田口公則氏、
講師は岡村幸宣氏、上山信一氏、逢坂恵美子氏、浜田孔明氏。
  分科会3 「身辺に迫る危機への備え」 コ―ディネーターは高橋典子氏、講師
    は天野真志氏、佐藤美子氏、秋山純子氏、安藤理恵氏、武田周一郎氏。
       
 午後からは総括のシンポジウム「変化の中の博物館―新たな役割と可能性」が行われた。司会は半田昌之氏、報告者は3分科会コ―ディネーターの伊藤寿茂氏、田口公則氏、高橋典子氏である。

 配布された「第68回全国博物館大会資料 Ⅱ (レジメ)」にそれぞれの報告概要が記されている。その最後にある「新型コロナウイルス感染予防の対応状況に係る緊急アンケートの結果について」(43~50ページ)とそれを受けた半田昌之「全国博物館フォーラム「博物館を取り巻く課題と展望」(51~56ページ)の2点がとりわけ重要であり、今後を展望するための貴重な資料となる。

 この日は、私は出ず、代わりに三溪園を代表して北泉剛史(学芸員)と原未織主事(建築担当)が出席したので、その参加報告を次に掲げる。

(1)北泉剛史 分科会2「コロナ時代の新しい博物館像」参加報告
報告者
 桜美林大学教授 浜田弘明 氏
 原爆の図丸木美術館 岡村幸宣 氏
 国立新美術館 逢坂恵理子 氏
 慶応義塾大学教授 上山信一 氏
 分科会2では、大規模館・小規模館、元学芸員で博物館学を専門とする大学教授、公共政策学を専門とする大学教授と、さまざまな方面からミュージアムを捉える報告があった。
 コロナ禍では、展覧会が中止になった反面、オンラインやデジタルによる公開が促進され、インターネット上で楽しめるバーチャルミュージアムが増えた。コロナによって「今まで」の活動を継続することは難しく、コロナ時代に即した新たな活動を検討しなければならないと指摘があった。その反面、やはりミュージアムはモノを通してコト(情報)を伝える場なのだから、実際に足を運んでいただき、実物を見せることを努力しなければならない。このような状況だからこそ、コレクションを最大限に活用した展覧会を打ち出していかなければならないという意見もあった。また、この緊急時では、短絡的に利益や成果を求めようとした活動を行うのではなく、改めて長期的な視点での運営を検討しなければならないという指摘があり、まさに現在の三溪園が直面している課題が他館や専門家にも共通の認識であることがわかった。

(2)原 未織「分科会3「身近に迫る危機への備え」参加報告
報告者
国立歴史民俗博物館特任准教授 天野真志氏
川崎市市民ミュージアム学芸部門長 佐藤美子氏
東京文化財研究所保存科学研究センター保存環境研究室長 秋山純子氏
碧南市藤井達吉現代美術館学芸員 安藤理恵氏
神奈川県立歴史博物館 武田周一郎氏
分科会3「身近に迫る危機への備え」に参加してまいりましたのでご報告します。
昨年の川崎市民ミュージアムの台風による浸水被害などは記憶に新しいですが、昨今自然災害が激甚化しているといわれ、それに対して博物館がどのように自らの館や資料を守っていくかということについて検討する必要が生じています。九州国立博物館での床下浸水被害についても報告があり、「各館園の設立当初に想定されていた危機状況と、現在想定される危機状況が異なってきている(悪化の傾向にある)」ということを認識するべきだとの意見がありました。一方で阪神淡路大震災以降、東日本大震災等を経てさらに発展してきた文化財レスキューの存在にも注目が集まっています。レスキューネットワークの構築、レスキュー技術の発展などが災害経験を経るごとにレベルアップしており、これから災害が発生した場合において経験が活かされることが想定されています。一方でこれらの経験値を、災害発生後の後処理のみに活かすのではなく、この想定をもとにした「減災」を如何に行っていくか、それを考えていく必要性も訴えられました。

 我らが三溪園の若手二人は、上掲の報告と討論を聞いて多くを学び、指摘されたことを自らの問題に置き換え、それらを三溪園の現場でどう活かすかを模索し始めている。
プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
前園長(2012年8月~2023年3月)

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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