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三溪園とは

 このブログで幾度か触れた国指定名勝の日本庭園・三渓園は、横浜市中区本牧三之谷に東京湾に面してあり、1906年開園、今年で108歳を数える。
 創設者の原富太郎(1868~1939年)は、開港横浜の代表的職種である生糸売込商を継いで1899年に原合名会社を創設した実業家であり、同時に茶人、画家、日本画家のパトロンであり、また造園家でもあった。三渓(さんけい)は彼の号で、三渓園の名はここに由来する。
 17ヘクタールの広大な土地に、明治政府の神仏分離政策(廃仏毀釈)で朽ち果てつつあった京都や鎌倉等の古建築を移築・保存し、自らの造園思想で巧みに配置した。義祖父の原善三郎(1827~1899年)や5歳年長の岡倉天心(1862~1913年)の影響も大きい。いま重要文化財10棟ほか多数の古建造物が、四季折々の植栽と見事に調和して来園者を癒す。
 7年前の2007年、国指定名勝となった。国指定名勝とは、国(文部科学大臣)が文化財保護法第7条に基づいて指定した名勝を指し、2014年3月現在、全国に378件(人文的名勝(日本庭園等)230件、自然的名勝148件)ある。うち京都府が57件と圧倒的に多く、神奈川県に5件、東京都に11件、ちなみに埼玉県は長瀞の1件、千葉県は高梨氏庭園(野田市)1件である。都市部には人文的名勝が圧倒的に多い(指定順)。
 神奈川県 円覚寺庭園(鎌倉市)、建長寺庭園(鎌倉市)、三溪園(横浜市中区)、瑞泉寺庭園(鎌倉市)、山手公園(横浜市中区)
 東京都 小石川後楽園(文京区)、旧浜離宮庭園(中央区)、六義園(文京区)、旧朝倉文夫氏庭園(台東区)- 朝倉彫塑館、旧芝離宮庭園(港区)、旧古河氏庭園(北区)、小石川植物園(御薬園跡および養生所跡)(文京区)、小金井(サクラ)(小金井市・小平市・武蔵野市・西東京市)- 玉川上水、向島百花園(墨田区)、伝法院庭園(台東区)、殿ヶ谷戸庭園(随冝園)(国分寺市)。
 周知の通り都市の誕生は関西地方が先行し(奈良・京都等)、関東地方ではまず鎌倉に幕府が置かれて800余年、江戸(東京)は開府から400余年が経つ。いずれも新政権が建都した「政治都市」であり、そこに文化・宗教・経済・人口等の高い集積がなされた。神奈川県は3件すべてが鎌倉にあり、東京都には近世の大名庭園に起源するものが多いのは、このためである。
 一方、いま最大政令市、人口370万超の横浜は、とても若い都市である。小さな横浜村が横浜市へと急成長する契機、つまり都市横浜の起源が約150年前、1859年の横浜開港にある。
 三渓園は、独特の造園思想を持つ、ひとりの私人が若い都市横浜に作った、歴史と伝統の象徴たる古建造物を擁する、比類なき日本庭園である。

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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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