人類最強の敵=新型コロナウイルス(26)
11月19日(木曜)、昨日までの新規感染者の急増を引きつぐかのように、全国で2388人、東京都が534人、大阪府で338人と、いずれも過去最多となった。検査件数が増えたこともあるが、明らかな感染拡大傾向にあり、中高年の感染が重症化を招来して病院の逼迫という負の連鎖が危惧される。
19日午前、菅首相は官邸で記者団の質問に対して、飲食の際も会話時はマスクを着用する「静かなマスク会食」を実践するよう呼びかけた。「私もきょうから徹底したい」と述べた。
【国内のコロナ対策と経済活性化】
新型コロナウィルス感染症の新規感染者が急拡大している。そのなかで重傷者が増え、病床が逼迫、重症患者の対応には10倍もの医療スタッフが必要となるため、大幅に不足してきた。感染防止と経済活動の両立を模索するなか、政府は科学者の意見を尊重し、ようやく感染防止の短期集中策に傾注する方向へ動き出した。
その過程を追うため、まず感染者と重症者の推移を確認したい。新規感染者数は検査数に比例するので曜日等の検査体制の影響を受けるが、重症者数はまぎれもなく病床逼迫を示す先行指標である。全国も東京都も重症者数の急増が恐ろしい。他の道府県の数字は出していないが、のちに病床使用率の一部を掲載する。
前者が全国の感染者(陽性者、カッコ内は重症者)、後者が東京(同左)。
19日(木曜) 2388人(280人)と534人(38人)
20日(金曜) 2421人(291人)と522人(40人)
21日(土曜) 2591人(313人)と539人(40人)
22日(日曜) 2165人(323人)と391人(40人)
23日(祝日) 1518人(331人)と314人(41人)
24日(火曜) 1228人(345人)と186人(51人)
25日(水曜) 1946人(376人)と401人(54人)
26日(木曜) 2504人(410人)と481人(60人)
なお27日(金曜)午後、東京で新たに570人が感染、過去最多との速報あり。
19日(木曜)の都内の新規感染者534人のうち、およそ40%にあたる216人はこれまでに感染が確認された人の濃厚接触者で、残りのおよそ60%の318人は、これまでのところ感染経路がわかっていない。濃厚接触者の内訳は、<家庭内>が87人で最多、次いで<職場内>が60人、<施設内>が28人、<会食>が10人等で、このうち<家庭内>では、10歳未満から80代までの幅広い年代で感染が確認され、人数はこれまでで最多となった。
小池都知事は会食で感染した人が家庭に持ち込む事例が多いとして<5つの注意>を示した。とくに21日(土曜)から23日(月曜、勤労感謝の日)にかけての3連休に向けて事は急を要する。
19日夕方、東京都は新型コロナウイルスの都内の状況を話し合うモニタリング会議を開き、4段階で示す感染状況の警戒レベルを最高の<感染が拡大している>に引き上げた。都内では同日、新規感染者が534人確認され、初めて500人を超えた。2日連続で過去最多も更新、感染の急速な広がりが鮮明になっている。
都が警戒レベルを最も高くするのは7月15日~9月10日以来。新規感染者数と感染経路不明者数が急増していることを踏まえ、強く警戒を呼び掛けることが必要と判断した。医療提供体制の警戒レベルは重症者数が大きく増えていないことなどから、4段階で上から2番目の<体制強化が必要>を維持した。
都によると、直近7日間を平均した1日あたりの感染者数は、今月4日時点で165・4人だったが、18日時点は325・7人にほぼ倍増。感染経路不明者は5割を超える状況が続き、全ての年代で感染が広がっている。感染が疑われる人の検査体制を拡充し、1日あたりの検査件数が8000件を超えるなど、以前より増えたことも感染確認が増える要因とみられる。
小池知事は19日の臨時記者会見で、1日あたり1000人の新規感染者が出ることを想定して準備を進めていると明らかにし、「都民、事業者、行政が一体となって、気を緩めないで、感染防止対策を徹底してほしい」と述べたが、営業時間の短縮や外出自粛は求めなかった。また小池知事は記者会見で「重症者数は増えてない」と説明。ただ、高齢者の新規感染者数が増加している状況を踏まえ「高齢者や基礎疾患がある人、同居する家族はできるだけ会食への参加を控えてほしい」と呼び掛け、会食時の感染リスクを減らすため、「小人数」「小一時間」「小声」「小皿」「小まめ(な手洗いなど)」の「5つの小」の実践を訴えた。
同じ19日(木曜)、専門家組織の会合後、座長の脇田隆字国立感染症研究所長は会見で、「今後、重症化する人が増加する。救急医療の受け入れや手術を抑制しないといけない状況になると想定される」と述べ、今の感染状況に危機感を示した。感染拡大の要因には、①基本的な感染予防対策が不徹底、②人の移動の増加、③気温の低下、の3つを挙げた。
メンバーの尾身氏も「何かしら対応が必要なのは間違いない」と話し、20日開催の政府の分科会で対策を提言する考えを明らかにした。以前の9日、専門家組織のメンバーが多く参加する政府の分科会は、対策強化を求める緊急提言を出している。尾身会長は「急激な感染拡大に至る可能性が十分ある」と強調したが、19日の会合の評価では、改善はまだ見られない。むしろ「2週間で2倍を超える伸び」など厳しい言葉が並ぶ。
メンバーの一人は会合後、「今の状況がかなり厳しいということが伝わっていない」と焦りを見せた。保健所の負荷が増し、医療現場の逼迫(ひっぱく)感は病床使用率という数字で見るよりはるかに強いと指摘する。
ソフトバンクの子会社「アグープ」のデータで、緊急提言が出た9日と1週間後の人出を比べると、東京駅で4・4%減、札幌駅で2・7%減、大阪駅で1・2%減にとどまった。名古屋市の栄駅はほぼ横ばい、福岡市の天神駅は逆に4%増えた。4月の緊急事態宣言では、大阪駅で53%減、東京駅で42%減などと大きく減っていた。
広井悠東大准教授(都市防災)が指摘するのは、「警報慣れ」という現象だ。「何度も警報が出て自分が無事だと、『次も大丈夫だろう』と事態を過小評価しがちだ。…夏の第2波は死者は大きく増えずに収まったが、現在の第3波は亡くなる恐れが高い高齢者も増えている。適切なリスク意識を持ってもらうことが重要だ」。症状がなくて気づかず、人に感染させるリスクもある。「若い世代には、『高齢者のために行動を変えよう』と説明することも有効」と話す。
19日に感染者数が過去最多となったのは北海道、東京都、静岡県をふくめて8都道府県にわたるが、それぞれに状況は異なる。急拡大した静岡県の病院は「病床フル稼働は難しいとする。感染症指定医療機関の一つで、重症者を受け入れできる静岡市立静岡病院(静岡市)は、19日午後3時時点で感染者用の17病床に5人が入院しており、残りは12床あるものの、対応する職員数に限界がある。
例えば、複数の患者で症状が重ければ多くの職員がかかり切りになるため、必ずしも全病床をフル活用できないという。関係者は「重症者が増え続ければ、病床が実質的に逼迫(ひっぱく)する可能性は高い」と話した。
メンバーの一人は会合後、「今の状況がかなり厳しいということが伝わっていない」と焦りを見せた。保健所の負荷が増し、医療現場の逼迫(ひっぱく)感は病床使用率という数字で見るよりはるかに強いと指摘する。
静岡県伊豆半島の海沿いにある老舗ホテルは政府の観光支援事業「Go To トラベル」で満室が続いていた。第3波が鮮明になった後の2、3日前から、少人数団体のキャンセルが相次ぐものの、週末の3連休は現状で満室のままだという。女性従業員は「客足が戻ったのはうれしいが、感染から客も従業員も守らないといけない」と心境を吐露。宿泊客の人数制限などの対策を検討しているという。
20日(金曜)、神奈川県の黒岩知事は県内のGo To イートの発売を今月25日から一時中止することを決めた。
同じ20日、東京足立区のバス会社の日帰りバス旅行に参加した12人の女性の感染が確認された。区は、バス旅行で感染者の集団=クラスターが発生したとみて調べている。今月8日、区内にあるバス会社がバス2台で日帰りの果物狩りに群馬県へ行く旅行を実施したところ、16日になって60代の女性が感染していることが確認された。同行の参加者と従業員合わせておよそ70人が各自で検査を受けたところ、いずれも40代から80代までの女性参加者11人の感染が確認された。このバス会社は、参加者の検温や車内の消毒、窓開けなどの感染防止対策を徹底していたという。
同じ20日、全国の1日当たりの新規感染者数が過去最多を連日更新し、感染症の専門家らでつくる分科会が見直しを求める提言をまとめ、政府に提出した。尾身会長は「感染拡大は色々な要素で影響を受けるが、その一つが間違いな
く人の動き」とも指摘した。
また会食時のマスク着用や人との距離の確保といった様々な感染対策を求めている中で「<Go To キャンペーン>で人が動くということを続けて
しまうと、メッセージの一貫性がなくなる」と訴えた。背景にあったのは医療崩壊への危機感である。
ある分科会メンバーは、「ここで感染拡大を抑え込まねば、来夏の東京五輪・パラリンピックの開催にも影響が出かねない。経済への打撃も深刻になるだろう」と、首相が最重視する東京大会への悪影響を伝えたという。
その夜の記者会見で、西村大臣は新型コロナウイルスの感染の急拡大に伴う消費喚起策<Go To キャンペーン>の運用見直しについて、翌21日に開催する政府対策本部で方向性を出せるよう関係省庁で検討を急ぐ考えを示した。政府の分科会が、一部の都道府県で感染が急増していることを踏まえ、<Go To>の運用見直しを盛り込んだ提言を決めたことを受けたもの。
西村大臣は「提言を踏まえ、それぞれの項目について早急に対応したい。そのうえで、明日の政府対策本部で方向性を出せるよう検討を急ぎたい」と語った。<Go To トラベル>については「観光庁で早急に検討されると考えている」と述べ、飲食店支援<Go To イート>については、「都道府県知事の判断で食事券の新規発行の一時停止なども行われている」と指摘。「農林水産省からできるだけ早急にそれぞれの知事に検討を要請することになると思う」とした。
21日(土曜)夕方、新型コロナウイルス感染症対策本部を開催、ここで菅首相は初めて「感染拡大が一定レベルに達した地域ではその状況を考慮し、都道府県知事と連携し、より強い措置を講じる。<Go To トラベル>事業については感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止するなどの措置を導入する」と述べ、飲食店支援の<Go To イート>も、プレミアム付き食事券の新規発行の一時停止やポイント利用を控えるよう各知事に検討を求める考えを示した。
22日(日曜)と23日(月・祝)の連休中、好天に恵まれ、各地の行楽地への人出は、想定以上に多く、新幹線や幹線道路の込み具合も異常と思われた。感染拡大や病床逼迫の懸念が広く届いていない印象を受けた。
24日(火曜)、連休明けに開かれた厚労省に助言する専門家の会合では「特に北海道や首都圏、関西圏、中部圏を中心に顕著な増加が見られる」と評価、このままの状況が続けば、入院患者や重症患者が増加し、医療現場が逼迫して、通常では助けられる命も助けられなくなるとして、強い危機感を示した。
25日(水曜)午後6時から、専門家会合を受けて、政府の分科会が開かれた。その冒頭で、西村大臣は「新規陽性者の増加傾向が強まり、最大限の警戒感をもって対応している。特に感染者の数が増加している地域では、医療のひっ迫が懸念されており、国民の命を守るため、何としても回避しなければならない」と述べた。そのうえで、当面、2021年2月末まで継続としているイベントの開催制限について、地域の感染状況に応じ、都道府県知事の判断で、より厳しい制限を課すことも可能と、改めて都道府県に通知する考えを示した。
田村厚労大臣は「『通常の医療を提供しづらくなっている』という、悲鳴のような声も聞いている。医療が崩壊すれば、国民の命を守れないし、大変な局面に入りつつあるので、より緊張感をもって取り組みたい。国民には、ぜひ、マスクの着用をはじめとする予防策を徹底してほしい」と述べた。
分科会の提案は、都道府県に対し、感染が急速に拡大している「ステージ3」にあたる地域を早期に判断し、3週間程度の短期間に集中して対策を行ってほしいとしている。そして、感染が急速に拡大している地域との間の往来の自粛を求めているほか、「ステージ3」にあたる地域では、酒を提供する飲食店への営業時間短縮の要請などを、速やかに検討するよう求めた。
26日(木曜)は、折しも緊急事態宣言が全国で解除されて半年になる日である。全国で、PCR検査や入院患者の受け入れ態勢の整備が進む一方、病床も逼迫しつつある。厚労省によると、全国で対応可能なPCR検査の数は、半年前の5月下旬の時点で約2万4500件であったが、8万5500件と3倍以上に増加した。
入院患者のために確保された病床も、およそ1万8300床から1.5倍の2万7000床と増加するも、感染拡大による入院患者の増加で病床は逼迫している。全国平均で7.5%だった病床使用率は11月18日の時点で3倍近い22%に上昇した。病床使用率がとくに高い都道府県は、兵庫=44%、大阪=41%、北海道=38%、埼玉=37%、沖縄=35%、東京と愛知=33%である。
26日現在、営業時間の短縮や往来の自粛を求める要請が大都市を中心に広がった。以下に具体例を掲げる。
▽東京都は23区と多摩地域にある酒を提供する飲食店やカラオケ店に対して、11月28日から12月17日までの20日間、営業時間を午後10時までに短縮するよう要請、全面的に応じた事業者には一律40万円の協力金を支給する。
▽大阪府は大阪市北区と中央区にある、酒を提供する飲食店やカラオケ店などを対象に、11月27日から、12月11日までの15日間、営業時間を午後9時までに短縮するよう要請した。応じた店舗には50万円の協力金を支給、業種別ガイドラインを順守していない店については休業を要請する。
▽北海道は、11月7日から、札幌市の繁華街ススキノに、バーなどは営業時間を、カラオケ店や居酒屋などは酒を提供する時間を、それぞれ午後10時までに短縮するよう求めてきた(当初、11月27日までとした)が、12月11日までに延長、さらに札幌市内全域の接待を伴う飲食店については12月11日まで休業するよう要請した。札幌市は、休業要請に応じた接待を伴う飲食店には60万円を支給。ススキノと狸小路商店街には営業時間を午後10時までと要請、応じたカラオケ店や居酒屋などに30万円の協力支援金を支給するとした。
▽愛知県は名古屋市中区の一部地域にある酒類を提供する飲食店やカラオケ店などに対し、11月29日から12月18日まで、県の感染防止ガイドラインを守っている場合は営業時間を午前5時から午後9時までとし、最大で40万円の「協力金」を支給する。またガイドラインを守っていない飲食店には休業を要請する。
【新型コロナ対策 外国の動き】
アメリカの感染拡大がつづき、感染による死者が増加、第2波を超え、各地で外出制限等の規制導入を急いでいるが、詳しく述べる紙幅がない。BS1「週間ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(11月16日~20日)」22日を参照。
【続6 米大統領選】⇒<続報>~<続報3>は前々号(23)に、<続4>は前々号(24)に、<続5>は前号(25)にあり。
本ブログの前号(25)で、ジャーナリスト木村太郎氏の「接戦を制し、勝利が確実に見えるバイデン氏だが、実はトランプ氏が合法的に逆転可能なシナリオがある」の発言を引き、その根拠が約130年前の1887年に制定された<選挙人算定法>の承認領域条項の一文にあると述べた。これに関連する続報が出てきた。
19日(木曜)、CNNは、大統領選で不正があったとしてトランプ陣営が起こしていた訴訟がアリゾナ州、ペンシルバニア州の裁判所で、またジョージア州の連邦裁判所で相次いで退けられたと、トランプ陣営のジュリアーニ顧問弁護士が語ったと伝えた。
同じ日、米ワシントンポスト紙はトランプ陣営の法廷闘争の狙いは、選挙結果の正式な確定を遅らせることにあると伝えた。大統領選の次のプロセスは、各州の州議会が選挙結果に基づいて選挙人を選び、その選挙人が12月14日に各州で投票して結果を正式に確定する。
また米ニューヨークタイムズ紙は、トランプ陣営のジュリアーニ顧問弁護士が州議会の共和党員議員に働きかけ、選挙結果を無視してトランプ支持の選挙人を選ぶことを狙っているものの、激戦区だったミシガン州(選挙人16人)やペンシルベニア州(同20人)の共和党議員はこれに否定的で、バイデン勝利の選挙結果が覆る可能性はないと伝えた。
両州の選挙人の合計は36人、トランプ氏の選挙人獲得数の232人を足すと268人と過半数の270に迫る。どこか他の1州が反旗をひるがえせばトランプ勝利の計算になる。その可能性を否定する、メディアの政治的発言の色彩がまったくないとは言えない。
21日(土曜)の朝日新聞デジタルは、「米大統領選で支持の強さと厚みを見せつけたトランプ大統領。政権の座から退いても、影響力は衰えそうにない。米国でトランピズム(トランプ主義)は消えないのか」として各界の見解をインタビュー形式で掲載した。
その一つが宗教学者の中村圭志氏のインタビューで、「怨念から生まれた救世主」と題する記事。「トランプ現象は宗教に似ている。人々に救済を約束するのが宗教だとすれば、トランプ氏は、支持者たちにとって救世主に近い期待を集める存在なのだと思う。…新型コロナにかかっても「復活」したトランプ氏に、救世主神話のようなものを読み取ることは、米国社会では荒唐無稽な話ではない」と語る。
また「トランプ氏には、世界各地の神話に見られるトリックスター的な性格もあります。うそをついたり、人をだましたりするけれど、結果的に人々に恩恵をもたらす。虚偽のツイートを連発しても支持者が離れないのは、トリックスターとして期待しているからかもしれません。」とも言う。
さらにアメリカの歴史をさかのぼり語る。「宗教としてのトランプ現象は、突然出てきたわけではありません。米国は開拓によってゼロからつくられた国です。人々をまとめてきたのが教会で、宗教による団結が正統性を持っている。さらに、アメリカンドリームという自己実現の英雄神話を求めるところが強くあります。一方で、自己実現できなかった人たちは、成功した人たちへの怨念を抱かざるをえない。それをすくい上げた「救世主」がトランプ氏です。トランプ現象は、米国の怨念と分断の歴史から生まれたものです。」
また次のようにつづける。先進国では珍しく宗教の影響力が強い米国社会には、「信じやすい」風土があります。さらに競争社会で、宣伝やイメージ戦略の手段が極度に発達しています。陰謀論を非常に効果的に流すことができるんです。…社会学者ロバート・ベラーは、米国社会には<市民宗教>があると唱えました。米国に国教はありませんが、民主主義の制度の中に宗教性が込められていると考えたのです。大統領が就任式で、聖書に手をあてて誓うのはその表れともいえます。
市民宗教はナショナリズムと結びつけられやすいのですが、ベラーはナショナリズムを乗り越えるものと捉えていました。その意味では、内向きでナショナリズム的なトランプ氏よりも、外向きのバイデン氏のほうが米国の市民宗教の伝統を受け継いでいるとも言えます。
宗教としてのトランプ現象を支えているのは、米国の社会構造が生む怨念です。これを解決するのは極めて難しく、トランプ現象はまだ続くかもしれません。しかし、私は楽観的に見ています。米国でさえ、若い世代の宗教離れは進み、無神論者が増えています。彼らには、トランプ氏の宗教的なメッセージは響かない。トランプ現象は、衰退していく宗教の最後のあだ花のようなものになると思います。
以上、いささか長くなったが、中村圭志さんの<語り>を引用した。アメリカ社会の深部にある感情と思想の一端が示されており、米大統領選と、そのこれからを知る参考になった。
トランプ大統領が次期大統領選の一般選挙の結果を認めず、<敗北宣言>を行わず、不正等を理由に法廷闘争に持ち込んでいるため、<政権移行>が大幅に遅れ、超大国アメリカに政治の空白が生まれている。
そこに24日(火曜)、バイデン次期大統領の陣営は第一次の閣僚を公表した。国務長官にアントニー・ブリンケン(オバマ政権で国務副長官、58歳)と大統領特使(気候変動問題担当)にジョン・ケリー(オバマ政権で国務長官、76歳)。また財務長官にジャネット・イエレン前FRB議長(74歳)の起用説が流れている。
バイデン演説を受けて、閣僚の発表に当たったのは新政権の要となる大統領首席補佐官ロン・クレイン、今月11日にバイデンが起用すると発表していた。クレインはオバマ政権時代にバイデン副大統領みずからの首席補佐官だった人物である。
同じ24日、トランプ大統領はバイデン次期大統領への<政権移行チーム>を容認、政治空白の懸念は回避される方向に歩みだした。次期大統領への政権移行の開始に関する権限を持つ米連邦政府一般調達局(General Services Administration、GSA)のエミリー・マーフィー局長が23日、引き継ぎ作業を容認するとバイデン氏に書簡で伝達した。ついでトランプ大統領がツイッターで「国益のために必要な措置を取るよう(一般調達局に)薦めた」と表明した。
<政権移行チーム>は国務省・国防総省・中央情報局(CIA)などから最新の機密情報を手に入れ、かつ各省高官と公式に接触することができるようになった。大統領の交代にともない数千人規模の官僚が入れ替わるアメリカの制度では、政権移行の具体化には相当の時間を要する。
同日、政権移行を好感したニューヨーク株式市場は3万ドルを突破した。トランプ政権下の4年で株価が5割上昇した巨大IT企業がけん引、そこに金融緩和でだぶついた金が流れ込んだ。噂されるイエレン前FRB議長の財務長官起用説への期待もあると言われる。
【国際環境と日本外交】
本ブログの前号(24)で述べたRCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership、略称:RCEP、アールセップ、東アジア地域包括的経済連携)について、19日(木曜)、中国の習近平国家主席が積極的に参加すると前向きな表明があった。
18日(水曜)の日経新聞(朝刊)は、トップで「Co2の地下貯留で連携 日米豪とASEAN」と報じた。火力発電所、製油所等多くの工業施設から排出されるガスから二酸化炭素(Co2)を分離して回収し、地下深くのCo2を通さない地層のさらに下の層に貯留する技術がCCS(carbon dioxide capture and storage)と呼ばれ、さらに有効利用(utilization)を加えたものをCCUSと呼ぶ。いま世界で約20件が稼働中、約60件のプロジェクトが進行中。
菅首相は、就任早々、2050年までに温暖化ガス排出を実質ゼロにする<カーボンニュートラル>を実現すると表明したが、その具体化の方法の一つが<Co2の地下貯留>である。温暖化ガスの<排出量>と<回収量>を同じにすればゼロになる。再生可能エネルギーの拡大、水素の活用を進めても、鉄鋼や化学等の産業からの排出がつづくため、アジアで排出されるCo2を現地で貯留する事業で協力し、その分を日本での排出分と相殺できる排出権取引の国際ルールに沿った方法。
まず2021年からCo2を貯留できる候補地の一覧を作る。油田やガス田の多いアジアは地下貯留の候補地も多いとされる。貯留量、コスト、環境への影響等を調査し、2030年から商業利用の開始をめざす。日本は国際石油開発帝石が豪州で検討を始めている。
21日(土曜)昼、TBSが「APEC、3年ぶり首脳宣言を採択」と報じた。APEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議は、「新型コロナウイルスからの経済回復のため、自由で開かれた貿易環境の重要性を認識する」と明記した首脳宣言である。
APEC首脳会議は、日本やアメリカ、中国など21の国と地域が参加し、20日、オンライン形式で開かれた。3年ぶりに採択された首脳宣言では、各国が直面している新型コロナによる経済への影響について、参加国の間の連携・協力の重要性を認識した、としている。
また、中国国営の新華社通信によると、首脳会議では習主席がTPP=環太平洋パートナーシップ協定参加について「積極的に検討する」と表明した。中国は、自由貿易に開放的な姿勢を打ち出すことで2017年にTPPから離脱したアメリカに対抗する狙いがあるとみられる。
トランプ大統領にとっては大統領選挙で民主党のバイデン氏の勝利が確実になってから初めての国際会議となり、ホワイトハウスは、インド太平洋地域の平和と繁栄の促進に向けてアメリカの関与を再確認したとの声明を発表した。
24日(火曜)と25日(水曜)、中国の王毅外相が来日、菅政権下で初の中国要人の来日である。茂木外相と王外相はビジネス往来の再開で合意した。日本国内の新型コロナウイルス感染再拡大で、中国側は難色を示していたが、「交渉で勝ち取った」(日本外務省関係者)と言われる。共同記者発表で茂木外相は、会談の成果に柔和な表情を浮かべた。なお習主席の国賓訪日について公式の言及はなかった。
ところが共同記者発表の最後に、王外相が「正体不明の日本漁船が頻繁に釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の敏感な海域に入っている」と主張し、共同発表はそこで終了した。翌26日の自民党会合は荒れた。「すぐ反論すべきだった」「黙認しているようだった」。出席者らは、王氏に尖閣諸島一方的な主張を許したとして、政府の対応を問題視した。
中国に対する日本国内の世論は厳しくなっている。NPOなどが今秋、日中共同で行った世論調査でも、日本人の対中意識は4年ぶりに悪化し、中国に抱く印象が「良くない」と答えた人は9割近くに上っている。
一方の中国は、菅政権が発足した9月の段階では習主席訪日の早期実現に意欲的であった。米大統領選挙後も対米関係の大幅改善は困難と読み、日本との連携を強める狙いがあった。
中国共産党関係者は「習主席自身が前向きで、外交当局に指示が下りていた」と明かす。9月25日に習主席が菅首相と電話協議した4日後、孔鉉佑駐日大使が「中国は対日関係の発展を一貫して重視している」とのメッセージを発表したのも、その一環とみられる。
だが、今回訪日した王外相は、「具体的な協議には入らない。双方が適切な条件と環境を醸成する必要がある」(朝日新聞の取材)と語った。習主席訪日に向けた中国側の機運は、ここに来て急速にしぼんでいる。最大の理由は、日本国内の対中感情の改善に菅政権が積極的ではないと判断したことである。
尖閣諸島の接続水域内で中国公船の航行が続く問題について、中国海警局元幹部は「我々からすれば、漁以外の政治的な意図を持った日本の漁船が釣魚島(尖閣諸島の中国名)に繰り返し入ってくる構図だ。一部の政治団体が対立をあおるのを、日本政府は止めなくなった」と憤る。香港問題などへの日本政府の対応にも、中国外交筋は「中国の内政問題に手を突っ込んでいる」と不満を募らせる。
さらに日本で新型コロナの「第3波」が広がり、「習氏が訪問できる状況ではなくなった」(外交筋)。中国が模索していた来春までの習主席訪日は、ほぼ振り出しに戻った状況である。日本側には、日中国交正常化50周年を迎える2022年への先送りを主張する声もある。
また来夏から2022年にかけては、共産党結党100周年(2021年)や北京冬季五輪、共産党大会(2022年)等の重要イベントが目白押で、中国にとっても習主席訪日の判断は困難を極めそうである。
同じ25日、菅首相が王外相と約20分会談、菅首相は中国公船が尖閣諸島で頻繁に領海侵犯があると懸念を表明した。会談後、王外相は「中日関係の発展に影響しないよう取り組んでいきたい」と記者団に語った。
国際環境が複雑化するなかで日本外交の舵取りは容易ではない。日本のみならず世界中の外交も模索を重ねている。そんな折、日経新聞の26日朝刊オピニオン欄に掲載された秋田浩之「菅外交、強さともろさ」は一つのヒントになる。
【国際スポーツ大会の動向】
国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が来日し、15日~18日の4日間にわたり関係者との会談や五輪・パラリンピック施設の視察などの日程をこなした。
菅首相は「人類がウイルスに打ち勝った証し」として予定どおり来夏に大会を開催すると述べ、会長も「決意を共有する」と語ったが、時も時、全国に感染が急拡大し始めている。
国内の競技大会も、多くは観客を入れないなど厳格な条件の下で少しずつ経験を積んでいる段階であり、プロ野球の観客数の制限撤廃は来年2月まで延期された。そのことと200を超す国・地域から選手らが集まり、多種多様な競技を、分散した会場で、短期間に集中的に実施する五輪・パラリンピックとを同列に論じるわけにはいかない。課題はあまりにも大きい。
19日午前、菅首相は官邸で記者団の質問に対して、飲食の際も会話時はマスクを着用する「静かなマスク会食」を実践するよう呼びかけた。「私もきょうから徹底したい」と述べた。
【国内のコロナ対策と経済活性化】
新型コロナウィルス感染症の新規感染者が急拡大している。そのなかで重傷者が増え、病床が逼迫、重症患者の対応には10倍もの医療スタッフが必要となるため、大幅に不足してきた。感染防止と経済活動の両立を模索するなか、政府は科学者の意見を尊重し、ようやく感染防止の短期集中策に傾注する方向へ動き出した。
その過程を追うため、まず感染者と重症者の推移を確認したい。新規感染者数は検査数に比例するので曜日等の検査体制の影響を受けるが、重症者数はまぎれもなく病床逼迫を示す先行指標である。全国も東京都も重症者数の急増が恐ろしい。他の道府県の数字は出していないが、のちに病床使用率の一部を掲載する。
前者が全国の感染者(陽性者、カッコ内は重症者)、後者が東京(同左)。
19日(木曜) 2388人(280人)と534人(38人)
20日(金曜) 2421人(291人)と522人(40人)
21日(土曜) 2591人(313人)と539人(40人)
22日(日曜) 2165人(323人)と391人(40人)
23日(祝日) 1518人(331人)と314人(41人)
24日(火曜) 1228人(345人)と186人(51人)
25日(水曜) 1946人(376人)と401人(54人)
26日(木曜) 2504人(410人)と481人(60人)
なお27日(金曜)午後、東京で新たに570人が感染、過去最多との速報あり。
19日(木曜)の都内の新規感染者534人のうち、およそ40%にあたる216人はこれまでに感染が確認された人の濃厚接触者で、残りのおよそ60%の318人は、これまでのところ感染経路がわかっていない。濃厚接触者の内訳は、<家庭内>が87人で最多、次いで<職場内>が60人、<施設内>が28人、<会食>が10人等で、このうち<家庭内>では、10歳未満から80代までの幅広い年代で感染が確認され、人数はこれまでで最多となった。
小池都知事は会食で感染した人が家庭に持ち込む事例が多いとして<5つの注意>を示した。とくに21日(土曜)から23日(月曜、勤労感謝の日)にかけての3連休に向けて事は急を要する。
19日夕方、東京都は新型コロナウイルスの都内の状況を話し合うモニタリング会議を開き、4段階で示す感染状況の警戒レベルを最高の<感染が拡大している>に引き上げた。都内では同日、新規感染者が534人確認され、初めて500人を超えた。2日連続で過去最多も更新、感染の急速な広がりが鮮明になっている。
都が警戒レベルを最も高くするのは7月15日~9月10日以来。新規感染者数と感染経路不明者数が急増していることを踏まえ、強く警戒を呼び掛けることが必要と判断した。医療提供体制の警戒レベルは重症者数が大きく増えていないことなどから、4段階で上から2番目の<体制強化が必要>を維持した。
都によると、直近7日間を平均した1日あたりの感染者数は、今月4日時点で165・4人だったが、18日時点は325・7人にほぼ倍増。感染経路不明者は5割を超える状況が続き、全ての年代で感染が広がっている。感染が疑われる人の検査体制を拡充し、1日あたりの検査件数が8000件を超えるなど、以前より増えたことも感染確認が増える要因とみられる。
小池知事は19日の臨時記者会見で、1日あたり1000人の新規感染者が出ることを想定して準備を進めていると明らかにし、「都民、事業者、行政が一体となって、気を緩めないで、感染防止対策を徹底してほしい」と述べたが、営業時間の短縮や外出自粛は求めなかった。また小池知事は記者会見で「重症者数は増えてない」と説明。ただ、高齢者の新規感染者数が増加している状況を踏まえ「高齢者や基礎疾患がある人、同居する家族はできるだけ会食への参加を控えてほしい」と呼び掛け、会食時の感染リスクを減らすため、「小人数」「小一時間」「小声」「小皿」「小まめ(な手洗いなど)」の「5つの小」の実践を訴えた。
同じ19日(木曜)、専門家組織の会合後、座長の脇田隆字国立感染症研究所長は会見で、「今後、重症化する人が増加する。救急医療の受け入れや手術を抑制しないといけない状況になると想定される」と述べ、今の感染状況に危機感を示した。感染拡大の要因には、①基本的な感染予防対策が不徹底、②人の移動の増加、③気温の低下、の3つを挙げた。
メンバーの尾身氏も「何かしら対応が必要なのは間違いない」と話し、20日開催の政府の分科会で対策を提言する考えを明らかにした。以前の9日、専門家組織のメンバーが多く参加する政府の分科会は、対策強化を求める緊急提言を出している。尾身会長は「急激な感染拡大に至る可能性が十分ある」と強調したが、19日の会合の評価では、改善はまだ見られない。むしろ「2週間で2倍を超える伸び」など厳しい言葉が並ぶ。
メンバーの一人は会合後、「今の状況がかなり厳しいということが伝わっていない」と焦りを見せた。保健所の負荷が増し、医療現場の逼迫(ひっぱく)感は病床使用率という数字で見るよりはるかに強いと指摘する。
ソフトバンクの子会社「アグープ」のデータで、緊急提言が出た9日と1週間後の人出を比べると、東京駅で4・4%減、札幌駅で2・7%減、大阪駅で1・2%減にとどまった。名古屋市の栄駅はほぼ横ばい、福岡市の天神駅は逆に4%増えた。4月の緊急事態宣言では、大阪駅で53%減、東京駅で42%減などと大きく減っていた。
広井悠東大准教授(都市防災)が指摘するのは、「警報慣れ」という現象だ。「何度も警報が出て自分が無事だと、『次も大丈夫だろう』と事態を過小評価しがちだ。…夏の第2波は死者は大きく増えずに収まったが、現在の第3波は亡くなる恐れが高い高齢者も増えている。適切なリスク意識を持ってもらうことが重要だ」。症状がなくて気づかず、人に感染させるリスクもある。「若い世代には、『高齢者のために行動を変えよう』と説明することも有効」と話す。
19日に感染者数が過去最多となったのは北海道、東京都、静岡県をふくめて8都道府県にわたるが、それぞれに状況は異なる。急拡大した静岡県の病院は「病床フル稼働は難しいとする。感染症指定医療機関の一つで、重症者を受け入れできる静岡市立静岡病院(静岡市)は、19日午後3時時点で感染者用の17病床に5人が入院しており、残りは12床あるものの、対応する職員数に限界がある。
例えば、複数の患者で症状が重ければ多くの職員がかかり切りになるため、必ずしも全病床をフル活用できないという。関係者は「重症者が増え続ければ、病床が実質的に逼迫(ひっぱく)する可能性は高い」と話した。
メンバーの一人は会合後、「今の状況がかなり厳しいということが伝わっていない」と焦りを見せた。保健所の負荷が増し、医療現場の逼迫(ひっぱく)感は病床使用率という数字で見るよりはるかに強いと指摘する。
静岡県伊豆半島の海沿いにある老舗ホテルは政府の観光支援事業「Go To トラベル」で満室が続いていた。第3波が鮮明になった後の2、3日前から、少人数団体のキャンセルが相次ぐものの、週末の3連休は現状で満室のままだという。女性従業員は「客足が戻ったのはうれしいが、感染から客も従業員も守らないといけない」と心境を吐露。宿泊客の人数制限などの対策を検討しているという。
20日(金曜)、神奈川県の黒岩知事は県内のGo To イートの発売を今月25日から一時中止することを決めた。
同じ20日、東京足立区のバス会社の日帰りバス旅行に参加した12人の女性の感染が確認された。区は、バス旅行で感染者の集団=クラスターが発生したとみて調べている。今月8日、区内にあるバス会社がバス2台で日帰りの果物狩りに群馬県へ行く旅行を実施したところ、16日になって60代の女性が感染していることが確認された。同行の参加者と従業員合わせておよそ70人が各自で検査を受けたところ、いずれも40代から80代までの女性参加者11人の感染が確認された。このバス会社は、参加者の検温や車内の消毒、窓開けなどの感染防止対策を徹底していたという。
同じ20日、全国の1日当たりの新規感染者数が過去最多を連日更新し、感染症の専門家らでつくる分科会が見直しを求める提言をまとめ、政府に提出した。尾身会長は「感染拡大は色々な要素で影響を受けるが、その一つが間違いな
く人の動き」とも指摘した。
また会食時のマスク着用や人との距離の確保といった様々な感染対策を求めている中で「<Go To キャンペーン>で人が動くということを続けて
しまうと、メッセージの一貫性がなくなる」と訴えた。背景にあったのは医療崩壊への危機感である。
ある分科会メンバーは、「ここで感染拡大を抑え込まねば、来夏の東京五輪・パラリンピックの開催にも影響が出かねない。経済への打撃も深刻になるだろう」と、首相が最重視する東京大会への悪影響を伝えたという。
その夜の記者会見で、西村大臣は新型コロナウイルスの感染の急拡大に伴う消費喚起策<Go To キャンペーン>の運用見直しについて、翌21日に開催する政府対策本部で方向性を出せるよう関係省庁で検討を急ぐ考えを示した。政府の分科会が、一部の都道府県で感染が急増していることを踏まえ、<Go To>の運用見直しを盛り込んだ提言を決めたことを受けたもの。
西村大臣は「提言を踏まえ、それぞれの項目について早急に対応したい。そのうえで、明日の政府対策本部で方向性を出せるよう検討を急ぎたい」と語った。<Go To トラベル>については「観光庁で早急に検討されると考えている」と述べ、飲食店支援<Go To イート>については、「都道府県知事の判断で食事券の新規発行の一時停止なども行われている」と指摘。「農林水産省からできるだけ早急にそれぞれの知事に検討を要請することになると思う」とした。
21日(土曜)夕方、新型コロナウイルス感染症対策本部を開催、ここで菅首相は初めて「感染拡大が一定レベルに達した地域ではその状況を考慮し、都道府県知事と連携し、より強い措置を講じる。<Go To トラベル>事業については感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止するなどの措置を導入する」と述べ、飲食店支援の<Go To イート>も、プレミアム付き食事券の新規発行の一時停止やポイント利用を控えるよう各知事に検討を求める考えを示した。
22日(日曜)と23日(月・祝)の連休中、好天に恵まれ、各地の行楽地への人出は、想定以上に多く、新幹線や幹線道路の込み具合も異常と思われた。感染拡大や病床逼迫の懸念が広く届いていない印象を受けた。
24日(火曜)、連休明けに開かれた厚労省に助言する専門家の会合では「特に北海道や首都圏、関西圏、中部圏を中心に顕著な増加が見られる」と評価、このままの状況が続けば、入院患者や重症患者が増加し、医療現場が逼迫して、通常では助けられる命も助けられなくなるとして、強い危機感を示した。
25日(水曜)午後6時から、専門家会合を受けて、政府の分科会が開かれた。その冒頭で、西村大臣は「新規陽性者の増加傾向が強まり、最大限の警戒感をもって対応している。特に感染者の数が増加している地域では、医療のひっ迫が懸念されており、国民の命を守るため、何としても回避しなければならない」と述べた。そのうえで、当面、2021年2月末まで継続としているイベントの開催制限について、地域の感染状況に応じ、都道府県知事の判断で、より厳しい制限を課すことも可能と、改めて都道府県に通知する考えを示した。
田村厚労大臣は「『通常の医療を提供しづらくなっている』という、悲鳴のような声も聞いている。医療が崩壊すれば、国民の命を守れないし、大変な局面に入りつつあるので、より緊張感をもって取り組みたい。国民には、ぜひ、マスクの着用をはじめとする予防策を徹底してほしい」と述べた。
分科会の提案は、都道府県に対し、感染が急速に拡大している「ステージ3」にあたる地域を早期に判断し、3週間程度の短期間に集中して対策を行ってほしいとしている。そして、感染が急速に拡大している地域との間の往来の自粛を求めているほか、「ステージ3」にあたる地域では、酒を提供する飲食店への営業時間短縮の要請などを、速やかに検討するよう求めた。
26日(木曜)は、折しも緊急事態宣言が全国で解除されて半年になる日である。全国で、PCR検査や入院患者の受け入れ態勢の整備が進む一方、病床も逼迫しつつある。厚労省によると、全国で対応可能なPCR検査の数は、半年前の5月下旬の時点で約2万4500件であったが、8万5500件と3倍以上に増加した。
入院患者のために確保された病床も、およそ1万8300床から1.5倍の2万7000床と増加するも、感染拡大による入院患者の増加で病床は逼迫している。全国平均で7.5%だった病床使用率は11月18日の時点で3倍近い22%に上昇した。病床使用率がとくに高い都道府県は、兵庫=44%、大阪=41%、北海道=38%、埼玉=37%、沖縄=35%、東京と愛知=33%である。
26日現在、営業時間の短縮や往来の自粛を求める要請が大都市を中心に広がった。以下に具体例を掲げる。
▽東京都は23区と多摩地域にある酒を提供する飲食店やカラオケ店に対して、11月28日から12月17日までの20日間、営業時間を午後10時までに短縮するよう要請、全面的に応じた事業者には一律40万円の協力金を支給する。
▽大阪府は大阪市北区と中央区にある、酒を提供する飲食店やカラオケ店などを対象に、11月27日から、12月11日までの15日間、営業時間を午後9時までに短縮するよう要請した。応じた店舗には50万円の協力金を支給、業種別ガイドラインを順守していない店については休業を要請する。
▽北海道は、11月7日から、札幌市の繁華街ススキノに、バーなどは営業時間を、カラオケ店や居酒屋などは酒を提供する時間を、それぞれ午後10時までに短縮するよう求めてきた(当初、11月27日までとした)が、12月11日までに延長、さらに札幌市内全域の接待を伴う飲食店については12月11日まで休業するよう要請した。札幌市は、休業要請に応じた接待を伴う飲食店には60万円を支給。ススキノと狸小路商店街には営業時間を午後10時までと要請、応じたカラオケ店や居酒屋などに30万円の協力支援金を支給するとした。
▽愛知県は名古屋市中区の一部地域にある酒類を提供する飲食店やカラオケ店などに対し、11月29日から12月18日まで、県の感染防止ガイドラインを守っている場合は営業時間を午前5時から午後9時までとし、最大で40万円の「協力金」を支給する。またガイドラインを守っていない飲食店には休業を要請する。
【新型コロナ対策 外国の動き】
アメリカの感染拡大がつづき、感染による死者が増加、第2波を超え、各地で外出制限等の規制導入を急いでいるが、詳しく述べる紙幅がない。BS1「週間ワールドニュース「新型コロナに揺れる世界(11月16日~20日)」22日を参照。
【続6 米大統領選】⇒<続報>~<続報3>は前々号(23)に、<続4>は前々号(24)に、<続5>は前号(25)にあり。
本ブログの前号(25)で、ジャーナリスト木村太郎氏の「接戦を制し、勝利が確実に見えるバイデン氏だが、実はトランプ氏が合法的に逆転可能なシナリオがある」の発言を引き、その根拠が約130年前の1887年に制定された<選挙人算定法>の承認領域条項の一文にあると述べた。これに関連する続報が出てきた。
19日(木曜)、CNNは、大統領選で不正があったとしてトランプ陣営が起こしていた訴訟がアリゾナ州、ペンシルバニア州の裁判所で、またジョージア州の連邦裁判所で相次いで退けられたと、トランプ陣営のジュリアーニ顧問弁護士が語ったと伝えた。
同じ日、米ワシントンポスト紙はトランプ陣営の法廷闘争の狙いは、選挙結果の正式な確定を遅らせることにあると伝えた。大統領選の次のプロセスは、各州の州議会が選挙結果に基づいて選挙人を選び、その選挙人が12月14日に各州で投票して結果を正式に確定する。
また米ニューヨークタイムズ紙は、トランプ陣営のジュリアーニ顧問弁護士が州議会の共和党員議員に働きかけ、選挙結果を無視してトランプ支持の選挙人を選ぶことを狙っているものの、激戦区だったミシガン州(選挙人16人)やペンシルベニア州(同20人)の共和党議員はこれに否定的で、バイデン勝利の選挙結果が覆る可能性はないと伝えた。
両州の選挙人の合計は36人、トランプ氏の選挙人獲得数の232人を足すと268人と過半数の270に迫る。どこか他の1州が反旗をひるがえせばトランプ勝利の計算になる。その可能性を否定する、メディアの政治的発言の色彩がまったくないとは言えない。
21日(土曜)の朝日新聞デジタルは、「米大統領選で支持の強さと厚みを見せつけたトランプ大統領。政権の座から退いても、影響力は衰えそうにない。米国でトランピズム(トランプ主義)は消えないのか」として各界の見解をインタビュー形式で掲載した。
その一つが宗教学者の中村圭志氏のインタビューで、「怨念から生まれた救世主」と題する記事。「トランプ現象は宗教に似ている。人々に救済を約束するのが宗教だとすれば、トランプ氏は、支持者たちにとって救世主に近い期待を集める存在なのだと思う。…新型コロナにかかっても「復活」したトランプ氏に、救世主神話のようなものを読み取ることは、米国社会では荒唐無稽な話ではない」と語る。
また「トランプ氏には、世界各地の神話に見られるトリックスター的な性格もあります。うそをついたり、人をだましたりするけれど、結果的に人々に恩恵をもたらす。虚偽のツイートを連発しても支持者が離れないのは、トリックスターとして期待しているからかもしれません。」とも言う。
さらにアメリカの歴史をさかのぼり語る。「宗教としてのトランプ現象は、突然出てきたわけではありません。米国は開拓によってゼロからつくられた国です。人々をまとめてきたのが教会で、宗教による団結が正統性を持っている。さらに、アメリカンドリームという自己実現の英雄神話を求めるところが強くあります。一方で、自己実現できなかった人たちは、成功した人たちへの怨念を抱かざるをえない。それをすくい上げた「救世主」がトランプ氏です。トランプ現象は、米国の怨念と分断の歴史から生まれたものです。」
また次のようにつづける。先進国では珍しく宗教の影響力が強い米国社会には、「信じやすい」風土があります。さらに競争社会で、宣伝やイメージ戦略の手段が極度に発達しています。陰謀論を非常に効果的に流すことができるんです。…社会学者ロバート・ベラーは、米国社会には<市民宗教>があると唱えました。米国に国教はありませんが、民主主義の制度の中に宗教性が込められていると考えたのです。大統領が就任式で、聖書に手をあてて誓うのはその表れともいえます。
市民宗教はナショナリズムと結びつけられやすいのですが、ベラーはナショナリズムを乗り越えるものと捉えていました。その意味では、内向きでナショナリズム的なトランプ氏よりも、外向きのバイデン氏のほうが米国の市民宗教の伝統を受け継いでいるとも言えます。
宗教としてのトランプ現象を支えているのは、米国の社会構造が生む怨念です。これを解決するのは極めて難しく、トランプ現象はまだ続くかもしれません。しかし、私は楽観的に見ています。米国でさえ、若い世代の宗教離れは進み、無神論者が増えています。彼らには、トランプ氏の宗教的なメッセージは響かない。トランプ現象は、衰退していく宗教の最後のあだ花のようなものになると思います。
以上、いささか長くなったが、中村圭志さんの<語り>を引用した。アメリカ社会の深部にある感情と思想の一端が示されており、米大統領選と、そのこれからを知る参考になった。
トランプ大統領が次期大統領選の一般選挙の結果を認めず、<敗北宣言>を行わず、不正等を理由に法廷闘争に持ち込んでいるため、<政権移行>が大幅に遅れ、超大国アメリカに政治の空白が生まれている。
そこに24日(火曜)、バイデン次期大統領の陣営は第一次の閣僚を公表した。国務長官にアントニー・ブリンケン(オバマ政権で国務副長官、58歳)と大統領特使(気候変動問題担当)にジョン・ケリー(オバマ政権で国務長官、76歳)。また財務長官にジャネット・イエレン前FRB議長(74歳)の起用説が流れている。
バイデン演説を受けて、閣僚の発表に当たったのは新政権の要となる大統領首席補佐官ロン・クレイン、今月11日にバイデンが起用すると発表していた。クレインはオバマ政権時代にバイデン副大統領みずからの首席補佐官だった人物である。
同じ24日、トランプ大統領はバイデン次期大統領への<政権移行チーム>を容認、政治空白の懸念は回避される方向に歩みだした。次期大統領への政権移行の開始に関する権限を持つ米連邦政府一般調達局(General Services Administration、GSA)のエミリー・マーフィー局長が23日、引き継ぎ作業を容認するとバイデン氏に書簡で伝達した。ついでトランプ大統領がツイッターで「国益のために必要な措置を取るよう(一般調達局に)薦めた」と表明した。
<政権移行チーム>は国務省・国防総省・中央情報局(CIA)などから最新の機密情報を手に入れ、かつ各省高官と公式に接触することができるようになった。大統領の交代にともない数千人規模の官僚が入れ替わるアメリカの制度では、政権移行の具体化には相当の時間を要する。
同日、政権移行を好感したニューヨーク株式市場は3万ドルを突破した。トランプ政権下の4年で株価が5割上昇した巨大IT企業がけん引、そこに金融緩和でだぶついた金が流れ込んだ。噂されるイエレン前FRB議長の財務長官起用説への期待もあると言われる。
【国際環境と日本外交】
本ブログの前号(24)で述べたRCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership、略称:RCEP、アールセップ、東アジア地域包括的経済連携)について、19日(木曜)、中国の習近平国家主席が積極的に参加すると前向きな表明があった。
18日(水曜)の日経新聞(朝刊)は、トップで「Co2の地下貯留で連携 日米豪とASEAN」と報じた。火力発電所、製油所等多くの工業施設から排出されるガスから二酸化炭素(Co2)を分離して回収し、地下深くのCo2を通さない地層のさらに下の層に貯留する技術がCCS(carbon dioxide capture and storage)と呼ばれ、さらに有効利用(utilization)を加えたものをCCUSと呼ぶ。いま世界で約20件が稼働中、約60件のプロジェクトが進行中。
菅首相は、就任早々、2050年までに温暖化ガス排出を実質ゼロにする<カーボンニュートラル>を実現すると表明したが、その具体化の方法の一つが<Co2の地下貯留>である。温暖化ガスの<排出量>と<回収量>を同じにすればゼロになる。再生可能エネルギーの拡大、水素の活用を進めても、鉄鋼や化学等の産業からの排出がつづくため、アジアで排出されるCo2を現地で貯留する事業で協力し、その分を日本での排出分と相殺できる排出権取引の国際ルールに沿った方法。
まず2021年からCo2を貯留できる候補地の一覧を作る。油田やガス田の多いアジアは地下貯留の候補地も多いとされる。貯留量、コスト、環境への影響等を調査し、2030年から商業利用の開始をめざす。日本は国際石油開発帝石が豪州で検討を始めている。
21日(土曜)昼、TBSが「APEC、3年ぶり首脳宣言を採択」と報じた。APEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議は、「新型コロナウイルスからの経済回復のため、自由で開かれた貿易環境の重要性を認識する」と明記した首脳宣言である。
APEC首脳会議は、日本やアメリカ、中国など21の国と地域が参加し、20日、オンライン形式で開かれた。3年ぶりに採択された首脳宣言では、各国が直面している新型コロナによる経済への影響について、参加国の間の連携・協力の重要性を認識した、としている。
また、中国国営の新華社通信によると、首脳会議では習主席がTPP=環太平洋パートナーシップ協定参加について「積極的に検討する」と表明した。中国は、自由貿易に開放的な姿勢を打ち出すことで2017年にTPPから離脱したアメリカに対抗する狙いがあるとみられる。
トランプ大統領にとっては大統領選挙で民主党のバイデン氏の勝利が確実になってから初めての国際会議となり、ホワイトハウスは、インド太平洋地域の平和と繁栄の促進に向けてアメリカの関与を再確認したとの声明を発表した。
24日(火曜)と25日(水曜)、中国の王毅外相が来日、菅政権下で初の中国要人の来日である。茂木外相と王外相はビジネス往来の再開で合意した。日本国内の新型コロナウイルス感染再拡大で、中国側は難色を示していたが、「交渉で勝ち取った」(日本外務省関係者)と言われる。共同記者発表で茂木外相は、会談の成果に柔和な表情を浮かべた。なお習主席の国賓訪日について公式の言及はなかった。
ところが共同記者発表の最後に、王外相が「正体不明の日本漁船が頻繁に釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の敏感な海域に入っている」と主張し、共同発表はそこで終了した。翌26日の自民党会合は荒れた。「すぐ反論すべきだった」「黙認しているようだった」。出席者らは、王氏に尖閣諸島一方的な主張を許したとして、政府の対応を問題視した。
中国に対する日本国内の世論は厳しくなっている。NPOなどが今秋、日中共同で行った世論調査でも、日本人の対中意識は4年ぶりに悪化し、中国に抱く印象が「良くない」と答えた人は9割近くに上っている。
一方の中国は、菅政権が発足した9月の段階では習主席訪日の早期実現に意欲的であった。米大統領選挙後も対米関係の大幅改善は困難と読み、日本との連携を強める狙いがあった。
中国共産党関係者は「習主席自身が前向きで、外交当局に指示が下りていた」と明かす。9月25日に習主席が菅首相と電話協議した4日後、孔鉉佑駐日大使が「中国は対日関係の発展を一貫して重視している」とのメッセージを発表したのも、その一環とみられる。
だが、今回訪日した王外相は、「具体的な協議には入らない。双方が適切な条件と環境を醸成する必要がある」(朝日新聞の取材)と語った。習主席訪日に向けた中国側の機運は、ここに来て急速にしぼんでいる。最大の理由は、日本国内の対中感情の改善に菅政権が積極的ではないと判断したことである。
尖閣諸島の接続水域内で中国公船の航行が続く問題について、中国海警局元幹部は「我々からすれば、漁以外の政治的な意図を持った日本の漁船が釣魚島(尖閣諸島の中国名)に繰り返し入ってくる構図だ。一部の政治団体が対立をあおるのを、日本政府は止めなくなった」と憤る。香港問題などへの日本政府の対応にも、中国外交筋は「中国の内政問題に手を突っ込んでいる」と不満を募らせる。
さらに日本で新型コロナの「第3波」が広がり、「習氏が訪問できる状況ではなくなった」(外交筋)。中国が模索していた来春までの習主席訪日は、ほぼ振り出しに戻った状況である。日本側には、日中国交正常化50周年を迎える2022年への先送りを主張する声もある。
また来夏から2022年にかけては、共産党結党100周年(2021年)や北京冬季五輪、共産党大会(2022年)等の重要イベントが目白押で、中国にとっても習主席訪日の判断は困難を極めそうである。
同じ25日、菅首相が王外相と約20分会談、菅首相は中国公船が尖閣諸島で頻繁に領海侵犯があると懸念を表明した。会談後、王外相は「中日関係の発展に影響しないよう取り組んでいきたい」と記者団に語った。
国際環境が複雑化するなかで日本外交の舵取りは容易ではない。日本のみならず世界中の外交も模索を重ねている。そんな折、日経新聞の26日朝刊オピニオン欄に掲載された秋田浩之「菅外交、強さともろさ」は一つのヒントになる。
【国際スポーツ大会の動向】
国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が来日し、15日~18日の4日間にわたり関係者との会談や五輪・パラリンピック施設の視察などの日程をこなした。
菅首相は「人類がウイルスに打ち勝った証し」として予定どおり来夏に大会を開催すると述べ、会長も「決意を共有する」と語ったが、時も時、全国に感染が急拡大し始めている。
国内の競技大会も、多くは観客を入れないなど厳格な条件の下で少しずつ経験を積んでいる段階であり、プロ野球の観客数の制限撤廃は来年2月まで延期された。そのことと200を超す国・地域から選手らが集まり、多種多様な競技を、分散した会場で、短期間に集中的に実施する五輪・パラリンピックとを同列に論じるわけにはいかない。課題はあまりにも大きい。
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