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地域活性化と公立大学

 公立大学は今年度で86大学となり、国立大学の数と並んだ。これら全公立大学が公立大学協会(以下、公大協)に加盟している。看護、保健医療、福祉分野が最多、ついで社会科学系、理工系、人文科学系、医歯薬系、芸術系、総合系と並ぶ。各大学はきわめて個性的であり、公立大学全体としては多様性に富む。
 大学の設置形態は、公立大学、国立大学、私立大学の3種、うち公立大学は言うまでもなく地方自治体が設置する大学であり、率先して地域課題の解決に取り組む使命を有している。この使命は国法に格別の規定がなく、この間、公大協が主体的にその使命を認識し、みずから推進してきたものである。
 『地域とともにつくる公立大学-公立大学協会60周年記念誌』(2010年5月)によれば、公大協の組織等検討会報告書「21世紀に公立大学協会が目指す方向」(2001年10月)が、公立大学の使命として知の継承(教育)・知の創造(研究)・知の活用(地域貢献)の3者を掲げ、これを「知の三角形」と表現し、公立大学の目的として明示的に掲げる、と初めて提起した(64~65ページ)。この考え方は、のちに2006年の改正教育基本法に大学の使命は「教育・研究・社会貢献」として採用された。
 2001年から10数年が経過、その間の公大協の大きなテーマは、(1)公立大学法人の制度設計と法制化(1999~2004年)、(2)法人移行への尽力(2004年~)、(3)情報公開等の絶えざる改革、を挙げることができよう。
 そのうち(1)の時期に、公大協は文部科学省(旧文部省と科技庁を2001年に統合)と総務省(旧自治省ほかを統合)との連携を大きく進めた。公立大学は、高等教育を所管する文部科学省と関係があり、また公立大学への国費投入(地方交付税交付金)を所管する総務省とも関係があるからである。
 とくに文部科学省「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」(2000年7月~2002年3月)に公立大学長5名も参加、それを受けて公大協に「法人化問題特別委員会」を置いて議論を進め、認識を深めた頃からである。
 私学が学校法人であり、国立大学が独立行政法人になろうと制度設計を進めているなかで、公立大学だけが適切な法人格を持たないとすれば取り残されると危惧し、公大協が音頭をとり、2001年からの約2年間、文科省担当者と11回、総務省担当者と9回の意見交換をすすめた。
 その結果、2001年9月、総務省自治財政局に「公立大学等に関する懇談会」(主査:山本眞一・筑波大学大学研究センター長)が設置され、かたや「地方独立行政法人制度の導入に関する研究会」(座長:高橋滋・一橋大学大学院法学研究科教授)が置かれて法的検討を進めた。
 この学識経験者、公大協、公設協(全国公立大学設置者協議会)、文科省、総務省による関係者間の真摯な協議の上に、2003年7月、「地方独立行政法人法」(その第7章が「公立大学法人の特例」)が成立したのである。
 それをピークとし、以来、公大協による両省との共同作業は比較的少ないまま、数年間が推移した。そこに急浮上したのが、2013年暮れの第2次安倍政権による「地方創生」政策に伴う一連の動きである。
 昨年8月の予備的相談の上、9月、「公立大学の力を活かした地域活性化研究会」(座長:辻琢也・一橋大学大学院法学研究科教授)を立ち上げた。委員は、河治勝彦北海道法人局大学法人室長、木苗直秀静岡県立大学長(公大協会長)、近藤倫明北九州市立大学長(公大協副会長)、里見朋香文科省大学振興課長、中村慶久岩手県立大学長(公大協副会長)、野村政樹奈良県地域振興部長、原邦彰総務省自治財政局財務調査課長の計8名、事務局は中田晃公大協事務局長である。10年ほど前の法人化検討のさいの組織とよく似た構成である。
 本研究会はまず各公立大学における地域活性化の取組事例、組織体制、抱える諸課題等の実態を把握すべく、アンケート調査を行い、その一部からはヒヤリングも行った。昨年の9月、10月、11月、12月と4回の会議を急ピッチで進め、「中間とりまとめ」が12月19日に公表された(公大協ホームページ)。
 その「はじめに」に、次のような経緯(概要)が書かれている。(1)2014年 5 月、増田元総務大臣らが構成する日本創成会議・人口減少問題検討分科会が発表した「ストップ少子化・地方元気戦略」の論に端を発し、人口減少問題は我が国最大かつ喫緊の課題として認識されたこと、(2)安倍内閣は、地方が成長する活力を取り戻し、人口減少の克服を最重要課題と位置付け、総理を本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」を設置、第 187回臨時国会で関連法案が成立、人口減少対策への取組を急ピッチで進めていること、(3)地方の人材が都市部へ流出する契機としては、「大学や専門学校などへの入学」「卒業後最初の就職」「四〇代頃の転職・再出発」「定年」の4つが指摘され、特に最初の2つの契機においては人材の都市部流出傾向が顕著であり、また大学が直接かかわることからも、若者の地域の定住のための方策について、公立大学はより具体的な対応を求められる。
 本研究会の「中間とりまとめ」は、地域活性化の諸側面のうち、まずは地方の人口減少を食い止める方策、具体的には18歳人口の地方の大学への進学促進と、22歳人口の大卒後の地方への就職の促進の2点に焦点を当て、その現状を把握し、今後の対策を考えることに重点が置かれている。
 地方の人口減少を食い止める方策は、もとより公立大学だけでできるものではなく、中長期にわたり複雑な諸要因が絡み合う課題であり、いま政府で検討中の新法人、ローカルマネジメント法人(LM法人)等の新しい制度設計等が不可欠である。このような動きのなかで、公立大学が重要な役割を先導的に担うことは確実である。
 公大協は現状把握のための第一歩を踏み出した。この「中間とりまとめ」は、A4×31ページの本文と、189ページに及ぶ 資料(会員校へのアンケート調査回答、同学長の回答、365の事例報告、研究会発表資料等)を満載した貴重なものである。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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