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賓客歓迎

 11月下旬から12月上旬にかけての紅葉の季節は、三渓園内苑の古建築と紅葉が見事な調和を見せる。人口370万人超の大都市横浜に、静かにたたずむ広さ約17ヘクタールの日本庭園。みなとみらい等の近代都市の景観とは対照的な、伝統文化を象徴する空間であり、横浜の迎賓館的な役割も果たしている。
 特別の警護を要する賓客(VIP)の来訪があると、職員は、三渓園を、横浜を、そして日本文化を知ってもらう絶好の機会と、張り切って周到に準備する。このところ、4回、そのような客を迎えた。
 まず11月17日(月曜)、光州市(韓国)のユン・ジャンヒョン市長と泉州市(中国)の林万明副市長をはじめとする25名の方々、ついで11月29日(土曜)と30日(日曜)、日中韓3か国の文化省大臣・副大臣ご一行が、いずれも横浜で開かれた「2014年東アジア文化都市」のクロージングイベントの関連で来園された。
 そして12月6日(土曜)は、東欧のルーマニア少年少女合唱団のみなさん。
 「東アジア文化都市」交流事業は、今年度から新しく始まった。文部科学省文化庁のホームページによれば、「日中韓文化大臣の合意に基づき、日本・中国・韓国の3か国において、文化芸術による発展を目指す都市を選定し、それらの都市において現代の芸術文化や伝統文化、また多彩な生活文化に関連する様々な文化芸術イベント等を実施し、東アジア域内の相互理解・連帯感の形成を促進するとともに、東アジアの多様な文化の国際発信力の強化を図ることを目指す…」(抄録)である。
 3か国それぞれで選定都市を公募し、初回の今年、日本から横浜市、中国から泉州市、韓国から光州市の3都市が選ばれた。
 林文子市長はコメントで、「ヨコハマトリエンナーレを初め、街を舞台に展開する芸術アクション事業や創造都市施策の成果」として横浜市が選出されたと述べ、「文化芸術には、人の心を豊かにし、経済や観光・MICEなど多様な分野と関わりあって都市の活力を生み出す力があります」と結ぶ。
 この3都市で文化芸術イベントを開催するとともに相互訪問を重ね、クロージングイベントは横浜で開催された。11月17日は、川越寛副園長が指揮を執り、三渓記念館で抹茶を振る舞い、川幡留司さんと中島哲也さんが説明役をつとめる。
案内した古建築は、内苑の主人公ともいうべき、3棟が雁行型に連なる臨春閣(重要文化財)である。1649(慶安2)年、紀州徳川家初代藩主の頼宣が、和歌山の紀ノ川沿いに建てた数寄屋風書院造りの別荘建築で、1917(大正6)年に移築された。2階からは眼下に池と橋、芝地が拡がり、遠望する山頂に三重塔がそびえる。
 11月29日(土曜)、上述の大臣・副大臣のうち、韓国のキム・ジョンド文化大臣とイ・スジョン総領事が、予定を1日早めて来園された。急な変更で、私は残念ながらお目にかかれなかったが、職員たちの奮闘は言うまでもない。
 そして30日は好天の日曜日、この秋いちばんの来園者数を記録した。その人々の間を縫うように、楊志今中国文化副大臣、張愛平文化部対外文化連絡局長と随行の方々、また来年度の開催都市である新潟市(日本)の方々と、清州市(中国山東省)のイ・スンフン市長、文部科学省の有松育子文化庁長を、横浜市の渡辺巧教副市長、中山こずゑ文化観光局長ともども出迎えた。
 正門に足を踏み入れ、遠く三重塔や右手上方の鶴翔閣を眼中に収めて内苑に入り、臨春閣まで来たが、人の流れが「渋滞」、その隣の聴秋閣に進むことも難しい。心を残しつつ案内は断念。それでも背後の山の紅葉のグラデーション、燃え立つ紅葉に和する古建築(重要文化財)に緑の植栽と芝に池など、東アジアに共通する庭園文化と、三渓園ならではの庭園の細かい造作や植生、日本独特の木造古建築群を堪能していただいた。
 来た道を戻り、鶴翔閣に招く。ここは原三渓の住居兼仕事場(生糸売込みほか総合商社の原合名会社)として1902年に造られた茅葺の建物で、床面積980㎡と広い。そして裏千家横浜支部による抹茶の一服。中国で薬用として飲まれた茶は16世紀に伝来、日本では千利休らにより「もてなしの作法」となった。「敬和静寂」の掛け軸の下、釜の湯の松籟を聞きつつ、ゆっくりとした時間が流れた。
 12月6日、紅葉が数日後には散ると思われた朝、午後は市内で公演というルーマニア少年少女合唱団35名を迎えた。長らくルーマニア名誉領事及び日本ルーマニア協会副会長をつとめる小林学さんのご縁で、伊波俊之助夫妻らが引率、12歳から18歳まで、国外へ出るのは初めてという若き親善大使たちである。
 寒くなり始めたものの、元気いっぱい。目を見張り、川幡さんの説明を聞く。そして大池へ。初めて見る鯉に餌(麩)をやりたい、これは前々からの要望であった。水の温度が低くなって鯉はあまり動かず、渡り鳥のキンクロ(カモの一種)が争って食べる予想外の展開に、笑いと歓声がはじける。
 他の来園者ともアイコンタクトと笑顔で、はにかみつつ「会話」している。
 この初々しい若木のような彼らが、すこやかに成長し、日本とルーマニアを結ぶ頼もしい担い手となることを願う。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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