神奈川県立博物館協会(県博協)総会と表彰式
2023(令和5)年5月10日(水)午後、神奈川県立博物館協会(県博協)総会があった。朝の冷気がウソのような快晴である。
馬車道沿いにある会場の神奈川県立博物館(県博)は旧横浜正金銀行本店本館で国指定重要文化財、外観は堂々たる石造りのドイツ風建造物。なお県博の正門は、一回りした反対側の会談を上った所にある。
そこから階段を上り、左手の地階が会場だったはずと久しぶりの総会に戸惑い気味だったが、目の前に突然に現れたのが、県博の嶋村元宏主任学芸員。昨年の青山学院大学シンポジウム「アヘン戦争と日本の開国」の仕掛け人であり、進行役もつとめた人物。彼はまた来る6月3日の横須賀市開国史研究会総会で講演する予定と連絡があり、出席すると返事を投函したばかりであった。
その嶋村さんが「表彰、おめでとうございます」と言い、先導して地階の会場(講堂)へ案内してくれた。細長い会場の所定の座席まで案内すると、「…これから出かけなければならないので、ここで失礼します」と一言を残して立ち去った。
【県博協総会の議題等】
ほどなく13時30分から総会が始まり、配布の冊子(41ページ)に沿って進む。
議題1 令和5年度役員の改選について
議題2 令和4年度事業及び決算・監査報告について
議題3 令和5年度事業計画及び予算案について
報告事項
1 入会の館園について
2 令和5年度 川崎市市民ミュージアム救援活動について
3 その他
表彰 令和5年度 神奈川県博物館協会表彰
ページ1の「令和5年度 神奈川県博物館協会役員名簿(案)」によると、会長が神奈川県立博物館館長の望月一樹氏、副会長に3氏、理事に13氏、監事に3氏、また東海地区博物館連絡協議会役員に3氏が並ぶ。
人事異動等による新役員には〇印を付してあり、(公財)三溪園保勝会三溪園園長 海野晋哉ほか6名に〇印がある。海野さんは私の後任の三溪園園長である。
この参考として、人文科学部会、自然科学部会、機能研究部会の名簿がつく。
収入支出については、10ページ資料に令和4年度の総収入額2,792,090円、総支出額が2,037,577円、差引残額753,513円(翌年度繰越金)とある。16ページ資料の平成5年度収支予算(案)は、収入予算額が2,914,528円、支出予算額が2.680、000円、収支差引234,528円(翌年度」繰越金)とあり、前年度より増加している。
【神奈川震災100年プロジェクト】
議題3に「県博協 防災yearの取組について」があり、今年が大正12(1923)年9月1日に起きた関東大震災(大正関東地震)から100年の節目を迎えることから「神奈川震災100年プロジェクト」を立ち上げると宣言、各館園でいま計画中の展示計画を一覧してある(19ページ)。
これに関連して、22ページに「神奈川県立博物館協会総合防災計画」(平成28年策定)、23~24ページに「神奈川県立博物館協会災害時相互救済活動要綱」を掲げる。
【現在の加盟館園は97】
32~35ページに「神奈川県立博物館協会会則」、そして36~38ページ「神奈川県立博物館協会加盟館園名簿」がある。これに依ると現在の加盟館園は97である。
【表彰式】
最後に今年度の表彰式があり、望月会長から症状が授与された。
功労者として2名。
国見徹(大磯町郷土資料館) 根拠=第2条1号 協会役員在任年数 11年
加藤祐三(三溪園) 根拠=第2条1号 協会役員在任年数 11年
永年勤続として、以下の10名。
秋山大志(新江の島水族館) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
笠川宏子(新江の島水族館) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
北嶋 円 (新江の島水族館) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
桜木 徹 (新江の島水族館) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
根本 卓 (新江の島水族館) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
吉田 敬 (山口蓬春記念館) 根拠=第2条2号 勤続年数19年
大谷美穂子(横浜市立野毛山動物園) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
白木久史(横浜市立野毛山動物園) 根拠=第2条2号 勤続年数17年
東野晃典(横浜市立よこはま動物園) 根拠=第2条2号 勤続年数23年
柏木智雄(横浜美術館) 根拠=第2条2号 勤続年数35年
予定を数分遅れて14時45分に終了、15時からの研修会に待機していた方々と慌ただしく入れ替わった。三溪園の中村さん(美術担当学芸員)の笑顔もあった。
【令和5年度特別展「あこがれの祥啓-啓書記の幻影と実像-」を拝観】
空腹を感じたので、外へ出て、正面入り口の対面にある蕎麦屋 つけ天 味奈登庵(みなとあん)で、すこし遅い昼食を取った。何度も通った、なつかしい味である。外は眩しい陽光、上着を脱いで階段を上り、また館内へ。
令和5年度特別展「あこがれの祥啓-啓書記の幻影と実像-」を拝観するためである。会期は4月29日から6月18日まで。令和5年度「地域ゆかりの文化遺産を活用した展覧会支援事業」の一つである。前期が5月21日まで、後期が5月23日~6月18日で、前期と後期で展示作品が入れ替わる。
リーフレットの冒頭に次のようにある。
「水墨画の巨匠雪舟が生きた室町時代、雪舟と並んで重要な絵師が鎌倉の建長寺にいました。
祥啓と名乗るこの画僧は、京の室町幕府で絵画を学びます。同朋衆の芸阿弥を介して幕府秘蔵の中国絵画を間近に見る機会を得ました。
三年にわたる京都滞在を終えて鎌倉に戻った祥啓は、本展覧会に出品されるような、山水画、花鳥画、人物図を描きます。祥啓の絵が人気を博したことは、祥啓次世代の絵師たちが残した多数の模倣作品によって明らかとなります。
祥啓の通称である「啓書記」の絵として今に伝わるたくさんの絵のなかには、素材や画材の観点から、桃山時代や江戸時代、あるいはそれ以降の絵と判断される絵も存在します。つまり室町時代の祥啓その人が描いたとは言えない「啓書記」の絵です。
室町時代の祥啓の知らないところまで拡がる「啓書記」のブランド――
祥啓ひとりに注目した初めての展覧会です。
祥啓にあこがれた絵師、大名、数寄者たちの歴史に迫ります。」
【多彩な展示品】
5章に分けた全113の展示品は、県博所蔵のもののほか、根津美術館、東京国立博物館、京都国立博物館、南禅寺、建長寺等所蔵や個人蔵をふくめ全国から集めたもの。その豪華ぶりは、他では味わえない。
第1章 前史-祥啓登場前夜 1番~13番
第2章 清玩-祥啓画を味わう 14番~41番
第3章 追慕-祥啓をしたう 42番~89番
第4章 輪郭-狩野派が見た啓書記 90番~103番
第5章 愛好-近代数寄者が愛した啓書記 104番~113番
【「山水人物図屏風」 伝祥啓と出会う】
眩しいほどの外光から暗い部屋に入ったせいか、解説の字が読みにくい。いや、読めない。作品一覧はもちろん、個々の作品に付した解説も判読できない。私の視力の衰えかもしれない。
展示品保護のため、光量を落としているせいもあろう。衰えてきた私の視力に合わせる必要はない。言うまでもなく、貴重な展示品の保護が優先する。
それにしてもイライラする。そもそも掛軸のサイズ自体が小さい。そんな不満をブツブツと言いながら、閲覧するなかで、突然、目に飛び込んできた作品があった。第3章の最後、89番「山水人物図屏風」伝祥啓、東京国立博物館蔵である。重要美術品を指す●が付いている。
大きめな四曲一隻の屏風に大ぶりの山水が描かれ、よく見ると各扇にそれぞれ談笑している人物が描かれていかる。
寸法は測らなかったが、一扇がそれまで見てきた掛軸の数倍はあろうか。
その図柄の大きさが私の胸に迫ってきた。伝祥啓とあり、祥啓の作品とは断定できないというが、これに出会ったことだけで私は満足した。
ブツブツの不満は雲散霧消し、感謝の気持ちでいっぱいになった。
馬車道沿いにある会場の神奈川県立博物館(県博)は旧横浜正金銀行本店本館で国指定重要文化財、外観は堂々たる石造りのドイツ風建造物。なお県博の正門は、一回りした反対側の会談を上った所にある。
そこから階段を上り、左手の地階が会場だったはずと久しぶりの総会に戸惑い気味だったが、目の前に突然に現れたのが、県博の嶋村元宏主任学芸員。昨年の青山学院大学シンポジウム「アヘン戦争と日本の開国」の仕掛け人であり、進行役もつとめた人物。彼はまた来る6月3日の横須賀市開国史研究会総会で講演する予定と連絡があり、出席すると返事を投函したばかりであった。
その嶋村さんが「表彰、おめでとうございます」と言い、先導して地階の会場(講堂)へ案内してくれた。細長い会場の所定の座席まで案内すると、「…これから出かけなければならないので、ここで失礼します」と一言を残して立ち去った。
【県博協総会の議題等】
ほどなく13時30分から総会が始まり、配布の冊子(41ページ)に沿って進む。
議題1 令和5年度役員の改選について
議題2 令和4年度事業及び決算・監査報告について
議題3 令和5年度事業計画及び予算案について
報告事項
1 入会の館園について
2 令和5年度 川崎市市民ミュージアム救援活動について
3 その他
表彰 令和5年度 神奈川県博物館協会表彰
ページ1の「令和5年度 神奈川県博物館協会役員名簿(案)」によると、会長が神奈川県立博物館館長の望月一樹氏、副会長に3氏、理事に13氏、監事に3氏、また東海地区博物館連絡協議会役員に3氏が並ぶ。
人事異動等による新役員には〇印を付してあり、(公財)三溪園保勝会三溪園園長 海野晋哉ほか6名に〇印がある。海野さんは私の後任の三溪園園長である。
この参考として、人文科学部会、自然科学部会、機能研究部会の名簿がつく。
収入支出については、10ページ資料に令和4年度の総収入額2,792,090円、総支出額が2,037,577円、差引残額753,513円(翌年度繰越金)とある。16ページ資料の平成5年度収支予算(案)は、収入予算額が2,914,528円、支出予算額が2.680、000円、収支差引234,528円(翌年度」繰越金)とあり、前年度より増加している。
【神奈川震災100年プロジェクト】
議題3に「県博協 防災yearの取組について」があり、今年が大正12(1923)年9月1日に起きた関東大震災(大正関東地震)から100年の節目を迎えることから「神奈川震災100年プロジェクト」を立ち上げると宣言、各館園でいま計画中の展示計画を一覧してある(19ページ)。
これに関連して、22ページに「神奈川県立博物館協会総合防災計画」(平成28年策定)、23~24ページに「神奈川県立博物館協会災害時相互救済活動要綱」を掲げる。
【現在の加盟館園は97】
32~35ページに「神奈川県立博物館協会会則」、そして36~38ページ「神奈川県立博物館協会加盟館園名簿」がある。これに依ると現在の加盟館園は97である。
【表彰式】
最後に今年度の表彰式があり、望月会長から症状が授与された。
功労者として2名。
国見徹(大磯町郷土資料館) 根拠=第2条1号 協会役員在任年数 11年
加藤祐三(三溪園) 根拠=第2条1号 協会役員在任年数 11年
永年勤続として、以下の10名。
秋山大志(新江の島水族館) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
笠川宏子(新江の島水族館) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
北嶋 円 (新江の島水族館) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
桜木 徹 (新江の島水族館) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
根本 卓 (新江の島水族館) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
吉田 敬 (山口蓬春記念館) 根拠=第2条2号 勤続年数19年
大谷美穂子(横浜市立野毛山動物園) 根拠=第2条2号 勤続年数16年
白木久史(横浜市立野毛山動物園) 根拠=第2条2号 勤続年数17年
東野晃典(横浜市立よこはま動物園) 根拠=第2条2号 勤続年数23年
柏木智雄(横浜美術館) 根拠=第2条2号 勤続年数35年
予定を数分遅れて14時45分に終了、15時からの研修会に待機していた方々と慌ただしく入れ替わった。三溪園の中村さん(美術担当学芸員)の笑顔もあった。
【令和5年度特別展「あこがれの祥啓-啓書記の幻影と実像-」を拝観】
空腹を感じたので、外へ出て、正面入り口の対面にある蕎麦屋 つけ天 味奈登庵(みなとあん)で、すこし遅い昼食を取った。何度も通った、なつかしい味である。外は眩しい陽光、上着を脱いで階段を上り、また館内へ。
令和5年度特別展「あこがれの祥啓-啓書記の幻影と実像-」を拝観するためである。会期は4月29日から6月18日まで。令和5年度「地域ゆかりの文化遺産を活用した展覧会支援事業」の一つである。前期が5月21日まで、後期が5月23日~6月18日で、前期と後期で展示作品が入れ替わる。
リーフレットの冒頭に次のようにある。
「水墨画の巨匠雪舟が生きた室町時代、雪舟と並んで重要な絵師が鎌倉の建長寺にいました。
祥啓と名乗るこの画僧は、京の室町幕府で絵画を学びます。同朋衆の芸阿弥を介して幕府秘蔵の中国絵画を間近に見る機会を得ました。
三年にわたる京都滞在を終えて鎌倉に戻った祥啓は、本展覧会に出品されるような、山水画、花鳥画、人物図を描きます。祥啓の絵が人気を博したことは、祥啓次世代の絵師たちが残した多数の模倣作品によって明らかとなります。
祥啓の通称である「啓書記」の絵として今に伝わるたくさんの絵のなかには、素材や画材の観点から、桃山時代や江戸時代、あるいはそれ以降の絵と判断される絵も存在します。つまり室町時代の祥啓その人が描いたとは言えない「啓書記」の絵です。
室町時代の祥啓の知らないところまで拡がる「啓書記」のブランド――
祥啓ひとりに注目した初めての展覧会です。
祥啓にあこがれた絵師、大名、数寄者たちの歴史に迫ります。」
【多彩な展示品】
5章に分けた全113の展示品は、県博所蔵のもののほか、根津美術館、東京国立博物館、京都国立博物館、南禅寺、建長寺等所蔵や個人蔵をふくめ全国から集めたもの。その豪華ぶりは、他では味わえない。
第1章 前史-祥啓登場前夜 1番~13番
第2章 清玩-祥啓画を味わう 14番~41番
第3章 追慕-祥啓をしたう 42番~89番
第4章 輪郭-狩野派が見た啓書記 90番~103番
第5章 愛好-近代数寄者が愛した啓書記 104番~113番
【「山水人物図屏風」 伝祥啓と出会う】
眩しいほどの外光から暗い部屋に入ったせいか、解説の字が読みにくい。いや、読めない。作品一覧はもちろん、個々の作品に付した解説も判読できない。私の視力の衰えかもしれない。
展示品保護のため、光量を落としているせいもあろう。衰えてきた私の視力に合わせる必要はない。言うまでもなく、貴重な展示品の保護が優先する。
それにしてもイライラする。そもそも掛軸のサイズ自体が小さい。そんな不満をブツブツと言いながら、閲覧するなかで、突然、目に飛び込んできた作品があった。第3章の最後、89番「山水人物図屏風」伝祥啓、東京国立博物館蔵である。重要美術品を指す●が付いている。
大きめな四曲一隻の屏風に大ぶりの山水が描かれ、よく見ると各扇にそれぞれ談笑している人物が描かれていかる。
寸法は測らなかったが、一扇がそれまで見てきた掛軸の数倍はあろうか。
その図柄の大きさが私の胸に迫ってきた。伝祥啓とあり、祥啓の作品とは断定できないというが、これに出会ったことだけで私は満足した。
ブツブツの不満は雲散霧消し、感謝の気持ちでいっぱいになった。
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