ラグビーW杯2019
<ラグビー・ワールドカップ 日本大会 2019>が、9月20日(金曜)から始まり、日本各地で展開されている(以下、<ラグビーW杯2019>と略称)。ラグビーW杯は1987年に創立、4年に1回開催される。今回が第9回にあたり、初の日本開催となった。
ラグビーW杯は、夏季オリンピック、サッカーFIFAワールドカップとともに、世界3大スポーツイベントの一つと言われるが、日本のラグビーは青少年からプロにいたる広範な選手層と広いファン層という点で、野球、サッカーに後れをとっていた。
FIFA(国際サッカー連盟)の創設は1904年、日本サッカー協会(JFA)がFIFAに加盟したのは1929年である。FIFAワールドカップの初の日本開催は2002年で、それに向けて各地に競技場(スタジアム)が作られ、今回のラグビーW杯2019でも使われている。
ラグビーは強豪国を見れば分かるように、その発祥の地イギリスと英連邦を中心に広がったスポーツである。過去にもいくつかの加盟国を持つラグビーW杯があったが、現在の世界20カ国・地域からなるラグビーW杯は、32年前の1987年に創設された。
ラグビーの起源は遠くさかのぼる。約200年も前の1823年、イングランドの有名なパブリックスクール・ラグビー校でのフットボール(現在のサッカー)の試合中、選手がボールを抱えたまま相手のゴール目指して走り出したことにあると言われる。
近代におけるスポーツ(原義は<気晴らし>)の誕生を歴史的に位置づけると、都市化のなかで自然から切り離され、肉体を駆使する機会を失った人びとのストレス解消ための<暴力の平和化>の装置と述べた(拙著『イギリスとアジア』1980年 岩波新書)。
私にとってラグビーは青春時代の想い出とともにある。タックルやスクラムというコンタクト・プレー(肉体の衝突)でありながら、これを暴力沙汰としないのが相手へのリスペクト(敬意)とチームの結束(ONE TEAM)である。
4年前のイギリス大会(ブライトン)で、日本は優勝候補だった南アフリカ(南ア)に勝利する<大金星>を挙げた。次の開催国が日本と決まると、さらに目標を高く掲げ、オーストラリア出身のエディー・ジョーンズをヘッドコーチ(その下にスクラムコーチ等がつく)に招いて強化、エディーがイングランドの監督に移った後は、ニュージーランド出身のジョセフ・ジェイミーが就く。
両者の指導法の違いを強調する人は、<エディーからジョセフへの転換>と呼び、コーチ主導から選手の主体性強化への転換を指摘する。選手たちはいっそう<ONE TEAM>(団結)、<ハードワーク>(厳しい練習)を意識し、プライドを懸けて練習を重ねてきた。もちろん開催国ゆえの並々ならぬ声援も大きな力になる。
参加国は20。プールAからDまでの4組に分かれ、それぞれに5カ国が属し、各プールから勝ち点で上位2カ国(計8カ国)が決勝リーグを戦う。日本は、アイルランド、サモア、スコットランド、ロシア(ABC順)とともにプールA(以下、A組という)に属す。
ロシアとの初戦は9月20日(金曜)、調布市の東京スタジアム(2001年開場、5万人収容)で行われた。白地に赤のストライプのジャージー(左胸にサクラの花3輪のロゴ)。日本は30:10で大勝。オフロードパス(タックルを受けても倒れるまでボールを持ち後続にパスする)を受けたウィングの松島幸太郎が3トライの快挙を生む。
リーチ主将は強い突進力を発揮しつつ、選手への声かけ、レフェリーとの折衝等々、そのリーダーぶりが頼もしい。
試合開始前に台風被災者へ黙祷を捧げ、ついで国歌斉唱。<走る冷蔵庫>と言われる巨漢集団のなかに、小柄で俊敏な司令塔役の田中史朗、流大。古参のトンプソン・ルークや堀江翔太。果敢な若手。計31人の日本代表は多国籍、千差万別。<多様性>の共存である。
日本の第2戦は9月28日(土曜)、世界2位(つい前まで首位)で優勝候補のアイルランドと静岡のエコパスタジアム(2001年開場、5万人収容)で行われた。日本は先制トライを許すも、田村優の正確なキックで反撃、スクラムでも押し勝ち、前半を僅差の9:12で折り返す。
後半18分、途中出場の福岡堅樹のトライで逆転、そのまま押し切り、19:12で勝利、勝ち点を9に伸ばして、A組の首位に立った。「日本、大金星!」とメディアは大興奮。決勝リーグの8強入りに大きく近づいた。
第3戦は、10月5日(土曜)、愛知県の豊田スタジアム(2001年開場、収容4万5000人)においてサモアと対戦。終始有利に進め、38:19で勝利した。スクラム内の混戦で、姫野和樹がボールを奪取し次の得点につなげた功績が目立つ。
第4戦は強豪スコットランドを相手に10月13日(日曜)、横浜国際総合競技場(1998年開場、7万2000余人収容)で行われた。この前日の12日(土曜)夜、超巨大で強力な台風19号が日本列島を直撃する。横浜や東京では夜9時ころに強風が吹いたものの、想像より速く北へ去り、台風15号が強風被害を残した(2019年10月1日掲載の「台風被害と三溪園観月会」)のとは対照的な印象であった。
ところが豪雨台風の19号は、広範囲にわたり河川の決壊、氾濫、浸水を招き、被害が日を追って増える。直後には長野県の千曲川等14河川の決壊が報じられたが、関東・東北でも河川の氾濫が次々と判明、1週間後の20日段階で71河川、130カ所が決壊したとの集計が発表された。
東京・多摩川にまたがる多摩川(全長138km)の下流域では、高層マンションの地下浸水が電源盤を襲い停電、エレベーターが止まり、上下水道が使えず、照明も調理も不可能。オール電化の文明生活が瞬時に消失したとニュースが伝える。
19号の去った翌13日(日曜)、横浜国際総合競技場の日本:スコットランド戦の開催決定にも影響が出た。雨天決行のラグビーだが、会場が使えなければ始まらない。会場近くを流れる鶴見川(全長42・5km)は昔から<暴れ川>と呼ばれている。川からの水をどう処理して氾濫を回避するか。
スタジアム本体は7階建て。1000本以上の柱に支えられた人工基盤の上に立つ<高床式>であり、3階がフィールド(ピッチ)、4階より上が客席で、1階は駐車場になっている。したがって1階の駐車場が浸水しても、会場ゲートは2階に相当する高架式通路で遊水地外の道路と結ばれているため、徒歩なら出入りに支障はない。
とはいえ、会場周辺が浸水している。12日(土曜)の朝8時50分、90万立方メートルの巨大な<遊水池>へ水を導き、そこで受けた水を午後に放流した結果、夜には翌13日の試合決行を公表することができた。ちなみに、この<遊水池>は、1998年、建設省=国土交通省により<鶴見川多目的遊水池>(<地下調節池>ともいう)として完成したもの。
対スコットランド戦の最初はトライを取られるも、日本が反撃に転じ、28:21で勝利、4戦全勝で決勝リーグの8強入りを果たした。オフロードパスをつなげ、最後はスクラム最前列の稲垣啓太がゴール中央にトライ、試合後のインタビューで「…ぼくの人生初のトライです」とニコリともせず応じた。
この頃からラグビー観戦は熱を帯び、瞬間視聴率が50%を超えた。<にわかさん>と呼ばれるファンが急増する。初めて聴くルール用語ランキングは、(1)<トライ>(相手陣地にボールをつけ、5点を獲得、その後のキックに成功すれば計7点)、(2)<ノックオン>(ボールを前方にこぼす反則)、(3)<モール>(ボールを持った選手を囲み密集して押す戦法)の順であるとか。
4年前とは違い、いまさら<大金星>とは言わせない。4強入りは確かに悲願ではあったが、終点ではない。その先に向かって作戦を組み、焦点を合わせる。被災地を励ましたい。ファンを喜ばせたい。試合後の選手たちの冷静で力強い表情がそれをよく物語っていた。
いよいよ決勝リーグである。初の準々決勝(4強を決める対戦)は、19日(土曜)、2つの会場で行われた。大分スタジアム(2001年開場、4万人収容)でのイングラント:オーストラリア戦は40:16でイングランドが圧勝した。イングランドはW杯で過去1回の優勝経験があり、対するオーストラリアは過去2回の優勝経験を持つ。
東京スタジアムのニュージーランド:アイルランド戦は46:16と大差をつけてニュージーランドが圧勝する。ニュージーランドはW杯で過去3回の優勝を誇る最強豪国である。
20日(日曜)、夕方から大分スタジアムでウェールズ:フランス戦があり、ウェールズが20:19の僅差で勝利する。決勝リーグは点差ではなく勝敗だけが問題となる一発勝負である。
東京スタジアムでは、決勝リーグの第4戦として、日本:南アフリカ(南ア)が対戦する。南アは過去2回の優勝経験を持つ強豪国で、ナショナルチーム創設127年目、アパルトヘイトの時代を経て、今年はじめて黒人主将コリシが誕生した。
この日は3年前に逝去した平尾誠二(1963~2016年)選手の命日にあたり、南アの地元紙は警戒して「平尾を弔うため…」チーム一丸となって南アを破りかねないと報じた。平尾はラグビーW杯の第1回(1987年)から3度出場、<ミスターラグビー>と呼ばれた。
日本勢は<ONE TEAM>(団結)を標榜、それぞれの役割を自覚し、ワン・フォー・オール(みなのために献身)、オール・フォー・ワン(みながいてこそ自分)を体得した8カ月の強化合宿(宮崎市)を経ている。
試合は前半3:5と双方の意地の張り合いで終わる。これまでも最初にトライを許しても、後の反撃による勝利があった。ボール支配率は日本が80%という数字も期待を高めた。
試合中、テレビ画面に流れるテロップは、台風19号から1週間後の関東・東北の状況を伝えている。「住宅被災は5万6000戸」、「箱根の源泉供給が遮断…」、「入浴支援…」、「多摩川から東京湾に流れ出たゴミが25km離れた千葉県の富津港に漂着…」、「災害ごみ回収」…
後半に入るや、南アの激しいタックルに押し返され、頭上を抜くパントキックにより自陣のゴール近くまで後退、次々とトライを許す。ラインアウトからのスローインも相手に取られる。3つのペナルティーゴール、2トライを許し、ついにノーサイドのホイッスルが鳴った。結果は3:26。日本はペナルティーゴールの3点のみ、1つのトライもできない完敗であった。
日本チームは、この日をもって解散。翌21日(月曜)の11時過ぎから、ヘッドコーチのジョセフ・ジェイミー、リーチ・マイケル主将が最前列に並ぶ選手たちの記者会見があった。
「…この悔しさをバネに4年後を目ざしたい」と、チーム一丸となって全力を出し切った表情。「チームの一員であったことを誇りに思う…」とは掛け値なしの本音であろう。
これから舞台は横浜国際総合競技場に移る。26日(土曜)が準決勝の初日でイングランド:ニュージーランド戦、27日(日曜)が準決勝第2戦のウェールズ:南ア戦である。そして11月2日(土曜)の決勝戦、これら3試合すべてがここで行われる。なお11月1日(金曜)のブロンズファイナル(3位決定戦)は東京スタジアム開催。
ラグビー観戦に横浜を来訪する内外の方々をもてなそうと、9月20日に始まった「三溪園 和音まつり2019~「音」故知新~」については、本ブログ2019年10月11日掲載の「10月初旬の三溪園」で述べたが、その盛況を受け、いよいよ、その後半が始まる。
とくに外国人客にとって、三溪園で催される<和音(WAON)まつり2019>は、日本文化を堪能できる絶好の機会となろう。そのため開園時間を19時まで延長、16時半以降は入園無料とし、桜木町駅からのシャトルバスも手配。三溪園外苑のライトアップされた旧燈明寺本堂を舞台に、主に和楽器の演奏を中心に披露する(演奏は18時から30分間)。
後半のもともとの予定は、10月25日、26日の2日と、28日から最後の11月1日まで連続5日、合わせて7日間の予定であった。ところが超大型台風19号接近で、前半の10月11日、12日、13日の3日分を中止としたため、その振替に27日(日曜)を充て、8日連続の上演となっている。
プログラムは(敬称略)、10月25日(金曜)尺八の松村湧太、26日(土曜)チェロの海野幹雄、27日(日曜)は振替公演で、朝倉盛企+矢吹和仁による津軽三味線の競演とヴァイオリンの森田綾乃の2本立て(演奏時間を15分延長)、28日(月曜)筝の吉澤延隆、29日(火曜)ギター弾き語りのAnna、30日(水曜)ハープの藤本沙織、31日(木曜)篠笛の佐藤和哉、そして最終日の11月1日(金曜)はバンドネオンの平田耕治+永易理恵(ピアノ)。
ラグビーW杯の感動、被災地への想いを胸に奏でる<和音(WAON>を、多くの方にお聴きいただきたい。
ラグビーW杯は、夏季オリンピック、サッカーFIFAワールドカップとともに、世界3大スポーツイベントの一つと言われるが、日本のラグビーは青少年からプロにいたる広範な選手層と広いファン層という点で、野球、サッカーに後れをとっていた。
FIFA(国際サッカー連盟)の創設は1904年、日本サッカー協会(JFA)がFIFAに加盟したのは1929年である。FIFAワールドカップの初の日本開催は2002年で、それに向けて各地に競技場(スタジアム)が作られ、今回のラグビーW杯2019でも使われている。
ラグビーは強豪国を見れば分かるように、その発祥の地イギリスと英連邦を中心に広がったスポーツである。過去にもいくつかの加盟国を持つラグビーW杯があったが、現在の世界20カ国・地域からなるラグビーW杯は、32年前の1987年に創設された。
ラグビーの起源は遠くさかのぼる。約200年も前の1823年、イングランドの有名なパブリックスクール・ラグビー校でのフットボール(現在のサッカー)の試合中、選手がボールを抱えたまま相手のゴール目指して走り出したことにあると言われる。
近代におけるスポーツ(原義は<気晴らし>)の誕生を歴史的に位置づけると、都市化のなかで自然から切り離され、肉体を駆使する機会を失った人びとのストレス解消ための<暴力の平和化>の装置と述べた(拙著『イギリスとアジア』1980年 岩波新書)。
私にとってラグビーは青春時代の想い出とともにある。タックルやスクラムというコンタクト・プレー(肉体の衝突)でありながら、これを暴力沙汰としないのが相手へのリスペクト(敬意)とチームの結束(ONE TEAM)である。
4年前のイギリス大会(ブライトン)で、日本は優勝候補だった南アフリカ(南ア)に勝利する<大金星>を挙げた。次の開催国が日本と決まると、さらに目標を高く掲げ、オーストラリア出身のエディー・ジョーンズをヘッドコーチ(その下にスクラムコーチ等がつく)に招いて強化、エディーがイングランドの監督に移った後は、ニュージーランド出身のジョセフ・ジェイミーが就く。
両者の指導法の違いを強調する人は、<エディーからジョセフへの転換>と呼び、コーチ主導から選手の主体性強化への転換を指摘する。選手たちはいっそう<ONE TEAM>(団結)、<ハードワーク>(厳しい練習)を意識し、プライドを懸けて練習を重ねてきた。もちろん開催国ゆえの並々ならぬ声援も大きな力になる。
参加国は20。プールAからDまでの4組に分かれ、それぞれに5カ国が属し、各プールから勝ち点で上位2カ国(計8カ国)が決勝リーグを戦う。日本は、アイルランド、サモア、スコットランド、ロシア(ABC順)とともにプールA(以下、A組という)に属す。
ロシアとの初戦は9月20日(金曜)、調布市の東京スタジアム(2001年開場、5万人収容)で行われた。白地に赤のストライプのジャージー(左胸にサクラの花3輪のロゴ)。日本は30:10で大勝。オフロードパス(タックルを受けても倒れるまでボールを持ち後続にパスする)を受けたウィングの松島幸太郎が3トライの快挙を生む。
リーチ主将は強い突進力を発揮しつつ、選手への声かけ、レフェリーとの折衝等々、そのリーダーぶりが頼もしい。
試合開始前に台風被災者へ黙祷を捧げ、ついで国歌斉唱。<走る冷蔵庫>と言われる巨漢集団のなかに、小柄で俊敏な司令塔役の田中史朗、流大。古参のトンプソン・ルークや堀江翔太。果敢な若手。計31人の日本代表は多国籍、千差万別。<多様性>の共存である。
日本の第2戦は9月28日(土曜)、世界2位(つい前まで首位)で優勝候補のアイルランドと静岡のエコパスタジアム(2001年開場、5万人収容)で行われた。日本は先制トライを許すも、田村優の正確なキックで反撃、スクラムでも押し勝ち、前半を僅差の9:12で折り返す。
後半18分、途中出場の福岡堅樹のトライで逆転、そのまま押し切り、19:12で勝利、勝ち点を9に伸ばして、A組の首位に立った。「日本、大金星!」とメディアは大興奮。決勝リーグの8強入りに大きく近づいた。
第3戦は、10月5日(土曜)、愛知県の豊田スタジアム(2001年開場、収容4万5000人)においてサモアと対戦。終始有利に進め、38:19で勝利した。スクラム内の混戦で、姫野和樹がボールを奪取し次の得点につなげた功績が目立つ。
第4戦は強豪スコットランドを相手に10月13日(日曜)、横浜国際総合競技場(1998年開場、7万2000余人収容)で行われた。この前日の12日(土曜)夜、超巨大で強力な台風19号が日本列島を直撃する。横浜や東京では夜9時ころに強風が吹いたものの、想像より速く北へ去り、台風15号が強風被害を残した(2019年10月1日掲載の「台風被害と三溪園観月会」)のとは対照的な印象であった。
ところが豪雨台風の19号は、広範囲にわたり河川の決壊、氾濫、浸水を招き、被害が日を追って増える。直後には長野県の千曲川等14河川の決壊が報じられたが、関東・東北でも河川の氾濫が次々と判明、1週間後の20日段階で71河川、130カ所が決壊したとの集計が発表された。
東京・多摩川にまたがる多摩川(全長138km)の下流域では、高層マンションの地下浸水が電源盤を襲い停電、エレベーターが止まり、上下水道が使えず、照明も調理も不可能。オール電化の文明生活が瞬時に消失したとニュースが伝える。
19号の去った翌13日(日曜)、横浜国際総合競技場の日本:スコットランド戦の開催決定にも影響が出た。雨天決行のラグビーだが、会場が使えなければ始まらない。会場近くを流れる鶴見川(全長42・5km)は昔から<暴れ川>と呼ばれている。川からの水をどう処理して氾濫を回避するか。
スタジアム本体は7階建て。1000本以上の柱に支えられた人工基盤の上に立つ<高床式>であり、3階がフィールド(ピッチ)、4階より上が客席で、1階は駐車場になっている。したがって1階の駐車場が浸水しても、会場ゲートは2階に相当する高架式通路で遊水地外の道路と結ばれているため、徒歩なら出入りに支障はない。
とはいえ、会場周辺が浸水している。12日(土曜)の朝8時50分、90万立方メートルの巨大な<遊水池>へ水を導き、そこで受けた水を午後に放流した結果、夜には翌13日の試合決行を公表することができた。ちなみに、この<遊水池>は、1998年、建設省=国土交通省により<鶴見川多目的遊水池>(<地下調節池>ともいう)として完成したもの。
対スコットランド戦の最初はトライを取られるも、日本が反撃に転じ、28:21で勝利、4戦全勝で決勝リーグの8強入りを果たした。オフロードパスをつなげ、最後はスクラム最前列の稲垣啓太がゴール中央にトライ、試合後のインタビューで「…ぼくの人生初のトライです」とニコリともせず応じた。
この頃からラグビー観戦は熱を帯び、瞬間視聴率が50%を超えた。<にわかさん>と呼ばれるファンが急増する。初めて聴くルール用語ランキングは、(1)<トライ>(相手陣地にボールをつけ、5点を獲得、その後のキックに成功すれば計7点)、(2)<ノックオン>(ボールを前方にこぼす反則)、(3)<モール>(ボールを持った選手を囲み密集して押す戦法)の順であるとか。
4年前とは違い、いまさら<大金星>とは言わせない。4強入りは確かに悲願ではあったが、終点ではない。その先に向かって作戦を組み、焦点を合わせる。被災地を励ましたい。ファンを喜ばせたい。試合後の選手たちの冷静で力強い表情がそれをよく物語っていた。
いよいよ決勝リーグである。初の準々決勝(4強を決める対戦)は、19日(土曜)、2つの会場で行われた。大分スタジアム(2001年開場、4万人収容)でのイングラント:オーストラリア戦は40:16でイングランドが圧勝した。イングランドはW杯で過去1回の優勝経験があり、対するオーストラリアは過去2回の優勝経験を持つ。
東京スタジアムのニュージーランド:アイルランド戦は46:16と大差をつけてニュージーランドが圧勝する。ニュージーランドはW杯で過去3回の優勝を誇る最強豪国である。
20日(日曜)、夕方から大分スタジアムでウェールズ:フランス戦があり、ウェールズが20:19の僅差で勝利する。決勝リーグは点差ではなく勝敗だけが問題となる一発勝負である。
東京スタジアムでは、決勝リーグの第4戦として、日本:南アフリカ(南ア)が対戦する。南アは過去2回の優勝経験を持つ強豪国で、ナショナルチーム創設127年目、アパルトヘイトの時代を経て、今年はじめて黒人主将コリシが誕生した。
この日は3年前に逝去した平尾誠二(1963~2016年)選手の命日にあたり、南アの地元紙は警戒して「平尾を弔うため…」チーム一丸となって南アを破りかねないと報じた。平尾はラグビーW杯の第1回(1987年)から3度出場、<ミスターラグビー>と呼ばれた。
日本勢は<ONE TEAM>(団結)を標榜、それぞれの役割を自覚し、ワン・フォー・オール(みなのために献身)、オール・フォー・ワン(みながいてこそ自分)を体得した8カ月の強化合宿(宮崎市)を経ている。
試合は前半3:5と双方の意地の張り合いで終わる。これまでも最初にトライを許しても、後の反撃による勝利があった。ボール支配率は日本が80%という数字も期待を高めた。
試合中、テレビ画面に流れるテロップは、台風19号から1週間後の関東・東北の状況を伝えている。「住宅被災は5万6000戸」、「箱根の源泉供給が遮断…」、「入浴支援…」、「多摩川から東京湾に流れ出たゴミが25km離れた千葉県の富津港に漂着…」、「災害ごみ回収」…
後半に入るや、南アの激しいタックルに押し返され、頭上を抜くパントキックにより自陣のゴール近くまで後退、次々とトライを許す。ラインアウトからのスローインも相手に取られる。3つのペナルティーゴール、2トライを許し、ついにノーサイドのホイッスルが鳴った。結果は3:26。日本はペナルティーゴールの3点のみ、1つのトライもできない完敗であった。
日本チームは、この日をもって解散。翌21日(月曜)の11時過ぎから、ヘッドコーチのジョセフ・ジェイミー、リーチ・マイケル主将が最前列に並ぶ選手たちの記者会見があった。
「…この悔しさをバネに4年後を目ざしたい」と、チーム一丸となって全力を出し切った表情。「チームの一員であったことを誇りに思う…」とは掛け値なしの本音であろう。
これから舞台は横浜国際総合競技場に移る。26日(土曜)が準決勝の初日でイングランド:ニュージーランド戦、27日(日曜)が準決勝第2戦のウェールズ:南ア戦である。そして11月2日(土曜)の決勝戦、これら3試合すべてがここで行われる。なお11月1日(金曜)のブロンズファイナル(3位決定戦)は東京スタジアム開催。
ラグビー観戦に横浜を来訪する内外の方々をもてなそうと、9月20日に始まった「三溪園 和音まつり2019~「音」故知新~」については、本ブログ2019年10月11日掲載の「10月初旬の三溪園」で述べたが、その盛況を受け、いよいよ、その後半が始まる。
とくに外国人客にとって、三溪園で催される<和音(WAON)まつり2019>は、日本文化を堪能できる絶好の機会となろう。そのため開園時間を19時まで延長、16時半以降は入園無料とし、桜木町駅からのシャトルバスも手配。三溪園外苑のライトアップされた旧燈明寺本堂を舞台に、主に和楽器の演奏を中心に披露する(演奏は18時から30分間)。
後半のもともとの予定は、10月25日、26日の2日と、28日から最後の11月1日まで連続5日、合わせて7日間の予定であった。ところが超大型台風19号接近で、前半の10月11日、12日、13日の3日分を中止としたため、その振替に27日(日曜)を充て、8日連続の上演となっている。
プログラムは(敬称略)、10月25日(金曜)尺八の松村湧太、26日(土曜)チェロの海野幹雄、27日(日曜)は振替公演で、朝倉盛企+矢吹和仁による津軽三味線の競演とヴァイオリンの森田綾乃の2本立て(演奏時間を15分延長)、28日(月曜)筝の吉澤延隆、29日(火曜)ギター弾き語りのAnna、30日(水曜)ハープの藤本沙織、31日(木曜)篠笛の佐藤和哉、そして最終日の11月1日(金曜)はバンドネオンの平田耕治+永易理恵(ピアノ)。
ラグビーW杯の感動、被災地への想いを胸に奏でる<和音(WAON>を、多くの方にお聴きいただきたい。
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