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かながわ検定・横浜ライセンス

 地域のもろもろを探り、ときには歩いて確かめる、「知るを愛し 学びを楽しむ」をスローガンに生まれたのが、「かながわ検定」である。横浜ライセンスと神奈川ライセンスの2種がある。主催は「かながわ検定協議会」(横浜商工会議所、神奈川新聞社、tvk=テレビ神奈川)。

 横浜ライセンスは第1回を2007(平成19)年3月に開催、これまで10回実施してきた(神奈川ライセンスは第3回で休止)。10年を節目に、今年度(2016年度)をもって事業を終了する。

 横浜ライセンスには、4級(小学生向け、50問)、3級(初心者向け、100問)、2級(中級、100問)、1級(上級、50問)の4種がある。回答方式は4級が三択、試験時間は45分、また3級と2級は四択で、1級は記述式、試験時間はいずれも90分である。

 出題分野は5つ。「歴史」は昭和末までで全体の約4割、「現代」は平成の出来事で約2割、「自然分野」は横浜の地理・地形・生物・環境等で約1割、「カナロコ問題」は神奈川新聞のニュースサイト「カナロコ」の記事から採ったもので約1割、そして毎年の「テーマ問題」が約2割である。

 受験の参考図書として、かながわ検定協議会編の『よこはま百問』、『よこはま百問2009』(開港150周年記念号)、『過去問題集全1000問』、そして横浜市教育委員会・かながわ検定協議会共編『わかるヨコハマ』(協力:横浜銀行)、『横濱』誌(神奈川新聞社)の毎年春号が刊行された。

 『わかるヨコハマ』は2009年が初版で、横浜市立中学校の社会科・理科・「横浜の時間」で使われ、2015年の第7版まで版を重ねた。市立中学でこれだけ質の高い教材が作られ、教育現場で使われたのは、おそらく他の自治体にはない横浜特有のものであろう。

 横浜はきわめて若い都市である。京都遷都から約1200年、鎌倉幕府創設から800年、江戸幕府から400年という長さに比べれば一目瞭然。都市横浜は、1854年に横浜村(現在の大桟橋・県庁を含む「関内」)においてペリー提督と結んだ日米和親条約に起源し、1859年の開港を機に「居留地貿易」により急成長(本ブログの連載「20世紀初頭の横浜」等を参照)、わずか150余年の間に、全国・世界から進取の気性に溢れる人々が集まり、人口370万超の日本最大の政令市に発展した。

 そのため「三代住んで江戸っ子」に対して「三日住めば浜っ子」と言われ、因習にとらわれない、開放感に富む都市ができあがった。その一方、市民の一体感が薄いとも言われ、それを払拭しようと行われた最初の事業が、開港から50年後、1909(明治42)年の横浜開港50周年祝賀会であった。ここで開港記念日を定め、市歌(森鴎外詞)や徽章を定めた(本ブログの「開港記念日と横浜市歌」2016年6月9日号)。

 この伝統を継承し、いまも6月2日の開港記念日には全市的な式典を開催、市歌を斉唱する。また市立の小中学校は休校とし、さまざまな行事に参加できる措置を講じている。

 こうした背景を踏まえ、この10年間、横浜の多様な側面を知る一つの手段として行われてきたのが、「かながわ検定・横浜ライセンス」の資格試験にほかならない。その設問の監修・作成を担ったのが出題編集委員会である。

 委員は5名、五十音順に斉藤多喜夫(元横浜開港資料館・横浜都市発展記念館調査研究員)、佐田宏(横浜YMCA学院・ホスピタリティ実践教育センター顧問)、中村實(横浜ふね劇場をつくる会会長)、松島義章(神奈川県立生命の星・地球博物館名誉館員)と委員長の私(横浜市立大学名誉教授)、役職等は今年度のもの。最終の委員会には横浜商工会議所から松原乙彦さん、神奈川新聞社から霜崎謹二さん、協議会事務局から土屋清さんが参加、ともに終了を惜しんだ。

 委員会では1問ごとの内容や表記法をめぐり激論を交わすと同時に、過去問との関係や難易度の評価等、各方面にわたる点検を行う。私にとっては新たな調べと勉強の場であり、貴重な体験であった。

 受験者向けの関連セミナー、体験セミナー、模擬試験も行われてきた。今年度の関連セミナーは9月と10月に開催、佐田宏「横浜の観光とおもてなし」、斉藤多喜夫「近代横浜の歴史、ここがポイント」、金子昇「押さえておきたい、横浜の自然」、岡田直「ハマ線の今昔」、相澤雅雄「知られざる横浜線」の計5回。体験セミナーは横浜シティガイド協会による「横浜線を歩く」であった(すべて終了)。なお模擬試験は11月5日(土曜)と9日(水曜)の2回を予定。

 神奈川県タクシー協会やデパート、ホテル等が職員を受験させ、顧客サービス向上の一助とする等の支援もあり、一定の受験者を確保し、大きな成果を残した。10年間の合格者総数は2,887人、うち1級合格者は489人にのぼる。なお前回の第10回試験では、85歳の女性が見事1級に合格した。横浜を訪れる観光客が増えるにつれ、資格保持者の活躍に期待が寄せられる。

 一度取得したライセンスは終身有効である。「かながわ検定協議会」を構成した横浜商工会議所、神奈川新聞社、tvkの3者が原簿を保管するので、万一の紛失にも、いずれかで確認できる。

 試験はあと2回。12月11日(日曜)の第11回と来年3月26日(日曜)の第12回。なお第12回の試験は2級と1級のみとし、また2級合格者を1級の受験資格とした従来の枠を撤廃、誰でも受験できるようにした。会場はいずれも横浜市立大学金沢八景キャンパスである。

 この最後の機会に奮って挑戦していただきたい。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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