人類最強の敵=新型コロナウイルス(19)
9月11日(金曜)午後、前稿(18)を掲載した後に、政府の分科会が歓楽街からの感染拡大を防ぐ具体的な対策を検討するワーキンググループを設置することを決めた。医師、歓楽街事業者の代表、保健所の関係者、合わせて20名が参加し、通常時と感染拡大時(早期対応が必要)に分け、具体的な対策を検討する。
分科会の尾身会長は、「大都市の歓楽街で対策を行えば新型コロナウイルスのいわば<急所>を抑えられるが、今回の感染拡大では対応が少し遅れてしまった面がある。偏見や差別につながらないよう歓楽街の人たちと信頼関係を築きながら進める対策のあり方が望ましい」と話した。
12日(土曜)、ワクチン開発を進めているアストロゼネカ社が、独立委員会の判断で安全性が確保できたとして、中断していた治験を英国で再開した。同社日本法人は再開を検討中という。
同日の日経新聞1面の<チャートは語る>に「時代映す<総裁への道>」を掲げ、副題として「官房長官に重み」と「経済閣僚影薄く」を付している。1955年の自民党結党以来24人の歴代総裁の前職歴を分析し、官房長官・幹事長から総裁・総理になるケースが増え、逆に蔵相・財務相からは急落としている。
高度成長期には富の再配分にかかわる経済官僚が力を持ったが、平成に入って様相が一変した。1996年からの小選挙区制の導入とともに総裁は<選挙の顔>の側面が強まり、テレビでの露出度が高い政治家が有利になる時代になると、官房長官ルートが浮上する。また、省庁再編や国家公務員の幹部人事の一元化により官邸に権限が集中するにつれ、さらに官房長官の力が強まった。
これに加えて、菅氏の<無派閥>と<非世襲>が若手議員の共感を得て、<菅グループ>と言える議員が結集し、立候補を強く求めた。その数30~40人と言われる。菅氏支持を表明した5つの派閥に劣らぬ勢いである。
この数日間、大規模火災がアメリカ西海岸のワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州に拡がり、収まらない。焼失面積は広く、これまでにオレゴン州だけで3500平方キロ(東京都の1.6倍)に及び、約50万人に避難準備の指示が出た。
乾燥した熱波が太平洋岸からアメリカ西海岸へ東進したことに因るとされ、日本を襲った台風10号の影響との見方が強い。通常はまっすぐ東へ向かう偏西風が台風北上に伴い大きく蛇行、熱波を西海岸へ運びこんだとされる。広域火災はまた大気汚染の被害を招来している。
冬には南半球のオーストラリア(こちらは夏)でも大規模火災が起きた。温暖化による気候変動の影響と言われるが、まだ科学的な因果関係は完全には解明されていない。しかし異常気象による自然災害は<凶悪化>し、かつ多発している。
13日(日曜)、テレビや新聞各紙が自民党総裁選をめぐり立候補者の主張を報道した。まず総論とも言える政策方針に関する質問には、それぞれ色紙に石破茂氏が「納得と共感」、菅義偉氏が「自助・共助・公助」、岸田文夫氏が「分断から協調へ」と書いた。
ついで各論にあたる質問に入る。消費増税、金融政策、外交政策、コロナ対策、格差是正等についての主張に大きな違いは見られず、もどかしさが残る。
この日、テニスの大坂なおみ選手(日清食品)が全米オープン(ニューヨーク)で2年ぶり2度目の優勝を果たした。父親がハイチ出身で母親が北海道出身。「私はアスリートである前に黒人女性。私のテニスを見るより、もっと注意を向ける多くの重要なことがある」として、警官による射殺や暴行を受けた黒人の名前を書いた黒い<抗議マスク>を7枚(7回分)準備、決勝戦には2014年に警官に発砲されて死亡したタミル・ライス少年(当時12歳)の名入りマスクで登場した。
第1セットはアザレンカ(ベラルーシュ)に1-6で敗れるが、その後6-3、6-3と連取して逆転優勝。スポーツに政治を持ち込むのはどうかとの批判に、大坂は「政治問題ではなく、人権問題です」と返した。悩み、考え抜いたであろう22歳の、揺るぎない答えである。
同日の日経新聞の社会面に「コロナの記憶 100年残す マスクやチラシ<史料>に」と題する記事があった。全国に5000人と言われる博物館の学芸員(うち常勤の割合は減少して現在約65%)の活動の一例として、大阪府吹田市立博物館の五月女賢司さん(46歳)を取り上げる。
この3月から手作りされたマスクや経営難を訴える紳士服店のチラシ等、約80の個人・団体からの2000余点を受け、7月中旬から約1か月間、展示した。「…コロナは市民活動にどんな影響を与えたのか、後の検証の手掛かりになる。貴重な文化財だ」と五月女さんは語る。大きな試みである。
14日(月曜)、午後2時から自民党総裁選が行われ、実況放送を観た。衆議院議員283人、参議院議員111人の計394人のうち379人が出席。コロナ感染を避けるためホテルの大集会場を充てたとするが、びっしりと座る様子は、いささか<密>に見える。
議員の投票は無記名、それに47都道府県連の各3票(計141名)が加算され、午後3時20分ころに開票結果が明らかになった。 菅氏 377票、岸田氏 89票、石破氏 68票。大方の予想どおり菅氏が圧勝、獲得票数は7割を超えた。
21票差をつけて石破氏を破った岸田氏は、国会議員票79と地方票10を獲得、対する石破氏は同じく26と42である。地方票で劣る岸田氏が議員票で自己派閥の47人を30人以上も上回る票を得たのは、<施し票>と呼ばれる議員票の動きがあったとされる。今回の総裁任期は安倍前総裁の残任期間の来年9月30日までの1年間(衆議院議員の任期は来年10月まで)。岸田氏は次回の総裁選に可能性を残したと言われる。
菅新総裁は、当選直後の記者会見で「…役所の縦割り、既得権益、悪しき前例を打破して規制改革を徹底してやりたい。…」と述べ、<改革派の顔>を前面に押し出した。具体策としては①コロナ対策ではデジタル化の推進、コロナ収束後に厚労省等の組織のあり方を検証、②中小企業・地銀の再編、③携帯電話料金の値下げ、④少子化対策として不妊治療の保険適用化、待機児童の完全解消等を掲げる。
この日のうちに菅新総裁は、麻生財務相、二階幹事長の再任を決め、また党の総務会長に佐藤勉氏(元総務相)、政調会長に下村博文氏(選挙対策委員長)、その後任の選挙対策委員長に山口泰明氏(組織運動本部長)を充てた。
翌15日(火曜)、野党の合流新党<立憲民主党>が結成大会を開き、枝野代表は代表代行兼選対委員長に平野博文氏、幹事長に福山哲郎氏、政調会長に泉健太氏、国対委員長に安住淳氏を充て、「政策で与党と競争を」と訴えた。
同日夕方、官房長官に加藤勝信氏(厚生労働大臣)を充てるとのニュース速報が入った。官房副長官、内閣府人事局長を歴任、菅氏の近くで働いた人物である。ここが決まって、組閣の中心が定まる。
同じ15日、三溪園の事務局から三溪園ボランティアさん219名に、8月に実施したアンケート結果等の資料を入れた厚めの書類を郵送した。添え状に「アンケート結果を受けて、庭園ボランティア、合掌造りボランティア活動の一部について再開することといたします。 しかし、新型コロナウイルスが収束するまでの間は、ボランティアの皆様ご自身の安全と安心を最優先に考えておりますので、不安を抱えている方は、決して無理をせず、活動休止を継続してください。…」と記した。
具体的には、①来園者と対面しない活動の庭園、合掌造り、自然観察会を再開し、②来園者と対面するガイドボランティアは休止を継続する。ボランティアの多くが高齢者であることが方針決定の大きな要因である。これは2020 年 10 月 1 日~2021 年 1 月末日までの方針で、見直しは 2021 年 1 月頃を予定している。
最後に「ガイドボランティア登録証(2021.3.31 期限)は有効ですので、受付で 登録証お見せいただければ、引き続き無料で入園できます。 家に籠る生活に疲れた方は、ぜひ遊びにきてください。」と付した。
16日(水曜)午前の臨時閣議で安倍内閣が総辞職、同日午後、衆参両院で菅氏が第99代首相に選出された。ついで加藤官房長官が20名の閣僚名簿を発表、皇居で首相親任式と閣僚の認証式を経て新内閣が正式に発足、初の閣議が開かれた。
その後、首相として初の記者会見があり、「<新型コロナウィルス対策と社会経済活動の両立>を最優先し、省庁の縦割り体質を打破して規制改革に取り組む」と改めて強調した。また質問に答えて、<桜を見る会>を来年以降は中止する意向を表明した。
明けて17日(木曜)、各種メディアは新内閣の今後をめぐり、様々に報じる。7年半前に発足した第二次安倍内閣に比べ、菅新内閣は大きな政策課題(憲法改正等々)ではなく<具体的政策の連鎖>に特徴があると言う。例えば携帯電話料金の値下げに関して、菅氏は「公共の電波を3社が寡占し20%の利益を上げている」と批判してきたが、その値下げ分が消費者の支出に回ることにより、大きな経済効果があるのを期待していると言う。
その他の規制改革についても国民の意見を聞く<縦割り110番>を設置し、そこから具体的政策を取り上げる<連鎖的展開>を考えているのではないか、これを行政改革・規制改革・沖縄北方領土担当の河野太郎行革相(前防衛相)に委任したと言われる。
早くもこの日の午後3時半ごろ、河野大臣が<行政改革目安箱(縦割り110番)>を個人サイトに開設したことをツイッターで発表。投稿フォームを通じて誰でも河野氏にメールを送信できる仕組みを始動させた。設置から約2時間半後の会見で「もう700通くらい来て(メールボックスが)破裂しそうな状況。かなり具体的な問題が届いていて、正直やって良かった」と反響の大きさを口にした。
なお翌日、河野大臣は「予想をはるかに超える数のご意見を頂き、整理のため、新規の受け付けを一時停止している」と説明、内閣府のホームページの<規制改革ホットライン>では引き続き意見を募集しているとして、活用を呼びかけた。
次のようなエッセー(日経新聞17日の「春秋」欄)があった(抜粋)。「…空手の演武を見ると、素人目には奇妙に映る動きがある。右の拳で突く直前、左の手が体の前で弧を描く。これは架空の相手が仕掛けてきた攻撃を受ける動作である。…菅氏は学生時代、空手部に所属していた。…自らが掲げるセールスポイントもまた、空手のイメージにつながる。…お手並みを拝見しよう。…」
18日(金曜)、前日と前々日の世論調査の結果が発表された。日経新聞の調査では支持率が74%(共同通信社の調査では64%)、前回8月の調査から19ポイントの上昇である。支持する要因として<人柄が信頼できる>が最多の46%、ついで<安定感がある>が来る。
この日、約2400億円の負債を抱えて倒産した磁気治療器販売会社「ジャパンライフ」(東京都・破産手続き中)が、客に虚偽の説明をして現金をだまし取ったとして、警視庁などの合同捜査本部は元会長の山口隆祥容疑者(78)ら幹部14人を詐欺容疑で逮捕した。
山口容疑者は、高額な磁気商品を同社が預かり、別の客に貸し出すレンタルオーナー制度を展開、<桜を見る会>で安倍前首相に招待されたことを宣伝に使い顧客を信用させたことで記憶に新しい。逮捕が菅首相の就任2日後のことであり、様々な憶測が飛び交う。加藤官房長官も名義と写真を使われ、記者の質問に「(その時すぐ)事務所から厳重抗議を行った」と釈明した。
19日(土曜)、4連休(シルバーウィーク)の初日である。この日からイベントの人数等の規制緩和が行われた。プロ野球の横浜スタジアムは、前日の5000人から1万3000余人に。セリーグ首位の巨人との一戦が行われ、7:1でベイスターズが快勝した。神宮球場やサッカーJリーグも観客数1万人を超えた。
映画館、劇場、寄席、音楽会もさまざまな工夫で開催。楽しむ観客の姿が見られた。鉄道も乗客が増え、新幹線の予約がほぼ満席に近い区間も出た。10月からは国交省所管の<Go To トラベル>の対象に東京発着も含まれる。農水省所管の<Go To イート>も始まり、秋の行楽シーズン到来が期待される。
人が動けばウィルス感染の機会が増える。新政権の最大の課題である「新型コロナ対策と社会経済活動の両立」の正念場が日常の中にあり、その代表例が観光や娯楽等の文化活動である。楽しむ対象はこれまでと大差ないが、楽しむ方法は旧来の<日常>ではなく、新しい<日常>でなければならない。少なくとも有効で安全なワクチンや<コロナ抗体薬>の普及までは。
この新しい<日常>とは、個々人が実践するものと、それを保障する社会的セーフティネット(安全網)からなる。前者には、マスク着用、手洗い、<3密>回避、それに混雑する車内等での会話を控えること…であろうか。これらを合わせて<コロナ・リテラシー>(新型コロナウィルスに関する科学的知識と防御のための技能)と言った人がいる。言いえて妙である。
もともと読み書き・識字の能力という意味で使わる<リテラシー>が、「ある分野に関する知識と技能」へと拡がった。その代表例がコンピュータ・リテラシー(いま流行の用語を使えばデジタル・リテラシー)であり、ついで今回のパンデミックにより生まれた<コロナ・リテラシー>である。全員が実践するのは無理であっても、これこそ感染対策の基本である。
このような個々人の<コロナ・リテラシー>向上を前提として、家族・地域・国家・世界の社会的セーフティーネットをどのように築き上げるか。まずは企業団体ごとの運営指針の確立と執行、ついで医療・保険・介護体制の構築と財政的・人的支援、そして失速する経済活動への財政的支援である。
それらに関する予算措置はできたものの、執行段階で大幅な遅れが生じた一因が国・自治体等の組織内のデジタル化の遅れである。補助金や給付金の申請から交付までに要した長い時間は、先進国内で日本がもっとも遅れていることが判明、その失態ぶりに驚いた。たんなる一部の<目詰まり>ではなく、構造的な欠陥であろう。新政権が掲げる<デジタル庁>設置の成果が待たれる。
この日、台湾の民主化に尽力した李登輝元総統(97歳)の告別式が台湾北部の淡水にある真理大学で行われ、内外から約1500人が参加、アメリカからクラック国務次官、日本から森喜朗元首相が参列した。アメリカの高官が赴いたことに中国が抗議、戦闘機19機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側に侵入した。
休日を利用して録画しておいた特集類を観る。(1)NHKBS1ワールドニュース特集「新型コロナに揺れた1週間 9月7日(月曜)~11日(金曜)」(12日)。(2)NHKBS1スペシャル「在宅クライシス~医療・介護 最前線の闘い~」(12日)。(3)NHKBS1スペシャル「世界同時ドキュメント 私たちの闘い 自撮り映像でつづる半年間」(13日)。(4)NHKETV特集「パンデミックが変える世界 紛争地からのSOS」(19日)。(5)NHKBS1ワールドニュース特集「新型コロナに揺れた1週間 9月14日(月曜)~18日(金曜)」(20日)。
20日(日曜)、4連休の2日目、菅首相はオーストラリアのモリソン首相、ついでアメリカのトランプ大統領と、それぞれ20分と25分の初の電話協議を行った。菅首相は「日米同盟は地域の平和と安定のための基盤」と述べるとともに、新型コロナのワクチン・治療薬の開発・普及に向けた協力や、北朝鮮による日本人拉致問題の解決について協議した。
9年半前の東日本大震災(3・11)に伴う東京電力福島第1原子力発電所事故の記憶や教訓を後世に伝える「東日本大震災・原子力災害伝承館」(福島県立)が同県双葉町で開館、収蔵資料24万点のうち約170点を展示する。
21日(月曜、敬老の日)、各種イベントが多数の参加者で溢れた。世界一の店舗数を誇る横浜中華街もすっかり活気を取り戻した。嬉しいことではあるが、「新型コロナ対策と社会経済活動の両立」という世界が直面する政策課題を考えると、「人の移動がコロナを運ぶ」という確たる事実から目を背けるわけには行かない。
22日(火曜、秋分の日)、朝から全国的な秋晴れだったが、昼頃から曇り始めた。台風12号の進路予報図(5日先まで示せるシステムの初の適用)が東日本方面への進路と、24日(木曜)上陸の可能性を示した。
この間の感染者数の推移は以下の通り。全国(カッコ内は重症者)と東京都(同左)の順である。
11日(金曜) 643人(191人)と187人(24人)
12日(土曜) 648人(190人)と226人(23人)
13日(日曜) 439人(180人)と146人(24人)
14日(月曜) 268人(185人)と80人(22人)
15日(火曜) 531人(174人)と191人(21人)
16日(水曜) 551人(178人)と163人(23人)
17日(木曜) 491人(167人)と171人(27人)
18日(金曜) 572人(170人)と220人(26人)
19日(土曜) 601人(161人)と218人(25人)
20日(日曜) 480人(159人)と162人(27人)
21日(月曜、敬老の日) 312人(163人)と98人(27人)
22日(火曜、秋分の日) 331人(164人)と88人(30人)
東京の1週間あたりの感染状況は<微増>と言えるが、この4連休の大幅な人口移動から約2週間後の感染状況が気になる。欧州(とくに英国)では感染の再拡大(第2波)があり、再度の行動規制が強化された。
感染再拡大を受けてロンドン市場で株価が下落、ついでニューヨーク株も急落した。連休明けの23日(水曜)、東京市場の値動きはどうなるか。社会経済活動の退化が懸念されるが、その先に次の一手があると考えたい。
分科会の尾身会長は、「大都市の歓楽街で対策を行えば新型コロナウイルスのいわば<急所>を抑えられるが、今回の感染拡大では対応が少し遅れてしまった面がある。偏見や差別につながらないよう歓楽街の人たちと信頼関係を築きながら進める対策のあり方が望ましい」と話した。
12日(土曜)、ワクチン開発を進めているアストロゼネカ社が、独立委員会の判断で安全性が確保できたとして、中断していた治験を英国で再開した。同社日本法人は再開を検討中という。
同日の日経新聞1面の<チャートは語る>に「時代映す<総裁への道>」を掲げ、副題として「官房長官に重み」と「経済閣僚影薄く」を付している。1955年の自民党結党以来24人の歴代総裁の前職歴を分析し、官房長官・幹事長から総裁・総理になるケースが増え、逆に蔵相・財務相からは急落としている。
高度成長期には富の再配分にかかわる経済官僚が力を持ったが、平成に入って様相が一変した。1996年からの小選挙区制の導入とともに総裁は<選挙の顔>の側面が強まり、テレビでの露出度が高い政治家が有利になる時代になると、官房長官ルートが浮上する。また、省庁再編や国家公務員の幹部人事の一元化により官邸に権限が集中するにつれ、さらに官房長官の力が強まった。
これに加えて、菅氏の<無派閥>と<非世襲>が若手議員の共感を得て、<菅グループ>と言える議員が結集し、立候補を強く求めた。その数30~40人と言われる。菅氏支持を表明した5つの派閥に劣らぬ勢いである。
この数日間、大規模火災がアメリカ西海岸のワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州に拡がり、収まらない。焼失面積は広く、これまでにオレゴン州だけで3500平方キロ(東京都の1.6倍)に及び、約50万人に避難準備の指示が出た。
乾燥した熱波が太平洋岸からアメリカ西海岸へ東進したことに因るとされ、日本を襲った台風10号の影響との見方が強い。通常はまっすぐ東へ向かう偏西風が台風北上に伴い大きく蛇行、熱波を西海岸へ運びこんだとされる。広域火災はまた大気汚染の被害を招来している。
冬には南半球のオーストラリア(こちらは夏)でも大規模火災が起きた。温暖化による気候変動の影響と言われるが、まだ科学的な因果関係は完全には解明されていない。しかし異常気象による自然災害は<凶悪化>し、かつ多発している。
13日(日曜)、テレビや新聞各紙が自民党総裁選をめぐり立候補者の主張を報道した。まず総論とも言える政策方針に関する質問には、それぞれ色紙に石破茂氏が「納得と共感」、菅義偉氏が「自助・共助・公助」、岸田文夫氏が「分断から協調へ」と書いた。
ついで各論にあたる質問に入る。消費増税、金融政策、外交政策、コロナ対策、格差是正等についての主張に大きな違いは見られず、もどかしさが残る。
この日、テニスの大坂なおみ選手(日清食品)が全米オープン(ニューヨーク)で2年ぶり2度目の優勝を果たした。父親がハイチ出身で母親が北海道出身。「私はアスリートである前に黒人女性。私のテニスを見るより、もっと注意を向ける多くの重要なことがある」として、警官による射殺や暴行を受けた黒人の名前を書いた黒い<抗議マスク>を7枚(7回分)準備、決勝戦には2014年に警官に発砲されて死亡したタミル・ライス少年(当時12歳)の名入りマスクで登場した。
第1セットはアザレンカ(ベラルーシュ)に1-6で敗れるが、その後6-3、6-3と連取して逆転優勝。スポーツに政治を持ち込むのはどうかとの批判に、大坂は「政治問題ではなく、人権問題です」と返した。悩み、考え抜いたであろう22歳の、揺るぎない答えである。
同日の日経新聞の社会面に「コロナの記憶 100年残す マスクやチラシ<史料>に」と題する記事があった。全国に5000人と言われる博物館の学芸員(うち常勤の割合は減少して現在約65%)の活動の一例として、大阪府吹田市立博物館の五月女賢司さん(46歳)を取り上げる。
この3月から手作りされたマスクや経営難を訴える紳士服店のチラシ等、約80の個人・団体からの2000余点を受け、7月中旬から約1か月間、展示した。「…コロナは市民活動にどんな影響を与えたのか、後の検証の手掛かりになる。貴重な文化財だ」と五月女さんは語る。大きな試みである。
14日(月曜)、午後2時から自民党総裁選が行われ、実況放送を観た。衆議院議員283人、参議院議員111人の計394人のうち379人が出席。コロナ感染を避けるためホテルの大集会場を充てたとするが、びっしりと座る様子は、いささか<密>に見える。
議員の投票は無記名、それに47都道府県連の各3票(計141名)が加算され、午後3時20分ころに開票結果が明らかになった。 菅氏 377票、岸田氏 89票、石破氏 68票。大方の予想どおり菅氏が圧勝、獲得票数は7割を超えた。
21票差をつけて石破氏を破った岸田氏は、国会議員票79と地方票10を獲得、対する石破氏は同じく26と42である。地方票で劣る岸田氏が議員票で自己派閥の47人を30人以上も上回る票を得たのは、<施し票>と呼ばれる議員票の動きがあったとされる。今回の総裁任期は安倍前総裁の残任期間の来年9月30日までの1年間(衆議院議員の任期は来年10月まで)。岸田氏は次回の総裁選に可能性を残したと言われる。
菅新総裁は、当選直後の記者会見で「…役所の縦割り、既得権益、悪しき前例を打破して規制改革を徹底してやりたい。…」と述べ、<改革派の顔>を前面に押し出した。具体策としては①コロナ対策ではデジタル化の推進、コロナ収束後に厚労省等の組織のあり方を検証、②中小企業・地銀の再編、③携帯電話料金の値下げ、④少子化対策として不妊治療の保険適用化、待機児童の完全解消等を掲げる。
この日のうちに菅新総裁は、麻生財務相、二階幹事長の再任を決め、また党の総務会長に佐藤勉氏(元総務相)、政調会長に下村博文氏(選挙対策委員長)、その後任の選挙対策委員長に山口泰明氏(組織運動本部長)を充てた。
翌15日(火曜)、野党の合流新党<立憲民主党>が結成大会を開き、枝野代表は代表代行兼選対委員長に平野博文氏、幹事長に福山哲郎氏、政調会長に泉健太氏、国対委員長に安住淳氏を充て、「政策で与党と競争を」と訴えた。
同日夕方、官房長官に加藤勝信氏(厚生労働大臣)を充てるとのニュース速報が入った。官房副長官、内閣府人事局長を歴任、菅氏の近くで働いた人物である。ここが決まって、組閣の中心が定まる。
同じ15日、三溪園の事務局から三溪園ボランティアさん219名に、8月に実施したアンケート結果等の資料を入れた厚めの書類を郵送した。添え状に「アンケート結果を受けて、庭園ボランティア、合掌造りボランティア活動の一部について再開することといたします。 しかし、新型コロナウイルスが収束するまでの間は、ボランティアの皆様ご自身の安全と安心を最優先に考えておりますので、不安を抱えている方は、決して無理をせず、活動休止を継続してください。…」と記した。
具体的には、①来園者と対面しない活動の庭園、合掌造り、自然観察会を再開し、②来園者と対面するガイドボランティアは休止を継続する。ボランティアの多くが高齢者であることが方針決定の大きな要因である。これは2020 年 10 月 1 日~2021 年 1 月末日までの方針で、見直しは 2021 年 1 月頃を予定している。
最後に「ガイドボランティア登録証(2021.3.31 期限)は有効ですので、受付で 登録証お見せいただければ、引き続き無料で入園できます。 家に籠る生活に疲れた方は、ぜひ遊びにきてください。」と付した。
16日(水曜)午前の臨時閣議で安倍内閣が総辞職、同日午後、衆参両院で菅氏が第99代首相に選出された。ついで加藤官房長官が20名の閣僚名簿を発表、皇居で首相親任式と閣僚の認証式を経て新内閣が正式に発足、初の閣議が開かれた。
その後、首相として初の記者会見があり、「<新型コロナウィルス対策と社会経済活動の両立>を最優先し、省庁の縦割り体質を打破して規制改革に取り組む」と改めて強調した。また質問に答えて、<桜を見る会>を来年以降は中止する意向を表明した。
明けて17日(木曜)、各種メディアは新内閣の今後をめぐり、様々に報じる。7年半前に発足した第二次安倍内閣に比べ、菅新内閣は大きな政策課題(憲法改正等々)ではなく<具体的政策の連鎖>に特徴があると言う。例えば携帯電話料金の値下げに関して、菅氏は「公共の電波を3社が寡占し20%の利益を上げている」と批判してきたが、その値下げ分が消費者の支出に回ることにより、大きな経済効果があるのを期待していると言う。
その他の規制改革についても国民の意見を聞く<縦割り110番>を設置し、そこから具体的政策を取り上げる<連鎖的展開>を考えているのではないか、これを行政改革・規制改革・沖縄北方領土担当の河野太郎行革相(前防衛相)に委任したと言われる。
早くもこの日の午後3時半ごろ、河野大臣が<行政改革目安箱(縦割り110番)>を個人サイトに開設したことをツイッターで発表。投稿フォームを通じて誰でも河野氏にメールを送信できる仕組みを始動させた。設置から約2時間半後の会見で「もう700通くらい来て(メールボックスが)破裂しそうな状況。かなり具体的な問題が届いていて、正直やって良かった」と反響の大きさを口にした。
なお翌日、河野大臣は「予想をはるかに超える数のご意見を頂き、整理のため、新規の受け付けを一時停止している」と説明、内閣府のホームページの<規制改革ホットライン>では引き続き意見を募集しているとして、活用を呼びかけた。
次のようなエッセー(日経新聞17日の「春秋」欄)があった(抜粋)。「…空手の演武を見ると、素人目には奇妙に映る動きがある。右の拳で突く直前、左の手が体の前で弧を描く。これは架空の相手が仕掛けてきた攻撃を受ける動作である。…菅氏は学生時代、空手部に所属していた。…自らが掲げるセールスポイントもまた、空手のイメージにつながる。…お手並みを拝見しよう。…」
18日(金曜)、前日と前々日の世論調査の結果が発表された。日経新聞の調査では支持率が74%(共同通信社の調査では64%)、前回8月の調査から19ポイントの上昇である。支持する要因として<人柄が信頼できる>が最多の46%、ついで<安定感がある>が来る。
この日、約2400億円の負債を抱えて倒産した磁気治療器販売会社「ジャパンライフ」(東京都・破産手続き中)が、客に虚偽の説明をして現金をだまし取ったとして、警視庁などの合同捜査本部は元会長の山口隆祥容疑者(78)ら幹部14人を詐欺容疑で逮捕した。
山口容疑者は、高額な磁気商品を同社が預かり、別の客に貸し出すレンタルオーナー制度を展開、<桜を見る会>で安倍前首相に招待されたことを宣伝に使い顧客を信用させたことで記憶に新しい。逮捕が菅首相の就任2日後のことであり、様々な憶測が飛び交う。加藤官房長官も名義と写真を使われ、記者の質問に「(その時すぐ)事務所から厳重抗議を行った」と釈明した。
19日(土曜)、4連休(シルバーウィーク)の初日である。この日からイベントの人数等の規制緩和が行われた。プロ野球の横浜スタジアムは、前日の5000人から1万3000余人に。セリーグ首位の巨人との一戦が行われ、7:1でベイスターズが快勝した。神宮球場やサッカーJリーグも観客数1万人を超えた。
映画館、劇場、寄席、音楽会もさまざまな工夫で開催。楽しむ観客の姿が見られた。鉄道も乗客が増え、新幹線の予約がほぼ満席に近い区間も出た。10月からは国交省所管の<Go To トラベル>の対象に東京発着も含まれる。農水省所管の<Go To イート>も始まり、秋の行楽シーズン到来が期待される。
人が動けばウィルス感染の機会が増える。新政権の最大の課題である「新型コロナ対策と社会経済活動の両立」の正念場が日常の中にあり、その代表例が観光や娯楽等の文化活動である。楽しむ対象はこれまでと大差ないが、楽しむ方法は旧来の<日常>ではなく、新しい<日常>でなければならない。少なくとも有効で安全なワクチンや<コロナ抗体薬>の普及までは。
この新しい<日常>とは、個々人が実践するものと、それを保障する社会的セーフティネット(安全網)からなる。前者には、マスク着用、手洗い、<3密>回避、それに混雑する車内等での会話を控えること…であろうか。これらを合わせて<コロナ・リテラシー>(新型コロナウィルスに関する科学的知識と防御のための技能)と言った人がいる。言いえて妙である。
もともと読み書き・識字の能力という意味で使わる<リテラシー>が、「ある分野に関する知識と技能」へと拡がった。その代表例がコンピュータ・リテラシー(いま流行の用語を使えばデジタル・リテラシー)であり、ついで今回のパンデミックにより生まれた<コロナ・リテラシー>である。全員が実践するのは無理であっても、これこそ感染対策の基本である。
このような個々人の<コロナ・リテラシー>向上を前提として、家族・地域・国家・世界の社会的セーフティーネットをどのように築き上げるか。まずは企業団体ごとの運営指針の確立と執行、ついで医療・保険・介護体制の構築と財政的・人的支援、そして失速する経済活動への財政的支援である。
それらに関する予算措置はできたものの、執行段階で大幅な遅れが生じた一因が国・自治体等の組織内のデジタル化の遅れである。補助金や給付金の申請から交付までに要した長い時間は、先進国内で日本がもっとも遅れていることが判明、その失態ぶりに驚いた。たんなる一部の<目詰まり>ではなく、構造的な欠陥であろう。新政権が掲げる<デジタル庁>設置の成果が待たれる。
この日、台湾の民主化に尽力した李登輝元総統(97歳)の告別式が台湾北部の淡水にある真理大学で行われ、内外から約1500人が参加、アメリカからクラック国務次官、日本から森喜朗元首相が参列した。アメリカの高官が赴いたことに中国が抗議、戦闘機19機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側に侵入した。
休日を利用して録画しておいた特集類を観る。(1)NHKBS1ワールドニュース特集「新型コロナに揺れた1週間 9月7日(月曜)~11日(金曜)」(12日)。(2)NHKBS1スペシャル「在宅クライシス~医療・介護 最前線の闘い~」(12日)。(3)NHKBS1スペシャル「世界同時ドキュメント 私たちの闘い 自撮り映像でつづる半年間」(13日)。(4)NHKETV特集「パンデミックが変える世界 紛争地からのSOS」(19日)。(5)NHKBS1ワールドニュース特集「新型コロナに揺れた1週間 9月14日(月曜)~18日(金曜)」(20日)。
20日(日曜)、4連休の2日目、菅首相はオーストラリアのモリソン首相、ついでアメリカのトランプ大統領と、それぞれ20分と25分の初の電話協議を行った。菅首相は「日米同盟は地域の平和と安定のための基盤」と述べるとともに、新型コロナのワクチン・治療薬の開発・普及に向けた協力や、北朝鮮による日本人拉致問題の解決について協議した。
9年半前の東日本大震災(3・11)に伴う東京電力福島第1原子力発電所事故の記憶や教訓を後世に伝える「東日本大震災・原子力災害伝承館」(福島県立)が同県双葉町で開館、収蔵資料24万点のうち約170点を展示する。
21日(月曜、敬老の日)、各種イベントが多数の参加者で溢れた。世界一の店舗数を誇る横浜中華街もすっかり活気を取り戻した。嬉しいことではあるが、「新型コロナ対策と社会経済活動の両立」という世界が直面する政策課題を考えると、「人の移動がコロナを運ぶ」という確たる事実から目を背けるわけには行かない。
22日(火曜、秋分の日)、朝から全国的な秋晴れだったが、昼頃から曇り始めた。台風12号の進路予報図(5日先まで示せるシステムの初の適用)が東日本方面への進路と、24日(木曜)上陸の可能性を示した。
この間の感染者数の推移は以下の通り。全国(カッコ内は重症者)と東京都(同左)の順である。
11日(金曜) 643人(191人)と187人(24人)
12日(土曜) 648人(190人)と226人(23人)
13日(日曜) 439人(180人)と146人(24人)
14日(月曜) 268人(185人)と80人(22人)
15日(火曜) 531人(174人)と191人(21人)
16日(水曜) 551人(178人)と163人(23人)
17日(木曜) 491人(167人)と171人(27人)
18日(金曜) 572人(170人)と220人(26人)
19日(土曜) 601人(161人)と218人(25人)
20日(日曜) 480人(159人)と162人(27人)
21日(月曜、敬老の日) 312人(163人)と98人(27人)
22日(火曜、秋分の日) 331人(164人)と88人(30人)
東京の1週間あたりの感染状況は<微増>と言えるが、この4連休の大幅な人口移動から約2週間後の感染状況が気になる。欧州(とくに英国)では感染の再拡大(第2波)があり、再度の行動規制が強化された。
感染再拡大を受けてロンドン市場で株価が下落、ついでニューヨーク株も急落した。連休明けの23日(水曜)、東京市場の値動きはどうなるか。社会経済活動の退化が懸念されるが、その先に次の一手があると考えたい。
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