変わりつつある世界(17)
2023年11月13日、前回の「変わりつつある世界(16)」を掲載してから、気になっていた記事がある。11月10日、2つの記事があった。
【食材宅配サービスのMBO】
第1が日経速報メールが報じた食材宅配サービスのMBO(経営陣が参加する買収)であり、つづけて同日、日経速報メールが報じた「進研ゼミ」である。
食材宅配サービスを手掛けるオイシックス・ラ・大地は10日、シダックスを子会社化すると発表した。シダックスがMBO(経営陣が参加する買収)で株式を非公開化した後に実施する第三者割当増資を引き受ける。原材料高や人手不足でシダックス主力の給食事業の収益が悪化する中、主力事業の効率化や不採算事業の見直しなど構造改革を急ぐ。
シダックスは志太勤一会長兼社長ら創業家の資産管理会社が、11月13日〜12月25日の期間に1株当たり800円でTOB(株式公開買い付け)を実施する。株主からシダックス株を買い取って完全子会社にする。
シダックスには食材宅配サービスを手掛けるオイシックスが、約3割を出資している。同社はMBOに賛同している。
給食業界は原材料高や水道光熱費の上昇などによって事業環境の厳しさは一段と増している。9月には学校給食などを運営するホーユー(広島市)が破産手続きを開始した。
シダックスの業績は新型コロナウイルス禍後の回復がまだ鈍い。給食などを手掛ける主力の「フードサービス事業」は、2023年3月期の営業利益が前の期比14%減の22億円と落ち込んだ。抜本的な立て直しに構造改革を急ぐ必要があると判断した。
シダックスは志太勤取締役最高顧問が1959年に富士フイルムの食堂を受託して創業。志太会長兼社長ら創業家が20%超を保有する。90年代にはカラオケ事業に進出し、一時は主力事業となったがその後に採算が悪化。18年にはカラオケ事業から撤退、19年には投資ファンド、ユニゾン・キャピタル(東京・千代田)の出資を受けて経営再建を進めていた。
22年にはオイシックスがユニゾンの持ち分をTOBで買い取り、28%を保有する筆頭株主となった。オイシックスはシダックスを持ち分法適用会社にしており、高島宏平社長がシダックスの社外取締役に就いている。
両社は法人向け給食で使うミールキットの開発など協業を進めていた。オイシックスは今夏から保育園給食事業に本格参入し、シダックスが受託運営する事業所にミールキットを試験導入するなど連携を強めている。
22年のオイシックスのTOBを巡っては、「オイシックス以外の第三者からのフード関連事業の協業提案などを検討する機会が失われる」としてシダックスの取締役会が反対を表明した。外食大手のコロワイドもシダックスへ給食事業の買収を提案するなどで各社の利害関係が複雑になった。
オイシックス以外の企業との連携可能性を調査する特別委員会や、ガバナンス(企業統治)体制を調べる調査委員会を設置することを条件に、取締役会がTOBへの意見を「中立」に変更したことでTOBが成立した経緯がある。
【ベネッセがMBO 欧ファンドと、「進研ゼミ」立て直し】
第2が「進研ゼミ」である。
ベネッセホールディングス(HD)は10日、MBO(経営陣が参加する買収)を実施すると発表した。ヨーロッパの投資ファンドEQTと組み、TOB(株式公開買い付け)を実施する。ベネッセHD株は上場廃止となる見通し。主力の通信教育「進研ゼミ」の不振が続いており、株式の非公開化で立て直しを図る。
TOBは1株2600円で実施する。9日終値(1791.5円)から808.5円(45%)のプレミアム(上乗せ幅)をつけた。全株ベースでの株式価値は約2700億円と、国内のMBOでは最大規模となる。
まずEQTが特別目的会社(SPC)を設立し、TOBなどにより約83%のベネッセHD株を約2080億円で取得する。その後、残りの約17%の株式を持つベネッセHD創業家の資産管理会社を完全子会社化する。
TOB完了後にSPCに対し創業家が出資。最終的にはEQTが6割、創業家が4割、SPC株を保有する形にする。議決権ベースでは5割ずつにする。
EQTはスウェーデンの産業・金融界に影響力を持つウォーレンバーグ家に由来する大手投資会社。2021年に日本に拠点を設置し、22年にアジア系のベアリング・プライベート・エクイティ・アジアと統合した。EQTにとって日本で初めての投資案件となる。
ベネッセHDは主力の「進研ゼミ」事業の苦戦が続いている。小学生〜高校生の会員数は23年4月時点で前年比14万人減の160万人だった。10年前と比べ約4割減少した。デジタル教材の導入などで立て直しを進めていたが、会員数減に歯止めがかからなかった。
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本業のもうけを示す連結営業利益は23年3月期で206億円と、13年3月期に比べ46%減った。介護や保育など多角化を進めるほか、22年には不採算だった語学教室の「ベルリッツ」事業の売却など構造改革を進めた。ただ、主力事業の抜本的な立て直しには非公開化が必要だと判断した。
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ベネッセは1955年に生徒手帳などを発行する福武書店として設立した。69年に進研ゼミ高校講座の前身となる「通信教育セミナ」事業を始めた。創業家出身の福武総一郎氏が長く代表取締役を務めていたが、14年に最高顧問に退いた。
日本マクドナルドホールディングスのトップから転じた原田泳幸氏が14年に会長兼社長に就いたが、同年に個人情報漏洩問題が発覚し、会員数が減少。16年に退任した。その後もトップ交代が続いた。
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【たかが髪形、されど髪形 慶応野球「エンジョイ」の真意 森林貴彦 慶応義塾高野球部監督】
11日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・これが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい
・高いレベルの喜びは、練習や競争を乗り越えた先に
・選手との距離感はいつも悩み、言葉には気を使う
この夏の甲子園、107年ぶりの全国優勝を遂げた慶応義塾高(神奈川)のナインは笑顔の「エンジョイ・ベースボール」で汗と涙の色濃い高校野球に、新風を吹き込んだ。これからの高校野球は「勝ち」を目指しつつも、自立心を育む人材養成面などの「価値」が求められるという森林貴彦監督に、真意を聞いた。
神奈川県大会決勝で横浜、甲子園で仙台育英(宮城)という強豪を相次いで破った。「プレーボール」の言葉通り、遊び、楽しむ野球の原点に立ち返っての戴冠だった。
「夏の甲子園3回戦の広陵(広島)戦で、初回に丸田湊斗選手が三塁盗塁を決めて先制したが、サインは出していなかった。彼が自分で決めた。三盗も選択肢として準備していたが、初回から(危険を冒す)サインは出せない。私よりよほど度胸、判断力がある。勇気も要るし、根拠がないと走れない。これからもそういう場面に出合いたい」
――自分で考える楽しさを味わってほしい、と思ったきっかけは。
「高校2年の夏、上田誠監督が『二塁けん制の動きやサインを自分たちで決めてみなさい』とおっしゃった。内野手の私と投手、捕手が練習後の暗くなったグラウンドで、ああでもないこうでもないと話し合った。自分たちで物事を進めるワクワク感は高校野球の一番の思い出だ」
「チームの決め事を守り、人と同じことをするだけでは人生、面白くない。ますます価値観が多様化し、自分なりの幸せを選び取る時代になると思うので、これをやりたい、自分にとってこれが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい」
――相当の野球技術がないとエンジョイはできない。
「もちろん、ただ笑顔でやればうまくいくというものではない。頂点を目指す以上、日々の地道な苦しい練習、ライバルとの競争、試行錯誤がある。そこを乗り越えるところに、より高いレベルの喜びがある。それがエンジョイの真意だ」
「言葉には気を使っている。準々決勝の沖縄尚学戦は五回まで0-2の劣勢。前半戦終了時に『第1試合は完敗だから、第2試合を頑張ろう』と言った。同じ言葉ばかりだと、選手はまたかよ、という顔をする。新鮮な言葉がないか試合中に考えていた。あれでみんな『これからだ』となったのか、六回に逆転できた」
「ミーティングでだらだらしゃべりたくないので、試合ごとに四字熟語でテーマを伝える。『徹頭徹尾』とか『勇往邁進(まいしん)』とか。甲子園の決勝は『大願成就』。これしかない、と一番簡単に決まった」
コツは「全力で頑張るな」
――筑波大の大学院で、勝負事でしゃかりきになってはいけない、という研究成果を残した。
「頑張り度合いとパフォーマンスの関係を調べると、100%の力で走ったときに最高の速度が出るわけではない。8割の力で走ると9割の速度が出る。野球の投球でも全力で投げるより、少し力を落とす方が球速も出て、制球が定まる。全力でやるなということ。各界の達人が極意として力を抜くとおっしゃる。それと同じではないか」
「エラーをした野手や失点した投手が、取り返そうと思うのもよくない。それで取り返せるなら、そんな簡単なことはない。過去は切り捨て、未来を向いて今やれることをやる。練習試合では反省もするが、公式戦で過ぎたことを引きずっていいことはない」
――自主性は大事だが、選手任せの危うさも。
「1代前の3年生は一人ひとりが自立していた。そこで私もある程度任せたが、任せ過ぎたというか、お互いの意思疎通が足りなかった気がする。選手との距離感はいつも悩む。就任当初は私が面倒みなきゃという意識もあって、こまごま言い過ぎていたと思う。失敗は多々ある」
高校野球ではいまだに体罰案件が報告され、フェアでないプレーもみられる。勝利にとらわれ、選手の人間的成長が置き去りにされる現状は社会に通じる課題のようだ。
教育現場で無力を痛感
「(打者が横目で捕手の位置を確認する『カンニング』は)今年の甲子園でだいぶ減ったと感じたが、ゼロではない。チームではなく選手個人の問題だと思うが。高校野球の2年半は短く指導者も時間がない、急いで詰め込まないと、と思うと無理が出る。体罰を受けて育った選手が指導者になって、同じことをする。負の循環を今、食い止めないといけない」
「高校で完成する必要はなく、数年後にいい選手になってくれたらいい、という気持ちでいる。今、先生(慶応義塾幼稚舎教諭)として小学3年生を教えているが、無力を痛感するばかり。漢字、筆算、九九……。できたかなと思った次の日に子どもはできなくなる。一方、教えたことのないことを、いつのまにかできるようになっている。僕がいる意味があるのかな、と日々自問自答する。忍耐強く(成長を)待つ点で、野球の指導者としてもいいトレーニングになっている」
――理想を掲げ、変革を唱えれば風当たりも強くなる。
「チームの目標は『慶応日本一』だが、その先の目的として『恩返し』と『常識を覆す』を掲げてきた。今年の選抜大会でも『高校野球を変えたい』と言って甲子園に乗り込んだが、初戦敗退。簡単に言うな、できるわけないだろう、という声があった。ただ、それをバネにして、夏こそという思いが強まり、成長の材料になった」
――甲子園では選手たちの自由な髪形が注目された。
「いまだにそんなことが話題になるのかと残念に思う一方、これを入り口に(変化への)議論が進めばそれでいい、と思った。問題は髪形そのものより(無思慮に前例に従う)思考停止、旧態依然、上意下達の部分。高校野球はこういうものだという枠を誰かがつくり、枠の中でずっとやってきた。今年の優勝で、一石を投じることはできたかと思う」
――サインに縛られない選手は本当に育つか。
「野球がどういう人材を社会に送り出せるか、野球型の思考が今後の社会にどうマッチするのか考えると、危機感を覚える。勝つために手段を選ばないといった思考が、高校生以下の世代でも、ゆがみとして出ている。そこで打ち出したのが『成長至上主義』。ただただ勝利を目指して頑張ろう、ではなくて、一人ひとりが人間的に成長し、周りも成長させる。選手としての成長、人間としての成長が車の両輪となったら強い。それによって、実は勝利にも近づくのではないか」
「高校野球には堅苦しい部分、個性や自由が認められづらい部分がある。親の負担も大きく、(子どもに)野球が選ばれにくくなっている。甲子園は盛り上がっているようにみえて、全国の野球部や部員の数は減っている。このままの形では続かない。高校野球はスポーツの枠を超えて文化として定着し、変えるのは大変だが、我々が変われば人の育成方法なども変わるきっかけになるかもしれない。社会的な意義は大きい」
――激戦区の神奈川を勝ち抜くのは至難。優勝後、来春の選抜大会につながる試合に敗れた。
「甲子園から帰って翌々日に練習を始めたが(県大会までの)時間のなさ、慌ただしさは想像を超えていた。ただ選手たちは、また新しい気持ちでいてくれている。人生100年、自分もまだ折り返し点。選手に成長を求める以上、私自身が成長するマインドを持っていなければ。現状維持でいい、となったときは退場すべきだと思っている」
もりばやし・たかひこ 1973年東京都渋谷区生まれ。慶大法卒業後NTTへ。3年で退職し、高校野球指導者として筑波大院で指導理論を研究。2015年から母校慶応高を率い、春夏計4度甲子園出場。23年夏、107年ぶりの全国優勝に導いた。慶応幼稚舎教諭。
あえて寄り道、柔軟性養う(インタビュアーから)
慶応の選手たちが夏の甲子園を「エンジョイ」できたのは「そもそも、慶応にいる時点で半ば人生の勝ち組だから」というやっかみまじりの見方があるが、それは違うようだ。
青春まっただ中の高校生であっても野球がすべてではいけない。そう考える森林監督は慶応OBなどから幅広い分野の話を聞く機会を設けている。
政府系金融機関を辞め、瀬戸内海の島で農業にいそしむ人から「都心の大会社に勤めるだけが人生ではない」と学んだ。大リーガー・菊池雄星投手の元マネジャーから、華やかな印象と違って努力の人と聞いた。強豪校が大会準備に追われている時期に、知的障害のある生徒の硬式野球への参加を進める取り組みと連携し、合同練習を行った。
あえて寄り道し、様々な価値観に触れることで「野球オンリー」にはない心の柔軟性が養われているようだ。(編集委員 篠山正幸)
【「日本はGXに本気か」 海外マネー3300兆円が品定め 資産運用立国に挑む 開国の障壁(1)】
13日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・日本は海外からの投資を集める「運用開国」を目指す
・脱炭素に向けて産業転換を段階的に進める戦略を掲げる
・海外投資家は日本企業のGXへの向き合い方を注視
政府は海外運用会社を招く「運用開国」に乗り出した。家計金融資産2100兆円が外に出ていくばかりでは日本の成長に寄与しない。国内に投資機会をどう生むかが最大の課題だ。
【「資産運用立国に挑む」連載記事】
• ・日本株の運用会社「空洞化」 非効率な慣習、参入阻む
10月6日、首相官邸。米運用会社ブラックロックの呼びかけで中東の政府系ファンドや欧米年金など世界の機関投資家・運用会社の代表約20人が集まった。保有・運用額は計3300兆円に上る。関係者は海外勢が来日した目的を「『具体的な投資案件を見せてくれ』ということだ」と語る。
政府が掲げるのが、化石燃料からクリーンエネルギーへの産業構造の転換を目指す「グリーントランスフォーメーション(GX)」だ。欧州のような一足飛びの脱炭素でなく段階的に移行(トランジション)する戦略で、官民合わせて10年で150兆円が必要とはじく。シンガポールの政府系ファンドGICは7月、現地を訪れた自民党の片山さつき金融調査会長に「日本のGX投資の定義に関心がある」と語った。
海外マネーを呼び込もうと企業も動き始めた。9月に増資などで約2040億円を調達したJFEホールディングス。「構造改革をやり遂げ、量から質へ転換する」。調達先を海外に絞り、欧米などの投資家約100人にオンラインで訴えた。
JFEホールディングスは構造改革のため川崎市の高炉を止めた
利益の見込みやすい電気自動車向け高級鋼板の投資に公募増資、中長期の脱炭素投資に新株予約権付社債(転換社債=CB)で得た資金を充てる。川崎市の高炉を止める一方、2030年度までに脱炭素に約1兆円投じる計画だ。増資で外国人株主比率は3割と3月末の24%から高まった。
日本企業のGX関連の資金調達は増えている。資金使途を環境事業に限る環境債の発行は23年1〜10月に1兆6000億円超と、年間で最高だった21年をすでに約2割上回った。温暖化ガス排出量の多い企業による移行債も21年からの累計で約6000億円に上る。
アジアではトランジションへの関心が高く、50年までに40兆ドルの脱炭素投資の資金需要があるとみられる。日本に脱炭素マネーを集め、アジアのGX投融資の資金が行き交うハブへと育てる余地はある。
ただ、投資家は日本企業がどこまで積極姿勢に転じたのか、なお半信半疑だ。
「日本は脱炭素にどのくらい真剣なのか」。ENEOSホールディングスのもとには政府のGX戦略に確信を持てない海外投資家から多くの質問が寄せられる。同社は再生可能エネルギー開発や水素の供給網構築などに取り組むが「技術のブレークスルーの時期など不透明で、30年度以降の具体的な計画を示すのは困難」とする。
日本企業はバブル崩壊以降、設備投資や研究開発を抑えて借入金返済を優先してきた。日銀の資金循環統計によると民間企業部門(金融除く)は戦後、資金不足だったが、1998年から資金余剰の局面に転じた。海外マネーが注目する今こそ、日本が積極投資に打って出る好機となる。
GXだけでなく、省人化や農業など日本経済の課題は多い。投資機会をどれだけ増やせるか。運用立国実現のハードルは高い。【資産運用立国に挑む 第1部】
【海外新薬、国内で早期承認へ 日本人の初期治験廃止】
同じ13日の日経ニュースメールは報じた。
日本で薬を売り出すために、臨床試験(治験)の過程で日本人で安全性を別途確認しなければならない制度が原則廃止される。欧米で承認された新薬の7割は日本で承認されておらず、海外で使われている薬が日本で入手できない「ドラッグ・ロス」が生じてきた。新薬の日本での早期流通を促し、患者の不利益の解消につなげる。
厚生労働省は近く、日本人での追加的な初期治験が原則として必要ないことを記した通知を出す。数カ月以内に制度は廃止される見通しだ。
医薬品が日本国内に出回るには、3段階の治験が必要になる。1番目にあたる第1相は少数の健康な人に薬を投与して安全性を確認する。第2相は少数の患者に投与し、効き目や副作用を調べる。第3相では世界各国の多数の患者を対象にする。
第1、2相の治験は、製薬会社が新薬を開発した国でやることが多い。しかし日本で販売するには原則として、第3相に進む前に別途、日本人への初期治験にあたる第1相の追加調査が求められる。
厚労省は「国内の環境で暮らす日本人への安全性を確認するため」と説明する。だがこれは日本独特のルールで他国ではほとんど求められない。
この追加調査が妨げとなり、「ドラッグ・ロス」や海外で使用されている医薬品の日本での承認が遅れる「ドラッグ・ラグ」が深刻になっている。
厚労省は追加的な初期治験をなくしても、第3相の治験で日本人の安全性は確認されると判断した。抗がん剤など強い副作用が起こりやすい一部の薬には追加調査が残る可能性がある。
2020年時点で米国と欧州連合(EU)で承認された新薬のうち、日本では72%が未承認で数字は上昇傾向にある。09〜17年に開発された新薬で、世界で初めて承認された時期と国内承認された時期の差は54.1カ月。韓国(28.2カ月)の約2倍だ。
治験には参加者を集めるコストや時間が欠かせない。グローバルな製薬会社にはこの手間を嫌って日本での販売を断念したり、市場投入の時期を他国に比べ大幅に遅らせたりしている。
厚労省のヒアリングに対し、製薬会社は「日本人向け治験が新薬投入の障壁となっている」という声を寄せた。欧米系の製薬会社も「日本人への投与経験がないこと以外に(追加調査が必要な)理由が十分に示されておらず、欧米の本社に理解されない」と指摘した。
たとえば消化管の壁にできる悪性腫瘍である消化管間質腫瘍(GIST)は年間10万人に1人から2人程度に発症する。治療薬「アバプリチニブ」は日本では手に入らない。米国では20年1月、欧州では20年9月に承認されている。
新型コロナウイルス禍でも、日本がワクチン承認で欧米から後れをとった原因の一つが追加治験だった。
米ファイザーは、海外での大規模治験の結果をもとに20年12月にワクチンの製造の承認を申請した。だが追加治験などへの対応で承認までに2カ月ほどかかった。
厚労省はルール変更について、医薬品の開発を担う海外の製薬会社への情報発信にも力を入れる。24年度には米国に医薬品医療機器総合機構の事務所を設立し制度の周知に生かす。
製薬大手アストラゼネカ社では、世界同時開発などの取組で同社の日本でのドラッグ・ラグやロスの問題はほぼ解消している。一方、同社はベンチャー発の先端的な医薬品のライセンスを取得し、残りの治験を自社で担う場合がある。日本人への初期治験の原則廃止で、開発期間が短縮されれば「非常にポジティブに捉えられる」という。また、日本市場で発売がしやすくなることへの「大きな一歩」だと期待を寄せる。
ドラッグ・ロスやラグの解消には他にも課題がある。例えば患者が少ない希少疾患や小児がんなどはコストをかけても利益が出にくいため、製薬会社は開発を敬遠する。米国は成人用のがんの薬を開発する際には小児用も開発することを義務づけている。日本には同様の制度はない。
【小売り、食品PB比率17%で最高 イオンやセブンが新商品】
14日の日経速報メールは報じた。
小売り大手が食品など生活必需品で割安なプライベートブランド(PB)を拡充する。イオンは食品PBの半分を刷新し、セブン&アイ・ホールディングスは低価格帯PBを倍増させる。スーパーの食品販売額に占めるPB比率は10月に過去最高の約17%に高まり、店頭価格の上昇は鈍化している。物価押し上げの主軸はモノからサービスに移る。
イオンはPB「トップバリュ」で生鮮品を除いて約5千ある食品のうち2500品目を新商品に切り替える。日用品などと合わせたPB売上高を2024年2月期に前期比11%増の1兆円超に高める。セブン&アイはPBの中でも低価格シリーズ「セブン・ザ・プライス」の品目を24年2月末までに160品に倍増させる。
ベイシア(前橋市)は新しいPB「ベイシアプレミアム」を始めた。既存PBは新製品に順次切り替えて24年2月までに100品目以上を展開する計画だ。西友も生鮮食品の新PB「食の幸」で現状65種類の品目数を増やす。
一般にPBはメーカー品より1〜3割程度安い。小売業にとって稼げる商品でもある。物流や宣伝費などを抑えられるため、粗利益率は15〜20%とされるメーカー品と比べ10ポイント程度高い。
メーカー品とPBは物価高でともに値上がりしているが、消費者は安いPBにシフトしている。
日本経済新聞社と調査会社のインテージ(東京・千代田)が全国のスーパーなどから集めたPOS(販売時点情報管理)データを分析したところ、加工食品や調味料、清涼飲料、アルコール飲料などを含む食品PB(生鮮品除く)の割合は10月に16.8%になった。統計がある12年以降で最高だ。
品目別のPB比率は冷凍野菜が57%と最多で、ハムが34%、牛乳は32%だった。
PBシフトの背景には食品価格の上昇がある。帝国データバンクによると、22年の食品値上げは約2万6000品目に達し、23年は1〜10月の累計で3万品目を超えた。総務省の消費者物価指数(食料、2020年=100)も10月、東京都区部で116と21年1月(99.7)から16.3%上昇。消費者は生活必需品への節約志向を強めている。
PBシフトは物価動向にも影響する。牛乳の店頭価格の前年比上昇率は10月の19%から足元は11%に縮まった。
POSデータをもとにスーパーなどの店頭価格の動きを示す「日経ナウキャスト日次物価指数」をみると、11月12日時点で前年比6.7%(7日平均)上昇したものの、今年8月のピーク(同9.2%)に比べ鈍化した。
その中で物価全体を下がりにくくしているのが旅行やレジャーなどのサービス価格だ。日本のサービス価格は長らく低迷していたが、9月は上昇率が2%に高まった。
サービス価格は賃上げの影響を受けやすい。足元で賃上げは物価上昇を下回っており、実質賃金は9月まで18カ月連続でマイナスだった。物価を下支えするサービス価格の腰折れを防ぐには、消費者の財布のひもを緩める継続的な賃上げが不可欠だ。
24年の春季労使交渉に向け連合が要求方針を発表した。サントリーホールディングスなど交渉が本格化する前に賃上げ方針を表明するところも出ている。企業の継続的な賃上げ力が問われる局面だ。(浅山亮、マクロ経済エディター 松尾洋平)
【エクソン、リチウム生産へ 30年までにEV電池100万台分】
同じ14日の日経速報メールは報じた。
【ヒューストン=花房良祐】石油メジャーの米エクソンモービルは13日、米南部アーカンソー州で2027年から電気自動車(EV)電池用のリチウムを生産すると発表した。北米以外での生産も視野に入れ、30年までに年100万台分のEV用電池のリチウムを供給。世界有数のEV向けリチウム供給会社を目指す。
石油メジャーがリチウムの大規模生産に乗り出すのは初めて。EVや電池のメーカーと供給に向けた協議に入った。23年初めにアーカンソー州の12万エーカー(約485平方キロメートル)の敷地で採掘する権利を獲得した。
石油・天然ガスの掘削技術を活用して地下約3000メートルからリチウムを含有する塩水をくみあげる。従来より環境負荷の低い新技術でリチウムを分離し、現場のプラントで電池用の素材に加工する。30年までに年約10万トン(炭酸リチウム換算)を生産する見込み。
リチウムはレアメタル(希少金属)で、リチウムイオン電池の製造に使用する。EVの増加などでリチウム需要は30年までに4倍になる見通しで、供給不足の懸念がある。低炭素部門トップのダン・アマン氏は「リチウムはエネルギー転換に必要で、エクソンは(経済の)電化に向けて主導的な役割を果たす」とコメントした。
米地質調査所(USGS)によると、22年の世界のリチウム生産のうちオーストラリア、南米チリ、中国の3カ国で合計約9割を占め、偏っている。一方、米国の生産量はほとんどない。加えて、従来技術によるリチウムの精錬では中国が世界の大半を担っている。米国で生産すればサプライチェーン(供給網)のリスクも低下する。
EVと電池の普及に伴い、レアメタルの生産・精錬が少数の国に偏在している課題が浮き彫りになっており、バイデン政権は米国での生産を支援する。22年には国産の電池素材を使用したEVの購入補助制度を導入した。
エクソンは太陽光・風力発電について石油開発との相乗効果が見込めないとして投資に慎重な一方、二酸化炭素を回収して地下に貯留するといった石油開発の掘削技術がいかせる低炭素ビジネスには積極的だ。地下を掘削するリチウム生産も石油開発の技術が活用できるとみている。
天候に左右される太陽光・風力発電は発電が不安定なため、蓄電池との組み合わせが不可欠だ。このため再生エネの普及に伴い蓄電池は増加する見通しで、リチウムの生産会社がエネルギー転換の時代を勝ち抜くとの見方が高まっている。
米S&Pグローバルのダニエル・ヤーギン副会長は「エネルギー業界は『ビッグ・オイル』(石油メジャー)から『ビッグ・ショベル』(大手鉱山会社)の時代に移っていく」と話している。
【米下院、つなぎ予算案を可決 政府閉鎖は回避へ】
15日の日経速報メールは報じた。
【ワシントン=高見浩輔】米連邦議会下院は14日、予算執行を現行水準のまま2024年1〜2月まで続ける「つなぎ予算案」を可決した。上院でもすでに与野党のトップが法案への支持を表明している。政府閉鎖の回避に向けて大きく前進した。
米議会は2024会計年度(23年10月〜24年9月)の予算案をまだ策定しておらず、9月末に11月17日までのつなぎ予算を成立させて政府機関の閉鎖を回避していた。期限が近づき、再延長が必要になっている。
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つなぎ予算案は、野党・共和党が過半数を握る下院で10月に新たに議長になったジョンソン氏が提案した。軍事や退役軍人、交通、住宅などの予算は24年1月19日まで、それ以外は2月2日まで執行を続けることができる。
民主党の下院議員らがジョンソン氏の案に賛成したのは、懸念していた大幅な歳出削減が盛り込まれなかったためだ。譲歩した内容の法案を蹴れば、政府閉鎖の責任を民主側が背負うリスクもあった。
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上院でも民主トップのシューマー院内総務が法案を支持する考えを示している。上院を通過すれば法案はバイデン大統領の署名を経て成立する公算が大きい。
下院共和はわずかな議席数の差で優位を保っているため、強硬派の一部が反対するだけで法案が通らない機能不全に陥っていた。マッカーシー前議長は9月末、民主の協力を得て11月17日までのつなぎ予算案を可決させたが、その直後に解任された。
強硬派議員らは今回の法案にも反対したが、議長の解任動議に踏み込む動きは今のところ起きていない。前議長の解任後、下院共和では議長のなり手が3週間決まらなかった。
複数の米メディアによると、ジョンソン氏はひとまず政府閉鎖を避けつつ、年明けにかけて調整する24会計年度予算案で歳出削減を強く求める構えだ。
つなぎ予算の期限を2つに分けたのは、バイデン政権と民主党が「包括予算案」と呼ばれる一括法案で予算案を通すのを回避する狙いがある。米国の予算案は本来、12本の予算案を個別に成立させる必要がある。
政府閉鎖を回避できれば今後は予算案に盛り込まなかったウクライナ支援が大きな議題となる。共和内には国境警備など国内に資金を振り向けるべきだと反発が大きい。与野党で意見の隔たりは大きい。
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。前嶋和弘上智大学総合グローバル学部 教授
ひとこと解説
共和党の強硬派の自由議連の案だった「2段階予算案」を共和党穏健派と民主党側が拒否できずに通過。民主党側の反対は2,共和党側は93。さらに強硬な共和党議員が歳出削減などが入っていないため拒否。「強硬派議長(ジョンソン)の方が強硬派の反対が少なくなる分だけつなぎ予算成立の可能性が高くなるかもしれない」と何度かいろいろなところでお伝えしましたが、そのとおりになりました。 指導力が全く未知数だったジョンソン下院議長にとっては、最初の大きな仕事。「妥協を許さない」強硬派だったはずのジョンソン。議員個人としてはおそらく民主党との徹底した財政対決を望んでいたはずですが、現実的に政府一時閉鎖回避を重視。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
同じ15日のニュースメールは次のように報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は紅葉シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる訪日客が増える。
主要国23か国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で(2.7%増)だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店のインバウンド売上高が3201億円と、18年同期を14%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
【イスラエル軍、ガザ北部シファ病院で「作戦実行中」】
同じ15日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は15日、パレスチナ自治区ガザ北部にある地区最大のシファ病院で「特定のエリアで、精密かつ標的を絞った作戦を行っている」と明らかにした。軍は同病院やその周辺の地下にイスラム組織ハマスの司令部があると主張しており「病院内にいるすべてのハマスのテロリストに投降を求める」と強調した。
米CNNは同日、イスラエル軍の戦車がシファ病院の敷地内に入ったとの目撃情報を報じた。国連機関によると、シファ病院には12日時点で患者が600〜650人、避難住民が約1500人いたという。
イスラエル軍は作戦部隊に医療チームやアラビア語を話す兵士を同行させていると説明し「民間人に危害が及ばないよう配慮している」と強調した。作戦前日に「ガザの関係当局に対し、病院内での軍事活動を12時間以内に中止するよう再度伝えたが、応じなかった」と主張した。
一方、ハマスは病院の軍事利用を否定している。ロイター通信によると、ハマスは15日、病院突入の責任はイスラエルと米国の双方にあると非難する声明を出した。
イスラエル軍は14日、シファ病院の近くにありハマスの重要拠点だとするシャティ難民キャンプのほか、警察本部など複数の施設を制圧したと発表した。13日にはガザ北部のランティシ病院にも部隊が踏み込み、病院地下に武器の保管や人質の拘束などハマスの作戦に利用された痕跡があったと主張していた。
ガザ北部ではシファ病院などが燃料不足で機能を停止するなど、医療体制が崩壊しつつある。バイデン米大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に「病院は守られなければならない」と強調していた。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は14日、ハマスがシファ病院を含む複数の病院を軍事利用していることを確認したと明らかにし「戦争犯罪だ」との認識を示した。ロイター通信が伝えた。
ホワイトハウスはバイデン氏とイスラエルのネタニヤフ首相が14日に電話会談したと発表した。ハマスが拘束する人質の救出や病院の状況について協議したとみられる。
【日経平均3万3000円乗せ 陰の主役はNVIDIA】
同じ15日の日経ニュースメールは報じた。
15日の東京株式市場で日経平均株価は大幅続伸し、前日比823円77銭(2.52%)高の3万3519円70銭で取引を終えた。前日比の上げ幅は2023年で最大となり、節目の3万3000円をおよそ2カ月ぶりに上回った。米利上げの打ち止め観測が強まり、国内でも金利高が逆風となるグロース(成長)株が買い戻された。ハイテク株主導の相場の陰の主役と声が上がるのが、米エヌビディアだ。
15日は半導体検査装置大手のアドバンテスト株が一時8%高まで買い進められるなど、半導体関連株の上昇が目立っている。半導体製造装置の東京エレクトロン株とあわせて日経平均を170円強押し上げた。
アドテストはPER(株価収益率)が60倍に迫り、割高株の筆頭だ。将来の高い利益成長が株価に織り込まれている分、金利上昇は現在価値に引き直す際の割引率を高めるため、株価の下押しにつながりやすい。
14日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びは市場予想以上に鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止め観測が広がった。10月下旬に一時5%を超えていた米長期金利は4.5%を下回り、割高株への逆風は弱まる。アドテスト株は11月1日に付けた直近安値から半月で3割上昇した。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
15日の日経速報メールは報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は行楽シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる客が増える。
主要国23カ国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で2.7%増だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店の4〜9月のインバウンド売上高が353億円と、18年同期を17%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
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【いすゞ、電池交換3分のEVトラック 自前で取り換え拠点】
同じ15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
いすゞ自動車は電池交換式電気自動車(EV)トラックの事業化に乗り出す。3分で電池交換が可能な車両を開発し、取り換えを担うインフラも自社で運用する。EVは充電に時間がかかり、配送効率が落ちるのが課題だ。運転手不足問題の解消につながる電池交換式の普及を後押しするため、車両開発からインフラまで一貫して担う。
いすゞは電池を交換する「無人ステーション」をこのほど開発した。物流企業の配送拠点や給油所に売り込み、設置することを想定する。コンビニエンスストアへの荷物配送やゴミ収集車などに使う小型EVトラック「エルフ」をベースにした車両を開発した上で、2025年に実証実験を始める。
ステーションではロボットが電池を取り外し、充電済みの電池と交換する。交換時間は最短で2分30秒程度としており、トラックが再び走行可能になるまで3分以内ですむという。充電済みの電池を用意したり、設備の保守や点検をしたりといったステーションの運用もいすゞが自ら手がける可能性がある。
充電式のEVトラックは充電に10時間程度かかり、軽油を燃料とするディーゼル車と比べて配送効率が低いのが課題となっている。商用車では電動化が遅れており、調査会社の矢野経済研究所によると、世界の商用車販売台数に占める電動化率(ハイブリッドなど含む)は2021年時点でも1.2%にとどまる。
電池交換式であれば、短時間の交換で配送を続けることができる。物流業界ではトラックやバスなどの運転手に残業規制が適用され、人手不足が見込まれる「2024年問題」に直面している。電池交換式が広がれば、脱炭素の対応と配送効率の維持への両立が期待できるとされている。
既に軽自動車の商用車では開発が進む。ホンダはヤマト運輸と11月から交換式電池を使った軽商用EVによる集配業務の実証実験を開始すると発表している。ホンダの軽EV「MEV-VAN Concept(エムイーブイバン コンセプト)」を活用し、太陽光発電の電力を使う。交換式電池でも積載量などの性能を維持できるかどうかを調べる。
ホンダの交換式電池は、自社の電動スクーターや建機メーカーのコマツと共同開発した電動小型ショベルに搭載されている。コマツは小規模な土木・建築工事や配管工事などでのニーズを見込んでいる。車以外でも用途拡大が進んでおり、国内の新興EVメーカーの間でも交換式電池の導入が進む可能性がある。
交換式電池は中国やインドなど新興国で普及している。中国の新興EV大手、上海蔚来汽車(NIO)は充電設備の設置と並行し、電池を交換する拠点を増やしている。(淡海美帆)
【米中首脳、軍事対話再開で合意 習氏「世界に重い責任」】
16日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・1年ぶりの対面会談が終了。昼食など含め4時間強
・AIの政府間対話や気候変動対策の作業部会設置を確認
・習氏は台湾統一に意欲。米国の台湾への関与けん制
【サンフランシスコ=田島如生、坂口幸裕】バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は15日午前(日本時間16日未明)、米西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で会談した。途絶えている米中両軍高官の対話再開で合意した。意思疎通を維持し、台湾周辺や南シナ海での偶発的な衝突を防ぐ狙いがある。
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両首脳が対面で会うのは1年ぶり。会談はサンフランシスコ中心部から40キロほど南にあるカリフォルニア州ウッドサイドにある「ファイロリ」邸で開いた。会談は4時間強で、両首脳は少人数での昼食会後、庭園を散歩した。
バイデン氏は会談後の記者会見で「建設的で生産的な議論だった」と述べた。米中の競争が「紛争に発展しないように(関係を)合理的で管理可能なものにするのが私の責任だ」と表明。滞っていた軍事対話の再開で合意した重要性を訴えた。
中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えない一方、米国が台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を維持すると改めて明言した。2024年1月の台湾総統選で中国が選挙介入しないよう警告した。
習氏は会談で「世界経済は回復し始めたが、その勢いは不十分だ。産業サプライチェーン(供給網)の混乱や保護主義の台頭といった問題は顕著になっている」と言明した。経済安全保障を理由に先端半導体などの対中輸出・投資規制を主導する米国を批判した。
習氏は地球は十分に大きく、米中が共に成功するのは可能だとも指摘した。「私とバイデン大統領は中米関係のかじ取り役であり、国民、世界、そして歴史に対して重い責任をもつ」と語った。
米政府や中国国営中央テレビ(CCTV)によると、両首脳は両軍の高官協議のほか、国防当局の対話や海上軍事安全保障メカニズム会議を再開させると確かめた。両軍の戦闘区域のトップ同士で連絡を取り合うことも申し合わせた。
米政府高官は、オースティン米国防長官と中国側の軍高官が「数週間以内」に会談する方向で調整すると説明した。米中は台湾海峡や南シナ海で軍事的な緊張を強めている。両国の軍事対話は22年8月、当時のペロシ下院議長が台湾を訪れたのを境に滞った。
バイデン氏は会談で、台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を改めて主張した。CCTVによると、習氏は台湾について「中米関係の最も重要かつ最も敏感な問題だ」と説明し「必ず統一する」と強調した。
両首脳はAIに関する政府間対話を立ち上げると確認した。AIの軍事利用への懸念が国際的に広がっていることが背景にある。気候変動対策に関する作業部会の設置でも合意した。
麻薬対策での協力に向けた作業部会を立ち上げることも申し合わせた。医療用麻薬フェンタニルの過剰摂取による死者が米国内で激増しているのを踏まえた。中国は原料となる化学物質の主要製造国だ。
習氏は先端半導体などの対中輸出・投資規制に関し「中国の正当な利益を著しく損ねている」と問題視した。「中国の科学技術の抑圧は中国の質の高い発展を抑制することだ」と話し、規制措置の撤廃を要求した。
習氏の訪米は17年4月以来、6年半ぶりとなる。サンフランシスコ滞在中、岸田文雄首相との会談も調整している。15日に開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での演説も予定する。
米中首脳会談は22年11月にインドネシア・バリ島で開いて以来だ。両首脳は当時、偶発的な衝突防止に向けて対話を続けると合意した。米軍が23年2月、米本土上空に飛来した中国の偵察気球を撃墜したことをきっかけに両国関係は冷え込んだ。【関連記事】
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【日中首脳が1年ぶり会談 「戦略的互恵関係」を再確認】
17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【サンフランシスコ=秋山裕之】岸田文雄首相は16日(日本時間17日午前)に訪問先のサンフランシスコで中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と1時間ほど会談した。個々の懸案で対立しても共通利益の追求を優先する「戦略的互恵関係」を再確認した。
•【関連記事】日中の「戦略的互恵関係」、6年ぶり復活が示す難路
日中首脳会談は2022年11月にバンコクで開いて以来、1年ぶり。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でともに訪米する機会を利用した。15日にはバイデン米大統領が習氏と会い、両軍高官の対話再開で合意している。
首相は会談の冒頭に「日中は隣国として共存、繁栄し、地域と国際社会をリードする大国として世界の平和と繁栄に貢献していく責任を有する」と強調した。「より明るい日中関係の未来を切り開けるように力を合わせていきたい」と述べた。
習氏は両国の平和共存は正しい方向性だと指摘し「共通利益を重視し、相違を適切に管理すべきだ」と主張した。「戦略的互恵関係の位置づけを再確認し、新たな意味を与え、新時代の要求に合う中日関係の構築に力を尽くすべきだ」とも語った。
戦略的互恵関係は06年に当時の安倍晋三首相が訪中し、胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席との会談で打ち出した概念だ。胡主席が08年に国賓で来日し、福田康夫首相と「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明をまとめた。
日中は政治体制が異なり、日米のように民主主義といった共通の価値観を共有しにくい。解決困難な課題で対立を深めず共通利益を求めることで、安定的な関係を維持する狙いがある。
両首脳は東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出について解決を目指す方針で一致した。首相は「専門家のレベルで科学に立脚した議論を行う」と述べた。中国は「核汚染水」と呼んで反発していた。
首相は中国による日本産水産物の輸入禁止を撤回するよう求めた。中国当局に逮捕された邦人の早期解放なども主張した。
沖縄県・尖閣諸島周辺で続く中国公船による領海侵入をめぐっては東シナ海での偶発的な衝突回避を話し合った。日本の排他的経済水域(EEZ)に中国が設置したブイの即時撤去を求めた。
中国は台湾について譲れない「核心的利益」と位置づけ、日本に関与しないように求めている。首相は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
日中ハイレベル経済対話を適切な時期に行うことでも一致した。気候変動対策など地球規模の共通課題で協力を申し合わせた。
2国間の問題でも意思疎通を強化する。日中の通商当局間で重要鉱物の輸出管理といった貿易問題に関する対話枠組みを新設する。企業関係者の安全確保も含めたビジネス環境に関する協議体も創設する。
首相は訪米に先立ち、対中外交について「建設的かつ安定的な関係を維持するため、お互いの努力によって関係を維持する基本方針は変わっていない」と言明している。
日中関係をめぐっては岸田首相と中国の李強(リー・チャン)首相が9月にインドネシアで立ち話した。日中平和友好条約発効45周年の10月23日にメッセージを交換した。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。深川由起子早稲田大学政治経済学術院 教授
分析・考察
中国に限らず、グローバルサウスに限らず、「日本はアメリカの従属変数」というレッテルはかなり粘着力を持ちます。写真の習主席の表情もそのもの。G7などマルチのレバレッジ依存はやむを得ないとしても、地域研究の没落と共に日本人の中国研究者数が激減し、本来、欧米に比しての強みだった「中国の内側論理から考える」能力の低下がバイの関係構築を不利にしている感があります。かといって欧米のような情報機関の力が弱く、民間企業の持つ情報との密かな連携も希薄。これでは情報戦について行けません。「あなたは「井戸を掘った人を忘れない」国なのでは?」と鋭く切り返せる日本にならないといけないのでは。
【パナソニックHD、自動車部品会社売却へ 米ファンドに】
17日の日経速報メールは報じた。
パナソニックホールディングス(HD)は17日、自動車部品を手掛けるパナソニックオートモーティブシステムズの売却に関し米投資ファンド大手アポロ・グローバル・マネジメントのグループ会社と基本合意したと発表した。パナソニックHDがパナソニックオートの株式の50〜80%をアポロが投資助言をするファンドに売却する。
パナソニックHDは電気自動車(EV)向け電池などを成長領域に位置づけ、重点的に投資する方針を示している。成長領域以外の事業の見直しを進めており、今回の決定はその一環になる。
売却によりパナソニックオートはパナソニックHDの完全子会社から持ち分法適用会社になる見通し。2024年3月末までの正式契約締結を目指す。パナソニックHDが売却する株式数をこれから決めるため売却額は未定だが、数千億円とみられる。
パナソニックオートは自動車のコックピットシステムや電子部品、車載充電器事業などを手掛ける。2022年度の売上高は1兆2975億円、営業利益は162億円だった。グループ従業員数は約3万人。27年度に売上高営業利益率を5%(22年度は1.2%)にする目標を掲げているが、車載充電器事業の赤字などで近年は収益力が低下している。
• 【関連記事】パナソニックHD、1兆円子会社売却 EV電池に重点投資
自動車業界は電動化や自動運転など「CASE」と呼ばれる技術への対応など変革を求められている。新技術に対応し、競争力を高めるためには多額の研究開発費が必要になる。パナソニックHDはパナソニックオートが単独で投資資金をまかなうのは難しいと判断し、ファンドと連携することを決めた。
パナソニックHDは17日、パナソニックオートの売却後も「グループの一員として社名やブランドは残す」とコメントした。
パナソニックHDの楠見雄規社長は5月のグループ戦略説明会で、23年度は「事業ポートフォリオの見直しを視野に入れた経営を進める」と述べ、グループ事業の売却の可能性を示唆していた。
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【伊藤忠、ビッグモーター買収検討 創業家関与なしが条件】
同じ17日の日経速報メールは報じた。
伊藤忠商事と国内の企業再生ファンドが中古車販売大手ビッグモーター(東京都多摩市)の買収を検討していることが17日、わかった。ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と組み、買収に必要なデューデリジェンス(資産査定)の独占契約を結んだと発表した。 伊藤忠とJWP連合は契約に当たり、ビッグモーターとの間で創業家が経営に関与しないことで大筋合意した。
伊藤忠と子会社で燃料商社の伊藤忠エネクス、JWPの3社連合が17日、ビッグモーターとデューデリジェンスを独占で実施することで基本合意書を結んだ。3社はビッグモーターの経営状況を詳細に分析し、2024年春までに再建を支援するかを最終決定する。
ビッグモーターは未上場で、同社株は創業者の兼重宏行氏らの資産管理会社が保有している。23年7月に自動車保険金の水増し請求などの不祥事が発覚し、顧客離れが進んでいる。中古車販売は一時、例年に比べて6割以上減った。現在も月次で赤字が続いている。
同社は現預金や売掛金などの流動資産を数百億円抱える一方、従業員への賃金支払いなどで資金の流出が続く。銀行団は借入金の借り換えに応じないなど資金繰りに苦慮しており、自主再建が困難な状況だ。
ビッグモーターはコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの協力を仰ぎ、経営再建を急いでいる。支援企業を早期に確定し経営の立て直しを目指すが、不祥事の影響が長引き難航していた。
伊藤忠はグループで自動車リース事業を手掛けているほか、ニッポンレンタカーサービスを傘下に持つ東京センチュリーを持ち分法適用会社にしている。輸入車・中古車販売大手のヤナセも抱え、自動車ビジネスとのつながりが深い。グループとの相乗効果が高い可能性があると判断し、支援に名乗りを上げた。
焦点は買収価格や事業譲渡の対象だ。ビッグモーターを巡っては顧客の車体を故意に傷つけるなどして、損害保険会社に保険金を水増し請求する不正行為が横行していた。
国土交通省は10月、ビッグモーターが全国に持つ135工場のうち34工場で自動車整備を事業停止にするなどの行政処分を出した。金融庁も11月末に保険代理店登録を取り消す行政処分の実施方針を表明している。
中古車の買い取りや販売でも1000件以上のトラブルが生じ、複数の民事訴訟を抱えている。10月末には経営不振で東京都や埼玉県で計9店舗を閉鎖した。伊藤忠はビッグモーターの支援を通じ、自社のブランドイメージが毀損しないかも慎重に検討する。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。佐藤一郎国立情報学研究所 教授 別の視点
アルトマン氏はOpenAIだけでなく、生成AIの顔ともいえる人物だっただけに、同氏の解任は衝撃です。さて、この解任はAIのガバナンスに一石を与えるのではないでしょうか。企業が適切にAIを提供・利用するには、企業のAIに関わるガバナンスが重要視されていますが、企業トップが突如解任されるとなると、ガバナンスの仕組みの再考が求められることになります。さてアルトマン氏はAIの規制には積極的であったといえて、今回の解任でOpenAIのAI規制のスタンスが弱まると、AIに対する規制は企業側のガバナンスだけで十分なのか、法的規制が必要などの声が強くなるかもしれません。
【創価学会の池田大作名誉会長が死去、95歳 公明党を結成】
18日の日経速報メールは報じた。
宗教法人創価学会名誉会長で、同会の戦後の飛躍的な拡大を指導した池田大作(いけだ・だいさく)氏が11月15日夜、老衰のため死去した。95歳だった。創価学会が18日発表した。葬儀は近親者で行った。お別れの会を行うが、日取りなどは未定。
東京都生まれ。1947年8月、創価学会の戸田城聖第2代会長に出会い、19歳で入会した。54年には青年部参謀室長に就任。学会の政治進出の本格化に伴い、選挙運動を組織、指導するようになった。
60年に32歳で第3代会長に就任。池田氏の指導下で学会は64年、公明党を結成した。
70年代以降は海外布教と世界平和を目指す国際交流に力を注ぎ、中国の周恩来首相、旧ソ連のゴルバチョフ大統領(いずれも当時)ら各国の指導者や識者と意見交換するなど国内外で組織を拡大した。
学会ホームページによると、現在の日本国内の会員数は827万世帯。海外では世界192カ国・地域に280万人の会員がいる。
75年に創価学会インタナショナル(SGI)会長、79年に創価学会名誉会長に就任。教育・文化面では67年に創価学園、71年に創価大を開設した。著書に「人間革命」「仏法と宇宙を語る」など。海外要人との対談集も多数。
83年に国連平和賞を受賞したほか、モスクワ大学やボローニャ大学といった海外の大学から名誉博士号などの称号も贈られた。公の場に姿を見せることが少なくなった後も平和運動に力を入れ、近年はロシアに侵攻されたウクライナの平和回復や核拡散防止に関する提言を発表した。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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【マンション建て替えやすく 借り主退去、請求後半年で】
19日の日経ニュースメールは次のように報じた。
首都圏を中心に増える老朽マンションの再生が社会的な課題となっている。建て替え予定の分譲マンションに借り主が居座り工事できないケースがあり、決議に基づいて6カ月後の立ち退きを請求できるようにする。政府は決議要件緩和などと合わせた制度案を近く示し、2024年の通常国会への区分所有法改正案の提出をめざす。
東京都新宿区の住宅街に30年以上をかけて建て替えにこぎ着けたマンションがある。1930年代に建築された物件で、建物の傾きや雨漏りから60年代に建て替えの検討が始まった。
手続きは難航した。高齢の所有者から「自分が生きている間は壊さないでほしい」「歴史的な建物を残してほしい」という声が出て、合意形成ができなかった。所有者の賛成を得て建て替えを決議し竣工に至ったのは2005年のことだった。
決議には所在の分からない所有者も含めた5分の4以上の賛成が必要だ。高度経済成長期に大量供給されたマンションの老朽化が急速に進むが、現行法は建て替えに高いハードルを設けている。
法相の諮問機関の法制審議会は、分譲マンションの建て替えなどを円滑にする方策を検討してきた。耐震性などに問題がある場合については、所在の明らかな人を対象に4分の3の賛成に引き下げる案を出している。
建て替えが決まったとしても、障壁はもう一つある。長期間契約の借り主が反対し、建て替え工事ができないケースがある。現行法では契約違反などの正当な理由がなければ退去の義務はない。所有者は借り主と個別に交渉する必要がある。
新制度の導入後は個別交渉で解決しない場合でも、契約の終了を請求できるようになる。所有者が立ち退き費用などを補償することで賃貸借契約を解除できる。
法制審議会は21日に新制度を盛った要綱案のたたき台を提示する方針だ。政府は議論をもとに区分所有法の改正案をとりまとめ、24年の通常国会に提出する見通し。
旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所の重水丈人所長は「立ち退かないと建て替えできないため、借り主の同意が重要だ。所有者は大変苦労している」と話す。追加的な課題として借り主への補償に関するガイドラインの整備が必要だと指摘した。
国土交通省によると、築40年以上の分譲マンションは22年末でおよそ126万戸ある。42年末には22年末の3.5倍の445万戸にまで増加する見込みだ。
一方、建て替えの累計実績は23年3月時点でおよそ2万3000戸にとどまる。
東京カンテイ市場調査部の高橋雅之主任研究員は「要件緩和で建て替え需要にはプラスの方向に働く」と語る。資材の高騰で建て替え費用がかさむ可能性があり「所得水準や年齢層が多様な大規模マンションでは合意形成が図りにくい」との見方を示す。
マンションの建物や敷地の売却、取り壊しやリノベーション(大規模改修)の決定も多数決で可能にする。現行法で実行するには所有者全員の賛成が必要だが、建て替えと同様に耐震性などに問題があれば4分の3の多数決で決められるようにする。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
大槻奈那名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
今後の展望
所有権尊重の観点等から進みにくかった建て替え決議に対する大きな進展です。但し、実行段階でのハードルはまだ様々残されています。 例えば借り主の退去については、立ち退き費用補償の水準をどうするのか。また、建て替えの賛成票も集まり難くなっている可能性があります。住人の一層の高齢化や、家賃上昇で建て替え中の移転費用の増加が課題です。更に、近年では室内のリノベーションが広く普及し、その技術が高額化していることから、一旦リノベした世帯はそれを無駄にするような建て替え決議には賛成しない可能性があります。一定の年数を経たマンションでは、できるだけ早い時期から理事会等で話し合いを始める必要があるでしょう。
2023年11月20日 8:38
【紅海で貨物船乗っ取り 日本郵船が運航「日本人いない」】
19日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は19日、イエメン近くの紅海で貨物船が乗っ取られたと発表した。日本郵船によると、拿捕(だほ)された船はバハマ船籍の自動車輸送船「ギャラクシー・リーダー」で同社がチャーターしていた。
日本郵船は「拿捕されたのは事実。乗組員の安全を確認中」とコメントした。乗組員はブルガリア人、フィリピン人など25人で日本人はいないという。国土交通省は19日午後9時半ごろ日本郵船から連絡を受け、詳しい情報を確認中だとしている。
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イスラエル首相府は、この船舶は英国企業が所有し日本企業が運航しており、乗っ取りを実行したのはイエメンの親イラン武装組織フーシだと主張した。乗っ取りはイランの指導を受けたもので「イランによる国際船舶への攻撃を強く非難する」と強調した。乗組員にイスラエル人はいないと説明している。
イスラエル軍によると、貨物船はトルコからインドに向かう途中だった。船舶情報会社マリントラフィックによると、サウジアラビアとスーダンの間の海域で信号を確認したのを最後に消息がわからなくなっている。
ロイター通信はこれに先立ち、フーシの広報担当者が同日、イスラエル企業が所有・運航するすべての船舶を標的にすると表明したと伝えた。
イスラエル軍は10月からパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと交戦しており、フーシはイスラエルへミサイルなどによる攻撃をしかけてきた。
(カイロ=久門武史、逸見純也)
▼フーシ イエメン北部を活動拠点とするイスラム教シーア派の武装組織。指導者はアブドルマリク・フーシ氏。2011年に中東で広がった民主化運動「アラブの春」以降に台頭し、15年にクーデターで首都サヌアを占領するなど国内の大半を支配下に置いている。
イエメンではサウジアラビアなどが支援する暫定政権と、イランが支援するフーシの内戦が続いている。3月にサウジとイランが外交関係を正常化することで合意すると、サウジとフーシの停戦協議も始まり、緊張緩和の機運が高まっていた。
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【元OpenAIのアルトマン氏ら、Microsoft入りへ】
20日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=山田遼太郎】米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は19日、米新興企業オープンAIのCEOを解任されたサム・アルトマン氏がマイクロソフトに加わると明らかにした。同社に新設する人工知能(AI)の先進的な研究チームを率いるという。
ナデラ氏が19日深夜(米西部時間)にX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。オープンAIの共同創業者の1人で、アルトマン氏とともに退社を表明したグレッグ・ブロックマン元社長もマイクロソフトに入る。複数のオープンAI従業員もマイクロソフトに移る。
ナデラ氏は投稿で「我々はオープンAIとの提携を続け、製品のロードマップに自信を持っている」と強調した。エメット・シア氏が暫定CEOに就くオープンAIについて「新経営陣と共に働くのを楽しみにしている」とも述べ、巨額を投資するオープンAIとの関係を維持する考えを強調した。
マイクロソフトCEOのナデラ氏はXへの投稿でアルトマン氏らがマイクロソフトに入社すると明らかにした
ナデラ氏によると、アルトマン氏はマイクロソフト社内で新たに設置されるAI研究のグループのCEOに就くという。
アルトマン氏は同日、ナデラ氏の投稿に「使命は続く」とXで応じ、マイクロソフトに加わることを認めるかたちとなった。
アルトマン氏は17日にオープンAIのCEOを突如解任された。同氏を支持する投資家や従業員が多く、復帰に向けた交渉があったが19日夜までに合意に至らなかった。オープンAIはゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」元トップのシア氏を暫定CEOに起用した。
アルトマン氏やブロックマン氏の退任に続き、オープンAIの多くの従業員が退社の意向を示したことから去就に注目が集まっていた。
マイクロソフトは米西部ワシントン州シアトルで開いた技術イベント「イグナイト」で15日、オープンAIが手がける生成AIの技術基盤の最新版「GPT-4ターボ」の企業向け提供などを発表したばかりだ。
対話型AI「Chat(チャット)GPT」で知られる同社との提携を経営戦略の中核に据え、業務ソフトの操作を支援する「コパイロット」など、AI技術を矢継ぎ早に自社サービスに組み込んだ。クラウド基盤「アジュール」とオープンAIの技術の連携も進めた。
オープンAIから人材が流出し、アルトマン氏が独立する事態となれば、マイクロソフトのAI戦略が見直しを迫られるほか、投資家らから批判を招くのは避けられない情勢だった。
【OpenAIの社員9割、退社も辞さず 取締役会に総退陣迫る】
21日の日経速報メールは報じた。
シリコンバレー=渡辺直樹】米オープンAIの社員らは20日、取締役会(理事会)に総退陣を求め、解任したサム・アルトマン氏らを復帰させなければ、自分たちもそろって退社すると迫る文書を提出した。770人いる社員のうち、すでに9割超にあたる約730人が署名した。人工知能(AI)の有望企業をめぐる混乱は社員の「反乱」という重大な局面に発展しはじめた。
日本経済新聞が入手した文書によると、要求は取締役会に向けている。現在の取締役全員が辞任した上で、独立した新任者を指名し、アルトマン元CEOとグレッグ・ブロックマン前社長を復帰させるよう求めている。
受け入れられなければ、大半の従業員はアルトマン氏らが手がける「マイクロソフトの新しい子会社に参加することを選択するかもしれない」と迫っている。「(取締役会は)オープンAIを監督する能力がないことが明確になった。能力や判断力、使命、従業員への配慮が欠けている人たちのために働くことはできない」と批判している。
賛同したオープンAIの社員は「みな同じように突然状況を知らされて驚いている」と混乱する社内の状況を明かした。
オープンAIは17日にアルトマン氏の解任を突如発表して以降、技術者らが離反する事態を招いていた。オープンAIの投資家はアルトマン氏の復帰を仲介したが、これに失敗。19日にはマイクロソフトがアルトマン氏とブロックマン氏を新たなAI研究チームに迎えると発表した。
取締役会は暫定CEOにゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」の元CEOであるエメット・シア氏を指名した。同氏はアルトマン氏解任の経緯について近く報告書をつくる意向を示していた。
現在の取締役会はアルトマン氏解任に加担したチーフサイエンティストのイリヤ・サツキバー氏と3人の社外取締役で構成している。社員らが今回提出した文書には、そのサツキバー氏も署名し、取締役の解任要求は実質的に社外の3人に向けられた形だ。
サツキバー氏はX(旧ツイッター)上で「取締役会(理事会)の行動に加わったことを深く後悔している。オープンAIに危害を加えるつもりはまったくなかった。会社を再統合するためにできる限りのことをするつもりだ」と投稿した。
一連の動きをうけてマイクロソフトの株価は20日、約2%上昇した。マイクロソフトは混乱に乗じ、資本・業務提携するオープンAIの人材取り込みをさらに進める可能性が高いとみられている。
オープンAIの創設にも関与した米起業家のイーロン・マスク氏はXで「マイクロソフトは数年前にオープンAIの事実上の支配権を実現した。それが今になって明らかになりつつある」と投稿した。
【岸田首相が2024年春に訪米 議会演説を検討、国賓待遇】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
岸田文雄首相は2024年春に訪米する調整に入った。バイデン米大統領から国賓待遇で招待を受けており、米議会での演説を検討する。日本の防衛力強化を踏まえた「同盟の現代化」を推進する。安全保障や経済、人的交流など幅広い分野で関係深化を話し合う。
首相は先に米サンフランシスコを訪れた際にバイデン氏と会談した。バイデン氏は24年早期に首相を国賓待遇で招待すると伝えていた。
国賓は大統領や国王など政府が外国の元首らを最も手厚く受け入れる接遇だ。首相は24年度予算案の国会審議の日程を見極めながら3〜4月ごろの訪米を探る。
日本の首相が国賓訪米するのは15年の安倍晋三氏以来となる。米議会では過去に安倍氏のほか吉田茂、岸信介、池田勇人の各氏が演説に臨んだ。
米国の厚遇は岸田政権が打ち出した防衛力強化を評価している証しでもある。日本政府は22年12月に新たな国家安全保障戦略など安保関連3文書や防衛費の大幅増を決めた。バイデン氏は23年1月にワシントンで開いた日米首脳会談でこれを「果敢なリーダーシップ」と歓迎した。
報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率は低迷する。ロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエルとイスラム組織の戦闘は長引く恐れがある。米国はそうした情勢下で同盟国である日本の政治が不安定になる展開を望んでいないとみられる。
【自工会会長にいすゞ片山会長 トヨタなど3社以外から初】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本自動車工業会(自工会)の次期会長にいすゞ自動車会長の片山正則氏が就任する見通しとなった。任期が2024年5月までの豊田章男会長(トヨタ自動車会長)の後任となる。1967年に自工会が発足して以降、トヨタ、ホンダ、日産自動車以外から会長が就任するのは初めて。
自工会の会長はトヨタとホンダ、日産の首脳が1期2年交代で務めるのが慣例だった。豊田氏は2018年5月に会長に就いた。12〜14年に次いで2回目の就任だった。
片山氏は現在、副会長を務めている。商用車を主力とする企業が会長に就くことで、100年に1度とされる自動車産業の構造変化などに業界をあげて柔軟に対応できる体制を整備する狙いがあるとみられる。
【北朝鮮が「軍事偵察衛星」発射 軌道投入は確認されず】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本政府は21日夜、北朝鮮が同日午後10時43分ごろ、北西部の東倉里(トンチャンリ)から弾道ミサイル技術を使った発射を強行したと発表した。北朝鮮が主張する「軍事偵察衛星」とみられる。防衛省によると周回軌道への投入は確認されていない。
北朝鮮の朝鮮中央通信は22日未明、北朝鮮の国家航空宇宙技術総局が21日夜に軍事偵察衛星を打ち上げ、成功したと伝えた。衛星を地球の周回軌道に「正確に進入させた」と主張した。
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北朝鮮が22日午前0時から12月1日午前0時の間に「人工衛星」を発射すると通告していた。
政府は21日午後10時46分に全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。「北朝鮮からミサイルが発射されたとみられる」として沖縄県に避難を呼びかけた。その後に「ミサイルは10時55分ごろ、太平洋へ通過したとみられる」と通知し呼びかけを解除した。
岸田文雄首相は同日深夜、首相官邸で記者団に「少なくとも1発は沖縄上空を太平洋へ通過した。被害は確認していない」と述べた。宮沢博行防衛副大臣は22日未明、防衛省で記者団に「地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と明らかにした。
宮沢氏によると、衛星とみられる発射物は上空で分離し、一つは朝鮮半島の西350キロほどの東シナ海の予告区域外に落ちた。もう一つは沖ノ鳥島の南西1200キロ程度の太平洋上に位置する日本の排他的経済水域(EEZ)外の予告区域内に落下した。
21日夜に記者会見した松野博一官房長官は「発射について繰り返し中止を求めてきたにもかかわらず、住民の安全確保の観点からも極めて問題のある行為だ」と強調し、北朝鮮に厳重抗議したと説明。発射は国連安全保障理事会の決議違反に当たるとの認識を示した。
首相は21日夜、ミサイルの上空通過を踏まえ関係閣僚に①落下物による被害がないかの速やかな確認、②北朝鮮の今後の動向を含めた情報収集・分析の徹底、③米国や韓国などの関係諸国との連携、適時適切な対応――の3点を指示した。
Jアラートの発令は沖縄県に避難を促した8月24日以来。この時は北朝鮮が「軍事偵察衛星」を発射し失敗した。沖縄本島と宮古島の間の上空を飛行し太平洋へ通過したため避難の呼びかけを解除した。
【イスラエル、4日間戦闘休止へ 人質50人解放と引き換え】
22日の日経速報メールは報じた。
【イスタンブール=木寺もも子】イスラエルメディアによると、同国政府は22日、少なくとも人質50人の解放と引き換えに、パレスチナ自治区ガザで続くイスラム組織ハマスとの戦闘を4日間休止することを閣議決定した。ハマス側も既に「合意が近い」としており、一定期間の人道停戦や人質の解放が実現する可能性が強まった。
イスラエルは戦闘の休止に加え、パレスチナ人の囚人のうち女性や未成年者も引き換えに釈放する。ガザへの人道支援拡大や、負傷者がガザを脱出することも認めるもようだ。交渉は米国とカタールが仲介した。
政府高官の話として報じられた情報によると、解放されるのは子ども30人とその母親8人のほか、女性12人だとされる。
ハマスなどがガザに拉致したイスラエル側の人質は約240人に上るとみられる。戦闘の休止が履行されれば、さらに数十人が解放されるとの報道もある。
ただ、イスラエルメディアによると、国民は24時間以内に裁判所に対して閣議決定への異議申し立てを行える。合意がすみやかに成立、履行されるかは不透明な面もある。
閣議は21日夜(日本時間22日未明)に始まり、22日早朝まで続いた。公開された映像によるとネタニヤフ氏は冒頭、「停戦(期間)後も、戦争は続く」と述べ、一時的な戦闘休止を挟んだ後もハマスの壊滅を目指す軍事作戦は継続すると強調。合意は「厳しいが、正しい決定だ」として閣僚らに理解を求めた。
中東の衛星放送局アルジャズィーラによると、ハマスと共闘するガザの過激派「イスラム聖戦」は21日、レバノンで開いた記者会見で、交渉を巡り「ハマスと協調している」と表明した。イスラム聖戦も多数の人質を拘束しているとみられる。
人質はこれまで米国籍の母娘とイスラエルの高齢女性2人が解放されたほか、イスラエル軍が女性兵士1人を救出した。
イスラエルは21日も空爆などを続けた。ガザ当局によると、同日までの累計の死者は1万4100人を超えた。国連安全保障理事会は15日、「緊急かつ人道的な一時休止」を要請する決議案を採択した。国連総会も10月下旬、「人道的休戦」を求めていた。
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【東芝、株式併合など特別決議を承認 臨時株主総会】
22日の日経速報メールは報じた。
東芝は22日、臨時株主総会を開き、株式の非公開化に向けた株式併合や定款変更などの議案を諮り賛成多数で承認された。日本産業パートナーズ(JIP)と国内企業によるTOB(株式公開買い付け)に応募しなかった株主の株式を強制的に買い取り、東芝は12月20日に東京証券取引所への株式上場が廃止になる。
東芝は不正会計や巨額損失、アクティビスト(物言う株主)との対立など経営の混乱が長引いた。JIPは総額2兆円を投じて8〜9月 にTOB(株式公開買い付け)を実施した。東芝は株主をJIPに一本化し、投資ファンド傘下で再建を目指す。
この間、以下の録画を視聴することができた。 (1)BS6報道1930「ウクライナの不協和音、政権と軍中枢の内部での反攻停滞が生む確執か。クリミヤ上陸作戦の狙いは」13日。 (2)BS6報道1930「ハマスが変えた<世界地図>、米の中政策崩壊で反米・反イが拡大。生活困窮のガザ住民は?」13日。 (3)231113~変わりつつある世界(17)
2023年11月13日、前回の「変わりつつある世界(16)」を掲載してから、気になっていた記事がある。11月10日、2つの記事があった。
【食材宅配サービスのMBO】
第1が日経速報メールが報じた食材宅配サービスのMBO(経営陣が参加する買収)であり、つづけて同日、日経速報メールが報じた「進研ゼミ」である。
食材宅配サービスを手掛けるオイシックス・ラ・大地は10日、シダックスを子会社化すると発表した。シダックスがMBO(経営陣が参加する買収)で株式を非公開化した後に実施する第三者割当増資を引き受ける。原材料高や人手不足でシダックス主力の給食事業の収益が悪化する中、主力事業の効率化や不採算事業の見直しなど構造改革を急ぐ。
シダックスは志太勤一会長兼社長ら創業家の資産管理会社が、11月13日〜12月25日の期間に1株当たり800円でTOB(株式公開買い付け)を実施する。株主からシダックス株を買い取って完全子会社にする。
シダックスには食材宅配サービスを手掛けるオイシックスが、約3割を出資している。同社はMBOに賛同している。
給食業界は原材料高や水道光熱費の上昇などによって事業環境の厳しさは一段と増している。9月には学校給食などを運営するホーユー(広島市)が破産手続きを開始した。
シダックスの業績は新型コロナウイルス禍後の回復がまだ鈍い。給食などを手掛ける主力の「フードサービス事業」は、2023年3月期の営業利益が前の期比14%減の22億円と落ち込んだ。抜本的な立て直しに構造改革を急ぐ必要があると判断した。
シダックスは志太勤取締役最高顧問が1959年に富士フイルムの食堂を受託して創業。志太会長兼社長ら創業家が20%超を保有する。90年代にはカラオケ事業に進出し、一時は主力事業となったがその後に採算が悪化。18年にはカラオケ事業から撤退、19年には投資ファンド、ユニゾン・キャピタル(東京・千代田)の出資を受けて経営再建を進めていた。
22年にはオイシックスがユニゾンの持ち分をTOBで買い取り、28%を保有する筆頭株主となった。オイシックスはシダックスを持ち分法適用会社にしており、高島宏平社長がシダックスの社外取締役に就いている。
両社は法人向け給食で使うミールキットの開発など協業を進めていた。オイシックスは今夏から保育園給食事業に本格参入し、シダックスが受託運営する事業所にミールキットを試験導入するなど連携を強めている。
22年のオイシックスのTOBを巡っては、「オイシックス以外の第三者からのフード関連事業の協業提案などを検討する機会が失われる」としてシダックスの取締役会が反対を表明した。外食大手のコロワイドもシダックスへ給食事業の買収を提案するなどで各社の利害関係が複雑になった。
オイシックス以外の企業との連携可能性を調査する特別委員会や、ガバナンス(企業統治)体制を調べる調査委員会を設置することを条件に、取締役会がTOBへの意見を「中立」に変更したことでTOBが成立した経緯がある。
【ベネッセがMBO 欧ファンドと、「進研ゼミ」立て直し】
第2が「進研ゼミ」である。
ベネッセホールディングス(HD)は10日、MBO(経営陣が参加する買収)を実施すると発表した。ヨーロッパの投資ファンドEQTと組み、TOB(株式公開買い付け)を実施する。ベネッセHD株は上場廃止となる見通し。主力の通信教育「進研ゼミ」の不振が続いており、株式の非公開化で立て直しを図る。
TOBは1株2600円で実施する。9日終値(1791.5円)から808.5円(45%)のプレミアム(上乗せ幅)をつけた。全株ベースでの株式価値は約2700億円と、国内のMBOでは最大規模となる。
まずEQTが特別目的会社(SPC)を設立し、TOBなどにより約83%のベネッセHD株を約2080億円で取得する。その後、残りの約17%の株式を持つベネッセHD創業家の資産管理会社を完全子会社化する。
TOB完了後にSPCに対し創業家が出資。最終的にはEQTが6割、創業家が4割、SPC株を保有する形にする。議決権ベースでは5割ずつにする。
EQTはスウェーデンの産業・金融界に影響力を持つウォーレンバーグ家に由来する大手投資会社。2021年に日本に拠点を設置し、22年にアジア系のベアリング・プライベート・エクイティ・アジアと統合した。EQTにとって日本で初めての投資案件となる。
ベネッセHDは主力の「進研ゼミ」事業の苦戦が続いている。小学生〜高校生の会員数は23年4月時点で前年比14万人減の160万人だった。10年前と比べ約4割減少した。デジタル教材の導入などで立て直しを進めていたが、会員数減に歯止めがかからなかった。
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本業のもうけを示す連結営業利益は23年3月期で206億円と、13年3月期に比べ46%減った。介護や保育など多角化を進めるほか、22年には不採算だった語学教室の「ベルリッツ」事業の売却など構造改革を進めた。ただ、主力事業の抜本的な立て直しには非公開化が必要だと判断した。
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ベネッセは1955年に生徒手帳などを発行する福武書店として設立した。69年に進研ゼミ高校講座の前身となる「通信教育セミナ」事業を始めた。創業家出身の福武総一郎氏が長く代表取締役を務めていたが、14年に最高顧問に退いた。
日本マクドナルドホールディングスのトップから転じた原田泳幸氏が14年に会長兼社長に就いたが、同年に個人情報漏洩問題が発覚し、会員数が減少。16年に退任した。その後もトップ交代が続いた。
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11日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・これが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい
・高いレベルの喜びは、練習や競争を乗り越えた先に
・選手との距離感はいつも悩み、言葉には気を使う
この夏の甲子園、107年ぶりの全国優勝を遂げた慶応義塾高(神奈川)のナインは笑顔の「エンジョイ・ベースボール」で汗と涙の色濃い高校野球に、新風を吹き込んだ。これからの高校野球は「勝ち」を目指しつつも、自立心を育む人材養成面などの「価値」が求められるという森林貴彦監督に、真意を聞いた。
神奈川県大会決勝で横浜、甲子園で仙台育英(宮城)という強豪を相次いで破った。「プレーボール」の言葉通り、遊び、楽しむ野球の原点に立ち返っての戴冠だった。
「夏の甲子園3回戦の広陵(広島)戦で、初回に丸田湊斗選手が三塁盗塁を決めて先制したが、サインは出していなかった。彼が自分で決めた。三盗も選択肢として準備していたが、初回から(危険を冒す)サインは出せない。私よりよほど度胸、判断力がある。勇気も要るし、根拠がないと走れない。これからもそういう場面に出合いたい」
――自分で考える楽しさを味わってほしい、と思ったきっかけは。
「高校2年の夏、上田誠監督が『二塁けん制の動きやサインを自分たちで決めてみなさい』とおっしゃった。内野手の私と投手、捕手が練習後の暗くなったグラウンドで、ああでもないこうでもないと話し合った。自分たちで物事を進めるワクワク感は高校野球の一番の思い出だ」
「チームの決め事を守り、人と同じことをするだけでは人生、面白くない。ますます価値観が多様化し、自分なりの幸せを選び取る時代になると思うので、これをやりたい、自分にとってこれが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい」
――相当の野球技術がないとエンジョイはできない。
「もちろん、ただ笑顔でやればうまくいくというものではない。頂点を目指す以上、日々の地道な苦しい練習、ライバルとの競争、試行錯誤がある。そこを乗り越えるところに、より高いレベルの喜びがある。それがエンジョイの真意だ」
「言葉には気を使っている。準々決勝の沖縄尚学戦は五回まで0-2の劣勢。前半戦終了時に『第1試合は完敗だから、第2試合を頑張ろう』と言った。同じ言葉ばかりだと、選手はまたかよ、という顔をする。新鮮な言葉がないか試合中に考えていた。あれでみんな『これからだ』となったのか、六回に逆転できた」
「ミーティングでだらだらしゃべりたくないので、試合ごとに四字熟語でテーマを伝える。『徹頭徹尾』とか『勇往邁進(まいしん)』とか。甲子園の決勝は『大願成就』。これしかない、と一番簡単に決まった」
コツは「全力で頑張るな」
――筑波大の大学院で、勝負事でしゃかりきになってはいけない、という研究成果を残した。
「頑張り度合いとパフォーマンスの関係を調べると、100%の力で走ったときに最高の速度が出るわけではない。8割の力で走ると9割の速度が出る。野球の投球でも全力で投げるより、少し力を落とす方が球速も出て、制球が定まる。全力でやるなということ。各界の達人が極意として力を抜くとおっしゃる。それと同じではないか」
「エラーをした野手や失点した投手が、取り返そうと思うのもよくない。それで取り返せるなら、そんな簡単なことはない。過去は切り捨て、未来を向いて今やれることをやる。練習試合では反省もするが、公式戦で過ぎたことを引きずっていいことはない」
――自主性は大事だが、選手任せの危うさも。
「1代前の3年生は一人ひとりが自立していた。そこで私もある程度任せたが、任せ過ぎたというか、お互いの意思疎通が足りなかった気がする。選手との距離感はいつも悩む。就任当初は私が面倒みなきゃという意識もあって、こまごま言い過ぎていたと思う。失敗は多々ある」
高校野球ではいまだに体罰案件が報告され、フェアでないプレーもみられる。勝利にとらわれ、選手の人間的成長が置き去りにされる現状は社会に通じる課題のようだ。
教育現場で無力を痛感
「(打者が横目で捕手の位置を確認する『カンニング』は)今年の甲子園でだいぶ減ったと感じたが、ゼロではない。チームではなく選手個人の問題だと思うが。高校野球の2年半は短く指導者も時間がない、急いで詰め込まないと、と思うと無理が出る。体罰を受けて育った選手が指導者になって、同じことをする。負の循環を今、食い止めないといけない」
「高校で完成する必要はなく、数年後にいい選手になってくれたらいい、という気持ちでいる。今、先生(慶応義塾幼稚舎教諭)として小学3年生を教えているが、無力を痛感するばかり。漢字、筆算、九九……。できたかなと思った次の日に子どもはできなくなる。一方、教えたことのないことを、いつのまにかできるようになっている。僕がいる意味があるのかな、と日々自問自答する。忍耐強く(成長を)待つ点で、野球の指導者としてもいいトレーニングになっている」
――理想を掲げ、変革を唱えれば風当たりも強くなる。
「チームの目標は『慶応日本一』だが、その先の目的として『恩返し』と『常識を覆す』を掲げてきた。今年の選抜大会でも『高校野球を変えたい』と言って甲子園に乗り込んだが、初戦敗退。簡単に言うな、できるわけないだろう、という声があった。ただ、それをバネにして、夏こそという思いが強まり、成長の材料になった」
――甲子園では選手たちの自由な髪形が注目された。
「いまだにそんなことが話題になるのかと残念に思う一方、これを入り口に(変化への)議論が進めばそれでいい、と思った。問題は髪形そのものより(無思慮に前例に従う)思考停止、旧態依然、上意下達の部分。高校野球はこういうものだという枠を誰かがつくり、枠の中でずっとやってきた。今年の優勝で、一石を投じることはできたかと思う」
――サインに縛られない選手は本当に育つか。
「野球がどういう人材を社会に送り出せるか、野球型の思考が今後の社会にどうマッチするのか考えると、危機感を覚える。勝つために手段を選ばないといった思考が、高校生以下の世代でも、ゆがみとして出ている。そこで打ち出したのが『成長至上主義』。ただただ勝利を目指して頑張ろう、ではなくて、一人ひとりが人間的に成長し、周りも成長させる。選手としての成長、人間としての成長が車の両輪となったら強い。それによって、実は勝利にも近づくのではないか」
「高校野球には堅苦しい部分、個性や自由が認められづらい部分がある。親の負担も大きく、(子どもに)野球が選ばれにくくなっている。甲子園は盛り上がっているようにみえて、全国の野球部や部員の数は減っている。このままの形では続かない。高校野球はスポーツの枠を超えて文化として定着し、変えるのは大変だが、我々が変われば人の育成方法なども変わるきっかけになるかもしれない。社会的な意義は大きい」
――激戦区の神奈川を勝ち抜くのは至難。優勝後、来春の選抜大会につながる試合に敗れた。
「甲子園から帰って翌々日に練習を始めたが(県大会までの)時間のなさ、慌ただしさは想像を超えていた。ただ選手たちは、また新しい気持ちでいてくれている。人生100年、自分もまだ折り返し点。選手に成長を求める以上、私自身が成長するマインドを持っていなければ。現状維持でいい、となったときは退場すべきだと思っている」
もりばやし・たかひこ 1973年東京都渋谷区生まれ。慶大法卒業後NTTへ。3年で退職し、高校野球指導者として筑波大院で指導理論を研究。2015年から母校慶応高を率い、春夏計4度甲子園出場。23年夏、107年ぶりの全国優勝に導いた。慶応幼稚舎教諭。
あえて寄り道、柔軟性養う(インタビュアーから)
慶応の選手たちが夏の甲子園を「エンジョイ」できたのは「そもそも、慶応にいる時点で半ば人生の勝ち組だから」というやっかみまじりの見方があるが、それは違うようだ。
青春まっただ中の高校生であっても野球がすべてではいけない。そう考える森林監督は慶応OBなどから幅広い分野の話を聞く機会を設けている。
政府系金融機関を辞め、瀬戸内海の島で農業にいそしむ人から「都心の大会社に勤めるだけが人生ではない」と学んだ。大リーガー・菊池雄星投手の元マネジャーから、華やかな印象と違って努力の人と聞いた。強豪校が大会準備に追われている時期に、知的障害のある生徒の硬式野球への参加を進める取り組みと連携し、合同練習を行った。
あえて寄り道し、様々な価値観に触れることで「野球オンリー」にはない心の柔軟性が養われているようだ。(編集委員 篠山正幸)
【「日本はGXに本気か」 海外マネー3300兆円が品定め 資産運用立国に挑む 開国の障壁(1)】
13日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・日本は海外からの投資を集める「運用開国」を目指す
・脱炭素に向けて産業転換を段階的に進める戦略を掲げる
・海外投資家は日本企業のGXへの向き合い方を注視
政府は海外運用会社を招く「運用開国」に乗り出した。家計金融資産2100兆円が外に出ていくばかりでは日本の成長に寄与しない。国内に投資機会をどう生むかが最大の課題だ。
【「資産運用立国に挑む」連載記事】
•日本株の運用会社「空洞化」 非効率な慣習、参入阻む
10月6日、首相官邸。米運用会社ブラックロックの呼びかけで中東の政府系ファンドや欧米年金など世界の機関投資家・運用会社の代表約20人が集まった。保有・運用額は計3300兆円に上る。関係者は海外勢が来日した目的を「『具体的な投資案件を見せてくれ』ということだ」と語る。
政府が掲げるのが、化石燃料からクリーンエネルギーへの産業構造の転換を目指す「グリーントランスフォーメーション(GX)」だ。欧州のような一足飛びの脱炭素でなく段階的に移行(トランジション)する戦略で、官民合わせて10年で150兆円が必要とはじく。シンガポールの政府系ファンドGICは7月、現地を訪れた自民党の片山さつき金融調査会長に「日本のGX投資の定義に関心がある」と語った。
海外マネーを呼び込もうと企業も動き始めた。9月に増資などで約2040億円を調達したJFEホールディングス。「構造改革をやり遂げ、量から質へ転換する」。調達先を海外に絞り、欧米などの投資家約100人にオンラインで訴えた。
JFEホールディングスは構造改革のため川崎市の高炉を止めた
利益の見込みやすい電気自動車向け高級鋼板の投資に公募増資、中長期の脱炭素投資に新株予約権付社債(転換社債=CB)で得た資金を充てる。川崎市の高炉を止める一方、2030年度までに脱炭素に約1兆円投じる計画だ。増資で外国人株主比率は3割と3月末の24%から高まった。
日本企業のGX関連の資金調達は増えている。資金使途を環境事業に限る環境債の発行は23年1〜10月に1兆6000億円超と、年間で最高だった21年をすでに約2割上回った。温暖化ガス排出量の多い企業による移行債も21年からの累計で約6000億円に上る。
アジアではトランジションへの関心が高く、50年までに40兆ドルの脱炭素投資の資金需要があるとみられる。日本に脱炭素マネーを集め、アジアのGX投融資の資金が行き交うハブへと育てる余地はある。
ただ、投資家は日本企業がどこまで積極姿勢に転じたのか、なお半信半疑だ。
「日本は脱炭素にどのくらい真剣なのか」。ENEOSホールディングスのもとには政府のGX戦略に確信を持てない海外投資家から多くの質問が寄せられる。同社は再生可能エネルギー開発や水素の供給網構築などに取り組むが「技術のブレークスルーの時期など不透明で、30年度以降の具体的な計画を示すのは困難」とする。
日本企業はバブル崩壊以降、設備投資や研究開発を抑えて借入金返済を優先してきた。日銀の資金循環統計によると民間企業部門(金融除く)は戦後、資金不足だったが、1998年から資金余剰の局面に転じた。海外マネーが注目する今こそ、日本が積極投資に打って出る好機となる。
GXだけでなく、省人化や農業など日本経済の課題は多い。投資機会をどれだけ増やせるか。運用立国実現のハードルは高い。【資産運用立国に挑む 第1部】
【海外新薬、国内で早期承認へ 日本人の初期治験廃止】
同じ13日の日経ニュースメールは報じた。
日本で薬を売り出すために、臨床試験(治験)の過程で日本人で安全性を別途確認しなければならない制度が原則廃止される。欧米で承認された新薬の7割は日本で承認されておらず、海外で使われている薬が日本で入手できない「ドラッグ・ロス」が生じてきた。新薬の日本での早期流通を促し、患者の不利益の解消につなげる。
厚生労働省は近く、日本人での追加的な初期治験が原則として必要ないことを記した通知を出す。数カ月以内に制度は廃止される見通しだ。
医薬品が日本国内に出回るには、3段階の治験が必要になる。1番目にあたる第1相は少数の健康な人に薬を投与して安全性を確認する。第2相は少数の患者に投与し、効き目や副作用を調べる。第3相では世界各国の多数の患者を対象にする。
第1、2相の治験は、製薬会社が新薬を開発した国でやることが多い。しかし日本で販売するには原則として、第3相に進む前に別途、日本人への初期治験にあたる第1相の追加調査が求められる。
厚労省は「国内の環境で暮らす日本人への安全性を確認するため」と説明する。だがこれは日本独特のルールで他国ではほとんど求められない。
この追加調査が妨げとなり、「ドラッグ・ロス」や海外で使用されている医薬品の日本での承認が遅れる「ドラッグ・ラグ」が深刻になっている。
厚労省は追加的な初期治験をなくしても、第3相の治験で日本人の安全性は確認されると判断した。抗がん剤など強い副作用が起こりやすい一部の薬には追加調査が残る可能性がある。
2020年時点で米国と欧州連合(EU)で承認された新薬のうち、日本では72%が未承認で数字は上昇傾向にある。09〜17年に開発された新薬で、世界で初めて承認された時期と国内承認された時期の差は54.1カ月。韓国(28.2カ月)の約2倍だ。
治験には参加者を集めるコストや時間が欠かせない。グローバルな製薬会社にはこの手間を嫌って日本での販売を断念したり、市場投入の時期を他国に比べ大幅に遅らせたりしている。
厚労省のヒアリングに対し、製薬会社は「日本人向け治験が新薬投入の障壁となっている」という声を寄せた。欧米系の製薬会社も「日本人への投与経験がないこと以外に(追加調査が必要な)理由が十分に示されておらず、欧米の本社に理解されない」と指摘した。
たとえば消化管の壁にできる悪性腫瘍である消化管間質腫瘍(GIST)は年間10万人に1人から2人程度に発症する。治療薬「アバプリチニブ」は日本では手に入らない。米国では20年1月、欧州では20年9月に承認されている。
新型コロナウイルス禍でも、日本がワクチン承認で欧米から後れをとった原因の一つが追加治験だった。
米ファイザーは、海外での大規模治験の結果をもとに20年12月にワクチンの製造の承認を申請した。だが追加治験などへの対応で承認までに2カ月ほどかかった。
厚労省はルール変更について、医薬品の開発を担う海外の製薬会社への情報発信にも力を入れる。24年度には米国に医薬品医療機器総合機構の事務所を設立し制度の周知に生かす。
製薬大手アストラゼネカ社では、世界同時開発などの取組で同社の日本でのドラッグ・ラグやロスの問題はほぼ解消している。一方、同社はベンチャー発の先端的な医薬品のライセンスを取得し、残りの治験を自社で担う場合がある。日本人への初期治験の原則廃止で、開発期間が短縮されれば「非常にポジティブに捉えられる」という。また、日本市場で発売がしやすくなることへの「大きな一歩」だと期待を寄せる。
ドラッグ・ロスやラグの解消には他にも課題がある。例えば患者が少ない希少疾患や小児がんなどはコストをかけても利益が出にくいため、製薬会社は開発を敬遠する。米国は成人用のがんの薬を開発する際には小児用も開発することを義務づけている。日本には同様の制度はない。
【小売り、食品PB比率17%で最高 イオンやセブンが新商品】
14日の日経速報メールは報じた。
小売り大手が食品など生活必需品で割安なプライベートブランド(PB)を拡充する。イオンは食品PBの半分を刷新し、セブン&アイ・ホールディングスは低価格帯PBを倍増させる。スーパーの食品販売額に占めるPB比率は10月に過去最高の約17%に高まり、店頭価格の上昇は鈍化している。物価押し上げの主軸はモノからサービスに移る。
イオンはPB「トップバリュ」で生鮮品を除いて約5千ある食品のうち2500品目を新商品に切り替える。日用品などと合わせたPB売上高を2024年2月期に前期比11%増の1兆円超に高める。セブン&アイはPBの中でも低価格シリーズ「セブン・ザ・プライス」の品目を24年2月末までに160品に倍増させる。
ベイシア(前橋市)は新しいPB「ベイシアプレミアム」を始めた。既存PBは新製品に順次切り替えて24年2月までに100品目以上を展開する計画だ。西友も生鮮食品の新PB「食の幸」で現状65種類の品目数を増やす。
一般にPBはメーカー品より1〜3割程度安い。小売業にとって稼げる商品でもある。物流や宣伝費などを抑えられるため、粗利益率は15〜20%とされるメーカー品と比べ10ポイント程度高い。
メーカー品とPBは物価高でともに値上がりしているが、消費者は安いPBにシフトしている。
日本経済新聞社と調査会社のインテージ(東京・千代田)が全国のスーパーなどから集めたPOS(販売時点情報管理)データを分析したところ、加工食品や調味料、清涼飲料、アルコール飲料などを含む食品PB(生鮮品除く)の割合は10月に16.8%になった。統計がある12年以降で最高だ。
品目別のPB比率は冷凍野菜が57%と最多で、ハムが34%、牛乳は32%だった。
PBシフトの背景には食品価格の上昇がある。帝国データバンクによると、22年の食品値上げは約2万6000品目に達し、23年は1〜10月の累計で3万品目を超えた。総務省の消費者物価指数(食料、2020年=100)も10月、東京都区部で116と21年1月(99.7)から16.3%上昇。消費者は生活必需品への節約志向を強めている。
PBシフトは物価動向にも影響する。牛乳の店頭価格の前年比上昇率は10月の19%から足元は11%に縮まった。
POSデータをもとにスーパーなどの店頭価格の動きを示す「日経ナウキャスト日次物価指数」をみると、11月12日時点で前年比6.7%(7日平均)上昇したものの、今年8月のピーク(同9.2%)に比べ鈍化した。
その中で物価全体を下がりにくくしているのが旅行やレジャーなどのサービス価格だ。日本のサービス価格は長らく低迷していたが、9月は上昇率が2%に高まった。
サービス価格は賃上げの影響を受けやすい。足元で賃上げは物価上昇を下回っており、実質賃金は9月まで18カ月連続でマイナスだった。物価を下支えするサービス価格の腰折れを防ぐには、消費者の財布のひもを緩める継続的な賃上げが不可欠だ。
24年の春季労使交渉に向け連合が要求方針を発表した。サントリーホールディングスなど交渉が本格化する前に賃上げ方針を表明するところも出ている。企業の継続的な賃上げ力が問われる局面だ。(浅山亮、マクロ経済エディター 松尾洋平)
【エクソン、リチウム生産へ 30年までにEV電池100万台分】
同じ14日の日経速報メールは報じた。
【ヒューストン=花房良祐】石油メジャーの米エクソンモービルは13日、米南部アーカンソー州で2027年から電気自動車(EV)電池用のリチウムを生産すると発表した。北米以外での生産も視野に入れ、30年までに年100万台分のEV用電池のリチウムを供給。世界有数のEV向けリチウム供給会社を目指す。
石油メジャーがリチウムの大規模生産に乗り出すのは初めて。EVや電池のメーカーと供給に向けた協議に入った。23年初めにアーカンソー州の12万エーカー(約485平方キロメートル)の敷地で採掘する権利を獲得した。
石油・天然ガスの掘削技術を活用して地下約3000メートルからリチウムを含有する塩水をくみあげる。従来より環境負荷の低い新技術でリチウムを分離し、現場のプラントで電池用の素材に加工する。30年までに年約10万トン(炭酸リチウム換算)を生産する見込み。
リチウムはレアメタル(希少金属)で、リチウムイオン電池の製造に使用する。EVの増加などでリチウム需要は30年までに4倍になる見通しで、供給不足の懸念がある。低炭素部門トップのダン・アマン氏は「リチウムはエネルギー転換に必要で、エクソンは(経済の)電化に向けて主導的な役割を果たす」とコメントした。
米地質調査所(USGS)によると、22年の世界のリチウム生産のうちオーストラリア、南米チリ、中国の3カ国で合計約9割を占め、偏っている。一方、米国の生産量はほとんどない。加えて、従来技術によるリチウムの精錬では中国が世界の大半を担っている。米国で生産すればサプライチェーン(供給網)のリスクも低下する。
EVと電池の普及に伴い、レアメタルの生産・精錬が少数の国に偏在している課題が浮き彫りになっており、バイデン政権は米国での生産を支援する。22年には国産の電池素材を使用したEVの購入補助制度を導入した。
エクソンは太陽光・風力発電について石油開発との相乗効果が見込めないとして投資に慎重な一方、二酸化炭素を回収して地下に貯留するといった石油開発の掘削技術がいかせる低炭素ビジネスには積極的だ。地下を掘削するリチウム生産も石油開発の技術が活用できるとみている。
天候に左右される太陽光・風力発電は発電が不安定なため、蓄電池との組み合わせが不可欠だ。このため再生エネの普及に伴い蓄電池は増加する見通しで、リチウムの生産会社がエネルギー転換の時代を勝ち抜くとの見方が高まっている。
米S&Pグローバルのダニエル・ヤーギン副会長は「エネルギー業界は『ビッグ・オイル』(石油メジャー)から『ビッグ・ショベル』(大手鉱山会社)の時代に移っていく」と話している。
【米下院、つなぎ予算案を可決 政府閉鎖は回避へ】
15日の日経速報メールは報じた。
【ワシントン=高見浩輔】米連邦議会下院は14日、予算執行を現行水準のまま2024年1〜2月まで続ける「つなぎ予算案」を可決した。上院でもすでに与野党のトップが法案への支持を表明している。政府閉鎖の回避に向けて大きく前進した。
米議会は2024会計年度(23年10月〜24年9月)の予算案をまだ策定しておらず、9月末に11月17日までのつなぎ予算を成立させて政府機関の閉鎖を回避していた。期限が近づき、再延長が必要になっている。
•【関連記事】米政府閉鎖、土壇場で回避 11月までのつなぎ予算成立
つなぎ予算案は、野党・共和党が過半数を握る下院で10月に新たに議長になったジョンソン氏が提案した。軍事や退役軍人、交通、住宅などの予算は24年1月19日まで、それ以外は2月2日まで執行を続けることができる。
民主党の下院議員らがジョンソン氏の案に賛成したのは、懸念していた大幅な歳出削減が盛り込まれなかったためだ。譲歩した内容の法案を蹴れば、政府閉鎖の責任を民主側が背負うリスクもあった。
•【関連記事】米下院新議長に保守派ジョンソン氏 内紛抱え手腕未知数
上院でも民主トップのシューマー院内総務が法案を支持する考えを示している。上院を通過すれば法案はバイデン大統領の署名を経て成立する公算が大きい。
下院共和はわずかな議席数の差で優位を保っているため、強硬派の一部が反対するだけで法案が通らない機能不全に陥っていた。マッカーシー前議長は9月末、民主の協力を得て11月17日までのつなぎ予算案を可決させたが、その直後に解任された。
強硬派議員らは今回の法案にも反対したが、議長の解任動議に踏み込む動きは今のところ起きていない。前議長の解任後、下院共和では議長のなり手が3週間決まらなかった。
複数の米メディアによると、ジョンソン氏はひとまず政府閉鎖を避けつつ、年明けにかけて調整する24会計年度予算案で歳出削減を強く求める構えだ。
つなぎ予算の期限を2つに分けたのは、バイデン政権と民主党が「包括予算案」と呼ばれる一括法案で予算案を通すのを回避する狙いがある。米国の予算案は本来、12本の予算案を個別に成立させる必要がある。
政府閉鎖を回避できれば今後は予算案に盛り込まなかったウクライナ支援が大きな議題となる。共和内には国境警備など国内に資金を振り向けるべきだと反発が大きい。与野党で意見の隔たりは大きい。
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。前嶋和弘上智大学総合グローバル学部 教授
ひとこと解説
共和党の強硬派の自由議連の案だった「2段階予算案」を共和党穏健派と民主党側が拒否できずに通過。民主党側の反対は2,共和党側は93。さらに強硬な共和党議員が歳出削減などが入っていないため拒否。「強硬派議長(ジョンソン)の方が強硬派の反対が少なくなる分だけつなぎ予算成立の可能性が高くなるかもしれない」と何度かいろいろなところでお伝えしましたが、そのとおりになりました。 指導力が全く未知数だったジョンソン下院議長にとっては、最初の大きな仕事。「妥協を許さない」強硬派だったはずのジョンソン。議員個人としてはおそらく民主党との徹底した財政対決を望んでいたはずですが、現実的に政府一時閉鎖回避を重視。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
同じ15日のニュースメールは次のように報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は紅葉シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる訪日客が増える。
主要国23か国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で(2.7%増)だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店のインバウンド売上高が3201億円と、18年同期を14%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
【イスラエル軍、ガザ北部シファ病院で「作戦実行中」】
同じ15日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は15日、パレスチナ自治区ガザ北部にある地区最大のシファ病院で「特定のエリアで、精密かつ標的を絞った作戦を行っている」と明らかにした。軍は同病院やその周辺の地下にイスラム組織ハマスの司令部があると主張しており「病院内にいるすべてのハマスのテロリストに投降を求める」と強調した。
米CNNは同日、イスラエル軍の戦車がシファ病院の敷地内に入ったとの目撃情報を報じた。国連機関によると、シファ病院には12日時点で患者が600〜650人、避難住民が約1500人いたという。
イスラエル軍は作戦部隊に医療チームやアラビア語を話す兵士を同行させていると説明し「民間人に危害が及ばないよう配慮している」と強調した。作戦前日に「ガザの関係当局に対し、病院内での軍事活動を12時間以内に中止するよう再度伝えたが、応じなかった」と主張した。
一方、ハマスは病院の軍事利用を否定している。ロイター通信によると、ハマスは15日、病院突入の責任はイスラエルと米国の双方にあると非難する声明を出した。
イスラエル軍は14日、シファ病院の近くにありハマスの重要拠点だとするシャティ難民キャンプのほか、警察本部など複数の施設を制圧したと発表した。13日にはガザ北部のランティシ病院にも部隊が踏み込み、病院地下に武器の保管や人質の拘束などハマスの作戦に利用された痕跡があったと主張していた。
ガザ北部ではシファ病院などが燃料不足で機能を停止するなど、医療体制が崩壊しつつある。バイデン米大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に「病院は守られなければならない」と強調していた。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は14日、ハマスがシファ病院を含む複数の病院を軍事利用していることを確認したと明らかにし「戦争犯罪だ」との認識を示した。ロイター通信が伝えた。
ホワイトハウスはバイデン氏とイスラエルのネタニヤフ首相が14日に電話会談したと発表した。ハマスが拘束する人質の救出や病院の状況について協議したとみられる。
【日経平均3万3000円乗せ 陰の主役はNVIDIA】
同じ15日の日経ニュースメールは報じた。
15日の東京株式市場で日経平均株価は大幅続伸し、前日比823円77銭(2.52%)高の3万3519円70銭で取引を終えた。前日比の上げ幅は2023年で最大となり、節目の3万3000円をおよそ2カ月ぶりに上回った。米利上げの打ち止め観測が強まり、国内でも金利高が逆風となるグロース(成長)株が買い戻された。ハイテク株主導の相場の陰の主役と声が上がるのが、米エヌビディアだ。
15日は半導体検査装置大手のアドバンテスト株が一時8%高まで買い進められるなど、半導体関連株の上昇が目立っている。半導体製造装置の東京エレクトロン株とあわせて日経平均を170円強押し上げた。
アドテストはPER(株価収益率)が60倍に迫り、割高株の筆頭だ。将来の高い利益成長が株価に織り込まれている分、金利上昇は現在価値に引き直す際の割引率を高めるため、株価の下押しにつながりやすい。
14日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びは市場予想以上に鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止め観測が広がった。10月下旬に一時5%を超えていた米長期金利は4.5%を下回り、割高株への逆風は弱まる。アドテスト株は11月1日に付けた直近安値から半月で3割上昇した。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
15日の日経速報メールは報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は行楽シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる客が増える。
主要国23カ国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で2.7%増だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店の4〜9月のインバウンド売上高が353億円と、18年同期を17%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
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【いすゞ、電池交換3分のEVトラック 自前で取り換え拠点】
同じ15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
いすゞ自動車は電池交換式電気自動車(EV)トラックの事業化に乗り出す。3分で電池交換が可能な車両を開発し、取り換えを担うインフラも自社で運用する。EVは充電に時間がかかり、配送効率が落ちるのが課題だ。運転手不足問題の解消につながる電池交換式の普及を後押しするため、車両開発からインフラまで一貫して担う。
いすゞは電池を交換する「無人ステーション」をこのほど開発した。物流企業の配送拠点や給油所に売り込み、設置することを想定する。コンビニエンスストアへの荷物配送やゴミ収集車などに使う小型EVトラック「エルフ」をベースにした車両を開発した上で、2025年に実証実験を始める。
ステーションではロボットが電池を取り外し、充電済みの電池と交換する。交換時間は最短で2分30秒程度としており、トラックが再び走行可能になるまで3分以内ですむという。充電済みの電池を用意したり、設備の保守や点検をしたりといったステーションの運用もいすゞが自ら手がける可能性がある。
充電式のEVトラックは充電に10時間程度かかり、軽油を燃料とするディーゼル車と比べて配送効率が低いのが課題となっている。商用車では電動化が遅れており、調査会社の矢野経済研究所によると、世界の商用車販売台数に占める電動化率(ハイブリッドなど含む)は2021年時点でも1.2%にとどまる。
電池交換式であれば、短時間の交換で配送を続けることができる。物流業界ではトラックやバスなどの運転手に残業規制が適用され、人手不足が見込まれる「2024年問題」に直面している。電池交換式が広がれば、脱炭素の対応と配送効率の維持への両立が期待できるとされている。
既に軽自動車の商用車では開発が進む。ホンダはヤマト運輸と11月から交換式電池を使った軽商用EVによる集配業務の実証実験を開始すると発表している。ホンダの軽EV「MEV-VAN Concept(エムイーブイバン コンセプト)」を活用し、太陽光発電の電力を使う。交換式電池でも積載量などの性能を維持できるかどうかを調べる。
ホンダの交換式電池は、自社の電動スクーターや建機メーカーのコマツと共同開発した電動小型ショベルに搭載されている。コマツは小規模な土木・建築工事や配管工事などでのニーズを見込んでいる。車以外でも用途拡大が進んでおり、国内の新興EVメーカーの間でも交換式電池の導入が進む可能性がある。
交換式電池は中国やインドなど新興国で普及している。中国の新興EV大手、上海蔚来汽車(NIO)は充電設備の設置と並行し、電池を交換する拠点を増やしている。(淡海美帆)
【米中首脳、軍事対話再開で合意 習氏「世界に重い責任」】
16日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・1年ぶりの対面会談が終了。昼食など含め4時間強
・AIの政府間対話や気候変動対策の作業部会設置を確認
・習氏は台湾統一に意欲。米国の台湾への関与けん制
【サンフランシスコ=田島如生、坂口幸裕】バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は15日午前(日本時間16日未明)、米西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で会談した。途絶えている米中両軍高官の対話再開で合意した。意思疎通を維持し、台湾周辺や南シナ海での偶発的な衝突を防ぐ狙いがある。
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両首脳が対面で会うのは1年ぶり。会談はサンフランシスコ中心部から40キロほど南にあるカリフォルニア州ウッドサイドにある「ファイロリ」邸で開いた。会談は4時間強で、両首脳は少人数での昼食会後、庭園を散歩した。
バイデン氏は会談後の記者会見で「建設的で生産的な議論だった」と述べた。米中の競争が「紛争に発展しないように(関係を)合理的で管理可能なものにするのが私の責任だ」と表明。滞っていた軍事対話の再開で合意した重要性を訴えた。
中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えない一方、米国が台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を維持すると改めて明言した。2024年1月の台湾総統選で中国が選挙介入しないよう警告した。
習氏は会談で「世界経済は回復し始めたが、その勢いは不十分だ。産業サプライチェーン(供給網)の混乱や保護主義の台頭といった問題は顕著になっている」と言明した。経済安全保障を理由に先端半導体などの対中輸出・投資規制を主導する米国を批判した。
習氏は地球は十分に大きく、米中が共に成功するのは可能だとも指摘した。「私とバイデン大統領は中米関係のかじ取り役であり、国民、世界、そして歴史に対して重い責任をもつ」と語った。
米政府や中国国営中央テレビ(CCTV)によると、両首脳は両軍の高官協議のほか、国防当局の対話や海上軍事安全保障メカニズム会議を再開させると確かめた。両軍の戦闘区域のトップ同士で連絡を取り合うことも申し合わせた。
米政府高官は、オースティン米国防長官と中国側の軍高官が「数週間以内」に会談する方向で調整すると説明した。米中は台湾海峡や南シナ海で軍事的な緊張を強めている。両国の軍事対話は22年8月、当時のペロシ下院議長が台湾を訪れたのを境に滞った。
バイデン氏は会談で、台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を改めて主張した。CCTVによると、習氏は台湾について「中米関係の最も重要かつ最も敏感な問題だ」と説明し「必ず統一する」と強調した。
両首脳はAIに関する政府間対話を立ち上げると確認した。AIの軍事利用への懸念が国際的に広がっていることが背景にある。気候変動対策に関する作業部会の設置でも合意した。
麻薬対策での協力に向けた作業部会を立ち上げることも申し合わせた。医療用麻薬フェンタニルの過剰摂取による死者が米国内で激増しているのを踏まえた。中国は原料となる化学物質の主要製造国だ。
習氏は先端半導体などの対中輸出・投資規制に関し「中国の正当な利益を著しく損ねている」と問題視した。「中国の科学技術の抑圧は中国の質の高い発展を抑制することだ」と話し、規制措置の撤廃を要求した。
習氏の訪米は17年4月以来、6年半ぶりとなる。サンフランシスコ滞在中、岸田文雄首相との会談も調整している。15日に開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での演説も予定する。
米中首脳会談は22年11月にインドネシア・バリ島で開いて以来だ。両首脳は当時、偶発的な衝突防止に向けて対話を続けると合意した。米軍が23年2月、米本土上空に飛来した中国の偵察気球を撃墜したことをきっかけに両国関係は冷え込んだ。【関連記事】
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【日中首脳が1年ぶり会談 「戦略的互恵関係」を再確認】
17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【サンフランシスコ=秋山裕之】岸田文雄首相は16日(日本時間17日午前)に訪問先のサンフランシスコで中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と1時間ほど会談した。個々の懸案で対立しても共通利益の追求を優先する「戦略的互恵関係」を再確認した。
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日中首脳会談は2022年11月にバンコクで開いて以来、1年ぶり。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でともに訪米する機会を利用した。15日にはバイデン米大統領が習氏と会い、両軍高官の対話再開で合意している。
首相は会談の冒頭に「日中は隣国として共存、繁栄し、地域と国際社会をリードする大国として世界の平和と繁栄に貢献していく 責任を有する」と強調した。「より明るい日中関係の未来を切り開けるように力を合わせていきたい」と述べた。
習氏は両国の平和共存は正しい方向性だと指摘し「共通利益を重視し、相違を適切に管理すべきだ」と主張した。「戦略的互恵関係の位置づけを再確認し、新たな意味を与え、新時代の要求に合う中日関係の構築に力を尽くすべきだ」とも語った。
戦略的互恵関係は06年に当時の安倍晋三首相が訪中し、胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席との会談で打ち出した概念だ。胡主席が08年に国賓で来日し、福田康夫首相と「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明をまとめた。
日中は政治体制が異なり、日米のように民主主義といった共通の価値観を共有しにくい。解決困難な課題で対立を深めず共通利益を求めることで、安定的な関係を維持する狙いがある。
両首脳は東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出について解決を目指す方針で一致した。首相は「専門家のレベルで科学に立脚した議論を行う」と述べた。中国は「核汚染水」と呼んで反発していた。
首相は中国による日本産水産物の輸入禁止を撤回するよう求めた。中国当局に逮捕された邦人の早期解放なども主張した。
沖縄県・尖閣諸島周辺で続く中国公船による領海侵入をめぐっては東シナ海での偶発的な衝突回避を話し合った。日本の排他的経済水域(EEZ)に中国が設置したブイの即時撤去を求めた。
中国は台湾について譲れない「核心的利益」と位置づけ、日本に関与しないように求めている。首相は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
日中ハイレベル経済対話を適切な時期に行うことでも一致した。気候変動対策など地球規模の共通課題で協力を申し合わせた。
2国間の問題でも意思疎通を強化する。日中の通商当局間で重要鉱物の輸出管理といった貿易問題に関する対話枠組みを新設する。企業関係者の安全確保も含めたビジネス環境に関する協議体も創設する。
首相は訪米に先立ち、対中外交について「建設的かつ安定的な関係を維持するため、お互いの努力によって関係を維持する基本方針は変わっていない」と言明している。
日中関係をめぐっては岸田首相と中国の李強(リー・チャン)首相が9月にインドネシアで立ち話した。日中平和友好条約発効45周年の10月23日にメッセージを交換した。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。深川由起子早稲田大学政治経済学術院 教授
分析・考察
中国に限らず、グローバルサウスに限らず、「日本はアメリカの従属変数」というレッテルはかなり粘着力を持ちます。写真の習主席の表情もそのもの。G7などマルチのレバレッジ依存はやむを得ないとしても、地域研究の没落と共に日本人の中国研究者数が激減し、本来、欧米に比しての強みだった「中国の内側論理から考える」能力の低下がバイの関係構築を不利にしている感があります。かといって欧米のような情報機関の力が弱く、民間企業の持つ情報との密かな連携も希薄。これでは情報戦について行けません。「あなたは「井戸を掘った人を忘れない」国なのでは?」と鋭く切り返せる日本にならないといけないのでは。
【パナソニックHD、自動車部品会社売却へ 米ファンドに】
17日の日経速報メールは報じた。
パナソニックホールディングス(HD)は17日、自動車部品を手掛けるパナソニックオートモーティブシステムズの売却に関し米投資ファンド大手アポロ・グローバル・マネジメントのグループ会社と基本合意したと発表した。パナソニックHDがパナソニックオートの株式の50〜80%をアポロが投資助言をするファンドに売却する。
パナソニックHDは電気自動車(EV)向け電池などを成長領域に位置づけ、重点的に投資する方針を示している。成長領域以外の事業の見直しを進めており、今回の決定はその一環になる。
売却によりパナソニックオートはパナソニックHDの完全子会社から持ち分法適用会社になる見通し。2024年3月末までの正式契約締結を目指す。パナソニックHDが売却する株式数をこれから決めるため売却額は未定だが、数千億円とみられる。
パナソニックオートは自動車のコックピットシステムや電子部品、車載充電器事業などを手掛ける。2022年度の売上高は1兆2975億円、営業利益は162億円だった。グループ従業員数は約3万人。27年度に売上高営業利益率を5%(22年度は1.2%)にする目標を掲げているが、車載充電器事業の赤字などで近年は収益力が低下している。
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自動車業界は電動化や自動運転など「CASE」と呼ばれる技術への対応など変革を求められている。新技術に対応し、競争力を高めるためには多額の研究開発費が必要になる。パナソニックHDはパナソニックオートが単独で投資資金をまかなうのは難しいと判断し、ファンドと連携することを決めた。
パナソニックHDは17日、パナソニックオートの売却後も「グループの一員として社名やブランドは残す」とコメントした。
パナソニックHDの楠見雄規社長は5月のグループ戦略説明会で、23年度は「事業ポートフォリオの見直しを視野に入れた経営を進める」と述べ、グループ事業の売却の可能性を示唆していた。
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【伊藤忠、ビッグモーター買収検討 創業家関与なしが条件】
同じ17日の日経速報メールは報じた。
伊藤忠商事と国内の企業再生ファンドが中古車販売大手ビッグモーター(東京都多摩市)の買収を検討していることが17日、わかった。ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と組み、買収に必要なデューデリジェンス(資産査定)の独占契約を結んだと発表した。 伊藤忠とJWP連合は契約に当たり、ビッグモーターとの間で創業家が経営に関与しないことで大筋合意した。
伊藤忠と子会社で燃料商社の伊藤忠エネクス、JWPの3社連合が17日、ビッグモーターとデューデリジェンスを独占で実施することで基本合意書を結んだ。3社はビッグモーターの経営状況を詳細に分析し、2024年春までに再建を支援するかを最終決定する。
ビッグモーターは未上場で、同社株は創業者の兼重宏行氏らの資産管理会社が保有している。23年7月に自動車保険金の水増し請求などの不祥事が発覚し、顧客離れが進んでいる。中古車販売は一時、例年に比べて6割以上減った。現在も月次で赤字が続いている。
同社は現預金や売掛金などの流動資産を数百億円抱える一方、従業員への賃金支払いなどで資金の流出が続く。銀行団は借入金の借り換えに応じないなど資金繰りに苦慮しており、自主再建が困難な状況だ。
ビッグモーターはコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの協力を仰ぎ、経営再建を急いでいる。支援企業を早期に確定し経営の立て直しを目指すが、不祥事の影響が長引き難航していた。
伊藤忠はグループで自動車リース事業を手掛けているほか、ニッポンレンタカーサービスを傘下に持つ東京センチュリーを持ち分法適用会社にしている。輸入車・中古車販売大手のヤナセも抱え、自動車ビジネスとのつながりが深い。グループとの相乗効果が高い可能性があると判断し、支援に名乗りを上げた。
焦点は買収価格や事業譲渡の対象だ。ビッグモーターを巡っては顧客の車体を故意に傷つけるなどして、損害保険会社に保険金を水増し請求する不正行為が横行していた。
国土交通省は10月、ビッグモーターが全国に持つ135工場のうち34工場で自動車整備を事業停止にするなどの行政処分を出した。金融庁も11月末に保険代理店登録を取り消す行政処分の実施方針を表明している。
中古車の買い取りや販売でも1000件以上のトラブルが生じ、複数の民事訴訟を抱えている。10月末には経営不振で東京都や埼玉県で計9店舗を閉鎖した。伊藤忠はビッグモーターの支援を通じ、自社のブランドイメージが毀損しないかも慎重に検討する。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。佐藤一郎国立情報学研究所 教授 別の視点
アルトマン氏はOpenAIだけでなく、生成AIの顔ともいえる人物だっただけに、同氏の解任は衝撃です。さて、この解任はAIのガバナンスに一石を与えるのではないでしょうか。企業が適切にAIを提供・利用するには、企業のAIに関わるガバナンスが重要視されていますが、企業トップが突如解任されるとなると、ガバナンスの仕組みの再考が求められることになります。さてアルトマン氏はAIの規制には積極的であったといえて、今回の解任でOpenAIのAI規制のスタンスが弱まると、AIに対する規制は企業側のガバナンスだけで十分なのか、法的規制が必要などの声が強くなるかもしれません。
【創価学会の池田大作名誉会長が死去、95歳 公明党を結成】
18日の日経速報メールは報じた。
宗教法人創価学会名誉会長で、同会の戦後の飛躍的な拡大を指導した池田大作(いけだ・だいさく)氏が11月15日夜、老衰のため死去した。95歳だった。創価学会が18日発表した。葬儀は近親者で行った。お別れの会を行うが、日取りなどは未定。
東京都生まれ。1947年8月、創価学会の戸田城聖第2代会長に出会い、19歳で入会した。54年には青年部参謀室長に就任。学会の政治進出の本格化に伴い、選挙運動を組織、指導するようになった。
60年に32歳で第3代会長に就任。池田氏の指導下で学会は64年、公明党を結成した。
70年代以降は海外布教と世界平和を目指す国際交流に力を注ぎ、中国の周恩来首相、旧ソ連のゴルバチョフ大統領(いずれも当時)ら各国の指導者や識者と意見交換するなど国内外で組織を拡大した。
学会ホームページによると、現在の日本国内の会員数は827万世帯。海外では世界192カ国・地域に280万人の会員がいる。
75年に創価学会インタナショナル(SGI)会長、79年に創価学会名誉会長に就任。教育・文化面では67年に創価学園、71年に創価大を開設した。著書に「人間革命」「仏法と宇宙を語る」など。海外要人との対談集も多数。
83年に国連平和賞を受賞したほか、モスクワ大学やボローニャ大学といった海外の大学から名誉博士号などの称号も贈られた。公の場に姿を見せることが少なくなった後も平和運動に力を入れ、近年はロシアに侵攻されたウクライナの平和回復や核拡散防止に関する提言を発表した。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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【マンション建て替えやすく 借り主退去、請求後半年で】
19日の日経ニュースメールは次のように報じた。
首都圏を中心に増える老朽マンションの再生が社会的な課題となっている。建て替え予定の分譲マンションに借り主が居座り工事できないケースがあり、決議に基づいて6カ月後の立ち退きを請求できるようにする。政府は決議要件緩和などと合わせた制度案を近く示し、2024年の通常国会への区分所有法改正案の提出をめざす。
東京都新宿区の住宅街に30年以上をかけて建て替えにこぎ着けたマンションがある。1930年代に建築された物件で、建物の傾きや雨漏りから60年代に建て替えの検討が始まった。
手続きは難航した。高齢の所有者から「自分が生きている間は壊さないでほしい」「歴史的な建物を残してほしい」という声が出て、合意形成ができなかった。所有者の賛成を得て建て替えを決議し竣工に至ったのは2005年のことだった。
決議には所在の分からない所有者も含めた5分の4以上の賛成が必要だ。高度経済成長期に大量供給されたマンションの老朽化が急速に進むが、現行法は建て替えに高いハードルを設けている。
法相の諮問機関の法制審議会は、分譲マンションの建て替えなどを円滑にする方策を検討してきた。耐震性などに問題がある場合については、所在の明らかな人を対象に4分の3の賛成に引き下げる案を出している。
建て替えが決まったとしても、障壁はもう一つある。長期間契約の借り主が反対し、建て替え工事ができないケースがある。現行法では契約違反などの正当な理由がなければ退去の義務はない。所有者は借り主と個別に交渉する必要がある。
新制度の導入後は個別交渉で解決しない場合でも、契約の終了を請求できるようになる。所有者が立ち退き費用などを補償することで賃貸借契約を解除できる。
法制審議会は21日に新制度を盛った要綱案のたたき台を提示する方針だ。政府は議論をもとに区分所有法の改正案をとりまとめ、24年の通常国会に提出する見通し。
旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所の重水丈人所長は「立ち退かないと建て替えできないため、借り主の同意が重要だ。所有者は大変苦労している」と話す。追加的な課題として借り主への補償に関するガイドラインの整備が必要だと指摘した。
国土交通省によると、築40年以上の分譲マンションは22年末でおよそ126万戸ある。42年末には22年末の3.5倍の445万戸にまで増加する見込みだ。
一方、建て替えの累計実績は23年3月時点でおよそ2万3000戸にとどまる。
東京カンテイ市場調査部の高橋雅之主任研究員は「要件緩和で建て替え需要にはプラスの方向に働く」と語る。資材の高騰で建て替え費用がかさむ可能性があり「所得水準や年齢層が多様な大規模マンションでは合意形成が図りにくい」との見方を示す。
マンションの建物や敷地の売却、取り壊しやリノベーション(大規模改修)の決定も多数決で可能にする。現行法で実行するには所有者全員の賛成が必要だが、建て替えと同様に耐震性などに問題があれば4分の3の多数決で決められるようにする。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
大槻奈那名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
今後の展望
所有権尊重の観点等から進みにくかった建て替え決議に対する大きな進展です。但し、実行段階でのハードルはまだ様々残されています。 例えば借り主の退去については、立ち退き費用補償の水準をどうするのか。また、建て替えの賛成票も集まり難くなっている可能性があります。住人の一層の高齢化や、家賃上昇で建て替え中の移転費用の増加が課題です。更に、近年では室内のリノベーションが広く普及し、その技術が高額化していることから、一旦リノベした世帯はそれを無駄にするような建て替え決議には賛成しない可能性があります。一定の年数を経たマンションでは、できるだけ早い時期から理事会等で話し合いを始める必要があるでしょう。
2023年11月20日 8:38
【紅海で貨物船乗っ取り 日本郵船が運航「日本人いない」】
19日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は19日、イエメン近くの紅海で貨物船が乗っ取られたと発表した。日本郵船によると、拿捕(だほ)された船はバハマ船籍の自動車輸送船「ギャラクシー・リーダー」で同社がチャーターしていた。
日本郵船は「拿捕されたのは事実。乗組員の安全を確認中」とコメントした。乗組員はブルガリア人、フィリピン人など25人で日本人はいないという。国土交通省は19日午後9時半ごろ日本郵船から連絡を受け、詳しい情報を確認中だとしている。
•【関連記事】親イラン組織、イスラエル船拿捕と主張 貨物船乗っ取り
イスラエル首相府は、この船舶は英国企業が所有し日本企業が運航しており、乗っ取りを実行したのはイエメンの親イラン武装組織フーシだと主張した。乗っ取りはイランの指導を受けたもので「イランによる国際船舶への攻撃を強く非難する」と強調した。乗組員にイスラエル人はいないと説明している。
イスラエル軍によると、貨物船はトルコからインドに向かう途中だった。船舶情報会社マリントラフィックによると、サウジアラビアとスーダンの間の海域で信号を確認したのを最後に消息がわからなくなっている。
ロイター通信はこれに先立ち、フーシの広報担当者が同日、イスラエル企業が所有・運航するすべての船舶を標的にすると表明したと伝えた。
イスラエル軍は10月からパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと交戦しており、フーシはイスラエルへミサイルなどによる攻撃をしかけてきた。
(カイロ=久門武史、逸見純也)
▼フーシ イエメン北部を活動拠点とするイスラム教シーア派の武装組織。指導者はアブドルマリク・フーシ氏。2011年に中東で広がった民主化運動「アラブの春」以降に台頭し、15年にクーデターで首都サヌアを占領するなど国内の大半を支配下に置いている。
イエメンではサウジアラビアなどが支援する暫定政権と、イランが支援するフーシの内戦が続いている。3月にサウジとイランが外交関係を正常化することで合意すると、サウジとフーシの停戦協議も始まり、緊張緩和の機運が高まっていた。
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【元OpenAIのアルトマン氏ら、Microsoft入りへ】
20日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=山田遼太郎】米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は19日、米新興企業オープンAIのCEOを解任されたサム・アルトマン氏がマイクロソフトに加わると明らかにした。同社に新設する人工知能(AI)の先進的な研究チームを率いるという。
ナデラ氏が19日深夜(米西部時間)にX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。オープンAIの共同創業者の1人で、アルトマン氏とともに退社を表明したグレッグ・ブロックマン元社長もマイクロソフトに入る。複数のオープンAI従業員もマイクロソフトに移る。
ナデラ氏は投稿で「我々はオープンAIとの提携を続け、製品のロードマップに自信を持っている」と強調した。エメット・シア氏が暫定CEOに就くオープンAIについて「新経営陣と共に働くのを楽しみにしている」とも述べ、巨額を投資するオープンAIとの関係を維持する考えを強調した。
マイクロソフトCEOのナデラ氏はXへの投稿でアルトマン氏らがマイクロソフトに入社すると明らかにした
ナデラ氏によると、アルトマン氏はマイクロソフト社内で新たに設置されるAI研究のグループのCEOに就くという。
アルトマン氏は同日、ナデラ氏の投稿に「使命は続く」とXで応じ、マイクロソフトに加わることを認めるかたちとなった。
アルトマン氏は17日にオープンAIのCEOを突如解任された。同氏を支持する投資家や従業員が多く、復帰に向けた交渉があったが19日夜までに合意に至らなかった。オープンAIはゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」元トップのシア氏を暫定CEOに起用した。
アルトマン氏やブロックマン氏の退任に続き、オープンAIの多くの従業員が退社の意向を示したことから去就に注目が集まっていた。
マイクロソフトは米西部ワシントン州シアトルで開いた技術イベント「イグナイト」で15日、オープンAIが手がける生成AIの技術基盤の最新版「GPT-4ターボ」の企業向け提供などを発表したばかりだ。
対話型AI「Chat(チャット)GPT」で知られる同社との提携を経営戦略の中核に据え、業務ソフトの操作を支援する「コパイロット」など、AI技術を矢継ぎ早に自社サービスに組み込んだ。クラウド基盤「アジュール」とオープンAIの技術の連携も進めた。
オープンAIから人材が流出し、アルトマン氏が独立する事態となれば、マイクロソフトのAI戦略が見直しを迫られるほか、投資家らから批判を招くのは避けられない情勢だった。
【OpenAIの社員9割、退社も辞さず 取締役会に総退陣迫る】
21日の日経速報メールは報じた。
シリコンバレー=渡辺直樹】米オープンAIの社員らは20日、取締役会(理事会)に総退陣を求め、解任したサム・アルトマン氏らを復帰させなければ、自分たちもそろって退社すると迫る文書を提出した。770人いる社員のうち、すでに9割超にあたる約730人が署名した。人工知能(AI)の有望企業をめぐる混乱は社員の「反乱」という重大な局面に発展しはじめた。
日本経済新聞が入手した文書によると、要求は取締役会に向けている。現在の取締役全員が辞任した上で、独立した新任者を指名し、アルトマン元CEOとグレッグ・ブロックマン前社長を復帰させるよう求めている。
受け入れられなければ、大半の従業員はアルトマン氏らが手がける「マイクロソフトの新しい子会社に参加することを選択するかもしれない」と迫っている。「(取締役会は)オープンAIを監督する能力がないことが明確になった。能力や判断力、使命、従業員への配慮が欠けている人たちのために働くことはできない」と批判している。
賛同したオープンAIの社員は「みな同じように突然状況を知らされて驚いている」と混乱する社内の状況を明かした。
オープンAIは17日にアルトマン氏の解任を突如発表して以降、技術者らが離反する事態を招いていた。オープンAIの投資家はアルトマン氏の復帰を仲介したが、これに失敗。19日にはマイクロソフトがアルトマン氏とブロックマン氏を新たなAI研究チームに迎えると発表した。
取締役会は暫定CEOにゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」の元CEOであるエメット・シア氏を指名した。同氏はアルトマン氏解任の経緯について近く報告書をつくる意向を示していた。
現在の取締役会はアルトマン氏解任に加担したチーフサイエンティストのイリヤ・サツキバー氏と3人の社外取締役で構成している。社員らが今回提出した文書には、そのサツキバー氏も署名し、取締役の解任要求は実質的に社外の3人に向けられた形だ。
サツキバー氏はX(旧ツイッター)上で「取締役会(理事会)の行動に加わったことを深く後悔している。オープンAIに危害を加えるつもりはまったくなかった。会社を再統合するためにできる限りのことをするつもりだ」と投稿した。
一連の動きをうけてマイクロソフトの株価は20日、約2%上昇した。マイクロソフトは混乱に乗じ、資本・業務提携するオープンAIの人材取り込みをさらに進める可能性が高いとみられている。
オープンAIの創設にも関与した米起業家のイーロン・マスク氏はXで「マイクロソフトは数年前にオープンAIの事実上の支配権を実現した。それが今になって明らかになりつつある」と投稿した。
【岸田首相が2024年春に訪米 議会演説を検討、国賓待遇】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
岸田文雄首相は2024年春に訪米する調整に入った。バイデン米大統領から国賓待遇で招待を受けており、米議会での演説を検討する。日本の防衛力強化を踏まえた「同盟の現代化」を推進する。安全保障や経済、人的交流など幅広い分野で関係深化を話し合う。
首相は先に米サンフランシスコを訪れた際にバイデン氏と会談した。バイデン氏は24年早期に首相を国賓待遇で招待すると伝えていた。
国賓は大統領や国王など政府が外国の元首らを最も手厚く受け入れる接遇だ。首相は24年度予算案の国会審議の日程を見極めながら3〜4月ごろの訪米を探る。
日本の首相が国賓訪米するのは15年の安倍晋三氏以来となる。米議会では過去に安倍氏のほか吉田茂、岸信介、池田勇人の各氏が演説に臨んだ。
米国の厚遇は岸田政権が打ち出した防衛力強化を評価している証しでもある。日本政府は22年12月に新たな国家安全保障戦略など安保関連3文書や防衛費の大幅増を決めた。バイデン氏は23年1月にワシントンで開いた日米首脳会談でこれを「果敢なリーダーシップ」と歓迎した。
報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率は低迷する。ロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエルとイスラム組織の戦闘は長引く恐れがある。米国はそうした情勢下で同盟国である日本の政治が不安定になる展開を望んでいないとみられる。
【自工会会長にいすゞ片山会長 トヨタなど3社以外から初】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本自動車工業会(自工会)の次期会長にいすゞ自動車会長の片山正則氏が就任する見通しとなった。任期が2024年5月までの豊田章男会長(トヨタ自動車会長)の後任となる。1967年に自工会が発足して以降、トヨタ、ホンダ、日産自動車以外から会長が就任するのは初めて。
自工会の会長はトヨタとホンダ、日産の首脳が1期2年交代で務めるのが慣例だった。豊田氏は2018年5月に会長に就いた。12〜14年に次いで2回目の就任だった。
片山氏は現在、副会長を務めている。商用車を主力とする企業が会長に就くことで、100年に1度とされる自動車産業の構造変化などに業界をあげて柔軟に対応できる体制を整備する狙いがあるとみられる。
【北朝鮮が「軍事偵察衛星」発射 軌道投入は確認されず】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本政府は21日夜、北朝鮮が同日午後10時43分ごろ、北西部の東倉里(トンチャンリ)から弾道ミサイル技術を使った発射を強行したと発表した。北朝鮮が主張する「軍事偵察衛星」とみられる。防衛省によると周回軌道への投入は確認されていない。
北朝鮮の朝鮮中央通信は22日未明、北朝鮮の国家航空宇宙技術総局が21日夜に軍事偵察衛星を打ち上げ、成功したと伝えた。衛星を地球の周回軌道に「正確に進入させた」と主張した。
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北朝鮮が22日午前0時から12月1日午前0時の間に「人工衛星」を発射すると通告していた。
政府は21日午後10時46分に全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。「北朝鮮からミサイルが発射されたとみられる」として沖縄県に避難を呼びかけた。その後に「ミサイルは10時55分ごろ、太平洋へ通過したとみられる」と通知し呼びかけを解除した。
岸田文雄首相は同日深夜、首相官邸で記者団に「少なくとも1発は沖縄上空を太平洋へ通過した。被害は確認していない」と述べた。宮沢博行防衛副大臣は22日未明、防衛省で記者団に「地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と明らかにした。
宮沢氏によると、衛星とみられる発射物は上空で分離し、一つは朝鮮半島の西350キロほどの東シナ海の予告区域外に落ちた。もう一つは沖ノ鳥島の南西1200キロ程度の太平洋上に位置する日本の排他的経済水域(EEZ)外の予告区域内に落下した。
21日夜に記者会見した松野博一官房長官は「発射について繰り返し中止を求めてきたにもかかわらず、住民の安全確保の観点からも極めて問題のある行為だ」と強調し、北朝鮮に厳重抗議したと説明。発射は国連安全保障理事会の決議違反に当たるとの認識を示した。
首相は21日夜、ミサイルの上空通過を踏まえ関係閣僚に①落下物による被害がないかの速やかな確認、②北朝鮮の今後の動向を含めた情報収集・分析の徹底、③米国や韓国などの関係諸国との連携、適時適切な対応――の3点を指示した。
Jアラートの発令は沖縄県に避難を促した8月24日以来。この時は北朝鮮が「軍事偵察衛星」を発射し失敗した。沖縄本島と宮古島の間の上空を飛行し太平洋へ通過したため避難の呼びかけを解除した。
【イスラエル、4日間戦闘休止へ 人質50人解放と引き換え】
22日の日経速報メールは報じた。
【イスタンブール=木寺もも子】イスラエルメディアによると、同国政府は22日、少なくとも人質50人の解放と引き換えに、パレスチナ自治区ガザで続くイスラム組織ハマスとの戦闘を4日間休止することを閣議決定した。ハマス側も既に「合意が近い」としており、一定期間の人道停戦や人質の解放が実現する可能性が強まった。
イスラエルは戦闘の休止に加え、パレスチナ人の囚人のうち女性や未成年者も引き換えに釈放する。ガザへの人道支援拡大や、負傷者がガザを脱出することも認めるもようだ。交渉は米国とカタールが仲介した。
政府高官の話として報じられた情報によると、解放されるのは子ども30人とその母親8人のほか、女性12人だとされる。
ハマスなどがガザに拉致したイスラエル側の人質は約240人に上るとみられる。戦闘の休止が履行されれば、さらに数十人が解放されるとの報道もある。
ただ、イスラエルメディアによると、国民は24時間以内に裁判所に対して閣議決定への異議申し立てを行える。合意がすみやかに成立、履行されるかは不透明な面もある。
閣議は21日夜(日本時間22日未明)に始まり、22日早朝まで続いた。公開された映像によるとネタニヤフ氏は冒頭、「停戦(期間)後も、戦争は続く」と述べ、一時的な戦闘休止を挟んだ後もハマスの壊滅を目指す軍事作戦は継続すると強調。合意は「厳しいが、正しい決定だ」として閣僚らに理解を求めた。
中東の衛星放送局アルジャズィーラによると、ハマスと共闘するガザの過激派「イスラム聖戦」は21日、レバノンで開いた記者会見で、交渉を巡り「ハマスと協調している」と表明した。イスラム聖戦も多数の人質を拘束しているとみられる。
人質はこれまで米国籍の母娘とイスラエルの高齢女性2人が解放されたほか、イスラエル軍が女性兵士1人を救出した。
イスラエルは21日も空爆などを続けた。ガザ当局によると、同日までの累計の死者は1万4100人を超えた。国連安全保障理事会は15日、「緊急かつ人道的な一時休止」を要請する決議案を採択した。国連総会も10月下旬、「人道的休戦」を求めていた。
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・人質解放へ詰めの交渉 ハマス指導者「停戦合意近い」
【東芝、株式併合など特別決議を承認 臨時株主総会】
22日の日経速報メールは報じた。
東芝は22日、臨時株主総会を開き、株式の非公開化に向けた株式併合や定款変更などの議案を諮り賛成多数で承認された。 日本産業パートナーズ(JIP)と国内企業によるTOB(株式公開買い付け)に応募しなかった株主の株式を強制的に買い取り、東芝は12月20日に東京証券取引所への株式上場が廃止になる。
東芝は不正会計や巨額損失、アクティビスト(物言う株主)との対立など経営の混乱が長引いた。JIPは総額2兆円を投じて8〜9月にTOB(株式公開買い付け)を実施した。東芝は株主をJIPに一本化し、投資ファンド傘下で再建を目指す。
この間、以下の録画を視聴することができた。 (1)BS6報道1930「ウクライナの不協和音、政権と軍中枢の内部での反攻停滞が生む確執か。クリミヤ上陸作戦の狙いは」13日。 (2)BS6報道1930「ハマスが変えた<世界地図>、米の中東政策崩壊で反米・反イが拡大。ゴミ燃やしパンを焼く…生活困窮のガザ住民は」14日。 (3)231113~変わりつつある世界(17)
2023年11月13日、前回の「変わりつつある世界(16)」を掲載してから、気になっていた記事がある。11月10日、2つの記事があった。
【食材宅配サービスのMBO】
第1が日経速報メールが報じた食材宅配サービスのMBO(経営陣が参加する買収)であり、つづけて同日、日経速報メールが報じた「進研ゼミ」である。
食材宅配サービスを手掛けるオイシックス・ラ・大地は10日、シダックスを子会社化すると発表した。シダックスがMBO(経営陣が参加する買収)で株式を非公開化した後に実施する第三者割当増資を引き受ける。原材料高や人手不足でシダックス主力の給食事業の収益が悪化する中、主力事業の効率化や不採算事業の見直しなど構造改革を急ぐ。
シダックスは志太勤一会長兼社長ら創業家の資産管理会社が、11月13日〜12月25日の期間に1株当たり800円でTOB(株式公開買い付け)を実施する。株主からシダックス株を買い取って完全子会社にする。
シダックスには食材宅配サービスを手掛けるオイシックスが、約3割を出資している。同社はMBOに賛同している。
給食業界は原材料高や水道光熱費の上昇などによって事業環境の厳しさは一段と増している。9月には学校給食などを運営するホーユー(広島市)が破産手続きを開始した。
シダックスの業績は新型コロナウイルス禍後の回復がまだ鈍い。給食などを手掛ける主力の「フードサービス事業」は、2023年3月期の営業利益が前の期比14%減の22億円と落ち込んだ。抜本的な立て直しに構造改革を急ぐ必要があると判断した。
シダックスは志太勤取締役最高顧問が1959年に富士フイルムの食堂を受託して創業。志太会長兼社長ら創業家が20%超を保有する。90年代にはカラオケ事業に進出し、一時は主力事業となったがその後に採算が悪化。18年にはカラオケ事業から撤退、19年には投資ファンド、ユニゾン・キャピタル(東京・千代田)の出資を受けて経営再建を進めていた。
22年にはオイシックスがユニゾンの持ち分をTOBで買い取り、28%を保有する筆頭株主となった。オイシックスはシダックスを持ち分法適用会社にしており、高島宏平社長がシダックスの社外取締役に就いている。
両社は法人向け給食で使うミールキットの開発など協業を進めていた。オイシックスは今夏から保育園給食事業に本格参入し、シダックスが受託運営する事業所にミールキットを試験導入するなど連携を強めている。
22年のオイシックスのTOBを巡っては、「オイシックス以外の第三者からのフード関連事業の協業提案などを検討する機会が失われる」としてシダックスの取締役会が反対を表明した。外食大手のコロワイドもシダックスへ給食事業の買収を提案するなどで各社の利害関係が複雑になった。
オイシックス以外の企業との連携可能性を調査する特別委員会や、ガバナンス(企業統治)体制を調べる調査委員会を設置することを条件に、取締役会がTOBへの意見を「中立」に変更したことでTOBが成立した経緯がある。
【ベネッセがMBO 欧ファンドと、「進研ゼミ」立て直し】
第2が「進研ゼミ」である。
ベネッセホールディングス(HD)は10日、MBO(経営陣が参加する買収)を実施すると発表した。ヨーロッパの投資ファンドEQTと組み、TOB(株式公開買い付け)を実施する。ベネッセHD株は上場廃止となる見通し。主力の通信教育「進研ゼミ」の不振が続いており、株式の非公開化で立て直しを図る。
TOBは1株2600円で実施する。9日終値(1791.5円)から808.5円(45%)のプレミアム(上乗せ幅)をつけた。全株ベースでの株式価値は約2700億円と、国内のMBOでは最大規模となる。
まずEQTが特別目的会社(SPC)を設立し、TOBなどにより約83%のベネッセHD株を約2080億円で取得する。その後、残りの約17%の株式を持つベネッセHD創業家の資産管理会社を完全子会社化する。
TOB完了後にSPCに対し創業家が出資。最終的にはEQTが6割、創業家が4割、SPC株を保有する形にする。議決権ベースでは5割ずつにする。
EQTはスウェーデンの産業・金融界に影響力を持つウォーレンバーグ家に由来する大手投資会社。2021年に日本に拠点を設置し、22年にアジア系のベアリング・プライベート・エクイティ・アジアと統合した。EQTにとって日本で初めての投資案件となる。
ベネッセHDは主力の「進研ゼミ」事業の苦戦が続いている。小学生〜高校生の会員数は23年4月時点で前年比14万人減の160万人だった。10年前と比べ約4割減少した。デジタル教材の導入などで立て直しを進めていたが、会員数減に歯止めがかからなかった。
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本業のもうけを示す連結営業利益は23年3月期で206億円と、13年3月期に比べ46%減った。介護や保育など多角化を進めるほか、22年には不採算だった語学教室の「ベルリッツ」事業の売却など構造改革を進めた。ただ、主力事業の抜本的な立て直しには非公開化が必要だと判断した。
•【関連記事】ベネッセ、「ベルリッツ」売却も 「進研ゼミ」に黄信号
ベネッセは1955年に生徒手帳などを発行する福武書店として設立した。69年に進研ゼミ高校講座の前身となる「通信教育セミナ」事業を始めた。創業家出身の福武総一郎氏が長く代表取締役を務めていたが、14年に最高顧問に退いた。
日本マクドナルドホールディングスのトップから転じた原田泳幸氏が14年に会長兼社長に就いたが、同年に個人情報漏洩問題が発覚し、会員数が減少。16年に退任した。その後もトップ交代が続いた。
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【たかが髪形、されど髪形 慶応野球「エンジョイ」の真意 森林貴彦 慶応義塾高野球部監督】
11日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・これが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい
・高いレベルの喜びは、練習や競争を乗り越えた先に
・選手との距離感はいつも悩み、言葉には気を使う
この夏の甲子園、107年ぶりの全国優勝を遂げた慶応義塾高(神奈川)のナインは笑顔の「エンジョイ・ベースボール」で汗と涙の色濃い高校野球に、新風を吹き込んだ。これからの高校野球は「勝ち」を目指しつつも、自立心を育む人材養成面などの「価値」が求められるという森林貴彦監督に、真意を聞いた。
神奈川県大会決勝で横浜、甲子園で仙台育英(宮城)という強豪を相次いで破った。「プレーボール」の言葉通り、遊び、楽しむ野球の原点に立ち返っての戴冠だった。
「夏の甲子園3回戦の広陵(広島)戦で、初回に丸田湊斗選手が三塁盗塁を決めて先制したが、サインは出していなかった。彼が自分で決めた。三盗も選択肢として準備していたが、初回から(危険を冒す)サインは出せない。私よりよほど度胸、判断力がある。勇気も要るし、根拠がないと走れない。これからもそういう場面に出合いたい」
――自分で考える楽しさを味わってほしい、と思ったきっかけは。
「高校2年の夏、上田誠監督が『二塁けん制の動きやサインを自分たちで決めてみなさい』とおっしゃった。内野手の私と投手、捕手が練習後の暗くなったグラウンドで、ああでもないこうでもないと話し合った。自分たちで物事を進めるワクワク感は高校野球の一番の思い出だ」
「チームの決め事を守り、人と同じことをするだけでは人生、面白くない。ますます価値観が多様化し、自分なりの幸せを選び取る時代になると思うので、これをやりたい、自分にとってこれが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい」
――相当の野球技術がないとエンジョイはできない。
「もちろん、ただ笑顔でやればうまくいくというものではない。頂点を目指す以上、日々の地道な苦しい練習、ライバルとの競争、試行錯誤がある。そこを乗り越えるところに、より高いレベルの喜びがある。それがエンジョイの真意だ」
「言葉には気を使っている。準々決勝の沖縄尚学戦は五回まで0-2の劣勢。前半戦終了時に『第1試合は完敗だから、第2試合を頑張ろう』と言った。同じ言葉ばかりだと、選手はまたかよ、という顔をする。新鮮な言葉がないか試合中に考えていた。あれでみんな『これからだ』となったのか、六回に逆転できた」
「ミーティングでだらだらしゃべりたくないので、試合ごとに四字熟語でテーマを伝える。『徹頭徹尾』とか『勇往邁進(まいしん)』とか。甲子園の決勝は『大願成就』。これしかない、と一番簡単に決まった」
コツは「全力で頑張るな」
――筑波大の大学院で、勝負事でしゃかりきになってはいけない、という研究成果を残した。
「頑張り度合いとパフォーマンスの関係を調べると、100%の力で走ったときに最高の速度が出るわけではない。8割の力で走ると9割の速度が出る。野球の投球でも全力で投げるより、少し力を落とす方が球速も出て、制球が定まる。全力でやるなということ。各界の達人が極意として力を抜くとおっしゃる。それと同じではないか」
「エラーをした野手や失点した投手が、取り返そうと思うのもよくない。それで取り返せるなら、そんな簡単なことはない。過去は切り捨て、未来を向いて今やれることをやる。練習試合では反省もするが、公式戦で過ぎたことを引きずっていいことはない」
――自主性は大事だが、選手任せの危うさも。
「1代前の3年生は一人ひとりが自立していた。そこで私もある程度任せたが、任せ過ぎたというか、お互いの意思疎通が足りなかった気がする。選手との距離感はいつも悩む。就任当初は私が面倒みなきゃという意識もあって、こまごま言い過ぎていたと思う。失敗は多々ある」
高校野球ではいまだに体罰案件が報告され、フェアでないプレーもみられる。勝利にとらわれ、選手の人間的成長が置き去りにされる現状は社会に通じる課題のようだ。
教育現場で無力を痛感
「(打者が横目で捕手の位置を確認する『カンニング』は)今年の甲子園でだいぶ減ったと感じたが、ゼロではない。チームではなく選手個人の問題だと思うが。高校野球の2年半は短く指導者も時間がない、急いで詰め込まないと、と思うと無理が出る。体罰を受けて育った選手が指導者になって、同じことをする。負の循環を今、食い止めないといけない」
「高校で完成する必要はなく、数年後にいい選手になってくれたらいい、という気持ちでいる。今、先生(慶応義塾幼稚舎教諭)として小学3年生を教えているが、無力を痛感するばかり。漢字、筆算、九九……。できたかなと思った次の日に子どもはできなくなる。一方、教えたことのないことを、いつのまにかできるようになっている。僕がいる意味があるのかな、と日々自問自答する。忍耐強く(成長を)待つ点で、野球の指導者としてもいいトレーニングになっている」
――理想を掲げ、変革を唱えれば風当たりも強くなる。
「チームの目標は『慶応日本一』だが、その先の目的として『恩返し』と『常識を覆す』を掲げてきた。今年の選抜大会でも『高校野球を変えたい』と言って甲子園に乗り込んだが、初戦敗退。簡単に言うな、できるわけないだろう、という声があった。ただ、それをバネにして、夏こそという思いが強まり、成長の材料になった」
――甲子園では選手たちの自由な髪形が注目された。
「いまだにそんなことが話題になるのかと残念に思う一方、これを入り口に(変化への)議論が進めばそれでいい、と思った。問題は髪形そのものより(無思慮に前例に従う)思考停止、旧態依然、上意下達の部分。高校野球はこういうものだという枠を誰かがつくり、枠の中でずっとやってきた。今年の優勝で、一石を投じることはできたかと思う」
――サインに縛られない選手は本当に育つか。
「野球がどういう人材を社会に送り出せるか、野球型の思考が今後の社会にどうマッチするのか考えると、危機感を覚える。勝つために手段を選ばないといった思考が、高校生以下の世代でも、ゆがみとして出ている。そこで打ち出したのが『成長至上主義』。ただただ勝利を目指して頑張ろう、ではなくて、一人ひとりが人間的に成長し、周りも成長させる。選手としての成長、人間としての成長が車の両輪となったら強い。それによって、実は勝利にも近づくのではないか」
「高校野球には堅苦しい部分、個性や自由が認められづらい部分がある。親の負担も大きく、(子どもに)野球が選ばれにくくなっている。甲子園は盛り上がっているようにみえて、全国の野球部や部員の数は減っている。このままの形では続かない。高校野球はスポーツの枠を超えて文化として定着し、変えるのは大変だが、我々が変われば人の育成方法なども変わるきっかけになるかもしれない。社会的な意義は大きい」
――激戦区の神奈川を勝ち抜くのは至難。優勝後、来春の選抜大会につながる試合に敗れた。
「甲子園から帰って翌々日に練習を始めたが(県大会までの)時間のなさ、慌ただしさは想像を超えていた。ただ選手たちは、また新しい気持ちでいてくれている。人生100年、自分もまだ折り返し点。選手に成長を求める以上、私自身が成長するマインドを持っていなければ。現状維持でいい、となったときは退場すべきだと思っている」
もりばやし・たかひこ 1973年東京都渋谷区生まれ。慶大法卒業後NTTへ。3年で退職し、高校野球指導者として筑波大院で指導理論を研究。2015年から母校慶応高を率い、春夏計4度甲子園出場。23年夏、107年ぶりの全国優勝に導いた。慶応幼稚舎教諭。
あえて寄り道、柔軟性養う(インタビュアーから)
慶応の選手たちが夏の甲子園を「エンジョイ」できたのは「そもそも、慶応にいる時点で半ば人生の勝ち組だから」というやっかみまじりの見方があるが、それは違うようだ。
青春まっただ中の高校生であっても野球がすべてではいけない。そう考える森林監督は慶応OBなどから幅広い分野の話を聞く機会を設けている。
政府系金融機関を辞め、瀬戸内海の島で農業にいそしむ人から「都心の大会社に勤めるだけが人生ではない」と学んだ。大リーガー・菊池雄星投手の元マネジャーから、華やかな印象と違って努力の人と聞いた。強豪校が大会準備に追われている時期に、知的障害のある生徒の硬式野球への参加を進める取り組みと連携し、合同練習を行った。
あえて寄り道し、様々な価値観に触れることで「野球オンリー」にはない心の柔軟性が養われているようだ。(編集委員 篠山正幸)
【「日本はGXに本気か」 海外マネー3300兆円が品定め 資産運用立国に挑む 開国の障壁(1)】
13日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・日本は海外からの投資を集める「運用開国」を目指す
・脱炭素に向けて産業転換を段階的に進める戦略を掲げる
・海外投資家は日本企業のGXへの向き合い方を注視
政府は海外運用会社を招く「運用開国」に乗り出した。家計金融資産2100兆円が外に出ていくばかりでは日本の成長に寄与しない。国内に投資機会をどう生むかが最大の課題だ。
【「資産運用立国に挑む」連載記事】
•日本株の運用会社「空洞化」 非効率な慣習、参入阻む
10月6日、首相官邸。米運用会社ブラックロックの呼びかけで中東の政府系ファンドや欧米年金など世界の機関投資家・運用会社の代表約20人が集まった。保有・運用額は計3300兆円に上る。関係者は海外勢が来日した目的を「『具体的な投資案件を見せてくれ』ということだ」と語る。
政府が掲げるのが、化石燃料からクリーンエネルギーへの産業構造の転換を目指す「グリーントランスフォーメーション(GX)」だ。欧州のような一足飛びの脱炭素でなく段階的に移行(トランジション)する戦略で、官民合わせて10年で150兆円が必要とはじく。シンガポールの政府系ファンドGICは7月、現地を訪れた自民党の片山さつき金融調査会長に「日本のGX投資の定義に関心がある」と語った。
海外マネーを呼び込もうと企業も動き始めた。9月に増資などで約2040億円を調達したJFEホールディングス。「構造改革をやり遂げ、量から質へ転換する」。調達先を海外に絞り、欧米などの投資家約100人にオンラインで訴えた。
JFEホールディングスは構造改革のため川崎市の高炉を止めた
利益の見込みやすい電気自動車向け高級鋼板の投資に公募増資、中長期の脱炭素投資に新株予約権付社債(転換社債=CB)で得た資金を充てる。川崎市の高炉を止める一方、2030年度までに脱炭素に約1兆円投じる計画だ。増資で外国人株主比率は3割と3月末の24%から高まった。
日本企業のGX関連の資金調達は増えている。資金使途を環境事業に限る環境債の発行は23年1〜10月に1兆6000億円超と、年間で最高だった21年をすでに約2割上回った。温暖化ガス排出量の多い企業による移行債も21年からの累計で約6000億円に上る。
アジアではトランジションへの関心が高く、50年までに40兆ドルの脱炭素投資の資金需要があるとみられる。日本に脱炭素マネーを集め、アジアのGX投融資の資金が行き交うハブへと育てる余地はある。
ただ、投資家は日本企業がどこまで積極姿勢に転じたのか、なお半信半疑だ。
「日本は脱炭素にどのくらい真剣なのか」。ENEOSホールディングスのもとには政府のGX戦略に確信を持てない海外投資家から多くの質問が寄せられる。同社は再生可能エネルギー開発や水素の供給網構築などに取り組むが「技術のブレークスルーの時期など不透明で、30年度以降の具体的な計画を示すのは困難」とする。
日本企業はバブル崩壊以降、設備投資や研究開発を抑えて借入金返済を優先してきた。日銀の資金循環統計によると民間企業部門(金融除く)は戦後、資金不足だったが、1998年から資金余剰の局面に転じた。海外マネーが注目する今こそ、日本が積極投資に打って出る好機となる。
GXだけでなく、省人化や農業など日本経済の課題は多い。投資機会をどれだけ増やせるか。運用立国実現のハードルは高い。【資産運用立国に挑む 第1部】
【海外新薬、国内で早期承認へ 日本人の初期治験廃止】
同じ13日の日経ニュースメールは報じた。
日本で薬を売り出すために、臨床試験(治験)の過程で日本人で安全性を別途確認しなければならない制度が原則廃止される。欧米で承認された新薬の7割は日本で承認されておらず、海外で使われている薬が日本で入手できない「ドラッグ・ロス」が生じてきた。新薬の日本での早期流通を促し、患者の不利益の解消につなげる。
厚生労働省は近く、日本人での追加的な初期治験が原則として必要ないことを記した通知を出す。数カ月以内に制度は廃止される見通しだ。
医薬品が日本国内に出回るには、3段階の治験が必要になる。1番目にあたる第1相は少数の健康な人に薬を投与して安全性を確認する。第2相は少数の患者に投与し、効き目や副作用を調べる。第3相では世界各国の多数の患者を対象にする。
第1、2相の治験は、製薬会社が新薬を開発した国でやることが多い。しかし日本で販売するには原則として、第3相に進む前に別途、日本人への初期治験にあたる第1相の追加調査が求められる。
厚労省は「国内の環境で暮らす日本人への安全性を確認するため」と説明する。だがこれは日本独特のルールで他国ではほとんど求められない。
この追加調査が妨げとなり、「ドラッグ・ロス」や海外で使用されている医薬品の日本での承認が遅れる「ドラッグ・ラグ」が深刻になっている。
厚労省は追加的な初期治験をなくしても、第3相の治験で日本人の安全性は確認されると判断した。抗がん剤など強い副作用が起こりやすい一部の薬には追加調査が残る可能性がある。
2020年時点で米国と欧州連合(EU)で承認された新薬のうち、日本では72%が未承認で数字は上昇傾向にある。09〜17年に開発された新薬で、世界で初めて承認された時期と国内承認された時期の差は54.1カ月。韓国(28.2カ月)の約2倍だ。
治験には参加者を集めるコストや時間が欠かせない。グローバルな製薬会社にはこの手間を嫌って日本での販売を断念したり、市場投入の時期を他国に比べ大幅に遅らせたりしている。
厚労省のヒアリングに対し、製薬会社は「日本人向け治験が新薬投入の障壁となっている」という声を寄せた。欧米系の製薬会社も「日本人への投与経験がないこと以外に(追加調査が必要な)理由が十分に示されておらず、欧米の本社に理解されない」と指摘した。
たとえば消化管の壁にできる悪性腫瘍である消化管間質腫瘍(GIST)は年間10万人に1人から2人程度に発症する。治療薬「アバプリチニブ」は日本では手に入らない。米国では20年1月、欧州では20年9月に承認されている。
新型コロナウイルス禍でも、日本がワクチン承認で欧米から後れをとった原因の一つが追加治験だった。
米ファイザーは、海外での大規模治験の結果をもとに20年12月にワクチンの製造の承認を申請した。だが追加治験などへの対応で承認までに2カ月ほどかかった。
厚労省はルール変更について、医薬品の開発を担う海外の製薬会社への情報発信にも力を入れる。24年度には米国に医薬品医療機器総合機構の事務所を設立し制度の周知に生かす。
製薬大手アストラゼネカ社では、世界同時開発などの取組で同社の日本でのドラッグ・ラグやロスの問題はほぼ解消している。一方、同社はベンチャー発の先端的な医薬品のライセンスを取得し、残りの治験を自社で担う場合がある。日本人への初期治験の原則廃止で、開発期間が短縮されれば「非常にポジティブに捉えられる」という。また、日本市場で発売がしやすくなることへの「大きな一歩」だと期待を寄せる。
ドラッグ・ロスやラグの解消には他にも課題がある。例えば患者が少ない希少疾患や小児がんなどはコストをかけても利益が出にくいため、製薬会社は開発を敬遠する。米国は成人用のがんの薬を開発する際には小児用も開発することを義務づけている。日本には同様の制度はない。
【小売り、食品PB比率17%で最高 イオンやセブンが新商品】
14日の日経速報メールは報じた。
小売り大手が食品など生活必需品で割安なプライベートブランド(PB)を拡充する。イオンは食品PBの半分を刷新し、セブン&アイ・ホールディングスは低価格帯PBを倍増させる。スーパーの食品販売額に占めるPB比率は10月に過去最高の約17%に高まり、店頭価格の上昇は鈍化している。物価押し上げの主軸はモノからサービスに移る。
イオンはPB「トップバリュ」で生鮮品を除いて約5千ある食品のうち2500品目を新商品に切り替える。日用品などと合わせたPB売上高を2024年2月期に前期比11%増の1兆円超に高める。セブン&アイはPBの中でも低価格シリーズ「セブン・ザ・プライス」の品目を24年2月末までに160品に倍増させる。
ベイシア(前橋市)は新しいPB「ベイシアプレミアム」を始めた。既存PBは新製品に順次切り替えて24年2月までに100品目以上を展開する計画だ。西友も生鮮食品の新PB「食の幸」で現状65種類の品目数を増やす。
一般にPBはメーカー品より1〜3割程度安い。小売業にとって稼げる商品でもある。物流や宣伝費などを抑えられるため、粗利益率は15〜20%とされるメーカー品と比べ10ポイント程度高い。
メーカー品とPBは物価高でともに値上がりしているが、消費者は安いPBにシフトしている。
日本経済新聞社と調査会社のインテージ(東京・千代田)が全国のスーパーなどから集めたPOS(販売時点情報管理)データを分析したところ、加工食品や調味料、清涼飲料、アルコール飲料などを含む食品PB(生鮮品除く)の割合は10月に16.8%になった。統計がある12年以降で最高だ。
品目別のPB比率は冷凍野菜が57%と最多で、ハムが34%、牛乳は32%だった。
PBシフトの背景には食品価格の上昇がある。帝国データバンクによると、22年の食品値上げは約2万6000品目に達し、23年は1〜10月の累計で3万品目を超えた。総務省の消費者物価指数(食料、2020年=100)も10月、東京都区部で116と21年1月(99.7)から16.3%上昇。消費者は生活必需品への節約志向を強めている。
PBシフトは物価動向にも影響する。牛乳の店頭価格の前年比上昇率は10月の19%から足元は11%に縮まった。
POSデータをもとにスーパーなどの店頭価格の動きを示す「日経ナウキャスト日次物価指数」をみると、11月12日時点で前年比6.7%(7日平均)上昇したものの、今年8月のピーク(同9.2%)に比べ鈍化した。
その中で物価全体を下がりにくくしているのが旅行やレジャーなどのサービス価格だ。日本のサービス価格は長らく低迷していたが、9月は上昇率が2%に高まった。
サービス価格は賃上げの影響を受けやすい。足元で賃上げは物価上昇を下回っており、実質賃金は9月まで18カ月連続でマイナスだった。物価を下支えするサービス価格の腰折れを防ぐには、消費者の財布のひもを緩める継続的な賃上げが不可欠だ。
24年の春季労使交渉に向け連合が要求方針を発表した。サントリーホールディングスなど交渉が本格化する前に賃上げ方針を表明するところも出ている。企業の継続的な賃上げ力が問われる局面だ。(浅山亮、マクロ経済エディター 松尾洋平)
【エクソン、リチウム生産へ 30年までにEV電池100万台分】
同じ14日の日経速報メールは報じた。
【ヒューストン=花房良祐】石油メジャーの米エクソンモービルは13日、米南部アーカンソー州で2027年から電気自動車(EV)電池用のリチウムを生産すると発表した。北米以外での生産も視野に入れ、30年までに年100万台分のEV用電池のリチウムを供給。世界有数のEV向けリチウム供給会社を目指す。
石油メジャーがリチウムの大規模生産に乗り出すのは初めて。EVや電池のメーカーと供給に向けた協議に入った。23年初めにアーカンソー州の12万エーカー(約485平方キロメートル)の敷地で採掘する権利を獲得した。
石油・天然ガスの掘削技術を活用して地下約3000メートルからリチウムを含有する塩水をくみあげる。従来より環境負荷の低い新技術でリチウムを分離し、現場のプラントで電池用の素材に加工する。30年までに年約10万トン(炭酸リチウム換算)を生産する見込み。
リチウムはレアメタル(希少金属)で、リチウムイオン電池の製造に使用する。EVの増加などでリチウム需要は30年までに4倍になる見通しで、供給不足の懸念がある。低炭素部門トップのダン・アマン氏は「リチウムはエネルギー転換に必要で、エクソンは(経済の)電化に向けて主導的な役割を果たす」とコメントした。
米地質調査所(USGS)によると、22年の世界のリチウム生産のうちオーストラリア、南米チリ、中国の3カ国で合計約9割を占め、偏っている。一方、米国の生産量はほとんどない。加えて、従来技術によるリチウムの精錬では中国が世界の大半を担っている。米国で生産すればサプライチェーン(供給網)のリスクも低下する。
EVと電池の普及に伴い、レアメタルの生産・精錬が少数の国に偏在している課題が浮き彫りになっており、バイデン政権は米国での生産を支援する。22年には国産の電池素材を使用したEVの購入補助制度を導入した。
エクソンは太陽光・風力発電について石油開発との相乗効果が見込めないとして投資に慎重な一方、二酸化炭素を回収して地下に貯留するといった石油開発の掘削技術がいかせる低炭素ビジネスには積極的だ。地下を掘削するリチウム生産も石油開発の技術が活用できるとみている。
天候に左右される太陽光・風力発電は発電が不安定なため、蓄電池との組み合わせが不可欠だ。このため再生エネの普及に伴い蓄電池は増加する見通しで、リチウムの生産会社がエネルギー転換の時代を勝ち抜くとの見方が高まっている。
米S&Pグローバルのダニエル・ヤーギン副会長は「エネルギー業界は『ビッグ・オイル』(石油メジャー)から『ビッグ・ショベル』(大手鉱山会社)の時代に移っていく」と話している。
【米下院、つなぎ予算案を可決 政府閉鎖は回避へ】
15日の日経速報メールは報じた。
【ワシントン=高見浩輔】米連邦議会下院は14日、予算執行を現行水準のまま2024年1〜2月まで続ける「つなぎ予算案」を可決した。上院でもすでに与野党のトップが法案への支持を表明している。政府閉鎖の回避に向けて大きく前進した。
米議会は2024会計年度(23年10月〜24年9月)の予算案をまだ策定しておらず、9月末に11月17日までのつなぎ予算を成立させて政府機関の閉鎖を回避していた。期限が近づき、再延長が必要になっている。
•【関連記事】米政府閉鎖、土壇場で回避 11月までのつなぎ予算成立
つなぎ予算案は、野党・共和党が過半数を握る下院で10月に新たに議長になったジョンソン氏が提案した。軍事や退役軍人、交通、住宅などの予算は24年1月19日まで、それ以外は2月2日まで執行を続けることができる。
民主党の下院議員らがジョンソン氏の案に賛成したのは、懸念していた大幅な歳出削減が盛り込まれなかったためだ。譲歩した内容の法案を蹴れば、政府閉鎖の責任を民主側が背負うリスクもあった。
•【関連記事】米下院新議長に保守派ジョンソン氏 内紛抱え手腕未知数
上院でも民主トップのシューマー院内総務が法案を支持する考えを示している。上院を通過すれば法案はバイデン大統領の署名を経て成立する公算が大きい。
下院共和はわずかな議席数の差で優位を保っているため、強硬派の一部が反対するだけで法案が通らない機能不全に陥っていた。マッカーシー前議長は9月末、民主の協力を得て11月17日までのつなぎ予算案を可決させたが、その直後に解任された。
強硬派議員らは今回の法案にも反対したが、議長の解任動議に踏み込む動きは今のところ起きていない。前議長の解任後、下院共和では議長のなり手が3週間決まらなかった。
複数の米メディアによると、ジョンソン氏はひとまず政府閉鎖を避けつつ、年明けにかけて調整する24会計年度予算案で歳出削減を強く求める構えだ。
つなぎ予算の期限を2つに分けたのは、バイデン政権と民主党が「包括予算案」と呼ばれる一括法案で予算案を通すのを回避する狙いがある。米国の予算案は本来、12本の予算案を個別に成立させる必要がある。
政府閉鎖を回避できれば今後は予算案に盛り込まなかったウクライナ支援が大きな議題となる。共和内には国境警備など国内に資金を振り向けるべきだと反発が大きい。与野党で意見の隔たりは大きい。
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。前嶋和弘上智大学総合グローバル学部 教授
ひとこと解説
共和党の強硬派の自由議連の案だった「2段階予算案」を共和党穏健派と民主党側が拒否できずに通過。民主党側の反対は2,共和党側は93。さらに強硬な共和党議員が歳出削減などが入っていないため拒否。「強硬派議長(ジョンソン)の方が強硬派の反対が少なくなる分だけつなぎ予算成立の可能性が高くなるかもしれない」と何度かいろいろなところでお伝えしましたが、そのとおりになりました。 指導力が全く未知数だったジョンソン下院議長にとっては、最初の大きな仕事。「妥協を許さない」強硬派だったはずのジョンソン。議員個人としてはおそらく民主党との徹底した財政対決を望んでいたはずですが、現実的に政府一時閉鎖回避を重視。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
同じ15日のニュースメールは次のように報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は紅葉シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる訪日客が増える。
主要国23か国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で(2.7%増)だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店のインバウンド売上高が3201億円と、18年同期を14%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
【イスラエル軍、ガザ北部シファ病院で「作戦実行中」】
同じ15日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は15日、パレスチナ自治区ガザ北部にある地区最大のシファ病院で「特定のエリアで、精密かつ標的を絞った作戦を行っている」と明らかにした。軍は同病院やその周辺の地下にイスラム組織ハマスの司令部があると主張しており「病院内にいるすべてのハマスのテロリストに投降を求める」と強調した。
米CNNは同日、イスラエル軍の戦車がシファ病院の敷地内に入ったとの目撃情報を報じた。国連機関によると、シファ病院には12日時点で患者が600〜650人、避難住民が約1500人いたという。
イスラエル軍は作戦部隊に医療チームやアラビア語を話す兵士を同行させていると説明し「民間人に危害が及ばないよう配慮している」と強調した。作戦前日に「ガザの関係当局に対し、病院内での軍事活動を12時間以内に中止するよう再度伝えたが、応じなかった」と主張した。
一方、ハマスは病院の軍事利用を否定している。ロイター通信によると、ハマスは15日、病院突入の責任はイスラエルと米国の双方にあると非難する声明を出した。
イスラエル軍は14日、シファ病院の近くにありハマスの重要拠点だとするシャティ難民キャンプのほか、警察本部など複数の施設を制圧したと発表した。13日にはガザ北部のランティシ病院にも部隊が踏み込み、病院地下に武器の保管や人質の拘束などハマスの作戦に利用された痕跡があったと主張していた。
ガザ北部ではシファ病院などが燃料不足で機能を停止するなど、医療体制が崩壊しつつある。バイデン米大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に「病院は守られなければならない」と強調していた。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は14日、ハマスがシファ病院を含む複数の病院を軍事利用していることを確認したと明らかにし「戦争犯罪だ」との認識を示した。ロイター通信が伝えた。
ホワイトハウスはバイデン氏とイスラエルのネタニヤフ首相が14日に電話会談したと発表した。ハマスが拘束する人質の救出や病院の状況について協議したとみられる。
【日経平均3万3000円乗せ 陰の主役はNVIDIA】
同じ15日の日経ニュースメールは報じた。
15日の東京株式市場で日経平均株価は大幅続伸し、前日比823円77銭(2.52%)高の3万3519円70銭で取引を終えた。前日比の上げ幅は2023年で最大となり、節目の3万3000円をおよそ2カ月ぶりに上回った。米利上げの打ち止め観測が強まり、国内でも金利高が逆風となるグロース(成長)株が買い戻された。ハイテク株主導の相場の陰の主役と声が上がるのが、米エヌビディアだ。
15日は半導体検査装置大手のアドバンテスト株が一時8%高まで買い進められるなど、半導体関連株の上昇が目立っている。半導体製造装置の東京エレクトロン株とあわせて日経平均を170円強押し上げた。
アドテストはPER(株価収益率)が60倍に迫り、割高株の筆頭だ。将来の高い利益成長が株価に織り込まれている分、金利上昇は現在価値に引き直す際の割引率を高めるため、株価の下押しにつながりやすい。
14日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びは市場予想以上に鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止め観測が広がった。10月下旬に一時5%を超えていた米長期金利は4.5%を下回り、割高株への逆風は弱まる。アドテスト株は11月1日に付けた直近安値から半月で3割上昇した。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
15日の日経速報メールは報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は行楽シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる客が増える。
主要国23カ国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で2.7%増だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店の4〜9月のインバウンド売上高が353億円と、18年同期を17%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
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【いすゞ、電池交換3分のEVトラック 自前で取り換え拠点】
同じ15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
いすゞ自動車は電池交換式電気自動車(EV)トラックの事業化に乗り出す。3分で電池交換が可能な車両を開発し、取り換えを担うインフラも自社で運用する。EVは充電に時間がかかり、配送効率が落ちるのが課題だ。運転手不足問題の解消につながる電池交換式の普及を後押しするため、車両開発からインフラまで一貫して担う。
いすゞは電池を交換する「無人ステーション」をこのほど開発した。物流企業の配送拠点や給油所に売り込み、設置することを想定する。コンビニエンスストアへの荷物配送やゴミ収集車などに使う小型EVトラック「エルフ」をベースにした車両を開発した上で、2025年に実証実験を始める。
ステーションではロボットが電池を取り外し、充電済みの電池と交換する。交換時間は最短で2分30秒程度としており、トラックが再び走行可能になるまで3分以内ですむという。充電済みの電池を用意したり、設備の保守や点検をしたりといったステーションの運用もいすゞが自ら手がける可能性がある。
充電式のEVトラックは充電に10時間程度かかり、軽油を燃料とするディーゼル車と比べて配送効率が低いのが課題となっている。商用車では電動化が遅れており、調査会社の矢野経済研究所によると、世界の商用車販売台数に占める電動化率(ハイブリッドなど含む)は2021年時点でも1.2%にとどまる。
電池交換式であれば、短時間の交換で配送を続けることができる。物流業界ではトラックやバスなどの運転手に残業規制が適用され、人手不足が見込まれる「2024年問題」に直面している。電池交換式が広がれば、脱炭素の対応と配送効率の維持への両立が期待できるとされている。
既に軽自動車の商用車では開発が進む。ホンダはヤマト運輸と11月から交換式電池を使った軽商用EVによる集配業務の実証実験を開始すると発表している。ホンダの軽EV「MEV-VAN Concept(エムイーブイバン コンセプト)」を活用し、太陽光発電の電力を使う。交換式電池でも積載量などの性能を維持できるかどうかを調べる。
ホンダの交換式電池は、自社の電動スクーターや建機メーカーのコマツと共同開発した電動小型ショベルに搭載されている。コマツは小規模な土木・建築工事や配管工事などでのニーズを見込んでいる。車以外でも用途拡大が進んでおり、国内の新興EVメーカーの間でも交換式電池の導入が進む可能性がある。
交換式電池は中国やインドなど新興国で普及している。中国の新興EV大手、上海蔚来汽車(NIO)は充電設備の設置と並行し、電池を交換する拠点を増やしている。(淡海美帆)
【米中首脳、軍事対話再開で合意 習氏「世界に重い責任」】
16日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・1年ぶりの対面会談が終了。昼食など含め4時間強
・AIの政府間対話や気候変動対策の作業部会設置を確認
・習氏は台湾統一に意欲。米国の台湾への関与けん制
【サンフランシスコ=田島如生、坂口幸裕】バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は15日午前(日本時間16日未明)、米西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で会談した。途絶えている米中両軍高官の対話再開で合意した。意思疎通を維持し、台湾周辺や南シナ海での偶発的な衝突を防ぐ狙いがある。
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両首脳が対面で会うのは1年ぶり。会談はサンフランシスコ中心部から40キロほど南にあるカリフォルニア州ウッドサイドにある「ファイロリ」邸で開いた。会談は4時間強で、両首脳は少人数での昼食会後、庭園を散歩した。
バイデン氏は会談後の記者会見で「建設的で生産的な議論だった」と述べた。米中の競争が「紛争に発展しないように(関係を)合理的で管理可能なものにするのが私の責任だ」と表明。滞っていた軍事対話の再開で合意した重要性を訴えた。
中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えない一方、米国が台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を維持すると改めて明言した。2024年1月の台湾総統選で中国が選挙介入しないよう警告した。
習氏は会談で「世界経済は回復し始めたが、その勢いは不十分だ。産業サプライチェーン(供給網)の混乱や保護主義の台頭といった問題は顕著になっている」と言明した。経済安全保障を理由に先端半導体などの対中輸出・投資規制を主導する米国を批判した。
習氏は地球は十分に大きく、米中が共に成功するのは可能だとも指摘した。「私とバイデン大統領は中米関係のかじ取り役であり、国民、世界、そして歴史に対して重い責任をもつ」と語った。
米政府や中国国営中央テレビ(CCTV)によると、両首脳は両軍の高官協議のほか、国防当局の対話や海上軍事安全保障メカニズム会議を再開させると確かめた。両軍の戦闘区域のトップ同士で連絡を取り合うことも申し合わせた。
米政府高官は、オースティン米国防長官と中国側の軍高官が「数週間以内」に会談する方向で調整すると説明した。米中は台湾海峡や南シナ海で軍事的な緊張を強めている。両国の軍事対話は22年8月、当時のペロシ下院議長が台湾を訪れたのを境に滞った。
バイデン氏は会談で、台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を改めて主張した。CCTVによると、習氏は台湾について「中米関係の最も重要かつ最も敏感な問題だ」と説明し「必ず統一する」と強調した。
両首脳はAIに関する政府間対話を立ち上げると確認した。AIの軍事利用への懸念が国際的に広がっていることが背景にある。気候変動対策に関する作業部会の設置でも合意した。
麻薬対策での協力に向けた作業部会を立ち上げることも申し合わせた。医療用麻薬フェンタニルの過剰摂取による死者が米国内で激増しているのを踏まえた。中国は原料となる化学物質の主要製造国だ。
習氏は先端半導体などの対中輸出・投資規制に関し「中国の正当な利益を著しく損ねている」と問題視した。「中国の科学技術の抑圧は中国の質の高い発展を抑制することだ」と話し、規制措置の撤廃を要求した。
習氏の訪米は17年4月以来、6年半ぶりとなる。サンフランシスコ滞在中、岸田文雄首相との会談も調整している。15日に開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での演説も予定する。
米中首脳会談は22年11月にインドネシア・バリ島で開いて以来だ。両首脳は当時、偶発的な衝突防止に向けて対話を続けると合意した。米軍が23年2月、米本土上空に飛来した中国の偵察気球を撃墜したことをきっかけに両国関係は冷え込んだ。【関連記事】
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【日中首脳が1年ぶり会談 「戦略的互恵関係」を再確認】
17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【サンフランシスコ=秋山裕之】岸田文雄首相は16日(日本時間17日午前)に訪問先のサンフランシスコで中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と1時間ほど会談した。個々の懸案で対立しても共通利益の追求を優先する「戦略的互恵関係」を再確認した。
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日中首脳会談は2022年11月にバンコクで開いて以来、1年ぶり。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でともに訪米する機会を利用した。15日にはバイデン米大統領が習氏と会い、両軍高官の対話再開で合意している。
首相は会談の冒頭に「日中は隣国として共存、繁栄し、地域と国際社会をリードする大国として世界の平和と繁栄に貢献していく責任を有する」と強調した。「より明るい日中関係の未来を切り開けるように力を合わせていきたい」と述べた。
習氏は両国の平和共存は正しい方向性だと指摘し「共通利益を重視し、相違を適切に管理すべきだ」と主張した。「戦略的互恵関係の位置づけを再確認し、新たな意味を与え、新時代の要求に合う中日関係の構築に力を尽くすべきだ」とも語った。
戦略的互恵関係は06年に当時の安倍晋三首相が訪中し、胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席との会談で打ち出した概念だ。胡主席が08年に国賓で来日し、福田康夫首相と「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明をまとめた。
日中は政治体制が異なり、日米のように民主主義といった共通の価値観を共有しにくい。解決困難な課題で対立を深めず共通利益を求めることで、安定的な関係を維持する狙いがある。
両首脳は東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出について解決を目指す方針で一致した。首相は「専門家のレベルで科学に立脚した議論を行う」と述べた。中国は「核汚染水」と呼んで反発していた。
首相は中国による日本産水産物の輸入禁止を撤回するよう求めた。中国当局に逮捕された邦人の早期解放なども主張した。
沖縄県・尖閣諸島周辺で続く中国公船による領海侵入をめぐっては東シナ海での偶発的な衝突回避を話し合った。日本の排他的経済水域(EEZ)に中国が設置したブイの即時撤去を求めた。
中国は台湾について譲れない「核心的利益」と位置づけ、日本に関与しないように求めている。首相は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
日中ハイレベル経済対話を適切な時期に行うことでも一致した。気候変動対策など地球規模の共通課題で協力を申し合わせた。
2国間の問題でも意思疎通を強化する。日中の通商当局間で重要鉱物の輸出管理といった貿易問題に関する対話枠組みを新設する。企業関係者の安全確保も含めたビジネス環境に関する協議体も創設する。
首相は訪米に先立ち、対中外交について「建設的かつ安定的な関係を維持するため、お互いの努力によって関係を維持する基本方針は変わっていない」と言明している。
日中関係をめぐっては岸田首相と中国の李強(リー・チャン)首相が9月にインドネシアで立ち話した。日中平和友好条約発効45周年の10月23日にメッセージを交換した。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。深川由起子早稲田大学政治経済学術院 教授
分析・考察
中国に限らず、グローバルサウスに限らず、「日本はアメリカの従属変数」というレッテルはかなり粘着力を持ちます。写真の習主席の表情もそのもの。G7などマルチのレバレッジ依存はやむを得ないとしても、地域研究の没落と共に日本人の中国研究者数が激減し、本来、欧米に比しての強みだった「中国の内側論理から考える」能力の低下がバイの関係構築を不利にしている感があります。かといって欧米のような情報機関の力が弱く、民間企業の持つ情報との密かな連携も希薄。これでは情報戦について行けません。「あなたは「井戸を掘った人を忘れない」国なのでは?」と鋭く切り返せる日本にならないといけないのでは。
【パナソニックHD、自動車部品会社売却へ 米ファンドに】
17日の日経速報メールは報じた。
パナソニックホールディングス(HD)は17日、自動車部品を手掛けるパナソニックオートモーティブシステムズの売却に関し米投資 ファンド大手アポロ・グローバル・マネジメントのグループ会社と基本合意したと発表した。パナソニックHDがパナソニックオートの株式の50〜80%をアポロが投資助言をするファンドに売却する。
パナソニックHDは電気自動車(EV)向け電池などを成長領域に位置づけ、重点的に投資する方針を示している。成長領域以外の事業の見直しを進めており、今回の決定はその一環になる。
売却によりパナソニックオートはパナソニックHDの完全子会社から持ち分法適用会社になる見通し。2024年3月末までの正式契約締結を目指す。パナソニックHDが売却する株式数をこれから決めるため売却額は未定だが、数千億円とみられる。
パナソニックオートは自動車のコックピットシステムや電子部品、車載充電器事業などを手掛ける。2022年度の売上高は1兆2975億円、営業利益は162億円だった。グループ従業員数は約3万人。27年度に売上高営業利益率を5%(22年度は1.2%)にする目標を掲げているが、車載充電器事業の赤字などで近年は収益力が低下している。
•【関連記事】パナソニックHD、1兆円子会社売却 EV電池に重点投資
自動車業界は電動化や自動運転など「CASE」と呼ばれる技術への対応など変革を求められている。新技術に対応し、競争力を高めるためには多額の研究開発費が必要になる。パナソニックHDはパナソニックオートが単独で投資資金をまかなうのは難しいと判断し、ファンドと連携することを決めた。
パナソニックHDは17日、パナソニックオートの売却後も「グループの一員として社名やブランドは残す」とコメントした。
パナソニックHDの楠見雄規社長は5月のグループ戦略説明会で、23年度は「事業ポートフォリオの見直しを視野に入れた経営を進める」と述べ、グループ事業の売却の可能性を示唆していた。
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【伊藤忠、ビッグモーター買収検討 創業家関与なしが条件】
同じ17日の日経速報メールは報じた。
伊藤忠商事と国内の企業再生ファンドが中古車販売大手ビッグモーター(東京都多摩市)の買収を検討していることが17日、わかった。ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と組み、買収に必要なデューデリジェンス(資産査定)の独占契約を結んだと発表した。 伊藤忠とJWP連合は契約に当たり、ビッグモーターとの間で創業家が経営に関与しないことで大筋合意した。
伊藤忠と子会社で燃料商社の伊藤忠エネクス、JWPの3社連合が17日、ビッグモーターとデューデリジェンスを独占で実施することで基本合意書を結んだ。3社はビッグモーターの経営状況を詳細に分析し、2024年春までに再建を支援するかを最終決定する。
ビッグモーターは未上場で、同社株は創業者の兼重宏行氏らの資産管理会社が保有している。23年7月に自動車保険金の水増し請求などの不祥事が発覚し、顧客離れが進んでいる。中古車販売は一時、例年に比べて6割以上減った。現在も月次で赤字が続いている。
同社は現預金や売掛金などの流動資産を数百億円抱える一方、従業員への賃金支払いなどで資金の流出が続く。銀行団は借入金の借り換えに応じないなど資金繰りに苦慮しており、自主再建が困難な状況だ。
ビッグモーターはコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの協力を仰ぎ、経営再建を急いでいる。支援企業を早期に確定し経営の立て直しを目指すが、不祥事の影響が長引き難航していた。
伊藤忠はグループで自動車リース事業を手掛けているほか、ニッポンレンタカーサービスを傘下に持つ東京センチュリーを持ち分法適用会社にしている。輸入車・中古車販売大手のヤナセも抱え、自動車ビジネスとのつながりが深い。グループとの相乗効果が高い可能性があると判断し、支援に名乗りを上げた。
焦点は買収価格や事業譲渡の対象だ。ビッグモーターを巡っては顧客の車体を故意に傷つけるなどして、損害保険会社に保険金を水増し請求する不正行為が横行していた。
国土交通省は10月、ビッグモーターが全国に持つ135工場のうち34工場で自動車整備を事業停止にするなどの行政処分を出した。金融庁も11月末に保険代理店登録を取り消す行政処分の実施方針を表明している。
中古車の買い取りや販売でも1000件以上のトラブルが生じ、複数の民事訴訟を抱えている。10月末には経営不振で東京都や埼玉県で計9店舗を閉鎖した。伊藤忠はビッグモーターの支援を通じ、自社のブランドイメージが毀損しないかも慎重に検討する。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。佐藤一郎国立情報学研究所 教授 別の視点
アルトマン氏はOpenAIだけでなく、生成AIの顔ともいえる人物だっただけに、同氏の解任は衝撃です。さて、この解任はAIのガバナンスに一石を与えるのではないでしょうか。企業が適切にAIを提供・利用するには、企業のAIに関わるガバナンスが重要視されていますが、企業トップが突如解任されるとなると、ガバナンスの仕組みの再考が求められることになります。さてアルトマン氏はAIの規制には積極的であったといえて、今回の解任でOpenAIのAI規制のスタンスが弱まると、AIに対する規制は企業側のガバナンスだけで十分なのか、法的規制が必要などの声が強くなるかもしれません。
【創価学会の池田大作名誉会長が死去、95歳 公明党を結成】
18日の日経速報メールは報じた。
宗教法人創価学会名誉会長で、同会の戦後の飛躍的な拡大を指導した池田大作(いけだ・だいさく)氏が11月15日夜、老衰のため死去した。95歳だった。創価学会が18日発表した。葬儀は近親者で行った。お別れの会を行うが、日取りなどは未定。
東京都生まれ。1947年8月、創価学会の戸田城聖第2代会長に出会い、19歳で入会した。54年には青年部参謀室長に就任。学会の政治進出の本格化に伴い、選挙運動を組織、指導するようになった。
60年に32歳で第3代会長に就任。池田氏の指導下で学会は64年、公明党を結成した。
70年代以降は海外布教と世界平和を目指す国際交流に力を注ぎ、中国の周恩来首相、旧ソ連のゴルバチョフ大統領(いずれも当時)ら各国の指導者や識者と意見交換するなど国内外で組織を拡大した。
学会ホームページによると、現在の日本国内の会員数は827万世帯。海外では世界192カ国・地域に280万人の会員がいる。
75年に創価学会インタナショナル(SGI)会長、79年に創価学会名誉会長に就任。教育・文化面では67年に創価学園、71年に創価大を開設した。著書に「人間革命」「仏法と宇宙を語る」など。海外要人との対談集も多数。
83年に国連平和賞を受賞したほか、モスクワ大学やボローニャ大学といった海外の大学から名誉博士号などの称号も贈られた。公の場に姿を見せることが少なくなった後も平和運動に力を入れ、近年はロシアに侵攻されたウクライナの平和回復や核拡散防止に関する提言を発表した。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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【マンション建て替えやすく 借り主退去、請求後半年で】
19日の日経ニュースメールは次のように報じた。
首都圏を中心に増える老朽マンションの再生が社会的な課題となっている。建て替え予定の分譲マンションに借り主が居座り工事できないケースがあり、決議に基づいて6カ月後の立ち退きを請求できるようにする。政府は決議要件緩和などと合わせた制度案を近く示し、2024年の通常国会への区分所有法改正案の提出をめざす。
東京都新宿区の住宅街に30年以上をかけて建て替えにこぎ着けたマンションがある。1930年代に建築された物件で、建物の傾きや雨漏りから60年代に建て替えの検討が始まった。
手続きは難航した。高齢の所有者から「自分が生きている間は壊さないでほしい」「歴史的な建物を残してほしい」という声が出て、合意形成ができなかった。所有者の賛成を得て建て替えを決議し竣工に至ったのは2005年のことだった。
決議には所在の分からない所有者も含めた5分の4以上の賛成が必要だ。高度経済成長期に大量供給されたマンションの老朽化が急速に進むが、現行法は建て替えに高いハードルを設けている。
法相の諮問機関の法制審議会は、分譲マンションの建て替えなどを円滑にする方策を検討してきた。耐震性などに問題がある場合については、所在の明らかな人を対象に4分の3の賛成に引き下げる案を出している。
建て替えが決まったとしても、障壁はもう一つある。長期間契約の借り主が反対し、建て替え工事ができないケースがある。現行法では契約違反などの正当な理由がなければ退去の義務はない。所有者は借り主と個別に交渉する必要がある。
新制度の導入後は個別交渉で解決しない場合でも、契約の終了を請求できるようになる。所有者が立ち退き費用などを補償することで賃貸借契約を解除できる。
法制審議会は21日に新制度を盛った要綱案のたたき台を提示する方針だ。政府は議論をもとに区分所有法の改正案をとりまとめ、24年の通常国会に提出する見通し。
旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所の重水丈人所長は「立ち退かないと建て替えできないため、借り主の同意が重要だ。所有者は大変苦労している」と話す。追加的な課題として借り主への補償に関するガイドラインの整備が必要だと指摘した。
国土交通省によると、築40年以上の分譲マンションは22年末でおよそ126万戸ある。42年末には22年末の3.5倍の445万戸にまで増加する見込みだ。
一方、建て替えの累計実績は23年3月時点でおよそ2万3000戸にとどまる。
東京カンテイ市場調査部の高橋雅之主任研究員は「要件緩和で建て替え需要にはプラスの方向に働く」と語る。資材の高騰で建て替え費用がかさむ可能性があり「所得水準や年齢層が多様な大規模マンションでは合意形成が図りにくい」との見方を示す。
マンションの建物や敷地の売却、取り壊しやリノベーション(大規模改修)の決定も多数決で可能にする。現行法で実行するには所有者全員の賛成が必要だが、建て替えと同様に耐震性などに問題があれば4分の3の多数決で決められるようにする。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
大槻奈那名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
今後の展望
所有権尊重の観点等から進みにくかった建て替え決議に対する大きな進展です。但し、実行段階でのハードルはまだ様々残されています。 例えば借り主の退去については、立ち退き費用補償の水準をどうするのか。また、建て替えの賛成票も集まり難くなっている可能性があります。住人の一層の高齢化や、家賃上昇で建て替え中の移転費用の増加が課題です。更に、近年では室内のリノベーションが広く普及し、その技術が高額化していることから、一旦リノベした世帯はそれを無駄にするような建て替え決議には賛成しない可能性があります。一定の年数を経たマンションでは、できるだけ早い時期から理事会等で話し合いを始める必要があるでしょう。
2023年11月20日 8:38
【紅海で貨物船乗っ取り 日本郵船が運航「日本人いない」】
19日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は19日、イエメン近くの紅海で貨物船が乗っ取られたと発表した。日本郵船によると、拿捕(だほ)された船はバハマ船籍の自動車輸送船「ギャラクシー・リーダー」で同社がチャーターしていた。
日本郵船は「拿捕されたのは事実。乗組員の安全を確認中」とコメントした。乗組員はブルガリア人、フィリピン人など25人で日本人はいないという。国土交通省は19日午後9時半ごろ日本郵船から連絡を受け、詳しい情報を確認中だとしている。
•【関連記事】親イラン組織、イスラエル船拿捕と主張 貨物船乗っ取り
イスラエル首相府は、この船舶は英国企業が所有し日本企業が運航しており、乗っ取りを実行したのはイエメンの親イラン武装組織フーシだと主張した。乗っ取りはイランの指導を受けたもので「イランによる国際船舶への攻撃を強く非難する」と強調した。乗組員にイスラエル人はいないと説明している。
イスラエル軍によると、貨物船はトルコからインドに向かう途中だった。船舶情報会社マリントラフィックによると、サウジアラビアとスーダンの間の海域で信号を確認したのを最後に消息がわからなくなっている。
ロイター通信はこれに先立ち、フーシの広報担当者が同日、イスラエル企業が所有・運航するすべての船舶を標的にすると表明したと伝えた。
イスラエル軍は10月からパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと交戦しており、フーシはイスラエルへミサイルなどによる攻撃をしかけてきた。
(カイロ=久門武史、逸見純也)
▼フーシ イエメン北部を活動拠点とするイスラム教シーア派の武装組織。指導者はアブドルマリク・フーシ氏。2011年に中東で広がった民主化運動「アラブの春」以降に台頭し、15年にクーデターで首都サヌアを占領するなど国内の大半を支配下に置いている。
イエメンではサウジアラビアなどが支援する暫定政権と、イランが支援するフーシの内戦が続いている。3月にサウジとイランが外交関係を正常化することで合意すると、サウジとフーシの停戦協議も始まり、緊張緩和の機運が高まっていた。
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【元OpenAIのアルトマン氏ら、Microsoft入りへ】
20日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=山田遼太郎】米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は19日、米新興企業オープンAIのCEOを解任されたサム・アルトマン氏がマイクロソフトに加わると明らかにした。同社に新設する人工知能(AI)の先進的な研究チームを率いるという。
ナデラ氏が19日深夜(米西部時間)にX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。オープンAIの共同創業者の1人で、アルトマン氏とともに退社を表明したグレッグ・ブロックマン元社長もマイクロソフトに入る。複数のオープンAI従業員もマイクロソフトに移る。
ナデラ氏は投稿で「我々はオープンAIとの提携を続け、製品のロードマップに自信を持っている」と強調した。エメット・シア氏が暫定CEOに就くオープンAIについて「新経営陣と共に働くのを楽しみにしている」とも述べ、巨額を投資するオープンAIとの関係を維持する考えを強調した。
マイクロソフトCEOのナデラ氏はXへの投稿でアルトマン氏らがマイクロソフトに入社すると明らかにした
ナデラ氏によると、アルトマン氏はマイクロソフト社内で新たに設置されるAI研究のグループのCEOに就くという。
アルトマン氏は同日、ナデラ氏の投稿に「使命は続く」とXで応じ、マイクロソフトに加わることを認めるかたちとなった。
アルトマン氏は17日にオープンAIのCEOを突如解任された。同氏を支持する投資家や従業員が多く、復帰に向けた交渉があったが19日夜までに合意に至らなかった。オープンAIはゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」元トップのシア氏を暫定CEOに起用した。
アルトマン氏やブロックマン氏の退任に続き、オープンAIの多くの従業員が退社の意向を示したことから去就に注目が集まっていた。
マイクロソフトは米西部ワシントン州シアトルで開いた技術イベント「イグナイト」で15日、オープンAIが手がける生成AIの技術基盤の最新版「GPT-4ターボ」の企業向け提供などを発表したばかりだ。
対話型AI「Chat(チャット)GPT」で知られる同社との提携を経営戦略の中核に据え、業務ソフトの操作を支援する「コパイロット」など、AI技術を矢継ぎ早に自社サービスに組み込んだ。クラウド基盤「アジュール」とオープンAIの技術の連携も進めた。
オープンAIから人材が流出し、アルトマン氏が独立する事態となれば、マイクロソフトのAI戦略が見直しを迫られるほか、投資家らから批判を招くのは避けられない情勢だった。
【OpenAIの社員9割、退社も辞さず 取締役会に総退陣迫る】
21日の日経速報メールは報じた。
シリコンバレー=渡辺直樹】米オープンAIの社員らは20日、取締役会(理事会)に総退陣を求め、解任したサム・アルトマン氏らを復帰させなければ、自分たちもそろって退社すると迫る文書を提出した。770人いる社員のうち、すでに9割超にあたる約730人が署名した。人工知能(AI)の有望企業をめぐる混乱は社員の「反乱」という重大な局面に発展しはじめた。
日本経済新聞が入手した文書によると、要求は取締役会に向けている。現在の取締役全員が辞任した上で、独立した新任者を指名し、アルトマン元CEOとグレッグ・ブロックマン前社長を復帰させるよう求めている。
受け入れられなければ、大半の従業員はアルトマン氏らが手がける「マイクロソフトの新しい子会社に参加することを選択するかもしれない」と迫っている。「(取締役会は)オープンAIを監督する能力がないことが明確になった。能力や判断力、使命、従業員への配慮が欠けている人たちのために働くことはできない」と批判している。
賛同したオープンAIの社員は「みな同じように突然状況を知らされて驚いている」と混乱する社内の状況を明かした。
オープンAIは17日にアルトマン氏の解任を突如発表して以降、技術者らが離反する事態を招いていた。オープンAIの投資家はアルトマン氏の復帰を仲介したが、これに失敗。19日にはマイクロソフトがアルトマン氏とブロックマン氏を新たなAI研究チームに迎えると発表した。
取締役会は暫定CEOにゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」の元CEOであるエメット・シア氏を指名した。同氏はアルトマン氏解任の経緯について近く報告書をつくる意向を示していた。
現在の取締役会はアルトマン氏解任に加担したチーフサイエンティストのイリヤ・サツキバー氏と3人の社外取締役で構成している。社員らが今回提出した文書には、そのサツキバー氏も署名し、取締役の解任要求は実質的に社外の3人に向けられた形だ。
サツキバー氏はX(旧ツイッター)上で「取締役会(理事会)の行動に加わったことを深く後悔している。オープンAIに危害を加えるつもりはまったくなかった。会社を再統合するためにできる限りのことをするつもりだ」と投稿した。
一連の動きをうけてマイクロソフトの株価は20日、約2%上昇した。マイクロソフトは混乱に乗じ、資本・業務提携するオープンAIの人材取り込みをさらに進める可能性が高いとみられている。
オープンAIの創設にも関与した米起業家のイーロン・マスク氏はXで「マイクロソフトは数年前にオープンAIの事実上の支配権を実現した。それが今になって明らかになりつつある」と投稿した。
【岸田首相が2024年春に訪米 議会演説を検討、国賓待遇】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
岸田文雄首相は2024年春に訪米する調整に入った。バイデン米大統領から国賓待遇で招待を受けており、米議会での演説を検討する。日本の防衛力強化を踏まえた「同盟の現代化」を推進する。安全保障や経済、人的交流など幅広い分野で関係深化を話し合う。
首相は先に米サンフランシスコを訪れた際にバイデン氏と会談した。バイデン氏は24年早期に首相を国賓待遇で招待すると伝えていた。
国賓は大統領や国王など政府が外国の元首らを最も手厚く受け入れる接遇だ。首相は24年度予算案の国会審議の日程を見極めながら3〜4月ごろの訪米を探る。
日本の首相が国賓訪米するのは15年の安倍晋三氏以来となる。米議会では過去に安倍氏のほか吉田茂、岸信介、池田勇人の各氏が演説に臨んだ。
米国の厚遇は岸田政権が打ち出した防衛力強化を評価している証しでもある。日本政府は22年12月に新たな国家安全保障戦略など安保関連3文書や防衛費の大幅増を決めた。バイデン氏は23年1月にワシントンで開いた日米首脳会談でこれを「果敢なリーダーシップ」と歓迎した。
報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率は低迷する。ロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエルとイスラム組織の戦闘は長引く恐れがある。米国はそうした情勢下で同盟国である日本の政治が不安定になる展開を望んでいないとみられる。
【自工会会長にいすゞ片山会長 トヨタなど3社以外から初】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本自動車工業会(自工会)の次期会長にいすゞ自動車会長の片山正則氏が就任する見通しとなった。任期が2024年5月までの豊田章男会長(トヨタ自動車会長)の後任となる。1967年に自工会が発足して以降、トヨタ、ホンダ、日産自動車以外から会長が就任するのは初めて。
自工会の会長はトヨタとホンダ、日産の首脳が1期2年交代で務めるのが慣例だった。豊田氏は2018年5月に会長に就いた。12〜14年に次いで2回目の就任だった。
片山氏は現在、副会長を務めている。商用車を主力とする企業が会長に就くことで、100年に1度とされる自動車産業の構造変化などに業界をあげて柔軟に対応できる体制を整備する狙いがあるとみられる。
【北朝鮮が「軍事偵察衛星」発射 軌道投入は確認されず】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本政府は21日夜、北朝鮮が同日午後10時43分ごろ、北西部の東倉里(トンチャンリ)から弾道ミサイル技術を使った発射を強行したと発表した。北朝鮮が主張する「軍事偵察衛星」とみられる。防衛省によると周回軌道への投入は確認されていない。
北朝鮮の朝鮮中央通信は22日未明、北朝鮮の国家航空宇宙技術総局が21日夜に軍事偵察衛星を打ち上げ、成功したと伝えた。衛星を地球の周回軌道に「正確に進入させた」と主張した。
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北朝鮮が22日午前0時から12月1日午前0時の間に「人工衛星」を発射すると通告していた。
政府は21日午後10時46分に全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。「北朝鮮からミサイルが発射されたとみられる」として沖縄県に避難を呼びかけた。その後に「ミサイルは10時55分ごろ、太平洋へ通過したとみられる」と通知し呼びかけを解除した。
岸田文雄首相は同日深夜、首相官邸で記者団に「少なくとも1発は沖縄上空を太平洋へ通過した。被害は確認していない」と述べた。宮沢博行防衛副大臣は22日未明、防衛省で記者団に「地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と明らかにした。
宮沢氏によると、衛星とみられる発射物は上空で分離し、一つは朝鮮半島の西350キロほどの東シナ海の予告区域外に落ちた。もう一つは沖ノ鳥島の南西1200キロ程度の太平洋上に位置する日本の排他的経済水域(EEZ)外の予告区域内に落下した。
21日夜に記者会見した松野博一官房長官は「発射について繰り返し中止を求めてきたにもかかわらず、住民の安全確保の観点からも極めて問題のある行為だ」と強調し、北朝鮮に厳重抗議したと説明。発射は国連安全保障理事会の決議違反に当たるとの認識を示した。
首相は21日夜、ミサイルの上空通過を踏まえ関係閣僚に①落下物による被害がないかの速やかな確認、②北朝鮮の今後の動向を含めた情報収集・分析の徹底、③米国や韓国などの関係諸国との連携、適時適切な対応――の3点を指示した。
Jアラートの発令は沖縄県に避難を促した8月24日以来。この時は北朝鮮が「軍事偵察衛星」を発射し失敗した。沖縄本島と宮古島の間の上空を飛行し太平洋へ通過したため避難の呼びかけを解除した。
【イスラエル、4日間戦闘休止へ 人質50人解放と引き換え】
22日の日経速報メールは報じた。
【イスタンブール=木寺もも子】イスラエルメディアによると、同国政府は22日、少なくとも人質50人の解放と引き換えに、パレスチナ自治区ガザで続くイスラム組織ハマスとの戦闘を4日間休止することを閣議決定した。ハマス側も既に「合意が近い」としており、一定期間の人道停戦や人質の解放が実現する可能性が強まった。
イスラエルは戦闘の休止に加え、パレスチナ人の囚人のうち女性や未成年者も引き換えに釈放する。ガザへの人道支援拡大や、負傷者がガザを脱出することも認めるもようだ。交渉は米国とカタールが仲介した。
政府高官の話として報じられた情報によると、解放されるのは子ども30人とその母親8人のほか、女性12人だとされる。
ハマスなどがガザに拉致したイスラエル側の人質は約240人に上るとみられる。戦闘の休止が履行されれば、さらに数十人が解放されるとの報道もある。
ただ、イスラエルメディアによると、国民は24時間以内に裁判所に対して閣議決定への異議申し立てを行える。合意がすみやかに成立、履行されるかは不透明な面もある。
閣議は21日夜(日本時間22日未明)に始まり、22日早朝まで続いた。公開された映像によるとネタニヤフ氏は冒頭、「停戦(期間)後も、戦争は続く」と述べ、一時的な戦闘休止を挟んだ後もハマスの壊滅を目指す軍事作戦は継続すると強調。合意は「厳しいが、正しい決定だ」として閣僚らに理解を求めた。
中東の衛星放送局アルジャズィーラによると、ハマスと共闘するガザの過激派「イスラム聖戦」は21日、レバノンで開いた記者会見で、交渉を巡り「ハマスと協調している」と表明した。イスラム聖戦も多数の人質を拘束しているとみられる。
人質はこれまで米国籍の母娘とイスラエルの高齢女性2人が解放されたほか、イスラエル軍が女性兵士1人を救出した。
イスラエルは21日も空爆などを続けた。ガザ当局によると、同日までの累計の死者は1万4100人を超えた。国連安全保障理事会は15日、「緊急かつ人道的な一時休止」を要請する決議案を採択した。国連総会も10月下旬、「人道的休戦」を求めていた。
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【東芝、株式併合など特別決議を承認 臨時株主総会】
22日の日経速報メールは報じた。
東芝は22日、臨時株主総会を開き、株式の非公開化に向けた株式併合や定款変更などの議案を諮り賛成多数で承認された。日本産業パートナーズ(JIP)と国内企業によるTOB(株式公開買い付け)に応募しなかった株主の株式を強制的に買い取り、東芝は12月20日に東京証券取引所への株式上場が廃止になる。
東芝は不正会計や巨額損失、アクティビスト(物言う株主)との対立など経営の混乱が長引いた。JIPは総額2兆円を投じて8〜9月にTOB(株式公開買い付け)を実施した。東芝は株主をJIPに一本化し、投資ファンド傘下で再建を目指す。
この間、以下の録画を視聴することができた。 (1)BS6報道1930「ウクライナの不協和音、政権と軍中枢の内部での反攻停滞が生む確執か。クリミヤ上陸作戦の狙いは」13日。 (2)BS6報道1930「ハマスが変えた<世界地図>、米の中政策崩壊で反米・反イが拡大。ゴミ燃やしパンを焼く…生活困窮のガザ住民は」14日。 (3)231113~変わりつつある世界(17)
2023年11月13日、前回の「変わりつつある世界(16)」を掲載してから、気になっていた記事がある。11月10日、2つの記事があった。
【食材宅配サービスのMBO】
第1が日経速報メールが報じた食材宅配サービスのMBO(経営陣が参加する買収)であり、つづけて同日、日経速報メールが報じた「進研ゼミ」である。
食材宅配サービスを手掛けるオイシックス・ラ・大地は10日、シダックスを子会社化すると発表した。シダックスがMBO(経営陣が参加する買収)で株式を非公開化した後に実施する第三者割当増資を引き受ける。原材料高や人手不足でシダックス主力の給食事業の収益が悪化する中、主力事業の効率化や不採算事業の見直しなど構造改革を急ぐ。
シダックスは志太勤一会長兼社長ら創業家の資産管理会社が、11月13日〜12月25日の期間に1株当たり800円でTOB(株式公開買い付け)を実施する。株主からシダックス株を買い取って完全子会社にする。
シダックスには食材宅配サービスを手掛けるオイシックスが、約3割を出資している。同社はMBOに賛同している。
給食業界は原材料高や水道光熱費の上昇などによって事業環境の厳しさは一段と増している。9月には学校給食などを運営するホーユー(広島市)が破産手続きを開始した。
シダックスの業績は新型コロナウイルス禍後の回復がまだ鈍い。給食などを手掛ける主力の「フードサービス事業」は、2023年3月期の営業利益が前の期比14%減の22億円と落ち込んだ。抜本的な立て直しに構造改革を急ぐ必要があると判断した。
シダックスは志太勤取締役最高顧問が1959年に富士フイルムの食堂を受託して創業。志太会長兼社長ら創業家が20%超を保有する。90年代にはカラオケ事業に進出し、一時は主力事業となったがその後に採算が悪化。18年にはカラオケ事業から撤退、19年には投資ファンド、ユニゾン・キャピタル(東京・千代田)の出資を受けて経営再建を進めていた。
22年にはオイシックスがユニゾンの持ち分をTOBで買い取り、28%を保有する筆頭株主となった。オイシックスはシダックスを持ち分法適用会社にしており、高島宏平社長がシダックスの社外取締役に就いている。
両社は法人向け給食で使うミールキットの開発など協業を進めていた。オイシックスは今夏から保育園給食事業に本格参入し、シダックスが受託運営する事業所にミールキットを試験導入するなど連携を強めている。
22年のオイシックスのTOBを巡っては、「オイシックス以外の第三者からのフード関連事業の協業提案などを検討する機会が失われる」としてシダックスの取締役会が反対を表明した。外食大手のコロワイドもシダックスへ給食事業の買収を提案するなどで各社の利害関係が複雑になった。
オイシックス以外の企業との連携可能性を調査する特別委員会や、ガバナンス(企業統治)体制を調べる調査委員会を設置することを条件に、取締役会がTOBへの意見を「中立」に変更したことでTOBが成立した経緯がある。
【ベネッセがMBO 欧ファンドと、「進研ゼミ」立て直し】
第2が「進研ゼミ」である。
ベネッセホールディングス(HD)は10日、MBO(経営陣が参加する買収)を実施すると発表した。ヨーロッパの投資ファンドEQTと組み、TOB(株式公開買い付け)を実施する。ベネッセHD株は上場廃止となる見通し。主力の通信教育「進研ゼミ」の不振が続いており、株式の非公開化で立て直しを図る。
TOBは1株2600円で実施する。9日終値(1791.5円)から808.5円(45%)のプレミアム(上乗せ幅)をつけた。全株ベースでの株式価値は約2700億円と、国内のMBOでは最大規模となる。
まずEQTが特別目的会社(SPC)を設立し、TOBなどにより約83%のベネッセHD株を約2080億円で取得する。その後、残りの約17%の株式を持つベネッセHD創業家の資産管理会社を完全子会社化する。
TOB完了後にSPCに対し創業家が出資。最終的にはEQTが6割、創業家が4割、SPC株を保有する形にする。議決権ベースでは5割ずつにする。
EQTはスウェーデンの産業・金融界に影響力を持つウォーレンバーグ家に由来する大手投資会社。2021年に日本に拠点を設置し、22年にアジア系のベアリング・プライベート・エクイティ・アジアと統合した。EQTにとって日本で初めての投資案件となる。
ベネッセHDは主力の「進研ゼミ」事業の苦戦が続いている。小学生〜高校生の会員数は23年4月時点で前年比14万人減の160万人だった。10年前と比べ約4割減少した。デジタル教材の導入などで立て直しを進めていたが、会員数減に歯止めがかからなかった。
•【関連記事】ベネッセ「進研ゼミ」、VR・ゲーム前面 元校長が主導
本業のもうけを示す連結営業利益は23年3月期で206億円と、13年3月期に比べ46%減った。介護や保育など多角化を進めるほか、22年には不採算だった語学教室の「ベルリッツ」事業の売却など構造改革を進めた。ただ、主力事業の抜本的な立て直しには非公開化が必要だと判断した。
•【関連記事】ベネッセ、「ベルリッツ」売却も 「進研ゼミ」に黄信号
ベネッセは1955年に生徒手帳などを発行する福武書店として設立した。69年に進研ゼミ高校講座の前身となる「通信教育セミナ」事業を始めた。創業家出身の福武総一郎氏が長く代表取締役を務めていたが、14年に最高顧問に退いた。
日本マクドナルドホールディングスのトップから転じた原田泳幸氏が14年に会長兼社長に就いたが、同年に個人情報漏洩問題が発覚し、会員数が減少。16年に退任した。その後もトップ交代が続いた。
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【たかが髪形、されど髪形 慶応野球「エンジョイ」の真意 森林貴彦 慶応義塾高野球部監督】
11日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・これが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい
・高いレベルの喜びは、練習や競争を乗り越えた先に
・選手との距離感はいつも悩み、言葉には気を使う
この夏の甲子園、107年ぶりの全国優勝を遂げた慶応義塾高(神奈川)のナインは笑顔の「エンジョイ・ベースボール」で汗と涙の色濃い高校野球に、新風を吹き込んだ。これからの高校野球は「勝ち」を目指しつつも、自立心を育む人材養成面などの「価値」が求められるという森林貴彦監督に、真意を聞いた。
神奈川県大会決勝で横浜、甲子園で仙台育英(宮城)という強豪を相次いで破った。「プレーボール」の言葉通り、遊び、楽しむ野球の原点に立ち返っての戴冠だった。
「夏の甲子園3回戦の広陵(広島)戦で、初回に丸田湊斗選手が三塁盗塁を決めて先制したが、サインは出していなかった。彼が自分で決めた。三盗も選択肢として準備していたが、初回から(危険を冒す)サインは出せない。私よりよほど度胸、判断力がある。勇気も要るし、根拠がないと走れない。これからもそういう場面に出合いたい」
――自分で考える楽しさを味わってほしい、と思ったきっかけは。
「高校2年の夏、上田誠監督が『二塁けん制の動きやサインを自分たちで決めてみなさい』とおっしゃった。内野手の私と投手、捕手が練習後の暗くなったグラウンドで、ああでもないこうでもないと話し合った。自分たちで物事を進めるワクワク感は高校野球の一番の思い出だ」
「チームの決め事を守り、人と同じことをするだけでは人生、面白くない。ますます価値観が多様化し、自分なりの幸せを選び取る時代になると思うので、これをやりたい、自分にとってこれが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい」
――相当の野球技術がないとエンジョイはできない。
「もちろん、ただ笑顔でやればうまくいくというものではない。頂点を目指す以上、日々の地道な苦しい練習、ライバルとの競争、試行錯誤がある。そこを乗り越えるところに、より高いレベルの喜びがある。それがエンジョイの真意だ」
「言葉には気を使っている。準々決勝の沖縄尚学戦は五回まで0-2の劣勢。前半戦終了時に『第1試合は完敗だから、第2試合を頑張ろう』と言った。同じ言葉ばかりだと、選手はまたかよ、という顔をする。新鮮な言葉がないか試合中に考えていた。あれでみんな『これからだ』となったのか、六回に逆転できた」
「ミーティングでだらだらしゃべりたくないので、試合ごとに四字熟語でテーマを伝える。『徹頭徹尾』とか『勇往邁進(まいしん)』とか。甲子園の決勝は『大願成就』。これしかない、と一番簡単に決まった」
コツは「全力で頑張るな」
――筑波大の大学院で、勝負事でしゃかりきになってはいけない、という研究成果を残した。
「頑張り度合いとパフォーマンスの関係を調べると、100%の力で走ったときに最高の速度が出るわけではない。8割の力で走ると9割の速度が出る。野球の投球でも全力で投げるより、少し力を落とす方が球速も出て、制球が定まる。全力でやるなということ。各界の達人が極意として力を抜くとおっしゃる。それと同じではないか」
「エラーをした野手や失点した投手が、取り返そうと思うのもよくない。それで取り返せるなら、そんな簡単なことはない。過去は切り捨て、未来を向いて今やれることをやる。練習試合では反省もするが、公式戦で過ぎたことを引きずっていいことはない」
――自主性は大事だが、選手任せの危うさも。
「1代前の3年生は一人ひとりが自立していた。そこで私もある程度任せたが、任せ過ぎたというか、お互いの意思疎通が足りなかった気がする。選手との距離感はいつも悩む。就任当初は私が面倒みなきゃという意識もあって、こまごま言い過ぎていたと思う。失敗は多々ある」
高校野球ではいまだに体罰案件が報告され、フェアでないプレーもみられる。勝利にとらわれ、選手の人間的成長が置き去りにされる現状は社会に通じる課題のようだ。
教育現場で無力を痛感
「(打者が横目で捕手の位置を確認する『カンニング』は)今年の甲子園でだいぶ減ったと感じたが、ゼロではない。チームではなく選手個人の問題だと思うが。高校野球の2年半は短く指導者も時間がない、急いで詰め込まないと、と思うと無理が出る。体罰を受けて育った選手が指導者になって、同じことをする。負の循環を今、食い止めないといけない」
「高校で完成する必要はなく、数年後にいい選手になってくれたらいい、という気持ちでいる。今、先生(慶応義塾幼稚舎教諭)として小学3年生を教えているが、無力を痛感するばかり。漢字、筆算、九九……。できたかなと思った次の日に子どもはできなくなる。一方、教えたことのないことを、いつのまにかできるようになっている。僕がいる意味があるのかな、と日々自問自答する。忍耐強く(成長を)待つ点で、野球の指導者としてもいいトレーニングになっている」
――理想を掲げ、変革を唱えれば風当たりも強くなる。
「チームの目標は『慶応日本一』だが、その先の目的として『恩返し』と『常識を覆す』を掲げてきた。今年の選抜大会でも『高校野球を変えたい』と言って甲子園に乗り込んだが、初戦敗退。簡単に言うな、できるわけないだろう、という声があった。ただ、それをバネにして、夏こそという思いが強まり、成長の材料になった」
――甲子園では選手たちの自由な髪形が注目された。
「いまだにそんなことが話題になるのかと残念に思う一方、これを入り口に(変化への)議論が進めばそれでいい、と思った。問題は髪形そのものより(無思慮に前例に従う)思考停止、旧態依然、上意下達の部分。高校野球はこういうものだという枠を誰かがつくり、枠の中でずっとやってきた。今年の優勝で、一石を投じることはできたかと思う」
――サインに縛られない選手は本当に育つか。
「野球がどういう人材を社会に送り出せるか、野球型の思考が今後の社会にどうマッチするのか考えると、危機感を覚える。勝つために手段を選ばないといった思考が、高校生以下の世代でも、ゆがみとして出ている。そこで打ち出したのが『成長至上主義』。ただただ勝利を目指して頑張ろう、ではなくて、一人ひとりが人間的に成長し、周りも成長させる。選手としての成長、人間としての成長が車の両輪となったら強い。それによって、実は勝利にも近づくのではないか」
「高校野球には堅苦しい部分、個性や自由が認められづらい部分がある。親の負担も大きく、(子どもに)野球が選ばれにくくなっている。甲子園は盛り上がっているようにみえて、全国の野球部や部員の数は減っている。このままの形では続かない。高校野球はスポーツの枠を超えて文化として定着し、変えるのは大変だが、我々が変われば人の育成方法なども変わるきっかけになるかもしれない。社会的な意義は大きい」
――激戦区の神奈川を勝ち抜くのは至難。優勝後、来春の選抜大会につながる試合に敗れた。
「甲子園から帰って翌々日に練習を始めたが(県大会までの)時間のなさ、慌ただしさは想像を超えていた。ただ選手たちは、また新しい気持ちでいてくれている。人生100年、自分もまだ折り返し点。選手に成長を求める以上、私自身が成長するマインドを持っていなければ。現状維持でいい、となったときは退場すべきだと思っている」
もりばやし・たかひこ 1973年東京都渋谷区生まれ。慶大法卒業後NTTへ。3年で退職し、高校野球指導者として筑波大院で指導理論を研究。2015年から母校慶応高を率い、春夏計4度甲子園出場。23年夏、107年ぶりの全国優勝に導いた。慶応幼稚舎教諭。
あえて寄り道、柔軟性養う(インタビュアーから)
慶応の選手たちが夏の甲子園を「エンジョイ」できたのは「そもそも、慶応にいる時点で半ば人生の勝ち組だから」というやっかみまじりの見方があるが、それは違うようだ。
青春まっただ中の高校生であっても野球がすべてではいけない。そう考える森林監督は慶応OBなどから幅広い分野の話を聞く機会を設けている。
政府系金融機関を辞め、瀬戸内海の島で農業にいそしむ人から「都心の大会社に勤めるだけが人生ではない」と学んだ。大リーガー・菊池雄星投手の元マネジャーから、華やかな印象と違って努力の人と聞いた。強豪校が大会準備に追われている時期に、知的障害のある生徒の硬式野球への参加を進める取り組みと連携し、合同練習を行った。
あえて寄り道し、様々な価値観に触れることで「野球オンリー」にはない心の柔軟性が養われているようだ。(編集委員 篠山正幸)
【「日本はGXに本気か」 海外マネー3300兆円が品定め 資産運用立国に挑む 開国の障壁(1)】
13日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・日本は海外からの投資を集める「運用開国」を目指す
・脱炭素に向けて産業転換を段階的に進める戦略を掲げる
・海外投資家は日本企業のGXへの向き合い方を注視
政府は海外運用会社を招く「運用開国」に乗り出した。家計金融資産2100兆円が外に出ていくばかりでは日本の成長に寄与しない。国内に投資機会をどう生むかが最大の課題だ。
【「資産運用立国に挑む」連載記事】
• ・日本株の運用会社「空洞化」 非効率な慣習、参入阻む
10月6日、首相官邸。米運用会社ブラックロックの呼びかけで中東の政府系ファンドや欧米年金など世界の機関投資家・運用会社の代表約20人が集まった。保有・運用額は計3300兆円に上る。関係者は海外勢が来日した目的を「『具体的な投資案件を見せてくれ』ということだ」と語る。
政府が掲げるのが、化石燃料からクリーンエネルギーへの産業構造の転換を目指す「グリーントランスフォーメーション(GX)」だ。欧州のような一足飛びの脱炭素でなく段階的に移行(トランジション)する戦略で、官民合わせて10年で150兆円が必要とはじく。シンガポールの政府系ファンドGICは7月、現地を訪れた自民党の片山さつき金融調査会長に「日本のGX投資の定義に関心がある」と語った。
海外マネーを呼び込もうと企業も動き始めた。9月に増資などで約2040億円を調達したJFEホールディングス。「構造改革をやり遂げ、量から質へ転換する」。調達先を海外に絞り、欧米などの投資家約100人にオンラインで訴えた。
JFEホールディングスは構造改革のため川崎市の高炉を止めた
利益の見込みやすい電気自動車向け高級鋼板の投資に公募増資、中長期の脱炭素投資に新株予約権付社債(転換社債=CB)で得た資金を充てる。川崎市の高炉を止める一方、2030年度までに脱炭素に約1兆円投じる計画だ。増資で外国人株主比率は3割と3月末の24%から高まった。
日本企業のGX関連の資金調達は増えている。資金使途を環境事業に限る環境債の発行は23年1〜10月に1兆6000億円超と、年間で最高だった21年をすでに約2割上回った。温暖化ガス排出量の多い企業による移行債も21年からの累計で約6000億円に上る。
アジアではトランジションへの関心が高く、50年までに40兆ドルの脱炭素投資の資金需要があるとみられる。日本に脱炭素マネーを集め、アジアのGX投融資の資金が行き交うハブへと育てる余地はある。
ただ、投資家は日本企業がどこまで積極姿勢に転じたのか、なお半信半疑だ。
「日本は脱炭素にどのくらい真剣なのか」。ENEOSホールディングスのもとには政府のGX戦略に確信を持てない海外投資家から多くの質問が寄せられる。同社は再生可能エネルギー開発や水素の供給網構築などに取り組むが「技術のブレークスルーの時期など不透明で、30年度以降の具体的な計画を示すのは困難」とする。
日本企業はバブル崩壊以降、設備投資や研究開発を抑えて借入金返済を優先してきた。日銀の資金循環統計によると民間企業部門(金融除く)は戦後、資金不足だったが、1998年から資金余剰の局面に転じた。海外マネーが注目する今こそ、日本が積極投資に打って出る好機となる。
GXだけでなく、省人化や農業など日本経済の課題は多い。投資機会をどれだけ増やせるか。運用立国実現のハードルは高い。【資産運用立国に挑む 第1部】
【海外新薬、国内で早期承認へ 日本人の初期治験廃止】
同じ13日の日経ニュースメールは報じた。
日本で薬を売り出すために、臨床試験(治験)の過程で日本人で安全性を別途確認しなければならない制度が原則廃止される。欧米で承認された新薬の7割は日本で承認されておらず、海外で使われている薬が日本で入手できない「ドラッグ・ロス」が生じてきた。新薬の日本での早期流通を促し、患者の不利益の解消につなげる。
厚生労働省は近く、日本人での追加的な初期治験が原則として必要ないことを記した通知を出す。数カ月以内に制度は廃止される見通しだ。
医薬品が日本国内に出回るには、3段階の治験が必要になる。1番目にあたる第1相は少数の健康な人に薬を投与して安全性を確認する。第2相は少数の患者に投与し、効き目や副作用を調べる。第3相では世界各国の多数の患者を対象にする。
第1、2相の治験は、製薬会社が新薬を開発した国でやることが多い。しかし日本で販売するには原則として、第3相に進む前に別途、日本人への初期治験にあたる第1相の追加調査が求められる。
厚労省は「国内の環境で暮らす日本人への安全性を確認するため」と説明する。だがこれは日本独特のルールで他国ではほとんど求められない。
この追加調査が妨げとなり、「ドラッグ・ロス」や海外で使用されている医薬品の日本での承認が遅れる「ドラッグ・ラグ」が深刻になっている。
厚労省は追加的な初期治験をなくしても、第3相の治験で日本人の安全性は確認されると判断した。抗がん剤など強い副作用が起こりやすい一部の薬には追加調査が残る可能性がある。
2020年時点で米国と欧州連合(EU)で承認された新薬のうち、日本では72%が未承認で数字は上昇傾向にある。09〜17年に開発された新薬で、世界で初めて承認された時期と国内承認された時期の差は54.1カ月。韓国(28.2カ月)の約2倍だ。
治験には参加者を集めるコストや時間が欠かせない。グローバルな製薬会社にはこの手間を嫌って日本での販売を断念したり、市場投入の時期を他国に比べ大幅に遅らせたりしている。
厚労省のヒアリングに対し、製薬会社は「日本人向け治験が新薬投入の障壁となっている」という声を寄せた。欧米系の製薬会社も「日本人への投与経験がないこと以外に(追加調査が必要な)理由が十分に示されておらず、欧米の本社に理解されない」と指摘した。
たとえば消化管の壁にできる悪性腫瘍である消化管間質腫瘍(GIST)は年間10万人に1人から2人程度に発症する。治療薬「アバプリチニブ」は日本では手に入らない。米国では20年1月、欧州では20年9月に承認されている。
新型コロナウイルス禍でも、日本がワクチン承認で欧米から後れをとった原因の一つが追加治験だった。
米ファイザーは、海外での大規模治験の結果をもとに20年12月にワクチンの製造の承認を申請した。だが追加治験などへの対応で承認までに2カ月ほどかかった。
厚労省はルール変更について、医薬品の開発を担う海外の製薬会社への情報発信にも力を入れる。24年度には米国に医薬品医療機器総合機構の事務所を設立し制度の周知に生かす。
製薬大手アストラゼネカ社では、世界同時開発などの取組で同社の日本でのドラッグ・ラグやロスの問題はほぼ解消している。一方、同社はベンチャー発の先端的な医薬品のライセンスを取得し、残りの治験を自社で担う場合がある。日本人への初期治験の原則廃止で、開発期間が短縮されれば「非常にポジティブに捉えられる」という。また、日本市場で発売がしやすくなることへの「大きな一歩」だと期待を寄せる。
ドラッグ・ロスやラグの解消には他にも課題がある。例えば患者が少ない希少疾患や小児がんなどはコストをかけても利益が出にくいため、製薬会社は開発を敬遠する。米国は成人用のがんの薬を開発する際には小児用も開発することを義務づけている。日本には同様の制度はない。
【小売り、食品PB比率17%で最高 イオンやセブンが新商品】
14日の日経速報メールは報じた。
小売り大手が食品など生活必需品で割安なプライベートブランド(PB)を拡充する。イオンは食品PBの半分を刷新し、セブン&アイ・ホールディングスは低価格帯PBを倍増させる。スーパーの食品販売額に占めるPB比率は10月に過去最高の約17%に高まり、店頭価格の上昇は鈍化している。物価押し上げの主軸はモノからサービスに移る。
イオンはPB「トップバリュ」で生鮮品を除いて約5千ある食品のうち2500品目を新商品に切り替える。日用品などと合わせたPB売上高を2024年2月期に前期比11%増の1兆円超に高める。セブン&アイはPBの中でも低価格シリーズ「セブン・ザ・プライス」の品目を24年2月末までに160品に倍増させる。
ベイシア(前橋市)は新しいPB「ベイシアプレミアム」を始めた。既存PBは新製品に順次切り替えて24年2月までに100品目以上を展開する計画だ。西友も生鮮食品の新PB「食の幸」で現状65種類の品目数を増やす。
一般にPBはメーカー品より1〜3割程度安い。小売業にとって稼げる商品でもある。物流や宣伝費などを抑えられるため、粗利益率は15〜20%とされるメーカー品と比べ10ポイント程度高い。
メーカー品とPBは物価高でともに値上がりしているが、消費者は安いPBにシフトしている。
日本経済新聞社と調査会社のインテージ(東京・千代田)が全国のスーパーなどから集めたPOS(販売時点情報管理)データを分析したところ、加工食品や調味料、清涼飲料、アルコール飲料などを含む食品PB(生鮮品除く)の割合は10月に16.8%になった。統計がある12年以降で最高だ。
品目別のPB比率は冷凍野菜が57%と最多で、ハムが34%、牛乳は32%だった。
PBシフトの背景には食品価格の上昇がある。帝国データバンクによると、22年の食品値上げは約2万6000品目に達し、23年は1〜10月の累計で3万品目を超えた。総務省の消費者物価指数(食料、2020年=100)も10月、東京都区部で116と21年1月(99.7)から16.3%上昇。消費者は生活必需品への節約志向を強めている。
PBシフトは物価動向にも影響する。牛乳の店頭価格の前年比上昇率は10月の19%から足元は11%に縮まった。
POSデータをもとにスーパーなどの店頭価格の動きを示す「日経ナウキャスト日次物価指数」をみると、11月12日時点で前年比6.7%(7日平均)上昇したものの、今年8月のピーク(同9.2%)に比べ鈍化した。
その中で物価全体を下がりにくくしているのが旅行やレジャーなどのサービス価格だ。日本のサービス価格は長らく低迷していたが、9月は上昇率が2%に高まった。
サービス価格は賃上げの影響を受けやすい。足元で賃上げは物価上昇を下回っており、実質賃金は9月まで18カ月連続でマイナスだった。物価を下支えするサービス価格の腰折れを防ぐには、消費者の財布のひもを緩める継続的な賃上げが不可欠だ。
24年の春季労使交渉に向け連合が要求方針を発表した。サントリーホールディングスなど交渉が本格化する前に賃上げ方針を表明するところも出ている。企業の継続的な賃上げ力が問われる局面だ。(浅山亮、マクロ経済エディター 松尾洋平)
【エクソン、リチウム生産へ 30年までにEV電池100万台分】
同じ14日の日経速報メールは報じた。
【ヒューストン=花房良祐】石油メジャーの米エクソンモービルは13日、米南部アーカンソー州で2027年から電気自動車(EV)電池用のリチウムを生産すると発表した。北米以外での生産も視野に入れ、30年までに年100万台分のEV用電池のリチウムを供給。世界有数のEV向けリチウム供給会社を目指す。
石油メジャーがリチウムの大規模生産に乗り出すのは初めて。EVや電池のメーカーと供給に向けた協議に入った。23年初めにアーカンソー州の12万エーカー(約485平方キロメートル)の敷地で採掘する権利を獲得した。
石油・天然ガスの掘削技術を活用して地下約3000メートルからリチウムを含有する塩水をくみあげる。従来より環境負荷の低い新技術でリチウムを分離し、現場のプラントで電池用の素材に加工する。30年までに年約10万トン(炭酸リチウム換算)を生産する見込み。
リチウムはレアメタル(希少金属)で、リチウムイオン電池の製造に使用する。EVの増加などでリチウム需要は30年までに4倍になる見通しで、供給不足の懸念がある。低炭素部門トップのダン・アマン氏は「リチウムはエネルギー転換に必要で、エクソンは(経済の)電化に向けて主導的な役割を果たす」とコメントした。
米地質調査所(USGS)によると、22年の世界のリチウム生産のうちオーストラリア、南米チリ、中国の3カ国で合計約9割を占め、偏っている。一方、米国の生産量はほとんどない。加えて、従来技術によるリチウムの精錬では中国が世界の大半を担っている。米国で生産すればサプライチェーン(供給網)のリスクも低下する。
EVと電池の普及に伴い、レアメタルの生産・精錬が少数の国に偏在している課題が浮き彫りになっており、バイデン政権は米国での生産を支援する。22年には国産の電池素材を使用したEVの購入補助制度を導入した。
エクソンは太陽光・風力発電について石油開発との相乗効果が見込めないとして投資に慎重な一方、二酸化炭素を回収して地下に貯留するといった石油開発の掘削技術がいかせる低炭素ビジネスには積極的だ。地下を掘削するリチウム生産も石油開発の技術が活用できるとみている。
天候に左右される太陽光・風力発電は発電が不安定なため、蓄電池との組み合わせが不可欠だ。このため再生エネの普及に伴い蓄電池は増加する見通しで、リチウムの生産会社がエネルギー転換の時代を勝ち抜くとの見方が高まっている。
米S&Pグローバルのダニエル・ヤーギン副会長は「エネルギー業界は『ビッグ・オイル』(石油メジャー)から『ビッグ・ショベル』(大手鉱山会社)の時代に移っていく」と話している。
【米下院、つなぎ予算案を可決 政府閉鎖は回避へ】
15日の日経速報メールは報じた。
【ワシントン=高見浩輔】米連邦議会下院は14日、予算執行を現行水準のまま2024年1〜2月まで続ける「つなぎ予算案」を可決した。上院でもすでに与野党のトップが法案への支持を表明している。政府閉鎖の回避に向けて大きく前進した。
米議会は2024会計年度(23年10月〜24年9月)の予算案をまだ策定しておらず、9月末に11月17日までのつなぎ予算を成立させて政府機関の閉鎖を回避していた。期限が近づき、再延長が必要になっている。
•【関連記事】米政府閉鎖、土壇場で回避 11月までのつなぎ予算成立
つなぎ予算案は、野党・共和党が過半数を握る下院で10月に新たに議長になったジョンソン氏が提案した。軍事や退役軍人、交通、住宅などの予算は24年1月19日まで、それ以外は2月2日まで執行を続けることができる。
民主党の下院議員らがジョンソン氏の案に賛成したのは、懸念していた大幅な歳出削減が盛り込まれなかったためだ。譲歩した内容の法案を蹴れば、政府閉鎖の責任を民主側が背負うリスクもあった。
•【関連記事】米下院新議長に保守派ジョンソン氏 内紛抱え手腕未知数
上院でも民主トップのシューマー院内総務が法案を支持する考えを示している。上院を通過すれば法案はバイデン大統領の署名を経て成立する公算が大きい。
下院共和はわずかな議席数の差で優位を保っているため、強硬派の一部が反対するだけで法案が通らない機能不全に陥っていた。マッカーシー前議長は9月末、民主の協力を得て11月17日までのつなぎ予算案を可決させたが、その直後に解任された。
強硬派議員らは今回の法案にも反対したが、議長の解任動議に踏み込む動きは今のところ起きていない。前議長の解任後、下院共和では議長のなり手が3週間決まらなかった。
複数の米メディアによると、ジョンソン氏はひとまず政府閉鎖を避けつつ、年明けにかけて調整する24会計年度予算案で歳出削減を強く求める構えだ。
つなぎ予算の期限を2つに分けたのは、バイデン政権と民主党が「包括予算案」と呼ばれる一括法案で予算案を通すのを回避する狙いがある。米国の予算案は本来、12本の予算案を個別に成立させる必要がある。
政府閉鎖を回避できれば今後は予算案に盛り込まなかったウクライナ支援が大きな議題となる。共和内には国境警備など国内に資金を振り向けるべきだと反発が大きい。与野党で意見の隔たりは大きい。
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。前嶋和弘上智大学総合グローバル学部 教授
ひとこと解説
共和党の強硬派の自由議連の案だった「2段階予算案」を共和党穏健派と民主党側が拒否できずに通過。民主党側の反対は2,共和党側は93。さらに強硬な共和党議員が歳出削減などが入っていないため拒否。「強硬派議長(ジョンソン)の方が強硬派の反対が少なくなる分だけつなぎ予算成立の可能性が高くなるかもしれない」と何度かいろいろなところでお伝えしましたが、そのとおりになりました。 指導力が全く未知数だったジョンソン下院議長にとっては、最初の大きな仕事。「妥協を許さない」強硬派だったはずのジョンソン。議員個人としてはおそらく民主党との徹底した財政対決を望んでいたはずですが、現実的に政府一時閉鎖回避を重視。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
同じ15日のニュースメールは次のように報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は紅葉シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる訪日客が増える。
主要国23か国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で(2.7%増)だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店のインバウンド売上高が3201億円と、18年同期を14%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
【イスラエル軍、ガザ北部シファ病院で「作戦実行中」】
同じ15日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は15日、パレスチナ自治区ガザ北部にある地区最大のシファ病院で「特定のエリアで、精密かつ標的を絞った作戦を行っている」と明らかにした。軍は同病院やその周辺の地下にイスラム組織ハマスの司令部があると主張しており「病院内にいるすべてのハマスのテロリストに投降を求める」と強調した。
米CNNは同日、イスラエル軍の戦車がシファ病院の敷地内に入ったとの目撃情報を報じた。国連機関によると、シファ病院には12日時点で患者が600〜650人、避難住民が約1500人いたという。
イスラエル軍は作戦部隊に医療チームやアラビア語を話す兵士を同行させていると説明し「民間人に危害が及ばないよう配慮している」と強調した。作戦前日に「ガザの関係当局に対し、病院内での軍事活動を12時間以内に中止するよう再度伝えたが、応じなかった」と主張した。
一方、ハマスは病院の軍事利用を否定している。ロイター通信によると、ハマスは15日、病院突入の責任はイスラエルと米国の双方にあると非難する声明を出した。
イスラエル軍は14日、シファ病院の近くにありハマスの重要拠点だとするシャティ難民キャンプのほか、警察本部など複数の施設を制圧したと発表した。13日にはガザ北部のランティシ病院にも部隊が踏み込み、病院地下に武器の保管や人質の拘束などハマスの作戦に利用された痕跡があったと主張していた。
ガザ北部ではシファ病院などが燃料不足で機能を停止するなど、医療体制が崩壊しつつある。バイデン米大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に「病院は守られなければならない」と強調していた。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は14日、ハマスがシファ病院を含む複数の病院を軍事利用していることを確認したと明らかにし「戦争犯罪だ」との認識を示した。ロイター通信が伝えた。
ホワイトハウスはバイデン氏とイスラエルのネタニヤフ首相が14日に電話会談したと発表した。ハマスが拘束する人質の救出や病院の状況について協議したとみられる。
【日経平均3万3000円乗せ 陰の主役はNVIDIA】
同じ15日の日経ニュースメールは報じた。
15日の東京株式市場で日経平均株価は大幅続伸し、前日比823円77銭(2.52%)高の3万3519円70銭で取引を終えた。前日比の上げ幅は2023年で最大となり、節目の3万3000円をおよそ2カ月ぶりに上回った。米利上げの打ち止め観測が強まり、国内でも金利高が逆風となるグロース(成長)株が買い戻された。ハイテク株主導の相場の陰の主役と声が上がるのが、米エヌビディアだ。
15日は半導体検査装置大手のアドバンテスト株が一時8%高まで買い進められるなど、半導体関連株の上昇が目立っている。半導体製造装置の東京エレクトロン株とあわせて日経平均を170円強押し上げた。
アドテストはPER(株価収益率)が60倍に迫り、割高株の筆頭だ。将来の高い利益成長が株価に織り込まれている分、金利上昇は現在価値に引き直す際の割引率を高めるため、株価の下押しにつながりやすい。
14日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びは市場予想以上に鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止め観測が広がった。10月下旬に一時5%を超えていた米長期金利は4.5%を下回り、割高株への逆風は弱まる。アドテスト株は11月1日に付けた直近安値から半月で3割上昇した。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
15日の日経速報メールは報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は行楽シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる客が増える。
主要国23カ国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で2.7%増だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店の4〜9月のインバウンド売上高が353億円と、18年同期を17%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
【関連記事】
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【いすゞ、電池交換3分のEVトラック 自前で取り換え拠点】
同じ15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
いすゞ自動車は電池交換式電気自動車(EV)トラックの事業化に乗り出す。3分で電池交換が可能な車両を開発し、取り換えを担うインフラも自社で運用する。EVは充電に時間がかかり、配送効率が落ちるのが課題だ。運転手不足問題の解消につながる電池交換式の普及を後押しするため、車両開発からインフラまで一貫して担う。
いすゞは電池を交換する「無人ステーション」をこのほど開発した。物流企業の配送拠点や給油所に売り込み、設置することを想定する。コンビニエンスストアへの荷物配送やゴミ収集車などに使う小型EVトラック「エルフ」をベースにした車両を開発した上で、2025年に実証実験を始める。
ステーションではロボットが電池を取り外し、充電済みの電池と交換する。交換時間は最短で2分30秒程度としており、トラックが再び走行可能になるまで3分以内ですむという。充電済みの電池を用意したり、設備の保守や点検をしたりといったステーションの運用もいすゞが自ら手がける可能性がある。
充電式のEVトラックは充電に10時間程度かかり、軽油を燃料とするディーゼル車と比べて配送効率が低いのが課題となっている。商用車では電動化が遅れており、調査会社の矢野経済研究所によると、世界の商用車販売台数に占める電動化率(ハイブリッドなど含む)は2021年時点でも1.2%にとどまる。
電池交換式であれば、短時間の交換で配送を続けることができる。物流業界ではトラックやバスなどの運転手に残業規制が適用され、人手不足が見込まれる「2024年問題」に直面している。電池交換式が広がれば、脱炭素の対応と配送効率の維持への両立が期待できるとされている。
既に軽自動車の商用車では開発が進む。ホンダはヤマト運輸と11月から交換式電池を使った軽商用EVによる集配業務の実証実験を開始すると発表している。ホンダの軽EV「MEV-VAN Concept(エムイーブイバン コンセプト)」を活用し、太陽光発電の電力を使う。交換式電池でも積載量などの性能を維持できるかどうかを調べる。
ホンダの交換式電池は、自社の電動スクーターや建機メーカーのコマツと共同開発した電動小型ショベルに搭載されている。コマツは小規模な土木・建築工事や配管工事などでのニーズを見込んでいる。車以外でも用途拡大が進んでおり、国内の新興EVメーカーの間でも交換式電池の導入が進む可能性がある。
交換式電池は中国やインドなど新興国で普及している。中国の新興EV大手、上海蔚来汽車(NIO)は充電設備の設置と並行し、電池を交換する拠点を増やしている。(淡海美帆)
【米中首脳、軍事対話再開で合意 習氏「世界に重い責任」】
16日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・1年ぶりの対面会談が終了。昼食など含め4時間強
・AIの政府間対話や気候変動対策の作業部会設置を確認
・習氏は台湾統一に意欲。米国の台湾への関与けん制
【サンフランシスコ=田島如生、坂口幸裕】バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は15日午前(日本時間16日未明)、米西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で会談した。途絶えている米中両軍高官の対話再開で合意した。意思疎通を維持し、台湾周辺や南シナ海での偶発的な衝突を防ぐ狙いがある。
•【関連記事】バイデン氏「習近平氏は独裁者」 米中首脳会談直後に明言
両首脳が対面で会うのは1年ぶり。会談はサンフランシスコ中心部から40キロほど南にあるカリフォルニア州ウッドサイドにある「ファイロリ」邸で開いた。会談は4時間強で、両首脳は少人数での昼食会後、庭園を散歩した。
バイデン氏は会談後の記者会見で「建設的で生産的な議論だった」と述べた。米中の競争が「紛争に発展しないように(関係を)合理的で管理可能なものにするのが私の責任だ」と表明。滞っていた軍事対話の再開で合意した重要性を訴えた。
中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えない一方、米国が台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を維持すると改めて明言した。2024年1月の台湾総統選で中国が選挙介入しないよう警告した。
習氏は会談で「世界経済は回復し始めたが、その勢いは不十分だ。産業サプライチェーン(供給網)の混乱や保護主義の台頭といった問題は顕著になっている」と言明した。経済安全保障を理由に先端半導体などの対中輸出・投資規制を主導する米国を批判した。
習氏は地球は十分に大きく、米中が共に成功するのは可能だとも指摘した。「私とバイデン大統領は中米関係のかじ取り役であり、国民、世界、そして歴史に対して重い責任をもつ」と語った。
米政府や中国国営中央テレビ(CCTV)によると、両首脳は両軍の高官協議のほか、国防当局の対話や海上軍事安全保障メカニズム会議を再開させると確かめた。両軍の戦闘区域のトップ同士で連絡を取り合うことも申し合わせた。
米政府高官は、オースティン米国防長官と中国側の軍高官が「数週間以内」に会談する方向で調整すると説明した。米中は台湾海峡や南シナ海で軍事的な緊張を強めている。両国の軍事対話は22年8月、当時のペロシ下院議長が台湾を訪れたのを境に滞った。
バイデン氏は会談で、台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を改めて主張した。CCTVによると、習氏は台湾について「中米関係の最も重要かつ最も敏感な問題だ」と説明し「必ず統一する」と強調した。
両首脳はAIに関する政府間対話を立ち上げると確認した。AIの軍事利用への懸念が国際的に広がっていることが背景にある。気候変動対策に関する作業部会の設置でも合意した。
麻薬対策での協力に向けた作業部会を立ち上げることも申し合わせた。医療用麻薬フェンタニルの過剰摂取による死者が米国内で激増しているのを踏まえた。中国は原料となる化学物質の主要製造国だ。
習氏は先端半導体などの対中輸出・投資規制に関し「中国の正当な利益を著しく損ねている」と問題視した。「中国の科学技術の抑圧は中国の質の高い発展を抑制することだ」と話し、規制措置の撤廃を要求した。
習氏の訪米は17年4月以来、6年半ぶりとなる。サンフランシスコ滞在中、岸田文雄首相との会談も調整している。15日に開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での演説も予定する。
米中首脳会談は22年11月にインドネシア・バリ島で開いて以来だ。両首脳は当時、偶発的な衝突防止に向けて対話を続けると合意した。米軍が23年2月、米本土上空に飛来した中国の偵察気球を撃墜したことをきっかけに両国関係は冷え込んだ。【関連記事】
•バイデン・習氏、変質した「個人的関係」 起点は12年前
•米大統領「危機時に電話できる関係に」 米中首脳会談で
•米中首脳会談の焦点は? 軍事対話再開探る、習氏が訪米
【日中首脳が1年ぶり会談 「戦略的互恵関係」を再確認】
17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【サンフランシスコ=秋山裕之】岸田文雄首相は16日(日本時間17日午前)に訪問先のサンフランシスコで中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と1時間ほど会談した。個々の懸案で対立しても共通利益の追求を優先する「戦略的互恵関係」を再確認した。
•【関連記事】日中の「戦略的互恵関係」、6年ぶり復活が示す難路
日中首脳会談は2022年11月にバンコクで開いて以来、1年ぶり。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でともに訪米する機会を利用した。15日にはバイデン米大統領が習氏と会い、両軍高官の対話再開で合意している。
首相は会談の冒頭に「日中は隣国として共存、繁栄し、地域と国際社会をリードする大国として世界の平和と繁栄に貢献していく責任を有する」と強調した。「より明るい日中関係の未来を切り開けるように力を合わせていきたい」と述べた。
習氏は両国の平和共存は正しい方向性だと指摘し「共通利益を重視し、相違を適切に管理すべきだ」と主張した。「戦略的互恵関係の位置づけを再確認し、新たな意味を与え、新時代の要求に合う中日関係の構築に力を尽くすべきだ」とも語った。
戦略的互恵関係は06年に当時の安倍晋三首相が訪中し、胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席との会談で打ち出した概念だ。胡主席が08年に国賓で来日し、福田康夫首相と「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明をまとめた。
日中は政治体制が異なり、日米のように民主主義といった共通の価値観を共有しにくい。解決困難な課題で対立を深めず共通利益を求めることで、安定的な関係を維持する狙いがある。
両首脳は東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出について解決を目指す方針で一致した。首相は「専門家のレベルで科学に立脚した議論を行う」と述べた。中国は「核汚染水」と呼んで反発していた。
首相は中国による日本産水産物の輸入禁止を撤回するよう求めた。中国当局に逮捕された邦人の早期解放なども主張した。
沖縄県・尖閣諸島周辺で続く中国公船による領海侵入をめぐっては東シナ海での偶発的な衝突回避を話し合った。日本の排他的経済水域(EEZ)に中国が設置したブイの即時撤去を求めた。
中国は台湾について譲れない「核心的利益」と位置づけ、日本に関与しないように求めている。首相は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
日中ハイレベル経済対話を適切な時期に行うことでも一致した。気候変動対策など地球規模の共通課題で協力を申し合わせた。
2国間の問題でも意思疎通を強化する。日中の通商当局間で重要鉱物の輸出管理といった貿易問題に関する対話枠組みを新設する。企業関係者の安全確保も含めたビジネス環境に関する協議体も創設する。
首相は訪米に先立ち、対中外交について「建設的かつ安定的な関係を維持するため、お互いの努力によって関係を維持する基本方針は変わっていない」と言明している。
日中関係をめぐっては岸田首相と中国の李強(リー・チャン)首相が9月にインドネシアで立ち話した。日中平和友好条約発効45周年の10月23日にメッセージを交換した。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。深川由起子早稲田大学政治経済学術院 教授
分析・考察
中国に限らず、グローバルサウスに限らず、「日本はアメリカの従属変数」というレッテルはかなり粘着力を持ちます。写真の習主席の表情もそのもの。G7などマルチのレバレッジ依存はやむを得ないとしても、地域研究の没落と共に日本人の中国研究者数が激減し、本来、欧米に比しての強みだった「中国の内側論理から考える」能力の低下がバイの関係構築を不利にしている感があります。かといって欧米のような情報機関の力が弱く、民間企業の持つ情報との密かな連携も希薄。これでは情報戦について行けません。「あなたは「井戸を掘った人を忘れない」国なのでは?」と鋭く切り返せる日本にならないといけないのでは。
【パナソニックHD、自動車部品会社売却へ 米ファンドに】
17日の日経速報メールは報じた。
パナソニックホールディングス(HD)は17日、自動車部品を手掛けるパナソニックオートモーティブシステムズの売却に関し米投資 ファンド大手アポロ・グローバル・マネジメントのグループ会社と基本合意したと発表した。パナソニックHDがパナソニックオートの株式の50〜80%をアポロが投資助言をするファンドに売却する。
パ ナソニックHDは電気自動車(EV)向け電池などを成長領域に位置づけ、重点的に投資する方針を示している。成長領域以外の事業の見直しを進めており、今回の決定はその一環になる。
売却によりパナソニックオートはパナソニックHDの完全子会社から持ち分法適用会社になる見通し。2024年3月末までの正式契約締結を目指す。パナソニックHDが売却する株式数をこれから決めるため売却額は未定だが、数千億円とみられる。
パナソニックオートは自動車のコックピットシステムや電子部品、車載充電器事業などを手掛ける。2022年度の売上高は1兆2975 億円、営業利益は162億円だった。グループ従業員数は約3万人。27年度に売上高営業利益率を5%(22年度は1.2%)にする目標を掲げているが、車載充電器事業の赤字などで近年は収益力が低下している。
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自動車業界は電動化や自動運転など「CASE」と呼ばれる技術への対応など変革を求められている。新技術に対応し、競争力を高めるためには多額の研究開発費が必要になる。パナソニックHDはパナソニックオートが単独で投資資金をまかなうのは難しいと判断し、ファンドと連携することを決めた。
パナソニックHDは17日、パナソニックオートの売却後も「グループの一員として社名やブランドは残す」とコメントした。
パナソニックHDの楠見雄規社長は5月のグループ戦略説明会で、23年度は「事業ポートフォリオの見直しを視野に入れた経営を進める」と述べ、グループ事業の売却の可能性を示唆していた。
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【伊藤忠、ビッグモーター買収検討 創業家関与なしが条件】
同じ17日の日経速報メールは報じた。
伊藤忠商事と国内の企業再生ファンドが中古車販売大手ビッグモーター(東京都多摩市)の買収を検討していることが17日、わかった。ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と組み、買収に必要なデューデリジェンス(資産査定)の独占契約を結んだと発表した。 伊藤忠とJWP連合は契約に当たり、ビッグモーターとの間で創業家が経営に関与しないことで大筋合意した。
伊藤忠と子会社で燃料商社の伊藤忠エネクス、JWPの3社連合が17日、ビッグモーターとデューデリジェンスを独占で実施することで基本合意書を結んだ。3社はビッグモーターの経営状況を詳細に分析し、2024年春までに再建を支援するかを最終決定する。
ビッグモーターは未上場で、同社株は創業者の兼重宏行氏らの資産管理会社が保有している。23年7月に自動車保険金の水増し請求などの不祥事が発覚し、顧客離れが進んでいる。中古車販売は一時、例年に比べて6割以上減った。現在も月次で赤字が続いている。
同社は現預金や売掛金などの流動資産を数百億円抱える一方、従業員への賃金支払いなどで資金の流出が続く。銀行団は借入金の借り換えに応じないなど資金繰りに苦慮しており、自主再建が困難な状況だ。
ビッグモーターはコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの協力を仰ぎ、経営再建を急いでいる。支援企業を早期に確定し経営の立て直しを目指すが、不祥事の影響が長引き難航していた。
伊藤忠はグループで自動車リース事業を手掛けているほか、ニッポンレンタカーサービスを傘下に持つ東京センチュリーを持ち分法適用会社にしている。輸入車・中古車販売大手のヤナセも抱え、自動車ビジネスとのつながりが深い。グループとの相乗効果が高い可能性があると判断し、支援に名乗りを上げた。
焦点は買収価格や事業譲渡の対象だ。ビッグモーターを巡っては顧客の車体を故意に傷つけるなどして、損害保険会社に保険金を水増し請求する不正行為が横行していた。
国土交通省は10月、ビッグモーターが全国に持つ135工場のうち34工場で自動車整備を事業停止にするなどの行政処分を出した。金融庁も11月末に保険代理店登録を取り消す行政処分の実施方針を表明している。
中古車の買い取りや販売でも1000件以上のトラブルが生じ、複数の民事訴訟を抱えている。10月末には経営不振で東京都や埼玉県で計9店舗を閉鎖した。伊藤忠はビッグモーターの支援を通じ、自社のブランドイメージが毀損しないかも慎重に検討する。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。佐藤一郎国立情報学研究所 教授 別の視点
アルトマン氏はOpenAIだけでなく、生成AIの顔ともいえる人物だっただけに、同氏の解任は衝撃です。さて、この解任はAIのガバナンスに一石を与えるのではないでしょうか。企業が適切にAIを提供・利用するには、企業のAIに関わるガバナンスが重要視されていますが、企業トップが突如解任されるとなると、ガバナンスの仕組みの再考が求められることになります。さてアルトマン氏はAIの規制には積極的であったといえて、今回の解任でOpenAIのAI規制のスタンスが弱まると、AIに対する規制は企業側のガバナンスだけで十分なのか、法的規制が必要などの声が強くなるかもしれません。
【創価学会の池田大作名誉会長が死去、95歳 公明党を結成】
18日の日経速報メールは報じた。
宗教法人創価学会名誉会長で、同会の戦後の飛躍的な拡大を指導した池田大作(いけだ・だいさく)氏が11月15日夜、老衰のため死去した。95歳だった。創価学会が18日発表した。葬儀は近親者で行った。お別れの会を行うが、日取りなどは未定。
東京都生まれ。1947年8月、創価学会の戸田城聖第2代会長に出会い、19歳で入会した。54年には青年部参謀室長に就任。学会の政治進出の本格化に伴い、選挙運動を組織、指導するようになった。
60年に32歳で第3代会長に就任。池田氏の指導下で学会は64年、公明党を結成した。
70年代以降は海外布教と世界平和を目指す国際交流に力を注ぎ、中国の周恩来首相、旧ソ連のゴルバチョフ大統領(いずれも当時)ら各国の指導者や識者と意見交換するなど国内外で組織を拡大した。
学会ホームページによると、現在の日本国内の会員数は827万世帯。海外では世界192カ国・地域に280万人の会員がいる。
75年に創価学会インタナショナル(SGI)会長、79年に創価学会名誉会長に就任。教育・文化面では67年に創価学園、71年に創価大を開設した。著書に「人間革命」「仏法と宇宙を語る」など。海外要人との対談集も多数。
83年に国連平和賞を受賞したほか、モスクワ大学やボローニャ大学といった海外の大学から名誉博士号などの称号も贈られた。公の場に姿を見せることが少なくなった後も平和運動に力を入れ、近年はロシアに侵攻されたウクライナの平和回復や核拡散防止に関する提言を発表した。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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【マンション建て替えやすく 借り主退去、請求後半年で】
19日の日経ニュースメールは次のように報じた。
首都圏を中心に増える老朽マンションの再生が社会的な課題となっている。建て替え予定の分譲マンションに借り主が居座り工事できないケースがあり、決議に基づいて6カ月後の立ち退きを請求できるようにする。政府は決議要件緩和などと合わせた制度案を近く示し、2024年の通常国会への区分所有法改正案の提出をめざす。
東京都新宿区の住宅街に30年以上をかけて建て替えにこぎ着けたマンションがある。1930年代に建築された物件で、建物の傾きや雨漏りから60年代に建て替えの検討が始まった。
手続きは難航した。高齢の所有者から「自分が生きている間は壊さないでほしい」「歴史的な建物を残してほしい」という声が出て、合意形成ができなかった。所有者の賛成を得て建て替えを決議し竣工に至ったのは2005年のことだった。
決議には所在の分からない所有者も含めた5分の4以上の賛成が必要だ。高度経済成長期に大量供給されたマンションの老朽化が急速に進むが、現行法は建て替えに高いハードルを設けている。
法相の諮問機関の法制審議会は、分譲マンションの建て替えなどを円滑にする方策を検討してきた。耐震性などに問題がある場合については、所在の明らかな人を対象に4分の3の賛成に引き下げる案を出している。
建て替えが決まったとしても、障壁はもう一つある。長期間契約の借り主が反対し、建て替え工事ができないケースがある。現行法では契約違反などの正当な理由がなければ退去の義務はない。所有者は借り主と個別に交渉する必要がある。
新制度の導入後は個別交渉で解決しない場合でも、契約の終了を請求できるようになる。所有者が立ち退き費用などを補償することで賃貸借契約を解除できる。
法制審議会は21日に新制度を盛った要綱案のたたき台を提示する方針だ。政府は議論をもとに区分所有法の改正案をとりまとめ、24年の通常国会に提出する見通し。
旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所の重水丈人所長は「立ち退かないと建て替えできないため、借り主の同意が重要だ。所有者は大変苦労している」と話す。追加的な課題として借り主への補償に関するガイドラインの整備が必要だと指摘した。
国土交通省によると、築40年以上の分譲マンションは22年末でおよそ126万戸ある。42年末には22年末の3.5倍の445万戸にまで増加する見込みだ。
一方、建て替えの累計実績は23年3月時点でおよそ2万3000戸にとどまる。
東京カンテイ市場調査部の高橋雅之主任研究員は「要件緩和で建て替え需要にはプラスの方向に働く」と語る。資材の高騰で建て替え費用がかさむ可能性があり「所得水準や年齢層が多様な大規模マンションでは合意形成が図りにくい」との見方を示す。
マンションの建物や敷地の売却、取り壊しやリノベーション(大規模改修)の決定も多数決で可能にする。現行法で実行するには所有者全員の賛成が必要だが、建て替えと同様に耐震性などに問題があれば4分の3の多数決で決められるようにする。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
大槻奈那名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
今後の展望
所有権尊重の所有権尊重の観点等から進みにくかった建て替え決議に対する大きな進展です。但し、実行段階でのハードルはまだ様々残されています。 例えば借り主の退去については、立ち退き費用補償の水準をどうするのか。また、建て替えの賛成票も集まり難くなっている可能性があります。住人の一層の高齢化や、家賃上昇で建て替え中の移転費用の増加が課題です。更に、近年では室内のリノベーションが広く普及し、その技術が高額化していることから、一旦リノベした世帯はそれを無駄にするような建て替え決議には賛成しない可能性があります。一定の年数を経たマンションでは、できるだけ早い時期から理事会等で話し合いを始める必要があるでしょう。
2023年11月20日 8:38
【紅海で貨物船乗っ取り 日本郵船が運航「日本人いない」】
19日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は19日、イエメン近くの紅海で貨物船が乗っ取られたと発表した。日本郵船によると、拿捕(だほ)された船はバハマ船籍の自動車輸送船「ギャラクシー・リーダー」で同社がチャーターしていた。
日本郵船は「拿捕されたのは事実。乗組員の安全を確認中」とコメントした。乗組員はブルガリア人、フィリピン人など25人で日本人はいないという。国土交通省は19日午後9時半ごろ日本郵船から連絡を受け、詳しい情報を確認中だとしている。
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イスラエル首相府は、この船舶は英国企業が所有し日本企業が運航しており、乗っ取りを実行したのはイエメンの親イラン武装組織フーシだと主張した。乗っ取りはイランの指導を受けたもので「イランによる国際船舶への攻撃を強く非難する」と強調した。乗組員にイスラエル人はいないと説明している。
イスラエル軍によると、貨物船はトルコからインドに向かう途中だった。船舶情報会社マリントラフィックによると、サウジアラビアとスーダンの間の海域で信号を確認したのを最後に消息がわからなくなっている。
ロイター通信はこれに先立ち、フーシの広報担当者が同日、イスラエル企業が所有・運航するすべての船舶を標的にすると表明したと伝えた。
イスラエル軍は10月からパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと交戦しており、フーシはイスラエルへミサイルなどによる攻撃をしかけてきた。
(カイロ=久門武史、逸見純也)
▼フーシ イエメン北部を活動拠点とするイスラム教シーア派の武装組織。指導者はアブドルマリク・フーシ氏。2011年に中東で広がった民主化運動「アラブの春」以降に台頭し、15年にクーデターで首都サヌアを占領するなど国内の大半を支配下に置いている。
イエメンではサウジアラビアなどが支援する暫定政権と、イランが支援するフーシの内戦が続いている。3月にサウジとイランが外交関係を正常化することで合意すると、サウジとフーシの停戦協議も始まり、緊張緩和の機運が高まっていた。
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【元OpenAIのアルトマン氏ら、Microsoft入りへ】
20日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=山田遼太郎】米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は19日、米新興企業オープンAIのCEOを解任されたサム・アルトマン氏がマイクロソフトに加わると明らかにした。同社に新設する人工知能(AI)の先進的な研究チームを率いるという。
ナデラ氏が19日深夜(米西部時間)にX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。オープンAIの共同創業者の1人で、アルトマン氏とともに退社を表明したグレッグ・ブロックマン元社長もマイクロソフトに入る。複数のオープンAI従業員もマイクロソフトに移る。
ナデラ氏は投稿で「我々はオープンAIとの提携を続け、製品のロードマップに自信を持っている」と強調した。エメット・シア氏が暫定CEOに就くオープンAIについて「新経営陣と共に働くのを楽しみにしている」とも述べ、巨額を投資するオープンAIとの関係を維持する考えを強調した。
マイクロソフトCEOのナデラ氏はXへの投稿でアルトマン氏らがマイクロソフトに入社すると明らかにした
ナデラ氏によると、アルトマン氏はマイクロソフト社内で新たに設置されるAI研究のグループのCEOに就くという。
アルトマン氏は同日、ナデラ氏の投稿に「使命は続く」とXで応じ、マイクロソフトに加わることを認めるかたちとなった。
アルトマン氏は17日にオープンAIのCEOを突如解任された。同氏を支持する投資家や従業員が多く、復帰に向けた交渉があったが19日夜までに合意に至らなかった。オープンAIはゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」元トップのシア氏を暫定CEOに起用した。
アルトマン氏やブロックマン氏の退任に続き、オープンAIの多くの従業員が退社の意向を示したことから去就に注目が集まっていた。
マイクロソフトは米西部ワシントン州シアトルで開いた技術イベント「イグナイト」で15日、オープンAIが手がける生成AIの技術基盤の最新版「GPT-4ターボ」の企業向け提供などを発表したばかりだ。
対話型AI「Chat(チャット)GPT」で知られる同社との提携を経営戦略の中核に据え、業務ソフトの操作を支援する「コパイロット」など、AI技術を矢継ぎ早に自社サービスに組み込んだ。クラウド基盤「アジュール」とオープンAIの技術の連携も進めた。
オープンAIから人材が流出し、アルトマン氏が独立する事態となれば、マイクロソフトのAI戦略が見直しを迫られるほか、投資家らから批判を招くのは避けられない情勢だった。
【OpenAIの社員9割、退社も辞さず 取締役会に総退陣迫る】
21日の日経速報メールは報じた。
シリコンバレー=渡辺直樹】米オープンAIの社員らは20日、取締役会(理事会)に総退陣を求め、解任したサム・アルトマン氏らを 復帰させなければ、自分たちもそろって退社すると迫る文書を提出した。770人いる社員のうち、すでに9割超にあたる約730人が署名した。人工知能(AI)の有望企業をめぐる混乱は社員の「反乱」という重大な局面に発展しはじめた。
日本経済新聞が入手した文書によると、要求は取締役会に向けている。現在の取締役全員が辞任した上で、独立した新任者を指名し、アルトマン元CEOとグレッグ・ブロックマン前社長を復帰させるよう求めている。
受け入れられなければ、大半の従業員はアルトマン氏らが手がける「マイクロソフトの新しい子会社に参加することを選択するかもしれない」と迫っている。「(取締役会は)オープンAIを監督する能力がないことが明確になった。能力や判断力、使命、従業員への配慮が欠けている人たちのために働くことはできない」と批判している。
賛同したオープンAIの社員は「みな同じように突然状況を知らされて驚いている」と混乱する社内の状況を明かした。
オープンAIは17日にアルトマン氏の解任を突如発表して以降、技術者らが離反する事態を招いていた。オープンAIの投資家はアルトマン氏の復帰を仲介したが、これに失敗。19日にはマイクロソフトがアルトマン氏とブロックマン氏を新たなAI研究チームに迎えると発表した。
取締役会は暫定CEOにゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」の元CEOであるエメット・シア氏を指名した。同氏はアルトマン氏解任の経緯について近く報告書をつくる意向を示していた。
現在の取締役会はアルトマン氏解任に加担したチーフサイエンティストのイリヤ・サツキバー氏と3人の社外取締役で構成している。社員らが今回提出した文書には、そのサツキバー氏も署名し、取締役の解任要求は実質的に社外の3人に向けられた形だ。
サツキバー氏はX(旧ツイッター)上で「取締役会(理事会)の行動に加わったことを深く後悔している。オープンAIに危害を加えるつもりはまったくなかった。会社を再統合するためにできる限りのことをするつもりだ」と投稿した。
一連の動きをうけてマイクロソフトの株価は20日、約2%上昇した。マイクロソフトは混乱に乗じ、資本・業務提携するオープンAIの人材取り込みをさらに進める可能性が高いとみられている。
オープンAIの創設にも関与した米起業家のイーロン・マスク氏はXで「マイクロソフトは数年前にオープンAIの事実上の支配権を実現した。それが今になって明らかになりつつある」と投稿した。
【岸田首相が2024年春に訪米 議会演説を検討、国賓待遇】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
岸田文雄首相は2024年春に訪米する調整に入った。バイデン米大統領から国賓待遇で招待を受けており、米議会での演説を検討する。日本の防衛力強化を踏まえた「同盟の現代化」を推進する。安全保障や経済、人的交流など幅広い分野で関係深化を話し合う。
首相は先に米サンフランシスコを訪れた際にバイデン氏と会談した。バイデン氏は24年早期に首相を国賓待遇で招待すると伝えていた。
国賓は大統領や国王など政府が外国の元首らを最も手厚く受け入れる接遇だ。首相は24年度予算案の国会審議の日程を見極めながら3〜4月ごろの訪米を探る。
日本の首相が国賓訪米するのは15年の安倍晋三氏以来となる。米議会では過去に安倍氏のほか吉田茂、岸信介、池田勇人の各氏が演説に臨んだ。
米国の厚遇は岸田政権が打ち出した防衛力強化を評価している証しでもある。日本政府は22年12月に新たな国家安全保障戦略など安保関連3文書や防衛費の大幅増を決めた。バイデン氏は23年1月にワシントンで開いた日米首脳会談でこれを「果敢なリーダーシップ」と歓迎した。
報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率は低迷する。ロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエルとイスラム組織の戦闘は長引く恐れがある。米国はそうした情勢下で同盟国である日本の政治が不安定になる展開を望んでいないとみられる。
【自工会会長にいすゞ片山会長 トヨタなど3社以外から初】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本自動車工業会(自工会)の次期会長にいすゞ自動車会長の片山正則氏が就任する見通しとなった。任期が2024年5月までの豊田章男会長(トヨタ自動車会長)の後任となる。1967年に自工会が発足して以降、トヨタ、ホンダ、日産自動車以外から会長が就任するのは初めて。
自工会の会長はトヨタとホンダ、日産の首脳が1期2年交代で務めるのが慣例だった。豊田氏は2018年5月に会長に就いた。12〜14年に次いで2回目の就任だった。
片山氏は現在、副会長を務めている。商用車を主力とする企業が会長に就くことで、100年に1度とされる自動車産業の構造変化などに業界をあげて柔軟に対応できる体制を整備する狙いがあるとみられる。
【北朝鮮が「軍事偵察衛星」発射 軌道投入は確認されず】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本政府は21日夜、北朝鮮が同日午後10時43分ごろ、北西部の東倉里(トンチャンリ)から弾道ミサイル技術を使った発射を強行したと発表した。北朝鮮が主張する「軍事偵察衛星」とみられる。防衛省によると周回軌道への投入は確認されていない。
北朝鮮の朝鮮中央通信は22日未明、北朝鮮の国家航空宇宙技術総局が21日夜に軍事偵察衛星を打ち上げ、成功したと伝えた。衛星を地球の周回軌道に「正確に進入させた」と主張した。
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北朝鮮が22日午前0時から12月1日午前0時の間に「人工衛星」を発射すると通告していた。
政府は21日午後10時46分に全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。「北朝鮮からミサイルが発射されたとみられる」として沖縄県に避難を呼びかけた。その後に「ミサイルは10時55分ごろ、太平洋へ通過したとみられる」と通知し呼びかけを解除した。
岸田文雄首相は同日深夜、首相官邸で記者団に「少なくとも1発は沖縄上空を太平洋へ通過した。被害は確認していない」と述べた。宮沢博行防衛副大臣は22日未明、防衛省で記者団に「地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と明らかにした。
宮沢氏によると、衛星とみられる発射物は上空で分離し、一つは朝鮮半島の西350キロほどの東シナ海の予告区域外に落ちた。もう一つは沖ノ鳥島の南西1200キロ程度の太平洋上に位置する日本の排他的経済水域(EEZ)外の予告区域内に落下した。
21日夜に記者会見した松野博一官房長官は「発射について繰り返し中止を求めてきたにもかかわらず、住民の安全確保の観点からも極めて問題のある行為だ」と強調し、北朝鮮に厳重抗議したと説明。発射は国連安全保障理事会の決議違反に当たるとの認識を示した。
首相は21日夜、ミサイルの上空通過を踏まえ関係閣僚に①落下物による被害がないかの速やかな確認、②北朝鮮の今後の動向を含めた情報収集・分析の徹底、③米国や韓国などの関係諸国との連携、適時適切な対応――の3点を指示した。
Jアラートの発令は沖縄県に避難を促した8月24日以来。この時は北朝鮮が「軍事偵察衛星」を発射し失敗した。沖縄本島と宮古島の間の上空を飛行し太平洋へ通過したため避難の呼びかけを解除した。
【イスラエル、4日間戦闘休止へ 人質50人解放と引き換え】
22日の日経速報メールは報じた。
【イスタンブール=木寺もも子】イスラエルメディアによると、同国政府は22日、少なくとも人質50人の解放と引き換えに、パレスチナ自治区ガザで続くイスラム組織ハマスとの戦闘を4日間休止することを閣議決定した。ハマス側も既に「合意が近い」としており、一定期間の人道停戦や人質の解放が実現する可能性が強まった。
イスラエルは戦闘の休止に加え、パレスチナ人の囚人のうち女性や未成年者も引き換えに釈放する。ガザへの人道支援拡大や、負傷者がガザを脱出することも認めるもようだ。交渉は米国とカタールが仲介した。
政府高官の話として報じられた情報によると、解放されるのは子ども30人とその母親8人のほか、女性12人だとされる。
ハマスなどがガザに拉致したイスラエル側の人質は約240人に上るとみられる。戦闘の休止が履行されれば、さらに数十人が解放されるとの報道もある。
ただ、イスラエルメディアによると、国民は24時間以内に裁判所に対して閣議決定への異議申し立てを行える。合意がすみやかに成立、履行されるかは不透明な面もある。
閣議は21日夜(日本時間22日未明)に始まり、22日早朝まで続いた。公開された映像によるとネタニヤフ氏は冒頭、「停戦(期間)後も、戦争は続く」と述べ、一時的な戦闘休止を挟んだ後もハマスの壊滅を目指す軍事作戦は継続すると強調。合意は「厳しいが、正しい決定だ」として閣僚らに理解を求めた。
中東の衛星放送局アルジャズィーラによると、ハマスと共闘するガザの過激派「イスラム聖戦」は21日、レバノンで開いた記者会見で、交渉を巡り「ハマスと協調している」と表明した。イスラム聖戦も多数の人質を拘束しているとみられる。
人質はこれまで米国籍の母娘とイスラエルの高齢女性2人が解放されたほか、イスラエル軍が女性兵士1人を救出した。
イスラエルは21日も空爆などを続けた。ガザ当局によると、同日までの累計の死者は1万4100人を超えた。国連安全保障理事会は15日、「緊急かつ人道的な一時休止」を要請する決議案を採択した。国連総会も10月下旬、「人道的休戦」を求めていた。
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【東芝、株式併合など特別決議を承認 臨時株主総会】
22日の日経速報メールは報じた。
東芝は22日、臨時株主総会を開き、株式の非公開化に向けた株式併合や定款変更などの議案を諮り賛成多数で承認された。 日本産業パートナーズ(JIP)と国内企業によるTOB(株式公開買い付け)に応募しなかった株主の株式を強制的に買い取り、東芝は12月20日に東京証券取引所への株式上場が廃止になる。
東芝は不正会計や巨額損失、アクティビスト(物言う株主)との対立など経営の混乱が長引いた。JIPは総額2兆円を投じて8〜9月にTOB(株式公開買い付け)を実施した。東芝は株主をJIPに一本化し、投資ファンド傘下で再建を目指す。
【OpenAI、アルトマン氏がCEOに復帰 理事会大幅刷新へ】
12日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=渡辺直樹】対話型AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を開発した米オープンAIは21日、最高経営責任者(CEO)を解任されたサム・アルトマン氏の復帰で基本合意したと発表した。経営を監督する理事会(企業の取締役会に相当)を大幅に入れ替え、社員が大量離脱する分裂の危機を回避した。
新たな理事会は現任の米クォーラCEOのアダム・ディアンジェロ氏に加え、ラリー・サマーズ元米財務長官、米セールスフォース元共同CEOのブレット・テイラー氏で構成する。テイラー氏が会長に就くという。
オープンAIの理事会は17日、CEOだったアルトマン氏を突如解任した。社員の9割が同氏の復帰と理事の総退陣を求める署名活動を展開し、要求が受け入れられない場合はそろって退職すると迫っていた。
アルトマン氏は21日、X(旧ツイッター)でマイクロソフトのサティア・ナデラCEOに言及し、「新しい理事会とサティアのサポートがあれば、オープンAIに戻ってマイクロソフトとの強力なパートナーシップを築くことができる」と投稿した。
オープンAIは2022年11月にチャットGPTを公開し、1年足らずで毎週1億人が利用するサービスに成長した。生成AIブームを代表する注目企業となった新興企業のトップ解任騒動は、1週間足らずでアルトマン氏が復帰する事態となった。
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この間、以下の録画を視聴することができた。 (1)BS6報道1930「ウクライナの不協和音、政権と軍中枢の内部での反攻停滞が生む確執か。クリミヤ上陸作戦の狙いは」13日。 (2)BS6報道1930「ハマスが変えた<世界地図>、米の中東政策崩壊で反米・反イが拡大。ゴミ燃やしてパンを焼く…生活困窮のガザ住民は」14日。 (3)BS6報道1930「米中首脳1年ぶりに会談へ…台湾問題・半導体規制で思惑と歩み寄りか?」15日。 (4)NHKBS世界のドキュメンタリー「知られざる核危機 ノルウエー・インシデントの教訓。1995年のある日、ロシアのミサイル警戒システムが発動。一時、報復核攻撃を行うかどうか判断を迫られた。何が起きていたのか」15日。 (5)BS6報道1930「トランプ氏の再来? 厳主要州リードのなかで難敵「スポイラー候補」とは?」17日。 (6)BS4深層NEWS「米軍とウクライナ軍トップが冬の反転攻勢協議“こう着”、状況打開は、ジャーナリスト西谷文明氏が見た奪還から1年のへルソン。激戦の爪痕と変わらない日常」17日。 (7)TV東京のカンブリア宮殿「激変する時代が生んだ通信制高校 教育革命の全貌。 2016年、出版社KADOKAWAと IT企業ドワンゴが共同で設立した通信制高校「N高等学校。現代の教育の最前線に立つN高の全貌に迫る」16日。 (8)BS6報道1930「どうなる冬の反転攻勢、米ウ開発”怪物“、ロ軍ミサイル温存なぜ?戦局打開へ渡河作戦か。冬はロ軍に味方する?」16日。 (9)NHKスペシャル混迷の世紀第13回 「世界債務危機は止められるか。欧州や中東で戦火が広がるなか、世界を別の危機が襲っている。30超の国が直面する「債務危機」。債権国・中国が独自路線を取るなかで国際社会は一致して対応できるのか」19日。 (10)BS6報道1930「プーチン氏、揺れる足元、中東危機が国内飛び火、反米外交の矛盾と限界。旧ソ連アルメニアが「新たなパートナーを探す」、ロシア離れが加速か」20日。
【食材宅配サービスのMBO】
第1が日経速報メールが報じた食材宅配サービスのMBO(経営陣が参加する買収)であり、つづけて同日、日経速報メールが報じた「進研ゼミ」である。
食材宅配サービスを手掛けるオイシックス・ラ・大地は10日、シダックスを子会社化すると発表した。シダックスがMBO(経営陣が参加する買収)で株式を非公開化した後に実施する第三者割当増資を引き受ける。原材料高や人手不足でシダックス主力の給食事業の収益が悪化する中、主力事業の効率化や不採算事業の見直しなど構造改革を急ぐ。
シダックスは志太勤一会長兼社長ら創業家の資産管理会社が、11月13日〜12月25日の期間に1株当たり800円でTOB(株式公開買い付け)を実施する。株主からシダックス株を買い取って完全子会社にする。
シダックスには食材宅配サービスを手掛けるオイシックスが、約3割を出資している。同社はMBOに賛同している。
給食業界は原材料高や水道光熱費の上昇などによって事業環境の厳しさは一段と増している。9月には学校給食などを運営するホーユー(広島市)が破産手続きを開始した。
シダックスの業績は新型コロナウイルス禍後の回復がまだ鈍い。給食などを手掛ける主力の「フードサービス事業」は、2023年3月期の営業利益が前の期比14%減の22億円と落ち込んだ。抜本的な立て直しに構造改革を急ぐ必要があると判断した。
シダックスは志太勤取締役最高顧問が1959年に富士フイルムの食堂を受託して創業。志太会長兼社長ら創業家が20%超を保有する。90年代にはカラオケ事業に進出し、一時は主力事業となったがその後に採算が悪化。18年にはカラオケ事業から撤退、19年には投資ファンド、ユニゾン・キャピタル(東京・千代田)の出資を受けて経営再建を進めていた。
22年にはオイシックスがユニゾンの持ち分をTOBで買い取り、28%を保有する筆頭株主となった。オイシックスはシダックスを持ち分法適用会社にしており、高島宏平社長がシダックスの社外取締役に就いている。
両社は法人向け給食で使うミールキットの開発など協業を進めていた。オイシックスは今夏から保育園給食事業に本格参入し、シダックスが受託運営する事業所にミールキットを試験導入するなど連携を強めている。
22年のオイシックスのTOBを巡っては、「オイシックス以外の第三者からのフード関連事業の協業提案などを検討する機会が失われる」としてシダックスの取締役会が反対を表明した。外食大手のコロワイドもシダックスへ給食事業の買収を提案するなどで各社の利害関係が複雑になった。
オイシックス以外の企業との連携可能性を調査する特別委員会や、ガバナンス(企業統治)体制を調べる調査委員会を設置することを条件に、取締役会がTOBへの意見を「中立」に変更したことでTOBが成立した経緯がある。
【ベネッセがMBO 欧ファンドと、「進研ゼミ」立て直し】
第2が「進研ゼミ」である。
ベネッセホールディングス(HD)は10日、MBO(経営陣が参加する買収)を実施すると発表した。ヨーロッパの投資ファンドEQTと組み、TOB(株式公開買い付け)を実施する。ベネッセHD株は上場廃止となる見通し。主力の通信教育「進研ゼミ」の不振が続いており、株式の非公開化で立て直しを図る。
TOBは1株2600円で実施する。9日終値(1791.5円)から808.5円(45%)のプレミアム(上乗せ幅)をつけた。全株ベースでの株式価値は約2700億円と、国内のMBOでは最大規模となる。
まずEQTが特別目的会社(SPC)を設立し、TOBなどにより約83%のベネッセHD株を約2080億円で取得する。その後、残りの約17%の株式を持つベネッセHD創業家の資産管理会社を完全子会社化する。
TOB完了後にSPCに対し創業家が出資。最終的にはEQTが6割、創業家が4割、SPC株を保有する形にする。議決権ベースでは5割ずつにする。
EQTはスウェーデンの産業・金融界に影響力を持つウォーレンバーグ家に由来する大手投資会社。2021年に日本に拠点を設置し、22年にアジア系のベアリング・プライベート・エクイティ・アジアと統合した。EQTにとって日本で初めての投資案件となる。
ベネッセHDは主力の「進研ゼミ」事業の苦戦が続いている。小学生〜高校生の会員数は23年4月時点で前年比14万人減の160万人だった。10年前と比べ約4割減少した。デジタル教材の導入などで立て直しを進めていたが、会員数減に歯止めがかからなかった。
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本業のもうけを示す連結営業利益は23年3月期で206億円と、13年3月期に比べ46%減った。介護や保育など多角化を進めるほか、22年には不採算だった語学教室の「ベルリッツ」事業の売却など構造改革を進めた。ただ、主力事業の抜本的な立て直しには非公開化が必要だと判断した。
•【関連記事】ベネッセ、「ベルリッツ」売却も 「進研ゼミ」に黄信号
ベネッセは1955年に生徒手帳などを発行する福武書店として設立した。69年に進研ゼミ高校講座の前身となる「通信教育セミナ」事業を始めた。創業家出身の福武総一郎氏が長く代表取締役を務めていたが、14年に最高顧問に退いた。
日本マクドナルドホールディングスのトップから転じた原田泳幸氏が14年に会長兼社長に就いたが、同年に個人情報漏洩問題が発覚し、会員数が減少。16年に退任した。その後もトップ交代が続いた。
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【たかが髪形、されど髪形 慶応野球「エンジョイ」の真意 森林貴彦 慶応義塾高野球部監督】
11日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・これが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい
・高いレベルの喜びは、練習や競争を乗り越えた先に
・選手との距離感はいつも悩み、言葉には気を使う
この夏の甲子園、107年ぶりの全国優勝を遂げた慶応義塾高(神奈川)のナインは笑顔の「エンジョイ・ベースボール」で汗と涙の色濃い高校野球に、新風を吹き込んだ。これからの高校野球は「勝ち」を目指しつつも、自立心を育む人材養成面などの「価値」が求められるという森林貴彦監督に、真意を聞いた。
神奈川県大会決勝で横浜、甲子園で仙台育英(宮城)という強豪を相次いで破った。「プレーボール」の言葉通り、遊び、楽しむ野球の原点に立ち返っての戴冠だった。
「夏の甲子園3回戦の広陵(広島)戦で、初回に丸田湊斗選手が三塁盗塁を決めて先制したが、サインは出していなかった。彼が自分で決めた。三盗も選択肢として準備していたが、初回から(危険を冒す)サインは出せない。私よりよほど度胸、判断力がある。勇気も要るし、根拠がないと走れない。これからもそういう場面に出合いたい」
――自分で考える楽しさを味わってほしい、と思ったきっかけは。
「高校2年の夏、上田誠監督が『二塁けん制の動きやサインを自分たちで決めてみなさい』とおっしゃった。内野手の私と投手、捕手が練習後の暗くなったグラウンドで、ああでもないこうでもないと話し合った。自分たちで物事を進めるワクワク感は高校野球の一番の思い出だ」
「チームの決め事を守り、人と同じことをするだけでは人生、面白くない。ますます価値観が多様化し、自分なりの幸せを選び取る時代になると思うので、これをやりたい、自分にとってこれが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい」
――相当の野球技術がないとエンジョイはできない。
「もちろん、ただ笑顔でやればうまくいくというものではない。頂点を目指す以上、日々の地道な苦しい練習、ライバルとの競争、試行錯誤がある。そこを乗り越えるところに、より高いレベルの喜びがある。それがエンジョイの真意だ」
「言葉には気を使っている。準々決勝の沖縄尚学戦は五回まで0-2の劣勢。前半戦終了時に『第1試合は完敗だから、第2試合を頑張ろう』と言った。同じ言葉ばかりだと、選手はまたかよ、という顔をする。新鮮な言葉がないか試合中に考えていた。あれでみんな『これからだ』となったのか、六回に逆転できた」
「ミーティングでだらだらしゃべりたくないので、試合ごとに四字熟語でテーマを伝える。『徹頭徹尾』とか『勇往邁進(まいしん)』とか。甲子園の決勝は『大願成就』。これしかない、と一番簡単に決まった」
コツは「全力で頑張るな」
――筑波大の大学院で、勝負事でしゃかりきになってはいけない、という研究成果を残した。
「頑張り度合いとパフォーマンスの関係を調べると、100%の力で走ったときに最高の速度が出るわけではない。8割の力で走ると9割の速度が出る。野球の投球でも全力で投げるより、少し力を落とす方が球速も出て、制球が定まる。全力でやるなということ。各界の達人が極意として力を抜くとおっしゃる。それと同じではないか」
「エラーをした野手や失点した投手が、取り返そうと思うのもよくない。それで取り返せるなら、そんな簡単なことはない。過去は切り捨て、未来を向いて今やれることをやる。練習試合では反省もするが、公式戦で過ぎたことを引きずっていいことはない」
――自主性は大事だが、選手任せの危うさも。
「1代前の3年生は一人ひとりが自立していた。そこで私もある程度任せたが、任せ過ぎたというか、お互いの意思疎通が足りなかった気がする。選手との距離感はいつも悩む。就任当初は私が面倒みなきゃという意識もあって、こまごま言い過ぎていたと思う。失敗は多々ある」
高校野球ではいまだに体罰案件が報告され、フェアでないプレーもみられる。勝利にとらわれ、選手の人間的成長が置き去りにされる現状は社会に通じる課題のようだ。
教育現場で無力を痛感
「(打者が横目で捕手の位置を確認する『カンニング』は)今年の甲子園でだいぶ減ったと感じたが、ゼロではない。チームではなく選手個人の問題だと思うが。高校野球の2年半は短く指導者も時間がない、急いで詰め込まないと、と思うと無理が出る。体罰を受けて育った選手が指導者になって、同じことをする。負の循環を今、食い止めないといけない」
「高校で完成する必要はなく、数年後にいい選手になってくれたらいい、という気持ちでいる。今、先生(慶応義塾幼稚舎教諭)として小学3年生を教えているが、無力を痛感するばかり。漢字、筆算、九九……。できたかなと思った次の日に子どもはできなくなる。一方、教えたことのないことを、いつのまにかできるようになっている。僕がいる意味があるのかな、と日々自問自答する。忍耐強く(成長を)待つ点で、野球の指導者としてもいいトレーニングになっている」
――理想を掲げ、変革を唱えれば風当たりも強くなる。
「チームの目標は『慶応日本一』だが、その先の目的として『恩返し』と『常識を覆す』を掲げてきた。今年の選抜大会でも『高校野球を変えたい』と言って甲子園に乗り込んだが、初戦敗退。簡単に言うな、できるわけないだろう、という声があった。ただ、それをバネにして、夏こそという思いが強まり、成長の材料になった」
――甲子園では選手たちの自由な髪形が注目された。
「いまだにそんなことが話題になるのかと残念に思う一方、これを入り口に(変化への)議論が進めばそれでいい、と思った。問題は髪形そのものより(無思慮に前例に従う)思考停止、旧態依然、上意下達の部分。高校野球はこういうものだという枠を誰かがつくり、枠の中でずっとやってきた。今年の優勝で、一石を投じることはできたかと思う」
――サインに縛られない選手は本当に育つか。
「野球がどういう人材を社会に送り出せるか、野球型の思考が今後の社会にどうマッチするのか考えると、危機感を覚える。勝つために手段を選ばないといった思考が、高校生以下の世代でも、ゆがみとして出ている。そこで打ち出したのが『成長至上主義』。ただただ勝利を目指して頑張ろう、ではなくて、一人ひとりが人間的に成長し、周りも成長させる。選手としての成長、人間としての成長が車の両輪となったら強い。それによって、実は勝利にも近づくのではないか」
「高校野球には堅苦しい部分、個性や自由が認められづらい部分がある。親の負担も大きく、(子どもに)野球が選ばれにくくなっている。甲子園は盛り上がっているようにみえて、全国の野球部や部員の数は減っている。このままの形では続かない。高校野球はスポーツの枠を超えて文化として定着し、変えるのは大変だが、我々が変われば人の育成方法なども変わるきっかけになるかもしれない。社会的な意義は大きい」
――激戦区の神奈川を勝ち抜くのは至難。優勝後、来春の選抜大会につながる試合に敗れた。
「甲子園から帰って翌々日に練習を始めたが(県大会までの)時間のなさ、慌ただしさは想像を超えていた。ただ選手たちは、また新しい気持ちでいてくれている。人生100年、自分もまだ折り返し点。選手に成長を求める以上、私自身が成長するマインドを持っていなければ。現状維持でいい、となったときは退場すべきだと思っている」
もりばやし・たかひこ 1973年東京都渋谷区生まれ。慶大法卒業後NTTへ。3年で退職し、高校野球指導者として筑波大院で指導理論を研究。2015年から母校慶応高を率い、春夏計4度甲子園出場。23年夏、107年ぶりの全国優勝に導いた。慶応幼稚舎教諭。
あえて寄り道、柔軟性養う(インタビュアーから)
慶応の選手たちが夏の甲子園を「エンジョイ」できたのは「そもそも、慶応にいる時点で半ば人生の勝ち組だから」というやっかみまじりの見方があるが、それは違うようだ。
青春まっただ中の高校生であっても野球がすべてではいけない。そう考える森林監督は慶応OBなどから幅広い分野の話を聞く機会を設けている。
政府系金融機関を辞め、瀬戸内海の島で農業にいそしむ人から「都心の大会社に勤めるだけが人生ではない」と学んだ。大リーガー・菊池雄星投手の元マネジャーから、華やかな印象と違って努力の人と聞いた。強豪校が大会準備に追われている時期に、知的障害のある生徒の硬式野球への参加を進める取り組みと連携し、合同練習を行った。
あえて寄り道し、様々な価値観に触れることで「野球オンリー」にはない心の柔軟性が養われているようだ。(編集委員 篠山正幸)
【「日本はGXに本気か」 海外マネー3300兆円が品定め 資産運用立国に挑む 開国の障壁(1)】
13日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・日本は海外からの投資を集める「運用開国」を目指す
・脱炭素に向けて産業転換を段階的に進める戦略を掲げる
・海外投資家は日本企業のGXへの向き合い方を注視
政府は海外運用会社を招く「運用開国」に乗り出した。家計金融資産2100兆円が外に出ていくばかりでは日本の成長に寄与しない。国内に投資機会をどう生むかが最大の課題だ。
【「資産運用立国に挑む」連載記事】
• ・日本株の運用会社「空洞化」 非効率な慣習、参入阻む
10月6日、首相官邸。米運用会社ブラックロックの呼びかけで中東の政府系ファンドや欧米年金など世界の機関投資家・運用会社の代表約20人が集まった。保有・運用額は計3300兆円に上る。関係者は海外勢が来日した目的を「『具体的な投資案件を見せてくれ』ということだ」と語る。
政府が掲げるのが、化石燃料からクリーンエネルギーへの産業構造の転換を目指す「グリーントランスフォーメーション(GX)」だ。欧州のような一足飛びの脱炭素でなく段階的に移行(トランジション)する戦略で、官民合わせて10年で150兆円が必要とはじく。シンガポールの政府系ファンドGICは7月、現地を訪れた自民党の片山さつき金融調査会長に「日本のGX投資の定義に関心がある」と語った。
海外マネーを呼び込もうと企業も動き始めた。9月に増資などで約2040億円を調達したJFEホールディングス。「構造改革をやり遂げ、量から質へ転換する」。調達先を海外に絞り、欧米などの投資家約100人にオンラインで訴えた。
JFEホールディングスは構造改革のため川崎市の高炉を止めた
利益の見込みやすい電気自動車向け高級鋼板の投資に公募増資、中長期の脱炭素投資に新株予約権付社債(転換社債=CB)で得た資金を充てる。川崎市の高炉を止める一方、2030年度までに脱炭素に約1兆円投じる計画だ。増資で外国人株主比率は3割と3月末の24%から高まった。
日本企業のGX関連の資金調達は増えている。資金使途を環境事業に限る環境債の発行は23年1〜10月に1兆6000億円超と、年間で最高だった21年をすでに約2割上回った。温暖化ガス排出量の多い企業による移行債も21年からの累計で約6000億円に上る。
アジアではトランジションへの関心が高く、50年までに40兆ドルの脱炭素投資の資金需要があるとみられる。日本に脱炭素マネーを集め、アジアのGX投融資の資金が行き交うハブへと育てる余地はある。
ただ、投資家は日本企業がどこまで積極姿勢に転じたのか、なお半信半疑だ。
「日本は脱炭素にどのくらい真剣なのか」。ENEOSホールディングスのもとには政府のGX戦略に確信を持てない海外投資家から多くの質問が寄せられる。同社は再生可能エネルギー開発や水素の供給網構築などに取り組むが「技術のブレークスルーの時期など不透明で、30年度以降の具体的な計画を示すのは困難」とする。
日本企業はバブル崩壊以降、設備投資や研究開発を抑えて借入金返済を優先してきた。日銀の資金循環統計によると民間企業部門(金融除く)は戦後、資金不足だったが、1998年から資金余剰の局面に転じた。海外マネーが注目する今こそ、日本が積極投資に打って出る好機となる。
GXだけでなく、省人化や農業など日本経済の課題は多い。投資機会をどれだけ増やせるか。運用立国実現のハードルは高い。【資産運用立国に挑む 第1部】
【海外新薬、国内で早期承認へ 日本人の初期治験廃止】
同じ13日の日経ニュースメールは報じた。
日本で薬を売り出すために、臨床試験(治験)の過程で日本人で安全性を別途確認しなければならない制度が原則廃止される。欧米で承認された新薬の7割は日本で承認されておらず、海外で使われている薬が日本で入手できない「ドラッグ・ロス」が生じてきた。新薬の日本での早期流通を促し、患者の不利益の解消につなげる。
厚生労働省は近く、日本人での追加的な初期治験が原則として必要ないことを記した通知を出す。数カ月以内に制度は廃止される見通しだ。
医薬品が日本国内に出回るには、3段階の治験が必要になる。1番目にあたる第1相は少数の健康な人に薬を投与して安全性を確認する。第2相は少数の患者に投与し、効き目や副作用を調べる。第3相では世界各国の多数の患者を対象にする。
第1、2相の治験は、製薬会社が新薬を開発した国でやることが多い。しかし日本で販売するには原則として、第3相に進む前に別途、日本人への初期治験にあたる第1相の追加調査が求められる。
厚労省は「国内の環境で暮らす日本人への安全性を確認するため」と説明する。だがこれは日本独特のルールで他国ではほとんど求められない。
この追加調査が妨げとなり、「ドラッグ・ロス」や海外で使用されている医薬品の日本での承認が遅れる「ドラッグ・ラグ」が深刻になっている。
厚労省は追加的な初期治験をなくしても、第3相の治験で日本人の安全性は確認されると判断した。抗がん剤など強い副作用が起こりやすい一部の薬には追加調査が残る可能性がある。
2020年時点で米国と欧州連合(EU)で承認された新薬のうち、日本では72%が未承認で数字は上昇傾向にある。09〜17年に開発された新薬で、世界で初めて承認された時期と国内承認された時期の差は54.1カ月。韓国(28.2カ月)の約2倍だ。
治験には参加者を集めるコストや時間が欠かせない。グローバルな製薬会社にはこの手間を嫌って日本での販売を断念したり、市場投入の時期を他国に比べ大幅に遅らせたりしている。
厚労省のヒアリングに対し、製薬会社は「日本人向け治験が新薬投入の障壁となっている」という声を寄せた。欧米系の製薬会社も「日本人への投与経験がないこと以外に(追加調査が必要な)理由が十分に示されておらず、欧米の本社に理解されない」と指摘した。
たとえば消化管の壁にできる悪性腫瘍である消化管間質腫瘍(GIST)は年間10万人に1人から2人程度に発症する。治療薬「アバプリチニブ」は日本では手に入らない。米国では20年1月、欧州では20年9月に承認されている。
新型コロナウイルス禍でも、日本がワクチン承認で欧米から後れをとった原因の一つが追加治験だった。
米ファイザーは、海外での大規模治験の結果をもとに20年12月にワクチンの製造の承認を申請した。だが追加治験などへの対応で承認までに2カ月ほどかかった。
厚労省はルール変更について、医薬品の開発を担う海外の製薬会社への情報発信にも力を入れる。24年度には米国に医薬品医療機器総合機構の事務所を設立し制度の周知に生かす。
製薬大手アストラゼネカ社では、世界同時開発などの取組で同社の日本でのドラッグ・ラグやロスの問題はほぼ解消している。一方、同社はベンチャー発の先端的な医薬品のライセンスを取得し、残りの治験を自社で担う場合がある。日本人への初期治験の原則廃止で、開発期間が短縮されれば「非常にポジティブに捉えられる」という。また、日本市場で発売がしやすくなることへの「大きな一歩」だと期待を寄せる。
ドラッグ・ロスやラグの解消には他にも課題がある。例えば患者が少ない希少疾患や小児がんなどはコストをかけても利益が出にくいため、製薬会社は開発を敬遠する。米国は成人用のがんの薬を開発する際には小児用も開発することを義務づけている。日本には同様の制度はない。
【小売り、食品PB比率17%で最高 イオンやセブンが新商品】
14日の日経速報メールは報じた。
小売り大手が食品など生活必需品で割安なプライベートブランド(PB)を拡充する。イオンは食品PBの半分を刷新し、セブン&アイ・ホールディングスは低価格帯PBを倍増させる。スーパーの食品販売額に占めるPB比率は10月に過去最高の約17%に高まり、店頭価格の上昇は鈍化している。物価押し上げの主軸はモノからサービスに移る。
イオンはPB「トップバリュ」で生鮮品を除いて約5千ある食品のうち2500品目を新商品に切り替える。日用品などと合わせたPB売上高を2024年2月期に前期比11%増の1兆円超に高める。セブン&アイはPBの中でも低価格シリーズ「セブン・ザ・プライス」の品目を24年2月末までに160品に倍増させる。
ベイシア(前橋市)は新しいPB「ベイシアプレミアム」を始めた。既存PBは新製品に順次切り替えて24年2月までに100品目以上を展開する計画だ。西友も生鮮食品の新PB「食の幸」で現状65種類の品目数を増やす。
一般にPBはメーカー品より1〜3割程度安い。小売業にとって稼げる商品でもある。物流や宣伝費などを抑えられるため、粗利益率は15〜20%とされるメーカー品と比べ10ポイント程度高い。
メーカー品とPBは物価高でともに値上がりしているが、消費者は安いPBにシフトしている。
日本経済新聞社と調査会社のインテージ(東京・千代田)が全国のスーパーなどから集めたPOS(販売時点情報管理)データを分析したところ、加工食品や調味料、清涼飲料、アルコール飲料などを含む食品PB(生鮮品除く)の割合は10月に16.8%になった。統計がある12年以降で最高だ。
品目別のPB比率は冷凍野菜が57%と最多で、ハムが34%、牛乳は32%だった。
PBシフトの背景には食品価格の上昇がある。帝国データバンクによると、22年の食品値上げは約2万6000品目に達し、23年は1〜10月の累計で3万品目を超えた。総務省の消費者物価指数(食料、2020年=100)も10月、東京都区部で116と21年1月(99.7)から16.3%上昇。消費者は生活必需品への節約志向を強めている。
PBシフトは物価動向にも影響する。牛乳の店頭価格の前年比上昇率は10月の19%から足元は11%に縮まった。
POSデータをもとにスーパーなどの店頭価格の動きを示す「日経ナウキャスト日次物価指数」をみると、11月12日時点で前年比6.7%(7日平均)上昇したものの、今年8月のピーク(同9.2%)に比べ鈍化した。
その中で物価全体を下がりにくくしているのが旅行やレジャーなどのサービス価格だ。日本のサービス価格は長らく低迷していたが、9月は上昇率が2%に高まった。
サービス価格は賃上げの影響を受けやすい。足元で賃上げは物価上昇を下回っており、実質賃金は9月まで18カ月連続でマイナスだった。物価を下支えするサービス価格の腰折れを防ぐには、消費者の財布のひもを緩める継続的な賃上げが不可欠だ。
24年の春季労使交渉に向け連合が要求方針を発表した。サントリーホールディングスなど交渉が本格化する前に賃上げ方針を表明するところも出ている。企業の継続的な賃上げ力が問われる局面だ。(浅山亮、マクロ経済エディター 松尾洋平)
【エクソン、リチウム生産へ 30年までにEV電池100万台分】
同じ14日の日経速報メールは報じた。
【ヒューストン=花房良祐】石油メジャーの米エクソンモービルは13日、米南部アーカンソー州で2027年から電気自動車(EV)電池用のリチウムを生産すると発表した。北米以外での生産も視野に入れ、30年までに年100万台分のEV用電池のリチウムを供給。世界有数のEV向けリチウム供給会社を目指す。
石油メジャーがリチウムの大規模生産に乗り出すのは初めて。EVや電池のメーカーと供給に向けた協議に入った。23年初めにアーカンソー州の12万エーカー(約485平方キロメートル)の敷地で採掘する権利を獲得した。
石油・天然ガスの掘削技術を活用して地下約3000メートルからリチウムを含有する塩水をくみあげる。従来より環境負荷の低い新技術でリチウムを分離し、現場のプラントで電池用の素材に加工する。30年までに年約10万トン(炭酸リチウム換算)を生産する見込み。
リチウムはレアメタル(希少金属)で、リチウムイオン電池の製造に使用する。EVの増加などでリチウム需要は30年までに4倍になる見通しで、供給不足の懸念がある。低炭素部門トップのダン・アマン氏は「リチウムはエネルギー転換に必要で、エクソンは(経済の)電化に向けて主導的な役割を果たす」とコメントした。
米地質調査所(USGS)によると、22年の世界のリチウム生産のうちオーストラリア、南米チリ、中国の3カ国で合計約9割を占め、偏っている。一方、米国の生産量はほとんどない。加えて、従来技術によるリチウムの精錬では中国が世界の大半を担っている。米国で生産すればサプライチェーン(供給網)のリスクも低下する。
EVと電池の普及に伴い、レアメタルの生産・精錬が少数の国に偏在している課題が浮き彫りになっており、バイデン政権は米国での生産を支援する。22年には国産の電池素材を使用したEVの購入補助制度を導入した。
エクソンは太陽光・風力発電について石油開発との相乗効果が見込めないとして投資に慎重な一方、二酸化炭素を回収して地下に貯留するといった石油開発の掘削技術がいかせる低炭素ビジネスには積極的だ。地下を掘削するリチウム生産も石油開発の技術が活用できるとみている。
天候に左右される太陽光・風力発電は発電が不安定なため、蓄電池との組み合わせが不可欠だ。このため再生エネの普及に伴い蓄電池は増加する見通しで、リチウムの生産会社がエネルギー転換の時代を勝ち抜くとの見方が高まっている。
米S&Pグローバルのダニエル・ヤーギン副会長は「エネルギー業界は『ビッグ・オイル』(石油メジャー)から『ビッグ・ショベル』(大手鉱山会社)の時代に移っていく」と話している。
【米下院、つなぎ予算案を可決 政府閉鎖は回避へ】
15日の日経速報メールは報じた。
【ワシントン=高見浩輔】米連邦議会下院は14日、予算執行を現行水準のまま2024年1〜2月まで続ける「つなぎ予算案」を可決した。上院でもすでに与野党のトップが法案への支持を表明している。政府閉鎖の回避に向けて大きく前進した。
米議会は2024会計年度(23年10月〜24年9月)の予算案をまだ策定しておらず、9月末に11月17日までのつなぎ予算を成立させて政府機関の閉鎖を回避していた。期限が近づき、再延長が必要になっている。
•【関連記事】米政府閉鎖、土壇場で回避 11月までのつなぎ予算成立
つなぎ予算案は、野党・共和党が過半数を握る下院で10月に新たに議長になったジョンソン氏が提案した。軍事や退役軍人、交通、住宅などの予算は24年1月19日まで、それ以外は2月2日まで執行を続けることができる。
民主党の下院議員らがジョンソン氏の案に賛成したのは、懸念していた大幅な歳出削減が盛り込まれなかったためだ。譲歩した内容の法案を蹴れば、政府閉鎖の責任を民主側が背負うリスクもあった。
•【関連記事】米下院新議長に保守派ジョンソン氏 内紛抱え手腕未知数
上院でも民主トップのシューマー院内総務が法案を支持する考えを示している。上院を通過すれば法案はバイデン大統領の署名を経て成立する公算が大きい。
下院共和はわずかな議席数の差で優位を保っているため、強硬派の一部が反対するだけで法案が通らない機能不全に陥っていた。マッカーシー前議長は9月末、民主の協力を得て11月17日までのつなぎ予算案を可決させたが、その直後に解任された。
強硬派議員らは今回の法案にも反対したが、議長の解任動議に踏み込む動きは今のところ起きていない。前議長の解任後、下院共和では議長のなり手が3週間決まらなかった。
複数の米メディアによると、ジョンソン氏はひとまず政府閉鎖を避けつつ、年明けにかけて調整する24会計年度予算案で歳出削減を強く求める構えだ。
つなぎ予算の期限を2つに分けたのは、バイデン政権と民主党が「包括予算案」と呼ばれる一括法案で予算案を通すのを回避する狙いがある。米国の予算案は本来、12本の予算案を個別に成立させる必要がある。
政府閉鎖を回避できれば今後は予算案に盛り込まなかったウクライナ支援が大きな議題となる。共和内には国境警備など国内に資金を振り向けるべきだと反発が大きい。与野党で意見の隔たりは大きい。
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。前嶋和弘上智大学総合グローバル学部 教授
ひとこと解説
共和党の強硬派の自由議連の案だった「2段階予算案」を共和党穏健派と民主党側が拒否できずに通過。民主党側の反対は2,共和党側は93。さらに強硬な共和党議員が歳出削減などが入っていないため拒否。「強硬派議長(ジョンソン)の方が強硬派の反対が少なくなる分だけつなぎ予算成立の可能性が高くなるかもしれない」と何度かいろいろなところでお伝えしましたが、そのとおりになりました。 指導力が全く未知数だったジョンソン下院議長にとっては、最初の大きな仕事。「妥協を許さない」強硬派だったはずのジョンソン。議員個人としてはおそらく民主党との徹底した財政対決を望んでいたはずですが、現実的に政府一時閉鎖回避を重視。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
同じ15日のニュースメールは次のように報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は紅葉シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる訪日客が増える。
主要国23か国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で(2.7%増)だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店のインバウンド売上高が3201億円と、18年同期を14%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
【イスラエル軍、ガザ北部シファ病院で「作戦実行中」】
同じ15日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は15日、パレスチナ自治区ガザ北部にある地区最大のシファ病院で「特定のエリアで、精密かつ標的を絞った作戦を行っている」と明らかにした。軍は同病院やその周辺の地下にイスラム組織ハマスの司令部があると主張しており「病院内にいるすべてのハマスのテロリストに投降を求める」と強調した。
米CNNは同日、イスラエル軍の戦車がシファ病院の敷地内に入ったとの目撃情報を報じた。国連機関によると、シファ病院には12日時点で患者が600〜650人、避難住民が約1500人いたという。
イスラエル軍は作戦部隊に医療チームやアラビア語を話す兵士を同行させていると説明し「民間人に危害が及ばないよう配慮している」と強調した。作戦前日に「ガザの関係当局に対し、病院内での軍事活動を12時間以内に中止するよう再度伝えたが、応じなかった」と主張した。
一方、ハマスは病院の軍事利用を否定している。ロイター通信によると、ハマスは15日、病院突入の責任はイスラエルと米国の双方にあると非難する声明を出した。
イスラエル軍は14日、シファ病院の近くにありハマスの重要拠点だとするシャティ難民キャンプのほか、警察本部など複数の施設を制圧したと発表した。13日にはガザ北部のランティシ病院にも部隊が踏み込み、病院地下に武器の保管や人質の拘束などハマスの作戦に利用された痕跡があったと主張していた。
ガザ北部ではシファ病院などが燃料不足で機能を停止するなど、医療体制が崩壊しつつある。バイデン米大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に「病院は守られなければならない」と強調していた。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は14日、ハマスがシファ病院を含む複数の病院を軍事利用していることを確認したと明らかにし「戦争犯罪だ」との認識を示した。ロイター通信が伝えた。
ホワイトハウスはバイデン氏とイスラエルのネタニヤフ首相が14日に電話会談したと発表した。ハマスが拘束する人質の救出や病院の状況について協議したとみられる。
【日経平均3万3000円乗せ 陰の主役はNVIDIA】
同じ15日の日経ニュースメールは報じた。
15日の東京株式市場で日経平均株価は大幅続伸し、前日比823円77銭(2.52%)高の3万3519円70銭で取引を終えた。前日比の上げ幅は2023年で最大となり、節目の3万3000円をおよそ2カ月ぶりに上回った。米利上げの打ち止め観測が強まり、国内でも金利高が逆風となるグロース(成長)株が買い戻された。ハイテク株主導の相場の陰の主役と声が上がるのが、米エヌビディアだ。
15日は半導体検査装置大手のアドバンテスト株が一時8%高まで買い進められるなど、半導体関連株の上昇が目立っている。半導体製造装置の東京エレクトロン株とあわせて日経平均を170円強押し上げた。
アドテストはPER(株価収益率)が60倍に迫り、割高株の筆頭だ。将来の高い利益成長が株価に織り込まれている分、金利上昇は現在価値に引き直す際の割引率を高めるため、株価の下押しにつながりやすい。
14日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びは市場予想以上に鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止め観測が広がった。10月下旬に一時5%を超えていた米長期金利は4.5%を下回り、割高株への逆風は弱まる。アドテスト株は11月1日に付けた直近安値から半月で3割上昇した。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
15日の日経速報メールは報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は行楽シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる客が増える。
主要国23カ国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で2.7%増だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店の4〜9月のインバウンド売上高が353億円と、18年同期を17%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
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【いすゞ、電池交換3分のEVトラック 自前で取り換え拠点】
同じ15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
いすゞ自動車は電池交換式電気自動車(EV)トラックの事業化に乗り出す。3分で電池交換が可能な車両を開発し、取り換えを担うインフラも自社で運用する。EVは充電に時間がかかり、配送効率が落ちるのが課題だ。運転手不足問題の解消につながる電池交換式の普及を後押しするため、車両開発からインフラまで一貫して担う。
いすゞは電池を交換する「無人ステーション」をこのほど開発した。物流企業の配送拠点や給油所に売り込み、設置することを想定する。コンビニエンスストアへの荷物配送やゴミ収集車などに使う小型EVトラック「エルフ」をベースにした車両を開発した上で、2025年に実証実験を始める。
ステーションではロボットが電池を取り外し、充電済みの電池と交換する。交換時間は最短で2分30秒程度としており、トラックが再び走行可能になるまで3分以内ですむという。充電済みの電池を用意したり、設備の保守や点検をしたりといったステーションの運用もいすゞが自ら手がける可能性がある。
充電式のEVトラックは充電に10時間程度かかり、軽油を燃料とするディーゼル車と比べて配送効率が低いのが課題となっている。商用車では電動化が遅れており、調査会社の矢野経済研究所によると、世界の商用車販売台数に占める電動化率(ハイブリッドなど含む)は2021年時点でも1.2%にとどまる。
電池交換式であれば、短時間の交換で配送を続けることができる。物流業界ではトラックやバスなどの運転手に残業規制が適用され、人手不足が見込まれる「2024年問題」に直面している。電池交換式が広がれば、脱炭素の対応と配送効率の維持への両立が期待できるとされている。
既に軽自動車の商用車では開発が進む。ホンダはヤマト運輸と11月から交換式電池を使った軽商用EVによる集配業務の実証実験を開始すると発表している。ホンダの軽EV「MEV-VAN Concept(エムイーブイバン コンセプト)」を活用し、太陽光発電の電力を使う。交換式電池でも積載量などの性能を維持できるかどうかを調べる。
ホンダの交換式電池は、自社の電動スクーターや建機メーカーのコマツと共同開発した電動小型ショベルに搭載されている。コマツは小規模な土木・建築工事や配管工事などでのニーズを見込んでいる。車以外でも用途拡大が進んでおり、国内の新興EVメーカーの間でも交換式電池の導入が進む可能性がある。
交換式電池は中国やインドなど新興国で普及している。中国の新興EV大手、上海蔚来汽車(NIO)は充電設備の設置と並行し、電池を交換する拠点を増やしている。(淡海美帆)
【米中首脳、軍事対話再開で合意 習氏「世界に重い責任」】
16日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・1年ぶりの対面会談が終了。昼食など含め4時間強
・AIの政府間対話や気候変動対策の作業部会設置を確認
・習氏は台湾統一に意欲。米国の台湾への関与けん制
【サンフランシスコ=田島如生、坂口幸裕】バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は15日午前(日本時間16日未明)、米西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で会談した。途絶えている米中両軍高官の対話再開で合意した。意思疎通を維持し、台湾周辺や南シナ海での偶発的な衝突を防ぐ狙いがある。
• 【関連記事】バイデン氏「習近平氏は独裁者」 米中首脳会談直後に明言
両首脳が対面で会うのは1年ぶり。会談はサンフランシスコ中心部から40キロほど南にあるカリフォルニア州ウッドサイドにある「ファイロリ」邸で開いた。会談は4時間強で、両首脳は少人数での昼食会後、庭園を散歩した。
バイデン氏は会談後の記者会見で「建設的で生産的な議論だった」と述べた。米中の競争が「紛争に発展しないように(関係を)合理的で管理可能なものにするのが私の責任だ」と表明。滞っていた軍事対話の再開で合意した重要性を訴えた。
中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えない一方、米国が台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を維持すると改めて明言した。2024年1月の台湾総統選で中国が選挙介入しないよう警告した。
習氏は会談で「世界経済は回復し始めたが、その勢いは不十分だ。産業サプライチェーン(供給網)の混乱や保護主義の台頭といった問題は顕著になっている」と言明した。経済安全保障を理由に先端半導体などの対中輸出・投資規制を主導する米国を批判した。
習氏は地球は十分に大きく、米中が共に成功するのは可能だとも指摘した。「私とバイデン大統領は中米関係のかじ取り役であり、国民、世界、そして歴史に対して重い責任をもつ」と語った。
米政府や中国国営中央テレビ(CCTV)によると、両首脳は両軍の高官協議のほか、国防当局の対話や海上軍事安全保障メカニズム会議を再開させると確かめた。両軍の戦闘区域のトップ同士で連絡を取り合うことも申し合わせた。
米政府高官は、オースティン米国防長官と中国側の軍高官が「数週間以内」に会談する方向で調整すると説明した。米中は台湾海峡や南シナ海で軍事的な緊張を強めている。両国の軍事対話は22年8月、当時のペロシ下院議長が台湾を訪れたのを境に滞った。
バイデン氏は会談で、台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を改めて主張した。CCTVによると、習氏は台湾について「中米関係の最も重要かつ最も敏感な問題だ」と説明し「必ず統一する」と強調した。
両首脳はAIに関する政府間対話を立ち上げると確認した。AIの軍事利用への懸念が国際的に広がっていることが背景にある。気候変動対策に関する作業部会の設置でも合意した。
麻薬対策での協力に向けた作業部会を立ち上げることも申し合わせた。医療用麻薬フェンタニルの過剰摂取による死者が米国内で激増しているのを踏まえた。中国は原料となる化学物質の主要製造国だ。
習氏は先端半導体などの対中輸出・投資規制に関し「中国の正当な利益を著しく損ねている」と問題視した。「中国の科学技術の抑圧は中国の質の高い発展を抑制することだ」と話し、規制措置の撤廃を要求した。
習氏の訪米は17年4月以来、6年半ぶりとなる。サンフランシスコ滞在中、岸田文雄首相との会談も調整している。15日に開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での演説も予定する。
米中首脳会談は22年11月にインドネシア・バリ島で開いて以来だ。両首脳は当時、偶発的な衝突防止に向けて対話を続けると合意した。米軍が23年2月、米本土上空に飛来した中国の偵察気球を撃墜したことをきっかけに両国関係は冷え込んだ。【関連記事】
•バイデン・習氏、変質した「個人的関係」 起点は12年前
•米大統領「危機時に電話できる関係に」 米中首脳会談で
•米中首脳会談の焦点は? 軍事対話再開探る、習氏が訪米
【日中首脳が1年ぶり会談 「戦略的互恵関係」を再確認】
17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【サンフランシスコ=秋山裕之】岸田文雄首相は16日(日本時間17日午前)に訪問先のサンフランシスコで中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と1時間ほど会談した。個々の懸案で対立しても共通利益の追求を優先する「戦略的互恵関係」を再確認した。
•【関連記事】日中の「戦略的互恵関係」、6年ぶり復活が示す難路
日中首脳会談は2022年11月にバンコクで開いて以来、1年ぶり。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でともに訪米する機会を利用した。15日にはバイデン米大統領が習氏と会い、両軍高官の対話再開で合意している。
首相は会談の冒頭に「日中は隣国として共存、繁栄し、地域と国際社会をリードする大国として世界の平和と繁栄に貢献していく責任を有する」と強調した。「より明るい日中関係の未来を切り開けるように力を合わせていきたい」と述べた。
習氏は両国の平和共存は正しい方向性だと指摘し「共通利益を重視し、相違を適切に管理すべきだ」と主張した。「戦略的互恵関係の位置づけを再確認し、新たな意味を与え、新時代の要求に合う中日関係の構築に力を尽くすべきだ」とも語った。
戦略的互恵関係は06年に当時の安倍晋三首相が訪中し、胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席との会談で打ち出した概念だ。胡主席が08年に国賓で来日し、福田康夫首相と「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明をまとめた。
日中は政治体制が異なり、日米のように民主主義といった共通の価値観を共有しにくい。解決困難な課題で対立を深めず共通利益を求めることで、安定的な関係を維持する狙いがある。
両首脳は東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出について解決を目指す方針で一致した。首相は「専門家のレベルで科学に立脚した議論を行う」と述べた。中国は「核汚染水」と呼んで反発していた。
首相は中国による日本産水産物の輸入禁止を撤回するよう求めた。中国当局に逮捕された邦人の早期解放なども主張した。
沖縄県・尖閣諸島周辺で続く中国公船による領海侵入をめぐっては東シナ海での偶発的な衝突回避を話し合った。日本の排他的経済水域(EEZ)に中国が設置したブイの即時撤去を求めた。
中国は台湾について譲れない「核心的利益」と位置づけ、日本に関与しないように求めている。首相は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
日中ハイレベル経済対話を適切な時期に行うことでも一致した。気候変動対策など地球規模の共通課題で協力を申し合わせた。
2国間の問題でも意思疎通を強化する。日中の通商当局間で重要鉱物の輸出管理といった貿易問題に関する対話枠組みを新設する。企業関係者の安全確保も含めたビジネス環境に関する協議体も創設する。
首相は訪米に先立ち、対中外交について「建設的かつ安定的な関係を維持するため、お互いの努力によって関係を維持する基本方針は変わっていない」と言明している。
日中関係をめぐっては岸田首相と中国の李強(リー・チャン)首相が9月にインドネシアで立ち話した。日中平和友好条約発効45周年の10月23日にメッセージを交換した。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。深川由起子早稲田大学政治経済学術院 教授
分析・考察
中国に限らず、グローバルサウスに限らず、「日本はアメリカの従属変数」というレッテルはかなり粘着力を持ちます。写真の習主席の表情もそのもの。G7などマルチのレバレッジ依存はやむを得ないとしても、地域研究の没落と共に日本人の中国研究者数が激減し、本来、欧米に比しての強みだった「中国の内側論理から考える」能力の低下がバイの関係構築を不利にしている感があります。かといって欧米のような情報機関の力が弱く、民間企業の持つ情報との密かな連携も希薄。これでは情報戦について行けません。「あなたは「井戸を掘った人を忘れない」国なのでは?」と鋭く切り返せる日本にならないといけないのでは。
【パナソニックHD、自動車部品会社売却へ 米ファンドに】
17日の日経速報メールは報じた。
パナソニックホールディングス(HD)は17日、自動車部品を手掛けるパナソニックオートモーティブシステムズの売却に関し米投資ファンド大手アポロ・グローバル・マネジメントのグループ会社と基本合意したと発表した。パナソニックHDがパナソニックオートの株式の50〜80%をアポロが投資助言をするファンドに売却する。
パナソニックHDは電気自動車(EV)向け電池などを成長領域に位置づけ、重点的に投資する方針を示している。成長領域以外の事業の見直しを進めており、今回の決定はその一環になる。
売却によりパナソニックオートはパナソニックHDの完全子会社から持ち分法適用会社になる見通し。2024年3月末までの正式契約締結を目指す。パナソニックHDが売却する株式数をこれから決めるため売却額は未定だが、数千億円とみられる。
パナソニックオートは自動車のコックピットシステムや電子部品、車載充電器事業などを手掛ける。2022年度の売上高は1兆2975億円、営業利益は162億円だった。グループ従業員数は約3万人。27年度に売上高営業利益率を5%(22年度は1.2%)にする目標を掲げているが、車載充電器事業の赤字などで近年は収益力が低下している。
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自動車業界は電動化や自動運転など「CASE」と呼ばれる技術への対応など変革を求められている。新技術に対応し、競争力を高めるためには多額の研究開発費が必要になる。パナソニックHDはパナソニックオートが単独で投資資金をまかなうのは難しいと判断し、ファンドと連携することを決めた。
パナソニックHDは17日、パナソニックオートの売却後も「グループの一員として社名やブランドは残す」とコメントした。
パナソニックHDの楠見雄規社長は5月のグループ戦略説明会で、23年度は「事業ポートフォリオの見直しを視野に入れた経営を進める」と述べ、グループ事業の売却の可能性を示唆していた。
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【伊藤忠、ビッグモーター買収検討 創業家関与なしが条件】
同じ17日の日経速報メールは報じた。
伊藤忠商事と国内の企業再生ファンドが中古車販売大手ビッグモーター(東京都多摩市)の買収を検討していることが17日、わかった。ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と組み、買収に必要なデューデリジェンス(資産査定)の独占契約を結んだと発表した。 伊藤忠とJWP連合は契約に当たり、ビッグモーターとの間で創業家が経営に関与しないことで大筋合意した。
伊藤忠と子会社で燃料商社の伊藤忠エネクス、JWPの3社連合が17日、ビッグモーターとデューデリジェンスを独占で実施することで基本合意書を結んだ。3社はビッグモーターの経営状況を詳細に分析し、2024年春までに再建を支援するかを最終決定する。
ビッグモーターは未上場で、同社株は創業者の兼重宏行氏らの資産管理会社が保有している。23年7月に自動車保険金の水増し請求などの不祥事が発覚し、顧客離れが進んでいる。中古車販売は一時、例年に比べて6割以上減った。現在も月次で赤字が続いている。
同社は現預金や売掛金などの流動資産を数百億円抱える一方、従業員への賃金支払いなどで資金の流出が続く。銀行団は借入金の借り換えに応じないなど資金繰りに苦慮しており、自主再建が困難な状況だ。
ビッグモーターはコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの協力を仰ぎ、経営再建を急いでいる。支援企業を早期に確定し経営の立て直しを目指すが、不祥事の影響が長引き難航していた。
伊藤忠はグループで自動車リース事業を手掛けているほか、ニッポンレンタカーサービスを傘下に持つ東京センチュリーを持ち分法適用会社にしている。輸入車・中古車販売大手のヤナセも抱え、自動車ビジネスとのつながりが深い。グループとの相乗効果が高い可能性があると判断し、支援に名乗りを上げた。
焦点は買収価格や事業譲渡の対象だ。ビッグモーターを巡っては顧客の車体を故意に傷つけるなどして、損害保険会社に保険金を水増し請求する不正行為が横行していた。
国土交通省は10月、ビッグモーターが全国に持つ135工場のうち34工場で自動車整備を事業停止にするなどの行政処分を出した。金融庁も11月末に保険代理店登録を取り消す行政処分の実施方針を表明している。
中古車の買い取りや販売でも1000件以上のトラブルが生じ、複数の民事訴訟を抱えている。10月末には経営不振で東京都や埼玉県で計9店舗を閉鎖した。伊藤忠はビッグモーターの支援を通じ、自社のブランドイメージが毀損しないかも慎重に検討する。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。佐藤一郎国立情報学研究所 教授 別の視点
アルトマン氏はOpenAIだけでなく、生成AIの顔ともいえる人物だっただけに、同氏の解任は衝撃です。さて、この解任はAIのガバナンスに一石を与えるのではないでしょうか。企業が適切にAIを提供・利用するには、企業のAIに関わるガバナンスが重要視されていますが、企業トップが突如解任されるとなると、ガバナンスの仕組みの再考が求められることになります。さてアルトマン氏はAIの規制には積極的であったといえて、今回の解任でOpenAIのAI規制のスタンスが弱まると、AIに対する規制は企業側のガバナンスだけで十分なのか、法的規制が必要などの声が強くなるかもしれません。
【創価学会の池田大作名誉会長が死去、95歳 公明党を結成】
18日の日経速報メールは報じた。
宗教法人創価学会名誉会長で、同会の戦後の飛躍的な拡大を指導した池田大作(いけだ・だいさく)氏が11月15日夜、老衰のため死去した。95歳だった。創価学会が18日発表した。葬儀は近親者で行った。お別れの会を行うが、日取りなどは未定。
東京都生まれ。1947年8月、創価学会の戸田城聖第2代会長に出会い、19歳で入会した。54年には青年部参謀室長に就任。学会の政治進出の本格化に伴い、選挙運動を組織、指導するようになった。
60年に32歳で第3代会長に就任。池田氏の指導下で学会は64年、公明党を結成した。
70年代以降は海外布教と世界平和を目指す国際交流に力を注ぎ、中国の周恩来首相、旧ソ連のゴルバチョフ大統領(いずれも当時)ら各国の指導者や識者と意見交換するなど国内外で組織を拡大した。
学会ホームページによると、現在の日本国内の会員数は827万世帯。海外では世界192カ国・地域に280万人の会員がいる。
75年に創価学会インタナショナル(SGI)会長、79年に創価学会名誉会長に就任。教育・文化面では67年に創価学園、71年に創価大を開設した。著書に「人間革命」「仏法と宇宙を語る」など。海外要人との対談集も多数。
83年に国連平和賞を受賞したほか、モスクワ大学やボローニャ大学といった海外の大学から名誉博士号などの称号も贈られた。公の場に姿を見せることが少なくなった後も平和運動に力を入れ、近年はロシアに侵攻されたウクライナの平和回復や核拡散防止に関する提言を発表した。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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【マンション建て替えやすく 借り主退去、請求後半年で】
19日の日経ニュースメールは次のように報じた。
首都圏を中心に増える老朽マンションの再生が社会的な課題となっている。建て替え予定の分譲マンションに借り主が居座り工事できないケースがあり、決議に基づいて6カ月後の立ち退きを請求できるようにする。政府は決議要件緩和などと合わせた制度案を近く示し、2024年の通常国会への区分所有法改正案の提出をめざす。
東京都新宿区の住宅街に30年以上をかけて建て替えにこぎ着けたマンションがある。1930年代に建築された物件で、建物の傾きや雨漏りから60年代に建て替えの検討が始まった。
手続きは難航した。高齢の所有者から「自分が生きている間は壊さないでほしい」「歴史的な建物を残してほしい」という声が出て、合意形成ができなかった。所有者の賛成を得て建て替えを決議し竣工に至ったのは2005年のことだった。
決議には所在の分からない所有者も含めた5分の4以上の賛成が必要だ。高度経済成長期に大量供給されたマンションの老朽化が急速に進むが、現行法は建て替えに高いハードルを設けている。
法相の諮問機関の法制審議会は、分譲マンションの建て替えなどを円滑にする方策を検討してきた。耐震性などに問題がある場合については、所在の明らかな人を対象に4分の3の賛成に引き下げる案を出している。
建て替えが決まったとしても、障壁はもう一つある。長期間契約の借り主が反対し、建て替え工事ができないケースがある。現行法では契約違反などの正当な理由がなければ退去の義務はない。所有者は借り主と個別に交渉する必要がある。
新制度の導入後は個別交渉で解決しない場合でも、契約の終了を請求できるようになる。所有者が立ち退き費用などを補償することで賃貸借契約を解除できる。
法制審議会は21日に新制度を盛った要綱案のたたき台を提示する方針だ。政府は議論をもとに区分所有法の改正案をとりまとめ、24年の通常国会に提出する見通し。
旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所の重水丈人所長は「立ち退かないと建て替えできないため、借り主の同意が重要だ。所有者は大変苦労している」と話す。追加的な課題として借り主への補償に関するガイドラインの整備が必要だと指摘した。
国土交通省によると、築40年以上の分譲マンションは22年末でおよそ126万戸ある。42年末には22年末の3.5倍の445万戸にまで増加する見込みだ。
一方、建て替えの累計実績は23年3月時点でおよそ2万3000戸にとどまる。
東京カンテイ市場調査部の高橋雅之主任研究員は「要件緩和で建て替え需要にはプラスの方向に働く」と語る。資材の高騰で建て替え費用がかさむ可能性があり「所得水準や年齢層が多様な大規模マンションでは合意形成が図りにくい」との見方を示す。
マンションの建物や敷地の売却、取り壊しやリノベーション(大規模改修)の決定も多数決で可能にする。現行法で実行するには所有者全員の賛成が必要だが、建て替えと同様に耐震性などに問題があれば4分の3の多数決で決められるようにする。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
大槻奈那名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
今後の展望
所有権尊重の観点等から進みにくかった建て替え決議に対する大きな進展です。但し、実行段階でのハードルはまだ様々残されています。 例えば借り主の退去については、立ち退き費用補償の水準をどうするのか。また、建て替えの賛成票も集まり難くなっている可能性があります。住人の一層の高齢化や、家賃上昇で建て替え中の移転費用の増加が課題です。更に、近年では室内のリノベーションが広く普及し、その技術が高額化していることから、一旦リノベした世帯はそれを無駄にするような建て替え決議には賛成しない可能性があります。一定の年数を経たマンションでは、できるだけ早い時期から理事会等で話し合いを始める必要があるでしょう。
2023年11月20日 8:38
【紅海で貨物船乗っ取り 日本郵船が運航「日本人いない」】
19日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は19日、イエメン近くの紅海で貨物船が乗っ取られたと発表した。日本郵船によると、拿捕(だほ)された船はバハマ船籍の自動車輸送船「ギャラクシー・リーダー」で同社がチャーターしていた。
日本郵船は「拿捕されたのは事実。乗組員の安全を確認中」とコメントした。乗組員はブルガリア人、フィリピン人など25人で日本人はいないという。国土交通省は19日午後9時半ごろ日本郵船から連絡を受け、詳しい情報を確認中だとしている。
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イスラエル首相府は、この船舶は英国企業が所有し日本企業が運航しており、乗っ取りを実行したのはイエメンの親イラン武装組織フーシだと主張した。乗っ取りはイランの指導を受けたもので「イランによる国際船舶への攻撃を強く非難する」と強調した。乗組員にイスラエル人はいないと説明している。
イスラエル軍によると、貨物船はトルコからインドに向かう途中だった。船舶情報会社マリントラフィックによると、サウジアラビアとスーダンの間の海域で信号を確認したのを最後に消息がわからなくなっている。
ロイター通信はこれに先立ち、フーシの広報担当者が同日、イスラエル企業が所有・運航するすべての船舶を標的にすると表明したと伝えた。
イスラエル軍は10月からパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと交戦しており、フーシはイスラエルへミサイルなどによる攻撃をしかけてきた。
(カイロ=久門武史、逸見純也)
▼フーシ イエメン北部を活動拠点とするイスラム教シーア派の武装組織。指導者はアブドルマリク・フーシ氏。2011年に中東で広がった民主化運動「アラブの春」以降に台頭し、15年にクーデターで首都サヌアを占領するなど国内の大半を支配下に置いている。
イエメンではサウジアラビアなどが支援する暫定政権と、イランが支援するフーシの内戦が続いている。3月にサウジとイランが外交関係を正常化することで合意すると、サウジとフーシの停戦協議も始まり、緊張緩和の機運が高まっていた。
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【元OpenAIのアルトマン氏ら、Microsoft入りへ】
20日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=山田遼太郎】米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は19日、米新興企業オープンAIのCEOを解任されたサム・アルトマン氏がマイクロソフトに加わると明らかにした。同社に新設する人工知能(AI)の先進的な研究チームを率いるという。
ナデラ氏が19日深夜(米西部時間)にX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。オープンAIの共同創業者の1人で、アルトマン氏とともに退社を表明したグレッグ・ブロックマン元社長もマイクロソフトに入る。複数のオープンAI従業員もマイクロソフトに移る。
ナデラ氏は投稿で「我々はオープンAIとの提携を続け、製品のロードマップに自信を持っている」と強調した。エメット・シア氏が暫定CEOに就くオープンAIについて「新経営陣と共に働くのを楽しみにしている」とも述べ、巨額を投資するオープンAIとの関係を維持する考えを強調した。
マイクロソフトCEOのナデラ氏はXへの投稿でアルトマン氏らがマイクロソフトに入社すると明らかにした
ナデラ氏によると、アルトマン氏はマイクロソフト社内で新たに設置されるAI研究のグループのCEOに就くという。
アルトマン氏は同日、ナデラ氏の投稿に「使命は続く」とXで応じ、マイクロソフトに加わることを認めるかたちとなった。
アルトマン氏は17日にオープンAIのCEOを突如解任された。同氏を支持する投資家や従業員が多く、復帰に向けた交渉があったが19日夜までに合意に至らなかった。オープンAIはゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」元トップのシア氏を暫定CEOに起用した。
アルトマン氏やブロックマン氏の退任に続き、オープンAIの多くの従業員が退社の意向を示したことから去就に注目が集まっていた。
マイクロソフトは米西部ワシントン州シアトルで開いた技術イベント「イグナイト」で15日、オープンAIが手がける生成AIの技術基盤の最新版「GPT-4ターボ」の企業向け提供などを発表したばかりだ。
対話型AI「Chat(チャット)GPT」で知られる同社との提携を経営戦略の中核に据え、業務ソフトの操作を支援する「コパイロット」など、AI技術を矢継ぎ早に自社サービスに組み込んだ。クラウド基盤「アジュール」とオープンAIの技術の連携も進めた。
オープンAIから人材が流出し、アルトマン氏が独立する事態となれば、マイクロソフトのAI戦略が見直しを迫られるほか、投資家らから批判を招くのは避けられない情勢だった。
【OpenAIの社員9割、退社も辞さず 取締役会に総退陣迫る】
21日の日経速報メールは報じた。
シリコンバレー=渡辺直樹】米オープンAIの社員らは20日、取締役会(理事会)に総退陣を求め、解任したサム・アルトマン氏らを復帰させなければ、自分たちもそろって退社すると迫る文書を提出した。770人いる社員のうち、すでに9割超にあたる約730人が署名した。人工知能(AI)の有望企業をめぐる混乱は社員の「反乱」という重大な局面に発展しはじめた。
日本経済新聞が入手した文書によると、要求は取締役会に向けている。現在の取締役全員が辞任した上で、独立した新任者を指名し、アルトマン元CEOとグレッグ・ブロックマン前社長を復帰させるよう求めている。
受け入れられなければ、大半の従業員はアルトマン氏らが手がける「マイクロソフトの新しい子会社に参加することを選択するかもしれない」と迫っている。「(取締役会は)オープンAIを監督する能力がないことが明確になった。能力や判断力、使命、従業員への配慮が欠けている人たちのために働くことはできない」と批判している。
賛同したオープンAIの社員は「みな同じように突然状況を知らされて驚いている」と混乱する社内の状況を明かした。
オープンAIは17日にアルトマン氏の解任を突如発表して以降、技術者らが離反する事態を招いていた。オープンAIの投資家はアルトマン氏の復帰を仲介したが、これに失敗。19日にはマイクロソフトがアルトマン氏とブロックマン氏を新たなAI研究チームに迎えると発表した。
取締役会は暫定CEOにゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」の元CEOであるエメット・シア氏を指名した。同氏はアルトマン氏解任の経緯について近く報告書をつくる意向を示していた。
現在の取締役会はアルトマン氏解任に加担したチーフサイエンティストのイリヤ・サツキバー氏と3人の社外取締役で構成している。社員らが今回提出した文書には、そのサツキバー氏も署名し、取締役の解任要求は実質的に社外の3人に向けられた形だ。
サツキバー氏はX(旧ツイッター)上で「取締役会(理事会)の行動に加わったことを深く後悔している。オープンAIに危害を加えるつもりはまったくなかった。会社を再統合するためにできる限りのことをするつもりだ」と投稿した。
一連の動きをうけてマイクロソフトの株価は20日、約2%上昇した。マイクロソフトは混乱に乗じ、資本・業務提携するオープンAIの人材取り込みをさらに進める可能性が高いとみられている。
オープンAIの創設にも関与した米起業家のイーロン・マスク氏はXで「マイクロソフトは数年前にオープンAIの事実上の支配権を実現した。それが今になって明らかになりつつある」と投稿した。
【岸田首相が2024年春に訪米 議会演説を検討、国賓待遇】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
岸田文雄首相は2024年春に訪米する調整に入った。バイデン米大統領から国賓待遇で招待を受けており、米議会での演説を検討する。日本の防衛力強化を踏まえた「同盟の現代化」を推進する。安全保障や経済、人的交流など幅広い分野で関係深化を話し合う。
首相は先に米サンフランシスコを訪れた際にバイデン氏と会談した。バイデン氏は24年早期に首相を国賓待遇で招待すると伝えていた。
国賓は大統領や国王など政府が外国の元首らを最も手厚く受け入れる接遇だ。首相は24年度予算案の国会審議の日程を見極めながら3〜4月ごろの訪米を探る。
日本の首相が国賓訪米するのは15年の安倍晋三氏以来となる。米議会では過去に安倍氏のほか吉田茂、岸信介、池田勇人の各氏が演説に臨んだ。
米国の厚遇は岸田政権が打ち出した防衛力強化を評価している証しでもある。日本政府は22年12月に新たな国家安全保障戦略など安保関連3文書や防衛費の大幅増を決めた。バイデン氏は23年1月にワシントンで開いた日米首脳会談でこれを「果敢なリーダーシップ」と歓迎した。
報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率は低迷する。ロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエルとイスラム組織の戦闘は長引く恐れがある。米国はそうした情勢下で同盟国である日本の政治が不安定になる展開を望んでいないとみられる。
【自工会会長にいすゞ片山会長 トヨタなど3社以外から初】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本自動車工業会(自工会)の次期会長にいすゞ自動車会長の片山正則氏が就任する見通しとなった。任期が2024年5月までの豊田章男会長(トヨタ自動車会長)の後任となる。1967年に自工会が発足して以降、トヨタ、ホンダ、日産自動車以外から会長が就任するのは初めて。
自工会の会長はトヨタとホンダ、日産の首脳が1期2年交代で務めるのが慣例だった。豊田氏は2018年5月に会長に就いた。12〜14年に次いで2回目の就任だった。
片山氏は現在、副会長を務めている。商用車を主力とする企業が会長に就くことで、100年に1度とされる自動車産業の構造変化などに業界をあげて柔軟に対応できる体制を整備する狙いがあるとみられる。
【北朝鮮が「軍事偵察衛星」発射 軌道投入は確認されず】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本政府は21日夜、北朝鮮が同日午後10時43分ごろ、北西部の東倉里(トンチャンリ)から弾道ミサイル技術を使った発射を強行したと発表した。北朝鮮が主張する「軍事偵察衛星」とみられる。防衛省によると周回軌道への投入は確認されていない。
北朝鮮の朝鮮中央通信は22日未明、北朝鮮の国家航空宇宙技術総局が21日夜に軍事偵察衛星を打ち上げ、成功したと伝えた。衛星を地球の周回軌道に「正確に進入させた」と主張した。
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北朝鮮が22日午前0時から12月1日午前0時の間に「人工衛星」を発射すると通告していた。
政府は21日午後10時46分に全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。「北朝鮮からミサイルが発射されたとみられる」として沖縄県に避難を呼びかけた。その後に「ミサイルは10時55分ごろ、太平洋へ通過したとみられる」と通知し呼びかけを解除した。
岸田文雄首相は同日深夜、首相官邸で記者団に「少なくとも1発は沖縄上空を太平洋へ通過した。被害は確認していない」と述べた。宮沢博行防衛副大臣は22日未明、防衛省で記者団に「地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と明らかにした。
宮沢氏によると、衛星とみられる発射物は上空で分離し、一つは朝鮮半島の西350キロほどの東シナ海の予告区域外に落ちた。もう一つは沖ノ鳥島の南西1200キロ程度の太平洋上に位置する日本の排他的経済水域(EEZ)外の予告区域内に落下した。
21日夜に記者会見した松野博一官房長官は「発射について繰り返し中止を求めてきたにもかかわらず、住民の安全確保の観点からも極めて問題のある行為だ」と強調し、北朝鮮に厳重抗議したと説明。発射は国連安全保障理事会の決議違反に当たるとの認識を示した。
首相は21日夜、ミサイルの上空通過を踏まえ関係閣僚に①落下物による被害がないかの速やかな確認、②北朝鮮の今後の動向を含めた情報収集・分析の徹底、③米国や韓国などの関係諸国との連携、適時適切な対応――の3点を指示した。
Jアラートの発令は沖縄県に避難を促した8月24日以来。この時は北朝鮮が「軍事偵察衛星」を発射し失敗した。沖縄本島と宮古島の間の上空を飛行し太平洋へ通過したため避難の呼びかけを解除した。
【イスラエル、4日間戦闘休止へ 人質50人解放と引き換え】
22日の日経速報メールは報じた。
【イスタンブール=木寺もも子】イスラエルメディアによると、同国政府は22日、少なくとも人質50人の解放と引き換えに、パレスチナ自治区ガザで続くイスラム組織ハマスとの戦闘を4日間休止することを閣議決定した。ハマス側も既に「合意が近い」としており、一定期間の人道停戦や人質の解放が実現する可能性が強まった。
イスラエルは戦闘の休止に加え、パレスチナ人の囚人のうち女性や未成年者も引き換えに釈放する。ガザへの人道支援拡大や、負傷者がガザを脱出することも認めるもようだ。交渉は米国とカタールが仲介した。
政府高官の話として報じられた情報によると、解放されるのは子ども30人とその母親8人のほか、女性12人だとされる。
ハマスなどがガザに拉致したイスラエル側の人質は約240人に上るとみられる。戦闘の休止が履行されれば、さらに数十人が解放されるとの報道もある。
ただ、イスラエルメディアによると、国民は24時間以内に裁判所に対して閣議決定への異議申し立てを行える。合意がすみやかに成立、履行されるかは不透明な面もある。
閣議は21日夜(日本時間22日未明)に始まり、22日早朝まで続いた。公開された映像によるとネタニヤフ氏は冒頭、「停戦(期間)後も、戦争は続く」と述べ、一時的な戦闘休止を挟んだ後もハマスの壊滅を目指す軍事作戦は継続すると強調。合意は「厳しいが、正しい決定だ」として閣僚らに理解を求めた。
中東の衛星放送局アルジャズィーラによると、ハマスと共闘するガザの過激派「イスラム聖戦」は21日、レバノンで開いた記者会見で、交渉を巡り「ハマスと協調している」と表明した。イスラム聖戦も多数の人質を拘束しているとみられる。
人質はこれまで米国籍の母娘とイスラエルの高齢女性2人が解放されたほか、イスラエル軍が女性兵士1人を救出した。
イスラエルは21日も空爆などを続けた。ガザ当局によると、同日までの累計の死者は1万4100人を超えた。国連安全保障理事会は15日、「緊急かつ人道的な一時休止」を要請する決議案を採択した。国連総会も10月下旬、「人道的休戦」を求めていた。
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【東芝、株式併合など特別決議を承認 臨時株主総会】
22日の日経速報メールは報じた。
東芝は22日、臨時株主総会を開き、株式の非公開化に向けた株式併合や定款変更などの議案を諮り賛成多数で承認された。日本産業パートナーズ(JIP)と国内企業によるTOB(株式公開買い付け)に応募しなかった株主の株式を強制的に買い取り、東芝は12月20日に東京証券取引所への株式上場が廃止になる。
東芝は不正会計や巨額損失、アクティビスト(物言う株主)との対立など経営の混乱が長引いた。JIPは総額2兆円を投じて8〜9月 にTOB(株式公開買い付け)を実施した。東芝は株主をJIPに一本化し、投資ファンド傘下で再建を目指す。
この間、以下の録画を視聴することができた。 (1)BS6報道1930「ウクライナの不協和音、政権と軍中枢の内部での反攻停滞が生む確執か。クリミヤ上陸作戦の狙いは」13日。 (2)BS6報道1930「ハマスが変えた<世界地図>、米の中政策崩壊で反米・反イが拡大。生活困窮のガザ住民は?」13日。 (3)231113~変わりつつある世界(17)
2023年11月13日、前回の「変わりつつある世界(16)」を掲載してから、気になっていた記事がある。11月10日、2つの記事があった。
【食材宅配サービスのMBO】
第1が日経速報メールが報じた食材宅配サービスのMBO(経営陣が参加する買収)であり、つづけて同日、日経速報メールが報じた「進研ゼミ」である。
食材宅配サービスを手掛けるオイシックス・ラ・大地は10日、シダックスを子会社化すると発表した。シダックスがMBO(経営陣が参加する買収)で株式を非公開化した後に実施する第三者割当増資を引き受ける。原材料高や人手不足でシダックス主力の給食事業の収益が悪化する中、主力事業の効率化や不採算事業の見直しなど構造改革を急ぐ。
シダックスは志太勤一会長兼社長ら創業家の資産管理会社が、11月13日〜12月25日の期間に1株当たり800円でTOB(株式公開買い付け)を実施する。株主からシダックス株を買い取って完全子会社にする。
シダックスには食材宅配サービスを手掛けるオイシックスが、約3割を出資している。同社はMBOに賛同している。
給食業界は原材料高や水道光熱費の上昇などによって事業環境の厳しさは一段と増している。9月には学校給食などを運営するホーユー(広島市)が破産手続きを開始した。
シダックスの業績は新型コロナウイルス禍後の回復がまだ鈍い。給食などを手掛ける主力の「フードサービス事業」は、2023年3月期の営業利益が前の期比14%減の22億円と落ち込んだ。抜本的な立て直しに構造改革を急ぐ必要があると判断した。
シダックスは志太勤取締役最高顧問が1959年に富士フイルムの食堂を受託して創業。志太会長兼社長ら創業家が20%超を保有する。90年代にはカラオケ事業に進出し、一時は主力事業となったがその後に採算が悪化。18年にはカラオケ事業から撤退、19年には投資ファンド、ユニゾン・キャピタル(東京・千代田)の出資を受けて経営再建を進めていた。
22年にはオイシックスがユニゾンの持ち分をTOBで買い取り、28%を保有する筆頭株主となった。オイシックスはシダックスを持ち分法適用会社にしており、高島宏平社長がシダックスの社外取締役に就いている。
両社は法人向け給食で使うミールキットの開発など協業を進めていた。オイシックスは今夏から保育園給食事業に本格参入し、シダックスが受託運営する事業所にミールキットを試験導入するなど連携を強めている。
22年のオイシックスのTOBを巡っては、「オイシックス以外の第三者からのフード関連事業の協業提案などを検討する機会が失われる」としてシダックスの取締役会が反対を表明した。外食大手のコロワイドもシダックスへ給食事業の買収を提案するなどで各社の利害関係が複雑になった。
オイシックス以外の企業との連携可能性を調査する特別委員会や、ガバナンス(企業統治)体制を調べる調査委員会を設置することを条件に、取締役会がTOBへの意見を「中立」に変更したことでTOBが成立した経緯がある。
【ベネッセがMBO 欧ファンドと、「進研ゼミ」立て直し】
第2が「進研ゼミ」である。
ベネッセホールディングス(HD)は10日、MBO(経営陣が参加する買収)を実施すると発表した。ヨーロッパの投資ファンドEQTと組み、TOB(株式公開買い付け)を実施する。ベネッセHD株は上場廃止となる見通し。主力の通信教育「進研ゼミ」の不振が続いており、株式の非公開化で立て直しを図る。
TOBは1株2600円で実施する。9日終値(1791.5円)から808.5円(45%)のプレミアム(上乗せ幅)をつけた。全株ベースでの株式価値は約2700億円と、国内のMBOでは最大規模となる。
まずEQTが特別目的会社(SPC)を設立し、TOBなどにより約83%のベネッセHD株を約2080億円で取得する。その後、残りの約17%の株式を持つベネッセHD創業家の資産管理会社を完全子会社化する。
TOB完了後にSPCに対し創業家が出資。最終的にはEQTが6割、創業家が4割、SPC株を保有する形にする。議決権ベースでは5割ずつにする。
EQTはスウェーデンの産業・金融界に影響力を持つウォーレンバーグ家に由来する大手投資会社。2021年に日本に拠点を設置し、22年にアジア系のベアリング・プライベート・エクイティ・アジアと統合した。EQTにとって日本で初めての投資案件となる。
ベネッセHDは主力の「進研ゼミ」事業の苦戦が続いている。小学生〜高校生の会員数は23年4月時点で前年比14万人減の160万人だった。10年前と比べ約4割減少した。デジタル教材の導入などで立て直しを進めていたが、会員数減に歯止めがかからなかった。
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本業のもうけを示す連結営業利益は23年3月期で206億円と、13年3月期に比べ46%減った。介護や保育など多角化を進めるほか、22年には不採算だった語学教室の「ベルリッツ」事業の売却など構造改革を進めた。ただ、主力事業の抜本的な立て直しには非公開化が必要だと判断した。
【関連記事】ベネッセ、「ベルリッツ」売却も 「進研ゼミ」に黄信号
ベネッセは1955年に生徒手帳などを発行する福武書店として設立した。69年に進研ゼミ高校講座の前身となる「通信教育セミナ」事業を始めた。創業家出身の福武総一郎氏が長く代表取締役を務めていたが、14年に最高顧問に退いた。
日本マクドナルドホールディングスのトップから転じた原田泳幸氏が14年に会長兼社長に就いたが、同年に個人情報漏洩問題が発覚し、会員数が減少。16年に退任した。その後もトップ交代が続いた。
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【たかが髪形、されど髪形 慶応野球「エンジョイ」の真意 森林貴彦 慶応義塾高野球部監督】
11日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・これが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい
・高いレベルの喜びは、練習や競争を乗り越えた先に
・選手との距離感はいつも悩み、言葉には気を使う
この夏の甲子園、107年ぶりの全国優勝を遂げた慶応義塾高(神奈川)のナインは笑顔の「エンジョイ・ベースボール」で汗と涙の色濃い高校野球に、新風を吹き込んだ。これからの高校野球は「勝ち」を目指しつつも、自立心を育む人材養成面などの「価値」が求められるという森林貴彦監督に、真意を聞いた。
神奈川県大会決勝で横浜、甲子園で仙台育英(宮城)という強豪を相次いで破った。「プレーボール」の言葉通り、遊び、楽しむ野球の原点に立ち返っての戴冠だった。
「夏の甲子園3回戦の広陵(広島)戦で、初回に丸田湊斗選手が三塁盗塁を決めて先制したが、サインは出していなかった。彼が自分で決めた。三盗も選択肢として準備していたが、初回から(危険を冒す)サインは出せない。私よりよほど度胸、判断力がある。勇気も要るし、根拠がないと走れない。これからもそういう場面に出合いたい」
――自分で考える楽しさを味わってほしい、と思ったきっかけは。
「高校2年の夏、上田誠監督が『二塁けん制の動きやサインを自分たちで決めてみなさい』とおっしゃった。内野手の私と投手、捕手が練習後の暗くなったグラウンドで、ああでもないこうでもないと話し合った。自分たちで物事を進めるワクワク感は高校野球の一番の思い出だ」
「チームの決め事を守り、人と同じことをするだけでは人生、面白くない。ますます価値観が多様化し、自分なりの幸せを選び取る時代になると思うので、これをやりたい、自分にとってこれが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい」
――相当の野球技術がないとエンジョイはできない。
「もちろん、ただ笑顔でやればうまくいくというものではない。頂点を目指す以上、日々の地道な苦しい練習、ライバルとの競争、試行錯誤がある。そこを乗り越えるところに、より高いレベルの喜びがある。それがエンジョイの真意だ」
「言葉には気を使っている。準々決勝の沖縄尚学戦は五回まで0-2の劣勢。前半戦終了時に『第1試合は完敗だから、第2試合を頑張ろう』と言った。同じ言葉ばかりだと、選手はまたかよ、という顔をする。新鮮な言葉がないか試合中に考えていた。あれでみんな『これからだ』となったのか、六回に逆転できた」
「ミーティングでだらだらしゃべりたくないので、試合ごとに四字熟語でテーマを伝える。『徹頭徹尾』とか『勇往邁進(まいしん)』とか。甲子園の決勝は『大願成就』。これしかない、と一番簡単に決まった」
コツは「全力で頑張るな」
――筑波大の大学院で、勝負事でしゃかりきになってはいけない、という研究成果を残した。
「頑張り度合いとパフォーマンスの関係を調べると、100%の力で走ったときに最高の速度が出るわけではない。8割の力で走ると9割の速度が出る。野球の投球でも全力で投げるより、少し力を落とす方が球速も出て、制球が定まる。全力でやるなということ。各界の達人が極意として力を抜くとおっしゃる。それと同じではないか」
「エラーをした野手や失点した投手が、取り返そうと思うのもよくない。それで取り返せるなら、そんな簡単なことはない。過去は切り捨て、未来を向いて今やれることをやる。練習試合では反省もするが、公式戦で過ぎたことを引きずっていいことはない」
――自主性は大事だが、選手任せの危うさも。
「1代前の3年生は一人ひとりが自立していた。そこで私もある程度任せたが、任せ過ぎたというか、お互いの意思疎通が足りなかった気がする。選手との距離感はいつも悩む。就任当初は私が面倒みなきゃという意識もあって、こまごま言い過ぎていたと思う。失敗は多々ある」
高校野球ではいまだに体罰案件が報告され、フェアでないプレーもみられる。勝利にとらわれ、選手の人間的成長が置き去りにされる現状は社会に通じる課題のようだ。
教育現場で無力を痛感
「(打者が横目で捕手の位置を確認する『カンニング』は)今年の甲子園でだいぶ減ったと感じたが、ゼロではない。チームではなく選手個人の問題だと思うが。高校野球の2年半は短く指導者も時間がない、急いで詰め込まないと、と思うと無理が出る。体罰を受けて育った選手が指導者になって、同じことをする。負の循環を今、食い止めないといけない」
「高校で完成する必要はなく、数年後にいい選手になってくれたらいい、という気持ちでいる。今、先生(慶応義塾幼稚舎教諭)として小学3年生を教えているが、無力を痛感するばかり。漢字、筆算、九九……。できたかなと思った次の日に子どもはできなくなる。一方、教えたことのないことを、いつのまにかできるようになっている。僕がいる意味があるのかな、と日々自問自答する。忍耐強く(成長を)待つ点で、野球の指導者としてもいいトレーニングになっている」
――理想を掲げ、変革を唱えれば風当たりも強くなる。
「チームの目標は『慶応日本一』だが、その先の目的として『恩返し』と『常識を覆す』を掲げてきた。今年の選抜大会でも『高校野球を変えたい』と言って甲子園に乗り込んだが、初戦敗退。簡単に言うな、できるわけないだろう、という声があった。ただ、それをバネにして、夏こそという思いが強まり、成長の材料になった」
――甲子園では選手たちの自由な髪形が注目された。
「いまだにそんなことが話題になるのかと残念に思う一方、これを入り口に(変化への)議論が進めばそれでいい、と思った。問題は髪形そのものより(無思慮に前例に従う)思考停止、旧態依然、上意下達の部分。高校野球はこういうものだという枠を誰かがつくり、枠の中でずっとやってきた。今年の優勝で、一石を投じることはできたかと思う」
――サインに縛られない選手は本当に育つか。
「野球がどういう人材を社会に送り出せるか、野球型の思考が今後の社会にどうマッチするのか考えると、危機感を覚える。勝つために手段を選ばないといった思考が、高校生以下の世代でも、ゆがみとして出ている。そこで打ち出したのが『成長至上主義』。ただただ勝利を目指して頑張ろう、ではなくて、一人ひとりが人間的に成長し、周りも成長させる。選手としての成長、人間としての成長が車の両輪となったら強い。それによって、実は勝利にも近づくのではないか」
「高校野球には堅苦しい部分、個性や自由が認められづらい部分がある。親の負担も大きく、(子どもに)野球が選ばれにくくなっている。甲子園は盛り上がっているようにみえて、全国の野球部や部員の数は減っている。このままの形では続かない。高校野球はスポーツの枠を超えて文化として定着し、変えるのは大変だが、我々が変われば人の育成方法なども変わるきっかけになるかもしれない。社会的な意義は大きい」
――激戦区の神奈川を勝ち抜くのは至難。優勝後、来春の選抜大会につながる試合に敗れた。
「甲子園から帰って翌々日に練習を始めたが(県大会までの)時間のなさ、慌ただしさは想像を超えていた。ただ選手たちは、また新しい気持ちでいてくれている。人生100年、自分もまだ折り返し点。選手に成長を求める以上、私自身が成長するマインドを持っていなければ。現状維持でいい、となったときは退場すべきだと思っている」
もりばやし・たかひこ 1973年東京都渋谷区生まれ。慶大法卒業後NTTへ。3年で退職し、高校野球指導者として筑波大院で指導理論を研究。2015年から母校慶応高を率い、春夏計4度甲子園出場。23年夏、107年ぶりの全国優勝に導いた。慶応幼稚舎教諭。
あえて寄り道、柔軟性養う(インタビュアーから)
慶応の選手たちが夏の甲子園を「エンジョイ」できたのは「そもそも、慶応にいる時点で半ば人生の勝ち組だから」というやっかみまじりの見方があるが、それは違うようだ。
青春まっただ中の高校生であっても野球がすべてではいけない。そう考える森林監督は慶応OBなどから幅広い分野の話を聞く機会を設けている。
政府系金融機関を辞め、瀬戸内海の島で農業にいそしむ人から「都心の大会社に勤めるだけが人生ではない」と学んだ。大リーガー・菊池雄星投手の元マネジャーから、華やかな印象と違って努力の人と聞いた。強豪校が大会準備に追われている時期に、知的障害のある生徒の硬式野球への参加を進める取り組みと連携し、合同練習を行った。
あえて寄り道し、様々な価値観に触れることで「野球オンリー」にはない心の柔軟性が養われているようだ。(編集委員 篠山正幸)
【「日本はGXに本気か」 海外マネー3300兆円が品定め 資産運用立国に挑む 開国の障壁(1)】
13日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・日本は海外からの投資を集める「運用開国」を目指す
・脱炭素に向けて産業転換を段階的に進める戦略を掲げる
・海外投資家は日本企業のGXへの向き合い方を注視
政府は海外運用会社を招く「運用開国」に乗り出した。家計金融資産2100兆円が外に出ていくばかりでは日本の成長に寄与しない。国内に投資機会をどう生むかが最大の課題だ。
【「資産運用立国に挑む」連載記事】
•日本株の運用会社「空洞化」 非効率な慣習、参入阻む
10月6日、首相官邸。米運用会社ブラックロックの呼びかけで中東の政府系ファンドや欧米年金など世界の機関投資家・運用会社の代表約20人が集まった。保有・運用額は計3300兆円に上る。関係者は海外勢が来日した目的を「『具体的な投資案件を見せてくれ』ということだ」と語る。
政府が掲げるのが、化石燃料からクリーンエネルギーへの産業構造の転換を目指す「グリーントランスフォーメーション(GX)」だ。欧州のような一足飛びの脱炭素でなく段階的に移行(トランジション)する戦略で、官民合わせて10年で150兆円が必要とはじく。シンガポールの政府系ファンドGICは7月、現地を訪れた自民党の片山さつき金融調査会長に「日本のGX投資の定義に関心がある」と語った。
海外マネーを呼び込もうと企業も動き始めた。9月に増資などで約2040億円を調達したJFEホールディングス。「構造改革をやり遂げ、量から質へ転換する」。調達先を海外に絞り、欧米などの投資家約100人にオンラインで訴えた。
JFEホールディングスは構造改革のため川崎市の高炉を止めた
利益の見込みやすい電気自動車向け高級鋼板の投資に公募増資、中長期の脱炭素投資に新株予約権付社債(転換社債=CB)で得た資金を充てる。川崎市の高炉を止める一方、2030年度までに脱炭素に約1兆円投じる計画だ。増資で外国人株主比率は3割と3月末の24%から高まった。
日本企業のGX関連の資金調達は増えている。資金使途を環境事業に限る環境債の発行は23年1〜10月に1兆6000億円超と、年間で最高だった21年をすでに約2割上回った。温暖化ガス排出量の多い企業による移行債も21年からの累計で約6000億円に上る。
アジアではトランジションへの関心が高く、50年までに40兆ドルの脱炭素投資の資金需要があるとみられる。日本に脱炭素マネーを集め、アジアのGX投融資の資金が行き交うハブへと育てる余地はある。
ただ、投資家は日本企業がどこまで積極姿勢に転じたのか、なお半信半疑だ。
「日本は脱炭素にどのくらい真剣なのか」。ENEOSホールディングスのもとには政府のGX戦略に確信を持てない海外投資家から多くの質問が寄せられる。同社は再生可能エネルギー開発や水素の供給網構築などに取り組むが「技術のブレークスルーの時期など不透明で、30年度以降の具体的な計画を示すのは困難」とする。
日本企業はバブル崩壊以降、設備投資や研究開発を抑えて借入金返済を優先してきた。日銀の資金循環統計によると民間企業部門(金融除く)は戦後、資金不足だったが、1998年から資金余剰の局面に転じた。海外マネーが注目する今こそ、日本が積極投資に打って出る好機となる。
GXだけでなく、省人化や農業など日本経済の課題は多い。投資機会をどれだけ増やせるか。運用立国実現のハードルは高い。【資産運用立国に挑む 第1部】
【海外新薬、国内で早期承認へ 日本人の初期治験廃止】
同じ13日の日経ニュースメールは報じた。
日本で薬を売り出すために、臨床試験(治験)の過程で日本人で安全性を別途確認しなければならない制度が原則廃止される。欧米で承認された新薬の7割は日本で承認されておらず、海外で使われている薬が日本で入手できない「ドラッグ・ロス」が生じてきた。新薬の日本での早期流通を促し、患者の不利益の解消につなげる。
厚生労働省は近く、日本人での追加的な初期治験が原則として必要ないことを記した通知を出す。数カ月以内に制度は廃止される見通しだ。
医薬品が日本国内に出回るには、3段階の治験が必要になる。1番目にあたる第1相は少数の健康な人に薬を投与して安全性を確認する。第2相は少数の患者に投与し、効き目や副作用を調べる。第3相では世界各国の多数の患者を対象にする。
第1、2相の治験は、製薬会社が新薬を開発した国でやることが多い。しかし日本で販売するには原則として、第3相に進む前に別途、日本人への初期治験にあたる第1相の追加調査が求められる。
厚労省は「国内の環境で暮らす日本人への安全性を確認するため」と説明する。だがこれは日本独特のルールで他国ではほとんど求められない。
この追加調査が妨げとなり、「ドラッグ・ロス」や海外で使用されている医薬品の日本での承認が遅れる「ドラッグ・ラグ」が深刻になっている。
厚労省は追加的な初期治験をなくしても、第3相の治験で日本人の安全性は確認されると判断した。抗がん剤など強い副作用が起こりやすい一部の薬には追加調査が残る可能性がある。
2020年時点で米国と欧州連合(EU)で承認された新薬のうち、日本では72%が未承認で数字は上昇傾向にある。09〜17年に開発された新薬で、世界で初めて承認された時期と国内承認された時期の差は54.1カ月。韓国(28.2カ月)の約2倍だ。
治験には参加者を集めるコストや時間が欠かせない。グローバルな製薬会社にはこの手間を嫌って日本での販売を断念したり、市場投入の時期を他国に比べ大幅に遅らせたりしている。
厚労省のヒアリングに対し、製薬会社は「日本人向け治験が新薬投入の障壁となっている」という声を寄せた。欧米系の製薬会社も「日本人への投与経験がないこと以外に(追加調査が必要な)理由が十分に示されておらず、欧米の本社に理解されない」と指摘した。
たとえば消化管の壁にできる悪性腫瘍である消化管間質腫瘍(GIST)は年間10万人に1人から2人程度に発症する。治療薬「アバプリチニブ」は日本では手に入らない。米国では20年1月、欧州では20年9月に承認されている。
新型コロナウイルス禍でも、日本がワクチン承認で欧米から後れをとった原因の一つが追加治験だった。
米ファイザーは、海外での大規模治験の結果をもとに20年12月にワクチンの製造の承認を申請した。だが追加治験などへの対応で承認までに2カ月ほどかかった。
厚労省はルール変更について、医薬品の開発を担う海外の製薬会社への情報発信にも力を入れる。24年度には米国に医薬品医療機器総合機構の事務所を設立し制度の周知に生かす。
製薬大手アストラゼネカ社では、世界同時開発などの取組で同社の日本でのドラッグ・ラグやロスの問題はほぼ解消している。一方、同社はベンチャー発の先端的な医薬品のライセンスを取得し、残りの治験を自社で担う場合がある。日本人への初期治験の原則廃止で、開発期間が短縮されれば「非常にポジティブに捉えられる」という。また、日本市場で発売がしやすくなることへの「大きな一歩」だと期待を寄せる。
ドラッグ・ロスやラグの解消には他にも課題がある。例えば患者が少ない希少疾患や小児がんなどはコストをかけても利益が出にくいため、製薬会社は開発を敬遠する。米国は成人用のがんの薬を開発する際には小児用も開発することを義務づけている。日本には同様の制度はない。
【小売り、食品PB比率17%で最高 イオンやセブンが新商品】
14日の日経速報メールは報じた。
小売り大手が食品など生活必需品で割安なプライベートブランド(PB)を拡充する。イオンは食品PBの半分を刷新し、セブン&アイ・ホールディングスは低価格帯PBを倍増させる。スーパーの食品販売額に占めるPB比率は10月に過去最高の約17%に高まり、店頭価格の上昇は鈍化している。物価押し上げの主軸はモノからサービスに移る。
イオンはPB「トップバリュ」で生鮮品を除いて約5千ある食品のうち2500品目を新商品に切り替える。日用品などと合わせたPB売上高を2024年2月期に前期比11%増の1兆円超に高める。セブン&アイはPBの中でも低価格シリーズ「セブン・ザ・プライス」の品目を24年2月末までに160品に倍増させる。
ベイシア(前橋市)は新しいPB「ベイシアプレミアム」を始めた。既存PBは新製品に順次切り替えて24年2月までに100品目以上を展開する計画だ。西友も生鮮食品の新PB「食の幸」で現状65種類の品目数を増やす。
一般にPBはメーカー品より1〜3割程度安い。小売業にとって稼げる商品でもある。物流や宣伝費などを抑えられるため、粗利益率は15〜20%とされるメーカー品と比べ10ポイント程度高い。
メーカー品とPBは物価高でともに値上がりしているが、消費者は安いPBにシフトしている。
日本経済新聞社と調査会社のインテージ(東京・千代田)が全国のスーパーなどから集めたPOS(販売時点情報管理)データを分析したところ、加工食品や調味料、清涼飲料、アルコール飲料などを含む食品PB(生鮮品除く)の割合は10月に16.8%になった。統計がある12年以降で最高だ。
品目別のPB比率は冷凍野菜が57%と最多で、ハムが34%、牛乳は32%だった。
PBシフトの背景には食品価格の上昇がある。帝国データバンクによると、22年の食品値上げは約2万6000品目に達し、23年は1〜10月の累計で3万品目を超えた。総務省の消費者物価指数(食料、2020年=100)も10月、東京都区部で116と21年1月(99.7)から16.3%上昇。消費者は生活必需品への節約志向を強めている。
PBシフトは物価動向にも影響する。牛乳の店頭価格の前年比上昇率は10月の19%から足元は11%に縮まった。
POSデータをもとにスーパーなどの店頭価格の動きを示す「日経ナウキャスト日次物価指数」をみると、11月12日時点で前年比6.7%(7日平均)上昇したものの、今年8月のピーク(同9.2%)に比べ鈍化した。
その中で物価全体を下がりにくくしているのが旅行やレジャーなどのサービス価格だ。日本のサービス価格は長らく低迷していたが、9月は上昇率が2%に高まった。
サービス価格は賃上げの影響を受けやすい。足元で賃上げは物価上昇を下回っており、実質賃金は9月まで18カ月連続でマイナスだった。物価を下支えするサービス価格の腰折れを防ぐには、消費者の財布のひもを緩める継続的な賃上げが不可欠だ。
24年の春季労使交渉に向け連合が要求方針を発表した。サントリーホールディングスなど交渉が本格化する前に賃上げ方針を表明するところも出ている。企業の継続的な賃上げ力が問われる局面だ。(浅山亮、マクロ経済エディター 松尾洋平)
【エクソン、リチウム生産へ 30年までにEV電池100万台分】
同じ14日の日経速報メールは報じた。
【ヒューストン=花房良祐】石油メジャーの米エクソンモービルは13日、米南部アーカンソー州で2027年から電気自動車(EV)電池用のリチウムを生産すると発表した。北米以外での生産も視野に入れ、30年までに年100万台分のEV用電池のリチウムを供給。世界有数のEV向けリチウム供給会社を目指す。
石油メジャーがリチウムの大規模生産に乗り出すのは初めて。EVや電池のメーカーと供給に向けた協議に入った。23年初めにアーカンソー州の12万エーカー(約485平方キロメートル)の敷地で採掘する権利を獲得した。
石油・天然ガスの掘削技術を活用して地下約3000メートルからリチウムを含有する塩水をくみあげる。従来より環境負荷の低い新技術でリチウムを分離し、現場のプラントで電池用の素材に加工する。30年までに年約10万トン(炭酸リチウム換算)を生産する見込み。
リチウムはレアメタル(希少金属)で、リチウムイオン電池の製造に使用する。EVの増加などでリチウム需要は30年までに4倍になる見通しで、供給不足の懸念がある。低炭素部門トップのダン・アマン氏は「リチウムはエネルギー転換に必要で、エクソンは(経済の)電化に向けて主導的な役割を果たす」とコメントした。
米地質調査所(USGS)によると、22年の世界のリチウム生産のうちオーストラリア、南米チリ、中国の3カ国で合計約9割を占め、偏っている。一方、米国の生産量はほとんどない。加えて、従来技術によるリチウムの精錬では中国が世界の大半を担っている。米国で生産すればサプライチェーン(供給網)のリスクも低下する。
EVと電池の普及に伴い、レアメタルの生産・精錬が少数の国に偏在している課題が浮き彫りになっており、バイデン政権は米国での生産を支援する。22年には国産の電池素材を使用したEVの購入補助制度を導入した。
エクソンは太陽光・風力発電について石油開発との相乗効果が見込めないとして投資に慎重な一方、二酸化炭素を回収して地下に貯留するといった石油開発の掘削技術がいかせる低炭素ビジネスには積極的だ。地下を掘削するリチウム生産も石油開発の技術が活用できるとみている。
天候に左右される太陽光・風力発電は発電が不安定なため、蓄電池との組み合わせが不可欠だ。このため再生エネの普及に伴い蓄電池は増加する見通しで、リチウムの生産会社がエネルギー転換の時代を勝ち抜くとの見方が高まっている。
米S&Pグローバルのダニエル・ヤーギン副会長は「エネルギー業界は『ビッグ・オイル』(石油メジャー)から『ビッグ・ショベル』(大手鉱山会社)の時代に移っていく」と話している。
【米下院、つなぎ予算案を可決 政府閉鎖は回避へ】
15日の日経速報メールは報じた。
【ワシントン=高見浩輔】米連邦議会下院は14日、予算執行を現行水準のまま2024年1〜2月まで続ける「つなぎ予算案」を可決した。上院でもすでに与野党のトップが法案への支持を表明している。政府閉鎖の回避に向けて大きく前進した。
米議会は2024会計年度(23年10月〜24年9月)の予算案をまだ策定しておらず、9月末に11月17日までのつなぎ予算を成立させて政府機関の閉鎖を回避していた。期限が近づき、再延長が必要になっている。
•【関連記事】米政府閉鎖、土壇場で回避 11月までのつなぎ予算成立
つなぎ予算案は、野党・共和党が過半数を握る下院で10月に新たに議長になったジョンソン氏が提案した。軍事や退役軍人、交通、住宅などの予算は24年1月19日まで、それ以外は2月2日まで執行を続けることができる。
民主党の下院議員らがジョンソン氏の案に賛成したのは、懸念していた大幅な歳出削減が盛り込まれなかったためだ。譲歩した内容の法案を蹴れば、政府閉鎖の責任を民主側が背負うリスクもあった。
•【関連記事】米下院新議長に保守派ジョンソン氏 内紛抱え手腕未知数
上院でも民主トップのシューマー院内総務が法案を支持する考えを示している。上院を通過すれば法案はバイデン大統領の署名を経て成立する公算が大きい。
下院共和はわずかな議席数の差で優位を保っているため、強硬派の一部が反対するだけで法案が通らない機能不全に陥っていた。マッカーシー前議長は9月末、民主の協力を得て11月17日までのつなぎ予算案を可決させたが、その直後に解任された。
強硬派議員らは今回の法案にも反対したが、議長の解任動議に踏み込む動きは今のところ起きていない。前議長の解任後、下院共和では議長のなり手が3週間決まらなかった。
複数の米メディアによると、ジョンソン氏はひとまず政府閉鎖を避けつつ、年明けにかけて調整する24会計年度予算案で歳出削減を強く求める構えだ。
つなぎ予算の期限を2つに分けたのは、バイデン政権と民主党が「包括予算案」と呼ばれる一括法案で予算案を通すのを回避する狙いがある。米国の予算案は本来、12本の予算案を個別に成立させる必要がある。
政府閉鎖を回避できれば今後は予算案に盛り込まなかったウクライナ支援が大きな議題となる。共和内には国境警備など国内に資金を振り向けるべきだと反発が大きい。与野党で意見の隔たりは大きい。
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。前嶋和弘上智大学総合グローバル学部 教授
ひとこと解説
共和党の強硬派の自由議連の案だった「2段階予算案」を共和党穏健派と民主党側が拒否できずに通過。民主党側の反対は2,共和党側は93。さらに強硬な共和党議員が歳出削減などが入っていないため拒否。「強硬派議長(ジョンソン)の方が強硬派の反対が少なくなる分だけつなぎ予算成立の可能性が高くなるかもしれない」と何度かいろいろなところでお伝えしましたが、そのとおりになりました。 指導力が全く未知数だったジョンソン下院議長にとっては、最初の大きな仕事。「妥協を許さない」強硬派だったはずのジョンソン。議員個人としてはおそらく民主党との徹底した財政対決を望んでいたはずですが、現実的に政府一時閉鎖回避を重視。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
同じ15日のニュースメールは次のように報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は紅葉シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる訪日客が増える。
主要国23か国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で(2.7%増)だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店のインバウンド売上高が3201億円と、18年同期を14%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
【イスラエル軍、ガザ北部シファ病院で「作戦実行中」】
同じ15日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は15日、パレスチナ自治区ガザ北部にある地区最大のシファ病院で「特定のエリアで、精密かつ標的を絞った作戦を行っている」と明らかにした。軍は同病院やその周辺の地下にイスラム組織ハマスの司令部があると主張しており「病院内にいるすべてのハマスのテロリストに投降を求める」と強調した。
米CNNは同日、イスラエル軍の戦車がシファ病院の敷地内に入ったとの目撃情報を報じた。国連機関によると、シファ病院には12日時点で患者が600〜650人、避難住民が約1500人いたという。
イスラエル軍は作戦部隊に医療チームやアラビア語を話す兵士を同行させていると説明し「民間人に危害が及ばないよう配慮している」と強調した。作戦前日に「ガザの関係当局に対し、病院内での軍事活動を12時間以内に中止するよう再度伝えたが、応じなかった」と主張した。
一方、ハマスは病院の軍事利用を否定している。ロイター通信によると、ハマスは15日、病院突入の責任はイスラエルと米国の双方にあると非難する声明を出した。
イスラエル軍は14日、シファ病院の近くにありハマスの重要拠点だとするシャティ難民キャンプのほか、警察本部など複数の施設を制圧したと発表した。13日にはガザ北部のランティシ病院にも部隊が踏み込み、病院地下に武器の保管や人質の拘束などハマスの作戦に利用された痕跡があったと主張していた。
ガザ北部ではシファ病院などが燃料不足で機能を停止するなど、医療体制が崩壊しつつある。バイデン米大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に「病院は守られなければならない」と強調していた。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は14日、ハマスがシファ病院を含む複数の病院を軍事利用していることを確認したと明らかにし「戦争犯罪だ」との認識を示した。ロイター通信が伝えた。
ホワイトハウスはバイデン氏とイスラエルのネタニヤフ首相が14日に電話会談したと発表した。ハマスが拘束する人質の救出や病院の状況について協議したとみられる。
【日経平均3万3000円乗せ 陰の主役はNVIDIA】
同じ15日の日経ニュースメールは報じた。
15日の東京株式市場で日経平均株価は大幅続伸し、前日比823円77銭(2.52%)高の3万3519円70銭で取引を終えた。前日比の上げ幅は2023年で最大となり、節目の3万3000円をおよそ2カ月ぶりに上回った。米利上げの打ち止め観測が強まり、国内でも金利高が逆風となるグロース(成長)株が買い戻された。ハイテク株主導の相場の陰の主役と声が上がるのが、米エヌビディアだ。
15日は半導体検査装置大手のアドバンテスト株が一時8%高まで買い進められるなど、半導体関連株の上昇が目立っている。半導体製造装置の東京エレクトロン株とあわせて日経平均を170円強押し上げた。
アドテストはPER(株価収益率)が60倍に迫り、割高株の筆頭だ。将来の高い利益成長が株価に織り込まれている分、金利上昇は現在価値に引き直す際の割引率を高めるため、株価の下押しにつながりやすい。
14日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びは市場予想以上に鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止め観測が広がった。10月下旬に一時5%を超えていた米長期金利は4.5%を下回り、割高株への逆風は弱まる。アドテスト株は11月1日に付けた直近安値から半月で3割上昇した。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
15日の日経速報メールは報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は行楽シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる客が増える。
主要国23カ国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で2.7%増だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店の4〜9月のインバウンド売上高が353億円と、18年同期を17%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
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【いすゞ、電池交換3分のEVトラック 自前で取り換え拠点】
同じ15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
いすゞ自動車は電池交換式電気自動車(EV)トラックの事業化に乗り出す。3分で電池交換が可能な車両を開発し、取り換えを担うインフラも自社で運用する。EVは充電に時間がかかり、配送効率が落ちるのが課題だ。運転手不足問題の解消につながる電池交換式の普及を後押しするため、車両開発からインフラまで一貫して担う。
いすゞは電池を交換する「無人ステーション」をこのほど開発した。物流企業の配送拠点や給油所に売り込み、設置することを想定する。コンビニエンスストアへの荷物配送やゴミ収集車などに使う小型EVトラック「エルフ」をベースにした車両を開発した上で、2025年に実証実験を始める。
ステーションではロボットが電池を取り外し、充電済みの電池と交換する。交換時間は最短で2分30秒程度としており、トラックが再び走行可能になるまで3分以内ですむという。充電済みの電池を用意したり、設備の保守や点検をしたりといったステーションの運用もいすゞが自ら手がける可能性がある。
充電式のEVトラックは充電に10時間程度かかり、軽油を燃料とするディーゼル車と比べて配送効率が低いのが課題となっている。商用車では電動化が遅れており、調査会社の矢野経済研究所によると、世界の商用車販売台数に占める電動化率(ハイブリッドなど含む)は2021年時点でも1.2%にとどまる。
電池交換式であれば、短時間の交換で配送を続けることができる。物流業界ではトラックやバスなどの運転手に残業規制が適用され、人手不足が見込まれる「2024年問題」に直面している。電池交換式が広がれば、脱炭素の対応と配送効率の維持への両立が期待できるとされている。
既に軽自動車の商用車では開発が進む。ホンダはヤマト運輸と11月から交換式電池を使った軽商用EVによる集配業務の実証実験を開始すると発表している。ホンダの軽EV「MEV-VAN Concept(エムイーブイバン コンセプト)」を活用し、太陽光発電の電力を使う。交換式電池でも積載量などの性能を維持できるかどうかを調べる。
ホンダの交換式電池は、自社の電動スクーターや建機メーカーのコマツと共同開発した電動小型ショベルに搭載されている。コマツは小規模な土木・建築工事や配管工事などでのニーズを見込んでいる。車以外でも用途拡大が進んでおり、国内の新興EVメーカーの間でも交換式電池の導入が進む可能性がある。
交換式電池は中国やインドなど新興国で普及している。中国の新興EV大手、上海蔚来汽車(NIO)は充電設備の設置と並行し、電池を交換する拠点を増やしている。(淡海美帆)
【米中首脳、軍事対話再開で合意 習氏「世界に重い責任」】
16日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・1年ぶりの対面会談が終了。昼食など含め4時間強
・AIの政府間対話や気候変動対策の作業部会設置を確認
・習氏は台湾統一に意欲。米国の台湾への関与けん制
【サンフランシスコ=田島如生、坂口幸裕】バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は15日午前(日本時間16日未明)、米西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で会談した。途絶えている米中両軍高官の対話再開で合意した。意思疎通を維持し、台湾周辺や南シナ海での偶発的な衝突を防ぐ狙いがある。
• 【関連記事】バイデン氏「習近平氏は独裁者」 米中首脳会談直後に明言
両首脳が対面で会うのは1年ぶり。会談はサンフランシスコ中心部から40キロほど南にあるカリフォルニア州ウッドサイドにある「ファイロリ」邸で開いた。会談は4時間強で、両首脳は少人数での昼食会後、庭園を散歩した。
バイデン氏は会談後の記者会見で「建設的で生産的な議論だった」と述べた。米中の競争が「紛争に発展しないように(関係を)合理的で管理可能なものにするのが私の責任だ」と表明。滞っていた軍事対話の再開で合意した重要性を訴えた。
中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えない一方、米国が台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を維持すると改めて明言した。2024年1月の台湾総統選で中国が選挙介入しないよう警告した。
習氏は会談で「世界経済は回復し始めたが、その勢いは不十分だ。産業サプライチェーン(供給網)の混乱や保護主義の台頭といった問題は顕著になっている」と言明した。経済安全保障を理由に先端半導体などの対中輸出・投資規制を主導する米国を批判した。
習氏は地球は十分に大きく、米中が共に成功するのは可能だとも指摘した。「私とバイデン大統領は中米関係のかじ取り役であり、国民、世界、そして歴史に対して重い責任をもつ」と語った。
米政府や中国国営中央テレビ(CCTV)によると、両首脳は両軍の高官協議のほか、国防当局の対話や海上軍事安全保障メカニズム会議を再開させると確かめた。両軍の戦闘区域のトップ同士で連絡を取り合うことも申し合わせた。
米政府高官は、オースティン米国防長官と中国側の軍高官が「数週間以内」に会談する方向で調整すると説明した。米中は台湾海峡や南シナ海で軍事的な緊張を強めている。両国の軍事対話は22年8月、当時のペロシ下院議長が台湾を訪れたのを境に滞った。
バイデン氏は会談で、台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を改めて主張した。CCTVによると、習氏は台湾について「中米関係の最も重要かつ最も敏感な問題だ」と説明し「必ず統一する」と強調した。
両首脳はAIに関する政府間対話を立ち上げると確認した。AIの軍事利用への懸念が国際的に広がっていることが背景にある。気候変動対策に関する作業部会の設置でも合意した。
麻薬対策での協力に向けた作業部会を立ち上げることも申し合わせた。医療用麻薬フェンタニルの過剰摂取による死者が米国内で激増しているのを踏まえた。中国は原料となる化学物質の主要製造国だ。
習氏は先端半導体などの対中輸出・投資規制に関し「中国の正当な利益を著しく損ねている」と問題視した。「中国の科学技術の抑圧は中国の質の高い発展を抑制することだ」と話し、規制措置の撤廃を要求した。
習氏の訪米は17年4月以来、6年半ぶりとなる。サンフランシスコ滞在中、岸田文雄首相との会談も調整している。15日に開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での演説も予定する。
米中首脳会談は22年11月にインドネシア・バリ島で開いて以来だ。両首脳は当時、偶発的な衝突防止に向けて対話を続けると合意した。米軍が23年2月、米本土上空に飛来した中国の偵察気球を撃墜したことをきっかけに両国関係は冷え込んだ。【関連記事】
•バイデン・習氏、変質した「個人的関係」 起点は12年前
•米大統領「危機時に電話できる関係に」 米中首脳会談で
•米中首脳会談の焦点は? 軍事対話再開探る、習氏が訪米
【日中首脳が1年ぶり会談 「戦略的互恵関係」を再確認】
17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【サンフランシスコ=秋山裕之】岸田文雄首相は16日(日本時間17日午前)に訪問先のサンフランシスコで中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と1時間ほど会談した。個々の懸案で対立しても共通利益の追求を優先する「戦略的互恵関係」を再確認した。
•【関連記事】日中の「戦略的互恵関係」、6年ぶり復活が示す難路
日中首脳会談は2022年11月にバンコクで開いて以来、1年ぶり。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でともに訪米する機会を利用した。15日にはバイデン米大統領が習氏と会い、両軍高官の対話再開で合意している。
首相は会談の冒頭に「日中は隣国として共存、繁栄し、地域と国際社会をリードする大国として世界の平和と繁栄に貢献していく 責任を有する」と強調した。「より明るい日中関係の未来を切り開けるように力を合わせていきたい」と述べた。
習氏は両国の平和共存は正しい方向性だと指摘し「共通利益を重視し、相違を適切に管理すべきだ」と主張した。「戦略的互恵関係の位置づけを再確認し、新たな意味を与え、新時代の要求に合う中日関係の構築に力を尽くすべきだ」とも語った。
戦略的互恵関係は06年に当時の安倍晋三首相が訪中し、胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席との会談で打ち出した概念だ。胡主席が08年に国賓で来日し、福田康夫首相と「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明をまとめた。
日中は政治体制が異なり、日米のように民主主義といった共通の価値観を共有しにくい。解決困難な課題で対立を深めず共通利益を求めることで、安定的な関係を維持する狙いがある。
両首脳は東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出について解決を目指す方針で一致した。首相は「専門家のレベルで科学に立脚した議論を行う」と述べた。中国は「核汚染水」と呼んで反発していた。
首相は中国による日本産水産物の輸入禁止を撤回するよう求めた。中国当局に逮捕された邦人の早期解放なども主張した。
沖縄県・尖閣諸島周辺で続く中国公船による領海侵入をめぐっては東シナ海での偶発的な衝突回避を話し合った。日本の排他的経済水域(EEZ)に中国が設置したブイの即時撤去を求めた。
中国は台湾について譲れない「核心的利益」と位置づけ、日本に関与しないように求めている。首相は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
日中ハイレベル経済対話を適切な時期に行うことでも一致した。気候変動対策など地球規模の共通課題で協力を申し合わせた。
2国間の問題でも意思疎通を強化する。日中の通商当局間で重要鉱物の輸出管理といった貿易問題に関する対話枠組みを新設する。企業関係者の安全確保も含めたビジネス環境に関する協議体も創設する。
首相は訪米に先立ち、対中外交について「建設的かつ安定的な関係を維持するため、お互いの努力によって関係を維持する基本方針は変わっていない」と言明している。
日中関係をめぐっては岸田首相と中国の李強(リー・チャン)首相が9月にインドネシアで立ち話した。日中平和友好条約発効45周年の10月23日にメッセージを交換した。
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・終身狙う習氏に盟友が専制反対 米中緩和には賞味期限
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。深川由起子早稲田大学政治経済学術院 教授
分析・考察
中国に限らず、グローバルサウスに限らず、「日本はアメリカの従属変数」というレッテルはかなり粘着力を持ちます。写真の習主席の表情もそのもの。G7などマルチのレバレッジ依存はやむを得ないとしても、地域研究の没落と共に日本人の中国研究者数が激減し、本来、欧米に比しての強みだった「中国の内側論理から考える」能力の低下がバイの関係構築を不利にしている感があります。かといって欧米のような情報機関の力が弱く、民間企業の持つ情報との密かな連携も希薄。これでは情報戦について行けません。「あなたは「井戸を掘った人を忘れない」国なのでは?」と鋭く切り返せる日本にならないといけないのでは。
【パナソニックHD、自動車部品会社売却へ 米ファンドに】
17日の日経速報メールは報じた。
パナソニックホールディングス(HD)は17日、自動車部品を手掛けるパナソニックオートモーティブシステムズの売却に関し米投資ファンド大手アポロ・グローバル・マネジメントのグループ会社と基本合意したと発表した。パナソニックHDがパナソニックオートの株式の50〜80%をアポロが投資助言をするファンドに売却する。
パナソニックHDは電気自動車(EV)向け電池などを成長領域に位置づけ、重点的に投資する方針を示している。成長領域以外の事業の見直しを進めており、今回の決定はその一環になる。
売却によりパナソニックオートはパナソニックHDの完全子会社から持ち分法適用会社になる見通し。2024年3月末までの正式契約締結を目指す。パナソニックHDが売却する株式数をこれから決めるため売却額は未定だが、数千億円とみられる。
パナソニックオートは自動車のコックピットシステムや電子部品、車載充電器事業などを手掛ける。2022年度の売上高は1兆2975億円、営業利益は162億円だった。グループ従業員数は約3万人。27年度に売上高営業利益率を5%(22年度は1.2%)にする目標を掲げているが、車載充電器事業の赤字などで近年は収益力が低下している。
•【関連記事】パナソニックHD、1兆円子会社売却 EV電池に重点投資
自動車業界は電動化や自動運転など「CASE」と呼ばれる技術への対応など変革を求められている。新技術に対応し、競争力を高めるためには多額の研究開発費が必要になる。パナソニックHDはパナソニックオートが単独で投資資金をまかなうのは難しいと判断し、ファンドと連携することを決めた。
パナソニックHDは17日、パナソニックオートの売却後も「グループの一員として社名やブランドは残す」とコメントした。
パナソニックHDの楠見雄規社長は5月のグループ戦略説明会で、23年度は「事業ポートフォリオの見直しを視野に入れた経営を進める」と述べ、グループ事業の売却の可能性を示唆していた。
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【伊藤忠、ビッグモーター買収検討 創業家関与なしが条件】
同じ17日の日経速報メールは報じた。
伊藤忠商事と国内の企業再生ファンドが中古車販売大手ビッグモーター(東京都多摩市)の買収を検討していることが17日、わかった。ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と組み、買収に必要なデューデリジェンス(資産査定)の独占契約を結んだと発表した。 伊藤忠とJWP連合は契約に当たり、ビッグモーターとの間で創業家が経営に関与しないことで大筋合意した。
伊藤忠と子会社で燃料商社の伊藤忠エネクス、JWPの3社連合が17日、ビッグモーターとデューデリジェンスを独占で実施することで基本合意書を結んだ。3社はビッグモーターの経営状況を詳細に分析し、2024年春までに再建を支援するかを最終決定する。
ビッグモーターは未上場で、同社株は創業者の兼重宏行氏らの資産管理会社が保有している。23年7月に自動車保険金の水増し請求などの不祥事が発覚し、顧客離れが進んでいる。中古車販売は一時、例年に比べて6割以上減った。現在も月次で赤字が続いている。
同社は現預金や売掛金などの流動資産を数百億円抱える一方、従業員への賃金支払いなどで資金の流出が続く。銀行団は借入金の借り換えに応じないなど資金繰りに苦慮しており、自主再建が困難な状況だ。
ビッグモーターはコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの協力を仰ぎ、経営再建を急いでいる。支援企業を早期に確定し経営の立て直しを目指すが、不祥事の影響が長引き難航していた。
伊藤忠はグループで自動車リース事業を手掛けているほか、ニッポンレンタカーサービスを傘下に持つ東京センチュリーを持ち分法適用会社にしている。輸入車・中古車販売大手のヤナセも抱え、自動車ビジネスとのつながりが深い。グループとの相乗効果が高い可能性があると判断し、支援に名乗りを上げた。
焦点は買収価格や事業譲渡の対象だ。ビッグモーターを巡っては顧客の車体を故意に傷つけるなどして、損害保険会社に保険金を水増し請求する不正行為が横行していた。
国土交通省は10月、ビッグモーターが全国に持つ135工場のうち34工場で自動車整備を事業停止にするなどの行政処分を出した。金融庁も11月末に保険代理店登録を取り消す行政処分の実施方針を表明している。
中古車の買い取りや販売でも1000件以上のトラブルが生じ、複数の民事訴訟を抱えている。10月末には経営不振で東京都や埼玉県で計9店舗を閉鎖した。伊藤忠はビッグモーターの支援を通じ、自社のブランドイメージが毀損しないかも慎重に検討する。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。佐藤一郎国立情報学研究所 教授 別の視点
アルトマン氏はOpenAIだけでなく、生成AIの顔ともいえる人物だっただけに、同氏の解任は衝撃です。さて、この解任はAIのガバナンスに一石を与えるのではないでしょうか。企業が適切にAIを提供・利用するには、企業のAIに関わるガバナンスが重要視されていますが、企業トップが突如解任されるとなると、ガバナンスの仕組みの再考が求められることになります。さてアルトマン氏はAIの規制には積極的であったといえて、今回の解任でOpenAIのAI規制のスタンスが弱まると、AIに対する規制は企業側のガバナンスだけで十分なのか、法的規制が必要などの声が強くなるかもしれません。
【創価学会の池田大作名誉会長が死去、95歳 公明党を結成】
18日の日経速報メールは報じた。
宗教法人創価学会名誉会長で、同会の戦後の飛躍的な拡大を指導した池田大作(いけだ・だいさく)氏が11月15日夜、老衰のため死去した。95歳だった。創価学会が18日発表した。葬儀は近親者で行った。お別れの会を行うが、日取りなどは未定。
東京都生まれ。1947年8月、創価学会の戸田城聖第2代会長に出会い、19歳で入会した。54年には青年部参謀室長に就任。学会の政治進出の本格化に伴い、選挙運動を組織、指導するようになった。
60年に32歳で第3代会長に就任。池田氏の指導下で学会は64年、公明党を結成した。
70年代以降は海外布教と世界平和を目指す国際交流に力を注ぎ、中国の周恩来首相、旧ソ連のゴルバチョフ大統領(いずれも当時)ら各国の指導者や識者と意見交換するなど国内外で組織を拡大した。
学会ホームページによると、現在の日本国内の会員数は827万世帯。海外では世界192カ国・地域に280万人の会員がいる。
75年に創価学会インタナショナル(SGI)会長、79年に創価学会名誉会長に就任。教育・文化面では67年に創価学園、71年に創価大を開設した。著書に「人間革命」「仏法と宇宙を語る」など。海外要人との対談集も多数。
83年に国連平和賞を受賞したほか、モスクワ大学やボローニャ大学といった海外の大学から名誉博士号などの称号も贈られた。公の場に姿を見せることが少なくなった後も平和運動に力を入れ、近年はロシアに侵攻されたウクライナの平和回復や核拡散防止に関する提言を発表した。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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【マンション建て替えやすく 借り主退去、請求後半年で】
19日の日経ニュースメールは次のように報じた。
首都圏を中心に増える老朽マンションの再生が社会的な課題となっている。建て替え予定の分譲マンションに借り主が居座り工事できないケースがあり、決議に基づいて6カ月後の立ち退きを請求できるようにする。政府は決議要件緩和などと合わせた制度案を近く示し、2024年の通常国会への区分所有法改正案の提出をめざす。
東京都新宿区の住宅街に30年以上をかけて建て替えにこぎ着けたマンションがある。1930年代に建築された物件で、建物の傾きや雨漏りから60年代に建て替えの検討が始まった。
手続きは難航した。高齢の所有者から「自分が生きている間は壊さないでほしい」「歴史的な建物を残してほしい」という声が出て、合意形成ができなかった。所有者の賛成を得て建て替えを決議し竣工に至ったのは2005年のことだった。
決議には所在の分からない所有者も含めた5分の4以上の賛成が必要だ。高度経済成長期に大量供給されたマンションの老朽化が急速に進むが、現行法は建て替えに高いハードルを設けている。
法相の諮問機関の法制審議会は、分譲マンションの建て替えなどを円滑にする方策を検討してきた。耐震性などに問題がある場合については、所在の明らかな人を対象に4分の3の賛成に引き下げる案を出している。
建て替えが決まったとしても、障壁はもう一つある。長期間契約の借り主が反対し、建て替え工事ができないケースがある。現行法では契約違反などの正当な理由がなければ退去の義務はない。所有者は借り主と個別に交渉する必要がある。
新制度の導入後は個別交渉で解決しない場合でも、契約の終了を請求できるようになる。所有者が立ち退き費用などを補償することで賃貸借契約を解除できる。
法制審議会は21日に新制度を盛った要綱案のたたき台を提示する方針だ。政府は議論をもとに区分所有法の改正案をとりまとめ、24年の通常国会に提出する見通し。
旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所の重水丈人所長は「立ち退かないと建て替えできないため、借り主の同意が重要だ。所有者は大変苦労している」と話す。追加的な課題として借り主への補償に関するガイドラインの整備が必要だと指摘した。
国土交通省によると、築40年以上の分譲マンションは22年末でおよそ126万戸ある。42年末には22年末の3.5倍の445万戸にまで増加する見込みだ。
一方、建て替えの累計実績は23年3月時点でおよそ2万3000戸にとどまる。
東京カンテイ市場調査部の高橋雅之主任研究員は「要件緩和で建て替え需要にはプラスの方向に働く」と語る。資材の高騰で建て替え費用がかさむ可能性があり「所得水準や年齢層が多様な大規模マンションでは合意形成が図りにくい」との見方を示す。
マンションの建物や敷地の売却、取り壊しやリノベーション(大規模改修)の決定も多数決で可能にする。現行法で実行するには所有者全員の賛成が必要だが、建て替えと同様に耐震性などに問題があれば4分の3の多数決で決められるようにする。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
大槻奈那名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
今後の展望
所有権尊重の観点等から進みにくかった建て替え決議に対する大きな進展です。但し、実行段階でのハードルはまだ様々残されています。 例えば借り主の退去については、立ち退き費用補償の水準をどうするのか。また、建て替えの賛成票も集まり難くなっている可能性があります。住人の一層の高齢化や、家賃上昇で建て替え中の移転費用の増加が課題です。更に、近年では室内のリノベーションが広く普及し、その技術が高額化していることから、一旦リノベした世帯はそれを無駄にするような建て替え決議には賛成しない可能性があります。一定の年数を経たマンションでは、できるだけ早い時期から理事会等で話し合いを始める必要があるでしょう。
2023年11月20日 8:38
【紅海で貨物船乗っ取り 日本郵船が運航「日本人いない」】
19日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は19日、イエメン近くの紅海で貨物船が乗っ取られたと発表した。日本郵船によると、拿捕(だほ)された船はバハマ船籍の自動車輸送船「ギャラクシー・リーダー」で同社がチャーターしていた。
日本郵船は「拿捕されたのは事実。乗組員の安全を確認中」とコメントした。乗組員はブルガリア人、フィリピン人など25人で日本人はいないという。国土交通省は19日午後9時半ごろ日本郵船から連絡を受け、詳しい情報を確認中だとしている。
•【関連記事】親イラン組織、イスラエル船拿捕と主張 貨物船乗っ取り
イスラエル首相府は、この船舶は英国企業が所有し日本企業が運航しており、乗っ取りを実行したのはイエメンの親イラン武装組織フーシだと主張した。乗っ取りはイランの指導を受けたもので「イランによる国際船舶への攻撃を強く非難する」と強調した。乗組員にイスラエル人はいないと説明している。
イスラエル軍によると、貨物船はトルコからインドに向かう途中だった。船舶情報会社マリントラフィックによると、サウジアラビアとスーダンの間の海域で信号を確認したのを最後に消息がわからなくなっている。
ロイター通信はこれに先立ち、フーシの広報担当者が同日、イスラエル企業が所有・運航するすべての船舶を標的にすると表明したと伝えた。
イスラエル軍は10月からパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと交戦しており、フーシはイスラエルへミサイルなどによる攻撃をしかけてきた。
(カイロ=久門武史、逸見純也)
▼フーシ イエメン北部を活動拠点とするイスラム教シーア派の武装組織。指導者はアブドルマリク・フーシ氏。2011年に中東で広がった民主化運動「アラブの春」以降に台頭し、15年にクーデターで首都サヌアを占領するなど国内の大半を支配下に置いている。
イエメンではサウジアラビアなどが支援する暫定政権と、イランが支援するフーシの内戦が続いている。3月にサウジとイランが外交関係を正常化することで合意すると、サウジとフーシの停戦協議も始まり、緊張緩和の機運が高まっていた。
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【元OpenAIのアルトマン氏ら、Microsoft入りへ】
20日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=山田遼太郎】米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は19日、米新興企業オープンAIのCEOを解任されたサム・アルトマン氏がマイクロソフトに加わると明らかにした。同社に新設する人工知能(AI)の先進的な研究チームを率いるという。
ナデラ氏が19日深夜(米西部時間)にX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。オープンAIの共同創業者の1人で、アルトマン氏とともに退社を表明したグレッグ・ブロックマン元社長もマイクロソフトに入る。複数のオープンAI従業員もマイクロソフトに移る。
ナデラ氏は投稿で「我々はオープンAIとの提携を続け、製品のロードマップに自信を持っている」と強調した。エメット・シア氏が暫定CEOに就くオープンAIについて「新経営陣と共に働くのを楽しみにしている」とも述べ、巨額を投資するオープンAIとの関係を維持する考えを強調した。
マイクロソフトCEOのナデラ氏はXへの投稿でアルトマン氏らがマイクロソフトに入社すると明らかにした
ナデラ氏によると、アルトマン氏はマイクロソフト社内で新たに設置されるAI研究のグループのCEOに就くという。
アルトマン氏は同日、ナデラ氏の投稿に「使命は続く」とXで応じ、マイクロソフトに加わることを認めるかたちとなった。
アルトマン氏は17日にオープンAIのCEOを突如解任された。同氏を支持する投資家や従業員が多く、復帰に向けた交渉があったが19日夜までに合意に至らなかった。オープンAIはゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」元トップのシア氏を暫定CEOに起用した。
アルトマン氏やブロックマン氏の退任に続き、オープンAIの多くの従業員が退社の意向を示したことから去就に注目が集まっていた。
マイクロソフトは米西部ワシントン州シアトルで開いた技術イベント「イグナイト」で15日、オープンAIが手がける生成AIの技術基盤の最新版「GPT-4ターボ」の企業向け提供などを発表したばかりだ。
対話型AI「Chat(チャット)GPT」で知られる同社との提携を経営戦略の中核に据え、業務ソフトの操作を支援する「コパイロット」など、AI技術を矢継ぎ早に自社サービスに組み込んだ。クラウド基盤「アジュール」とオープンAIの技術の連携も進めた。
オープンAIから人材が流出し、アルトマン氏が独立する事態となれば、マイクロソフトのAI戦略が見直しを迫られるほか、投資家らから批判を招くのは避けられない情勢だった。
【OpenAIの社員9割、退社も辞さず 取締役会に総退陣迫る】
21日の日経速報メールは報じた。
シリコンバレー=渡辺直樹】米オープンAIの社員らは20日、取締役会(理事会)に総退陣を求め、解任したサム・アルトマン氏らを復帰させなければ、自分たちもそろって退社すると迫る文書を提出した。770人いる社員のうち、すでに9割超にあたる約730人が署名した。人工知能(AI)の有望企業をめぐる混乱は社員の「反乱」という重大な局面に発展しはじめた。
日本経済新聞が入手した文書によると、要求は取締役会に向けている。現在の取締役全員が辞任した上で、独立した新任者を指名し、アルトマン元CEOとグレッグ・ブロックマン前社長を復帰させるよう求めている。
受け入れられなければ、大半の従業員はアルトマン氏らが手がける「マイクロソフトの新しい子会社に参加することを選択するかもしれない」と迫っている。「(取締役会は)オープンAIを監督する能力がないことが明確になった。能力や判断力、使命、従業員への配慮が欠けている人たちのために働くことはできない」と批判している。
賛同したオープンAIの社員は「みな同じように突然状況を知らされて驚いている」と混乱する社内の状況を明かした。
オープンAIは17日にアルトマン氏の解任を突如発表して以降、技術者らが離反する事態を招いていた。オープンAIの投資家はアルトマン氏の復帰を仲介したが、これに失敗。19日にはマイクロソフトがアルトマン氏とブロックマン氏を新たなAI研究チームに迎えると発表した。
取締役会は暫定CEOにゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」の元CEOであるエメット・シア氏を指名した。同氏はアルトマン氏解任の経緯について近く報告書をつくる意向を示していた。
現在の取締役会はアルトマン氏解任に加担したチーフサイエンティストのイリヤ・サツキバー氏と3人の社外取締役で構成している。社員らが今回提出した文書には、そのサツキバー氏も署名し、取締役の解任要求は実質的に社外の3人に向けられた形だ。
サツキバー氏はX(旧ツイッター)上で「取締役会(理事会)の行動に加わったことを深く後悔している。オープンAIに危害を加えるつもりはまったくなかった。会社を再統合するためにできる限りのことをするつもりだ」と投稿した。
一連の動きをうけてマイクロソフトの株価は20日、約2%上昇した。マイクロソフトは混乱に乗じ、資本・業務提携するオープンAIの人材取り込みをさらに進める可能性が高いとみられている。
オープンAIの創設にも関与した米起業家のイーロン・マスク氏はXで「マイクロソフトは数年前にオープンAIの事実上の支配権を実現した。それが今になって明らかになりつつある」と投稿した。
【岸田首相が2024年春に訪米 議会演説を検討、国賓待遇】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
岸田文雄首相は2024年春に訪米する調整に入った。バイデン米大統領から国賓待遇で招待を受けており、米議会での演説を検討する。日本の防衛力強化を踏まえた「同盟の現代化」を推進する。安全保障や経済、人的交流など幅広い分野で関係深化を話し合う。
首相は先に米サンフランシスコを訪れた際にバイデン氏と会談した。バイデン氏は24年早期に首相を国賓待遇で招待すると伝えていた。
国賓は大統領や国王など政府が外国の元首らを最も手厚く受け入れる接遇だ。首相は24年度予算案の国会審議の日程を見極めながら3〜4月ごろの訪米を探る。
日本の首相が国賓訪米するのは15年の安倍晋三氏以来となる。米議会では過去に安倍氏のほか吉田茂、岸信介、池田勇人の各氏が演説に臨んだ。
米国の厚遇は岸田政権が打ち出した防衛力強化を評価している証しでもある。日本政府は22年12月に新たな国家安全保障戦略など安保関連3文書や防衛費の大幅増を決めた。バイデン氏は23年1月にワシントンで開いた日米首脳会談でこれを「果敢なリーダーシップ」と歓迎した。
報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率は低迷する。ロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエルとイスラム組織の戦闘は長引く恐れがある。米国はそうした情勢下で同盟国である日本の政治が不安定になる展開を望んでいないとみられる。
【自工会会長にいすゞ片山会長 トヨタなど3社以外から初】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本自動車工業会(自工会)の次期会長にいすゞ自動車会長の片山正則氏が就任する見通しとなった。任期が2024年5月までの豊田章男会長(トヨタ自動車会長)の後任となる。1967年に自工会が発足して以降、トヨタ、ホンダ、日産自動車以外から会長が就任するのは初めて。
自工会の会長はトヨタとホンダ、日産の首脳が1期2年交代で務めるのが慣例だった。豊田氏は2018年5月に会長に就いた。12〜14年に次いで2回目の就任だった。
片山氏は現在、副会長を務めている。商用車を主力とする企業が会長に就くことで、100年に1度とされる自動車産業の構造変化などに業界をあげて柔軟に対応できる体制を整備する狙いがあるとみられる。
【北朝鮮が「軍事偵察衛星」発射 軌道投入は確認されず】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本政府は21日夜、北朝鮮が同日午後10時43分ごろ、北西部の東倉里(トンチャンリ)から弾道ミサイル技術を使った発射を強行したと発表した。北朝鮮が主張する「軍事偵察衛星」とみられる。防衛省によると周回軌道への投入は確認されていない。
北朝鮮の朝鮮中央通信は22日未明、北朝鮮の国家航空宇宙技術総局が21日夜に軍事偵察衛星を打ち上げ、成功したと伝えた。衛星を地球の周回軌道に「正確に進入させた」と主張した。
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北朝鮮が22日午前0時から12月1日午前0時の間に「人工衛星」を発射すると通告していた。
政府は21日午後10時46分に全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。「北朝鮮からミサイルが発射されたとみられる」として沖縄県に避難を呼びかけた。その後に「ミサイルは10時55分ごろ、太平洋へ通過したとみられる」と通知し呼びかけを解除した。
岸田文雄首相は同日深夜、首相官邸で記者団に「少なくとも1発は沖縄上空を太平洋へ通過した。被害は確認していない」と述べた。宮沢博行防衛副大臣は22日未明、防衛省で記者団に「地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と明らかにした。
宮沢氏によると、衛星とみられる発射物は上空で分離し、一つは朝鮮半島の西350キロほどの東シナ海の予告区域外に落ちた。もう一つは沖ノ鳥島の南西1200キロ程度の太平洋上に位置する日本の排他的経済水域(EEZ)外の予告区域内に落下した。
21日夜に記者会見した松野博一官房長官は「発射について繰り返し中止を求めてきたにもかかわらず、住民の安全確保の観点からも極めて問題のある行為だ」と強調し、北朝鮮に厳重抗議したと説明。発射は国連安全保障理事会の決議違反に当たるとの認識を示した。
首相は21日夜、ミサイルの上空通過を踏まえ関係閣僚に①落下物による被害がないかの速やかな確認、②北朝鮮の今後の動向を含めた情報収集・分析の徹底、③米国や韓国などの関係諸国との連携、適時適切な対応――の3点を指示した。
Jアラートの発令は沖縄県に避難を促した8月24日以来。この時は北朝鮮が「軍事偵察衛星」を発射し失敗した。沖縄本島と宮古島の間の上空を飛行し太平洋へ通過したため避難の呼びかけを解除した。
【イスラエル、4日間戦闘休止へ 人質50人解放と引き換え】
22日の日経速報メールは報じた。
【イスタンブール=木寺もも子】イスラエルメディアによると、同国政府は22日、少なくとも人質50人の解放と引き換えに、パレスチナ自治区ガザで続くイスラム組織ハマスとの戦闘を4日間休止することを閣議決定した。ハマス側も既に「合意が近い」としており、一定期間の人道停戦や人質の解放が実現する可能性が強まった。
イスラエルは戦闘の休止に加え、パレスチナ人の囚人のうち女性や未成年者も引き換えに釈放する。ガザへの人道支援拡大や、負傷者がガザを脱出することも認めるもようだ。交渉は米国とカタールが仲介した。
政府高官の話として報じられた情報によると、解放されるのは子ども30人とその母親8人のほか、女性12人だとされる。
ハマスなどがガザに拉致したイスラエル側の人質は約240人に上るとみられる。戦闘の休止が履行されれば、さらに数十人が解放されるとの報道もある。
ただ、イスラエルメディアによると、国民は24時間以内に裁判所に対して閣議決定への異議申し立てを行える。合意がすみやかに成立、履行されるかは不透明な面もある。
閣議は21日夜(日本時間22日未明)に始まり、22日早朝まで続いた。公開された映像によるとネタニヤフ氏は冒頭、「停戦(期間)後も、戦争は続く」と述べ、一時的な戦闘休止を挟んだ後もハマスの壊滅を目指す軍事作戦は継続すると強調。合意は「厳しいが、正しい決定だ」として閣僚らに理解を求めた。
中東の衛星放送局アルジャズィーラによると、ハマスと共闘するガザの過激派「イスラム聖戦」は21日、レバノンで開いた記者会見で、交渉を巡り「ハマスと協調している」と表明した。イスラム聖戦も多数の人質を拘束しているとみられる。
人質はこれまで米国籍の母娘とイスラエルの高齢女性2人が解放されたほか、イスラエル軍が女性兵士1人を救出した。
イスラエルは21日も空爆などを続けた。ガザ当局によると、同日までの累計の死者は1万4100人を超えた。国連安全保障理事会は15日、「緊急かつ人道的な一時休止」を要請する決議案を採択した。国連総会も10月下旬、「人道的休戦」を求めていた。
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【東芝、株式併合など特別決議を承認 臨時株主総会】
22日の日経速報メールは報じた。
東芝は22日、臨時株主総会を開き、株式の非公開化に向けた株式併合や定款変更などの議案を諮り賛成多数で承認された。 日本産業パートナーズ(JIP)と国内企業によるTOB(株式公開買い付け)に応募しなかった株主の株式を強制的に買い取り、東芝は12月20日に東京証券取引所への株式上場が廃止になる。
東芝は不正会計や巨額損失、アクティビスト(物言う株主)との対立など経営の混乱が長引いた。JIPは総額2兆円を投じて8〜9月にTOB(株式公開買い付け)を実施した。東芝は株主をJIPに一本化し、投資ファンド傘下で再建を目指す。
この間、以下の録画を視聴することができた。 (1)BS6報道1930「ウクライナの不協和音、政権と軍中枢の内部での反攻停滞が生む確執か。クリミヤ上陸作戦の狙いは」13日。 (2)BS6報道1930「ハマスが変えた<世界地図>、米の中東政策崩壊で反米・反イが拡大。ゴミ燃やしパンを焼く…生活困窮のガザ住民は」14日。 (3)231113~変わりつつある世界(17)
2023年11月13日、前回の「変わりつつある世界(16)」を掲載してから、気になっていた記事がある。11月10日、2つの記事があった。
【食材宅配サービスのMBO】
第1が日経速報メールが報じた食材宅配サービスのMBO(経営陣が参加する買収)であり、つづけて同日、日経速報メールが報じた「進研ゼミ」である。
食材宅配サービスを手掛けるオイシックス・ラ・大地は10日、シダックスを子会社化すると発表した。シダックスがMBO(経営陣が参加する買収)で株式を非公開化した後に実施する第三者割当増資を引き受ける。原材料高や人手不足でシダックス主力の給食事業の収益が悪化する中、主力事業の効率化や不採算事業の見直しなど構造改革を急ぐ。
シダックスは志太勤一会長兼社長ら創業家の資産管理会社が、11月13日〜12月25日の期間に1株当たり800円でTOB(株式公開買い付け)を実施する。株主からシダックス株を買い取って完全子会社にする。
シダックスには食材宅配サービスを手掛けるオイシックスが、約3割を出資している。同社はMBOに賛同している。
給食業界は原材料高や水道光熱費の上昇などによって事業環境の厳しさは一段と増している。9月には学校給食などを運営するホーユー(広島市)が破産手続きを開始した。
シダックスの業績は新型コロナウイルス禍後の回復がまだ鈍い。給食などを手掛ける主力の「フードサービス事業」は、2023年3月期の営業利益が前の期比14%減の22億円と落ち込んだ。抜本的な立て直しに構造改革を急ぐ必要があると判断した。
シダックスは志太勤取締役最高顧問が1959年に富士フイルムの食堂を受託して創業。志太会長兼社長ら創業家が20%超を保有する。90年代にはカラオケ事業に進出し、一時は主力事業となったがその後に採算が悪化。18年にはカラオケ事業から撤退、19年には投資ファンド、ユニゾン・キャピタル(東京・千代田)の出資を受けて経営再建を進めていた。
22年にはオイシックスがユニゾンの持ち分をTOBで買い取り、28%を保有する筆頭株主となった。オイシックスはシダックスを持ち分法適用会社にしており、高島宏平社長がシダックスの社外取締役に就いている。
両社は法人向け給食で使うミールキットの開発など協業を進めていた。オイシックスは今夏から保育園給食事業に本格参入し、シダックスが受託運営する事業所にミールキットを試験導入するなど連携を強めている。
22年のオイシックスのTOBを巡っては、「オイシックス以外の第三者からのフード関連事業の協業提案などを検討する機会が失われる」としてシダックスの取締役会が反対を表明した。外食大手のコロワイドもシダックスへ給食事業の買収を提案するなどで各社の利害関係が複雑になった。
オイシックス以外の企業との連携可能性を調査する特別委員会や、ガバナンス(企業統治)体制を調べる調査委員会を設置することを条件に、取締役会がTOBへの意見を「中立」に変更したことでTOBが成立した経緯がある。
【ベネッセがMBO 欧ファンドと、「進研ゼミ」立て直し】
第2が「進研ゼミ」である。
ベネッセホールディングス(HD)は10日、MBO(経営陣が参加する買収)を実施すると発表した。ヨーロッパの投資ファンドEQTと組み、TOB(株式公開買い付け)を実施する。ベネッセHD株は上場廃止となる見通し。主力の通信教育「進研ゼミ」の不振が続いており、株式の非公開化で立て直しを図る。
TOBは1株2600円で実施する。9日終値(1791.5円)から808.5円(45%)のプレミアム(上乗せ幅)をつけた。全株ベースでの株式価値は約2700億円と、国内のMBOでは最大規模となる。
まずEQTが特別目的会社(SPC)を設立し、TOBなどにより約83%のベネッセHD株を約2080億円で取得する。その後、残りの約17%の株式を持つベネッセHD創業家の資産管理会社を完全子会社化する。
TOB完了後にSPCに対し創業家が出資。最終的にはEQTが6割、創業家が4割、SPC株を保有する形にする。議決権ベースでは5割ずつにする。
EQTはスウェーデンの産業・金融界に影響力を持つウォーレンバーグ家に由来する大手投資会社。2021年に日本に拠点を設置し、22年にアジア系のベアリング・プライベート・エクイティ・アジアと統合した。EQTにとって日本で初めての投資案件となる。
ベネッセHDは主力の「進研ゼミ」事業の苦戦が続いている。小学生〜高校生の会員数は23年4月時点で前年比14万人減の160万人だった。10年前と比べ約4割減少した。デジタル教材の導入などで立て直しを進めていたが、会員数減に歯止めがかからなかった。
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本業のもうけを示す連結営業利益は23年3月期で206億円と、13年3月期に比べ46%減った。介護や保育など多角化を進めるほか、22年には不採算だった語学教室の「ベルリッツ」事業の売却など構造改革を進めた。ただ、主力事業の抜本的な立て直しには非公開化が必要だと判断した。
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ベネッセは1955年に生徒手帳などを発行する福武書店として設立した。69年に進研ゼミ高校講座の前身となる「通信教育セミナ」事業を始めた。創業家出身の福武総一郎氏が長く代表取締役を務めていたが、14年に最高顧問に退いた。
日本マクドナルドホールディングスのトップから転じた原田泳幸氏が14年に会長兼社長に就いたが、同年に個人情報漏洩問題が発覚し、会員数が減少。16年に退任した。その後もトップ交代が続いた。
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【たかが髪形、されど髪形 慶応野球「エンジョイ」の真意 森林貴彦 慶応義塾高野球部監督】
11日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・これが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい
・高いレベルの喜びは、練習や競争を乗り越えた先に
・選手との距離感はいつも悩み、言葉には気を使う
この夏の甲子園、107年ぶりの全国優勝を遂げた慶応義塾高(神奈川)のナインは笑顔の「エンジョイ・ベースボール」で汗と涙の色濃い高校野球に、新風を吹き込んだ。これからの高校野球は「勝ち」を目指しつつも、自立心を育む人材養成面などの「価値」が求められるという森林貴彦監督に、真意を聞いた。
神奈川県大会決勝で横浜、甲子園で仙台育英(宮城)という強豪を相次いで破った。「プレーボール」の言葉通り、遊び、楽しむ野球の原点に立ち返っての戴冠だった。
「夏の甲子園3回戦の広陵(広島)戦で、初回に丸田湊斗選手が三塁盗塁を決めて先制したが、サインは出していなかった。彼が自分で決めた。三盗も選択肢として準備していたが、初回から(危険を冒す)サインは出せない。私よりよほど度胸、判断力がある。勇気も要るし、根拠がないと走れない。これからもそういう場面に出合いたい」
――自分で考える楽しさを味わってほしい、と思ったきっかけは。
「高校2年の夏、上田誠監督が『二塁けん制の動きやサインを自分たちで決めてみなさい』とおっしゃった。内野手の私と投手、捕手が練習後の暗くなったグラウンドで、ああでもないこうでもないと話し合った。自分たちで物事を進めるワクワク感は高校野球の一番の思い出だ」
「チームの決め事を守り、人と同じことをするだけでは人生、面白くない。ますます価値観が多様化し、自分なりの幸せを選び取る時代になると思うので、これをやりたい、自分にとってこれが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい」
――相当の野球技術がないとエンジョイはできない。
「もちろん、ただ笑顔でやればうまくいくというものではない。頂点を目指す以上、日々の地道な苦しい練習、ライバルとの競争、試行錯誤がある。そこを乗り越えるところに、より高いレベルの喜びがある。それがエンジョイの真意だ」
「言葉には気を使っている。準々決勝の沖縄尚学戦は五回まで0-2の劣勢。前半戦終了時に『第1試合は完敗だから、第2試合を頑張ろう』と言った。同じ言葉ばかりだと、選手はまたかよ、という顔をする。新鮮な言葉がないか試合中に考えていた。あれでみんな『これからだ』となったのか、六回に逆転できた」
「ミーティングでだらだらしゃべりたくないので、試合ごとに四字熟語でテーマを伝える。『徹頭徹尾』とか『勇往邁進(まいしん)』とか。甲子園の決勝は『大願成就』。これしかない、と一番簡単に決まった」
コツは「全力で頑張るな」
――筑波大の大学院で、勝負事でしゃかりきになってはいけない、という研究成果を残した。
「頑張り度合いとパフォーマンスの関係を調べると、100%の力で走ったときに最高の速度が出るわけではない。8割の力で走ると9割の速度が出る。野球の投球でも全力で投げるより、少し力を落とす方が球速も出て、制球が定まる。全力でやるなということ。各界の達人が極意として力を抜くとおっしゃる。それと同じではないか」
「エラーをした野手や失点した投手が、取り返そうと思うのもよくない。それで取り返せるなら、そんな簡単なことはない。過去は切り捨て、未来を向いて今やれることをやる。練習試合では反省もするが、公式戦で過ぎたことを引きずっていいことはない」
――自主性は大事だが、選手任せの危うさも。
「1代前の3年生は一人ひとりが自立していた。そこで私もある程度任せたが、任せ過ぎたというか、お互いの意思疎通が足りなかった気がする。選手との距離感はいつも悩む。就任当初は私が面倒みなきゃという意識もあって、こまごま言い過ぎていたと思う。失敗は多々ある」
高校野球ではいまだに体罰案件が報告され、フェアでないプレーもみられる。勝利にとらわれ、選手の人間的成長が置き去りにされる現状は社会に通じる課題のようだ。
教育現場で無力を痛感
「(打者が横目で捕手の位置を確認する『カンニング』は)今年の甲子園でだいぶ減ったと感じたが、ゼロではない。チームではなく選手個人の問題だと思うが。高校野球の2年半は短く指導者も時間がない、急いで詰め込まないと、と思うと無理が出る。体罰を受けて育った選手が指導者になって、同じことをする。負の循環を今、食い止めないといけない」
「高校で完成する必要はなく、数年後にいい選手になってくれたらいい、という気持ちでいる。今、先生(慶応義塾幼稚舎教諭)として小学3年生を教えているが、無力を痛感するばかり。漢字、筆算、九九……。できたかなと思った次の日に子どもはできなくなる。一方、教えたことのないことを、いつのまにかできるようになっている。僕がいる意味があるのかな、と日々自問自答する。忍耐強く(成長を)待つ点で、野球の指導者としてもいいトレーニングになっている」
――理想を掲げ、変革を唱えれば風当たりも強くなる。
「チームの目標は『慶応日本一』だが、その先の目的として『恩返し』と『常識を覆す』を掲げてきた。今年の選抜大会でも『高校野球を変えたい』と言って甲子園に乗り込んだが、初戦敗退。簡単に言うな、できるわけないだろう、という声があった。ただ、それをバネにして、夏こそという思いが強まり、成長の材料になった」
――甲子園では選手たちの自由な髪形が注目された。
「いまだにそんなことが話題になるのかと残念に思う一方、これを入り口に(変化への)議論が進めばそれでいい、と思った。問題は髪形そのものより(無思慮に前例に従う)思考停止、旧態依然、上意下達の部分。高校野球はこういうものだという枠を誰かがつくり、枠の中でずっとやってきた。今年の優勝で、一石を投じることはできたかと思う」
――サインに縛られない選手は本当に育つか。
「野球がどういう人材を社会に送り出せるか、野球型の思考が今後の社会にどうマッチするのか考えると、危機感を覚える。勝つために手段を選ばないといった思考が、高校生以下の世代でも、ゆがみとして出ている。そこで打ち出したのが『成長至上主義』。ただただ勝利を目指して頑張ろう、ではなくて、一人ひとりが人間的に成長し、周りも成長させる。選手としての成長、人間としての成長が車の両輪となったら強い。それによって、実は勝利にも近づくのではないか」
「高校野球には堅苦しい部分、個性や自由が認められづらい部分がある。親の負担も大きく、(子どもに)野球が選ばれにくくなっている。甲子園は盛り上がっているようにみえて、全国の野球部や部員の数は減っている。このままの形では続かない。高校野球はスポーツの枠を超えて文化として定着し、変えるのは大変だが、我々が変われば人の育成方法なども変わるきっかけになるかもしれない。社会的な意義は大きい」
――激戦区の神奈川を勝ち抜くのは至難。優勝後、来春の選抜大会につながる試合に敗れた。
「甲子園から帰って翌々日に練習を始めたが(県大会までの)時間のなさ、慌ただしさは想像を超えていた。ただ選手たちは、また新しい気持ちでいてくれている。人生100年、自分もまだ折り返し点。選手に成長を求める以上、私自身が成長するマインドを持っていなければ。現状維持でいい、となったときは退場すべきだと思っている」
もりばやし・たかひこ 1973年東京都渋谷区生まれ。慶大法卒業後NTTへ。3年で退職し、高校野球指導者として筑波大院で指導理論を研究。2015年から母校慶応高を率い、春夏計4度甲子園出場。23年夏、107年ぶりの全国優勝に導いた。慶応幼稚舎教諭。
あえて寄り道、柔軟性養う(インタビュアーから)
慶応の選手たちが夏の甲子園を「エンジョイ」できたのは「そもそも、慶応にいる時点で半ば人生の勝ち組だから」というやっかみまじりの見方があるが、それは違うようだ。
青春まっただ中の高校生であっても野球がすべてではいけない。そう考える森林監督は慶応OBなどから幅広い分野の話を聞く機会を設けている。
政府系金融機関を辞め、瀬戸内海の島で農業にいそしむ人から「都心の大会社に勤めるだけが人生ではない」と学んだ。大リーガー・菊池雄星投手の元マネジャーから、華やかな印象と違って努力の人と聞いた。強豪校が大会準備に追われている時期に、知的障害のある生徒の硬式野球への参加を進める取り組みと連携し、合同練習を行った。
あえて寄り道し、様々な価値観に触れることで「野球オンリー」にはない心の柔軟性が養われているようだ。(編集委員 篠山正幸)
【「日本はGXに本気か」 海外マネー3300兆円が品定め 資産運用立国に挑む 開国の障壁(1)】
13日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・日本は海外からの投資を集める「運用開国」を目指す
・脱炭素に向けて産業転換を段階的に進める戦略を掲げる
・海外投資家は日本企業のGXへの向き合い方を注視
政府は海外運用会社を招く「運用開国」に乗り出した。家計金融資産2100兆円が外に出ていくばかりでは日本の成長に寄与しない。国内に投資機会をどう生むかが最大の課題だ。
【「資産運用立国に挑む」連載記事】
•日本株の運用会社「空洞化」 非効率な慣習、参入阻む
10月6日、首相官邸。米運用会社ブラックロックの呼びかけで中東の政府系ファンドや欧米年金など世界の機関投資家・運用会社の代表約20人が集まった。保有・運用額は計3300兆円に上る。関係者は海外勢が来日した目的を「『具体的な投資案件を見せてくれ』ということだ」と語る。
政府が掲げるのが、化石燃料からクリーンエネルギーへの産業構造の転換を目指す「グリーントランスフォーメーション(GX)」だ。欧州のような一足飛びの脱炭素でなく段階的に移行(トランジション)する戦略で、官民合わせて10年で150兆円が必要とはじく。シンガポールの政府系ファンドGICは7月、現地を訪れた自民党の片山さつき金融調査会長に「日本のGX投資の定義に関心がある」と語った。
海外マネーを呼び込もうと企業も動き始めた。9月に増資などで約2040億円を調達したJFEホールディングス。「構造改革をやり遂げ、量から質へ転換する」。調達先を海外に絞り、欧米などの投資家約100人にオンラインで訴えた。
JFEホールディングスは構造改革のため川崎市の高炉を止めた
利益の見込みやすい電気自動車向け高級鋼板の投資に公募増資、中長期の脱炭素投資に新株予約権付社債(転換社債=CB)で得た資金を充てる。川崎市の高炉を止める一方、2030年度までに脱炭素に約1兆円投じる計画だ。増資で外国人株主比率は3割と3月末の24%から高まった。
日本企業のGX関連の資金調達は増えている。資金使途を環境事業に限る環境債の発行は23年1〜10月に1兆6000億円超と、年間で最高だった21年をすでに約2割上回った。温暖化ガス排出量の多い企業による移行債も21年からの累計で約6000億円に上る。
アジアではトランジションへの関心が高く、50年までに40兆ドルの脱炭素投資の資金需要があるとみられる。日本に脱炭素マネーを集め、アジアのGX投融資の資金が行き交うハブへと育てる余地はある。
ただ、投資家は日本企業がどこまで積極姿勢に転じたのか、なお半信半疑だ。
「日本は脱炭素にどのくらい真剣なのか」。ENEOSホールディングスのもとには政府のGX戦略に確信を持てない海外投資家から多くの質問が寄せられる。同社は再生可能エネルギー開発や水素の供給網構築などに取り組むが「技術のブレークスルーの時期など不透明で、30年度以降の具体的な計画を示すのは困難」とする。
日本企業はバブル崩壊以降、設備投資や研究開発を抑えて借入金返済を優先してきた。日銀の資金循環統計によると民間企業部門(金融除く)は戦後、資金不足だったが、1998年から資金余剰の局面に転じた。海外マネーが注目する今こそ、日本が積極投資に打って出る好機となる。
GXだけでなく、省人化や農業など日本経済の課題は多い。投資機会をどれだけ増やせるか。運用立国実現のハードルは高い。【資産運用立国に挑む 第1部】
【海外新薬、国内で早期承認へ 日本人の初期治験廃止】
同じ13日の日経ニュースメールは報じた。
日本で薬を売り出すために、臨床試験(治験)の過程で日本人で安全性を別途確認しなければならない制度が原則廃止される。欧米で承認された新薬の7割は日本で承認されておらず、海外で使われている薬が日本で入手できない「ドラッグ・ロス」が生じてきた。新薬の日本での早期流通を促し、患者の不利益の解消につなげる。
厚生労働省は近く、日本人での追加的な初期治験が原則として必要ないことを記した通知を出す。数カ月以内に制度は廃止される見通しだ。
医薬品が日本国内に出回るには、3段階の治験が必要になる。1番目にあたる第1相は少数の健康な人に薬を投与して安全性を確認する。第2相は少数の患者に投与し、効き目や副作用を調べる。第3相では世界各国の多数の患者を対象にする。
第1、2相の治験は、製薬会社が新薬を開発した国でやることが多い。しかし日本で販売するには原則として、第3相に進む前に別途、日本人への初期治験にあたる第1相の追加調査が求められる。
厚労省は「国内の環境で暮らす日本人への安全性を確認するため」と説明する。だがこれは日本独特のルールで他国ではほとんど求められない。
この追加調査が妨げとなり、「ドラッグ・ロス」や海外で使用されている医薬品の日本での承認が遅れる「ドラッグ・ラグ」が深刻になっている。
厚労省は追加的な初期治験をなくしても、第3相の治験で日本人の安全性は確認されると判断した。抗がん剤など強い副作用が起こりやすい一部の薬には追加調査が残る可能性がある。
2020年時点で米国と欧州連合(EU)で承認された新薬のうち、日本では72%が未承認で数字は上昇傾向にある。09〜17年に開発された新薬で、世界で初めて承認された時期と国内承認された時期の差は54.1カ月。韓国(28.2カ月)の約2倍だ。
治験には参加者を集めるコストや時間が欠かせない。グローバルな製薬会社にはこの手間を嫌って日本での販売を断念したり、市場投入の時期を他国に比べ大幅に遅らせたりしている。
厚労省のヒアリングに対し、製薬会社は「日本人向け治験が新薬投入の障壁となっている」という声を寄せた。欧米系の製薬会社も「日本人への投与経験がないこと以外に(追加調査が必要な)理由が十分に示されておらず、欧米の本社に理解されない」と指摘した。
たとえば消化管の壁にできる悪性腫瘍である消化管間質腫瘍(GIST)は年間10万人に1人から2人程度に発症する。治療薬「アバプリチニブ」は日本では手に入らない。米国では20年1月、欧州では20年9月に承認されている。
新型コロナウイルス禍でも、日本がワクチン承認で欧米から後れをとった原因の一つが追加治験だった。
米ファイザーは、海外での大規模治験の結果をもとに20年12月にワクチンの製造の承認を申請した。だが追加治験などへの対応で承認までに2カ月ほどかかった。
厚労省はルール変更について、医薬品の開発を担う海外の製薬会社への情報発信にも力を入れる。24年度には米国に医薬品医療機器総合機構の事務所を設立し制度の周知に生かす。
製薬大手アストラゼネカ社では、世界同時開発などの取組で同社の日本でのドラッグ・ラグやロスの問題はほぼ解消している。一方、同社はベンチャー発の先端的な医薬品のライセンスを取得し、残りの治験を自社で担う場合がある。日本人への初期治験の原則廃止で、開発期間が短縮されれば「非常にポジティブに捉えられる」という。また、日本市場で発売がしやすくなることへの「大きな一歩」だと期待を寄せる。
ドラッグ・ロスやラグの解消には他にも課題がある。例えば患者が少ない希少疾患や小児がんなどはコストをかけても利益が出にくいため、製薬会社は開発を敬遠する。米国は成人用のがんの薬を開発する際には小児用も開発することを義務づけている。日本には同様の制度はない。
【小売り、食品PB比率17%で最高 イオンやセブンが新商品】
14日の日経速報メールは報じた。
小売り大手が食品など生活必需品で割安なプライベートブランド(PB)を拡充する。イオンは食品PBの半分を刷新し、セブン&アイ・ホールディングスは低価格帯PBを倍増させる。スーパーの食品販売額に占めるPB比率は10月に過去最高の約17%に高まり、店頭価格の上昇は鈍化している。物価押し上げの主軸はモノからサービスに移る。
イオンはPB「トップバリュ」で生鮮品を除いて約5千ある食品のうち2500品目を新商品に切り替える。日用品などと合わせたPB売上高を2024年2月期に前期比11%増の1兆円超に高める。セブン&アイはPBの中でも低価格シリーズ「セブン・ザ・プライス」の品目を24年2月末までに160品に倍増させる。
ベイシア(前橋市)は新しいPB「ベイシアプレミアム」を始めた。既存PBは新製品に順次切り替えて24年2月までに100品目以上を展開する計画だ。西友も生鮮食品の新PB「食の幸」で現状65種類の品目数を増やす。
一般にPBはメーカー品より1〜3割程度安い。小売業にとって稼げる商品でもある。物流や宣伝費などを抑えられるため、粗利益率は15〜20%とされるメーカー品と比べ10ポイント程度高い。
メーカー品とPBは物価高でともに値上がりしているが、消費者は安いPBにシフトしている。
日本経済新聞社と調査会社のインテージ(東京・千代田)が全国のスーパーなどから集めたPOS(販売時点情報管理)データを分析したところ、加工食品や調味料、清涼飲料、アルコール飲料などを含む食品PB(生鮮品除く)の割合は10月に16.8%になった。統計がある12年以降で最高だ。
品目別のPB比率は冷凍野菜が57%と最多で、ハムが34%、牛乳は32%だった。
PBシフトの背景には食品価格の上昇がある。帝国データバンクによると、22年の食品値上げは約2万6000品目に達し、23年は1〜10月の累計で3万品目を超えた。総務省の消費者物価指数(食料、2020年=100)も10月、東京都区部で116と21年1月(99.7)から16.3%上昇。消費者は生活必需品への節約志向を強めている。
PBシフトは物価動向にも影響する。牛乳の店頭価格の前年比上昇率は10月の19%から足元は11%に縮まった。
POSデータをもとにスーパーなどの店頭価格の動きを示す「日経ナウキャスト日次物価指数」をみると、11月12日時点で前年比6.7%(7日平均)上昇したものの、今年8月のピーク(同9.2%)に比べ鈍化した。
その中で物価全体を下がりにくくしているのが旅行やレジャーなどのサービス価格だ。日本のサービス価格は長らく低迷していたが、9月は上昇率が2%に高まった。
サービス価格は賃上げの影響を受けやすい。足元で賃上げは物価上昇を下回っており、実質賃金は9月まで18カ月連続でマイナスだった。物価を下支えするサービス価格の腰折れを防ぐには、消費者の財布のひもを緩める継続的な賃上げが不可欠だ。
24年の春季労使交渉に向け連合が要求方針を発表した。サントリーホールディングスなど交渉が本格化する前に賃上げ方針を表明するところも出ている。企業の継続的な賃上げ力が問われる局面だ。(浅山亮、マクロ経済エディター 松尾洋平)
【エクソン、リチウム生産へ 30年までにEV電池100万台分】
同じ14日の日経速報メールは報じた。
【ヒューストン=花房良祐】石油メジャーの米エクソンモービルは13日、米南部アーカンソー州で2027年から電気自動車(EV)電池用のリチウムを生産すると発表した。北米以外での生産も視野に入れ、30年までに年100万台分のEV用電池のリチウムを供給。世界有数のEV向けリチウム供給会社を目指す。
石油メジャーがリチウムの大規模生産に乗り出すのは初めて。EVや電池のメーカーと供給に向けた協議に入った。23年初めにアーカンソー州の12万エーカー(約485平方キロメートル)の敷地で採掘する権利を獲得した。
石油・天然ガスの掘削技術を活用して地下約3000メートルからリチウムを含有する塩水をくみあげる。従来より環境負荷の低い新技術でリチウムを分離し、現場のプラントで電池用の素材に加工する。30年までに年約10万トン(炭酸リチウム換算)を生産する見込み。
リチウムはレアメタル(希少金属)で、リチウムイオン電池の製造に使用する。EVの増加などでリチウム需要は30年までに4倍になる見通しで、供給不足の懸念がある。低炭素部門トップのダン・アマン氏は「リチウムはエネルギー転換に必要で、エクソンは(経済の)電化に向けて主導的な役割を果たす」とコメントした。
米地質調査所(USGS)によると、22年の世界のリチウム生産のうちオーストラリア、南米チリ、中国の3カ国で合計約9割を占め、偏っている。一方、米国の生産量はほとんどない。加えて、従来技術によるリチウムの精錬では中国が世界の大半を担っている。米国で生産すればサプライチェーン(供給網)のリスクも低下する。
EVと電池の普及に伴い、レアメタルの生産・精錬が少数の国に偏在している課題が浮き彫りになっており、バイデン政権は米国での生産を支援する。22年には国産の電池素材を使用したEVの購入補助制度を導入した。
エクソンは太陽光・風力発電について石油開発との相乗効果が見込めないとして投資に慎重な一方、二酸化炭素を回収して地下に貯留するといった石油開発の掘削技術がいかせる低炭素ビジネスには積極的だ。地下を掘削するリチウム生産も石油開発の技術が活用できるとみている。
天候に左右される太陽光・風力発電は発電が不安定なため、蓄電池との組み合わせが不可欠だ。このため再生エネの普及に伴い蓄電池は増加する見通しで、リチウムの生産会社がエネルギー転換の時代を勝ち抜くとの見方が高まっている。
米S&Pグローバルのダニエル・ヤーギン副会長は「エネルギー業界は『ビッグ・オイル』(石油メジャー)から『ビッグ・ショベル』(大手鉱山会社)の時代に移っていく」と話している。
【米下院、つなぎ予算案を可決 政府閉鎖は回避へ】
15日の日経速報メールは報じた。
【ワシントン=高見浩輔】米連邦議会下院は14日、予算執行を現行水準のまま2024年1〜2月まで続ける「つなぎ予算案」を可決した。上院でもすでに与野党のトップが法案への支持を表明している。政府閉鎖の回避に向けて大きく前進した。
米議会は2024会計年度(23年10月〜24年9月)の予算案をまだ策定しておらず、9月末に11月17日までのつなぎ予算を成立させて政府機関の閉鎖を回避していた。期限が近づき、再延長が必要になっている。
•【関連記事】米政府閉鎖、土壇場で回避 11月までのつなぎ予算成立
つなぎ予算案は、野党・共和党が過半数を握る下院で10月に新たに議長になったジョンソン氏が提案した。軍事や退役軍人、交通、住宅などの予算は24年1月19日まで、それ以外は2月2日まで執行を続けることができる。
民主党の下院議員らがジョンソン氏の案に賛成したのは、懸念していた大幅な歳出削減が盛り込まれなかったためだ。譲歩した内容の法案を蹴れば、政府閉鎖の責任を民主側が背負うリスクもあった。
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上院でも民主トップのシューマー院内総務が法案を支持する考えを示している。上院を通過すれば法案はバイデン大統領の署名を経て成立する公算が大きい。
下院共和はわずかな議席数の差で優位を保っているため、強硬派の一部が反対するだけで法案が通らない機能不全に陥っていた。マッカーシー前議長は9月末、民主の協力を得て11月17日までのつなぎ予算案を可決させたが、その直後に解任された。
強硬派議員らは今回の法案にも反対したが、議長の解任動議に踏み込む動きは今のところ起きていない。前議長の解任後、下院共和では議長のなり手が3週間決まらなかった。
複数の米メディアによると、ジョンソン氏はひとまず政府閉鎖を避けつつ、年明けにかけて調整する24会計年度予算案で歳出削減を強く求める構えだ。
つなぎ予算の期限を2つに分けたのは、バイデン政権と民主党が「包括予算案」と呼ばれる一括法案で予算案を通すのを回避する狙いがある。米国の予算案は本来、12本の予算案を個別に成立させる必要がある。
政府閉鎖を回避できれば今後は予算案に盛り込まなかったウクライナ支援が大きな議題となる。共和内には国境警備など国内に資金を振り向けるべきだと反発が大きい。与野党で意見の隔たりは大きい。
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。前嶋和弘上智大学総合グローバル学部 教授
ひとこと解説
共和党の強硬派の自由議連の案だった「2段階予算案」を共和党穏健派と民主党側が拒否できずに通過。民主党側の反対は2,共和党側は93。さらに強硬な共和党議員が歳出削減などが入っていないため拒否。「強硬派議長(ジョンソン)の方が強硬派の反対が少なくなる分だけつなぎ予算成立の可能性が高くなるかもしれない」と何度かいろいろなところでお伝えしましたが、そのとおりになりました。 指導力が全く未知数だったジョンソン下院議長にとっては、最初の大きな仕事。「妥協を許さない」強硬派だったはずのジョンソン。議員個人としてはおそらく民主党との徹底した財政対決を望んでいたはずですが、現実的に政府一時閉鎖回避を重視。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
同じ15日のニュースメールは次のように報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は紅葉シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる訪日客が増える。
主要国23か国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で(2.7%増)だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店のインバウンド売上高が3201億円と、18年同期を14%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
【イスラエル軍、ガザ北部シファ病院で「作戦実行中」】
同じ15日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は15日、パレスチナ自治区ガザ北部にある地区最大のシファ病院で「特定のエリアで、精密かつ標的を絞った作戦を行っている」と明らかにした。軍は同病院やその周辺の地下にイスラム組織ハマスの司令部があると主張しており「病院内にいるすべてのハマスのテロリストに投降を求める」と強調した。
米CNNは同日、イスラエル軍の戦車がシファ病院の敷地内に入ったとの目撃情報を報じた。国連機関によると、シファ病院には12日時点で患者が600〜650人、避難住民が約1500人いたという。
イスラエル軍は作戦部隊に医療チームやアラビア語を話す兵士を同行させていると説明し「民間人に危害が及ばないよう配慮している」と強調した。作戦前日に「ガザの関係当局に対し、病院内での軍事活動を12時間以内に中止するよう再度伝えたが、応じなかった」と主張した。
一方、ハマスは病院の軍事利用を否定している。ロイター通信によると、ハマスは15日、病院突入の責任はイスラエルと米国の双方にあると非難する声明を出した。
イスラエル軍は14日、シファ病院の近くにありハマスの重要拠点だとするシャティ難民キャンプのほか、警察本部など複数の施設を制圧したと発表した。13日にはガザ北部のランティシ病院にも部隊が踏み込み、病院地下に武器の保管や人質の拘束などハマスの作戦に利用された痕跡があったと主張していた。
ガザ北部ではシファ病院などが燃料不足で機能を停止するなど、医療体制が崩壊しつつある。バイデン米大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に「病院は守られなければならない」と強調していた。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は14日、ハマスがシファ病院を含む複数の病院を軍事利用していることを確認したと明らかにし「戦争犯罪だ」との認識を示した。ロイター通信が伝えた。
ホワイトハウスはバイデン氏とイスラエルのネタニヤフ首相が14日に電話会談したと発表した。ハマスが拘束する人質の救出や病院の状況について協議したとみられる。
【日経平均3万3000円乗せ 陰の主役はNVIDIA】
同じ15日の日経ニュースメールは報じた。
15日の東京株式市場で日経平均株価は大幅続伸し、前日比823円77銭(2.52%)高の3万3519円70銭で取引を終えた。前日比の上げ幅は2023年で最大となり、節目の3万3000円をおよそ2カ月ぶりに上回った。米利上げの打ち止め観測が強まり、国内でも金利高が逆風となるグロース(成長)株が買い戻された。ハイテク株主導の相場の陰の主役と声が上がるのが、米エヌビディアだ。
15日は半導体検査装置大手のアドバンテスト株が一時8%高まで買い進められるなど、半導体関連株の上昇が目立っている。半導体製造装置の東京エレクトロン株とあわせて日経平均を170円強押し上げた。
アドテストはPER(株価収益率)が60倍に迫り、割高株の筆頭だ。将来の高い利益成長が株価に織り込まれている分、金利上昇は現在価値に引き直す際の割引率を高めるため、株価の下押しにつながりやすい。
14日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びは市場予想以上に鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止め観測が広がった。10月下旬に一時5%を超えていた米長期金利は4.5%を下回り、割高株への逆風は弱まる。アドテスト株は11月1日に付けた直近安値から半月で3割上昇した。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
15日の日経速報メールは報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は行楽シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる客が増える。
主要国23カ国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で2.7%増だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店の4〜9月のインバウンド売上高が353億円と、18年同期を17%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
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【いすゞ、電池交換3分のEVトラック 自前で取り換え拠点】
同じ15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
いすゞ自動車は電池交換式電気自動車(EV)トラックの事業化に乗り出す。3分で電池交換が可能な車両を開発し、取り換えを担うインフラも自社で運用する。EVは充電に時間がかかり、配送効率が落ちるのが課題だ。運転手不足問題の解消につながる電池交換式の普及を後押しするため、車両開発からインフラまで一貫して担う。
いすゞは電池を交換する「無人ステーション」をこのほど開発した。物流企業の配送拠点や給油所に売り込み、設置することを想定する。コンビニエンスストアへの荷物配送やゴミ収集車などに使う小型EVトラック「エルフ」をベースにした車両を開発した上で、2025年に実証実験を始める。
ステーションではロボットが電池を取り外し、充電済みの電池と交換する。交換時間は最短で2分30秒程度としており、トラックが再び走行可能になるまで3分以内ですむという。充電済みの電池を用意したり、設備の保守や点検をしたりといったステーションの運用もいすゞが自ら手がける可能性がある。
充電式のEVトラックは充電に10時間程度かかり、軽油を燃料とするディーゼル車と比べて配送効率が低いのが課題となっている。商用車では電動化が遅れており、調査会社の矢野経済研究所によると、世界の商用車販売台数に占める電動化率(ハイブリッドなど含む)は2021年時点でも1.2%にとどまる。
電池交換式であれば、短時間の交換で配送を続けることができる。物流業界ではトラックやバスなどの運転手に残業規制が適用され、人手不足が見込まれる「2024年問題」に直面している。電池交換式が広がれば、脱炭素の対応と配送効率の維持への両立が期待できるとされている。
既に軽自動車の商用車では開発が進む。ホンダはヤマト運輸と11月から交換式電池を使った軽商用EVによる集配業務の実証実験を開始すると発表している。ホンダの軽EV「MEV-VAN Concept(エムイーブイバン コンセプト)」を活用し、太陽光発電の電力を使う。交換式電池でも積載量などの性能を維持できるかどうかを調べる。
ホンダの交換式電池は、自社の電動スクーターや建機メーカーのコマツと共同開発した電動小型ショベルに搭載されている。コマツは小規模な土木・建築工事や配管工事などでのニーズを見込んでいる。車以外でも用途拡大が進んでおり、国内の新興EVメーカーの間でも交換式電池の導入が進む可能性がある。
交換式電池は中国やインドなど新興国で普及している。中国の新興EV大手、上海蔚来汽車(NIO)は充電設備の設置と並行し、電池を交換する拠点を増やしている。(淡海美帆)
【米中首脳、軍事対話再開で合意 習氏「世界に重い責任」】
16日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・1年ぶりの対面会談が終了。昼食など含め4時間強
・AIの政府間対話や気候変動対策の作業部会設置を確認
・習氏は台湾統一に意欲。米国の台湾への関与けん制
【サンフランシスコ=田島如生、坂口幸裕】バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は15日午前(日本時間16日未明)、米西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で会談した。途絶えている米中両軍高官の対話再開で合意した。意思疎通を維持し、台湾周辺や南シナ海での偶発的な衝突を防ぐ狙いがある。
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両首脳が対面で会うのは1年ぶり。会談はサンフランシスコ中心部から40キロほど南にあるカリフォルニア州ウッドサイドにある「ファイロリ」邸で開いた。会談は4時間強で、両首脳は少人数での昼食会後、庭園を散歩した。
バイデン氏は会談後の記者会見で「建設的で生産的な議論だった」と述べた。米中の競争が「紛争に発展しないように(関係を)合理的で管理可能なものにするのが私の責任だ」と表明。滞っていた軍事対話の再開で合意した重要性を訴えた。
中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えない一方、米国が台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を維持すると改めて明言した。2024年1月の台湾総統選で中国が選挙介入しないよう警告した。
習氏は会談で「世界経済は回復し始めたが、その勢いは不十分だ。産業サプライチェーン(供給網)の混乱や保護主義の台頭といった問題は顕著になっている」と言明した。経済安全保障を理由に先端半導体などの対中輸出・投資規制を主導する米国を批判した。
習氏は地球は十分に大きく、米中が共に成功するのは可能だとも指摘した。「私とバイデン大統領は中米関係のかじ取り役であり、国民、世界、そして歴史に対して重い責任をもつ」と語った。
米政府や中国国営中央テレビ(CCTV)によると、両首脳は両軍の高官協議のほか、国防当局の対話や海上軍事安全保障メカニズム会議を再開させると確かめた。両軍の戦闘区域のトップ同士で連絡を取り合うことも申し合わせた。
米政府高官は、オースティン米国防長官と中国側の軍高官が「数週間以内」に会談する方向で調整すると説明した。米中は台湾海峡や南シナ海で軍事的な緊張を強めている。両国の軍事対話は22年8月、当時のペロシ下院議長が台湾を訪れたのを境に滞った。
バイデン氏は会談で、台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を改めて主張した。CCTVによると、習氏は台湾について「中米関係の最も重要かつ最も敏感な問題だ」と説明し「必ず統一する」と強調した。
両首脳はAIに関する政府間対話を立ち上げると確認した。AIの軍事利用への懸念が国際的に広がっていることが背景にある。気候変動対策に関する作業部会の設置でも合意した。
麻薬対策での協力に向けた作業部会を立ち上げることも申し合わせた。医療用麻薬フェンタニルの過剰摂取による死者が米国内で激増しているのを踏まえた。中国は原料となる化学物質の主要製造国だ。
習氏は先端半導体などの対中輸出・投資規制に関し「中国の正当な利益を著しく損ねている」と問題視した。「中国の科学技術の抑圧は中国の質の高い発展を抑制することだ」と話し、規制措置の撤廃を要求した。
習氏の訪米は17年4月以来、6年半ぶりとなる。サンフランシスコ滞在中、岸田文雄首相との会談も調整している。15日に開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での演説も予定する。
米中首脳会談は22年11月にインドネシア・バリ島で開いて以来だ。両首脳は当時、偶発的な衝突防止に向けて対話を続けると合意した。米軍が23年2月、米本土上空に飛来した中国の偵察気球を撃墜したことをきっかけに両国関係は冷え込んだ。【関連記事】
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【日中首脳が1年ぶり会談 「戦略的互恵関係」を再確認】
17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【サンフランシスコ=秋山裕之】岸田文雄首相は16日(日本時間17日午前)に訪問先のサンフランシスコで中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と1時間ほど会談した。個々の懸案で対立しても共通利益の追求を優先する「戦略的互恵関係」を再確認した。
•【関連記事】日中の「戦略的互恵関係」、6年ぶり復活が示す難路
日中首脳会談は2022年11月にバンコクで開いて以来、1年ぶり。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でともに訪米する機会を利用した。15日にはバイデン米大統領が習氏と会い、両軍高官の対話再開で合意している。
首相は会談の冒頭に「日中は隣国として共存、繁栄し、地域と国際社会をリードする大国として世界の平和と繁栄に貢献していく責任を有する」と強調した。「より明るい日中関係の未来を切り開けるように力を合わせていきたい」と述べた。
習氏は両国の平和共存は正しい方向性だと指摘し「共通利益を重視し、相違を適切に管理すべきだ」と主張した。「戦略的互恵関係の位置づけを再確認し、新たな意味を与え、新時代の要求に合う中日関係の構築に力を尽くすべきだ」とも語った。
戦略的互恵関係は06年に当時の安倍晋三首相が訪中し、胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席との会談で打ち出した概念だ。胡主席が08年に国賓で来日し、福田康夫首相と「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明をまとめた。
日中は政治体制が異なり、日米のように民主主義といった共通の価値観を共有しにくい。解決困難な課題で対立を深めず共通利益を求めることで、安定的な関係を維持する狙いがある。
両首脳は東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出について解決を目指す方針で一致した。首相は「専門家のレベルで科学に立脚した議論を行う」と述べた。中国は「核汚染水」と呼んで反発していた。
首相は中国による日本産水産物の輸入禁止を撤回するよう求めた。中国当局に逮捕された邦人の早期解放なども主張した。
沖縄県・尖閣諸島周辺で続く中国公船による領海侵入をめぐっては東シナ海での偶発的な衝突回避を話し合った。日本の排他的経済水域(EEZ)に中国が設置したブイの即時撤去を求めた。
中国は台湾について譲れない「核心的利益」と位置づけ、日本に関与しないように求めている。首相は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
日中ハイレベル経済対話を適切な時期に行うことでも一致した。気候変動対策など地球規模の共通課題で協力を申し合わせた。
2国間の問題でも意思疎通を強化する。日中の通商当局間で重要鉱物の輸出管理といった貿易問題に関する対話枠組みを新設する。企業関係者の安全確保も含めたビジネス環境に関する協議体も創設する。
首相は訪米に先立ち、対中外交について「建設的かつ安定的な関係を維持するため、お互いの努力によって関係を維持する基本方針は変わっていない」と言明している。
日中関係をめぐっては岸田首相と中国の李強(リー・チャン)首相が9月にインドネシアで立ち話した。日中平和友好条約発効45周年の10月23日にメッセージを交換した。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。深川由起子早稲田大学政治経済学術院 教授
分析・考察
中国に限らず、グローバルサウスに限らず、「日本はアメリカの従属変数」というレッテルはかなり粘着力を持ちます。写真の習主席の表情もそのもの。G7などマルチのレバレッジ依存はやむを得ないとしても、地域研究の没落と共に日本人の中国研究者数が激減し、本来、欧米に比しての強みだった「中国の内側論理から考える」能力の低下がバイの関係構築を不利にしている感があります。かといって欧米のような情報機関の力が弱く、民間企業の持つ情報との密かな連携も希薄。これでは情報戦について行けません。「あなたは「井戸を掘った人を忘れない」国なのでは?」と鋭く切り返せる日本にならないといけないのでは。
【パナソニックHD、自動車部品会社売却へ 米ファンドに】
17日の日経速報メールは報じた。
パナソニックホールディングス(HD)は17日、自動車部品を手掛けるパナソニックオートモーティブシステムズの売却に関し米投資 ファンド大手アポロ・グローバル・マネジメントのグループ会社と基本合意したと発表した。パナソニックHDがパナソニックオートの株式の50〜80%をアポロが投資助言をするファンドに売却する。
パナソニックHDは電気自動車(EV)向け電池などを成長領域に位置づけ、重点的に投資する方針を示している。成長領域以外の事業の見直しを進めており、今回の決定はその一環になる。
売却によりパナソニックオートはパナソニックHDの完全子会社から持ち分法適用会社になる見通し。2024年3月末までの正式契約締結を目指す。パナソニックHDが売却する株式数をこれから決めるため売却額は未定だが、数千億円とみられる。
パナソニックオートは自動車のコックピットシステムや電子部品、車載充電器事業などを手掛ける。2022年度の売上高は1兆2975億円、営業利益は162億円だった。グループ従業員数は約3万人。27年度に売上高営業利益率を5%(22年度は1.2%)にする目標を掲げているが、車載充電器事業の赤字などで近年は収益力が低下している。
•【関連記事】パナソニックHD、1兆円子会社売却 EV電池に重点投資
自動車業界は電動化や自動運転など「CASE」と呼ばれる技術への対応など変革を求められている。新技術に対応し、競争力を高めるためには多額の研究開発費が必要になる。パナソニックHDはパナソニックオートが単独で投資資金をまかなうのは難しいと判断し、ファンドと連携することを決めた。
パナソニックHDは17日、パナソニックオートの売却後も「グループの一員として社名やブランドは残す」とコメントした。
パナソニックHDの楠見雄規社長は5月のグループ戦略説明会で、23年度は「事業ポートフォリオの見直しを視野に入れた経営を進める」と述べ、グループ事業の売却の可能性を示唆していた。
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【伊藤忠、ビッグモーター買収検討 創業家関与なしが条件】
同じ17日の日経速報メールは報じた。
伊藤忠商事と国内の企業再生ファンドが中古車販売大手ビッグモーター(東京都多摩市)の買収を検討していることが17日、わかった。ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と組み、買収に必要なデューデリジェンス(資産査定)の独占契約を結んだと発表した。 伊藤忠とJWP連合は契約に当たり、ビッグモーターとの間で創業家が経営に関与しないことで大筋合意した。
伊藤忠と子会社で燃料商社の伊藤忠エネクス、JWPの3社連合が17日、ビッグモーターとデューデリジェンスを独占で実施することで基本合意書を結んだ。3社はビッグモーターの経営状況を詳細に分析し、2024年春までに再建を支援するかを最終決定する。
ビッグモーターは未上場で、同社株は創業者の兼重宏行氏らの資産管理会社が保有している。23年7月に自動車保険金の水増し請求などの不祥事が発覚し、顧客離れが進んでいる。中古車販売は一時、例年に比べて6割以上減った。現在も月次で赤字が続いている。
同社は現預金や売掛金などの流動資産を数百億円抱える一方、従業員への賃金支払いなどで資金の流出が続く。銀行団は借入金の借り換えに応じないなど資金繰りに苦慮しており、自主再建が困難な状況だ。
ビッグモーターはコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの協力を仰ぎ、経営再建を急いでいる。支援企業を早期に確定し経営の立て直しを目指すが、不祥事の影響が長引き難航していた。
伊藤忠はグループで自動車リース事業を手掛けているほか、ニッポンレンタカーサービスを傘下に持つ東京センチュリーを持ち分法適用会社にしている。輸入車・中古車販売大手のヤナセも抱え、自動車ビジネスとのつながりが深い。グループとの相乗効果が高い可能性があると判断し、支援に名乗りを上げた。
焦点は買収価格や事業譲渡の対象だ。ビッグモーターを巡っては顧客の車体を故意に傷つけるなどして、損害保険会社に保険金を水増し請求する不正行為が横行していた。
国土交通省は10月、ビッグモーターが全国に持つ135工場のうち34工場で自動車整備を事業停止にするなどの行政処分を出した。金融庁も11月末に保険代理店登録を取り消す行政処分の実施方針を表明している。
中古車の買い取りや販売でも1000件以上のトラブルが生じ、複数の民事訴訟を抱えている。10月末には経営不振で東京都や埼玉県で計9店舗を閉鎖した。伊藤忠はビッグモーターの支援を通じ、自社のブランドイメージが毀損しないかも慎重に検討する。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。佐藤一郎国立情報学研究所 教授 別の視点
アルトマン氏はOpenAIだけでなく、生成AIの顔ともいえる人物だっただけに、同氏の解任は衝撃です。さて、この解任はAIのガバナンスに一石を与えるのではないでしょうか。企業が適切にAIを提供・利用するには、企業のAIに関わるガバナンスが重要視されていますが、企業トップが突如解任されるとなると、ガバナンスの仕組みの再考が求められることになります。さてアルトマン氏はAIの規制には積極的であったといえて、今回の解任でOpenAIのAI規制のスタンスが弱まると、AIに対する規制は企業側のガバナンスだけで十分なのか、法的規制が必要などの声が強くなるかもしれません。
【創価学会の池田大作名誉会長が死去、95歳 公明党を結成】
18日の日経速報メールは報じた。
宗教法人創価学会名誉会長で、同会の戦後の飛躍的な拡大を指導した池田大作(いけだ・だいさく)氏が11月15日夜、老衰のため死去した。95歳だった。創価学会が18日発表した。葬儀は近親者で行った。お別れの会を行うが、日取りなどは未定。
東京都生まれ。1947年8月、創価学会の戸田城聖第2代会長に出会い、19歳で入会した。54年には青年部参謀室長に就任。学会の政治進出の本格化に伴い、選挙運動を組織、指導するようになった。
60年に32歳で第3代会長に就任。池田氏の指導下で学会は64年、公明党を結成した。
70年代以降は海外布教と世界平和を目指す国際交流に力を注ぎ、中国の周恩来首相、旧ソ連のゴルバチョフ大統領(いずれも当時)ら各国の指導者や識者と意見交換するなど国内外で組織を拡大した。
学会ホームページによると、現在の日本国内の会員数は827万世帯。海外では世界192カ国・地域に280万人の会員がいる。
75年に創価学会インタナショナル(SGI)会長、79年に創価学会名誉会長に就任。教育・文化面では67年に創価学園、71年に創価大を開設した。著書に「人間革命」「仏法と宇宙を語る」など。海外要人との対談集も多数。
83年に国連平和賞を受賞したほか、モスクワ大学やボローニャ大学といった海外の大学から名誉博士号などの称号も贈られた。公の場に姿を見せることが少なくなった後も平和運動に力を入れ、近年はロシアに侵攻されたウクライナの平和回復や核拡散防止に関する提言を発表した。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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【マンション建て替えやすく 借り主退去、請求後半年で】
19日の日経ニュースメールは次のように報じた。
首都圏を中心に増える老朽マンションの再生が社会的な課題となっている。建て替え予定の分譲マンションに借り主が居座り工事できないケースがあり、決議に基づいて6カ月後の立ち退きを請求できるようにする。政府は決議要件緩和などと合わせた制度案を近く示し、2024年の通常国会への区分所有法改正案の提出をめざす。
東京都新宿区の住宅街に30年以上をかけて建て替えにこぎ着けたマンションがある。1930年代に建築された物件で、建物の傾きや雨漏りから60年代に建て替えの検討が始まった。
手続きは難航した。高齢の所有者から「自分が生きている間は壊さないでほしい」「歴史的な建物を残してほしい」という声が出て、合意形成ができなかった。所有者の賛成を得て建て替えを決議し竣工に至ったのは2005年のことだった。
決議には所在の分からない所有者も含めた5分の4以上の賛成が必要だ。高度経済成長期に大量供給されたマンションの老朽化が急速に進むが、現行法は建て替えに高いハードルを設けている。
法相の諮問機関の法制審議会は、分譲マンションの建て替えなどを円滑にする方策を検討してきた。耐震性などに問題がある場合については、所在の明らかな人を対象に4分の3の賛成に引き下げる案を出している。
建て替えが決まったとしても、障壁はもう一つある。長期間契約の借り主が反対し、建て替え工事ができないケースがある。現行法では契約違反などの正当な理由がなければ退去の義務はない。所有者は借り主と個別に交渉する必要がある。
新制度の導入後は個別交渉で解決しない場合でも、契約の終了を請求できるようになる。所有者が立ち退き費用などを補償することで賃貸借契約を解除できる。
法制審議会は21日に新制度を盛った要綱案のたたき台を提示する方針だ。政府は議論をもとに区分所有法の改正案をとりまとめ、24年の通常国会に提出する見通し。
旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所の重水丈人所長は「立ち退かないと建て替えできないため、借り主の同意が重要だ。所有者は大変苦労している」と話す。追加的な課題として借り主への補償に関するガイドラインの整備が必要だと指摘した。
国土交通省によると、築40年以上の分譲マンションは22年末でおよそ126万戸ある。42年末には22年末の3.5倍の445万戸にまで増加する見込みだ。
一方、建て替えの累計実績は23年3月時点でおよそ2万3000戸にとどまる。
東京カンテイ市場調査部の高橋雅之主任研究員は「要件緩和で建て替え需要にはプラスの方向に働く」と語る。資材の高騰で建て替え費用がかさむ可能性があり「所得水準や年齢層が多様な大規模マンションでは合意形成が図りにくい」との見方を示す。
マンションの建物や敷地の売却、取り壊しやリノベーション(大規模改修)の決定も多数決で可能にする。現行法で実行するには所有者全員の賛成が必要だが、建て替えと同様に耐震性などに問題があれば4分の3の多数決で決められるようにする。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
大槻奈那名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
今後の展望
所有権尊重の観点等から進みにくかった建て替え決議に対する大きな進展です。但し、実行段階でのハードルはまだ様々残されています。 例えば借り主の退去については、立ち退き費用補償の水準をどうするのか。また、建て替えの賛成票も集まり難くなっている可能性があります。住人の一層の高齢化や、家賃上昇で建て替え中の移転費用の増加が課題です。更に、近年では室内のリノベーションが広く普及し、その技術が高額化していることから、一旦リノベした世帯はそれを無駄にするような建て替え決議には賛成しない可能性があります。一定の年数を経たマンションでは、できるだけ早い時期から理事会等で話し合いを始める必要があるでしょう。
2023年11月20日 8:38
【紅海で貨物船乗っ取り 日本郵船が運航「日本人いない」】
19日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は19日、イエメン近くの紅海で貨物船が乗っ取られたと発表した。日本郵船によると、拿捕(だほ)された船はバハマ船籍の自動車輸送船「ギャラクシー・リーダー」で同社がチャーターしていた。
日本郵船は「拿捕されたのは事実。乗組員の安全を確認中」とコメントした。乗組員はブルガリア人、フィリピン人など25人で日本人はいないという。国土交通省は19日午後9時半ごろ日本郵船から連絡を受け、詳しい情報を確認中だとしている。
•【関連記事】親イラン組織、イスラエル船拿捕と主張 貨物船乗っ取り
イスラエル首相府は、この船舶は英国企業が所有し日本企業が運航しており、乗っ取りを実行したのはイエメンの親イラン武装組織フーシだと主張した。乗っ取りはイランの指導を受けたもので「イランによる国際船舶への攻撃を強く非難する」と強調した。乗組員にイスラエル人はいないと説明している。
イスラエル軍によると、貨物船はトルコからインドに向かう途中だった。船舶情報会社マリントラフィックによると、サウジアラビアとスーダンの間の海域で信号を確認したのを最後に消息がわからなくなっている。
ロイター通信はこれに先立ち、フーシの広報担当者が同日、イスラエル企業が所有・運航するすべての船舶を標的にすると表明したと伝えた。
イスラエル軍は10月からパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと交戦しており、フーシはイスラエルへミサイルなどによる攻撃をしかけてきた。
(カイロ=久門武史、逸見純也)
▼フーシ イエメン北部を活動拠点とするイスラム教シーア派の武装組織。指導者はアブドルマリク・フーシ氏。2011年に中東で広がった民主化運動「アラブの春」以降に台頭し、15年にクーデターで首都サヌアを占領するなど国内の大半を支配下に置いている。
イエメンではサウジアラビアなどが支援する暫定政権と、イランが支援するフーシの内戦が続いている。3月にサウジとイランが外交関係を正常化することで合意すると、サウジとフーシの停戦協議も始まり、緊張緩和の機運が高まっていた。
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【元OpenAIのアルトマン氏ら、Microsoft入りへ】
20日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=山田遼太郎】米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は19日、米新興企業オープンAIのCEOを解任されたサム・アルトマン氏がマイクロソフトに加わると明らかにした。同社に新設する人工知能(AI)の先進的な研究チームを率いるという。
ナデラ氏が19日深夜(米西部時間)にX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。オープンAIの共同創業者の1人で、アルトマン氏とともに退社を表明したグレッグ・ブロックマン元社長もマイクロソフトに入る。複数のオープンAI従業員もマイクロソフトに移る。
ナデラ氏は投稿で「我々はオープンAIとの提携を続け、製品のロードマップに自信を持っている」と強調した。エメット・シア氏が暫定CEOに就くオープンAIについて「新経営陣と共に働くのを楽しみにしている」とも述べ、巨額を投資するオープンAIとの関係を維持する考えを強調した。
マイクロソフトCEOのナデラ氏はXへの投稿でアルトマン氏らがマイクロソフトに入社すると明らかにした
ナデラ氏によると、アルトマン氏はマイクロソフト社内で新たに設置されるAI研究のグループのCEOに就くという。
アルトマン氏は同日、ナデラ氏の投稿に「使命は続く」とXで応じ、マイクロソフトに加わることを認めるかたちとなった。
アルトマン氏は17日にオープンAIのCEOを突如解任された。同氏を支持する投資家や従業員が多く、復帰に向けた交渉があったが19日夜までに合意に至らなかった。オープンAIはゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」元トップのシア氏を暫定CEOに起用した。
アルトマン氏やブロックマン氏の退任に続き、オープンAIの多くの従業員が退社の意向を示したことから去就に注目が集まっていた。
マイクロソフトは米西部ワシントン州シアトルで開いた技術イベント「イグナイト」で15日、オープンAIが手がける生成AIの技術基盤の最新版「GPT-4ターボ」の企業向け提供などを発表したばかりだ。
対話型AI「Chat(チャット)GPT」で知られる同社との提携を経営戦略の中核に据え、業務ソフトの操作を支援する「コパイロット」など、AI技術を矢継ぎ早に自社サービスに組み込んだ。クラウド基盤「アジュール」とオープンAIの技術の連携も進めた。
オープンAIから人材が流出し、アルトマン氏が独立する事態となれば、マイクロソフトのAI戦略が見直しを迫られるほか、投資家らから批判を招くのは避けられない情勢だった。
【OpenAIの社員9割、退社も辞さず 取締役会に総退陣迫る】
21日の日経速報メールは報じた。
シリコンバレー=渡辺直樹】米オープンAIの社員らは20日、取締役会(理事会)に総退陣を求め、解任したサム・アルトマン氏らを復帰させなければ、自分たちもそろって退社すると迫る文書を提出した。770人いる社員のうち、すでに9割超にあたる約730人が署名した。人工知能(AI)の有望企業をめぐる混乱は社員の「反乱」という重大な局面に発展しはじめた。
日本経済新聞が入手した文書によると、要求は取締役会に向けている。現在の取締役全員が辞任した上で、独立した新任者を指名し、アルトマン元CEOとグレッグ・ブロックマン前社長を復帰させるよう求めている。
受け入れられなければ、大半の従業員はアルトマン氏らが手がける「マイクロソフトの新しい子会社に参加することを選択するかもしれない」と迫っている。「(取締役会は)オープンAIを監督する能力がないことが明確になった。能力や判断力、使命、従業員への配慮が欠けている人たちのために働くことはできない」と批判している。
賛同したオープンAIの社員は「みな同じように突然状況を知らされて驚いている」と混乱する社内の状況を明かした。
オープンAIは17日にアルトマン氏の解任を突如発表して以降、技術者らが離反する事態を招いていた。オープンAIの投資家はアルトマン氏の復帰を仲介したが、これに失敗。19日にはマイクロソフトがアルトマン氏とブロックマン氏を新たなAI研究チームに迎えると発表した。
取締役会は暫定CEOにゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」の元CEOであるエメット・シア氏を指名した。同氏はアルトマン氏解任の経緯について近く報告書をつくる意向を示していた。
現在の取締役会はアルトマン氏解任に加担したチーフサイエンティストのイリヤ・サツキバー氏と3人の社外取締役で構成している。社員らが今回提出した文書には、そのサツキバー氏も署名し、取締役の解任要求は実質的に社外の3人に向けられた形だ。
サツキバー氏はX(旧ツイッター)上で「取締役会(理事会)の行動に加わったことを深く後悔している。オープンAIに危害を加えるつもりはまったくなかった。会社を再統合するためにできる限りのことをするつもりだ」と投稿した。
一連の動きをうけてマイクロソフトの株価は20日、約2%上昇した。マイクロソフトは混乱に乗じ、資本・業務提携するオープンAIの人材取り込みをさらに進める可能性が高いとみられている。
オープンAIの創設にも関与した米起業家のイーロン・マスク氏はXで「マイクロソフトは数年前にオープンAIの事実上の支配権を実現した。それが今になって明らかになりつつある」と投稿した。
【岸田首相が2024年春に訪米 議会演説を検討、国賓待遇】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
岸田文雄首相は2024年春に訪米する調整に入った。バイデン米大統領から国賓待遇で招待を受けており、米議会での演説を検討する。日本の防衛力強化を踏まえた「同盟の現代化」を推進する。安全保障や経済、人的交流など幅広い分野で関係深化を話し合う。
首相は先に米サンフランシスコを訪れた際にバイデン氏と会談した。バイデン氏は24年早期に首相を国賓待遇で招待すると伝えていた。
国賓は大統領や国王など政府が外国の元首らを最も手厚く受け入れる接遇だ。首相は24年度予算案の国会審議の日程を見極めながら3〜4月ごろの訪米を探る。
日本の首相が国賓訪米するのは15年の安倍晋三氏以来となる。米議会では過去に安倍氏のほか吉田茂、岸信介、池田勇人の各氏が演説に臨んだ。
米国の厚遇は岸田政権が打ち出した防衛力強化を評価している証しでもある。日本政府は22年12月に新たな国家安全保障戦略など安保関連3文書や防衛費の大幅増を決めた。バイデン氏は23年1月にワシントンで開いた日米首脳会談でこれを「果敢なリーダーシップ」と歓迎した。
報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率は低迷する。ロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエルとイスラム組織の戦闘は長引く恐れがある。米国はそうした情勢下で同盟国である日本の政治が不安定になる展開を望んでいないとみられる。
【自工会会長にいすゞ片山会長 トヨタなど3社以外から初】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本自動車工業会(自工会)の次期会長にいすゞ自動車会長の片山正則氏が就任する見通しとなった。任期が2024年5月までの豊田章男会長(トヨタ自動車会長)の後任となる。1967年に自工会が発足して以降、トヨタ、ホンダ、日産自動車以外から会長が就任するのは初めて。
自工会の会長はトヨタとホンダ、日産の首脳が1期2年交代で務めるのが慣例だった。豊田氏は2018年5月に会長に就いた。12〜14年に次いで2回目の就任だった。
片山氏は現在、副会長を務めている。商用車を主力とする企業が会長に就くことで、100年に1度とされる自動車産業の構造変化などに業界をあげて柔軟に対応できる体制を整備する狙いがあるとみられる。
【北朝鮮が「軍事偵察衛星」発射 軌道投入は確認されず】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本政府は21日夜、北朝鮮が同日午後10時43分ごろ、北西部の東倉里(トンチャンリ)から弾道ミサイル技術を使った発射を強行したと発表した。北朝鮮が主張する「軍事偵察衛星」とみられる。防衛省によると周回軌道への投入は確認されていない。
北朝鮮の朝鮮中央通信は22日未明、北朝鮮の国家航空宇宙技術総局が21日夜に軍事偵察衛星を打ち上げ、成功したと伝えた。衛星を地球の周回軌道に「正確に進入させた」と主張した。
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北朝鮮が22日午前0時から12月1日午前0時の間に「人工衛星」を発射すると通告していた。
政府は21日午後10時46分に全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。「北朝鮮からミサイルが発射されたとみられる」として沖縄県に避難を呼びかけた。その後に「ミサイルは10時55分ごろ、太平洋へ通過したとみられる」と通知し呼びかけを解除した。
岸田文雄首相は同日深夜、首相官邸で記者団に「少なくとも1発は沖縄上空を太平洋へ通過した。被害は確認していない」と述べた。宮沢博行防衛副大臣は22日未明、防衛省で記者団に「地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と明らかにした。
宮沢氏によると、衛星とみられる発射物は上空で分離し、一つは朝鮮半島の西350キロほどの東シナ海の予告区域外に落ちた。もう一つは沖ノ鳥島の南西1200キロ程度の太平洋上に位置する日本の排他的経済水域(EEZ)外の予告区域内に落下した。
21日夜に記者会見した松野博一官房長官は「発射について繰り返し中止を求めてきたにもかかわらず、住民の安全確保の観点からも極めて問題のある行為だ」と強調し、北朝鮮に厳重抗議したと説明。発射は国連安全保障理事会の決議違反に当たるとの認識を示した。
首相は21日夜、ミサイルの上空通過を踏まえ関係閣僚に①落下物による被害がないかの速やかな確認、②北朝鮮の今後の動向を含めた情報収集・分析の徹底、③米国や韓国などの関係諸国との連携、適時適切な対応――の3点を指示した。
Jアラートの発令は沖縄県に避難を促した8月24日以来。この時は北朝鮮が「軍事偵察衛星」を発射し失敗した。沖縄本島と宮古島の間の上空を飛行し太平洋へ通過したため避難の呼びかけを解除した。
【イスラエル、4日間戦闘休止へ 人質50人解放と引き換え】
22日の日経速報メールは報じた。
【イスタンブール=木寺もも子】イスラエルメディアによると、同国政府は22日、少なくとも人質50人の解放と引き換えに、パレスチナ自治区ガザで続くイスラム組織ハマスとの戦闘を4日間休止することを閣議決定した。ハマス側も既に「合意が近い」としており、一定期間の人道停戦や人質の解放が実現する可能性が強まった。
イスラエルは戦闘の休止に加え、パレスチナ人の囚人のうち女性や未成年者も引き換えに釈放する。ガザへの人道支援拡大や、負傷者がガザを脱出することも認めるもようだ。交渉は米国とカタールが仲介した。
政府高官の話として報じられた情報によると、解放されるのは子ども30人とその母親8人のほか、女性12人だとされる。
ハマスなどがガザに拉致したイスラエル側の人質は約240人に上るとみられる。戦闘の休止が履行されれば、さらに数十人が解放されるとの報道もある。
ただ、イスラエルメディアによると、国民は24時間以内に裁判所に対して閣議決定への異議申し立てを行える。合意がすみやかに成立、履行されるかは不透明な面もある。
閣議は21日夜(日本時間22日未明)に始まり、22日早朝まで続いた。公開された映像によるとネタニヤフ氏は冒頭、「停戦(期間)後も、戦争は続く」と述べ、一時的な戦闘休止を挟んだ後もハマスの壊滅を目指す軍事作戦は継続すると強調。合意は「厳しいが、正しい決定だ」として閣僚らに理解を求めた。
中東の衛星放送局アルジャズィーラによると、ハマスと共闘するガザの過激派「イスラム聖戦」は21日、レバノンで開いた記者会見で、交渉を巡り「ハマスと協調している」と表明した。イスラム聖戦も多数の人質を拘束しているとみられる。
人質はこれまで米国籍の母娘とイスラエルの高齢女性2人が解放されたほか、イスラエル軍が女性兵士1人を救出した。
イスラエルは21日も空爆などを続けた。ガザ当局によると、同日までの累計の死者は1万4100人を超えた。国連安全保障理事会は15日、「緊急かつ人道的な一時休止」を要請する決議案を採択した。国連総会も10月下旬、「人道的休戦」を求めていた。
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【東芝、株式併合など特別決議を承認 臨時株主総会】
22日の日経速報メールは報じた。
東芝は22日、臨時株主総会を開き、株式の非公開化に向けた株式併合や定款変更などの議案を諮り賛成多数で承認された。日本産業パートナーズ(JIP)と国内企業によるTOB(株式公開買い付け)に応募しなかった株主の株式を強制的に買い取り、東芝は12月20日に東京証券取引所への株式上場が廃止になる。
東芝は不正会計や巨額損失、アクティビスト(物言う株主)との対立など経営の混乱が長引いた。JIPは総額2兆円を投じて8〜9月にTOB(株式公開買い付け)を実施した。東芝は株主をJIPに一本化し、投資ファンド傘下で再建を目指す。
この間、以下の録画を視聴することができた。 (1)BS6報道1930「ウクライナの不協和音、政権と軍中枢の内部での反攻停滞が生む確執か。クリミヤ上陸作戦の狙いは」13日。 (2)BS6報道1930「ハマスが変えた<世界地図>、米の中政策崩壊で反米・反イが拡大。ゴミ燃やしパンを焼く…生活困窮のガザ住民は」14日。 (3)231113~変わりつつある世界(17)
2023年11月13日、前回の「変わりつつある世界(16)」を掲載してから、気になっていた記事がある。11月10日、2つの記事があった。
【食材宅配サービスのMBO】
第1が日経速報メールが報じた食材宅配サービスのMBO(経営陣が参加する買収)であり、つづけて同日、日経速報メールが報じた「進研ゼミ」である。
食材宅配サービスを手掛けるオイシックス・ラ・大地は10日、シダックスを子会社化すると発表した。シダックスがMBO(経営陣が参加する買収)で株式を非公開化した後に実施する第三者割当増資を引き受ける。原材料高や人手不足でシダックス主力の給食事業の収益が悪化する中、主力事業の効率化や不採算事業の見直しなど構造改革を急ぐ。
シダックスは志太勤一会長兼社長ら創業家の資産管理会社が、11月13日〜12月25日の期間に1株当たり800円でTOB(株式公開買い付け)を実施する。株主からシダックス株を買い取って完全子会社にする。
シダックスには食材宅配サービスを手掛けるオイシックスが、約3割を出資している。同社はMBOに賛同している。
給食業界は原材料高や水道光熱費の上昇などによって事業環境の厳しさは一段と増している。9月には学校給食などを運営するホーユー(広島市)が破産手続きを開始した。
シダックスの業績は新型コロナウイルス禍後の回復がまだ鈍い。給食などを手掛ける主力の「フードサービス事業」は、2023年3月期の営業利益が前の期比14%減の22億円と落ち込んだ。抜本的な立て直しに構造改革を急ぐ必要があると判断した。
シダックスは志太勤取締役最高顧問が1959年に富士フイルムの食堂を受託して創業。志太会長兼社長ら創業家が20%超を保有する。90年代にはカラオケ事業に進出し、一時は主力事業となったがその後に採算が悪化。18年にはカラオケ事業から撤退、19年には投資ファンド、ユニゾン・キャピタル(東京・千代田)の出資を受けて経営再建を進めていた。
22年にはオイシックスがユニゾンの持ち分をTOBで買い取り、28%を保有する筆頭株主となった。オイシックスはシダックスを持ち分法適用会社にしており、高島宏平社長がシダックスの社外取締役に就いている。
両社は法人向け給食で使うミールキットの開発など協業を進めていた。オイシックスは今夏から保育園給食事業に本格参入し、シダックスが受託運営する事業所にミールキットを試験導入するなど連携を強めている。
22年のオイシックスのTOBを巡っては、「オイシックス以外の第三者からのフード関連事業の協業提案などを検討する機会が失われる」としてシダックスの取締役会が反対を表明した。外食大手のコロワイドもシダックスへ給食事業の買収を提案するなどで各社の利害関係が複雑になった。
オイシックス以外の企業との連携可能性を調査する特別委員会や、ガバナンス(企業統治)体制を調べる調査委員会を設置することを条件に、取締役会がTOBへの意見を「中立」に変更したことでTOBが成立した経緯がある。
【ベネッセがMBO 欧ファンドと、「進研ゼミ」立て直し】
第2が「進研ゼミ」である。
ベネッセホールディングス(HD)は10日、MBO(経営陣が参加する買収)を実施すると発表した。ヨーロッパの投資ファンドEQTと組み、TOB(株式公開買い付け)を実施する。ベネッセHD株は上場廃止となる見通し。主力の通信教育「進研ゼミ」の不振が続いており、株式の非公開化で立て直しを図る。
TOBは1株2600円で実施する。9日終値(1791.5円)から808.5円(45%)のプレミアム(上乗せ幅)をつけた。全株ベースでの株式価値は約2700億円と、国内のMBOでは最大規模となる。
まずEQTが特別目的会社(SPC)を設立し、TOBなどにより約83%のベネッセHD株を約2080億円で取得する。その後、残りの約17%の株式を持つベネッセHD創業家の資産管理会社を完全子会社化する。
TOB完了後にSPCに対し創業家が出資。最終的にはEQTが6割、創業家が4割、SPC株を保有する形にする。議決権ベースでは5割ずつにする。
EQTはスウェーデンの産業・金融界に影響力を持つウォーレンバーグ家に由来する大手投資会社。2021年に日本に拠点を設置し、22年にアジア系のベアリング・プライベート・エクイティ・アジアと統合した。EQTにとって日本で初めての投資案件となる。
ベネッセHDは主力の「進研ゼミ」事業の苦戦が続いている。小学生〜高校生の会員数は23年4月時点で前年比14万人減の160万人だった。10年前と比べ約4割減少した。デジタル教材の導入などで立て直しを進めていたが、会員数減に歯止めがかからなかった。
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本業のもうけを示す連結営業利益は23年3月期で206億円と、13年3月期に比べ46%減った。介護や保育など多角化を進めるほか、22年には不採算だった語学教室の「ベルリッツ」事業の売却など構造改革を進めた。ただ、主力事業の抜本的な立て直しには非公開化が必要だと判断した。
•【関連記事】ベネッセ、「ベルリッツ」売却も 「進研ゼミ」に黄信号
ベネッセは1955年に生徒手帳などを発行する福武書店として設立した。69年に進研ゼミ高校講座の前身となる「通信教育セミナ」事業を始めた。創業家出身の福武総一郎氏が長く代表取締役を務めていたが、14年に最高顧問に退いた。
日本マクドナルドホールディングスのトップから転じた原田泳幸氏が14年に会長兼社長に就いたが、同年に個人情報漏洩問題が発覚し、会員数が減少。16年に退任した。その後もトップ交代が続いた。
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【たかが髪形、されど髪形 慶応野球「エンジョイ」の真意 森林貴彦 慶応義塾高野球部監督】
11日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・これが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい
・高いレベルの喜びは、練習や競争を乗り越えた先に
・選手との距離感はいつも悩み、言葉には気を使う
この夏の甲子園、107年ぶりの全国優勝を遂げた慶応義塾高(神奈川)のナインは笑顔の「エンジョイ・ベースボール」で汗と涙の色濃い高校野球に、新風を吹き込んだ。これからの高校野球は「勝ち」を目指しつつも、自立心を育む人材養成面などの「価値」が求められるという森林貴彦監督に、真意を聞いた。
神奈川県大会決勝で横浜、甲子園で仙台育英(宮城)という強豪を相次いで破った。「プレーボール」の言葉通り、遊び、楽しむ野球の原点に立ち返っての戴冠だった。
「夏の甲子園3回戦の広陵(広島)戦で、初回に丸田湊斗選手が三塁盗塁を決めて先制したが、サインは出していなかった。彼が自分で決めた。三盗も選択肢として準備していたが、初回から(危険を冒す)サインは出せない。私よりよほど度胸、判断力がある。勇気も要るし、根拠がないと走れない。これからもそういう場面に出合いたい」
――自分で考える楽しさを味わってほしい、と思ったきっかけは。
「高校2年の夏、上田誠監督が『二塁けん制の動きやサインを自分たちで決めてみなさい』とおっしゃった。内野手の私と投手、捕手が練習後の暗くなったグラウンドで、ああでもないこうでもないと話し合った。自分たちで物事を進めるワクワク感は高校野球の一番の思い出だ」
「チームの決め事を守り、人と同じことをするだけでは人生、面白くない。ますます価値観が多様化し、自分なりの幸せを選び取る時代になると思うので、これをやりたい、自分にとってこれが正しいと判断する感覚を野球で養ってほしい」
――相当の野球技術がないとエンジョイはできない。
「もちろん、ただ笑顔でやればうまくいくというものではない。頂点を目指す以上、日々の地道な苦しい練習、ライバルとの競争、試行錯誤がある。そこを乗り越えるところに、より高いレベルの喜びがある。それがエンジョイの真意だ」
「言葉には気を使っている。準々決勝の沖縄尚学戦は五回まで0-2の劣勢。前半戦終了時に『第1試合は完敗だから、第2試合を頑張ろう』と言った。同じ言葉ばかりだと、選手はまたかよ、という顔をする。新鮮な言葉がないか試合中に考えていた。あれでみんな『これからだ』となったのか、六回に逆転できた」
「ミーティングでだらだらしゃべりたくないので、試合ごとに四字熟語でテーマを伝える。『徹頭徹尾』とか『勇往邁進(まいしん)』とか。甲子園の決勝は『大願成就』。これしかない、と一番簡単に決まった」
コツは「全力で頑張るな」
――筑波大の大学院で、勝負事でしゃかりきになってはいけない、という研究成果を残した。
「頑張り度合いとパフォーマンスの関係を調べると、100%の力で走ったときに最高の速度が出るわけではない。8割の力で走ると9割の速度が出る。野球の投球でも全力で投げるより、少し力を落とす方が球速も出て、制球が定まる。全力でやるなということ。各界の達人が極意として力を抜くとおっしゃる。それと同じではないか」
「エラーをした野手や失点した投手が、取り返そうと思うのもよくない。それで取り返せるなら、そんな簡単なことはない。過去は切り捨て、未来を向いて今やれることをやる。練習試合では反省もするが、公式戦で過ぎたことを引きずっていいことはない」
――自主性は大事だが、選手任せの危うさも。
「1代前の3年生は一人ひとりが自立していた。そこで私もある程度任せたが、任せ過ぎたというか、お互いの意思疎通が足りなかった気がする。選手との距離感はいつも悩む。就任当初は私が面倒みなきゃという意識もあって、こまごま言い過ぎていたと思う。失敗は多々ある」
高校野球ではいまだに体罰案件が報告され、フェアでないプレーもみられる。勝利にとらわれ、選手の人間的成長が置き去りにされる現状は社会に通じる課題のようだ。
教育現場で無力を痛感
「(打者が横目で捕手の位置を確認する『カンニング』は)今年の甲子園でだいぶ減ったと感じたが、ゼロではない。チームではなく選手個人の問題だと思うが。高校野球の2年半は短く指導者も時間がない、急いで詰め込まないと、と思うと無理が出る。体罰を受けて育った選手が指導者になって、同じことをする。負の循環を今、食い止めないといけない」
「高校で完成する必要はなく、数年後にいい選手になってくれたらいい、という気持ちでいる。今、先生(慶応義塾幼稚舎教諭)として小学3年生を教えているが、無力を痛感するばかり。漢字、筆算、九九……。できたかなと思った次の日に子どもはできなくなる。一方、教えたことのないことを、いつのまにかできるようになっている。僕がいる意味があるのかな、と日々自問自答する。忍耐強く(成長を)待つ点で、野球の指導者としてもいいトレーニングになっている」
――理想を掲げ、変革を唱えれば風当たりも強くなる。
「チームの目標は『慶応日本一』だが、その先の目的として『恩返し』と『常識を覆す』を掲げてきた。今年の選抜大会でも『高校野球を変えたい』と言って甲子園に乗り込んだが、初戦敗退。簡単に言うな、できるわけないだろう、という声があった。ただ、それをバネにして、夏こそという思いが強まり、成長の材料になった」
――甲子園では選手たちの自由な髪形が注目された。
「いまだにそんなことが話題になるのかと残念に思う一方、これを入り口に(変化への)議論が進めばそれでいい、と思った。問題は髪形そのものより(無思慮に前例に従う)思考停止、旧態依然、上意下達の部分。高校野球はこういうものだという枠を誰かがつくり、枠の中でずっとやってきた。今年の優勝で、一石を投じることはできたかと思う」
――サインに縛られない選手は本当に育つか。
「野球がどういう人材を社会に送り出せるか、野球型の思考が今後の社会にどうマッチするのか考えると、危機感を覚える。勝つために手段を選ばないといった思考が、高校生以下の世代でも、ゆがみとして出ている。そこで打ち出したのが『成長至上主義』。ただただ勝利を目指して頑張ろう、ではなくて、一人ひとりが人間的に成長し、周りも成長させる。選手としての成長、人間としての成長が車の両輪となったら強い。それによって、実は勝利にも近づくのではないか」
「高校野球には堅苦しい部分、個性や自由が認められづらい部分がある。親の負担も大きく、(子どもに)野球が選ばれにくくなっている。甲子園は盛り上がっているようにみえて、全国の野球部や部員の数は減っている。このままの形では続かない。高校野球はスポーツの枠を超えて文化として定着し、変えるのは大変だが、我々が変われば人の育成方法なども変わるきっかけになるかもしれない。社会的な意義は大きい」
――激戦区の神奈川を勝ち抜くのは至難。優勝後、来春の選抜大会につながる試合に敗れた。
「甲子園から帰って翌々日に練習を始めたが(県大会までの)時間のなさ、慌ただしさは想像を超えていた。ただ選手たちは、また新しい気持ちでいてくれている。人生100年、自分もまだ折り返し点。選手に成長を求める以上、私自身が成長するマインドを持っていなければ。現状維持でいい、となったときは退場すべきだと思っている」
もりばやし・たかひこ 1973年東京都渋谷区生まれ。慶大法卒業後NTTへ。3年で退職し、高校野球指導者として筑波大院で指導理論を研究。2015年から母校慶応高を率い、春夏計4度甲子園出場。23年夏、107年ぶりの全国優勝に導いた。慶応幼稚舎教諭。
あえて寄り道、柔軟性養う(インタビュアーから)
慶応の選手たちが夏の甲子園を「エンジョイ」できたのは「そもそも、慶応にいる時点で半ば人生の勝ち組だから」というやっかみまじりの見方があるが、それは違うようだ。
青春まっただ中の高校生であっても野球がすべてではいけない。そう考える森林監督は慶応OBなどから幅広い分野の話を聞く機会を設けている。
政府系金融機関を辞め、瀬戸内海の島で農業にいそしむ人から「都心の大会社に勤めるだけが人生ではない」と学んだ。大リーガー・菊池雄星投手の元マネジャーから、華やかな印象と違って努力の人と聞いた。強豪校が大会準備に追われている時期に、知的障害のある生徒の硬式野球への参加を進める取り組みと連携し、合同練習を行った。
あえて寄り道し、様々な価値観に触れることで「野球オンリー」にはない心の柔軟性が養われているようだ。(編集委員 篠山正幸)
【「日本はGXに本気か」 海外マネー3300兆円が品定め 資産運用立国に挑む 開国の障壁(1)】
13日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・日本は海外からの投資を集める「運用開国」を目指す
・脱炭素に向けて産業転換を段階的に進める戦略を掲げる
・海外投資家は日本企業のGXへの向き合い方を注視
政府は海外運用会社を招く「運用開国」に乗り出した。家計金融資産2100兆円が外に出ていくばかりでは日本の成長に寄与しない。国内に投資機会をどう生むかが最大の課題だ。
【「資産運用立国に挑む」連載記事】
• ・日本株の運用会社「空洞化」 非効率な慣習、参入阻む
10月6日、首相官邸。米運用会社ブラックロックの呼びかけで中東の政府系ファンドや欧米年金など世界の機関投資家・運用会社の代表約20人が集まった。保有・運用額は計3300兆円に上る。関係者は海外勢が来日した目的を「『具体的な投資案件を見せてくれ』ということだ」と語る。
政府が掲げるのが、化石燃料からクリーンエネルギーへの産業構造の転換を目指す「グリーントランスフォーメーション(GX)」だ。欧州のような一足飛びの脱炭素でなく段階的に移行(トランジション)する戦略で、官民合わせて10年で150兆円が必要とはじく。シンガポールの政府系ファンドGICは7月、現地を訪れた自民党の片山さつき金融調査会長に「日本のGX投資の定義に関心がある」と語った。
海外マネーを呼び込もうと企業も動き始めた。9月に増資などで約2040億円を調達したJFEホールディングス。「構造改革をやり遂げ、量から質へ転換する」。調達先を海外に絞り、欧米などの投資家約100人にオンラインで訴えた。
JFEホールディングスは構造改革のため川崎市の高炉を止めた
利益の見込みやすい電気自動車向け高級鋼板の投資に公募増資、中長期の脱炭素投資に新株予約権付社債(転換社債=CB)で得た資金を充てる。川崎市の高炉を止める一方、2030年度までに脱炭素に約1兆円投じる計画だ。増資で外国人株主比率は3割と3月末の24%から高まった。
日本企業のGX関連の資金調達は増えている。資金使途を環境事業に限る環境債の発行は23年1〜10月に1兆6000億円超と、年間で最高だった21年をすでに約2割上回った。温暖化ガス排出量の多い企業による移行債も21年からの累計で約6000億円に上る。
アジアではトランジションへの関心が高く、50年までに40兆ドルの脱炭素投資の資金需要があるとみられる。日本に脱炭素マネーを集め、アジアのGX投融資の資金が行き交うハブへと育てる余地はある。
ただ、投資家は日本企業がどこまで積極姿勢に転じたのか、なお半信半疑だ。
「日本は脱炭素にどのくらい真剣なのか」。ENEOSホールディングスのもとには政府のGX戦略に確信を持てない海外投資家から多くの質問が寄せられる。同社は再生可能エネルギー開発や水素の供給網構築などに取り組むが「技術のブレークスルーの時期など不透明で、30年度以降の具体的な計画を示すのは困難」とする。
日本企業はバブル崩壊以降、設備投資や研究開発を抑えて借入金返済を優先してきた。日銀の資金循環統計によると民間企業部門(金融除く)は戦後、資金不足だったが、1998年から資金余剰の局面に転じた。海外マネーが注目する今こそ、日本が積極投資に打って出る好機となる。
GXだけでなく、省人化や農業など日本経済の課題は多い。投資機会をどれだけ増やせるか。運用立国実現のハードルは高い。【資産運用立国に挑む 第1部】
【海外新薬、国内で早期承認へ 日本人の初期治験廃止】
同じ13日の日経ニュースメールは報じた。
日本で薬を売り出すために、臨床試験(治験)の過程で日本人で安全性を別途確認しなければならない制度が原則廃止される。欧米で承認された新薬の7割は日本で承認されておらず、海外で使われている薬が日本で入手できない「ドラッグ・ロス」が生じてきた。新薬の日本での早期流通を促し、患者の不利益の解消につなげる。
厚生労働省は近く、日本人での追加的な初期治験が原則として必要ないことを記した通知を出す。数カ月以内に制度は廃止される見通しだ。
医薬品が日本国内に出回るには、3段階の治験が必要になる。1番目にあたる第1相は少数の健康な人に薬を投与して安全性を確認する。第2相は少数の患者に投与し、効き目や副作用を調べる。第3相では世界各国の多数の患者を対象にする。
第1、2相の治験は、製薬会社が新薬を開発した国でやることが多い。しかし日本で販売するには原則として、第3相に進む前に別途、日本人への初期治験にあたる第1相の追加調査が求められる。
厚労省は「国内の環境で暮らす日本人への安全性を確認するため」と説明する。だがこれは日本独特のルールで他国ではほとんど求められない。
この追加調査が妨げとなり、「ドラッグ・ロス」や海外で使用されている医薬品の日本での承認が遅れる「ドラッグ・ラグ」が深刻になっている。
厚労省は追加的な初期治験をなくしても、第3相の治験で日本人の安全性は確認されると判断した。抗がん剤など強い副作用が起こりやすい一部の薬には追加調査が残る可能性がある。
2020年時点で米国と欧州連合(EU)で承認された新薬のうち、日本では72%が未承認で数字は上昇傾向にある。09〜17年に開発された新薬で、世界で初めて承認された時期と国内承認された時期の差は54.1カ月。韓国(28.2カ月)の約2倍だ。
治験には参加者を集めるコストや時間が欠かせない。グローバルな製薬会社にはこの手間を嫌って日本での販売を断念したり、市場投入の時期を他国に比べ大幅に遅らせたりしている。
厚労省のヒアリングに対し、製薬会社は「日本人向け治験が新薬投入の障壁となっている」という声を寄せた。欧米系の製薬会社も「日本人への投与経験がないこと以外に(追加調査が必要な)理由が十分に示されておらず、欧米の本社に理解されない」と指摘した。
たとえば消化管の壁にできる悪性腫瘍である消化管間質腫瘍(GIST)は年間10万人に1人から2人程度に発症する。治療薬「アバプリチニブ」は日本では手に入らない。米国では20年1月、欧州では20年9月に承認されている。
新型コロナウイルス禍でも、日本がワクチン承認で欧米から後れをとった原因の一つが追加治験だった。
米ファイザーは、海外での大規模治験の結果をもとに20年12月にワクチンの製造の承認を申請した。だが追加治験などへの対応で承認までに2カ月ほどかかった。
厚労省はルール変更について、医薬品の開発を担う海外の製薬会社への情報発信にも力を入れる。24年度には米国に医薬品医療機器総合機構の事務所を設立し制度の周知に生かす。
製薬大手アストラゼネカ社では、世界同時開発などの取組で同社の日本でのドラッグ・ラグやロスの問題はほぼ解消している。一方、同社はベンチャー発の先端的な医薬品のライセンスを取得し、残りの治験を自社で担う場合がある。日本人への初期治験の原則廃止で、開発期間が短縮されれば「非常にポジティブに捉えられる」という。また、日本市場で発売がしやすくなることへの「大きな一歩」だと期待を寄せる。
ドラッグ・ロスやラグの解消には他にも課題がある。例えば患者が少ない希少疾患や小児がんなどはコストをかけても利益が出にくいため、製薬会社は開発を敬遠する。米国は成人用のがんの薬を開発する際には小児用も開発することを義務づけている。日本には同様の制度はない。
【小売り、食品PB比率17%で最高 イオンやセブンが新商品】
14日の日経速報メールは報じた。
小売り大手が食品など生活必需品で割安なプライベートブランド(PB)を拡充する。イオンは食品PBの半分を刷新し、セブン&アイ・ホールディングスは低価格帯PBを倍増させる。スーパーの食品販売額に占めるPB比率は10月に過去最高の約17%に高まり、店頭価格の上昇は鈍化している。物価押し上げの主軸はモノからサービスに移る。
イオンはPB「トップバリュ」で生鮮品を除いて約5千ある食品のうち2500品目を新商品に切り替える。日用品などと合わせたPB売上高を2024年2月期に前期比11%増の1兆円超に高める。セブン&アイはPBの中でも低価格シリーズ「セブン・ザ・プライス」の品目を24年2月末までに160品に倍増させる。
ベイシア(前橋市)は新しいPB「ベイシアプレミアム」を始めた。既存PBは新製品に順次切り替えて24年2月までに100品目以上を展開する計画だ。西友も生鮮食品の新PB「食の幸」で現状65種類の品目数を増やす。
一般にPBはメーカー品より1〜3割程度安い。小売業にとって稼げる商品でもある。物流や宣伝費などを抑えられるため、粗利益率は15〜20%とされるメーカー品と比べ10ポイント程度高い。
メーカー品とPBは物価高でともに値上がりしているが、消費者は安いPBにシフトしている。
日本経済新聞社と調査会社のインテージ(東京・千代田)が全国のスーパーなどから集めたPOS(販売時点情報管理)データを分析したところ、加工食品や調味料、清涼飲料、アルコール飲料などを含む食品PB(生鮮品除く)の割合は10月に16.8%になった。統計がある12年以降で最高だ。
品目別のPB比率は冷凍野菜が57%と最多で、ハムが34%、牛乳は32%だった。
PBシフトの背景には食品価格の上昇がある。帝国データバンクによると、22年の食品値上げは約2万6000品目に達し、23年は1〜10月の累計で3万品目を超えた。総務省の消費者物価指数(食料、2020年=100)も10月、東京都区部で116と21年1月(99.7)から16.3%上昇。消費者は生活必需品への節約志向を強めている。
PBシフトは物価動向にも影響する。牛乳の店頭価格の前年比上昇率は10月の19%から足元は11%に縮まった。
POSデータをもとにスーパーなどの店頭価格の動きを示す「日経ナウキャスト日次物価指数」をみると、11月12日時点で前年比6.7%(7日平均)上昇したものの、今年8月のピーク(同9.2%)に比べ鈍化した。
その中で物価全体を下がりにくくしているのが旅行やレジャーなどのサービス価格だ。日本のサービス価格は長らく低迷していたが、9月は上昇率が2%に高まった。
サービス価格は賃上げの影響を受けやすい。足元で賃上げは物価上昇を下回っており、実質賃金は9月まで18カ月連続でマイナスだった。物価を下支えするサービス価格の腰折れを防ぐには、消費者の財布のひもを緩める継続的な賃上げが不可欠だ。
24年の春季労使交渉に向け連合が要求方針を発表した。サントリーホールディングスなど交渉が本格化する前に賃上げ方針を表明するところも出ている。企業の継続的な賃上げ力が問われる局面だ。(浅山亮、マクロ経済エディター 松尾洋平)
【エクソン、リチウム生産へ 30年までにEV電池100万台分】
同じ14日の日経速報メールは報じた。
【ヒューストン=花房良祐】石油メジャーの米エクソンモービルは13日、米南部アーカンソー州で2027年から電気自動車(EV)電池用のリチウムを生産すると発表した。北米以外での生産も視野に入れ、30年までに年100万台分のEV用電池のリチウムを供給。世界有数のEV向けリチウム供給会社を目指す。
石油メジャーがリチウムの大規模生産に乗り出すのは初めて。EVや電池のメーカーと供給に向けた協議に入った。23年初めにアーカンソー州の12万エーカー(約485平方キロメートル)の敷地で採掘する権利を獲得した。
石油・天然ガスの掘削技術を活用して地下約3000メートルからリチウムを含有する塩水をくみあげる。従来より環境負荷の低い新技術でリチウムを分離し、現場のプラントで電池用の素材に加工する。30年までに年約10万トン(炭酸リチウム換算)を生産する見込み。
リチウムはレアメタル(希少金属)で、リチウムイオン電池の製造に使用する。EVの増加などでリチウム需要は30年までに4倍になる見通しで、供給不足の懸念がある。低炭素部門トップのダン・アマン氏は「リチウムはエネルギー転換に必要で、エクソンは(経済の)電化に向けて主導的な役割を果たす」とコメントした。
米地質調査所(USGS)によると、22年の世界のリチウム生産のうちオーストラリア、南米チリ、中国の3カ国で合計約9割を占め、偏っている。一方、米国の生産量はほとんどない。加えて、従来技術によるリチウムの精錬では中国が世界の大半を担っている。米国で生産すればサプライチェーン(供給網)のリスクも低下する。
EVと電池の普及に伴い、レアメタルの生産・精錬が少数の国に偏在している課題が浮き彫りになっており、バイデン政権は米国での生産を支援する。22年には国産の電池素材を使用したEVの購入補助制度を導入した。
エクソンは太陽光・風力発電について石油開発との相乗効果が見込めないとして投資に慎重な一方、二酸化炭素を回収して地下に貯留するといった石油開発の掘削技術がいかせる低炭素ビジネスには積極的だ。地下を掘削するリチウム生産も石油開発の技術が活用できるとみている。
天候に左右される太陽光・風力発電は発電が不安定なため、蓄電池との組み合わせが不可欠だ。このため再生エネの普及に伴い蓄電池は増加する見通しで、リチウムの生産会社がエネルギー転換の時代を勝ち抜くとの見方が高まっている。
米S&Pグローバルのダニエル・ヤーギン副会長は「エネルギー業界は『ビッグ・オイル』(石油メジャー)から『ビッグ・ショベル』(大手鉱山会社)の時代に移っていく」と話している。
【米下院、つなぎ予算案を可決 政府閉鎖は回避へ】
15日の日経速報メールは報じた。
【ワシントン=高見浩輔】米連邦議会下院は14日、予算執行を現行水準のまま2024年1〜2月まで続ける「つなぎ予算案」を可決した。上院でもすでに与野党のトップが法案への支持を表明している。政府閉鎖の回避に向けて大きく前進した。
米議会は2024会計年度(23年10月〜24年9月)の予算案をまだ策定しておらず、9月末に11月17日までのつなぎ予算を成立させて政府機関の閉鎖を回避していた。期限が近づき、再延長が必要になっている。
•【関連記事】米政府閉鎖、土壇場で回避 11月までのつなぎ予算成立
つなぎ予算案は、野党・共和党が過半数を握る下院で10月に新たに議長になったジョンソン氏が提案した。軍事や退役軍人、交通、住宅などの予算は24年1月19日まで、それ以外は2月2日まで執行を続けることができる。
民主党の下院議員らがジョンソン氏の案に賛成したのは、懸念していた大幅な歳出削減が盛り込まれなかったためだ。譲歩した内容の法案を蹴れば、政府閉鎖の責任を民主側が背負うリスクもあった。
•【関連記事】米下院新議長に保守派ジョンソン氏 内紛抱え手腕未知数
上院でも民主トップのシューマー院内総務が法案を支持する考えを示している。上院を通過すれば法案はバイデン大統領の署名を経て成立する公算が大きい。
下院共和はわずかな議席数の差で優位を保っているため、強硬派の一部が反対するだけで法案が通らない機能不全に陥っていた。マッカーシー前議長は9月末、民主の協力を得て11月17日までのつなぎ予算案を可決させたが、その直後に解任された。
強硬派議員らは今回の法案にも反対したが、議長の解任動議に踏み込む動きは今のところ起きていない。前議長の解任後、下院共和では議長のなり手が3週間決まらなかった。
複数の米メディアによると、ジョンソン氏はひとまず政府閉鎖を避けつつ、年明けにかけて調整する24会計年度予算案で歳出削減を強く求める構えだ。
つなぎ予算の期限を2つに分けたのは、バイデン政権と民主党が「包括予算案」と呼ばれる一括法案で予算案を通すのを回避する狙いがある。米国の予算案は本来、12本の予算案を個別に成立させる必要がある。
政府閉鎖を回避できれば今後は予算案に盛り込まなかったウクライナ支援が大きな議題となる。共和内には国境警備など国内に資金を振り向けるべきだと反発が大きい。与野党で意見の隔たりは大きい。
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。前嶋和弘上智大学総合グローバル学部 教授
ひとこと解説
共和党の強硬派の自由議連の案だった「2段階予算案」を共和党穏健派と民主党側が拒否できずに通過。民主党側の反対は2,共和党側は93。さらに強硬な共和党議員が歳出削減などが入っていないため拒否。「強硬派議長(ジョンソン)の方が強硬派の反対が少なくなる分だけつなぎ予算成立の可能性が高くなるかもしれない」と何度かいろいろなところでお伝えしましたが、そのとおりになりました。 指導力が全く未知数だったジョンソン下院議長にとっては、最初の大きな仕事。「妥協を許さない」強硬派だったはずのジョンソン。議員個人としてはおそらく民主党との徹底した財政対決を望んでいたはずですが、現実的に政府一時閉鎖回避を重視。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
同じ15日のニュースメールは次のように報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は紅葉シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる訪日客が増える。
主要国23か国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で(2.7%増)だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店のインバウンド売上高が3201億円と、18年同期を14%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
【イスラエル軍、ガザ北部シファ病院で「作戦実行中」】
同じ15日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は15日、パレスチナ自治区ガザ北部にある地区最大のシファ病院で「特定のエリアで、精密かつ標的を絞った作戦を行っている」と明らかにした。軍は同病院やその周辺の地下にイスラム組織ハマスの司令部があると主張しており「病院内にいるすべてのハマスのテロリストに投降を求める」と強調した。
米CNNは同日、イスラエル軍の戦車がシファ病院の敷地内に入ったとの目撃情報を報じた。国連機関によると、シファ病院には12日時点で患者が600〜650人、避難住民が約1500人いたという。
イスラエル軍は作戦部隊に医療チームやアラビア語を話す兵士を同行させていると説明し「民間人に危害が及ばないよう配慮している」と強調した。作戦前日に「ガザの関係当局に対し、病院内での軍事活動を12時間以内に中止するよう再度伝えたが、応じなかった」と主張した。
一方、ハマスは病院の軍事利用を否定している。ロイター通信によると、ハマスは15日、病院突入の責任はイスラエルと米国の双方にあると非難する声明を出した。
イスラエル軍は14日、シファ病院の近くにありハマスの重要拠点だとするシャティ難民キャンプのほか、警察本部など複数の施設を制圧したと発表した。13日にはガザ北部のランティシ病院にも部隊が踏み込み、病院地下に武器の保管や人質の拘束などハマスの作戦に利用された痕跡があったと主張していた。
ガザ北部ではシファ病院などが燃料不足で機能を停止するなど、医療体制が崩壊しつつある。バイデン米大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に「病院は守られなければならない」と強調していた。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は14日、ハマスがシファ病院を含む複数の病院を軍事利用していることを確認したと明らかにし「戦争犯罪だ」との認識を示した。ロイター通信が伝えた。
ホワイトハウスはバイデン氏とイスラエルのネタニヤフ首相が14日に電話会談したと発表した。ハマスが拘束する人質の救出や病院の状況について協議したとみられる。
【日経平均3万3000円乗せ 陰の主役はNVIDIA】
同じ15日の日経ニュースメールは報じた。
15日の東京株式市場で日経平均株価は大幅続伸し、前日比823円77銭(2.52%)高の3万3519円70銭で取引を終えた。前日比の上げ幅は2023年で最大となり、節目の3万3000円をおよそ2カ月ぶりに上回った。米利上げの打ち止め観測が強まり、国内でも金利高が逆風となるグロース(成長)株が買い戻された。ハイテク株主導の相場の陰の主役と声が上がるのが、米エヌビディアだ。
15日は半導体検査装置大手のアドバンテスト株が一時8%高まで買い進められるなど、半導体関連株の上昇が目立っている。半導体製造装置の東京エレクトロン株とあわせて日経平均を170円強押し上げた。
アドテストはPER(株価収益率)が60倍に迫り、割高株の筆頭だ。将来の高い利益成長が株価に織り込まれている分、金利上昇は現在価値に引き直す際の割引率を高めるため、株価の下押しにつながりやすい。
14日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びは市場予想以上に鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止め観測が広がった。10月下旬に一時5%を超えていた米長期金利は4.5%を下回り、割高株への逆風は弱まる。アドテスト株は11月1日に付けた直近安値から半月で3割上昇した。
【10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化】
15日の日経速報メールは報じた。
日本政府観光局(JNTO)は15日、10月の訪日客数は251万6500人で新型コロナウイルス流行前の2019年同月を0.8%上回ったと発表した。単月で初めてコロナ前の水準を超えた。アジア圏の需要回復が加速した。政府が水際対策を大幅に緩和してから1年が過ぎ、観光も平時に戻りつつある。
前年同月比ではおよそ5倍だった。例年10月は行楽シーズンを迎え、東アジアや欧州から訪れる客が増える。
主要国23カ国・地域のうち6割がコロナ前を超えた。韓国が63万1100人と最多で、19年10月比で3倍程度になった。次いで台湾が42万4800人で2.7%増だった。
中国は3位で25万6300人だった。コロナ前の19年10月比で35%まで戻したが、前月より21%減った。10月初旬は国慶節(建国記念日)などに伴う大型連休があったものの、回復はなお鈍い。
訪日客増加は観光関連の消費にも波及している。観光庁によると23年7〜9月の消費総額は1兆3904億円で四半期ベースで過去最高だ。
三越伊勢丹ホールディングスは伊勢丹新宿本店(東京・新宿)や三越銀座店(同・中央)など主要百貨店の4〜9月のインバウンド売上高が353億円と、18年同期を17%上回った。
オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)は、2023年4〜9月の来園者に占める訪日客の割合が13%に上った。20年3月期通期の10%を上回る過去最高のペースだ。
西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、10月の訪日客によるプリンスホテル全体の室料収入がコロナ前の18年同月比で約1.5倍に増えた。
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【いすゞ、電池交換3分のEVトラック 自前で取り換え拠点】
同じ15日の日経ニュースメールは次のように報じた。
いすゞ自動車は電池交換式電気自動車(EV)トラックの事業化に乗り出す。3分で電池交換が可能な車両を開発し、取り換えを担うインフラも自社で運用する。EVは充電に時間がかかり、配送効率が落ちるのが課題だ。運転手不足問題の解消につながる電池交換式の普及を後押しするため、車両開発からインフラまで一貫して担う。
いすゞは電池を交換する「無人ステーション」をこのほど開発した。物流企業の配送拠点や給油所に売り込み、設置することを想定する。コンビニエンスストアへの荷物配送やゴミ収集車などに使う小型EVトラック「エルフ」をベースにした車両を開発した上で、2025年に実証実験を始める。
ステーションではロボットが電池を取り外し、充電済みの電池と交換する。交換時間は最短で2分30秒程度としており、トラックが再び走行可能になるまで3分以内ですむという。充電済みの電池を用意したり、設備の保守や点検をしたりといったステーションの運用もいすゞが自ら手がける可能性がある。
充電式のEVトラックは充電に10時間程度かかり、軽油を燃料とするディーゼル車と比べて配送効率が低いのが課題となっている。商用車では電動化が遅れており、調査会社の矢野経済研究所によると、世界の商用車販売台数に占める電動化率(ハイブリッドなど含む)は2021年時点でも1.2%にとどまる。
電池交換式であれば、短時間の交換で配送を続けることができる。物流業界ではトラックやバスなどの運転手に残業規制が適用され、人手不足が見込まれる「2024年問題」に直面している。電池交換式が広がれば、脱炭素の対応と配送効率の維持への両立が期待できるとされている。
既に軽自動車の商用車では開発が進む。ホンダはヤマト運輸と11月から交換式電池を使った軽商用EVによる集配業務の実証実験を開始すると発表している。ホンダの軽EV「MEV-VAN Concept(エムイーブイバン コンセプト)」を活用し、太陽光発電の電力を使う。交換式電池でも積載量などの性能を維持できるかどうかを調べる。
ホンダの交換式電池は、自社の電動スクーターや建機メーカーのコマツと共同開発した電動小型ショベルに搭載されている。コマツは小規模な土木・建築工事や配管工事などでのニーズを見込んでいる。車以外でも用途拡大が進んでおり、国内の新興EVメーカーの間でも交換式電池の導入が進む可能性がある。
交換式電池は中国やインドなど新興国で普及している。中国の新興EV大手、上海蔚来汽車(NIO)は充電設備の設置と並行し、電池を交換する拠点を増やしている。(淡海美帆)
【米中首脳、軍事対話再開で合意 習氏「世界に重い責任」】
16日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【この記事のポイント】
・1年ぶりの対面会談が終了。昼食など含め4時間強
・AIの政府間対話や気候変動対策の作業部会設置を確認
・習氏は台湾統一に意欲。米国の台湾への関与けん制
【サンフランシスコ=田島如生、坂口幸裕】バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は15日午前(日本時間16日未明)、米西部カリフォルニア州サンフランシスコ近郊で会談した。途絶えている米中両軍高官の対話再開で合意した。意思疎通を維持し、台湾周辺や南シナ海での偶発的な衝突を防ぐ狙いがある。
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両首脳が対面で会うのは1年ぶり。会談はサンフランシスコ中心部から40キロほど南にあるカリフォルニア州ウッドサイドにある「ファイロリ」邸で開いた。会談は4時間強で、両首脳は少人数での昼食会後、庭園を散歩した。
バイデン氏は会談後の記者会見で「建設的で生産的な議論だった」と述べた。米中の競争が「紛争に発展しないように(関係を)合理的で管理可能なものにするのが私の責任だ」と表明。滞っていた軍事対話の再開で合意した重要性を訴えた。
中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えない一方、米国が台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を維持すると改めて明言した。2024年1月の台湾総統選で中国が選挙介入しないよう警告した。
習氏は会談で「世界経済は回復し始めたが、その勢いは不十分だ。産業サプライチェーン(供給網)の混乱や保護主義の台頭といった問題は顕著になっている」と言明した。経済安全保障を理由に先端半導体などの対中輸出・投資規制を主導する米国を批判した。
習氏は地球は十分に大きく、米中が共に成功するのは可能だとも指摘した。「私とバイデン大統領は中米関係のかじ取り役であり、国民、世界、そして歴史に対して重い責任をもつ」と語った。
米政府や中国国営中央テレビ(CCTV)によると、両首脳は両軍の高官協議のほか、国防当局の対話や海上軍事安全保障メカニズム会議を再開させると確かめた。両軍の戦闘区域のトップ同士で連絡を取り合うことも申し合わせた。
米政府高官は、オースティン米国防長官と中国側の軍高官が「数週間以内」に会談する方向で調整すると説明した。米中は台湾海峡や南シナ海で軍事的な緊張を強めている。両国の軍事対話は22年8月、当時のペロシ下院議長が台湾を訪れたのを境に滞った。
バイデン氏は会談で、台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を改めて主張した。CCTVによると、習氏は台湾について「中米関係の最も重要かつ最も敏感な問題だ」と説明し「必ず統一する」と強調した。
両首脳はAIに関する政府間対話を立ち上げると確認した。AIの軍事利用への懸念が国際的に広がっていることが背景にある。気候変動対策に関する作業部会の設置でも合意した。
麻薬対策での協力に向けた作業部会を立ち上げることも申し合わせた。医療用麻薬フェンタニルの過剰摂取による死者が米国内で激増しているのを踏まえた。中国は原料となる化学物質の主要製造国だ。
習氏は先端半導体などの対中輸出・投資規制に関し「中国の正当な利益を著しく損ねている」と問題視した。「中国の科学技術の抑圧は中国の質の高い発展を抑制することだ」と話し、規制措置の撤廃を要求した。
習氏の訪米は17年4月以来、6年半ぶりとなる。サンフランシスコ滞在中、岸田文雄首相との会談も調整している。15日に開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での演説も予定する。
米中首脳会談は22年11月にインドネシア・バリ島で開いて以来だ。両首脳は当時、偶発的な衝突防止に向けて対話を続けると合意した。米軍が23年2月、米本土上空に飛来した中国の偵察気球を撃墜したことをきっかけに両国関係は冷え込んだ。【関連記事】
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【日中首脳が1年ぶり会談 「戦略的互恵関係」を再確認】
17日の日経ニュースメールは次のように報じた。
【サンフランシスコ=秋山裕之】岸田文雄首相は16日(日本時間17日午前)に訪問先のサンフランシスコで中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と1時間ほど会談した。個々の懸案で対立しても共通利益の追求を優先する「戦略的互恵関係」を再確認した。
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日中首脳会談は2022年11月にバンコクで開いて以来、1年ぶり。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でともに訪米する機会を利用した。15日にはバイデン米大統領が習氏と会い、両軍高官の対話再開で合意している。
首相は会談の冒頭に「日中は隣国として共存、繁栄し、地域と国際社会をリードする大国として世界の平和と繁栄に貢献していく責任を有する」と強調した。「より明るい日中関係の未来を切り開けるように力を合わせていきたい」と述べた。
習氏は両国の平和共存は正しい方向性だと指摘し「共通利益を重視し、相違を適切に管理すべきだ」と主張した。「戦略的互恵関係の位置づけを再確認し、新たな意味を与え、新時代の要求に合う中日関係の構築に力を尽くすべきだ」とも語った。
戦略的互恵関係は06年に当時の安倍晋三首相が訪中し、胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席との会談で打ち出した概念だ。胡主席が08年に国賓で来日し、福田康夫首相と「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明をまとめた。
日中は政治体制が異なり、日米のように民主主義といった共通の価値観を共有しにくい。解決困難な課題で対立を深めず共通利益を求めることで、安定的な関係を維持する狙いがある。
両首脳は東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出について解決を目指す方針で一致した。首相は「専門家のレベルで科学に立脚した議論を行う」と述べた。中国は「核汚染水」と呼んで反発していた。
首相は中国による日本産水産物の輸入禁止を撤回するよう求めた。中国当局に逮捕された邦人の早期解放なども主張した。
沖縄県・尖閣諸島周辺で続く中国公船による領海侵入をめぐっては東シナ海での偶発的な衝突回避を話し合った。日本の排他的経済水域(EEZ)に中国が設置したブイの即時撤去を求めた。
中国は台湾について譲れない「核心的利益」と位置づけ、日本に関与しないように求めている。首相は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
日中ハイレベル経済対話を適切な時期に行うことでも一致した。気候変動対策など地球規模の共通課題で協力を申し合わせた。
2国間の問題でも意思疎通を強化する。日中の通商当局間で重要鉱物の輸出管理といった貿易問題に関する対話枠組みを新設する。企業関係者の安全確保も含めたビジネス環境に関する協議体も創設する。
首相は訪米に先立ち、対中外交について「建設的かつ安定的な関係を維持するため、お互いの努力によって関係を維持する基本方針は変わっていない」と言明している。
日中関係をめぐっては岸田首相と中国の李強(リー・チャン)首相が9月にインドネシアで立ち話した。日中平和友好条約発効45周年の10月23日にメッセージを交換した。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。深川由起子早稲田大学政治経済学術院 教授
分析・考察
中国に限らず、グローバルサウスに限らず、「日本はアメリカの従属変数」というレッテルはかなり粘着力を持ちます。写真の習主席の表情もそのもの。G7などマルチのレバレッジ依存はやむを得ないとしても、地域研究の没落と共に日本人の中国研究者数が激減し、本来、欧米に比しての強みだった「中国の内側論理から考える」能力の低下がバイの関係構築を不利にしている感があります。かといって欧米のような情報機関の力が弱く、民間企業の持つ情報との密かな連携も希薄。これでは情報戦について行けません。「あなたは「井戸を掘った人を忘れない」国なのでは?」と鋭く切り返せる日本にならないといけないのでは。
【パナソニックHD、自動車部品会社売却へ 米ファンドに】
17日の日経速報メールは報じた。
パナソニックホールディングス(HD)は17日、自動車部品を手掛けるパナソニックオートモーティブシステムズの売却に関し米投資 ファンド大手アポロ・グローバル・マネジメントのグループ会社と基本合意したと発表した。パナソニックHDがパナソニックオートの株式の50〜80%をアポロが投資助言をするファンドに売却する。
パ ナソニックHDは電気自動車(EV)向け電池などを成長領域に位置づけ、重点的に投資する方針を示している。成長領域以外の事業の見直しを進めており、今回の決定はその一環になる。
売却によりパナソニックオートはパナソニックHDの完全子会社から持ち分法適用会社になる見通し。2024年3月末までの正式契約締結を目指す。パナソニックHDが売却する株式数をこれから決めるため売却額は未定だが、数千億円とみられる。
パナソニックオートは自動車のコックピットシステムや電子部品、車載充電器事業などを手掛ける。2022年度の売上高は1兆2975 億円、営業利益は162億円だった。グループ従業員数は約3万人。27年度に売上高営業利益率を5%(22年度は1.2%)にする目標を掲げているが、車載充電器事業の赤字などで近年は収益力が低下している。
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自動車業界は電動化や自動運転など「CASE」と呼ばれる技術への対応など変革を求められている。新技術に対応し、競争力を高めるためには多額の研究開発費が必要になる。パナソニックHDはパナソニックオートが単独で投資資金をまかなうのは難しいと判断し、ファンドと連携することを決めた。
パナソニックHDは17日、パナソニックオートの売却後も「グループの一員として社名やブランドは残す」とコメントした。
パナソニックHDの楠見雄規社長は5月のグループ戦略説明会で、23年度は「事業ポートフォリオの見直しを視野に入れた経営を進める」と述べ、グループ事業の売却の可能性を示唆していた。
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【伊藤忠、ビッグモーター買収検討 創業家関与なしが条件】
同じ17日の日経速報メールは報じた。
伊藤忠商事と国内の企業再生ファンドが中古車販売大手ビッグモーター(東京都多摩市)の買収を検討していることが17日、わかった。ジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と組み、買収に必要なデューデリジェンス(資産査定)の独占契約を結んだと発表した。 伊藤忠とJWP連合は契約に当たり、ビッグモーターとの間で創業家が経営に関与しないことで大筋合意した。
伊藤忠と子会社で燃料商社の伊藤忠エネクス、JWPの3社連合が17日、ビッグモーターとデューデリジェンスを独占で実施することで基本合意書を結んだ。3社はビッグモーターの経営状況を詳細に分析し、2024年春までに再建を支援するかを最終決定する。
ビッグモーターは未上場で、同社株は創業者の兼重宏行氏らの資産管理会社が保有している。23年7月に自動車保険金の水増し請求などの不祥事が発覚し、顧客離れが進んでいる。中古車販売は一時、例年に比べて6割以上減った。現在も月次で赤字が続いている。
同社は現預金や売掛金などの流動資産を数百億円抱える一方、従業員への賃金支払いなどで資金の流出が続く。銀行団は借入金の借り換えに応じないなど資金繰りに苦慮しており、自主再建が困難な状況だ。
ビッグモーターはコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの協力を仰ぎ、経営再建を急いでいる。支援企業を早期に確定し経営の立て直しを目指すが、不祥事の影響が長引き難航していた。
伊藤忠はグループで自動車リース事業を手掛けているほか、ニッポンレンタカーサービスを傘下に持つ東京センチュリーを持ち分法適用会社にしている。輸入車・中古車販売大手のヤナセも抱え、自動車ビジネスとのつながりが深い。グループとの相乗効果が高い可能性があると判断し、支援に名乗りを上げた。
焦点は買収価格や事業譲渡の対象だ。ビッグモーターを巡っては顧客の車体を故意に傷つけるなどして、損害保険会社に保険金を水増し請求する不正行為が横行していた。
国土交通省は10月、ビッグモーターが全国に持つ135工場のうち34工場で自動車整備を事業停止にするなどの行政処分を出した。金融庁も11月末に保険代理店登録を取り消す行政処分の実施方針を表明している。
中古車の買い取りや販売でも1000件以上のトラブルが生じ、複数の民事訴訟を抱えている。10月末には経営不振で東京都や埼玉県で計9店舗を閉鎖した。伊藤忠はビッグモーターの支援を通じ、自社のブランドイメージが毀損しないかも慎重に検討する。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。佐藤一郎国立情報学研究所 教授 別の視点
アルトマン氏はOpenAIだけでなく、生成AIの顔ともいえる人物だっただけに、同氏の解任は衝撃です。さて、この解任はAIのガバナンスに一石を与えるのではないでしょうか。企業が適切にAIを提供・利用するには、企業のAIに関わるガバナンスが重要視されていますが、企業トップが突如解任されるとなると、ガバナンスの仕組みの再考が求められることになります。さてアルトマン氏はAIの規制には積極的であったといえて、今回の解任でOpenAIのAI規制のスタンスが弱まると、AIに対する規制は企業側のガバナンスだけで十分なのか、法的規制が必要などの声が強くなるかもしれません。
【創価学会の池田大作名誉会長が死去、95歳 公明党を結成】
18日の日経速報メールは報じた。
宗教法人創価学会名誉会長で、同会の戦後の飛躍的な拡大を指導した池田大作(いけだ・だいさく)氏が11月15日夜、老衰のため死去した。95歳だった。創価学会が18日発表した。葬儀は近親者で行った。お別れの会を行うが、日取りなどは未定。
東京都生まれ。1947年8月、創価学会の戸田城聖第2代会長に出会い、19歳で入会した。54年には青年部参謀室長に就任。学会の政治進出の本格化に伴い、選挙運動を組織、指導するようになった。
60年に32歳で第3代会長に就任。池田氏の指導下で学会は64年、公明党を結成した。
70年代以降は海外布教と世界平和を目指す国際交流に力を注ぎ、中国の周恩来首相、旧ソ連のゴルバチョフ大統領(いずれも当時)ら各国の指導者や識者と意見交換するなど国内外で組織を拡大した。
学会ホームページによると、現在の日本国内の会員数は827万世帯。海外では世界192カ国・地域に280万人の会員がいる。
75年に創価学会インタナショナル(SGI)会長、79年に創価学会名誉会長に就任。教育・文化面では67年に創価学園、71年に創価大を開設した。著書に「人間革命」「仏法と宇宙を語る」など。海外要人との対談集も多数。
83年に国連平和賞を受賞したほか、モスクワ大学やボローニャ大学といった海外の大学から名誉博士号などの称号も贈られた。公の場に姿を見せることが少なくなった後も平和運動に力を入れ、近年はロシアに侵攻されたウクライナの平和回復や核拡散防止に関する提言を発表した。
【米OpenAI、アルトマンCEOが退社へ 事実上の解任】
18日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=中藤玲】生成AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を手掛ける米新興オープンAIは17日、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表した。現在、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就く。新たなCEOの人選も進める。事実上の解任とみられ、アルトマン氏は退社する。
同社は声明で、アルトマン氏の退任について「取締役会による審議プロセスを経たものだ」と強調。「アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションで一貫して率直ではなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。彼が今後もオープンAIを率いていく能力を、取締役会はもはや信頼していない」と説明した。
アルトマン氏は同日、X(旧ツイッター)に「オープンAIで過ごした時間が大好きだった。私個人にとっても、できれば少し世界にとっても、変革をもたらすものだった。次に何が起こるかについては、後ほど詳しく説明する」と投稿した。
ムラティ氏はエンジニアでオープンAIに入社し、CTOとして研究や製品、安全部門を率いてきた。同社は「我々が前進するためには新しいリーダーシップが必要だ。ムラティ氏はオープンAIが世界的なAIリーダーに進化する過程で重要な役割を果たしてきて、暫定CEOに適任だ」とした。
アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで社長を務め、15年に連続起業家のイーロン・マスク氏らと非営利団体としてオープンAIを創設。約1年前の22年11月30日にチャットGPTを公開すると、2カ月で利用者数が1億人を超え、注目の的となった。
23年11月6日には本社がある米サンフランシスコ市で初めて開発者会議を開催。16日にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連イベントに登壇し、将来的なAI規制の必要性などについて語っていた。
米マイクロソフトは早い段階からオープンAIに投資し、業務ソフトやシステムに同社の技術を組み込んでいる。マイクロソフトは17日、日本経済新聞の取材に対し「我々はオープンAIと長期的なパートナーシップを結んでおり、今後もムラティ氏とチームにコミットし続けて次世代のAIを提供していく」とコメントを出した。
同日の米株式市場でマイクロソフト株は前日比約1%安で推移していたが、アルトマン氏退任の発表を受けて下げ幅を広げ、終値は前日比約2%安となった。
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【マンション建て替えやすく 借り主退去、請求後半年で】
19日の日経ニュースメールは次のように報じた。
首都圏を中心に増える老朽マンションの再生が社会的な課題となっている。建て替え予定の分譲マンションに借り主が居座り工事できないケースがあり、決議に基づいて6カ月後の立ち退きを請求できるようにする。政府は決議要件緩和などと合わせた制度案を近く示し、2024年の通常国会への区分所有法改正案の提出をめざす。
東京都新宿区の住宅街に30年以上をかけて建て替えにこぎ着けたマンションがある。1930年代に建築された物件で、建物の傾きや雨漏りから60年代に建て替えの検討が始まった。
手続きは難航した。高齢の所有者から「自分が生きている間は壊さないでほしい」「歴史的な建物を残してほしい」という声が出て、合意形成ができなかった。所有者の賛成を得て建て替えを決議し竣工に至ったのは2005年のことだった。
決議には所在の分からない所有者も含めた5分の4以上の賛成が必要だ。高度経済成長期に大量供給されたマンションの老朽化が急速に進むが、現行法は建て替えに高いハードルを設けている。
法相の諮問機関の法制審議会は、分譲マンションの建て替えなどを円滑にする方策を検討してきた。耐震性などに問題がある場合については、所在の明らかな人を対象に4分の3の賛成に引き下げる案を出している。
建て替えが決まったとしても、障壁はもう一つある。長期間契約の借り主が反対し、建て替え工事ができないケースがある。現行法では契約違反などの正当な理由がなければ退去の義務はない。所有者は借り主と個別に交渉する必要がある。
新制度の導入後は個別交渉で解決しない場合でも、契約の終了を請求できるようになる。所有者が立ち退き費用などを補償することで賃貸借契約を解除できる。
法制審議会は21日に新制度を盛った要綱案のたたき台を提示する方針だ。政府は議論をもとに区分所有法の改正案をとりまとめ、24年の通常国会に提出する見通し。
旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所の重水丈人所長は「立ち退かないと建て替えできないため、借り主の同意が重要だ。所有者は大変苦労している」と話す。追加的な課題として借り主への補償に関するガイドラインの整備が必要だと指摘した。
国土交通省によると、築40年以上の分譲マンションは22年末でおよそ126万戸ある。42年末には22年末の3.5倍の445万戸にまで増加する見込みだ。
一方、建て替えの累計実績は23年3月時点でおよそ2万3000戸にとどまる。
東京カンテイ市場調査部の高橋雅之主任研究員は「要件緩和で建て替え需要にはプラスの方向に働く」と語る。資材の高騰で建て替え費用がかさむ可能性があり「所得水準や年齢層が多様な大規模マンションでは合意形成が図りにくい」との見方を示す。
マンションの建物や敷地の売却、取り壊しやリノベーション(大規模改修)の決定も多数決で可能にする。現行法で実行するには所有者全員の賛成が必要だが、建て替えと同様に耐震性などに問題があれば4分の3の多数決で決められるようにする。
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
大槻奈那名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
今後の展望
所有権尊重の所有権尊重の観点等から進みにくかった建て替え決議に対する大きな進展です。但し、実行段階でのハードルはまだ様々残されています。 例えば借り主の退去については、立ち退き費用補償の水準をどうするのか。また、建て替えの賛成票も集まり難くなっている可能性があります。住人の一層の高齢化や、家賃上昇で建て替え中の移転費用の増加が課題です。更に、近年では室内のリノベーションが広く普及し、その技術が高額化していることから、一旦リノベした世帯はそれを無駄にするような建て替え決議には賛成しない可能性があります。一定の年数を経たマンションでは、できるだけ早い時期から理事会等で話し合いを始める必要があるでしょう。
2023年11月20日 8:38
【紅海で貨物船乗っ取り 日本郵船が運航「日本人いない」】
19日の日経速報メールは報じた。
イスラエル軍は19日、イエメン近くの紅海で貨物船が乗っ取られたと発表した。日本郵船によると、拿捕(だほ)された船はバハマ船籍の自動車輸送船「ギャラクシー・リーダー」で同社がチャーターしていた。
日本郵船は「拿捕されたのは事実。乗組員の安全を確認中」とコメントした。乗組員はブルガリア人、フィリピン人など25人で日本人はいないという。国土交通省は19日午後9時半ごろ日本郵船から連絡を受け、詳しい情報を確認中だとしている。
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イスラエル首相府は、この船舶は英国企業が所有し日本企業が運航しており、乗っ取りを実行したのはイエメンの親イラン武装組織フーシだと主張した。乗っ取りはイランの指導を受けたもので「イランによる国際船舶への攻撃を強く非難する」と強調した。乗組員にイスラエル人はいないと説明している。
イスラエル軍によると、貨物船はトルコからインドに向かう途中だった。船舶情報会社マリントラフィックによると、サウジアラビアとスーダンの間の海域で信号を確認したのを最後に消息がわからなくなっている。
ロイター通信はこれに先立ち、フーシの広報担当者が同日、イスラエル企業が所有・運航するすべての船舶を標的にすると表明したと伝えた。
イスラエル軍は10月からパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと交戦しており、フーシはイスラエルへミサイルなどによる攻撃をしかけてきた。
(カイロ=久門武史、逸見純也)
▼フーシ イエメン北部を活動拠点とするイスラム教シーア派の武装組織。指導者はアブドルマリク・フーシ氏。2011年に中東で広がった民主化運動「アラブの春」以降に台頭し、15年にクーデターで首都サヌアを占領するなど国内の大半を支配下に置いている。
イエメンではサウジアラビアなどが支援する暫定政権と、イランが支援するフーシの内戦が続いている。3月にサウジとイランが外交関係を正常化することで合意すると、サウジとフーシの停戦協議も始まり、緊張緩和の機運が高まっていた。
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【元OpenAIのアルトマン氏ら、Microsoft入りへ】
20日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=山田遼太郎】米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は19日、米新興企業オープンAIのCEOを解任されたサム・アルトマン氏がマイクロソフトに加わると明らかにした。同社に新設する人工知能(AI)の先進的な研究チームを率いるという。
ナデラ氏が19日深夜(米西部時間)にX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。オープンAIの共同創業者の1人で、アルトマン氏とともに退社を表明したグレッグ・ブロックマン元社長もマイクロソフトに入る。複数のオープンAI従業員もマイクロソフトに移る。
ナデラ氏は投稿で「我々はオープンAIとの提携を続け、製品のロードマップに自信を持っている」と強調した。エメット・シア氏が暫定CEOに就くオープンAIについて「新経営陣と共に働くのを楽しみにしている」とも述べ、巨額を投資するオープンAIとの関係を維持する考えを強調した。
マイクロソフトCEOのナデラ氏はXへの投稿でアルトマン氏らがマイクロソフトに入社すると明らかにした
ナデラ氏によると、アルトマン氏はマイクロソフト社内で新たに設置されるAI研究のグループのCEOに就くという。
アルトマン氏は同日、ナデラ氏の投稿に「使命は続く」とXで応じ、マイクロソフトに加わることを認めるかたちとなった。
アルトマン氏は17日にオープンAIのCEOを突如解任された。同氏を支持する投資家や従業員が多く、復帰に向けた交渉があったが19日夜までに合意に至らなかった。オープンAIはゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」元トップのシア氏を暫定CEOに起用した。
アルトマン氏やブロックマン氏の退任に続き、オープンAIの多くの従業員が退社の意向を示したことから去就に注目が集まっていた。
マイクロソフトは米西部ワシントン州シアトルで開いた技術イベント「イグナイト」で15日、オープンAIが手がける生成AIの技術基盤の最新版「GPT-4ターボ」の企業向け提供などを発表したばかりだ。
対話型AI「Chat(チャット)GPT」で知られる同社との提携を経営戦略の中核に据え、業務ソフトの操作を支援する「コパイロット」など、AI技術を矢継ぎ早に自社サービスに組み込んだ。クラウド基盤「アジュール」とオープンAIの技術の連携も進めた。
オープンAIから人材が流出し、アルトマン氏が独立する事態となれば、マイクロソフトのAI戦略が見直しを迫られるほか、投資家らから批判を招くのは避けられない情勢だった。
【OpenAIの社員9割、退社も辞さず 取締役会に総退陣迫る】
21日の日経速報メールは報じた。
シリコンバレー=渡辺直樹】米オープンAIの社員らは20日、取締役会(理事会)に総退陣を求め、解任したサム・アルトマン氏らを 復帰させなければ、自分たちもそろって退社すると迫る文書を提出した。770人いる社員のうち、すでに9割超にあたる約730人が署名した。人工知能(AI)の有望企業をめぐる混乱は社員の「反乱」という重大な局面に発展しはじめた。
日本経済新聞が入手した文書によると、要求は取締役会に向けている。現在の取締役全員が辞任した上で、独立した新任者を指名し、アルトマン元CEOとグレッグ・ブロックマン前社長を復帰させるよう求めている。
受け入れられなければ、大半の従業員はアルトマン氏らが手がける「マイクロソフトの新しい子会社に参加することを選択するかもしれない」と迫っている。「(取締役会は)オープンAIを監督する能力がないことが明確になった。能力や判断力、使命、従業員への配慮が欠けている人たちのために働くことはできない」と批判している。
賛同したオープンAIの社員は「みな同じように突然状況を知らされて驚いている」と混乱する社内の状況を明かした。
オープンAIは17日にアルトマン氏の解任を突如発表して以降、技術者らが離反する事態を招いていた。オープンAIの投資家はアルトマン氏の復帰を仲介したが、これに失敗。19日にはマイクロソフトがアルトマン氏とブロックマン氏を新たなAI研究チームに迎えると発表した。
取締役会は暫定CEOにゲーム実況配信サービス「Twitch(ツイッチ)」の元CEOであるエメット・シア氏を指名した。同氏はアルトマン氏解任の経緯について近く報告書をつくる意向を示していた。
現在の取締役会はアルトマン氏解任に加担したチーフサイエンティストのイリヤ・サツキバー氏と3人の社外取締役で構成している。社員らが今回提出した文書には、そのサツキバー氏も署名し、取締役の解任要求は実質的に社外の3人に向けられた形だ。
サツキバー氏はX(旧ツイッター)上で「取締役会(理事会)の行動に加わったことを深く後悔している。オープンAIに危害を加えるつもりはまったくなかった。会社を再統合するためにできる限りのことをするつもりだ」と投稿した。
一連の動きをうけてマイクロソフトの株価は20日、約2%上昇した。マイクロソフトは混乱に乗じ、資本・業務提携するオープンAIの人材取り込みをさらに進める可能性が高いとみられている。
オープンAIの創設にも関与した米起業家のイーロン・マスク氏はXで「マイクロソフトは数年前にオープンAIの事実上の支配権を実現した。それが今になって明らかになりつつある」と投稿した。
【岸田首相が2024年春に訪米 議会演説を検討、国賓待遇】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
岸田文雄首相は2024年春に訪米する調整に入った。バイデン米大統領から国賓待遇で招待を受けており、米議会での演説を検討する。日本の防衛力強化を踏まえた「同盟の現代化」を推進する。安全保障や経済、人的交流など幅広い分野で関係深化を話し合う。
首相は先に米サンフランシスコを訪れた際にバイデン氏と会談した。バイデン氏は24年早期に首相を国賓待遇で招待すると伝えていた。
国賓は大統領や国王など政府が外国の元首らを最も手厚く受け入れる接遇だ。首相は24年度予算案の国会審議の日程を見極めながら3〜4月ごろの訪米を探る。
日本の首相が国賓訪米するのは15年の安倍晋三氏以来となる。米議会では過去に安倍氏のほか吉田茂、岸信介、池田勇人の各氏が演説に臨んだ。
米国の厚遇は岸田政権が打ち出した防衛力強化を評価している証しでもある。日本政府は22年12月に新たな国家安全保障戦略など安保関連3文書や防衛費の大幅増を決めた。バイデン氏は23年1月にワシントンで開いた日米首脳会談でこれを「果敢なリーダーシップ」と歓迎した。
報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率は低迷する。ロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエルとイスラム組織の戦闘は長引く恐れがある。米国はそうした情勢下で同盟国である日本の政治が不安定になる展開を望んでいないとみられる。
【自工会会長にいすゞ片山会長 トヨタなど3社以外から初】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本自動車工業会(自工会)の次期会長にいすゞ自動車会長の片山正則氏が就任する見通しとなった。任期が2024年5月までの豊田章男会長(トヨタ自動車会長)の後任となる。1967年に自工会が発足して以降、トヨタ、ホンダ、日産自動車以外から会長が就任するのは初めて。
自工会の会長はトヨタとホンダ、日産の首脳が1期2年交代で務めるのが慣例だった。豊田氏は2018年5月に会長に就いた。12〜14年に次いで2回目の就任だった。
片山氏は現在、副会長を務めている。商用車を主力とする企業が会長に就くことで、100年に1度とされる自動車産業の構造変化などに業界をあげて柔軟に対応できる体制を整備する狙いがあるとみられる。
【北朝鮮が「軍事偵察衛星」発射 軌道投入は確認されず】
同じ21日の日経速報メールは報じた。
日本政府は21日夜、北朝鮮が同日午後10時43分ごろ、北西部の東倉里(トンチャンリ)から弾道ミサイル技術を使った発射を強行したと発表した。北朝鮮が主張する「軍事偵察衛星」とみられる。防衛省によると周回軌道への投入は確認されていない。
北朝鮮の朝鮮中央通信は22日未明、北朝鮮の国家航空宇宙技術総局が21日夜に軍事偵察衛星を打ち上げ、成功したと伝えた。衛星を地球の周回軌道に「正確に進入させた」と主張した。
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北朝鮮が22日午前0時から12月1日午前0時の間に「人工衛星」を発射すると通告していた。
政府は21日午後10時46分に全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。「北朝鮮からミサイルが発射されたとみられる」として沖縄県に避難を呼びかけた。その後に「ミサイルは10時55分ごろ、太平洋へ通過したとみられる」と通知し呼びかけを解除した。
岸田文雄首相は同日深夜、首相官邸で記者団に「少なくとも1発は沖縄上空を太平洋へ通過した。被害は確認していない」と述べた。宮沢博行防衛副大臣は22日未明、防衛省で記者団に「地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と明らかにした。
宮沢氏によると、衛星とみられる発射物は上空で分離し、一つは朝鮮半島の西350キロほどの東シナ海の予告区域外に落ちた。もう一つは沖ノ鳥島の南西1200キロ程度の太平洋上に位置する日本の排他的経済水域(EEZ)外の予告区域内に落下した。
21日夜に記者会見した松野博一官房長官は「発射について繰り返し中止を求めてきたにもかかわらず、住民の安全確保の観点からも極めて問題のある行為だ」と強調し、北朝鮮に厳重抗議したと説明。発射は国連安全保障理事会の決議違反に当たるとの認識を示した。
首相は21日夜、ミサイルの上空通過を踏まえ関係閣僚に①落下物による被害がないかの速やかな確認、②北朝鮮の今後の動向を含めた情報収集・分析の徹底、③米国や韓国などの関係諸国との連携、適時適切な対応――の3点を指示した。
Jアラートの発令は沖縄県に避難を促した8月24日以来。この時は北朝鮮が「軍事偵察衛星」を発射し失敗した。沖縄本島と宮古島の間の上空を飛行し太平洋へ通過したため避難の呼びかけを解除した。
【イスラエル、4日間戦闘休止へ 人質50人解放と引き換え】
22日の日経速報メールは報じた。
【イスタンブール=木寺もも子】イスラエルメディアによると、同国政府は22日、少なくとも人質50人の解放と引き換えに、パレスチナ自治区ガザで続くイスラム組織ハマスとの戦闘を4日間休止することを閣議決定した。ハマス側も既に「合意が近い」としており、一定期間の人道停戦や人質の解放が実現する可能性が強まった。
イスラエルは戦闘の休止に加え、パレスチナ人の囚人のうち女性や未成年者も引き換えに釈放する。ガザへの人道支援拡大や、負傷者がガザを脱出することも認めるもようだ。交渉は米国とカタールが仲介した。
政府高官の話として報じられた情報によると、解放されるのは子ども30人とその母親8人のほか、女性12人だとされる。
ハマスなどがガザに拉致したイスラエル側の人質は約240人に上るとみられる。戦闘の休止が履行されれば、さらに数十人が解放されるとの報道もある。
ただ、イスラエルメディアによると、国民は24時間以内に裁判所に対して閣議決定への異議申し立てを行える。合意がすみやかに成立、履行されるかは不透明な面もある。
閣議は21日夜(日本時間22日未明)に始まり、22日早朝まで続いた。公開された映像によるとネタニヤフ氏は冒頭、「停戦(期間)後も、戦争は続く」と述べ、一時的な戦闘休止を挟んだ後もハマスの壊滅を目指す軍事作戦は継続すると強調。合意は「厳しいが、正しい決定だ」として閣僚らに理解を求めた。
中東の衛星放送局アルジャズィーラによると、ハマスと共闘するガザの過激派「イスラム聖戦」は21日、レバノンで開いた記者会見で、交渉を巡り「ハマスと協調している」と表明した。イスラム聖戦も多数の人質を拘束しているとみられる。
人質はこれまで米国籍の母娘とイスラエルの高齢女性2人が解放されたほか、イスラエル軍が女性兵士1人を救出した。
イスラエルは21日も空爆などを続けた。ガザ当局によると、同日までの累計の死者は1万4100人を超えた。国連安全保障理事会は15日、「緊急かつ人道的な一時休止」を要請する決議案を採択した。国連総会も10月下旬、「人道的休戦」を求めていた。
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【東芝、株式併合など特別決議を承認 臨時株主総会】
22日の日経速報メールは報じた。
東芝は22日、臨時株主総会を開き、株式の非公開化に向けた株式併合や定款変更などの議案を諮り賛成多数で承認された。 日本産業パートナーズ(JIP)と国内企業によるTOB(株式公開買い付け)に応募しなかった株主の株式を強制的に買い取り、東芝は12月20日に東京証券取引所への株式上場が廃止になる。
東芝は不正会計や巨額損失、アクティビスト(物言う株主)との対立など経営の混乱が長引いた。JIPは総額2兆円を投じて8〜9月にTOB(株式公開買い付け)を実施した。東芝は株主をJIPに一本化し、投資ファンド傘下で再建を目指す。
【OpenAI、アルトマン氏がCEOに復帰 理事会大幅刷新へ】
12日の日経速報メールは報じた。
【シリコンバレー=渡辺直樹】対話型AI(人工知能)「Chat(チャット)GPT」を開発した米オープンAIは21日、最高経営責任者(CEO)を解任されたサム・アルトマン氏の復帰で基本合意したと発表した。経営を監督する理事会(企業の取締役会に相当)を大幅に入れ替え、社員が大量離脱する分裂の危機を回避した。
新たな理事会は現任の米クォーラCEOのアダム・ディアンジェロ氏に加え、ラリー・サマーズ元米財務長官、米セールスフォース元共同CEOのブレット・テイラー氏で構成する。テイラー氏が会長に就くという。
オープンAIの理事会は17日、CEOだったアルトマン氏を突如解任した。社員の9割が同氏の復帰と理事の総退陣を求める署名活動を展開し、要求が受け入れられない場合はそろって退職すると迫っていた。
アルトマン氏は21日、X(旧ツイッター)でマイクロソフトのサティア・ナデラCEOに言及し、「新しい理事会とサティアのサポートがあれば、オープンAIに戻ってマイクロソフトとの強力なパートナーシップを築くことができる」と投稿した。
オープンAIは2022年11月にチャットGPTを公開し、1年足らずで毎週1億人が利用するサービスに成長した。生成AIブームを代表する注目企業となった新興企業のトップ解任騒動は、1週間足らずでアルトマン氏が復帰する事態となった。
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この間、以下の録画を視聴することができた。 (1)BS6報道1930「ウクライナの不協和音、政権と軍中枢の内部での反攻停滞が生む確執か。クリミヤ上陸作戦の狙いは」13日。 (2)BS6報道1930「ハマスが変えた<世界地図>、米の中東政策崩壊で反米・反イが拡大。ゴミ燃やしてパンを焼く…生活困窮のガザ住民は」14日。 (3)BS6報道1930「米中首脳1年ぶりに会談へ…台湾問題・半導体規制で思惑と歩み寄りか?」15日。 (4)NHKBS世界のドキュメンタリー「知られざる核危機 ノルウエー・インシデントの教訓。1995年のある日、ロシアのミサイル警戒システムが発動。一時、報復核攻撃を行うかどうか判断を迫られた。何が起きていたのか」15日。 (5)BS6報道1930「トランプ氏の再来? 厳主要州リードのなかで難敵「スポイラー候補」とは?」17日。 (6)BS4深層NEWS「米軍とウクライナ軍トップが冬の反転攻勢協議“こう着”、状況打開は、ジャーナリスト西谷文明氏が見た奪還から1年のへルソン。激戦の爪痕と変わらない日常」17日。 (7)TV東京のカンブリア宮殿「激変する時代が生んだ通信制高校 教育革命の全貌。 2016年、出版社KADOKAWAと IT企業ドワンゴが共同で設立した通信制高校「N高等学校。現代の教育の最前線に立つN高の全貌に迫る」16日。 (8)BS6報道1930「どうなる冬の反転攻勢、米ウ開発”怪物“、ロ軍ミサイル温存なぜ?戦局打開へ渡河作戦か。冬はロ軍に味方する?」16日。 (9)NHKスペシャル混迷の世紀第13回 「世界債務危機は止められるか。欧州や中東で戦火が広がるなか、世界を別の危機が襲っている。30超の国が直面する「債務危機」。債権国・中国が独自路線を取るなかで国際社会は一致して対応できるのか」19日。 (10)BS6報道1930「プーチン氏、揺れる足元、中東危機が国内飛び火、反米外交の矛盾と限界。旧ソ連アルメニアが「新たなパートナーを探す」、ロシア離れが加速か」20日。
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