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人類最強の敵(54)=新型コロナウィルス

 前回の(53)掲載は、8月30日の朝いちばんであった。そのころからウクライナでは南西部のヘルソン州での攻防が激しくなり、また2014年にロシアが併合したクリミヤ半島でも砲撃が激化している。

【オミクロン型対応ワクチン、9月にも接種へ 厚労省検討】
 8月29日の日経新聞によれば、厚生労働省は新型コロナウイルスのオミクロン型に対応した改良ワクチンの接種を9月中に始める検討に入った。これまでは自治体などに対して、9月に順次ワクチンを輸入し、10月半ば以降に始める想定と説明していた。全国でオミクロン型感染が広がる中、できる限り前倒しでワクチンの接種体制を整える。

 厚労省は米ファイザーと米モデルナから供給を受ける契約を結んでいる。両社とも8月上旬に厚労省への承認申請を済ませている。接種の前倒しには両社からの早期のワクチン調達が必要になる。

 改良ワクチンは従来型とオミクロン型の2種類の成分を含む。現在まん延しているオミクロン型の派生型に対して、高齢者の重症化や若者の感染、発症を防ぐ効果が期待されている。英国が米モデルナ製を承認した実績がある。

 厚労省は自治体に、2回目を打った全員を対象とする想定で準備を進めるよう求めている。予防接種法上の臨時接種として無料で受けられるようにする。接種間隔などの詳細は今後、薬事承認や予防接種法上の手続きを経て決める。4回目から5カ月空ける場合、60歳以上の対象者数のピークは12月以降になる見通し。

 
【ウクライナ、南部州で反撃 ロシア「IAEA調査に協力」】
 30日の日経新聞【ドバイ=福冨隼太郎、ワシントン=中村亮】によると、ウクライナ軍は29日、ロシアが占領するウクライナ南部ヘルソン州の奪還に向けて大規模な攻勢を開始した。同国南部に位置するザポロジエ原子力発電所をめぐっては、ロシア側が国際原子力機関(IAEA)の調査に協力する姿勢を示した。

 ウクライナメディアによると、同国軍はヘルソン州でロシア軍の最初の防衛線を突破した。ロシア軍は防衛拠点から撤退したり、後退を始めたりしているという。ヘルソン州はロシアが侵攻初期に占領を進めたが、その後、ウクライナが反攻を強めている。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は29日のビデオ演説で「ロシアを国境まで追い出す」と述べ、ヘルソン州やルガンスク州などロシア占領下の地域を奪還すると強調した。「ウクライナに占領者の居場所はない。生き残りたければロシア軍は逃げるべきだ」とも語った。

 米軍高官は29日、記者団に対してウクライナ軍が先週末にヘルソン州でロシア軍に対する砲撃を増やしたと説明した。ウクライナ東部ではロシア軍の兵士数がウクライナ軍を上回ったが、南部では同規模に近いという。高官はウクライナ軍の攻勢を「反撃」と表現しなかったが、24~36時間後に情勢がいまより把握できるとも話した。

 ロシア国防省は同日、ウクライナ軍がヘルソンなどで大規模な攻勢をしかけ大きな損失を被ったと主張した。タス通信が報じた。ロシアのペスコフ大統領報道官は29日、ザポロジエ原発へのIAEAの調査団がウクライナ側からロシアが占領している同原発に入ると明らかにした。同氏は記者団に「ウクライナ側で安全を保証するのはウクライナだ」とする一方で「ロシア側では必要な安全が保証される」と語った。

 調査をめぐってロシア側は、ロシア軍や親ロシア派が実効支配する地域から原発を訪れるよう求めていた。調査団は週内にも現地入りし損傷などを確認する。

 ウクライナや欧米が求めている同原発一帯を非武装化することについては「話し合われない」と指摘。兵力を撤退させることについては改めて否定的な考えを示した。

 原発周辺では砲撃が相次いでおり、調査団の安全確保が課題となっている。ロシアとウクライナの双方が、攻撃は相手によるものだと非難の応酬を続けている。ロシアメディアは29日、核燃料を保管している建物の屋根がウクライナの砲撃で破損したと一方的に伝えた。

【京セラ創業者の稲盛和夫さん死去、90歳 JALの経営再建にも貢献】
 30日の朝日新聞デジタルは次にように伝えた。
「京セラとKDDIの創業者で、日本航空(JAL)の経営再建にも尽くした稲盛和夫(いなもり・かずお)さんが24日午前8時25分、老衰のため京都市内の自宅で死去した。90歳だった。葬儀は近親者を中心に執り行われた。後日、お別れの会を開く。喪主は長女金沢しのぶさん。
 鹿児島市生まれ。鹿児島大学工学部を卒業後、京都の碍子(がいし)メーカーに就職した。1959年、独立して京都セラミック(現京セラ)を設立した。97年から名誉会長。
 70年ごろ、半導体の回路を保護する入れ物にあたるパッケージの開発量産に成功した。以来、主力のファインセラミックス部品から電子部品、太陽電池、携帯電話などの分野に事業を広げ、グローバル化も進めた。創業時、28人だった従業員は、グループで8万3千人、世界30以上の国や地域に広がる。
 また、80年代に電気通信事業の自由化の論議が高まったとき、当時の電電公社による「独占はよくない」との思いから、84年に第二電電企画(後のDDI)を設立した。通信事業は畑違いだったが、毎晩「動機善なりや、私心なかりしか」と自問自答して参入を決めたという。
 2000年にはDDI、KDD、日本移動通信(IDO)を合併に導き、今のKDDIを設立した。国内の長距離電話の料金引き下げを主導したほか、携帯電話の普及にも尽くした。01年より最高顧問を務めた。」

 また30日の日経新聞によれば、「<日本をよくするには政権交代が可能な国にすることが必要>との思いで野党時代から民主党を支援。民主党が与党となった09年に行政刷新会議の議員に就任、10年からは日本航空の会長を務め、再建に奔走した。
 経営破綻した日航の再建では会長に就いてアメーバ経営を導入。コスト管理の徹底などで業績を回復させ、再上場にこぎ着けた。内閣特別顧問も務めた。
 著書は「アメーバ経営」「人を生かす」など多数。1984年紫綬褒章、97年に得度。」とある。

【ゴルバチョフ元大統領の逝去】
 31日のNHKは、ゴルバチョフ元大統領の逝去について、次のように伝えた。
「旧ソビエトの最後の指導者で東西冷戦を終結に導いたミハイル・ゴルバチョフ氏が30日に亡くなった。91歳。国際社会からは、東西冷戦を終結に導き、核兵器の削減に取り組んだゴルバチョフ氏の死を悼む声が相次いでいる一方、その業績に対してはロシアの市民から批判の声が聞かれるほか、ロシアメディアも比較的冷ややかに伝えている。
 ゴルバチョフ氏は1931年、ロシア南部のスタブロポリ地方に生まれ、共産党の要職を歴任したあと、1985年に54歳でソビエトの最高指導者にあたる書記長に就任。ペレストロイカと呼ばれた政治改革や、情報公開を意味するグラスノスチなど、閉鎖的な社会を民主化する政策を進めた。
 外交政策でも、欧米諸国などとの対立の緩和を目指す「新思考外交」を掲げ、社会主義圏だった東ヨーロッパ諸国の民主化や東西ドイツの統一を容認したほか対立が続いていた中国との関係を正常化した。
 アメリカとは核軍縮を進め、1987年にINF=中距離核ミサイルの全廃条約、1991年には、戦略核兵器の削減を定めたSTART=戦略兵器削減条約に調印、1989年12月、アメリカの当時のブッシュ大統領とともに、東西冷戦の終結を宣言した。こうした功績が評価され、翌年にはノーベル平和賞を受賞した。
 日本との関係では、1988年、モスクワを訪問した当時の中曽根前首相に対して、北方領土問題の解決を模索する考えを示し、日本とロシアの平和条約交渉のきっかけを作った。そして1991年、ソビエトの最高指導者として初めて来日し、当時の海部総理大臣と会談し、「日ソ共同声明」で、国後島・択捉島を含む北方四島を領土問題の交渉対象とすることを初めて文書で確認した。
 さらにこの時ソビエト側から、日本人と四島住民との交流を拡大するため、「ビザなし」の枠組みが提案され、翌1992年には、今につながるビザなし交流が始まった。ゴルバチョフ氏は北方四島の返還に関して譲歩は示さなかったが、それまでまったく動かなかった北方領土問題について日ソ、日ロ間で協議されるきっかけとなった。こうした北方領土問題の議論を継続することに前向きな姿勢は、日本では好意的に受け止められ、ゴルバチョフ氏は「ゴルビー」の愛称でも親しまれた。」
 また9月1日のヤフーニュースによれば、
「ゴルバチョフの父はロシア人、母はウクライナ人、妻もウクライナ系。生まれ故郷はロシア人とウクライナ人が住む小さな農村だった。今日のロシアとウクライナのねじれた関係を体現したような人物だった。
 ゴルバチョフ氏の父方の祖先は19世紀末に、ロシア内部から移住してきた。母方はウクライナ北部チェルニゴフからやってきた。祖父母はウクライナ人。したがってその娘で、後にゴルバチョフ氏を生むマリーヤさんもウクライナ人だった。ゴルバチョフ氏の母は、ロシア語の読み書きができなかった。母が独ソ戦で出征した夫に宛てて手紙を書く時は、まだ子どもだったゴルバチョフ氏が口述筆記していた。
 現在のウクライナでは、国民の約2割がロシア系とされている。ロシア語が話せる人は国民の半数を超えるという。
 旧ソ連は多民族国家だったが、現在のロシアにも182の民族が住む。ロシア人(民族)が全人口の77.71%を占めるが、同じ東スラブ人のウクライナ人の割合も1.35%。全体の3位となっている。ゴルバチョフ氏の家族史は、こうしたロシアとウクライナの強い結びつきが凝縮されている。」

 9月4日のBBCによれば、「先月に死去したソヴィエト連邦最後の最高指導者ミハイル・ゴルバチョフ氏の葬儀が3日、ロシア・モスクワで営まれた。ゴルバチョフ氏は冷戦を平和的に終結へと導いた人物として知られる。
 モスクワ中心部にある労働組合会館「円柱ホール」には多くの市民が集まり、ゴルバチョフ氏に敬意を表した。ゴルバチョフ氏の棺はその後、市内の墓地に眠る妻ライサ氏の隣に埋葬された。」

【日米「統合抑止」への変革 台湾有事想定し戦略・制度も】
 4日の日経新聞は、次のように報じた。
 【この記事のポイント】
・防衛省は概算要求で過去最大の防衛費を計上した
・新戦略は日米「統合抑止」。幅広い領域で深く連携
・ミサイルが重要。中国との戦力不均衡是正が急務
 日本の防衛が歴史的な転換点を迎える。防衛省は8月末、2023年度予算の概算要求で過去最大の防衛費を計上した。国内総生産(GDP)比で1%の上限を撤廃し、2%も視野に入る。大幅に増やす防衛費は何が必要なのか。課題をみる。
「統合抑止(Integrated Deterrence)」。日米で進む外交・安全保障戦略擦り合わせのキーワードだ。5月、日米防衛相会談ではオースティン国防長官が促し、事務方の交渉でもこの言葉が軸になっている。
 統合抑止は米国が新たに打ち出した安全保障の基本戦略で、これまでの軍事力だけではなく、同盟国の能力、サイバーや宇宙の領域を幅広く活用する。米軍単独では中国の脅威に対処できない危機感がある。過去最大となった防衛省の概算要求は、その第一歩だ。これまで日本の防衛費論議は国民総生産(GNP)比1%枠が象徴する「数字ありき」の議論や、どんな装備品を購入するのかの「買い物計画」に偏りがちだった。
 米国とより連携を深めるなら米国と補完し合う形で装備品を調達し、戦略や制度も見直さなければならない。年末に国家安全保障戦略など3つの政府文書を改定するのもそのためだ。特に台湾有事の対応が問われる。
 第1段階の統合抑止で最も重要なのはミサイルになる。
 米国は過去の条約の制約で現在、中距離ミサイルを持たない。日本から中国に届く中距離ミサイルは日米ともに保有していない。条約の対象外だった中国は1250発以上を持つとされる。「0対1250」の圧倒的不均衡の修正が急務だ。
 日本の防衛省は今回の概算要求で一つの策を示した。
 相手の射程外から攻撃できる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」だ。国産の「12式地対艦誘導弾」の射程を1000キロメートルに伸ばす改良費に272億円を計上した。1000発以上を量産する案が取り沙汰されている。
 政府・自民党内では22年度に沖縄県・石垣島に陸上自衛隊の駐屯地を新設し、ミサイル部隊を置く構想がある。構想通りに配備すれば沖縄の在日米軍基地や台湾に近く、中国側に届く。米国の統合抑止への目に見える関与といえるが、中国の反発も必至だ。米中対立のはざまに入る覚悟もいる。
 統合抑止は装備だけではない。インフラや制度、組織も日米がともに使えなければ機能しない。「本州にある航空自衛隊の基地を米軍の戦闘機に使わせてほしい」。今夏、米シンクタンク、ランド研究所が実施した机上演習でこんな場面があった。台湾有事の仮想シナリオで米軍幹部が自衛隊幹部に要請した。
 台湾周辺の米戦闘機は沖縄の在日米軍基地に集中する。中国の攻撃前に分散しなければ、簡単に壊滅しかねない。日本が退避場所を提供できるかが米軍の生命線になる。
 自衛隊組織の見直しも大事だ。米国が参加する北大西洋条約機構(NATO)や米韓同盟には「最高司令部」や「連合司令部」がある。トップは米軍の司令官だ。日米には統合司令部はなく指揮も別々だ。
 米韓や日米には朝鮮半島有事にどう協力して対処するかを規定する「共同作戦計画」があるが、日米の間で台湾有事に向けた計画は完成していない。装備や人員の配置、輸送や補給手段などを具体的に定めなければ統合作戦は動かせない。
 陸海空3自衛隊を束ねる統合幕僚長を務めた折木良一氏は「米国との窓口を担う統合司令官をつくるのが基本中の基本だ。危機になると統合幕僚長は防衛相や首相官邸など文官を補佐する仕事に追われる」と指摘する。
 統幕長は有事に①3自衛隊の統括、②首相や防衛相への説明、③在日米軍やインド太平洋軍司令部との調整――をすべて担う。同時並行でこなすのは非現実的だ。
 南西諸島には全長300メートル以上の米空母が寄港できる港湾設備はない。最新鋭戦闘機が発着できる堅固で長い滑走路も見当たらない。港や空港は国土交通省の所管だ。国・地方あわせて15兆円の公共投資予算で防衛向けは1900億円。従来の防衛費の概念に入らない他省庁の予算は多い。
 日本は戦後、自らは一度も紛争に巻き込まれたことがない平和国家だった。防衛費増を危険視する向きもあるが、軍事に傾斜する中国や北朝鮮、ロシアが近くにあり安保環境は厳しさを増す。必要な備えがなければ、攻撃は抑止できない。平和を守るには有事をにらんだ備えがいる。

【英国、リズ・トラス氏、3人目の女性首相誕生】
 5日の日経新聞【ロンドン=中島裕介】は、次のように報じた。
「英与党の保守党は5日、ジョンソン首相の後任を選ぶ党首選の結果、リズ・トラス外相(47)を新党首に選んだ。6日にエリザベス女王の任命を受けて、正式に首相に就任する。内政では物価高対策が最優先課題となる。ウクライナ危機への対応を巡っては対ロシア強硬姿勢を継続する見通しだ。
 故サッチャー氏、メイ氏に続く同国史上3人目の女性首相となる。一般の保守党員による投票でトラス氏が約57%の8万1326票を獲得、対抗馬のスナク前財務相は6万399票だった。トラス氏は当選後の演説で「私は減税と経済成長のための大胆な計画を実現する」と党所属議員らに訴えた。
 党首選で最大の争点だったのが、10%を超えるインフレの主因であるエネルギー価格対策だ。トラス氏はこれまでに国民保険料の引き下げなど国民の負担軽減策を掲げていた。党首選の最中に10月から光熱費が9月までと比べてさらに8割上昇するとの試算も出たことから、トラス氏は1週間以内に家計と企業への追加対策を表明する見通しだ。
 ウクライナ危機を巡って英国は、ジョンソン氏がキーウ(キエフ)に電撃訪問し、英軍がウクライナ軍の兵士を訓練するなど西側諸国の中でも支援を鮮明にしてきた。トラス氏は党首選で「ウクライナが勝利し、プーチンが失敗するまで私はあきらめない」と訴えており、ジョンソン路線を継続する方針だ。
 欧州連合(EU)離脱以降、関係が冷え込む対EU外交でも手腕が問われる。トラス氏は摩擦が続く英領北アイルランドでの通商ルールを巡る問題で、簡単に妥協しない方針で英国のEUへの強硬姿勢は続きそうだ。
 党首選に敗れたスナク氏の両親はインド系で英国初のアジア系首相を目指していた。決選投票に進む2人を決める党所属国会議員による投票では首位を維持した。だが7月上旬に財務相を辞任してジョンソン氏退陣のきっかけをつくったことなどが嫌われ、党員の支持は伸び悩んだ。
 党首選は7月上旬に、不祥事が相次いだジョンソン氏が辞意を表明したことで始まった。複数回の投票で、立候補した8人を下位候補から順番にふるい落とし、7月20日に決選投票に進む2人を決めた。」
 
【英エリザベス女王、逝去、96歳】
 9日の毎日新聞によれば、英エリザベス女王死去 96歳 在位70年。1952年から70年と約7カ月に及んだ在任期間は、英国の歴代君主として最長。世界の君主としてはフランスのルイ14世(在位1643~1715年)の72年と110日に次ぎ、史上2番目の長さだった。
 女王死去を受け、王位継承権1位の長男チャールズ皇太子(73)が新国王「チャールズ3世」として即位した。新国王は「慈しまれた君主であり、多くの人々に愛された母の死を深く悼む。英国民、そして世界の人々が喪失を感じるだろう」との声明を発表。
 女王は6日、バルモラル城でトラス新首相を任命したばかりだった。7日には医師の勧告に従って休養を取り、オンライン会合などを欠席。8日には医師の診察を受けていたが、容体悪化が伝えられる中、王室メンバーが続々とバルモラル城に集まった。
 「英国の顔」として外遊は約100カ国、260回超。71年の昭和天皇訪英の返礼として75年に訪日した。旧植民地諸国を中心とした緩やかな連合体・英連邦(コモンウェルス)の元首も務めた。

【安倍晋三元首相の国葬をめぐって】
 16日の朝日新聞デジタルは、質疑応答形式で次のように報じた。
 「世論が二つに割れたまま、安倍晋三元首相の国葬予定日が近づいています。小熊英二・慶応大学教授(歴史社会学)が、自民党政権が慣例化してきた「首相経験者の葬儀」の歴史から、問題の所在を明らかにします。
  「世論調査をみると、時が経つにつれて反対が多数になりました。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の問題は大きいですが、この問題がなくても賛否は割れていたでしょう」
 ――なぜでしょうか。
 「死去から2カ月も時間があいたからだと思います。安倍氏は評価が分かれる政治家でした。亡くなった直後はみんな悼む気持ちを強く持っていたとしても、時が経つとともに批判が出てくるのは自然なことです」
 「諸外国にも国葬はありますが、たいてい死後10日前後で、遺体の棺を前に行われます。戦前の日本でも、天皇の大喪は別として、明治の元勲などの国葬は死去後10日前後でした。死後2カ月もあけて行うのは、葬儀というより『しのぶ会』に近いでしょう」
 ――なぜこうした形になったのですか。
 「1980年代以降の前例を踏襲したからでしょう。首相経験者の『内閣・自民党合同葬』は死去から1~2カ月後に行われてきました。その歴史は『私物化の歴史』と呼ばれてもやむを得ない」
 ――どんな歴史でしょうか。
 「合同葬が始まるのは1980年の大平正芳氏からですが、その前に吉田茂氏の国葬と佐藤栄作氏の国民葬がありました。1967年の吉田氏の国葬は死去後11日で実施されましたが、大きな反発はなかったようです」
 ――実施まで時間が短かったからですか。
 「それもあると思いますが、終戦からわずか22年という時代状況が大きいでしょう。当時の30~40代以上は戦前・戦中に生まれ育った世代で、現在ほど『国葬』に違和感がなかったのではないでしょうか。当時の報道をみても、国葬が浮上した当初から反対している野党は見当たりませんでした」
 「またこの時期は海外でも1965年に英国のチャーチル元首相、1967年に西独のアデナウアー元首相の国葬がありました。戦後の再建を担った政治家が亡くなれば国葬は当然という雰囲気もあったでしょう」

【上海協力機構が共同宣言 イラン23年加盟、10カ国に】
 16日の日経新聞は、次のように伝えた。
 「中国とロシアが主導する地域協力組織「上海協力機構(SCO)」は15~16日、ウズベキスタンのサマルカンドで首脳会議を開いた。16日には複数の大国や地域統合による「多極的世界秩序」の強化を盛り込んだ共同宣言を採択した。イランが正式に加盟し、10カ国体制に広がることが固まった。ただ緩やかな協力組織だけに、加盟国の協調には限界がある。
 「内政干渉にはともに対抗しなければならない」。16日の首脳会議の全体会合で、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は台湾問題などを念頭に呼びかけた。
 SCOは2001年、ソ連崩壊後の国境地域の安定と信頼の醸成、加盟国間の協力促進を目的に設立し、合意履行の拘束力がない緩やかな協力を目指してきた。中ロのほか、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンの中央アジア4カ国とインド、パキスタンが加盟する。
 今回の首脳会議には加盟国とオブザーバー国(アフガニスタン、ベラルーシ、イラン、モンゴル)や対話パートナー国(アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパール、トルコ、スリランカ)の一部など計14人の首脳が出席した。

【中ロ首脳会談】
 16日の中日新聞【モスクワ=小柳悠志、北京=新貝憲弘】は次のように報じた。
「ロシアのプーチン大統領と中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席は十五日、上海協力機構(SCO)首脳会議に合わせて中央アジア・ウズベキスタンのサマルカンドで会談した。両国は欧米との対立や制裁に対し、経済面の連携を強化して対抗する構え。台湾情勢についても協議した。
 プーチン氏は冒頭、「ウクライナ危機に対し中国はバランスの取れた立場を保っている」と評価。台湾情勢を巡る米国の対応を「挑発行為」と非難し、「ロシアは『一つの中国』の原則を支持する」と強調した。
 習氏は「刻々と変化する世界を安定的に発展させるため、わが国はロシアとともに主導的な役割を果たす準備がある」と応じた。
 習氏の外遊は新型コロナウイルスの世界的大流行が始まって以来初めて。ロシアとの共闘姿勢を欧米に誇示する狙いに加え、エネルギーや食糧の確保という思惑がある。欧州連合(EU)がロシアからの石炭や石油、天然ガスの輸入制限を打ち出す中、ロシアも中国市場を開拓することが喫緊の課題だ。」

【中ロ、共同声明出さず 首脳会談、かりそめの結束 習氏、侵攻巡り一線】
 17日の日経新聞【北京=羽田野主】は次のように伝えた。
「ロシアによるウクライナ侵攻後初めてとなる中国との首脳会談は15日、2月の前回会談とは異なり、共同声明を出さないまま終了した。対米での結束を演出したものの、ウクライナ侵攻を巡る温度差は明らかだ。中国は貿易では協力しつつも軍事支援には一貫して慎重で、かりそめの結束をあらわにした。
 15日、ウズベキスタンのサマルカンドでの会談の冒頭で、ロシアのプーチン大統領は「ウクライナ危機に関する中国の懸念を理解している」と話した。ウクライナ情勢への中国の「懸念」に異例の言及をした。
 プーチン氏は「ロシアは(中国大陸と台湾は1つの国に属するという)『一つの中国』の原則を断固として守っている」と表明し、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が重視する台湾問題にも配慮を示した。
ウクライナ侵攻直前の2月の対面会談では「両国の友情に限界はない」と蜜月ぶりを強調する共同声明を発表していた。現在はウクライナ軍が南部や東部で攻勢をかけ、米欧の経済制裁で経済減速も止まらない。プーチン氏の会談での発言はロシアの苦境を映す。
 一方、中国側は両氏が会談する事実すら当日の外務省記者会見でも公表しなかった。習氏は会談中もうつむいて紙を読み上げる場面が目立った。ロイター通信によると、15日のプーチン氏らとの夕食会も欠席した。
 中国共産党機関紙、人民日報の16日付の1面トップ記事は中国・ウズベキスタン首脳会談で、中ロ首脳会談はその下の位置だった。中ロ会談の記事は両首脳が握手していない写真を載せるなど、ロシア側の積極姿勢とは温度差がある。
 なかでも輸入の伸びが目立つ。8月の輸入は6割増の112億ドル(約1兆6000億円)で過去最大を記録した。主要品目である原油の輸入量は5月以降、ロシアがサウジアラビアを上回っている。ロシア産原油は制裁の影響で割安になっており、低コストで資源を調達できているとみられる。
 ただ中国は軍事支援には慎重だ。中国人民大学国際関係学院の時殷弘教授は「ウクライナとの戦争に中国を巻き込もうとするロシアの試みを中国政府は断固拒否する」と指摘する。
 習指導部はロシアに傾倒しすぎると米欧が対中圧力を強め、制裁を発動しかねないと警戒する。中国はエネルギーの購入でロシア経済を下支えしているが、ウクライナで戦況が悪化すれば支援を拡大するのは難しい。

【プーチン氏、早期停戦に言及=インド首相の侵攻批判に】
 17日の時事通信は、AFP通信などを引いて、「ロシアのプーチン大統領とインドのモディ首相は16日、ウズベキスタンのサマルカンドで会談した。モディ氏は「今は戦争の時ではない」とプーチン氏に伝え、ロシアによるウクライナ侵攻を間接的に批判。プーチン氏は「懸念は理解する」と応じた上で、早期の停戦に努めると約束した。
 プーチン氏がウクライナ側に条件を明示せず、停戦に言及するのは異例。ウクライナ侵攻を決断してから半年以上が経過し、今月に入ってからはロシア軍が北東部ハリコフ州で撤退を余儀なくされるなど、ロシア側に不利な戦況が続いている。プーチン氏は「敵側が停戦交渉を拒否し、目的を軍事的に達成しようとしている」と述べ、ゼレンスキー政権に長期化の原因があると持論を展開した。」

【岸田内閣支持、最低の43% 旧統一教会調査「不十分」79%】
 18日の日経新聞はテレビ東京と一緒に16~18日の世論調査を行い、その結果を次のように報じた。岸田文雄内閣の支持率は43%で8月調査(57%)から14ポイント低下した。2021年10月の政権発足後で最低となった。内閣を「支持しない」と答えた割合は49%だった。
 「支持しない」が「支持する」を上回ったのは岸田政権で初めて。内閣支持率は66%だった5月から4カ月連続で下がった。21年10月以降で一番低かったのは新型コロナウイルスの感染拡大「第6波」の最中だった今年2月の55%だった。
 今回は自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係への懸念が影響した。党が公表した所属国会議員と旧統一教会の接点を巡る調査結果について「十分だとは思わない」との回答が79%にのぼり、「十分だと思う」は14%にとどまった。
 安倍氏の国葬を巡っては「反対」が60%で、「賛成」の33%を上回った。同趣旨の質問をした7月の調査はそれぞれ47%、43%で拮抗していた。首相が国会で国葬の理由を説明したものの理解は広がっていない。

【英女王国葬、各国元首含む2000人参列 沿道に群衆 最後の別れ】
 20日の[ロンドン 19日 ロイター] によると、エリザベス英女王の国葬が19日、ロンドンのウェストミンスター寺院で営まれた。バイデン米大統領を始めとする世界各国の首脳や王族ら500人を含む2000人が参列し、英歴代君主として最長の70年にわたる在位で生涯を通じ献身した女王に敬意を表した。国葬では聖書の朗読や聖歌の斉唱が行われ、全土での2分間の黙とうに続き、英国の国歌が斉唱された。
 国葬終了後、王室の旗がかけられた女王のひつぎは砲車に乗せられ、バッキンガム宮殿周辺を行進。英国会議事堂の大時計「ビッグベン」の弔鐘が鳴り響く中、チャールズ国王らがひつぎと共に歩いた。ひつぎはその後、ウィンザー城に到着。19日夕には城内にある聖ジョージ礼拝堂で近親者による礼拝が執り行われた。女王のひつぎは昨年99歳で亡くなった夫のフィリップ殿下のひつぎとともに、女王の父親であるジョージ6世、母親のエリザベス王太后、妹のマーガレット王女が眠る礼拝堂に納められた。沿道には数万人の市民が集まり、女王のひつぎを見送った。

【バイデン大統領、中国が台湾侵攻なら米軍が防衛】
 19日の日経新聞【ワシントン=坂口幸裕】は次のように伝えた。
「バイデン米大統領は18日放送の米CBSテレビのインタビューで、中国が台湾を攻撃すれば米軍が防衛すると明言した。中国が台湾へ武力行使した場合の対応を明確にしない歴代政権の「あいまい戦略」の修正と受け止められかねない発言だ。
 番組の司会者から「米軍は台湾を守るのか」と問われ、バイデン氏は「はい(YES)、もし実際に前例のない攻撃があれば」と答えた。「(ロシアが侵攻しても派兵しなかった)ウクライナと違って、米軍は中国の侵攻があった場合に台湾を守るということか」と聞かれても「はい」と表明した。またバイデン氏は「一つの中国政策があり、台湾は自らの独立について自身で判断する。我々は独立を促していない。台湾が決めることだ」と述べた。」

【苦境のプーチン氏が予備兵招集、核の脅しも 緊張高めるロシアの戦術】
 21日の朝日新聞デジタルは、次のように報じた。
 「ウクライナ侵攻をめぐってロシアのプーチン大統領は21日、国民向けのビデオ演説で「部分的な動員令」の発動を宣言し、軍事訓練経験のある予備兵の市民を招集することを明らかにした。さらにウクライナ東部、南部の親ロシア派が「ロシアへの編入」を求めて実施する住民投票を支持すると表明。ウクライナ領土の一部併合を示唆した。苦境に立つ戦況の打開を図る考えだが、対立の激化と侵攻の長期化は必至だ。

 ショイグ国防相は21日、ロシアの予備兵は2500万人に上るとし、新たに招集される予備兵はその1・1%にあたる約30万人だと述べた。2月の侵攻開始当時、ロシア軍はウクライナ国境付近に最大19万人を集結させたと米政府はみており、その後の死傷者は半数近くの7万~8万人にのぼると推定している。

 プーチン氏はこれまで、ウクライナ侵攻は限定的な軍事作戦だと国内で説明してきた。そのため、徴兵の導入が可能な総動員令が出せず、長期化する侵攻での人員不足は明らかだった。「部分的」とはいえ、動員拡大を図ったことでロシアの戦略は転換点を迎える。」

【台湾外交部長「中国の野望、台湾にとどまらない」と発言】
 22日の日経新聞【台北=中村裕、龍元秀明】によれば、「台湾の呉釗燮・外交部長(外相)は21日、日本経済新聞の取材に「中国の野望はもはや台湾だけでなく他国にも向けられている」と述べた。8月初旬のペロシ米下院議長の訪台以降、「中国の軍事的脅威は一段と高まった」との認識を示し、対中国で国際連携の必要性を訴えた。」 ペロシ氏の訪台以降、台湾の外交トップが日本メディアの単独インタビューに応じるのは初めて。
 中国については「権力基盤となってきた(高い)経済成長が鈍化している今が、台湾にとっては一番危ない」と述べた。習近平(シー・ジンピン)国家主席が国内での求心力を高めるため、台湾に対して一段と強硬姿勢に出る可能性に警戒感をにじませた。
 「一方、中国に対抗するため、米国との連携の強化が今後も必要だとの認識を示した。特に経済面では、台湾は先端半導体の世界生産の9割を占め、世界のサプライチェーン(供給網)で欠かせない役割を果たす。呉氏は「民主主義陣営が今後、半導体のサプライチェーンで強固な関係を築ければ、それは権威主義国からの脅威の回避につながる」と述べた。「例えば、米国が(ある国に対し)半導体の供給を止めれば、台湾も半導体の供給を止めて連携する」と語り、米国などとの緊密な連携が重要になるとの認識を示した。」

【米国は金利引き上げ、日本は緩和を維持】
 22日の日経新聞【ワシントン=高見浩輔】は、「FRB、3回連続の0.75%利上げ 年末4.4%で景気に試練」の見出しで次にように伝えた。「米連邦準備理事会(FRB)は21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の利上げを決めた。通常の3倍の利上げ幅で、6月に約27年ぶりに実施してからは3会合連続となる。高インフレの長期化を回避するための急ピッチの金融引き締めにより、景気の悪化懸念は一段と強まりそうだ。

 同じ22日、日経新聞は「日銀、大規模緩和を維持 コロナ対応の資金繰り支援延長」の見出しで次のように報じた。「日銀は21~22日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を維持する方針を決めた。円安や資源価格の高止まりで日本でもインフレ圧力が高まっているが、新型コロナウイルス禍からの景気回復を下支えするため緩和的な金融政策を据え置く。新型コロナの影響を受けた中小企業に融資する金融機関向けのオペは延長を決めた。大幅な利上げを続ける米国と、日本の金融政策の違いが鮮明となり、日銀の発表後、ドル円相場は一時1ドル=145円台と24年ぶりの安値水準まで下げた。」

【円買い・ドル売りの為替介入に踏み切る】
 これらの状況を受けて、財務省の神田真人財務官は22日午後、外国為替市場で円相場が一時1ドル=145円台に下落したことを受け、「相場が乱高下している。過度な変動、無秩序な動きは容認できない」と記者団に述べた。為替介入の可能性を問われて「スタンバイの状態と考えていい。いつでもやる用意がある」と語った。
 この日の夕方、政府・日銀は1998年6月以来、約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切った。145.84円が140.75円と一挙に円高となったものの、その後のロンドン市場では141.05とまた戻しているため、介入の効果は十分に測れないという。
 22日夜、鈴木俊一財務相は介入の実施後に財務省内で記者会見し、為替介入に踏み切ったと表明した。為替は原則として市場で決まるものだと前置きしつつ、「投機による過度な変動が繰り返されることは決して見過ごすことができない」と理由を述べた。介入が日本単独かどうかや規模、タイミングなどについては明言しなかった。また鈴木氏は「引き続き為替市場の動向に高い緊張感を持って注視する」と語り、「過度な変動に対しては必要な対応をとりたい」と強調した。
 同じ日の深夜、日経新聞【ニューヨーク=秋山裕之】によると、ニューヨークにいた岸田首相は「今後の対応として「過度な変動に対しては断固として必要な応をとりたい」と強調し、「投機による過度な変動が繰り返されることは決して見逃すことができない」と介入の理由を述べた。「(対ドルの円相場が)1年で30円以上円安に動いたのは過去30年ない状況だ」と話した。
 しかし為替介入には限界があると指摘する声もある。介入の原資の問題がある。政府は外貨準備としてドルや米国債を持っており、これを原資に円を買ってドルを売る介入を実施する。外貨準備が介入可能な金額の上限となる。外貨準備は8月末時点で約1.29兆ドル(185兆円)程度あり、一見潤沢にみえるが国際決済銀行(BIS)の2019年4月の調査によると、日本の外国為替市場の1営業日あたりの平均取引高は約3700億ドルだ。ドル以外の取引も含む金額だが、単純計算で外貨準備はその3日分ほどしかない。
 野村総合研究所の木内登英氏は「外貨準備も現実的にはすべてを使うわけにはいかず、持続的な効果はない」とみる。投機筋との攻防は長引く恐れがある。投機筋は今回の円安が、世界のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿ったものという点を円売りのよりどころとしている。

【入国者数の上限撤廃、10月11日から 岸田首相表明】
 22日深夜の日経新聞【ニューヨーク=秋山裕之】によると、岸田首相は22日、訪問中のニューヨークで記者会見し新型コロナウイルスの水際対策を巡り1日あたりの入国者数の上限を撤廃すると表明した。個人旅行も解禁し、査証(ビザ)取得は短期滞在なら免除する。いずれも10月11日に実施する。
 
 円安効果を生かして秋冬の観光需要を取り込み、インバウンド(訪日観光客)拡充による経済浮揚につなげる。主要7カ国(G7)のうち新型コロナ対策で入国者数を制限しているのは現時点で日本だけだ。首相は国内の観光代金を補助する「全国旅行割」や、チケット料金を割り引く「イベント割」も同日に始めると言明した。「コロナ禍で苦しんできた宿泊業、旅行業、エンタメ業などを支援する」と語った。

【トヨタがロシア撤退 侵攻長期化、日本の車大手で初】
 23日の日経新聞によれば、トヨタ自動車は23日、ロシア事業から撤退すると発表した。ロシアのウクライナ侵攻を受け3月4日からサンクトペテルブルクにある工場を一時停止していた。日本の自動車メーカーが撤退方針を明らかにするのは初めて。ウクライナ侵攻の長期化と地政学リスクの高まりを受けて、事業の整理の決断を迫られる企業が増えそうだ。
 トヨタはロシアで2021年、世界生産台数の約1%にあたる8万台を生産、11万台を販売していた。07年からロシア西部のサンクトペテルブルクで現地生産を始め、21年は多目的スポーツ車(SUV)「RAV4」などを生産した。
 トヨタ以外では日産自動車がロシア工場の稼働休止を12月末まで延長することを決定。三菱自動車も同様に生産を止めているが、事業の一時休止にとどまり撤退の判断には至っていない。

【ロシアで再び動員令に抗議デモ、750人拘束 反発拡大】
 26日の日経新聞によれば、ロシアで24日、同国軍のウクライナ侵攻を巡ってプーチン大統領が21日に署名した部分動員令に反対する抗議行動が広がった。21日夜に続いて24日も各地で街頭デモがあり、治安当局により750人を超える市民や活動家が拘束された。ロシア社会に動員令への反発と不安が広がっている。
 独立系の人権団体「OVDインフォ」によると、モスクワ時間24日午後7時(日本時間25日午前1時)の時点で、国内32都市で約750人が治安当局によって拘束された。特に首都モスクワでは拘束者が380人を超え、サンクトペテルブルクでも120人を超えた。
 24日の抗議行動は、社会団体「ベスナ(春)」が21日に続いて呼びかけた。21日夜の抗議行動では各地で合計約1400人が拘束された。23日も各地で小規模な街頭デモがあったと伝えられた。
 SNSのテレグラム上では、若者が拘束される映像だけでなく、モスクワで高齢の女性が警官隊に激しく抑えられる光景も投稿された。サンクトペテルブルクではこん棒だけでなく電気ショックを与えるスタンガンのような道具が使われたという。
 ロシアではウクライナへの軍事侵攻が始まった2月24日直後から3月にかけて、各地で抗議行動が続いた。その後は治安当局の厳しい取り締まりや、新型コロナウイルスの感染拡大を理由にした大規模集会の禁止措置などで抑え込まれていた。

【イタリア総選挙、極右政党が第1党に】
 26日の日経新聞【ローマ=佐竹実】によれば、イタリアの総選挙は25日、投開票された。伊公共放送RAIによると、メローニ党首率いる野党の極右「イタリアの同胞(FDI)」が第1党になる見通しだ。右派連合を組んでいる極右「同盟」や、ベルルスコーニ元首相率いる中道右派「フォルツァ・イタリア」と合わせると、上下両院で議席の過半を確保したもようだ。メローニ氏は同国初の女性首相となる可能性がある。
 メローニ氏は26日未明にローマのホテルで「国民は選挙を通じて、我々が率いる政権への明確な支持を示した」と述べ、勝利宣言をした。極右の政治家が国のトップに選出されれば、第2次世界大戦後の欧州主要国では極めて異例となる。メローニ氏は保育所の無償化や子ども手当の増額などを掲げ、記録的なインフレに直面する国民の支持を集めた。主要政党として唯一、2021年2月に発足したドラギ政権に加わらずに同政権を批判してきたことも得票につながった。

【領事拘束、ロシアに抗議 外相「違法活動全くない」】
 27日の日経新聞によれば、林芳正外相は27日、ロシア当局に一時拘束された在ウラジオストク日本総領事館の領事について「違法な活動をした事実は全くない」と述べた。森健良外務次官がガルージン駐日大使を呼んで抗議し、謝罪と再発防止を求めたと明らかにした。
 林外相は、領事に関し「終始、目隠しをされたまま両手および頭を押さえつけて身動きがとれない状態で連行され、威圧的な取り調べを受けた」と説明した。「極めて遺憾だ」と非難した。
 松野博一官房長官は同日の記者会見で、領事が28日までにロシアを出国する予定だと話した。外交官の追放で両国が応酬する事態になれば日本がロシアに置く大使館に影響する恐れもある。在留邦人や現地企業の保護といった業務に支障をきたし、情報収集の能力が低下する可能性がある。

【ロシアからのガスパイプライン損傷、「破壊工作」か】
 同じ27日の日経新聞によれば、ロシア産天然ガスを欧州に輸出する海底パイプライン「ノルドストリーム」の運営会社は27日、パイプラインに「前例のない」損傷が生じ、復旧の見通しが立たないと明らかにした。デンマーク当局は、ガス漏れの発生した海域の航行を禁止する措置を講じた。運営会社はロシア国営ガスプロムの子会社。損傷はノルドストリーム「1」と「2」の両方で見つかった。
 迫りくる冬に向かい、欧州各国は天然ガスの確保に神経質になっている矢先の出来事であり、一刻も早い原因究明と修理復旧が望まれる。

【安倍元首相の国葬】
 27日午後2時から日本武道館で安倍元首相の国葬が行われ、約4200人が参列した。世論調査でANNは賛成30%、反対54%と伝え、NHKは32%、57%と反対が多いなかでの国葬であったが、献花する市民の長蛇の列に何時間も延長した。
 開会の辞に続く1分間の黙とうの後、安倍氏が掲げた経済政策「アベノミクス」や外交・安全保障政策「自由で開かれたインド太平洋」、安全保障法制の制定などにかかわる映像が流れた。
 葬儀委員長を務めた岸田首相は、「あなたが敷いた土台のうえに持続的ですべての人が輝く包摂的な日本、地域、世界をつくる」。首相は遺志を引き継いで政権運営にあたると述べた。

 反対を叫ぶグループと参列する人たちが静かに並存する東京都心部の映像が世界の人たちの目にどう写ったのだろうか。ロシアによるウクライナ侵攻の映像を見慣れた人たちには、意見の違うグループの静かな並存は驚くべき光景であったに違いない。「国民の分断を招いた国葬」(朝日新聞夜ニュースレター)ではなく、多様性の表れと見る方が現実に近いのではないか。

 この間、以下の番組を視聴することができた。(1)BS6報道1930「国力低下し地位転落も…日本外交の”武器“とは何か? 林芳正外相直撃」8月30日。 (2)BS世界のドキュメント「真実こそ私たちの武器 リトアニア フェイクとの闘い」9月1日。 (3)報道1930「極右思想家の娘暗殺の裏で何が…侵攻長期化とプーチン氏にかかる圧力」1日。 (4)BS世界のドキュメンタリー選「イラクの失われた世代 ISの子どもたちは今」1日。 (5)報道1930 2日。 (6)週刊ワールドニュース(8月29日~9月2日)3日。 (7)NHKスペシャル「玉鋼(たまはがね)に挑む 日本刀を生み出す奇跡の鉄」3日。 (8)BS1グローバルアジェンダ「核戦争 いま危機を乗り越えるために」4日。 (9)NHKドキュメント「休診日に会おうぜ!~毒舌院長「大丈夫みんなできない」~」5日。 (10)NHKスペシャル「日本を襲う三重苦、米中景気不安に物価高、円安加速で最悪シナリオ」5日。 (11)BS1映像の世紀「映像プロパガンダ戦 嘘と嘘の激突」5日。 (12)報道1930「徹底的にロシアを叩け…カギ握る米供与の兵器」6日。 (13)報道1930「【旧統一教会】山上家の実情知るキーマン”元奈良教会長“が初証言」7日。 (14)報道1930「国葬問題、国会追及…」8日。 (15)NHK総合アナザーストーリーズ「東大安田講堂事件 あのとき学生は何と闘ったのか」9日。 (16)週刊ワールドニュース(9月5日~9日)10日。 (17)報道1930「中国人民解放軍のいま 40年間”実戦経験なし“ 人民解放軍の実力」12日。 (18)報道1930「謎のロ軍の精鋭<第3軍団> <ウクライナ反撃の主役・機甲部隊>」13日。 (19)報道1930「中ロで広がる国力格差 苦境のプーチン氏に習氏が差し伸べる手は?」15日。 (20)百年インタビュー「稲盛和夫」15日。 (21)報道1930「アメリカ中間選挙の行方 トランプ氏は大統領選挙に出馬せず?」16日。 (22)NHKスペシャル「”染紅“ 変貌する香港 <自由と民主>が消えるとき」15日。 (23)週刊ワールドニュース(9月12日~16日)」17日。 (24)NHKスペシャル「”中流危機”を超えて「第1回企業依存を抜け出せるか」18日。 (25)報道1930「エリザベス女王国葬に英国民<最後の別れ> 新国王を待つ課題は?」19日。 (26)NHKクローズアップ現代「築50年の空き家に入る入居者ぞくぞく 空き家の新たな活用法とは?」20日。 (27)報道1930「予備役動員プーチン氏 核は本気? 戦争新局面 変革兵器供与加速か?」23日。 (28)ETV特集「ゴルバチョフの警告」24日。 (29)日中2000年 戦火を越えて【前編 知られざる修復のシナリオ】24日。 (30)週刊ワールドニュース(9月19日~23日)」24日。 (31)「あなたと共に生きたい 細井恵美子さん91歳 介護現場への想い」25日。 (32)報道1930「【窮地のプーチン氏】ロシア正規軍崩壊か」26日。 
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人類最強の敵=新型コロナウィルス(48)

 本連載「人類最強の敵=新型コロナウィルス」は、一昨年2020年3月6日に初めて掲載、次号の3月18日掲載分から通番を付して連載してきた。以来、今回が48回目で、3年目に入った。

【ウクライナ問題のプーチン政策に対して各国が対抗措置】
 2月22日午後、前回(47)を掲載した直後、プーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア派組織が自ら名乗る<ドネツク人民共和国>と<ルガンスク人民共和国>の独立を一方的に承認したうえ、平和維持が目的と主張して両国へロシア軍を派兵したと述べた。
 23日(水曜、祝日)の朝日新聞デジタルによれば、岸田首相は同午前、プーチン大統領の一方的承認に対するロシアへの制裁措置を発表した。(1)2共和国の関係者に対するビザ発給停止と資産凍結、(2)2共和国との輸出入の禁止、(3)ロシアによる日本での国債などの発行・流通禁止――の3点で、詳細は今後詰めるという。首相は同日、首相公邸で秋葉剛男国家安全保障局長や外務、防衛両省の幹部らと協議。その後、記者団の取材に応じた。

【ロシア軍がウクライナ軍事施設へミサイル攻撃開始】
 24日(木曜)、ロシア軍はウクライナの軍事施設へのミサイル攻撃を開始。キエフなどの軍司令部が対象とみられる。プーチン大統領が同日、ウクライナ東部で特別軍事作戦を行う決定をしたと発表、タス通信などロシアメディアが一斉に報じた。ロシアが支援する親ロシア派武装勢力が一部地域を占領するウクライナ東部の住民の保護が目的と述べ、「ウクライナの占領は計画に含まれない」と主張した。
 プーチン氏は24日早朝(日本時間同日正午前)に国営テレビで放送したビデオ声明で表明した。「(ウクライナ東部の住民が)ロシアに支援を求めている。ウクライナ政権によるジェノサイド(集団殺害)にさらされている人々を保護するために(地域の)非軍事化を目指す」と説明した。あくまで人道目的での軍事作戦だと強弁、「ロシアの計画にはウクライナの占領は含まれていない」と説明し、ウクライナに抵抗を諦めるよう迫った。
 一方、ウクライナのクレバ外相はロシアがウクライナへの大規模な再侵攻を始めたと述べた。複数の都市を標的とする「全面的な攻撃だ」と非難。ロシア軍がウクライナ南部の港湾都市オデッサやマリウポリに上陸作戦をしかけているとの報道もある。米CNNは24日、現地時間早朝にウクライナの首都キエフで複数の爆発音が聞こえたと報じた。
 プーチン大統領の決定を受け、バイデン米大統領は「悲劇的な死と苦しみをもたらす計画的戦争を選んだ」と厳しく非難した。

【停戦協議始まる】
 27日の日経新聞【モスクワ=石川陽平】は「ロシアのプーチン大統領は、核戦力を含む軍の核抑止部隊に任務遂行のための高度な警戒態勢に移行するよう指示、核戦力をちらつかせ対ロ制裁を強化した欧米をけん制する狙いとみられる。ウクライナ大統領府は27日、ベラルーシとの国境地帯でロシア側の代表団と前提条件なしの停戦協議を行うと明らかにしたが、緊張は高まっており、協議の成否は不透明」と伝え、停戦協議は現地時間28日午前との見通しを示した。

【EU、カナダも制裁措置】
 27日、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長はウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアへの追加制裁案を発表した。EU領空にロシアの航空機が乗り入れるのを禁止するほか、ロシア政府系メディアのEUでの活動を禁じる。ウクライナへ武器などの購入資金も供与する。
 カナダもロシア航空機に対して自国の領空通過を禁止した。領域内での離着陸や上空を飛行することができなくなる。今後はフライトのキャンセルが見込まれることなどから、米国とフランスは27日、自国民に対してロシアからの速やかな国外退去を勧告した。
ロシア事業を抜本的に見直す企業の動きもでてきた。英石油大手BPは27日、19.75%保有するロシア石油大手ロスネフチの株式を全て売却し、同社と手掛けてきたロシア国内での合弁事業も全て終えると発表した。ロシアから事実上撤退する。1990年から現地でビジネスを展開してきたが、ウクライナへの軍事侵攻で「状況が根本的に変わった」として関係の見直しを決断した。
 国連の安全保障理事会は27日、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、国連総会の緊急特別会合を開くための決議を採択した。28日にも開催する。ロシアの拒否権発動による安保理の機能不全に対応する。米国などが主導し、侵攻を非難する総会決議の採択を目指す。
 米国とアルバニアが提出した特別会合開催についての決議には11カ国が賛成し、採択された。ロシアは反対したが、今回は手続き上の採決だったため、安保理の投票でも拒否権は行使できなかった。中国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)が棄権した。

【米欧がロシアへの経済・金融制裁】
 28日の日経新聞は、「米欧、劇薬覚悟のロシア包囲網 決済停止で最大級の圧力」の見出しを掲げ、「米欧はロシアへの経済・金融制裁を大幅に強める。ロシアの大手銀行を国際決済網から排除し、同国中央銀行にも制裁を発動して「ルーブルを暴落させる」(米政府高官)という。エネルギーをロシアに依存する欧州は強力な金融制裁に消極的だったが、ロシアがウクライナ侵攻の手を緩めず強硬姿勢に転じた。金融取引を封じて経済面から最大級の圧力をかける」と述べた。

【中国の誤算】
 28日の日経新聞は「昨年秋以降、ロシア軍がウクライナ国境に集結し始めてから、中国指導部は一貫してプーチン氏の出方を読み誤ってきた。さすがに全面侵攻はしないだろう、と高をくくっていた形跡が濃い」と述べ、次のように伝えた。
 習氏は2月4日、プーチン氏を北京に招き、「両国の友情に限界はない。協力上、禁じられた分野もない」とうたった共同声明に署名した。この約3週間後、ロシアがウクライナに全面侵攻し、世界の「悪者」になると知っていたら、習氏はロシアとの連帯をここまで格上げしなかったはずだ。
 ロシアによる侵攻リスクを、習政権はぎりぎりまで察知できなかった、という見方が中国問題の専門家には多い。中国の誤算を裏づける根拠がある。米紙ニューヨーク・タイムズによると、米政権は過去約3カ月にわたり、中国側と6回接触して、ロシアの侵攻準備を示す極秘情報を伝えた。ロシアを止めるよう中国に求めるため、異例の措置に踏み切った。
 今年に入ってからはブリンケン国務長官が直接、王毅国務委員兼外相に2回、最新情報を伝えたが、中国側は最後まで真に受けなかった。中国は本気で、ロシアは全面侵攻しない、と油断していたようだ。その傍証として、中国政府は侵攻直後になってから、ウクライナ在住の自国民の退避策にあわてて動き出した。現地には約6000人の中国人が在留しているとされるが、退避のチャーター機派遣を発表したのは2月25日。全面侵攻が始まった翌日である。
 なぜ、習政権はロシアの出方を読み誤ったのか。対立する米国への対抗上、ロシアとの連帯を重視するあまり、プーチン氏を冷静に観察せず、危ない野心に気づくのが遅れてしまったのだろう。習氏の強権化が極まり、彼に耳の痛い情報が上がりづらくなっていることも、もう一つの原因だ。
 中国に詳しい外交筋によると「習氏の機嫌を損ねるのを恐れ、彼の方針に逆行する情報や分析を、側近が上げたがらない」。米政権からもたらされたロシア侵攻説は、まさにこれに当たる。
 共同声明では、北大西洋条約機構(NATO)の拡大にも反対し、中国はロシアの安保上の立場に支持を明確にした。

【ロシア中央銀行が政策金利を20%に】
 28日、ロシア中央銀行は政策金利を従来の9.5%から20%に引き上げると発表した。利上げは11日の金融政策決定会合以来で、2月に入って2回目になる。ウクライナ侵攻による米欧の経済制裁で通貨ルーブルが急落、28日には過去最安値を更新した。通貨安に伴うインフレ加速を抑えるため、緊急の利上げに踏み切った。

【トヨタ自動車 部品会社がサイバー攻撃を受け、稼働停止】
 トヨタ自動車は28日、3月1日に国内全工場(14工場28ライン)の稼働を停止すると発表した。トヨタ車の部品をつくるサプライヤーがサイバー攻撃を受け、部品供給を管理するトヨタのシステムが影響を受けたため。2日以降に通常稼働に戻せるかどうかは精査中。日野自動車とダイハツ工業も同日、同じ理由で1日に国内工場を止めると明らかにした。なお3月1日の操業停止のみで、2日から稼働を再開した。

【岸田首相 ロシア中央銀行との取引制限の追加制裁】
 28日夜、岸田首相はロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、ロシア中央銀行との取引を制限する追加制裁を表明した。米欧カナダの6カ国と欧州連合(EU)が決めた措置に日本も加わる。「ロシアへの金融制裁の実効性を高める」と述べた。
ロシアの侵攻に協力したベラルーシへの制裁も実施する。ルカシェンコ大統領ら個人・団体を制裁対象に加え「輸出管理措置なども講じる」と、首相官邸で記者団に語った。
 首相はこれに先立ち、ウクライナのゼレンスキー大統領と15分ほど電話で協議、「ウクライナの主権と領土的一体性への確固たる支持」を伝え、「日本はウクライナ国民と共にある」と語り、新たに1億ドルの緊急人道支援をも伝達した。ゼレンスキー氏は協議後、ツイッターで「侵略に対抗するための強力な支援に感謝する」と謝意を示した。

【停戦協議】
 ロシアによるウクライナ侵攻から5日目の、現地時間28日午前(日本時間同日午後)、ロシアとウクライナの対話は始まった(ロシアのタス通信)。場所はベラルーシ南東部ゴメリ州とウクライナとの国境地帯とみられる。当初、ロシアはベラルーシの首都ミンスクでの開催を主張、ウクライナは侵攻に協力したベラルーシでの開催に難色を示していた。
 ゼレンスキー大統領は28日、SNS(交流サイト)に動画を投稿し「この会談で結果が出るとは期待できないが交渉してみよう。わずかでも戦争を止めるチャンスがあったのに何もしなかったということがないように」と語った。

【欧米の石油大手がロシアから撤退】
 3月1日、米石油大手エクソンモービルは極東ロシアの資源開発事業「サハリン1」から撤退すると発表した。同「サハリン2」からは英石油大手シェルも撤退を表明済み。ウクライナ侵攻でロシアへの批判が高まるなか、同国での資源事業から手を引く動きが広がっている。
 具体的な撤退時期には言及しておらず「操業を徐々に停止して合弁から撤退する手続きを取り始めた」という。主に原油を生産するサハリン1にはエクソンが30%を出資。ほかにサハリン石油ガス開発(東京・港)が30%、ロシアの石油大手ロスネフチとインドの石油天然ガス公社(ONGC)が20%ずつ出資している。サハリン石油ガス開発には経済産業省、伊藤忠商事、石油資源開発、丸紅、INPEXが出資している。

【アップル ナイキ等の消費財がロシア離れ】
 アップルは1日付の声明で「(ウクライナへの)侵攻を受け、様々な措置を取った。ロシアでのすべての製品販売をいったん取りやめた」と述べた。すでにロシア向けの輸出を停止し、決済サービス「アップルペイ」の利用なども制限しているという。ロシアのスマートフォン市場でアップルのシェアは3割ほどとみられ、影響は小さくない。
 スポーツ用品のナイキも1日までに、ロシア国内で自社サイトでの商品販売を停止、ロシア語の公式サイトで「通販サイトやアプリでの商品販売は一時的に利用できなくなる」と顧客に通達した。
 米フォード・モーターは1日、ロシアの合弁工場での商用車の生産を停止すると発表した。合弁相手であるロシアの自動車メーカー、ソラーズに事業の停止を通達した。フォードは19年にロシアでの乗用車の生産を終了し事業を縮小したが、ソラーズの合弁工場で小型商用車を年間1万~2万台規模で生産していた。
 独BMWもロシアでの自動車生産とロシアへの輸出を停止すると、複数のドイツメディアが1日、報じた。BMWはバルト海に面するロシアの飛地のカリーニングラードでロシア向けに多目的スポーツ車(SUV)を組み立てていた。

【ロシアを世界経済から排除の動き加速】
 3月1日の日経新聞は次のように報じた。「ウクライナに侵攻したロシアを世界経済から排除する動きが広がってきた。英石油大手BPがロシア事業から事実上撤退するほか、商用車大手の独ダイムラートラックホールディングはロシア企業との提携を解消する。各国の機関投資家はロシアの株式や債券を売却する。金融制裁で通貨ルーブルは急落し、ロシア中央銀行は通貨防衛に追われた。中国がどこまでロシア経済を支援するかが今後の焦点になる」。

【トヨタ等がサイバー攻撃を受け稼働を停止】
 トヨタ自動車は28日、3月1日に国内全工場(14工場28ライン)の稼働を停止すると発表した。トヨタ車の部品をつくるサプライヤーがサイバー攻撃を受け、部品供給を管理するトヨタのシステムが影響を受けたため。2日以降に通常稼働に戻せるかどうかは精査中。日野自動車とダイハツ工業も同日、同じ理由で1日に国内工場を止めると明らかにした。

【岸田首相 ウクライナ難民受け入れを表明】
 3月2日、岸田首相はロシアによるウクライナ侵攻で国外に避難する人について「日本への受け入れを今後進めていく」と表明。新型コロナウイルスの水際対策の枠とは別に柔軟に対応することを検討する。首相官邸で記者団に「まずは親族や知人が日本にいる方々を受け入れることを想定するが、それにとどまらず人道的な観点から対応していく。…基本的に水際対策とは別に考えるべきだ。具体的には実務などの調整をこれからしたい」と語った。
 これに先立ってポーランドのモラウィエツキ首相との電話協議で方針を伝え、モラウィエツキ氏は「日本の貢献を評価する」と答えた。岸田首相はウクライナに残る邦人に関してもポーランドへの円滑な入国に協力を求め、最大限の支援を提供するとの回答を得たと説明した。「国際社会における重要な局面においてウクライナの人々との連帯をさらに示す」とも強調した。ポーランドはウクライナの隣国で、多くの人が避難している。

【国連緊急特別会合で141:5:35】
 2日、国連総会は緊急特別会合でロシアによるウクライナ侵攻に「最も強い言葉で遺憾の意を表す」とする決議を日本や米国など141カ国の賛成多数で採択した。ロシアに対し「軍の即時かつ無条件の撤退」を求めたうえで、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立承認の撤回も要請した。ロシアやベラルーシ、シリア、北朝鮮、エリトリアの5カ国が反対し、中国やインドなど35カ国は棄権した。この決議は日米など96カ国が共同提案した。緊急特別会合は2月25日の安全保障理事会でロシアが非難決議案に拒否権を発動したことを受けて招集されたもの、安保理の要請による招集は1982年以来40年ぶり。総会決議に法的拘束力はないが、多数の国が結束してロシアの孤立を印象づける狙いがある。

【IPCがロシアとベラルーシの北京パラ参加を認めず】
 3日夕方のテレ朝ニュースは次のように報じた。「IPC=国際パラリンピック委員会が3日午後、ロシアとベラルーシ選手の北京大会の参加について2日の決定を一転させて参加を認めないと発表した。「アスリートらは恐れを感じていて競技にあ参加できない状況」で「アスリートの安全を確保するのは限界がある」とコメントしている。IPCは2日、両国の選手について国旗などを隠したうえで「個人参加」を認めるとしていた」。

【北京パラの成果】
 こうしたなか、3月4日、2022年北京パラリンピックが開幕した。軍事侵攻が続く中で行われた異例のパラリンピックは、13日が大会最終日。ウクライナの選手団がクロスカントリースキーの競技会場で再び声をあげた。最後の種目で金メダルを獲得。今大会、ウクライナ選手団は過去最多となる11個の金メダルを獲得した。
 その13日夜、10日間の日程をすべて終え、閉会式が行われた。新型コロナウイルスの流行とロシアによるウクライナ侵攻が続く中で開かれた、類を見ない大会となった。
 今大会で目立ったのは地元、中国勢の活躍。パラリンピックでは前回大会の車いすカーリングで金メダルを取ったのが冬の大会史上初のメダルだったが、今大会は金メダル18個を含む61個のメダルを獲得した。
 一方の日本、今大会のメダル獲得数は7個で、前回ピョンチャン大会の10個を下回った。アルペンスキーで25歳の村岡桃佳選手が金メダル3個、銀メダル1個。クロスカントリースキーで21歳の川除大輝選手が金1個。41歳の森井大輝選手が銅メダル2個を獲得した。“戦う”のではなく“一緒に競う”。それはスポーツの本質であり大きな魅力でもある。
 
【ロシア軍はなぜ制空権を奪えないのか】
 ロシア軍の侵攻がつづくウクライナ。9日の朝日新聞デジタルは、2月10日に始まった連載「ウクライナ危機の深層」の第42回「最新鋭のロシア軍、なぜ制空権を奪えない? 元米軍パイロットが分析」を掲載した。語るのは米空軍パイロットの元米空軍大佐で元米国防次官補代理のマーク・グンジンガー氏(Mark Gunzinger) 。戦略爆撃機B52のパイロットとして3千時間以上の飛行経験を持つ。
 素人目でも不可解なロシア軍の行動について概略、次のように述べている。
 「ロシア軍が制空権をとる作戦に出なかったことには驚きました。まずロシア軍は、ウクライナ軍が持つ地対空ミサイルS300を全滅させるとみていた。航空優勢を得たうえで、相手の軍事施設に大規模攻撃をする。
 ロシア軍は優れた戦力を持つ。350機の最新鋭戦闘機があり、うち300機がウクライナ近くに配備されていて、準備はできていた。ところがロシア空軍には制空権を奪う作戦を遂行する能力が足りなかったとみています。大規模で複雑な作戦を実行するだけの訓練を積んでいなかった。ロシア空軍は年間100時間の訓練をしているが、これは北大西洋条約機構(NATO)加盟国のパイロットの半分以下。実戦経験にも乏しい。
 過去の戦いの形にヒントがある。ロシア空軍の実戦経験はシリア内戦、シリアではウクライナのような防空網の脅威がなく、1機や2機、多くて4機の小規模な作戦ばかりで、大規模で複雑な作戦をする必要がなかった。相手の防空網や空軍を無効化するためには、数百機の飛行機が同時に連携して攻撃する必要がある。これは、数機での作戦とは全く異なる。さらに防空レーダーを妨害するなどの作戦を組み合わせるのが防空網の制圧や破壊の基本手順です。
 プーチン大統領は、ロシア軍はウクライナ人に歓迎されると高をくくって、準備が足りなかったのでしょう。だが思うようには進まず、初期の計画は失敗した。現代の戦争において、航空優勢は絶対に欠かせないものです。空軍だけでなく陸軍の立場からも、戦争計画全体の成否を分けるほどの重要性を持ちます。
 実際、ロシア軍は航空機や戦闘ヘリが撃墜され、消耗を強いられている。被害を防ぐために夜間の少数飛行が目立ち、作戦も非常に制限されている。一方、ウクライナ軍は数少ない地対空ミサイルシステムS300や携帯式地対空ミサイル(MANPADS)などを使って、ロシア空軍に対して脅威を与え続けている。これは称賛に値する。」

【韓国の次期大統領に尹(イン)氏】
 9日(水曜)、韓国大統領選が投開票され、保守系の最大野党「国民の力」の尹錫悦前検事総長(61)が、僅差で当選。尹氏が大統領になることで、対日関係や北朝鮮の核問題にも動きがある可能性があり、今後の動向に注目が集まる。

【事業撤退の外資にロシアが対抗措置】
 11日の日経新聞【ロンドン=中島裕介、ニューヨーク=中山修志】によれば、ロシア政府はウクライナへの軍事侵攻を受けてロシア事業の停止や撤退を判断した外資系企業の資産を差し押さえる検討に入った。欧米やロシアのメディアが10日、一斉に報じた。外資の出資が一定比率を超える企業がロシアでの事業を止めた場合に、企業の設備や資産を事実上押収し、ロシア寄りの経営者に事業継続を委ねる枠組みになるとみられる。

【米大手がLNGの6割増産案を表明】
 同じ10日夕方の日経新聞【ヒューストン=花房良祐】によると、「米エネルギー大手のセンプラ・インフラストラクチャーは????
て年約1900万トンにする。増産分は欧州やアジアへの輸出に振り向ける。ロシアのウクライナ侵攻で欧州はロシア産ガスへの依存を減らす方針。米国は中長期的に輸出体制を整え、ロシアへの圧力を高める」と伝えた。

 【ロシアに追加制裁】
 11日の日経新聞は、「バイデン米大統領が、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対して、主要7カ国(G7)や欧州連合(EU)と協調して追加制裁に踏み切ると表明した。米国はロシアからの輸入品に対して関税を大幅に引き上げるほか、G7としてロシアが国際通貨基金(IMF)や世界銀行からの借り入れをできないようにする。一方、ロシア政府は10日、日米欧などを対象に通信機器や一部木材など200品目以上の輸出を2022年末まで禁じる」と報じた。

【中国でコロナ都市封鎖】
 14日の日経新聞は、「中国深圳などでコロナ都市封鎖 トヨタや鴻海、工場停止」の見出しで次のように伝えた。「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国が事実上の都市封鎖(ロックダウン)を広げている。東北部の吉林省長春市、南部の広東省深圳市に続き、14日から広東省東莞市でも厳しい行動制限を始めた。感染を抑え込む「ゼロコロナ政策」を徹底する。トヨタ自動車や台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は同日、対象地域の工場の稼働を一時停止した。長引けば影響が広がる恐れがある。

【ロシア侵攻に関する米中協議】
 15日の日経新聞【ワシントン=坂口幸裕、北京=羽田野主】によれば、米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は14日、ローマで中国の外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員と7時間ほど会談した。米政府高官によると、サリバン氏は中国によるロシア支援に深刻な懸念を伝えた。両氏の会談は2021年10月以来、5カ月ぶり。米側の説明によると、サリバン氏と楊氏の会談は2月24日にロシアがウクライナに侵攻する前から計画されていた。
 中国メディアによると、楊氏は会談で「国際社会はロシア・ウクライナ和平交渉を共同で支持し、できるだけ早く実質的な成果を得て、情勢が早期に沈静化するよう推進すべきだ」と語ったが、具体的な行動については触れていない。

【中国幹部の提言】
 15日の朝日デジタルは、中国政府の諮問機関である国務院参事室公共政策研究センターの副理事長、胡偉氏(58歳、政治学)が「ロシア・ウクライナ戦争のあり得る結果と中国の選択」と題する。5日付の論考を11日に国外の論壇サイトに中国語で発表したと伝えた。これは「一学者として戦争の結果を客観的に分析し、対策を示した。中国の最高指導部の検討と参考に供するもの」としている。中国国内のSNSでも拡散されたが、習指導部の外交姿勢とは一致せず、次々に消去されている。
 胡氏は、短期決戦を目指したプーチン氏のもくろみがすでに失敗しているとし、プーチン氏にとっての最善の選択は「和平交渉を通じて戦争を終わらせることだ」と強調。仮にロシアがウクライナを占領したとしても「重荷に耐えられなくなる」と分析した。
 そのうえで中国が取るべき選択について「プーチン氏と早急に手を切るべきだ」と提言。「国際政治の基本ルールは『永遠の友もなく、永遠の敵もなく、あるのは永遠の利益だけ』だ」とし、ロシアとウクライナのどちらの側にも立たない中立の姿勢は「賢い選択である場合もあるが、この戦争には当てはまらず、中国は漁夫の利を得ることはできない」と主張。さらに胡氏は「中国は世界で唯一、プーチン氏を阻止する能力を持つ国であり、この優位性を発揮しなければならない」とも強調。戦争を終わらせることにより、「中国は国際的な称賛を勝ち取ることができる」と訴えた。

【まん延防止等重点措置 解除の方向へ】
 15日(火曜)の日経新聞デジタル版によれば、東京都は同日、新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」の延長を求めないことを政府に伝達した。関係閣僚あての文書で「(21日までの)期間をさらに延長する状況にはない」と指摘したうえで、経口薬の迅速供給やワクチンの4回目接種の早期検討などを要望した。
 小池知事は15日夕、コロナ患者向け病床使用率が50%を下回っていることなどを理由に重点措置の延長を求めないと記者団に明らかにした上で、今後については「リバウンド(再拡大)はあっという間に起きる。警戒を怠ることはない」と強調した。15日には京都府なども延長を求めないことを政府に伝えている。

【18都道府県の「まん延防止等重点措置」を全面解除】
 岸田首相は16日、首相官邸で後藤茂之厚生労働相ら関係閣僚と話し合い、その後の記者会見で自治体側の要請を踏まえ全面解除する方針を表明。専門家でつくる基本的対処方針分科会で了承されれば政府対策本部で正式に決める。
 17日、新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」に関し、東京や大阪など18都道府県について21日の期限で解除する案を専門家に諮る。北海道、青森、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、岐阜、石川、京都、大阪、兵庫、香川、熊本で、いずれも1月下旬からの対象地域。1月9日に沖縄など3県に適用して以来、約2カ月半ぶりに全国で対象地域がなくなる。感染抑止策や医療提供体制は保ちつつ経済社会活動の本格的な再開を探る。
 首相は「第6波の出口ははっきり見えてきた…今後しばらくは平時への移行期間だ」と指摘し、感染再拡大を防ぐために「最大限の警戒をしつつ安全・安心を確保しながら、可能な限り日常の生活を取り戻す」と強調した。

【東北地方に震度6強の地震】
 6日午後11時36分ごろ、宮城県登米市や福島県相馬市などで震度6強を観測する地震が発生した。気象庁は両県沿岸に津波注意報を発令した。震源は福島県沖で、深さは約57キロ。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7.4と推定される。東北新幹線が脱線したほか、東京電力管内で一時、200万戸を超える大規模な停電が発生した。
 気象庁によると、宮城県の石巻港で30センチ、仙台港で20センチなど各地で津波を観測。津波注意報は17日午前5時ごろ解除された。各地の消防などによると、地震で複数のけが人が出た。JR東日本によると、地震の影響で東北新幹線下りのやまびこ223号が福島―白石蔵王間で17両中16両が脱線した。車両には約80人が乗っていたが、けが人はいなかった。
 この脱線事故と橋梁に入ったヒビ等の点検により、東北新幹線は那須塩原駅から盛岡駅まで運休となった。のち部分開通したものの、全面復旧には約1か月を要し、4月20日頃になる見通しと21日に発表があった。
 原子力規制委員会によると、東京電力福島第2原子力発電所の1号機と3号機の使用済み核燃料プールの冷却ポンプが一時停止したが、いずれも復旧した。福島第1原発5号機の建屋で火災警報器が鳴ったが、その後、火災でないことを確認したという。東北電力女川原発でもポンプが一時停止した。
  
【ゼレンスキー大統領が各国議会でリモート演説】
 16日、ウクライナのゼレンスキー大統領はアメリカ議会でリモート演説を行い、戦争終結への協力を訴えると、スタンディングオベーションが沸き起こった。3月1日のEU議会でのリモート演説、5日のイギリス議会でのリモート演説に次ぐもの。人気の喜劇俳優から2019年にウクライナ大統領に当選したゼレンスキー大統領(44歳)は、聞き手の心を惹きつける話術に長けている。
 17日、ゼレンスキー大統領はドイツ議会でリモート演説を行い、戦争を止めるのに協力を要請した。シュルツ首相は過去のナチス時代への反省から対ロ制裁に消極的であったが、ロシア天然ガスの搬入路ノルドストリーム2の創設を中止するとともに、スティンガー(対空ミサイル)500基の供与等の軍事支援を表明した。

【米中首脳の電話会談】
 17日、ロシアの侵攻が始まった2月24日から3週間目になる3月18日、米中首脳の電話会談が開かれると米中双方が発表した。バイデン大統領と習主席が直接話すのは昨2021年11月以来となる。ホワイトハウスは声明で「米中間で開かれた意思疎通のラインを維持する継続的な努力の一環であり、両首脳は両国競争の管理、ロシアによるウクライナへの戦争などについて話し合う」と述べた。
 18日のバイデン=習会談の内容は一部しか外へ出ていないが、ロシアへの援助をしないよう求めたバイデンの主張に対して、習主席は明言を避けた。双方の見解の相違にはなお溝があると見られる。

【<まん延防止>解除と<電力ひっ迫警報>】
 3連休明けの21日(火曜)、18都道府県に出ていた新型コロナウイルス対策の<まん延防止等重点措置>がすべて解除された。この日、横浜で桜開花の発表があった。平年より4日早い。この日、政府は東電管内に初の<電力ひっ迫警報>をした。16日の地震により火力発電所が止まったためである。東北管内等から電力の融通を受けるのに数日を要するという。
 21日にロシア外務省が日本の対ロ制裁に反発し、「日本との平和条約交渉を継続するつもりはない」としたことについて、岸田首相は22日の参議院予算委員会の質問に「極めて不当であり、断じて受け入れることができない。日本国として強く抗議をする」と述べた。この日午後の衆参両院で予算案が可決した。
 22日(火曜)は急に気温がさがり、最高気温は5℃に届かず真冬なみとなった。暖房を抑え、厚着をして耐えている。開花したばかりの桜は身を縮めている。


 この間、以下のテレビ番組を観ることができた。(1)週刊ワールドニュース(2月21日~25日)2月26日。 (2)週刊ワールドニュース(2月28日~3月4日)3月5日。 (3)Eテレ特集「原発事故・幻のシナリオ~埋もれた遮水壁計画」5日。 (4)NHKスペシャル「攻撃は止められるのか~最新報告 ロシア軍侵攻~」6日。 (5)BSスペシャル「韓国”七放世代”の大統領選」6日。 (6)NHKドキュメント「東日本大震災11年 それぞれの交”差”点~被災地の本音」7日。 (7)週刊ワールドニュース(3月7日~11日)12日。 (8)クローズアップ現代+「緊迫ウクライナ ▽迫る首都侵攻の脅威▽ 市民たちはいま」15日。 (9)ヒューマニエンス「”皮膚” 0番目の脳」16日。  (10)週刊ワールドニュース(14日~18日)19日。 (11)BS世界のドキュメンタリー「プーチンの道~その権力に秘密に迫る」20日。 

人類最強の敵=新型コロナウィルス(47)

 1月18日(火曜)午前に掲載した本連載(46)以降、急速に事態が進展した。東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏4都県と愛知、岐阜、三重の中部3県に加えて群馬、新潟、香川、長崎、熊本、宮崎の6県が加わり、政府の新型コロナ対策本部で正式に決定した。首都圏で宣言や重点措置の適用は2021年9月末以来となる。
 9日から適用している広島、山口、沖縄とあわせ適用の対象は16都県となる。期間は21日(金曜)午前0時から2月13日(日曜)までの約3週間とした。また大阪、兵庫、京都の3府県もいずれかが重点措置の適用が必要と判断すれば共同で政府に要請する方針で、対象地域はさらに増える可能性がある。政府は要請があれば迅速に判断するとしている。

【人流抑制より人数制限を!】
 19日(水曜)午前、基本的対処方針分科会終了後、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は記者団の取材に応じ、新たな変異型オミクロン株への対応策について「人流抑制より人数制限だ」と述べた。飲食時の人数を1グループ4人以下とすべきだとの見解も示し、こうした対策をとれば「ステイホームや店を閉めること、外出自粛などは必要ない」と言及した。
 オミクロン株は感染力が強いなどの特徴がある。尾身氏は「オミクロン株の特徴にふさわしい効果的でメリハリのついた対策を打つ必要がある」との考えが専門家の共通認識であるとも説明した。

【首相の3回目ワクチンはモデルナ製】
 19日の読売新聞は、岸田首相が自らの新型コロナウイルスワクチンの3回目接種で米モデルナ製を使用する方向で調整に入った。これまでは米ファイザー製を接種しており、2回目までと異なるワクチンを使う<交互接種>の有効性をアピールしたい考えと見られる。
 政府は、3回目接種の実施を急いでいるが、ワクチンの希望がファイザー製に偏れば供給が追いつかず、前倒しの計画が狂う恐れがあるため、交互接種の推進に向け、首相が啓発役を担う。首相は18日、首相官邸で「モデルナの活用が不可欠だ。交互接種の安全性、有効性も丁寧に説明していく」と記者団に語った。

【濃厚接触者の急増への対処】
 20日(木曜)の日経新聞は、「濃厚接触180万人試算、社会機能に支障 人手不足深刻に」の見出しで次のように伝えた。
▽感染力の強いオミクロン型の新型コロナウイルスが国内で急拡大し、社会機能の維持に支障が出る懸念が高まっている。1日4万人ペースの新規感染が続くと、試算では自宅待機などを求める濃厚接触者が今月内に180万人を超える。保育園の休園で保護者が欠勤し、人手が足りなくなる職場が続出する恐れもある。官民で柔軟な対応への転換を急ぐ必要がある。
▽全国の新規感染者数は19日に4万人を超えて過去最多となった。日本のコロナ対応では陽性者に10日間の療養を求め、濃厚接触者と認定された人にも自宅などでの10日間の待機を求めている。国立感染症研究所などの分析によると、陽性者1人につき濃厚接触者は5人ほどいる。
▽厚労省の定義ではマスク着用などの予防策をとらずに陽性者と1メートル以内で15分以上接触があった場合、濃厚接触者という扱いになる。保健所が逐一追跡する「積極的疫学調査」で突き止め、感染拡大防止のために待機を求めてきた。オミクロン型は拡大スピードが速い。従来型の対応を続けていては社会が回らなくなる懸念が強い。潜伏期間が比較的短く重症化率も低いとされる特性を踏まえれば、対策の転換が必要になる。
▽海外は柔軟に動いている。米国は濃厚接触者の隔離はワクチンを3回接種済みなら不要とした。英国も2回接種済みで隔離の必要がなくなる。
▽日本は保健所を中心とする対応がオミクロン型の急拡大に追いつかなくなってきた。日本医師会の釜萢敏常任理事は「時間をかけて積極的疫学調査をしている間に感染が広がってしまい、効果は限定的だ」と見直しを求める。
▽神奈川県は調査に優先順位をつける。「市中感染も含めて全ての陽性者を調べていく作業はマンパワーに限界がある」と判断した。保健所がリスクのある高齢者や障害者の施設など調査すべき対象を絞る。
▽神奈川県内の新規感染者数は1990人(18日時点)と前週比で5倍近くに膨らんだ。自宅療養者は既に約8000人に上る。県は一段の逼迫を想定し、軽症者や無症状者については自宅療養に入る前の医療機関の診断と保健所による聞き取りを省略することも検討する。患者自身が専用サイトで症状などを入力し、自宅療養に移行する想定だ。現場業務を簡略化し、負担を軽減することで医療が本来必要な人に届くようになる。
▽さらに社会機能を維持する観点から懸念されるのは保育園の休園の増加である。子どもで感染者や濃厚接触者が出ると、保護者に広く影響が及ぶ。過去の感染拡大局面では看護師や介護士などエッセンシャルワーカーが出勤できなくなる事例が相次いだ。厚労省によると1月13日時点で全面休園している保育所は86カ所。1週間前の7カ所から急増した。その後も全国で感染拡大が続き、14日以降も休園は増えているとみられる。休園数は第5波さなかの2021年9月2日の185を超える可能性もある。

【大阪、兵庫、京都の3府県も適用要請】
 20日、大阪府の吉村知事は新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」の適用を政府に要請する方針と府庁内で記者団に語った。大阪、兵庫、京都の3府県は19日、いずれかの府県が重点措置の適用が必要だと判断した場合、共同で政府に要請することで合意していた。近く3府県で足並みをそろえ要請する。
 吉村氏は府内の病床使用率が35%に達した場合に重点措置を要請すると表明していた。19日時点では31.3%だったが、感染者数等の状況次第では35%に達していなくても要請を判断する可能性に言及していた。大阪府では19日に6101人の新規感染者が確認され、2日連続で過去最多を更新していた。

【渡航規制の撤廃いかん】
 19日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスの専門家による13日の緊急委員会の結果を公表した。同委員会は新型コロナに関わる渡航規制を撤廃するか緩めるよう加盟国に勧告した。実施する価値がなく、経済的・社会的な負担を各国に強いるためだとしている。
 同委員会は変異型「オミクロン型」が発見された後に各国が導入した渡航制限が感染拡大を防げず失敗だったとして「こうした対策が効果的でないことが明らかになった」とした。ただ日本をはじめ複数の国で渡航制限が続いている。
 欧米では渡航制限の緩和に踏み切る動きも出ている。米国は2021年12月末、往来制限による抑制効果は乏しいと判断して南アフリカなどアフリカ南部8カ国からの入国制限を解除した。英国はオミクロン型対策として英国に入国する12歳以上の全ての人に義務づけていた検査を1月から廃止した。英政府は「オミクロンは英国内で支配的な変異型であり、対策はもはや妥当ではない」と理由を説明している。
 これに対して、木原誠二官房副長官は20日の記者会見で「引き続き2月末まで現在の水際対策の骨格を維持する」と説明、世界 保健機関(WHO)緊急委員会が各国に渡航規制の撤廃や緩和を求める勧告を出したことについて答えた。
 対策を続ける理由について「現時点で国内外における(変異型の)オミクロン型の感染状況は引き続き大きな差があることは明らかだ」と述べた。一方で「人道上、国益上の観点から必要な対応はとっていきたい」とも話した。政府は17日に国費留学生87人の新規入国を認めると公表した。

【まん延防止措置の効果をめぐり専門家の見解分かれる】
 24日の朝日新聞デジタル版は、「重点措置の効果は? 政府や専門家、見解定まらず」の見出しで、「オミクロン株流行下で重点措置を要請した首長が効果に首をひねる背景には、政府や専門家の見解が定まっていない現状がある」とし、次のように述べた。
▽松野博一官房長官は重点措置の効果について、24日の記者会見で「夜間滞留人口の減少など、人と人との接触機会の低減に効果を発揮することが期待をされる」と述べた。だが政府内には、飲食店を主に対象にした対策に対して「都市部では効果は限定的」(内閣府幹部)との見方もある。
▽政府分科会の専門家たちは一律の「人流制限」でなく、感染リスクの高い環境での対策を重視する方向性を打ち出した。専門家の一人は、「リスクの高い場面をもう一度認識してもらい、それをやめてもらう。重点措置の適用により、みなさんへのメッセージ効果はあるだろう」という。
▽ただ、感染力が強いオミクロン株が猛威を振るっていることから、より強い対策を求める声もある。国際医療福祉大の松本哲哉教授(感染症学)は「このままでは1日の感染者数が10万人を超える。このタイミングで期限を区切って緊急事態宣言のような厳しい制限をした方が良い。急激な感染者数の増加を抑えられればピークを下げることができる。この2週間が勝負だ」と強調した。
▽オミクロン株について「学校や職場、家庭内などいろんな感染経路がある。対策の一番はみんなが集まって長い時間過ごすことを避けること。学校ではリモート授業にしたり、生徒を半分ずつずらして登校したりすることが必要になる。職場ではリモートの導入率を上げることだ」とした。
▽一方、日本大危機管理学部の福田充教授は、出口戦略なき対策強化に否定的だ。重点措置の拡大や緊急事態宣言を出すことは「前例踏襲、型にはまったやり方」と言う。「重点措置などを出して人流を制限するのは、一番楽な危機管理。住民を信頼していないともいえる。警告や行動抑制のために重点措置を使うのは本来の手法と違う。今のままでは、この先も重点措置を繰り返し、その呪縛から逃れられない」
▽どうすればいいのか。「出口戦略を構築すべき時だ。それを示し、強い措置でなくても個人の自発的な行動で感染予防を実践する状況をつくる必要がある。対策を徹底することで飲食店は営業でき、イベントは開ける。社会は回せる。そのために自分たちの行動を変えていくとなれば、強い措置がなくてもコロナと共存していくことができる。首相をはじめとしたリーダーが課題を設定し、メッセージを発信していかねばならない」と訴える。

【まん延防止措置の適用、新たに18道府県へ】
 25日(火曜)、政府は新型コロナウイルスに対処する「まん延防止等重点措置」の対象に大阪など18道府県(大阪、兵庫、京都、北海道、青森、山形、福島、茨城、栃木、石川、長野、静岡、島根、岡山、福岡、佐賀、大分、鹿児島)を追加すると決めた。すでに適用中の東京など16都県と合わせて全国の7割超にあたる34都道府県へ拡大した。変異型「オミクロン型」の感染急増に対応する。追加地域の適用期間は27日から2月20日までの3週間。

【ウクライナをめぐり米ロ対立が解けず】
 25日(火曜)の日経新聞【ワシントン=坂口幸裕】によれば、米国防総省のカービー報道官は24日の記者会見で、緊迫するウクライナ情勢をめぐり、同国周辺の東欧地域に最大8500人規模の米軍を派遣する準備に入ったと明らかにした。ロシアによるウクライナ侵攻に備え、北大西洋条約機構(NATO)が出動を決断すれば即応部隊に加わる。
 翌26日(水曜)の日経新聞は、次のように伝えた。「ロシアによるウクライナ再侵攻を警戒し、米欧はウクライナ周辺の東欧地域に派兵する準備に入った。政治体制が異なる核保有国同士が直接対峙するのは冷戦期以来の事態だ。米ロが直接衝突する可能性は低いとみられるが、偶発的な事象をきっかけに緊張が高まりかねない。米欧が資源大国であるロシアへの制裁に踏み切れば、影響は世界経済に及ぶ。金融市場には動揺が広がっている。」

【訪問医らが散弾銃で打たれる】
 28日(金曜)の朝日新聞デジタル版によれば、埼玉県ふじみ野市で散弾銃を持った男が人質をとって住宅に立てこもった事件があり、埼玉県警は発生から約11時間後の28日朝、住宅に突入し、この家に住む無職渡辺宏容疑者(66)を殺人未遂の疑いで緊急逮捕した。
人質となっていた医師の鈴木純一さん(44)=東京都港区=は銃で撃たれており、死亡が確認された。ほかに撃たれるなどして2人が救急搬送された。
 捜査1課によると、逮捕容疑は27日午後9時ごろ、自宅で鈴木さんを散弾銃で撃ち殺害しようとしたというもの。渡辺容疑者は警察官とのやりとりで「訪問看護に怒っていた」と話したが、逮捕後は黙秘しているという。県警は容疑を殺人に切り替えて調べるとともに、遺体を司法解剖して死因を調べる。
 渡辺容疑者と同居していた母親(92)は、数年前から鈴木さんが院長を務める在宅クリニックを利用していた。26日に鈴木さんが死亡確認をしたという。鈴木さんら医療関係者7人は翌27日夜、呼び出しを受けて渡辺容疑者宅を訪れた。鈴木さんのほか、理学療法士の男性(41)が銃で撃たれ、意識不明の重体。30代の医療相談員の男性は催涙スプレーをかけられたとみられる。
 渡辺容疑者はその後、鈴木さんを人質に立てこもった。県警は固定電話で渡辺容疑者とやりとりしていたが、28日朝になって通話に応じなくなったため、午前8時ごろに玄関の鍵を壊して閃光(せんこう)弾を使い、住宅に突入した。その際、渡辺容疑者は6畳間のベッドと窓の間に身を隠し、鈴木さんは畳の上で仰向けに倒れていた。ベッドには母親の遺体が横たえられ、散弾銃1丁があったという。

【オミクロン株の急増と各国の対応】
ゼロコロナとウィズコロナ

【ミャンマー軍事クーデターから1年】
 2月1日のNHKのNラジ(「読むラジオ」)は次のように伝えた。「ミャンマーで軍がクーデターを起こしてから、きょう(2022年2月1日)で1年となる。きょうはミャンマーの全土で軍の統治を拒む市民が一斉に仕事を休んで外出を控える、「沈黙のストライキ」が行われた。一方、軍は、クーデターに伴って発令していた非常事態宣言を半年間延長することを明らかにし、今後も全権を掌握し続ける姿勢を示した。クーデターが起きてから、軍は抵抗するZ世代の若者など市民に対する弾圧を続けている。現地の人権団体によると、市民の犠牲者は、きのうまでに1503人に達し、1500人を超えた。また、およそ1万2千人が拘束されている。国際社会、そして日本には、何が求められているのか。最新のミャンマー情勢、そして抵抗を続けるZ世代の「今」を掘り下げながら考る。」

【ウクライナ情勢の緊迫】
アメリカ 東欧へ軍3000人派遣

【北京冬季五輪ひらかれる】
 2月4日(金曜)、北京冬季オリンピックの開会式が北京市内の国立競技場<鳥の巣>で開かれた。14年前の夏季オリンピックの開会式と同じ会場である。
 オリンピック外交と呼ばれる首脳同士の会談が開かれ、とくに4日にロシアのプーチン大統領と習主席の会談が注目を集めた。両首脳は中ロ関係や、国際社会の戦略的な安全と安定にかかわる一連の重要問題を巡り、踏み込んだ意見交換を行った。会談後、双方は「新時代の国際関係と世界の持続可能な発展に関する中華人民共和国とロシア連邦の共同声明」を発表した。プーチン大統領は天然ガスの中国への提供を提案、ウクライナ問題などを背景に中国にすり寄った形だが、中国側から実質的な支援は得られずに終わった。
 また5日(土曜)、習近平主席はカザフスタンのトカエフ大統領と北京で会談した。中国外務省の発表によると、1月に起きた騒乱を制圧して権力を完全に掌握したトカエフ氏に対し、習氏は「カザフスタンには国の安全と社会の安定を守る能力があると信じている」と語り、必要な支援を行う用意があることも伝えた。
 中国にとって、カザフスタンは経済政策「一帯一路」の要衝でもある。習氏は貿易や農業、インフラ建設などを優先して協力を進めるとともに、地域安全保障についても「意思疎通を強化したい」とした。

【日本のインフラ高齢化】
 6日(日曜)、日経新聞は「インフラの高齢化」のタイトルで次のように伝えた。「全国で道路や橋などのインフラの老朽化がとまらない。9人が亡くなった2012年の中央自動車道のトンネル崩落事故から9年。総点検して修繕・更新を進めるはずが、予算や人手の不足で対応は後手に回る。トンネルの約4割は早急に手当てしないと危険な状態のまま。人口減も見据えて優先順位をつけ、ばらまきを排した投資を急ぐ必要がある。センサーやドローンなど新技術を活用した保守点検の効率化もカギになる。」

【13都県で13日まで期限の延長】
 政府は10日、新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」に関し、東京など13都県で13日までとする期限の延長を専門家に諮る。12日から高知県も追加し、新たな期限をいずれも3月6日とする案を示す。変異型「オミクロン型」の感染拡大や病床使用率の高まりに対処する。

【北京オリンピック、日本勢の奮闘ぶり】
 11日(金曜)、北京冬季五輪 8日目のスノーボード男子ハーフパイプ(HP)の決勝が行われ、日本の平野歩夢(TOKIOインカラミ)が金メダルを獲得した。スノーボードで日本勢の優勝は初めて。
 17日(木曜)、スピードスケート女子1000メートルで高木美帆(日体大職)が1分13秒19の五輪新記録をマークし、個人種目では五輪初となる金メダルに輝いた。今大会の1500メートル、500メートル、団体追い抜きの3種目ですべて2位だった高木美は、冬季五輪の日本勢で最多の1大会4個目のメダル獲得。前回平昌大会と合わせると7個目で、夏冬を通じて日本女子の最多記録を更新した。この種目で前回2位の小平奈緒(相沢病院)は10位だった。
 20日(日曜)午後8時(日本時間同9時)から、北京市の国家体育場(愛称・鳥の巣)で閉会式が行われ、17日間の熱戦が幕を閉じた。日本勢は、冬季大会で最多を更新するメダル18個(金3、銀6、銅9)を獲得。新型コロナウイルス禍で調整に苦しんだ選手も多い中、同じくメダル数の最多を更新した昨夏の東京五輪に続いて高い競技力を示した。
 閉会式に先立ち、カーリング女子決勝でロコ・ソラーレの日本は英国に敗れ銀メダルだった。2位は日本勢の過去最高成績。スキー距離女子30キロフリーには石田正子(JR北海道)らが出場。アイスホッケー男子は決勝、フィギュアスケートはエキシビションがあり、羽生結弦(ANA)らが出演。

【昨年10~12月期のGDPは年率換算で(2期ぶりに)5.4%増】
 15日(火曜)の日経新聞は、「日本経済は一進一退の状況が続いている。2021年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算で(2期ぶりに)5.4%増とプラス成長を確保したが、緊急事態宣言で消費が大きく落ち込んだ7~9月期の反動という側面が大きい。米国やユーロ圏のGDPはすでにコロナ前の水準を超えたものの、日本はいまだ届かない。感染力の強いオミクロン型の流行に伴い、年明け以降の景気も急減速が避けられない」と伝えた。
 三溪園への来園者数も、ほぼこれと同じで、10~12月期はかなり増加したものの1~2月期は減少している。毎年、冬の来園者は減少するという季節変動要因があるが、これに景気の動向が加味されたと見られる。

【新技術<人工光合成>への取り組み」
 17日(木曜)の日経新聞によれば、三菱ケミカルやトヨタ自動車、東京大学などは、太陽光と二酸化炭素(CO2)を使って化学原料を作る新技術<人工光合成>の大規模実証実験を2030年に実施する。まず水素製造コストで石油由来の方法と同程度に下げる。同技術は石油に頼らず化学原料を作ることができ、脱炭素技術の切り札といわれ、産官学で研究開発を加速、40年までの実用化を目指す。

【緊迫するウクライナ情勢】
 17日(木曜)、ブリンケン米国務長官は国連安全保障理事会での演説で「ロシアは攻撃のための口実づくりを計画している」と訴えた。具体策として①テロリストによるロシア国内での爆破事件の捏造(ねつぞう)②ドローンによる民間人への攻撃の演出③化学兵器を使った偽装攻撃――などが想定されると強調した。
 「ロシアはこの出来事を民族浄化やジェノサイド(大量虐殺)と表現するかもしれない」とも予測。「ここ数日間、ロシアはすでに誤った主張を広め、世論の怒りを最大限に高めて侵攻を正当化する根拠をつくりあげようとしている」と非難した。ロシア政府は危機に対処する「芝居がかった緊急会議を招集するかもしれない」と話した。バイデン米政権はロシアによるウクライナ侵攻のおそれが高まっている根拠として国境周辺の軍増強に加え、意図的にデマを拡散させる偽装工作を挙げる。親ロ派への攻撃を自演する「偽旗作戦」と呼ばれる行動で、2014年にウクライナ領クリミア半島を併合した際にも侵攻を正当化する手段に利用したとして米欧は警戒する。
 18日(金曜)、各国の首脳らが外交・安全保障を話し合うミュンヘン安全保障会議が開幕した。ロシアがウクライナ国境に軍を集結させる中、西側の結束を示せるかが焦点。初日に登壇したブリンケン米国務長官はロシアを強く非難し、ベーアボック独外相は独ロのガスパイプラインへの制裁で踏み込んでみせた。
 ブリンケン米国務長官は「最近24~48時間を含むすべての出来事は、挑発行為をでっち上げ、それへの対処としてウクライナに攻撃を仕掛けるシナリオの一部だと深く懸念している」と、ロシアへの不信と警戒をあらわにした。
同じ18日。ロシアのプーチン大統領が「東部情勢が緊迫している」と述べた。米欧やウクライナでは、ロシアがウクライナ東部の一 部地域を占領する親ロ派を利用して挑発行為を仕掛け、侵攻の口実にするのではないかとみている。
 ブリンケン氏は「ロシアによるウクライナ侵攻が大規模でも小規模でも結束を維持する」と指摘。侵攻の程度にかかわらず、ロシア軍が国境を越えれば米欧が連携して強力な制裁に踏み切る姿勢を示した。
 19日の【ベルリン時事】によれば、ウクライナのゼレンスキー大統領はドイツで行われているミュンヘン安全保障会議で演説し、ロシアの軍事的脅威を強調すると同時に、ウクライナを守る欧米の決意も不明確だと批判。ウクライナの欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)加盟を認めるかの「回答」を求めた。
 ゼレンスキー氏は、ウクライナがロシアから欧州を守る「盾」になってきたと強調。ウクライナへの武器供与を拒否するドイツが、ヘルメット5000個を送ると表明したことに触れ「どんな支援も感謝するが、善意の寄付を求めているのではない」と語り、支援は欧州諸国が欧州の安全のためになすべき貢献だと訴えた。 

【まん延防止等重点措置を徐々に解除】
 18日(金曜)、政府は新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」に関し沖縄など5県への適用を20日の期限で解除する案を専門家に諮る。適用を解除するのは要請があった山形、島根、山口、大分、沖縄の5県。3月6日まで延ばすのは北海道、青森、福島、茨城、栃木、石川、長野、静岡、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、福岡、佐賀、鹿児島の16道府県と、和歌山県を合わせた計17道府県。このほか東京など14都県も3月6日を期限としている。
 全国の新規感染者数は15日までの1週間で前の週と比べ1割減った。厚労省の専門家組織「アドバイザリーボード」の脇田隆字座長は「2月上旬にピークを越えた」と分析した。死者数は増加が続いており、政府は医療提供体制が逼迫しないかを見極める。

【世論調査による岸田政権の評価】
 19日(土曜)、毎日新聞と社会調査研究センターがおこなった全国世論調査によれば、岸田内閣の支持率は45%で、1月22日の前回調査(52%)から7ポイント下落、2021年10月の政権発足以降最低となった。不支持率は46%で前回(36%)から10ポイント増加し、支持率と不支持率がほぼ並んだ。
 個別課題の評価では、(1)新型コロナウイルス対策を「評価する」の回答は27%(前回31%)で、「評価しない」の51%(同39%)を大幅に下回った。(2)まん延防止措置などの規制をさらに強化すべきかの問いでは、「強化すべきだ」は28%にとどまり、「緩和すべきだ」は40%であった。(3)ワクチン接種が遅いと思うかの質問では、「遅いと思う」が63%に上り、「遅いとは思わない」は29%。岸田政権が3回目接種に出遅れたことも、内閣支持率低下につながった可能性がある。
 政党支持率は、自民党35%(前回30%)▽日本維新の会16%(同18%)▽立憲民主党8%(同9%)▽国民民主党4%(同4%)▽共産党4%(同3%)▽れいわ新選組3%(同4%)▽公明党3%(同3%)――などで、「支持政党はない」と答えた無党派層は25%(同25%)だった。
 夏の参院選の比例代表で、どの政党に投票したいか聞いたところ、自民党が最も多く31%(前回27%)だった。以下、日本維新の会19%(同21%)▽立憲民主党9%(同11%)▽共産党5%(同5%)▽国民民主党4%(同4%)▽れいわ新選組4%(同3%)▽公明党3%(同4%)▽NHK受信料を支払わない国民を守る党1%(同1%)▽社民党1%(同1%)、「わからない」は20%(同22%)。

【ベラルーシ派遣のロシア軍が撤収?】
 20日づけの朝日新聞デジタルによると、ウクライナの北隣ベラルーシで、ロシアとベラルーシが実施していた合同軍事演習が20日、終了する。派遣された3万人ともされるロシア軍が撤収するかどうかが今後の焦点となる。欧米は、ロシアのウクライナ侵攻は近いとみて警戒を続けている。
 ロシア国防省によると、10日に本格的に始まった合同軍事演習はウクライナ国境付近を含むベラルーシ領内の広い地域で行われた。8千キロ以上離れた極東や東シベリアからもロシアの主力戦闘機Su35や地対空ミサイルシステム「S400」など最新兵器が展開した。
 欧米はロシア軍が3万人規模の兵力をベラルーシに送り込んだとみている。ウクライナ国境からキエフまでの距離は約100キロで、動向を注視していた。
 ロシアは演習目的を「純粋に防衛的」(プーチン大統領)と主張。19日には米国やドイツなど16カ国の武官や60人の外国メディアに公開した。ロシア国防省は17日、演習終了後、部隊は通常通り拠点に戻ると発表していた。

【プーチン大統領、ウクライナ東部の2州の独立を承認】
 21日(月曜)、ロシアのプーチン大統領は安全保障会議を開催し、親ロシア派武装勢力が実効支配するウクライナ東部の一部地域について独立を承認したと発表、親ロ派支配地域にロシア軍を派遣する方針も決めた。
 臨時に開催した安保会議では、親ロシア派勢力が支配する地域の独立承認問題を諮問した。対象は親ロ派武装勢力がウクライナ東部で一方的に独立を宣言した「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」。安保会議副議長のメドベージェフ前大統領ら政府幹部が相次いで独立を承認すべきだとプーチン氏に促した。
 プーチン氏は親ロ派の独立を承認する大統領令に署名し、2地域とロシアとの友好相互援助条約にも署名した。会議後のテレビ演説でプーチン氏は、北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大を求めたロシアの提案が「無視された」として欧米の対応を批判した。また、ウクライナ軍からの攻撃によって2地域での紛争が激化していると指摘、「(2地域の)情勢は危機的な状況にある」などと承認の正当性を主張した。
 これらのロシアの措置に対して、ウクライナや米欧が一方的な決定として反発するのは必至である。

【】
 22日の日経新聞によれば、ロシアのプーチン大統領は21日の大統領令で、親ロシア派武装勢力が実効支配するウクライナ東部の2地域にロシア軍を派遣するように国防省に指示した。派遣の対象地は、前日に独立を宣言し、プーチン大統領が承認した「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」である。プーチン大統領は平和維持が目的と主張して、ウクライナへのロシア軍の展開を正当化した。派兵命令で同国を巡る緊張は一段と高まるに違いない。


 この間、以下のテレビ録画を観ることができた。同時進行する現代史を書くためにテレビ番組は欠かせないが、多忙のなかで番組表を見つつ、どの番組が必要かを厳選するのは難しい。撮った録画のなかからさらに厳選して以下のものを観た。
(1)NHKスペシャル「証言ドキュメント 永田町 権力の興亡 コロナ禍の首相交代劇」1月16日。 (2)BS1「大島桜さんのお引越し」19日。 (3)NHKスペシャル「追跡! サイバー犯罪組織 ▽コロナ禍で狙われる個人情報」20日。 (4)NHK総合 歴史探偵「本当に鎖国だったのか」21日。 (5)BS7 SDGsミライ 人々を幸せにする仕掛け~新ビジネスのヒント!! 21日。 (6)Eテレ SWITCHインタビュー 達人達「YOSHIKI×レスリー・キー」22日。 (7)Eテレ ズームバック×オチアイ 落合陽一 オードリータンにふたたび会う(後編) 22日。 (8)週刊ワールドニュース(1月17日~21日)22日。 (9)BSプレミアム ワイルドライフ「野生へのまなざし 今森光彦 里山・命の輪に生かされている」24日。 (10)BS1スペシャル「気候変動を食い止めたい 若者たちが挑むCOP26」27日。 (11)NHK総合 歴史探訪「戦国レジスタンス 村上海賊&雑賀衆」28日。 (12)テレビ朝日 「タモリステーション~二刀流 大谷翔平の軌跡~」28日。 (13)Eテレ「先人たちの底力 知恵泉「雪舟 失意の都落ち?! 天才画家の逆襲」2月1日。 (14)テレ朝「第36回国民教協スペシャル ハマのドン“最後の闘い-博打は許さない―」5日。 (15)ETV特集「若者たちの貧困パンデミック」5日。 (16)BS1 週間ワールドニュース(1月31日~2月4日)5日。 (17)BS1 国際報道2022 「ミャンマー 街の中に見る抵抗のサイン」7日。 (18)NHKプロフェッショナル(選)「覚悟の挑戦、ノーベル賞の先へ~研究者・山中伸弥」8日。 (19)BSスペシャル アナザーストーリーズ「立花隆vs田中角栄」8日。 (20)BSフジLIVEプライムニュース「小池都知事の新株対策 首相へ”要望書“の中身 都vs政府のくい違いは」10日。 (21)BSプレミアム「美の壺スペシャル「庭園」」12日。 (22)TV朝日「週刊ニュースリーダー」12日。 (23)BSプレミアム 歴史秘話ヒストリア「日本誕生 知られざる物語 日本書紀 1300年」11日。 (24)週刊ワールドニュース(2月7日~11日)12日。 (25)TBS 情熱大陸「葉っぱ切り絵作家/リト 癒しが宿る”一枚の葉っぱ“に秘められた物語」13日。 (26)TV朝日 サンドウィッチマン&芦田愛菜「この博士ちゃん」2時間スペシャル(昭和博士厳選 泣ける名曲)19日。 (27)週刊ワールドニュース(2月14日~18日)19日。 (28)

人類最強の敵=新型コロナウイルス(41)

【新たな世界自然遺産】
 7月26日(月曜)、嬉しいニュースが飛び込んできた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は多くの固有種が生息する「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄)の計約4万3千ヘクタールを世界自然遺産へ登録を決めた。日本の世界遺産は文化遺産も合わせて24件目、自然遺産としては2011年に登録された「小笠原諸島」(東京)に続き5件目である(日本の文化遺産は計19件)。
 イリオモテヤマネコ、アマミイシカワガエルなど貴重な動物が多く生息、奄美大島や西表島などにはマングローブ林も広がる。正式登録で観光客の急増が予想されるが、密猟の問題も続いている。該当の自治体は保全策などを強化する方針。
 なお世界自然遺産の日本からの新規登録は今回が最後になる公算が大きい。他にも過去に候補として検討された地域はあるが、景観や地形の特異性を比較すると海外の事例に及ばず、独自性を打ち出しにくいとして見送った。環境省は今後、奄美・沖縄を含め登録済み遺産の保全に力を入れる。

【黒い雨の上告断念】
 同じ26日、広島への原爆投下後に「黒い雨」を浴びたと訴えた84人全員を被爆者と認めた広島高裁判決について、菅首相が上告を見送る考えを示した。政府内で広がる「上告不可避」の見方から一転しての首相判断。背景に何があったのか。
 同日の朝日新聞デジタルは、以下のように伝えた。「国側から見れば、高裁判決は一審判決よりもさらに被爆者の認定を広くとり、認定しない場合、行政側にその理由を立証する責任を負わせるような内容だったからだ。…判決は、空気中の放射性物質を吸ったり、汚染された水や野菜を飲食したりする「内部被曝」によって健康被害を受ける可能性も指摘した。
 国側は裁判で、内部被曝したとしても放射線量は低く、健康被害は認められないと主張してきた。…首相周辺は「最後は首相の決断だった」。複数の官邸幹部らは「県と市を説得できなかったことが大きい」と明かす。23日以降も上告に理解を得られなかったといい、政府が突出して原告と対峙する構図になることを懸念したとみられる。
 官邸関係者は「衆院選が近く、批判を招きかねない上告は難しかったという事情もある」と語った。首相は記者団に「判決には受け入れがたい部分もある」と、近く出す談話で政府の見解を整理する考えも示した」。
 なお8月6日の広島平和記念日に広島市を訪れた菅首相は、改めてこの問題に触れ、84人以外の同じ被害者の救済にも尽くしたいと述べた。

【東京の感染者数がまた急拡大】
 同じ26日の都内の感染者は1429人と、月曜としては過去最大となった。4度目の緊急事態宣言が発せられて2週間が経った日にあたる。また東京五輪の選手・関係者の新規感染者は153人となった。

 27日(火曜)、都内の感染者が2848人と過去最多となった。これまでの最多は感染拡大の<第3波>にあった1月7日の2520人。
 年代別では20代が951人と最も多く、30代が610人、40代が466人、重症化リスクの高い65歳以上の高齢者は78人。
 ワクチン接種の現状は、全国では1回接種が総人口の36.9%、2回が25.5%、65歳以上の高齢者ではそれぞれ84.6%、68.2%と高い。東京ではそれぞれ34.5%と21.8%と全国平均より低く、最多の山口県ではそれぞれ48.0%と34.6%であり、2位の和歌山県ではそれぞれ46.1%と33.2%である。

 28日(水曜)、新型コロナウイルスの感染者が新たに3177人確認されたと発表した。2日連続で過去最多を更新し、全国の新規感染者も初めて9000人を超えた。首都圏の感染拡大が目立ち、埼玉、千葉、神奈川の3県はそれぞれ870人、577人、1051人で、いずれも最多。感染力が強いインド型(デルタ型)と呼ばれる変異ウイルスの拡大が背景にある。
 3県は国に緊急事態宣言を要請する方向で調整を継続。西村経済財政・再生相は同日の衆院内閣委員会で「(3県から)正式な要請があれば速やかに検討し、機動的に対応したい」と述べ、29日にも3県知事と会談する予定を明らかにした。

 29日(木曜)、新型コロナウイルスの感染者が新たに3865人確認されたと発表した。前日に続き3千人を上回り、3日連続で過去最多を更新した。直近1週間平均の新規感染者は約2224人で、前週(約1373人)の161.9%だった。また全国で初めて1万人を超えた。28日に初めて9000人を超えたのに続き、2日連続で過去最多となった。神奈川県は過去最多となる1164人、埼玉県が864人、千葉県が576人であり、首都圏4都県の感染者数は計6469人で、全国の約6割を占めている。
 感染者で目立つのは50代以下。東京都の新規感染者を年代別にみると、20代が1417人と最も多く、30代が782人、40代が612人、50代が407人で続いた。重症化リスクの高い65歳以上の高齢者は105人である。

 同じ29日7時半発の日経新聞デジタルによれば、政府は30日、埼玉、千葉、神奈川3県と大阪府に新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を発令する方針を専門家に諮る。期間は8月31日までとし、8月22日までとしていた東京都と沖縄県への宣言もそれに合わせて8月31日まで延長する。飲食店での酒類提供は一律停止とする。宣言の対象地域を広げ、首都圏を中心とする感染が全国に広がるのを抑える。
 首都圏3県や大阪府には現在、宣言に準じる「まん延防止等重点措置」を適用しており、これを8月2日から宣言に切り替える内容だ。宣言地域は東京都、沖縄県とあわせて計6都府県になる。北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県には新たに重点措置を適用する。専門家が了承すれば、政府は7月30日に新型コロナ対策本部で正式に決める。その後、菅首相が記者会見する。
 予定通り政府は30日午前、埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県と大阪府に新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を発令する案を専門家に諮問した。期間は8月2~31日まで。8月22日までの東京都と沖縄県への宣言も31日まで延長する。飲食店の酒類提供は一律停止する。また北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県は宣言に準じた対策をとれる「まん延防止等重点措置」を新たに適用する。
 西村氏は分科会で「このまま高いレベルで陽性者の数が続けば病床逼迫につながっていく」と強調した。宣言などの期間を8月31日までにした理由を「現役世代にもワクチン接種が進むことによる効果を見極めるため」と説明した。

 30日午後、夕方からの菅首相記者発表を前に、感染症対策分科会の尾身会長が首相と面談し、「国民に理解と協力をいただくため、政府としてしっかりとしたメッセージを発信してもらいたい」などと求めた。過去にない感染爆発に直面してもなお、首相はワクチン効果による高齢者の感染者数減といった「楽観論」を強調、これに対して専門家らは国民と危機感を共有するよう釘を刺した形。また、医療現場では逼迫が起きており、「これまでのコロナとの戦いの中で最も危機的な状況」と首相に説き、首相は「ご提案をしっかりと受け止めて対応していきたい」と応じたという。面談には、尾身氏のほか、厚生労働省に助言する専門家組織の脇田隆字座長、内閣官房参与の岡部川崎市健康安全研究所長が参加。数日前に尾身氏側から西村氏を通じて要望していた。

 ところが午後7時からの記者発表で首相は、「東京の感染者数は過去最高。強い危機感を持って対応している」と語ったものの、かねて首相が高齢者の感染者数の減少を強調していることが「大丈夫だというメッセージを与えているのでは」と問われると、「ワクチンによって大幅に減少していることは事実だ。そうしたことを示していくことも仕事だ」と述べた。

 また小池都知事は27日、記者団から「宣言の効果が見えていない」と問われると、「じわっと重症者が増えているのは気になる」などとしつつ、「五輪も各競技で日本人の選手もすばらしい成績を収めている」などと、五輪に話題を転じた。

 政治リーダーたちが発するこうしたメッセージに対して、尾身会長ら専門家は強い警鐘を鳴らす。「今の最大の危機は、社会の中で危機感が共有されていないことだ」。29日の参院内閣委員会で尾身氏はそう訴えた。「このまま危機感が共有されなければこの感染状況は更に拡大する」とも語った。さらに「医療逼迫を一つの指標だけで判断するのは全体を見誤る」と指摘した。現状は、重症者数や入院者数、自宅療養者数、救急外来の「たらい回し」などが増加傾向だとし、首相が強調する「人流減」も「期待されるほどのスピードではない」とクギを刺した。

 31日(土曜)、東京都は新型コロナウイルスの感染者を新たに4058人確認したと発表、初の4千人台で、1日あたり過去最多。3千人を超えるのは4日連続。31日までの1週間平均の感染者数は2920人で、前週比は217%。

 4日(水曜)、東京都は新型コロナウイルスの感染者が新たに4166人確認されたと発表。7月31日の4058人を上回り、過去最多となった。直近1週間平均の新規感染者は約3478人で、前週(約1954人)の178.0%だった。

 5日(木曜)午後6時現在、国内の新規感染者数は1万4968人が確認され、前日に続き1日当たりの過去最多を更新。都道府県別では、東京5042人、神奈川1846人、埼玉1235人、沖縄648人で過去最多を更新した。神奈川では、新規感染者数が7月28日から9日連続で1千人を超えている。

【日本勢の金メダル】
 前号の「人類最強の敵=新型コロナウィルス(40)」に次いで、7月26日(月曜)、4日目以降の東京五輪の日本勢の金メダルを掲げる。金メダルだけを挙げるのは、あくまでも紙幅の制限とバランスのためであり、金メダルがすべてと思っているわけではない。私自身が好きで柔道、ラグビー、テニスとかじってきて、いまもテニス抜きの生活は考えられない。<負け>があっての<勝ち>であることは身に染みて知っている。

 いな、そもそもスポーツには勝敗以前の役割がある。球技の起源と言えば19世紀中ごろイギリスで<気晴らし>や<気分転換>を意味する“sport”がサッカーやラグビー等の近代スポーツ、とくに球技を指すようになった(拙著『イギリスとアジア 近代史の原画』 岩波新書 1980年)。こう書いた40余年も昔の記憶がよみがえる。

 ほぼ同じ19世紀なかごろ、<武術>を<武道>に変換させたのが明治日本である。さまざまな起源をもつ種目がオリンピックに結集し、世界一を争う。観ないわけには行かない。21年7月23日(金曜・祝)から8月8日(日曜・祝)まで17日間、史上最多の33競技339種目が、札幌大通公園のマラソンを含め、計43会場で展開される。

 そこで以下、日本勢の金メダルだけを記すことする。
 7月25日(日曜)、3日目、柔道で男子66キロ級の阿部一二三(ひふみ)と女子52キロ級の阿部詩(うた)の兄妹がそろって金メダルに輝いた。競泳女子400メートル個人メドレーでは大橋悠依(ゆい)が優勝。新競技のスケートボード男子ストリートでは堀米雄斗(ゆうと)が初代王者になった。
 7月26日(月曜)、4日目、
 (1)柔道男子73キロ級の大野将平(日本武道館)。2016年リオデジャネイロ五輪に続き、2大会連続の金。
 (2)新種目の卓球混合ダブルス(東京体育館)、水谷隼(木下グループ)、伊藤美誠(スターツ)組が許昕、劉詩雯組(中国)を破り、日本卓球界初の金。
 (3)新競技スケートボードの女子ストリート(有明アーバンスポーツパーク)で、13歳の西矢椛(にしや・もみじ、ムラサキスポーツ)が日本勢最年少で金メダルを獲得。

 27日(火曜)、5日目、柔道男子81キロ級の永瀬貴規(旭化成)が決勝でモラエイ(モンゴル)を延長戦の末に破り、金メダル。柔道男子は今大会4個目の金メダル。なおテニス女子シングルスでは世界ランキング2位の大坂なおみ(日清食品)が3回戦で同42位のマルケタ・ボンドロウソバ(チェコ)に1-6、4-6で敗れる波乱となった。
 同じ日午後10時3分。横浜スタジアムで高く打ち上がったボールが捕手のミットに収まると、ベンチから選手が駆け出した。ソフトボール日本代表が決勝で米国を2―0で破り、13年越しの連覇を果たした金メダル。

 28日(水曜)、6日目、柔道女子70キロ級で五輪初出場の新井千鶴が金メダル。日本勢は初日から5日連続の金メダル獲得。
競泳女子200メートル個人メドレー決勝で大橋悠依(25)が2分8秒52で金メダルを獲得。大橋は25日の400メートル個人メドレーでも金メダルに次いで今大会2個目のメダル獲得。
 体操男子個人総合で初出場の19歳、橋本大輝(順大)が金メダル。

 29日(木曜)、7日目、柔道女子78キロ級で初出場の浜田尚里(自衛隊)が決勝でマドレーヌ・マロンガ(フランス)を破り、金メダル、また男子100㌔級で初出場のウルフ・アロン(了徳寺大職)が決勝で趙グハム(韓国)を下し、金メダル。

 30日(金曜)、8日目、女子78キロ超級で初出場の素根輝(パーク24)が決勝でイダリス・オルティス(キューバ)を破り、金メダル。これで今大会の日本勢の金メダル総数が16個となり、1964年東京五輪と2004年アテネ五輪に並ぶ最多タイとなった。
 フェンシング男子エペ団体(幕張メッセ)の日本は決勝でROCを破り、同競技で日本勢初の金メダル。これで今大会の日本勢の金メダルは17個となり、1964年東京、2004年アテネの両五輪を上回る史上最多となった。

 31日(土曜)は9日目、金メダルなし。柔道混合団体で惜しくもフランスに敗れて銀メダル。8月1日(日曜)と2日(月曜)も金メダルなし。

 8月3日(火曜)、12日目、女子フェザー級の入江聖奈(日体大3年生)が2019年世界選手権覇者のネスティー・ペテシオ(フィリピン)を5-0の判定で破り(国技館アリーナ)、日本女子初の金メダル。ボクシング女子は2012年ロンドン大会から採用された種目。女子柔道52キロ級で金メダルに輝いた阿部詩(日体大の3年生)と同学年。
 体操男子の種目別鉄棒(有明体操競技場)で橋本大輝(順大)が金メダル。なお13日以降については後述。

【デルタ株が世界で大半となる】
 新型コロナウイルスの変異株のうちインドで見つかったデルタ株が世界的に勢いを増し、従来株と置き換わりつつある。デルタ株の特徴は感染力が強いこと、従来株やイギリスで見つかった変異株(アルファ株)に比べて1.4倍から1.8倍にのぼるという。
 
 イスラエルではワクチン接種が人口の70%を超えると感染者数が減少したが、最近になって感染者が急増し始めた。原因はデルタ株のためと見られ、3回目のワクチン接種に踏みきった。

 8月2日、日本で4回目の緊急事態宣言が出て3週間たつが、新型コロナウイルスの感染者の増加が続いている。感染拡大の目安となる<実効再生産数>(1人の感染者から何人に感染が広がるかの目安となる推定値)は東京都内で1.4台に達し、年明けの第3波を上回る勢いである。感染力の強いインド型(デルタ型)が広がるうえ、過去の宣言後と違い、人出の減少も鈍い。

 そのため政府は患者の急増に対応し、入院は重症者や重症化リスクの高い人を中心とし、「それ以外は自宅療養を基本とし、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備する」方針を決めた。また家庭の事情などで自宅療養できない場合に限り宿泊施設を利用してもらう体制に改める。すなわちリスクの高い人を中心に幅広く入院する従来の原則の大転換である。

 同時に菅首相は治療薬<抗体カクテル療法>(7月19日、中外製薬の<抗体カクテル療法>の製造販売を特例承認)を入院患者以外も使用できるようにする方針も示した。現在、外来診療は対象外で「在宅患者も含めた取り組みを進める」と述べ、「50代以上や基礎疾患のある人に積極的に投与する」とも強調した。早期退院につなげて病床を確保する狙いもある。<抗体カクテル療法>とは、軽症・中等症の患者に2種類の抗体を点滴し、重症化予防が期待される。在宅療養者への使い方は自治体と協議して検討する。

【ファッション業界のGX】
 3日の日経新聞電子版は、「グッチやシャネルも脱炭素 素材に配慮、デザイン洗練」の見出しで次のように報じた。
「温暖化ガスの排出が多いとされるファッション業界が、グリーントランスフォーメーション(GX=緑転)を急いでいる。環境負荷の軽い商品を好む<緑の消費者>が欧米を中心に増えているからだ。環境に配慮した新素材の活用が始まり、単なるリサイクルではなくデザイン性も備えた<アップサイクル>も広がっている。
 スイスの環境コンサルティング会社クアンティスが18年に「ファッション産業は世界で排出される温暖化ガスの8%を占める」という衝撃的な調査結果を公表。服飾企業などが連携して対応するよう求めた。
 ファッション業界のGXは2019年8月、仏南西部ビアリッツで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)が起点となった。グッチなどを手掛ける仏高級品大手のケリングの主導で、50年までのカーボンゼロを掲げる「ファッション協定」を提案し、約150ブランドが賛同・署名。
 この<ファッション協定>は気候変動、生物多様性、海洋保護の3つを柱に実践目標を掲げた。「具体的には25年までに、原材料の25%を持続可能な素材にする。また、再生可能エネルギーへの転換を25年までに50%、30年までに100%に設定。50年までに「温暖化ガス排出量ゼロを目指す」とした。
 高級ブランドではケリングを筆頭に、バーバリーやシャネル、フェラガモなどが名を連ねた。スポーツではナイキやアディダス、カジュアルではギャップやインディテックス(ザラ)なども参加。発表から1年後の20年10月には、加盟企業が14カ国60社、ブランド数は200以上に膨らんだ。」
 
【トヨタが最高益を記録】
 4日(水曜)、トヨタ自動車が発表した2021年4~6月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比5.7倍の8978億円だった。新型コロナウイルスが広がる前の19年4~6月期の6829億円を超え、4~6月期としては最高となった。コロナの影響が続く中で新車の需要が回復。北米や中国、日本といった世界の主要市場で販売が増えた。車業界の半導体不足の影響も限定的にとどめた。
 売上高は前年同期比73%増の7兆9355億円、営業利益も72倍の9974億円と事前の市場予想平均(QUICKコンセンサス)の7327億円を上回った。15年4~6月期の最高益(7560億円)を更新し、すべての四半期ベースで比較しても最高になった。トヨタの純利益は21年3月期に1社で上場する製造業の1割以上を占めた。業績の動向が日本経済に与える影響は大きい。

 7日(土曜)の日経新聞は「NYダウ続伸144ドル高 最高値更新、米雇用回復を好感」の見出しで「ダウ工業株30種平均が過去最高値を更新。終値は前日比144ドル26セント(0.4%)高の3万5208ドル51セント。6日発表の米雇用統計で就業者数が市場予想を上回り、景気回復への期待が強まったため」と伝えた。

【日本勢の金メダル~続報】
 4日(水曜)、13日目、女子パーク決勝(有明アーバンスポーツパーク)で2018年世界選手権優勝の19歳の四十住さくら(よそずみ・さくら、ベンヌ)が金メダルを獲得。予選は4位で通過したが、決勝では難度の高い技を成功させ、60.09点と高得点をマークした。
 女子レスリング62キロ級の川井友香子(ジャパンビバレッジ)が決勝でティニベコワ(キルギス)を破り、金メダル。

 5日(木曜)、14日目、レスリング女子57キロ級(幕張メッセ)で2016年リオデジャネイロ五輪63キロ級女王の川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)が決勝でクラチキナ(ベラルーシ)を下し金メダル。妹の友香子(ジャパンビバレッジ)が4日の62キロ級を制しており、同大会姉妹金メダル。

 6日(金曜)、15日目、五輪初実施の空手男子形決勝(日本武道館)で喜友名諒(劉衛流龍鳳会)がキンテロ(スペイン)を破り、金メダル。
 同じ日、レスリング女子53キロ級の向田真優(ジェイテクト)が決勝で龐倩玉(中国)を破り、金メダル。

 7日(土曜)、16日目、レスリング男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗(自衛隊)が決勝でアリエフ(アゼルバイジャン)を破り、金メダル。
 同じ日、レスリング女子50キロ級の須崎優衣(早大)が孫亜楠(中国)を破り、金メダル。
野球(横浜スタジアム)で日本がアメリカを2:0で破り金メダルを獲得、日本勢金メダルの有終の美を飾った。

 8日(日曜)晩、17日間にわたる競技を終了し、国立競技場で閉会式が行われた。
 日本の獲得したメダルは金27、銀14、銅17の計58個と史上最多(過去最多は2016年リオデジャネイロ五輪の41個)。金メダル数は米国(=205個)、中国(=166個)についで世界3位(=27個)である。獲得メダル数の4位以下は、インド(98個)、ドイツ(94個)、ロシア(91個)、ルクセンブルグ(86個)、ノルウェー(66個)、アイスランドとフランス(次期開催国)が65個で並び、世界平均は17個。メダルがゼロの国と地域が37ある。

【温暖化の危険性深まる】
 以前(今年5月)、世界気象機関(WMO)は27日、2025年までに「産業革命前に比べて、平均気温が1.5度以上高い」年が発生する可能性が40%以上あるとの見通しを発表。現状の温暖化ガス削減に向けた取り組みでは、深刻な気候変動を食い止められない恐れがあることが改めて浮き彫りとなったとした。
 8月9日の日経新聞は「気温1.5度上昇、10年早まり21~40年に IPCC報告書」の見出しで、「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は9日、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021~40年に1.5度に達するとの予測を公表した。18年時点の想定より10年ほど早い。人間活動の温暖化への影響は「疑う余地がない」と断定。気温の上昇幅は、2041~60年に1.6~2.4度、2081~2100年に1.4~4.4度に跳ね上がる。自然災害を増やす温暖化を抑えるには二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする必要があると指摘した。
 平均気温が上がると、異常気象が増えるとし、(ア)現在(1℃)の場合、(イ)1.5℃の場合、(ウ)2℃の場合の3つのケースを比較した。(1)熱波等の極端な高温は(ア)の場合で気温が+1.2℃、発生率が4.8倍であるが、(イ)の場合では気温が+2℃で発生率が8.6倍、(ウ)の場合になるとで気温が+2.8℃で発生率が13.9倍となると予測する。言い換えれば熱波の発生率がうなぎのぼりとなり、山火事の頻度等がいちじるしく高まる。
 ついで(2)極端な大雨については、(ア)の場合に雨量が+6.7%で、発生率が1.3倍であるが、(イ)の場合には雨量が+10.5%で発生率が1.5倍となり、(ウ)の場合には雨量が+14で発生率が1.7倍と予測する。土砂災害等が恐ろしい。
 ほかに(3)農業に被害を及ぼす干ばつの発生率は(ア)が1.7倍、(イ)が2倍、(ウ)が2.4倍とする。増え続ける世界人口に対して、干ばつによる農業被害が大きくなれば、<飢饉>が多発する。

【自然科学の論文で中国が世界一に】
 10日、文部科学省の科学技術・学術政策研究所が発表した最新の報告書によれば、「自然科学分野の論文の注目度の高さを示す指標で中国が初めて世界一になった。研究者による引用回数が上位10%に入る「注目論文」の数で初めて米国を抜いた。分野別でも8分野中、材料科学や化学、工学など5分野で首位に立った。学術研究競争で中国が米国に肩を並べつつあり、産業競争力の逆転も現実味を帯びてきた」という。同研究所が英調査会社クラリベイトのデータを基に主要国の論文数などを3年平均で算出・分析したもの。
 注目論文のうち上位1%に当たる「トップ論文」でも、中国のシェアは25%と米国の27.2%に肉薄した。文科省科学技術・学術政策研究所の担当者は今後について「中国のいまの勢いは米国を追い抜く様相を見せている」と指摘する。
 注目論文の世界シェアを分野ごとにみると、材料科学で中国は48.4%と米国(14.6%)を大きく引き離した。化学が39.1%(同14.3%)、工学は37.3%(同10.9%)などと計5分野で首位となった。
 一方、米国は臨床医学(34.5%)や基礎生命科学(26.9%)で首位となった。バイオ分野で強さが目立つが、産業競争力に直結する分野で中国が強さを示した。
 これに対して日本は、論文の質・量ともに順位が低下し、科学技術力の足腰の弱さが浮き彫りになった。注目論文のシェアではインドに抜かれ、前年の9位から10位と初めて2ケタ台に後退した。トップ論文のシェアも9位と前年から横ばいだった。10年前と比べた減少率はともに10~15%と大きく、論文の質が相対的に下がっている。
 日本の全体の論文数は6万5742本と米中の20%前後の水準にとどまった。米中のほか韓国、ドイツ、フランス、英国などは10年前と比べ増えているが、日本は横ばいにとどまる。長期化する研究力低下に歯止めをかけるのに「特効薬」はなく、衰退を食い止めるのは難しい。
 知人の物理学者が言うには、中国はサイエンスよりも工学に力を入れており、投入金額が半端ではないので量的優位は続くであろう。瞬間的な値はこれからも優位かもしれないが、アメリカはバイデン政権がどれだけ頑張るかに依るが、サイエンスは過去から現在までの積分値なので、そう簡単には追いつけないのではと。

【日本列島に居座る<線状降水帯>】
 台風9号が去った10日(火曜)は全国的な猛暑日となり、横浜も37℃超を記録した。翌11日(水曜)からは前線が日本列島上に停滞、西日本、東日本、東北と全国にわたって猛烈な雨となった。気象庁は、この雨の日が今後1週間もつづくと警報を出した。警報通り、降り始めの11日から15日までの4日間は総雨量が800ミリを超え、1000ミリに達した所もある。観測史上最多を記録する地域が多い。

 とくに九州北部と広島県を中心とする中国地方で顕著である。偏西風の蛇行により前線が北上すると、南から湿った空気が入り、<線状降水帯>を作る。その動きが遅いと猛烈な雨が長時間にわたり降り続くことになる。河川の氾濫や道路冠水に加え、土中の水分が耐えられなくなると土砂災害が起きる。

 この<線状降水帯>が16日には東へ移り。関東地方も猛烈な雨となり、神奈川県でも山北町付近で15日10時までの1時間に約100ミリの猛烈な雨が降ったとみられ、「記録的短時間大雨報」が発表された。横浜も大雨となった。

【アフガニスタン急変】
 東京五輪、新型コロナの感染拡大、11日に始まり1週間つづくとされる日本列島の<大雨特別警報>に気をとられているうちに、13日(金曜)の日経新聞がワシントン発として「アフガン首都緊迫」の見出しで、次のように伝えた。

 「アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが13日までに、第2の都市の南部カンダハルなどを制圧した。米メディアによると8月末の米軍撤収を控え、早ければ1カ月以内に首都カブールが陥落する可能性があると米当局はみている。米英、カナダは大使館員らの退避のため軍の部隊を派遣する。タリバンは全34州都のうち過半数の18州都を支配した。首都のあるカブール州に隣接する東部ロガール州などを含み、首都から約50キロメートルまで迫っている。なおカンダハルはタリバン発祥の地で、20年前の2001年12月に最後の拠点だった同地が陥落し当時のタリバン政権は崩壊した。カンダハル奪還でタリバン兵の士気が一段と高まる公算が大きい。」

 15日(日曜)の日経新聞は次にように伝えた。「アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは15日、首都カブールに進攻し大統領府を掌握した。同国のガニ大統領は国外に退避したとみられる。タリバン幹部は勝利宣言し、アフガン政権は事実上瓦解した。2001年の米同時テロをきっかけに旧タリバン政権が崩壊してから約20年、テロとの戦いが振り出しに戻る格好だ」と。

 翌16日(月曜)の日経新聞は、【カブール=共同】を引いて、状況を伝えた。
 「ターバン姿の男らが武器を手に政権中枢へ迫り、国軍兵士は持ち場を捨てた。反政府武装勢力タリバンが進攻したアフガニスタンの首都カブールは15日、銃声とヘリコプターの旋回音、脱出する市民の車の渋滞で緊迫と混沌に包まれた。国外脱出したガニ大統領には「国民への裏切り」と非難の声が向けられた。現地で取材する男性記者は英BBCに、警察から奪ったとみられるトラックに乗ったタリバン戦闘員らが自動小銃を振りかざす姿を目撃したと証言。路上で歓声を上げる市民や、車を追い掛ける子どもたちもいた。別の場所では持ち場の検問所を後にする国軍兵を見たという。AP通信などによると、米大使館の屋上付近からは煙が立ち上り、外交官らは機微に触れる書類を急いで燃やした。兵士らを運ぶ軍用ヘリ「ブラックホーク」も大使館の近くに着陸した。カブール大学付近にはタリバンの旗が掲げられた。
 共同通信通信員によると、空港に向かう幹線道路は車で埋め尽くされ、動かないまま。雑貨店ではタリバンを象徴するターバンを巻いた男性を目撃した。タリバンを受け入れる意思を示す「白旗」を掲げる建物も。商業エリアは閑散としており、美容室の従業員はタリバンの懲罰を恐れてか、女性が写ったポスターを急いで剝がしていた。BBC特派員は「いつもとは比べものにならない銃声の数だった」と振り返った。
 ガニ氏を支えてきた女性のハミディ教育相代行は国外脱出を「裏切り」と批判。タリバンの報道担当者が女性の権利を尊重すると主張していることについては「(タリバンが極端な女性差別を続けた)過去の経験から信じがたい」と語った。」
 アフガニスタンのガニ政権が反政府武装勢力タリバンの進攻により崩壊したことを受け、バイデン米政権は15日、米国民らの退避を加速するため米軍約千人を追加派兵する方針を決めた。情勢の急変に伴う措置で、駐留規模を48時間以内に計6千人規模に増やし、首都カブールの空港で管制業務を担う。ただ、8月末までに米軍を完全撤退させる目標は維持する方針。
【各国の対応】
 アフガニスタンで反政府勢力タリバンが首都カブールを掌握したのを受け、菅首相は16日、邦人保護について「現地の最新の情報を把握しながら米国などと連携して対応している」と語った。「今後タリバンの政権移譲が見込まれると認識している」と述べた。首相官邸で記者団に答えた。
 欧米諸国も相次ぎ自国民や大使館員の退避のため動き始めている。米国務省は15日、アフガニスタンのカブールにある米大使館から市内にある国際空港へ全職員の退避が完了したと発表した。バイデン大統領は14日、退避を加速するために米兵1000人を追加派遣すると発表していた。既に英国やドイツ、フランスなどは大使館の機能を同じ空港内や周辺に移し、自国民の退避に向けて活動を続けている。英国は自国民の退避のため、軍隊をカブールに派遣した。ニュース専門局フランス24によるとフランスはアフガニスタン内のフランスの組織で雇用されている600人以上のアフガニスタン人と家族をすでにフランスで受け入れた。
 一方、中国外務省の華春瑩報道局長は16日の記者会見でカブールにある中国大使館は正常に機能をしていると説明、一方でアフガン駐在の中国人の多くはすでに帰国したという。華氏は「タリバンは中国と良好な関係を発展させることを希望している。中国がアフガンの再建と発展に参加することも望んでいる」と指摘した。その背景には、7月28日、天津で会談した中国の王毅外相とタリバン幹部のバラダル氏の写真を新華社=ロイターが公表たことからも分かる。
 トルコのチャブシオール外相も15日、カブールにある大使館の業務を継続する方針を明らかにした。ロシアも大使館機能を維持する方針である。複数のロシアメディアによると、ロシア外務省のカブロフ大統領特使(アフガン問題担当)は15日、タリバンによる暫定政権について「現時点で承認していない」とした一方で「ロシアはアフガニスタンの暫定政権と協力する準備はできている」と述べた。
【タリバン幹部の記者会見】
 18日(水曜)のBBCニュースによれば、17日、アフガニスタンを支配下に置いた武装勢力タリバンは15日の首都カブール掌握後初の記者会見を開いた。報道担当のザビフラ・ムジャヒド幹部は、内外で懸念されている女性の権利について、「シャリア(イスラム法)の枠組みの中」で尊重すると述べた。しかし、他の規則や規制について詳細は明らかにしなかった。
 記者会見で外国メディアは、タリバン政権下の女性の権利について質問を繰り返した。ムジャヒド幹部は「我々の枠組みの中で、女性が働き勉強することを認める」、「我々の社会で女性はとても活発に活動することになる」と述べた。
ただし、女性にどのような服装を要求するのか、全身をすっぽり覆い隠すブルカの着用を義務付けるのか、さらには女性にどのような就労機会が認められるかなどについては、質問されても答えなかった。
 ムジャヒド幹部は、全てのアフガニスタン人が「イスラムの枠組みの中」で生活しなくてはならないと繰り返し、政権発足に向けて作業を進めており、数日中に発表すると明らかにした。
 過激派勢力アルカイダなどが国内を拠点とするのではないかとの質問には、「アフガニスタンの国土を、他者の攻撃には使わせない」と述べ、「内部にも外部にも敵は欲しくない」と融和姿勢を示し、政府治安部隊の兵士や外国政府と協力したアフガニスタン人には恩赦を約束した。
 タリバンは同日、記者会見に先立ち、国内全土に全般的な恩赦を宣言。政府職員に安心して職務を再開するよう呼びかけたほか、自分たちの政府に女性の参加も希望すると述べた。
【イアン・ブレマー氏の見解】
 20日の日経新聞は、米調査会社ユーラシア・グループを率いる国際政治学者イアン・ブレマー氏の特別寄稿を載せ、「アフガニスタン駐留米軍のまずい撤収は、バイデン米政権が初めて直面した外交上の大きな危機」とし、「撤収の判断そのものが批判されるわけではない。失敗したのは戦略というよりも実行面」とし、次の4点を挙げる。
 第1の失敗は軍事・情報である。米情報機関はアフガン政府がタリバンの攻撃を受けても2、3年は持ちこたえられると考えていた。ところが、タリバンの攻勢が強まると、その見通しは2~3日に変わった。特に驚くべきことは次の2点。米国は戦闘を拒否したアフガン政府軍に過去20年間で880億ドル(約9兆6千億円)を支払い、米国はアフガン政府軍を20年間も訓練したのに、政府軍の能力が低く、戦う意思がないという事実を理解していなかった(あるいは理解したくなかった)。
 第2の失敗は調整。米国は20年間、同盟国とともにアフガンで戦ったが、バイデン政権による部隊の撤収は単独だった。政策の見直し、決定、発表、実行だけではない。事後処理としての市民の退避、難民の受け入れ、人道支援の提供についても同様だった。同盟国はトランプ前政権による「米国第一」の4年間が終わった後、米国が態度を変えると予想していた。米国は中国に関与する機会も逃した。米国も中国も、アフガンが「失敗国家」となり、再び国際テロの輸出拠点になる事態は望まない。米国と中国が真の意味で合意できる数少ない分野で、創造性に富む外交を実行する余地はあったが、その好機をむざむざ失ってしまった。
 第3の失敗はプランニング(計画・設計)。情報や調整で失敗したとしても、バイデン政権が別のシナリオを効果的に用意できていれば、必ずしも大きな被害につながったとは限らない。ところが、実際は、備えができていなかった。米国は(市民らの)退避を支援するため、米本土から新たな部隊を派遣しなければならなくなった。アフガンの米軍は撤収開始時よりも(一時的に)3500人も多くなってしまった。首都カブールの空港は絶望したアフガン市民であふれ、滑走路を進む米軍の輸送機と一緒に多数のアフガン人が走った。離陸後、機体にしがみついていた3人が振り落とされ、亡くなった。米軍を支えた何千人ものアフガン人の安全を保証する計画はなく、多くの人々は置き去りにされた。
 第4の失敗はコミュニケーション(意思疎通)。バイデン氏は7月、米国民に向け、タリバンが「アフガン全体を支配する可能性は極めて低い」と保証した。「(在アフガン米大使館の)屋根の上からヘリコプターで脱出するような状況ではまったくない」とも話した。
ブリンケン米国務長官も「米国は残り、大使館は動かず、計画も続く。仮に安全が大きく損なわれるような事態になっても、それは金曜から月曜の間に起こることではない」と語った。こうした予言は、言っているそばから外れたため、かわりにバイデン政権はアフガンで「成功を収めた」と主張するようになった。
 痛みを伴うが必要な決定だったはずのアフガン駐留米軍の撤収作業は大きく失敗した。バイデン氏の政敵は、同氏がこの敗戦の責任をとるべきだと突き上げた。20年の月日と2兆ドルの資金が浪費された、その責任の一端をバイデン氏は追及されている。
【日本政府の対応】
 日本政府は首都カブールの在アフガン大使館を15日付で一時閉鎖。17日には大使館の日本人職員12人を英軍機でアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに退避させたが、菅首相は22日、首相公邸で森健良外務事務次官、島田和久防衛事務次官らと自衛隊機派遣を巡り協議した。
 自衛隊機C2、C130等の輸送機を軸に派遣する検討に入り、輸送対象は国際機関勤務などで現地に残る少数の日本人、それぞれ数十人いる大使館や国際協力機構(JICA)の現地スタッフとその家族も含め、出国の意向調査を始め、国家安全保障会議(NSC)で首相や岸信夫防衛相らが詰めの協議に臨み、23日、派遣を決定した。
 26日(木曜)現在、カブール国際空港周辺に人々が押し寄せたため治安が不安定となり、在留邦人を退避させる便は隣国パキスタンのイスラマバード空港で待機、まだ運行していない。
 同じ日、国際空港の周辺で2回の爆発があった。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。米軍は少なくとも1回は自爆テロと指摘した。複数の米メディアによると、米兵13人を含む70人超が死亡したとみられる。
 空港の入り口の一つである「アビー・ゲート」付近でIS戦闘員が自爆テロを実施した。その後に別の複数の戦闘員が米兵やアフガン市民に対して銃撃した。もう一つの爆発はアビー・ゲートから数百メートルの距離にある「バロン・ホテル」で起きた。マッケンジー氏は手口について調査中だとした。バロン・ホテルは外国人の利用が多いとされる。米軍は19日、ヘリコプターを使って同ホテルから169人の米国人を空港に移動させていた。
【感染拡大にともなう措置】
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、8月20日から9月12日までの4度目の緊急事態宣言の対象地域に茨城、栃木、群馬、静岡、京都、兵庫、福岡の7府県が追加され、また新たに「まん延防止等重点措置」が適用された宮城、山梨、富山、岐阜、三重、岡山、広島、香川、愛媛、鹿児島の10県に適用。これに合わせて、8月31日までが期限の6都府県の宣言と6道県の重点措置の9月12日までの延長も決めた。
 緊急事態宣言の対象地域を拡大したにもかかわらず、具体的にどういう措置を講じて感染拡大を抑えるのか。政府は(1)新型コロナウイルスの基本的対処方針を変更し、デパートの地下の食品売り場などへの入場者の整理を要請することを盛り込む、(2)首相が経団連にリモートワークの強化と出勤の7割減を求める一方で、(3)パラリンピックの一部<有観客>、(4)夏休み明けに新学期を迎える小中高校などについて「全国一斉の臨時休校は考えていない」と述べ、休校要請を見送る考えを示す(20日 文科大臣)など、全体としての強い政策効果は出ていない。内閣官房のホームページでは、個々人がしっかり<三密>を避ける等の旧来からの要請を繰り返すだけで、政府として説得力ある新たな背策は見られない。
【感染者の急拡大と重症者の増加】
 ワクチンの普及が感染拡大を防ぐ最大の武器と言うものの、変異株<デルタ株>のまん延に対して有効か否かの疑問が出ている。コロナウィルスにとっては変異することを通じて多数の宿主を見つけることに成功を収めている最中である。20日、全国の感染者が25,876人、重症者数も1,816人、入院中や療養中の人は193,355人といずれも過去最多となった。
 東京都内では20日、5405人が新たに新型コロナウイルスに感染していることが確認され、初めて3日連続で5000人を超えた。自宅で療養している人は2万6000人を上回り、19日よりさらに2000人余り増えて3日連続で最多を更新した。
【横浜市長選 山中竹春氏が当選】
 横浜市長選は22日(日曜)に投開票が行われた。朝日新聞デジタルによれば、出口調査を実施した結果、元横浜市立大教授の山中竹春氏が元国家公安委員長の小此木八郎氏ら他の候補を引き離しており、早くも山中氏が初当選を確実にしたと伝えた。23時22分の開票率8.54%で、出口調査から山中竹春候補が41,000票を取り、得票率31.54%で当確を決めた。2位の小此木八郎氏は26.54%、3位の林文子氏は19.27&である。
 山中氏は立憲支持層の7割半ばを固めたうえ、共産、社民両支持層からも6~7割を得て、無党派層からは4割近い得票があり、全8候補の中で最も多くの支持を集めた。小此木氏と現職の林文子氏の2人に市議らの支持が分かれた自民党だが、小此木氏は自民支持層からの得票は4割弱、2割が林氏に回っていた。自民支持層をまとめきれなかった小此木氏は無党派層への浸透にも力強さを欠き、1割程度の得票にとどまった。
 林氏が2年前に決めたIR誘致への反発は強く、市民団体が誘致の是非
を問う住民投票条例の制定を求めた署名活動で20万筆近くが集まった。

 立憲民主はIR反対勢力の幅広い結集を目指し、山中氏を擁立。過去3
回の市長選で林氏を支援した連合神奈川が推薦、共産、社民も支援した。山中氏は臨床統計学が専門で政治経験はなく、知名度の低さが課題だったが、新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、「コロナの専門家」とアピールし、無党派層にも支持を広げた。
 山中氏は早大院修了、九州大医学部付属病院、国立がん研究センターなどを経て、横浜市立大医学部教授。埼玉県出身、48歳。
 山中氏については、本ブログ6月16日掲載「人類最強の敵=新型コロナウイルス(39)」のなかで、「横浜市立大学の研究によれば、去年2月~4月に自然感染した250人に、6カ月後の去年10月ごろと、1年後の今年3月ごろに採血し、実験した結果、1年後も十分な量の中和抗体があり、それは、その後、見つかった“変異型”にも“効く”可能性があると発表した」と紹介している。
また本ブログ7月12日掲載「人類最強の敵=新型コロナウイルス(40)」でも、横浜市長選に8名の立候補者があったことを伝え、「候補者が乱立すれば、票は分散…最多得票者が有効投票総数の4分の1以上の票を得られなければ、50日以内に<再選挙>となる規定があり、関係者の間では<再選挙>の可能性も話題に上り始めた」と述べた。
 日経新聞によれば、IRの撤回を訴えた山中氏は立民のほか、共産、社民両党の支援を受け「野党共闘」の候補として支持を広げた。小此木氏は市内に選挙区のある菅首相が支援し、自民党の市議の大部分と公明党の支援を固めたが、及ばなかった。3期12年の実績とIR誘致推進を掲げた林氏も伸び悩んだ。
 23日(月曜)午前3時のNHK報道によれば、上位3人の開票結果は、山中竹春氏が50万6392票、小此木八郎氏が32万5947票、林文子氏が19万6926票であった。投票率は49.05%で前回4年前の選挙を11.84ポイント上回った。
 開票から一夜明けた22日、毎日新聞のインタビューで当選した山中氏は次のように述べた。
「横浜市長選で初当選した元横浜市立大教授の山中竹春氏(48)は投開票から一夜明けた23日、公約としていたカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致撤回について「早い段階で宣言して必要な手続きを進めていく」と述べ、改めて意欲を示した。
 市内の事務所で報道陣の取材に応じた。この日は午前5時半ごろに起床し、知人や支援者から大量のメールが届いたのを確認したという。「改めて当選させていただいたという実感が湧いてきた」と笑顔を浮かべた。同席した妻の真木子さん(46)は「びっくりしている。支えていただいた方に感謝したい」と語った。…
 政権批判が自身の票につながったとの見方について、山中氏は「政権批判というより、横浜を前に進めてほしい、閉塞(へいそく)感を打破してほしいという期待を感じた」と述べた。…新型コロナウイルスの感染拡大を受け、選挙戦では「新型コロナの専門家」と強調して支持を拡大した山中氏。「感染者が爆発的に増えて病床も危機的だ。ワクチン接種を加速化して、感染が広がらないような仕組みづくりが必要だと思う」と強調した。【高田奈実】」
【選挙後の国政への影響】
 横浜市長選の結果が及ぼす今後の国政選挙への影響について、NHKの取材に対し自民党幹部は「保守分裂で自民党支持層の票が割れてしまったことに加え、政府の新型コロナ対応への不満が批判票となって集中したことが敗因だ。知名度で勝る小此木氏が差をつけられたことは衝撃で、衆議院選挙に向けて影響を最小限に抑えなければならない」と述べた。
 一方、立憲民主党の福山幹事長は、「『カジノはいらない』という市民の意思が明確に示された。また、菅総理大臣のおひざ元で、こうした結果になったことは、菅内閣のコロナ対応に極めて厳しい判断が下されたということ。政権は謙虚に受け止めて国会を開き、コロナ対応に全力を尽くすべきだ。今回の有権者の野党への期待を次の衆議院選挙で全国に広げられるよう努力したい」と述べた。
【蔡英文・総統が台湾製ワクチン接種一番乗り】
 23日(月曜)、台湾のワクチンメーカーである高端疫苗生物製剤(メディゲン・ワクチン・バイオロジクス)が生産した新型コロナウイル・ワクチンの接種が、始まり、蔡英文・総統は接種開始初日となった23日午前、接種会場の一つとなっている台湾大学医学院の体育館を訪れ、接種を受けた。
【パラリンピック開幕】
 24日(火曜)晩、パラリンピック開会式が国立競技場で行われ、13日間の大会が幕を開けた。日本選手団は車いすテニス男子シングルスで2大会ぶりの金メダルを目指す国枝慎吾が主将を務め、前回リオ大会の倍に迫る過去最多254選手が全22競技に出場。史上最多の金メダル20個を目標に掲げる。
 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が23日に来日、24日の東京パラリンピック開会式に出席し、25日夜、空路で帰国の途についた。パラリンピックの開会式にIOC会長が招待されるのは慣例となっているが、来日したバッハ氏について隔離措置は取られなかった。
 これについて25日の衆議院厚生労働委員会(閉会中審査)に出席した尾身分科会会長は、「いま人々にテレワークを要請しているわけですよね。今回またバッハ会長の挨拶が必要なら、なぜオンラインでできないのか。国民に(自粛を)お願いしているんだったら、バッハ会長、なんでわざわざ来るのかと。普通のコモンセンス(常識)ならできるはずなんですよね。銀座も1回行ったんでしょ、と。これは、私は専門家の会議というよりも一般庶民としてそう思います」と身振り手振りを加えながら、強い口調で訴えた。
【コロナ重症者増で<総力戦>】
 24日、厚労省と東京都が改正感染症法に基づいて都内の全医療機関に連名で新型コロナウイルス対応への協力を要請した。都はオンラインで医療関係者に要請内容を説明。感染拡大で東京都を中心に医療の供給体制は逼迫している。コロナ医療に直接関わっていない病院や診療所からも、宿泊療養施設などで対応にあたる人材を確保し、医療措置を受けられる患者を増やす。法的手段も含め、<総力戦>での打開が必要となっている。
 都は24日のオンライン説明会でコロナ患者に酸素を投与する「酸素ステーション」への人材派遣などを要請した。都内には約8万の一般病床がある。都はコロナ対応で確保する病床数を今より1割積み増し7000床をめざす方針。
都内には病院が約650あり、うちコロナ患者を受け入れている病院が約400ある。コロナ対応に直接関わっていない病院は約250と、全体の3分の1を占める。要請では400病院にはさらなる患者受け入れや病床の確保を求めた。残る250病院には宿泊療養施設や臨時の医療施設の運営に関わるよう要請。病院がどう対応するか回答期限はいずれも31日に設定。
 この24日の時点で、NHKのまとめによれば、全国の感染者数は2万1570人、重症者数は1935人、死者は42人、入院・療養中が21万2567人である。うち重症者数と、入院・療養者数の増大が医療体制を逼迫させる直接の要因となり、救える命が救えない状況を招いている。上掲の<総力戦>が奏功することを願う。
【範囲を拡大、21都道府県に宣言、12県に重点措置】
 25日(水曜)、菅首相は新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象に、北海道、宮城、岐阜、愛知、三重、滋賀、岡山、広島の8道県を追加することを正式決定した。宣言に準じた「まん延防止等重点措置」に高知、佐賀、長崎、宮崎の4県を加える。追加地域の宣言・重点措置の期間は27日から9月12日まで。あわせて宣言は計21都道府県、重点措置は計12県に拡大される。
【自民党総裁選、9月17日告示、29日投開票】
 26日、自民党は9月末の任期満了に伴う党総裁選の日程を9月17日告示、29日投開票と決めた。菅首相が再選を目指し、岸田文雄前政調会長が立候補した。複数候補が出馬する構図で3年ぶりに国会議員票と党員・党友の地方票を同数で争う選挙になる。
 岸田氏は記者会見で、「自民党に声が届いていないと国民が感じている」と強調した。「いま自民党に厳しい目が注がれている。こうした現状の中で信頼を回復することができない。党のガバナンス改革をしっかり進める」と力を込めた。
また総裁を除く党役員の任期を「1期1年、連続3期まで」にすべきだと提起した。「権力の集中と惰性を防ぐ」とも主張した。2016年8月から5年にわたり幹事長を務める二階俊博氏が念頭にある。
【パラリンピックの日本勢成果】
 2日目の25日、水泳で女子100m背泳ぎ(運動機能障害S2)の山田美幸(14)が2位に入り、日本勢史上最年少の銀メダル、今大会の日本選手団メダル第1号。中学3年生の山田は初出場で最年少記録を塗り替えた。
 初めて見る車いすラグビーや車いすバスケットボール。その細かいルール設定により障害の程度による競技参加の役割が決まることを知った。<多様性の調和>とでもいうべきゲーム設定に驚かされた。
 3日目の26日(木曜)、競泳の男子100メートル自由形(運動機能障害S4)で、鈴木孝幸(34)=ゴールドウイン=が1分21秒58のタイムで優勝した。今大会初めての日本勢金メダル。
 「日常生活でも想像以上に多くの方々の世話になっています。この成果は多くの方々の産物です。みなさまへお返ししたい」と挨拶があった。
 4日目以降の競技結果を記録する時には、金メダルに留まらず広く他の諸問題にも目を向けていきたい。
陸上競技は27日にスタートし、トラック最初の決勝種目となった男子5000mT11決勝に唐沢剣也と和田伸也が出場。唐沢が15分18秒12で銀メダル、和田は15分21秒03で銅メダルを獲得し、同競技における日本人最初の表彰台となった。優勝はブラジルのエウチン・ジャッキスで15分13秒62。


 この間、以下の番組を視聴した。東京五輪の実況放送により、しばらく空白期間があった。(1)ETⅤ特集「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」(再)8月5日。 (2)映像の世紀{11}「JAPAN~世界が見た明治・大正・昭和~」12日。 (3)ETⅤ特集「ひまわりの子どもたち~長崎・戦争孤児の記憶~」14日。 (4)週刊ワールドニュース(8月9日~13日)」15日。 (5)BS1スペシャル「特攻 知られざる真実」15日。 (6)NHKスペシャル「開戦 太平洋戦争~日中米英 知られざる攻防」15日。 (7)BS1スペシャル「隠された“戦争協力” 朝鮮戦争と日本人」16日。 (8)NHKスペシャル「沁みる夜汽車(三木忠直)」(再)18日。 (9)NHK「たけしの その時カメラは回っていた 驚きの世界のプロパガンダ」18日。 (10)クローズアップ現代+ 「封印された「心の傷」 精神疾患兵の極秘調査」19日。 (11)クローズアップ現代+ 「新型コロナ“第5波” 病院を襲う負のスパイラル」19日。 (12)BS1スペシャル「世界の子どもの未来のために」20日。 (13)NHKスペシャル「混迷ミャンマー 軍弾圧の闇に迫る」22日。

人類最強の敵=新型コロナウイルス(30)

 前稿(29)は12月28日(月曜)の3時すぎの時点で終えたが、その後も大きな動きや気になる問題がつづき、年末年始も目が離せない。全国的に感染拡大が止まらず、<曜日最多>が連続する。とくに首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県)での増加が目立つ。そこにイギリスと南アにおける変異種の急拡大が重なり、流入を食い止めようと新たな出入国管理策が採られた。

 12月28日(月曜)、政府は全世界を対象にとってきた2つの出入国緩和策を停止した。全世界対象の変異種対応は、国際的にみても異例とされる。コロナ対応で「後手に回っている」との批判から、官邸主導で下した政治判断であった。今後は、待機場所の確保など帰国者への対応が焦点となる。

 この28日朝、菅首相は「先手、先手に対応するため、土曜日に方針を指示した」と記者団に胸を張った。その約8時間後に政府対策本部を開き、「英国では多くのウイルスが変異種に入れ替わっている」と対策の徹底を呼びかけた。1日2回の発信も全世界対象の措置も、世論の批判に対する焦りの裏返しと思われる。政権発足当初、報道各社の調査で70%前後あった内閣支持率が急落。朝日新聞が19、20両日に実施した調査でも、前月から17ポイント減の39%に落ち込んだ。

 政権幹部によると、首相官邸では28日、「今の対応を続けても来年2月には感染者がさらに増える」との認識が共有された。首相周辺は「もうデジタル庁や携帯料金値下げでは支持率低下の局面を変えられない」と漏らす。厳しい状況が続くなか、首相は土曜日の26日午前、官邸で厚労省幹部らと変異種対応を協議し、全世界を対象にとってきた出入国緩和策の全面停止に踏み切る意向を伝えた。

 29日(火曜)の朝日新聞デジタルは、朝日新聞社が11~12月に行った、新型コロナウイルスをテーマに郵送方式の世論調査の結果を発表した。新型コロナを巡る政府の対応を「評価する」は37%にとどまり、調査対象者の地元の知事の対応を「評価する」54%より低かった。郵送調査は全国の有権者から無作為に選んだ3千人を対象に実施、11月11日に調査票を発送し、12月21日までに届いた有効回答は2126通で回収率は71%。

 地元知事の評価は地域差が大きく出た。「評価する」は大阪で83%、北海道も8割と高く、福岡は6割、東京は52%と全国平均並み。首都圏の神奈川36%、埼玉35%、千葉22%は低めで、愛知は33%であった。

 首相や自治体のトップに最も必要なものを4択で尋ねると、「公正さ・誠実さ」31%、「リーダーシップ」23%、「国民への共感」23%、「政策・理念」19%の順だった。「公正さ・誠実さ」や「国民への共感」を重視する層が特に政府には厳しく、60%がコロナの政府対応を「評価しない」と答えた。
  
 「対応を評価する日本の政治家」の名前を1人だけ挙げてもらう質問(自由回答)でも知事の名前が目立つ。トップは大阪府の吉村洋文知事で378人。2位は東京都の小池百合子知事160人、3位は北海道の鈴木直道知事95人と、上位3人を知事が占めた。国政では4位に菅首相の59人、次いで5位の安倍晋三前首相58人、以下新型コロナ対応などで露出の多い西村康稔経済再生担当相49人と並ぶ。
 
 新型コロナウイルス対応で、政府より知事の評価が高い理由の一つには、感染症対策の権限の問題がある。政府より知事の方が具体的な施策を打ち出す裁量が大きく、外出自粛や飲食店への休業の要請も権限は知事が持っている。現在の法律は知事が医療体制の整備を行うと想定している。

 政府が法律に基づいて行える感染拡大抑止策は緊急事態宣言の発令くらいである。初期の対策は、イベント自粛のお願いと一斉休校であった。時短営業の補償金や病床確保のための予算措置などは国民には見えづらく、最近は<Go To キャンペーン>などの経済対策が目立つが、それがまた裏目に出て、感染拡大につながると批判を受けた。

 国会議員が27日に亡くなったが、その後の検査で新型コロナウイルスに感染していたことが確認された。立憲民主党の羽田雄一郎(参議院幹事長)で、現職の国会議員が感染して亡くなったのは初めてである。参議院長野選挙区選出の当選5回。父親は羽田孜・元総理大臣(第80代、1994年)。

 同党の福山幹事長によると、羽田氏は今月24日に発熱して、体調不良が続き、27日、PCR検査を受けるために秘書が運転する車で医療機関に向かう途中に呼吸が荒くなり、「俺、肺炎かな」と言ったあと会話が途切れたという。糖尿病などの基礎疾患があった。

 発熱した今月24日以降は、東京都内の自宅に待機していた。その前は、今月22日に国会内で開かれた党の常任幹事会に出席、23日には地元の長野県内で開かれた県連の会議に出席するなどしていて、保健所などが羽田氏の行動履歴や濃厚接触者の把握を進めるとともに、党では接触した議員に検査を受けるよう呼びかけているが、年末年始で検査がはかどらない。

【年末年始の人の動き】
 30日(水曜)の昼現在、国内線が発着する羽田空港の第1ターミナルではスーツケースを持った家族連れや旅行客の姿も見られたが、目立った混雑はなく、例年の年末に比べて利用客が大幅に減っている。新型コロナウイルスの感染拡大や「Go Toトラベル」の全国一斉停止の影響で、予約のキャンセルが相次ぎ、30日もほぼすべての便で空席が出た。日本航空では今月25日から来年1月3日までの予約数は45万人余りと、前の年の4割ほどにとどまる見込みという。

 鉄道では、JRによると、30日午前10時までの東海道新幹線や東北新幹線などの自由席の乗車率は5%から50%程度と空席が目立ち、例年、100%を超えることもあるこの時期としては、かなり低くなっている。正月三が日も人の移動は極端に減った。ふだんと異なる三が日である。

【感染拡大と抑止対策】
 感染拡大状況を確認したい。前者が全国の感染者(陽性者、カッコ内は重症者と死者)、後者が東京(カッコ内は重症者)。
 28日(月曜)  2400人(661人、51人)と481人(81人)
 29日(火曜)  3607人(675人、59人)と856人(84人)
 30日(水曜)  3852人(668人、59人)と944人(85人)
 31日(木曜)  4516人(681人、49人)と1335人(89人)
1月1日(金曜)  3247人(681人、49人)と783人(88人)
 2日(土曜)   3059人(711人、31人)と814人(94人)
 3日(日曜)   3146人(714人、60人)と816人(101人)
 4日(月曜)   3325人(731人、48人)と884人(108人)
 5日(火曜)   4915人(771人、76人)と1278人(111人)
 6日(水曜)午後、ふだんより早めの2時半ころ、東京都の新規感染者は1591人、重症者が113人と速報が入った。いずれも過去最多である。

 12月30日(水曜)午後、小池都知事は臨時で記者会見を開き「かつてない大きさの第3波が襲いかかってきている。いつ感染爆発が起きても誰が感染していてもおかしくない状況だ。この年末年始が分水嶺だ」と述べ、年末年始は家で静かに過ごし、忘年会や新年会、会食などは行わないよう強く呼びかけた。

 イギリスや南アフリカで見つかっている変異ウイルスが日本でも確認されたことについても触れ「2つの『未知』に直面している。変異ウイルスが出てきた。また、コロナ禍で初めて経験する冬の寒さだ。未知の課題に対して最大級の警戒と備えが必要だ」と述べ、若い世代に向けた呼びかけとして「コロナを甘く見ず、夜間の外出はしばらく<なし>にしてください。若いから大丈夫では決してありません。こんなはずではなかったと思った時にはもう遅い。皆さん自身の将来を守るために日々の行動を改めて見直してください」と呼びかけた。

 さらに「ここで感染を抑えなければ、ますます厳しい局面に直面する。緊急事態宣言の発出を要請せざるを得なくなる。何としても回避しなければならない。この年末年始が感染拡大を食い止められるか否かの分水嶺だ。命を優先してほしい」と呼びかけ、年末年始は家族で静かに過ごす<ステイホーム>を徹底し、忘年会や新年会は行わず、会食も絶対に開かないよう呼びかけた。

 同じ30日の夜、西村大臣は、国立国際医療研究センターの忽那医師とともに、みずからのツイッターで、「このまま感染拡大が続けば、国民の命を守るために、緊急事態宣言も視野に入ってくる。何としても感染を抑えなければいけない」と指摘し、年末年始は家族とのみ過ごすよう改めて呼びかけた。

 31日(木曜)の大晦日、全国の感染者4516人、東京都1337人を確認、いずれも過去最多を更新した。これで都の曜日最多は17日連続となる。また感染経路不明が363人から476人と最多となる。こうした種々の指標からみて、医療機関が受け入れられる限度を超えんとしており、まさに<医療崩壊>の寸前にある。

 この日、菅首相は緊急事態宣言を出す考えはないか記者団に問われると、「まず今の医療体制をしっかり確保し、感染拡大回避に全力をあげることが大事だ」などと述べるにとどめ、宣言自体に触れず、慎重な姿勢を見せた。

 マスコミは休日モードにあり、大晦日の新聞夕刊は休み、元日は賀正用の記事が多く、速報類の掲載はきわめて少ない。恒例の除夜の鐘や紅白歌合戦もどこか空しく感じると同時に、「このような時こそ心穏やかにして正面から未来を構想せよ」と内面からの声が聞こえる。

 2021年の元日(金曜)、6時59分に初日の出を迎えた。強烈な寒波襲来のため気温が下がり、全国的な大雪(一部は吹雪)となったが、首都圏は晴れて、穏やかで温かい正月を迎えることができた。しかしコロナは待ってくれない。

 元日の新規感染者は783人、金曜日としては、1週間前の先月25日の884人に次いで過去2番目に多い。入院者数は136人増えて2730人、自宅療養者は31日より104人増えて3278人と、いずれも過去最多である。現在確保している3500の病床の78%を使用しており、きわめて厳しい状況にある。

 感染拡大は1都3県が連動している。神奈川県の新規感染者は31日が588人、1日が470人で金曜日として過去最多を更新、埼玉県は31日が330人、1日が221人、また千葉県は31日が251人、1日が144人と急増し、いずれも病床が逼迫している。

 こうしたなか、官邸の人事異動があった。1日づけで政府は政務担当の首相秘書官を新田章文氏(39)から寺岡光博氏(54)に替える人事を発令した。寺岡氏は1991年大蔵省(現財務省)に入省、内閣官房内閣審議官時の2015年から3年間、菅官房長官(当時)の秘書官を務めた経験がある。

 現在、首相秘書官は政務担当に加え、財務、外務、経済産業、厚生労働、警察、防衛各省庁出身の事務担当秘書官を合わせた計7人。大学入試を目前にして文科省の事務担当秘書官はいない。7人のうち防衛と厚労を除く4人は、首相が官房長官時代の現役秘書官をそのまま抜擢したことから、比較的若い顔ぶれとなっている。

 事務秘書官が出身省庁に関係する政策等を担当するのに対し、政務秘書官は首相の政治活動を中心に担うため、「首相最側近」とも位置づけられる。内政や外交だけではなく与党との調整、メディア対応など政権運営に深く関与する。これからの動きを見たい。

 2日(土曜)午後、大晦日から元日にかけての感染拡大を受けて、東京都知事は埼玉県知事とともに西村大臣と面会し、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言の発出を要請すると報じられたが、これに神奈川県と千葉県の知事が合流、同日午後、首都圏(1都3県)の知事が西村大臣に対し政府が緊急事態宣言の発出を速やかに検討するよう要請した。

 検討にあたっては、社会生活の混乱を避けるため一定の周知期間を設け、宣言のもとでの具体的な措置について自治体と協議することを求めている。西村大臣は、3時間にわたる面会後、記者団に対し「首都圏の現下の感染状況は、緊急事態宣言の発出が視野に入る厳しい状況という認識を共有した。あらゆる事態を想定し、緊密に連携して対応していくことで一致した。4知事から検討を要望された緊急事態宣言の発出については国として受け止めて検討していく」と述べた。

 そのうえで「宣言を発出するかどうかは、専門家の意見も聞かないといけない。できるだけ早いタイミングで分科会を開かなければいけないと思っている。検査件数や陽性者数、人の流れのデータなども踏まえて専門家の皆さんに判断をいただかないといけない」と述べた。

 一方、西村大臣は小池知事らに対し、飲食店の閉店時間を午後8時までとし、酒類の提供は午後7時までとするほか、午後8時以降の不要不急の外出自粛を要請するよう求めたことを明らかにし、要請に応じた飲食店への支援を拡充する考えを示した。

 3日(日曜)は正月三が日の最後の日、人の動きが少ない。その裏をかいて新型コロナウィルスが増殖しているようでもある。

 4日(月曜)は仕事始め、午前の年頭挨拶のなかで菅首相は新型コロナウイルス対策で、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に特別措置法に基づく緊急事態宣言の発出を検討する考えを表明した。

 この中で、菅首相は「…先月の人出は多くの場所で減少したが、特に東京と近県の繁華街の夜の人出はあまり減っていなかった。経路不明の感染原因の多くは、飲食によるものと専門家が指摘しており、夜の会合を控え、飲食店の時間短縮にご協力いただくことが最も有効だ。このため1都3県について、改めて先般、時間短縮の20時までの前倒しを要請した」と述べ、そのうえで、東京、埼玉、千葉、神奈川は、感染者数が減少せず極めて高い水準にあり、より強いメッセージを出す必要があるとして、1都3県を対象に新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言を発出することを検討する考えを表明した。

 菅首相は、「…北海道や大阪など時間短縮を行った県は結果が出ている。東京と、いわゆる首都3県においては、三が日も感染者数が減少せずに極めて高い水準で、1都3県で全国の半分という結果が出ている。こうした状況を深刻に捉えて、より強いメッセージが必要であると考えた。政府として諮問委員会の考え方をうかがう。具体的にいつということよりも、まずは飲食に対する実効的な対策をこれから詰める、その中で表明したい」と述べた。

 また「…およそ1年の中で学んできて、どこが問題かということは、かなり明確になっている。その考え方からすれば、限定的に集中的に行うことが効果的だと思っている」と述べ、「給付金と罰則をセットにして、より実効的な対策をとるため、新型コロナウイルス対策の特別措置法の改正案を通常国会に提出する」と述べた。

 またワクチンについて、できるかぎり来月下旬までにワクチンの接種を開始できるよう、政府として準備を進めていく考えを表明し、「…感染対策の決め手となるワクチンについては当初、2月中に製薬会社の治験データがまとまるということだったが、日本政府から米国本社に強く要請し、今月中にまとまる予定だ。そのうえで安全性、有効性の審査を進め、承認されたワクチンをできるかぎり2月下旬までには接種を開始できるよう、政府一体となって準備を進めている」と述べた。そのうえで「まずは医療従事者、高齢者、高齢者施設の従業員の皆さんから順次開始をしたい。私も率先してワクチンの接種をする」と述べた。

 そして「飲食の感染リスクの軽減を実効的なものにするために、内容を早急に詰める。政府として、諮問委員会にかけさせていただいて、そこで考え方をうかがう」とした。緊急事態宣言の発出は、9日(土曜)から11日(成人の日)の3連休前が効果的であり、予告期間を配慮して、6日(水曜)か7日(木曜)と予想される。

 また菅首相は、変異した新型コロナウイルスが各国で確認されたことを踏まえ「外国人の新規入国を原則として拒否することにし、入国規制を強化する。ビジネス関係者の往来、いわゆるビジネストラックについても、相手国の国内で変異種が発見された際には、即時、停止することにする」と述べた。

 記者団が来週11日までを期限として全国一斉に停止している「Go Toトラベル」の再開について質問したのに対し、「…緊急事態宣言となれば、Go Toトラベルの再開はなかなか難しいのではないかと考えている」と述べた。

 また「…夏の東京オリンピック・パラリンピックは、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい。感染対策を万全なものとし、世界中に希望と勇気をお届けする大会を実現するという決意のもと、準備を進めていく」と述べた。

 5日(火曜)、全国の感染者が4907人と過去最多となり、東京都は大晦日の1337人についで2番目に多い1278人となった。重症患者は111人となり過去最多である。また神奈川県が622人、埼玉県が369人、千葉県が261人で、いずれも過去最多である。

 これを受けて分科会の尾身会長は、1都3県がステージ4相当の対策が必要な段階に達しているとし、緊急事態宣言下で実施すべき具体策として、飲食店の時短要請、不要不急の外出自粛、テレワークの徹底、イベント開催要件の強化等を求めた。

 同じ5日、菅首相は自民党役員会で「国民が、政府・与党にいちばん望んでいることは安心・希望だ。最優先はコロナ対策で、しっかり頑張ってまいりたい」とし、そのうえで明後日「7日の諮問委員会で方向性を出してほしいと思っている」と述べ、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に特別措置法に基づく緊急事態宣言をに出す方針を明らかにした。

 <限定的・集中的>を強調し、期間を1ヵ月とするようであるが、詳細を詰め切るのはギリギリの明後日7日晩までつづくはずである。<限定的>の代表例として、5日、萩生田文科相が小中高と大学の一斉休校をもとめない方針を正式に表明し、また16日からの大学入学共通テストも予定通り実施すると述べた。厚労省も保育所の休園を自治体に求めない方向で検討し、7日には方針を示す予定である。

 この日、文科省は2020年6月1日から12月31日までに児童生徒の感染が6100人であったこと、とりわけ直近1ヵ月で倍増し、感染経路は<家庭内>が最多の54%を占めたと、学校内での感染は小学校生6%、中学生11%、高校生28%であることを明らかにした。

 各自治体が主催する成人式(多くが11日の成人の日を予定)は、対応が分かれたが、東京23区では中止が多く、中止に代わる措置として動画配信等の工夫を施している。実施は新宿区ほか3区のみである。北海道は札幌、函館等で中止を決めた。函館市の関係者は「東京や札幌など感染が急拡大している地域から帰省する人が、感染を広げる可能性もある。苦渋の決断だった」と語る。

 一方、成人式を特別な節目と捉え、開催に踏み切る自治体もある。大阪市の松井市長は「一生に一度のこと。成人の日に思い出をつくれるようにしたい」と語り、現時点では規模を縮小した上で式典開催を目指す考えを表明した。また岡山市の大森市長も「コロナの中でも人生の思い出に残る式典にしたい」と意気込む。式典は屋外の陸上競技場で開催。座席は2席ずつ空け、ビデオメッセージなど「見て楽しめるイベント」を企画する。担当者は「成人式は旧友と再会し、過去を振り返り一歩踏み出す場だ」と強調する。

 成人式を中止した自治体では、これから晴れ着レンタルのキャンセル料等の補償問題が出てくる。政府による補助が必要であろう。

 6日(水曜)、緊急事態宣言の期間を1ヵ月とする案が先行したが、これには明白な根拠がないとして、宣言の解除には政府分科会が昨年に定めた4段階の感染状況のうち、もっとも深刻な<ステージ4>(=爆発的な感染拡大)を脱却することを条件とするむね事前に示す予定である。

 4つのステージを分けるのに次の6つの指標を掲げている。①病床使用率(%)、②療養者数(人)、③陽性率(%)、④1週間の感染者数(人)、⑤感染者数の前週比(倍)、⑥感染経路不明者の割合(%)。政府がもっとも重視しているのが、④の「直近1週間の人口10万人あたり新規感染者数25人以上」であり、ステージ3の<15人以上>を下回る必要がある。

 4日時点の④<人口10万人あたり新規感染者数>は、少数点以下四捨五入で、東京が46人、神奈川33人、埼玉24人、千葉24人であり、いずれも15人を大幅に上回る。これを1日平均の新規感染者数にすると約500人となり、前掲の<感染拡大状況>一覧と比べれば一目瞭然、半分以上に減らして追いつかない。なお愛知も19人、大阪も22人で15人を上回っているが、増加傾向が減少に転じたとして、知事は緊急事態宣言の対象とする要請を行っていない。

 同じ5日、日本相撲協会の芝田山広報部長(元横綱・大乃国)が電話取材に応じ、この日新型コロナウイルスの感染が確認された横綱・白鵬(35)=宮城野=について説明した。白鵬は3日に嗅覚異常を訴え、4日にPCR検査を実施、5日朝に陽性が確認された。芝田山部長は「今現在、発熱とかの連絡は入っていない。今後あるかもしれないけど、きのう臭覚異常ということで検査をした」と説明。白鵬は、保健所の指導のもと入院をするという。

 6日(水曜)午後、東京都の新規感染者が1591人、重症者が113人で、いずれも過去最多となった。重症者の増大は病院を直撃、医療崩壊の恐れが強まる。感染拡大を抑えるには、一人一人の行動変容をどう進めるか、そのためのメッセージを誰がどう発するかにかかっている。

【海外の感染状況と防止対策】
 30日のNHK Webによれば、変異した新型コロナウイルスの感染が拡大しているイギリスでは、1日あたりの新たな感染者数が30日、これまでで最も多かった前の日より1万人以上増えて5万人を超え、2日連続で過去最多を更新した。変異種の感染力の強さを示す数字なのか。病床が逼迫するのではないかと懸念が強まっている。

 30日、イギリス政府は、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンを承認したと発表した。このワクチンの承認は世界で初めてで、これで日本が供給を受ける予定の3種類のワクチンが、欧米で承認または許可を受けたことになる。接種の対象は18歳以上で、1回目の接種のあと、4週間から12週間の間隔をおいて2回目の接種を行うことになっているが、専門家による諮問委員会は2回接種するよりもまずはリスクの高い人々への1回目の接種を優先すべきだとしている。

 バイデン米次期大統領は30日(米東部時間で29日、以下、特記しないかぎり日本時間で表記)、新型コロナウイルス対策について、新政権では大統領の権限で民間企業に協力を求めるなどして、ワクチン供給を強化していく考えを示した。

 この中でバイデン氏は、今月中旬から始まったワクチンの接種について、「現在のペースを5倍か6倍に引き上げる必要がある」と述べ、来月20日の就任後100日間で、1億回分のワクチンを接種できるようにする考えを改めて示し、その実現のため、大統領の権限で民間企業に協力を求める「国防生産法」にもとづいて、ワクチンの原材料などの製造を加速させると表明した。またワクチンの安全性を広く呼びかける教育にも力を入れていくとしていて、29日、ハリス次期副大統領が(すでに接種を公開したバイデン氏についで)ワクチン接種の様子を公開した。

 4日、感染を抑制してきたタイのバンコックで昨年12月以降、感染者が急増したため、非常事態宣言を2月末まで延期するとし、5日から午後9時以降の夜間の外食を禁止した。

 5日未明(日本時間)、イギリスのジョンソン首相が演説し、イングランドで明日から3回目のロックダウン(都市封鎖)を行うと表明した。昨年3月と11月(12月上旬に解除)に次ぐ3回目となる。感染力が強いとされる変異種が猛威を振るっていることが背景にあり、1日あたりの新規感染者が5万人をこえる日が7日つづき、病床の逼迫が懸念される。スーパーを除く大半の店舗や飲食店の店内営業を禁止、学校は閉鎖してオンライン授業に切り替える。4日に英アストロゼネカのワクチン接種が始まったのが唯一の救いとの声がある。

【アメリカの政権移行】
 前稿(29)で書いたように、トランプ大統領は23日(水曜)のツイッターで、議会の与野党協同のコロナ対策法案9000億ドル(約93兆円)に対して突然、修正を求め、一人当たりの現金給付額を最大600ドルとする原案を2000ドルに引き上げるよう議会に求めるとし、もし原行案のままなら署名を拒否すると表明した。

 ところが27日夜(日本時間の28日朝)、トランプ大統領が一転して署名。法案が成立した。理由は不明。また93兆円の経済対策法案は2021会計年度(20年10月~21年9月)と一体で可決しており、トランプ大統領の署名により、26日に期限が切れた1200万人分の失業給付金を再延長するほか中小企業対策にも3250億ドル(約33兆円)を充てる。

 翌28日(日本時間の29日)、米下院で一人当たりの現金給付額を最大600ドルとする原案を2000ドルに引きあげる増額の単独法案を、民主党を中心に賛成275、反対134で可決した。うち共和党議員は賛成44、反対150と賛否が分かれた。上院は共和党が多数派であり、増額法案の通過のメドはたっていない。

 1月1日(日本時間の2日)、米上院はトランプ大統領(共和党)が拒否権を行使した2021会計年度(20年10月~21年9月)の国防予算の大枠を決める国防権限法案を3分の2以上の賛成で再可決した。下院は既に再可決しており、同法は成立した。

 3日(アメリカ東部時間、日本時間の4日)、アメリカ連邦議会の第117議会(会期2年)が3日開会し、昨年11月の選挙で民主党が過半数(民主党222、共和党211)を維持した下院は同党のナンシー・ペロシ氏(80)を再び議長に選出した。選出後に議場で行った演説では、新型コロナウイルスと経済悪化の二つの危機に触れ「我々は、過去の世代の指導者たちが直面したどの挑戦よりも困難な責任を引き受けることになる」と述べた。

 上院は議席が確定しておらず、多数派の行方は5日に実施される南部ジョージア州選挙区の二つの決選投票に左右される。定数100の上院は11月の選挙を経て共和党が50議席、民主系が48議席をそれぞれ確保している。両党が50議席を持つ場合は、上院議長を兼務する副大統領が決裁票を投じる決まりで、カマラ・ハリス氏が副大統領に就く民主党は、2議席伸ばせば上院の多数派を確保する。

 また新議会は6日、上下両院合同会議を開き、11月の大統領選の一般投票結果に基づき各州・特別区の選挙人が投票した結果を正式に確認する。通常は、大統領選結果を追認する手続きの一部に過ぎないが、今回は民主党のバイデン前副大統領の勝利を認めず、トランプ大統領と歩調を合わせる複数の共和党議員が両院で異議を申し立てる意向を示しており、異例の審議と採決が行われる予定。ただ、バイデン氏勝利の結果が覆る可能性は皆無に等しく、6日はトランプ氏側による最後の抵抗劇となる見込みと言われる。

 一方、ワシントン・ポスト紙は3日、トランプ氏が大統領選で自身が敗れたジョージア州の一般投票結果について、2日に同州の州務長官に電話し、再集計で逆転に必要な「1万1780票を見つける」よう迫ったとする会話の録音を公表した。1時間超にわたる会話の中でトランプ氏は「私が負けるはずがない」「再集計することは何の問題もない。君は共和党員だろう」といった発言を繰り返している。これが5日に実施される南部ジョージア州選挙区の決選投票にいかに影響するか。この決戦投票の結果が分かるまで数日を要すると言われる。

【新型コロナウィルス発生源の中国調査】
 5日、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が記者会見し、新型コロナウイルスの起源を調べるため中国に派遣した調査団が入国できないでいると明らかにした。必要な許可が得られないといい、事務局長は「大変失望している」と中国側の対応を批判した。

 調査団は、各国のウイルスや疫学の専門家らで構成し、「人の感染例が最初に見つかった場所」として、武漢での調査を予定。WHOによると、5日ごろからそれぞれ中国に向けて自国を出発するはずだったが、中国側の受け入れ手続きが完了していないと、同日判明したという。

 テドロス事務局長は「調査団はWHOにとって優先課題だと、中国高官に改めて伝えた」と述べた。WHO加盟国は昨年5月の年次総会で、中国への調査団派遣を決定。中国政府も協力する姿勢だったという。WHO緊急対応責任者のマイク・ライアン氏は「入国のビザに関する承認が得られていないようだ。お役所仕事的な業務上の問題で、早急に解決すると信じたい」と述べた。
 
 これに関連して思い出した記事がある。朝日デジタルの昨年12月10日の「コロナの起源-科学者たちの足跡」は、次のように述べている。「人類を新型コロナウイルスが襲った今年、その遺伝子配列と96%一致するとして世界各地の科学者の注目を集めたウイルスが、7年前にこの中国雲南省の山奥で見つかった。そのウイルスの名は「RaTG13」。新型コロナウイルスの近縁種が発見されたのは、どんな場所なのか。たどってみることにした。まず訪ねたのは、省都の昆明市から300キロ南下したところにある「通関」という町だ。北回帰線を越えたすぐ先にあり、古くから茶を栽培している少数民族ハニ族が暮らす墨江ハニ族自治県に位置する。香辛料や野菜などを売る市場があり、街道沿いに雑貨店や鶏1匹を丸ごと煮込む鍋料理の店が並ぶ小さな町」。

 「町の名前<通関>は中国語で「トングアン」と読む。その英語表記の頭文字をあわせれば「TG」。RaTG13が発見された地域を示す「TG」だ。「Ra」はコウモリの一種、「13」は2013年に採取されたことを表している。このウイルスを見つけたのは、中国湖北省武漢にある中国科学院武漢ウイルス研究所のチーム。今年2月、英科学誌ネイチャーで新型コロナウイルスと「96%一致した」との研究結果を発表した。02~03年に中国を襲ったSARS(重症急性呼吸器症候群)の起源をたどる研究で中国各地を回る中で、採取したウイルスの一つだったという。」

 この間、次の録画を観ることができた。(1)BS1「週刊ワールドニュース 新型コロナに揺れる世界(12月21日~25日)」12月27日。(2)NHKスペシャル「謎の感染拡大~新型ウィルスの起源を追う~」27日。(3)BSテレビ東京「ニッポンを創った明治の三賢人~渋沢・岩崎・福沢にみる<革新力>」28日。(4)日本テレビ地デジドキュメント「シリーズCOVID-19 コロナ2020 抗」28日。(5)NHK時事公論クエスチョンタイム「アメリカ新政権でどうなる? 2021年の世界と日本」29日。(6)NHK総合「歴史発掘ミステリー 京都千年蔵<大原 勝林院>」29日。(7)TBS『報道の日 2020』「激動の21世紀~米中、そして日本」30日。(8)BS1「完全版 明治神宮 不思議の森(再)」1月2日。(9)BS1スペシャル「デジタルハンター~謎のネット調査集団を追う~」(再)2日。(10)NHK BS1「躍動する大自然 奇跡ストーリー「伊賀と甲賀 忍者を生んだ山野」(再)2日。(11)BS1スペシャル「もうひとつのショパンコンクール~日本人ピアノ調律師たちの闘い」3日。(12)NHK Eテレ「ズームバック×オチアイ 新春SP 2021 大回復(グレートリカバリー)への道」3日。(13)NHK BS1「クライメートジャスティス パリ“気候旋風”の舞台裏」3日。(14)NHK総合「日本最強の城スペシャル(7)」3日。(15)日本テレビ地デジドキュメント「シリーズCOVID-19 コロナ2020 祈」4日。
プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
前園長(2012年8月~2023年3月)

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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