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台風一過のIUC学生来園

 50年ぶりの超強大と言われる台風24号は、日本列島を縦断するとされていたが動きが鈍く、しばらく沖縄・鹿児島に停滞していた。それが9月29日(土曜)から急に速度をあげ、30日(日曜)午前の予報では南関東に襲来するのは、その晩の9時から10月1日(月曜)早朝3時までの6時間と、きわめて具体的になった。

 10月1日は、IUC(アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター、ブルース・バートン所長)の学生30余人の三溪園来訪がある。IUCは2013年に創立50周年を祝った伝統ある上級日本語教育機関で、アメリカとカナダの有力大学連合が運営、学生たちは横浜パシフィコ内のキャンパスで、毎期9月から6月までの10カ月間、750時間の日本語特訓を受ける。本ブログ2017年10月24日「学生たちの三溪園印象記」等を参照されたい。

 急ぎ三溪園の吉川利一事業課長とメール連絡を取り、IUC学生一行の来園を、①予定通り10月1日午前10時半に決行する、②延期して他の日にする、③同日午後に延ばす、の三択を念頭に、IUC職員の佐藤有理さん、橋本佳子さんと協議してもらった。その結果、学生たちのぜひ行きたいとの要望を受けて、③同日午後に決めたと吉川さんから連絡が入った。

 10月1日の朝、鉄道ダイヤは大幅に乱れ、一部は昼まで運休の路線もあったが、私はすこしの遅延で済んだ。園内を回り被害状況を確認したが、すでに処理を終えたものが多く、これなら学生の受け入れに問題なしと判断、前日の決定が正しかったと安堵する。

 ただ今回は、学生たちには正門からではなく、南門から入ってもらった。久しぶりの若い学生諸君の来訪。嬉しい。すこし歩いて海岸門の前の広場、地図掲示板のそばで挨拶をした。

(1)ようこそ三溪園へ。みなさんの来園を午前から午後に延期していただ いたのは、超強大な台風の接近が予測され、古建築の破損や倒木等、万一の被害があった場合、その処理を優先して安全を確保するためでした。事実、かなりの数の倒木や太い幹が割けて落下する等の被害がありました。昼頃までに大きなものは始末できましたが、小枝等がまだ残っています。足元には十分ご注意ください。

(2) 昨年のみなさんの先輩たちの来園は10月2日でした。彼らに私のブログの三溪園に関する記事の拾い読みと、訪問後の印象記ないし感想文を寄せてほしいと伝えたところ、8名がレポートをくれました。公表の許可を得て、私のブログ2017年10月24日「学生たちの三溪園印象記」に掲載しました。6月のIUC卒業発表会では印象記を寄せてくれた学生たちと再会、三溪園が強く心に残ったことを知りました。今回もみなさんの投稿を期待しています。

(3) 次の2つのポイントを念頭に園内を観てほしい。①今年が生誕150年になる原三溪は三溪園の創始者であり、生糸輸出等の実業家、書画に通じた芸術家、画家を育成したパトロン、そして茶人など多彩な顔を持つ人物です。②三溪園のある三之谷は三つ目の谷の意味です。谷と丘からなる谷戸(やと)という地形は横浜、鎌倉、横須賀あたりの特性です。その地形を庭造りにどう生かしたか。

 時折の強風が残るものの、台風一過の好天。3班に分かれた学生たちを、ボランティアガイド月曜班の湯川幹男さん、吉野直美さん、秋元治章さんが引率・案内する。その後は、閉園の5時まで自由行動である。気温は32℃と真夏日になったが、散策を堪能したに違いない。来日して3週間、室内の授業つづきの日々の合間の初めての小旅行、この素晴らしい空間で何を感じたか、楽しみである。

 再び被害状況を見てまわる。今朝7時34分の羽田雄一郎主事からの「宿直警備員の報告メモ」転送文にあった、ア)倒木が4本、イ)古建築の雨戸の吹き飛び(中島哲也総務課長が即対応)、ウ)かんぬき錠破損あたりを中心に調べた。

 羽田さんは早朝から園内すべての被害調査を行い、昼頃には詳細を把握し終えた。被害件数は増えている。それらを地図に落として被害の概略を記し、写真を添付した調査報告「三溪園の台風被害」を夕方に送ってきた。貴重な資料なので一部を最後に付す。

 被害のほとんどが強風による風害である。樹木の根元からの倒木が計8件、太い幹や枝が割けて落下したもの(主なもの計8件)、雨戸が吹き飛んだもの等々。幸い文化財建造物が大きく破損するような被害はなく、雨による土砂崩れ等も小さかった。タブノキの大枝が折れて近隣の私有地に倒れかけたとの連絡をいただくも、中島さんが適切・迅速に対応した。また正門外の街路樹(ソメイヨシノ)の被害には、中区土木事務所と造園業者が機敏に対処、東京電力も間をおかず駆けつけ、停電を回避してくれた。

 庭園管理担当の若手、川島武さんと築地原真さんが、ソメイヨシノの幹折れ(直径20センチほど)の撤去作業をしながら、台風でこれほどの倒木や幹折れとなったのは7~8年ぶりと驚いている。

 そこへ近くの保育園児たち20名ほどが、落ちていた木の枝を振りかざしてやって来た。可愛い常連さんたちは、ふだんと違う光景に大はしゃぎ。そこここに残る木の葉や小枝は、子どもたちをわくわくさせる台風からの贈り物となった。

 添付の調査報告「三溪園の台風被害」にある通り、倒木など危険個所の復旧作業は鈴木正技士が率いる庭園管理専門の園内職員が中心に行い、園路清掃はシルバー人材センター派遣員やボランティア、巡回警備員などが手分けして行い、午後1時ころには7~8割が完了した。なお、散乱した枝葉等の片づけに自主的に協力してくれたお客様(外国人)もいたと聞く。

 復旧作業が終わり、ホッとしたところで気がついた。村田和義副園長は着任から半年、IUC学生の受入れは今回が初めてである。そこで過去の経緯等を記した私のブログを送った(2018年6月8日「IUCの卒業発表会」等)。すると「…発表テーマを拝見すると、日本の大学院生の論文かと思うようなものが並んでいて、海外での日本研究の熱心さが理解できます。…彼らがやがて世界の大学で日本のことを教える教師となり、授業の中で「そういえば横浜に三溪園という庭園があってね・・・」なんていう話を若い学生にしてくれて、三溪園のファンがさらに増えていくことを願います。…」と返事が来た。同感である。


 「三溪園の台風被害」(2018年10月1日15時現在)
平成30年10月1日午前深夜に北関東を通過した台風24号は横浜にも強風をもたらした。三溪園内では、倒木や枝葉の散乱が生じ、重要文化財建造物等にも小規模ながら損傷が見られた。倒木など危険個所の復旧作業は、園内職員が中心となって当たり、園路清掃はシルバー人材センター派遣員やボランティア、巡回警備員などが手分けをして行い、午後1時ころには、7~8割方、きれいにする事ができた。完全に復旧するには数日~10日間程度を要する見込みである。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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