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人類最強の敵=新型コロナウィルス(10)

 14日(木曜)、朝8時半から、予定通り政府専門家会議が開かれた。緊急事態宣言を解除する基準をどう設定するか、また解除後に再流行した場合の再指定の基準をどう設定するか。

 政府専門家会議は、多くの地域で感染拡大が始まった3月下旬以前の状況にまで感染者数が減少したことを踏まえ、①感染者が減少傾向にある、②感染経路不明者の割合が低い、③PCR検査を迅速にできる態勢が整っている、の3点を基に総合的に判断するとした。加えて、緊急事態宣言を解除する<目安>として「直近1週間の新規感染者数の合計が10万人当たり0.5人未満程度」を示す。人口約1400万人の東京都の場合、<10人以下>となる。

 この<目安>は前々日あたりから徐々にリークされ、例えば14日の日経新聞朝刊は「8都道府県で未達」の見出しで詳細に伝える。この<目安>による試算では、8都道府県は解除できない。<特定警戒都道府県>13のうち茨城、千葉、岐阜、愛知、兵庫、福岡の6県は解除可能、となる。

 この新しい基準「10万人当たり0.5人未満程度」を、正式決定の前に外部に出したことについては批判もあるが、広く理解を得られるよう、ある種の<予習効果>を狙ったものとも考えられる。

 そのうえで、今後もしばらくは再流行のリスクがあるとして、緊急事態宣言の対象地域への再指定も含め、即座に対策できるよう感染状況で全国を3つに分け、以下のように、それぞれの対応を示した。

 3つに区分される名称は長いうえに似た漢字を多く含むため、私なりの省略形を使い、以下のように表記する。①<特定警戒>(「特定警戒都道府県」の省略形)、②<拡大注意>(「感染拡大注意都道府県」の省略形)、③<感染観察>。

 感染状況が厳しい東京都や大阪府など7つの都府県からなる①<特定警戒>地域においては、緊急事態宣言に基づく徹底した行動変容の要請により接触の8割減や都道府県をまたぐ移動の自粛などを求め、再指定には4月7日にへの緊急事態宣言発出時の感染状況や水準を踏まえる。

 ②<拡大注意>地域(新たな感染者の数等が①<特定警戒>の基準の半分程度)では、集団感染のリスクのあるイベントや不要不急の外出を自粛するよう、知事が協力要請を行う等。

 ③<感染観察>地域(新規の感染者数が一定程度確認されるものの、さらに少ない地域)については、感染状況を注視しながら、人との間隔を取ったり、いわゆる<3つの密>を徹底して避ける等の対策を継続して行う等。

 専門家会議は、緊急事態宣言の解除後も対応は長丁場が見込まれるとして、「すべての都道府県で、これまでに<クラスター>(感染者の集団)が発生した場所や<3つの密>を徹底して避けること、買い物や食事のしかたなどを工夫する<新しい生活様式>を実践し、手洗いなどの基本的な感染対策は続けていく必要がある」と強調した。

 ついで10時半から新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく諮問委員会が開かれた。冒頭、西村経済再生担当大臣(新型コロナウィルス感染症対策担当を兼務)は、「特定警戒都道府県以外の34県、及び特定警戒都道府県のうち茨城、石川、岐阜、愛知、福岡の5県を合わせた39県については、3月中旬から感染拡大が始まる以前の状況にまで新規感染者数が低下しつつあることが確認された」と述べる。

 また、医療提供体制や監視モニタリングの体制の状況からも、緊急事態宣言を解除することが妥当と判断されるのではないかと述べ、39県で解除する方針を諮問した。東京や大阪など8つの都道府県については21日(木曜)に改めて検討することとなった。

 このあと西村大臣が記者団に対し、「39県で解除する政府の方針は妥当だとする見解が(諮問委員会で)示された」ことを明らかにした。また、前夜に新たな集団感染が判明した愛媛県については、感染経路の調査を行い、速やかに報告することを条件に解除することとなった。

 これを受けて午後、衆参両院の議院運営委員会で報告と質疑が行われたあと、夕方、安倍首相が尾身諮問委員会会長とともに記者会見し、解除の理由などを説明、質問に答えた。首相が強く訴えたのは「県をまたぐ移動の自粛を!」である。解除の39県と継続の8都道府県が共存するなかで、生活圏が広域になっている現状を踏まえれば、きわめて重要な指摘である。

 政治家(首相)が科学者(専門家)と並んで会見し質問に答える姿は、管見のかぎり世界でも例を見ない。人類最強の敵=新型コロナウィルスに対処するには科学者の力が不可欠である。両者の緊密な連携を示す好例とする評価があると同時に、両者が互いにもたれあい、判断の責任をなすりあっているとの批判もある。

 法律の規定に則り、その後の政府対策本部(本部長は安倍首相)で39県の宣言解除を正式に決定した。判断の根拠を科学に置き、判断の政治的責任を首相が果たすという形式である。

 この記者発表では、法曹界等から反対意見の強い<検察庁法>改正案(検察官の定年延長問題)についての質問が出た。首相は「検察官も公務員…」と問題の焦点をそらす。当連載のテーマから外れるため深入りしないが、翌日15日に松尾邦弘元検事総長ほか10数名が<検察庁法>改正案に反対する意見書を法務省へ提出するとの報道があった。根の深い問題である。

 もう1つ、内閣(政府)と都道府県知事との関係がある。緊急事態宣言の発令と解除(そして再発令)は政府の責任で行われ、それを根拠として休業要請・外出自粛要請を行い、かつそれらを解除するのが知事である。これは憲法の<地方自治>の原則に基づく。時おり誤解が生じたものの、徐々に相互の理解が深まりつつあると見て良い。

 各知事がそれぞれの都道府県民に休業要請を行うだけでは実効性に欠ける。そこでスーパーマーケット協会、鉄道連絡会、日本旅館協会等の約80の業界団体(のち増加)が、それぞれの特性に応じた詳細なガイドラインを作成・発表した。業界・業態により、感染症予防方法や手順は異なるが、原則は<3密>を避け、人との間隔を取り、手指の消毒液を設置する等の<新しい生活様式>と呼ばれる基本を踏まえている。

 夜になって、感染の状況が厳しい①<特定警戒>地域の1つである大阪府の吉村知事は、国の決めた<特定警戒>地域ではあるが、知事として示した従前の判断基準に適合したとして、休業要請を段階的に解除する具体案を示した。

 長い一日であった。緊急事態宣言を解除する39県にとっては、期待と不安を抱えての新しい出発である。どのような具体策を立てて実行に移すか、知事の力量が問われる。

 緊急事態宣言を解除できない(継続する)8都道府県は、解除に向けて基準達成の努力をつづけると同時に、知事権限で行った休業要請の緩和・解除に向けた独自の基準とその工程表の作成が急務となる。

 15日(金曜)の共同通信によれば、米外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)は14日、東京発の論評記事で、日本の新型コロナウイルス感染対策はことごとく見当違いに見えるが、結果的には世界で最も死亡率を低く抑えた国の一つであり「(対応は)奇妙にもうまくいっているようだ」と伝える。また日本は中国からの観光客が多く、ソーシャル・ディスタンス(社会的間隔)の確保も中途半端と指摘。感染防止に有効とされるウイルス検査率も国際社会に比べ低いが「死者数が奇跡的に少ない」と評している。

 さらに「結果は敬服すべきものだ」とする一方、「単に幸運だったのか、政策が良かったのかは分からない」。数的に証明はできないが、日本人の衛生意識の高さや握手をしない習慣などが、死者数の低さにつながっているとの見方を示した。

 16日(土曜)、ここまで書いたところで突然、画面が暗くなり、愛用のパソコンがダウンした。6年にわたり使いつづけ、キーボードの文字の幾つかが消えるほど酷使した。まず念頭に浮かんだのは、本稿のつづきをどうするか。大部分の草稿はそのつどUSBメモリに移してあり、消失したものは少ないはずと胸をなでおろす。

 すぐに次機の手配をしなければならない。ネット通販で買うにしても、スマホでは細かい仕様が分からない。子どもたち家族が機種を決め、配送の手配をしてくれた。それが到着、配線等に苦闘し、使えるようできたのが23日(土曜)、1週間後であった。

 次機が届くまでの間、ボールペンや鉛筆でメモを取りはしたが、強い筆圧のため右手がすぐに悲鳴をあげた。執筆、通信、検索の基本作業ができない。できなくなると妙にさっぱりした気分にもなった。

 思えば、腱鞘炎になり、執筆かテニスのどちらかを諦めろと医者に言われ、ちょうど発売直後のポータブルワープロを買ったのが1984年夏、その後パソコンに移行して6代目の愛機である。実に36年間にわたり、右手にかかる筆圧を10本指に分散して原稿を書きつづけることができた。

 新しい機種が動きだすまでの空白期間により、本稿の記述は確実に飛んでいると思う。そこで必要最低限の事実を補うにとどめ、すこし違う視点から書き進めたいと思う。

 16日、東京都医師会が<これからのライフスタイル>17項目を提案した。すなわち、(1)「むんむん」「がやがや」「ぎゅうぎゅう」(三密)を避ける (2)三密空間に長時間いた自覚があったら人との接触は慎重に (3)三密空間にいた自覚があって発熱、倦怠感、無味無臭、咳、息苦しさなどの症状が出たらすぐかかりつけ医に相談し、PCR検査や抗原検査を行うなど早めに対応する (4)目・鼻・口には触らない。触る前には手指を消毒 (5)高齢者が多い施設や病院にウイルスを持ち込まない (6)咳やくしゃみをする時はマスクやハンカチで押さえる (7)公共交通機関やスーパー、コンビニなどの店舗、職場に行く際はマスクを着用する (8)テレワーク、時差出勤、オンライン会議など自由に選べるのがこれからの働き方 (9)デパート、スーパー、小売店などは消毒液の常備や列の間隔を空ける、キャッシュレスなど感染対策をしている場所へ (10)飲食店では従業員もマスクを着用 (11)食事会は飛沫感染しないように工夫 (12)夜の街の接客スタイルにも注意 (13)公園、釣り、ゴルフ、ジョギング、ウォーキングなどのオープンスペースでも感染リスクのない新たなルール作りが必要 (14)ライブハウス、パチンコ、ジムなども新しい楽しみ方を考える (15)外出後や食事の前は丁寧な手洗いや手指の消毒を徹底 (16)普段からバランスの良い食事、十分な休養、適度な運動を心がける (17)禁煙

 17日(日曜)、日経新聞が「唾液のPCR検査試薬」の見出しで、タカラバイオが月200万検体分の量産体制に入り、5月中にも厚労省が認可する公算と伝えた。

 本連載で幾度が言及したが、唾液によるPCR検査は、①本人がキットに唾液を入れて試験機関に郵送する簡易な方法であり、②鼻腔に綿棒を入れられる苦痛がないこと、③採取する側に2次感染の危険が生じないこと、④採取の巧拙による検査精度の乱れがないこと、⑤検査結果が出るまで約1時間と短時間であること等々、利点が多い。

 5月17日(日曜)から20日(水曜)までの間については、7点を列挙するに留めたい。

(1)<検察庁法>の改定問題。17日、元検事総長等14名の反対署名につづいて検察OB38名が反対署名を法務省に届けた。検察幹部の定年3年延長を首相等が決めるのは、三権分立の原則に反し、政治の司法への介入であるとしている。

(2)18日の各社世論調査によれば、内閣支持率が急落、各社の平均では、支持が37%前後、不支持が45%前後となった。その背景に、①上掲の<検察庁法>改定問題や、それに関連する黒川弘務東京地検検事長の定年を延長した問題、②新型コロナ感染症対策のうち経済支援等の失策等がある。

(3)18日、WHOの年次総会がビデオ会議形式で行われた。台湾をオブザーバーとする提案は認められなかった。新型コロナウィルスの発生と感染拡大について、19日、中国において独立した調査を行う決議が採択され、中国も「感染が収束した段階で」という条件付きで同意。

(4)21日、週刊文春誌(5月28日号)が「黒川検事長、賭けマージャン」と報じ、この緊急事態下、法案の検討中に「あるまじき行為」と非難轟轟となり、黒川検事長は法務大臣宛に辞表を提出。政府は22日の持ち回り閣議で辞職を正式に承認、その後任に名古屋高等検察庁の林眞琴検事長を充てた。25日、安倍首相が<検察庁法>改定法案の採決見送り(継続審議)を表明。

(5)この夏、富士山を閉山、4つの登山道を閉鎖し山小屋の営業も中止する、との報道。都留文科大学の学長時代、日々間近に霊峰を眺め、吉田口あたりや5合目までをバスで往き来した記憶が蘇る。東京、横浜からも遠望できる富士山の夏は、確かに<3密>の代表格ではある。

(6)東京都が緊急事態宣言の解除後に行う休業要請の解除の4つのステップの概要を公表した。具体的な内容は、22日に示された(後述)。

(7)22日、中国で全人代(全国人民代表大会、国会に相当)が約2カ月半遅れて開かれ、その<密集>ぶりに驚く。従来のような経済成長率の目標は公表されなかった。注目は香港をめぐる<国家安全法>案の上程であり、香港の「高度な自治」が脅かされること必至である。

 21日(木曜)、専門家会議が開かれ、1週間前の14日(木曜)の<特定警戒都道府県>13のうち茨城、千葉、岐阜、愛知、兵庫、福岡の6県が解除された。残る8都道府県(東京、北海道、千葉、埼玉、神奈川、京都、大阪、兵庫)が最大の問題である。前回同様、専門家会議、政府諮問委員会、西村大臣の記者発表、衆参両院議運での質疑、安倍首相の記者発表の手順を踏み、政府政策会議で正式決定された。すなわち京都府・兵庫県・大阪府の2府1県の緊急事態宣言を解除する。残るは、関東の1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)と北海道である。

 22日(金曜)夜のNHK Webによれば、緊急事態宣言の解除について、「直近1週間の新たな感染者数が10万人当たり、0.5人程度以下」が目安の1つであるが、22日までの1週間、神奈川県の10万人当たりの新たな感染者数は0.77人で、この目安を上回っていた。

 今月14日に変更された「基本的対処方針」(うち<緊急事態措置を実施すべき区域の判断にあたっての考え方>)では、この目安とは別に「1週間の新たな感染者数が10万人当たり1人程度以下」の場合は、感染者数の減少傾向を確認し、さらにクラスター(=感染者の集団)や院内感染、それに感染経路不明の症例の発生状況を考慮して、総合的に判断するとしている。

 22日、東京都が「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」の全容を発表した。【緩和の目安とする7つのモニタリング指標】のうち特に重要視する3つの指標として①1週間の平均感染者数が20人未満(公表日ベース)、②感染経路の追えない感染者の割合の1週間平均が50%未満、③1週間単位の感染者の増加比が1を下回る(ただし、新規感染者の1週間平均が10人以下になった場合、感染経路不明者の割合や増加比については参考とする)を挙げ、また注視する4つの指標として、1)重症患者数、2)入院患者数、3)PCR検査の陽性率の1週間平均、4)受診相談窓口における相談件数の1週間平均を挙げた。

 なお上掲の指標の一つでも緩和基準を上回った場合には、「東京アラート」を発令。レインボーブリッジを赤く点灯させる等で、都民に警戒を促すとした。

 それらの指標を基に、4つのステップを踏んで段階的に休業要請を緩和する。<ステップ0>が現状で、<ステップ1>は、ア)文教施設(都立学校は登校日を変更して対応、オンライン学習などとの組み合わせ)、イ)大学、専修学校(分散登校など)、ウ)展示施設(博物館、美術館、図書館など)、エ)屋内の運動施設(体育館、水泳場、ボーリング場など。観客席部分は使用不可)、オ)屋外の運動施設(野球場やテニス場、陸上競技場など。観客席部分は使用不可)、カ)飲食店の営業時間拡張(午前5時〜午後10時まで:酒類の提供も午後10時まで)、キ)50人以下のイベント。(以下省略)

 この日、神奈川県は緊急事態宣言の解除後の休業要請緩和について、東京都等のように対象を分けず、全業種で一斉に行う方針を示した。25日に宣言が解除されれば、短縮営業を求めたうえで、全業種で27日の午前0時(東京の1日後)から休業要請の緩和を2段階で行う方向で検討、とした。

 黒岩神奈川県知事は「クラスターや感染が起きやすい業種にもさまざまな事業者がある。業種で要請する発想から切り替え、事業者が対策をアピールして利用者が判断していく流れを作っていきたい。県民や事業者を信じたプランだ」と述べた。

 <ステップ1>では、各事業者がガイドラインを基に感染防止対策を講じることを前提に、遊興施設、大学や学習塾、劇場や商業施設などすべての業態や施設に午後10時までの短縮営業を求めたうえで、休業要請の措置を緩和する。合わせて午後8時までの営業を要請してきた飲食店も、午後10時まで営業可となる。イベントも小規模であれば開催可とする。東京都では第1段階の対象に含まれていない接待を伴う飲食店や、パチンコ店、ゲームセンター、それにライブハウスなども一斉に緩和の対象とする。<ステップ2>では、短縮営業も解除するほか、中規模のイベントから順次、開催可とする。

 25日(月曜)、専門家会議(14日、21日に次ぐ3度目)により、残る1都3県と北海道の宣言指定解除が可能とされ、これまで同様、専門家会議、政府諮問委員会、西村大臣の記者発表、衆参両院議運での質疑、安倍首相の記者発表の手順を踏み、政府政策会議で緊急事態の解除宣言を行うことが正式決定された。

 西村大臣は、全面解除の判断について「(第2波があっても)クラスター対策で抑えられる範囲に至った。適切な判断だ」と国会で説明。また「当然第2波はある。大きな波にすることなく抑えていくことが大事だ」と述べ、宣言解除後は約3週間ごとに地域の感染状況などを評価し、外出自粛やイベント開催制限要請などを段階的に解除していくとした。感染拡大の大きな波が起きた地域は、緊急事態宣言の対象に再指定するとの考えを示す。

 安倍首相は「日本ならではのやり方で、わずか1カ月半で流行をほぼ収束させることができた。日本モデルの力を示した」とし、「次なるステージへ、国民とともに力強い一歩を踏み出す。…新しいやり方で日常の社会経済活動を取り戻していく」と訴えた。

 国の言う約3週間ごとの評価と解除とは、<ステップ①>が5月25日(月曜)から、<ステップ②>が6月19日(金曜)から、<ステップ③>が7月10日(金曜)から。全国移動の解禁は6月19日からである。

 4月7日の緊急事態宣言発出から約1カ月半ぶりの全面解除。国内初の感染例が確認された1月16日から数えて約4カ月半である。緊急事態宣言発出前から安全と健康を守る自粛要請等が出されており、私が勤める三溪園では、<3密>を避けられないとしてボランティア活動を休止したのが2月17日(月曜)、また29日(土曜)には三溪記念館と合掌造りを休館とした。これを起点とすれば、約3カ月半ぶりとなる。

 年末の3日間のみ休園とし、年に362日の開園をつづけてきた三溪園にとって、これほどの長期閉園・休館の措置は初である。その間も庭園や古建築の維持管理には万全を期すべく力を注いできた。再開に向けて綿密な準備を進め、予告通り、6月1日(月曜)の9時開園を目ざす。来園者の笑顔を心待ちにしている。
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人類最強の敵=新型コロナウィルス(9)

 5月7日の朝一番で掲載した連載(8)は、次の一文で終えた。「東京都の感染者は3日に91人、4日に87人、5日に58人、6日に38人と、4日連続の2桁止まりとなった」。そして7日夕方に発表された東京都の感染者は23人、5日連続の2桁という低水準である。

 全国の感染者も3月30日から38日ぶりに98人と2桁まで下がった。良い傾向ではあるが、ここで気を緩めてはならない。3月20~22日の3連休の苦い経験がある。連休中で検査数が少ない可能性を勘案すると、全国も東京都も感染者の連続減少を単純に喜ぶわけには行かない。

 6日(水曜)、イギリスでは死者が3万人を突破し、イタリアを抜いて欧州で最悪、世界でアメリカに次ぎ2番目となった。首位のアメリカでは感染者が121万人を、死者が7万人を超えた。

 7日(木曜)、大型連休が明けた。4日の政府対策本部(本部長は安倍首相)で全都道府県を対象に緊急事態宣言の期間を5月31日(日曜)まで延長すると決めたのを受け、<特別警戒都道府県>13以外の34県のうち、28県が休業要請を全面ないし一部解除した。全面解除は青森、岩手、宮城、香川等の8県で、バーやカラオケ店を除く一部業種での解除は秋田、群馬、山梨、和歌山等の19件にのぼる。休業要請の10日まで継続は山形、20日までが福島、奈良、沖縄の3県である。

 PCR検査を増やさなければならないが、種々の制約があり実際には伸び悩んでいる。その障害の1つが検体採取後の処理であるが、富士フィルムが試薬を開発、検査時間を従来の約5分の1に短縮する。

 流通大手のイオンが全国で臨時休業している<イオンモール>内の専門店について、今月13日から、三重県や宮城県など19県にある42のモールで営業を再開すると発表した。人との距離をとるよう呼びかけるほか、消毒や換気を徹底するなど感染防止の対策を講じる。なお「特定警戒都道府県」にある施設をはじめ全国100余りのモールでは、引き続き専門店の休業を続ける。

 この日、厚労省の諮問機関である薬事・食品衛生審議会の部会においてレムデシビル(米製薬大手ギリアド・サイエンシズ社)を初の治療薬として承認した。

 いちはやく感染者を減らしたドイツは、一斉に舵を切り、経済・社会活動を再開。これまでは800㎡以下の店舗に限り営業できたが、大規模な家電量販店やデパートも営業できるとした。飲食店等の営業は州ごとの判断によるが、今週から順次営業が再開される見通しである。

 サッカーのドイツリーグは、3月中旬から中断していたリーグ戦を5月16日に無観客試合で再開すると発表。これまで1700人あまりの選手やスタッフにウイルス検査を行うなど、再開に向けた準備を進めてきた。6日には政府と各州とでオンライン会議を開き、5月後半から1部と2部のリーグに再開を認めたことを受け、7日、リーグと36の全クラブによる会合で決定した。

 ドイツが正常化に始動したのは、1日あたりの感染者が1000人を切り、1人の感染者から何人に感染するかを示す再生産数が収束の目安となる<1>を大きく下回ったためとされる。ところがすぐに<1,03>に逆戻りした。

 アメリカでは、直近の4月29~5月5日の車の利用数が1ヶ月前より5割ほど増えた。とくに中西部や南部で目立つ。初夏のドライブシーズン到来で州を跨いだ往来が増加、感染拡大の恐れがある。人口4000万人と最多を誇るカリフォルニア州でも、衣料・生花店等が2か月ぶりに再開したが、シリコンバレー周辺の自治体は、防護服不足等を理由に行動制限を続ける。

 ワシントン大学が最新予測を発表、各州が行動規制を緩めている現状では、8月上旬までに死者数が13万5000人に及ぶとした。1か月前の予測数の2倍超の上方修正である。トランプ大統領は同大の予測を1つの判断材料としてきただけに、今後に与える影響は小さくない。

 新規感染者数が3月中下旬にピークを超えた欧米諸国に比べ、同じ頃から感染者が急増しはじめたのが、インド、イラン、ブラジル、ロシアで、この順に増加カーブが高い。ロシアは7日連続で1日に1万人を超える感染者を出し、ブラジルは1日の死者数が米国についで世界2位となった。

 これに比べて、早期に国境封鎖し、種々の予防策を実施する等の初動が早かった台湾やベトナムは、感染を低く抑えている。なかでもベトナムの死者ゼロは目を見張る。かつて超大国アメリカが敗れたベトナム戦争(1964年~73年1月、ニクソン大統領終結宣言)を思い出した。ベトナム戦争での米兵の死者6万人弱に対して、アメリカでの新型コロナの死者は8万人を超えた。

 8日(金曜)、この日から中小企業や個人事業主への<持続化給付金>の支給が始まった。受付開始の1日から6日までに約43万件の申請があり、最短では申請から1週間で支給。法人は最大200万円、個人事業主(フリーランスを含む)は最大100万円。この対象からはずれる場合は、実質無利子・無担保の融資や販路開拓等を補助する<持続化補助金>を利用するよう呼びかけている。

 これまでに分かった公立高校の今月内再開は17県である。うち早いのは7日再開の青森、岩手、鳥取の3県、11日再開が秋田、愛媛等の5県、ついで14日、18日、21日、23日再開が各1県、25日が山梨等の4県である。小中学校の多くが高校の方針に追従すると見られる。授業日数の不足が懸念される。

 厚労省はPCR検査に向けた<相談・受診の目安>の改定を発表した。
体温には年齢差・個人差等があるため、「37.5℃以上の高熱が4日以上つづいた場合…」等、2月17日づけの指標を見直し、さらに4月29日の<緊急性高い13の症状>に加え、新たに、怠さ、高熱、味覚障害等の症状が1つでもあれば、医師を介して検査できるとした。

 <みらかホールディングス>の子会社<富士レビオ>が、<抗原検査>キットの製造販売承認を厚労省に申請、来週にも承認される見通し。<抗原検査>はインフルエンザ等の診断にも使われる手法で、15分程度で<抗原>と呼ばれるウィルスに特有の蛋白質を検出する。

 アメリカでは、食品医薬品局(FDA)が、自宅で採取した唾液で感染を調べる検査キット(ラトガース大学が開発)を認可した。唾液を入れたチューブを郵送すれば2日後に判明。綿棒で鼻から採取するより苦痛が少なく、採取ミスも起きにくいため信頼性が高く、防護服等や検査要員の不足解消にも役立つ。

 日本で伸び悩むPCR検査数、そのネックとなる要因は制度面、人員配置面、技術面と多岐にわたる。唾液検査については、早くも4月下旬に豊嶋崇徳教授(北海道大学大学院医学研究院内科系部門血液内科学教室)の提案で、種々の検証が進んでおり、「…口腔内、特に舌にはウイルスを細胞内に取り込むACE受容体が多く存在している。米・エール大学は、唾液のほうがウイルス量が多かったとする研究結果を発表」と述べる。日本でも唾液を検体とするPCR検査(検体の違いだけで、採取後の検査方式は従来と同じ)が承認されれば、画期的と期待されている。

 夜、録画「封鎖都市・武漢~76日間 市民の記録~」(BS1スペシャル)を観た。人口1100万余の大都市・武漢在住のソーシャルワーカー郭晶さん(29歳女性)が綴った『武漢封城日記』(台湾で刊行)と北京のネットラジオ<故事FМ>の記録を主な情報源として取材・構成した作品である。

 武漢の保健当局は、12月の発生以来、動物からヒトに感染するがヒトからヒトへの感染はないとしてきた。1月20日、一転してヒトからヒトへ感染すると発表、その3日後の23日未明、突如として空港・鉄道・バスの公共交通機関を封鎖、外出禁止等の都市封鎖を断行した。

 上掲の日記は、1月23日の朝、起床して初めて知った都市封鎖に始まり、2月11日の居住する集合住宅の封鎖、不安と怒り、ネットでつながる日々の情報交換やそれぞれの生活ぶり、時おりの買い物で見た街の様子等々、4月8日の解除までの76日間を綴る。

 そのなかで12月、新型肺炎の発生(7人が罹患)をSNSで知らせ警鐘を鳴らした李文亮医師(33歳)が逮捕、訓戒処分となった3日後の2月7日、この肺炎で亡くなったこと、彼を哀悼する笛の音が街に響きわたったことに触れ、「号泣し、怒りがこみあげた」と記す。

 「健全な社会の声は一つであるべきではない」と言っていた李医師への追悼文は1900万回もSNSに寄せられ、病院前には献花に訪れる人が絶えなかった。死後9週間を経た4月2日になって、中国政府は李医師を<烈士>(国が授与する最高の栄誉)に叙したが、郭晶さんは「…とても理不尽な扱いをされて亡くなったのに…不条理なことが当たり前になって感覚がマヒしてはならないと思う…」と語る。

 5月9日(土曜)、ふだんなら早朝テニスの日だが、コートはすべて閉鎖されて1ヶ月半になる。経済活動の停止による温暖化ガス排出の急減、2009年のリーマンショック時の6倍になるという。地球環境には優しいが、石油・天然ガス・石炭の産出国は悲鳴を上げる。

 説明のつかない一例が、最近の世界的株高現象である。「実体経済と大きな乖離がある」のは当然とされるが、その先に何が待っているのか。

 マスク・防護服等の医療品の欠乏が問題になっている。新自由主義的な競争のなかで、人件費などが安い中国や東南アジアへと製造拠点を移していた結果である。

 新型コロナの治療薬として承認が待たれる日本国産のアビガンも、原料のマロン酸ジエチルは中国からの輸入である。日本政府は国家安全保障上の支障になるとして、5月の補正予算で補助金を出し、国内化学メーカーにマロン酸ジエチル生産を再開させた。

 アメリカの製薬会社も薬の原料生産の多くを中国の工場に委託、例えば抗生物質等も中間化学品の調達をほとんど中国に依存している。中国の化学産業のシェアは世界の40%を占め、医薬品サプライチェーンの中心的役割を担う。

 10日(日曜)、政府は緊急事態宣言の対象都道府県について、30県以上を解除する方向で調整に入った。<特定警戒都道府県>13のなかでも政府が設ける基準を満たせば解除の検討対象になる。その基準については、①感染状況、②医療供給体制、③モニタリング体制、の3点を総合的に見る、と西村大臣が表明、14日にも専門家会議の提言を得て判断すると述べた。

 これにつづけて21日と月末にも専門家会議の見解を得て判断、また解除後に感染者が増えた場合に備え、宣言対象に再指定する仕組みも新たに設ける方針を示した。第2波、第3波を想定し、持久戦、長期戦を覚悟して、<再指定の仕組み>を設定する必要がある。

 新型コロナの重症度を判定するCT(コンピュータ断層撮影)の保有台数は日本が飛びぬけて多く首位に立つ。人口100万人あたり、日本が110台、2位のオーストラリアが60台、アメリカ、韓国、ドイツ、イタリアが約40台、スペイン、フランスが20台である(日経新聞5月10日)。

 本連載(3)(4月1日掲載)で「重症化した患者には人工呼吸器による酸素供給が不可欠であるが、人工呼吸器が決定的に不足している。その増産と供給には時間を要する。そしてEⅭMO(エクモ、人工心肺装置)の数はさらに限られ、それを扱う医療従事者も決定的に足りない」と述べ、また本連載(8)(5月1日掲載)では「経済活動の再開には、実態把握が不可欠である。この点においても日本のPCR等の検査数は極端に少ない。人口比で見るとドイツは日本の14倍、アメリカも5倍の検査件数を掲げている」と日本の対応の遅れを指摘した。このような状況下、CT保有台数の多さは救いである。

 録画していた<シリーズ・コロナ危機>の1つ「中小企業の“突然死”を防げ」(BS1スペシャル)を観た。中小企業は全企業の99.7%を占め、雇用の約7割を擁している。そのなかで銀座や赤坂等の飲食店・クラブ・料亭等の4万人を組合員とする第一勧業信用組合の奮闘の物語である。

 国と都の要請に応えて休業しても、固定費(高額の家賃、従業員の人件費等)の支払いは避けられず、肝心の政府の<持続化給付金>は申請手続きが煩雑で時間がかかり、申請後もすぐには給付が届かない。その間の<つなぎ融資>を行うのが金融機関としての信用組合の役割だが、それにとどまらない。

 「コロナごときで1社たりともつぶしてはならない」と7年前から理事長を務める新田信行さんは強調する。江戸時代から何代目という店もあれば、最近開業の店もある。「…地域経済の持続的展開こそが当社の本来の目的であり、この緊急事態下ではカネだけの仲介機能にとどまらず、ヒト・カネ・モノ・情報の仲介機能を総動員する」とし、例えばある組合員の高級婦人服の縫製メーカーが作ったマスクを、40万人の組合員と全国38の信用組合の100万人に呼びかけ完売させた。

 「相互扶助」を理念に掲げ、中小企業・小規模事業者等や地域、業域、職域の生活者の支え合いと夢を親身になって支える新田理事長は、みずから動く<自助>はもとより、国や自治体による<公助>に加え、今こそ信用組合による<共助>の役割を精一杯発揮したいと言う。

 夜、TBSの<情熱大陸>で「塩田達雄! コロナ検査キット開発 ウィルス研究者の挑戦」を観た。大阪大学微生物病研究所の塩田達雄教授に国立感染症研究所からアフリカミドリザルの腎臓が届く場面から始まる。「敵を防ぐにはまず敵を知る」を鉄則としてウィルス研究を進める教授は、PCRとは別の簡易検査キット(15分で判定可能)の開発に情熱を注ぐ。デングウィルスを新型コロナウィルスに応用、精度が高いことまでを突き止めた。これから感染者の検体を使う段階に入る。正式な承認は先になるが、期待したい。

 11日(月曜)、衆参両院の予算委員会で第2次補正予算の審議が始まり、そのなかで安倍首相が「7月にもワクチンの治験を始められる」と答えた。

 上海のディズニーランドが3か月半ぶりに営業を再開、また北京の日本人学校も同じく3か月半ぶりに再開した。パリでは2カ月半ぶりに40万社・店舗が営業を再開(レストラン・カフェを除く)。すでにスペインは5月2日(土曜)から、イタリアは4日(月曜)から、ドイツは6日(水曜)から、米カリフォルニア州は8日(金曜)から外出緩和、店舗再開に踏み切っている。

 感染抑止、社会経済活動の再開、市民の行動等、難しい舵取りを誰がどう進めるか。既存の回答が存在しない今、世界各国の試行錯誤を参考に、どう判断・決定するかが大きな鍵になる。

 その1つの事例が香港であり、初動は早く1月25日に「緊急事態」を宣言、春節の祝賀行事を中止し、観光施設を閉鎖するなどの対策を次々と講じた結果、感染者数は1048人、死者は4人にとどまっている(5月11日現在)。11日夕方のNHKのウェブ特集「<抑制>と<緩和>は繰り返す」が、対策の指揮を執る香港大学医学院長ガブリエル・レオン教授への取材記事を伝える。

 教授は、<健康の保護>、<経済の保護>、<社会の合意>の3要素を関連させつつ、最終的には人口の60~70%が免疫を持つまで続ける。ワクチンができれば免疫を加速できる。幾度か<抑制と緩和>を繰り返し、ウィルスが消えてゆくのを忍耐強く待つ、と見解を述べる。日本でも言われる<ウィルスとの共生>である。<忍耐強く対処する>ことに期待したい。

 12日(火曜)、台風1号が発生した。週明けには沖縄直撃か。つづく夏日に加え、台風被害や避難所でのコロナ感染の危惧等に思いが行く。高温多湿下のマスクの苦痛も思いやられる。

 特別警戒の13都道府県を除き、それ以外の県では自粛解除が現実問題となってきた。これを機に全国知事会(テレビ会議)が開かれ、引きつづき県境をまたぐ移動を自粛する提案が出されるなか、大阪への通勤者が3割を占める奈良県は、「仕事以外の移動」と条件を付すよう求めた。

 緊急事態宣言の解除を進めるにあたり、「感染防止」と「社会経済の活動再開」の両立をどう図るか。政府は、感染症の専門家を主体とする<基本的対処方針等諮問委員会>に新たに4名の経済の専門家(竹森俊平慶大教授ほか)を加えると、西村大臣が発表した。

 PCR検査をいち早く広範囲に実施し、世界の<優等生>とされた韓国では、新規感染者数が4月29日から5月7日まで1日だけを除いて1ケタ台を維持してきたため規制を緩めたところ、ナイトクラブで集団感染が6日に確認され、感染者数は9日に10人、12日に120人と急増している。感染の第2波、第3波への備えと基準設定の難しさを知る。イスラエルでも解除後に新たな感染が判明、再度の規制の基準づくりを模索中という。

 発生源の武漢市で、人口1100万人余の全市民にPCR検査を10日間で実施すると発表した。封鎖解除から35日後に6人の感染者を出したためと言われるが、真の狙いと効果については明らかでない。

 東京都は、日本水環境学会と連携して下水の分析を進めると発表した。感染者の便からウィルスが排出されるため、まず芝浦水再生センターで下水を採取、その試料をもとに感染の実態(地域別)や拡大の予兆を把握する手法を開発していく。

 13日(水曜)、新しい<抗原キット>が薬事承認された。また緊急事態宣言の解除候補地として、<特別警戒都道府県>13の中から茨城、岐阜、愛知、石川、福岡の5県を含む39県とする案が出てきた。解除の目安の1つとして浮上したのが「10万人当たりの1週間の感染者が0.5人以下」である。正式に決めるのは、14日の政府対策本部である。

 小さな記事の扱いだったが、再開する学校にとっては死活問題になる小中学校の体育授業でのマスク着用問題。大分県教育委員会は去る4日にマスク着用を義務付けると通達したが、体育の授業にマスク着用で死者が出た中国の報道を受け、通知を撤回したという。授業再開に伴う全国の学校で判断が迫られる。

 都内の感染者は8日が39人、9日が36人、10日が22人、11日が15人、12日が28人、13日が10人、連続11日間の40人未満に収まった。2週間前の4月下旬以来、大型連休に向けてのステイホームの成果が出てきたと見られる。30人未満は4日連続である。


人類最強の敵=新型コロナウィルス(8)

 前回の(7)は4月28日(火曜)の昼までの情報を基に作成した。その日の夕方の東京都の感染者は112人と発表された。25日=103人、26日=72人、27日=39人と減少してきたのが、逆戻りである。

 本ブログに「人類最強の敵=新型コロナウィルス」を掲載したのが3月6日、それから5月1日で早くも2カ月が過ぎた。連載も(8)となった。感染拡大のテンポは速い。それを抑止する懸命の努力が追いつかなければ、医療は崩壊し社会経済は深刻な事態に陥る。

 28日午後、新たなニュースが幾つか入る。米ニューヨーク州のクオモ知事は27日の記者会見で、新型コロナウイルスの抗体検査を7500人に増やした結果、14.9%で抗体(感染した履歴を示す)が確認されたと発表、3000人を対象とした22日時点の13.9%から1ポイント上昇している。州内で最も感染者が多いニューヨーク市内では22日の21.2%から24.7%まで高まり、4人に1人の割合で抗体を持ったことになる。内訳は、ヒスパニック系が32%、黒人が16.9%、白人が8.9%である。人種による違いについてクオモ知事は「分析を進めているが、現時点では分からない」と述べた。

 またニューヨーク市のデブラシオ市長は27日、公園などの混雑緩和のため、市内の道路を少なくとも40マイル(約64キロメートル)にわたって歩行者専用路とする計画を発表した。最終的には100マイルまで広げるとしている。

 フランスでは死者が2万2000人を超え、その4割が約7000ある高齢者施設の8654人、集団感染も相次ぎ、感染防止と介護を両立させる難しさを浮き彫りにした。感染拡大の一因として指摘されているのはマスクなどの不足でスタッフがマスクをつけず、感染を拡げたケースも少なくないと見られる。

 また、フランス政府は感染予防策として先月28日から施設に対し、入所者を個室に隔離するよう求めたが、専門家からは「人の接触が少なくなると、認知症が進行するおそれがある」、「運動機能が著しく低下する」など、多くの懸念が示された。これを受けて政府は、今月20日から条件付きで家族の訪問を認め、各地の施設はガラス越しの面会を工夫するなど対応を進めている。

 29日(水曜、昭和の日)、いわゆる大型連休の初日である。東京駅発の新幹線は乗客0人の列車もあり、平均して乗車率は10%以下、羽田・成田の空港にもほとんど人が見られない。

 午前中に衆議院予算委員会の休日審議が開かれ、約26兆円の大型補正予算審議が本格化した。休日審査は9年前の東日本大震災以来、初めてである。

 この日、厚労省は埼玉県で自宅待機中の男性が死亡したことなどを受けて、宿泊施設での療養を基本とする方針に変更、自宅療養の患者の容体が急変する可能性から、以下のチェック・リスト<緊急性高い13の症状>を発表した。これらの項目を患者や家族が原則1日2回確認し、該当項目が1つでもあれば、すぐに自治体の連絡窓口に、また宿泊療養施設であれば配属されている看護師などに連絡を、と呼びかけている。

【表情・外見】 ①顔色が明らかに悪い、②唇が紫色になっている、③いつもと違う、様子がおかしい。
【息苦しさなど】 ④息が荒くなった(呼吸数が多くなった)、⑤急に息苦しくなった、⑥生活をしていて少し動くと息苦しい、⑦胸の痛みがある、⑧横になれない、座らないと息ができない、⑨肩で息をしている、⑩突然(2時間以内を目安)ゼーゼーしはじめた。
【意識障害など】 ⑪ぼんやりしている(反応が弱い)、⑫もうろうとしている(返事がない)、⑬脈がとぶ、脈のリズムが乱れる感じがする。
これに⑭味覚・嗅覚の異常を加えたい。

 これは2月17日に出された厚労省の<相談する目安>の以下の3項目に比べて、はるかに有益である。①かぜの症状や37度5分以上の発熱が4日以上続いている人、②解熱剤を飲み続けなければならない人、③強いだるさや息苦しさがある人。

 この2カ月半の公表の遅れにより、生命を落とした方々もおられるに違いない。なお5月1日、厚労省はやや丁寧に「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」を掲載した。

 中国は全国人民代表大会(全人大)開幕を5月22日と発表。例年は3月5日からであるが、感染症のため2か月半遅れた。合わせるように各都市で外出禁止令が緩み、街を歩く多くの姿が見られ、観光客9000万人の報道もある。加えて5月1日からは5連休。感染流行の第2波を案じる声もある。

 中国で発生した新型コロナウィルスは、近隣の日本、韓国、台湾、東南アジア諸国へと拡がったが、一方、航空機による往来の多い欧州にまず飛び火し、イタリア、スペイン等で猛威を振るい、それがさらにアメリカに及び、世界最多の感染者と死者を出した。

 厳しい外出禁止令や都市封鎖を行った時期の早い欧州から、その約2カ月半後の最近、徐々に外出禁止令の緩和、飲食業や製造業の活動再開、休校措置の緩和等が始まっている。

 大陸国家アメリカでも、経済活動再開の動きが慌ただしくなった。感染拡大を抑えるために不要不急の外出や集会への参加などの自粛を求めた行動指針が30日に期限を迎えたが、トランプ大統領は期限を延長せず経済活動の再開を急ぎたい考えを明確にし、その判断を事実上、各州の知事にゆだねた。

 全50州の対応は2つに分かれる。国の行動指針の期限を待たず、4月中に部分的に再開した共和党知事の州もある。ジョージア州では4月24日から床屋やボーリング場等、27日からは飲食店や映画館に営業再開を許可した。<事業再開>を叫ぶ市民のデモ等を受けて再開の動きは速い。

 一方、東部のニューヨーク州(民主党の知事)やニュージャージー州、それに西部カリフォルニア州やオレゴン州などは、近接する州で協議会を作り、適切な時期や方法について検討を進めている。半年後に迫る大統領選挙にも影響が出そうである。

 30日(木曜)、全国知事会議で9月入学の提案に対して賛否両論が繰り広げられた。学校再開の方策を探るべき時に、諸外国に合わせて9月入学制度に切り替える議論は時期尚早・本末転倒とする声もある。国会質問を受けて安倍首相は「…前広に検討する」(「前広に」とは永田町用語で「慎重に」とか態度を合間にする用語)と答えた。

 この日、東京都の感染者は46人と減ったものの、早期に独自の対策を打ってきた先進自治体の北海道では、前々日の38人、前日の38人から41人と継続して増加した。北海道知事と札幌市長が緊急記者会見を行い、第2波ではないかと強い懸念を示す。

 休業要請を受け入れないパチンコ店の店名公表を東京・大阪で知事が決定したことで、全部のパチンコ店が休業を決めたが、全国にはまだ営業中のパチンコ店がある。

 大型補正予算が可決成立、その意義を述べた安倍首相は、緊急事態宣言を5月6日に解除できるか否かの質問を受け、「…ただちに日常に戻ることは困難…持久戦になる…」とし、近日中に専門家の見解を受けて判断すると答えた。

 5月は1日(金曜)から夏日(最高気温が25~29℃)。西日本の一部では真夏日(最高気温が30~34℃)となった。午前10時から専門家会議(脇田隆宇座長)が開かれ、緊急事態宣言の終期である5月6日で解除できるか否かの議論が交わされた。

 昼の西村大臣による概要発表では、「外出自粛などにより全国で新たな感染者数は減少傾向に転じているが、制限を緩めれば、再び感染が拡大するおそれがある」として、当面は「徹底した行動制限が必要」と述べた。

 この日の午前、萩生田文科大臣が記者発表し、休校中の学校について、児童生徒の3密を避けるため、分散登校・分散授業による再開のガイドラインを各自治体の教育委員会へ通達するとし、とくに小学1年と6年、中学3年から優先して取り組んでほしいと述べた。その開始時期については、緊急事態宣言の延長期間によって決まる。

 この日の午後、専門家会議の<新型コロナウィルス感染症対策の状況分析・提言>が明らかにされた。3月19日、4月1日、4月22日に次いで4度目である。大項目は、「1.はじめに」、「2.感染の状況等について」、「3.行動変容の状況」、「4.今後の見通しについて」、「5.今後求められる対応について」、「おわりに」からなる。全体のトーンは「今後の対応は長丁場になる」である。

 上記の「3.行動変容の状況」と「4.今後の見通しについて」、「5.今後求められる対応について」の3つでは、さらに下位の項目を立て、以下のように詳細に論じる。

 「3.行動変容の状況」では、(1)総論、(2)行動変容の評価方法、(3)行動変容の具体的な評価、の3項目を立てて述べる。そこでは<新しい行動様式>という表現を使って、具体的な採るべき行動に触れ、後述の5-(1)につなげる。

 「4.今後の見通しについて」では、(1)今後求められる対策の期間に関する見立て、(2)地域での蔓延の状況に応じた対策の必要性、(3)引き続き、「徹底した行動変容の要請」が求められる地域における留意事項、(4)「徹底した行動変容の要請」を維持するか、緩和するのかの判断に当たっての考え方、の4項目である。

 「5.今後求められる対応について」では、(1)感染拡大を予防する新しい生活様式の普及、(2)クラスター対策の効率的な実施に向けた施策の推進、(3)医療提供体制の拡充、(4)PCR 等検査の拡充、(5)ワクチン、治療薬等について、(6)学校の取扱いについて、(7)社会的課題への対応について、の7項目である。

 さらに専門家会議における質疑応答の一部も公表された。そのなかから2つを引きたい(概要)。

 第1が、質問「PCR検査は結果が出るまでに4~6時間かかる。それに対して、抗原検査(抗体検査)は15分。精度の問題がクリアできたらPCR検査と同等に扱えるのか?」に対する脇田座長の回答(概要)。「PCR検査と同様にウイルスに感染している人をその場で検出する新しい抗原検査、あるいは抗体検査はインフルエンザの抗原キットと同様に使えるもので…非常に短時間で結果が出る。…PCR検査より感度は低いが、これが導入されると迅速に感染が診断でき、その場で必要となれば入院できる。非常に有用だ。」

 第2が、尾身副座長の以下の発言。「このまま何もしないと諸外国型のオーバーシュートの軌道に入り、医療態勢が逼迫してしまう。…戦後初めてこれだけの皆さんの協力により、…強制的に街を封鎖しなくても、上がり気味の感染者数を、ある程度、終息の方向に向けられた。…よかったと思う。さらにもう少し努力が必要なのは言うまでもない。」

 専門家会議の提言を受けて安倍首相は、記者会見で5月6日までの緊急事態宣言を1ヶ月程度延期する、全都道府県が対象になると述べ、4日に改めて専門家会議を開き、所定の手順を経て、政府対策本部(本部長は首相)で正式に決める、とした。

 2日(土曜)午前のニュース。治療効果が期待されている<レムデシビル>(エボラ出血熱の治療薬としてアメリカで開発されたもの)を、アメリカが緊急的使用として認めたことを受け、厚生労働省も<特例承認>の手続きに入り、早ければ1週間程度で承認を目指す。流通量に限りがあるため、当面は厚労省の管理下で特定の病院にのみ供給される可能性という。

 この日、全国的に気温が上昇。東北等の一部で32℃の真夏日(最高気温が30~34℃)となる地域があった。<熱中症に注意!>の警告が出る。マスクの汗に、これからが思いやられる。

 東京の感染者は、5月1日の165人につづき2日は160人となった。4月26日=72人、27日=39人と減少し、28日=112人、29日=117人、30日=120人と100人を超え、さらに増えている。<継続的に減少>と読むことはできない。

 3日(憲法記念日、日曜)も、主な関心は緊急事態宣言の延長、経済的打撃の実態と経済再開(休業要請解除等)への模索、そして国際政治の静かな構造変革の予兆等であり、憲法記念日の関連行事は中止、ネット配信となった。議論は脇に押しやられた印象が強い。

 この日の日経新聞トップ記事は「世界の企業、4割減益」、小見出しは「1~3月 日欧、7~8割減」である。QUICK・ファクトセットの企業財務データで世界の約8400社の公表数値や市場予想をもとに集計した前年同期との比較である。地域別では日本が78%と最悪の減少率であり、ついで欧州が71%、一方、中国やアメリカは世界平均(40%)より小さく、それぞれ30%、36%である。日本はきわめて厳しい現実を突きつけられた。

 経済活動の再開には、実態把握が不可欠である。この点においても日本のPCR等の検査数は極端に少ない。人口比で見ると、ドイツは日本の14倍、アメリカも5倍の検査件数を掲げている。

 上掲2つの事例は、現実を冷静に直視したものとは言え、やはり気が滅入る。これに対して同紙2面に載った「コロナ対策 市民結集」は「IT駆使、世界から知恵」の小見出しにあるように、パソコンやサーバーで余っている計算能力を統合する<市民結集>で、短時間で1秒間に240京(兆の1万倍)回の計算能力すなわち世界のスーパーコンピュータ500台の合計を上回った。

 この高い計算能力を使い、次のような課題に取り組む。①オンラインでコロナ対策のアイディアを募集、②ウィルスの構造解析、③自治体等が発表する感染等のデータを分析しやすい形に整備、④論文データの整備、治療薬の開発等、AI技術者への協力の呼びかけ。

 しかし足元を見ると、ITやAIを駆使するデジタル技術が現場では十分に使われず、例えば感染経路を追う保健所等の作業は主に電話というアナログ手法に依存、対応不能になりつつある。またデータの公開も遅く、海外の情報との互換性を欠く。

これでは感染予防はもとより、<出口戦略>を立てるさいの数的根拠を持てない。こうした日本社会の現実の根本に、旧態依然の20世紀型から脱しきれない国の<アナログ行政>があり、この弱点をコロナ危機が増幅していると指摘する見解がある。

 この日の夕方、安倍首相は西村大臣、加藤大臣と協議して、翌4日に緊急事態宣言の延期期限を5月31日(日曜)までとして諮問委員会に諮ることを決定。3週間の延長である。

 4日(みどりの日、月曜)午前、専門家会議が開かれ、ついで基本的対処方針等諮問委員会(尾身茂会長、委員は16人で、専門家会議メンバー12人は全員兼務)に宣言の延長を諮問、その後、衆参の議運の審議を通し、政府対策本部(本部長は安倍首相)において決定した。いささか回りくどい印象を受けるが、これは<改正新型インフルエンザ対策特別措置法>(2012年公布の同法の改正版、3月13日公布、翌日から施行、名称に注意)に沿った手続きであり、延長・解除にも、宣言と同じ手順を踏む。

 専門家会議による「新型コロナウィルス感染対策の現状分析・提言」(A4×20ページ)(3月19日の同名の文書から数えて5回目)は、上掲の5月1日の同名の文書を継承したもので、とくに「4.今後の行動変容に関する具体的な提言」の「(1)感染拡大を予防する新しい生活様式について」の別添として掲げられた「<新しい生活様式>の実践例」が注目される。チェック項目が全部で46あり、言われてみればもっともと頷くものが少なくない。

 この提言を受け、4日夕方、政府対策本部で決定した内容の主な点は以下の6つである。①緊急事態宣言の期間を5月31日(日曜)まで延長する、②全都道府県を対象とする、③13の<特定警戒都道府県>は現状の重点対策を維持する、④それ以外の34県は感染拡大防止と社会経済活動の両立に配慮して一部を緩和する、⑤手洗いの励行、3密を避ける等の<新しい生活様式>のいっそうの徹底、⑥公園や博物館については<新しい生活様式>に十分配慮したうえで再開を容認する。

 上掲⑥は微妙な言い回しとなっているため、「新型コロナウィルス感染症対策本部(第33回)」の議事資料(A4×33ページ)の該当箇所(15ページ)の表現を引いておきたい。「施設の使用制限の要請等を検討するにあたっては…各都道府県知事が適切に判断するものとする」とした上で、「例えば、博物館、美術館、図書館などについては、住民の健康的な生活を維持するため、感染リスクも踏まえた上で、人が密集しないことなど感染防止策を講じることを前提に開放することなどが考えられる。また、屋外公園を閉鎖している場合にも、同様に対応していくことが考えられる」。

 のち本部長の安倍首相が記者会見で質問に応じた。そのなかで来たる5月14日(木曜)に再度、専門家等による感染者数や医療体制の分析を受け、状況によっては、地域ごとに緊急事態宣言を31日より前に解除することもあるとの考えを示した。

 この日の日経新聞トップ記事の見出しは「従業員 業種越えシェア」。ネット小売りなど人手不足に悩む企業が、休業を強いられる他業種から期間限定で従業員を受け入れる<従業員シェア>である。世界で広がりを見せている。
 
 この4日(月曜)、欧州各国で、外出禁止の解除や食堂の営業許可等の動きが目立った。多くの感染者・死者を出したイタリア、スペイン等では、美容院・理容店、公園、レストランの営業再開等に喜ぶ姿が放映されたが、どのような基準で解禁したか、詳細は不明である。フランスは11日から小学校などを再開するが、美術館・映画館は閉館をつづける。

 5日(火曜)、こどもの日。休校つづきの中で迎える祝日となった。こども達は友だちと一緒に学び、遊ぶ機会を絶たれている。小学1年生は学校生活をまだ知らない。

 この日の人出も、各地で7割から9割の減少を見た。一方、欧州の外出等の解禁の映像とあまりに異なる姿に目を見張る。いまだ正体不明の新型コロナウィルス対策に唯一の正解はないと知りつつ、それぞれに頑張るほかない。

 大阪府は、5日夕刻、吉村知事が記者発表を行い、休業や外出自粛の要請を解除するさいの基準を国が示さないのであれば、府独自の基準<大阪モデル>を設けると2日に表明していた通り、次の数値目標を15日(金曜)の段階で満たせば、休業や外出自粛の要請を解除再開すると表明した。

 それは①経路不明の感染者が前週より減少、②経路不明の感染者が週に10人未満、③陽性率(感染者数のうち陽性の割合)が7%未満(世界の死亡者が急減する境界の比率を参考に採用した指標)、④重症患者の病床使用率が60%未満であり、これら4つの指標を7日連続で達成すること。

 ちなみに国も他の自治体も③陽性率(PCR検査数に対する陽性者の比率)と④重症患者の病床使用率は公開していない。<大阪モデル>の提示は、今後の方向性を決める先例になるかもしれない。なお大阪府専門家会議の座長を務める朝野和典教授(大阪大学)は「サイエンスとしての正確性には自信がない」と述べ、いまだ正体の分からぬ新型ウィルスへの警戒を緩めていない。

 東京都の小池知事は、この1ヵ月は「死活的に重要」として、都の休業要請に全面的に協力する中小事業者への協力金を前回同様、1店舗50万円、2店舗100万円を追加支給すると発表、また出口戦略の工程表も近く発表すると述べた。

一方、明日から休業・外出自粛を解除すると述べる知事もいる。それぞれの地域で独自の選択があって当然だが、県境をまたぐ移動の制限は全国知事会の一致した見解である。

 6日(振替休日、水曜)、大型連休最後の日、関東は広く雨。いつもなら帰京客で混みあう新幹線や空港はがらんとしている。

 新型コロナウィルスの治療薬や予防薬(ワクチン)の開発が各方面で進められているが、すぐにできるものではない。その間、既存薬の使用に期待がかかる。すでに幾度か言及したレムデシベルやアビガンはウィルスの増殖を抑える効果があり、近日中に承認される見通しである。

 ほかに①<免疫暴走>を抑える薬効を持つアクテムラ(もとはリウマチの治療薬)や②イベルマクチン(抗寄生虫薬)についての各国の臨床実験の成果が出てきている。イベルマクチンは北里大学の大村智教授(ノーベル賞受賞者)が
1979年に開発したもので、すでに3億人に投与、1回4錠ほどを服用するだけで効果があり、副作用は少ないという。だが新型コロナウィルスの特効薬となるか否かはまだ十分なデータがないと慎重な意見がある。

 東京都の感染者は3日に91人、4日に87人、5日に58人で、6日に38人と、4日連続の2ケタ止まりとなった。
プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
前園長(2012年8月~2023年3月)

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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