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人類最強の敵=新型コロナウィルス(15)

 前回(200720掲載「人類最強の敵=新型コロナウィルス(14)」)では未確認だった菅官房長官の7月19日フジテレビでの発言が、20日の日経新聞に掲載された。

 その要点は、(1)ホストクラブなど接待を伴う飲食店へ風営法に基づく立ち入り検査を進める、(2)検査と併せて感染防止策を確認する取り組みを念頭に「警察が足を踏み入れる形で厳しくやっていく」、(3)知事たちから法整備を求める意見があり、現行の<新型インフルエンザ等対策特別措置法(2012年)>の改正を視野に入れ、その時には休業要請に応じた事業者への補償が「最終的には必要」、の3点である。なお(3)は「事態が安定したとき」として将来的課題とした。

 上掲の(3)の特措法改正の先送りをはじめ、政府の指導力の欠如が気になる。18日の北海道新聞(電子版)は、「国会閉会1カ月 感染再燃、GoTo方針転換…課題次々、首相語らず 記者会見なし、委員会出席せず…」として次のように報じた。

 安倍晋三首相が通常国会閉会翌日の6月18日を最後に1カ月間、記者会見せず、国会の閉会中審査にも出席していない。この間、首都圏を中心とした新型コロナウイルスの感染再拡大や政府の観光支援事業「Go To トラベル」の方針転換など大きな課題が浮上、説明責任を果たさない逃げの姿勢が浮き彫りになっている。…さらに首相は周辺に「秋の臨時国会は開きたくない」と漏らす。コロナ対策などを巡って求心力のさらなる低下がささやかれる中、できる限り説明の機会を少なくすることで野党などの追及を避けたい思惑が透ける。

 こうしたなか、ネットに各種の情報が飛び交う。なかには参考になるものもある。その一例が鳥内浩一【コロナ「大分岐」】である。その7月20日版に、要約すれば次のようにある。

 コロナの終息は、出口が「見えない」どころか「存在しない」恐れすらあり、「感染者が再び増加しないよう万全を期す」ことなどできない。感染者は増えて当たり前であり、それでもリスクは制御可能で医療崩壊は起きない、という発想に切り替えることが必要である。…
 「感染者は増えて当たり前」というのは、新型であるがゆえに誰も免疫を持たずワクチンも存在しない状況においては、人口の一定数が感染して集団免疫を持つことではじめて事態が収束する、ということからも理解しやすい。…
ワクチンの是非、ウイルスの変異性、集団免疫自体が成り立つか否かという
 議論もあるが、少なくとも現状分かっている限りにおいては、インフルエンザや風邪と同じく、コロナウイルスとは常に付き合い続けていくものという前提に立ち、ア)高齢者や慢性疾患のある「高リスク者」の方をどれだけ感染から守るか(それ以外の致命率や重症化率は極めて低い)、イ)感染速度をどの程度に抑えるか、ウ)感染者を守るための医療資源をどう確保するか、の3つを焦点にする必要があり、そのためのデータは公開情報になっている。①抗体保有者数、②感染者の年齢層・基礎疾患の有無、③現在患者数/重症者数/対策病床数、④感染者1人からの二次感染者数(基本再生産数)など。

 いつ感染するか感染させるか分からない、これを前提とし、万一感染した時にどう対処するか。無症状や軽症で終われば、一定期間の隔離により他者への感染を防止できる。問題は病院(とくに重症者のための集中治療室と医師スタッフならびに医療機器)と隔離施設(ホテル等)をいかに安定的に確保し、急拡大する感染者に提供できるかに係っている。

【7月豪雨とDMAT、DPAT】
 九州を中心とする7月豪雨の被害状況について、厚生労働省は20日、正午時点の情報をまとめた第35報を公表した。これによると、災害派遣医療チーム(DMAT)は55隊活動しているが、このうち42隊が九州で活動。活動範囲は13都府県にまたがり、最多は熊本の38隊である。また災害派遣精神医療チーム(DPAT)は熊本で2隊、東京で1隊の計3隊が活動している。

【脆弱な医療体制】
 医療体制について22日の日経新聞は「軽症者施設 23都府県不足」を掲載した。副題が示す通り、軽症者等を収容する宿泊療養施設と、国(厚労省)が<第2波>で見込む軽症・無症状者の推計値を比較すると「第2波推計、東京は逼迫」、「重症者向け」に関しては26道府県が未達である、と。

 ICU等の重症者向け病床は、厚労省の標準的推計によれば、第2波の重症者は全国で約3500人が見込まれるのに対し、現状で確保見込みの重症者向け病床は約3800床。地域別では静岡県が必要数の3分の1にとどまり、埼玉県・広島県・兵庫県等も確保数が推計重症者数の半分以下、その他26道府県も達成できていない。

 日本のPCR等の検査能力は米英の約1割に過ぎない。さらに検査実務の効率の悪さがある。医師、保健所を結ぶ感染者情報のオンライン化も進んでおらず、検査から結果を知るまで3日もかかっている。

【感染の全国的拡がり】
 新宿区の劇場で30人の新型コロナ集団感染が発生した問題で、その後も感染が拡がり、21日時点で観客や出演者ら集団感染した人は、少なくとも11都府県の115人に上ることがわかった(22日の読売新聞)。

 東京都の感染者は20日(月曜)168人、21日(火曜)237人、22日(水曜)238人であったが、全国レベルでは増加して791人と最多を記録、大阪府でも121人と最多となった(これまでは4月9日の92人)。

 この状況を受け、政府の分科会は「8月1日以降は10000人規模に緩和するとした方針を改め、現状の5000人規模を8月末まで延期する」と決めた。

 4連休の初日の23日(木曜)、東京都の感染者は一挙に366人に跳ね上がった。重症者は16人(数日前は5人)。全国レベルでは感染者が920人(前日は795人)と増加、大阪府の感染者も104人に増加えた。

 前回のブログ(2020年7月20日掲載「人類最強の敵=新型コロナウィルス(14)」)では次のように述べた。「6月25日(木曜)から約50人の1週間がつづき、7月2日(木曜)から約100人の1週間となり、さらに7月9日(木曜)から約200人の1週間と急ピッチで週単位の倍々増である。危惧された約200人が1週間つづき、その次の倍数の400人台が(23日頃に)到来するなら、感染第2波と言わざるを得なくなる」。

 23日(木曜)に368人と急増したのは、倍倍々と幾何級数的に増える400人台の幕開けなのか、それとも約200人の枠内の偶然の増加に過ぎないのか。どうやら前者のように見えて不安がよぎる。

 24日(金曜)、東京都の感染者は260人、その減少に安堵する。しかし大阪の感染者は149人と過去最多、また全国の重症者は9人増の68人である。

 感染が全国の大都市(愛知県63人、福岡県52人、埼玉県45人等)を中心に拡大していることは確かであるが、それ以上の合理的な説明は難しく、いわんや、このデータから今後を見通し、対策を立てるのはいっそう難しい。

【第2波対策と経済の両立】
 4連休初日の23日(海の日)は、折からの雨のせいか東京の人出は少なく、24日(スポーツの日)も午後から雨の予報。小池都知事が懸命に訴える「不要不急の外出は控えてください」に応えた側面も無視できないであろう。

 外電によれば、世界も同じような課題に直面している。日経新聞の25日(土曜)朝刊に「第2波対策と経済両立」の記事がある。小見出しは「独英、<小規模封鎖>機動的に 検査態勢の充実前提」。全国一律の対応ではなく、自治体に権限を与え、外出制限や施設閉鎖・イベント中止等の判断と執行を委ねようとしている。

【テレビ番組から学ぶ】
 この間、以下のテレビ録画を観る機会があった。学ぶことが多い。(1)「新型コロナウィルス 世界は科学で闘った」(NHK BS1スペシャル、6月29日)。(2)「ウィルスvs人類4 新型コロナ 免疫の謎に迫る」(NHK BS1スペシャル、7月18日)。(3)中国 武漢 ICU医師の闘い」(NHK BS1スペシャル)。(4)「ニューヨークの悲劇~”感染爆発“と闘った人々~」(NHK BS1スペシャル、7月19日)。(5)「新型コロナ挑み続ける研究者たち~東大 河岡ラボ100日の記録」(NHK BS1スペシャル、7月23日)。(6)「激動の世界をゆく 巨龍・中国が変えゆく世界 ポストコロナを迎える市民は」(NHK BS1スペシャル 7月23日)。(7)「コロナ危機を飛躍に変えるレジェンド経営者(日本電産会長・永守重信)の挑戦」(テレビ東京、7月23日)。(8)「“コロナ倒産を防げ”~下町信用金庫の二ヵ月~」(NHK BS1スペシャル、7月24日)。

【感染拡大の新たな傾向】
 東京都の感染者は23日(木曜)に368人と急増したが、翌24日(金曜)260人、25日(土曜)295人、26日(日曜)239人、27日(月曜)131人に減少、28日(火曜)266人、29日(水曜)250人。この1週間の1日あたり平均は258人で、ほぼ横ばいである。

 一方、愛知県で新たに109人が感染、初めて100人超となった。これに伴い、新型コロナウイルス感染者について「原則、医療機関に入院」の方針を転換し、軽症、無症状者の自宅療養を容認し、28日に再開した県の宿泊施設も活用するとした。

 ここで前稿(14)で述べた東京都の感染者数の平均値を週単位で整理したい。(1)6月25日(木曜)に始まる1週間は平均して1日に約57人である。

 それが(2)7月2日(木曜)に一挙に107人と3桁となったことで、驚きが拡がった。この1週間は平均して1日に約126人。

 これがまた(3)7月9日(木曜)に224人となり、この1週間は平均して1日に約190人。

 (4)7月16日(木曜)は一挙に286人に上り、この1週間は平均して1日に約243人。

 (5)7月23日(木曜)はさらに366人に跳ね上がり、幾何級数的な<爆発>を危惧したが、上掲の通り、その後はやや落ち着きを見せた。この1週間(~29日まで)を平均すると、1日に約258人。

 6月末からの5週間、東京都の感染者数の推移を見たが、同じ手法で全国の状況をまとめておきたい(<特設サイト 新型コロナウィルス>の<日本国内の感染者数(NHKまとめ)>より)。上掲に合わせて(1)~(5)の5週に分け、( )内に東京の占める比率を入れると、以下の通りである。

 (1)134人(43%)、(2)217人(58%)、(3)374(59%)、(4)605人(40%)、(5)872人(30%)。

 全国の感染者数は、ほぼ週ごとに200人ずつ増加している。東京の感染者が占める割合は前半の3週間は高いが、最近の2週間は下落傾向にある。言い換えれば、感染は東京都より全国で増加している。

【テレビ番組から学ぶ(続)】
 この間、また録画を観る機会があり、新型コロナウィルスの及ぼす影響の大きさを知ることができた。上掲につづけて通番で一覧したい。(9)「新宿ダイアリー 母の店が危機に 娘が見たコロナの日々」(NHK総合(再)、7月25日)。(10)「コロナに揺れる多国籍タウン~東京、新大久保~ 住民の40%が外国人の多国籍タウン 共生の道を探る日・韓・ネパール・ベトナムの人々の半年を追う」(NHK BS1スペシャル、7月25日)。(11)「NHK 日曜討論 新型コロナウィルス 今すべきことはなにか」(7月26日)。(12)「新型コロナ いま“第2波への備えは? ~医療現場からの警告~」(NHK BSスペシャル、7月26日)。(13)「看護師たちの闘い~東京医科歯科大学病院の120日~」(NHK BS1スペシャル、7月26日)。(14)「闘いは、始まったばかり~(奈良県立医科大学)感染症専門医・笠原敬~」(NHK総合、7月28日)。

【さらなる感染拡大】
 7月30日(木曜)、東京都の感染者はふたたび367人に跳ね上がった。週明けの月曜・火曜の検査結果が出るため、木曜の数字は多くなるが、これまでの1週間の1日平均250人前後に比べ、きわめて多い。

 夕方、都知事は臨時記者会見を開き、現在の感染状況について<感染拡大特別警報>と<特別>の2字を加え、強い危機感を示した。また会食を通じた感染が相次いでいるとし、酒を提供する都内の飲食店やカラオケ店に営業時間の短縮(晩の10時まで)を要請、応じた中小の事業者に協力金20万円を支給すると表明した。

 全国の感染者も1301人と最多である。うち顕著に多い府県は、神奈川76人、埼玉57人、千葉49人、愛知160人、大阪190人、兵庫53人、福岡121人、沖縄49人である。そして、これまで唯一感染者ゼロであった岩手県に2人の感染者が出た。

【東京都医師会の見解】
 30日夕方、東京都医師会の尾崎治夫会長が記者会見し、感染確認者が全国的に増加していることに触れ、これを収束させるには(1)法的拘束力のある休業要請を可能にする(2)研究にしか使えないPCR検査を実用化させる―ことなどを訴えた。

 それに関してコロナ対策の特別措置法などの法改正に言及。「東京都医師会から本当にお願いしたいのは、いますぐに国会を召集して、法改正の検討していただきたい。ここ何日間かの流れを見ていると、人口比で東京をはるかに上回る感染確認者が愛知、大阪、福岡、沖縄でも出ている。こうしたことを、夏休み中と言わず…是非、国会を開いて議論してもらいたい。私は今が感染拡大の最後のチャンスだと思っている」と語気を強めた。

 また休業補償とセットの法的拘束力のある休業要請を可能にするよう要望。PCR検査についても「保健所のPCR検査ではエピセンター(感染の震源地の意味で、特定地域・業種・団体等から発生する感染源)と化した地域・時期を限定して一斉にPCRを行うことは能力的に無理だろう。そこで例えば研究所や大学等のPCRを動員してしっかりやっていくことが必要。これも感染症法の改正が必要になるかも知れない…」と説明した。

 その上で、「例えば14日間くらい休業していただければ、そこでの感染は理論的には収まるはず。その間にPCRを地域の検査能力を結集して一斉に行い、…そこに感染者がどのくらいいるか、きちっと把握して対策を練ることが必要ではないか」と語った。

 折しも唾液を使うPCR全自動検査機器(千葉県にあるメーカーの製品)が8月3日から発売される。48検体を2時間で判定、輸出先の欧州ではすでに使用しているという。許認可の不思議を絵に描いたような話である。

【新たな感染状況】
 31日(金曜)、東京都の新規感染者が463人と、さらに跳ね上がった。前々日の29日(水曜)250人から前日の30日(木曜)367人へと100人ほど増え、さらに463人とまた100人ほどの増加である。

 ただ一つの朗報は重症者が昨日の22人から16人と減少したことである。医療従事者の懸命の努力により回復・退院に至った人が6人であることを意味するが、重症者用の病棟が将来も足りることを意味するものではない。


 最近の全国的傾向としては、会食に伴うクラスターや家族内・団体内のクラスターが増えている。そこで焦点を絞り、ピンポイントで地域を限定して営業時間の短縮を要請する自治体(大阪府ではミナミ)や飲食を伴う会合について人数制限(「5人以上」ないし「5,6人以上」)を要請する自治体が出てきた。

【政府分科会の指標】
 31日、政府の分科会が開かれ、尾身会長は、想定される4つの感染状況(<感染ゼロ散発段階>、<感染漸増段階=医療提供体制への負荷が蓄積>、<感染急増段階=医療提供体制に支障>、<感染爆発段階=医療提供体制が機能不全に>)のうち、東京や大阪などは医療提供体制への負荷が蓄積しつつある第2段の<感染漸増段階>に当たるという認識を示した上で、「新規感染者や高齢の患者、重症者の数などの推移を注視し、状況の変化の予兆を見極めることにしたい」と述べた。

 この日、全国の感染者も1580人と最多、前日より279人(約18%)増となった(うち重症者は87人、3週間で3倍)。感染者が顕著に多い府県は前日とほぼ同じである。( )内に前日の数を入れて一覧すると、東京472人(463人)、神奈川53人(76人)、埼玉57人(57人)、愛知193人(160人)、大阪216人(190人)、兵庫62人(53人)、福岡170人(121人)、沖縄71人(49人)。

 人口比の感染者は、沖縄が最多である。人口10万人あたりの感染者は(8月1日現在)、沖縄が首位で18.38人、ついで東京が15.72人、福岡が13.83人、大阪が13.18人、愛知が12.80人である。首都圏では12位に埼玉の4.79人、13位に千葉の4.49人、15位に神奈川の3.66人。

 沖縄は増加のスピードも速い。医療資源等を勘案すると、憂慮すべき状況にある。これを受けて玉城知事は31日夜、記者会見を開き、感染拡大を食い止めるために県内の警戒レベルを「感染流行期」に当たる第3段階に引き上げたことを明らかにしたうえで、県独自の「緊急事態宣言」を発し、8月1日から15日まで、沖縄本島全域で不要不急の外出を自粛するよう要請、また県をまたぐ移動については自粛を求め、県外からの訪問者には慎重な判断を求めた。

 玉城知事は「重大な局面を迎えていることを県民に伝え、感染拡大防止に取り組むため宣言を発出した。県内の医療機関の病床は逼迫していて、何としても医療崩壊を食い止めたい」と述べた。また那覇市内の飲食店には営業時間を短縮して午前5時から午後10時までとするほか、イベントの主催者には開催の中止か延期または規模の縮小を検討してもらい、実施にあたっては十分な感染防止対策を取るよう求めた。

 これにより、人気の観光施設・沖縄美ら海水族館を2日から8月15日まで臨時休館することとした。

【これからどうする?】
 月が替わり8月1日(土曜)、全国の感染者が1536人で、前日より44人減であるが、4日連続の1000人越えである。東京都は472人で前日より9人増えた。

 都の担当者は「472人の情報を分析すると、先月下旬の4連休(7月23~26日)に外出したり、遊びに行ったりした人が感染したという例が多くあった。今日、人数が増えた要因の一つは4連休の行動だと思う」と話す。そして、多数での長時間の飲み会や宴会、少人数であっても近い距離での会話などは避け、飲酒を伴う会食目的の外出を控えるよう呼びかけた。

 2日(日曜)、夕方8時現在、東京の感染者は292人、前日より180人減である。急減した要因は分からない。重症者は1日と変わらず15人である。全国の感染者は1326人、こちらも210人の減である。

 九州が30日、梅雨明けした。例年より3週間遅い。31日には近畿地方、8月1日に東海、関東甲信越、翌2日に北陸と東北南部の梅雨明けが発表された。

 気温が急上昇し、感染症対策のマスク装着が熱中症を加速するのではないか。豪雨、長梅雨による影響も深刻で、今後の病虫害発生や台風被害も懸念される。この先、<備えあるも憂いあり>の心構えで迎え撃つことになるだろう。
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人類最強の敵=新型コロナウィルス(14)

 前回(2020年7月2日掲載「人類最強の敵=新型コロナウィルス(13)」の末尾は次の一文で終えた。「本稿作成中の7月2日午後、東京都の新規感染者は107人という速報が入った。前日の67人からの急増である」。

【増えつづける感染者】
 この1週間、東京都の新規感染者は、25日が48人、26人が54人、27日が57人、28日が60人、29日が58人、30日が54人、7月1日が67人(アラート解除後の最多)と50人前後で推移してきたが、一挙に107人と3桁となったことで、驚きが拡がった。

 ついで3日(金曜)が124人、4日(土曜)が131人、と3日連続の3桁である。新規感染者数は、緊急事態宣言下の2カ月前、5月大型連休中の高水準に戻った。うち約8割が10代から30代の若者で、感染経路不明が約3割の46名である。

 東京都にとどまらず隣接する埼玉・神奈川・千葉の3県でも増加している。これを受けて小池都知事は、「近隣の県でも陽性者(感染者)が増えている。不要不急の他県への移動は遠慮してほしい」と要請した。

 また新宿エリアや池袋エリアの<夜の街>関連の感染者が62人と約半数を占めるため、都知事は<夜の街>への外出を控えるよう要請するとともに、<夜の街>の従業員や利用客に対して、感染防止のガイドライン(関係団体が作成)を守るよう呼びかけた。また約3割の感染経路不明については、クラスター発生か否かを鋭意調査中と述べる。

【九州の豪雨災害】
 4日(土曜)、熊本県を中心に豪雨災害が発生、4年連続の豪雨である。雨は5日、6日と断続的に降りつづき、警戒地域を<九州全域>に拡げつつ、7日、8日とつづき、さらに全国へと拡がっている。(後記:実に2週間以上にわたる長期の豪雨である。)

 気象庁は、<熊本豪雨>から<九州豪雨>と名称を変え、さらに日本列島の広域にわたるため<令和2年7月豪雨>とした。地球規模の<気候変動>がもたらす豪雨と見られる。

 熊本県へ緊急支援に入った近県の職員の感染が判明し、受入れをやむなく断った。コロナ禍が復旧作業にさらなる追い打ちをかける。

【都知事選挙】
 5日(日曜)、都内の新規感染者は111人。4日つづきの3桁となる。この日は都知事選の投票日にあたり、締め切り時(午後8時)の出口調査で小池知事圧勝と出た。即日開票の結果は、小池氏が約366万票を獲得、2位の元日弁連会長・宇都宮健児氏の約84万票を圧倒した。

 6日(月曜)、2期目の再選を果たした小池知事は「責任の重さを改めて感じる。…国との連携で行っていくべき課題はたくさんある。コロナ対策、東京五輪・パラリンピックの話もさせていただかないと時間も迫っている」と述べ、安倍首相と会談に入った。

【増えつづける感染者】
 6日の都内新規感染者は102人で、5日つづきの3桁である。PCR検査の数を増やしたことも一因であるが、陽性率(検査数のなかの陽性者=感染者の比率)が高止まりなのも事実である。それでも病床数は足りているうえに、感染源が特定の店舗とその従業員に特定できているケースが多く、ピンポイントの対策を打つことができるとのこと。

 ウィルスがヒトを介して拡がることを考えれば、従業員とその顧客のPCR検査を徹底し、感染者が出れば14日間の隔離を実施、クラスターをつぶすことができる。しかし経路不明者が多く、無症状の感染者がおり、またPCR検査を拒否する人もいる。

 東京にとどまらず、埼玉、神奈川、千葉の近隣3県でも感染者が増加した。東京と近隣3県の生活圏が密接に繋がっていることが分かる。

【専門家会議から分科会へ】
 6日午後、新型コロナ対策の分科会として改組された専門家会議の初会合があった。メンバーは計18名で、感染症専門家のほかに経済等の専門家を含む。この分科会は、2月から医学的見地の助言を行ってきた専門家会議を廃止し、新たに設置されたもの。同本部のホームページにまだ委員名の掲載がない。

 7月4日の朝日新聞デジタルによると、分科会の名称は「新型コロナウイルス感染症対策分科会」で、専門家会議副座長だった尾身茂・地域医療機能推進機構理事長が会長に就く。12名で構成されていた専門家会議からは、6月24日の会見で「専門家会議と政府の役割分担を明確にする必要がある」と語っていた座長の脇田隆字氏や公衆衛生、リスクコミュニケーションの専門家8名が入った。

 基礎研究の学者4名は加わらず、感染症指定医療機関の医師、医療法人、保健所の代表、また全国知事会で新型コロナ対策本部長代行も務める平井伸治・鳥取県知事、南砂・読売新聞東京本社常務取締役も入った。政府筋によれば、構成員は継続性を考えて専門家会議の大半を移したほか、各団体にも推薦を依頼、感染・発症後に社会復帰した著名人を起用する案もあったという。

【ピンポイントの対策】
 8日のTBSテレビ<ひるおび>で吉住健一・新宿区長は、ホストクラブ経営者の協力も得て感染防止に努めており、ホストクラブでのクラスター発生はホストがマンション等で集団寮生活をしていることに多く起因することも分かり、対応策を進めている、と述べた。

 新宿区には多数の歓楽街や飲食街がある。その住民基本台帳人口は35万人弱、うち老齢人口(65歳以上)の比率は20%弱で、ほぼ都内平均に近いが、外国人の占める割合は約11%と高い。外国人経営の飲食店ではクラスター発生の報告はない。

【GoTo トラベル キャンペーン、22日から一部開始】
 感染者の増加に身構えるなか、消費を喚起する政府の「Go To トラベル キャンペーン」のうち観光分野の補助制度について、赤羽一嘉国土交通相は10日、7月22日から一部を先行開始と発表した。宿泊代金の割引から行い、旅行先での飲食や買い物に使えるクーポン券の発行は9月から「感染状況を踏まえながら準備を進める」と述べた。

 その予算額1兆3500億円のうち事務委託費の上限が約16%の2300億円に野党などから批判が出ていた。委託先の公募には5事業者が応じ、有識者を含む委員会で検討した結果、JTBなど旅行大手や日本旅行業協会など7者でつくる「ツーリズム産業共同提案体」が選ばれ、委託費用は1895億円となった。

【苦境に立つ病院】
 人々の頼みの綱である病院が苦境に立たされている。使命感から対応してきた病院が、今後も同じような対応を進めることができるか。まずは病院の現状を見たい。日本医師会は8日、「新型コロナウイルス感染症の病院経営への影響―医師会病院の場合―」を発表した(【MEDIFAX web】2020年07月09日)。

 感染症の入院患者がいる病院の2020年3~5月の医業利益率はマイナス21.5%で、前年同期のマイナス6.4%から15ポイント悪化した。同感染症に対応する病床がある病院もマイナス16.3%で、マイナス3.4%から12.9ポイント悪化した。同感染症の入院患者がいた病院は14、病床を確保していたのは28であった。6月1日現在、稼働している72病院のうち58病院からの回答である(回答率は80.6%)。

 全国の新型コロナの重症患者の約81%を収容してきたのが国公私立の大学病院である。その経営悪化が、まず国立大学附属病院42で明らかになった(【MEDIFAX web】7月6日)。病床稼働率の大幅減などについて、42病院のデータを集計すると、今年4月の対前年度同月比較で外来と入院を合わせた医業収入は56.7億円の減収。5月は112.7億円の減収(マイナス12.2%)と深刻化している。

 5月の経営悪化の要因は、入院の延べ患者数13万4469人の減少(マイナス16,7%)、不急の手術の一時的回避で病床稼働率も67.4%まで下落したことである。外来延べ患者数も32万8158人の減少(マイナス24%)となり、患者の受診控えの傾向(4~5月で750件減少)も続く。

 6月からは病床稼働率を80%に戻し、今月6日から全面的に回復させていく方針の一方で、毎週開催している院内のコロナ対策会議は患者数が減少しても継続し、今後の感染の波に備えた体制を維持すると言う。

 ついで日本私立医科大学協会(医大協)も新型コロナの診療対応による経営への影響度調査結果をまとめた(【MEDIFAX web】7月16日号)。3~5月で、本院と分院を合わせ、重症患者233人、中等症450人、軽症645人の計1828人を受け入れている。4月、5月の経営実績(総額)は、加盟大学付属病院本院29病院では前年比で約300億円の減収、医業利益も約250億円減少した。分院54病院も同様で医業利益は約150億円減、病床稼働率も5月に61%に下落。病床稼働率90%台が採算ラインと言われるなか、61%は深刻である。

 公立大学の附属病院(10)はどうか。まだ発表がないが、おそらく国私立と大差ない困難な状況であろう。

 大学病院に対して2020年度補正予算の各種事業での迅速な手当てが急務である。さもないと第2波と呼ばれる次の感染拡大への積極的な備えはおろか、悪化した状況の立て直しさえできないまま、最悪の事態に突入しかねない。

【急増する感染者】
 東京都内の感染者は8日の75人から9日に224人と激増、4月17日の206人を超えて過去最多を記録した。また埼玉が11人、神奈川が25人、千葉が22人と増加、全国で350人増となった。

 ここまでの傾向を見ると、平均して50人前後の1週間があり、ついで100人前後の1週間がつづいたうえの9日からの224人である。この先の1週間、200人台はつづくのか。

 不安が的中したかのように、10日(金曜)には、東京都が243人と最多を更新、埼玉が44人、神奈川が32人、千葉が12人、全国で430人となった。11日(土曜)は東京で206人、12日(日曜)が206人。ただし東京都の重症者は減りつづけ現在は5人で、医療崩壊の危険はないという。

 にもかかわらず、保育園でのクラスター(集団感染)の発生があり痛ましい。また劇団の公演にともなう役者・スタッフのほか観客を含む30人の集団感染も発生、防止対策の難しさを浮き彫りにした。

 一方、政府対策本部の発表どおり、10日(金曜)から、プロスポーツやコンサートの無観客開催を上限1000人の観客開催とし、さらに緩和して上限5000人まで可能とした。プロ野球やサッカーJ1の会場に集まるファンの熱狂ぶり、日本フィルの5カ月ぶりの演奏に涙するファンの姿がテレビに写る。

【東京の感染者が再増加】
 都庁のホームページ「都内の新感染情報」等によれば、東京の感染者は9日(木曜)224人、10日(金曜)243人、11日(土曜)206人、12日(日曜)206人、13日(月曜)119人、14日(火曜)143人、15日(水曜)186人、16日(木曜)に一挙に286人に上り、17日(金曜)293人、18日(土曜)290人、19日(日曜)188人となった。

 約50人の1週間から約100人の1週間となり、次いで約200人の1週間と急ピッチで週単位の倍々増である。危惧された約200人が1週間つづき、その次の倍数の約400人台が到来するなら、感染第2波と言わざるを得なくなる。急速な医療崩壊が目前に迫る。

 陽性率も上がっている。1週間単位で見ると2週前は3%だったが、17日に至る1週間では6%と倍増。18日、東京都が設けている総括コメント(4段階)のうち<感染が拡大していると思われる>の赤信号が点灯し、もう1つの医療提供体制についても<体制が逼迫していると思われる>の赤信号となった。また経路不明者が増え、陽性率が上がると、これまでの<クラスターつぶし>という対応法が通用しなくなる恐れがある。

 17日、神奈川県でも感染者が43人、過去1週間の陽性率は7%となり、黒岩知事が<感染拡大注意>の黄色信号(神奈川警戒アラート)を発令した。

 全国レベルでは感染者が682人で、この1ヶ月に比べて11倍の急増である。世界レベルでも18日の1日だけで26万人と過去最多となった。

【東京発着を除外】
 16日(木曜)、政府の分科会が開かれ、国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル キャンペーン」について、予定の8月1日開始を7月22日からに前倒しするとした方針を、知事たちの反発と東京都の感染者急増という現実を前に、急ぎ東京都民の他地域への移動と道府県から東京への移動を除外すると決めた。<東京発着の除外>である。

 予定日直前の方針転換に旅行・運輸業界の打撃と戸惑いは大きいであろう。それ以上に、政界の意思決定過程が多大な不信感を招いた。これが尾を引けば、第2波への対応に大きな綻びが生じかねない。

【PCR検査の進め方】
 同じ16日の分科会では、今後の検査体制の基本的な考え方がまとめられた(【MEDIFAX web】7月17日号)。検査は①有症状者、②無症状者で感染リスクと検査前確率が高い、③無症状者で感染リスクと検査前確率が低いーの3カテゴリーに分ける。検査をすべきかどうかで最も意見が割れる③については、検査実施のメリットに「不安を持つ受検者に安心感を与える」等を、またデメリットに「感染リスクと検査前確率が低い無症状者から感染者を発見する可能性は極めて低い」「検査前確率が低いほど偽陽性が出やすい」等を挙げた。

 その上で提言として、①と②の検査を優先することを前提にした上で「行政検査としては実施しないが、民間企業や個人が個別の事情に応じておのおのの負担で検査をすることはあり得る」と提言。その際の留意事項に、検査の質の確保や、事業者が従業員を対象に検査をする際は従業員の自由意思で行うことなどを挙げた。分科会終了後の会見で尾身会長は「コンセンサスを得た。これが分科会としての政府への提案になる」と述べる。

【藤井聡太棋聖の誕生】
 同じ16日、18歳の誕生日を目前にした藤井聡太七段が、第91期棋聖戦五番勝負で渡辺明棋聖(36歳)を破り、タイトルを獲得した。30年ぶりの最年少記録更新に世論が沸く。

 桂馬を頻繁に使う戦法を、五条大橋で牛若丸が弁慶を従えた比喩に用いた解説があったが、これならは素人にも分かりやすい。あどけない風貌が残る天才棋士に各界からエールが送られた。

【世界のコロナテックと日本】
 18日(土曜)の日経新聞のトップ記事は「米中コロナテック躍進 ネット新興 社会変化対応」である。新造語<コロナテック>は、新型コロナウィルス感染拡大に端を発した諸問題を解決するテクノロジーやサービスの意味であろうと容易に推測がつく。先行例として<フィンテック>等があり、その類推を活かした造語である。この記事が紹介する要点は以下の通り。

 経済や社会の激動期は新興企業のスタートアップにとって大きなチャンスである。2003年のSARS流行期に中国ネット通販のアリババが急成長した。2008年のリーマン危機前後にはウーバーテクノロジーズ等が生まれ、車や住宅等の<所有>から<利用>の動きを先取りして成長した。
 現在も似た状況にあり、デジタル関連の企業が多い。技術革新を生み出すスタートアップを育成しなければ、産業の新陳代謝が進まず、国の競争力は落ちていく一方である。
<ユニコーン>(企業価値10億ドル超の未上場企業)の数で見ると、アメリカが225社、中国が125社、EUが29社、インドが21社、韓国が12社等に対して、日本はわずか3社に過ぎない。主要国のスタートアップ投資額(年換算)は、アメリカの14兆円、中国の10兆円に対して、日本はわずか4000億円と、桁が違う。

 この特集記事のすぐ下に「行政デジタル化 集中改革 骨太方針決定 内閣官房に司令塔」の記事が載る。安倍首相が経済財政諮問会議で「思い切った社会変革を果敢に実行する」としたが、財政運営の見通し数値を示さず、「2020年末までに改めて工程の具体化を図る」として先送りした。

 関連記事が3面につづく。20年前に「5年以内に世界最先端のIT(情報技術)国家とする」と宣言はしたが、「旗振り役 行政の遅れ」のため、諸指標から見て世界10位の圏外にある。日本は<IT競争力ランキング>で12位、<電子政府ランキング>で14位、ビジネス環境ランキング>で29位。日本の政治行政機能の劣化を象徴するような数字である。

 本連載「人類最強の敵=新型コロナウィルス」を3月6日に始めて以来、展開の速さを追うため、ほぼ週に1回のペースでつづけ、(11)まできた。それ以降はペースダウンし、(12)と(13)は3週間に1回としたが、ここに来てまた事態急変の予感がする。

人類最強の敵=新型コロナウィルス(13)

 前回(12)の末尾は、6月11日(木曜)、東京アラートが解除され、「今後は感染リスクの高い場所などに対象を絞った対策が中心となる」と結んだ(2020年6月12日掲載「人類最強の敵=新型コロナウィルス(12)」)。東京都の掲げる7つの指標のうち、現段階では病院のベッド数に余裕はある。

 6月12日以降はどうか。東京都の新規感染者は14日(日曜)が47人、16日が21人で、アラート解除後の5日間で計171人にのぼり、なお増え続けている(その後の数字は後述)。

 東京のみならず全国規模で感染者が増えてもおかしくないが、どのくらいの人数までなら現有の病床数が間に合うのか。再びの緊急事態宣言の発動はあるのか。いわゆる<第2波>をどのように定義し、どのように防ぐのか。

 これまでのブログ連載「人類最強の敵=新型コロナウィルス」は、ほぼ1週間に1回のピッチであった。激しく変わる状況を記録しようと追いかけてきたが、これからは少し長い時間軸で追い続けていきたい。

 世界の現状を18日(木曜)の日経新聞が伝える。米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、米東部時間16日午前11時(日本時間17日午後0時)時点で、世界の累計感染者数が806万人を超え、8日間で100万人の増加、死者は43万7千人となった。2週間後の29日、累計感染者数は1000万人、死者数は50万人を突破する(日経新聞29日)。

 国別ではアメリカが感染者・死者ともに世界最多で、ブラジルが続く。感染の中心は欧米から中南米や南アジアの新興国へ移り、現在、新規感染者が多いのはブラジルやパキスタン、インドといった国が中心である。アメリカも経済活動の再開を機にふたたび増加傾向に転じ、世界全体の1日あたりの新規感染者が過去最多を更新する日も多い。格差が大きい新興国では低所得層の感染拡大がつづくが、有効な手を打てていない。

 過去5カ月間の新型コロナによる死者の増加ペースは、10万人から20万人までは16日間、20万人から30万人は19日間、ペースは徐々に鈍化しているものの、1日あたりの死者数は約3千~5千人台となお多い。国・地域別の死者はアメリカが10万9千人超で、全体の約4分の1を占め、2位はイギリスの4万人、以下、ブラジルが3万5千人超、イタリアが3万3千人超とつづく(ロイター通信)。

 ピークを超えた国・地域、また中国や韓国など抑え込みに成功したとされる国では経済活動の再開や規制緩和が進むが、同時に<第2波>への対策が大きな問題となっている。

 ワクチンの開発が急がれるが、早くとも1年と言われる。たとえ開発されても世界の約72億人のどこまで行き届くか、それに要する時間や経費の負担の目途は立っていない。既存の治療薬の活用は進んでいるが、新規の治療薬はまだできておらず、世界的な事態収束への道のりはなお遠い。

【吉村知事と西浦博教授の論争】
 大阪府の吉村洋文知事が6月12日の「第2回大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議」終了後の囲み会見で、北海道大学の西浦博教授(理論疫学)の数理モデルを基にコロナ対策を行ってきたことについて、「国を挙げて批判的検証をしないと間違った方向に進むんじゃないか」と懸念を表明した。

 これを受け、西浦教授から取材し、かつ第三者の見解を含めた記事を掲載した雑誌がある(「週刊新潮」誌2020年6月25日号に先立つネット配信)。重要な論点を含むので、幾つかを再録したい。

 吉村知事はあらためて次のように答えた。「西浦先生には敬意を表していますが、感染拡大時に冷静な分析は難しい。緊急事態宣言などの政策は、僕は正しかったと思いますが、第2波がきても同じことをするのか、事後に冷静に検証するのは別のこと。第1波の自粛要請で生じた経済、社会へのダメージはものすごい。失業率も2%上昇し、自殺者も2千人増えると言われ、そちらの命も守らなきゃいけない。で、抑えこみの出発点が西浦モデルでした。次の波に備えて同じことをしたら、国家は危機的状況になる。ほかの指標はないか探し、出てきたのがK値でした。国家の浮沈を決める重要な局面で、西浦モデルに批判的意見を言う人が出てこないことに、危機感を抱いています」。

 国の政策を動かし、社会経済活動を停止する大本の試算を提示した西浦教授は次のように言う。「中国しか制御できていなかった3月下旬、接触を減らすことが必要で、被害想定や接触削減の目標が据えられました。(強烈なインパクトを受けた)吉村知事のリアクションは、妥当なものであったと思います」と言いつつも、吉村知事が「全部抑えなければならない」と思ったことは、「当方の担当している話と逸れ、厚労省と大阪府のコミュニケーションの問題かと思います。(社会的なインパクトを与えたと批判されるなら)感染症疫学の問題と経済学の問題を混在して、感情的に議論していると思う。私を含め感染症の専門家は、流行制御のためにシナリオを分析しており、他方、経済的インパクトは経済学者にご意見を聞いていただかないといけません」。

 また、42万人の被害想定と接触8割削減の目標は、「キッチリ分けてお考えください。前者は科学顧問あるいは首相が説くべきであったと思う。この感染症は流行の展開が速いなか、どうして専門家が体を張って、前のめりに発表しないといけなかったのか、みなさんには共有してもらいたいと思っています」とのべ、自ら発表せざるをえなかった、政治と行政への不満をにじませる。

 また、被害想定の妥当性については、「伝達法は政府も専門家も改善点がありますが、その時点での科学的妥当性に瑕疵があったとは考えていません。社会的影響が大きかった流行対策なので、科学的検証がなされる必要があると思いますが、被害想定の42万人は、米国の状況とくらべていただくとよいのが、人口差を換算しても大きく離れているようには思いません。いまだ“日本は大丈夫だった”というわけではないので、注意していただく必要があります」。

 政治が動かないなか、体を張って発表した試算は、あくまで感染症疫学上のもので、西浦教授だけに責任を負わせるのはアンフェアと言える。国の専門家会議関係者などで構成されるコロナ専門家有志の会の一員、早稲田大学の田中幹人准教授(科学技術社会論)が言う。「西浦教授も、被害想定は政治の側から発信してほしいと語っています。科学者が情報を上げ、決定は政治が、という棲み分けが必要でしたが、日本では政府が専門家会議から意見を聴取し、政策決定は自分たちが行う、という役割分担がうまくいかなかった。安倍総理の会見でも、社会的に議論を呼びそうな部分は“専門家会議の提言はこうだから”と、判断の主体を専門家に差し戻している様子が窺えます」。

 科学コミュニケーションが専門の東京大学特任講師、内田麻理香さんも言う。
「本来、リスク評価は専門家、リスク管理は政治、と分けるべきで、そのバランスがとれているのがドイツ。コッホ研究所や科学アカデミーの助言、分析をもとにメルケル首相が判断を下す、というように役割が明確に分けられています。しかも科学アカデミーには、政治学や経済学の専門家もいるので、サッカーをいつ再開するかというテーマも、経済学の視点を入れて取り上げることができます」

 それができない日本は、「科学者がリスクマネジメントにまで踏み込むという、不健全な状態になってしまった。常設の科学の諮問機関はなく、専門家会議も新型インフルエンザの際の会議の変型版で、権限や責任が不明確のまま形成され、シミュレーションも西浦教授頼み。人材不足は、日本が感染症のように普段は重要とみなされない分野への予算を削った影響でもあり、数理モデルを扱える人はわずかなためブラックボックスになってしまう、という見方をされています」と述べる。

【山内一也<敵対と共生のはざまで>】
 20日の再放送<山内一也 敵対と共生のはざまで>(NHK Eテレ)を観る機会があった。ウィルス学者の山内さんは、ウィルスにとってヒトはコウモリ等に比べると取るに足りない宿主だと言う。

 ウィルスの側からヒトを観るウィルス学者の視点から、46億年前に誕生した地球を1年に置き換える山内さんの<生命の一年歴>によると、ウィルスの登場は5月初旬ころであるのに対して、人類の地球への登場は、年末はおろか大晦日の最後の数秒に過ぎないという。

 そのためか、ヒトゲノムの約4割はウィルス由来であり、ヒト(人類)はウィルスと<共生>し、これからも<共生>をつづけると言う。題名の<敵対と共生のはざまで>は、ここに由来している。

【国産スパコン<富岳>】
 23日の日経新聞は、一面トップで「国産スパコン 世界一奪還 理研・富士通の<富岳> 8年半ぶり」と報じる。2011年秋に計算速度世界一の<京>(けい)がトップの座を奪われ、以来アメリカと中国が首位を奪い合ってきた。その<京>の後継機が<富岳>(ふがく)で、1秒間の計算回数は直前首位のサミット(アメリカ)の実に3倍である。

 性能の高さと利用の裾野の広がりから富士山をイメージして命名された。<富岳>を使い、感染予防の一つとして、咳で飛沫がどこまで飛ぶかの実験が行われたばかりである。今後の新薬や新素材の探索、人工知能(IT)への活用に道を開く。企業や大学がいかに活用できるかが問われている。

【集団免疫をめぐる諸説】
 集団で免疫を持つ人が一定の割合に達すると感染拡大は終息に向かうとされるため、免疫を強制的に獲得するワクチンは一つの手段である。集団免疫の獲得により社会経済活動の制限解除へと大きく舵をきる、その<一定の割合>とは如何ほどか。これまでは約6割といわれてきたが、今回の場合、約1割から4割ほどでも良い等のばらつきが見られるという。

 集団免疫説による対策の一つが、スウェーデンが採用しているもので、26日の日経新聞によれば、周辺国より死者も多く、感染も拡大しているがロックダウン(都市封鎖)は行わず、集団免疫により感染の終息を目ざす政策を進めている。賛否のある中、経済活動への影響を可能なかぎり減らす対策として注目を集めており、5月下旬のストックホルムでは、住民の抗体保有率は約1割と推定され、4月末から感染者数の伸びは鈍化した。

 また2月に横浜港に停泊したクルーズ船で乗客乗員全員にPCR検査を行ったところ、約2割からウィルスが検出された。4月の長崎港のクルーズ船でも同様に約2割である。従来の<6割説>より、はるか少ない。

 集団免疫に関する研究は必ずしも多くはなく、精度も途上にある。英科学誌サイエンスにはストックホルム大学でまとめた「免疫を持つ人が4割程度で集団免疫が獲得できる」とする試算が掲載された。英オクスフォード大学等のグループは「人口の1~2割が感染すれば流行が終息に向かう」とした。一方、感染しても免疫が長期に持続せず、集団免疫は期待しにくいとする見解もある。

【新型コロナウィルスを可視化する】
 27日、NHK BSスペシャルの番組「見えない敵を観る-ミクロの目で迫る新型コロナウィルスの正体」を観ることができた。医師でCGクリエーターの瀬尾拡史さんが、コロナウィルス学の松山州徳さん(国立感染症研究所)、免疫学の村上正晃さん(北海道大学)、治療現場の臨床医の忽那賢志さん(国立国際医療センター)、西川正憲さん(藤沢市民病院)等から今年3月下旬以来オンラインで独自取材、最先端CG(コンピュータ・グラフィックス)によりウィルスを可視化。感染や発症、治療薬開発の謎に迫る。

 松山さんは新型コロナウィルスの顕微鏡写真を初めて公開した人で、SARS(2003年)コロナと今回の新型コロナウィルスとの比較等を通じて、その特性を語る。村上さんはサイトカインストーム=免疫細胞(1L-6)の暴走による謎の炎症を解明、重症化を断ち切る治療薬トシリズマブの効用を語る。

 瀬尾さんは言う。「世界中で新しい知見を無料で公開するのは今回が初めてではないか」。この一言に感銘を受け、瀬尾さんその人に興味を抱いた。ネットに公開されている資料から簡単に紹介したい。

 瀬尾さんはいま35歳の医療CGプロデューサーで、株式会社サイアメント代表取締役。彼の幼少期の趣味は<因数分解>、足し算と掛け算でできたパズルを解くのが楽しかったと言う。筑波大学附属駒場中学に進学、部活はパーソナルコンピュータ研究部(通称・パ研)。東京大学入学、教養学部の単位は最初の半年でほぼ全て取り切り、2年次にはダブルスクールでデジタルハリウッドに通う。3年生で医学部進学、チューターの法医学教授から2年後に裁判員制度が始まるが、殺人の状況や傷の状態が写真だけでは把握しにくいため、「良い方法を考えてほしい」と政府から東大に依頼が来た。こうして瀬尾さんの作った3DCGが裁判員裁判第1号事件の証拠に使われ、東大総長賞を受賞(2010年)。以来、異なる分野の専門家をつなぐ<通訳>が必要と考え、2011年にサイアメント社を起業。

【東京都のモニタリング指標】
 東京都はモニタリング指標として7つを挙げ(都ホームページ)、これに基づく総合判断を行っている。すなわち①新規陽性者数、②新規陽性者数における接触歴等不明率、③週単位の陽性者増加率、④重症患者率、⑤入院患者数、⑥PCR検査の陽性率、⑦受診相談窓口における相談件数。

 これら7つの指標のうち、①が目立つためよく取り上げられるが、医療崩壊を回避するための予想指標は④と⑤である。現状では④が100床(レベル1)の20床、⑤が1000床の225床(6月23日現在)で、たとえ急増しても対応可能な範囲内とされる。

【入国制限の緩和(<開国>)】
 今後の入国制限の緩和(<開国>)について、前回の本ブログ(12)で次のように述べた。「…感染防止策の一つが<水際対策>と呼ばれる国家間の移動の禁止、すなわち入国制限=<閉国>である。これは事実上の国交断絶に等しく、歴史用語の<鎖国>ではなく、史上初の世界規模にわたる<閉国>と呼ぶに相応しい。いま日本は世界111カ国からの入国禁止(<閉国>)を実施している。そして近い将来の入国制限緩和(<開国>)の対象国としてタイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの4ヵ国が挙がっているが、相手国の合意まで紆余曲折が予想される」。

 4ヵ国のうちベトナムとは、19日、合意に達し、25日に最初の臨時便が成田を発った。他の3カ国との合意はまだなされていない。観光面でのインバウンドに期待する声も、当分の間は<空振り>となりそうである。

 一方、感染国からの帰国日本人の成田空港における検査だけでも人手不足でパンク寸前との報道がある。これに110カ国からの入国禁止(<閉国>)が解除(=<開国>)されれば対応できるのか。

【科学者と政治家】
 25日午後、記者クラブで専門家会議の脇田隆宇座長、尾身茂副座長(基本的対処方針諮問委員会会長)ほかが会見し、組織の見直しについて見解を表明したが、その直後(ほぼ平行して)、西村大臣が記者発表を行い、「今般、専門家会議を廃止することになります。代わりに(新型コロナウィルス感染症対策の)基本的対処方針諮問委員会の分科会とします」と述べた。科学者と政治家の意志疎通に疑問が出され、西村大臣はのちに「…ことばが足りなかった」と釈明した。

 この問題は前述の【吉村知事と西浦博教授の論争】でも繰り返された重要な問題である。専門家会議を、政府が<基本的対処方針>を決めるさいの<諮問委員会>の分科会と位置づけることにより、一応の解決を得たように見える。

【増えつづける感染者】
 東京都の①新規陽性者数の増加ぶりは異常に高く、今後も止まりそうにない。24日が55人、25日が48人、26人が54人、27日が57人、28日が60人、29日が58人、30日が54人、7月1日が67人(アラート解除後の最多)である。うち8割弱の42人は30歳代以下の若年層。接待を伴う飲食店の従業員や客等の<夜の街>関連の感染者は31人、その半数が新宿地域の店の関係者である。

 19日の東京アラート解除と国による全国的な移動解禁から14日後(これが潜伏期間とされる)の、7月3日ころから大きな変化が出てくるとされる。それと相関関係(ないし因果関係)がありそうである。

 30日、東京都は、7つの指標の枠組みは変えないまま、幾つかの見直しを発表した。注目すべき点は、数値目標を撤廃し、医療体制を軸に総合判断するとしたことであろう。

 一方、医療機関にたいしては④の100床と⑤の1000床の<レベル1>を、それぞれ500床と3000床の<レベル2>に引き上げる準備をしてほしいと指示した。

 北海道では、小樽市で4人が感染、市内に住む60~70歳代の男女で、うち2人は24日にクラスター(感染集団)が認定された「昼カラオケ」の利用客。同市の感染者は3日間で19人となった。このほか、埼玉県でも新たに16人の感染が判明した。

 これについて西村大臣は、27日午前、「今のところ政府としての対応の方向性を変える考えはない。引き続き緊張感を持って、感染者数の動向を分析する」と述べる。

【感染は本人の責任か】
 29日の読売新聞によれば、感染するのは本人が悪い――。3~4月の時点で、そう考えていた人の割合が、日本は米国や英国などに比べて高かったという調査結果を、三浦麻子(大阪大教授)ら心理学者の研究グループがまとめた。3~4月、日本、アメリカ、イギリス、イタリア、中国の5か国で各約400~500人を対象にインターネット経由で得た回答である。

<本人が悪い>とする比率は、日本が12%、中国が5%、イタリアが3%、イギリスが2%、アメリカが1%で(小数点以下四捨五入)、米英の約10倍にのぼる。反対に<全く思わない>と答えた人は、他の4か国の60~70%台に対し、日本は29・25%である。

 国内で感染者が非難されたり、差別されたりしたことと、こうした意識が関係している可能性があるとしている。「日本ではコロナに限らず、本来なら<被害者>のはずの人が過剰に責められる傾向が強い。通り魔被害に遭った女性が、『深夜に出歩くほうが悪い』などと責められることもある。こうした意識が、感染は本人の責任とみなす考えにつながっている可能性がある」と三浦さんはいう。この日本人の<心理的特性>は、新型コロナウィルス対策に影響を及ぼす一因と考えられよう。

【7月に入って】
 月が替わり7月1日(水曜)、香港の<一国二制度>を50年にわたり約束した中英の合意施行から、その半分に満たない23年目の記念日である本日、習近平国家主席は<香港国家安全法>の公布・施行を決定した。<一国二制度>の一方的放棄を、<民主主義への挑戦>と捉える世界の世論がある。

 日経新聞の1日朝刊に「ビジネス往来再開 第2弾 台湾・ブルネイと協議へ」の記事。その次の候補にはミャンマー、シンガポール、マレーシアが挙がる。一方、中国や韓国を第2弾の交渉相手に加えるかは慎重に検討中という。

【免疫で人間の再生力引き出す】
 こうした情勢下、「免疫で人間の再生力引き出す」という記事を見つけた。日経新聞1日の朝刊<挑戦者たち>シリーズの1つ。その<挑戦者>の名はK・サンドラー(米国立衛生研究所NIH研究員)、30歳の才媛である。

 彼女は「もともと人間に備わっている免疫を使い、迅速に組織を再生させる研究」に取り組んでいる。ケガをしたときウィルスやバクテリアと戦い化膿を防ぐ<攻撃型>の免疫機能に対して、サンドラーが注目するのは「傷口を塞ぐ組織や筋肉を再生する」という<癒し型>の役割である。

 ジョンズ・ホプキンス大学の博士論文執筆中、夜に日を継ぐ実験の合間に、この<組織や筋肉を再生する役割>を担うのが<ヘルパーT細胞>であることを突き止めた。免疫の研究に邁進しつつ、斬新なアイディアを分かりやすいことばでネット配信する<TEDトーク>にも登壇する。趣味はハイキング。いま無症状等を理由に統計に反映されない感染者数を洗い出すプロジェクトを立ち上げたばかりである。

 瀬尾拡史さんといい、サンドラーさんといい、研究者・特異な表現者・実務家等の顔を併せ持つ、若い世代の登場と今後の活躍に心から期待する。そして<その次の世代>の育成にも大きな期待を抱く。

 本稿作成中の7月2日午後、東京都の新規感染者は107人の速報が入った。前日の67人からの急増である。

人類最強の敵=新型コロナウィルス(12)

 6月1日(月曜)、三溪園は約2か月ぶりの再開園にこぎつけた。15万坪余の広大な庭園のみの開園である。屋内施設の三溪記念館と合掌造り(旧矢箆原邸)の再開園やボランティアガイド活動の再開については鋭意検討中であったが、4日(木曜)の会議で次の方向を決めることができた。

 横浜市の林文子市長は5月26日、「これまで休館や中止・延期をしていた市民利用施設や市民サービス、市主催のイベント等については、国・県の方針や通知、具体的なガイドライン等を踏まえ、万全の感染対策を講じた上で、6月1日以降、速やかに再開していきます。」と述べている。

 市長のいう「国・県の方針や通知、具体的なガイドライン等を踏まえ」のうち、神奈川県は段階的なステップを示していないため、三溪園が準拠したのは国の決定、すなわち新型コロナウイルス感染症対策本部決定「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」令和2年3月28日(令和2年5月25日変更)の6)「緊急事態宣言解除後の都道府県における取組等」である。

 次のようにある。「…都道府県は、…<「新しい生活様式>が社会経済全体に定着するまで、一定の移行期間を設け、概ね3週間ごと(例えば、①6月18日までの3週間程度、②その後の3週間程度、③②の後の3週間程度)に地域の感染状況や感染拡大リスク等について評価を行いながら、外出の自粛、催物(イベント等)の開催制限、施設の使用制限の要請等を段階的に緩和する」。

 上掲のステップ①「6月18日までの地域の感染状況や感染拡大リスク等について評価を行いながら」を基に、翌19日(金曜)頃を目途に三溪記念館と合掌造りを再開する方針で準備を進めることとした。なお詳細にわたり詰めるべき問題が残るため、ホームページ掲載はしばらく先とする。

テレビ録画を観る
 録画しておいた幾つかのテレビ番組を、6日(土曜)と7日(日曜)に、まとめて観た。多忙で放置していたものだが、すこし離れた位置から考え直す契機となった。そのうちの3点のテーマ、参加者名、概要等を掲げたい。

(1) NHKスペシャル・プラス「新型コロナウイルス 出口戦略は?」(5月13日放送)は、新型ウイルスへの対応の長期化が予想されるなか、感染の拡大を抑えながら、どのように社会経済活動を再開するか、パンデミック後のいわゆる<出口戦略>を考えるための、取材による番組編成である。本連載で幾度か取り上げた方々も登場する。

 経済のマイナスの代表例として、比較的体力があるとされる大企業の一つANA(全日空)は、全ての国際線を運休・減便、国内線も55路線のうち6路線にまで減らし、この1か月で見込んでいた約1000億円の収入を失った。民間エコノミストによるとGDPの予測は、4~6月期で前期比年率マイナス20〜30%。過去最大のリーマンショック時のマイナス17.8%をはるかに超えている。

 押谷仁さん(東北大学)は言う。「社会経済への影響を最小限にしながら、ウイルスの拡散を最大限制御していくための解除の方法は、流行が拡散していくのを抑え込むよりも、はるかに難しい判断を迫られる。部分解除しても、ある程度(感染は)起こる。ゼロリスクはないウイルスなので、それをどうやって判断するのか、誰が判断するのか」。社会経済活動の制限解除の時期にある現在の難しい問題を指摘する。

 牧原出さん(政治・行政システム、東京大学)は言う。「この問題は、政府と専門家と市民、この3つがどう結びつくかが問われている。これまでは新しい感染症をどう抑え込むかが最大の課題でしたから、医療専門家の役割が非常に大きかったが、出口戦略となると、経済あるいは教育など多くの分野が関わってくる。特に長い期間がかかるとなると、地震や集中豪雨といった複合災害の可能性も考えていく必要がある。いろいろな分野を、どう総合的に調整するか、というのが政治の役割だと思います。…これまで政府の説明はどちらかというと感染症の専門家の意見を受けて決定をした、という内容を繰り返してきたのですが、やはり国レベルの専門のあり方については、政府と専門家の間で決定と責任をはっきり分ける。専門家は科学的中立性の下に応答する、政府は決定と責任を行う。その原則をもう一度確認して、制度のあり方を点検することが必要になってくる。…」

 「…政治がもう少し信頼を取り戻す必要がある。1つは不満や非難を政治が受け止めること、もう1つは透明性の中で意思決定をしているということだと思います。そしてこの先、どこへ向かうのかというビジョン、方向性を政治が向けていく必要があって、それは政府だけではなく、市民社会が専門家の枠を超えてお互いに話し合う必要がある。市民の創意工夫です。たとえば新しい生活様式は市民の総意で作られていくもの。これからどんどん枠付けしていくものだと思います。市民社会の足腰の強さが、試されていくのではないか…」

(2) BS1スペシャル「コロナ新時代への提言~変容する人間・社会・倫理~」(5月23日放送)は、山際寿一さん(人類学 京都大学)、飯島渉さん(歴史学 青山学院大学)、國分功一郎さん(哲学 東京大学)の3氏が、自分の専門分野からのリモート取材に応じて発言、のちに相互に主張と質疑応答をくり返しつつ、新型コロナがもたらす今後の人間・社会・倫理変容に迫ろうとする。

 個々の発言に感銘を受け、共感するものが多かった。この番組に刺激を受けて、「変容する人間・社会・倫理」に関連して、幾つか私見を述べてみたい。

 いま改めて痛感するのが、今回、人類史上初の世界同時の都市封鎖がなされ、そしていま段階的な解除に一斉に向かっているという事実である。もとより<都市封鎖>の形態はそれぞれ異なる。強権的なもの(中国や欧米の一部)とソフトな要請型のもの(日本や台湾ほか)の区別がある。

 また日本における新型コロナウィルス感染の死者の少なさ、その要因(山中伸弥さんのいう<ファクターⅩ>)等も重要だが、巨視的に見れば、過去にない世界的都市封鎖という厳然たる事実が今後に及ぼすであろう影響の大きさである。

 その一つが<水際対策>と呼ばれる国家間の移動の禁止、すなわち入国制限=<閉国>である。これは事実上の国交断絶に等しく、歴史用語の<鎖国>ではなく、史上初の世界規模にわたる<閉国>と呼ぶに相応しい。いま日本は世界111カ国からの入国禁止(<閉国>)を実施している。そして近い将来の入国制限緩和(<開国>)の対象国としてタイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの4ヵ国が挙がっているが、相手国の合意まで紆余曲折が予想される。

 上掲の「…感染防止のための手段より、その解除の手段の方がはるかに難しい」(押谷仁さん)と合わせて考えれば、各国の内部事情によりまちまちの基準で国境を開き、<移動の自由>を謳歌するなら、それは新型コロナウィルスの思う壷ではないか。

 番組で指摘された通り、人間が農業を開始した約1万年前から、労働集約型生産、野生動物の家畜化、遊牧、森林原野への進出を進めることで、人類は次々と新しい細菌・ウィルスに遭遇するようになった。その極限形態である「現代の大規模な<移動と集合>社会に賢く適応したのが新型コロナウィルス」である。改めて<人類最強の敵>であることを痛感する。

(3)サイエンスZERO「新型コロナ論文解析SP」(5月31日放送)は、山中伸弥さん(京都大学)を中心とする専門チームが人工知能(AI)とタッグを組み、約5万件にのぼる「新型コロナ論文」を解析する。

 誰が何をどこまで分析したか、いわゆる<先行研究>を正しく知る ことが科学の全分野において次の研究への大前提であるが、<先行研究>が約5万件にもなれば手作業でこなせる範囲を超える。そこでAIを活用し、研究者が自由に使える<共有財産>を作ろうとする貴重な試みである。

 この番組から1週間後の日経新聞朝刊(6月7日)に「<知の共有>世界で加速 コロナ論文、既にSARSの100倍」が掲載された。副題は「スピード重視 日本、影薄く」。文部科学省の科学技術・学術政策研究所が4か月間で約1万本の論文を分析した結果である。

 国・地域別に掲げる<査読前論文数>の棒グラフの首位は中国の545本、ついで米国の411本、英国等の欧州諸国やカナダがつづき、日本は8位である。「…感染拡大の規模の大きさに加え、論文発表の電子化やデータ共有の拡がりなど、研究活動の高度化、高速化、デジタル化が相互に影響している可能性がある」としている。

 ちなみに<査読前論文>というのは、複数の専門家による検証(査読)を受ける前に発表される論文を指す。スピードは重要だが、いわば粗製乱造の誹りを免れない論文も混入する。それが政策に取り入れられ「人々に危害を及ぼす事態は避けなければならない」との指摘もあり、見極めが重要である。

新しい用語<DⅩ>、
 4日(木曜)の日経新聞朝刊トップ記事の見出しは「DⅩ改革 企業明暗 コロナで鮮明に」。DⅩとは何か。「…デジタルトランスフォーメイション(DⅩ、3面きょうのことば)の巧拙が明暗を分けている」とつづく。3面をめくると「高速インターネットやクラウドサービス、人工知能(AI)などのIT(情報技術)によってビジネスや生活の質を高めていくこと。スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン氏らが2004年に提唱したとされる」。

 Digital Transformation (デジタル化による変容)の省略形としてのDⅩは、既存のDⅩ(=海外放送等の長距離受信)とは異なる新しい省略形として定着するだろうか。それはさておき、今回のコロナ対応で日本のデジタル技術の劣悪ぶり、とくに行政の対応の悲惨さが目に余る。

 6月6日の日経新聞朝刊の1面トップは「IT競争力 コロナが試す」、これに2つの小見出し「米、AI給付で処理30倍」と「仏、排水から感染を警戒」を付して日本の出遅れ(世界23位)を指摘する。

 ここで取り上げるIT(情報技術)活用の先進事例は広く全体を網羅するものではなく、目立つものを挙げているにすぎないが、新型コロナウィルス対策にデジタル技術やデータ活用を取り入れる動きは世界で拡がっており、それを<始動の迅速さ>(スピード)、<官と民の連携)(シェア)、<使う手段や情報の臨機応変な活用>(サブティチュート)の3Sから判断しようとする。初動の小差がやがて大差となるのに時間を要さない。

齊藤淳一さんからの便り
 半月ほど前の5月24日(日曜)、齊藤淳一さんから<ウィルスからヒトへの進化論>考と題するメールをいただいた。齊藤さんとの出会いは3年前、1通の手紙が拙著『開国史話』(2004年3月~2005年7月まで神奈川新聞連載、同社より2008年刊)の版元から転送されてきた時に始まる。それについては本連載2018年3月26日「善四郎とペリー饗応の膳」を参照されたい。

 齊藤さんはアメリカの大学で生化学を教えていたが、帰国後、まったく別の仕事に就かれた。そこに新型コロナウィルスの登場。齊藤さんの科学者の本能が目を覚ます。日米の文化体験と理系の緻密な論理・実証法を駆使した謎解きの矛先が向かうのは、新型コロナウィルスの、主に次の2点である。

 その冒頭に次のようなギャクが書いてある。「IT」を「世界有数のIT後進国に成り下がってしまって『IT(イ・テェー)(痛てぇ)』後進国・日本」と、「イ・テェー」と発音しましょう。\(◎o◎)/!

 なお、本ブログでは引用符の「 」とは別に、特定の意味(いわゆる等)を持たせるための符号、あるいは新しく登場した語彙・語句を指す符号として< >を使ってきた。とくに本連載「人類最強の敵=新型コロナウィルス」では、新しい用語・用法が続出したため、符号< >の使用が多い。以下の引用でも、齊藤さんが「ウィルスの拮抗作用」としたのを<ウィルスの拮抗作用>と承諾を得て代えている。すこし長くなるが、その他は原文のままメールの一部を引用する。

 齊藤さんの第1の関心事は<ウィルスの拮抗作用>だという。
…あるウィルスが感染拡大を強めると、既存の別ウィルスとの間で<勢力争い>が始まり、どちらかが消え去る、という現象。最近では、2009年に新型インフルエンザ(現呼称:A(H1N1)pdm09型インフルエンザ)のウィルスが登場したのと入れ替わるように、それまで毎シーズンのように流行していたAソ連型インフルエンザのウィルスが忽然と消えてしまいました。

 他にもいくつもの例があるのですが、脳などの思考・判断機能を有する器官を持っていないウィルスが、自らの意思で「増殖しよう」とか「あいつは敵だ、追い出そう」とか考える訳もなく、そのメカニズムはまだ解明されてはいません。…現役臨床医の方々と会う機会があると必ずこの<ウィルスの拮抗作用>の話と共に、最近患者数が減ってきた感染症はありませんか? と私は訊きまわっています。

 ウィルスが持っている遺伝情報は一番少ないもので2個、多いものでも2500個止まり。ほとんどのウィルスは10個前後ですが、それでも、上述のような<抗争劇>を繰り広げます。…そういえば、ヒトの塩基配列(約30億個、遺伝子情報に換算して約2万3~5千個相当)の内、約45%は各種ウィルスに由来している、という研究報告もあります。

 <進化論>の中では、ウィルスが他のウィルスと融合や取り込みを繰り返していく過程で<自己増殖機能>を獲得して単細胞生物となり、更にその単細胞生物が多細胞生物へと進化し…、と約40~45億年の時間をかけて地球上での現在の生態系が出来上がってきた、と(科学的に)推測されています(他にも諸説あります)。

 でも、私からみると、ウィルスもヒトも遺伝子の数には関係なく、同じようなこと(勢力抗争)を繰り広げているようでは、ウィルスからヒトへとほとんど<進化>していないようなぁ…。(;一_一)「人の振り見て我が振り直せ」という「ことわざ」がありますが、2020年の今は「ウィルスの振り見て我が振り直せ」ですね。(^_-)<新型コロナウィルス>は、私たちに何かを伝えるべく(何かについての警鐘を鳴らすために)、登場したのかもしれません。

 齊藤さんの関心事の第2が、新型コロナ関連の<超過死亡者数>だと言う。

 …これは感染症に関連する統計解析の一手法で、ある種の感染症による直接の死亡者数だけではなく、その感染症の影響によって<間接的>に死亡した人がどの程度増加したかを示す推定値で、その感染症の<社会的インパクト>を表す指標として、近年、WHOも注目している数値です。

 例えば、日本では推計で毎年約1千万人がインフルエンザに感染し、その内、(年によってバラつきはあるものの)、214人(2001年)~1818人(2005年)が直接的死因で亡くなっていますが、その他にインフルエンザ感染が引き金となって基礎疾患を悪化させてしまい、基礎疾患が直接的死因で亡くなった人もいます。それを丹念に洗い出して、「インフルエンザ関連で亡くなった人の総数」を推定すると、毎年約1万人が<超過死亡者数>となります(厚労省調べ)。

 しかし、「新型コロナ」の最も特異的な特徴は、<無症状感染者>の存在です。世界各国で人口に占める<無症状感染者>の割合を調べていますが、3~7%(最近の報告では30%強というのもあります)と幅があり、「日本ではもっと高い比率なのでは?」と推定する専門家もいます。この<無症状感染者>の存在が新型コロナウィルスによる<超過死亡者数>の推計を難しくしています。

 そして長いメールの末尾を次のように結ぶ。「私たちもウィルスも、みんな、地球に居る<仲間>。これからは、新型コロナウィルスとも仲良く共存していきましょう。それが、これからの<新しい生活様式>」

 興味深い指摘だったので返礼すると、すぐに返信が届いた。齊藤さんが参考にした先行研究についてである。

 <ウィルスの拮抗作用>については:新潟大学大学院医歯学総合研究科・齋藤玲子教授への『日経メディカル』のインタビュー記事がとても解りやすく書かれていました。
 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/201211/527759.html
 
 <超過死亡者数>については、その概念や定義は、国立感染症研究所感染症情報センターのWebサイトに詳しく掲載されています。
 http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/inf-rpd/00abst.html

 具体的な数値は、厚労省の「新型インフルエンザに関するQ&A」サイト内の「Q10」の丸写しです。
 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html

連載「驚異のウィルス」③
 日経新聞連載の「驚異のウィルス」③は、6月7日のサイエンス欄に掲載された。見出しは「<巨大>出現 新生命体へ進化?」、副題が「多数の遺伝子 揺らぐ定義」である。<ウィルスは小さくて単純?>の常識を覆すケタ違いに大きく複雑な構造を持つ<巨大ウィルス>が相次いで見つかった。

 一般のウィルスは直径が200㎚(nanometer、ナノは10億分の1)以下で、自力で増殖できず、生物とは見なされなかった。一方、細菌(バクテリア)は1~10µm(micrometre)、すなわち1~10×1000㎚でウィルスの5倍以上ある。ところが100種以上も見つかった<巨大ウィルス>は細菌と同規模かそれ以上で、その9割超の遺伝子が生物や他のウィルスの既知の遺伝子と似ていない。「増殖に役立つ20種類以上の遺伝子を備えた巨大ウィルスが見つかり、<免疫>機能を持つものも現れた。この巨大ウィルスは感染した生物から、遺伝子を次々と奪ってきたとする見方が多い」と言う。

消えない赤信号 東京アラート
 東京都公式ホームページ内の防災ホームページ(総務局総合防災部防災管理課)には、緊急事態宣言の全面解除(5月25日)から2週間後の6月8日現在、以下のように掲載されている。2日に発令されて以来の継続である。
 東京アラートを発動中です。
• 「東京アラート」は、都内の感染状況を都民の皆様に的確にお知らせし、警戒を呼び掛けるものです。
• 都民の皆様は、夜の繁華街など、3密のリスクが高い場所には十分ご注意ください。
• 手洗いの徹底とマスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、「3つの密」を避けた行動など、「新しい日常」を徹底して実践してください。
• 事業者の皆様には、都や各業界団体が策定するガイドライン等を踏まえて、適切な感染拡大防止対策の更なる徹底をお願いいたします。また、出勤に当たっては、テレワークや時差通勤の活用をお願いいたします。

 一方、<神奈川警告アラート>は、その指標として<K値(過去1週間の神奈川県・東京都 累積感染者数 増加率)>=0.027を設定し、4日連続で予測値から大きく外れた場合に発動するが、6月8日現在、発動されていない。ほかに<感染経路不明者の割合(過去1週間の平均)>等を日々更新してホームページに掲載している。

 8日(月曜)現在、東京都で新たに(20代から50代の男女)13人の感染を確認したと発表、都内で1日の感染の確認が20人を下回るのは2日連続である。このうち20代から30代までの若者が11人、全体のおよそ85%を占めている。また神奈川県では、この日の感染者がゼロであった。3月23日以来、77日ぶりである。

 9日(火曜)、東京・横浜は初の真夏日(最高気温が32℃)となり、熱中症が心配された。とくに炎天下のマスク着用が熱中症を加速させるため、環境省・厚労省が「…外では一定の距離を取り、マスクをはずす」よう促している。過去に2回の熱中症を経験した者として身につまされる。

 日本国内の緩和ムードがつづくなか、世界はどうか。9日(火曜)、WHOテドロス事務局長が発表した。「…世界的には状況が悪化している。北米、南米、アフリカ、インド、中央アジアにおいては感染者が急増している。…」しかし、日本では大きなニュースになっていない。

 南米のチリ共和国は感染防止の優等生であったが、ここにきて感染者が急増、ピニェラ大統領は<第2波>襲来として改めてロックダウンを宣言した。こちらも日本では大きなニュースになっていない。日本の外務省は5日、チリを「感染症危険情報」(全部で4レベル)をレベル2(不要不急の渡航はお止めください)からレベル3(渡航は止めてください 渡航中止勧告)に更新した。

 南半球はいま真冬である。新型コロナウィルスは低温乾燥を好むと言われる。日本は逆に高温多湿の梅雨から真夏へ向かうため、ウィルスには苦しい時期と言われるが、半年後の低温乾燥期に入ればウィルスはまた元気をとりもどすにちがいない。

 それまでに(早ければ9月ころまでに)、しっかりと本格的な対策を講じなければならず、時間との勝負である。なかでも検査・医療体制の強化は不可欠で、それには大きな予算とともに本格的な<ⅮⅩ>活用が望まれる。

 11日(木曜)、北九州市の感染者数は20日ぶりにゼロとなった。また東京都では22人の感染者が確認されたものの、7つの指標をすべて下回り、医療の逼迫はないとして、<東京アラート>が9日ぶりに解除された。

 これに伴い、夜11時、都庁舎とレインボーブリッジが虹色にライトアップされた。12日午前0時からは<ステップ3>に移行、飲食店の営業が午前0時まで延長可となり、カラオケ店なども再開できる。

 さらに都知事は、来週の19日(金曜)以降、休業要請を全面解除すると発表した。都道府県をまたぐ移動や接待を伴う飲食店への自粛要請を全国的に解除する<国の第2ステップ>に合わせた措置である。今後は、感染リスクの高い場所などに対象を絞った対策が中心となる。

 人類最強の敵=新型コロナウィルス(11)

 5月25日(月曜)、政府政策会議により緊急事態宣言の全面解除がなされた。これに伴い、東京都は決められた指標を基に、4つのステップを踏んで段階的に休業要請を緩和するとし、ステップ2への移行は26日(火曜)の午前0時と表明した。

 神奈川県は全業種で27日の午前0時(東京の1日後)から休業要請の緩和を2段階で行うと表明した。

 西村大臣は、全国の緊急事態解除に際し、「当然第2波はある。大きな波にせず抑えていくことが大事だ」と述べ、宣言解除後は約3週間ごとに地域の感染状況などを評価し、外出自粛やイベント開催制限要請などを段階的に解除していくこと、また感染拡大の大きな波が起きた地域は、緊急事態宣言の対象に再指定するとの考えを示した。

 約3週間ごとの評価と解除とは、<ステップ①>が5月25日(月曜)から、<ステップ②>が6月19日(金曜)から、<ステップ③>が7月10日(金曜)から。全国移動の解禁は6月19日からとなる。

 三溪園は6月1日(月曜)から再開園にこぎつける。4月7日の緊急事態宣言発出から約2カ月ぶりの開園だが、三溪園では<3密>を避けられないとしてボランティア活動を休止したのが2月17日、三溪記念館を休館としたのが29日、それからは約3カ月半ぶりである。

 以上が前回分(10)の末尾で述べた、全面解除までの概要である。

 26日(火曜)、朝のニュースは通勤時の東京、横浜、品川、新宿等の駅の様子を映し、先週より人が増えていると伝える。夜のニュースは歓楽街を映し、飲食店は営業しているが客足は鈍いとして、期待と不安に揺れる人の声を伝える。

 27日(水曜)、私は都内の自宅から横浜市中区にある三溪園へ電車とバスを乗り継いで出勤した。ラッシュ時を避けたこともあり、車内は7人席に1人だけの区間もあった。外出自粛期と大差ないが、道路の車列は明らかに増えた印象を受けた。

 今後の私の主な関心は、大別して次の3つである。
(1)これまで段階的に進めてきた営業自粛と同様に、営業再開も一挙にではなく段階的に進めるはずで、その過程をしっかり追うこと。
(2)いわゆる<第2波>の襲来とその対応(事前準備の大切さをふくむ)の地域的・全国的・世界的な状況の<情報共有>。なお<第2波>の定義はさまざまで、統一的な定義がないことに注意しなければならない。
(3)パンデミックがもたらす影響と近未来における<新常態>の姿。

 28日(木曜)、福岡県北九州市で21人の新規感染者が判明した。4月30日から5月22日までゼロであったが、23日から6日連続で計43人の新規感染者を確認。門司区・小倉南区等の市内9区で広く確認されたのが大きな特徴である。

 同日午後、北橋北九州市長は、厚生労働省のクラスター対策班の担当者と市内で意見を交わしたあと記者発表で、「…新しいところから患者が発生していて、その地点が全市に拡がっている点に対策班は大変注目している。なぜ北九州市だけ、このような大量の陽性患者の確認になったのか、多くの方が衝撃を受けている。今後どうやって拡大を食い止めるかという段階で、専門家の立場からの調査・助言は大変心強い」と述べ、前々日に開館したばかりの小倉城等43施設を休館とした。

 同28日、東京においても新規感染者が15人となり、3日連続10人台で、うち9人が20代と30代。また7人はこれまでに感染が確認された人の濃厚接触者で、8人は今のところ感染経路が分かっていない。飲食や接客業に携わる人が複数いるとのこと。

 都知事は「…増加傾向にある」ことを認める一方、これは直近1週間で見た1日当たりの新規感染者数の平均にすると9人であり、都の定める段階的緩和の要件である<20人未満>を満たしているとし、次の緩和措置を検討中と述べた。

 29日(金曜)午前、北橋北九州市長は会見で「…いま第2波のまっただ中にいる。…」と述べた。一方、菅官房長官は「…第2波とは考えていない。…」としたうえで、午後にも専門家会議が開かれると述べた。

 その後、北九州市は市立学校の給食を中止し当面は午前中の授業のみとし、屋内型の119の市施設を全て31日から6月18日まで休館すると発表。

 福岡県は、北九州市を対象にキャバレーなど接待を伴う飲食店とライブハウスの休業要請を6月18日まで延長することを決めた。北九州市以外は予定通り1日から全面解除する。

 同日、東京都は予告通り、6月1日から<ステップ2>に移行すると公表した。この日、新たに22人の感染者が確認された。2桁の感染者は4日連続で、20人を超えたのは5月14日以来である。しかし、①「新規陽性者数」②「感染経路不明」③「陽性者増加比」、④重症患者、⑤入院患者、⑥PCR検査の陽性率、⑦受診相談件数の7つの指標のうち、とくに④と⑤が減少傾向にあること、医療提供体制も十分確保できているとしている。

 <ステップ2>に移行すると、劇場や映画館等のほか、百貨店、スポーツジム、自動車教習所、スーパー銭湯等も再開可となり、飲食店の営業が午後10時まで可能となる。小池知事は各事業者に対して、「この週末を利用して感染防止対策を徹底してほしい」と強調した。

 同日午後、全面解除後はじめての<新型コロナウイルス感染症対策専門家会議>が開かれ、「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(令和 2 年 5 月 29 日)を発表した。感染の<次なる波>に備える重要な措置である。<第2波>ではなく<次なる波>としていることに注目。
 大型連休明けの週末(5月9日)以降、感染者数が増える兆しが見られるとしたうえで、感染の<次なる波>に備えて、<検査体制>や<医療体制>を都道府県等それぞれの地域で強化するよう求める50のチェックリストを発表した。
 具体的には、(1)「<次なる波>に備え検査体制の強化を」、(2)「<次なる波>に備え医療体制の強化を」、(3)「クラスター(集団感染)の発生を防ぐための対策の強化を」、(4)「緊急事態宣言が解除されたいま、市民生活での留意点は」、(5)「今後の海外との往来は」。
 また都道府県などに以下の49項目からなるチェックリストを示し、検査や医療などの体制整備を進めるよう求めている。以下に項目のみを列挙する。これにかかる必要経費の多くは、政府の2次補正で担保される。

1.検査体制 (1)PCR等検査 (2)地方衛生研究所の体制拡充 (3)民間検査機関等の拡充、利用促進 (4)試薬や検査機器、個人防護具などの確保に向けた取組 
2.医療提供体制 (1)役割分担 (2)空き病床の状況把握、調整の仕組み (3)院内感染対策 
3.保健所の体制 (1)人員体制 (2)積極的疫学調査・クラスター対策 (3)相談業務 (4)搬送業務 (5)業務効率化 
4.サーベイランス (1)疑似症の届出 (2)HER-SYS (3)モニタリング 
5.地方自治体における即応体制 
6.高齢者・障害者施設等への支援体制 (1)人員・物資の確保 (2)施設内感染対策 

 30日(土曜)、緊急事態宣言の解除(25日月曜)、東京都の休業要請緩和(26日火曜)、神奈川県の休業要請緩和(27日水曜)とつづいて初の休日である。

 観光地の箱根(神奈川)、有馬(兵庫)、登別(北海道)は、約1カ月ぶりに立ち入り制限が緩和され、家族連れの笑顔が見られたが、県境を越える移動自粛要請は継続するため大半が県内客で、地元では「来月に期待」の声がある。

 横浜中華街は多くの店が営業を再開、人出も多く、戸惑いも聞かれる。札幌のススキノ、東京渋谷や新宿の繁華街でも人出の増加を喜ぶ声と感染を危惧する戸惑いが相並ぶ。

 この日の日経新聞(朝刊)の文化欄に、作家の高橋源一郎がエッセー「踏み止まる」を寄せている。書き出しの一文が、この時期の雰囲気をよく表している。「「緊急事態宣言」の解除が発表され、凍りついていた社会の時間が少しずつ動こうとしている。だが、これからどうなっていくのか、はっきりしたことはわからない。…」

 そしてアルベール・カミユの長編小説『ペスト』(1947年刊、宮崎嶺雄訳)の登場人物や粗筋を追いつつ、言う。「…危機に際して、作家は、内なる本能に目覚める。それは、世界を記録し、人びとの記憶のうちに留めたいという本能だ。だから、作家は、逃げずに止まる。…それがどんな場所であろうと、最後のひとりになっても、彼(彼女)は、踏み止まる。…」 そして「…この「コロナ」の危機にあって、踏み止まった作家が、どんな記録を、どんな物語として残すのだろう。もちろん、わたしも、そのひとりでありたいと願っているのだが。」と結ぶ。

 長々と引用させていただいたのは、私が「<記憶>から<記憶>へ」として書き始めた本ブログといみじくも一致したからである。ふと作家の古井由吉(1971年芥川賞、2020年2月18日逝去)たちと学生時代に語り明かした日々を思い出し、古井なら「どんな記録を、どんな物語として残すだろう」と考えた。

 31日(日曜)、この1週間を振り返り、今後の課題に思いを馳せる。その幾つかを列挙したい。

(1)中国の全人代に上程されていた「香港国家安全法」が28日に採択され、1998年から50年後の2047年までを保障した<一国二制度>による香港の<高度な自治>が脅かされる。(2)日本のプロ野球が6月19日から無観客で開幕する。サッカーJ1は7月4日から。(3)オンラインで始まった大学の授業の今後だが、教室を使うとなれば<3密>を回避するため入室制限(約3分の1か)が必要となり、<3部授業>にもなりかねない。理系の実験も同様である。(4)辛い話題の一つ、日本の企業の99%以上、従業員数7割を占める中小企業の休廃業・解散がすでに5万件にのぼる。とくに高齢経営者の撤退が多く、それに伴う失業者の増大が懸念される。(5)SNSをめぐるトランプ米大統領とツイッター社の応酬の行方、また匿名の非難投書問題で表面化する表現の自由と法的規制の関係。(6)25日、北米ミネソタ州で身柄を拘束された黒人が白人警官による暴行で死亡した事件が起き、28日、これに抗議する群衆が暴徒化、31日には抗議運動がニューヨーク等140都市に拡大、トランプ大統領の政権運営と国際政治の悪化が危惧される。

 6月1日(月曜)、いよいよ三溪園の再開園。4月8日に臨時閉園をして以来、2カ月弱を経て、<いよいよ>というか、<ようやく>というか。職員一同、この日のために努力を重ねてきた。新型コロナ感染防止策はもとより、植物の繁茂期でもあり、草取りや剪定、孟宗竹の落葉の掃除等々の作業も欠かせない。

 1906(明治39)年に横浜の実業家・原三溪が私邸を開放して誕生した三溪園、その110余年の歩みのなかで、2カ月弱の休園は初めてである。15万坪余の広大な庭園を持つ国指定名勝に17棟の歴史的建造物、その景観を安全に堪能していただく第一の課題は、密集しやすい入り口付近の混雑をどう緩和するかである。

 開門は9時、曇り空に薄日が差してきた。開門5分ほど前に、中年のご婦人が来られたので挨拶をすると、「この間も幾度か来ては、門の隙間から中を覗いていました。花菖蒲が見事に咲いていますね。それに、あの大きな白い花も素敵…」と上を指す先を目で追い、私は「…タイサンボクですね。こちらにも…」と言って券売所の脇の大樹を指さした。
 
 NHK横浜支局から開園の様子を撮りたいと取材があった。以下のインターネットニュースで観ることができる。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200601/k10012453491000.html

 感染対策として、三溪記念館と合掌造りの旧矢箆原邸(やのはらてい)の2つの屋内展示施設への立ち入りを中止しているが、いつ、どのように開館できるかを模索している。

 またボランティア・ガイドは、<密>を避けるのが難しいとして早くも2月17日から休止しきたが、三溪園の魅力発信に欠かせない活動であり、今後の感染症対策との両立を、こちらも模索している最中である。

 夜8時、全国200カ所で<無観客>の花火大会が開かれた。日本煙火協会青年部に属する有志が企画、<悪疫退散>を祈る催しとして実施。夏の名物、花火大会には多数が密集するため、協賛者が集まらず、各地で中止が決まった。そこで準備してきた花火を、時期・時刻を知らせず、花火玉製作業者の全国横断の連絡網を通じて実施することとしたが、突然の轟音で驚かせてはいけないとして、公表に至った。

 6月2日(火曜)、本連載でも幾度か取り上げたが、PCR検査の検体に唾液を使うことを厚労省が決め、本日、各自治体に通知した。日本では島津製作所とタカラバイオが開発済である。感染者数が最多の東京都が積極的に導入するという。

 鼻の奥の粘液を対面で採取する現行方法では、医療関係者の感染が危惧され、被験者も苦痛を受けるが、唾液採取であれば自己採取が可能で、検査能力が一挙に上がるという。

 この日の午後、東京都の感染者数が34人と判明、前日の13名から一挙に3倍弱の増加。昨日ステップ2に移行したばかりの出鼻をくじかれた感がある。都独自の警戒情報<東京アラート>を発するか、専門家の意見をきいていると、小池知事が5時前の会見で話した。

 その判断に、①直近1週間平均の1日当たりの新規感染者数が50人以上、②感染経路不明者が50%以上、③週単位の感染者数が2倍以上、の3つの指標を使い、専門家は<東京アラート>を発するよう提言した。

 これを受けて、小池知事は「夜の繁華街など3密のリスクが高い場所には十分に注意してほしい」と呼びかけ、同日午後11時、都庁舎(新宿副都心)と臨海部に架かるレインボーブリッジを赤色にライトアップした。
 これが<第2波>の襲来か、対応は適切か、まだ分からない。しかし東京都にとどまらず他の道府県も似た状況に陥る可能性がある。いつでも起こる可能性があると前提し、国の緊急事態宣言<再指定>と都道府県知事による<再度の自粛要請>との関係を含め、政府と自治体が協力し、早急に対策を練るべきであろう。
プロフィール

Author:加藤 祐三
日本の歴史学者

横浜 市立大学名誉教授

国指定名勝・三渓園(横浜)
園長

・前都留文科大学長
(2010~2014)

・元横浜市立大学長
(1998~2002)

主な著書
「イギリスとアジア」
         (1980年)
「黒船前後の世界」(1985年)
「東アジアの近代」(1985年)
「地球文明の場へ」(1992年)
「幕末外交と開国」(2012年)
蒋豊訳「黒船異変」(2014年)
蒋豊訳「東亜近代史」
         (2015年)

 など

専門
・近代アジア史
・文明史

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