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10月初旬の三溪園

 10月の声を聴くと暑さもやわらぐものだが、今年は観月会を終えても、最高気温が30℃前後の暑い日がつづく。それでも三溪園では、暦通り秋の行事が進んでいる。

 10月3日(木曜)から、三溪記念館の第一、第二展示室で、新しい所蔵品展「三溪の書画・牛田雞村・臨春閣の障壁画・漆芸品から」(11月6日まで)が始まった(担当は北泉剛史学芸員)。

 なかでも三溪の筆になる<旅の絵>に心惹かれる。《石山秋月》、《堅田》、《彦根城》、《大和路》、《白河関所》、《鳥海山》、《裾野》の7点。三溪の旅の絵は秋の景色が多いという。

 翌4日(金曜)午後、パシフィコ横浜内にあるアメリカ・カナダ大学連合日本研究センター(Inter University Center for Japanese Studies、略称は最初の3文字を採りIUC)の、2019年次生34名と職員9名が来園した。

 IUCとの付き合いは、私が横浜市立大学在任中の1987年、東京の紀尾井町にあったIUCを横浜へ誘致する企画に始まり、以来30年を超える。この貴重な上級日本語教育機関を継続維持する活動に頭が下がり、国際都市・横浜として、できるだけのお手伝いをしたいと思った。

 本ブログのリンク「都留文科大学学長ブログ」の111号(2013年12月16日)にある通り、IUCは2013年に創立50周年を祝った伝統ある上級日本語教育機関で、学生たちは来日前にそれぞれの大学で専門分野と日本語を学び、ここIUCで10カ月間にわたり750時間の集中訓練を受ける。

 ブルース・バートン現所長とは25年前、彼が所長として赴任した折(今回は2回目)にお会いしている。付合いが長かったのはケネス・バトラー元所長(1930~2009 年)で、1967~77 年、1995~2001年、2003~2008 年と3回、計22年にわたり所長をつとめた。

 いよいよ4日の午後、村田和義副園長、吉川利一事業課長、ガイドボランティア金曜班の大西功さん、山田博康さん、橋本幸夫さんとともにIUC一行を出迎える。

 短く歓迎の言葉を述べた後、20世紀初頭(明治末~大正期)の近代に創設された三溪園は、それ以前の近世(主に江戸時代)の庭園(枯山水、心字池等)が<象徴主義>であるのに対して、<自然主義>に基づき、地形の特徴(谷戸=谷と丘)を活かして造園された新しい思想に基づく日本庭園であり、この種のものは三溪園のみ、これを念頭に古建築の配置の妙も見て欲しいと述べた。

 学生諸君には三溪園の印象記を寄せてほしい、とも要請した。印象記はまとまり次第、本ブログに掲載したいと思う。

 鶴翔閣では「手仕事に遊ぶ錦秋」(10月4日(金曜)から6日(日曜)までの3日間)が開かれた。2006年に三溪園で始めた「日本の夏じたく」に端を発し、毎年すこしずつメンバーを変えて続けてきたという(事務局の米倉久美子さんによる)。

 その案内パンフ(A6版のハガキサイズ、A3サイズの8つ折り)が手仕事の見本のようで美しい。裏返して拡げるとA3サイズ、そこに鶴翔閣(290坪)の地図があり、出展作品25点の写真と作者・題名がある。静かな展示と思いきや、想像以上に展示品(木器、帯生地、ショール等)が多く、即売会も兼ねる盛況ぶりであった。

 夕刻には<三溪園和音(WAON)まつり2019~「音」故知新~>が始まる。会場は外苑の旧燈明寺本堂(重要文化財)。旧燈明寺三重塔(重要文化財)を見上げる位置にある。案内用のリーフレットは外国人を想定して、日本語と英語で書かれている。

 この催事は、ラグビーW杯日本大会2019の試合が行われる期間(9月20日~11月1日)のうち、主に週末の19日間、開園時間を19時まで延長し、日没からは灯りで彩られる幻想的な風情を楽しんでいただく趣向である。将来を嘱望される若いアーティストたちが重要文化財を舞台に、主に和楽器の演奏を中心に披露する(演奏は18時から30分間)。

 三溪園職員の多忙な日々に配慮して横浜市文化観光局観光振興課の三溪園チーム(永井、關、菅野、廣瀨)が中心となり企画・実施している。その中心を担い、毎回の司会も務める廣瀨知理さんの斬新な発想と精力的な活動に脱帽。しかも16時半以降は入園料を無料とし、桜木町駅からのシャトルバスも手配した。

 この<三溪園和音2(WAON)まつり>は、9月20日(金曜)から始まって3週目になる。その特別演奏会には、ハープの操美穂子、ボーカルグループJewel、津軽三味線の朝倉盛企、尺八の阿部大輔、アコースティックギターの松井祐貴(敬称略)が出演した。10月4日(金曜)からの演奏についてはリーフレットを更新、フルートの小川恵理紗、筝の古澤延隆、津軽三味線の朝倉盛企、アコースティックギター弾語りのRihwa、ヴァイオリンの森田綾乃(敬称略)が写真と解説とともに載る。

 日没が早まり、演奏開始6時の真っ暗がりに、旧燈明寺本堂の舞台が耿々と浮かび上がる。音響・照明を含む舞台造りは㈱tvkコミュニケーションズ。㈱マントルによる足元灯は、電線を使わない個別電池方式で、蓮の花弁型の行灯を単体・3連・5連で配置。ライトアップされた旧燈明寺三重塔に上弦の月が寄り添っていた。

 翌5日(土曜)、「第19回 三溪園フォトコンテスト・四季のおもいで」の表彰式が三溪記念館の応接室で行われた。419点の応募のなかから選ばれた入賞作品46点の表彰である。応募期間は2018年9月~2019年9月1日で、応募総数は419点。審査員は大河原雅彦(神奈川新聞社カメラマン・元写真部長)、山田信次(神奈川新聞社カメラマン)、森日出夫(カメラマン・公益社団法人日本写真家協会会員)の3氏。1990(平成2)年に始まり、審査員による厳正な審査を進めて現在にいたる。

 表彰式は11時から、中島哲也総務課長の進行、北泉剛史学芸員の賞状補助により始まった。私は挨拶のなかで、およそ次のように述べた。

 今年度は419点の応募がありました。私たち三溪園職員は日々園内の景色を見ていますが、応募作品から改めて三溪園の姿に気づかされることが多く、嬉しく思います。応募作品を前に審査員の先生方が意見を出し合い、厳しい審査を通過したのが、皆さまの46点です。良い作品が多く、選考が難しかったと聞いております。今回、<推薦>(一等賞)を受賞されたのは芹野ゆかり(せりの ゆかり)さんの「風光る」です。昨年も佳作に入賞され、2年連続の受賞です。これからもカメラで三溪園の魅力を捉えてください。…

 ついで賞状授与。銘々のお名前を読み上げ、私から賞状と賞品・記念品をお渡しした。

 そして山田審査員による講評。最優秀作品<推薦>を獲得した芹野さんの<風光る>について、大池わきに咲き誇る桜の遠景と大池を右方向に行く水鳥の航跡の<動>が見事、と話される。そして会場を見渡して、「自分の属する写真家団体で最多を占めるのが70代、ついで60代です。お互い、これからも元気で撮影をつづけましょう」とエールを送った。

 受賞者46名のうち40名が市内在住の方々。足繁く来園し、春夏秋冬、さまざまな時間帯のカメラアングルを探っておられるに違いない。フォトコンテストの受賞者と標題は、以下のとおり(五十音順、敬称略)。

推薦 芹野ゆかり<風光る>

特選 大竹博<子供の世界>、平山清<防火訓練>

入選 市坪信教<月見の飾り>、嶋村すみ<秋の夕べ>、中山博<猿まわし>

佳作 石井良明<名物 干し柿>、石川元章<月下の舞>、稲谷友良<二人の行く先は輝いている>、小田博文<大輪の蓮花>、斉藤精一< 仲秋の夕暮れ>、境記子<星に願いを>、宝田利則<祝い雪>、中山泰雄<亀と鷺の睨めっこ>、濱﨑敬子<ひざし>、福田勝美<もみじの下で>

努力賞 青木克之<専門学校生による植木研修>、秋山文雄<平成最後の庖丁式>、飯島彰<早春の風情>、池田光夫<春の陽ざし>、井脇音文< 夜桜と三重塔>、乾ゆりゑ<屋根裏の窓>、今井千穂<壮観>、上野昌孝<夕暮れのシルエット>、加藤豁子<夕陽>、川口忠男<花々香る園>、川瀬閑人<虹をまとった蓮の葉シャワー>、北原實<3人画伯>、
木村佳子<観梅のおもてなし>、河野君江<見守ってます>、小林正雄<夕暮れ>、小梁川正芳<先人の足跡>、斎藤勝正<初冬の内苑>、鈴木計子<芽吹きの候>、鈴木克精<冬の光>、角弘<美の競演>、塚本紀夫<椿咲く頃>、戸澤昌之<風雅を楽しむ>、永島明<夏空>、中田達男<夏まっさかり>、中村はるみ<ママ!! ただいま~>、本田照子<ひっそり咲く>、間下光義<最終章開幕>、望月敏一<あじさいと新緑の小路>、吉川厚<春過ぎて>、米沢養躬<大きくなーれ>

 受賞作品は、三溪記念館第3展示室で10月5日から12月11日(水曜)まで観覧できる。解説には撮影月と場所も付されていて参考になる。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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