人類最強の敵=新型コロナウィルス(14)
前回(2020年7月2日掲載「人類最強の敵=新型コロナウィルス(13)」の末尾は次の一文で終えた。「本稿作成中の7月2日午後、東京都の新規感染者は107人という速報が入った。前日の67人からの急増である」。
【増えつづける感染者】
この1週間、東京都の新規感染者は、25日が48人、26人が54人、27日が57人、28日が60人、29日が58人、30日が54人、7月1日が67人(アラート解除後の最多)と50人前後で推移してきたが、一挙に107人と3桁となったことで、驚きが拡がった。
ついで3日(金曜)が124人、4日(土曜)が131人、と3日連続の3桁である。新規感染者数は、緊急事態宣言下の2カ月前、5月大型連休中の高水準に戻った。うち約8割が10代から30代の若者で、感染経路不明が約3割の46名である。
東京都にとどまらず隣接する埼玉・神奈川・千葉の3県でも増加している。これを受けて小池都知事は、「近隣の県でも陽性者(感染者)が増えている。不要不急の他県への移動は遠慮してほしい」と要請した。
また新宿エリアや池袋エリアの<夜の街>関連の感染者が62人と約半数を占めるため、都知事は<夜の街>への外出を控えるよう要請するとともに、<夜の街>の従業員や利用客に対して、感染防止のガイドライン(関係団体が作成)を守るよう呼びかけた。また約3割の感染経路不明については、クラスター発生か否かを鋭意調査中と述べる。
【九州の豪雨災害】
4日(土曜)、熊本県を中心に豪雨災害が発生、4年連続の豪雨である。雨は5日、6日と断続的に降りつづき、警戒地域を<九州全域>に拡げつつ、7日、8日とつづき、さらに全国へと拡がっている。(後記:実に2週間以上にわたる長期の豪雨である。)
気象庁は、<熊本豪雨>から<九州豪雨>と名称を変え、さらに日本列島の広域にわたるため<令和2年7月豪雨>とした。地球規模の<気候変動>がもたらす豪雨と見られる。
熊本県へ緊急支援に入った近県の職員の感染が判明し、受入れをやむなく断った。コロナ禍が復旧作業にさらなる追い打ちをかける。
【都知事選挙】
5日(日曜)、都内の新規感染者は111人。4日つづきの3桁となる。この日は都知事選の投票日にあたり、締め切り時(午後8時)の出口調査で小池知事圧勝と出た。即日開票の結果は、小池氏が約366万票を獲得、2位の元日弁連会長・宇都宮健児氏の約84万票を圧倒した。
6日(月曜)、2期目の再選を果たした小池知事は「責任の重さを改めて感じる。…国との連携で行っていくべき課題はたくさんある。コロナ対策、東京五輪・パラリンピックの話もさせていただかないと時間も迫っている」と述べ、安倍首相と会談に入った。
【増えつづける感染者】
6日の都内新規感染者は102人で、5日つづきの3桁である。PCR検査の数を増やしたことも一因であるが、陽性率(検査数のなかの陽性者=感染者の比率)が高止まりなのも事実である。それでも病床数は足りているうえに、感染源が特定の店舗とその従業員に特定できているケースが多く、ピンポイントの対策を打つことができるとのこと。
ウィルスがヒトを介して拡がることを考えれば、従業員とその顧客のPCR検査を徹底し、感染者が出れば14日間の隔離を実施、クラスターをつぶすことができる。しかし経路不明者が多く、無症状の感染者がおり、またPCR検査を拒否する人もいる。
東京にとどまらず、埼玉、神奈川、千葉の近隣3県でも感染者が増加した。東京と近隣3県の生活圏が密接に繋がっていることが分かる。
【専門家会議から分科会へ】
6日午後、新型コロナ対策の分科会として改組された専門家会議の初会合があった。メンバーは計18名で、感染症専門家のほかに経済等の専門家を含む。この分科会は、2月から医学的見地の助言を行ってきた専門家会議を廃止し、新たに設置されたもの。同本部のホームページにまだ委員名の掲載がない。
7月4日の朝日新聞デジタルによると、分科会の名称は「新型コロナウイルス感染症対策分科会」で、専門家会議副座長だった尾身茂・地域医療機能推進機構理事長が会長に就く。12名で構成されていた専門家会議からは、6月24日の会見で「専門家会議と政府の役割分担を明確にする必要がある」と語っていた座長の脇田隆字氏や公衆衛生、リスクコミュニケーションの専門家8名が入った。
基礎研究の学者4名は加わらず、感染症指定医療機関の医師、医療法人、保健所の代表、また全国知事会で新型コロナ対策本部長代行も務める平井伸治・鳥取県知事、南砂・読売新聞東京本社常務取締役も入った。政府筋によれば、構成員は継続性を考えて専門家会議の大半を移したほか、各団体にも推薦を依頼、感染・発症後に社会復帰した著名人を起用する案もあったという。
【ピンポイントの対策】
8日のTBSテレビ<ひるおび>で吉住健一・新宿区長は、ホストクラブ経営者の協力も得て感染防止に努めており、ホストクラブでのクラスター発生はホストがマンション等で集団寮生活をしていることに多く起因することも分かり、対応策を進めている、と述べた。
新宿区には多数の歓楽街や飲食街がある。その住民基本台帳人口は35万人弱、うち老齢人口(65歳以上)の比率は20%弱で、ほぼ都内平均に近いが、外国人の占める割合は約11%と高い。外国人経営の飲食店ではクラスター発生の報告はない。
【GoTo トラベル キャンペーン、22日から一部開始】
感染者の増加に身構えるなか、消費を喚起する政府の「Go To トラベル キャンペーン」のうち観光分野の補助制度について、赤羽一嘉国土交通相は10日、7月22日から一部を先行開始と発表した。宿泊代金の割引から行い、旅行先での飲食や買い物に使えるクーポン券の発行は9月から「感染状況を踏まえながら準備を進める」と述べた。
その予算額1兆3500億円のうち事務委託費の上限が約16%の2300億円に野党などから批判が出ていた。委託先の公募には5事業者が応じ、有識者を含む委員会で検討した結果、JTBなど旅行大手や日本旅行業協会など7者でつくる「ツーリズム産業共同提案体」が選ばれ、委託費用は1895億円となった。
【苦境に立つ病院】
人々の頼みの綱である病院が苦境に立たされている。使命感から対応してきた病院が、今後も同じような対応を進めることができるか。まずは病院の現状を見たい。日本医師会は8日、「新型コロナウイルス感染症の病院経営への影響―医師会病院の場合―」を発表した(【MEDIFAX web】2020年07月09日)。
感染症の入院患者がいる病院の2020年3~5月の医業利益率はマイナス21.5%で、前年同期のマイナス6.4%から15ポイント悪化した。同感染症に対応する病床がある病院もマイナス16.3%で、マイナス3.4%から12.9ポイント悪化した。同感染症の入院患者がいた病院は14、病床を確保していたのは28であった。6月1日現在、稼働している72病院のうち58病院からの回答である(回答率は80.6%)。
全国の新型コロナの重症患者の約81%を収容してきたのが国公私立の大学病院である。その経営悪化が、まず国立大学附属病院42で明らかになった(【MEDIFAX web】7月6日)。病床稼働率の大幅減などについて、42病院のデータを集計すると、今年4月の対前年度同月比較で外来と入院を合わせた医業収入は56.7億円の減収。5月は112.7億円の減収(マイナス12.2%)と深刻化している。
5月の経営悪化の要因は、入院の延べ患者数13万4469人の減少(マイナス16,7%)、不急の手術の一時的回避で病床稼働率も67.4%まで下落したことである。外来延べ患者数も32万8158人の減少(マイナス24%)となり、患者の受診控えの傾向(4~5月で750件減少)も続く。
6月からは病床稼働率を80%に戻し、今月6日から全面的に回復させていく方針の一方で、毎週開催している院内のコロナ対策会議は患者数が減少しても継続し、今後の感染の波に備えた体制を維持すると言う。
ついで日本私立医科大学協会(医大協)も新型コロナの診療対応による経営への影響度調査結果をまとめた(【MEDIFAX web】7月16日号)。3~5月で、本院と分院を合わせ、重症患者233人、中等症450人、軽症645人の計1828人を受け入れている。4月、5月の経営実績(総額)は、加盟大学付属病院本院29病院では前年比で約300億円の減収、医業利益も約250億円減少した。分院54病院も同様で医業利益は約150億円減、病床稼働率も5月に61%に下落。病床稼働率90%台が採算ラインと言われるなか、61%は深刻である。
公立大学の附属病院(10)はどうか。まだ発表がないが、おそらく国私立と大差ない困難な状況であろう。
大学病院に対して2020年度補正予算の各種事業での迅速な手当てが急務である。さもないと第2波と呼ばれる次の感染拡大への積極的な備えはおろか、悪化した状況の立て直しさえできないまま、最悪の事態に突入しかねない。
【急増する感染者】
東京都内の感染者は8日の75人から9日に224人と激増、4月17日の206人を超えて過去最多を記録した。また埼玉が11人、神奈川が25人、千葉が22人と増加、全国で350人増となった。
ここまでの傾向を見ると、平均して50人前後の1週間があり、ついで100人前後の1週間がつづいたうえの9日からの224人である。この先の1週間、200人台はつづくのか。
不安が的中したかのように、10日(金曜)には、東京都が243人と最多を更新、埼玉が44人、神奈川が32人、千葉が12人、全国で430人となった。11日(土曜)は東京で206人、12日(日曜)が206人。ただし東京都の重症者は減りつづけ現在は5人で、医療崩壊の危険はないという。
にもかかわらず、保育園でのクラスター(集団感染)の発生があり痛ましい。また劇団の公演にともなう役者・スタッフのほか観客を含む30人の集団感染も発生、防止対策の難しさを浮き彫りにした。
一方、政府対策本部の発表どおり、10日(金曜)から、プロスポーツやコンサートの無観客開催を上限1000人の観客開催とし、さらに緩和して上限5000人まで可能とした。プロ野球やサッカーJ1の会場に集まるファンの熱狂ぶり、日本フィルの5カ月ぶりの演奏に涙するファンの姿がテレビに写る。
【東京の感染者が再増加】
都庁のホームページ「都内の新感染情報」等によれば、東京の感染者は9日(木曜)224人、10日(金曜)243人、11日(土曜)206人、12日(日曜)206人、13日(月曜)119人、14日(火曜)143人、15日(水曜)186人、16日(木曜)に一挙に286人に上り、17日(金曜)293人、18日(土曜)290人、19日(日曜)188人となった。
約50人の1週間から約100人の1週間となり、次いで約200人の1週間と急ピッチで週単位の倍々増である。危惧された約200人が1週間つづき、その次の倍数の約400人台が到来するなら、感染第2波と言わざるを得なくなる。急速な医療崩壊が目前に迫る。
陽性率も上がっている。1週間単位で見ると2週前は3%だったが、17日に至る1週間では6%と倍増。18日、東京都が設けている総括コメント(4段階)のうち<感染が拡大していると思われる>の赤信号が点灯し、もう1つの医療提供体制についても<体制が逼迫していると思われる>の赤信号となった。また経路不明者が増え、陽性率が上がると、これまでの<クラスターつぶし>という対応法が通用しなくなる恐れがある。
17日、神奈川県でも感染者が43人、過去1週間の陽性率は7%となり、黒岩知事が<感染拡大注意>の黄色信号(神奈川警戒アラート)を発令した。
全国レベルでは感染者が682人で、この1ヶ月に比べて11倍の急増である。世界レベルでも18日の1日だけで26万人と過去最多となった。
【東京発着を除外】
16日(木曜)、政府の分科会が開かれ、国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル キャンペーン」について、予定の8月1日開始を7月22日からに前倒しするとした方針を、知事たちの反発と東京都の感染者急増という現実を前に、急ぎ東京都民の他地域への移動と道府県から東京への移動を除外すると決めた。<東京発着の除外>である。
予定日直前の方針転換に旅行・運輸業界の打撃と戸惑いは大きいであろう。それ以上に、政界の意思決定過程が多大な不信感を招いた。これが尾を引けば、第2波への対応に大きな綻びが生じかねない。
【PCR検査の進め方】
同じ16日の分科会では、今後の検査体制の基本的な考え方がまとめられた(【MEDIFAX web】7月17日号)。検査は①有症状者、②無症状者で感染リスクと検査前確率が高い、③無症状者で感染リスクと検査前確率が低いーの3カテゴリーに分ける。検査をすべきかどうかで最も意見が割れる③については、検査実施のメリットに「不安を持つ受検者に安心感を与える」等を、またデメリットに「感染リスクと検査前確率が低い無症状者から感染者を発見する可能性は極めて低い」「検査前確率が低いほど偽陽性が出やすい」等を挙げた。
その上で提言として、①と②の検査を優先することを前提にした上で「行政検査としては実施しないが、民間企業や個人が個別の事情に応じておのおのの負担で検査をすることはあり得る」と提言。その際の留意事項に、検査の質の確保や、事業者が従業員を対象に検査をする際は従業員の自由意思で行うことなどを挙げた。分科会終了後の会見で尾身会長は「コンセンサスを得た。これが分科会としての政府への提案になる」と述べる。
【藤井聡太棋聖の誕生】
同じ16日、18歳の誕生日を目前にした藤井聡太七段が、第91期棋聖戦五番勝負で渡辺明棋聖(36歳)を破り、タイトルを獲得した。30年ぶりの最年少記録更新に世論が沸く。
桂馬を頻繁に使う戦法を、五条大橋で牛若丸が弁慶を従えた比喩に用いた解説があったが、これならは素人にも分かりやすい。あどけない風貌が残る天才棋士に各界からエールが送られた。
【世界のコロナテックと日本】
18日(土曜)の日経新聞のトップ記事は「米中コロナテック躍進 ネット新興 社会変化対応」である。新造語<コロナテック>は、新型コロナウィルス感染拡大に端を発した諸問題を解決するテクノロジーやサービスの意味であろうと容易に推測がつく。先行例として<フィンテック>等があり、その類推を活かした造語である。この記事が紹介する要点は以下の通り。
経済や社会の激動期は新興企業のスタートアップにとって大きなチャンスである。2003年のSARS流行期に中国ネット通販のアリババが急成長した。2008年のリーマン危機前後にはウーバーテクノロジーズ等が生まれ、車や住宅等の<所有>から<利用>の動きを先取りして成長した。
現在も似た状況にあり、デジタル関連の企業が多い。技術革新を生み出すスタートアップを育成しなければ、産業の新陳代謝が進まず、国の競争力は落ちていく一方である。
<ユニコーン>(企業価値10億ドル超の未上場企業)の数で見ると、アメリカが225社、中国が125社、EUが29社、インドが21社、韓国が12社等に対して、日本はわずか3社に過ぎない。主要国のスタートアップ投資額(年換算)は、アメリカの14兆円、中国の10兆円に対して、日本はわずか4000億円と、桁が違う。
この特集記事のすぐ下に「行政デジタル化 集中改革 骨太方針決定 内閣官房に司令塔」の記事が載る。安倍首相が経済財政諮問会議で「思い切った社会変革を果敢に実行する」としたが、財政運営の見通し数値を示さず、「2020年末までに改めて工程の具体化を図る」として先送りした。
関連記事が3面につづく。20年前に「5年以内に世界最先端のIT(情報技術)国家とする」と宣言はしたが、「旗振り役 行政の遅れ」のため、諸指標から見て世界10位の圏外にある。日本は<IT競争力ランキング>で12位、<電子政府ランキング>で14位、ビジネス環境ランキング>で29位。日本の政治行政機能の劣化を象徴するような数字である。
本連載「人類最強の敵=新型コロナウィルス」を3月6日に始めて以来、展開の速さを追うため、ほぼ週に1回のペースでつづけ、(11)まできた。それ以降はペースダウンし、(12)と(13)は3週間に1回としたが、ここに来てまた事態急変の予感がする。
【増えつづける感染者】
この1週間、東京都の新規感染者は、25日が48人、26人が54人、27日が57人、28日が60人、29日が58人、30日が54人、7月1日が67人(アラート解除後の最多)と50人前後で推移してきたが、一挙に107人と3桁となったことで、驚きが拡がった。
ついで3日(金曜)が124人、4日(土曜)が131人、と3日連続の3桁である。新規感染者数は、緊急事態宣言下の2カ月前、5月大型連休中の高水準に戻った。うち約8割が10代から30代の若者で、感染経路不明が約3割の46名である。
東京都にとどまらず隣接する埼玉・神奈川・千葉の3県でも増加している。これを受けて小池都知事は、「近隣の県でも陽性者(感染者)が増えている。不要不急の他県への移動は遠慮してほしい」と要請した。
また新宿エリアや池袋エリアの<夜の街>関連の感染者が62人と約半数を占めるため、都知事は<夜の街>への外出を控えるよう要請するとともに、<夜の街>の従業員や利用客に対して、感染防止のガイドライン(関係団体が作成)を守るよう呼びかけた。また約3割の感染経路不明については、クラスター発生か否かを鋭意調査中と述べる。
【九州の豪雨災害】
4日(土曜)、熊本県を中心に豪雨災害が発生、4年連続の豪雨である。雨は5日、6日と断続的に降りつづき、警戒地域を<九州全域>に拡げつつ、7日、8日とつづき、さらに全国へと拡がっている。(後記:実に2週間以上にわたる長期の豪雨である。)
気象庁は、<熊本豪雨>から<九州豪雨>と名称を変え、さらに日本列島の広域にわたるため<令和2年7月豪雨>とした。地球規模の<気候変動>がもたらす豪雨と見られる。
熊本県へ緊急支援に入った近県の職員の感染が判明し、受入れをやむなく断った。コロナ禍が復旧作業にさらなる追い打ちをかける。
【都知事選挙】
5日(日曜)、都内の新規感染者は111人。4日つづきの3桁となる。この日は都知事選の投票日にあたり、締め切り時(午後8時)の出口調査で小池知事圧勝と出た。即日開票の結果は、小池氏が約366万票を獲得、2位の元日弁連会長・宇都宮健児氏の約84万票を圧倒した。
6日(月曜)、2期目の再選を果たした小池知事は「責任の重さを改めて感じる。…国との連携で行っていくべき課題はたくさんある。コロナ対策、東京五輪・パラリンピックの話もさせていただかないと時間も迫っている」と述べ、安倍首相と会談に入った。
【増えつづける感染者】
6日の都内新規感染者は102人で、5日つづきの3桁である。PCR検査の数を増やしたことも一因であるが、陽性率(検査数のなかの陽性者=感染者の比率)が高止まりなのも事実である。それでも病床数は足りているうえに、感染源が特定の店舗とその従業員に特定できているケースが多く、ピンポイントの対策を打つことができるとのこと。
ウィルスがヒトを介して拡がることを考えれば、従業員とその顧客のPCR検査を徹底し、感染者が出れば14日間の隔離を実施、クラスターをつぶすことができる。しかし経路不明者が多く、無症状の感染者がおり、またPCR検査を拒否する人もいる。
東京にとどまらず、埼玉、神奈川、千葉の近隣3県でも感染者が増加した。東京と近隣3県の生活圏が密接に繋がっていることが分かる。
【専門家会議から分科会へ】
6日午後、新型コロナ対策の分科会として改組された専門家会議の初会合があった。メンバーは計18名で、感染症専門家のほかに経済等の専門家を含む。この分科会は、2月から医学的見地の助言を行ってきた専門家会議を廃止し、新たに設置されたもの。同本部のホームページにまだ委員名の掲載がない。
7月4日の朝日新聞デジタルによると、分科会の名称は「新型コロナウイルス感染症対策分科会」で、専門家会議副座長だった尾身茂・地域医療機能推進機構理事長が会長に就く。12名で構成されていた専門家会議からは、6月24日の会見で「専門家会議と政府の役割分担を明確にする必要がある」と語っていた座長の脇田隆字氏や公衆衛生、リスクコミュニケーションの専門家8名が入った。
基礎研究の学者4名は加わらず、感染症指定医療機関の医師、医療法人、保健所の代表、また全国知事会で新型コロナ対策本部長代行も務める平井伸治・鳥取県知事、南砂・読売新聞東京本社常務取締役も入った。政府筋によれば、構成員は継続性を考えて専門家会議の大半を移したほか、各団体にも推薦を依頼、感染・発症後に社会復帰した著名人を起用する案もあったという。
【ピンポイントの対策】
8日のTBSテレビ<ひるおび>で吉住健一・新宿区長は、ホストクラブ経営者の協力も得て感染防止に努めており、ホストクラブでのクラスター発生はホストがマンション等で集団寮生活をしていることに多く起因することも分かり、対応策を進めている、と述べた。
新宿区には多数の歓楽街や飲食街がある。その住民基本台帳人口は35万人弱、うち老齢人口(65歳以上)の比率は20%弱で、ほぼ都内平均に近いが、外国人の占める割合は約11%と高い。外国人経営の飲食店ではクラスター発生の報告はない。
【GoTo トラベル キャンペーン、22日から一部開始】
感染者の増加に身構えるなか、消費を喚起する政府の「Go To トラベル キャンペーン」のうち観光分野の補助制度について、赤羽一嘉国土交通相は10日、7月22日から一部を先行開始と発表した。宿泊代金の割引から行い、旅行先での飲食や買い物に使えるクーポン券の発行は9月から「感染状況を踏まえながら準備を進める」と述べた。
その予算額1兆3500億円のうち事務委託費の上限が約16%の2300億円に野党などから批判が出ていた。委託先の公募には5事業者が応じ、有識者を含む委員会で検討した結果、JTBなど旅行大手や日本旅行業協会など7者でつくる「ツーリズム産業共同提案体」が選ばれ、委託費用は1895億円となった。
【苦境に立つ病院】
人々の頼みの綱である病院が苦境に立たされている。使命感から対応してきた病院が、今後も同じような対応を進めることができるか。まずは病院の現状を見たい。日本医師会は8日、「新型コロナウイルス感染症の病院経営への影響―医師会病院の場合―」を発表した(【MEDIFAX web】2020年07月09日)。
感染症の入院患者がいる病院の2020年3~5月の医業利益率はマイナス21.5%で、前年同期のマイナス6.4%から15ポイント悪化した。同感染症に対応する病床がある病院もマイナス16.3%で、マイナス3.4%から12.9ポイント悪化した。同感染症の入院患者がいた病院は14、病床を確保していたのは28であった。6月1日現在、稼働している72病院のうち58病院からの回答である(回答率は80.6%)。
全国の新型コロナの重症患者の約81%を収容してきたのが国公私立の大学病院である。その経営悪化が、まず国立大学附属病院42で明らかになった(【MEDIFAX web】7月6日)。病床稼働率の大幅減などについて、42病院のデータを集計すると、今年4月の対前年度同月比較で外来と入院を合わせた医業収入は56.7億円の減収。5月は112.7億円の減収(マイナス12.2%)と深刻化している。
5月の経営悪化の要因は、入院の延べ患者数13万4469人の減少(マイナス16,7%)、不急の手術の一時的回避で病床稼働率も67.4%まで下落したことである。外来延べ患者数も32万8158人の減少(マイナス24%)となり、患者の受診控えの傾向(4~5月で750件減少)も続く。
6月からは病床稼働率を80%に戻し、今月6日から全面的に回復させていく方針の一方で、毎週開催している院内のコロナ対策会議は患者数が減少しても継続し、今後の感染の波に備えた体制を維持すると言う。
ついで日本私立医科大学協会(医大協)も新型コロナの診療対応による経営への影響度調査結果をまとめた(【MEDIFAX web】7月16日号)。3~5月で、本院と分院を合わせ、重症患者233人、中等症450人、軽症645人の計1828人を受け入れている。4月、5月の経営実績(総額)は、加盟大学付属病院本院29病院では前年比で約300億円の減収、医業利益も約250億円減少した。分院54病院も同様で医業利益は約150億円減、病床稼働率も5月に61%に下落。病床稼働率90%台が採算ラインと言われるなか、61%は深刻である。
公立大学の附属病院(10)はどうか。まだ発表がないが、おそらく国私立と大差ない困難な状況であろう。
大学病院に対して2020年度補正予算の各種事業での迅速な手当てが急務である。さもないと第2波と呼ばれる次の感染拡大への積極的な備えはおろか、悪化した状況の立て直しさえできないまま、最悪の事態に突入しかねない。
【急増する感染者】
東京都内の感染者は8日の75人から9日に224人と激増、4月17日の206人を超えて過去最多を記録した。また埼玉が11人、神奈川が25人、千葉が22人と増加、全国で350人増となった。
ここまでの傾向を見ると、平均して50人前後の1週間があり、ついで100人前後の1週間がつづいたうえの9日からの224人である。この先の1週間、200人台はつづくのか。
不安が的中したかのように、10日(金曜)には、東京都が243人と最多を更新、埼玉が44人、神奈川が32人、千葉が12人、全国で430人となった。11日(土曜)は東京で206人、12日(日曜)が206人。ただし東京都の重症者は減りつづけ現在は5人で、医療崩壊の危険はないという。
にもかかわらず、保育園でのクラスター(集団感染)の発生があり痛ましい。また劇団の公演にともなう役者・スタッフのほか観客を含む30人の集団感染も発生、防止対策の難しさを浮き彫りにした。
一方、政府対策本部の発表どおり、10日(金曜)から、プロスポーツやコンサートの無観客開催を上限1000人の観客開催とし、さらに緩和して上限5000人まで可能とした。プロ野球やサッカーJ1の会場に集まるファンの熱狂ぶり、日本フィルの5カ月ぶりの演奏に涙するファンの姿がテレビに写る。
【東京の感染者が再増加】
都庁のホームページ「都内の新感染情報」等によれば、東京の感染者は9日(木曜)224人、10日(金曜)243人、11日(土曜)206人、12日(日曜)206人、13日(月曜)119人、14日(火曜)143人、15日(水曜)186人、16日(木曜)に一挙に286人に上り、17日(金曜)293人、18日(土曜)290人、19日(日曜)188人となった。
約50人の1週間から約100人の1週間となり、次いで約200人の1週間と急ピッチで週単位の倍々増である。危惧された約200人が1週間つづき、その次の倍数の約400人台が到来するなら、感染第2波と言わざるを得なくなる。急速な医療崩壊が目前に迫る。
陽性率も上がっている。1週間単位で見ると2週前は3%だったが、17日に至る1週間では6%と倍増。18日、東京都が設けている総括コメント(4段階)のうち<感染が拡大していると思われる>の赤信号が点灯し、もう1つの医療提供体制についても<体制が逼迫していると思われる>の赤信号となった。また経路不明者が増え、陽性率が上がると、これまでの<クラスターつぶし>という対応法が通用しなくなる恐れがある。
17日、神奈川県でも感染者が43人、過去1週間の陽性率は7%となり、黒岩知事が<感染拡大注意>の黄色信号(神奈川警戒アラート)を発令した。
全国レベルでは感染者が682人で、この1ヶ月に比べて11倍の急増である。世界レベルでも18日の1日だけで26万人と過去最多となった。
【東京発着を除外】
16日(木曜)、政府の分科会が開かれ、国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル キャンペーン」について、予定の8月1日開始を7月22日からに前倒しするとした方針を、知事たちの反発と東京都の感染者急増という現実を前に、急ぎ東京都民の他地域への移動と道府県から東京への移動を除外すると決めた。<東京発着の除外>である。
予定日直前の方針転換に旅行・運輸業界の打撃と戸惑いは大きいであろう。それ以上に、政界の意思決定過程が多大な不信感を招いた。これが尾を引けば、第2波への対応に大きな綻びが生じかねない。
【PCR検査の進め方】
同じ16日の分科会では、今後の検査体制の基本的な考え方がまとめられた(【MEDIFAX web】7月17日号)。検査は①有症状者、②無症状者で感染リスクと検査前確率が高い、③無症状者で感染リスクと検査前確率が低いーの3カテゴリーに分ける。検査をすべきかどうかで最も意見が割れる③については、検査実施のメリットに「不安を持つ受検者に安心感を与える」等を、またデメリットに「感染リスクと検査前確率が低い無症状者から感染者を発見する可能性は極めて低い」「検査前確率が低いほど偽陽性が出やすい」等を挙げた。
その上で提言として、①と②の検査を優先することを前提にした上で「行政検査としては実施しないが、民間企業や個人が個別の事情に応じておのおのの負担で検査をすることはあり得る」と提言。その際の留意事項に、検査の質の確保や、事業者が従業員を対象に検査をする際は従業員の自由意思で行うことなどを挙げた。分科会終了後の会見で尾身会長は「コンセンサスを得た。これが分科会としての政府への提案になる」と述べる。
【藤井聡太棋聖の誕生】
同じ16日、18歳の誕生日を目前にした藤井聡太七段が、第91期棋聖戦五番勝負で渡辺明棋聖(36歳)を破り、タイトルを獲得した。30年ぶりの最年少記録更新に世論が沸く。
桂馬を頻繁に使う戦法を、五条大橋で牛若丸が弁慶を従えた比喩に用いた解説があったが、これならは素人にも分かりやすい。あどけない風貌が残る天才棋士に各界からエールが送られた。
【世界のコロナテックと日本】
18日(土曜)の日経新聞のトップ記事は「米中コロナテック躍進 ネット新興 社会変化対応」である。新造語<コロナテック>は、新型コロナウィルス感染拡大に端を発した諸問題を解決するテクノロジーやサービスの意味であろうと容易に推測がつく。先行例として<フィンテック>等があり、その類推を活かした造語である。この記事が紹介する要点は以下の通り。
経済や社会の激動期は新興企業のスタートアップにとって大きなチャンスである。2003年のSARS流行期に中国ネット通販のアリババが急成長した。2008年のリーマン危機前後にはウーバーテクノロジーズ等が生まれ、車や住宅等の<所有>から<利用>の動きを先取りして成長した。
現在も似た状況にあり、デジタル関連の企業が多い。技術革新を生み出すスタートアップを育成しなければ、産業の新陳代謝が進まず、国の競争力は落ちていく一方である。
<ユニコーン>(企業価値10億ドル超の未上場企業)の数で見ると、アメリカが225社、中国が125社、EUが29社、インドが21社、韓国が12社等に対して、日本はわずか3社に過ぎない。主要国のスタートアップ投資額(年換算)は、アメリカの14兆円、中国の10兆円に対して、日本はわずか4000億円と、桁が違う。
この特集記事のすぐ下に「行政デジタル化 集中改革 骨太方針決定 内閣官房に司令塔」の記事が載る。安倍首相が経済財政諮問会議で「思い切った社会変革を果敢に実行する」としたが、財政運営の見通し数値を示さず、「2020年末までに改めて工程の具体化を図る」として先送りした。
関連記事が3面につづく。20年前に「5年以内に世界最先端のIT(情報技術)国家とする」と宣言はしたが、「旗振り役 行政の遅れ」のため、諸指標から見て世界10位の圏外にある。日本は<IT競争力ランキング>で12位、<電子政府ランキング>で14位、ビジネス環境ランキング>で29位。日本の政治行政機能の劣化を象徴するような数字である。
本連載「人類最強の敵=新型コロナウィルス」を3月6日に始めて以来、展開の速さを追うため、ほぼ週に1回のペースでつづけ、(11)まできた。それ以降はペースダウンし、(12)と(13)は3週間に1回としたが、ここに来てまた事態急変の予感がする。
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