人類最強の敵=新型コロナウィルス(7)
4月22日(水曜)、緊急事態宣言発出から2週間、掲載(6)の末尾で「この間の感染抑制策を点検し、今後の対策を立てるため、夕方から政府対策会議が開かれる」と述べた。
政府対策会議とは「新型コロナウィルス感染症対策本部」(1月30日閣議決定)の会議(本部長は内閣総理大臣)で、その直前に開かれた政府専門家会議(2月14日対策本部決定、座長は脇田隆字・国立感染症研究所長、副座長が尾身茂・独立行政法人地域医療機能推進機構理事長)の提言を基に判断する。
専門家会議は、特別措置法に基づく4月7日の緊急事態宣言から2週間を経た時点で、これまでの状況を分析、東京都の主要駅の人口が69~87%減少するなど、人の移動が大きく減ったとする一方、データからは8割削減は達成されているとはいえないと指摘。そして帰省や飲み会をオンラインで行うなど人と人との接触を8割減らす「10のポイント」をまとめた。
絵入りの「10のポイント」は、今さらこんなものをという声もあるが、<3密>が浸透してくるにつれて、もう少し詳細に知りたいという要望に応えたとも見られる。例えば、3「ジョギングは少人数で、公園は空いた時間、場所を選ぶ」はより具体的であり、5「飲み会はオンラインで」は今後、流行りそうである。
専門家会議は「現状と課題」につづけて、以下の「提言」を行った(要約)。
(1)日本ではこれまで、社会・経済機能への影響を最小限としながら、感染拡大防止の効果を最大限にするとともに、「医療崩壊防止」並びに「重症化防止」による死亡者数の最小化を図るため、「①クラスター(患者集団)の早期発見・早期対応」、「② 患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」、「③市民の行動変容」という3本柱の基本戦略に取り組んできた。
(2)緊急事態宣言が発出された状況下、「③市民の行動変容」については、都市部を中心に感染のリスクが拡大している中、「3密」に代表されるハイリスクの環境を徹底して回避する行動制限に加え、接触の8割削減により蔓延区域の拡大を収束させることが求められる。
(3)「②患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」については、医療機関の役割分担の促進、PCR等検査の実施体制の強化、保健所体制の強化及び業務の効率化等に関し、都道府県知事等による更なるリーダーシップが求められる。
(4)対策のフェーズが変わる中、ひきつづき蔓延を食い止め、「医療崩壊防止」並びに「重症化防止」を進めて死亡者数の最小化に力点を置きつつ、今後の対策を提言する。
さらに5月6日(振替休日)を緊急事態宣言の終期を延長するか否かの判断基準を明らかにした。重視する主な基準は(1)国内の新規感染者数の増減、(2)人と人の接触8割削減の達成度、(3)医療体制の逼迫状況、の3つであり、政府は5月早々に、これらを分析した上で、47都道府県に発令した宣言を一部地域で解除できるか見極める。
以上の専門家会議の資料と<提言>計30ページ(A4)を基に、同日夕方、政策会議が官邸で開かれ、その結果を安倍首相が記者発表した。とくに上掲(2)の「接触の8割を削減するという市民の行動変容をいかに徹底するか」では、来たる大型連休(GW)中の遠距離旅行自粛に触れ、<8割減>への協力を強く要請した。
23日(木曜)朝、女優の岡江久美子さん(63歳)が、新型コロナウイルス肺炎により亡くなったニュース。3日に微熱があり、自宅療養に努めていたが、6日に容態が急変、緊急入院後はICU(集中治療室)で治療を続けていた。
この日、小池都知事はさらに強く<ステイ・ホーム>を強調、25日(土曜)から5月6日(振替休日で、緊急事態宣言の最終日)の12日間、みなで心を一つにして<8割減>を達成したい、「買い物は3日に1度に!」と呼びかけ、外出自粛という今の我慢・忍耐が感染抑止の鍵になる、と繰り返し要請した。
都知事の呼びかけに、スーパーの経営者たちから、それぞれの工夫や反応が出てきた。商店街も動き始めた。12日間のGW中、感染拡大をいかに抑止するか、この方向に向けて多様な対応が生まれるであろう。
経済界からも「この2週間の行動こそ最大の経済支援」との声があがり、各企業で社員にたいし、進んで連休を取得するよう呼びかけるという。
24日(金曜)、安倍首相は月内にも医療機関にマスクやガウン等の医療防護具(サージカルマスク1500万枚等)を優先的に届けるとした上で、不足状況を把握できるネットシステムを整え、5月中の稼働をめざすと対策本部で表明した。これまで個別の医療機関がメーカーに発注してきたものを、国が一元的に管理し、空病床、医療用防護具等を把握できるよう、補正予算に盛りこむ。
この日、政府が1世帯当たり2枚のマスクを配る政策(アベノマスクと揶揄された)が始まったが、郵送されたマスクに汚れや異物の混入がある等のクレームが続出した。郵送費を含めて466億円が費やされたもの。
マスクは国内の民間企業が90億円で請負い、中国やベトナム等で生産された。厚労省は21日、納入会社は興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーションと公表したが、残り1社は27日になって菅官房長官が福島市にあるユースビオ社と明らかにした。24日、納入2社が未配布分を回収、配布は中止されている。
この日は、たまった録画の一部を観る時間があった。その1つが2008年の鳥インフルエンザ(H5N1)肺炎の経験を基にした「調査報告 新型インフルエンザの恐怖」(NHKスペシャルの再放送)である。12年前、インドネシアで発生したニワトリ起源のウィルスがトリからヒトに感染し、それが変異してヒトからヒトへと拡大していった新型インフルエンザの正体を究明し、抑え込んだ事例の報告である。
WHO(世界保健機構)から派遣されて現地に入り、鳥インフルエンザウィルスの正体を突き止めた進藤奈邦子医師の姿があった。1990年、東京慈恵会医科大学卒、国立感染症研究所主任研究官を経て2002年からWHOへ、いまWHOシニアアドバイザーを務める。
ちょうど連載「コロナと世界」(日本経済新聞)の22日号に掲載された進藤医師のインタビュー「科学信じ <新常態>に備え」を読んだばかりであった。ちなみに<新常態>(ニューノーマル)とは、変化のテンポが過去にない速さで進む現在、新型コロナは決して異常事態ではなく新しい常態だという意味である。進藤医師は「対策の根本は科学を信じること」と断言する。
もう一つの番組は、NHKBS1スペシャルの「シリーズ コロナ危機」の1つ、「地域経済 逆境を乗り越える」(50分)。各地から10人ほどをネットで結び、直面している困難やその解決へのヒントを語りあう番組である。そこでは<非接触>をキーワードに種々の工夫が示された。
また予約キャンセルの続く旅館経営者に対して、欧米で使われ始めた造語<ワーケーション>(work+vacation=worcation)の多様な実態から、旅館の部屋を臨時の仕事場として貸し出す方法もあるのではとの意見も出た。なお、このシリーズの姉妹編に「グローバル経済 複雑さへの挑戦」がある。
大型連休中は仕事で外出する人は減る。経団連は12日間の連続休暇を取るよう提案した。しかしレジャー等で外出する人々をどう抑制するか、8割減をいかに実現するか。
都知事は「この12日間をGWならぬ<いのちを守るステイホーム週間>として欲しい」と呼びかけ、各地の知事も声を合わせる。「…今こそ<正念場>です。人と人の接触を8割減らしていただきたい」。そして心を鬼にして「今年の帰省は控えて」と呼びかける。
世界で15億人余のこどもたちが休校措置のなかで在宅の日々を余儀なくされているという。世界人口は76億余人(刻々と増加する世界人口を示す動く表示板がある)、その約2割に当たる。パンデミック(感染の世界的爆発)が生み出した深刻な現象の一つである。
テレビ朝日「報道ステーション」からも5人目の感染者が出た。メインキャスターの富川悠太アナウンサー(43歳)が12日に感染を公表、数日間、発熱があったが平熱に下がったとして、6日~9日の番組に通常通り出演したことで議論を呼んだ。富川アナは2度のPCR検査で陰性となり、21日に退院。
25日(土曜)、事実上の大型連休(GW)が始まる。首相や知事たちの懸命の呼びかけが奏功したか、快晴にもかかわらず人出は一挙に減少。昼間の新幹線の自由席乗車率はわずか10%以下、湘南海岸も人がまばらになった。
一方、身近な生活圏のスーパー、ホームセンター、公園等への減少率は20%止まりだったという。スポット別の減少率だけで<8割減>の成果を計ることは難しいが、今後の対策の指針にはなる。ちなみにパリ市では自宅から1キロ以内の散歩やジョギングを認めてきたが、感染拡大傾向が変わらないとして、4月8日から日中の屋外運動も禁止した。
この日、全国に約300万社ある中小企業が休業要請に応じ、前年の賃金の100%水準の休業手当を支払う場合、国は雇用調整助成金で全額補助するとした。失業者を増やさないための重要な政策である。
午後のニュース。このウイルスに感染した内閣官房職員が、発熱する2日前に西村経済再生担当大臣の視察に同行していたことが明らかになり、新型コロナ対策担当大臣も兼任する西村大臣は自宅待機を決めたとのこと。晩のテレビには自宅から遠隔出演していた。
政府は25日、感染拡大の防止策として、押印や対面など行政手続きの慣例や法規制を見直す方針を固めた。役所の窓口申請や、申請を目的とした出社による感染を防ぐよう、27日の経済財政諮問会議で首相が関係省庁に指示した。緊急経済対策の助成金や給付金の手続きに反映させたい考えである。
26日(日曜)、2日つづけて人出が急減した。一人一人が<かからない>と<うつさない>の両面を持つことを自覚し始めた証拠かもしれない。
8月に開催予定の高校総体(インターハイ)の中止を全国高等学校体育連盟理事会が決定。「競技中だけでなく移動や宿泊時の感染リスクも大きい。…臨時休校により十分な練習時間の確保が難しく怪我や事故の発生も危惧される」として「選手の安全確保が困難」を理由とした措置である。1963年の発足以来、初の中止である。
PCR検査を広く行う方針を打ち出したものの、なかなか進まない。その作業に歯科医師も時限的に参加できるよう、厚労省がやっと制度を変更したが、研修等になお時間を要する模様である。
テレビの各局では、経済面の被害に対抗する現場の取組が紹介されている。いくつか順不同で並べる。①食堂休業や学校給食の中断で行き場を失った野菜類(フードロス)を活かすドライブスルー八百屋の試み。②千葉県柏市による<あすチケ柏>の試みは、感染収束後に使える食事券を事前に販売し、休業業者の資金援助に回そうというもの、既に2000万円が集まった。③タクシー会社による買い物代行は、重い日用品の入手に助かると高齢者から大歓迎。④東村山市の観光バス会社が運休で空いた50人乗りの車両を使い、都心への通勤者を1台24人の定員で新宿駅と東京駅まで運ぶサービス(無料)を開始、会社が存続する限り感染収束までやりたいと社長。⑤演奏会の中止という逆境に<在宅オーケストラ>や<テレワーク演奏会>の試み。
「新型コロナウィルス」等のキーワードでネット検索すると多くの記事が出て来る。その1つに星 暁雄「新型コロナ後の世界、そしてブロックチェーンと人権」(2020年3月31日)があった。「…目の前にある技術によって、私たち全員の長期的な課題を支援できる可能性についての話…パブリックブロックチェーンと匿名化技術は、インターネットの上で信頼できる形で個人のエンパワーメントと国際的な連帯を実現するツールとなるはず…」と述べる。
その第1の対立軸は歴史家ハラリのいう「… スマートフォンや街頭や屋内の至る所に設置された顔認証カメラを駆使して個人を監視する全体主義的な監視社会か、市民のエンパワーメント(支援)か…」であり 第2の対立軸が「国家主義的な孤立か、世界的な連帯か」である。興味ある方はお読みいただきたい。
27日(月曜)、緊急事態宣言(7日)から3週間目である。種々の指標から見て、その効果は表れているのか。連休明けの朝の出勤時には主要駅で人が溢れたが、例年よりは少ない。
東京都の感染者数は、前々日25日分が103人、前日26日分が72人、夕方に発表された27日分が39人と減ってはきたものの、「…月曜は数字が小さく出るため、直ちに減少と判断することはできない。」と都知事。この場に同席した西浦教授(北海道大学)は、「…明確に減少し始めているが、思ったほどの速度ではない…」とし、みなさんの努力と辛抱の成果なので、ひきつづき<8割減>に努めていただきたいと応じた。2週間前すなわち緊急事態宣言から1週間後の実態を示す数字として、一定の効果は出てきたように思う。
この日の午後、山中伸弥教授(京都大学)は自身の公式サイト「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」で「非常に多くの陽性者を見逃している可能性が高いと推定される」と指摘した。陽性率とは、PCR検査をした人数に対して、どれだけ陽性者が出たかを示す割合である。東京は検査数9827人(1月15日~4月25日)に対し陽性者数3850人で、陽性率は約40%と異常に高い。ちなみにアメリカは20%程度、ドイツが7%。検体数の多い韓国は3%である。
この日から衆参両院で補正予算の審議が始まり、30日(木曜)には成立の見込み。なかでも注目を集めるのが一人当たり10万 円の<特別定額給付金>であり、27日現在の居住者(国籍・年齢等を問わない)が受給資格を持つ。法案成立は30日の予定だが、各自治体の動きは速く、地元金融機関の協力で30日から実施の自治体もある。
日銀は、経済の悪化を食い止めるため「できることは何でもやる」として、国債の買い入れ無制限で金利上昇圧力を抑え、社債等の買い入れ枠3倍で企業の資金繰り支援を決めた。米欧の中央銀行は早くから実施しているが、これを日銀の出遅れと見るか、日本経済の余裕と見るか。
英国のジョンソン首相が感染後1カ月ぶりの26日、官邸に復帰したとのニュース。一時は集中治療室に入り、12日に退院、その後は首相の公式別荘で静養していた。
欧米各国が経済活動再開へと動き出した。米ニューヨーク州は一定条件(新規入院者が14日連続で減少等)が満たされれば、第1段階として建設・製造業の再開を認めると表明。イタリアは5月4日から州内の人の移動を許可、製造業・建設業の再開を認めるほか、レストランもテイクアウトのみ認める。いずれの場合も、感染が拡がれば緩和策を見直す。
安倍首相は規制改革推進会議を招集し、<8割減>達成を阻む一因とされる行政手続きの<対面・押印・書面の3原則>を解除する方針を示した。例えば休業手当の費用を賄う雇用調整助成金の手続きに適用されれば、窓口に一斉に駆け込む<3密>が防げる。
週明けの月曜からテレビやラジオのトーク番組の大きな話題は、5月6日で宣言を解除するか、延長するか、延長ならいつまでか…に移ってきた。もとより一斉解除はあり得ない。どの業種・業態から段階的に解除するか。そもそも上掲(2)<8割減>の成果が分かるのは2週間後であり、5月6日に14日を加えた20日ころまではデータが揃わず判断が難しいとの意見。
休校措置の解除を、いつ、どの地域から、どの学年から始めるか。大括りには47都道府県知事の判断であるが、市区町村の教育委員会が決定の権限・義務を持つ。都道府県で異なる状況下にあり、各知事が実情に応じて判断すべきとの一般論を前提にして、地域差も都道府県単位のほか、例えば東京都の感染者のいない離島では、水際対策を前提に進めても良いとする判断もある。また小学校から中学へ、中学から高校へと移る学年に早く慣れるため、小学6年生と中学3年生から先に始めては等の意見も出た。
こうした有識者の自由な意見には傾聴すべき妙案が多々含まれる。これを政策決定者がいかに活かすか。<上意下達>の独裁主義とは異なる民主主義の、国家と国民の関係、地方自治の原則、自由な情報の流通とその信頼度を高める相互批判の精神等々はきわめて大切で、これこそが民主主義の誇るべき特性の一つである。
むしろいま問題なのは、この緊急事態において、政府、政治家、行政に対する国民の<信頼>が万全とは言えないことである。一人あたり10万円の給付が決まるまでの経過とそれに要した長い時間、PCR検査を増やすべしとの提言に対応が遅い厚労省について等、もやもやした不満や不安が根強くある。
さらには本稿の冒頭で述べた22日開催の政府対策会議(首相が本部長)と科学者で構成する専門家会議との関係についても、すっきりしないとする意見がある。互いに判断を依存しあっている、判断の根拠となる議事録の開示がない(議題と資料は開示されている)等々。
28日(火曜)、昼までの段階では目立った動きは見られないが、一部の知事から学校の9月入学制度の提案が出た。またPCRの検体採取を綿棒行うのではなく、唾液を使った簡便で安全な方法を米シカゴ大学が開発したとするニュースが入った。
政府対策会議とは「新型コロナウィルス感染症対策本部」(1月30日閣議決定)の会議(本部長は内閣総理大臣)で、その直前に開かれた政府専門家会議(2月14日対策本部決定、座長は脇田隆字・国立感染症研究所長、副座長が尾身茂・独立行政法人地域医療機能推進機構理事長)の提言を基に判断する。
専門家会議は、特別措置法に基づく4月7日の緊急事態宣言から2週間を経た時点で、これまでの状況を分析、東京都の主要駅の人口が69~87%減少するなど、人の移動が大きく減ったとする一方、データからは8割削減は達成されているとはいえないと指摘。そして帰省や飲み会をオンラインで行うなど人と人との接触を8割減らす「10のポイント」をまとめた。
絵入りの「10のポイント」は、今さらこんなものをという声もあるが、<3密>が浸透してくるにつれて、もう少し詳細に知りたいという要望に応えたとも見られる。例えば、3「ジョギングは少人数で、公園は空いた時間、場所を選ぶ」はより具体的であり、5「飲み会はオンラインで」は今後、流行りそうである。
専門家会議は「現状と課題」につづけて、以下の「提言」を行った(要約)。
(1)日本ではこれまで、社会・経済機能への影響を最小限としながら、感染拡大防止の効果を最大限にするとともに、「医療崩壊防止」並びに「重症化防止」による死亡者数の最小化を図るため、「①クラスター(患者集団)の早期発見・早期対応」、「② 患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」、「③市民の行動変容」という3本柱の基本戦略に取り組んできた。
(2)緊急事態宣言が発出された状況下、「③市民の行動変容」については、都市部を中心に感染のリスクが拡大している中、「3密」に代表されるハイリスクの環境を徹底して回避する行動制限に加え、接触の8割削減により蔓延区域の拡大を収束させることが求められる。
(3)「②患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」については、医療機関の役割分担の促進、PCR等検査の実施体制の強化、保健所体制の強化及び業務の効率化等に関し、都道府県知事等による更なるリーダーシップが求められる。
(4)対策のフェーズが変わる中、ひきつづき蔓延を食い止め、「医療崩壊防止」並びに「重症化防止」を進めて死亡者数の最小化に力点を置きつつ、今後の対策を提言する。
さらに5月6日(振替休日)を緊急事態宣言の終期を延長するか否かの判断基準を明らかにした。重視する主な基準は(1)国内の新規感染者数の増減、(2)人と人の接触8割削減の達成度、(3)医療体制の逼迫状況、の3つであり、政府は5月早々に、これらを分析した上で、47都道府県に発令した宣言を一部地域で解除できるか見極める。
以上の専門家会議の資料と<提言>計30ページ(A4)を基に、同日夕方、政策会議が官邸で開かれ、その結果を安倍首相が記者発表した。とくに上掲(2)の「接触の8割を削減するという市民の行動変容をいかに徹底するか」では、来たる大型連休(GW)中の遠距離旅行自粛に触れ、<8割減>への協力を強く要請した。
23日(木曜)朝、女優の岡江久美子さん(63歳)が、新型コロナウイルス肺炎により亡くなったニュース。3日に微熱があり、自宅療養に努めていたが、6日に容態が急変、緊急入院後はICU(集中治療室)で治療を続けていた。
この日、小池都知事はさらに強く<ステイ・ホーム>を強調、25日(土曜)から5月6日(振替休日で、緊急事態宣言の最終日)の12日間、みなで心を一つにして<8割減>を達成したい、「買い物は3日に1度に!」と呼びかけ、外出自粛という今の我慢・忍耐が感染抑止の鍵になる、と繰り返し要請した。
都知事の呼びかけに、スーパーの経営者たちから、それぞれの工夫や反応が出てきた。商店街も動き始めた。12日間のGW中、感染拡大をいかに抑止するか、この方向に向けて多様な対応が生まれるであろう。
経済界からも「この2週間の行動こそ最大の経済支援」との声があがり、各企業で社員にたいし、進んで連休を取得するよう呼びかけるという。
24日(金曜)、安倍首相は月内にも医療機関にマスクやガウン等の医療防護具(サージカルマスク1500万枚等)を優先的に届けるとした上で、不足状況を把握できるネットシステムを整え、5月中の稼働をめざすと対策本部で表明した。これまで個別の医療機関がメーカーに発注してきたものを、国が一元的に管理し、空病床、医療用防護具等を把握できるよう、補正予算に盛りこむ。
この日、政府が1世帯当たり2枚のマスクを配る政策(アベノマスクと揶揄された)が始まったが、郵送されたマスクに汚れや異物の混入がある等のクレームが続出した。郵送費を含めて466億円が費やされたもの。
マスクは国内の民間企業が90億円で請負い、中国やベトナム等で生産された。厚労省は21日、納入会社は興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーションと公表したが、残り1社は27日になって菅官房長官が福島市にあるユースビオ社と明らかにした。24日、納入2社が未配布分を回収、配布は中止されている。
この日は、たまった録画の一部を観る時間があった。その1つが2008年の鳥インフルエンザ(H5N1)肺炎の経験を基にした「調査報告 新型インフルエンザの恐怖」(NHKスペシャルの再放送)である。12年前、インドネシアで発生したニワトリ起源のウィルスがトリからヒトに感染し、それが変異してヒトからヒトへと拡大していった新型インフルエンザの正体を究明し、抑え込んだ事例の報告である。
WHO(世界保健機構)から派遣されて現地に入り、鳥インフルエンザウィルスの正体を突き止めた進藤奈邦子医師の姿があった。1990年、東京慈恵会医科大学卒、国立感染症研究所主任研究官を経て2002年からWHOへ、いまWHOシニアアドバイザーを務める。
ちょうど連載「コロナと世界」(日本経済新聞)の22日号に掲載された進藤医師のインタビュー「科学信じ <新常態>に備え」を読んだばかりであった。ちなみに<新常態>(ニューノーマル)とは、変化のテンポが過去にない速さで進む現在、新型コロナは決して異常事態ではなく新しい常態だという意味である。進藤医師は「対策の根本は科学を信じること」と断言する。
もう一つの番組は、NHKBS1スペシャルの「シリーズ コロナ危機」の1つ、「地域経済 逆境を乗り越える」(50分)。各地から10人ほどをネットで結び、直面している困難やその解決へのヒントを語りあう番組である。そこでは<非接触>をキーワードに種々の工夫が示された。
また予約キャンセルの続く旅館経営者に対して、欧米で使われ始めた造語<ワーケーション>(work+vacation=worcation)の多様な実態から、旅館の部屋を臨時の仕事場として貸し出す方法もあるのではとの意見も出た。なお、このシリーズの姉妹編に「グローバル経済 複雑さへの挑戦」がある。
大型連休中は仕事で外出する人は減る。経団連は12日間の連続休暇を取るよう提案した。しかしレジャー等で外出する人々をどう抑制するか、8割減をいかに実現するか。
都知事は「この12日間をGWならぬ<いのちを守るステイホーム週間>として欲しい」と呼びかけ、各地の知事も声を合わせる。「…今こそ<正念場>です。人と人の接触を8割減らしていただきたい」。そして心を鬼にして「今年の帰省は控えて」と呼びかける。
世界で15億人余のこどもたちが休校措置のなかで在宅の日々を余儀なくされているという。世界人口は76億余人(刻々と増加する世界人口を示す動く表示板がある)、その約2割に当たる。パンデミック(感染の世界的爆発)が生み出した深刻な現象の一つである。
テレビ朝日「報道ステーション」からも5人目の感染者が出た。メインキャスターの富川悠太アナウンサー(43歳)が12日に感染を公表、数日間、発熱があったが平熱に下がったとして、6日~9日の番組に通常通り出演したことで議論を呼んだ。富川アナは2度のPCR検査で陰性となり、21日に退院。
25日(土曜)、事実上の大型連休(GW)が始まる。首相や知事たちの懸命の呼びかけが奏功したか、快晴にもかかわらず人出は一挙に減少。昼間の新幹線の自由席乗車率はわずか10%以下、湘南海岸も人がまばらになった。
一方、身近な生活圏のスーパー、ホームセンター、公園等への減少率は20%止まりだったという。スポット別の減少率だけで<8割減>の成果を計ることは難しいが、今後の対策の指針にはなる。ちなみにパリ市では自宅から1キロ以内の散歩やジョギングを認めてきたが、感染拡大傾向が変わらないとして、4月8日から日中の屋外運動も禁止した。
この日、全国に約300万社ある中小企業が休業要請に応じ、前年の賃金の100%水準の休業手当を支払う場合、国は雇用調整助成金で全額補助するとした。失業者を増やさないための重要な政策である。
午後のニュース。このウイルスに感染した内閣官房職員が、発熱する2日前に西村経済再生担当大臣の視察に同行していたことが明らかになり、新型コロナ対策担当大臣も兼任する西村大臣は自宅待機を決めたとのこと。晩のテレビには自宅から遠隔出演していた。
政府は25日、感染拡大の防止策として、押印や対面など行政手続きの慣例や法規制を見直す方針を固めた。役所の窓口申請や、申請を目的とした出社による感染を防ぐよう、27日の経済財政諮問会議で首相が関係省庁に指示した。緊急経済対策の助成金や給付金の手続きに反映させたい考えである。
26日(日曜)、2日つづけて人出が急減した。一人一人が<かからない>と<うつさない>の両面を持つことを自覚し始めた証拠かもしれない。
8月に開催予定の高校総体(インターハイ)の中止を全国高等学校体育連盟理事会が決定。「競技中だけでなく移動や宿泊時の感染リスクも大きい。…臨時休校により十分な練習時間の確保が難しく怪我や事故の発生も危惧される」として「選手の安全確保が困難」を理由とした措置である。1963年の発足以来、初の中止である。
PCR検査を広く行う方針を打ち出したものの、なかなか進まない。その作業に歯科医師も時限的に参加できるよう、厚労省がやっと制度を変更したが、研修等になお時間を要する模様である。
テレビの各局では、経済面の被害に対抗する現場の取組が紹介されている。いくつか順不同で並べる。①食堂休業や学校給食の中断で行き場を失った野菜類(フードロス)を活かすドライブスルー八百屋の試み。②千葉県柏市による<あすチケ柏>の試みは、感染収束後に使える食事券を事前に販売し、休業業者の資金援助に回そうというもの、既に2000万円が集まった。③タクシー会社による買い物代行は、重い日用品の入手に助かると高齢者から大歓迎。④東村山市の観光バス会社が運休で空いた50人乗りの車両を使い、都心への通勤者を1台24人の定員で新宿駅と東京駅まで運ぶサービス(無料)を開始、会社が存続する限り感染収束までやりたいと社長。⑤演奏会の中止という逆境に<在宅オーケストラ>や<テレワーク演奏会>の試み。
「新型コロナウィルス」等のキーワードでネット検索すると多くの記事が出て来る。その1つに星 暁雄「新型コロナ後の世界、そしてブロックチェーンと人権」(2020年3月31日)があった。「…目の前にある技術によって、私たち全員の長期的な課題を支援できる可能性についての話…パブリックブロックチェーンと匿名化技術は、インターネットの上で信頼できる形で個人のエンパワーメントと国際的な連帯を実現するツールとなるはず…」と述べる。
その第1の対立軸は歴史家ハラリのいう「… スマートフォンや街頭や屋内の至る所に設置された顔認証カメラを駆使して個人を監視する全体主義的な監視社会か、市民のエンパワーメント(支援)か…」であり 第2の対立軸が「国家主義的な孤立か、世界的な連帯か」である。興味ある方はお読みいただきたい。
27日(月曜)、緊急事態宣言(7日)から3週間目である。種々の指標から見て、その効果は表れているのか。連休明けの朝の出勤時には主要駅で人が溢れたが、例年よりは少ない。
東京都の感染者数は、前々日25日分が103人、前日26日分が72人、夕方に発表された27日分が39人と減ってはきたものの、「…月曜は数字が小さく出るため、直ちに減少と判断することはできない。」と都知事。この場に同席した西浦教授(北海道大学)は、「…明確に減少し始めているが、思ったほどの速度ではない…」とし、みなさんの努力と辛抱の成果なので、ひきつづき<8割減>に努めていただきたいと応じた。2週間前すなわち緊急事態宣言から1週間後の実態を示す数字として、一定の効果は出てきたように思う。
この日の午後、山中伸弥教授(京都大学)は自身の公式サイト「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」で「非常に多くの陽性者を見逃している可能性が高いと推定される」と指摘した。陽性率とは、PCR検査をした人数に対して、どれだけ陽性者が出たかを示す割合である。東京は検査数9827人(1月15日~4月25日)に対し陽性者数3850人で、陽性率は約40%と異常に高い。ちなみにアメリカは20%程度、ドイツが7%。検体数の多い韓国は3%である。
この日から衆参両院で補正予算の審議が始まり、30日(木曜)には成立の見込み。なかでも注目を集めるのが一人当たり10万 円の<特別定額給付金>であり、27日現在の居住者(国籍・年齢等を問わない)が受給資格を持つ。法案成立は30日の予定だが、各自治体の動きは速く、地元金融機関の協力で30日から実施の自治体もある。
日銀は、経済の悪化を食い止めるため「できることは何でもやる」として、国債の買い入れ無制限で金利上昇圧力を抑え、社債等の買い入れ枠3倍で企業の資金繰り支援を決めた。米欧の中央銀行は早くから実施しているが、これを日銀の出遅れと見るか、日本経済の余裕と見るか。
英国のジョンソン首相が感染後1カ月ぶりの26日、官邸に復帰したとのニュース。一時は集中治療室に入り、12日に退院、その後は首相の公式別荘で静養していた。
欧米各国が経済活動再開へと動き出した。米ニューヨーク州は一定条件(新規入院者が14日連続で減少等)が満たされれば、第1段階として建設・製造業の再開を認めると表明。イタリアは5月4日から州内の人の移動を許可、製造業・建設業の再開を認めるほか、レストランもテイクアウトのみ認める。いずれの場合も、感染が拡がれば緩和策を見直す。
安倍首相は規制改革推進会議を招集し、<8割減>達成を阻む一因とされる行政手続きの<対面・押印・書面の3原則>を解除する方針を示した。例えば休業手当の費用を賄う雇用調整助成金の手続きに適用されれば、窓口に一斉に駆け込む<3密>が防げる。
週明けの月曜からテレビやラジオのトーク番組の大きな話題は、5月6日で宣言を解除するか、延長するか、延長ならいつまでか…に移ってきた。もとより一斉解除はあり得ない。どの業種・業態から段階的に解除するか。そもそも上掲(2)<8割減>の成果が分かるのは2週間後であり、5月6日に14日を加えた20日ころまではデータが揃わず判断が難しいとの意見。
休校措置の解除を、いつ、どの地域から、どの学年から始めるか。大括りには47都道府県知事の判断であるが、市区町村の教育委員会が決定の権限・義務を持つ。都道府県で異なる状況下にあり、各知事が実情に応じて判断すべきとの一般論を前提にして、地域差も都道府県単位のほか、例えば東京都の感染者のいない離島では、水際対策を前提に進めても良いとする判断もある。また小学校から中学へ、中学から高校へと移る学年に早く慣れるため、小学6年生と中学3年生から先に始めては等の意見も出た。
こうした有識者の自由な意見には傾聴すべき妙案が多々含まれる。これを政策決定者がいかに活かすか。<上意下達>の独裁主義とは異なる民主主義の、国家と国民の関係、地方自治の原則、自由な情報の流通とその信頼度を高める相互批判の精神等々はきわめて大切で、これこそが民主主義の誇るべき特性の一つである。
むしろいま問題なのは、この緊急事態において、政府、政治家、行政に対する国民の<信頼>が万全とは言えないことである。一人あたり10万円の給付が決まるまでの経過とそれに要した長い時間、PCR検査を増やすべしとの提言に対応が遅い厚労省について等、もやもやした不満や不安が根強くある。
さらには本稿の冒頭で述べた22日開催の政府対策会議(首相が本部長)と科学者で構成する専門家会議との関係についても、すっきりしないとする意見がある。互いに判断を依存しあっている、判断の根拠となる議事録の開示がない(議題と資料は開示されている)等々。
28日(火曜)、昼までの段階では目立った動きは見られないが、一部の知事から学校の9月入学制度の提案が出た。またPCRの検体採取を綿棒行うのではなく、唾液を使った簡便で安全な方法を米シカゴ大学が開発したとするニュースが入った。
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