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花めぐり

 前回の「桜と新緑の競演」を書いて数日、嬉しいことに三溪園には、まだ桜花が予想以上に残っている。
 真っ白な花びらに薄桃色のシベを持つソメイヨシノは、いっせいに咲き、いっせいに散る。明治中期から全国に広まった。今年のソメイヨシノは散りきらぬうちに、赤味を帯びた葉が芽吹いた。これほどの葉桜は、なにか違う品種のようにさえ感じる。
 正門の左手に広がる大池には幾つか島があり、毎年6月頃、紫の、追いかけるように白のハナショウブが群れ咲く。美しく咲かせるために、今の時期にしっかりと手入れをする。根回りの雑草を抜き、水位が上がっても根浮きしないよう土を盛り、骨粉を入れ、腐葉土をかぶせる作業が昨日から始まった。造園職員とともに、10人ほどのボランティアの姿がある。
 大池の向かいに古代蓮池と睡蓮池。古代蓮池には立ち枯れた茎がまだ残る。水辺にヤナギの若緑、そしてエノキ、カツラも芽を吹いている。睡蓮池には、子どもの手の平ほどの幼葉が水面いっぱいに広がる。
 上り坂をたどり、鶴翔閣(1902年建造、戦後改修)に至る。原三溪が出身地岐阜の棟梁を招いて建てた約300坪の合掌造り風の建物で、私邸であり、また原合名会社の執務室でもあった。
 鶴翔閣の入り口に1本、睡蓮池の傍に2本、ベニシダレ桜はたおやか。純白のオオシマ桜は、いまを盛りと魅了する。突きあたりに珍種のタカクワホシザクラ(高桑星桜)、岐阜市柳津町高桑地区で育成された品種で、花弁の先がとがり、星形に見える。
 記念館の池のほとりのオオシマは、黒松の大木を背に、凛として白を放つ。
 臨春閣、聴秋閣、天授院等が近在するエリアは、イチョウの大木やカエデなど、新緑が眩しい。黄色いヤマブキ、名残の白いユキヤナギ、小さなスミレも、古建築に趣を添える。
 横浜市中区本牧にある三溪園は、明治39(1906)年、生糸貿易商で美術家・茶人・造園思想家の原富太郎(三溪は号)が開園、起伏のある地形を活かした日本庭園は、総面積約17ヘクタール(5万坪超)ときわめて広い。
 蓮池、睡蓮池、鶴翔閣、臨春閣、聴秋閣等のある内苑と、大池から山上の三重塔、燈明時本堂、梅林、合掌造りの古民家等のある外苑に分かれる。浜辺に通じる外苑は、開園と同時に一般公開された。
 開園から108年を経た三溪園は、日本庭園と古建築(重要文化財10棟)が調和する稀有の存在として、7年前に国指定名勝となった。また2年前、これを管理・運営する三溪園保勝会が公益財団法人となり、新たな活動に邁進している。
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プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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